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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】誤り検出装置および誤り検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/0823 20220101AFI20240208BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   G06F 11/32 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04L43/0823
H04L1/00 A
G06F11/32 140
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021166870
(22)【出願日】2021-10-11
(65)【公開番号】P2023057371
(43)【公開日】2023-04-21
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】砂山 諒
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-087216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/0823
H04L 1/00
G06F 11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物(W)との間の通信規格に基づくハンドシェイクにより前記被測定物を信号折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データの誤りを検出する誤り検出装置(1)であって、
前記通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件とを含む全体のステート遷移のフローをグラフィカル表示によるステート遷移設定画面(11)として表示する操作表示部(6)と、
前記被測定物との間のハンドシェイク終了時に全体のステートにおいて最も先までハンドシェイクの失敗がなく遷移できたステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを前記ステート遷移設定画面に強調表示するように前記操作表示部を制御する表示制御手段(8a)と、を備えたことを特徴とする誤り検出装置。
【請求項2】
前記失敗したステート遷移条件とその直前のステート遷移条件とを所定の設定幅で自動調整する遷移条件調整手段(8b)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の誤り検出装置。
【請求項3】
被測定物(W)との間の通信規格に基づくハンドシェイクにより前記被測定物を信号折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データの誤りを検出する誤り検出方法であって、
前記通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件とを含む全体のステート遷移のフローをグラフィカル表示によるステート遷移設定画面(11)として表示するステップと、
前記被測定物との間のハンドシェイク終了時に全体のステートにおいて最も先までハンドシェイクの失敗がなく遷移できたステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを前記ステート遷移設定画面に強調表示するステップと、を含むことを特徴とする誤り検出方法。
【請求項4】
前記失敗したステート遷移条件とその直前のステート遷移条件とを所定の設定幅で自動調整するステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の誤り検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物との間の通信規格に基づくハンドシェイクにより被測定物を信号折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンをテスト信号として被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信する入力データの誤りを検出する誤り検出装置および誤り検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばPCI Express,USBを始めとするハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus )の通信規格において、被測定物としてレシーバのテストを行う際には、レシーバをテスト専用の信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移させるハンドシェイクを実行した後、テスト用の既知パターンを入力し、折り返された信号の誤り率を確認する手法が一般的である。
【0003】
ところで、被測定物を信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移させる際、被測定物の信号を解析して実際のハイスピードシリアルバス規格に基づくハンドシェイクを行いステート遷移させるハンドシェイク型の手法が公知である。このハンドシェイク型の手法としては、例えば下記特許文献1に開示されるように、リンク状態管理部からの指示により生成されたトレーニングパターンを被測定物に送信することで被測定物のLTSSMのリンク状態をループバックに遷移させるものが知られている。
【0004】
このハンドシェイク型の手法において便利なのが、完了したハンドシェイクのログを表示する機能であり、ステート遷移中、各ステートに滞在した時間をロギングして表示する方法が一般的である。そして、検証中の被測定物がステート遷移に失敗した場合には、このログの情報から問題の起こったステートを推測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-098615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したハンドシェイクのログを表示する方法では、ハンドシェイク失敗時に繰り返しステート遷移を繰り返すために、ログが冗長になり、失敗の原因の追究が難しいという問題がある。また、単純なステートと滞在時間の羅列で構成されるログを見て、何故ステート遷移が失敗したのか、どのステート遷移条件が満たせずハンドシェイクが失敗したのかの理由を解析するためには、非常に深い通信規格への理解が必要であった。しかも、このハンドシェイクが失敗したステート遷移条件を調整するためには、通信規格への深い理解と経験が必要になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、ハンドシェイク失敗の理由を直感的に特定することができる誤り検出装置および誤り検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り検出装置は、被測定物Wとの間の通信規格に基づくハンドシェイクにより前記被測定物を信号折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データの誤りを検出する誤り検出装置1であって、
前記通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件とを含む全体のステート遷移のフローをグラフィカル表示によるステート遷移設定画面11として表示する操作表示部6と、
前記被測定物との間のハンドシェイク終了時に全体のステートにおいて最も先までハンドシェイクの失敗がなく遷移できたステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを前記ステート遷移設定画面に強調表示するように前記操作表示部を制御する表示制御手段8aと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載された誤り検出装置は、請求項1の誤り検出装置において、
前記失敗したステート遷移条件とその直前のステート遷移条件とを所定の設定幅で自動調整する遷移条件調整手段8bを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載された誤り検出方法は、被測定物Wとの間の通信規格に基づくハンドシェイクにより前記被測定物を信号折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データの誤りを検出する誤り検出方法であって、
前記通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件とを含む全体のステート遷移のフローをグラフィカル表示によるステート遷移設定画面11として表示するステップと、
前記被測定物との間のハンドシェイク終了時に全体のステートにおいて最も先までハンドシェイクの失敗がなく遷移できたステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを前記ステート遷移設定画面に強調表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載された誤り検出方法は、請求項3の誤り検出方法において、
前記失敗したステート遷移条件とその直前のステート遷移条件とを所定の設定幅で自動調整するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強調表示された内容からハンドシェイク失敗の理由を直感的に特定することができる。また、ハンドシェイク失敗時に特別な知識がなくても成功するハンドシェイクの設定を自動で行い、ユーザの通信規格への理解の程度によらず高度なデバッグを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る誤り検出装置のブロック構成図である。
図2】本発明に係る誤り検出装置においてPolling.LFPSのステートでハンドシェイクが失敗したときのステート遷移設定画面を示す図である。
図3】本発明に係る誤り検出装置においてPolling.Activeのステートでハンドシェイクが失敗したときのステート遷移設定画面を示す図である。
図4】本発明に係る誤り検出装置においてハンドシェイクが失敗したステート遷移条件を自動調整してハンドシェイクが成功したときのステート遷移設定画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明は、例えばPCI Express,USBなどのハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus )の通信規格において、リンク状態を管理するリンク状態管理機構としてリンク・トレーニング・ステータス・ステート・マシン(LTSSM:Link Training &Status State Machine)を搭載したデバイスを被測定物とし、被測定物との間の通信規格に基づくハンドシェイクにより被測定物を信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移させるハンドシェイク型の手法を用いた誤り検出装置および誤り検出方法に関するものである。なお、LTSSMは、物理層の中に存在し、物理層が受信した信号を見て遷移するものである。
【0016】
そして、本発明に係る誤り検出装置および誤り検出方法では、信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移させた状態の測定モード時に既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信する入力データのビット誤りを検出している。
【0017】
本実施の形態の誤り検出装置1の検出対象となる被測定物Wは、リンク状態を管理するLTSSM(Wa)を搭載しており、誤り検出前(誤り測定前)の通信規格に基づくハンドシェイクを行うトレーニングモード時に、不図示のテスト治具を介して誤り検出装置1と接続し、この接続を検知してLFPS信号の送信を開始する。
【0018】
なお、不図示のテスト治具は、誤り検出装置1の信号出力部のインターフェースと被測定物Wの信号受信部のインターフェースが異なるため、これらインターフェースを一致させるための変換に使用される。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態の誤り検出装置1は、パターン発生部2、パターン検出部3、エラー検出部4、リンク状態管理部5、操作表示部6、記憶部7、制御部8を備えて概略構成される。
【0020】
パターン発生部2は、被測定物Wに送信するパターンを発生するもので、被測定物WのLTSSM(Wa)を信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移させるためのトレーニングモード時に、制御部8からリンク状態管理部5を介しての制御により、LTSSMのリンク状態に応じたトレーニングパターン信号を発生する。
【0021】
パターン発生部2は、被測定物Wが信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移している状態で被測定物Wのジッタトレランステストを行う測定モード時に、制御部8からリンク状態管理部5を介しての制御により、被測定物Wに入力する既知のパターン信号を発生する。このときの既知のパターン信号は、例えば「0」、「1」のNRZ信号による疑似ランダム2値信号列からなり、通信規格で定められたパターンのCP(Compliance pattern)である。
【0022】
パターン検出部3は、トレーニングモード時に、パターン発生部2から送信されるトレーニングパターン信号によるハンドシェイクに伴い、被測定物WのLTSSM(Wa)のステートの遷移に応じて被測定物Wから送信されるトレーニングパターン信号を検出する。
【0023】
パターン検出部3は、被測定物Wが信号折り返しのステート(Loopback.Active)に遷移している状態の測定モード時に、パターン発生部2が発生するパターン信号が被測定物Wに入力されたときに、これに伴って被測定物Wから折り返して入力されるパターン信号を検出する。
【0024】
エラー検出部4は、測定モード時に、パターン発生部2がテスト信号として発生する既知のパターン信号と、この既知のパターン信号の送信に伴って被測定物Wから折り返してパターン検出部3にて検出されるパターン信号とを比較してビットエラーを検出する。
【0025】
リンク状態管理部5は、被測定物Wに搭載されたLTSSM(Wa)と同一又は同等の機構を有するLTSSMを備え、使用するI/Oインターフェースの通信規格(例えばUSB3.2 Gen1、USB3.2 Gen2など)に従って動作する。
【0026】
リンク状態管理部5は、被測定物Wとの間で通信される信号により、被測定物WのLTSSM(Wa)と同じようにリンク状態のステートが遷移し、被測定物WにおけるLTSSM(Wa)の現在のリンク状態を認識することができる。これにより、LTSSM値、リンク速度、ループバックの有無、LTSSMの遷移パターン、レーンを識別するためのレーン番号、リンク番号、パターン信号の発生時間や発生回数、エンファシス量、受け側のイコライザーの調整値などの各種情報を得ることができる。
【0027】
操作表示部6は、液晶表示器などの表示部と、誤り検出装置1が装備する各種キー、スイッチ、ボタン、表示部の表示画面上のソフトキーなどの操作部と、を含むユーザインタフェースであり、誤り検出に関わる各種設定や表示を行う際に操作される。
【0028】
具体的に、操作表示部6は、操作部の操作に基づく制御部8の制御により、誤り検出に関わる設定画面、記憶部7に格納されたログ情報、エラー検出部15にて検出したエラー情報を含む測定結果などを表示する。
【0029】
また、操作表示部6は、被測定物Wとの間のハンドシェイクによるステート遷移に関わる表示として、操作部の操作に基づく制御部8の制御により、図2図4に示す表示形態のステート遷移設定画面11を表示画面6aに表示する。
【0030】
ステート遷移設定画面11には、通信規格に基づく各ステート(各ステートの名称を表示する楕円部分)12とステート間で実行されるステート遷移条件(ステート遷移条件を表示する矩形部分)13とを含む全体のステート遷移のフローが表示画面にグラフィカル表示される。
【0031】
例えば図2のステート遷移設定画面11では、画面の上から下に向かって「Rx.Detect」→「Polling.LFPS」→「Polling.RxEQ」→「Polling.Active」→「Polling.Configuration」→「Polling.Idle」→「Loopback.Active」のステート遷移順に各ステート12が表示される。
【0032】
また、図2のステート遷移設定画面11には、ステート間で実行されるステート遷移条件13として、各ステート12の左側に送信状態(PPG Condition)のステート遷移条件13Aが表示され、その左側に受信状態(ED Condition)のステート遷移条件13Bが表示され、各ステート12の右側にタイムアウト設定(Timeout Setting[ms])のステート遷移条件13Cが表示される。
【0033】
具体的に、図2のステート遷移設定画面11において、送信状態のステート遷移条件13Aは、「Sent[16]bursts LFPS」、「Sent[4]bursts LFPS」、「Sent[65,536]TSEQ」、「Sent[16]TS1 OS」、「Sent[16]TS2 OS」が該当する。受信状態のステート遷移条件13Bは、「Received DUT’s LFPS」、「Received[2]LFPS」、「Received[8]TS1/TS2 OS」、「Received[8]TS2 OS」が該当する。タイムアウト設定のステート遷移条件13Cは、「Polling.LFPS」、「Polling.RxEQ」、「Polling.Active」、「Polling.Configuration」、「Polling.Idle」それぞれと「Rx.Detect」との間の[360]、[12.0]、[12.0]、[2.0]、[2.0]が該当する。
【0034】
なお、上述した送信状態のステート遷移条件13A、受信状態のステート遷移条件13B、タイムアウト設定のステート遷移条件13Cそれぞれの[]は、以下に説明する入力ボックス13aに対応し、この[]内の数字は入力ボックス13aに設定入力される値を示している。
【0035】
図2のステート遷移条件13(送信状態のステート遷移条件13A、受信状態のステート遷移条件13B、タイムアウト設定のステート遷移条件13C)は、それぞれの入力ボックス13aに対し、通信規格で規定された値を含む所定の調整幅で可変入力設定が可能となっている。これにより、通信規格で規定された固定値に限定されることなく、より細かい入力設定を行うことができる。
【0036】
例えば図2のステート遷移設定画面11において、受信状態のステート遷移条件13B:「Received[8]TS1/TS2 OS」は、「Polling.Active」のステートでTS1またはTS2を8回連続受信後に次のステートに遷移するという条件を意味しているが、ユーザは通信規格で規定されている値として入力ボックス13aに現在入力されている値「8」を含め、例えば「0から65535」の範囲で任意の値を入力ボックス13aに入力設定することができる。
【0037】
また、0設定として、送信状態のステート遷移条件13Aや受信状態のステート遷移条件13Bの入力ボックス13aに「0」を入力設定すれば、そのステート遷移条件を飛ばして次のステート遷移条件または次のステートに遷移させることができる。これにより、被測定物Wとの間のハンドシェイクが失敗した場合でも、失敗したステート遷移条件を含め、それ以降のステート遷移条件を0設定することにより、速やかに「Loopback.Active」のステートに向かって遷移させることが可能である。
【0038】
なお、被測定物Wとの間でハンドシェイクを行うにあたって、各ステート遷移条件13の入力ボックス13aには、被測定物Wの通信規格で規定された値、または最後に被測定物Wとの間でハンドシェイクが行われたときの値が初期値として設定される。
【0039】
ステート遷移設定画面11では、ステート間で通信規格に存在しないステート遷移条件13Dが選択設定可能となっている。例えば図2図3のステート遷移設定画面11では、「Polling.Active」のステートにおいて、TS1またはTS2を8回連続受信後の送信状態のステート遷移条件13A:「Sent[16]TS1 OS」が通信規格に存在しないステート遷移条件13Dに該当する。この通信規格に存在しないステート遷移条件13Dにはチェックボックス13bが設けられ、このチェックボックス13bへのチェックの有無によって有効・無効の切り替えを行う。これにより、上述した通信規格に存在しないステート遷移条件13Dのチェックボックス13bにチェックを入れた状態で入力ボックス13aに所望の値を設定入力すれば、「Polling.Active」のステートにいる時間を延長し、タイミングの調整を行うことができる。
【0040】
なお、図2図4のステート遷移設定画面11には、受信状態のステート遷移条件:「Received DUT’s LFPS」とステート:「Polling.LFPS」との間に「Transition Delay[1]ms」も通信規格に存在しないステート遷移条件13Dとして追加されているが、これらに限定されるものではない。この通信規格に存在しないステート遷移条件13Dは、通信規格毎にタイミングの調整が難しいステートが存在する箇所に適宜追加することができる。
【0041】
さらに、操作表示部6は、被測定物Wとの間のハンドシェイク終了時に、図2図3のステート遷移設定画面11において、制御部8の後述する表示制御手段8aの制御により、最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを強調表示する。
【0042】
具体的な強調表示方法としては、ハンドシェイク終了時に最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とが目立つように例えば赤色で表示する。これに対し、到達したステートと成功したステート遷移条件を例えば緑色で表示し、それ以外の未到達のステートとステート遷移条件を例えばグレーで表示する。
【0043】
ここで、図2は「Polling.LFPS」のステートでハンドシェイクを失敗したときのステート遷移設定画面11を示し、図3は「Polling.Active」のステートでハンドシェイクを失敗したときのステート遷移設定画面11を示している。
【0044】
なお、図2図3ステート遷移設定画面11において、ハンドシェイク終了時に最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを太線で示し、ハンドシェイク終了時に成功したステートとステート遷移条件とを細線で示し、それ以外の未到達のステートとステート遷移条件とを点線で示している。
【0045】
図2のステート遷移設定画面11は、太線で示すように、ハンドシェイク終了時に最高で到達したステートが「Polling.LFPS」であり、この「Polling.LFPS」のステートにおいて、受信状態のステート遷移条件:「Received[2]LFPS」を満たすことができず、タイムアウト設定のステート遷移条件である[360ms]が経過し、「Rx.Detect」のステートに戻ったことを示している。
【0046】
すなわち、図2のステート遷移設定画面11は、「Polling.LFPS」のステートにおいて、LFPSを2回連続受信すれば受信状態のステート遷移条件を満たし、送信状態のステート遷移条件である16回のLFPSを送信後、次の「Polling.RxEQ」のステートに遷移できるが、このときの受信状態のステート遷移条件を満たすことができなかったことを示している。
【0047】
そして、図2のハンドシェイクの失敗例では、被測定物WのLFPS出力に問題がありそうと推測することができる。この場合、受信状態のステート遷移条件:「Received[2]LFPS」の入力ボックス13aに入力されている設定値[2]を[0]にすれば、この受信状態のステート遷移条件を無視し、16回のLFPSを送信後、次のステートに遷移させることができる。
【0048】
また、図3のステート遷移設定画面11は、太線で示すように、ハンドシェイク終了時に最高で到達したステートが「Polling.Active」であり、この「Polling.Active」のステートにおいて、受信状態のステート遷移条件:「Received[8]TS1/TS2 OS」を満たすことができず、タイムアウト設定のステート遷移条件である[12.0ms]が経過し、「Rx.Detect」のステートに戻ったことを示している。
【0049】
すなわち、図3のステート遷移設定画面11は、「Polling.Active」のステートにおいて、TS1またはTS2を8回連続受信すれば受信状態のステート遷移条件を満たし、送信状態のステート遷移条件である16回のTS1 OSを送信後、次の「Polling.Configuration」のステートに遷移できるが、このときの受信状態のステート遷移条件を満たすことができなかったことを示している。
【0050】
そして、図3のハンドシェイクの失敗例では、被測定物WのTS1またはTS2 OS出力のタイミングまたは波形品質等に問題がありそうと推測することができる。
【0051】
なお、図2図3のハンドシェイクを失敗したときのステート遷移設定画面11において、実際のリンクトレーニングでは何回もハンドシェイクを行って失敗を繰り返すことになるが、ハンドシェイク終了時において最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを強調表示する。例えば1回目のハンドシェイクで「Polling.Active」のステートまで遷移してタイムアウトした後、「Polling.LFPS」のステートと「Rx.Detect」のステートとの間でループしてハンドシェイクが終了した場合であっても、ハンドシェイク終了時に最高で到達した「Polling.Active」のステートとその直後の「Polling.Configuration」のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを強調表示する。
【0052】
さらに、操作表示部6は、制御部8の後述する遷移条件調整手段8bにてステート遷移条件の自動調整を行うため、制御部8の制御により、図2図4に示すように、ステート遷移設定画面11に自動調整モード:「Auto tune」のチェックボックス14を表示し、このチェックボックス14へのチェックの有無によって自動調整モードの有効・無効の切り替えを行う。
【0053】
記憶部7は、制御部8の制御により、リンク状態管理部5にて管理される例えばリンク状態の遷移先、遷移の発生時刻、遷移のトリガ、エラー情報などを、LTSSMの遷移状態に応じたログ情報として記憶する。
【0054】
制御部8は、被測定物Wとの間のハンドシェイクや誤り検出を行うにあたって、各部(リンク状態管理部5、操作表示部6、記憶部7)を統括制御する。
【0055】
具体的に、制御部8は、トレーニングモード時に、リンク状態管理部5のLTSSMの現在のリンク状態に応じて次に発生すべきトレーニングパターン信号を発生するように、リンク状態管理部5を介してパターン発生部2に指示を行う。
【0056】
また、制御部8は、測定モード時に、パターン信号を発生するように、リンク状態管理部5を介してパターン発生部2に指示を行う。
【0057】
さらに、制御部8は、表示制御手段8aと遷移条件調整手段8bを備える。表示制御手段8aは、リンク状態管理部5のLTSSMの遷移状態に応じたログ情報やエラー検出部4の検出結果の読み出しの制御を行い、読み出したログ情報や検出結果の操作表示部6への表示制御や図2図4に示すステート遷移設定画面11の表示制御を行う。
【0058】
遷移条件調整手段8bは、リンク状態管理部5のLTSSMの遷移状態に応じたログ情報に基づいてハンドシェイクが失敗したステート遷移条件を判別し、図2図4のステート遷移設定画面11の自動調整モード:「Auto tune」のチェックボックス14にチェックが入っている状態で、ハンドシェイクの終了時に失敗したステート遷移条件と、その直前のステート遷移条件とを、所定の調整幅(ユーザが予め設定した調整幅、通信規格で規定される値を起点とする調整幅)で設定値を自動調整する。
【0059】
具体的に、遷移条件調整手段8bは、図3のハンドシェイク失敗例において、リンク状態管理部5のログ情報に基づいて受信状態のステート遷移条件:「Received[8]TS1/TS2 OS」と送信状態のステート遷移条件:「Sent[65,536]TSEQ」をハンドシェイク終了時に失敗したステート遷移条件と判別し、受信状態のステート遷移条件:「Received[8]TS1/TS2 OSの入力ボックス13aに入力される設定値を、図4に示すように、[8]から最終的に[6]に自動調整するとともに、その直前の送信状態のステート遷移条件:「Sent[65,536]TSEQ」の入力ボックス13aに入力される設定値を、図4に示すように、[65,536]から最終的に[54,650]に自動調整する。
【0060】
そして、上記のように構成される誤り検出装置1と被測定物Wとの間でハンドシェイクを行う場合には、不図示のテスト治具を介して誤り検出装置1と被測定物Wとの間を接続する。
【0061】
被測定物Wは、テスト治具を介して誤り検出装置1との間の接続を検知すると、トレーニングパターン信号としてLFPS信号の送信を開始する。
【0062】
誤り検出装置1は、被測定物Wから送信されるLFPS信号の受信をトリガとしてPolling.LFPSのステートに遷移し、トレーニングパターン信号としてLFPS信号の送信を開始する。
【0063】
被測定物Wは、誤り検出装置1から送信されるLFPS信号の受信をトリガとして次のステートに遷移し、次のステートに対応するトレーニングパターン信号を送信する。
【0064】
そして、被測定物Wと誤り検出装置1は、両者間のハンドシェイクが成功した場合、互いに各ステートで定義されたトレーニングパターン信号を送信してステートが遷移し、被測定物WのLTSSMが最終的にテストを行うためのLoopback.Activeのステートに遷移する。
【0065】
上述した被測定物Wと誤り検出装置1との間のハンドシェイクが終了すると、制御部8の表示制御手段8aは、操作表示部6を制御し、通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件とを含む全体のステート遷移のフローをステート遷移設定画面11にグラフィカル表示する。
【0066】
そして、被測定物Wと誤り検出装置1との間のハンドシェイクが失敗してLoopback.Activeのステートに遷移しなかった場合には、図2図3の太線で示すように、最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを強調表示する。
【0067】
その際、制御部8の遷移条件調整手段8bは、ステート遷移設定画面11の自動調整モード:「Auto tune」のチェックボックス14にチェックを入れて再度ハンドシェイクを実行すると、前回のハンドシェイクの終了時に失敗したステート遷移条件と、その直前のステート遷移条件とを所定の調整幅で設定値を自動調整する。
【0068】
なお、被測定物Wと誤り検出装置1との間のハンドシェイクが失敗してLoopback.Activeのステートに遷移しなかった場合には、図2図3のステート遷移設定画面11において、ハンドシェイクの失敗の原因と成り得るステート遷移条件13(送信状態のステート遷移条件13A、受信状態のステート遷移条件13B、タイムアウト設定のステート遷移条件13C)の入力ボックス13aに設定されている値を調整して再度被測定物Wとの間でハンドシェイクを実行してもよい。
【0069】
また、通信規格によってタイミングの調整が難しいステートが存在する場合には、通信規格に存在しないステート遷移条件13Dのチェックボックス13bにチェックを入れ、入力ボックス13aに所望の値を設定入力することもできる。
【0070】
ところで、上述した実施の形態では、図1に示すように、誤り検出装置1がパターン発生部2、パターン検出部3、エラー検出部4、リンク状態管理部5、操作表示部6、記憶部7、制御部8を一体に備えた構成としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、操作表示部6を外部に接続したパーソナルコンピュータなどの外部装置で構成したり、操作表示部6を操作部と表示部の別々のモジュールで構成したり、パターン発生部2やパターン検出部3をそれぞれ別々にモジュール化または個別筐体とすることもできる。
【0071】
このように、本実施の形態によれば、本来のハンドシェイクロギング機能と異なるデバッグ機能として、通信規格に基づく各ステートとステート間で実行されるステート遷移条件13とを含む全体のステート遷移のフローをグラフィカル表示によるステート遷移設定画面11として表示し、被測定物Wとの間のハンドシェイク終了時にステート遷移設定画面11において最高で到達したステートとその直後のステートとの間で失敗したステート遷移条件とを強調表示している。これにより、強調表示された内容からハンドシェイク失敗の理由を直感的に特定することができる。
【0072】
また、ステート遷移設定画面11の自動調整モード:「Auto tune」のチェックボックス14にチェックを入れた状態で再度ハンドシェイクを実行したときに、制御部8の遷移条件調整手段8bにより、前回のハンドシェイクの終了時に失敗したステート遷移条件と、その直前のステート遷移条件とを所定の調整幅で設定値を自動調整する。これにより、ハンドシェイク失敗時に特別な知識がなくても成功するハンドシェイクの設定を自動で行い、ユーザの通信規格への理解の程度によらず高度なデバッグを行うことができる。
【0073】
さらに、ステート遷移設定画面11において、通信規格で規定されたステート遷移条件13の入力ボックス13aに入力される値が固定値ではなく調整幅を持たせている。また、通信規格上は存在しないステート遷移条件13Dをステート遷移設定画面11においてチェックボックス13bへのチェックにより選択的に追加できるようにしている。これにより、固定シーケンス型とハンドシェイク型のどちらのメリットを併せ持つ、柔軟かつ容易な規格試験を実施することができる。その結果、ユーザは被測定物が有するステート遷移の傾向や不具合の特徴を的確に把握でき、円滑な開発とデバッグを行うことが可能となる。
【0074】
以上、本発明に係る誤り検出装置および誤り検出方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1 誤り検出装置
2 パターン発生部
3 パターン検出部
4 エラー検出部
5 リンク状態管理部
6 操作表示部
7 記憶部
8 制御部
8a 表示制御手段
8b 遷移条件調整手段
11 ステート遷移設定画面
12 ステート(ステートの名称)
13 ステート遷移条件
13A 送信状態のステート遷移条件
13B 受信状態のステート遷移条件
13C タイムアウト設定のステート遷移条件
13D 通信規格に存在しないステート遷移条件
13a 入力ボックス
13b チェックボックス
14 チェックボックス
W 被測定物
Wa LTSSM
図1
図2
図3
図4