(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】自動薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20240208BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20240208BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M5/20 550
A61M5/20 510
A61M5/20 572
A61M5/32 500
A61M5/24 542
(21)【出願番号】P 2021131725
(22)【出願日】2021-08-12
(62)【分割の表示】P 2020032323の分割
【原出願日】2013-10-17
【審査請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2012-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2013-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511185690
【氏名又は名称】オーバル メディカル テクノロジーズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】PO Box 1386 Cambridge Cambridgeshire CB1 0JY United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】マッシュー ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ランブル
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508897(JP,A)
【文献】米国特許第04178928(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0039795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置であって、
使用時に保持されるよう構成される外筐体部と、薬物を収容する薬物収容部とを含む筐体と、
針ハブに固定された針であって、前記針ハブは、前記針が、前記筐体内の初期位置から前記筐体を超えて伸びる挿入位置へ、前記薬物収容部に対して移動するよう構成される、針を含む針アセンブリと、
前記針ハブを初期位置から挿入位置へ移動させるよう構成される第1の蓄積エネルギー源と、
前記筐体内に設けられ、前記針が挿入位置にあるとき、前記薬物収容部に対して移動し前記薬物を前記針から放出するよう構成されるプランジャーと、
初期位置で前記針のシャフト周りに配置され、初期位置で前記薬物収容部を封止するように構成された封止要素を備える、薬物送達装置。
【請求項2】
前記プランジャーを前記薬物収容部内で移動させるよう構成される第2の蓄積エネルギー源をさらに備える、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記針ハブの前記初期位置から前記挿入位置への移動により、前記第2の蓄積エネルギー源の解放を始動させる、請求項2に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記封止要素が前記薬物収容部に固定されている、請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
前記封止要素は前記針に固定されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
前記封止要素は、前記針が前記初期位置から前記挿入位置へ移動する際に、前記針のシャフト周りの流体密封封止を維持する、請求項1
から請求項
5のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
前記筐体は皮膚接触要素を含み、前記皮膚接触要素は前記第1の蓄積エネルギー源を解放するため、または前記第1の蓄積エネルギー源の解放をアンロックするため、前記外筐体部に対して移動することが可能である、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
前記針は、前記初期位置では前記薬物と流体連結していない、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項9】
前記針ハブおよび前記プランジャーは異なる軸に沿って移動する、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項10】
前記針は、患者に挿入する近位端と、前記薬物を受ける遠位端とを有し
、および、
前記針ハブは、前記針の遠位端の周囲に位置する入口部を有し、前記入口部は、前記針ハブが前記挿入位置にあるとき、前記薬物収容部と前記針の遠位端の間の流体連結をもたらす、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項11】
前記薬物収容部は、前記外筐体部と一体的または前記外筐体部に対して固定されている、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項12】
前記薬物送達装置は自己注射器である、請求項1から
11のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己注射器と呼ばれることも多い、自動的な針の挿入および自動的な薬物の針からの放出の両方を行うことができる自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野において知られている薬物送達装置の一例として、投与する前に医療用、治療用、診断用、医薬品用、または化粧品用の化合物(薬物)を収容し、この化合物を中空針を経由して患者の皮膚から投与するために用いられる自己注射器がある。自己注射器は、患者本人もしくは別のユーザによって使用されてもよく、また動物に薬物を投与する際にも用いられる。
【0003】
通常、自己注射器は、患者に対する針の挿入および薬物の針からの放出のプロセスの一方または両方を自動化するため、シリンジにおいて必要とされるような訓練や手間が低減されるという理由により、使用される。また、患者から針を隠すことにより、注射に対する恐怖を低減することができる。
【0004】
自己注射器の中には、1個のバネを用いて患者への針の挿入と薬物の送達の両方の動力を与えるものがある。この手法の例として、メリディアン社のEpiPen自己注射器やアボット社のヒュミラ自己注射器などが挙げられる。
【0005】
自己注射器は、通常、針が固定されたプレフィルド薬物容器を備える。動作時には、まず薬物容器が前方に駆動されて患者に針を挿入し、その後薬物容器内でプランジャーを駆動して薬物を針から患者に放出する。針の挿入と薬物注射の両方の動力を与えるために、バネなど、1個の蓄積エネルギー源を用いてもよいし、別々の蓄積エネルギー源を設けてもよい。
【0006】
自己注射器が、両方の機能を動作させる力を与えるバネを1つしか含まない場合、このバネが一方の機能に与える力は、他方の機能にも十分な力を与えることができるように、必要以上に高くなることがある。好都合には、この2つの機能は、針が正しく位置決めされてはじめて薬物が送達されるように、同時ではなく順番に起こる。通常、1つのバネにより与えられる力は、バネがエネルギーを伝えるにしたがって小さくなるため、このバネは、好むと好まざるとにかかわらず必然的に、1つ目の機能すなわち針を挿入する動作に対して2つ目の機能すなわち薬物の送達に対するよりも強い力を与えることになる。このバネの力は、薬物送達プロセス中のいずれの時点においても力およびエネルギーを十分に与えるためにバネに必要な条件によって決定される。これは、必要とされるまたは望まれるよりもずっと強い力が針挿入フェーズ中に与えられることを意味する。
【0007】
バネを2つ設ける場合、正しい動作シーケンスを保証するために複雑なインターロックメカニズムが必要となり、必要な要素の数が増え、製造が難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、複雑性、サイズ、コスト、および作動音が小さい自己注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各様態は添付の独立請求項に規定され、これについて以下に説明する。本発明の好適な様態は、従属請求項に定められる。
【0010】
第1の様態においては、薬物送達装置であって、薬物と、薬物容器アセンブリ内部に配置されたプランジャーとを収容し、薬物の投与のための出口を有し、初期位置においては出口が封止されている、薬物容器アセンブリと、プランジャーまたは薬物容器に圧力を加えて薬物を加圧するよう構成される第1の蓄積エネルギー源を備える駆動メカニズムと、薬物が加圧された後に出口を開封するよう構成される第1の解放メカニズムとを備える、薬物送達装置を提供する。
【0011】
本薬物送達装置は自己注射器であってもよい。自己注射器は、動作時には手で保持されるよう構成されてもよく、例えば接着剤などで注射部位に固定されるよう構成されて長時間の送達が可能としてもよい。この薬物は液体であってもよい。
【0012】
本装置は、装置の薬物が送達される前端部が注射部位に押し付けられた時にのみ、第1の解放メカニズムが動作可能とするよう構成されてもよい。これは、簡単であり、片手操作ですみ、また誤操作の可能性を低減することから、自己注射器にとって薬物送達を開始するにはよい方法である。本装置は、薬物容器アセンブリの一部であっても分離した部分であってもよい主筐体と、皮膚接触要素とをさらに備えてもよく、皮膚接触要素は(キャップを外した後)装置の前端部を形成し、皮膚接触要素の主筐体に対して初期位置から挿入位置への移動により、第1の解放メカニズムが動作するまたは動作可能となる。
【0013】
本装置は、第1の蓄積エネルギー源を解放するよう構成される、または第1の蓄積エネルギー源内にエネルギーを蓄積して薬物を加圧するよう構成される第2の解放メカニズムをさらに備えてもよい。
【0014】
本装置は、第2の解放メカニズムが動作するまでは、第1の解放メカニズムが動作することができないよう構成されてもよい。例えば、第2の解放メカニズムは、キャップまたはカバーを装置から取り外すことによって始動されてもよく、第1の解放メカニズムは、装置のむき出しになった前端部を注射部位に押し付けることによって始動されてもよい。本明細書において、正面と近位は、装置の同じ側の、装置の薬物が患者に送達される側の端部を意味する。
【0015】
また、第2の解放メカニズムは、装置を二次外装から取り外すことによって始動されてもよく、装置の壊れやすい要素を破ることによって始動されてもよく、装置のボタンまたはその他の始動メカニズムを操作することによって始動されてもよい。
【0016】
第2の解放メカニズムは、第1の蓄積エネルギー源に係合する座面(bearing surface)を移動または解放してもよく、これによって第1の蓄積エネルギー源がプランジャーまたは薬物容器アセンブリに作用可能とし、薬物を加圧する。例えば、第1の蓄積エネルギー源は圧縮バネであってもよく、壊れやすいストリップを本装置から取り除くことにより、バネまたは中間プッシャー要素がプランジャーの背面に係合するように圧縮バネが部分的に伸びることができるよう、圧縮バネと係合するロッキングラッチが圧縮バネから外れてもよい。別の例では、キャップを本装置の前端部から外すことにより、薬物容器アセンブリを前方に引っ張るまたは前進させ、バネまたは中間プッシャー要素がプランジャーの背面に係合するように圧縮バネが部分的に伸びることができるよう係止面が圧縮バネから外れてもよい。
【0017】
別の実施形態において、駆動メカニズムは第1のサブアセンブリを形成してもよく、薬物容器と第1の解放メカニズムは第2のサブアセンブリを形成してもよく、本装置は、第1のサブアセンブリが第2のサブアセンブリに接続されると第1の蓄積エネルギー源にエネルギーが蓄積されるよう構成される。例えば、第1の蓄積エネルギー源は圧縮バネであってもよい。圧縮バネは、第1のサブアセンブリが第2のサブアセンブリに接続されると、第1のサブアセンブリと第2のサブアセンブリの間で圧縮されてもよい。第1のサブアセンブリは、ねじ込み継ぎ手または機械的なインターロック継ぎ手により第2のサブアセンブリに接続されてもよい。第1の蓄積エネルギー源は、第1のサブアセンブリが第2のサブアセンブリに接続されると、薬物を加圧してもよい。上記の例では、圧縮バネは、第1のサブアセンブリが第2のサブアセンブリに接続される、プランジャーの背面と第1のサブアセンブリの筐体部分との間で圧縮されてもよい。
【0018】
第1のサブアセンブリは、第2のサブアセンブリから分離して別の第2のサブアセンブリと再利用可能なように構成されてもよい。例えば、第1のサブアセンブリおよび第2のサブアセンブリは、第1のサブアセンブリが第2のサブアセンブリからねじを回して取り外すことができるよう構成されてもよい。第2のサブアセンブリは、あらかじめ計量された投与量の薬物を収容する消耗品であってもよく、第1のサブアセンブリは複数の異なる第2のサブアセンブリと再利用されて、連続的に薬物を投与または投与量もしくは種類の異なる薬物を送達する。
【0019】
本装置は、使用時に薬物を送達する皮下注射針を備えてもよい。
第1の解放メカニズムの動作前には、針の内部が薬物と接触しなくともよい。
【0020】
本装置は、針を自動的に注射部位に挿入するよう構成される針挿入メカニズムを備えてもよい。また、使用時には、針挿入がユーザの装置を注射部位に押し付ける動作により手動で行われてもよい。
【0021】
第1の解放メカニズムの動作により、針挿入メカニズムが解放され、出口が開封されてもよい。このようにして、一度のユーザの動作を針挿入と薬物送達の双方の始動に用いることができる。また、当然ながら、自動・手動問わず、針挿入後の薬物送達の始動に別のユーザ動作が必要となるよう装置を構成することもできる。
【0022】
針挿入メカニズムは、針を薬物容器アセンブリに対して動かすよう動作してもよい。薬物容器アセンブリは、装置の主筐体内に保持されてもよく、装置の動作中、主筐体に対して固定されたままであってもよい。その場合、針挿入動作中、筐体内での薬物容器アセンブリの移動は不要である。これにより、装置のサイズおよび動作中の騒音を低減することができる。
【0023】
本装置は、第1の蓄積エネルギー源の解放によって与えられる薬物の液圧が、針挿入メカニズムの動作に用いられるよう構成されてもよい。通常、針挿入に必要な力の量は、薬物を針に押し通すために必要な力のほんの一部である。薬物が作用して針を動かす面の領域を選択することにより、駆動メカニズムによって薬物にかかる力の適切な部分が針挿入メカニズムに伝達される。
【0024】
一実施形態において、針は針ハブに設けられ、針ハブは、薬物容器アセンブリ内に延び、初期位置では出口を封止する。針ハブは、ロック要素によって近位方向への運動ができないようになっており、第1の解放メカニズムは、針ハブをロック要素から解放して薬物の圧力によって針ハブが近位方向に駆動可能なように構成される。針ハブは、針ハブが初期位置から挿入位置へ近位方向に移動することにより出口が開封されて、薬物が前記針を経由して薬物容器から注射部位へ通ることが可能なように構成される。
【0025】
また、針挿入メカニズムは、第1の解放メカニズムによって解放される、圧縮バネなどの第2の蓄積エネルギー源を備えてもよい。
【0026】
一実施形態において、針は針ハブに設けられ、針ハブは、初期位置では出口を封止し、ロック要素によって近位方向への運動ができないようになっており、第1の解放メカニズムは、針ハブをロック要素から解放して第2の蓄積エネルギー源によって針ハブが近位方向に駆動可能なように構成され、針ハブは、針ハブが初期位置から挿入位置へ近位方向に移動することにより出口が開封されて、薬物が前記針を経由して薬物容器から注射部位へ通ることが可能なように構成される。
【0027】
針挿入メカニズムは、針ハブおよびプランジャーが同一または異なる軸に沿って移動するよう配置されてもよい。例えば、本装置は、使用時には、針ハブおよびプランジャーが互いに平行に移動するよう構成されてもよい。また、使用時には、針ハブはプランジャーの移動方向に垂直な方向などの平行ではない方向に移動してもよい。針および薬物容器アセンブリの配置は、装置に望ましい全体的な形状やサイズとなるよう構成することができる。
【0028】
本装置は、それぞれ同一または異なる薬物を収容し、それぞれ関連した駆動アセンブリを有する、2個またはそれ以上の数の薬物容器アセンブリを備えてもよく、各容器からの薬物が同じ針を経由して送達されるよう構成される。
【0029】
少なくとも1個の薬物容器アセンブリが、この容器に入った薬物を、別の薬物容器に入った別の薬物から切り離す分離封止、または同じ容器に入った2種類の異なる薬物を分離する分離封止を有してもよい。関連した駆動メカニズムの動作により、分離封止が自動的に開封されてもよい。この配置により、送達直前または送達中に混合される2種類またはそれ以上の数の異なる薬物要素を収容する送達装置の構成を可能とする。
【0030】
別の実施形態において、本装置は、出口を封止する封止部材をさらに備えてもよく、第1の解放メカニズムは、貫通部材を封止部材に対して移動させて、封止部材を突き刺し、出口を開封するよう構成される。
【0031】
また、第1の解放メカニズムは、出口を封止するバルブを開くよう動作してもよい。例えば、第1の解放メカニズムは、針ハブ要素を薬物容器アセンブリに対して動かして出口を開封してもよい。本装置は、針の遠位端を封止する第1の封止部材と、針の外部と薬物容器アセンブリの間の封止となる第2の封止部材とをさらに備えてもよく、第1の解放メカニズムは、針を第1の封止部材に対して動かして針の遠位端を開封する。
【0032】
薬物容器アセンブリは、薬物容器アセンブリの前部が流体密封された状態で薬物容器アセンブリの後部から離れる方向に移動することができるよう、蛇腹形状部などの拡張部を備えてもよい。針ハブは、薬物容器アセンブリの前部に固定されてもよい。第1の封止部材は、後部に固定されてもよい。
【0033】
また、第1の解放メカニズムは、針を第2の封止部材に対して初期位置から挿入位置へ動かしてもよく、第2の封止部材は、針が初期位置から挿入位置へ移動すると針の外部と薬物容器アセンブリの間の封止となる。
【0034】
一実施形態において、針は、患者に挿入する近位端と、薬物を受ける遠位端とを有し、針ハブは、針ハブが初期位置にあるとき出口を封止するよう構成される封止部をさらに有し、針ハブは、針の遠位端の周囲に位置する入口部を有し、入口部は、針ハブが挿入位置にあるとき、出口と針の遠位端の間の流体連結をもたらす。
【0035】
本装置は、針ハブ周囲の封止となって初期位置での針を無菌状態に保つ第2の封止要素をさらに備えてもよい。
【0036】
説明される実施形態において、針ハブは、概ね、近位方向へ移動して出口を開封するものとして説明される。本装置を、針ハブの遠位側への移動により効果的に出口を開封するよう構成することができることは明らかである。
【0037】
必要な封止は、任意の適切な材料を用いて形成することができる。例えば、弾性のあるOリングおよび弾性のあるプラグまたは硬質な面を、機械的な締まりばめと合わせて用いてもよい。
【0038】
針ハブは、初期位置と挿入位置との間で回転してもよい。これは、針ハブの並進運動に加えて行われても無しに行われてもよい。例えば、本装置は、手動での針挿入のために、動作中、針が主筐体に対して動かないよう構成することができる。しかしながら、針挿入中の皮膚接触要素の移動により、針ハブのカム面を駆動して薬物容器アセンブリに対して回転させ出口を開いてもよい。
【0039】
説明される実施形態においては、一般に、プランジャーが薬物容器内を注射部位に対して移動し、薬物容器から薬物を送達する。しかしながら、代替例として、プランジャーが注射部位に対して固定され、薬物容器がプランジャーに対して移動し、薬物容器から薬物を送達してもよい。
【0040】
第1の解放メカニズムは皮膚接触要素に第1の係止面を有してもよく、第1の係止面は初期位置において針ハブと主筐体または薬物容器アセンブリとの間での相対移動を制限する。本装置は、皮膚接触要素と筐体また薬物容器アセンブリとの間に付勢要素をさらに備えてもよく、付勢要素は皮膚接触要素を近位方向に付勢する。薬物の送達と装置の注射部位からの取り外しの後、付勢要素は皮膚接触要素を近位側に針を覆う最終位置へと付勢してもよい。
【0041】
薬物を加圧し、その後出口を開封して薬物を送達することにより、通常、より静かな送達メカニズムがもたらされ、これはエンドユーザにとって望ましい。また、これにより、装置のより簡単な初期段階の始動、装置後部の駆動メカニズムとリンクする必要のない針挿入メカニズムおよび出口開封メカニズムが可能となる。これにより、より小さく、より安価な薬物送達装置を製造することができる。
【0042】
第2の様態においては、薬物送達装置であって、使用時に保持されるよう構成される外筐体部と、薬物を収容する薬物収容部とを含む筐体と、針ハブに固定された針であって、針ハブは、針が、筐体内の初期位置から筐体を超えて伸びる挿入位置へ、薬物収容部に対して移動するよう構成される、針を含む針アセンブリと、針ハブを初期位置から挿入位置へ移動させるよう構成される第1の蓄積エネルギー源と、筐体内に設けられ、針が挿入位置にあるとき、薬物収容部に対して移動し薬物を針から放出するよう構成されるプランジャーとを備える、薬物送達装置を提供する。
【0043】
薬物収容部は、外筐体部と一体的であってもよく、また外筐体部に対して固定されていてもよい。本薬物送達装置は自己注射器であってもよい。
【0044】
本装置は、プランジャーを薬物収容部内で移動させるよう構成される第2の蓄積エネルギー源をさらに備えてもよい。針ハブの初期位置から挿入位置への移動により、第2の蓄積エネルギー源の解放を始動させてもよい。
【0045】
また、第1の蓄積エネルギー源は、針挿入と針からの薬物放出の双方の動力を与えてもよい。この場合、針ハブは、針ハブに作用する薬物の圧力によって初期位置から挿入位置へ動いてもよい。
【0046】
筐体は皮膚接触要素を含んでもよく、皮膚接触要素は、第1の蓄積エネルギー源を解放するため、または第1の蓄積エネルギー源の解放をアンロックするため、外筐体部に対して移動することが可能である。
【0047】
本装置は、薬物収容部に固定されて針のシャフト周りに配置される封止要素をさらに備えてもよく、封止要素は、針が初期位置から挿入位置へ移動する際に、針のシャフト周りの流体密封封止を維持する。
【0048】
薬物収容部は第1の端部と第2の端部とを有してもよく、プランジャーは第1の端部から第2の端部へ移動して薬物を放出し、針ハブは薬物収容部の第1の端部および第2の端部の間に延在する。針は、初期位置では薬物と流体連結していなくてもよい。
【0049】
針ハブおよびプランジャーは異なる軸に沿って移動してもよい。
【0050】
針は、患者に挿入する近位端と、薬物を受ける遠位端とを有してもよく、装置は、針に固定されて針ハブが初期位置にあるときは薬物収容部を封止するよう構成される封止要素をさらに備えてもよく、針ハブは、針の遠位端の周囲に位置する入口部を有してもよく、入口部は、針ハブが挿入位置にあるとき、薬物収容部と針の遠位端の間の流体連結をもたらす。
【0051】
第3の様態においては、薬物送達装置であって、筐体と、薬物を収容する薬物容器と、針ハブに固定された針であって、針ハブは、針が、筐体内の初期位置から筐体を超えて伸びる挿入位置へ、薬物収容部に対して第1の軸に沿って移動するよう構成される、針を含む針アセンブリと、針ハブを初期位置から挿入位置へ移動させるよう構成される第1の蓄積エネルギー源と、筐体内に設けられ、針が挿入位置にあるとき、薬物収容部内を第2の軸に沿って移動し薬物を針から放出するよう構成されるプランジャーと、を備え、第1の軸および第2の軸が同軸ではない、薬物送達装置を提供する。
【0052】
第4の様態においては、薬物送達装置であって、筐体と、薬物を収容する薬物容器と、針ハブに固定された針であって、針ハブは、針が、筐体内の初期位置から筐体を超えて伸びる挿入位置へ、薬物収容部に対して移動するよう構成される、針を含む針アセンブリと、針ハブを初期位置から挿入位置へ移動させるよう構成される第1の蓄積エネルギー源と、筐体内に設けられ、針が挿入位置にあるとき、薬物収容部内を移動し薬物を針から放出するよう構成されるプランジャーと、プランジャーを薬物収容部内で移動させて薬物を放出するよう構成される第2の蓄積エネルギー源と、を備え、針アセンブリの初期位置から挿入位置への移動により、第2の蓄積エネルギー源を解放してプランジャーを移動させる、薬物送達装置を提供する。
【0053】
本装置は、使用時に注射部位に接触して第1の位置から第2の位置へ移動可能なように構成される皮膚接触要素をさらに備えてもよく、皮膚接触要素の第1の位置から第2の位置への移動により第1の蓄積エネルギー源を解放する。
【0054】
本装置は、針を覆うよう構成される針安全メカニズムをさらに備えてもよく、針安全メカニズムはロック位置にあり、針アセンブリの初期位置から挿入位置への移動またはプランジャーの薬物収容部内での移動により、針安全メカニズムをロック位置から解放する。
【0055】
本発明の第5の様態においては、薬物送達装置であって、使用時に保持されるよう構成される外筐体部と、薬物を収容する薬物収容部と、薬物収容部内に設けられたプランジャーとを含む筐体であって、薬物収容部は、薬物の投与のための出口を有し、初期位置においては出口が封止されている、筐体と、針ハブに固定された針であって、針ハブは、針が、筐体内の初期位置から筐体を超えて伸びる挿入位置へ、薬物収容部に対して移動するよう構成される、針を含む針アセンブリと、プランジャーまたは薬物容器に圧力を加えて薬物を加圧するよう構成される蓄積エネルギー源を備える駆動メカニズムと、薬物が加圧された後に、針ハブを動かし、出口を開封するよう構成される第1の解放メカニズムとを備える、薬物送達装置を提供する。
【0056】
本発明のさらに別の様態において、蓄積エネルギー源またはその他の動力源の解放メカニズムであって、ライブヒンジ(live hinge)を備え、ライブヒンジは折り畳み状態で蓄積エネルギー源を保持し、拡張して蓄積エネルギー源を解放することができる、解放メカニズムを提供する。ライブヒンジは、ギアリングメカニズム(gearing mechanism)として効果的に作用し、蓄積エネルギー源の保持に必要な力を低減する。この解放メカニズムを、薬物送達装置に設けてもよい。ライブヒンジをこのように使用することにより、効果的かつ低コストに強い力を保持する手段が提供される。
【0057】
本発明のある様態との関連で説明される本発明の特徴は、本発明の別の様態に適用することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる薬物送達装置の模式的断面図である。
【
図2a】
図2aは、使用前の
図1の装置を示す模式図であり、第1のサブアセンブリに第2のサブアセンブリがねじ止めされて薬物容器内の薬物を加圧している様子を示す図である。
【
図3】
図3は、キャップを取り外した状態の
図2の装置を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の装置の断面斜視図であり、皮膚接触要素が皮膚接触要素バネの遠位側に動かされた様子を示す図である。
【
図5】
図5は、針挿入メカニズムが展開された状態の
図4の装置を示す図である。
【
図6】
図6は、プランジャーが薬物容器内を近位側に移動して針から薬物を送達する状態の
図5の装置を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の装置を示す図であり、薬物送達の後、皮膚接触要素が皮膚接触要素バネによって前方に付勢されて針を覆う様子を示す図である。
【
図8】
図8は、第2のサブアセンブリを取り外した状態の
図7の装置を示す図である。
【
図9】
図9は、針挿入メカニズムの斜視断面図であり、筐体および皮膚接触要素バネを取り外した様子を示す図である。
【
図11】
図11は、使用前の本発明の第2の実施形態の断面図である。
【
図12】
図12は、使用前の本発明の第2の実施形態の第2の断面を示す図であり、
図11の断面に垂直な断面図である。
【
図14】
図14は、キャップ132が前筐体からねじを回して取り外された状態の
図11の装置を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14の装置を示す図であり、針が、この針が皮膚接触要素を超えて伸びる挿入位置へ、前進した様子を示す図である。
【
図21】
図21は、薬物容器の前端部と保持部品とを示す断面図である。
【
図22】
図22は、第3の実施形態の斜視図であり、外装パッケージの内部を示す図である。
【
図23b】
図23bは、わかりやすくするために装置の筐体が取り外された状態の
図23aのパッケージおよび装置を示す図である。
【
図24】
図24は、
図23bの装置であり、駆動メカニズムが前進して薬物を加圧している様子を示す図である。
【
図27】
図27は、筐体が外された状態の装置を示す図であり、皮膚接触要素が後退する前の様子を示す図である。
【
図29】
図29は、針が挿入位置にある状態の装置の前方部分を示す図である。
【
図30】
図30は、針が挿入位置にある状態の装置を示す図である。
【
図31】
図31は、プランジャーが前進して針から薬物を送達する状態の装置を示す図である。
【
図32】
図32は、皮膚接触要素が前進して使用後の針を覆った状態の装置を示す図である。
【
図33】
図33は、使用前の本発明の第4の実施形態の断面図である。
【
図39】
図39は、
図38の装置を示す図であり、皮膚接触要素が前方に付勢されて針を覆う様子を示す図である。
【
図43】
図43は、ピストンが第2の駆動バネにより薬物収容部内を移動した後の
図42の装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる薬物送達装置の模式的断面図である。本装置は、薬物容器14および針挿入メカニズムを有する第1のサブアセンブリ10と、再利用可能なパワーパックを含む第2のサブアセンブリ12とを備える。第1のサブアセンブリは、薬物16を収容する薬物容器14と、この薬物容器内のプランジャー18と、針22をしっかりと保持する針ハブ20と、薬物容器と針ハブとの間に位置する針挿入バネ24とを備える。薬物容器は、第1の封止部材26により封止された出口を有し、この出口を針22が通る。第1の封止部材26は、薬物容器の丸い突出物が第1の封止部材の対応するくぼみに嵌ることで、薬物容器にしっかりと保持されている。針の遠位端は、第2の封止部材28により封止される。薬物16は、第2の封止部材28を通って第1の封止部材と第2の封止部材との間の空間を満たす。針シールド30が針の近位端を覆っている。針シールドは、キャップ32に連結されてキャップと共に外れるようになっている。キャップは筐体34に連結され、この筐体が薬物容器を保持する。
【0060】
以下に説明するように、皮膚接触要素35は、皮膚接触要素が注射部位に押し付けられたときに針挿入バネ24を開放可能とするため、また使用後の針を覆うために設けられている。皮膚接触要素は、皮膚接触要素バネ36によって近位位置に付勢される。
【0061】
第2のサブアセンブリ12は、押し込みロッド44と、送達バネ42と、パワーパック筐体40とを備える。パワーパック筐体40は、
図2に示すように筐体10に形成された雌ねじ38に嵌る雄ねじ46を有する。送達バネは、パワーパック筐体と押し込みロッドの間に位置する。保持シャフト45が設けられて、押し込みロッドを第2のサブアセンブリの残りの部分に保持する。
【0062】
図2aは、使用前の
図1の装置を示す模式図であり、第1のサブアセンブリに第2のサブアセンブリがねじ止めされて薬物容器内の薬物を加圧している様子を示す図である。第1のサブアセンブリに第2のサブアセンブリがねじ止めされると、押し込みロッド44がプランジャー18にあたり、送達バネが圧縮して薬物を加圧する。第1の封止部材および第2の封止部材は、送達バネが伸びて薬物を薬物容器の外に出るのを防止する。
図2bは、使用前の
図2aの装置の斜視図である。
【0063】
図3~
図7に、
図1および
図2に示す装置の動作シーケンスを示す。
図3は、キャップを取り外した状態の
図2の装置を示す図である。キャップ32を筐体から取り外すと、針シールド30も合わせて取り除かれる。
【0064】
図4は、
図3の装置の断面斜視図であり、注射側に押し付けられたときのように、皮膚接触要素35が皮膚接触要素バネ36の遠位側に動かされた様子を示す図である。これにより針挿入メカニズムが開放されて、針22が挿入位置に向って前進する。
【0065】
図9は、針挿入メカニズムの斜視断面図であり、筐体および皮膚接触要素バネを取り外した様子を示す図である。針ハブ20は、針に固定された中心部20aと、中心部20aを中心に自由に回転する回転部20bとを備える。初期位置では、針ハブは、回転部の羽根23が筐体(不図示)と係合していることにより、前進運動が抑制されている。回転部20bは、羽根23が皮膚接触要素のフランジと係合していることにより、回転が抑制されている。注射部位に押しあてることによって皮膚接触要素が後退すると、回転部の羽根がフランジから外れて筐体内に形成される流路(channels)で回転できるようになる。そして、針ハブが挿入位置へ前進できるようになる。
図10は、針ハブおよび針の斜視図である。
【0066】
図5は、針挿入メカニズムが展開されて針が挿入位置にある状態の
図4の装置を示す図である。この位置では、針ハブ20の針挿入バネ24の作用により針22の遠位端が第2の封止部材28から外れて、薬物が針の遠位端に入って注射部位へ通ることができる。そして、プランジャーが、送達バネ42によって近位方向に付勢される。針22は第1の封止部材26を通るが、薬物が針から漏れないようにするために、針と第1の封止部材の間の封止は維持される。
【0067】
図5に示す位置では、薬物が針20から注射部位に出て、圧縮バネ42が伸び、押し込みロッドを押し進めることができるようになる。
図6は、プランジャー18が押し込みロッド44により薬物容器14内を近位側に移動して、針22から薬物を送達する状態の
図5の装置を示す図である。
【0068】
そして、装置が注射部位から取り除かれ、皮膚接触要素35が皮膚接触要素バネ36によって前方に付勢されて針22を覆う。
図7は、皮膚接触要素35が最終的な前進位置にある
図6の装置を示す図である。皮膚接触要素35は、筐体34の係止面に当接する皮膚接触要素のロッキングアームの係合により、遠位側に移動して針を露出することができなくなる。
【0069】
使用後は、第2のサブアセンブリは第1のサブアセンブリからねじを回して取り外され、新しい第1のサブアセンブリと共に使用できるようになる。
図8は、第2のサブアセンブリを取り外した状態の
図7の装置を示す図である。本例における第1のサブアセンブリは、使い捨ての消耗品であり、使用後は安全に破棄することができる。
【0070】
図11は、使用前の本発明の第2の実施形態の断面図である。
図11に示す実施形態において、装置は、薬物容器内の薬物の圧力によって駆動される針挿入メカニズムを含む。
【0071】
図11の装置100は、液剤または溶液の薬物116を収容する薬物容器114と、薬物容器内に設けられたプランジャー118とを有する、薬物容器アセンブリを備える。薬物容器の出口は、封止部材126と針ハブ120によって封止されている。封止部材は、針ハブ120と薬物容器114の間で圧縮される環状の弾性封止部材である。
【0072】
針ハブ120は、皮下注射針122を保持する。針の遠位または後端部は、針ハブのキャビティ123内に位置し、以下に説明するように、薬物が針に入ることができるようにする。針122の近位または前端部は、使用時には注射部位に刺さる。針の前端部を覆うよう針シールド130が設けられ、使用前の針を無菌状態に保つ。
【0073】
薬物容器アセンブリは、前筐体134内に保持される。駆動メカニズムは、前筐体にスナップ式接続で機械的に連結された後筐体140内に保持される。駆動メカニズムは、圧縮バネ142と押し込みロッド144とを備える。圧縮バネは、押し込みロッド144と後筐体140の間に圧縮状態で保持される。柔軟なヒンジメカニズム146に当接することで、押し込みロッド144の前進が防止される。柔軟なヒンジメカニズムは、薬物容器114の後端部に当接する。
図19は、後筐体の斜視図であり、圧縮バネ142を圧縮状態でプランジャー118から離れた状態に維持するために用いられる柔軟なヒンジ146をより明確に示す。薬物容器114は、前筐体134にねじ止めされたキャップ132に当接することで、前進運動が防止される。
【0074】
図12は、本発明の第2の実施形態の第2の断面を示す図であり、
図11の断面に垂直な断面図である。
図12に見られるように、針ハブ120は、その後方端部に流路121を含む。
【0075】
針ハブ120は、薬物容器の一部分として形成される保持アーム137に当接することで、前進運動が防止される。保持アームはカンチレバーアームであり、内方向にたわんで、保持アームと皮膚接触要素135の間に位置する保持部品138によって針ハブ120と係合する。
【0076】
皮膚接触要素バネ136は、皮膚接触要素135と保持部品138の間に位置して、皮膚接触要素を前進位置に付勢する。
【0077】
図13は、
図11および
図12に示す装置の斜視図である。前筐体が、薬物を調べることができる窓部115を含むことがわかる。
【0078】
図14は、キャップ132が前筐体からねじを回して取り外された状態の
図11の装置を示す図である。キャップは、キャップが筐体からねじを回して取り外されると針シールド130を一緒に取り去るように、針シールド130を把持する。針シールド130は、本体と一体的に形成されるが、リング状の弱い部分により所望の方法で壊れるようになっている。
【0079】
また、キャップ132を取り外すことにより、薬物容器114が、その前面が前筐体の内部に形成された突起133に当たるまで、前筐体134内を前進することができる。これは、
図14に示すように、ヒンジメカニズム146が拡張でき、押し込みロッドがプランジャーの背面に接触するまで圧縮バネ142が伸長可能となることを意味する。そして、出口が針ハブ120により封止されたままであるため、圧縮バネ142は薬物116を加圧するよう作用する。針ハブ120は、皮膚接触要素135が注射部位に押し付けられるまで、前進運動が防止される。
【0080】
スキンセンサーは、注射部位に押し付けられると、保持部品138に対して後退する。これにより、保持部品138は、皮膚接触要素バネ136の作用により、解放されて薬物容器の保持アーム137に対して回転する。保持部品の回転により、保持アームが保持部品の窓に解放され、その後針ハブが挿入位置へ前進運動するよう解放される。
図20は、薬物容器114の前端部の斜視図であり、保持アーム137を示す図である。
図21は、薬物容器の前端部から保持部品138への断面図であり、保持アーム137が保持部品138によって針ハブに押し付けられている様子を示す図である。
【0081】
図15は、
図14の装置を示す図であり、針が皮膚接触要素を超えて伸びる挿入位置へ、針が前進した様子を示す図である。
図16は、
図15の断面に垂直な断面図である。針ハブは、針ハブの前端部が薬物容器の前端部のストッパーと係合する位置まで押し進められており、流路121が封止部材内に延びて出口を開封し、薬物が針ハブの外周りの封止部材から針の遠位端へと通ることができるようになっている。そして、圧縮バネが拡張可能となり、薬物を薬物容器から針を経由して注射部位へと押し出す。
【0082】
図17は、圧縮バネが拡張した状態でプランジャーが完全に前進位置にある状態の
図15の装置を示す図である。この時点で、薬物は注射部位に送達されている。
【0083】
図18は、注射部位から引き抜かれた状態の
図17の装置を示す図である。皮膚接触要素バネは、装置を廃棄する際の針刺し損傷の可能性を低減するため、皮膚接触要素を前に付勢して針を覆う。
【0084】
図22は、外装パッケージ内に薬物送達装置を備える第3の実施形態の斜視図である。パッケージ200は、二つ折りタイプのパッケージである。
図23aは、開放位置で薬物送達装置が見える状態の
図22のパッケージを示す図である。パッケージ200は、パッケージを閉じたときに装置210の開口部211に嵌る内部フィンガー201を含むことがわかる。
【0085】
図23bは、わかりやすくするためにパッケージおよび装置の筐体が取り外された状態の
図23aの装置を示す図である。装置は、それぞれ同じ皮下注射針に薬物を供給する2個の分離した薬物容器を備える。各薬物容器は、関連した駆動メカニズムを有している。各薬物容器内の薬物は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0086】
駆動メカニズムは、装置の後筐体240とプッシャー要素242の中心梁の間に位置する2個の圧縮バネ244を備える。パッケージを閉じると、フィンガー201がプッシャー242の正面側の面に係合して、圧縮バネの影響で前進するのを防止する。
【0087】
図23bから、装置が前筐体234と後筐体240とを備えることがわかる。前筐体234は、それぞれ薬物を収容する2個の薬物容器214を含む。それぞれの薬物容器は、WO2010/094916に記載される種類の、カップシールタイプのプランジャー218を収容し、後端部がホイル219で封止される。
【0088】
また、前筐体は、2個の薬物収容部の間に針アセンブリを備える。針アセンブリは、針ハブ220に固定された皮下注射針222を含む。針挿入バネ226は、後筐体と針プッシャー228の間の後筐体内に設けられて、針を注射部位に前進させるものである。針プッシャーは、最初は、ボタン要素230によって、針ハブ220との接触が抑制されている。
【0089】
針222の前方端部は、針カバー231によって覆われ、使用前には無菌状態を保つ。針カバー231は、キャップ232と係合する。
【0090】
図24は、
図23bの装置であり、プッシャー要素242が前進して薬物を加圧している様子を示す図である。パッケージが開いてプッシャー要素がフィンガー201から解放されると、プッシャーが前進し、ホイルシール219を破り、プランジャー218に接触する。薬物は薬物容器の封止が前方端部で開封されるまで薬物容器から出られないため、プランジャーがプッシャーを留める。
【0091】
薬物容器は、最初は、分離封止部材215によって封止されている。分離封止部材215は、出口管217を封止する弾性封止部材である。管217の反対側の端部は、針222を囲む第1の封止要素224によって封止されている。
【0092】
プッシャー要素がプランジャー218に接触すると、分離封止部材にかかる薬物からの圧力により、分離封止部材の管217との封止係合が外れ、薬物が管を通ることができるようになる。薬物は、供給管を通って分離封止部材の正面に接触し、分離封止部材を管217から離れる方向に付勢する。この位置を、
図25に詳細に示す。
【0093】
外部パッケージから装置を取り外した後、ユーザによってキャップが取り外される。針カバー231も、キャップと一緒に取り外される。これを、
図26に示す。
【0094】
筐体は、付勢バネ(不図示)によって近位位置に付勢される皮膚接触要素235を含む。付勢バネは、皮膚接触要素と薬物容器の一部の間に保持される。動作の際、皮膚接触要素235は注射部位に押し付けられ、付勢バネと逆の方向の前筐体に対して遠位側に動く。
【0095】
皮膚接触要素を注射部位に押し付ける動作により、針挿入メカニズムを動作可能とするボタン230が開放される。
図27は、筐体が外された状態の装置を示す図であり、皮膚接触要素235が後退する前の様子を示す図である。皮膚接触要素235の一部により、ボタン230が押されないようになっていることがわかる。
【0096】
図28は、ボタン230がユーザにより押すことができるようスキンセンサーの開口部と揃う位置まで後退した状態の皮膚接触要素を示す図である。この位置では、針挿入を始動させるため、ユーザがボタン230を押す。これにより、針プッシャー228が解放されて前進し針ハブ220と係合する。針挿入バネ226は、針ハブを
図30に示す位置まで前に押す。この位置では、第1の封止要素224は針ハブによって前に押されており、針ハブの管は管217と揃っている。これを、
図29に詳細に示す。こうして、薬物容器内の薬物は、注射部位まで針の後端部を通ることができる。
【0097】
図31は、圧縮バネ244の拡張によりプランジャー218が薬物収容部内を移動した後の装置を示す図である。薬物は、管217を経由して針222から注射部位へと押し出される。
【0098】
図32は、注射部位から取り除かれた状態の装置を示す図である。皮膚接触要素235は、付勢バネの作用により近位位置へ移動して針222を覆う。これにより、皮膚接触要素は、装置使用後の針刺し損傷を防止する針カバーとなる。
【0099】
図22~
図32を参照して説明した第3の実施形態において、プランジャーは針挿入方向に平行に移動する。しかしながら、これは必ずしも必要ではない。薬物容器を、プランジャーが針挿入方向にある角度をなして移動するように配置してもよい。例えば、薬物容器は、プランジャーが針挿入方向に垂直方向に移動するように配置されてもよい。
【0100】
図22~
図32を参照して説明した第3の実施形態においては、2個の薬物収容部がある。しかしながら、2個以上の薬物収容部を有することもできる。また、環状の断面を有し、針アセンブリ保持部を囲み、1個の環状プランジャーと1個の環状駆動バネとを有する薬物収容部を設けることもできる。
【0101】
以上、説明した実施形態は、いずれも自動針挿入メカニズムを含む。しかしながら、本発明にかかる装置を手動針挿入メカニズムを有するものとして構成することもできる。手動針挿入メカニズムでは、装置を針を挿入する注射部位に押し付けるのはユーザの動作である。皮膚接触要素が引き戻されて針を露出させる。皮膚接触要素は、針ハブと相互に作用して、針が完全に挿入位置に到達すると薬物容器の出口を開封するようにしてもよい。例えば、スキンセンサーのカム面が、針ハブのカム面を押して回転させて出口を開くようにしてもよい。針ハブは、針自体が回転しないよう構成されてもよい。針ハブの要素は、針に対して自由に回転するよう設けることができる。
【0102】
図33は、使用前の本発明の第4の実施形態の断面図である。第4の実施形態において、針挿入メカニズムは薬物の圧力によって駆動される。
図34は、
図34の斜視断面図である。
【0103】
図33および
図34に示す装置は、薬物316を収容する薬物容器314を備える。本実施形態における薬物容器はガラス製のバイアルであるが、任意の適切な材料から形成されてもよい。薬物容器314は、前端部または後端部から充填することができ、後端部はストッパー315により封止される。前出口はプランジャー318により封止される。プランジャー318は、弾性材料から形成され、シャーシ346に固定される。針アセンブリは、薬物容器の前方に配置され、針ハブ320に保持された皮下注射針322を備える。針ハブは、概ね管状の針シャトル324の内部に保持される。針ハブ320の後端部は、シャトル324の内部と合わせてカップシールを形成する。
【0104】
駆動アセンブリは、装置の後筐体334とプッシャー要素344との間に保持された1対の圧縮バネ342を備え、装置の後部に位置する。駆動アセンブリは、プッシャー要素344を前方方向に付勢する。プッシャー要素は、薬物容器314の後部に係合して、薬物容器を前方方向に付勢する。プッシャー要素および圧縮バネを、
図35の斜視図に示す。
図33に示す初期位置において、薬物容器は薬物とプランジャー318によって固定して保持される。薬物が薬物容器から出ることができるときにのみ、薬物容器は前方に移動できる。
【0105】
皮膚接触要素335は、装置の前端部の前筐体336内に設けられる。前筐体336は、シャーシ346および後筐体334に固定される。皮膚接触要素335は、付勢バネ(明確さのために図示しない)によって前進位置に付勢される。最初、皮膚接触要素335は、前筐体に当たって付勢バネの拡張を防止する。
【0106】
装置を動作させるため、皮膚接触要素335は付勢バネの作用に反して注射部位に押し付けられる。これにより、
図36に示すように、皮膚接触要素が後退してシャトル324に接触し、シャトルが後退するよう駆動する。シャトルは、その後方端部に形成される中空の貫通要素326を有する。皮膚接触要素によってシャトルが後ろ方向に駆動されると、貫通要素がプランジャー318を突き刺す。これにより、薬物が貫通要素を経由して出ることができ、針ハブ320の後部に接触する。
【0107】
針ハブに対する薬物の圧力は、シャトル324の内部で針ハブ320と針322を前方に駆動する。針ハブとシャトルの内部とが合わさって形成される封止は、薬物の圧力によって活性化されているが、薬物が針から外に出ないようにしている。
図37に示すように、これにより針が挿入位置に駆動される。
【0108】
シャトルの内部の前方端部には、後端部よりも径の大きな部分がある。これは、針ハブ320が挿入位置に到達すると薬物316がシャトル324の内部と針ハブ320との間を通ることができることを意味する。針ハブは、針322の後端部を露出する開口部を含む。結果として、薬物は、針322の後端部、そして注射部位へと通ることができる。針ハブ320の前端部は、薬物が針のみを経由して外に出ることになるように、シャトル324の前端部と合わせて封止を形成する。薬物が針322を通ると、
図38に示すように、薬物容器は駆動アセンブリによって停止位置まで前方に付勢される。停止位置は、プッシャー要素344がシャーシ346に接触するポイントにより規定される。プッシャー要素344のシャーシ346に対する衝撃は、薬物送達完了を音で知らせる。
【0109】
薬物送達完了後、装置を注射部位から取り除くことができる。その後、付勢バネの影響で皮膚接触要素335が前進移動することができ、
図39に示すように針322を覆う。
【0110】
図40は、本発明の第5の実施形態の断面図である。第5の実施形態において、針および針挿入メカニズムは、上記の第3の実施形態のように薬物容器および薬物放出メカニズムに隣接して位置する。ただし、薬物は、針挿入前には加圧されていない。かわりに、針挿入が完了した後に、はじめて、プランジャーがピストンにより作用する。
【0111】
図40に示す装置は、前筐体416aと、後筐体416bとを備える。前筐体416aは、薬物を収容する薬物収容部410を含む。また、前筐体は、針アセンブリ保持部411を含む。針アセンブリは、針収容部411内にあり、針ハブ424に固定された皮下注射針412を含む。第1の駆動バネ426は、筐体内で針を前進させて患者に刺さるよう設けられている。第2の駆動バネ430は、薬物収容部内でピストン432を駆動し、プランジャー434を押してその後薬物を放出するよう設けられている。以下に説明するように、薬物は、前筐体に形成された管415から針ハブの開口部まで通り、その後、針を経由して患者に入る。
【0112】
図40に示すように、使用前の初期位置においては、封止要素422は、針412の周囲に位置して管415を封止し、薬物が薬物収容部の内部にとどまるようにする。プランジャー434は、薬物収容部の遠位端を封止する。
【0113】
筐体は、付勢バネ420によって近位位置に付勢される皮膚接触要素418を含む。付勢バネは、皮膚接触要素と後筐体416bの一部の間に保持される。動作の際、皮膚接触要素418は注射部位に押し付けられ、付勢バネ420に抗して前筐体416aに対して遠位側に動く。前筐体416aは、針ハブ424の切り欠き419と係合する係合フィンガー(不図示)を含み、針ハブが第1の駆動バネ426の影響で前進するのを抑制する。係合フィンガーは、皮膚接触要素418により、針ハブの切り欠きから外れないようになっている。ただし、皮膚接触要素418は開口部またはキャビティ(不図示)を含み、この開口部またはキャビティは、皮膚接触要素が前筐体に対して遠位側に動いたとき、開口部が係合フィンガーと揃って係合フィンガーが針ハブの切り欠きから外れるように配置される。この位置を、
図41に示す。
【0114】
その後、針ハブは、前筐体416aと第1の駆動バネに対して自由に前進できるようになる。
図42は、挿入位置にある針422を示す図である。針ハブ424は、第1の駆動バネ426によって前方に駆動されており、前筐体416aで封止要素422を前方に押している。別の実施形態では、封止要素422は針ハブに固定される。
図42に示す位置では、前筐体と封止要素422によって、針ハブがさらに前進運動することが防止される。この位置では、針の遠位端の周囲の針ハブの開口部は、針の遠位端が薬物収容部410と流体連結するように、管415と揃っている。
【0115】
針ハブ424の初期位置から挿入位置への運動により、ピストン432と後筐体416bの間に保持される第2の駆動バネ430が解放される。ピストンは、初期位置においては、同じく針ハブと係合するロック部材428によって近位方向への運動ができないようになっている。針ハブが初期位置から外れることによって、第2の駆動バネによりロック部材428がピストンから外せるようになる。そして、ピストンは、薬物収容部の内部を近位方向へ自由に移動できるようになる。
【0116】
図43は、ピストン432が第2の駆動バネ430により薬物収容部内を移動した後の第5の実施形態を示す図である。薬物は、管115を経由して針412から押し出され、患者に到達する。
【0117】
図44は、注射部位から取り除かれた状態の装置を示す図である。皮膚接触要素418は、付勢バネ420の作用により近位位置へ移動して針412を覆う。皮膚接触要素418の一部が針ハブ424と係合することにより、皮膚接触要素418がさらに近位方向への運動することが防止される。これにより、皮膚接触要素は、装置使用後の針刺し損傷を防止する針カバーとなる。