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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ムコ多糖症II型の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240208BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240208BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K35/76 ZNA
A61K38/46
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P19/02
A61P11/00
A61P9/00
A61P27/16
A61P27/02
C12N15/09 100
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021506338
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019045474
(87)【国際公開番号】W WO2020033525
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】62/715,690
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,803
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/726,745
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/727,465
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/802,104
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/802,558
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンド, デール
(72)【発明者】
【氏名】フー, シェリル ウォン ポー
(72)【発明者】
【氏名】バイディア, サガー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シェリー キュー.
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123757(WO,A1)
【文献】特表2017-500061(JP,A)
【文献】国際公開第2019/157324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPS IIを有する対象における追加の処置手順の必要性、症状の開始、進行および/または重症度を低減、延期および/または排除する方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、
1、第2および第3のAAVベクターであって、前記第1のAAVベクターがZFN 71557をコードする配列番号30を含み、前記第2のAAVベクターがZFN 71728をコードする配列番号31を含み、前記第3のAAVベクターが、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)をコードする配列を含む、ベクタ
を含む、使用のための組成物。
【請求項2】
前記対象におけるGAGレベルが低減、安定化される、および/またはGAGが前記対象の尿から排除される;ならびに/あるいは
血漿および/または白血球におけるIDSレベルが、安定化および/または増加され、必要に応じて、IDSレベルが、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
第1、第2および第3のAAVベクターが、1:1:8の固定比で投与されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
(i)低減、延期および/または排除される前記追加の処置手順が、酵素補充療法(ERT);骨髄移植;ならびに/または整形外科的、心臓および/もしくは上気道閉塞(例えば、アデノイド口蓋扁桃摘出術、ヘルニア修復術、脳室腹腔シャント、心臓弁置換術、手根管開放術、脊髄減圧)のための1種もしくは複数種の支持的外科手順を含む;ならびに/あるいは
(ii)その開始、進行または重症度が低減、延期または排除される、MPS IIに関連する前記症状が、機能的能力の減退、神経学的増悪、関節硬直、車椅子に依存するようになること、身体障害の進行、強制空気陽圧換気の要求(人工呼吸器の要求)および/または寿命短縮を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記第1および/または第2のAAVベクターが、次の配列:小型のペプチド(FLAGまたはHisタグ配列などのペプチドタグを含むがこれらに限定されない)をコードする配列;WPRE配列;核局在化シグナル(NLS)コード配列;ポリAシグナル;ジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガータンパク質のうち1つもしくは複数における1個もしくは複数の変異;前記ジンクフィンガーヌクレアーゼのFokIヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断ハーフドメインにおける1個もしくは複数の変異;前記ZFNの発現を駆動するプロモーター配列(例えば、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターなどの肝臓特異的プロモーター);1つもしくは複数のイントロン配列(例えば、ヒトβ-グロビン遺伝子の第1のイントロン由来の5’ドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のイントロン由来の分枝および3’アクセプター部位を含むHGG-IGGキメライントロン);および/または1つもしくは複数のエンハンサー配列(例えば、ヒトApoEエンハンサー配列)のうち1つまたは複数を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記IDSドナーが、ヒトIDSコード配列、必要に応じて、配列番号15に示す配列、および/または配列番号17に示す配列を含むAAVベクターを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記方法が、
(i)処置の前および後の前記対象において、血漿、肝臓、CSFにおけるまたは白血球におけるIDS活性および/またはレベルを測定するステップであって、IDS活性が処置後に増加する(例えば、正常範囲まで)場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ;
(ii)処置の前および後の前記対象の尿における総GAGレベル、デルマタン硫酸を含むGAG(DS GAG)レベルおよび/またはヘパラン硫酸を含むGAG(HS GAG)レベルを測定するステップであって、GAG、DS GAGおよび/またはHS GAGレベルが処置後に低減する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ;
(iii)処置の前および後の努力肺活量を測定するステップであって、肺機能が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ;
(iv)処置の前および後の歩行距離を測定するステップであって、歩行距離が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ;
(v)処置の前および後の関節可動域(JROM)を測定するステップであって、JROMが処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ、
(vi)脾臓および/または肝臓体積が処置後に増加する前および後に脾臓および/または肝臓体積を測定するステップ;ならびに/あるいは
(vii)処置の前および後の1つまたは複数の神経認知能力を測定するステップであって、前記神経認知能力のうち1つまたは複数が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除されるステップ
をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
(i)身体障害進行、臓器腫大、機能亢進、攻撃性、神経学的増悪、関節硬直、骨格変形、心臓弁肥厚、難聴、角膜混濁および視覚障害、ヘルニアおよび/または上気道感染症が、処置後に前記対象において抑制、低減、延期または排除される;
(ii)前記対象における医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性が、処置後に安定化、延期、低減または避けられる;
(iii)前記対象が車椅子に依存することの開始が、処置後に延期、低減または避けられる;ならびに/あるいは
(iv)前記対象の平均余命が、処置後に増加する、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
(i)前記追加の治療手順が、ERTであり、必要に応じて、ERTが、処置後に低減または中止され、必要に応じて、ERTが、処置後に数時間、数週間、数ヶ月間または数年間低減または中止される;ならびに/あるいは
(ii)前記追加の治療手順が、骨髄移植である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記対象が、1e12~1e16vg/kgの間の総AAV用量を受け、必要に応じて、前記総AAV用量が、(i)5e11vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e12vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e12vg/kg;(ii)1e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e12vg/kgの第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e13vg/kg;(iii)5e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e13の第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e13vg/kg;(iv)1e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e13vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e14vg/kg;(v)5e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e14vg/kg;または(vi)1e14vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e15vg/kgを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
(i)前記組成物が、必要に応じて注入ポンプにより、10~200mL/時間の間のいずれか、必要に応じて100mL/時間の速度で静脈内投与されることを特徴とする;
(ii)前記対象が、本発明の組成物による処置の前および/または後に、必要に応じて、処置に先立つ1週間またはそれより長い間、毎日;処置の当日;処置後7日目に;処置後毎週;および/または処置後最大20週間まで1週間おきに、必要に応じて表Aに示す通り、必要に応じてコルチコステロイド、必要に応じてプレドニゾンを前投与されることを特徴とする;ならびに/あるいは
(iii)前記対象が、早期発症型MPS II、軽症型MPS IIまたは早期発症型MPS IIと軽症型MPS IIとの間のMPS IIを含むハンター症候群を有する成人または子供である、請求項1~1のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記対象のための総用量が、次の通り:処置前に前記対象の体重を決定するステップと;前記対象の体重をvg/mL濃度で割って、使用されるべき用量を決定するステップとによって決定され、必要に応じて、前記方法が、(i)コホート用量に処置前の前記患者体重を掛け、次いで、前記VG濃度で割ることによって、例えば、次の通り:(a)試験コーディネーターから前記コホートおよびベースライン時の患者体重を得て、(b)臨床解析証明書から前記VG濃度を得ることによって、3種の製品構成成分体積を計算するステップ;(ii)前記3種の製品構成成分体積およびNS/PBS体積をまとめて加算することにより、総体積を計算するステップ;(iii)0.25%HSAの最終濃度の達成に要求されるHSA静脈内液剤の体積を計算するステップ、ならびに(iv)調整された前記NS/PBS体積を計算するステップを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年8月7日に出願した米国仮出願第62/715,690号、2018年8月31日に出願した米国仮出願第62/725,803号、2018年9月4日に出願した米国仮出願第62/726,745号、2018年9月5日に出願した米国仮出願第62/727,465号、2019年2月6日に出願した米国仮出願第62/802,104号、および2019年2月7日に出願した米国仮出願第62/802,558号の利益を主張する。これらの出願の開示は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ハンター症候群としても公知のムコ多糖症II型(MPS II)を処置するための方法、および遺伝子療法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
リソソーム蓄積病(LSD)は、通常、脂質、グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)、即ち、GAGなどのムコ多糖を含む細胞老廃物の分解に関与する機能的な個々のリソソームタンパク質の欠如によって特徴付けされる、希少な代謝的単一遺伝子疾患の群である。ハンター症候群とも称されるムコ多糖症II(MPS II)は、主に男性に見出されるX連鎖型劣性リソソーム蓄積障害である(Burton & Giugliani (2012) Eur J Pediatr. (2012) Apr;171(4):631-9)。この疾患は、尿、血漿および組織におけるGAGの蓄積によって特徴付けされ、多系統進行性疾患を引き起こす(Muenzer (2014) Mol Gen Metabol 111:63-72)。重症型ハンター症候群を有する無処置対象の平均余命は、10代半ばの年齢であり、神経学的増悪および/または心肺不全により死亡する(Sato et al. (2013) Pediatr Cardiol. 34(8): 2077-2079)。
MPS IIのために現在承認されている唯一の治療法は、酵素補充療法(ERT)である。組換えイズロン酸2-スルファターゼ(IDS)タンパク質(イデュルスルファーゼ;Elaprase(登録商標)、Shire)による静脈内(IV)ERTは、2006年以来、体重1kg当たり0.5mgの用量での1週間毎に1回の投与についてUS FDA承認されており、5歳およびそれより年上のMPS II対象における歩行能力を改善することが示された。ERTの限界は、生涯にわたる処置の必要、中和抗体の発生、酵素が血液脳関門を通過できないこと、および毎週の静脈内注入の不便を含む。まとめると、これらの限界は、MPS IIのためのより広範囲の治癒的療法を開発する緊急の必要性を強調する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Burton & Giugliani (2012) Eur J Pediatr. (2012) Apr;171(4):631-9
【文献】Muenzer (2014) Mol Gen Metabol 111:63-72
【文献】Sato et al. (2013) Pediatr Cardiol. 34(8): 2077-2079
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
対象におけるハンター症候群(MPS II)を処置および/または予防するための組成物および方法が本明細書に開示される。本開示は、ゲノム編集および/または遺伝子移入のための方法および組成物を提供する。本開示は、MPS IIを有する対象を処置する方法であって、1種または複数種のポリヌクレオチドを対象に投与するステップを含み、対象が処置される、方法を提供する。本明細書に提供される処置方法は、追加の処置手順および/またはMPS IIに関連する1つもしくは複数の症状の開始、進行もしくは重症度を低減、延期および/または排除する方法を含む。一部の実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、処置されている対象の尿におけるGAGを低減、安定化または排除する方法を含む。一部の実施形態では、本方法は、追加の処置手順の前、その間およびその後を含めて、対象における尿中GAGレベルを低減、安定化または排除する。一部の実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、血漿におけるIDSの濃度を増加または安定化する。一部の実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、血漿におけるIDSの濃度を増加または安定化しつつ、尿中GAGレベルの低減、安定化または排除をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、尿中GAGレベルの低減、安定化または排除をもたらし、血漿におけるIDSの濃度は、検出レベルを下回る。一部の実施形態では、総AAV用量は、ZFNコード配列を含む2種のベクター、およびIDSドナー配列を含む1種のベクターを、1:1:8の固定比で含む。
【0006】
一部の実施形態では、低減、延期および/または排除される追加の処置手順は、酵素補充療法(ERT)ならびに/または骨髄移植ならびに/または整形外科的、心臓および/もしくは上気道閉塞に対する支持的外科手順を含む。一部の実施形態では、その開始、進行または重症度が低減、延期または排除される、MPS IIに関連する症状は、機能的能力の減退、神経学的増悪、関節硬直、車椅子に依存するようになること、身体障害の進行、強制空気陽圧換気(forced air positive ventilation)の要求(人工呼吸器の要求)、および寿命短縮を含む。
【0007】
本明細書に提供される組成物および方法の目的および理論的根拠は、例えば、in vivoゲノム編集を使用して、酵素補充療法の必要性を抑止または減少させることである。本明細書に提供される処置方法は、酵素ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(hIDS)導入遺伝子の補正コピーをin vivoで対象自身の肝細胞のゲノムに部位特異的に組み込むことを含む、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の有効用量を用いる。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子の組込みは、アルブミン遺伝子座のイントロン1に標的化され、血液において測定可能な、イズロン酸-2-スルファターゼの安定した肝臓特異的発現および分泌をもたらす。一部の実施形態では、高度に発現される内因性アルブミン遺伝子座の制御下におけるhIDS導入遺伝子の配置は、MPS IIを有する対象(a subject with MPS II subject)における永続的な肝臓特異的発現をもたらす。
【0008】
3種のポリヌクレオチドを含む、MPS IIを有する対象を処置するための組成物および方法であって、2種のポリヌクレオチドが、ジンクフィンガーヌクレアーゼのパートナーの両半分(halves)(「ペアードZFN」または「左および右ZFN」とも称される)をコードし、第3のポリヌクレオチドが、機能的イズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)酵素をコードする配列を含む、組成物および方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、ヒトアルブミン遺伝子に結合しこれを切断する。必要に応じて、ヌクレアーゼコードポリヌクレオチドは、小型のペプチド(ペプチドタグおよび核局在化配列を含むがこれらに限定されない)をコードする配列をさらに含む、および/またはDNA結合ドメイン領域(例えば、ジンクフィンガータンパク質またはTALEの骨格)の1つもしくは複数における変異および/またはFokIヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断ハーフドメインにおける1つもしくは複数の変異を含む。これらのポリヌクレオチド構成成分が、個々にまたはいずれかの組合せにおいて使用されると(例えば、いずれかの組合せにおけるFLAG、NLS、WPREなどのペプチド配列および/またはポリAシグナル)、本発明の方法および組成物は、増加した効率(例えば、本明細書に記載される配列/改変がないヌクレアーゼと比較して2、3、4、5、6、10、20倍またはそれよりも多い切断)および/または標的化特異性を有する人工ヌクレアーゼの発現の驚くべきかつ予想外の増加をもたらす。さらなる実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に開示されるSB-47171(SB-A6P-ZLEFT)またはSB-47898(SB-A6P-ZRIGHT)を含むことができる。さらなる実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、SB-71557(SB-A6P-ZL2)またはSB-71728(SB-A6P-ZR2)を含むことができる。組成物は、イズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)酵素をコードするいずれかのドナーヌクレオチドを含むポリヌクレオチドをさらに含むことができる。一部の実施形態では、ドナーヌクレオチドは、本明細書に開示されるSB-IDS(SB-A6P-HNT)を含むことができる。一部の実施形態では、3種のポリヌクレオチドは、対象において機能的IDSタンパク質が発現されるように、IDS遺伝子を欠如するMPS IIを有する対象に送達される。一部の実施形態では、外因性IDS遺伝子は、アルブミン遺伝子中にIDS遺伝子が組み込まれる(挿入される)ように、アルブミン特異的ZFNパートナーの両半分と共に、対象中の細胞に送達される。さらなる実施形態では、IDS遺伝子は、MPS IIを有する対象が処置されるように、IDSタンパク質を発現する。一部の実施形態では、対象における尿におけるGAGの濃度(例えば、尿中GAGレベル)は、本明細書に提供される方法に従った組成物および/または処置の投与後に、低減、安定化または排除される。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、IDSレベルは、対象におけるMPS II疾患(例えば、症状)を処置するレベル(例えば、IDSレベルの正常範囲)まで増加する。対象(肝臓、血漿、尿、白血球、CNSなど、いずれかの組織または臓器を含む)におけるIDSレベル(例えば、総GAGを低減させる、デルマタン硫酸レベルを低減させる、ヘパラン硫酸レベルを低減させることにより、治療利益をもたらし、これらの低減は、組織および/または尿中においてなどのことである)は、本明細書に記載される組成物の投与後に、数日間、数週間、数ヶ月間、数年間またはそれよりも長く維持することができ、1~365日間(または10、30、50、90、100、150、200など、その間のいずれかの値)を含むがこれらに限定されない。
【0009】
一部の実施形態では、組成物は、有効用量の操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含んで、in vivoで対象自身の肝細胞のアルブミン遺伝子座にヒト酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(hIDS)導入遺伝子の補正コピーを部位特異的に組み込む。一部の実施形態では、組成物のポリヌクレオチドは、1種または複数種のAAV粒子で運ばれる(これにより送達される)。他の実施形態では、AAV粒子は、AAV2/6粒子である。IDSドナーAAV、左ZFN AAVおよび右ZFN AAVを含む3種のAAV2/6構成成分の組合せは、まとめて、本発明の組成物である。MPS IIを有する対象を処置するための組成物および方法は、尿におけるGAGの濃度(例えば、尿中GAGレベル)が処置後に低減、安定化もしくは排除されるような、対象においてin vivoで活性があり(機能的であり)、ムコ多糖のグリコサミノグリカン、即ち、GAGを分解することができるhIDSを提供するのに有効である、および/または血漿における活性IDSの量の測定可能な増加をもたらす。アルブミン遺伝子座への導入遺伝子配列の挿入のための方法が本明細書に提供され、それによると、導入遺伝子は、発現される(例えば、体液および組織において検出可能である)hIDSタンパク質(例えば、機能的な全長またはトランケート型IDSタンパク質)をコードし、発現されたIDSタンパク質が、導入遺伝子を持たない他の細胞に影響を与えることができるもしくは該細胞によって取り入れられることができるように(バイスタンダー効果または交差補正(cross correction)とも称される)、IDSタンパク質は、導入遺伝子を含む肝細胞から発現され分泌もしくは放出される、および/または尿GAG(例えば、総GAG、DS-GAGおよび/またはHS-GAG)が、ベースラインから安定化もしくは減少するように、該IDSは、活性である。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物で処置されなかった対象と比較して、追加の処置手順を低減、延期および/または排除する処置方法であって、例えば、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が、対象に投与され、対象は、処置後に追加の処置手順に対する必要性が低減、延期および/または排除される、処置方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、追加の処置手順は、骨髄移植、酵素補充療法および/またはMPS IIに関連する心臓、気道もしくは整形外科的状態の支持的処置のための外科的手順を含むことができる。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法において有用なhIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、例えば、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、例えば、IDS導入遺伝子が挿入される内因性アルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、例えば、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3;配列番号17)と命名された配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法において有用なZFN(例えば、ZFN対のメンバー(左および右)ZFNが、2種の別々のベクターにおいて送達されるZFN)は、それぞれ表1および2ならびにこれらの表に従った配列に示す通り、SB-47171 AAVおよびSB-47898 AAVと命名されたAAVベクターを含む。さらなる実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、SB-71557(SB-A6P-ZL2)またはSB-71728(SB-A6P-ZR2)を含むことができる。一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、例えば、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171;配列番号9)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898;配列番号12)を含む。さらなる実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、SB-71557(SB-A6P-ZL2、配列番号30)またはSB-71728(SB-A6P-ZR2、配列番号31)を含むことができる。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される、肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にあるある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、1つまたは複数のApoEエンハンサー配列を含む(例えば、1、2、3および/または4種;Okuyama et al. (1996) Hum Gen Ther 7(5):637-45を参照)。一部の実施形態では、プロモーターは、イントロンに連結される。一部の実施形態では、イントロンは、ヒトβ-グロビン遺伝子の第1のイントロン由来の5’ドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のイントロン由来の分枝および3’アクセプター部位を含む、HGG-IGGキメライントロンである。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、トランスサイレチン最小プロモーターが使用される(米国特許出願公開第2017/0119906号を参照)。一部の実施形態では、組成物は、SB-47171 AAV(表1および表1に従った配列);SB-47898(表2および表2に従った配列);およびSB-IDS AAV(表3および表3に従った配列)を含む。さらなる実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(表4およびそれに従った配列(例えば、配列番号30));SB-71728 AAV(表5およびそれに従った配列(例えば、配列番号31));およびSB-IDS AAV(表3および表3に従った配列(例えば、配列番号17))を含む。
【0013】
必要に応じて、ヌクレアーゼコードポリヌクレオチドは、小型のペプチド(ペプチドタグおよび核局在化配列を含むがこれらに限定されない)をコードする配列をさらに含む、および/またはDNA結合ドメイン領域(例えば、ジンクフィンガータンパク質またはTALEの骨格)のうち1つもしくは複数における変異および/またはFokIヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断ハーフドメインにおける1つもしくは複数の変異を含む。これらのポリヌクレオチド構成成分が、個々にまたはいずれかの組合せにおいて使用される場合(例えば、いずれかの組合せにおけるFLAG、NLS、WPREなどのペプチド配列および/またはポリAシグナル)、本発明の方法および組成物は、増加した効率(例えば、本明細書に記載される配列/改変がないヌクレアーゼと比較して2、3、4、5、6、10、20倍またはそれよりも多い切断)および/または標的化特異性を有する人工ヌクレアーゼの発現の驚くべきかつ予想外の増加をもたらす。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、mRNAによってコードされ、mRNAは、必要に応じて、転写および翻訳効率を増加させるためのエレメントを含む。一部の実施形態では、エレメントは、天然または人工5’および/または3’UTR配列などの非翻訳配列を含む。一部の態様では、5’UTR配列が発現カセットに含まれるが、他の例では、3’UTR配列が使用される。一部の実施形態では、人工ヌクレアーゼをコードするmRNAは、5’UTRおよび3’UTRの両方を含む。一実施形態では、5’UTRは、Xenopusβ-グロビンUTRである(Krieg and Melton (1994) Nuc Acid Res 12(18):7057を参照)。一部の実施形態では、Xenopusβ-グロビンUTRをコードするDNA配列は、5’TGCTTGTTCTTTTTGCAGAAGCTCAGAATAAACGCTCAACTTTGGCAGAT(配列番号18)である。一部の実施形態では、ヌクレアーゼをコードするmRNAは、3’WPRE配列を含む(米国特許出願公開第2016/0326548号を参照)。一部の実施形態では、WPREエレメントは、「X」領域において変異されて、タンパク質Xの発現を防止する(米国特許第7,419,829号を参照)。一部の実施形態では、変異したWPREエレメントは、Zanta-Boussif et al. (2009) Gene Ther 16(5):605-619に記載されている変異を含む。一部の実施形態では、WPREは、WPRE3バリアントである(Choi et al. (2014) Mol Brain 7:17)。一部の実施形態では、3’UTRは、ポリAシグナル配列を含む。これらのエレメントが組み合わせて使用される場合、ポリAシグナルは、WPRE配列に対し3’または5’となることができる。一部の実施形態では、ポリAシグナル配列は、ウシ成長ホルモンシグナル配列である(Woychik et al. (1984) Proc Natl Acad Sci 81(13):3944-8を参照)。
【0014】
本発明の方法および組成物は、DNA骨格におけるリン酸と非特異的に相互作用し得る、標的配列のヌクレオチドを認識する残基の外側のDNA結合ドメイン内の1個または複数のアミノ酸に対する変異(例えば、「ZFP骨格」(DNA認識ヘリックス領域の外側)に対する1個または複数の変異)を含むこともできる。よって、一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、ヌクレオチド標的特異性に要求されない、ZFP骨格におけるカチオン性アミノ酸残基の変異を含む。一部の実施形態では、ZFP骨格におけるこれらの変異は、カチオン性アミノ酸残基を中性またはアニオン性アミノ酸残基へと変異させることを含む。一部の実施形態では、ZFP骨格におけるこれらの変異は、極性アミノ酸残基を中性または非極性アミノ酸残基へと変異させることを含む。一部の実施形態では、変異は、DNA結合ヘリックスと比べて、(-5)、(-9)位および/または(-14)位において為される(at made)。一部の実施形態では、ジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)に1個または複数の変異を含むことができる。一部の実施形態では、マルチフィンガー(multi-finger)ジンクフィンガータンパク質における1個または複数のジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)に変異を含むことができる。一部の実施形態では、(-5)、(-9)および/または(-14)におけるアミノ酸(例えば、アルギニン(R)またはリシン(K))は、アラニン(A)、ロイシン(L)、Ser(S)、Asp(N)、Glu(E)、Tyr(Y)および/またはグルタミン(Q)へと変異される。例えば、米国特許出願公開第20180087072号を参照されたい。
【0015】
一部の態様では、本発明の方法および組成物は、真核生物導入遺伝子配列に融合された外因性ペプチド配列をコードする配列の使用を含む。一部の実施形態では、外因性ペプチドは、翻訳後にタンパク質配列に融合され、他の実施形態では、外因性ペプチドをコードする配列は、人工ヌクレアーゼをコードする配列にインフレームで(3’および/または5’)連結される(例えば、融合タンパク質)。外因性ペプチドは、精製または標識、例えば、親和性精製または免疫組織化学的検査に有用な配列をコードすることができる。斯かるペプチドの例は、ポリヒスチジンタグ(「Hisタグ」、Hochuli et al. (1988) Bio/Technol 6(11):1321-5)またはカチオン性ペプチドタグ、例えば、Flagタグ(Hopp et al. (1988) Bio/Technol 6(10):1204-10)である。これらのペプチドタグ配列のうち1つまたは複数(1、2、3、4、5つまたはそれよりも多く)は、いずれかの組合せにおいて使用することができる。一部の実施形態では、配列N末端DYKDDDK(配列番号19)を含む外因性Flagペプチドをコードする配列は、人工ヌクレアーゼをコードする配列のC末端またはN末端にインフレームで融合される。好まれる実施形態では、3個のFLAG配列(3×FLAGペプチド)をコードする配列が使用され(米国特許第6,379,903号を参照)、そのアミノ酸配列は、N末端DYKDHDG-DYKDHDI-DYKDDDDK(配列番号20)である。斯かるペプチド配列のうち1つまたは複数(例えば、3×FLAG)の包含は、そのペプチド配列がないヌクレアーゼと比較して、ヌクレアーゼ(切断)活性を2、3、4、5、6、7、8、9、10、11倍またはそれよりも多く増加させることができる。
【0016】
一部の態様では、人工ヌクレアーゼをコードするmRNAは、核局在化ペプチド配列(NLS)を含む。一部の実施形態では、NLSは、SV40ウイルスラージT遺伝子(Kalderon et al. (1984) Nature 311(5981):33-8を参照)由来の配列PKKKRKV(配列番号21)を含むが、他の実施形態では、NLSは、c-mycタンパク質(Dang and Lee (1988) Mol Cell Biol 8(10):4048-54を参照)由来の配列PAAKRVKLD(配列番号22)を含む。一部の実施形態では、NLSは、デルタ肝炎ウイルス(Alves et al. (2008) Virology 370:12-21を参照)由来の配列EGAPPAKRAR(配列番号23)またはポリオーマTタンパク質由来(Richardson et al. (1986) Cell 44(1):77-85)のVSRKRPRP(配列番号24)を含む。他の実施形態では、NLSは、ヌクレオプラスミンカルボキシテイル(Dingwall (1988) J Cell Biol 107:841-849およびRobbins et al. (1991) Cell 64(3):615-23を参照)に由来する配列KRPAATKKAGQAKKKKLD(配列番号25)を含むが、一部の実施形態では、NLSは、SiomiおよびDreyfuss(Siomi and Dreyfus (1995) J Cell Biol 129(3):551-560)によって最初に記載された配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号26)を含む。さらなる実施形態では、NLSは、HTLV-1におけるRexタンパク質(Siomi et al. (1988) Cell 55(2):197-209)由来の配列PKTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号27)を含む。本明細書に記載されるNLS配列のうち1つまたは複数の包含は、そのペプチド配列がないヌクレアーゼと比較して、ヌクレアーゼ(切断)活性を2、3、4、5、6、7、8、9、10、11倍またはそれよりも多く増加させることができる。
【0017】
一部の実施形態では、対象における骨髄移植、ERT療法および/または支持的外科手順など、追加の治療手順の必要性は、処置後の対象において延期、低減または排除される。一部の実施形態では、追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、血漿および/または白血球および/または組織(例えば、血液、肝臓組織およびCSFを含む)におけるIDS活性および/またはレベルの変化によって測定される。一部の実施形態では、血漿ならびに/または白血球ならびに/または血液、肝臓組織およびCSFにおけるIDSの活性および/またはレベルは、処置後に増加する、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る。血漿および/または対象白血球におけるIDSを検出する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Chuang et al. (2018) Orphanet J Rare Dis. 13:84を参照されたい。一部の実施形態では、対象における追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、処置されている対象の尿において測定される、総GAG、DS GAG(デルマタン硫酸を含むGAG)およびHS GAG(ヘパラン硫酸を含むGAG)レベル(例えば、クレアチニンに対する比として表現される)の変化によって測定される。一部の実施形態では、追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、対象の6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、対象における追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、対象における追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、MRIによって測定される例えば、脾臓および/または肝臓体積(処置の前および後)のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence, Second Edition)(Shapiro et al. (2015) Mol Genet Metab 116(1-2):61-68)、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence))またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査(Bayley Scales of Infant Development))およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度(Vineland Adaptive Behavior Scales))によって測定される例えば、神経認知能力のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、追加の治療手順の必要性の延期、低減または排除は、例えば、血液、肝臓組織およびCSFにおいて例えば、測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベルのベースラインからの変化によって測定される。
【0018】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、例えば、末梢静脈カテーテルによる、本発明の組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(normal saline)(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、例えば、ヒト血清アルブミンをさらに含むことができる。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6(例えば、SB-47171 AAVおよびSB-47898 AAV、またはSB-71557 AAVおよびSB-71728 AAV)、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAV(例えば、SB-IDS AAV)を含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e12vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。さらなる実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(表1)、SB-47898 AAV(表2)およびSB-IDS AAV(表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(表4、配列番号30)、SB-71728 AAV(表5、配列番号31)およびSB-IDS AAV(表3、配列番号17)を含む。
【0020】
一部の実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kgの組成物、1e13vg/kgの組成物、5e13vg/kgの組成物、1e14vg/kgの組成物、5e14vg/kgの組成物および/または1e15vg/kgの組成物の総用量を受けた後に、追加の治療手順の必要性が延期、低減または排除される。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後に、追加の治療手順の必要性が延期、低減または排除される。
【0021】
別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における症状を低減、延期または排除する方法であって、例えば、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象は、処置後に症状が低減、延期または排除される、方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、臓器腫大、機能亢進、攻撃性(aggressiveness)、神経学的増悪、関節硬直、骨格変形、心臓弁肥厚、難聴、ヘルニアおよび/または上気道感染症は、本明細書に開示される組成物および方法によって低減、延期または排除される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクター(例えば、SB-IDS AAV、表3、例えば、配列番号17に示す通り)は、例えば、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有するhIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFNの切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込み(例えば、相同組換え修復による)を容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、例えば、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(NHEJまたはHDR)で有効である。
【0022】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に同様に送達され、一方のAAVは、左ZFN(SBS-47171;配列番号9)を含み、もう一方は、右ZFN(SBS-47898;配列番号12)を含む。一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に送達され、一方のAAVは、左ZFN(SBS-71557;配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(SBS-71728;配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFNは、2種の別々のポリヌクレオチド(AAVベクターで運ばれる):SB-47171 AAV(例えば、表1、配列番号9)およびSB-47898(例えば、表2、配列番号12)を含む。一部の実施形態では、ZFNは、2種の別々のポリヌクレオチド(AAVベクターで運ばれる):SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30)およびSB-71728(例えば、表5、配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、一部の実施形態では、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替(alternate)ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、組成物は、SB-47171 AAV(例えば、表1、配列番号9);SB-47898(例えば、表2、配列番号12);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0023】
一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、処置の前および後の活性またはレベルを比較することにより、血漿におけるIDS活性またはレベルの変化によって測定される。一部の実施形態では、血漿におけるIDSの活性および/またはレベルは、増加する、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、処置されている対象の尿において測定される総GAG、DS GAG(例えば、デルマタン硫酸を含むGAG)およびHS GAG(例えば、ヘパラン硫酸を含むGAG)レベル(クレアチニンに対する比として表現される)の変化によって測定される。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、処置の前および後に6分間歩行検査を行う対象によって測定される歩行距離のベースラインからの変化または安定化によって測定されて、処置により生じるベースラインからの変化を決定する。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、MRIによって測定される脾臓および/または肝臓体積のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、処置後に対象において低減、延期または排除されたMPS II症状は、例えば、肝臓組織およびCSFにおいて測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベルのベースラインからの変化または安定化によって測定される。
【0024】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、例えば、末梢静脈カテーテルによる、組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、例えば、ヒト血清アルブミンをさらに含むことができる。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。他の実施形態では、対象は、例えば、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。さらなる実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。本明細書に開示される方法および組成物は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(例えば、同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0026】
一部の実施形態では、対象が、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量を受けるときに、本発明の組成物とともに本明細書に開示される方法および組成物の使用後に対象において示される低減、延期または排除されたMPS II症状が見られる。一部の実施形態では、対象は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後に、MPS II症状が低減、延期または排除される。
【0027】
一部の実施形態では、本明細書に開示される本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象におけるERT開始の必要性を延期させる、本明細書に開示される方法および組成物であって、本方法は、例えば、本発明において有用な有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象におけるERTの必要性は、処置後に延期される。hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、例えば、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、例えば、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。相同性の左アーム(LA)は、例えば、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、例えば、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、例えば、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、例えば、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法に有用なZFNは、AAV2/6送達により同様に送達される(例えば、肝細胞に)。一部の実施形態では、ZFNは、例えばアルブミン特異的であり、アルブミン特異的ZFNの両半分(左および右構成成分)は、別々のAAVベクターによって運ばれる。一部の実施形態では、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171;配列番号9)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898;配列番号12)を含む。一部の実施形態では、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SB-71557、表4、配列番号30)を含み;もう一方は、右ZFN(例えば、SB-71728、表5、配列番号31)を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFNの発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される、肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6): 522-532 (200))。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、特異的にかつ高度に活性である(例えば、肝細胞および/または意図される標的組織において)が、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、AAVベクターは、SB-47171 AAV(例えば、表1)およびSB-47898(例えば、表2)を含む。一部の実施形態では、投与される組成物は、SB-47171 AAV(例えば、表1、配列番号9);SB-47898(例えば、表2、配列番号12);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0029】
一部の実施形態では、ERTの必要性の延期または低減は、例えば、処置後の対象において測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、血漿におけるIDS活性またはレベルの変化によって測定される。一部の実施形態では、血漿、CSF、肝臓および/または白血球におけるIDSの活性および/またはレベルは、増加する、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、処置されている対象の尿において測定される総GAG、DS GAG(例えば、デルマタン硫酸を含むGAG)およびHS GAG(例えば、ヘパラン硫酸を含むGAG)レベル(例えば、クレアチニンに対する比として表現される)(例えば、尿GAGレベル)の変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、MRIによって測定される脾臓および/または肝臓体積のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、肝臓組織およびCSFにおける総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベルのベースラインからの変化または安定化によって測定される。
【0030】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0031】
一部の実施形態では、処置は、例えば、末梢静脈カテーテルによる、組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加される。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6(例えば、SB-47171 AAVおよびSB-47898 AAV)、および4e12 vg/kgのhIDSドナーAAV(例えば、SB-IDS AAV)を含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6(例えば、SB-47171 AAVまたはSB-71557 AAVおよびSB-47898 AAVまたはSB 71728 AAV)、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAV(例えば、SB-IDS AAV)を含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV(例えば、SB-47171 AAVまたはSB-71557およびSB-47898 AAVまたはSB 71728 AAV)、および4e13のhIDSドナーAAV(例えば、SB-IDS AAV)を含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(例えば、同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAVまたはSB-71557(例えば、表1または表4)、SB-47898 AAVまたはSB-71728(例えば、表2または表5)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。
【0032】
一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量を有する組成物による処置後に、対象に関して測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後に測定される。
【0033】
別の態様では、MPS IIを有する対象においてERTを除去(中止)するための方法であって、例えば、(a)ERTを受けている対象に、有効量の本明細書に記載されるhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を投与するステップと、(b)ステップ(a)の後に対象からERTを中止するステップとを含む方法が本明細書に開示される。ERTは、導入遺伝子およびZFN(複数可)の投与後数時間(0~48)、数日間(1~7日間)、数週間(1~4週間)、数ヶ月間(1~12)または数年間(1~10年間)を含む、投与後のいずれかの時点で中止することができる。ある特定の実施形態では、ERTは完全に中止されるが、他の実施形態では、ERTは、例えば、導入遺伝子およびZFN(複数可)を投与されていない対象と比較してより長い期間を含む、いずれかの期間中止することができる。一部の実施形態では、本方法は、例えば、MPS IIに関連する1つまたは複数の症状を測定することにより、例えば、導入遺伝子およびZFN(複数可)の投与後の対象における臓器腫大、機能亢進、攻撃性、神経学的増悪、関節硬直、骨格変形、心臓弁肥厚、難聴、ヘルニアおよび/または上気道感染症の変化を査定することにより、対象におけるERTを中止させる能力を査定するステップをさらに含むことができ、測定が、これらの(MPS II)症状のうち1つまたは複数が、本明細書に開示される組成物および方法によって低減、延期または排除されることを実証する場合、その結果、ERTはもはや必要とされなくなる。一部の実施形態では、本方法は、AAV2/6送達により送達される(例えば、肝細胞に)hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)と、例えば、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有するhIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含むhIDS送達ベクター(例えば、SB-IDS AAV、表3、例えば、配列番号17に示す通り)とを含む。相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFNの切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込み(例えば、相同組換え修復により)を容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、例えば、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(NHEJまたはHDR)で有効である。
【0034】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に同様に送達され、一方のAAVは、左ZFN(SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFNは、2種の別々のポリヌクレオチド(AAVベクターで運ばれる):SB-47171 AAVまたはSB-71557(例えば、表1または表4、それぞれ配列番号9または配列番号30)およびSB-47898またはSB-71728(例えば、表2または表5、それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、一部の実施形態では、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、組成物は、SB-47171 AAV(例えば、表1、配列番号9);SB-47898(例えば、表2、配列番号12);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物による処置後のMPS IIを有する対象におけるERTの中止は、処置の前および後に次のうち1つまたは複数によって査定される:処置の前および後の間における、血漿、CSF、肝臓もしくは白血球におけるIDS活性もしくはレベルの変化もしくは安定化を測定することであり、処置後に増加したIDS活性は、ERTを延期もしくは中止することができることを指し示す;処置の前および後の間における、処置されている対象の尿における総GAG、DS GAG(例えば、デルマタン硫酸を含むGAG)および/もしくはHS GAG(例えば、ヘパラン硫酸を含むGAG)レベル(クレアチニンに対する比として表現される)の変化もしくは安定化を測定することであり、処置後の総GAG、DS GAGおよび/もしくはHS GAGのレベルの低減もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す;処置の前および後の間における、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化もしくは安定化を測定することであり、処置後の努力肺活量の増加もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す;処置の前および後の6分間歩行検査を行う対象によって測定される歩行距離のベースラインからの変化もしくは安定化を測定して、処置により生じるベースラインからの変化を決定することであり、処置後の対象による歩行距離の増加もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す;処置の前および後の間における、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化もしくは安定化を測定することであり、処置後の可動域の増加もしくは安定化は、ERTを中止することができることを指し示す;処置の前および後の間における、MRIによって測定される脾臓および/もしくは肝臓体積のベースラインからの変化もしくは安定化を測定することであり、処置後の脾臓および/もしくは肝臓体積の減少もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す;WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)もしくはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化もしくは安定化(処置前)を測定することであり、ベースライン(前)および処置後の間における神経認知能力の改善もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す;ならびに/または処置の前および後の肝臓組織およびCSFにおいて測定される総GAG、DS GAGおよび/もしくはHS GAGレベルのベースラインからの変化を測定することであり、処置後の総GAG、DS GAGおよび/もしくはHS GAGレベルの低減もしくは安定化は、ERTを中止もしくは延期することができることを指し示す。よって、処置後にこれらの査定のうち1つまたは複数に肯定的な変化または安定化が見られる場合(処置前(ベースライン)と比較して)、ERTを中止または延期することができる。一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがある。
【0036】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、例えば、末梢静脈カテーテルによる、組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、例えば、ヒト血清アルブミンをさらに含むことができる。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。他の実施形態では、対象は、例えば、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。さらなる実施形態では、対象は、例えば、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。本明細書に開示される方法および組成物は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(例えば、同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0037】
一部の実施形態では、本発明の組成物とともに本明細書に開示される方法および組成物の使用後に対象においてERTを中止する能力は、対象が、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量を受けるときに見られる。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物の使用後に対象においてERTを中止する能力は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後に見られる。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書に開示される本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における骨髄移植の必要性を延期、低減または予防する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象は、例えば、本明細書に開示される方法および組成物による処置後に、骨髄移植の必要性が延期、低減または予防避けられる、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込み(例えば、相同組換え修復による)を容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、例えば、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、スプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)は、例えば、hF9エクソン2に由来し、例えば、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的なスプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0039】
一部の実施形態では、対象に送達される本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFNは、AAV2/6送達によるアルブミン特異的対であり(例えば、肝細胞に送達される)、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSBS-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSBS-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターの制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6): 522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、特異的にかつ高度に活性である(例えば、意図される標的組織である肝細胞において)が、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFN対は、2種の別々のAAVベクター、即ち、SB-47171 AAVまたはSB-71557(例えば、それぞれ表1、配列番号9または表4、配列番号30)およびSB-47898 AAVまたはSB-71728(例えば、それぞれ表2、配列番号12または表5、配列番号31)を使用して送達される。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物のいずれかは、3構成成分AAV系(ペアードZFNの各構成成分のための2種のAAV、およびドナーを運ぶ1種のAAV)、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物を使用することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0040】
一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期、低減または予防は、本明細書に開示される方法および組成物を使用した処置の後に対象において測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期、低減または予防は、血漿におけるIDS活性またはレベルの変化によって測定される。一部の実施形態では、血漿、CSF、肝臓または白血球におけるIDSの活性および/またはレベルは、増加する、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期、低減または予防は、対象の白血球におけるIDS活性またはレベルの変化によって測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期、低減または予防は、処置されている対象の尿において測定される総GAG、DS GAG(例えば、デルマタン硫酸を含むGAG)およびHS GAG(例えば、ヘパラン硫酸を含むGAG)レベル(例えば、クレアチニンに対する比として表現される)(例えば、尿GAGレベル)の変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期、低減または予防は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期または低減は、例えば、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の延期または低減は、例えば、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性は、例えば、MRIによって測定される脾臓および/または肝臓体積のベースラインからの変化または安定化によって減少する。一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の低減、延期または予防は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の低減または延期は、例えば、肝臓組織およびCSFにおいて測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベルのベースラインからの変化または安定化によって測定される。
【0041】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けたが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0042】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、組成物の投与(例えば、末梢静脈カテーテルによる)を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、例えば、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0043】
一部の実施形態では、骨髄移植の必要性の低減、延期または予防は、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量を含む、本明細書に開示される方法および組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、骨髄(bond marrow)移植の必要性の低減、延期または予防は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0044】
一部の実施形態では、処置されていない対象と比較して、本明細書に開示される方法および組成物による処置によって尿GAG(例えば、尿GAGレベル)を低減、安定化または排除する方法であって、例えば、有効量の本明細書に記載されるヌクレアーゼ(複数可)およびドナー(複数可)(例えば、hIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む3構成成分組成物)を対象に投与するステップを含み、対象が、処置後に低減、安定化または排除された尿GAG(例えば、尿GAGレベル)を有する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、血漿におけるIDSの活性またはレベルは、検出レベルを下回る。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、例えば、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、例えば、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含むrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、例えば、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0045】
一部の実施形態では、処置に先立つ対象における総尿GAGの量と比較して、または処置されていない患者における総尿GAGと比較して、総尿GAGの量は、本明細書に開示される方法および組成物によって対象において安定化または低減される。一部の実施形態では、総尿GAGは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%またはその間のいずれかの値だけ低減される。一部の実施形態では、処置に先立つ対象における尿デルマタン硫酸GAGの量と比較して、または処置されていない患者における尿デルマタン硫酸GAGと比較して、尿デルマタン硫酸GAGの量は、本明細書に開示される方法および組成物によって対象において安定化または低減される。一部の実施形態では、尿デルマタン硫酸GAGは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%またはその間のいずれかの値だけ低減される。一部の実施形態では、処置に先立つ対象における尿ヘパラン硫酸GAGの量と比較して、または処置されていない患者における尿ヘパラン硫酸GAGと比較して、尿ヘパラン硫酸GAGの量は、本明細書に開示される方法および組成物によって対象において安定化または低減される。一部の実施形態では、尿ヘパラン硫酸GAGは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%またはその間のいずれかの値だけ低減される。一部の実施形態では、GAGレベルは、患者が、本明細書に開示される組成物による処置後にERTを中止してから、処置効果を査定するための生化学的マーカーとして使用される。GAG測定は、患者に関する他の臨床パラメーターの査定と併せて使用された場合に、最も有用である。
【0046】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対における本明細書に開示される方法および組成物において有用なZFNは、AAV2/6送達により同様に送達され(例えば、肝細胞に)、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによる制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ(例えば、N末端ペプチド)、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRおよび/または3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、特異的にかつ高度に活性である(例えば、意図される標的組織である肝細胞において)が、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRおよび/または3’UTRを含む。一部の実施形態では、ZFNおよびIDSドナーは、例えば、全3種の構成成分:ペアードZFNの各構成成分のための2種のAAVベクター、およびドナーを運ぶ1種のAAVを含む組成物(例えば、SB-47171 AAVまたはSB-71557 AAV(例えば、表1または表4)、SB-47898 AAVまたはSB-71728 AAV(例えば、表2または表5)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物)を使用して送達される。
【0047】
一部の実施形態では、低減、安定化または排除された尿GAG(例えば、尿GAGレベル)は、本明細書に開示される方法および組成物による処置の後に、対象の尿において測定される。一部の実施形態では、尿における低減、安定化または排除されたGAG(例えば、尿GAGレベル、ヘパラン硫酸GAGおよび/またはデルマタン硫酸GAG)は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって測定される。尿GAGを測定するための例示的な方法は、ジメチルメチレンブルー(DMB)アッセイ(例えば、de Jong et al. (1989) Clin Chem 35/7:1472-1479を参照);セリンプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼに対する標識基質、セリンプロテアーゼの阻害剤、ならびに1種または複数種のグリコサミノグリカンを含むことが疑われる尿試料に依存した方法(例えば、米国特許出願公開第2013/0189718号を参照);尿に見出されるヘパラン硫酸(HS)、デルマタン硫酸(DS)およびケラタン硫酸(KS)の酵素消化と、それに続くLC-MS/MSによる定量に基づくマルチプレックスアッセイ(Langereis et al. (2015) PLoS One 10(9):e0138622);ならびにRapidFire(RF、Agilent)ハイスループット質量分析システムを利用する、特異的な種類のGAGの濃度の決定に使用することができるアッセイ(Tomatsu et al. (2014) J Anal Bioanal Tech. Mar 1; 2014 (Suppl 2):006を参照)を含む。
【0048】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0049】
一部の実施形態では、対象の本明細書に開示される方法および組成物を使用した処置は、例えば、末梢静脈カテーテルによる、本発明の組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、例えば、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0050】
一部の実施形態では、低減、安定化または排除された尿GAGは、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量の本発明の組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、低減、安定化または排除された尿GAGは、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0051】
一部の実施形態では、例えば、本明細書に開示される本発明の組成物による処置と組み合わせたERTの標準投与レジメンで対象を処置することにより、処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における機能的能力を改善、減退延期、または維持する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)と標準ERT用量を対象に投与するステップを含み、対象が、処置後に例えば、機能的能力の改善、機能的能力の減退延期または維持を有する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により肝細胞に送達され、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、例えば、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、例えば、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、例えば、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS導入遺伝子の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0052】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により同様に送達され(例えば、肝細胞に)、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによる制御下にある(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、特異的にかつ高度に活性である(例えば、意図される標的組織である肝細胞において)が、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。
【0053】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物による処置の後の機能的能力の改善、減退延期または維持は、処置後の対象において測定される。一部の実施形態では、機能的能力の改善、減退延期または維持は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、機能的能力の改善、減退延期または維持は、例えば、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、機能的能力の改善、減退延期または維持は、例えば、関節可動域のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、機能的能力の改善、減退延期または維持は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化によって測定される。
【0054】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0055】
一部の実施形態では、処置は、本発明の組成物の投与(例えば、末梢静脈カテーテルによる)を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。他の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0056】
一部の実施形態では、機能能力の改善、減退延期または維持は、例えば、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量における本発明の組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、機能的能力の改善、減退延期または維持は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0057】
一部の実施形態では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有するヒト対象における身体障害進行を抑制または延期する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象が、本明細書に開示される方法および組成物による処置後に身体障害進行の安定化、抑制または延期を有する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有するhIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、例えば、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、例えば、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれた。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、例えば、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、例えば、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、例えば、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0058】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により同様に送達され(例えば、肝細胞に)、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、例えば、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される、肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによって制御される(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。
【0059】
一部の実施形態では、身体障害進行の安定化、抑制または延期は、本明細書に開示される方法および組成物による処置の後の対象において測定される。一部の実施形態では、身体障害進行の安定化、抑制または延期は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、身体障害進行の安定化、抑制または延期は、例えば、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、身体障害進行の安定化、抑制または延期は、例えば、関節可動域(JROM)のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、身体障害進行の安定化、抑制または延期は、例えば、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される神経認知能力のベースラインからの変化または安定化によって測定される。
【0060】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0061】
一部の実施形態では、処置は、本発明の組成物の投与(例えば、末梢静脈カテーテルによる)を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加される。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0062】
一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量による本発明の組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、ERTの必要性の延期は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0063】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物で処置されなかった対象と比較して、MPS IIを有する対象における医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性を安定化、延期、低減または予防する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象が、医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性の延期、低減または予防を有する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(配列番号15)は、AAV2/6送達により送達され(例えば、肝細胞に)、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対する特異性を有する、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれた。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS導入遺伝子の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。一部の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0064】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に同様に送達され、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによって制御される(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、人工呼吸器の使用の必要性の安定化、延期、低減または予防は、処置後の対象において測定される。一部の実施形態では、人工呼吸器の使用の必要性の安定化、延期、低減または予防は、例えば、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、人工呼吸器の使用の必要性の安定化、延期、低減または予防は、例えば、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化によって測定される。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物を使用した処置は、本発明の組成物の投与を含む(例えば、末梢静脈カテーテルによる)。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。他の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0066】
一部の実施形態では、人工呼吸器の使用の必要性の低減または延期は、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量による本発明の組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、人工呼吸器の使用の必要性の低減または延期は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有するヒト対象において対象が車椅子に依存することの開始を安定化、延期、低減または予防する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象において、処置後に車椅子に依存することの開始が安定化、延期、低減または予防されている、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により肝細胞に送達され、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対して特異的な、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。一部の実施形態では、相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれる。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(例えば、SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(例えば、配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。ある特定の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)と命名されたドナーである。
【0068】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に同様に送達され、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによって制御される(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532 (200))。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。
【0069】
一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、処置後の対象において測定される。一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、肺機能検査によって測定される努力肺活量のベースラインからの変化によって測定される。一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、6分間歩行検査によって測定される歩行距離のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、関節可動域のベースラインからの変化または安定化によって測定される。一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、WASI-II(ウェクスラー短縮知能検査第2版(Shapiro et al.、同書))、WPPSI-IV(ウェクスラー幼児用知能検査)またはBSID-III(ベイリー乳幼児発達検査)およびVABS-II(ヴァインランド適応行動尺度)によって測定される。一部の実施形態では、確認された身体障害進行の開始の安定化もしくは延期、または確認された身体障害進行のリスクの低減は、肝臓組織およびCSFにおいて測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベルのベースラインからの変化または安定化によって測定される。
【0070】
一部の実施形態では、対象は、ベースライン時にERTを受けた、または過去にERTを受けたことがあるが、他の実施形態では、対象は、ERTを受けていない。
【0071】
一部の実施形態では、処置は、末梢静脈カテーテルによる本発明の組成物による投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。他の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(例えば、同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0072】
一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、本明細書に記載される5e12vg/kgの組成物、1e13vg/kg、5e13vg/kg、1e14vg/kg、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、車椅子に依存することの開始の安定化、延期、低減または予防は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物で処置されなかった対象と比較して、MPS IIを有する対象における平均余命を延長する方法であって、有効量のhIDS導入遺伝子およびジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を対象に投与するステップを含み、対象が、延長された平均余命を有する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子(例えば、配列番号15)は、AAV2/6送達により肝細胞に送達され、hIDS送達ベクターは、アルブミン遺伝子座におけるZFNカット部位に隣接する領域に対して特異的な、hIDS導入遺伝子に隣接する相同性アーム(例えば、配列番号13および配列番号16)をさらに含む。相同性の左アーム(LA)は、アルブミンイントロン1切断部位の上流の約280ヌクレオチド(例えば、配列番号13)の同一配列を含有し、相同性の右アーム(RA)は、切断部位の下流の約100ヌクレオチド(例えば、配列番号16)の同一配列を含有する。一部の実施形態では、相同性のアームは、相同組換え修復による、アルブミンイントロン1遺伝子座におけるhIDS導入遺伝子の標的化組込みを容易にするのに役立つように使用される。一部の実施形態では、相同性アームのサイズは、標的化組込みまたは導入遺伝子発現を阻害し得る、アルブミン遺伝子座における反復配列およびスプライシングエレメントを回避するように選ばれた。一部の実施形態では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン遺伝子に由来する。一部の実施形態では、hIDS導入遺伝子ドナーは、3’末端に停止コドンをさらに含んで、IDS導入遺伝子が挿入されるアルブミン配列のさらなる転写を防止する。一部の実施形態では、ヒトIDS導入遺伝子を含有するrAAV2/6ドナーベクター(SB-IDSドナー)は、エクソン1プラスエクソン2~9(配列番号15)の部分を含む部分的IDS cDNAを含むプロモーターなし構築物である。一部の実施形態では、hF9エクソン2に由来するスプライスアクセプター部位(例えば、SA、配列番号14)が存在して、アルブミン遺伝子座から成熟mRNAへのhIDS転写物の効率的スプライシングを可能にし、これは両方の種類のドナー組込み機構(例えば、NHEJまたはHDR)で有効である。ある特定の実施形態では、ドナーは、SB-IDS AAV(例えば、表3および表3に従った配列)と命名されたドナーである。
【0074】
一部の実施形態では、アルブミン特異的対におけるZFNは、AAV2/6送達により肝細胞に同様に送達され、一方のAAVは、左ZFN(例えば、SBS-47171またはSB-71557;それぞれ配列番号9または配列番号30)を含み、もう一方は、右ZFN(例えば、SBS-47898またはSB-71728;それぞれ配列番号12または配列番号31)を含む。一部の実施形態では、ZFN発現は、ヒトApoEエンハンサーおよびヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターで構成される肝臓特異的エンハンサーおよびプロモーターによって制御される(Miao CH et al. (2000) Mol. Ther. 1(6):522-532)。一部の実施形態では、ZFN発現は、最小トランスサイレチンプロモーターの下にある。一部の実施形態では、ZFNを含む発現カセットは、上に記載されている1つまたは複数のFLAGタグ、核局在化配列(NLS)、WPRE配列、代替ポリA配列、5’UTRまたは3’UTRを含む。一部の実施形態では、ApoE/hAATプロモーター(例えば、配列番号2)は、意図される標的組織である肝細胞において特異的にかつ高度に活性であるが、非肝臓細胞および組織型において不活性である;このことは、非標的組織におけるZFN発現および活性を防止する。一部の実施形態では、平均余命の延長は、処置後の対象において測定される。
【0075】
一部の実施形態では、処置は、末梢静脈カテーテルによる本明細書に開示される組成物の投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、生理的食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)希釈剤に添加され、希釈剤は、ヒト血清アルブミンをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e11vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e12vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、1e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e12vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、本明細書に開示される通り、5e12vg/kgの左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV、および4e13のhIDSドナーAAVを含む、5e13vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e13vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、5e13vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および4e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、5e14vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、対象は、例えば、1e14vg/kgの例えば、左ZFNまたは右ZFNのいずれかを含む各ZFN AAV2/6、および8e14vg/kgのhIDSドナーAAVを含む、1e15vg/kgの総AAV用量を受ける。一部の実施形態では、構成成分は、別々に投与することができる、または好ましくは、全構成成分(同じまたは異なるベクターにおけるペアードZFN、およびIDSドナー)を含む組成物、例えば、SB-47171 AAV(例えば、表1)、SB-47898 AAV(例えば、表2)およびSB-IDS AAV(例えば、表3)を含む組成物として投与することができる。一部の実施形態では、組成物は、SB-71557 AAV(例えば、表4、配列番号30);SB-71728(例えば、表5、配列番号31);およびSB-IDS AAV(例えば、表3、配列番号17)を含む。
【0076】
一部の実施形態では、延長された平均余命は、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量における本発明の組成物による処置の後の対象に関して測定される。一部の実施形態では、延長された平均余命は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量を受けた後の対象に関して測定される。
【0077】
ある特定の実施形態では、a)MPS IIを有する対象における追加の治療手順の必要性は、減少または安定化される;b)MPS IIを有する対象における症状は、減少または安定化される、c)MPS IIを有する対象の尿におけるGAGの量は、低減、安定化または排除される;d)MPS IIを有する対象における機能的能力は、改善または安定化される;e)MPS IIを有する対象におけるERTの必要性は、減少または安定化される;f)MPS IIを有する対象におけるERTの必要性は、延期または安定化される;g)ERT処置の用量および/もしくは頻度は、本明細書に開示される組成物で同様に処置されたMPS IIを有する対象において安定化もしくは減少させられる、および/または対象は、ERT単独で処置されたMPS-II対象と比較して機能的能力の安定化もしくは増加を有する;h)MPS IIを有する対象における身体障害進行のリスクは、安定化または減少する;i)確認された身体障害進行の開始は、本発明の組成物で処置された対象において安定化または延期される、j)車椅子に依存するようになることが遅くなる、または車椅子の必要性がなくなる;k)機械的人工呼吸器の使用の必要性が、安定化、低減、延期または予防される;l)本発明の組成物で処置した対象における平均余命が、組成物で処置されていない対象と比較して拡大される。
【0078】
一部の実施形態では、対象は、本発明の組成物の注入に先立ち前投与される。一部の実施形態では、対象は、組成物の注入の前日に、プレドニゾンまたは等価コルチコステロイドを前投与される。一部の実施形態では、対象は、組成物の注入の前日に、および再度、注入当日に、プレドニゾンまたは等価コルチコステロイドを前投与される。一部の実施形態では、対象は、組成物の注入の前日に、再度、注入当日に、および/または再度、7日目に、および/または2週目に、および/または4週目に、および/または6週目に、および/または8週目から最大で20週目の最大持続時間に、プレドニゾンまたは等価コルチコステロイドを前投与される。
【0079】
上および本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、MPS IIは、身体的および認知的合併症を伴う、疾患の早期発症型、重症形態であるが、他の実施形態では、MPS IIは、身体的疾患のより晩期発症および中枢神経系疾患が殆どないまたは全くないことによって特徴付けされる軽症型MPS IIである。さらなる実施形態では、MPS II疾患は、両者の間の連続体にある。一部の実施形態では、対象は、成人であるが、一部の実施形態では、対象は、小児集団に由来する。
【0080】
上述の実施形態のいずれかに係る(またはこれに適用される)ある特定の実施形態では、対象は、MPS IIの早期発症型、重症形態を有することに基づき処置に選択されるが、他の実施形態では、対象は、身体的疾患のより晩期発症と中枢神経系疾患が殆どないまたは全くないことによって特徴付けされる軽症型MPS IIを有するが、一部の実施形態では、対象は、両者の間の連続体にあるMPS II疾患を有することに基づき処置に選択される。
【0081】
上および本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本発明の組成物は、5e12vg/kgの、1e13vg/kgの、5e13vg/kgの、1e14vg/kgの、5e14vg/kgおよび/または1e15vg/kgの総用量で投与される。上および本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、本発明の組成物は、5e12vg/kg~1e15vg/kgの間(例えば、5e12vg/kg~5e13vg/kgの間、5e12vg/kg~1e14vg/kgの間、5e12vg/kg~5e14vg/kgの間および/または5e12vg/kg~1e15vg/kgの間)の総用量で投与される。上および本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0082】
上述または本明細書における方法のいずれかのある特定の実施形態では、本発明の組成物の投与後の安定化、低減または減少または改善は、ベースラインレベル、無処置対象(複数可)におけるレベルおよび/または異なる処置(ERTなど)を受ける対象(複数可)におけるレベルと比較することができる。一部の実施形態では、組成物の投与の後の低減または減少または改善は、Elaprase(登録商標)を受ける対象(複数可)におけるレベルと比較することができる。
【0083】
別の態様では、本明細書に記載される組成物のうち1種または複数種を含む製造品が本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、製造品は、本明細書に記載される3種の医薬組成物を含む(例えば、バイアルなどの異なる容器内に)製剤を含む:ZFN対の一方のメンバー(例えば、左ZFN)を含む第1の医薬組成物;ZFN対の第2のメンバー(例えば、右ZFN)を含む第2の医薬組成物;およびIDSドナー(例えば、AAV IDSドナー)を含む第3の医薬組成物。表6に示す濃度を含むがこれらに限定されない、いずれかの濃度の構成成分を使用することができる。さらに、いずれかの比の3種の医薬組成物を使用することができ、例えば、1:1:8(左ZFN:右ZFN:IDSドナー)を使用することができる。異なる構成成分は、いずれかの仕方で、例えば、組成物毎に使用される異なる色で標識することができる。ある特定の実施形態では、製造品は、次のものを含む、医薬品(drug product)バイアルのセットを含む:i)ZFN1ベクター医薬品(SB-A6P-ZLEFT)、これは必要に応じて、第1の色(例えば、白色)を有するアルミニウムフリップトップシールを含む容器(例えば、バイアル)内にある;ii)ZFN2ベクター医薬品(SB-A6P-ZRIGHT)、これは必要に応じて、第1の色とは異なる第2の色(例えば、青色)を有するアルミニウムフリップトップシールを含む容器(例えば、バイアル)内にある;ならびにiii)プロモーターレス(promotorless)IDS導入遺伝子をコードするDNA修復鋳型をコードする、第3のベクターSB-A6P-HRL医薬品、これは必要に応じて、第1および第2の色とは異なる第3の色(例えば、オレンジ色)のアルミニウムフリップトップシールを含む容器(例えば、バイアル)内にある。さらなる実施形態では、SB-71557(SB-A6P-ZL2)またはSB-71728(SB-A6P-ZR2)をコードするAAVベクター、およびSB-A6P-HRLベクターを含む医薬品のセットが提供される。本明細書に記載される組成物のいずれかにおいて、組換えベクターの精製されたロットは、ガラス医薬品バイアルに5mLの体積で充填された、CaCl、MgCl、NaCl、スクロースおよびポロクサマー188を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)において製剤化することができる、b)上および本明細書に記載されている方法のうちいずれか1つに従って対象におけるMPS IIを処置するための指示を有する添付文書。一部の実施形態では、組成物は、およそ1.15mg/MLのリン酸ナトリウム、0.2mg/mLリン酸カリウム、8.0mg/mL塩化ナトリウム、0.2mg/mL塩化カリウム、0.13mg/mL塩化カルシウムおよび0.1mg/mL塩化マグネシウムを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。PBSは、2.05mg/mL塩化ナトリウム、10~12mg/mLのスクロースおよび0.5~0mg/mLのKolliphor(登録商標)(ポロクサマーまたはP188)によりさらに改変される。製造品(医薬品)は、対象に適したいずれかの濃度(例えば、本明細書に記載される通り体重に基づき決定)におけるMPS IIの処置のための治療レベルを含む、対象においてIDSが発現されるように、それを必要とする対象に投与される(例えば、静脈内に)。投与は、1回、またはいずれかの頻度での複数回となることができる。加えて、医薬品のセットは、別々に投与することができる、または例えば静脈内注入バッグにおいて、投与に先立ち組み合わせることができる。
別の態様では、選択された対象に関する本明細書に記載される組成物(例えば、製造品/医薬品のセットを形成する)の用量を決定する方法であって、処置前に(ベースライン)対象の体重(小数第3位で四捨五入される(rounded to two decimal points))を決定するステップと、対象の体重をvg/mL濃度で割って、使用されるべき用量を決定するステップとを含む方法が提供される。例えば、コホート1で処置されるべき50kg対象に関して、0.5e14vgのZFN1(例えば、47171または71557)、0.5e14vgのZFN2(例えば、47898または71729)および4e14 SB-IDSが使用される。さらに、これらのステップが実行される:(i)コホート用量にベースライン時の患者体重を掛け、次いでVG濃度で割ることにより、3種の製品構成成分体積を計算するステップであって、例えば、次の通りに行われるステップ:(a)試験コーディネーターからコホートおよびベースライン時の患者体重を得ること、(b)臨床解析証明書(Clinical Certificates of Analysis)からVG濃度を得ること、(ii)3種の製品構成成分体積およびNS/PBS体積をまとめて加算することにより、総体積を計算するステップ、(iii)0.25%HSAの最終濃度の達成に要求されるHSA静脈内液剤の体積を計算するステップ、ならびに(iv)調整されたNS/PBS体積を計算するステップ。本方法は、総体積を決定することにより、対象の体重に対して正確な投与量で製剤(例えば、本明細書に記載される3種の医薬品を含む製造品を含む)を用意するステップと、必要とされるヒト血清アルブミン(HSA)静脈内液剤の体積を計算し、これにより、選択された対象に対する正確な構成成分濃度を達成するステップとをさらに含むことができる。
【0084】
一部の実施形態では、用量は、対象の肝臓の体積によって決定される。対象の体重は、特に、より重い患者では、必ずしも肝臓体積と直接相関するとは限らない。月齢2ヶ月未満の小児患者では、種々の治療薬の最適な投与量は、肝毒性を回避するために肝臓体積に基づくことができる(Bartelink et al. (2006) Clin Pharm 45(11):1077-1097を参照)。よって、一部の対象に対し、用量は、おおよその肝臓体積によって決定することができる。これらの実例では、肝臓体積は、例えば、年齢、性別、体重、身長、ボディ・マス・インデックスおよび体表面積などのパラメーターの組合せに基づく式の使用により、当技術分野で公知の方法によって推定することができる(Yuan et al. (2008) Transplant Proc 40(10):3536-40)。当技術分野で公知の、肝臓体積を推定または決定するための他の方法は、CTまたはMRIスキャン、および腹部形状寸法の推定を含む(Yang et al. (2018) Yonsei Med J 59(4):546-553;Huynh et al. (2014) AJR Am J Roentgenol 202(1):152-59)。
【0085】
別の態様では、本明細書に記載される組成物を投与する方法であって、本明細書に記載される製造品(例えば、本明細書に記載される通り、3種の(AAV)医薬組成物(左ZFN、右ZFN、AAVドナー)を別々にまたは一緒に含む医薬品)を用意するステップと、対象に対して選択された用量で1種または複数種の静脈内液剤を製剤化するステップと(例えば、本明細書に記載される方法を使用して)、静脈内液剤を、それを必要とする対象に静脈内投与するステップとを含む方法が本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、製造品の3種の構成成分(ZFN1、ZFN2およびIDSドナー)は、およそ200mL IV注入バッグ、例えば、NSまたはPBS中0.25%HSAを含有するIV注入バッグに別々に添加される。総注入体積は、対象のコホート割り当ておよび体重(kg)に従って計算され、対象のコホート割り当ておよび体重(kg)に応じておよそ240~800mLの間であると予想される。調製された注入製品は、対象が病院または救急治療施設にいる間に、定速注入ポンプを使用して、100mL/時間の静脈内注入により投与される。本明細書に記載される方法のいずれかは、いずれかの速度で、例えば、10~200mL/時間(またはその間のいずれかの値)で、注入ポンプを使用して送達することができる。ある特定の実施形態では、静脈内液剤は、100mL/時間の速度で送達される。対象は、ERTを受けていてよい、または過去にERTを受けたことがあってよい。ある特定の実施形態では、ERTは、静脈内液剤注入の週の間に与えられない。
【0086】
対象の白血球におけるIDSのレベル(活性)を増加させる方法であって、本明細書に記載される静脈内液剤(例えば、3種の医薬組成物を含む系)を投与するステップを含む方法も提供される。ある特定の実施形態では、IDSレベルは、正常未満(MPS II対象における)から、正常範囲内のレベル(非MPS II対象におけるレベル)へと増加する。増加したIDSレベル/活性は、IDSレベル/活性を直接測定することにより、および/またはGAGレベルを測定することにより決定することができる。本明細書に記載される方法および組成物を使用して、血漿および尿におけるIDSレベル(活性)を増加させることもできる。
【0087】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、対象は、例えば、静脈内液剤の注入の1、2、3、4、5、6、7日前にもしくはそれよりも前に、注入当日に、および/または注入の最大20週間後にもしくはそれよりも後に、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)を受けることができ、投与量は、対象の体重に基づき決定される。対象の体重によって決定される、経時的な経口プレドニゾン漸減用量の例示的なスケジュールを下の表Aに示す:
【表A】
【0088】
一部の実施形態では、表Aに例示される用量以外の、コルチコステロイドまたは他の免疫抑制薬の他の用量(より多いまたは少ない用量を含む)を使用することができる(例えば、2.0、1.5mg/kg/日のプレドニゾロンもしくはそれよりも多く、またはメトトレキセート7.5~15.5mg/週)。一部の実施形態では、漸減の開始は、表Aに例示されているよりも後に行う(例えば、4、5、6、7または8週間またはそれよりも後に)。
【0089】
これらのおよび他の態様は、開示を全体として踏まえることにより、当業者に直ちに明らかとなる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
MPS IIを有する対象における追加の処置手順の必要性、症状の開始、進行および/または重症度を低減、延期および/または排除する方法であって、第1、第2および第3のAAVベクターを含む組成物を投与することにより、前記対象を処置するステップを含み、前記第1のAAVベクターが、71557または47171と命名された左ZFNをコードする配列を含み、前記第2のAAVベクターが、71728または47898と命名された右ZFNをコードする配列を含み、前記第3のAAVベクターが、イズロン酸2-スルファターゼ(IDS)をコードする配列を含む、方法。
(項目2)
前記対象におけるGAGレベルが低減、安定化される、および/またはGAGが前記対象の尿から排除される、項目1に記載の方法。
(項目3)
血漿および/または白血球におけるIDSレベルが、安定化および/または増加され、必要に応じて、IDSレベルが、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
第1、第2および第3のAAVベクターが、1:1:8の固定比で投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
低減、延期および/または排除される前記追加の処置手順が、酵素補充療法(ERT);骨髄移植;ならびに/または整形外科的、心臓および/もしくは上気道閉塞(例えば、アデノイド口蓋扁桃摘出術、ヘルニア修復術、脳室腹腔シャント、心臓弁置換術、手根管開放術、脊髄減圧)のための1種もしくは複数種の支持的外科手順を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
その開始、進行または重症度が低減、延期または排除される、MPS IIに関連する前記症状が、機能的能力の減退、神経学的増悪、関節硬直、車椅子に依存するようになること、身体障害の進行、強制空気陽圧換気の要求(人工呼吸器の要求)および/または寿命短縮を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第1および/または第2のAAVベクターが、次の配列:小型のペプチド(FLAGまたはHisタグ配列などのペプチドタグを含むがこれらに限定されない)をコードする配列;WPRE配列;核局在化シグナル(NLS)コード配列;ポリAシグナル;ジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガータンパク質のうち1つもしくは複数における1個もしくは複数の変異;前記ジンクフィンガーヌクレアーゼのFokIヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断ハーフドメインにおける1個もしくは複数の変異;前記ZFNの発現を駆動するプロモーター配列(例えば、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターなどの肝臓特異的プロモーター);1つもしくは複数のイントロン配列(例えば、ヒトβ-グロビン遺伝子の第1のイントロン由来の5’ドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のイントロン由来の分枝および3’アクセプター部位を含むHGG-IGGキメライントロン);および/または1つもしくは複数のエンハンサー配列(例えば、ヒトApoEエンハンサー配列)のうち1つまたは複数を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記左ZFNが、71557を含み、前記右ZFNが、71728を含む、または
前記左ZFNが、SB-A6P-ZFL2を含み、前記右ZFNが、SB-A6P-ZR2を含む、または
前記左ZFNが、47171を含み、前記右ZFNが、47898を含む、または
前記左ZFNが、SB-A6P-ZLEFTを含み、前記右ZFNが、SB-A6P-ZRIGHTを含む、
先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記IDSドナーが、ヒトIDSコード配列、必要に応じて、配列番号15に示す配列、および/または(i)表3に示す配列もしくは(ii)配列番号17に示す配列を含むAAVベクターを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
処置の前および後の前記対象において、血漿、肝臓、CSFにおけるまたは白血球におけるIDS活性および/またはレベルを測定するステップをさらに含み、IDS活性が処置後に増加する(例えば、正常範囲まで)場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
処置の前および後の前記対象の尿における総GAGレベル、デルマタン硫酸を含むGAG(DS GAG)レベルおよび/またはヘパラン硫酸を含むGAG(HS GAG)レベルを測定するステップをさらに含み、GAG、DS GAGおよび/またはHS GAGレベルが処置後に低減する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
処置の前および後の努力肺活量を測定するステップをさらに含み、肺機能が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
処置の前および後の歩行距離を測定するステップをさらに含み、歩行距離が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
処置の前および後の関節可動域(JROM)を測定するステップをさらに含み、JROMが処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
脾臓および/または肝臓体積が処置後に増加する前および後に脾臓および/または肝臓体積を測定するステップをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
処置の前および後の1つまたは複数の神経認知能力を測定するステップをさらに含み、前記神経認知能力のうち1つまたは複数が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
身体障害進行、臓器腫大、機能亢進、攻撃性、神経学的増悪、関節硬直、骨格変形、心臓弁肥厚、難聴、角膜混濁および視覚障害、ヘルニアおよび/または上気道感染症が、処置後に前記対象において抑制、低減、延期または排除される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記対象における医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性が、処置後に安定化、延期、低減または避けられる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記対象が車椅子に依存することの開始が、処置後に延期、低減または避けられる、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記対象の平均余命が、処置後に増加する、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記追加の治療手順が、ERTであり、必要に応じて、ERTが、処置後に低減または中止され、必要に応じて、ERTが、処置後に数時間、数週間、数ヶ月間または数年間低減または中止される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記追加の治療手順が、骨髄移植である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記対象が、1e12~1e16vg/kgの間の総AAV用量を受け、必要に応じて、前記総AAV用量が、(i)5e11vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e12vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e12vg/kg;(ii)1e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e12vg/kgの第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e13vg/kg;(iii)5e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e13の第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e13vg/kg;(iv)1e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e13vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e14vg/kg;(v)5e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e14vg/kg;または(vi)1e14vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e15vg/kgを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記組成物が、必要に応じて注入ポンプにより、10~200mL/時間の間のいずれか、必要に応じて100mL/時間の速度で静脈内投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記対象が、本発明の組成物による処置の前および/または後に、必要に応じて、処置に先立つ1週間またはそれより長い間、毎日;処置の当日;処置後7日目に;処置後毎週;および/または処置後最大20週間まで1週間おきに、必要に応じて表Aに示す通り、必要に応じてコルチコステロイド、必要に応じてプレドニゾンを前投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記対象が、早期発症型MPS II、軽症型MPS IIまたは早期発症型MPS IIと軽症型MPS IIとの間のMPS IIを含むハンター症候群を有する成人または子供である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目27)
前記組成物が、前記第1、第2および第3のAAVベクターを含む3種の医薬組成物を含む製剤を含む製造品を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目28)
各医薬組成物が、異なる色で標識されている、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記医薬組成物が、投与に先立ち、必要に応じて静脈内注入バッグにおいて組み合わされる、項目27または項目28に記載の方法。
(項目30)
前記対象のための総用量が、次の通り:処置前に前記対象の体重を決定するステップと;前記対象の体重をvg/mL濃度で割って、使用されるべき用量を決定するステップとによって決定され、必要に応じて、前記方法が、(i)コホート用量に処置前の前記患者体重を掛け、次いで、前記VG濃度で割ることによって、例えば、次の通り:(a)試験コーディネーターから前記コホートおよびベースライン時の患者体重を得て、(b)臨床解析証明書から前記VG濃度を得ることによって、3種の製品構成成分体積を計算するステップ;(ii)前記3種の製品構成成分体積およびNS/PBS体積をまとめて加算することにより、総体積を計算するステップ;(iii)0.25%HSAの最終濃度の達成に要求されるHSA静脈内液剤の体積を計算するステップ、ならびに(iv)調整された前記NS/PBS体積を計算するステップを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目31)
第1、第2および第3のAAVベクターを含む組成物の使用であって、前記第1のAAVベクターが、71557または47171と命名された左ZFNをコードする配列を含み、前記第2のAAVベクターが、71728または47898と命名された右ZFNをコードする配列を含み、前記第3のAAVベクターが、IDSをコードする配列を含む、MPS IIを有する対象における追加の処置手順の必要性、症状の開始、進行および/または重症度を低減、延期および/または排除するための、使用。
(項目32)
前記対象におけるGAGレベルが、前記対象の尿において低減、安定化および/または排除される、項目31に記載の使用。
(項目33)
血漿および/または白血球におけるIDSレベルが、安定化および/または増加され、必要に応じて、IDSレベルが、同じ状態を保つまたは検出レベルを下回る、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目34)
第1、第2および第3のAAVベクターが、1:1:8の固定比で投与される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目35)
低減、延期および/または排除される前記追加の処置手順が、酵素補充療法(ERT);骨髄移植;ならびに/または整形外科的、心臓および/もしくは上気道閉塞に対する1種もしくは複数種の支持的外科手順を含み、必要に応じて、心臓および/または上気道閉塞が、アデノイド口蓋扁桃摘出術、ヘルニア修復術、脳室腹腔シャント、心臓弁置換術、手根管開放術、脊髄減圧を含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目36)
その開始、進行または重症度が低減、延期または排除される、MPS IIに関連する前記症状が、機能的能力の減退、神経学的増悪、関節硬直、車椅子に依存するようになること、身体障害の進行、強制空気陽圧換気の要求および/または寿命短縮を含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目37)
前記第1および/または第2のAAVベクターが、次の配列:小型のペプチド、必要に応じて、FLAGまたはHisタグ配列などのペプチドタグをコードする配列;WPRE配列;核局在化シグナル(NLS)コード配列;ポリAシグナル;ジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガータンパク質のうち1つもしくは複数における1個もしくは複数の変異;前記ジンクフィンガーヌクレアーゼのFokIヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断ハーフドメインにおける1個もしくは複数の変異;前記ZFNの発現を駆動するプロモーター配列、必要に応じて、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーターなどの肝臓特異的プロモーター;1つもしくは複数のイントロン配列、必要に応じて、ヒトβ-グロビン遺伝子の第1のイントロン由来の5’ドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のイントロン由来の分枝および3’アクセプター部位を含むHGG-IGGキメライントロン;ならびに/または1つもしくは複数のエンハンサー配列、必要に応じて、ヒトApoEエンハンサー配列のうち1つまたは複数を含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目38)
前記左ZFNが、71557を含み、前記右ZFNが、71728を含む、または
前記左ZFNが、SB-A6P-ZL2を含み、前記右ZFNが、SB-A6P-ZR2を含む、または
前記左ZFNが、47171を含み、前記右ZFNが、47898を含む、または
前記左ZFNが、SB-A6P-ZLEFTを含み、前記右ZFNが、SB-A6P-ZRIGHTを含む、
先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目39)
前記IDSドナーが、ヒトIDSコード配列、必要に応じて、配列番号15に示す配列を含むドナー、および/または(i)表3に示す配列もしくは(ii)配列番号17に示す配列を含むAAVベクターを含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目40)
処置の前および後の前記対象において、血漿、肝臓、CSFにおけるまたは白血球におけるIDS活性および/またはレベルを測定するステップをさらに含み、IDS活性が、処置後に必要に応じて正常範囲まで増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目41)
処置の前および後の前記対象の尿における総GAGレベル、デルマタン硫酸を含むGAG(DS GAG)レベルおよび/またはヘパラン硫酸を含むGAG(HS GAG)レベルを測定するステップをさらに含み、GAG、DS GAGおよび/またはHS GAGレベルが処置後に低減する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除され、必要に応じて、GAG、DS GAGおよび/またはHS GAGレベルが、クレアチニンに対する比として表現される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目42)
処置の前および後の努力肺活量を測定するステップをさらに含み、肺機能が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目43)
処置の前および後の歩行距離を測定するステップをさらに含み、歩行距離が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目44)
処置の前および後の関節可動域(JROM)を測定するステップをさらに含み、JROMが処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目45)
脾臓および/または肝臓体積が処置後に増加する前および後に脾臓および/または肝臓体積を測定するステップをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目46)
処置の前および後の1つまたは複数の神経認知能力を測定するステップをさらに含み、前記神経認知能力のうち1つまたは複数が処置後に増加する場合、追加の治療手順が、延期、低減または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目47)
身体障害進行、臓器腫大、機能亢進、攻撃性、神経学的増悪、関節硬直、骨格変形、心臓弁肥厚、難聴、角膜混濁および視覚障害、ヘルニアおよび/または上気道感染症が、処置後に前記対象において抑制、低減、延期または排除される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目48)
前記対象における医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性が、処置後に安定化、延期、低減または避けられる、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目49)
前記対象が車椅子に依存することの開始が、処置後に延期、低減または避けられる、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目50)
前記対象の平均余命が、処置後に増加する、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目51)
前記追加の治療手順が、ERTであり、必要に応じて、ERTが、処置後に数時間、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間低減または中止される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目52)
前記追加の治療手順が、骨髄移植である、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目53)
前記対象が、1e12~1e16vg/kgの間の総AAV用量を受け、必要に応じて、前記総AAV用量が、(i)5e11vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e12vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e12vg/kg;(ii)1e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e12vg/kgの第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e13vg/kg;(iii)5e12vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e13の第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e13vg/kg;(iv)1e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e13vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e14vg/kg;(v)5e13vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに4e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、5e14vg/kg;または(vi)1e14vg/kgの前記第1および第2のAAVベクターならびに8e14vg/kgの前記第3のAAVベクターを必要に応じて含む、1e15vg/kgを含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目54)
前記組成物が、必要に応じて注入ポンプにより、10~200mL/時間の間のいずれかの速度で、必要に応じて100mL/時間の速度で静脈内投与される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目55)
前記対象が、本発明の組成物による処置の前および/または後に、必要に応じて、処置に先立つ1週間またはそれより長い間、毎日;処置の当日;処置後7日目に;処置後毎週;および/または処置後最大20週間まで1週間おきに、必要に応じて表Aに示すスケジュールに従って、必要に応じてコルチコステロイド、必要に応じてプレドニゾンを前投与される、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目56)
前記対象が、早期発症型MPS II、軽症型MPS IIまたは早期発症型MPS IIと軽症型MPS IIとの間のMPS IIを含むハンター症候群を有する成人または子供である、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目57)
前記組成物が、前記第1、第2および第3のAAVベクターを含む3種の医薬組成物を含む製剤を含む製造品を含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
(項目58)
各医薬組成物が、異なる色で標識されている、項目57に記載の使用。
(項目59)
前記医薬組成物が、投与に先立ち、必要に応じて静脈内注入バッグにおいて組み合わされる、項目57または項目58に記載の使用。
(項目60)
前記対象のための総用量が、次の通り:処置前に、必要に応じて小数点第2位を四捨五入した前記対象の体重を決定するステップと;前記対象の体重をvg/mL濃度で割って、使用されるべき用量を決定するステップとによって決定され、必要に応じて、前記方法が、(i)コホート用量に処置前の前記患者体重を掛け、次いで、前記VG濃度で割ることによって、例えば、次の通り:(a)試験コーディネーターから前記コホートおよびベースライン時の患者体重を得て、(b)臨床解析証明書から前記VG濃度を得ることによって、前記3種の製品構成成分体積を計算するステップ;(ii)前記3種の製品構成成分体積およびNS/PBS体積をまとめて加算することにより、総体積を計算するステップ;(iii)0.25%HSAの最終濃度の達成に要求されるHSA静脈内液剤の体積を計算するステップ、ならびに(iv)調整された前記NS/PBS体積を計算するステップを含む、先行する項目のいずれかに記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、対象におけるMPS IIの症状の軽減に必要とされる最小有効用量を推定するためのPK/PDモデルを発明するために選ばれたステップを示す、概略図である。
【0091】
図2図2は、モデルの発明において考慮される因子、および観察されるSB-913マウスデータにElaprase(登録商標)ヒトPKデータを関連付けるのに使用される数学的計算を示す概略図である。
【0092】
図3図3は、マウス試験からの予測薬物動態(PK、IDS血漿活性)および予測薬物動態力学的(PD、尿GAG濃度)データの整列を示し、この試験において、マウスは、本発明のポリヌクレオチドで処置された。予測値は、黒色の実線として示す一方、実測値は、白丸として示す。データは、予測値および実測値がアラインすることを実証する。
【0093】
図4図4は、3種の異なる用量群に関する、ヒトにおける予測PKおよびPD値を示す。モデルは、5e+12の最低用量であっても、尿GAGの低減において有効性を有することを予測する。
【0094】
図5A図5Aおよび図5Bは、グルコサミノグリカン(glucosaminoglycan)(GAG)の分解を描写する図である。図5Aは、デルマタン硫酸の異化分解を示す。図5Bは、ヘパラン硫酸の異化分解を示す。MPS II疾患は、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸の両方を分解するプロセスを開始不能にして、MPS IIを有する対象のほぼ全ての臓器および体組織ならびに尿におけるこれらのGAGの蓄積を生じる。細胞リソソームの内側へのGAGの慢性蓄積は、MPS II患者における細胞のうっ血(cellular engorgement)、臓器腫大、組織破壊および臓器系機能不全をもたらす。
図5B図5Aおよび図5Bは、グルコサミノグリカン(glucosaminoglycan)(GAG)の分解を描写する図である。図5Aは、デルマタン硫酸の異化分解を示す。図5Bは、ヘパラン硫酸の異化分解を示す。MPS II疾患は、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸の両方を分解するプロセスを開始不能にして、MPS IIを有する対象のほぼ全ての臓器および体組織ならびに尿におけるこれらのGAGの蓄積を生じる。細胞リソソームの内側へのGAGの慢性蓄積は、MPS II患者における細胞のうっ血(cellular engorgement)、臓器腫大、組織破壊および臓器系機能不全をもたらす。
【0095】
図6A図6A図6Cは、処置後16週間の尿GAG、尿デルマタン硫酸および尿ヘパラン硫酸レベルのパーセント変化を描写するグラフである。図6Aは、コホート1およびコホート2における尿総GAGのベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。総尿GAGは、検証済みの1,9-ジメチレンブルー(DMB)比色アッセイによって測定した。図6Bは、コホート1およびコホート2における尿デルマタン硫酸のベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。図6Cは、コホート1およびコホート2における尿ヘパラン硫酸のベースラインからのパーセント変化を描写し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。尿デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸は、検証済みのMS/MSアッセイによって測定した。図6におけるデータは、コホート2における対象が、減少した総尿GAG、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸を有したことを示す。
図6B図6A図6Cは、処置後16週間の尿GAG、尿デルマタン硫酸および尿ヘパラン硫酸レベルのパーセント変化を描写するグラフである。図6Aは、コホート1およびコホート2における尿総GAGのベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。総尿GAGは、検証済みの1,9-ジメチレンブルー(DMB)比色アッセイによって測定した。図6Bは、コホート1およびコホート2における尿デルマタン硫酸のベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。図6Cは、コホート1およびコホート2における尿ヘパラン硫酸のベースラインからのパーセント変化を描写し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。尿デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸は、検証済みのMS/MSアッセイによって測定した。図6におけるデータは、コホート2における対象が、減少した総尿GAG、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸を有したことを示す。
図6C図6A図6Cは、処置後16週間の尿GAG、尿デルマタン硫酸および尿ヘパラン硫酸レベルのパーセント変化を描写するグラフである。図6Aは、コホート1およびコホート2における尿総GAGのベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。総尿GAGは、検証済みの1,9-ジメチレンブルー(DMB)比色アッセイによって測定した。図6Bは、コホート1およびコホート2における尿デルマタン硫酸のベースラインからのパーセント変化を示し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。図6Cは、コホート1およびコホート2における尿ヘパラン硫酸のベースラインからのパーセント変化を描写し、コホート1(左パネル)において、三角形は、対象#1のデータ点を示し、丸は、対象#2のデータ点を示し、コホート2(右パネル)において、菱形は、対象#3のデータ点を示し、四角形は、対象#4のデータ点を示す。尿デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸は、検証済みのMS/MSアッセイによって測定した。図6におけるデータは、コホート2における対象が、減少した総尿GAG、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸を有したことを示す。
【0096】
図7図7は、肝臓におけるアルブミン遺伝子座へのIDS導入遺伝子の組込みの検出に使用されるアッセイを説明する概略図である。アッセイは、肝臓において発現されたmRNAにおける特有のアルブミンエクソン1-IDS融合体を検出するプライマーセットの使用に依存する、PCRに基づくアッセイである。挿入された導入遺伝子の存在下で、PCR産物は、アルブミン遺伝子に対応する1種のプライマーと、IDS導入遺伝子に対応する1種のプライマーとによって駆動される。PCR産物は、IDS導入遺伝子の組込みに依存する。IDS導入遺伝子組込みの非存在下では、第2のPCRアッセイは、アルブミンmRNAに対応するmRNA発現のみを検出する。
【0097】
図8図8は、試験薬による処置前および処置後経時的な、最初の6名の対象における血漿IDSのレベルを描写するグラフのセットである。血漿IDSは、全対象で検出可能であった。
【0098】
図9図9は、試験薬による処置前および処置後経時的な、最初の6名の対象の尿において測定された、クレアチニンに対して正規化されたGAG(ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸および総グリコサミノグリカン)のレベルを描写するグラフのセットである。
【0099】
図10図10は、血液で測定されるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル増加を呈した対象6の血漿IDSレベルの詳細な表示である。点線は、血漿におけるIDSレベルを描写する一方、実線は、血液におけるALTのレベルを描写する。矢印は、プレドニゾンの投与を指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
詳細な説明
標的細胞における適した導入遺伝子配列の挿入を含む、ヒト対象におけるハンター(MPS II)症候群を処置および/または予防するための方法および組成物が本明細書に開示される。処置は、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いて、in vivoで対象自身の肝細胞のアルブミン遺伝子座に、酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(hIDS)導入遺伝子の補正コピーを部位特異的に組み込む。組み込まれた導入遺伝子から発現されると、hIDSは、活性があり、ムコ多糖グリコサミノグリカン(GAG)を分解することができる。本発明は、MPS II対象のための予防または処置の方法について記載する。
【0101】
通常、IDS酵素は、細胞の内側に産生され、そのうち少量が、細胞の不完全な内部輸送系のために、循環中へと漏出し得る。細胞外酵素として定常状態が確立され、これは、細胞の表面にある受容体によって取り入れられて戻される。結果として、通常、身体内で産生される酵素の大部分は、組織に見出され、一般に、循環中にごく僅かな濃度の酵素が見出される。対照的に、ERTは、IDS欠損組織への取り込みを可能にするために、循環中に高濃度を生じるように設計された酵素の大量ボーラスの、血流への直接注入である。しかし、ERTは、一過性高レベルのIDS酵素のみをもたらし、それに続いて、酵素の短い半減期により、また、大量に肝臓によって取り入れられるため、僅か数分間~数時間以内に循環から急速にクリアランスされる。組織への短時間の酵素曝露しかもたらされないため、これにより、ERTの有効性が限定され、本出願人らは、細胞による酵素取り込みが、緩徐な受容体媒介性プロセスであることが分かる。代わりに、MPS IIのための理想的な治療法は、循環において連続的で安定したレベルの酵素を産生し維持することにより、組織へのIDS酵素の長期的かつ持続した曝露を可能にするであろう。循環へと連続的に分泌される少ない量のIDSであっても、組織GAGの低減に十分であり、潜在的に、本明細書に開示される組成物に有効性をもたらす可能性がある。
【0102】
ERTは、処置後に患者の白血球におけるリソソーム酵素活性の量を増加させることが示されたが、これはおそらく、この細胞が、血漿から酵素を取り入れるためである(白血球は、リソソームが豊富な細胞である)。例えば、組換えIDUAを受けるMPS I患者の試験において、白血球におけるIDUAの平均活性は、処置に先立ち1mg当たり0.04Uであり、処置後では、注入7日後に(即ち、次の処置の直前に)1mg当たり4.98Uで測定されたことが報告された(Kakkis et al. (2001) NEJM 344(3)を参照)。同様に、MPS II患者の循環白血球におけるIDSの測定は、組織に達する酵素の存在の決定に有用となり得る。
【0103】
リソソーム蓄積病(LSD)は、通常、廃脂質(waste lipid)、ムコ多糖(即ち、グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)(GAG))の分解に関与する機能的な個々のリソソームタンパク質の欠如を特徴とする希少な代謝的単一遺伝子疾患の群である。これらの疾患は、分解経路における特定の酵素が機能しないことに起因してこれらの化合物を再利用のために処理できないことから、これらの化合物が細胞内に集積することを特徴とする。LSDの病態生理は、最初、GAGの単純な沈着に関係すると考えられたが、現在の研究により、これらの疾患の複雑さが認識されている。GAG貯蔵は、細胞、組織および器官の恒常性の撹乱をもたらすようであり、また、炎症応答の活性化をもたらすサイトカインおよび炎症性モジュレーターの分泌の増加にも結び付けられている(Muenzer(2014年)、Mol Gen Metabol、111巻:63~72頁)。
【0104】
ハンター症候群とも称されるムコ多糖症II(MPS II)は、主に男性に見出されるX連鎖型劣性リソソーム蓄積障害である。MPS IIの発生率は、100,000人の生児出生当たり0.3~0.71として報告される(Burton & Giugliani (2012) Eur J Pediatr. (2012) Apr;171(4):631-9)。疾患の軽症型形態に関する21.7年のより保存的な平均余命中央値の、年間発生率への適用により(疾患の重症形態に関する平均余命は、11.8年である)(Burrow et al. (2008) Biologics. Jun;2(2):311-20;Young & Harper (1982) Med Genet. Dec;19(6):408-11)、現在米国で暮らすMPS IIを有する約629名の個体の推定有病率が得られる。MPS IIは、ムコ多糖グリコサミノグリカン(GAG)のリソソーム分解に関与する酵素をコードするイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)遺伝子における変異によって引き起こされる。これは、尿、血漿および組織におけるGAGの蓄積をもたらし、多系統進行性疾患を引き起こす。GAGは、MPS IIのための最も重要な生化学的測定値である。細胞および組織におけるGAG、特にデルマタン硫酸およびヘパラン硫酸の蓄積は、MPS IIの根本的な病変および臨床症状の原因となる;GAGは、MPS IIの処置に最も一般的に使用される静脈内酵素補充療法の薬力学を査定するための、FDAおよびEMAによって使用される生化学的マーカーであった。ハンター症候群は、身体的および認知的合併症を伴う早期発症型、重症疾患(対象の3分の2)から、身体的疾患のより晩期発症および殆どないまたは全くない中枢神経系(CNS)疾患によって特徴付けされる軽症型MPS IIに及ぶ疾患スペクトラムを表す。特異的な種類のIDS変異(>150種の遺伝子変異が同定された)およびその結果生じる残留IDS酵素のレベルは、疾患の重症度を決定する可能性が最も高い。軽症型形態における残留IDS活性は、野生型IDS活性の0.2~2.4%で測定され、重症表現型の場合は、活性がなかった(Sukegawa-Hayasaka et al. (2006) J Inherit Metab Dis 29(6):755-61)。IDS遺伝子は、Xq28にマッピングされ、24kbにわたって拡散した9個のエクソンを含有する。主要な欠失および再編成は常に、疾患の重症形態に関連する。
【0105】
重症型MPS II対象は典型的に、18ヶ月齢~3歳の間に言葉の遅れおよび発育遅延を有し始める。疾患は、臓器腫大、機能亢進および攻撃性、神経学的増悪、関節硬直および骨格変形(異常脊柱骨を含む)、肥大した舌による粗な顔貌、心臓弁肥厚、難聴およびヘルニアなど、重症型MPS II対象における症状を特徴とする。関節硬直は、歩行および手先の器用さに関する問題を生じる。小児期初期において、対象は、身体活動中に仲間についていくことができないことを示す場合がある一方、その後の人生で、歩行する能力は、短い距離であっても、失われる場合があり、多くの対象は最終的に、車椅子に依存するようになる(Raluy-Callado et al. (2013) Orphanet J Rare Dis 8:101)。対象は、頻繁な上気道感染症を有し、これは最初に、アデノイド口蓋扁桃摘出術などの外科的手順によって処置することができるが、最終的に、気管開口術および/または陽圧換気を要求する場合がある(J. Ed. Wraith (2013) in Emery and Rimoin's Principles and Practice of Medical Genetics, Chapter 102.3, Rimoin, Pyeritz and Korf eds. Elsevier Ltd;Sasaki et al. (1987) Laryngoscope 97: 280-285)。主要な死亡率因子は、中枢神経系合併症、心臓合併症および上気道閉塞である(Sato et al. (2013) Pediatr Cardiol. 34(8):2077-2079)。重症型ハンター症候群を患う無処置対象の平均余命は、10代半ばの年齢に収まり、神経学的増悪および/または心肺不全により死亡する。軽症型形態を有する対象は典型的に、重症対象よりも遅く診断される。疾患の症状は、重症対象と同様であるが、全体的な疾患重症度はより軽度であり、一般に、より緩徐な疾患進行により、認知的機能障害はないまたはごく軽度である。無処置の軽症型形態における死亡は多くの場合、心臓および呼吸器疾患による、20~30歳の間である。
【0106】
MPS IIのために現在承認されている唯一の治療法は、酵素補充療法(ERT)である。組換えIDSタンパク質(イデュルスルファーゼ;Elaprase(登録商標)、Shire)による静脈内(IV)ERTは、0.5mg/kg体重の用量で毎週1回の投与に関して2006年以来米国FDA承認されており、5歳およびそれより年上のMPS II対象において歩行能力を改善することが示された。ERTの限界は、生涯にわたる処置の必要、中和抗体の発生、酵素が血液脳関門を通過できないこと、および毎週の静脈内注入の不便を含む。加えて、Elaprase(登録商標)は、処置後に血漿において非常に短い半減期を有する。承認された用量(0.5mg/kgを3時間注入として毎週投与)で与えた場合、タンパク質は、44分間のおおよその半減期を有する(Elaprase(登録商標)液剤、静脈内注入用処方情報、Shire Human Genetics Therapies、Cambridge MA 2007 October)。イデュルスルファーゼは、CNSへと通過することができないため、ERTは、認知的機能に影響が殆どない~全くない(Parini et al. (2015) Mol Gen Metabol Rep 3:65-74)。MPS IIに伴う心弁疾患の処置に対して限られた有効性を有することも示唆された(Sato et al.、同書)。ハーラー症候群(MPS Iの重症形態)とは対照的に、造血幹細胞移植(HSCT)は、認知的機能障害の処置における有効性の欠如のため、MPS IIの重症形態に対して歴史的に推奨されていない(Guffon et al. (2009) J. Pediatric 154(5):733)。
【0107】
予備的解析において、分子および酵素的な証拠が、in vivo(身体の内側)でのヒトゲノムの編集により見出された。本明細書に開示される組成物は、機能的IDS酵素の連続的供給が、対象の生涯にわたり産生されるように、対象の肝臓を処置するように意図されている。in vivoゲノム編集の予備的証拠は、ゲノム編集された肝臓細胞が、MPS IIを有する患者においてIDS酵素を生成することができる可能性があることを示唆するが、より多くのデータが、IDS酵素増加が、臨床成績を改善するかどうかに関する理解に必要とされる。中間結果は、in vivo編集が、肝臓において起こったことを示唆し、生化学的データ(例えば、活性IDS酵素の産生および血液中への分泌)は、ゲノム編集された肝臓細胞が、MPS IIを有する患者においてIDS酵素を生成することができることを示唆する。肝臓生検は、現在のところ、3名の適格対象について解析された - そのうち1名は低用量コホートから、2名は中間用量コホートから得た。両方の中間用量コホート対象由来の肝臓組織試料において、遺伝子組込みアッセイを使用して、ゲノム編集成功の分子シグナルが検出された。この検査は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)方法を使用して、アルブミン-IDSキメラmRNA転写物を同定する。中間用量コホートにおける2名の対象由来の生検試料におけるアルブミン-IDS mRNA融合転写物の検出は、内因性アルブミン遺伝子内の予想される部位においてIDS遺伝子のZFN媒介性組込みが起こったことを指し示す。より低感度のアッセイ(0.1%の定量下限)であるMiSeq DNA配列決定を使用して行われた別の肝臓組織解析は、低および中間用量コホート対象由来の試料において編集を検出しなかった。第二世代の、潜在的により強力なZFN構築物(例えば、SB-71557およびSB-71728)を、いくつかの改善の中でもとりわけ編集効率を増加させるように設計した。前臨床データは、3種の潜在的なZFN 2.0利点を示した:(1)構造変化による効率および効力の5~30倍改善;(2)アルブミン遺伝子における標的遺伝子座に一塩基多型(SNP)を有する患者(集団のおよそ20%)において等しく良好に機能する能力;ならびに(3)改善された特異性(米国特許出願第16/271,250号を参照)。これらのZFN組成物も検査される。
【0108】
新たに開発された高感度定量的アッセイ(0.78nmol/時間/mLの定量下限)を使用して、血漿IDS活性を測定した。ベースラインと比較したIDS酵素活性の僅かな増加が、中間用量を受ける2名の対象において記録され、高用量を受ける1名の対象において、24週間ではまだ、このような測定値は、ベースライン値に対して予想される範囲内のままであった(82nmol/時間/mLより高いと推定される正常範囲と比較して、10nmol/時間/mL未満)。
【0109】
血漿IDS活性の実質的な増加は、高用量コホートの第2の患者において測定され、レベルは、本明細書に記載される組成物の投与後6週目までにおよそ50nmol/時間/mLへと高まる。血漿IDS活性レベルはその後、疑われる免疫応答によるAAVに基づく治療法の公知リスクである軽度高トランスアミナーゼ血症の発症と併せて減少した。肝臓機能検査におけるグレード1上昇は、62、111および128日目に測定した。患者は、試験薬とは無関係の嵌頓臍ヘルニアのため121日目に入院した。最新の観察の時点で、患者の血漿IDS活性は、14nmol/時間/mLと測定され、これはベースライン値を上回るが、正常範囲を下回る。
【0110】
全6名の患者のベースライン尿GAG測定値は、ベースラインで全対象において上昇したヘパラン硫酸を除いて、正常であるまたはそれを僅かに上回るとみなされる範囲内であった。結果全体は、ベースラインの変動性を明らかにした後に、本明細書に開示される組成物の用量に関してGAGの実質的な増加も減少も示さなかった。
【0111】
本明細書に開示される組成物の投与後に観察される生化学的変化の臨床関連性は、臨床データとして査定され、患者成績は、ERT中止の試みの後に解析される。今日まで、2名の中間用量および1名の高用量患者が、ERT中止を開始した。手順を開始した1名の中間用量患者は、疲労および増加するGAGのため、およそ3ヶ月後にERTを再開した。将来における追加のデータ読み取りは、高用量コホート拡大対象由来の生化学的データ、肝臓生検解析およびERT中止後の成績を含む。
【0112】
概要
本明細書に開示される方法、ならびに組成物の調製および使用の実施は、特に示さない限り、本技術分野の技術範囲内の、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAならびに関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、SambrookらMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期的更新;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、119巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)Humana Press、Totowa、1999年を参照されたい。
【0113】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、相互交換可能に使用され、直鎖状または環状コンフォメーションの、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈すべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対合特異性を有する;即ち、Aのアナログは、Tと塩基対合する。
【0114】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、相互交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1または複数のアミノ酸が、対応する天然起源のアミノ酸の化学的アナログまたは修飾された誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0115】
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的な非共有結合相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要はない。かかる相互作用は一般に、10-6-1またはそれ未満の解離定数(K)を特徴とする。「親和性」とは、結合の強度を指す:増加した結合親和性は、より低いKと相関する。
【0116】
「結合タンパク質」は、別の分子と非共有結合的に結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合できる。タンパク質結合タンパク質の場合、これは、それ自体と結合でき(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成する)および/または異なるタンパク質(単数もしくは複数)の1もしくは複数の分子に結合できる。結合タンパク質は、1つよりも多い型の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0117】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、タンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインであり、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1または複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様式でDNAに結合する。用語、ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。用語「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」は、1個のZFNと共に、二量体形成して標的遺伝子を切断するZFNの対(対のメンバーは、「左および右」または「第1および第2の」または「対」と称される)を含む。
【0118】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1または複数のTALEリピートドメイン/単位を含むポリペプチドである。これらのリピートドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「リピート単位」(「リピート」とも呼ぶ)は、典型的には、33~35アミノ酸長であり、天然起源のTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。例えば、米国特許第8,586,526号および同第9,458,205号を参照されたい。用語「TALEN」は、1個のTALENと共に、二量体形成して標的遺伝子を切断するTALENの対(対のメンバーは、「左および右」または「第1および第2の」または「対」と称される)を含む。ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然起源のジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の工学技術での作製(1または複数のアミノ酸を変更する)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「工学技術で作製され」得る。したがって、工学技術で作製されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然起源のタンパク質である。DNA結合タンパク質を工学技術で作製するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が合理的基準から主に生じる、天然起源でないタンパク質である。設計のための合理的基準には、置換ルールの適用、ならびに既存のZFPおよび/またはTALEの設計および結合データの情報を記憶するデータベース中の情報を処理するためのコンピューターアルゴリズムが含まれる。例えば、米国特許第8,568,526号、同第6,140,081号;同第6,453,242号;および同第6,534,261号を参照されたい;国際特許公開番号WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496もまた参照されたい。
【0119】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験プロセスから主に生じる、天然には見出されないタンパク質である。例えば、米国特許第8,586,526号;同第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;国際特許公開番号WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197およびWO02/099084を参照されたい。
【0120】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを指す。本開示の目的のため、「相同組換え(HR)」とは、例えば、相同性指向性の修復機構を介した細胞における二本鎖切断の修復の間に行われる、かかる交換の特殊化された形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「標的」分子(即ち、二本鎖切断を経験したもの)の鋳型修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の移入をもたらすので、「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として様々に公知である。いかなる特定の理論に制約されることも望まないが、かかる移入は、切断された標的とドナーとの間に形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ補正、および/もしくは標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、ならびに/または関連するプロセスに関与し得る。かかる特殊化されたHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチド中に取り込まれるように、標的分子の配列の変更をもたらす。
【0121】
本開示の方法では、本明細書に記載される1または複数の標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位において標的配列(例えば、細胞クロマチン)中に二本鎖切断を生じ、切断の領域中のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを容易にすることが示されている。このドナー配列は、物理的に組み込まれ得、またはあるいは、このドナーポリヌクレオチドは、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用されて、細胞クロマチン中への、ドナーと同様のヌクレオチド配列の全てまたは一部の導入を生じる。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列は、変更され得、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列へと変換され得る。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、別のヌクレオチド配列による1つのヌクレオチド配列の置き換え(即ち、情報的な意味での配列の置き換え)を示すと理解され得、別のポリヌクレオチドによる1つのポリヌクレオチドの物理的または化学的置き換えを必ずしも必要としない。
【0122】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、さらなるジンクフィンガータンパク質またはTALENタンパク質の対が、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖開裂に使用され得る。
【0123】
細胞クロマチン中の目的の領域中の配列の標的化された組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって変更される。かかる相同組換えは、切断の領域と相同な配列が存在する場合に、細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0124】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的の領域中のゲノム配列と相同ではあるが同一ではない配列を含み得、それによって、目的の領域において非同一配列を挿入するように相同組換えを刺激する。したがって、ある特定の実施形態では、目的の領域中の配列と相同なドナー配列の一部分は、置き換えられるゲノム配列に対して、約80~99%の間(またはそれらの間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は、例えば、1ヌクレオチドのみが100個を超える連続する塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で異なる場合、99%よりも高い。ある特定の場合、ドナー配列の非相同部分は、新たな配列が目的の領域中に導入されるように、目的の領域中に存在しない配列を含み得る。これらの例では、非相同配列には、一般に、目的の領域中の配列と相同または同一な、50~1,000塩基対(またはそれらの間の任意の整数値)または1,000よりも大きい任意の数の塩基対の配列が隣接する。他の実施形態では、このドナー配列は、第一の配列とは非相同であり、非相同組換え機構によってゲノム中に挿入される。
【0125】
本明細書に記載される方法のいずれかは、目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化された組込みによる細胞中の1種もしくは複数種の標的配列の部分的もしくは完全な不活性化に使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株もまた提供される。
【0126】
さらに、本明細書に記載される標的化された組込みの方法は、1種または複数種の外因性配列を組み込むためにも使用され得る。外因性核酸配列は、例えば、1種もしくは複数種の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の型のコード配列もしくは非コード配列、および1種もしくは複数種の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。さらに、この外因性核酸配列は、1種または複数種のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害的RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。
【0127】
「開裂」(cleavage)とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。開裂は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が含まれるがこれらに限定されない種々の方法によって開始され得る。一本鎖開裂および二本鎖開裂の両方が可能であり、二本鎖開裂は、2つの個別の一本鎖開裂事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生を生じ得る。ある特定の実施形態では、融合ポリペプチドが、標的化された二本鎖DNA開裂に使用される。
【0128】
「開裂ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なるのいずれか)と協同して、開裂活性(好ましくは二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成する、ポリペプチド配列である。用語「第1および第2の開裂ハーフドメイン」;「+および-の開裂ハーフドメイン」ならびに「右および左の開裂ハーフドメイン」は、相互交換可能に使用されて、二量体形成する開裂ハーフドメインの対を指す。
【0129】
「工学技術で作製された開裂ハーフドメイン」は、別の開裂ハーフドメイン(例えば、別の工学技術で作製された開裂ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された開裂ハーフドメインである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,888,121号;同第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,823,618号を参照されたい。
【0130】
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;直鎖状、環状または分枝状であり得、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。用語「ドナー配列」とは、ゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2ヌクレオチド長と10,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、好ましくは約100ヌクレオチド長と1,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは約200ヌクレオチド長と500ヌクレオチド長との間のものであり得る。
【0131】
「疾患関連遺伝子」とは、単一遺伝子疾患においていくつかの様式で欠損している遺伝子である。単一遺伝子疾患の非限定的な例としては、重症複合免疫不全症、嚢胞性線維症、リソソーム蓄積病(例えば、ゴーシェ病、ハーラー病 ハンター病、ファブリー病、ニーマン・ピック病、テイ・サックス病など)、鎌状赤血球貧血、およびサラセミアが挙げられる。
【0132】
「血液脳関門」とは、中枢神経系において循環血液を脳から分離する高度に選択的な透過性障壁である。血液脳関門は、血液溶質の通過を制限するCNS血管中の密着結合によって接続された脳内皮細胞によって形成される。血液脳関門は、長い間、大きな分子治療薬の取り込みを妨げ、大多数の小分子治療薬の取り込みを妨げると考えられてきた(Pardridge(2005年)NeuroRx、2巻(1号):3~14頁)。
【0133】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、各々2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含む:リンカーDNA(生物に依存して変動する長さのもの)が、ヌクレオソームコア間に延びる。1分子のヒストンH1が、一般に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的のため、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全ての型の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンには、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方が含まれる。
【0134】
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、細胞のゲノムを構成する全ての染色体のコレクションであるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1または複数の染色体を含み得る。
【0135】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製性の核酸、核タンパク質複合体または他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0136】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合に、結合分子が結合する核酸の一部分を規定する核酸配列である。
【0137】
「外因性」分子は、細胞中に通常は存在しない分子であるが、1または複数の遺伝学的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞中に導入され得る。「細胞中での通常の存在」は、特定の発生段階または細胞の環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、ヒートショックによって誘導される分子は、ヒートショックされていない細胞に関して、外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能障害性内因性分子の機能性バージョン、または正常に機能する内因性分子の機能障害性バージョンを含み得る。
【0138】
外因性分子は、とりわけ、例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるような小分子、または巨大分子、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾された誘導体、あるいは上記分子のうちの1または複数を含む任意の複合体であり得る。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得;直鎖状、分枝状または環状であり得;任意の長さのものであり得る。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸、ならびに三重鎖形成性核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれるがこれらに限定されない。
【0139】
外因性分子は、内因性分子と同じ型の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であり得る。例えば、外因性核酸は、細胞中に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞中に通常は存在しない染色体を含み得る。細胞中への外因性分子の導入のための方法は、当業者に公知であり、脂質媒介性移入(即ち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的注射、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が含まれるがこれらに限定されない。外因性分子はまた、内因性分子と同じ型の分子であり得るが、細胞が由来するのとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、マウスまたはハムスターに元々由来する細胞株中に導入され得る。
【0140】
対照的に、「内因性」分子は、特定の発生段階で特定の環境条件下で特定の細胞中に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他のオルガネラのゲノム、または天然起源のエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素が含まれ得る。
【0141】
「融合」分子は、2つまたはそれ超のサブユニット分子が、好ましくは共有結合によって連結された分子である。これらのサブユニット分子は、同じ化学型の分子であり得るか、または異なる化学型の分子であり得る。融合分子の例としては、これだけに限定されないが、融合タンパク質(例えば、タンパク質DNA結合ドメインと開裂ドメインとの間の融合物)、ポリヌクレオチドDNA結合ドメイン(例えば、sgRNA)が開裂ドメインに作用的に会合した融合物および融合核酸(例えば、融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられる。
【0142】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達によって生じ得、このポリヌクレオチドは転写され、この転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生じる。トランス-スプライシング、ポリペプチド開裂およびポリペプチドライゲーションもまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達のための方法は、本開示の他の場所に示される。
【0143】
「遺伝子」には、本開示の目的のために、遺伝子産物をコードするDNA領域(以下を参照)、ならびにかかる調節配列がコード配列および/または転写された配列に隣接してもしなくても、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域が含まれる。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0144】
「遺伝子発現」とは、遺伝子中に含まれる情報の、遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他の型のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって修飾されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリストイル化(myristilation)およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質もまた含まれる。
【0145】
遺伝子発現の「モジュレーション」とは、遺伝子の活性における変化を指す。発現のモジュレーションには、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、開裂、変更、不活性化、ランダム変異)が、発現をモジュレートするために使用され得る。遺伝子不活性化とは、本明細書に記載されるZFPまたはTALENを含まない細胞と比較して、遺伝子発現における任意の低下を指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0146】
「目的の領域」は、外因性分子に結合することが望まれる、細胞クロマチンの任意の領域、例えば、遺伝子または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接した非コード配列などである。結合は、標的化されたDNA開裂および/または標的化された組換えを目的とすることができる。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム中に存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域内、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的の領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小ささもしくは最大2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0147】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)を含む動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
「赤血球(red blood cell)」(RBC)または赤血球(erythrocyte)は、造血幹細胞に由来する最終分化細胞である。赤血球は、ヌクレアーゼおよび大多数の細胞小器官が欠如している。RBCは、肺から末梢組織へ酸素を運搬するためのヘモグロビンを含有する。実際、個々のRBCの33%がヘモグロビンである。RBCはまた、代謝中に細胞によって産生されたCO2も組織の外へ運搬し、呼気中に放出するために肺に戻る。RBCは、骨髄において血中低酸素に応答して産生され、これは、腎臓によるエリスロポエチン(EPO)の放出によって媒介される。EPOにより前赤芽球の数の増加が引き起こされ、完全なRBC成熟化に必要な時間が短縮される。RBCは核または任意の他の再生能を含有しないので、およそ120日後に、その細胞は肝臓、脾臓およびリンパ節におけるマクロファージの食作用活動によって(約90%)または血漿中での溶血によって(約10%)のいずれかで循環から取り除かれる。マクロファージ貪食後、RBCの化学構成成分は、リソソーム酵素の作用によってマクロファージの液胞中で分解される。
【0149】
「分泌組織」とは、産物を個々の細胞から一般には上皮に由来する一部の型の管腔中に分泌する、動物内の組織である。胃腸管に局在化している分泌組織の例としては、腸、膵臓、および胆嚢を裏打ちする細胞が挙げられる。他の分泌組織としては、肝臓、眼に関連する組織および粘膜、例えば唾液腺、乳腺、前立腺、下垂体および内分泌系の他のメンバーが挙げられる。さらに、分泌組織は、分泌を行うことが可能な組織型の個々の細胞を含む。
【0150】
用語「作動可能な連結」および「作動可能に連結した(「operatively linked」または「operably linked」)」は、2つまたはそれ超の構成成分(例えば、配列エレメント)の並置に関して相互交換可能に使用され、ここで、これらの構成成分は、両方の構成成分が正常に機能し、他の構成成分のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能をこれらの構成成分のうちの少なくとも1つが媒介し得る可能性を許容するように、配置される。例示として、転写調節配列、例えばプロモーターは、転写調節配列が、1または複数の転写調節因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、一般に、コード配列とシスで作動可能に連結されるが、このコード配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、エンハンサーとコード配列とが連続していない場合であっても、コード配列に作動可能に連結した転写調節配列である。
【0151】
融合ポリペプチドに関して、用語「作動可能に連結した」とは、構成成分の各々が、他の構成成分と連結して、そのように連結されていない場合にそれが果たすのと同じ機能を果たすという事実を指し得る。例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合された融合ポリペプチドに関して、このZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、活性化ドメインは遺伝子発現を上方調節できる場合に、作動可能な連結状態にある。ZFPまたはTALE DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合した融合ポリペプチドの場合、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインおよび開裂ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFPまたはTALE DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、開裂ドメインは標的部位の近位においてDNAを開裂できる場合に、作動可能な連結状態にある。
【0152】
「機能的」タンパク質、ポリペプチドまたは核酸は、野生型タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能をもたらすいずれかのタンパク質、ポリペプチドまたは核酸を含む。タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列は、全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多い、より少ない、もしくは同じ数の残基を有し得、および/または、1もしくは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含み得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、本技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降アッセイによって、決定され得る。DNA開裂は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。Ausubelら、上記を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは遺伝学的および生化学的の両方の補完によって、決定され得る。例えば、Fieldsら(1989年)Nature 340巻:245~246頁;米国特許第5,585,245号および国際特許公開番号WO98/44350を参照されたい。
【0153】
「ベクター」は、標的細胞に遺伝子配列を移入させることが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子移入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指向することが可能であり、標的細胞に遺伝子配列を移入させることができる、任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを含む。
【0154】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、好ましくは、慣用的なアッセイにおいてである必要はないが、容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。適切なレポーター遺伝子には、抗生物質抵抗性(例えば、アンピシリン抵抗性、ネオマイシン抵抗性、G418抵抗性、ピューロマイシン抵抗性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光もしくは発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)ならびに増強された細胞成長および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が含まれるがこれらに限定されない。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1または複数のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために、所望の遺伝子配列に作動可能に連結され得るレポーターをコードする配列が含まれる。「WPRE」配列は、ウッドチャック肝炎ウイルスに由来するウッドチャック肝炎転写後調節エレメントである。WPREは、ガンマ、アルファおよびベータエレメントを所与の順序で含有する600bp長の三部構成エレメント(tripartite element)であり(Donello et al. (1992) J Virol 72:5085-5092)、AAV系における導入遺伝子の強い発現に寄与する(Loeb et al. (1999) Hum Gene Ther 10:2295-2305)。これは、イントロンを欠如する導入遺伝子の発現も増強する。その天然形態では、WPREは、WHV-Xタンパク質の部分的オープンリーディングフレーム(ORF)を含有する。WHV(We2)エンハンサーのような他のウイルスエレメントの文脈における、十分に発現されたWHV-Xタンパク質は、ウッドチャックおよびマウスにおけるより高い肝臓癌リスクに関連付けられてきた(Hohne et. al (1990) EMBO J 9(4):1137-45;Flajolet et. al (1998) J Virol 72(7):6175-80)。WHV-Xタンパク質は、直接発癌性ではないようであるが、いくつかの試験は、ある特定の状況下で、これが、ヘパドナウイルス(人間に対するB型肝炎ウイルス;ウッドチャックに対するウッドチャック肝炎ウイルス)による感染に伴う肝臓がんの生成のための弱い補因子として作用し得ることを示唆する。多くの場合(Many times)、「野生型」WPREの言及は、その3’領域におけるWHV Xタンパク質オープンリーディングフレーム(ORF)の部分を含有する591bp配列(GenBank受託番号J02442におけるヌクレオチド1094~1684)を指している。このエレメントにおいて、1502位にWHV-Xのための最初のATG開始コドンが存在し、1488位に配列GCTGAを有するプロモーター領域が存在する。Zanta-Boussif(同書)において、mut6WPRE配列が開示されており、この配列中、1488位におけるプロモーター配列は、ATCATに改変され、1502位における開始コドンは、TTGに改変され、WHV-Xの発現を有効に禁止する。J04514.1 WPREバリアントにおいて、ATG WHV X開始部位は、1504位であり、mut6型バリアントは、このJ04514.1系統において作製することができる。別のWPREバリアントは、野生型 WPRE由来の最小ガンマおよびアルファエレメントのみを含む247bp WPRE3バリアントであり(Choi et al. (2014) Mol Brain 7:17)、これは、WHV X配列を欠如する。
【0155】
ある特定の細胞型を囲みこれに結合する細胞外基質は、様々なコラーゲンなどの線維性構造タンパク質、ラミニンおよびフィブロネクチンのような接着性タンパク質、ならびに線維性構造タンパク質が包埋されるゲルを形成するプロテオグリカンを含む、多数の構成成分で構成される。プロテオグリカンは、グリコサミノグリカンと呼ばれる多くの長い多糖鎖が共有結合により結合されたコアタンパク質からなる、非常に大型の巨大分子である。グリコサミノグリカンの高い負電荷のため、プロテオグリカンは、非常に高度に水和されており、これは、プロテオグリカンに、拡張および収縮することができるゲル様マトリックスを形成させることができる特性である。プロテオグリカンは、有効な潤滑剤でもある。「グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)」即ち「GAG」は、反復二糖単位からなる分枝していない多糖の長い直鎖状ポリマーである。反復単位(ケラタンを除いた)は、酸性ウロン酸糖(グルクロン酸またはイズロン酸)またはガラクトースと共に、アミノヘキソース糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)からなる。この一般構造の例外は、酸性ヘキソースの代わりにガラクトースを有するケラタン硫酸である。グリコサミノグリカンは、高度に極性であり、水を引きつける。ヒアルロナンを除くGAGの全てが、およそ30種の異なるコアタンパク質のうち1種に共有結合により連結されて、プロテオグリカンを形成する。コアタンパク質は、粗面小胞体上で合成され、ゴルジへと移され、そこで、ヌクレオシド二リン酸活性化された酸性およびアミノ糖が、グリコシルトランスフェラーゼによって、成長している多糖の非還元末端に交互に付加され、GAGに共通している特徴的な反復二糖構造をもたらす。ヘパリン/ヘパラン硫酸(HS GAG)およびコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸(CS GAG)は、ゴルジ体内で合成され、そこで、粗面小胞体において作製されたタンパク質コアが、グリコシルトランスフェラーゼによるO結合型グリコシル化により翻訳後に改変され、プロテオグリカンを形成する。ケラタン硫酸は、プロテオグリカンのN結合型グリコシル化またはO結合型グリコシル化によりコアタンパク質を改変することができる。第4のクラスのGAGであるヒアルロン酸は、ゴルジによって合成されず、むしろ、動的に伸長される二糖鎖を直ちに分泌する膜内在性シンターゼによって合成される。細胞外基質の正常ターンオーバーにおけるプロテオグリカンの分解は、細胞外基質におけるプロテアーゼによるコアタンパク質のタンパク質分解性切断から始まり、これは次いで、エンドサイトーシスにより細胞に進入する。エンドソームは、その内容物をリソソームに送達し、そこで、タンパク質分解性酵素が、コアタンパク質の分解を完了し、一連のグリコシダーゼおよびスルファターゼが、GAGを加水分解して単糖にする。リソソームは、長いポリマーを加水分解してより短いオリゴ糖にするエンドグリコシダーゼと、GAG断片から個々の酸性またはアミノ糖を切断するエキソグリコシダーゼの両方を含有する。GAGのリソソーム異化反応は、非還元末端から段階的様式で進む(図5を参照)。末端糖が硫酸化される場合、糖が除去され得る前に、硫酸結合(sulfate bond)は、特異的スルファターゼによって加水分解されなければならない。サルフェートが除去された場合、特異的エキソグリコシダーゼは、オリゴ糖の非還元末端から末端糖を加水分解し、よって、これを糖1個分短くする。分解は、この段階的様相で続き、スルファターゼによるサルフェートの除去と、エキソグリコシダーゼによる末端糖の切断を交互に繰り返す。リソソームは、グルコサミンの除去に要求される酵素を欠如するため、サルフェートの除去が、末端グルコサミン残基を残す場合、これをまずアセチル化して、N-アセチルグルコサミンにしなければならない。これは、アセチル基ドナーとしてアセチル-CoAを使用するアセチルトランスフェラーゼによって達成される。グルコサミン残基が、N-アセチル化された場合、これをα-N-アセチルグルコサミニダーゼによって加水分解し、GAGの段階的分解の継続を可能にすることができる。MPS IIの場合、ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸の末端糖が硫酸化され、欠損したIDS酵素は、この硫酸基を除去することができない。正常では、末端糖の基におけるサルフェートは、イズロン酸スルファターゼ(IDS)によって除去され、次いで、GAGは、末端糖の除去のためにアルファイズロニダーゼ(iduromidase)(IDUA)の作用を受ける。
【0156】
用語「対象」および「患者」は、互換的に使用され、ヒト対象および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスおよび他の動物などの実験動物を指す。したがって、用語「対象」または「患者」は、本明細書で使用される場合、本発明の変更された細胞および/または本発明の変更された細胞によって産生されたタンパク質を投与することができるいずれかの哺乳動物対象を意味する。本発明の対象は、MPS II障害を有する対象を含む。
【0157】
一般に、対象は、MPS IIのための処置に適格である。本明細書における目的のため、斯かる適格対象は、MPS IIの1つまたは複数の兆候、症状または他の指標を経験している、経験したことがある、または経験する可能性がある対象である;例えば、MPS IIと新たに診断されたおよび/またはその発症リスクがある、のいずれであれ、MPS IIと診断された。MPS IIを患うまたはこれを患うリスクがある対象は、必要に応じて、組織および/または尿におけるGAGのレベル上昇に関してスクリーニングされた対象として同定することができる。
【0158】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、有益なまたは所望の臨床結果は、次のうち1つまたは複数を含むがこれらに限定されない:疾患に起因する1つもしくは複数の症状の減少、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防または延期)、疾患の進行の延期もしくは緩徐化、疾患状態の寛解、疾患の処置に要求される1種もしくは複数種の他の薬物療法の用量の減少、および/またはクオリティ・オブ・ライフの増加。
【0159】
本明細書で使用される場合、MPS IIの進行の「延期」または「緩徐化」は、疾患の発症を予防する、延ばす、遅らせる、緩徐化する、減速する、安定化するおよび/または先送りにすることを意味する。この延期は、病歴および/または処置されている個体に応じて、様々な期間のものであってよい。
【0160】
「有効用量」または「有効量」は、尿GAGを安定化、減少もしくは排除するのに、および/または血漿における測定可能なIDS活性をもたらすのに有効な、本明細書に開示される対象に与えられる組成物の用量および/または量である。
【0161】
本明細書で使用される場合、「処置開始時に」は、本発明の組成物などのMPS II治療組成物への最初の曝露におけるまたはそれに先立つ期間を指す。一部の実施形態では、「処置開始時に」は、SB-913などのMPS II薬物の約1年、9ヶ月、6ヶ月、3ヶ月、2ヶ月(second months)または1ヶ月前のいずれかである。一部の実施形態では、「処置開始時に」は、MPS II治療組成物への最初の曝露と一致した直前である。
【0162】
用語「車椅子に依存する」は、傷害または疾病により歩行することができず、動き回るには車椅子に頼らなければならない対象を意味する。
【0163】
用語「機械的人工呼吸器」は、対象の肺と大気との間で空気の交換を改善するデバイスについて記載する。
【0164】
本明細書で使用される場合、「に基づく」は、(1)本明細書に記載される対象の特徴の査定、決定または測定(および好ましくは、処置を受けるのに適した対象の選択);および(2)本明細書に記載される処置(複数可)の投与を含む。
【0165】
MPS IIの「症状」は、対象によって経験され、MPS IIを指し示す、構造、機能または感覚における、いずれかの現象または正常からの逸脱である。
【0166】
対象における「重症型MPS II」は、18ヶ月齢~3歳の間の言葉の遅れおよび発育遅延によって特徴付けられる。疾患は、重症型MPS II対象において、臓器腫大、機能亢進および攻撃性、神経学的増悪、関節硬直および骨格変形(異常脊柱骨を含む)、肥大した舌による粗な顔貌、心臓弁肥厚、難聴およびヘルニアによって特徴付けられる。重症型ハンター症候群を有する無処置対象の平均余命は、10代半ばの年齢に収まり、神経学的増悪および/または心肺不全により死亡する。
【0167】
対象における「軽症型形態のMPS II」は典型的に、重症対象よりも遅く診断される。身体的臨床特色は、重症対象と同様であるが、全体的な疾患重症度はより軽度であり、一般に、より緩徐な疾患進行により、認知的機能障害はないまたはごく軽度である。無処置の軽症型形態における死亡は多くの場合、心臓および呼吸器疾患による、20~30歳の間である。
【0168】
用語「支持的外科手術」は、疾患に関連し得る症状を軽減するために、対象に行うことができる外科的手順を指す。MPS IIを有する対象のため、斯かる支持的外科手術は、心臓弁置換術による外科手術、扁桃摘出術およびアデノイド切除術、換気チューブの配置、腹部ヘルニアの修復、頸部減圧、手根管症候群の処置、正中神経の外科的減圧、計装融合(instrumented fusion)(脊椎を安定化および強化するため)、関節鏡検査、股または膝置換、および下肢の軸の補正、および気管開口術を含むことができる(Wraith et al. (2008) Eur J Pediatr. 167(3):267-277;およびScarpa et al. (2011) Orphanet Journal of Rare Diseases 6:72を参照)。
【0169】
用語「免疫抑制剤」は、補助療法に関して本明細書で使用される場合、本明細書で処置されている哺乳動物の免疫系を抑制または遮蔽するために作用する物質を指す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原発現を下方調節もしくは抑制する、またはMHC抗原を遮蔽する物質を含むであろう。斯かる薬剤の例は、2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号を参照);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);ガンシクロビル、タクロリムス、コルチゾールまたはアルドステロンなどのグルココルチコイド、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤またはロイコトリエン受容体アンタゴニストなどの抗炎症剤;アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチル(MMF)などのプリンアンタゴニスト;シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブロモクリプチン(bromocryptine);ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されている通り、MHC抗原を遮蔽する);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;コルチコステロイドもしくはグルココルチコステロイドなどのステロイド、またはグルココルチコイドアナログ、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾン;メトトレキセート(経口または皮下)などのジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤;ヒドロキシクロロキン(hydroxycloroquine);スルファサラジン;レフルノミド;抗インターフェロン-アルファ、-ベータまたは-ガンマ抗体、抗腫瘍壊死因子-アルファ抗体(インフリキシマブまたはアダリムマブ)、抗TNF-アルファイムノアドヘシン(immunoahesin)(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子-ベータ抗体、抗インターロイキン-2抗体および抗IL-2受容体抗体を含む、サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト;抗CDl laおよび抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;汎(pan)T抗体、好ましくは、抗CD3または抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド(7/26/90に公開された国際(Internationla)特許公開番号WO90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF-ベータ;ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNAまたはDNA;FK506;RS-61443;デオキシスパガリン(deoxysperguahn);ラパマイシン;T細胞受容体(Cohen et al.、米国特許第5,114,721号);T細胞受容体断片(Offner et al. (1991) Science 251:430-432;国際特許公開番号WO90/11294;Janeway (1989) Nature 341:482;および国際特許公開番号WO91/01133);ならびにT10B9などのT細胞受容体抗体(EP340,109)を含む。
【0170】
「コルチコステロイド」は、天然に存在するコルチコステロイドの効果を模倣または増大させるステロイドの一般化学構造を有するいくつかの合成のまたは天然に存在する物質のうちいずれか1種を指す。合成コルチコステロイドの例は、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンを含む)、デキサメタゾン、グルココルチコイドおよびベタメタゾンを含む。
【0171】
「添付文書」は、適応症、用法、投与量、投与、禁忌、包装製品と組み合わせるべき他の治療製品、および/または斯かる治療製品の使用に関する警告等に関する情報を含有する、治療製品の商業的パッケージに習慣的に含まれる指示を参照するために使用される。
【0172】
「標識」は、バイアルなどの容器および添付文書を含む、医薬製剤の商業的パッケージ、ならびに他の種類のパッケージングと共に習慣的に含まれる情報を指すように本明細書で使用される。
【0173】
本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうち1つ、いくつかまたは全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を構成することができることを理解されたい。本発明のこれらのおよび他の態様は、当業者には明らかになる。
【0174】
ヌクレアーゼ
本明細書に記載される方法では、IDS導入遺伝子の標的化導入のために1種または複数種のヌクレアーゼを使用することができる。ヌクレアーゼの非限定的な例としては、導入遺伝子が標的化された様式でゲノム中に組み込まれるように導入遺伝子と細胞のゲノムの開裂のためのヌクレアーゼとを保有するドナー分子のin vivo開裂に有用な、ZFN、TALEN、ホーミングエンドヌクレアーゼ、CRISPR/Casおよび/またはTtagoガイドRNAが挙げられる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼの1種または複数種は、天然起源である。他の実施形態では、ヌクレアーゼの1種または複数種は、非天然起源である、即ち、DNA結合分子(DNA結合ドメインとも称される)および/または開裂ドメインにおいて工学技術で作製されている。例えば、天然起源のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更され得る(例えば、選択された標的部位に結合するように工学技術で作製されたZFP、TALEおよび/またはCRISPR/CasのsgRNA)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合ドメインおよび開裂ドメイン(例えば、異種開裂ドメインを有する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;メガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含む。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、Ttago系のCRISPR/Casなどを含む。
【0175】
A.DNA結合ドメイン
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法は、ドナー分子に結合するためおよび/または細胞のゲノム中の目的の領域に結合するために、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを使用する。天然起源のメガヌクレアーゼは、15~40塩基対の開裂部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーへと一般に分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res. 22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet. 12巻:224~228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol. 263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol. 280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。
【0176】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、工学技術で作製された(非天然起源の)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを使用する。I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列は、公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res. 22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet. 12巻:224~228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol. 263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol. 280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように工学技術で作製され得る。例えば、Chevalierら(2002年)Molec. Cell 10巻:895~905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res. 31巻:2952~2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁;米国特許出願公開第2007/0117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてヌクレアーゼに関して変更され得(即ち、ヌクレアーゼが同族開裂ドメインを含むように)、または異種開裂ドメインに融合され得る。
【0177】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物において使用される1種または複数種のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然起源のまたは工学技術で作製された(非天然起源の)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,526号を参照されたい。Xanthomonas属の植物病原性細菌は、重要な作物植物において多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞中に25種よりも多い異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されたタンパク質のなかでも、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターである(Kayら(2007年)Science 318巻:648~651頁を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALエフェクターの1つは、Xanthomonas campestgris pv.Vesicatoria由来のAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127~136頁および国際特許公開番号WO2010/079430を参照されたい)。TALエフェクターは、タンデムリピートの集中したドメインを含有し、各リピートは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34アミノ酸を含有する。さらに、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S、ら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256~272頁を参照されたい)。さらに、植物病原性細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum生物型(biovar)1株GMI1000および生物型4株RS1000における、brg11およびhpx17と称される2つの遺伝子が、XanthomonasのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuerら(2007年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379~4384頁を参照されたい)。これらの遺伝子は、互いにヌクレオチド配列において98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメインにおける1,575bpの欠失が異なる。しかし、両方の遺伝子産物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、その全体が本明細書に参考として援用される米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0178】
これらのTALエフェクターの特異性は、これらのタンデムリピート中に見出される配列に依存する。リピートされる配列は、およそ102bpを含み、これらのリピートは、典型的には、互いに91~100%相同である(Bonasら、同書)。これらのリピートの多型は、12位および13位に通常位置し、12位および13位における超可変二残基(RVD)の正体と、TALエフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの正体との間には、一対一の相関が存在するようである(MoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁ならびにBochら(2009年)Science 326巻:1509~1512頁を参照されたい)。実験的に、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然コードは、12位および13位におけるHD配列が、シトシン(C)への結合をもたらし;NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、そしてINGがTに結合するように、決定されている。これらのDNA結合リピートは、新たな配列と相互作用でき植物細胞において非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化できる人工の転写因子を作製するために、新たな組合せおよびリピート数を有するタンパク質へとアセンブルされている(Bochら、同書)。工学技術で作製されたTALタンパク質は、FokI開裂ハーフドメインに連結されて、酵母レポーターアッセイにおいて活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を生じている(プラスミドベースの標的)。例えば、米国特許第8,586,526号;Christianら(2010年) Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照されたい。
【0179】
ある特定の実施形態では、細胞のゲノムのin vivo開裂および/または標的化された開裂に使用される1種または複数種のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように工学技術で作製されているという点で、非天然起源である。例えば、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol. 20巻:135~141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem. 70巻:313~340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol. 19巻:656~660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632~637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411~416頁;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;および同第2005/0267061号を参照されたい。
【0180】
工学技術で作製されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然起源のジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。工学技術での作製方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット(quadruplet))ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
【0181】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号および同第6,242,568号;ならびに国際特許公開番号WO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;およびWO01/88197中に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係る国際特許公開番号WO02/077227に記載されている。
【0182】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。例示的なリンカー配列については、米国特許第8,772,453号;同第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0183】
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号;同第5,789,538号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;および同第6,200,759号;ならびに国際特許公開番号WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0184】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して、一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号もまた参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0185】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、例えば、単一ガイドRNA(sgRNA)を含めた、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第8,697,359号および米国特許出願公開第2015/0056705号を参照されたい。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら(2002年)Mol. Microbiol. 43巻:1565~1575頁;Makarovaら(2002年)Nucleic Acids Res. 30巻:482~496頁;Makarovaら(2006年)Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら(2005年)PLoS Comput. Biol. 1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主中のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子およびCRISPR媒介性の核酸開裂の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
【0186】
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、4つの連続的ステップで、標的化されたDNA二本鎖切断を実施する。第1に、2つの非コードRNA、pre-crRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、pre-crRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのpre-crRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、標的認識のためのさらなる要求、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のWatson-Crick塩基対合を介して、標的DNAにCas9を指向させる。最後に、Cas9は、標的DNAの開裂を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖切断を生じる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップから構成される:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、さらなる攻撃を防止するための、CRISPRアレイ中への異質DNA配列の挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、その後の、(iii)異質核酸によるRNA媒介性の干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかが、CRISPR/Cas系の天然機能と関連し、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
【0187】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然起源のCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有することを条件として、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合的修飾、およびその融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質またはその断片の変異体、融合物、共有結合的修飾が含まれるがこれらに限定されない。Casタンパク質またはその断片を含むCasタンパク質、およびCasタンパク質またはその断片の誘導体は、細胞から取得可能であり得るか、もしくは化学的に合成され得るか、またはこれらの2つの手順の組合せによって、取得可能であり得る。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、またはCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、もしくは外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように工学技術で作製された細胞であり得、この核酸は、内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする。一部の場合には、細胞は、Casタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように工学技術で作製される。Casタンパク質に加えておよび/またはその代わりに使用することができる、RNAガイドヌクレアーゼ(RNA guided nuclease)の追加的な非限定的な例としては、Cpf1などのクラス2 CRISPRタンパク質が挙げられる。例えば、Zetscheら、(2015年)Cell、163巻:1~13頁を参照されたい。
【0188】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインはTtAgo系の一部である(Swartsら(2014) Nature 507(7491):258-261;Swartsら(2012)PLoS One 7(4):e35888;Shengら(2014)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111(2):652-657を参照されたい)。真核生物では、遺伝子サイレンシングは、タンパク質のアルゴノート(Ago)ファミリーによって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さな(19~31nt)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、標的RNAを、低分子RNAと標的の間のワトソン・クリック塩基対合を介して認識し、標的RNAをヌクレオチド鎖切断的に開裂する(Vogel(2014年)Science 344巻:972~973頁)。対照的に、原核生物Agoタンパク質は、小さな一本鎖DNA断片に結合し、外来(多くの場合ウイルス)DNAを検出し、除去するように機能するようである(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、同書)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、Aquifex aeolicus由来のもの、Rhodobacter sphaeroides由来のもの、およびThermus thermophilus由来のものが挙げられる。
【0189】
最もよく特徴付けられている原核生物Agoタンパク質のうちの1つは、T.thermophilus由来のもの(TtAgo;Swartsら、同書)である。TtAgoは、5’リン酸基を伴う15ntまたは13~25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoが結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質-DNA複合体と第3のDNA分子内のワトソン・クリック相補DNA配列の結合を導くように機能する。これらのガイドDNA内の配列情報により標的DNAの同定が可能になったら、TtAgo-ガイドDNA複合体が標的DNAを開裂する。そのような機構は、その標的DNAと結合する一方でTtAgo-ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Shengら、同書)。Rhodobacter sphaeroides由来のAgo(RsAgo)は同様の特性を有する(Olovnikovら、同書)。
【0190】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAをTtAgoタンパク質に負荷することができる(Swartsら、同書)。TtAgo開裂の特異性はガイドDNAによって導かれるので、したがって、外因性の研究者指定のガイドDNAと形成されるTtAgo-DNA複合体により、相補的な研究者指定の標的DNAへのTtAgo標的DNA開裂が導かれる。このように、DNAにおいて標的化された二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo-ガイドDNA系(または他の生物由来のオルソロガスなAgo-ガイドDNA系)の使用により、細胞内のゲノムDNAの標的化された開裂が可能になる。そのような開裂は、一本鎖のものでも二本鎖のものでもあり得る。哺乳動物ゲノムDNAの開裂のためには、哺乳動物細胞における発現についてコドン最適化されたTtAgoのバージョンを使用することが好ましい。さらに、TtAgoタンパク質を細胞透過性ペプチドと融合する場合には、細胞を、in vitroにおいて形成されたTtAgo-DNA複合体で処理することが好ましい場合がある。さらに、37摂氏温度における活性が改善されるように変異誘発によって変更されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。TtAgo-RNA媒介性DNA開裂を使用して、DNA切断を活用するための、当技術分野における標準の技法を使用した遺伝子ノックアウト、標的化された遺伝子付加、遺伝子補正、標的化された遺伝子欠失を含めた転帰のひと揃い(panopoly)をもたらすことができる。
【0191】
したがって、ヌクレアーゼは、ドナー(導入遺伝子)を挿入することが望まれる任意の遺伝子中の標的部位に特異的に結合するという点で、DNA結合ドメインを含む。
【0192】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、アルブミンに結合する、例えば、SBS-47171およびSBS-47898と命名されたZFPのDNA結合ドメインである。例えば、米国特許出願公開第2015/0159172号を参照されたい。
【0193】
B.開裂ドメイン
任意の適切な開裂ドメインは、DNA結合ドメインに会合(例えば、作動可能に連結)されて、ヌクレアーゼを形成し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、ZFN-その工学技術で作製された(ZFP)DNA結合ドメインを介してその意図した核酸標的を認識でき、ヌクレアーゼ活性を介してZFP結合部位の近くでDNAが切断されるようにする、機能的実体-を生じている。例えば、Kimら(1996年)Proc Natl Acad Sci USA 93巻(3号):1156~1160頁を参照されたい。より最近、ZFNは、種々の生物においてゲノム改変に使用されている。例えば、米国特許出願公開第2003/0232410号;同第2005/0208489号;同第2005/0026157号;同第2005/0064474号;同第2006/0188987号;同第2006/0063231号;ならびに国際公開第07/014275号を参照されたい。同様に、TALE DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、TALENを生じている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。DNAに結合し、開裂ドメイン(例えば、Casドメイン)と会合して、標的化された開裂を誘導する単一ガイドRNA(sgRNA)を含むCRISPR/Casヌクレアーゼ系も記載されている。例えば、米国特許第8,697,359号および同第8,932,814号、ならびに米国特許出願公開第2015/0056705号を参照されたい。
【0194】
上述のように、開裂ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であり得る、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン、sgRNA DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン(CRISPR/Cas)ならびに/またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン。異種開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。開裂ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるがこれらに限定されない。例えば、2002~2003年カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁を参照されたい。DNAを開裂するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年もまた参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1または複数は、開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインの供給源として使用され得る。
【0195】
同様に、開裂ハーフドメインは、開裂活性のために二量体形成を必要とする、上記のような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が開裂ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が、開裂に必要とされる。あるいは、2つの開裂ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。これら2つの開裂ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得、または各開裂ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質についての標的部位は、好ましくは、互いに関して配置され、その結果、そのそれぞれの標的部位への2つの融合タンパク質の結合は、例えば二量体形成によって開裂ハーフドメインに機能的開裂ドメインを形成させる互いに対する空間的配向に、これらの開裂ハーフドメインを置く。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近くの端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位間に介在し得る(例えば、2~50ヌクレオチド対またはそれ超)。一般に、開裂の部位は、標的部位間に存在する。
【0196】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、(認識部位における)DNAへの配列特異的結合が可能であり、結合の部位またはその近傍でDNAを開裂させることが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から取り出された部位においてDNAを開裂させ、分離可能な結合ドメインおよび開裂ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドおよび他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドの場所において、DNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275~4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764~2768頁;Kimら(1994年a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:883~887頁;Kimら(1994年b)J. Biol. Chem. 269巻:31,978~31,982頁を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、工学技術で作製されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1または複数のジンクフィンガー結合ドメイン由来の開裂ドメイン(または開裂ハーフドメイン)を含む。
【0197】
その開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570~10,575頁。したがって、本開示の目的のため、開示された融合タンパク質において使用されるFokI酵素の一部は、開裂ハーフドメインとみなされる。したがって、ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した細胞配列の標的化された二本鎖開裂および/または標的化された置き換えのために、各々がFokI開裂ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質が、触媒的に活性な開裂ドメインを再構成するために使用され得る。あるいは、1つのジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI開裂ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子もまた、使用され得る。ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した標的化された開裂および標的された配列変更のためのパラメーターは、本開示の別の場所に提供される。
【0198】
開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインは、機能的開裂ドメインを形成するために、開裂活性を保持するまたは多量体形成する(例えば、二量体形成する)能力を保持する、タンパク質の任意の部分であり得る。
【0199】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,888,121号に記載されている。さらなる制限酵素もまた、分離可能な結合および開裂ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:418~420頁を参照されたい。
【0200】
ある特定の実施形態では、開裂ドメインは、例えば、その全ての開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,772,453号;同第8,623,618号;同第8,409,861号;同第8,034,598号;同第7,914,796号;および同第7,888,121号に記載されるように、ホモ二量体形成を最小化または防止する1種または複数種の工学技術で作製された開裂ハーフドメイン(二量体形成ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位および538位におけるアミノ酸残基は、全て、FokI開裂ハーフドメインの二量体形成に影響を与えるための標的である。
【0201】
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な工学技術で作製された開裂ハーフドメインには、第1の開裂ハーフドメインが、FokIの490位および538位のアミノ酸残基において変異を含み、第2の開裂ハーフドメインが、アミノ酸残基486および499において変異を含む、対が含まれる。
【0202】
したがって、一実施形態では、490位における変異によりGlu(E)がLys(K)で置き換えられ、538位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられ、486位における変異によりGln(Q)がGlu(E)で置き換えられ、499位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられる。特に、本明細書に記載される工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、一方の開裂ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と称される工学技術で作製された開裂ハーフドメインを産生し、および別の開裂ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と称される工学技術で作製された開裂ハーフドメインを産生することにより調製された。本明細書に記載される工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、異常な開裂が最小化または消失される、偏性ヘテロ二量体変異体である。それらの開示が参照によりそれらの全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号および同第8,034,598号を参照されたい。ある特定の実施形態では、工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、486位、499位および496位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える変異、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で置き換える変異、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」ドメインおよび「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、490位、538位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」ドメインおよび「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、490位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」ドメインおよび「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む(例えば、米国特許第8,772,453号を参照されたい)。他の実施形態では、工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、「シャーキー」および/または「シャーキー」変異を含む(Guoら(2010年)J. Mol. Biol. 400巻(1号):96~107頁を参照されたい)。
【0203】
本明細書に記載される工学技術で作製された開裂ハーフドメインは、例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号に記載されるように、野生型開裂ハーフドメイン(FokI)の部位特異的変異誘発によって、任意の適切な方法を使用して調製できる。
【0204】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「開裂酵素」(split-enzyme)技術を使用して、核酸標的部位においてin vivoでアセンブルされ得る(例えば、米国特許出願公開第2009/0068164号を参照されたい)。かかる開裂酵素の構成成分は、別々の発現構築物のいずれか上に発現され得るか、または、例えば、自己開裂性2AペプチドもしくはIRES配列によって個々の構成成分が分離されて、1つのオープンリーディングフレームで連結され得る。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0205】
ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第8,563,314号に記載される酵母ベースの染色体系における使用の前に、活性についてスクリーニングされ得る。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
【0206】
Cas9関連のCRISPR/Cas系は、同一のダイレクトリピート(DR)によって空間が置かれたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有する2種のRNA非コード構成成分:tracrRNAおよびpre-crRNAアレイを含む。ゲノム工学技術での作製を達成するためにCRISPR/Cas系を使用するために、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Congら(2013年)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照されたい)。一部の実施形態では、tracrRNAおよびpre-crRNAは、別々の発現構築物を介して、または別々のRNAとして、供給される。他の実施形態では、工学技術で作製された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合されてキメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAとも呼ぶ)を生じる、キメラRNAが構築される(Jinekら(2013)Elife 2:e00471. doi: 10.7554/eLife.00471.;Jinekら(2012)Science 337:816-821;およびCong、同書を参照されたい)。
【0207】
本明細書に記載されるヌクレアーゼ(複数可)により、標的部位において1つまたは複数の二本鎖切断(double-stranded cut)および/または一本鎖切断(single-stranded cut)を生じさせ得る。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、触媒として不活性な開裂ドメイン(例えば、FokIおよび/またはCasタンパク質)を含む。例えば、米国特許第9,200,266号および同第8,703,489号およびGuillingerら、(2014年)Nature Biotech.、32巻(6号):577~582頁を参照されたい。触媒として不活性な開裂ドメインは、一本鎖切断を生じさせるためのニッカーゼとして作用する触媒として活性なドメインと組み合わせることができる。したがって、2つのニッカーゼを組み合わせて使用して、特定の領域において二本鎖切断を生じさせることができる。追加的なニッカーゼも当技術分野で公知である、例えば、McCafferyら、(2016年)Nucleic Acids Res.、44巻(2号):e11. doi:10.1093/nar/gkv878.2015年10月19日に電子出版。
【0208】
よって、DNA結合ドメインおよび切断ドメインを含むいずれかのヌクレアーゼを使用することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、左および右ZFN、例えば、SBS-47171と命名されたZFPおよび切断ドメインを含む第1のZFN、ならびにSBS-47898と命名されたZFPおよび切断ドメインを含む第2のZFNを含むZFNで構成されているZFNを含む。ある特定の実施形態では、ZFNの左および右(第1および第2の)ZFNは、同じベクターで運ばれ、他の実施形態では、ZFNのペアの構成成分は、異なるベクター、例えば、2種のAAVベクター、即ち、表1、配列番号9に示す通りSB-47171 AAVと命名された一方(SBS-47171と命名されたZFPを含むZFNを運ぶAAV2/6ベクター)と、表2、配列番号12に示す通りSB-47898 AAVと命名された他方(SBS-47898と命名されたZFPを含むZFNを運ぶAAV2/6ベクター)で運ばれる。
【0209】
標的部位
上に詳細に記載したように、DNAドメインは、遺伝子座、例えば、アルブミンまたは他のセーフハーバー遺伝子中の選択された任意の配列に結合するように工学技術で作製され得る。工学技術で作製されたDNA結合ドメインは、天然起源のDNA結合ドメインと比較して、新規結合特異性を有し得る。工学技術での作製方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々の(例えば、ジンクフィンガー)アミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するDNA結合ドメインの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。TALエフェクタードメインの合理的設計もまた実施され得る。例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0210】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む、DNA結合ドメインに適用可能な例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびに国際特許公開番号WO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;およびWO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。
【0211】
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのヌクレアーゼおよび方法は、当業者に公知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0064474号および同第2006/0188987号に詳細に記載されている。
【0212】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質)は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。米国特許第8,586,526号もまた参照されたい。
【0213】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメイン(複数可)のための標的部位(複数可)は、アルブミン遺伝子内にある。例えば、米国特許出願公開第2015/0159172号を参照されたい。
【0214】
ドナー
上に記す通り、例えば、変異体遺伝子の補正のための、またはMPS II疾患において欠如もしくは欠損するタンパク質(例えば、IDS)をコードする遺伝子の発現増加のための、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」とも呼ばれる)の挿入が提供される。一部の実施形態では、導入遺伝子機能は、尿におけるGAGの安定化、減退もしくは排除によって、ならびに/または本明細書に開示される方法および組成物で処置された対象の血漿における導入遺伝子発現(例えば、hIDS)および/もしくは活性を測定することにより測定することができる。ドナー配列は、典型的には、それが配置されるゲノム配列と同一ではないことが容易に明らかとなる。ドナー配列は、2つの相同な領域に隣接する非相同配列を含有し、目的の位置での効率的なHDRを可能とする。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチン内の目的の領域に相同でない配列を含有するベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンに相同ないくつかの不連続な領域を含有することができる。例えば、常態では目的の領域に存在しない標的化された配列を挿入するために、前記配列を、ドナー核酸分子中に存在させることができ、目的の領域中の配列に相同な領域を隣接させることができる。
【0215】
本明細書に記載されているのは、選択された位置内へ挿入するための、IDSタンパク質をコードする導入遺伝子の標的化された挿入の方法である。挿入に用いるポリヌクレオチドは、「外因性」ポリヌクレオチド、「ドナー」ポリヌクレオチドもしくは分子、または「導入遺伝子」とも呼ばれ得る。ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであってよく、一本鎖および/または二本鎖であってもよく、直鎖状または環状の形態で細胞内に導入することができる。米国特許第8,703,489号および同第9,005,973号を参照されたい。ドナー配列(複数可)は、DNA MC内に含まれ得、これは、培養中の細胞内へ環状または直鎖状の形態で導入され得る。米国特許出願公開第2014/0335063号を参照されたい。直鎖状の形態で導入される場合、当業者に公知の方法によって、ドナー配列の末端を保護する(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)ことができる。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に付加する、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドを一端または両端にライゲーションする。例えば、Changら、1987年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84巻:4959~4963頁、Nehlsら、1996年、Science、272巻:886~889頁を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加的な方法としては、末端アミノ基(複数可)の付加、および例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミダートやO-メチルリボースもしくはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間の結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーターや抗生物質耐性をコードしている遺伝子などの追加的な配列を有するベクター分子の部分として、細胞内に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドを、ネイキッド核酸として、リポソームまたはポロキサマーなどの剤と複合体を形成した核酸として、導入することができ、また、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスおよびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0217】
ドナーは、一般に、組込み部位の内因性プロモーター、即ちドナーが挿入されている内因性遺伝子(例えば、高度に発現される、アルブミン、AAVS1、HPRTなど)の発現を駆動するプロモーターによって、発現が駆動されるように挿入される。しかし、ドナーが、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成性のプロモーターまたは誘導可能なもしくは組織特異的なプロモーターを含み得ることは明らかである。一部の実施形態では、遺伝子が染色体外で発現するように、ドナーを発現プラスミド中に入れて細胞中で維持する。
【0218】
ドナー分子は、内因性遺伝子の全てまたは一部が発現するか、またはその全てが発現しないように、内因性遺伝子中に挿入することができる。例えば、本明細書に記載される導入遺伝子を、アルブミンまたは他の遺伝子座に、例えば、IDSタンパク質(複数可)をコードする導入遺伝子との融合物として、内因性アルブミン配列の一部(リソソーム酵素をコードする導入遺伝子に対してN末端および/またはC末端)が発現するか、またはその全てが発現しないように、挿入することができる。他の実施形態では、導入遺伝子(例えば、アルブミンに対するものなどの追加的なコード配列を伴うまたは伴わない)を任意の内因性遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座に組み込む。
【0219】
内因性配列(内因性または導入遺伝子の一部)を、導入遺伝子を用いて発現させる場合、内因性配列(例えば、アルブミンなど)は、全長配列(野生型または変異体)であっても部分配列であってもよい。内因性配列は機能的であることが好ましい。これらの全長または部分配列(例えば、アルブミン)の機能の非限定的な例としては、導入遺伝子(例えば、治療遺伝子)によって発現されるポリペプチドの血清中半減期を増加させることおよび/またはキャリアとして作用することが挙げられる。
【0220】
さらに、発現を必要としていなくとも、外因性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルをも含み得る。
【0221】
ある特定の実施形態では、外因性配列(ドナー)は、目的のタンパク質と、その融合パートナーとして、融合タンパク質を細胞の表面上に配置される膜タンパク質の細胞外ドメインとの融合物を含む。これにより、導入遺伝子によりコードされるタンパク質が血清中で潜在的に作用することが可能になる。MPS II疾患に対する処置の場合では、導入遺伝子融合物によりコードされるIDS酵素が細胞(例えば、RBC)の表面上のその位置から血清中に蓄積する代謝産物に作用する。さらに、RBCが正常な分解の経過と同様に脾臓マクロファージによって呑み込まれると、マクロファージが細胞を呑み込むときに形成されるリソソームにより、膜に結合した融合タンパク質が、その酵素により天然に好都合なpHにあるリソソーム中で高濃度の代謝産物に曝露される。
【0222】
一部の場合では、ドナーは、改変された内因性遺伝子(IDS)であり得る。例えば、内因性遺伝子にコドン最適化を実施してドナーを生成することができる。さらに、酵素補充療法に対する抗体応答は、問題の特異的治療酵素および個々の対象に関して変動するが、野生型IDSを用いた酵素補充で処置されている多くのMPS II疾患対象において有意な免疫応答が見られている。さらに、これらの抗体と処置の有効性の関連性も変動する(Katherine Ponder、(2008年)J Clin Invest、118巻(8号):2686頁を参照されたい)。したがって、本発明の方法および組成物は、これだけに限定されないが、内因性免疫応答に対するプライミングエピトープであることが公知の部位において機能的にサイレントなアミノ酸の変化を生じさせる改変、および/または、そのようなドナーによって産生されるポリペプチドの免疫原性が低くなるような短縮を含めた、野生型IDSと比較して改変された配列を有するドナーの生成を含み得る。
【0223】
MPS II疾患対象は、多くの場合、脳における欠けているIDS酵素の欠如に起因して神経性後遺症を有する。残念ながら、多くの場合、治療薬を、血液を介して脳に送達することは、血液脳関門の不透過性に起因して難しい。したがって、本発明の方法および組成物は、これだけに限定されないが、脳毛細血管の細胞間の密着結合の一過性の開放、例えば、高張性マンニトール溶液の頸動脈内投与の使用による一過性の浸透圧破壊、集束超音波の使用およびブラジキニン類似体の投与などを含めた、治療薬の脳への送達を増加させるための方法と併せて使用することができる。あるいは、治療薬を、脳への特異的輸送のための受容体または輸送機構を利用するように設計することができる。使用することができる特異的な受容体の例としては、トランスフェリン受容体、インスリン受容体または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1および2(LRP-1およびLRP-2)が挙げられる。LRPは、例えばapoE、tPA、PAI-1などの様々な分泌タンパク質と相互作用することが公知であり、したがって、LRPに対するこれらのタンパク質のうちの1つに由来する認識配列の融合により、治療タンパク質の肝臓における発現および血流中への分泌後の、酵素の脳への輸送が容易になる(Gabathuler、(2010年)Neurobiol Dis. 37(1):48-57、同上を参照されたい)。
【0224】
ある特定の実施形態では、ドナーベクターは、SB-IDS AAV(表3、配列番号17)に示す通りのベクターである。
【0225】
組成物/系
本明細書に記載される本発明は、方法を実施するための3種のAAVベクターを利用する。2種のベクターは、右ZFNおよび左ZFNの送達に使用され、第3のベクターは、IDSドナー配列の提供に使用される(実施例を参照)。ある特定の実施形態では、組成物/系は、SB-47171、SB-47898およびSB-IDS AAVを含む3種のベクターを含む。
【0226】
細胞
本明細書に記載される方法によって生成される細胞を含めた、IDSタンパク質をコードする導入遺伝子を含む遺伝子改変された細胞、例えば、肝細胞または幹細胞も本明細書で提供される。IDS導入遺伝子は、染色体外に発現させることもでき、または、1種または複数種のヌクレアーゼを使用して、標的化された様式で細胞のゲノム中に組み込むこともできる。ランダムな組込みとは異なり、ヌクレアーゼ媒介性標的化組込みでは、導入遺伝子の指定の遺伝子への組込みが確実になる。導入遺伝子は、標的遺伝子中のどこにでも組み込むことができる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をクレアーゼ結合部位および/または開裂部位またはその付近、例えば、開裂部位および/または結合部位の上流または下流の1~300塩基対(またはそれらの間の任意の数の塩基対)内、より好ましくは開裂部位および/または結合部位のいずれか側の1~100塩基対(またはそれらの間の任意の数の塩基対)内、さらにより好ましくは開裂部位および/または結合部位のいずれか側の1~50塩基対(またはそれらの間の任意の数の塩基対)内に組み込む。ある特定の実施形態では、組み込まれる配列は、いかなるベクター配列(例えば、ウイルスベクター配列)をも含まない。
【0227】
これだけに限定されないが、細胞または細胞株を含めた任意の細胞型を本明細書に記載されるように遺伝子改変して導入遺伝子を含めることができる。本明細書に記載される遺伝子改変された細胞の他の非限定的な例としては、T細胞(例えば、CD4+、CD3+、CD8+など);樹状細胞;B細胞;自己(例えば、対象由来)細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、細胞は、肝細胞であり、in vivoで改変されている。ある特定の実施形態では、細胞は、異種性の多能性幹細胞、全能性幹細胞または複能性幹細胞(例えば、CD34+細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞など)を含めた幹細胞である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞は、対象に由来する幹細胞である。
【0228】
本明細書に記載される細胞は、障害を有する対象におけるMPS II疾患を、例えばin vivo療法によって処置および/または予防することにおいて有用である。例えば、ヌクレアーゼにより改変された細胞を拡大増殖させ、次いで、標準の技法を使用して対象に再導入することができる場合、ex vivo療法も提供される。例えば、Tebasら、(2014年)New Eng J Med、370巻(10号):901頁を参照されたい。幹細胞の場合では、対象への注入後、これらの前駆体の、機能的なタンパク質(挿入されたドナーに由来する)を発現する細胞へのin vivo分化も起こる。
【0229】
本明細書に記載される組成物(ヌクレアーゼ、IDSドナー、細胞等)のうち1つまたは複数を含む医薬組成物(「製剤」または「製造品」または「医薬品」または「医薬品のセット」とも称される)も提供される。医薬組成物は、同じまたは異なる種類の構成成分組成物をいずれかの濃度で含むことができる。例えば、次の通りの3種の別々の医薬組成物を含む医薬品のセットを含む製造品が本明細書に提供される:ZFN対の一方のメンバー(例えば、左ZFN)を運ぶ精製されたAAVベクターを含む第1の医薬組成物;ZFN対の他方のメンバー(例えば、右ZFN)を運ぶ精製されたAAVベクターを含む第2の医薬組成物;およびIDSドナーを運ぶ精製されたAAVベクターを含む第3の医薬組成物。左ZFNは、47171と命名されたZFN(例えば、SB-A6P-ZLEFと命名された医薬品)または71557と命名されたZFN(例えば、SB-A6P-ZL2と命名された医薬品)を含むことができ、右ZFNは、47898と命名されたZFN(例えば、SB-A6P-ZRIGHTと命名された医薬品)または71728と命名されたZFN(例えば、SB-A6P-ZL2と命名された医薬品)を含むことができる。3種の医薬組成物のうち1、2または3種は、CaCl2、MgCl2、NaCl、スクロースおよびポロクサマー(例えば、ポロクサマーP188)を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)において、または生理的食塩水(NS)製剤において個々に製剤化することができる。一部の実施形態では、組成物は、およそ1.15mg/MLのリン酸ナトリウム、0.2mg/mLリン酸カリウム、8.0mg/mL塩化ナトリウム、0.2mg/mL塩化カリウム、0.13mg/mL塩化カルシウムおよび0.1mg/mL塩化マグネシウムを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。PBSは、2.05mg/mL塩化ナトリウム、10~12mg/mLのスクロースおよび0.5~0mg/mLのKolliphor(登録商標)(ポロクサマーまたはP188)によりさらに改変される。表6に示す濃度を含むがこれらに限定されない、いかなる濃度のZFNを使用することもできる。さらに、製造品は、3種の医薬組成物を任意の比、例えば、1:1:8(左ZFN:右ZFN:IDSドナー)で含むことができる。
【0230】
医薬組成物(製造品/医薬品のセット)は、MPS IIの処置のための治療レベル(例えば、血漿および/または血液白血球における)を含んで、IDSが対象において発現されるように、それを必要とする対象に投与される(例えば、静脈内に)。組成物は、別々に投与することができる、または好ましくは、3種の医薬品(ZFN1、ZFN2およびIDSドナー)のセットを含む製造品は、投与に先立ち、例えば、静脈内注入バッグにおいて組み合わされる。加えて、これらの製剤は、対象への投与に先立ち、凍結保存することができる。
【0231】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載されているタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物を、任意の適当な手段によって、in vivoまたはex vivoで送達してもよい。
【0232】
本明細書に記載されているようなヌクレアーゼの送達方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号に記載されており、それらの全ての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。
【0233】
また、本明細書に記載されているようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を、1種または複数種のジンクフィンガー、TALENおよび/またはCas系タンパク質(複数可)をコードする配列を含有するベクターを使用して送達してもよい。以下に限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターなどを含めた任意のベクター系を使用してもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、任意のこれらのベクターが、処置に求められる1種または複数種の配列を含んでもよいことは明らかである。そのため、1種または複数種のヌクレアーゼおよびドナー構築物を細胞内に導入する際に、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドを同じベクターまたは異なるベクターに保有させてもよい。複数のベクターを使用する際には、各ベクターは、1種または複数種のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含んでもよい。
【0234】
従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を導入するために使用することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルとの複合体を形成している核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、DNAおよびRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞へ送達された後に、エピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのどちらかを有する。遺伝子治療手順の総説については、Anderson(1992年)Science、256巻:808~813頁、NabelおよびFelgner(1993年)TIBTECH、11巻:211~217頁、MitaniおよびCaskey(1993年)TIBTECH、11巻:162~166頁、Dillon(1993年)TIBTECH、11巻:167~175頁、Miller(1992年)Nature、357巻:455~460頁、Van Brunt(1988年)Biotechnology、6巻(10号):1149~1154頁、Vigne(1995年)Restorative Neurology and Neuroscience、8巻:35~36頁、KremerおよびPerricaudet(1995年)British Medical Bulletin、51巻(1号):31~44頁、Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology中のDoerflerおよびBoehm著(1995年)ならびにYuら(1994年)Gene Therapy、1巻:13~26頁を参照されたい。
【0235】
核酸の非ウイルス送達方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤で増強されたDNA取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
【0236】
追加的な例示の核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(ケルン、ドイツ)、Maxcyte,Inc.(ロックビル、メリーランド州)、BTX Molecular Delivery Systems(ホリストン、マサチューセッツ州)、およびCopernicus Therapeutics Inc、(例えば、米国特許第6,008,336号を参照されたい)によって提供されるものが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質としては、Felgnerの国際特許公開番号WO91/17424およびWO91/16024の脂質が挙げられる。
【0237】
免疫脂質複合体などの標的化されたリポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal(1995年)、Science、270巻:404~410頁、Blaeseら(1995年)Cancer Gene Ther.、2巻:291~297頁、Behrら(1994年)Bioconjugate Chem.、5巻:382~389頁;Remyら(1994年)Bioconjugate Chem.、5巻:647-654、Gaoら(1995年)Gene Therapy、2巻:710~722頁、Ahmadら(1992年)Cancer Res.、52巻:4817~4820頁、ならびに米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号および同第4,946,787号を参照されたい)。
【0238】
追加的な送達方法としては、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)内へのパッケージングを使用することが挙げられる。これらのEDVは、抗体の1つのアームが標的組織に対する特異性を有し、かつ他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体は、EDVを標的細胞の表面に運び、次いでEDVは、エンドサイトーシスにより細胞内に運ばれる。細胞内に取り込まれると、内容物が放出される(MacDiarmidら、(2009年)、Nature Biotechnology、27巻(7号)、643頁を参照されたい)。
【0239】
工学技術で作製されたZFPをコードする核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、ウイルスに体内の特定の細胞を標的とさせ、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、対象に直接投与(in vivo)することができるか、またはインビトロで細胞を処置するために使用することができ、改変された細胞は対象に投与される(ex vivo)。ZFPを送達するための従来のウイルスに基づく系としては、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクチン、および単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルスの遺伝子移入方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織において測定されている。
【0240】
レトロウイルスの向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み入れることによって変更することができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、典型的には高ウイルス力価を生じる。レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列に用いるパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復からなる。最小限のシス作用性LTRが、ベクターの複製およびパッケージングには十分であり、それらは、次いで、治療遺伝子を標的細胞内に組み込むために使用されて、導入遺伝子の永続的な発現を提供する。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscherら(1992年)J.Virol.、66巻:2731~2739頁、Johannら(1992年)J.Virol.、66巻:1635~1640頁、Sommerfeltら(1990年)Virol.、176巻:58~59頁、Wilsonら(1989年)J.Virol.、63巻:2374~2378頁、Millerら(1991年)J.Virol.、65巻:2220~2224頁、国際特許公開番号WO94/26877を参照されたい)。
【0241】
一過性発現が好適な用途では、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質移入が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現を得ている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。また、アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療の手順(例えば、Westら(1987年)Virology、160巻:38~47頁、米国特許第4,797,368号、国際特許公開番号WO93/24641、Kotin(1994年)Human Gene Therapy、5巻:793~801頁、Muzyczka(1994年)J.Clin.Invest. 94巻:1351頁を参照されたい)に用いるために、細胞に標的核酸を形質導入することもできる。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschinら(1985年)Mol.Cell.Biol.、5巻:3251~3260頁、Tratschinら(1984年)Mol.Cell.Biol.、4巻:2072~2081頁、HermonatおよびMuzyczka(1984年)PNAS、81巻:6466~6470頁、およびSamulskiら(1989年)J.Virol.、63巻:03822~3828頁(1989年)を含めた多数の刊行物に記載されている。
【0242】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験の遺伝子移入に利用可能であり、それらは、形質導入薬剤を生成するために、ヘルパー細胞株内に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用する。
【0243】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら(1995年)Blood、85巻:3048~305頁、Kohnら(1995年)Nat.Med.、1巻:1017~102頁、Malechら(1997年)PNAS、94巻(22号)12133~12138頁)。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療ベクターであった。(Blaeseら(1995年)Science、270巻:475~480頁)。MFG-Sでパッケージされたベクターについて、50%またはそれ超の形質導入効率が測定されている。(Ellemら(1997年)Immunol Immunother.、44巻(1号):10~20頁、Dranoffら(1997年)Hum.Gene Ther.、1巻:111~2頁。)
【0244】
組換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損型および非病原性のパルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達システムである。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム内への組込みに起因する効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特長である(Wagnerら(1998年)Lancet 351巻(9117号)1702~3頁、Kearnsら(1996年)Gene Ther.9巻:748~55頁)。非限定的な例によれば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9およびAAVrh10、ならびに偽型AAV(例えば、AAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6)を含めた他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。
【0245】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させる。アデノウイルスベクターのほとんどは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えて、その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスに供給するヒト293細胞で増殖するように、工学技術で作製される。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉で見出されるものなど非分裂性の分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな保有能力を有する。臨床試験でAdベクターを使用する例では、筋肉内注入を用いた抗腫瘍免疫化のポリヌクレオチド治療が含められた(Stermanら(1998年)Hum.Gene Ther.、7巻:1083~9頁)。臨床試験における遺伝子移入に用いるアデノウイルスベクターの使用の追加的な例としては、Roseneckerら(1996年)Infection、24巻(1号):5~10頁、Stermanら(1998年)Hum.Gene Ther.、9巻(7号):1083~1089頁、Welshら(1995年)Hum.Gene Ther.、2巻:205~18頁、Alvarezら(1997年)Hum.Gene Ther.、5巻:597~613頁、Topfら(1998年)Gene Ther.、5巻:507~513頁、Stermanら(1998年)Hum.Gene Ther.、7巻:1083~1089頁が挙げられる。
【0246】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子内に核酸ベクターをパッケージングする生産細胞株によって生成される。これらのベクターは、典型的に、パッケージングおよびその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられている他のウイルス配列を含有する。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスに供給される。例えば、遺伝子治療に使用するAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム内へのパッケージングおよび組込みに必要とされるAAVゲノム由来の逆方向末端反復(ITR)配列のみを具える。ウイルスDNAは、細胞株中にパッケージングされ、他のAAV遺伝子即ち、repおよびcapをコードするもののITR配列を欠失したヘルパープラスミドを含有する。細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびヘルパープラスミド由来のAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠失しているため、有意な量にはパッケージングされない。アデノウイルスによる夾雑は、例えば、AAVよりも感受性があるアデノウイルスに対する熱処理によって低減することができる。
【0247】
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療ベクターが、高度な特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上でウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、ウイルスベクターを所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知の受容体に対する親和性を有するように選ばれる。例えば、Hanら(1995年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92巻:9747~9751頁は、モロニーマウス白血病ウイルスを改変して、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現しているある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質をウイルスが発現する、他のウイルス-標的細胞の対にまで及び得るものである。例えば、線状ファージを工学技術で作製して、事実上いかなる選ばれた細胞受容体にも特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示することができる。上記の記載は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターを工学技術で作製して、特異的な標的細胞による取り込みに好都合な特異的な取り込み配列を含有させることができる。
【0248】
遺伝子治療ベクターは、下記に説明するように、個々の対象への投与によって、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所適用によって、in vivoで送達することができる。あるいは、個々の対象から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)や万能ドナーの造血幹細胞などの細胞に、ベクターをex vivoで送達し、続いて、通常はベクターを組み入れた細胞を選択した後に、対象への細胞の再移植を行うことができる。
【0249】
また、ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を、in vivoでの細胞の形質導入のために、生物に直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、血液または組織の細胞との最終的な接触の内に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかに依り、そのような経路としては、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する適当な方法は、利用可能であり、当業者に周知であり、そして、1つよりも多い経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、特定の経路は、別の経路よりも速やかかつ有効な反応を提供することができる。
【0250】
本明細書に記載されているポリヌクレオチドの導入に適したベクターとしては、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)が挙げられる。例えば、Oryら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:11382~11388頁、Dullら(1998年)、J.Virol.、72巻:8463~8471頁、Zufferyら(1998年)、J. Virol.、72巻:9873~9880頁、Follenziら(2000年)、Nature Genetics、25巻:217~222頁、米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。
【0251】
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度は決定される。したがって、下記に記載するように、利用可能な医薬組成物の実に様々な適当な製剤が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences、第17版、1989年を参照されたい)。
【0252】
ヌクレアーゼをコードする配列とドナー構築物とを、同じまたは異なる系を使用して送達することができることは明らかである。例えば、ドナーポリヌクレオチドをプラスミドによって保有することができ、一方、1種または複数種のヌクレアーゼをAAVベクターによって保有することができる。さらに、これらの異なるベクターを、同じまたは異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって投与することができる。これらのベクターを、同時にまたは任意の順番で、送達することができる。
【0253】
ex vivoとin vivoとの両方の投与に用いる製剤としては、液体中懸濁液物または乳濁液が挙げられる。多くの場合、活性成分は、薬学的に許容され、かつ活性成分に適合する賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せが挙げられる。さらに、組成物は、湿潤剤もしくは乳濁剤、pH緩衝剤、安定化剤または医薬組成物の効果を高める他の試薬などの微量の補助的な物質を含有していてもよい。
【0254】
適用
本発明の方法は、MPS II疾患(例えば、リソソーム蓄積病)の処置および/または予防を企図する。処置は、必要とされる酵素(複数可)の発現および血流への放出のための、細胞におけるセーフハーバー遺伝子座(例えば、アルブミン)への1種または複数種の補正疾患関連遺伝子(例えば、IDS等)の挿入を含むことができる。血流中に入ると、分泌された酵素は、組織中の細胞によって取り入れられることができ、そこで次に、酵素は、GAGが分解されるように、リソソームによって取り込まれる。導入遺伝子は、コドン最適化された導入遺伝子(例えば、IDS);および/またはタンパク質を機能的に変更させずにエピトープを除去することができる導入遺伝子を含むタンパク質をコードするものであり得る。一部の場合では、方法は、必要な酵素を発現させ、血流中に放出させるために、補正酵素をコードする導入遺伝子を発現するエピソームを細胞中に挿入することを含む。産物を血流中に放出させるために肝細胞などの分泌細胞に挿入することが特に有用である。本発明の方法および組成物はまた、1種または複数種の治療薬をコードするIDS導入遺伝子を造血幹細胞中に供給し、したがって、これらの細胞に由来する成熟細胞(例えば、RBC)が治療薬を含有することが望まれる任意の状況で使用することができる。これらの幹細胞は、in vitroまたはin vivoで分化させることができ、また、対象全てに対して使用することができる普遍的なドナー細胞型に由来し得る。さらに、細胞は、細胞を体内で輸送するための膜貫通タンパク質を含有し得る。処置は、治療導入遺伝子を含有する対象細胞の使用も含み得、その場合、細胞を、ex vivoで発生させ、次いで、対象に導入して戻す。例えば、適切なIDSをコードする導入遺伝子を含有するHSCを対象に自己骨髄移植によって挿入することができる。あるいは、IDSをコードする導入遺伝子を使用して編集された筋肉幹細胞またはiPSCなどの幹細胞を筋組織に注射することもできる。
【0255】
したがって、この技術は、対象が、問題(例えば、発現レベルの問題または低機能性もしくは非機能性で発現するタンパク質の問題)に起因していくつかのタンパク質を欠損している状態において有用であり得る。本発明で特に有益なのは、MPS II疾患を有する対象における機能性を補正するまたは回復させるための導入遺伝子の発現である。
【0256】
非限定的な例として、欠損しているまたは欠けているタンパク質の産生がMPS II疾患を処置するために実践され、使用される。タンパク質をコードする核酸ドナーをセーフハーバー遺伝子座(例えば、アルブミンまたはHPRT)に挿入し、外因性プロモーターを使用してまたはセーフハーバーに存在するプロモーターを使用してのいずれかで発現させることができる。あるいは、ドナーを使用して、欠損している遺伝子をin situで補正することができる。所望のIDSをコードする導入遺伝子をCD34+幹細胞に挿入し、骨髄移植中に対象に戻すことができる。最後に、核酸ドナーを、この細胞に由来する成熟赤血球が核酸ドナーによりコードされる生物剤を高濃度で有するように、CD34+幹細胞中のベータグロビン遺伝子座に挿入することができる。次いで、生物剤を含有するRBCを、正しい組織に、膜貫通タンパク質(例えば、受容体または抗体)を介して標的化することができる。さらに、RBCを、ex vivoで電気感作(electrosensitization)によって感作して、エネルギー源への曝露後にそれらをより破壊されやすくすることができる(国際特許公開番号WO2002/007752を参照)。
【0257】
一部の適用では、本発明の方法および組成物を使用することによって内因性遺伝子をノックアウトすることができる。この態様の例としては、異常な遺伝子調節因子または異常な疾患関連遺伝子をノックアウトすることが挙げられる。一部の適用では、異常な内因性遺伝子を、機能的にまたはin situでのいずれかで、野生型バージョンの遺伝子で置き換えることができる。挿入される遺伝子は、治療IDSタンパク質の発現および/または機能性が改善されるようにまたはその免疫原性が低下するように変更することもできる。一部の適用では、挿入されるIDSをコードする導入遺伝子は、脳などの選択された組織へのその輸送を増加させるための融合タンパク質である。
【0258】
一部の適用では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有するヒト対象における機能的能力を改善または維持(減退を緩徐化)する方法が本明細書に提供される。他の適用では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象におけるERTの必要性(用量レベルまたは頻度)を減少させる方法が本明細書に提供される。さらに別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象におけるERT開始の必要性を延期させる方法が本明細書に提供される。一態様では、組成物を受けていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における支持的外科手術の必要性を延期、低減または排除する方法であって、対象を本発明の組成物で処置するステップを含む方法が本明細書に提供される。別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における骨髄移植の必要性を延期、低減または予防する方法が本明細書に提供される。さらに別の態様では、本明細書に記載される組成物による処置と組み合わせたERTの標準投与レジメンで対象を処置することにより、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における機能的能力を改善(減退を延期、維持)する方法が本明細書に提供される。別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有するヒト対象における身体障害進行を抑制する方法が本明細書に提供される。さらに別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における医療用人工呼吸器デバイスの使用の必要性を延期、低減または予防する方法が本明細書に提供される。別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有するヒト対象における確認された身体障害進行の開始を延期させる、または確認された身体障害進行のリスクを低減させる方法が本明細書に提供される。本発明の一態様では、MPS IIを有する対象における尿GAGを低減、安定化または維持する方法であって、対象を本発明の組成物で処置するステップを含む方法が本明細書に提供される。さらに別の態様では、本発明の方法および組成物で処置されていない対象と比較して、MPS IIを有する対象における平均余命を延ばす方法が本明細書に提供される。
【0259】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALENを含む、本開示の例示的な実施形態に関する。このことが、実例のみの目的にあること、ならびに他のヌクレアーゼまたはヌクレアーゼ系が使用され得ること、例えば、工学技術で作製されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)が使用され得ること、および/または天然起源のもしくは工学技術で作製されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種由来開裂ドメインとの融合物、および/または工学技術で作製された単一ガイドRNAを含むCRISPR/Cas系が使われ得ることであることは理解されよう。
【実施例
【0260】
(実施例1)
ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含むAAVベクターの調製は次の通りである:SB-47171 ZFN(左ZFN)をコードするAAV2/6ベクターは、以下のいくつかの構造的特徴を含む:AAVベクターの5’および3’ITR、ApoE/hAAT肝制御領域およびα1-アンチトリプシンプロモーター、ヒトβ-グロビン-IgGキメライントロン、核局在化配列、ZFP 47171 ZFN結合ドメイン、FokI ELDヌクレアーゼドメイン、ならびにポリアデニル化シグナル。様々なエレメントの位置は、下の表1に示す。
【表1】
【0261】
SB-47171 AAV2/6ベクターの完全ヌクレオチド配列を下に示す。表1に示す特異的アノテーションは、表1に示す通りに配列テキストに指し示される:
【化1】
【化2】
【化3】
【0262】
SB-47898を含むAAV2/6ベクターは同様に、いくつかの特徴を含み、それらを下の表2に示す。
【表2】
【0263】
SB-47898 AAV2/6ベクターの完全ヌクレオチド配列を下に示す。表2に示す特異的アノテーションは、表2に示す通りに配列テキストに指し示される。
【化4】
【化5】
【化6】
【0264】
SB-IDS導入遺伝子ドナーをコードするAAV2/6ベクターは、以下のいくつかの構造的特徴を含む:AAVベクターの5’および3’ITR、アルブミン遺伝子における標的とした切断部位に隣接する領域に対して相同性を有する左および右相同性アーム(LAおよびRA)、アルブミンプロモーターへの導入遺伝子配列の効率的連結を確実にするための、ヒト第IX因子エクソン2スプライスアクセプターに由来するスプライスアクセプター、コドン最適化されたhIDS cDNA配列、ならびにポリアデニル化シグナル配列。様々なエレメントの位置は、下の表3に示す。
【表3】
【0265】
SB-IDS AAV2/6ベクターの完全ヌクレオチド配列を下に示す。表3に示す特異的アノテーションは、表3に示す通りに配列テキストに指し示される。
【化7】
【化8】
【化9】
【0266】
SB-71557 AAV2/6ベクターの完全ヌクレオチド配列を下に示す。表4に示す特異的アノテーションは、表4に示す通りに配列テキストに指し示される。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
71557 AAVの完全配列:
【化10】
【化11】
【化12】
【0267】
SB-71728 AAV2/6ベクターの完全ヌクレオチド配列を下に示す。表5に示す特異的アノテーションは、表5に示す通りに配列テキストに指し示される。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
71728 AAVの完全配列:
【化13】
【化14】
【化15】
【0268】
(実施例2)
実施例1に記載されているポリヌクレオチドおよびAAVを含む組成物を、次の通りに調製した:構成成分は、3種の蓋付きバイアルにおいて供給した:各1種はそれぞれ次に対応する:ZFN1(SB-47171、白色の蓋で、SB-A6P-ZLEFTと標識);ZFN2(SB47898、青色の蓋で、SB-A6P-ZRIGHTと標識);およびhIDSドナー(hIDS、オレンジ色の蓋で、SB-A6P-HNTと標識)。製品構成成分は全て、CaCl2、MgCl2、NaCl、スクロースおよびKolliphor(登録商標)(ポロクサマー)P188を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)においてまたは生理的食塩水(NS)製剤において個々に製剤化された、精製されたAAVであった。小数第3位で四捨五入された対象の体重を使用して用量計算を行った。コホート用量にベースライン時の対象体重を掛け、次いでvg/mL濃度で割ることにより、計算を行った。3種の製品構成成分体積を一緒に加算し、総体積を決定した。加えて、添加のためのヒト血清アルブミン(HSA)静脈内液剤の体積を計算して、0.25%HSAの最終濃度を達成し、最後に、要求される量のPBSまたはNSを加えて、正確な構成成分濃度を達成した。
【0269】
次に、製品構成成分を、NSまたはPBS中0.25%HSAを含有するIV注入バッグに添加した。各製品構成成分を別々に添加し、次いでバッグを穏やかに混合し、注入の責任者へと移送した。次に、注入ポンプ(Sigma Spectrum)を使用して、100mL/時間の速度で製品を対象に注入した。
【0270】
(実施例3)
試験適格性および除外基準
試験における対象のための主要適格性基準は、次のものを含んだ:≧5歳(成人コホート1~3:≧18歳;小児コホート4および6:12~17歳;小児コホート5および7:5~11歳);肝脾腫大の証拠、X線による多発性骨形成不全、遺伝子配列決定によって確認されたIDS欠乏による心臓弁膜症および/または閉塞性気道疾患;肝臓塊(liver mass)に対して陰性である磁気共鳴画像法(MRI)に基づく、MPS IIの臨床診断。
【0271】
試験における対象のための主要除外基準は、次のものを含んだ:酵素補充療法に対する公知の無応答性;血清におけるAAV6に対する中和抗体;BもしくはC型肝炎または活動性B型肝炎もしくはC型肝炎またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)1/2に対する抗レトロウイルス療法を受けていること;イデュルスルファーゼ処置(Elaprase(登録商標))に対する耐容性の欠如;アルブミン遺伝子座内のZFN標的化領域における多型;0~4段階尺度における3または4の肝臓線維症スコア(Desmet et al. (1994) Hepatology 19(6):1513-20)、肝機能不全のマーカー;妊娠中または授乳中の女性;コルチコステロイド使用の禁忌;全身性免疫調節剤またはステロイド使用による現在の処置;遺伝子療法製品による以前の処置;および上昇したまたは異常なα-フェトプロテイン。
【0272】
試験設計
MPS II疾患を有する対象において試験を行った。いくつかのコホートを試験した:i)≧18歳(成人コホート1~3);ii)12~17歳(小児コホート4および6);ならびにiii)5~11歳(小児コホート5および7)。これらのコホートにおいて使用した用量を下の表6に示す。コホート1は低用量と見なされ、コホート2は中間用量であり、コホート3は高用量である。全コホートについて、総AAV用量は、2種のZFNベクターおよび1種のドナーベクターを1:1:8の固定比で含む。
【表6】
【0273】
臨床エンドポイント
一次エンドポイント:本試験の一次エンドポイントは、有害事象および重大な有害事象の発生率によって査定される、組成物の安全性および忍容性であった。追加の安全性評価は、次のものを含んだ:ルーチンの血液学、化学および肝臓機能臨床検査、バイタルサイン、身体検査、ECG、ECHOおよび付随する薬物療法;脳神経試験および筋力検査;連続的α-フェトプロテイン検査、ならびに肝臓塊について評価するための肝臓のMRI。全対象において安全性査定を行った。全ての報告された有害事象を、ICH国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA)AE辞書を使用して、用語の標準セットへとコード化した。各事象の頻度を、重症度および試験薬との関連性によってまとめた。
【0274】
主要二次エンドポイントは、次のもののベースラインからの変化を含んだ:血漿において測定されるIDS活性、尿において測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベル(クレアチニンに対する比として表現される);PCRによって血漿、唾液、尿、糞便および精液におけるベクターゲノムによって測定されるAAV2/6クリアランス。尿GAGレベルは、MPS II疾患病態生理学の主要バイオマーカーである。追加の二次エンドポイントは、IDS(または等価ERT)の頻度および用量の毎月のモニタリングを含む。
【0275】
主要探索的エンドポイントは、次のもののベースラインからの変化を含んだ:生検で得た肝臓組織におけるアルブミン遺伝子座における遺伝子改変のパーセンテージおよび耐久性;PFTによって測定される努力肺活量;6MWTによって測定される歩行距離;JROM;肝臓および脾臓体積を評価するための肝臓のMRI;臨床軟部組織および/または骨を評価するための脳および頸椎のMRI;WASI-II、WPPSI-IVまたはBSID-IIIおよびVABS-IIによる神経認知能力;肝臓組織の病理組織学的試験;肝臓組織およびCSFにおいて測定される総GAG、DS GAGおよびHS GAGレベル、ならびに血清において測定されるAAV2/6およびZFNに対する免疫応答。これらのエンドポイントの解析は、記述的および探索的な性質であった。連続変数は、全登録対象に関する平均、標準偏差、中央値および範囲によってまとめた。カテゴリー変数は、全登録対象に関するカテゴリー毎の計数およびパーセンテージによりまとめた。前年の値からの変化は、選択された臨床および実験室パラメーターに関して計算することができる。シフト表(正常範囲と比べたベースラインからの変化)は、選択された実験室パラメーターに関して構築することができる。
【0276】
統計解析およびデータ解析
これは、探索的第I相試験であったため、有効性および関係した生物学的エンドポイントを評価するために限られた統計的検定力が存在する。したがって、解析は、主に記述的および探索的な性質であった。本試験は、最大23名の対象を登録する(7種のコホートのそれぞれにおける2名の対象と、3種の年齢コホートのそれぞれにおける最大耐用量における3名の追加の対象の潜在的な登録)。これが、安全性および忍容性を評価するための第I相安全性試験であるため、コホート当たり2名の対象の選択は、統計的計算に基づくものではなかった。全ての表、リストおよびデータ概要は、SASバージョン9.2またはそれ以降で行った。
患者
【0277】
患者人口統計を下の表7に示し、これは、全患者が、軽症型MPS II疾患を有したことを実証する。表8は、治験開始後32週間に各対象が得た処置への曝露を収載する。
【表7】
【表8】
【0278】
観察された有害事象
全対象が、継続中のMPS II疾患と一致して、処置下で発現した有害事象(TEAE)を報告した。大部分は軽度(グレード1)であり、処置なしで消散した。3種の重篤有害事象(SAE)が、3名の対象において報告され、治験施設の責任医師によって、試験薬に関係するとはみなされなかった。これらを次に示す:A)自身のMPS IIによる慢性肺疾患の対象の病歴に続発すると考えられた、グレード3気管支炎であり、気管支炎は、医学的処置後に消散した;B)グレード2心房細動。これは、自身のMPS II疾患による心弁疾患の対象の病歴に続発すると考えられ、事象は医学的処置後に消散した;C)対象の根本的なMPS II疾患、ヘルニアの病歴および病的肥満に続発すると考えられた臍ヘルニア、閉塞性。これらの事象を下の表9Aにまとめる:
【表9A】
【0279】
2例を除く全ての試験薬に関係する有害事象(AE)は、軽度(グレード1)であり、全て介入なしで消散し、用量依存性ではなかった。AEを下の表10に示す。
【表10】
【0280】
表10において、「N」は、各処置群における対象の総数を指し示し;「n」は、基本語毎の有害事象を有する対象の数を指し示し;「[T]」は、有害事象の総数を指し示す。は、中等度重症度(グレード2)を指し示す。
【0281】
予備的肝臓ゲノム編集結果
RT-qPCRアッセイを使用して、IDS導入遺伝子がアルブミン遺伝子に挿入された場合に肝臓組織に発生する特有のmRNAを検出した(実施例4を参照)。結果は、1e13vg/kg用量を受けた両方のコホート2対象において陽性(+)であった(下の表11を参照)。アルブミン遺伝子内の標的部位における挿入/欠失を検出するための、より低感度のゲノムDNAアッセイは、検査した全試料で陰性であった。
【表11】
【0282】
予備的血漿IDS測定
血漿IDS活性は、可能な場合ERT投与の直前の期間に、および対象の最後のERT注入後96時間以降として定義された、トラフにおいて測定した。IDSは、本試験において、基質として4-硫酸メチルウンベリフェリル(4MU)を使用した標準の検証済みの蛍光測定アッセイを使用して測定した(例示的な血漿IDSアッセイについては、下の実施例4を参照)。血漿IDS活性は、ベースライントラフにおいて、また、投与後最初の16週間にわたり、定量のレベルを下回った(5.2nmol/時間/mL)。
【0283】
改善された血漿IDS活性アッセイを開発した(実施例4を参照)。図8に示す通り、新たなアッセイの使用により、血漿IDSは、全対象において検出可能であった。上述の通り、ERT投与後96時間未満に得られた試料は除外した。このアッセイにおいて、MPS IIベースライン対象は、<10mmol/mL/時間IDS活性であり、正常集団におけるベースラインは、>79mmol/mL/時間である。図8は、試験薬による処置に先立つ対象における血漿IDSレベルを示す(0日目に投与する前に陰性として表示された試験日データを参照)。
【0284】
12週の尿GAG結果、コホート1および2
実施例1に記載されているポリヌクレオチドおよびAAVを含む組成物による投与後12週間に、コホート2における全GAG生化学的マーカーに減少が見られた。総尿GAGレベルは、検証済みの1,9-ジメチレンブルー(DMB)比色アッセイによって測定した(実施例4を参照)一方、尿デルマタン硫酸および尿ヘパラン硫酸GAGレベルは、検証済みのMS/MSアッセイ(超高速液体クロマトグラフィーとそれに続くタンデム質量分析)によって測定した。例示的なMS/MSアッセイ手順は、実施例4に記載されている。コホート2における総GAGの、ならびにMPS IIに最も密接に関連付けられる2種のGAGであるデルマタン硫酸およびヘパラン硫酸の低減が観察された。これらの結果を下の表8Aに示す。
【表8A】
【0285】
16週の尿GAG結果、コホート1および2
実施例1に記載されているポリヌクレオチドおよびAAVを含む組成物による投与後16週間に、コホート2における全GAG生化学的マーカーの減少が見られた。総尿GAGレベルは、検証済みの1,9-ジメチレンブルー(DMB)比色アッセイによって測定した(実施例4を参照)一方、尿デルマタン硫酸および尿ヘパラン硫酸GAGレベルは、検証済みのMS/MSアッセイ(超高速液体クロマトグラフィーとそれに続くタンデム質量分析)によって測定した。例示的なMS/MSアッセイ手順は、実施例4に記載されている。これらの結果を下の表8Bに示す。
【表8B】
【0286】
16週間の結果の概要
コホート1、2および3の登録および投与を完了したが、16週のデータは、コホート1および2に関するこの予備的報告のものしか利用できなかった。したがって、現在のデータは、低用量および中間用量のみから得た。コホート3由来の2名の患者は、最近、コホート2用量よりも5倍高い5e13vg/kgの用量で処置した。実施例1に記載されているポリヌクレオチドおよびAAVを含む組成物は、最大5.00e13vg/kgの用量で、軽症型MPS IIを有する6名の対象に投与し、全対象において全般に耐容性が良かった。組成物に関係したSAEは報告されず、持続性高トランスアミナーゼ血症は観察されなかった。尿GAGバイオマーカーは、用量依存性様式で、総GAG、デルマタン硫酸(DS GAG)およびヘパラン硫酸(HS GAG)の低減を示した。1.00e13vg/kg用量で処置した2名の対象(コホート2)は、本明細書に記載される組成物による投与後16週間の尿ヘパラン硫酸の60%を超える平均減少を示した。第1の患者のおおよその53%および第2の患者のおおよそ69.9%を含む、コホート2に関するおおよそ61.5%の尿ヘパラン硫酸の平均低減が観察された。デルマタン硫酸に関して、第1の患者のおおよその47.4%および第2の患者のおおよそ16.3%を含む、コホート2に関するおおよそ31.8の平均低減が観察された。第1の患者のおおよそ62.5%および第2の患者のおおよそ39.1%を含む、コホート2に関するおおよそ50.8%の尿ヘパラン硫酸の平均低減を観察した。コホート2患者に関して、総尿中GAG、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸はそれぞれ、両方の患者でベースラインを下回って減退した。特に、16週間のコホート2(中間用量)において、総尿中GAGは51%、デルマタン硫酸は32%、ヘパラン硫酸は62%減退した。
【0287】
さらに、図6A図6C(対象毎のベースラインおよび各毎月の来診における個々の対象値を描写する)に示す通り、処置後MPS IIバイオマーカーの低減は、経時的に持続した。対象が、試験薬とは無関係の心房細動のSAEのために入院し、数時間低血圧となってから4日後に試料が得られた1時点を例外として、コホート2における両方の対象に関して、総GAG、デルマタン硫酸およびヘパラン硫酸の実測値は、16週間を通してベースラインを下回ったままであった。次の測定において、この患者のGAGは、4週目から観察された以前の低い範囲に戻った。
【0288】
コホート2とは対照的に、コホート1対象のGAGは全般に、自身のベースライン測定値の前後のままであった。コホート1における1名の患者に関して、総GAGは、僅かに高まり、他の患者に関して、総GAGは僅かに減退した。本試験における患者は全てERTを受けており、これは、ERT未処置MPS II患者と比較して、そのGAGが有意に低減されることを意味する。ERTを受けている軽症型疾患を有するMPS II患者のGAGレベルは、変動し得るが、通常、診断モデルが、正常の最下端(very low end)までずっと、疾患の下端とみなす範囲内である。コホート1および2における患者は、高い正常範囲におけるベースラインGAG値を有し、測定可能な減退の余地を依然として有するのに十分に上昇した。血漿IDS活性は、ベースライン時および組成物による投与後最初の16週間において定量のレベルを下回った。検出可能レベルの非存在は、IDSが、本明細書に開示される方法および組成物を使用して編集された肝臓細胞によって産生されていないことを指し示すものではない。これらの組織がIDSを欠乏しているため、低レベルの循環IDSへの細胞の連続的曝露が、細胞への酵素取り込みの駆動に、およびGAGの低減または抑制維持に十分となり得ることが可能である。第6の対象(コホート3)は、5.00e13vg/kgで投与され、上に記載されている安全性および探索的エンドポイントを観察するために追跡される。患者は、ERTの中止に関して評価される。ERT中止後の尿GAGレベルの安定化は、本明細書に開示される方法および組成物の治療潜在力を評価するための1つの重要なパラメーターとなる。
【0289】
24週の尿GAG結果、コホート1~3
5e12vg/kg、1e13vg/kgおよび5e13vg/kgを含む3種の用量コホートに関して、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸および総GAGを含む尿GAGを測定した。8名の対象を処置したが、この24週データセットは、最初の6名の対象のみを含む。データを図9に提示する。
【0290】
図8は、処置後おおよそ50日目にコホート3における対象6における血漿IDSの大幅な増加、および高トランスアミナーゼ血症の発症を実証する。図10は、対象6のIDSレベル、およびIDSレベルのスパイクにおいて観察された肝臓アラニンアミノトランスフェラーゼの変化のクローズアップを描写する。肝臓機能検査の軽度(グレード1)増加が、試験62、111および128日目に報告された。プレドニゾン用量は、毎日60mg POに増加させ、次いで漸減させた。この対象も、試験121日目に、試験薬とは無関係のSAE(嵌頓臍ヘルニア)を有した。
【0291】
24週間の結果の概要
ヒトゲノムの編集成功の予備的証拠を示した。肝臓試料のPCR解析(遺伝子組込みを検出するためのアッセイ)の結果により、コホート2における2名の患者は、遺伝子組込みを実証した。加えて、融合アルブミンIDS転写物を合成した。これらのゲノム編集された肝臓細胞は、処置されたMPS II患者の血漿においてIDS活性を生成した。本明細書で要約される患者は、AAV SB-47171、AAV SB47898およびAAV hIDSドナーを含む本明細書に開示される組成物で処置した。
【0292】
ERT中止は、安全性、IDS/GAG生化学的マーカーおよび機能的尺度をモニタリングしつつ、プロトコール指定のスケジュールの下で開始された。ERT中止後の尿GAGレベルの応答は、試験薬の潜在的臨床関連性の決定に重要である。3名の対象(コホート2の2名およびコホート3の1名)は、ERT中止を開始したが、コホート2における1名の対象は、疲労および尿GAGの並行した増加により、おおよそ3ヶ月後にERTを再開し得る。
【0293】
試験薬を最大5e13vg/kgの用量で、軽症型MPS IIを有する8名の対象に投与したところ、全般に耐容性が良かった。試験薬に関係する有害事象は、軽度または中等度であり、全て消散した。試験薬の投与は、これらの患者において、好ましい安全性プロファイルにより、全般に耐容性が良かった。17種の有害事象が報告され、そのうち15種は軽度、グレード1であり、全ての報告された有害事象が処置なしで消散した。試験薬に関係する重篤有害事象は報告されなかった。低用量コホートにおける1名の患者および中間用量コホートにおける2名の患者由来の肝臓生検結果は、1e13中間用量で処置した2名の対象における肝臓細胞のゲノム編集の予備的証拠を指し示す。特異的な分子シグナルの増幅および検出に使用される標準実験室方法である逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用したアッセイを使用して、解析を行った。アッセイは、IDS遺伝子が内因性アルブミン遺伝子内の予想部位への組込みに成功した場合にのみ作られ得る、アルブミン-IDSキメラmRNA転写物を同定することにより、遺伝子組込みを検出するように設計した。このアッセイは、両方の中間用量コホート患者においてアルブミン-IDSキメラmRNA転写物を検出した。より低感度のアッセイ(0.1%の定量下限)であるMiSeq DNA配列決定を使用して行われた別の肝臓組織解析は、低および中間用量コホート患者由来の試料における編集を検出しなかったため、中間用量コホート患者におけるゲノム編集は、低頻度で起こるようである。肝臓組織の解析は、24週間後に1e13vg/kg用量の両方の対象においてアルブミン-IDS mRNA転写物の証拠を示し、ゲノム編集が起こったことを指し示す。コホート3対象の解析は完了していない。5e13vg/kg用量の1名の対象において血漿IDS活性の実質的増加が観察されたが、これは、軽度高トランスアミナーゼ血症の発症後に減少した。
【0294】
加えて、この概要は、より高感度の定量的IDSアッセイを使用した血漿IDS活性測定値も含んだ。IDS酵素データは、ベースラインと比較して、処置後24週間に試験の全3コホートにわたって登録された最初の6名の患者由来の血漿活性レベルを含んだ。酵素アッセイ解析は、1e13中間用量の2名の対象および5e13高用量の1名の対象の血漿におけるIDS活性の僅かな増加を検出した。さらに、5e13高用量で処置した第2の患者において血漿IDS活性の有意な増加が測定され、血漿IDSレベルは、SB-913処置後50日目までにおおよそ50nmol/時間/mLへと高まり、これは、正常血漿IDS活性の下限のおよそ60%である。62、111および128日目にこの患者において、軽度、グレード1の肝臓機能検査上昇が測定され、疑われる高トランスアミナーゼ血症事象と一致し、処置後24週間に14nmol/時間/mLまで下がるこの対象における血漿IDS活性の散逸をもたらした。
【0295】
これらの最初の6名の患者において、24週間の尿GAG測定値も収集し、ベースラインと比較した。登録した全対象が、正常または正常を僅かに上回るとみなされる範囲内のベースライン尿GAGレベルを有し、24週間に、最初の6名の患者由来の尿GAGレベルは、明らかな傾向または有意義な変化を示さなかった。
【0296】
AAV hIDSドナーと共にAAV SB-71557およびAAV SB-71728(47171および47898の代わりに)を含む本明細書に開示される組成物を使用して、本明細書に記載される通りに追加の試験を行った。前臨床試験において、AAV SB-71557およびAAV SB-71728は、本明細書に記載される通りに処置されるMPS II対象において欠損した酵素であるIDSの改善されたカッティング効率(5~30倍)および改善された発現(5~20倍)を実証した(米国特許出願第16/271,250号を参照)。
【0297】
(実施例4)
イズロン酸-2-スルファターゼ酵素アッセイ
利用することができる例示的な実験室手順は、次の通りに行われる。IDS酵素活性を検出するために、使用することができる多くのアッセイが存在する。例示的なアッセイは次の通りである:イズロン酸-2-スルファターゼは、ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸の両方に存在するイズロン酸残基の2’位から硫酸残基を除去するリソソーム酵素である。このアッセイは、末端イズロン酸を含有した人工4-MU基質を使用した。しかし、4-MUの蛍光が放出されるためには、基質から全イズロン酸部分が除去されなければならない。イズロン酸の除去は、α-イズロニダーゼ酵素によって触媒され、これは、イズロン酸-2-スルファターゼによる硫酸残基の除去後でのみ起こることができる。したがって、このアッセイは、2ステップ反応であった。第1のステップにおいて、内因性イズロン酸-2-スルファターゼは、4-MU基質の末端でイズロン酸残基から2’硫酸残基を切断する機会を与えられた。第2のステップにおいて、外因性リソソーム酵素(α-イズロニダーゼを含むが、イズロン酸-2-スルファターゼを含まない)が、反応物に添加された。α-イズロニダーゼ酵素は、内因性イズロン酸-2-スルファターゼによって2’硫酸残基が既に除去されたいずれかの4-MU基質から、イズロン酸を除去することができる。4-MU基質からの末端イズロン酸の除去は、蛍光光度計を使用して観察されるその蛍光を放出する。しかし、内因性イズロン酸-2-スルファターゼ酵素が、患者試料内に存在しない場合、2’硫酸残基は除去され得ず、これは、全イズロン酸部分が除去されることを防止し、これにより、4-MU基質の蛍光をクエンチする(Voznyi et al. (2001) J Inher Metab Dis 24:675-680)。
【0298】
手順:全血から血漿を遠心分離により分離した(ヘパリン処理、グリーントップまたはEDTA保存、パープルトップ)。全血から血漿を遠心分離により分離した。遠心分離後に、上層の液体層(血漿)を慎重に引き抜くまたは注ぎ出し、別の適切な収集チューブ内に収集した。血漿を含有するこのチューブを凍結し、ドライアイス中に詰めて送る。
【0299】
凍結した血漿試料をフリーザーから取り出し、37℃ウォーターバスで急速に解凍し、その後に希釈した。血漿試料を、別の微量遠心分離チューブにおいて基質緩衝液で1:10希釈した(10μL血漿+90μL基質緩衝液)。各患者/対照チューブにおいて、10μL希釈血漿+20μLハンター基質を組み合わせてマイクロプレートに入れ、37℃インキュベーターで3時間インキュベートした。50μLクエンチング溶液(0.2%BSAおよび1μg/mL組換えヒトα-L-イズロニダーゼを有する2×マッキルベイン(Mcilvaine)緩衝液)を各試料に添加し、反応プレートを24時間37℃インキュベーターに戻した。40μLの各反応物を平らで白色不透明なプレートに移し、100μL停止緩衝液を添加した。(365nm励起、450nm発光)プレートリーダーを使用して、蛍光シグナルを取得した。次の計算を使用して、総酵素活性を決定した:
【0300】
血漿:平均補正読み取り値×希釈係数(10)=血漿1mL当たりの3時間当たりの加水分解された基質のnモル数。正常血漿値は、82~200nmol/時間/mLから得た(50名のドナーから決定)。酵素活性の定量下限(LLOQ)は、0.78nmol/mL/時間である。酵素活性の解析的測定範囲の上限は、167nmol/mL/時間である。
【0301】
基質緩衝液を次の通りに調製した:0.1M酢酸ナトリウムを0.01M酢酸鉛と組み合わせ、氷酢酸を使用して5.0のpHに調整した。試料希釈のための使用当日に基質緩衝液に0.2%BSAを添加した。ハンター基質4MU-αIdoA-2S(2.5mM)は、商業的に購入した。
【0302】
クエンチング溶液:2×マッキルベイン緩衝液は、0.4Mリン酸二ナトリウムおよび0.2Mクエン酸塩、pH4.5に調製した。使用当日に2×マッキルベイン緩衝液に0.2%BSAを添加した。1μg/mLの最終濃度で0.2%BSAを含有する2×マッキルベイン緩衝液に組換えヒトα-L-イズロニダーゼ(R&D system)を希釈することにより、クエンチング溶液を調製した。
【0303】
このアッセイは、定量下限=0.78を有する。罹患していない個体の参照範囲(nmol/mL/時間)は、82~200である一方、MPS II患者(ERT後>96時間)のベースラインは、0~10と推定される。
血液におけるIDS活性を測定するための別の例示的なアッセイは次の通りである:4-メチルウンベリフェリルα-L-イドピラノシドウロン酸(idopyranosiduronic acid)2-硫酸(IDS-S)は、IDSの基質として使用される。次に、その酵素産物、4-メチルウンベリフェリルα-L-イドピラノシドウロン酸(IDS-P)および内部標準、4-メチルウンベリフェリルα-L-イドピラノシド(IDS-IS)は、UPLC-MS/MSによって直接測定される(Lee et al. (2015) Clin Biochem. 48(18):1350-3)。
【0304】
MS/MSによる総尿グリコサミノグリカン(GAG)アッセイならびに定量的尿ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸およびコンドロイチン硫酸アッセイ
尿におけるGAGのレベルを測定するための種々のアッセイが存在する。例示的なアッセイの1種を次の通り記載する:尿試料は、試験中に収集され、ジメチルメチレンブルー(DMB)アッセイを使用してグリコサミノグリカンレベルに関して解析される。簡潔に説明すると、尿試料は、1,9-ジメチルメチレンブルー色素で試料を処理することによりヘパラン硫酸に関して染色され、3.3のpHのギ酸に再懸濁され、520nmの波長での吸光度に関して測定される。尿試料において同定されたクレアチニンタンパク質の総濃度を使用して、ヘパラン硫酸の濃度を正規化した(例えば、de Jong et al. (1989) Clin Chem 35/7:1472-1479を参照)。
【0305】
生体試料に存在する総GAGを測定するための別の例示的なアッセイは次の通りである:方法は、(a)検出可能シグナルを産生するためのセリンプロテアーゼによる標識された基質の切断に適した条件および時間において、セリンプロテアーゼ(例えば、凝固カスケードの)、セリンプロテアーゼのための標識された基質、セリンプロテアーゼの阻害剤、および1種または複数種のグリコサミノグリカンを含むことが疑われる試料を組み合わせるステップと、(b)検出可能シグナルを検出するステップと、(c)検出可能シグナルの量を標準と比較して、前記試料における前記1種または複数種のグリコサミノグリカンの濃度を決定するステップであって、前記セリンプロテアーゼの前記阻害剤が、ヘパリン補因子IIおよびアンチトロンビンIIIからなる群から選択され、前記1種または複数種のグリコサミノグリカンが、デルマタン硫酸(DS)およびヘパリン硫酸(HS)からなる群から選択される、ステップとを包含する(例えば、米国特許出願公開第2013/0189718号を参照)。
【0306】
別の例示的なアッセイは、存在するGAGの種類を測定し、マルチプレックスアッセイと名付けられる(Langereis et al. (2015) PLoS One 10(9):e0138622)。このアッセイは、尿に見出されるヘパラン硫酸(HS)、デルマタン硫酸(DS)およびケラタン硫酸(KS)の酵素消化と、それに続くLC-MS/MSによる定量に基づく。このアッセイは、非常に高感度のアッセイであり、尿におけるGAGの正確な種類の測定に使用することができる。
【0307】
GAGの特異的な種類の濃度の決定に使用することができる別の例示的なアッセイは、RapidFire(RF、Agilent)ハイスループット質量分析システムを利用する。試料を、マトリックスに吸収して、濃縮および脱塩し、次いで、クロマトグラフィー分離なしでMS/MSへと直接的に溶出する。各試料を、10秒間未満で処理し、従来のLC-MS/MSに基づく方法よりもはるかに高速のスループットをもたらす(Tomatsu et al. (2014) J Anal Bioanal Tech. Mar 1; 2014(Suppl 2):006を参照)。
【0308】
血漿、唾液、尿、糞便および精液におけるAAV2/6クリアランス
生体試料におけるAAVの検出は、当技術分野で公知のいくつかの方法によって行うことができる。例示的なシェディングアッセイは、ヒト血漿、精液、唾液、尿および大便試料におけるAAV2/6-ドナーおよびAAV2/6-ZFNベクターの解析のためのものであり、5種のマトリックスからのDNAの回収率を評価する。ヒトドナー由来のヒト血漿、精液、唾液、尿および大便試料は、qPCR解析のためのマトリックスDNAの供給源を提供した。
【0309】
ヒト血漿からのDNA単離:ヒト血漿試料のアリコート(200μL)を解凍し、2μgのサケ精子DNAの存在下、プロテイナーゼKで処理し、その後、QIAamp DNA Miniキットを使用してDNA単離を行った。精製された血漿DNAを100μLの溶出緩衝液AEに溶解した。
【0310】
ヒト精液からのDNA単離:ヒト精液試料のアリコート(最大100μL)を解凍し、プロテイナーゼKで処理し、次いで、QIAamp DNA Miniキットを使用してDNA単離のために処理した。精製された精液DNAを100μLの溶出緩衝液AEに溶解し、DNA濃度を、Nanodrop ND-8000機器を用いて260nmにおけるUV吸収によって決定した。
【0311】
ヒト唾液からのDNA単離:ヒト唾液試料のアリコート(最大200μL)を解凍し、プロテイナーゼKで処理し、次いで、QIAamp DNA Miniキットを使用してDNA単離のために処理した。精製された唾液DNAを100μLの溶出緩衝液AEに溶解し、DNA濃度を、Nanodrop ND-8000機器を用いて260nmにおけるUV吸収によって決定した。
【0312】
ヒト尿からのDNA単離:ヒト唾液試料のアリコート(最大200μL)を解凍し、プロテイナーゼKで処理し、次いで、QIAamp DNA Miniキットを使用してDNA単離のために処理した。精製された唾液DNAを100μLの溶出緩衝液AEに溶解し、DNA濃度を、Nanodrop ND-8000機器を用いて260nmにおけるUV吸収によって決定した。
【0313】
ヒト大便からのDNA単離:ヒト大便試料のアリコート(90~110mg)を部分的に解凍し、ホモジナイズし、プロテイナーゼKで処理し、その後、QIAamp Fast DNA Stool Miniキットを使用してDNA単離を行った。精製された大便DNAを200μLの緩衝液ATEに溶解し、DNA濃度を、Nanodrop ND-8000機器を用いて260nmにおけるUV吸収によって決定した。
【0314】
7900HT FastリアルタイムPCR系において、標準96ウェルプレート上で各qPCRを行った。反応ミックスを有するプレートをオプティカルキャップでシールし、1500rpm15分間の遠心分離によって全液滴をスピンダウンし、その後、qPCRを行った。
【0315】
ドナーAAV(SB-IDS、SB-A6P-HNT)のための反応は、91ヌクレオチドアンプリコンを増幅および検出した。ZFN DNA(SB-47171:SB-A6P-ZLEFTおよびSB-47898:SB-A6P-ZRIGHT)の検出のための反応は、96ヌクレオチドアンプリコンを増幅および検出した。
【0316】
使用したアッセイ条件:50℃で2分間保持した。95℃で10分間保持した。95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル。直鎖化MPS IIまたはZFNプラスミドDNAを使用した以前に調製された標準曲線と結果を比較した。
【0317】
肝臓組織におけるアルブミン遺伝子座における遺伝子改変
配列決定による遺伝子改変の検出のための例示的なアッセイは、MiSeq次世代配列決定(NGS)プラットフォームを使用して、対象試料におけるアルブミン遺伝子における挿入および欠失(インデル)のレベルを決定することである。標準手順を使用して肝臓組織からgDNAを単離し、20ng/mLに希釈した。試料をアダプターPCR、続いてバーコードPCRに付し、配列決定のためにMiSeqカートリッジ上にロードした。PCR反応のために次の条件を使用した:
【0318】
PCR反応(アダプター):95℃3分間、[98℃20秒間、55℃15秒間、72℃15秒間]、角括弧内のステップを29回反復。72℃で1分間の最終伸長。
【0319】
PCR反応(バーコード):95℃3分間、[98℃20秒間、60℃15秒間、72℃15秒間]、角括弧内のステップを9回反復。72℃で1分間の最終伸長。
【0320】
肝臓生検におけるアルブミン-IDS mRNA転写物の同定
RT-PCR方法を開発して、アルブミン遺伝子座へのIDS遺伝子の挿入の結果として生じる特有のアルブミン-IDS mRNA転写物の存在をアッセイした。このアッセイを使用して、試験薬で処置された対象由来の肝臓生検組織を検査した。手短に説明すると、製造業者(manufacture)のRNA肝臓環境を使用したFastPrep(登録商標)機器(MP Biomedicals)を使用して、凍結した肝臓組織からRNAを抽出した。RNAは、製造業者のプロトコールに従ってPureLink RNA miniキット(Thermo Fischer)を使用して単離される。RNAを定量し、製造業者のプロトコールに従ってSuperScript III第1鎖合成系(Invitrogen)を使用した逆転写に使用した。逆転写後に、試料を、次のプライマーセットを使用したPCRに付した:
【表12】
【0321】
図7に描写される通りにプライマーおよびプローブを使用して、アルブミン遺伝子へのIDS組込み後の特有のPCR産物を増幅した、またはIDS組込みなしのアルブミン単独を検出した。
【0322】
LabChipGX Touch HT系(Perkin Elmer)を使用して、PCR産物の定量を行った。このアッセイの検出下限は、1,000ゲノムにつきおよそ1ゲノムである。
【0323】
(実施例5)
最小に効果的な用量を決定するためのモデルを開発して、本発明の組成物で処置した対象における効果的な用量を予測することができる。モデルを開発して、組成物の予測される薬物動態(PK)および薬力学(PD)を試験して、治療上効果的な用量を予測した。ヒトおよび非ヒト霊長類においてElaprase(登録商標)を使用した、発表されたPKデータ(Tomanin et al. (2014) Orphanet J Rare Dis. 9:129.;Garcia et al. (2007) Mol Genet Metab. 91(2):183-90;Kim, S et al. (2017) Mol Genet Metab.122(1-2):92-99. doi: 10.1016/j.ymgme.2017.06.001.;Sohn et al. (2013) Orphanet J Rare Dis. 8:42.;Kim, C et al. (2017) J Hum Genet. 62(2):167-174.;Elaprase FDA Pharmacology/Toxicology and Medical Review Documents)、ならびに本発明の組成物におけるマウス試験由来のPDおよびPKデータ(Ou, L. et al.、投稿準備中)を適合させた。まず、ヒト、サルおよびIDSノックアウトマウス(参照)を使用したElaprase(登録商標)のPK/PDモデルを開発した。次に、IDSノックアウトマウスにおいて本発明の組成物を使用して、PK/PDモデルを開発した(Ou et al. (2014) Mol Genet Metab. 111(2):116-122)。次いで、2種のモデルを連結して、ヒトにおける本発明の組成物の挙動をシミュレートし(図1)、それによると、計算のセットを行って、2種の治療薬の挙動を数学的に連結した(図2)。マウス観察データにモデルを適用して、予測値に合わせた(図3)。次に、モデルを使用して、尿GAGレベルの低下をもたらす血漿IDS活性に要求される効果的な用量を予測した。図示される通り(図4)、5.0e+12vg/kgの最低用量であっても、推定最低有効用量(lowest estimated efficacious dose)を上回るIDS血漿活性をもたらすことが予測されるため、処置されている対象における尿GAGを低下させることが予測される(後述を参照)。
【0324】
文献検索は、正常ヒト、MPS-II保因者(ヘテロ接合体)および罹患対象におけるIDS活性の量(GCCアッセイによって測定される)が、下の表に示す通りであることを見出した:
【表9B】
【0325】
上の表に示すデータの出典は次の通りである:「(1)」はVoznyi et al. (2001) J. Inherit Metab Dis 24(6):675-80であり;「(2)」はGreenwood Genetic Center, internal observations;「(3)」はLee et al. (2015) Clin Biochem 48(18):1350-3であり;「(4)」はde Camargo Pinto et al. (2010) Am J Med Genet A.であり;「(5)」はLin et al. (2006) Clin Chim Acta 369(1): 29-34であり;「(6)」はSchwartz et al. (2009) J Inherit Metab Dis 32(6):732-738であり;「(7)」はQuaio et al. (2012) J Inherit Metab Dis 4:125-8であり;「(8)」はChistiakov et al. (2014) J. Genet Genomics 41(4): 197-203である。
【0326】
全身性IDSの30%が、細胞によって取り込まれ、正常IDSの25%が、MPS-II表現型の補正に十分であることが推定された(Eliahu et al. (1981) Am J Hum Genet 33(4):576-83)。「保因者」MPS-II表現型から単離された白血球において実測される活性(表9Bを参照)は、9~54nmol/4時間/mLである。よって、血漿におけるIDSの30%が、細胞へと内部移行される場合、おおよそ6.5nmol/4時間/mg~10nmol/4時間/mgの内部細胞濃度をもたらす20~30nmol/4時間/mLの血漿濃度が、疾患に関連する症状の軽減に十分である。
【0327】
本明細書に言及されるあらゆる特許、特許出願および刊行物は、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0328】
理解を明確にする目的のため、説明および例としてある程度詳細に本開示を提示してきたが、当業者には、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変化および改変を実施することができることが明らかである。したがって、前述の記載および例は、限定として解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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