(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】着脱可能バッテリモジュールを冷却するための冷却システムを備えた電気自動車又はハイブリッド車
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20240208BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240208BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240208BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240208BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240208BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240208BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240208BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20240208BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240208BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240208BHJP
B60L 53/80 20190101ALI20240208BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20240208BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20240208BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240208BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60L58/26
H01M10/613 ZHV
H01M10/6554
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
H01M10/633
B60K6/28
B60W10/26 900
B60W20/00
B60L53/80
B60L58/18
B60L50/64
B60L3/00 S
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2021521964
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 IB2019058166
(87)【国際公開番号】W WO2020084363
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】102018000009787
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505252296
【氏名又は名称】イタルデザイン-ジュジアーロ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ITALDESIGN-GIUGIARO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ギオット,ジョヴァンニ
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250691(JP,A)
【文献】特開2009-298190(JP,A)
【文献】特開2017-105425(JP,A)
【文献】特開2014-225981(JP,A)
【文献】特開2018-107861(JP,A)
【文献】特開2017-157541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
H01M 10/52 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式バッテリシステムを備えた電気又はハイブリッドの自動車(V)であって、
前記モジュール式バッテリシステムは、
前記自動車(V)に常設された少なくとも1つの固定バッテリモジュール(B1)と、
少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)と、
前記固定バッテリモジュール(B1)、および前記着脱可能バッテリモジュール(B2)の動作を管理するように構成されたバッテリ管理システム(BMS)と、を含み、
前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)は、
外側のケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)の内部に受けられる第1の熱伝導性プレート(14)と、
前記ケーシング(10)の内部に受けられ、前記第1の熱伝導性プレート(14)に接触して配置された少なくとも1つの再充電可能なバッテリパック(12)と、
前記第1の熱伝導性プレート(14)の内側に延び、伝熱流体が充填された内部回路と、
前記内部回路を流れる伝熱流体が流れるように前記内部回路に流体接続され、その外面が前記ケーシングの外側に配置された第2の熱伝導性プレート(22)と、を含み、
前記自動車が、
前記自動車(V)に固定され、前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)が前記自動車(V)に装着されたときに、前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュールの前記第2の熱伝導性プレート(22)と接触するよう配置されるように適合された少なくとも1つの直膨式プレート(26)を有する補助冷却回路(28)をさらに含む、
自動車。
【請求項2】
前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)が、前記ケーシング(10)の内部に受けられ、前記伝熱流体が前記内部回路内を流れるように動作するポンプ(16)をさらに含む、
請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)が、前記少なくとも1つのバッテリパック(12)の温度を示す信号を提供するための検知手段と、前記検知手段により提供される前記信号の前記バッテリ管理システム(MBS)への伝達を可能とし、前記ポンプ(16)の供給を可能にするように構成された電気的および電子的接続手段(N)と、をさらに含む、
請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記補助冷却回路(28)が、前記少なくとも1つの直膨式プレート(26)と直列に配置されたサーモスタット式膨張弁(30)をさらに含む、
請求項1~3のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項5】
前記自動車の客室内の空気を調整するための主冷却回路(36)をさらに含み、
前記補助冷却回路(28)が、流れ制御弁手段(32、34)を介して主冷却回路(36)に接続され、前記主冷却回路(36)と前記補助冷却回路(28)との間の冷媒気体の流れを制御する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項6】
前記バッテリ管理システム(BMS)が、前記自動車(V)に前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュール(B2)が設置されたとき、前記流れ制御弁手段(32、34)を制御して前記主冷却回路(36)を前記補助冷却回路(28)と流体連通させるように配置される、
請求項5に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気駆動またはハイブリッド駆動の自動車に関し、より具体的には、モジュール式のバッテリシステムを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電気自動車やハイブリッド車のコストが高いのは、主にバッテリセルのコストが高いことが原因である。この欠点を解決するために、モジュール式のバッテリシステムが導入されており、このシステムは、1つまたは複数の固定バッテリモジュールと、必要に応じて取り付けまたは取り外しが可能な1つまたは複数の追加バッテリモジュールとを含む。
【0003】
添付図面の
図1は、概してVで示される電気自動車またはハイブリッド車の底面図であり、この車両には、車両の電気推進システムに供給するために、車両フロアの適切な収容スペースに配置された複数の充電式バッテリモジュールB1およびB2を含む電源アセンブリと、バッテリモジュールB1およびB2が接続されるバッテリ管理システムBMSとを備えられている。バッテリモジュールB1(図示の例では2つのモジュール)は、固定バッテリモジュールと呼ばれ、車両に常設されているため、バッテリ管理システムBMSにも常設されている。一方、バッテリモジュールB2(図示の例ではこれも2つ)は、着脱可能バッテリモジュールと呼ばれ、車両の要求に応じて車両に設置され、車両から簡単に引き抜く(
図1の矢印Fで示す横方向へ、または後方へ)ことで、素早く交換することができる。着脱可能バッテリモジュールB2は、それぞれのコネクタNを介して、バッテリ管理システムBMSに接続することができる。
【0004】
バッテリセルが放電又は充電工程にさらされたり、特に高速充電サイクルを受けたり、高出力の要求(例えば加速時)を受けたりすると、ジュール効果によって一定量のエネルギーが熱の形で放散されることがわかっている。バッテリを構成するセルの性能を一定に保ち、耐用年数を延ばすためには、このように発生した熱が適切に放散される必要がある。現在考えられているバッテリ冷却方法は3つあり、それらは、空冷(二次蒸発器の使用を伴い得る)、水冷(補助チラーの使用を伴い得る)、および伝熱性プレートによる直膨式冷却(cooling by direct expansion)である。
【0005】
バッテリは完全な水密性、安全性、および耐衝撃性を備えた環境に置かれなければならない。一方、空冷を例外として、その他の上述の周知の冷却方法では、バッテリと冷却システムの間の接続が必要となる。そのため、上述のようなモジュール式バッテリシステムでは、着脱可能なバッテリモジュールの効果的な冷却を確保するという課題がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、電気駆動またはハイブリッド駆動の自動車のモジュール式バッテリシステムの着脱可能バッテリモジュールを冷却するシステムを提供することであり、このシステムは、着脱可能バッテリモジュールの効率的な冷却を可能とし、同時に着脱可能バッテリモジュールに欠かせない水密性を確保する。
【0007】
このような目的、およびその他の目的は、本発明によれば、添付の独立請求項1で定義されるモジュール式バッテリシステムを備えた自動車によって完全に達成される。
【0008】
概略すると、本発明は、システムであって、そのシステムは少なくとも1つの着脱可能なバッテリモジュールを有し、
そのバッテリモジュールは、
外側のケーシングと、
前記ケーシングの内部に受けられる第1の熱伝導性プレートと、
前記ケーシングの内部に受けられ、前記第1の熱伝導性プレートに接触して配置された1つまたは複数のバッテリパックと、
前記第1の熱伝導性プレートの内側に延び、伝熱流体が充填された内部回路と、
前記内部回路を流れる伝熱流体が流れるように前記内部回路に流体接続され、その外面が前記ケーシングの外側に配置された第2の熱伝導性プレートと、
を含むシステムを自動車に提供するというアイデアに基づいており、
また、
前記自動車に固定され、前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュールが前記自動車に装着されたときに、前記少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュールの第2のプレートと接触するよう配置されるように適合された少なくとも1つの直膨式プレート(direct expansion plate)を有する補助冷却回路も自動車に提供する。
【0009】
バッテリモジュールのこのような構成により、バッテリパックで発生した熱は、第1のプレートに伝導し、内部回路を流れる伝熱流体を介して第1のプレートから第2のプレートに伝導し、第2のプレートの外周面が、直膨式プレートの車両設置時にバッテリモジュールの第2のプレートに接触するように車両に固定された直膨式プレートの対応する面に接触することで、バッテリモジュールの外部に伝導して放熱することができる。
【0010】
このように,着脱可能なバッテリモジュールを冷却するための冷却システムが得られ、この冷却システムは,冷却システムの構成要素のほとんどがバッテリモジュール自体に搭載されていることから,車両の重量とコストの増加を最小限に抑えることを可能とする。さらに、このような冷却システムでは、伝熱流体を使用するものの、バッテリモジュールの内部回路と車両の空調システムとの間の接続を必要としないため、バッテリモジュールの水密性を確保することが可能となる。本発明のさらなる利点は、第1のプレートから第2のプレートへ、したがって、バッテリモジュールのケーシングの内側から外側へ熱を伝達するために伝熱流体を使用することによる高い冷却効率である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、単純に非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明から、より明らかになる。
【0012】
【
図1】
図1は、モジュール式バッテリシステムを備えた電気自動車またはハイブリッド車の底面図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車のモジュール式バッテリシステムにおいて使用可能な、本発明に係る着脱可能バッテリモジュールの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の着脱可能バッテリモジュールの正面図である。
【
図4】
図4は、
図1の自動車の空調システム、および
図2および3の着脱可能バッテリモジュールに関連した冷却回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図2および
図3を参照して、
図1を参照して上述したようなモジュール式バッテリシステムに使用できる着脱可能バッテリモジュールが、概してB2で示されている。既に説明したように、バッテリモジュールB2は、所定の方向、好ましくは水平方向(特に縦方向または横方向)に沿って挿入することにより車両に搭載することができ、挿入と逆方向に引き出すことにより車両から取り外すことができる。
【0014】
バッテリモジュールB2は、まず、外側のケーシング10と、ケーシング10の内部に受容された1つまたは複数の(充電可能な)バッテリパック12とを含む。図示された実施形態では、バッテリモジュールB2は、2つのバッテリパック12から構成されているが、当然、異なる数のバッテリパックが設けられていてもよい。
【0015】
バッテリパック12は、同様にケーシング10内に受け入れられた第1の熱伝導性プレート14(以下、単に「第1のプレート」と呼ぶ)に接触して配置されている。第1のプレート14が、ケーシング10の底壁10a上に配置され、バッテリパック12が、第1のプレート14の上面14a上に接触して留まることが好ましい。
【0016】
第1のプレート14の内部には、伝熱流体(例えば水)が充填された内部回路が設けられている。伝熱流体は、同様にケーシング10の内部に受けられたポンプ16によって、内部回路内を流れるようになっている。内部回路は、ポンプ16の配送ポートから第1のプレート14の内部に向かって延びる入口管18と、第1のプレート14から延びる出口管20とを含む。
【0017】
図1に示すように、一旦車両に搭載されると、バッテリモジュールB2は、コネクタNを介して車両のバッテリ管理システムBMSに接続される。バッテリモジュールB2のバッテリパック12への、およびそこからの電力の流れを管理することに加えて、コネクタNは、一方ではポンプ16に電力を供給し、他方ではバッテリパック12の温度を制御するために必要な電気的および電子的接続を確保する。
【0018】
バッテリモジュールB2は、内部回路を流れる伝熱流体が流れるように内部回路と流体連通している第2の熱伝導性プレート22(以下、単に「第2のプレート」と呼ぶ)をさらに含む。より具体的には、第2のプレート22は、一方が出口管20に接続され、他方が接続管24の一部を介してポンプ16の入口に接続されている。そして、伝熱流体は、出口管20を介して第2のプレート22に入り、接続管24を介してこのプレートから流出し、その後、ポンプ16によって、第1のプレート14の内部に延びる回路の残りの部分を流れる。
【0019】
第2のプレート22は、ケーシング10と一体であり、その外側の面22aがケーシング10の外側となるように配置され、それにより、バッテリモジュールB2の完全な水密性を確保し、以下に詳細に説明するように、車両に固定的に搭載されたそれぞれの直膨式プレート26の面26aに接触して配置されることが可能になる。
【0020】
第2のプレート22と直膨式プレート26との間には、軟らかい材質の導電性材料の層が有利に設けられており、製造寸法公差と、互いに接触している面22aおよび26aそれぞれの間に生じ得る非完全な平行度とを補償する。
【0021】
図4に示すように、直膨式プレート26は、冷却気体を流させる補助冷却回路28に沿って設置される。補助冷却回路28は、直膨式プレート26と直列に配置されたサーモスタット式膨張弁30(TXVとして一般的に知られており、以下、TXV弁として表示される)を含み、直膨式プレート26を冷却するとともに、バッテリモジュールB2の第2のプレート22も冷却する。
【0022】
図4の参照を続けて、着脱可能バッテリモジュールB2を冷却するための補助冷却回路28は、有利なことに、車両の客室内の空気を調整するための空調システムと統合されている。特に、ここで提案する実施形態では、補助冷却回路28は、三方弁32および逆止弁34によって、車両の空調システムの主冷却回路36に接続されており、この主冷却回路36は、従来から周知の方法で互いに直列に配置された、圧縮機38、凝縮器40、恒温膨張弁42、および蒸発器44を含む。三方弁32を適切に制御することにより、主冷却回路36の冷媒気体を、着脱可能バッテリモジュールB2を冷却するための補助冷却回路28にも流すこともできる。当然ながら、三方弁32は、バッテリ管理システムBMSが少なくとも1つの着脱可能バッテリモジュールB2の存在を認識した時点で、主冷却回路36と補助冷却回路28とを接続するように制御され、その結果、補助冷却回路28の内部に冷媒気体を流すことが可能となる。
【0023】
図4の実施形態では1つの着脱可能バッテリモジュールしか示されていないとしても、上記から既に予想されるように、複数の着脱可能バッテリモジュールが設けられてもよく、その場合、向かい合うバッテリモジュールと協働するように配置された単一の直膨式プレート、または各バッテリモジュールに1つずつ配置された複数の直膨式プレートのいずれかが設けられてもよい。すべての直膨式プレートは、補助冷却回路28に沿って設置される。
【0024】
運転中、バッテリパック12で発生した熱は、伝導によって第1のプレート14に伝達され、第1のプレート14の内部に延びる内部回路を流れる伝熱流体を介して、第1のプレート14から第2のプレート22に伝達され、第2のプレート22の外面22aと直膨式プレート26の対応する面26aとの接触によって、伝導によって(又は、主に伝導によって、とむしろ呼ぶべき)バッテリモジュールB2の外部に放散されることができる。回路内の伝熱流体の流れは、バッテリ管理システムBMSの制御下で、ポンプ16によって制御され、バッテリパック12の温度を所定の最適温度範囲内に維持する。
【0025】
本発明の提案された実施形態は、純粋に例示のためのものであり、限定するものではないことに留意すべきである。当業者は、本明細書に記載された原則から逸脱しない、したがって添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲内に入るものとみなされる異なる実施形態に従って、本発明を容易に実施することができる。
【0026】
このことは、特に、ここで図示したものとは異なる数および/又は異なる配置の着脱可能バッテリモジュールを提供する可能性にも当てはまる。