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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/10 20060101AFI20240208BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F01P5/10 C
F02F1/10 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021107518
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005532
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 卓
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-93682(JP,A)
【文献】特開2004-308644(JP,A)
【文献】特開2008-25356(JP,A)
【文献】特開2015-102038(JP,A)
【文献】特開2018-3684(JP,A)
【文献】特開2021-88949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/10
F02F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(1)の架設方向を前後方向、前後方向の一方を前として、シリンダブロック(2)の前側に組み付けられたフロントケース(5)と、フロントケース(5)の前側に配置されたエンジン冷却ファン(7)と、水ポンプ(6)を備え、
フロントケース(5)は、水ポンプ(6)への吸引水路(9)を備え、この吸引水路(9)は、フロントケース(5)内のケース内通路(5b)と、ケース内通路(5b)の前開口(5c)を覆う前蓋(10)と、前開口(5c)の周縁部(5d)に前蓋(10)を締結する複数の締結具(11)を備え、
前蓋(10)は、基板(10a)と、基板周縁部(10aa)に配置された複数の締結具挿通用のボス(10b)と、基板周縁部(10aa)から前向きに隆起し、相互に隣り合う一対のボス(10b)(10b)を連結する連続構造の連結リブ(10c)を備え、連結リブ(10c)は、エンジン冷却ファン(7)の送風位置に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
連結リブ(10c)と、連結リブ(10c)を隆起させた基板周縁部(10aa)は、いずれも基板(10a)の外側に突出する屈曲形状または湾曲形状とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンにおいて、
連結リブ(10c)と、連結リブ(10c)を隆起させた基板周縁部(10aa)は、いずれも水ポンプ周壁(6b)に沿って形成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたエンジンにおいて、
相互に対向する水ポンプ周壁(6b)と連結リブ(10c)の間に形成された通風隙間(12)を備え、通風隙間(12)は、エンジン冷却ファン(7)の送風位置に配置され、エンジン冷却ファン(7)で通風隙間(12)に押し込まれたエンジン冷却風(7a)が通風隙間(12)の両端部(12a)(12b)から溢れて放風されるように構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載されたエンジンにおいて、
通風隙間(12)の一端部(12a)からのエンジン冷却風(7a)の放風位置に発電機(13)が配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載されたエンジンにおいて、
通風隙間(12)の他端部(12b)からのエンジン冷却風(7a)の放風位置にクランクプーリ(1a)の背後空間(1b)が配置され、この背後空間(1b)の後方にフロントケース(5)内のオイルポンプ(15)が配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
ボス(10b)の全長寸法(L1)は、基板(10a)の肉厚寸法(L0)の2倍以上で、6倍以下とされ、
基板前面(10ab)からの連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)は、基板前面(10ab)からのボス(10b)の突出寸法(L11)の60%以上で、100%未満とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載されたエンジンにおいて、
前蓋(10)の平坦な基板前面(10ab)に連なる連結リブ(10c)の連結リブ内周面(10ca)のアールの曲率半径(R)は、連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)の0.5倍以上で、1.5倍以下とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項9】
請求項8に記載されたエンジンにおいて、
前蓋(10)の平坦な基板前面(10ab)は、連結リブ内周面(10ca)から離れるほど前寄りとなる傾斜面で形成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
前蓋(10)の基板前面(10ab)に連なる連結リブ(10c)の連結リブ内周面(10ca)は、案内するエンジン冷却風(7a)に乱流を発生させる突起(10cb)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、吸引水路の前蓋のシール性を高めることができるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとして、フロントケースが、水ポンプへの吸引水路を備え、この吸引水路が、フロントケース内のケース内通路と、ケース内通路の前開口を覆う前蓋と、前開口の周縁部に前蓋を締結する複数の締結具を備えたものがある (例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-93682号公報(図1(A)(B),2,3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 吸引水路の前蓋のシール性が低下し易い。
特許文献1のエンジンでは、相互に隣り合う一対の締結具の離間距離が大きくなると、一対の締結具間の前蓋周縁部が変形し易く、吸引水路の前蓋のシール性が低下し易い。
【0005】
本発明の課題は、吸引水路の前蓋のシール性を高めることができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明では、図6(A)(B),7(A)(B)に例示するように、前蓋(10)は、基板(10a)と、基板周縁部(10aa)に配置された複数の締結具挿通用のボス(10b)と、基板周縁部(10aa)から前向きに隆起し、相互に隣り合う一対のボス(10b)(10b)を連結する連続構造の連結リブ(10c)を備え、図3(A)に例示するように、連結リブ(10c)は、エンジン冷却ファン(7)の送風位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果1》 吸引水路の前蓋のシール性を高めることができる。
図3(A)に例示するように、このエンジンでは、相互に隣り合う一対のボス(10b)(10b)の離間距離が大きくなっても、一対のボス(10b)(10b)間の基板周縁部(10aa)が連続構造の連結リブ(10c)で高剛性となるため、この基板周縁部(10aa)が変形し難く、吸引水路(9)の前蓋(10)のシール性が高まる。更に、広い表面積の連結リブ(10c)からエンジン冷却風(7a)に放熱がなされるため、基板周縁部(10aa)の熱歪が起こり難く、この点でも前蓋(10)のシール性を高めることができる。
【0008】
《効果2》 吸引水路を通過するエンジン冷却水が低温に維持される。
図3(A)に例示するように、このエンジンでは、エンジンの熱が前蓋(10)に伝達されても、この熱は、基板前面(10ab)や連結リブ(10c)の広い表面からエンジン冷却風(7a)に放熱されるため、吸引水路(9)を通過するエンジン冷却水(8)が低温に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの正面図である。
図2】エンジン冷却ファンを透明にした図1の正面図である。
図3図3(A)は水ポンプ周辺の正面図、図3(B)は図3(A)のB-B線断面模式図である。
図4】フロントケースと水ポンプと前蓋の分解正面図である。
図5図5(A)は図2のVA-VA線断面図、図5(B)は図2のVB-VB線断面図である。
図6】前蓋の説明図で、図6(A)は正面図、図6(B)は図6(A)のB-B線断面図、図6(C)は図6(A)のC方向矢視図、図6(D)は図6(A)のD方向矢視図、図6(E)は図6(A)のE方向矢視図、図6(F)は背面図である。
図7】前蓋の説明図で、図7(A)は斜視図、図7(B)は図7(A)のB-B線断面拡大図である。
図8図1のエンジンの右側面図である。
図9図1のエンジンの左側面図である。
図10図1のエンジンの平面図である。
図11図1のエンジンの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図11は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図で、この実施形態では、立形の直列多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0011】
図8に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(2)と、シリンダヘッド(18)と、シリンダヘッドカバー(19)と、フロントケース(5)と、フライホイールハウジング(21)と、オイルパン(22)を備えている。
シリンダブロック(2)は、下部のクランクケース(2a)と、上部のシリンダ部(2b)から成り、シリンダ部(2b)の上部にシリンダヘッド(18)が組み付けられ、シリンダヘッド(18)の上部にシリンダヘッドカバー(19)が組み付けられ、クランク軸(1)の架設方向を前後方向、その一方を前として、シリンダブロック(2)の前部にフロントケース(5)が組み付けられ、シリンダブロック(2)の後部にフライホイールハウジング(21)が配置され、クランクケース(2a)の下部にオイルパン(22)が組み付けられている。図11に示すように、フライホイールハウジング(21)にはフライホイール(21a)が収容されている。
このエンジンは、吸気装置と、燃料供給装置と、排気装置と、潤滑装置と、水冷装置と、空冷装置を備えている。
【0012】
図8に示すように、このエンジンの吸気装置は、エンジンの幅方向を横方向として、エンジン横一側である排気側に配置された過給機(23)のエアコンプレッサ(23a)と、エアコンプレッサ(23a)の出口に接続された過給パイプ(24)と、図9に示すように、エンジン横他側である吸気側に配置された吸気マニホルド(25)を備えている。吸気マニホルド(25)の吸気入口には吸気スロットル(14)が接続されている。図10に示すように、エアコンプレッサ(23a)の吸気入口パイプ(23b)にはシリンダヘッドカバー(19)に設けられたブリーザ室(20)のブローバイガス出口通路(20a)から導出されたブローバイガス導出チューブ(20b)が接続されている。
【0013】
図9に示すように、このエンジンの燃料供給装置は、吸気側に配置された燃料サプライポンプ(17)と、燃料サプライポンプ(17)に接続されたコモンレール(27)と、図10に示すように、コモンレール(27)に接続された各気筒の燃料インジェクタ(28)を備えでいる。燃料サプライポンプ(17)と燃料インジェクタ(28)は、電子制御装置(図示せず)に電気的に接続され、コモンレール(27)に蓄圧された燃料が、所定量、所定タイミングで燃料インジェクタ(28)から噴射される。電子制御装置は、エンジンECUである。ECUは電子制御ユニットの略称である。
【0014】
図8に示すように、このエンジンの排気装置は、排気側に配置された排気マニホルド(30)と、排気マニホルド(30)の上部の排気出口に接続された過給機(23)の排気タービン(23c)と、排気タービン(23c)の排気出口に接続された排気管(31)と、排気管(31)に接続された排気処理ケース(32)を備えている。排気処理ケース(32)内には、排気上流側にDOC(図示せず)が収容され、排気下流側にDPF(図示せず)が収容されている。
DOCは、ディーゼル酸化触媒の略称であり、DPFはディーゼルパティキュレートフィルタの略称である。
【0015】
図1に示すように、このエンジンの潤滑装置は、オイルパン(22)と、図3(B)に示すフロントケース(5)内に設けられたオイルポンプ(15)と、フロントケース(5)に取り付けられたオイルフィルタ(34)及びオイルクーラ(33)と、シリンダブロック(2)に設けられたオイルギャラリ(図示せず)を備え、オイルパン(22)のエンジンオイル(22a)がオイルポンプ(15)の圧送力でオイルフィルタ(34)及びオイルクーラ(33)を経てオイルギャラリからクランク軸(1)の軸受部(図示せず)や図5(B)に示す動弁カム軸の軸受部に供給される。
【0016】
図1に示すように、このエンジンは、水ポンプ(6)と、ウォータージャケット(16)と、ラジエータ(3)を備え、水ポンプ(6)で圧送されたエンジン冷却水(8)がウォータージャケット(16)とラジエータ(3)を順に介して水ポンプ(6)に循環復帰する。
図4に示すように、水ポンプ(6)は、フロントケース5の上部に取り付けられ、図1に示すウォータージャケット(16)は、図5(B)に示すシリンダジャケット(16a)と、ヘッドジャケット(図示せず)を備え、シリンダジャケット(16a)はシリンダ部(2b)内でシリンダ(2ba)の周囲に形成され、ヘッドジャケットは図1に示すシリンダヘッド(18)内に形成されている。
【0017】
図5(A)に示すように、このエンジンの空冷装置は、エンジンの前側に配置されたエンジン冷却ファン(7)を備えている。
エンジン冷却ファン(7)は、前後方向に架設されたファン入力軸(7b)に取り付けられたプロペラ式の軸流ファンで、ファン入力軸(7b)は水ポンプ入力軸(6a)を兼ねている。図3(A)に示すように、ファン入力軸(7b)にはファン入力プーリ(7c)が取り付けられ、ファン入力プーリ(7c)は、クランクプーリ(1a)からファンベルト(7d)を介して回転駆動される。ファンベルト(7d)は、ベルトテンショナ(7e)で張力を付与され、ベルトテンショナ(7e)は発電機(13)を兼ねている。
図3(A)に示すように、エンジン冷却ファン(7)は、前方から見て、時計回り方向に回転し、図5(A)に示すように、後向きに送風したエンジン冷却風(7a)でエンジンを空冷する。
エンジン冷却ファン(7)は、図1,2に示すラジエータ(3)の背後に配置され、ラジエータ(3)を後向きに通過するエンジン冷却風(7a)で、ラジエータ(3)のエンジン冷却水(8)の熱を吸熱し、冷却する。
【0018】
図8に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(2)の前側に組み付けられたフロントケース(5)と、フロントケース(5)の前側に配置されたエンジン冷却ファン(7)と、図3(A)に示す水ポンプ(6)を備えている。
【0019】
図3(A)に示すように、フロントケース(5)は、水ポンプ(6)への吸引水路(9)を備え、図4,5(B)に示すように、この吸引水路(9)は、フロントケース(5)内のケース内通路(5b)と、ケース内通路(5b)の前開口(5c)を覆う前蓋(10)と、前開口(5c)の周縁部(5d)に前蓋(10)を締結する複数の締結具(11)を備えている。
このエンジンでは、前蓋(10)と、前開口(5c)の周縁部(5d)の間には、ガスケット(図示せず)が挟み付けられている。締結具(11)には頭付きボルトが用いられている。
【0020】
図6(A)(B),7(A)(B)に示すように、このエンジンでは、前蓋(10)は、基板(10a)と、基板周縁部(10aa)に配置された複数の締結具挿通用のボス(10b)と、基板周縁部(10aa)から前向きに隆起し、相互に隣り合う一対のボス(10b)(10b)を連結する連続構造の連結リブ(10c)を備え、図3(A)に示すように、連結リブ(10c)は、エンジン冷却ファン(7)の送風位置に配置されている。
【0021】
図3(A)に示すように、このエンジンでは、相互に隣り合う一対のボス(10b)(10b)の離間距離が大きくなっても、一対のボス(10b)(10b)間の基板周縁部(10aa)が連続構造の連結リブ(10c)で高剛性となるため、この基板周縁部(10aa)が変形し難く、吸引水路(9)の前蓋(10)のシール性を高めることができる。更に、広い広い表面積の連結リブ(10c)からエンジン冷却風(7a)に放熱がなされるため、基板周縁部(10aa)の熱歪が起こり難く、この点でも前蓋(10)のシール性を高めることができる。
【0022】
また、図3(A)に示すように、このエンジンでは、エンジンの熱が前蓋(10)に伝達されても、この熱は、基板前面(10ab)や連結リブ(10c)の広い表面からエンジン冷却風(7a)に放熱されるため、吸引水路(9)を通過するエンジン冷却水(8)が低温に維持される。
【0023】
このエンジンでは、吸引水路(9)に吸引されるエンジン冷却水(8)は、図1,2に示すラジエータ(3)からのもの、図8に示すEGRクーラ(29)からのもの、オイルクーラ(33)からのものがある。
【0024】
このエンジンでは、図4に示す吸引水路(9)に吸引されたエンジン冷却水(8)は、水ポンプ(6)側の吸引水路(9)の終端部から後向きに凹入された後向き水路(9a)と、図5(A)に示す水ポンプ(6)の背後の水ポンプ背後空間(9b)を順に介して水ポンプ(6)に吸引され、水ポンプ(6)の吐出水路(6c)から図5(A)に示すシリンダジャケット(16a)に圧送される。
【0025】
図3(A)に示すように、このエンジンでは、連結リブ(10c)と、連結リブ(10c)を隆起させた基板周縁部(10aa)は、いずれも基板(10a)の外側に突出する屈曲形状または湾曲形状とされている。
このエンジンでは、連結リブ(10c)と基板周縁部(10aa)が外側に突出する分だけ、連結リブ(10c)と基板周縁部(10aa)の放熱面積が増加し、前蓋(10)の冷却効率が高まる。なお、基板周縁部(10aa)が隣り合う一対のボス(10b)(10b)間で、外側に突出するが、連結リブ(10c)で剛性が高められているため、一対の締結具(11)(11)間の挟圧力がばらつき難く、前蓋(10)のシール性は高く維持される。
【0026】
図3(A)に示すように、このエンジンでは、連結リブ(10c)と、連結リブ(10c)を隆起させた基板周縁部(10aa)は、いずれも水ポンプ周壁(6b)に沿って形成されている。
このエンジンでは、連結リブ(10c)と基板周縁部(10aa)が水ポンプ周壁(6b)に近づき、前蓋(10)と水ポンプ(6)を接近させて配置することができるため、エンジンを小型化できる。
【0027】
図6(A)(C),図7(A)に示すように、このエンジンでは、前蓋(10)の矩形状の基板(10a)の基板周縁部(10aa)の上縁部には2個、下縁部には3個のボス(10b)が形成され、水ポンプ(6)側に位置する上下一対のボス(10b)(10b)の間に上下一対のボス(10b)(10b)を連結する連続構造の連結リブ(10c)が形成されている。この連結リブ(10c)を除き、各ボス(10b)は、隣のボス(10b)に向けて導出された導出リブ(10ba)を備え、導出リブ(10ba)は隣のボス(10b)には至ることなく途切れ、導出リブ(10bc)の基板前面(10ab)からの隆起寸法は隣のボス(10b)に近づくにつれて次第に小さくなる傾斜状の隆起形状となっている。
【0028】
図3に示すように、ポンプ入力軸(6a)と平行な向きに見て、水ポンプ(6)は、円形のインペラ室(6d)から下向きにインペラ室(6d)よりも横幅の狭い吐出水路(6c)が導出されている。インペラ室(6d)から吐出水路(6c)に亘る前蓋(10)側の水ポンプ周壁(6b)は、水ポンプ(6)の内側向けて屈曲状または湾曲状に窪んでいる。
【0029】
図3(A)に示すように、このエンジンでは、相互に対向する水ポンプ周壁(6b)と連結リブ(10c)の間に形成された通風隙間(12)を備え、通風隙間(12)は、エンジン冷却ファン(7)の送風位置に配置され、エンジン冷却ファン(7)で通風隙間(12)に押し込まれたエンジン冷却風(7a)が通風隙間(12)の両端部(12a)(12b)から溢れて放風されるように構成されている。
このエンジンでは、通風隙間(12)の両端部(12a)(12b)から放風されるエンジン冷却風(7a)でこの両端部(12a)(12b)からのエンジン冷却風(7a)の放風位置にある補機類の空冷が促進される。
【0030】
図3(A)に示すように、このエンジンでは、通風隙間(12)の一端部(12a)からのエンジン冷却風(7a)の放風位置に発電機(13)が配置されている。
このエンジンでは、通風隙間(12)の一端部(12a)から放風されるエンジン冷却風(7a)で発電機(13)の空冷が促進される。
【0031】
図3(A)に示すように、通風隙間(12)の他端部(12b)からのエンジン冷却風(7a)の放風位置に図3(B)に示すクランクプーリ(1a)の背後空間(1b)が配置され、この背後空間(1b)の後方にフロントケース(5)内のオイルポンプ(15)が配置されている。
このエンジンでは、通風隙間(12)の他端部(12b)から放風されるエンジン冷却風(7a)でオイルポンプ(15)の空冷が促進される
【0032】
図7(B)に示すように、ボス(10b)の全長寸法(L1)は、基板(10a)の肉厚寸法(L0)の4倍とされている。
このエンジンでは、ボス(10b)の全長寸法(L1)は、基板(10a)の肉厚寸法(L0)の2倍以上で、6倍以下とするのが望ましい。
ボス(10b)の全長寸法(L1)が基板(10a)の肉厚寸法(L0)の2倍未満である場合には、ボス(10b)の全長が短過ぎ、基板前面(10ab)から連結リブ(10c)を大きく隆起させることができず、連結リブ(10c)による基板周縁部(10aa)の剛性アップと放熱が不十分になるおそれがある一方、6倍を超える場合には、ボス(10b)の全長が長過ぎ、締結具(11)に周辺部品が干渉するおそれがあるのに対し、前記望ましい範囲ではこのような問題が生じない。
このような観点からは、ボス(10b)の全長寸法(L1)は、基板(10a)の肉厚寸法(L0)の3倍以上で、5倍以下とするのがより望ましい。
【0033】
図7(B)に示すように、このエンジンでは、基板前面(10ab)からの連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)は、基板前面(10ab)からのボス(10b)の突出寸法(L11)の95%とされている。
このエンジンでは、基板前面(10ab)からの連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)は、基板前面(10ab)からのボス(10b)の突出寸法(L11)の60%以上で、100%未満とするのが望ましい。
基板前面(10ab)からの連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)が、基板前面(10ab)からのボス(10b)の突出寸法(L11)の60%未満である場合には、連結リブ(10c)の隆起が小さ過ぎ、連結リブ(10c)による基板周縁部(10aa)の剛性アップと放熱が不十分になるおそれがある一方、100%以上である場合には、連結リブ(10c)の隆起が大き過ぎ、締結具(11)が連結リブ(10c)に乗り上がるおそれがあるのに対し、前記望ましい範囲ではこのような問題が生じない。
このような観点からは、基板前面(10ab)からの連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)は、基板前面(10ab)からのボス(10b)の突出寸法(L11)の80%以上で、100%未満とするのがより望ましい。
【0034】
図7(B)に示すように、このエンジンでは、前蓋(10)の平坦な基板前面(10ab)に連なる連結リブ(10c)の連結リブ内周面(10ca)のアールの曲率半径(R)は、連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)の等倍とされている。
このエンジンでは、連結リブ内周面(10ca)のアールの曲率半径(R)は、連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)の0.5倍以上で、1.5倍以下にすることが望ましい。図7(B)中の符号(10cc)は、連結リブ内周面(10ca)の曲率中心である。
連結リブ内周面(10ca)のアールの曲率半径(R)が、連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)の0.5倍未満の場合、或いは、1.5倍を超える場合には、後向きのエンジン冷却風(7a)が連結リブ内周面(10ca)で前蓋(10)の平坦な基板前面(10ab)に滑らかに案内されず、エンジン冷却風(7a)が前蓋(10)の基板前面(10ab)に沿って広く拡散されることがなく、前蓋(10)の空冷効率が低いのに対し、上記望ましい範囲では、このような問題が生じない。
このような観点からは、連結リブ内周面(10ca)のアールの曲率半径(R)は、連結リブ(10c)の隆起寸法(L2)の0.8倍以上で、1.2倍以下にすることがより望ましい。
【0035】
図7(B)に示すように、このエンジンでは、曲率半径(R)の対象となる連結リブ内周面(10ca)は、連結リブ(10c)の直交断面図上、4半円状の部分で、中心角(θ)が70°以上で、90°以下の部分を指す。
【0036】
図7(B)に示すように、このエンジンでは、前蓋(10)の平坦な基板前面(10ab)は、連結リブ内周面(10ca)から離れるほど前寄りとなる傾斜面で形成されている。
このエンジンでは、連結リブ内周面(10ca)で偏向されたエンジン冷却風(7a)が基板前面(10ab)に沿って案内される際に、基板前面(10ab)に圧接され、前蓋(10)の空冷が促進される。
【0037】
図7(A)(B)に示すように、このエンジンでは、前蓋(10)の基板前面(10ab)に連なる連結リブ(10c)の連結リブ内周面(10ca)は、案内するエンジン冷却風(7a)に乱流を発生させる突起(10cb)を備えている。
このエンジンでは、乱流によるエンジン冷却風(7a)の熱伝達係数の増加で、前蓋(10)の空冷が促進される。
【0038】
図6(A),7(A)に示すように、突起(10cb)は、連結リブ(10c)の両端寄りと屈曲部寄りに合計3個配置されている。
【符号の説明】
【0039】
(1)…クランク軸、(1a)…クランクプーリ、(1b)…背後空間、(2)…シリンダブロック、(4)…シリンダブロック、(4a)…前端壁、(5)…フロントケース、(5b)…ケース内通路、(5c)…前開口、(5d)…周縁部、(6)…水ポンプ、(6a)…ポンプ入力軸、(6b)…水ポンプ周壁、(7)…エンジン冷却ファン、(7a)…エンジン冷却ファン、(8)…エンジン冷却水、(9)…吸引水路、(10)…前蓋、(10a)…基板、(10aa)…基板周縁部、(10ab)…基板前面、(10b)…ボス、(10c)…連結リブ、(10ca)…連結リブ内周面、(10cb)…突起、(11)…締結具、(12)…通風隙間、(12a)…一端部、(12b)…他端部、(L0)…基板の肉厚寸法、(L1)…ボスの全長寸法、(L11)…ボスの突出寸法、(L2)…連結リブの隆起寸法、(R)…アールの曲率半径。
図1
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