(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】重度のインスリン抵抗性糖尿病の対象における糖尿病の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/433 20060101AFI20240208BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240208BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240208BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240208BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/433
A61P3/10
A61P13/12
A61P3/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/381
A61K31/351
A61K31/7048
A61K31/7034
A61K31/7056 ZNA
(21)【出願番号】P 2021525049
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 GB2018053203
(87)【国際公開番号】W WO2020095010
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-11-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月21日にJCI Insightにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月21から平成30年10月10までに書簡にて潜在的に関心のある企業へ公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月5日から平成30年11月7日までに、コペンハーゲンで開催されたBio Europe 2018にて潜在的に関心のある企業へ公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月21から平成30年10月10までにスライド資料にて潜在的に関心のある企業へ公開
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522156427
【氏名又は名称】ベタゲノン アーベー
【氏名又は名称原語表記】BETAGENON AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドルンド,ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,ビョルン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532854(JP,A)
【文献】特表2012-507530(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119515(WO,A1)
【文献】EU Clinical Trials Register, EudraCT Number:2016-002183-13,2016年
【文献】Diabetes,2016年,Vol.65,p.2784-2794
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病を治療する方法に用いるための剤であって、式Iの化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、前記方法は前記剤を必要とする対象に投与することを含み、前記対象が、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定され、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、前記対象の腎血行動態が改善される、剤。
【請求項2】
前記方法が2型糖尿病を治療する方法である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記対象が少なくとも1.4nmol/L、任意に少なくとも1.5nmol/Lの血中Cペプチド濃度を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の剤。
【請求項4】
前記対象が糖尿病性腎疾患に対する感受性の高いリスクを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
前記対象が糖尿病性腎疾患を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
前記対象の体重が減少する、請求項1~5のいずれか一項に記載の剤。
【請求項7】
前記対象がヒトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
前記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、経口、経鼻、非経口、または吸入によって投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【請求項9】
前記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、約1~約2000mgの範囲の1日量で対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の剤。
【請求項10】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定される対象における糖尿病の治療であって、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、前記対象の腎血行動態が改善される、治療に使用するための組み合わせ物であって、
(A)請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、
(B)ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物との組み合わせ物。
【請求項11】
薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と混合されている、請求項10に記載の組み合わせ物を含む、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定される対象における糖尿病の治療であって、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、前記対象の腎血行動態が改善される、治療に使用するための医薬製剤。
【請求項12】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定される対象における糖尿病の治療であって、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、前記対象の腎血行動態が改善される、治療に使用するためのキットオブパーツであって、
(A)請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される補助剤、希釈剤もしくは担体を含む組成物と、
(B)ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される補助剤、希釈剤もしくは担体を含む組成物と、を含み、
構成要素(A)および(B)は、互いに組み合わせて投与するのに適した形態でそれぞれ提供される、キットオブパーツ。
【請求項13】
前記方法において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もまた前記対象に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の剤。
【請求項14】
前記方法において、前記式Iの化合物および前記ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤が、前記対象に連続して、別々に、および/または同時に投与される、請求項13に記載の剤。
【請求項15】
前記ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤は、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジンエタボネート、レモグリフロジンエタボネート、エルツグリフロジンおよびソタグリフロジン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物からなる群から選択される、請求項10に記載の組み合わせ物、請求項11に記載の医薬製剤、請求項12に記載のキットオブパーツ、または請求項13もしくは請求項14に記載の剤。
【請求項16】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象における糖尿病の治療のための薬剤の製造における、請求項10~12および15のいずれか一項に記載の組み合わせ物、医薬製剤またはキットオブパーツの使用であって、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、(i)前記対象の腎血行動態が改善され、または(ii)前記薬剤は糖尿病性腎疾患の治療にも使用される、使用。
【請求項17】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象における糖尿病の治療のための薬剤の製造における、請求項10もしくは請求項15に記載のナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用であって、前記
糖尿病の治療は、請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を対象に投与
することを含み、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、(i)前記対象の腎血行動態が改善され、または(ii)前記薬剤は糖尿病性腎疾患の治療にも使用される、使用。
【請求項18】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象における糖尿病の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用であって、前記
糖尿病の治療は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を対象に投与
することを含み、前記対象は肥満、インスリン抵抗性および高インスリン血症であり、(i)前記対象の腎血行動態が改善され、または(ii)前記薬剤は糖尿病性腎疾患の治療にも使用される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、この治療に特に適した患者の糖尿病の治療におけるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性化因子の使用に関する。適した患者は、インスリン抵抗性が増加し、体重が高いことで特徴づけられる。特に、この治療法は、重度のインスリン抵抗性糖尿病患者の2型糖尿病の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、1型(またはインスリン依存性糖尿病)および2型(インスリン非依存性糖尿病)の2つの異なる疾患で構成されており、どちらも血糖恒常性の機能不全を伴う。2型糖尿病は現在、世界で4億人以上が罹患しており、この数は急速に増加している。2型糖尿病の合併症には、重度の心血管系の問題、腎不全、末梢神経障害、失明、さらには手足の喪失、そして最終的には病気の後期の死が含まれる。2型糖尿病はインスリン抵抗性を特徴とし、現在、決定的な治療法はない。今日使用されているほとんどの治療法は、機能不全のインスリンシグナル伝達の治療、肝臓からのグルコース排出の抑制、または腎臓でのグルコースの再吸収の抑制に焦点を当てているが、これらの治療法の多くにはいくつかの欠点と副作用がある。長期的な結果には改善が見られるが、過剰な死亡率と心血管系の罹患率は、医療システムにとって依然として大きな課題である。
【0003】
2型糖尿病の現在の最前線の治療法は、主に肝臓のグルコース産生を減らすことによって血漿グルコースを下げるビグアニドであるメトホルミンである。それにもかかわらず、メトホルミンによる血糖制御を達成していない2型糖尿病の対象に対する治療の必要性が残っている。
【0004】
糖尿病は現在、1型糖尿病と2型糖尿病の2つの主要な形態に分類されているが、特に2型糖尿病は非常に多様である。
【0005】
既存の治療ガイドラインは、不十分な代謝制御が現れたときに、それに応答するという事実に限られていて、どの患者が強化された治療を必要とするかを予測する手段がない。証拠によれば、標的組織が数十年後も不十分な代謝制御を記憶しているように見えるため、早期治療が寿命を縮める合併症の予防に重要であることを示唆している(Emma Ahlqvist et. al.,The Lancet Diabetes Endocrinology、Vol.6、No.5、p361-369、 2018)。
【0006】
診断時に合併症のリスクが高い個人を特定し、個別の治療レジメンを可能にするため、そのような患者にメカニズムを提供するより良い分類を特定する必要性が残っている。
【0007】
私たちは今や、重度のインスリン抵抗性糖尿病に苦しむ患者に驚くほど効果的な新しい治療法を発見した。
【0008】
本明細書における先に公開されたらしい文書のリストまたは議論は、その文書が最新技術の一部であるか、または普通の一般的な知識であることを認めるものとして必ずしも解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、糖尿病を治療する方法が提供され、該方法は、式Iの化合物、
【化1】
または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、それを必要とする対象に投与することを含む。ここで、この対象は、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定されたものである。
【0010】
本発明の第1の態様の方法は、以下、「本発明の方法」と呼ばれる。
【0011】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象は、肥満、インスリン抵抗性、および高インスリン血症である、糖尿病を患っている対象のサブグループを表す。これらの対象は、他の糖尿病の対象と比較して、糖尿病性腎疾患を発症するリスクが5倍高くなっている。現在、効果的な治療法が不足しており、本発明の方法はこれらの対象に特に適している。
【0012】
言及され得る薬学的に許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。そのような塩は、従来の手段によって、例えば、式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基形を、1当量以上の適切な酸または塩基と、任意に溶媒中で、またはその塩が溶けない媒体中で反応させ、続いて標準的な技術を使用して(例えば、真空中で、凍結乾燥または濾過によって)、該溶媒または該媒体を除去することによって形成することができる。塩はまた、例えば適切なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の式Iの化合物の対イオンを別の対イオンと交換することによって、調製されてもよい。
【0013】
薬学的に許容される付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの鉱酸に由来するもの、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸などの有機酸に由来するもの、ならびにナトリウム、マグネシウム、または好ましくはカリウムおよびカルシウムなどの金属に由来するものが含まれる。
【0014】
式Iの関連化合物の「プロドラッグ」という用語は、経口または非経口投与後、生体内(in vivo)で代謝されて、実験的に検出可能な量で、所定の時間内に(例えば、6~24時間の投薬間隔内に(つまり、1日1~4回))その化合物を形成するいずれの化合物も含む。式Iの化合物のプロドラッグは、関連する化合物と同じ生物学的機能および/または活性を有するか、または提供する誘導体を含む。誤解を避けるために、「非経口」投与という用語には、経口投与以外のすべての形態の投与が含まれる。
【0015】
式Iの化合物のプロドラッグは、プロドラッグが哺乳動物対象に投与されるときに生体内で修飾が切断されるように、その化合物上に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。修飾は通常、親化合物をプロドラッグ置換基と合成することによって達成される。プロドラッグには、式Iの化合物中のアミノ基またはカルボニル基が、生体内で切断されて遊離アミノ基またはカルボニル基をそれぞれ再生し得る任意の基に結合している、式Iの化合物が含まれる。
【0016】
プロドラッグの例には、これらに限定されないが、カルボキシル官能基のエステル、N-アシル誘導体およびN-マンニッヒ塩基が含まれる。プロドラッグに関する一般的な情報は、例えばBundegaard、H.”Design of Prodrugs”p1-92, Elsevier, New York-Oxford(1985)に見出される。
【0017】
式Iの化合物、ならびに該化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグは、簡潔にするために、以下、まとめて「式Iの化合物」と呼ばれる。
【0018】
式Iの化合物は、位置異性体として存在する可能性があり、互変異性を示す可能性もある。すべての互変異性型およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
本明細書で言及されるすべての個々の特徴(例えば、好ましい特徴)は、単独で、または本明細書で言及される他の任意の特徴(好ましい特徴を含む)と組み合わせて解釈することができる(したがって、好ましい特徴は、他の好ましい特徴と組み合わせて、またはそれらとは独立して解釈されることができる)。
【0020】
式Iの化合物は、脳に入らない直接の普遍的(PAN)-AMPK活性化因子である。高血糖/糖尿病の前臨床モデルでは、式Iの化合物は、骨格筋へのグルコース取り込みを増加させ、インスリン抵抗性を低下させ、β細胞の休息を促進することがわかっている。式Iの化合物は、エネルギー消費を増加させ、肥満を予防/軽減する。運動と同様に、式Iの化合物は、血圧を下げ、微小血管灌流を増やし、心臓のAMPKを活性化し、心臓のグルコース取り込みを増やし、心臓のグリコーゲンレベルを下げ、左心室の1回拍出量と持久力を改善する。さらに、式Iの化合物は、マウスまたはラットにおいて心肥大を引き起こさない。したがって、重要なことに、式Iの化合物は、いかなる他の利用可能な抗糖尿病薬でも観察されない有益な代謝効果および心臓血管効果の組み合わせを示す。
【0021】
本発明の別の第1の態様によれば、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象の糖尿病の治療に使用するための、式Iの化合物(上記で定義)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグが提供される。
【0022】
本発明のさらなる別の第1の態様によれば、重度のインスリン抵抗性糖尿病であると特定された対象の糖尿病を治療するための薬剤の製造における、式Iの化合物(上記で定義される)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用が提供される。
【0023】
糖尿病は、多食症、多飲症、多尿症、腎臓の損傷、神経学的損傷、心血管の損傷、網膜の損傷、下肢の損傷、疲労、落ち着きのなさ、体重減少、創傷治癒不良、乾燥したまたはかゆみのある皮膚、勃起不全、心不整脈、昏睡および発作等の、種々の徴候と関係することが多い。
【0024】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「の治療」(およびそれらの文法的変形)という用語は、対象の状態の重症度が軽減される、少なくとも部分的に改善されること、および/または、少なくとも1つの臨床症状がある程度の緩和、軽減もしくは減少すること、および/または疾患もしくは障害の進行が遅れていることを意味する。この点で、これらの用語は、対象の臨床症状の少なくとも1つの重症度の少なくとも部分的な減少、および/または該症状の少なくとも1つの期間の減少を指す場合がある。「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、および「の治療」という用語はまた、血糖値の低下(例えば、約10.0mmol/mL以下へ(例えば、約4.0mmol/L~約10.0mmol/Lの範囲のレベルまで)、例えば、約7.5mmol/mL以下(例えば、約4.0mmol/L~約7.5mmol/Lの範囲のレベルまで)または約6mmol/mL以下へ(例えば、約4.0mmol/L~約6.0mmol/Lの範囲のレベルまで))を達成することを指す場合もある。特定の実施形態では、2型糖尿病の場合、この用語は、血糖値の低下を達成することを指す場合がある。
【0025】
本発明の方法を「必要としている対象」には、糖尿病、特に2型糖尿病に罹患している対象が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、2型糖尿病を治療する方法である。
【0026】
本明細書で使用される「治療有効量」、「有効量」または「投与量」は、治療的および/または有益な効果でありえる所望の効果を生み出すのに十分な化合物、組成物、および/または製剤の量を指す。有効量または投与量は、対象の年齢または一般的な状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、治療の期間、いずれの同時に受けている治療の性質、使用される薬学的に許容される担体、および当業者の知識および専門的判断にある同様の要因により変わるであろう。適切な場合は、いずれの個々の場合においても「治療的有効量」、「有効量」または「投与量」は、関連するテキストおよび文献を参照することによって、および/または日常的な実験を行うことによって、当業者によって決定することができる。当業者は、対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、「疾患」および「障害」という用語(および同様に、状態、病気、医学的課題などの用語)は、交換可能に使用され得る。
【0028】
「重度のインスリン抵抗性糖尿病」(SIRD)を有する者として定義される糖尿病患者の明確な集団は、有効な治療上の選択肢を欠いている。本発明者らは、式Iの化合物について観察される臨床的および薬物動態学的効果が、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有する糖尿病患者の治療上の要求に特に適していることを見出した。式Iの化合物を使用する治療をこれらの患者に適用することにより、臓器の罹患率の低下および生存率の上昇を含む、重要な臨床的利益を実現することができる。
【0029】
「インスリン抵抗性」という用語は、正常な、または場合によっては増加したインスリン産生を有するが、インスリン感受性が著しく低下している対象を指す。対象者は、Emma Ahlqvist et.Al.,The Lancet Diabetes Endocrinology,Vol.6, No.5,p361-369, 2018に定められた基準に従って、重度のインスリン抵抗性糖尿病を患っていると分類されてもよい。そこに記載されている研究では、対象者は6つの変数(グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体、診断時年齢、BMI(肥満度指数)、HbA1c、ならびにβ細胞機能およびインスリン抵抗性に関する恒常性モデル評価の2つの推定値)に基づいてグループ化され、合併症の発症および投薬の処方に関する患者記録からの予測データと関連づけられた。重度のインスリン抵抗性糖尿病を患っている対象は、通常、少なくとも30kg/m2、特に少なくとも35kg/m2などの高いBMIを持っている。対象はまた、少なくとも52mmol/molのHbA1cの水準を有し得る。さらに、対象者は、特定の試験場所で基準範囲を超えるC-ペプチドレベルを有する可能性がある。これらの臨床パラメータのそれぞれの決定は、当業者に知られている日常的な方法を使用して容易に達成することができる。
【0030】
式Iの化合物による治療は、マウスにおいて体重を減らし、インスリン抵抗性を改善し、そして高血糖症を治療することができることが見出された。本発明の化合物を食餌誘発性肥満マウスに投与すると、骨格筋におけるグルコース取り込みが増加し、β細胞ストレスが減少し、β細胞の休止が促進された。
【0031】
この化合物のヒトへの投与は、糸球体の微小血管灌流に好ましい効果があることもわかっている。この化合物は、メトホルミンで治療を受ける2型糖尿病(T2D)患者を対象とした第IIa相臨床試験で、空腹時血糖値とインスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)を低下させた。この化合物はまた、動物と2型糖尿病患者の両方で、末梢微小血管灌流を改善し、血圧を低下させた。したがって、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの投与は、糖尿病、特に重度のインスリン抵抗性糖尿病に苦しむ対象において有益な効果をもたらすことが期待される。
【0032】
これらの効果には、対象の体重の減少が含まれる場合がある。例えば、対象の体重は、対象がもはや肥満であると見なされない程減少させることができる。患者はBMIが30kg/m2以上であると、肥満であると判断される場合がある。これは、WHO分類システムに従い、BMIが30~35kg/m2である「肥満クラスI」または「中程度の肥満」を含みます。より高いBMIレベルでは、患者は重度の肥満(肥満クラスII;35~40kg/m2のBMI)、非常に重度の肥満(肥満クラスIII;40~45kg/m2のBMI)、病的肥満(肥満クラスIV;45~50kg/m2のBMI)、またはさらに高い程度の肥満として分類される場合がある。したがって、本発明の方法を使用するそのような患者の治療は、患者がより低い体重のカテゴリーに分類される結果となり得、さらに、患者のBMIが肥満の閾値未満に低下する結果となり得る。BMIが25~30kg/m2の患者は、通常、太りすぎとして分類され、重度のインスリン抵抗性糖尿病として分類されない場合もあるが、本願の治療法の恩恵を受ける可能性がある。本発明の特定の実施形態では、対象の体重が減少する。
【0033】
したがって、本発明の方法は、肥満である対象の治療に特に適している。本発明の文脈において、特に明記しない限り、「肥満」という用語は、WHO分類システムに従って肥満クラスI以上に分類される対象を含む。したがって、実施形態では、この方法は、少なくとも30kg/m2のBMIを有する対象に対して実施される。本発明の別の実施形態では、対象の肥満度指数は、減少し、例えば、そのため、患者は重症度の低い肥満クラスに分類されるか、またはまったく肥満ではないものとして分類される。
【0034】
本明細書で使用される場合、対象(または複数の対象)への言及は、哺乳動物(例えば、ヒト)対象を含む、治療されている、または予防的医薬を受けている、生きている対象を指す。特に、対象への言及はヒトである対象を指す。
【0035】
本発明の方法は、治療されている対象に他の有益な効果を生じさせ得る。例えば、本発明の化合物は、2型糖尿病に苦しむ患者の腎血行動態に好ましい効果を有することが示されている。この化合物は、糸球体内圧の低下と一致する、患者の推算糸球体濾過量(eGFR)の迅速で安定した可逆的な低下を引き起こす可能性がある。これは、初期の血行力学的効果を示している。したがって、本発明の方法は、対象の腎血行動態を改善することができる。より具体的には、本発明の方法は、対象における推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を介して決定され得る糸球体内圧の低下、例えば臨床治療的低下を生じる可能性がある。
【0036】
その他の臨床的利点には、臓器の罹患率の低下、および診断後の推定期間を上回る生存の可能性の増加が含まれる。
【0037】
対象は、上記のように重度のインスリン抵抗性糖尿病を有するとして分類され得る。本発明の方法による治療が特に有効である可能性がある特定の対象には、少なくとも52mmol/molのHbA1cレベルを有する対象が含まれる。この値は、当技術分野で知られている日常的な方法を使用して決定することができる。
【0038】
言及され得る他の特定の対象には、特定の試験で場所での基準範囲を超えるC-ペプチドレベルを有する対象が含まれる。C-ペプチドは、プロインスリン分子においてインスリンのA鎖をB鎖に接続する短い31アミノ酸のポリペプチドである。糖尿病では、C-ペプチド血清レベルの測定は、同様の臨床的特徴を持つ疾患から区別するため使用できる。基準範囲は、患者および最近の食物摂取量などの最近の活動によって異なる場合がある。例えば、絶食後の健康な個人におけるC-ペプチド測定値は、0.13~0.70nmol/Lの範囲であり得る。重度のインスリン抵抗性糖尿病を有する対象に関し言及され得る特有の上昇値には、1.4nmol/L以上、より限定すると1.5nmol/L以上の血中C-ペプチド濃度が含まれる。
【0039】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を有することを特徴とする対象は、糖尿病性腎疾患にかかり易いというリスクが高いまたは、糖尿病性腎症と診断される可能性がある。また、心血管疾患を患っている、またはそのリスクが高い可能性がある。本発明の方法は、患者、特にここに示される者に少なくともいくつかの臓器保護の利益を提供すると考えられている。結果として、本発明の方法による重度のインスリン抵抗性糖尿病を有することを特徴とする対象の治療は、治療中および/または治療後の糖尿病性腎疾患の有病率の低下をもたらす可能性がある。したがって、治療される対象には、糖尿病性腎疾患に対する感受性のリスクが高いことが好ましい。すでに糖尿病性腎疾患を患っている対象もまた、例えば、糖尿病性腎疾患の重症度が増加する速度の低下によって、本発明の治療方法から利益を得る可能性がある。本発明の一実施形態では、治療される対象は糖尿病性腎疾患を有する。
【0040】
重度のインスリン抵抗性糖尿病を患っている対象の治療は、対象が、まずその状態を有すると識別されることを必要とする。診断に必要な臨床パラメータのいくつかは、本明細書の他の場所およびEmma Ahlqvist et.al.,The Lancet Diabetes Endocrinology,Vol.6,No.5,p361-369,2018に述べられている。したがって、本発明は、糖尿病を治療する方法にも関し、該方法は、以下を含む。
(i)重度のインスリン抵抗性糖尿病を患っている対象を特定し、および
(ii)式Iの化合物(本明細書の他の場所で定義される)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを該対象に投与する。
【0041】
ステップ(i)は、これらの対象について上記の生理学的および病理学的側面の少なくとも1つの評価を含む、対象の臨床評価に関係する。対象は、Ahlqvist et.al、同上、に定められた基準を満たしている場合、重度のインスリン抵抗性糖尿病を患っていると見なされる。これは、例えば、以下の1つまたは好ましくはすべてを含み得る:30kg/m2以上のBMI、52mmol/mol以上のHbA1cレベル、および特定の試験場所での基準範囲を超えるC-ペプチドレベル。
【0042】
ステップ(ii)は、本明細書の他の場所に記載されているものを含む、任意の適切な投与経路、製剤、および投与計画を使用して実施することができる。該治療は、例えば、対象における全身性インスリン抵抗性の発症の抑制をもたらす可能性がある。該治療はまた、対象による食物摂取を減少させることのない可能性も有しながら、体重減少および体脂肪減少の誘発をもたらす可能性がある。治療から生じる可能性のある他の臨床効果は、実施例から明らかになるであろう。
【0043】
式Iの化合物は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドとしても知られている。
【0044】
化合物が互変異性体として存在する可能性がある場合、述べられた構造は可能な互変異性体の形態の1つを表し、観察される実際の互変異性体は、溶媒、温度、またはpHなどの環境要因によって変わる可能性がある。
【0045】
式Iの化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグは、例えば以下に記載されるように、当業者に周知の技術に従って調製することができる。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、国際特許出願WO2011/004162に記載されている技術に従って製造することができる。そして、そのすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
したがって、本発明の化合物は、空腹時血糖値およびインスリン抵抗性(例えば、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価による)の両方の低下を促進する任意の形態で対象に投与することができる。特に、本発明の化合物は、経口、静脈内、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば、舌下または頬側)、直腸、経皮、鼻、肺(例えば、気管または気管支)、局所的に、他の任意の非経口経路により、薬学的に許容される剤型でこの化合物を含む医薬調製物の形態で投与され得る。特定の実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグは、経口、経鼻、非経口または吸入によって投与される。好ましくは、投与は経口的に行われる。
【0047】
本発明の化合物は、一般に、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と混合した医薬製剤として投与され、これらは、意図される投与経路および標準的な薬学上の実施を十分に考慮して選択され得る。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であっても良く、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さなくても良い。適切な医薬製剤は、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.,Mack Printing Company,Easton,Pennsylvania(1995)に見出すことができる。非経口投与の場合、パイロジェンを含まず、必要なpH、等張性、および安定性を有する非経口的に許容される水溶液を使用することができる。多くの方法が文献に記載されているので、適切な溶液は当業者に十分に知られよう。薬物送達の方法の簡単なレビューはまた、例えば、Langer,Science,249 1527(1990)に見出されるかも知れない。
【0048】
本明細書に記載の本発明の方法において、薬学的に活性な化合物は、経口投与用の錠剤、カプセルまたはエリキシル、直腸投与用の坐剤、非経口もしくは筋肉内投与用の滅菌溶液もしくは懸濁液を含む既知の製剤によって、または吸入などを経由して投与することができる。吸入による投与は、好ましくはネブライザーを使用して行われ、例えば、本発明の化合物を、好ましくは治療対象に刺激または咳を引き起こさずに、肺胞および細気管支を含む小さな肺組織に送達する。
【0049】
他の適切な製剤の調製は、当業者が日常的な技術を使用して、ならびに/または標準的および/もしくは認められた薬学的な実施に従って、創意を必要とせずに達成することができる。
【0050】
対象に投与される本発明の化合物の量は、治療または予防を受ける状態、状態の重症度、対象、および投与経路、および使用される化合物により変わり得るが、当業者によって創意を必要とせずに決定され得る。本発明の化合物は、それを必要とする患者に様々な治療上有効な用量で投与することができる。
【0051】
用量は患者ごとに異なるが、適切な1日量は、患者1人につき約0.1~約5000mgの範囲(例、0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mg、1250mg、1500mg、1750mg、2000mg、2500mg、3000mg、3500mg、4000mg、4500mg、5000mgなど、またはその中の任意の範囲または値)であり、単回または複数回投与される。投与は、連続的または断続的でもよい(例えば、ボーラス注射による)。投与量はまた、投与のタイミングおよび頻度によって決定され得る。経口投与または非経口投与の場合、投与量は、好ましくは、本発明の化合物、1日あたり約1mg~約2000mgまで変化する(または、使用される場合、対応する量の薬学的に許容される塩またはそのプロドラッグ)。特定の実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグは、約1~約2000mgの範囲の1日量で対象に投与される。
【0052】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはわずか0.1%の変動を指す。
【0053】
いずれにせよ、本発明の文脈において哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたって哺乳動物において治療的反応をもたらすのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量および組成ならびに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ、製剤の薬理学的特性、治療を受ける状態の性質および重症度、ならびに投薬を受ける者の身体的状態および精神的鋭敏さ、ならびに特定の化合物の力価、治療される患者の年齢、状態、体重、性別および反応、ならびに疾患の病期/重症度によっても影響を受けることを認識するであろう。
【0054】
開業医または他の当業者は、個々の患者に最も適した実際の投与量をいつものように決定することができるであろう。上記の投与量は、平均的な場合の例である。もちろん、より高いまたはより低い投与量範囲がふさわしい個々の例があり得よう。そして、そのようなものは本発明の範囲内である。
【0055】
さらに、いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の他の治療薬、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグと組み合わせて、上記の用途(例えば、2型糖尿病の治療のために)のための薬剤を製造するために使用される。
【0056】
この点で言及される可能性のある特定の他の治療薬には、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤が含まれる。当業者は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤が、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の活性を阻害する物質または薬剤であることを理解するであろう。したがって、本発明の第2の態様によれば、以下の組み合わせが提供される。
(A)式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ)および
(B)ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤(またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグ)。
該組み合わせは、本明細書では「本発明の組み合わせ」と呼ばれる。
【0057】
「ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の活性を阻害する」という表現は、物質または薬剤がナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の1つ以上の機能の低下を誘発することを意味し、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の機能の低下により、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2の1つ以上の機能の停止、または特定の機能の速度の低下を含めている。完全にまたは部分的に阻害され得る特定の機能とは、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2がグルコース輸送体として作用する能力である。
【0058】
SGLT2阻害剤は、SGLT2の活性を選択的に阻害する物質または薬剤である。SGLT2の活性を選択的に阻害することにより、SGLT2阻害剤が、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質1(SGLT1)の1つ以上の機能に優先してSGLT2の1つ以上の機能を選択的に停止またはその速度を低下させることを意味する。たとえば、SGLTIを上回るSGLT2に対する選択性のレベルは、約2:1~5000:1の範囲でも良い。例えば、SGLT2阻害剤は、SGLT2対SGLT1について、約10:1、約50:1、約100:1、約250:1、約500:1、約1000:1、約5000:1、約5000:1よりも大きい選択性を有しても良い。したがって、特定の実施形態では、SGLT2阻害剤は、選択的SGLT2阻害剤である。当業者は、物質または薬剤がナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤として作用するかどうかを当業者が決定することを可能にする、実施可能な標準的な試験を認識するであろう。
【0059】
好ましい実施形態において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、900ダルトン(Da)未満の分子量を有するいわゆる「小分子」である。このような分子は、「薬物様」分子と呼ばれても良い。特定の実施形態において、本発明の組み合わせに存在するナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、グリフロジン(gliflozin)である。グリフロジンは、既知のクラスの小分子ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤である。Hawley et al.(Diabetes、2016、65、2784-2794)およびVillani et al.(Molecular Metabolism、2016、5、1048-1056)は最近、あるグリフロジン類の可能な作用機序について議論した。ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2を阻害することにより、グリフロジンは糸球体濾液からの腎臓でのグルコースの再吸収(すなわち、腎グルコース再吸収)の程度を低下させ、それが次に血糖濃度を低下させる。ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2を阻害することができるいずれの化合物も、本発明の組み合わせにおいて有効であり得る。
【0060】
本発明の組み合わせに存在し得る(グリフロジンクラスの)特定のナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤には、カナグリフロジン(canagliflozin)、ダパグリフロジン(dapagliflozin)、エンパグリフロジン(empagliflozin)、イプラグリフロジン(ipragliflozin)、トホグリフロジン(tofogliflozin)、セルグリフロジン(sergliflozin)(セルグリフロジンエタボネート(sergliflozin etabonate)など)、レモグリフロジン(remogliflozin)(レモグリフロジンエタボネート(remogliflozin etabonate)など)、エルツグリフロジン(ertugliflozin)およびソタグリフロジン(sotagliflozin)、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、本発明の組み合わせに存在するナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、カナグリフロジン[(1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-(3-{[5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル]メチル]}-4-メチルフェニル)-D-グルシトールとしても知られる]、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0061】
本発明の組み合わせは、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有することを特徴とする対象の糖尿病を治療するのに特に有用であり得る。したがって、本発明の第3の態様では、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有することを特徴とする対象の糖尿病を治療する方法が提供され、この方法は、本明細書で定義される本発明の組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0062】
同様に、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特徴付けられる対象における糖尿病を治療するための薬剤の製造において、本明細書で定義される本発明の組み合わせの使用が提供される。
【0063】
本発明の組み合わせの成分(A)および(B)(すなわち、式Iの化合物およびSGLT2阻害剤)は、別個の製剤として、または組み合わせた調製物として(すなわち、式1の化合物およびSGLT2阻害剤を含む単一の製剤として提供され得る)提供され得る。式Iの化合物およびSGLT2阻害剤は、対象に有益な効果を可能にするために、同時に、または時間的に十分に接近して、(任意に繰り返して)投与することができる。好ましくは、該有益な効果は、治療の一部または全過程にわたって、式Iの化合物を含む処方物またはSGLT2阻害剤を含む処方物の使用によって達成可能なものよりも大きいか、または、治療が2つの主成分の両方ではなく一方の使用を含むときには、観察されない有益な効果である。治療の過程での本発明の組み合わせの有益な効果の評価は、治療を受けるまたは予防される状態に依存するが、当業者によって通常の方法により達成され得る。
【0064】
たとえば、当業者は、本発明の組み合わせの成分(A)および(B)が、関連する状態の治療の過程にわたって、連続して、別々に、および/または同時に投与され得ることを認識するであろう。この方法での投与は、2つの活性物質が異なる薬物動態プロファイルを持っている場合に必要になる場合がある。例えば、組み合わせの一方の成分の投与頻度は、他方の投与頻度とは別に変更する必要があるかもしれない。したがって、本発明の特定の実施形態では、式Iの化合物およびナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤は、それを必要とする対象に、連続して、別々に、および/または同時に投与される。
【0065】
式Iの化合物は、糖尿病を治療する目的でナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤で治療されてきた(または治療される予定の)対象に投与することができる。したがって、本発明の別の態様において、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象における糖尿病の治療のための薬剤の製造における、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用が提供されるが、その場合、この薬剤はナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤(例えば、本明細書の他の場所で定義されたもの)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグでも治療される対象に投与される。
【0066】
同様に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤は、糖尿病を治療する目的で式Iの化合物でも治療された(または治療される予定の)対象に投与することができる。したがって、本発明の別の態様において、重度のインスリン抵抗性糖尿病を有すると特定された対象における糖尿病の治療のための薬剤の製造における、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤(例えば、本明細書の他の場所で定義されるもの)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用が提供されるが、その場合、この薬剤は式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグでも治療される対象に投与される。
【0067】
グリフロジンなどのナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグは、例えば以下に記載されるように、当業者に周知の技術に従って調製することができる。例えば、カナグリフロジンは、国際特許出願第WO2005/012326に記載されている技術に従って製造することができる。誤解を避けるために、本明細書におけるカナグリフロジンへの言及は、商品名Invokana(登録商標)で販売されているカナグリフロジン半水和物を含む。カナグリフロジンおよび他のSGLT2阻害剤は、当技術分野で知られ一般的に受け入れられている投薬量に従ったレベルで投与することができる。
【0068】
本発明の組み合わせで存在する式Iの化合物の量は、既存のSGLT2阻害剤の量と同じであっても異なっていてもよい。たとえば、本発明の組み合わせで存在する式Iの化合物に対するSGLT2阻害剤の重量比は、約1:1000~約1000:1、例えば、約1:100~10:1(例えば、約1:10~約1:1)であり得る。言及され得る式Iの化合物に対するSGLT2阻害剤の特定の重量比には、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、1:10を含む。
【0069】
式Iの化合物は、マウスの高体重、インスリン抵抗性および高血糖症を治療することが示され、そしてそれは、ヒトの糸球体における微小血管灌流に好ましい効果を有することが示されている。重度のインスリン抵抗性糖尿病を有することを特徴とする、明確な、治療が不十分なヒト患者の集団が認識されている。この集団は通常、肥満、インスリン抵抗性、高血糖症であり、糖尿病性腎疾患のリスクが高い。この集団の糖尿病の治療に式Iの化合物を使用することの利点は、このように治療の目的とすることが、この現在不十分な治療しかされていない患者グループが著しく向上した治療上の注意を受け得ることを含む。
【0070】
本明細書に開示される本発明の方法はまた、式Iの化合物を含む方法が、そのような対象の糖尿病の治療に有用であるとして従来技術で知られている方法と比較して、より有効であり、より毒性が低く、より長く作用し、より強力であり、より少ない副作用を生じ得る、および/または、他の有用な薬理学的、物理的、もしくは化学的特性を有し得るという長所も有し得る。そのような効果は、医療専門家、治療対象、または観察者によって、臨床的、客観的、および/または主観的に評価され得る。
【0071】
本発明の化合物について本明細書に要約されたデータは、式Iの試験化合物が、高体重、インスリン抵抗性および高血糖を効果的に治療し、糸球体における微小血管灌流に好ましい効果を有することを示す。
【0072】
本明細書で参照されるすべての特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。用語が矛盾する場合は、本明細書が優先される。さらに、本発明の一態様に記載されている実施形態は、記載されている態様に限定されない。実施形態はまた、当該実施形態が、本発明の異なる態様がそれらの意図された目的のために動作することを妨げることのない限り、本発明のこれらの態様にも適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
以下の図面は、本発明の概念の様々な態様を説明するために提供されており、本明細書で指定されない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【
図1】(A~F)。試験物質(「O304」)は、生体外(in vitro)でp-T172 AMPKを増加させ、細胞内のP-T172AMPKおよびATPを増加させる。(AおよびB)ATPの非存在下(A)(条件ごとにn=8)および1.0mMのATP存在下(B)(条件ごとにn=4)でのp-T172AMPKのPP2Cを介した脱リン酸化の試験物質の用量依存的抑制の代表的なイムノブロット分析および定量。(C-E)Wi-38ヒト肺線維芽細胞におけるp-T172 AMPKのおよびp-S79 ACCのリン酸化(条件ごとにn=11)の試験物質の用量依存的な増加の代表的なイムノブロット分析(C)及び定量(p-T172 AMPK(D),p-S79 ACC(E))。(F)試験物質で処理したWi-38ヒト肺線維芽細胞におけるATP/タンパク質レベルの用量依存的な増加(条件ごとにn=6)。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***P<(スチューデントのt検定)として表される。
【
図2】(A~I)。試験物質(「O304」)は、食餌誘発性肥満マウスの高血糖およびインスリン抵抗性を予防する。(A)高脂肪食(HFD)を与えられ、ビヒクルまたは試験物質±メトホルミンを経口強制投与されたB6マウスの週単位のスケジュール。(BおよびC)ビヒクル(n=10)、試験物質(n=10)、メトホルミン(n=10)、および試験物質+メトホルミン(n=10)で6週間処理されたHFD給餌のB6マウスにおける空腹時グルコース(B)および空腹時インスリン(C)。(D)BおよびCからの恒常性モデル評価-インスリン抵抗性(HOMA-IR)計算。(E)ビヒクル(n=10)、試験物質(n=10)、メトホルミン(n=10)、および試験物質+メトホルミン(n=10)で8週間処理されたHFD給餌のB6マウスのふくらはぎ筋肉におけるp-T172AMPKレベルの代表的なイムノブロット分析および定量。(F)ビヒクル(n=10)、試験物質(n=10)、メトホルミン(n=9)、および試験物質+メトホルミン(n=10)で8週間処理されたHFD給餌のB6マウスのふくらはぎの筋肉におけるTxnipおよびGlut1の相対的なmRNAレベル。(GおよびH)通常食(RD)(n=40)またはHFDいずれかを7週間(=開始;n=10+10)与えたB6マウスの空腹時血糖値(G)およびインスリンレベル(H)。次に、HFDを与えられたマウスに、さらに4週間HFDを継続し、ビヒクル(n=10)または試験物質+メトホルミン(n=10)を経口強制投与した。(I)GおよびHからのHOMA-IR計算。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***p<0.001(ステューデントのt検定)として表される。
【
図3】(A~H)。試験物質(「O304」)は、hIAPPtg食餌誘発性肥満マウスの糖尿病を予防する。(A)高脂肪食(HFD)を与えられ、ビヒクルまたは試験物質を経口強制投与されたhIAPPtgマウスの週単位のスケジュール。(BおよびC)ビヒクル(n=25)および試験物質(n=27)で6週間処理し、HFDを給餌したhIAPPtgマウスにおける空腹時血糖値(B)およびインスリンレベル(C)。(DおよびE)ビヒクル(IPGTT、n=13;OGTT、n=7)および試験物質(IPGTT、n=16;OGTT、n=7)で6週間処理されたHFD給餌のhIAPPtgマウスにおける腹腔内投与(i.p.)耐糖能試験(IPGTT)(D)および経口耐糖能試験(OGTT)(E)中の血糖、血漿インスリンプロファイル、およびAUC。(F)通常食(RD)(n=7)を給餌された10週齢のhIAPPtgマウスと比較した、試験物質で6週間(Dから、n=16)処理されたHFD給餌の16週齢のhIAPPtgマウスのIPGTT中の血漿インスリンプロファイルおよびAUC。(G)BおよびCのグルコースおよびインスリンレベルからのHOMA-IR計算。(H)ビヒクルおよび試験物質で処理したhIAPPtgマウスにおけるIPGTT(D)およびOGTT(E)からのMatsuda指数計算。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01(スチューデントのt検定)として表される。
【
図4】(A~M)。試験物質(「O304」)は、用量依存的に、食餌誘発性肥満マウスの高血糖を回避し、hIAPPtg食餌誘発性肥満マウスの糖尿病を元に戻す。(A)高脂肪食(HFD)(n=10)および試験物質-HFDであって、0.4(n=5)、0.8(n=10)および2mg/g(n=10)の試験物質を含むものを7週間、摂取したCBAマウスのふくらはぎの筋肉におけるp-T172AMPKレベルの代表的なイムノブロット分析および定量。(B-D)HFD(n=10)および試験物質-HFDであって、0.4(n=5)、0.8(n=10)および2mg/g(n=10)の試験物質を含むものを6週間、摂取したCBAマウスにおける空腹時血糖値(B)および空腹時インスリンレベル(C)、ならびにHOMA-IR(D;BおよびCから)。(E)HFDを9週間与えた後、さらに7週間HFDを継続するか、または試験物質-HFD(F-Hで2mg/g、l-Mで0.8mg/g)に切り替えたhIAPPtgマウスの週単位のスケジュール。(F-H)開始時、HFD給餌9週および15週におけるhIAPPtgマウス(n=10)の、ならびに開始時、9週のHFD、および9週のHFD+6週の試験物質-HFD(2mg/g)におけるhIAPPtgマウス(n=12)の、空腹時血糖値(F)およびインスリンレベル(G)、ならびにHOMA-IR(H;FおよびGから)。(IおよびJ)15週間のHFD(n=12)またはHFD9週間+6週間の試験物質-HFD(0.8mg/g)(n=7)でのhIAPPtgマウスの体重(I)および体脂肪(J)の変化。(K-M)15週間のHFD給餌のhIAPPtgマウス(n=12)の開始時、9週、15週における、ならびに開始時、9週のHFDにおける、および9週+6週試験物質-HFD(0.8mg/g)(n=7)における、hIAPPtgマウスの空腹時血糖値(K)およびインスリンレベル(L)、およびHOMA-IR(M;KおよびLから)。データは、平均±SEM、**P<0.01、**P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定[A-D、I、およびJ];対応のある両側t検定)として表される。
【
図5】(A~E)。試験物質(「O304」)は、骨格筋へのグルコース取り込みを増加させる。(A)示されているとおり、試験物質で処理されたラット骨格L6筋管細胞における2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)の取り込み。(ビヒクル、n=8;2.5μM試験物質、n=6;5.0μM試験物質、n=6;および10.0μM試験物質、n=3)。(B-D)示されているとおり、代表的なイムノブロット分析(B)AMPK発現の定量(C)(n=6)、および試験物質で処理されたsiRNA導入ラット骨格L6筋管細胞における2-DGグルコース取り込みが(各条件についてn=8)(D)。(E)高脂肪食(HFD)(n=8)または試験物質-HFD(2mg/g)(n=6)を2週間摂取したCBAマウスのふくらはぎおよび大腿筋の-フルオロデオキシグルコース(-FDG)レベル。データは平均±SEM、*P<0.05、***P<0.001(スチューデントのt検定)として表される。
【
図6】(A~H)。試験物質(「O304」)は、hIAPPtg食餌誘発性肥満マウスにおけるアミロイド形成を減少させ、食餌誘発性肥満マウスにおけるアルギニン誘発性インスリン分泌を改善する。高脂肪食(HFD)を16週間摂取したhIAPPtgマウス(n=9)およびHFDを9週間摂取し、追加の7週間は、試験物質-HFD(2mg/g)に転換したhIAPPtgマウス(n=9)の、Thio-S+アミロイド沈着物の代表的な画像(A)および定量(B)。(C)INS-1インスリノーマ細胞におけるp-T172AMPKの試験物質刺激の代表的なイムノブロット分析および定量化(条件ごと、それぞれビヒクル、2.5μMおよび5μM試験物質、n=9;10μM試験物質、n=6、)、マウス初代膵島(条件ごとにn=6)、hIAPPtgマウス初代膵島(条件ごとにn=6)、およびヒト膵島(条件ごとにn=8)。(DおよびE)示されているとおり、11mMグルコース(n=36膵島)、22mMグルコース(n=45膵島)、22mMグルコースならびに2.5μM(n=42膵島)、5.0μM(n=41膵島)および10μM試験物質(n=36膵島)を含むもの中で、96時間生体外(ex vivo)で培養されたhIAPPtg膵島におけるThio-S+アミロイド沈着物の代表的な画像(D)および定量(E)(それぞれについてn=3試験)。(FおよびG)示されているとおり、11mMグルコース(n=43膵島)、5.0μM 3-MAを含む11mMグルコース(n=59膵島)、22mMグルコース(n=54膵島)、5.0μM試験物質を含む22mMグルコース(35膵島)、および5.0μM試験物質と5.0μM 3-MAを含む22mMグルコース(n=44膵島)中で96時間、生体外で培養されたhIAPPtg膵島におけるThio-S+アミロイド沈着物の代表的な画像(F)および定量(G)(それぞれn=3の試験)。(H)HFD(n=10)および試験物質-HFD(0.8mg/g)(n=10)を11週間与えたCBAマウスへのアルギニン(1g/kg)の腹腔内注射後の血漿インスリンプロファイルおよびAUC。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定)として表される。
【
図7】(A~H)。試験物質(「O304」)は、熱中性条件で、確立された肥満を元に戻す。(AおよびB)示されているとおり、飼育および熱中性条件で、高脂肪食(HFD)(n=5)と試験物質-HFD(2mg/g)(n=5)を交換したときのCBAマウスの経時的な体重変化(A)および食物摂取量(B)。(C~E)HFD(n=8)および試験物質-HFD(0.8mg/g)(n=8)を11週間与えたCBAマウスにおける酸素消費量(V02)(C)、呼吸交換率(RER)(D)、およびエネルギー消費量(EE)率(E)。(F)HFD(n=10)および試験物質-HFD(0.4(n=5)、0.8(n=10)、および2mg/g(n-10))を7週間与えられたCBAマウスの鼠径部白色脂肪組織(iWAT)におけるATGLおよびp-S406ATGLの代表的なイムノブロット分析および定量。(G)HFD(n=10)および試験物質-HFDであって2mg/g試験物質をふくむもの(n=10)を7週間与えられた19週齢のCBAマウスのAtgl、Cpt1b、Ppargc1a、およびCox8bの相対的なmRNAレベル。(H)HFD(n=10)および試験物質-HFDであって2mg/g試験物質を含むもの(n=10)を7週間与えられた19週齢のCBAマウスの褐色脂肪組織(BAT)のCd36、Fas、Scd1、Acc1、およびCpt1bの相対的mRNAレベル。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***p<0.001(スチューデントのt検定)として表される。
【
図8】(A~G)。試験物質(「O304」)は、食餌誘発性肥満マウスの心臓グリコーゲンを減少させ、一回拍出量を改善するが、心肥大を引き起こさない。(A)高脂肪食(HFD)(n=10)ならびに0.8(n=10)および2mg/g(n=10)の試験物質を含む試験物質-HFDを7週間与えられたCBAマウスの心臓グリコーゲン含有量。(B)HFD(n=8)または試験物質-HFD(2mg/g)(n=6)を2週間与えたCBAマウスの心臓における-フルオロデオキシグルコース(-FDG)レベル。(C)HFD(n=10)および0.8(n=10)および2mg/g(n=10)の試験物質を含む試験物質-HFDを7週間含与えられたCBAマウスの心臓重量。(D~F)通常食(RD)を与えられた16週齢のCBAマウス(n=9)の、ならびにHFD(n=9)および0.8mg/g(n=10)または2mg/g(n=10)の試験物質を含む試験物質-HFDを6週間与えられた18週齢のCBAマウスの拡張末期容積(EDV)(D)、収縮末期容積(ESV)(E)、および一回拍出量(SV)(F)。(G)通常食(RD)を与えられた16週齢のCBAマウス(n=9)の、ならびにHFD(n=9)および0.8 mg/g(n=10)または2mg/g(n=10)の試験物質を含む試験物質-HFDを6週間与えられた18週齢のCBAマウスの心拍数(HR)。データは平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***p<0.001(スチューデントのt検定)として表される。
【
図9】(A-F)。試験物質(「O304」)は、マウスの微小血管の血流と持久力を改善する。(AおよびB)ビヒクルで(n=10)および試験物質で処理された(n=10)、8週間高脂肪食(HFD)を与えられたB6CBAF1/J(F1)マウスの左後足における末梢血灌流の代表的なレーザードップラー画像(A)および定量(B)。(CおよびD)ビヒクルで(n=14)および試験物質(n=14)で処理された老化した痩せたB6マウスの、試験物質処理30日後の持久力試験(C)および乳酸レベル(D)。(EおよびF)ビヒクルまたは示された濃度で試験物質を単回投与された犬の収縮期(E)および拡張期(F)血圧。データは平均±SEM、*P<0.05、#P<0.05、**P<0.01、##P<0.01、***P<0.001、###P<0.001(スチューデントのt検定)として表される。EおよびFで、*はビヒクル対540mg/kg試験物質を示し、#はビヒクル対180mg/kg試験物質を示す。
【
図10】(A~E)。試験物質(「O304」)は、2型糖尿病において、空腹時血糖値および血圧を低下させ、微小血管灌流を増加させる。メトホルミンを投与された2型糖尿病(T2D)患者。(A~C)メトホルミンを投与され、プラセボ(n=24)および試験物質(n=25)で治療を受け、1日目の空腹時血糖値(FPG)範囲は7より高く13.3mmol/lより低い(126より高く240mg/dlより低い)2型糖尿病患者における1日目および28日目の空腹時血糖値(FPG)(AおよびB)およびHOMA-IR(C)。(D)2型糖尿病患者のふくらはぎの筋肉におけるスクリーニング時(MRI1)および27-29日目(MRI2)にMRIによってモニターされた動的T2
*-定量化によって評価された充血性微小血管灌流。試験物質群とプラセボ群は、ベースラインでのピークまでの時間(TTP)に基づいて半分に分かれた。ここで、短いTTP(プラセボA[n=14]、試験物質A[n=14])および長いTTP(プラセボB[n=13]、試験物質B[n=14])は、それぞれ充血性灌流の速度が比較的高いことと低いことを表している。TTPの有意な短縮(P=0.043)とΔ-T2
*の増加(P=0.034)が、試験物質群のベースラインでの灌流速度が比較的低い(長いTTP)被験者(すなわち、試験物質B MRI1と試験物質BMRI2の比較)で観察されたが、TTPが短い被験者では観察されず、また、プラセボ群のベースラインでTTPが短い被験者または長い被験者にも差はなかった。(E)プラセボ(n=27)または試験物質(n=30)で治療されたメトホルミンの投与を受ける2型糖尿病患者における1から28日目の収縮期および拡張期血圧の絶対的および相対的変化。データは、平均±SEM、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(ウィルコクソンの符号付順位和検定)として表されます。
【
図11】化合物1とカナグリフロジンの併用療法。空腹時血糖、空腹時血漿インスリンおよびHOMA-IR。
【実施例】
【0074】
実施例1および2で使用した試験物質は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドであった。この物質は以下「試験物質」などと呼ばれる。この研究で使用された試験物質は、Anthem Bioscience Pvt Ltd.(インド、バンガロール)によって Baltic Bio AB(ウメオ、スウェーデン)およびBetagenon AB(ウメオ、スウェーデン)のため、合成および精製された。7.4.
【0075】
実施例1
ここでは、pAMPKの脱リン酸化を抑制することでAMPK活性を高めることがわかった、試験物質と呼ばれるPAN-AMPK活性化因子の同定と試験について説明する。
【0076】
方法
研究デザイン
動物実験の場合、研究が実行される前にサンプルサイズの推定値は計算されなかった。特に明記しない限り、実験はランダム化されなかった。研究者は、いくつかの測定および定量化(ブドウ糖負荷試験、グルコース刺激インスリン分泌、アルギニン刺激インスリン分泌、アミロイド定量、心エコー検査、および心臓の超音波検査)を除いて、実験および結果評価中、割り付けを盲検化しなかった。生体内(in vivo)データの場合、各n値は1匹のマウスに対応する。アミロイドの定量では、各n値は、それぞれ独立した試験および調査された膵島の総数に対応する。生体外(in vitro)データの場合、各n値は独立した試験に対応する。同じ試験が繰り返された場合、それらの平均はn=1として考慮された。
【0077】
細胞培養アッセイでは、試験物質をDMSO Hybri-MaxTM(Sigma、#D2650)に溶解した。生体内(in vivo)アッセイでは、試験物質を2%w/vメチルセルロース、4mMリン酸緩衝液pH7.4に溶解した。メトホルミン(Sigma#D150959)を2%w/vメチルセルロース、4mMリン酸緩衝液pHに溶解した。
【0078】
C57BL/6JBomTacマウスおよびNTac:SDラットにおける試験物質の薬物動態は、絶食していない動物の血漿のUHPLC-ESI Triple Quad MSMSを介して決定された。試験物質(40mg/kg試験物質)は強制経口投与され、投与後4、8、12、24時間後に採血された。試験物質レベルは、試験物質(40 mg/kg試験物質)を1日1回、3週間、強制経口投与された、絶食していない対照:CD(SD)ラットからの肝臓と脳で測定した。試験物質をアセトニトリルで抽出し、UHPLC-ESI Triple Quad MSMSを使用してレベルを決定した。
【0079】
動物
雌対照:CD(SD)ラット(系統#001)、雄と雌のWistarラット(系統#003)、およびZucker Crl:ZUC-Leprfaラット(系統#185)は、Charles River Labから入手した。雌のNTac:SDラットはTaconicから入手した。雄のC57BL/6J(B6)マウスは、JAXマウス(Jax#000664)から入手した。雄のC57BL/6JBomTacマウスは、Taconic(B6JBom)から入手した。雄のB6CBAF1/J(F1)マウスは、JAXマウス(Jax#10011)から入手した。CBA/CaCrl(CBA)マウスは、Charles River Lab(Charles River CBA/CaCrl)から入手した。hIAPPtgマウスはJAXマウス(Jax#008232)から入手し、兄弟姉妹の交配およびCBAへの10世代以上の戻し交配によって維持された。野生型同腹仔をhIAPPtgマウスの対照として使用した。
【0080】
14-15週齢の雄B6は、開始体重に基づいて、ビヒクル、メトホルミン、試験物質、およびメトホルミン+試験物質治療群(100mg/kg、1日1回経口)に、10匹/群で割り当てられ、8週間の試験期間全期間、HFDが与えられた。
【0081】
7週齢の雄B6にHFDを7週間与え、その後、体重に基づいて、試験物質群およびメトホルミン+試験物質治療群(100mg/kg、1日1回経口)に割り当て、さらに4週間HFDを与えた。
【0082】
12週齢のCBAマウスをHFDと3つの試験物質-HFD群(0.4mg/g、0.8mg/g、および2mg/g)に7週間、無作為に割り付けた。表示のある場合、対照として通常食を与えた16~17週齢のCBAマウスを使用した。
【0083】
14週齢のCBAマウスを22℃で飼育しながら、HFD群および試験物質-HFD(2mg/g)群に2週間無作為に割り付けた。次に、2つの群をHFDから試験物質-HFDに、またはその逆にさらに4.5週間切り替えてから、22°Cから30°C(熱中性)に移した。30℃で1週間後、餌を再び切り替え、切り替え後1週間で深部体温を測定した。
【0084】
10~11週齢の雄hIAPPtgマウスを、ビヒクルおよび試験物質治療群(100mg/kg、1日1回経口)に無作為に割り付け、6週間の試験期間を通してHFDを与えた。10~11週齢の雄hIAPPtg;CBAマウスおよび野生型同腹仔にHFDを9週間与えた。9週間後、マウスを犠牲にするか、2つの群に無作為に割り付け、さらに7週間HFDを継続するか、または試験物質-HFD(2mg/g)に切り替えた。
【0085】
8~10週齢のWistar雄および雌ラットにビヒクルまたは試験物質を100、300、もしくは600mg/kg/日で6か月間、強制経口投与で処理された。
【0086】
動物は、温度/湿度が制御された(22℃/50%湿度)部屋で12:12時間の明/暗サイクルで飼育され、標準飼料(Special Diet Service#801730)、高脂肪食(HFD)(Research diets, Inc. #D12492)またはそれぞれ2mg/g試験物質、0.8mg/g試験物質および0.4mg/g試験物質で試験物質を注文配合されたHFD(Research Diets,Inc.#D12492)のいずれかで随意に給餌された。
【0087】
単回の強制経口投与後の意識のあるビーグル犬における無線遠隔測定法を使用した心血管安全性薬理学研究
遠隔測定分析は、CiToxLAB North America(ラヴァル、ケベック、カナダ)によって、以前に遠隔測定送信機の埋め込み手術を受けたCiToxLAB North America Dog Telemetry Colonyから選択された成犬の雄のビーグル犬で実施され、動脈血圧、心電図、体温、および自発運動をモニターした(Data Science International、モデルD70-PCT)。すべての外科的処置は、関連する標準操作手順に従って実施された。遠隔測定送信機は、各動物の内腹斜筋と腹横筋の腱膜の間に配置された。圧力カテーテルを大腿動脈に挿入し、生体電位リードをLeadII構成で皮下に延ばした。試験物質は、60、180、または540mg/kgの懸濁液として強制投与された。
【0088】
食品管理、体重および組成
各ケージに200gのペレットを与えることにより、食物摂取量を毎週測定した。1週間後、消費されたペレットの量を計算し、動物/ケージの数に応じて調整した。体重は毎週測定された。体組成はEchoMRIを使用して評価された。
【0089】
心エコー検査
左心室の構造と機能は、MS550D変換器を使用した経胸壁高周波心エコー検査で分析された。検査は、軽いイソフルラン麻酔(800mL酸素中1.5~2.0%)中に実施された。麻酔レベルは、呼吸数を毎分80~110回に保つように調整された。左心室容積は、シンプソンの法則の再構成を使用してBモードで決定された。すべての画像は、Vevo LABソフトウェア1.7.0を使用して盲検式でオフラインにて分析された。一回拍出量、心拍出量および心拍数、ならびに壁の厚さおよび左心室の直径を分析した。平均値をとるため3回の測定/動物を実施した。
【0090】
レーザードップラー画像
9週齢のF1マウスにHFDを8週間与え、ビヒクルまたは試験物質(40mg/kg、1日1回経口)で処理した。血液灌流分析の1日前に、Veet脱毛クリームを使用して左後足から脱毛した。イソフルランを使用してマウスを麻酔し、加熱パッド上に置いた。PeriScan PIM II Imagesを使用して血液灌流をスキャンし、LDPIwinソフトウェア(バージョン2.6.1)を使用して画像を分析した。
【0091】
トレッドミル
トレッドミルテストでは、体力枯渇までの走行距離が同等の14月齢のC57BL/6Jマウスを2つの群(14匹/群)に割り付け、その後ビヒクルまたは試験物質(20mg/kg、1日1回経口)で30日間処理した。試験の1週間前に、マウスはトレッドミルで5分間の習熟セッションを行った。プロトコルは次のとおり:18.8m/分で15分、24.4m/分で5分、体力枯渇するまで27.1m/分。体力枯渇時に、血中乳酸値を乳酸テストメーター(Arkray)を使用して測定した。
【0092】
間接熱量測定
HFDまたは0.8mg/gを配合したHFDを11週間投与した21週齢のCBAマウスを、周囲温度22℃で12時間の明期と12時間の暗期のサイクルで個別にチャンバーに収容し、最低12時間チャンバーに順応させ、その後データを収集した。VO2およびVCO2率は、TSE PhenoMaster熱量測定代謝ケージ(TSE Systems GmbH)で間接熱量測定によって3日間測定された。呼吸交換率(RER)は、生成されたVCO2/消費されたVO2の比率として計算された。RERが0.7の場合は、脂肪が主要な燃料源であることを示し、RERが1.0に近い場合は、炭水化物が主要な燃料であることを示す。エネルギー消費量(EE)は、酸素の発熱量(CV)[=3.815+(1.232xRER)]と消費されたO2の容積の積として計算され、つまり、[EE=CVxVO2(kcal/h)]であり、除脂肪体重に関係した。
【0093】
赤外線熱画像
試験物質(10mg/kg/日)またはビヒクルで12日間処置され、鎮静されていないZuckerラットの皮膚温度を赤外線カメラ(FLIRix series ExtechIRC30、FLIR Systems Inc.)で記録し、特定のソフトウェアパッケージ(FLIRQuickReportバージョン1.2SP2(1.0.1.217))で分析された。群あたり9匹のラットを使用し、最終投与の2時間後に各動物の平均および最大皮膚表面温度を測定した。
【0094】
グルコースおよび血清関連の測定
グルコース刺激インスリン分泌と組み合わせた経口および腹腔内ブドウ糖負荷試験を、グルコース(SIGMA#G7021)(0.75g/kg体重)の腹腔内注射後、6時間絶食した非鎮静マウス(Hypnorm(Veta Pharma)/Midazolam(Hamlenmice))で実施した。アルギニン刺激インスリン分泌は、HFDまたは試験物質-HFD(0.8 mg/g)を11週間投与された絶食していない21週齢のCBAマウスにアルギニン(SIGMA#A5131)(1g/kg体重)を腹腔内注射した後に測定された。血糖値はGlucometer(Ultra 2、One Touch)を使用して測定し、血漿インスリンは超高感度マウスインスリンELISAキット(Chrystal Chem Inc.#90080)を介して分析した。曲線下面積(AUC)は、台形公式に従って計算された。インスリン抵抗性の恒常性モデル(HOMA-IR)は、空腹時血糖(mmol/L)×空腹時血漿インスリン(μU/ L)/22.5を介して計算された。MATSUDA指数は、[10000/sqrt(インスリン(0分)+グルコース(0分)+インスリン平均(0-60分)+グルコース平均(0-60分)]を介して計算された。統計的有意性は、スチューデントのt検定(両側検定)によって計算された。
【0095】
オートファジーフラックスアッセイ
INS-1E細胞は、インキュベーションの最後の60分間、100nMバフィロマイシン(Bafilomycin)A1(InvivoGen#tlrl-baf1)の存在下または非存在下で、5μM試験物質と共にもしくは試験物資を伴わず、24時間インキュベートされた。LC3IIのレベルは、ウエスタンブロット分析によって決定され、定量された。使用した一次および二次抗体を表1に示す。
【0096】
【0097】
アミロイド分析および生体外(ex vivo)膵島アミロイドアッセイ
膵島アミロイドの定量は、HFDを16週間与えられたhIAPPtgマウス(n=7マウス/n=69膵島)から、および、HFDを9週間投与され、その後試験物質-HFD(2mg/g)に切り替えられ7週間投与されたhIAPPtgマウス(n=5マウス/n= 48膵島)から単離された膵臓組織で行われた。単離された膵臓をそのまま凍結し、切片化し、アミロイド含有量を以前に記載されたようにチオフラビン-Sで染色することにより定量した(参考文献2)。生体外(ex vivo)分析のために、膵臓のコラゲナーゼ消化によって膵島を単離し(参考文献1)、11.1または22.2 mMグルコース(GIBCO#A24940-01)、1%ウシ胎児血清(GIBCO#10500)、50U;μg/ml Pen/Strep(Gibco#15140-122)、10mM Hepes(Umea University, Laboratory medicine)、1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO#11360-039)および0.1%2-メルカプトエタノール(Sigma#M3148)を補充したRPMI培地1640(GIBCO#11879-0)で培養した。培養の0日目から0、2.5、5.0、および10μMの試験物質を加えた。オートファジー阻害の効果を評価するために、培養の0日目から5μMの3-メチルアデニン(3-MA、Aldrich#M9281)を試験物質5μMと組み合わせて添加した。対照はDMSO1:2000を含んでいた。培地と化合物は2日ごとに交換した。処理の92時間後、膵島を包埋し、切片化し、アミロイド含有量を以前に記載されたようにチオフラビン-Sで染色することにより定量した(参考文献2)。少なくとも3つの独立した試験が評価された。
【0098】
細胞のATP含有量の決定
Wi-38ヒト肺線維芽細胞を試験物質で16時間刺激した。その後、ATP含有量は、ATP生物発光アッセイキットHS II(Roche Applied Science#11699709001)を使用して、製造元の推奨に従って決定された。ATPデータは、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce#23225)を使用して決定された細胞タンパク質に対して正規化された。
【0099】
ウエスタンブロット分析
すべての細胞株を0.1M Tris-HCl、pH6.8、2%SDS、10mMフッ化ナトリウム(SIGMA#S7920)、10mMβ-グリセロホスフェート(SIGMA#G6376)、および1mMバナジン酸ナトリウム(SIGMA#72060)で溶解し、14,000rpmで1分後に上清を回収した。膵島(ヒトおよびマウス)を0.1M Tris-HCl、pH6.8、2%SDS、プロテアーゼ阻害剤(Roche#04 693 124 001)およびホスファターゼ阻害剤(Roche#04 906 837 001)で溶解した。右ふくらはぎの筋肉、心臓、鼠径部白色脂肪組織(iWAT)、および肩甲骨間褐色脂肪組織(BAT)を、液体窒素を使用して乳棒で粉砕し、氷冷RIPAバッファー(150mM塩化ナトリウム(SIGMA#S7653)、1.0%NP40(USB)、0.5%デオキシコール酸ナトリウム(SIGMA #D6750)、0.1%SDS、50mM Tris pH8.0、20mMピロリン酸ナトリウム(SIGMA#71515)、10mMフッ化ナトリウム、10mMβ-グリセロールリン酸、1mMバナジン酸ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche#04693124001)、1タブレット/10ml溶解緩衝液)で均質化した。14,000rpmで2分後に上清を収集した。この手順は、すべての脂肪が除去され、4℃で、上清が透明になるまで繰り返された。サンプルは4~15%ポリアクリルアミドゲルで分析した。使用した一次および二次抗体を表1に示す。値は、AMPKα、β-アクチン、GAPDH、またはそれぞれの非リン酸化対応物に対して正規化された。
【0100】
定量的リアルタイムPCR (qRT-PCR)
RNA精製のために、ふくらはぎの筋肉、iWAT、肩甲骨間BAT、および左側肝葉を、液体窒素を使用して乳棒で粉砕し、その後、それぞれのRNAキットに移した。肝臓からのRNAは、Total RNA Isolation Nucleospin II Kit(Macherey-Nagel#740955.50)を使用して調製した。脂肪組織からのRNAは、RNeasy Lipid Tissue Miniキット(Qiagen#74804)を使用して調製した。ふくらはぎの筋肉組織からのRNAは、RNeasy Fibrous Tissue Miniキット(Qiagen#74704)を使用して調製した。ファーストストランドcDNA合成は、SuperScript III(First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR,Invitrogen#11752-250)を製造元の指示に従って使用して行った。RNeasy Micro Kit(Qiagen#74004)を使用して単離された膵島から全RNAを調製し、Superscript III(Invitrogen#18080-051)を製造元の指示に従って使用して第1鎖cDNA合成を行った。mRNA発現レベルの定量化は、本質的に以前に記載されたように実施された(参考文献3)。qRT-PCRに使用されるプライマーを表2に示す。チロシン3-モノオキシゲナーゼ/トリプトファン5-モノオキシゲナーゼ活性化タンパク質であるゼータポリペプチド(YWHAS)を使用して、TBPが使用された膵島を除いて発現レベルを正規化した。
【0101】
【0102】
肝臓の脂質抽出とトリグリセリドの決定
0.2~0.3gの肝臓を3mlのPBSで均質化した後、6mlのクロロホルム/メタノール(2:1)を添加した。相分離が起こらなくなるまでサンプルを混合し、室温で30分間放置し、4,500rpmで、5分間遠心分離した。クロロホルム相をあらかじめ秤量したガラス器具に移し、一晩4℃に保った。水滴をすべて除去し、クロロホルムを窒素流で蒸発させた後、SpeedVacを介して15分間残留溶媒を除去した。ガラス器具の重量を再測定し、総脂質を計算した(mg/g肝臓)。残留物を35%TritonX-100/メタノールに溶解した。肝臓トリグリセリドは、血清トリグリセリド測定キット(Sigma-Aldrich#TR0100)を使用して測定した。分析は、540nmではなく560nmで分析するトリグリセリド測定についてわずかな変更を加えて、製造元の推奨に従って行われた。
【0103】
グリコーゲンの測定
心臓グリコーゲン含有量は、製造元の推奨に従って、グリコーゲンアッセイキット(Abcam#ab65620)を使用して測定された。
【0104】
総脂質への[1,2-14C]アセテートの取り込み
初代ヒト肝細胞(24ウェルディッシュで65,000~130,000細胞/ウェル)をビヒクル対照、無血清ウィリアムズ培地E中の0.625、1.25、2.5、または5μMの試験物質で2時間処理し、その後、さらに4時間、0.25μCi[1,2-14C]-アセテート/ウェルを添加した。増殖条件については、表3を参照されたい。200μlの0.5%トリプシンを、細胞を剥離するために使用し、その後、800μlのクロロホルム/メタノール(2:1)および500μlの4mMのMgCl2を添加した。サンプルをボルテックスし、14,000rpmで回転させ、2分後に、水層を廃棄した。この手順は、2回繰り返した。まず700μLのクロロホルム/メタノール(2:1)および500μlの4mMのMgCl2で、次いで、400μlのクロロホルム/メタノール(2:1)および500μlの4mMのMgCl2で繰り返した。有機相をシンチレーションバイアルに移し、窒素流によって蒸発乾固させた。残留物を3mlの液体シンチレーションカクテル(Optiphase HiSafe 3、Perkin Elmer#1200.437)に溶解し、Wallac 1414ベータカウンター(Perkin Elmer)で1分間14Cを測定した。脂質抽出の前に、10μlのサンプルを使用してタンパク質濃度を測定した。14C値は細胞タンパク質濃度に対して正規化された。
【0105】
【0106】
【0107】
生体内脂質生成
HFDまたは試験物質-HFD(2mg/g)を5週間投与した15週齢のCBAマウスを一晩飢餓状態にし、そして再投与し、90分後0.9%NaClで希釈した1000μCi 3H-NaOac(Perkin Elmer#NET003005MC)を注射した。90分後、0.2~0.3gの肝臓を単離し、3mlのPBSで均質化した後、6mlのクロロホルム/メタノール(2:1)を添加した。相分離が起こらなくなるまでサンプルを混合し、室温で放置し、30分後、4,500rpmで、5分間遠心分離した。水相を除去し、3mlのクロロホルムをシンチレーションバイアルに移し、40℃の水浴に入れながら窒素流で蒸発乾固させた。残留物を3mlのoptiphase hisafe 3(パーキンエルマー#1200.437)に溶解し、そして3HをWallac 1414カウンターで1分間測定した。3Hの値は、肝臓重量で正規化した。
【0108】
L6筋管におけるグルコース取り込み
高グルコース(4.5g/L)ダルベッコ改変イーグル培地(Gibco#31966)、10%ウシ胎児血清(Gibco#10500-064)、および25μg/mlゲンタマイシン(Gibco1#5750)で増殖させたラットL6骨格筋細胞は14日間血清濃度を2%に下げることにより、分化が誘導され、それまでに筋芽細胞の大部分が筋管に分化した。筋管を無血清低グルコース(1g/L)DMEM(Gibco#21885)ですすぎ、ビヒクル対照、2.5、5、および10μMの試験物質(無血清低グルコースDMEM、0.1%DMSO)で2時間、処理し、グルコースを含まない無血清DMEM(Gibco#11966)ですすぎ、その後、それを20分間インキュベートした後、10分間、1μCiの2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)(Perkin Elmer#NET549A250UC)を添加した。細胞を、グルコースを含まない無血清DMEMで3回リンスし、1ml RIPAバッファー(150mM塩化ナトリウム、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、50mM Tris pH8.0)で溶解した。300μlを4mlの液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer#1200-437)に加えた後、Wallac 1414ベータカウンターで1分間カウントした。ビヒクルを1に設定することにより、CPMを任意の単位に変換した。
【0109】
分化を開始させた6-7日後に、リポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬を(Thermo Fisher Scientific#13778030)製造元の指示に従い(フォワードトランスフェクション)使用して、L6筋管にsiAMPKα1およびα2(Santa Cruz Biotechnology、Inc#sc-270142および#sc-155985)またはSilencer Negative Control siRNA(Ambion#AM4635)を導入した。siRNAの最終濃度は100nMに設定した。導入の前日、培地を、抗生物質を含まない培地(高グルコース、4.5g/L、ダルベッコ改変イーグル培地(Gibco#31966)および2%ウシ胎児血清(Gibco#10500-064))に変えた。siAMPKα1およびα2およびSilencer Negative Control siRNA がそれぞれ導入された細胞におけるAMPKα1およびα2発現のレベルをウエスタンブロットによって定量した。試験物質(5μM)の非存在下または存在下での4時間のグルコース取り込みを、上記の導入の72時間後にアッセイした。試験物質によって誘導されたグルコース取り込みは、それぞれ、siAMPKα1およびα2ならびにSilencer Negative Control siRNAを導入された細胞におけるビヒクル対照による取り込みに対して正規化された。
【0110】
生体内グルコース取り込み
HFDまたは試験物質-HFD(2mg/g)を2週間投与した12週齢のCBAマウスを、3時間飢餓状態にした後、軽度のイソフルラン麻酔(800mL/min O2で1.5~2%)下、総量70~100μLの生理食塩水中の9±1.1MBqの臨床グレード18F-フルオロ-デオキシ-グルコース(-FDG)(ウメアのNorrlands University Hospitalの核医学部門で調製)を静脈内注射した。注射後、マウスを覚醒させ、ケージ内を自由に動き回らせた。180分後、マウスを深いイソフルラン麻酔下で犠牲にし、大動脈を介したPBSの逆行性灌流によって血液を除去した。肝臓が青白いとき、組織を収集し、10分間の静的取り込みについてスキャンした(nanoScan PET/CT、Mediso、ハンガリー)。次に、組織を生体外スキャニングでスキャンして、単離された組織への取り込みを評価した。画像は、スパイクフィルター、遅延ウィンドウランダム補正、散乱、CTベース減衰補正を使用して、軸方向距離98mmをカバーする、4回の反復と4つのサブセット(Mediso Tera-Tomo 3D)による3D反復再構成で0.4x0.4mmの解像度に再構成された。関心のあるボリュームは、imlook4d(www.dicom-port.com)を使用して各組織上で、手動で輪郭が描かれた。トレーサーの取り込みは、次の式を使用して、標準化された取り込み値(SUV)として定量化された。SUV=C/(I/m);Cは測定された組織活性濃度(Bq/mL)、Iは注射された用量(Bq)およびmは体重(g)である。CとIは同一時刻に減衰補正される。
【0111】
SAMSペプチドAMPK活性アッセイ
50ngAMPK(Upstate#14-305)を、バッファー(40mM Hepes pH7.45、0.5mM DTT、2mM MgCl2、0.1%DMSO)中の2.5、5、または10μM試験物質、または20μM AMP(Sigma#A2002)とさまざまな組み合わせで混合した。すべての設定で、10μgのSAMSおよび0.03μCi/μlの32P ATP(Perkin Elmer#NEG502Z500UC)が加えられた。総反応量は25μlで、すべての成分を氷上で混合し、37℃で15分間反応を行った後、5μlのリン酸で終了させ、氷上に戻した。25μlの反応液をWhatmanP81フィルター上で、50℃で2分間乾燥し、250mlの1%リン酸で2分間、3回洗浄した後、4mlの液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer#1200-437)に加えてWallac 1414ベータカウンターで1分、カウントした。放射能は酵素活性と相関している。
【0112】
AMPK活性化アッセイ
表3には、細胞株の起源、増殖条件、および試験物質を介したAMPKの活性化の設定が含まれている。ヒト骨格筋細胞は、2%馬血清(Gibco#26050-070)を添加したDMEM(Gibco#21885)で筋管分化が誘導されるまで、細胞の供給者から入手した増殖培地で2日間増殖させ、その後、表3に記載されているように試験物質で処理した。到着後、ヒト肝細胞を37℃で1分間解凍した後、解凍培地(CHRM、Invitrogen#CM7000)に移した。10分、室温で100x gの遠心分離の後、細胞ペレットを肝細胞プレーティングサプリメントパック(Gibco#CM3000)を添加したウィリアムズ培地E(Gibco#A1217601)に再懸濁した。細胞をゼラチンコーティングされた60mmディッシュにプレーティングし、次に一晩インキュベートした後、表3に記載されているように試験物質で処理した。INS-1E細胞は、試験物質を添加する前に、活性化条件(表3)用の培地で4時間前処理した。全ての細胞株は、5%CO2、37℃の加湿インキュベーター中で維持した。表3は、増殖条件とマウスおよびヒトの膵島における試験物質によるAMPKの活性化の設定を示している。採取後、マウス膵島を37℃、5%CO2で増殖条件培地にて2日間培養した後、試験物質で2時間処理した。非糖尿病の、およびT2D(2型糖尿病)のドナーからのヒト膵島は、スウェーデンの法律およびウメオのヒト研究倫理委員会(www.epn.se)に準拠したJDRFアワード31-2008-416 ECIT Islet for Basic Researchプログラムを通じて提供された。到着後、膵島を50mlファルコンチューブに移し、5分間静置した後、上清を除去し、培地(CMRL培地(GIBCO#21530-027)、10%ウシ胎児血清(GIBCO#10500)、 20U/ml Pen:Strep(Gibco#15140-122)および1X GlutaMax(Gibco#35050-038))を加えた。膵島を培地でさらに3回洗浄した後、ペトリ皿に移し、37℃、5%CO2の加湿インキュベーターで一晩回復させた後、試験物質で4時間処理した。
【0113】
AMPK生体外(In Vitro)脱リン酸化アッセイ
AMPKα2/β1/γ1三量体(Life Technologies#PV4674、ロット1261361B)(1ng/μl)を、バッファー(40mM Hepes、0.5mM DTT、0.2mg/mlゼラチン(Sigma#G7041)および0.4%、DMSO)中の10μMの試験物質、20μMの試験物質、または150μMのADP(Sigma#A2754)+/-1mM ATP(Sigma #A1852-1VL)+/-PP2Cα(0.25-0.75ng/μl)(Abcam ab51205-100;ロットGR54133-5)および5mM MnCl2(総量20μl)とインキュベートした。AMPKα2/β1/γ1+/-ATPを試験物質およびADPと30℃で2分間プレインキュベートした後、PP2C/MnCl2を添加して脱リン酸化反応を開始し、これは30℃で10~15分間継続した。0.17%BSA、13mM EDTA、1.3x XTサンプルバッファーおよび0.67%β-メルカプトエタノールを含むPBSを添加して反応を停止させた。サンプルを氷上に5分間置き、100℃で5分間加熱し、冷却してからウエスタンゲルで泳動した。すべてのステップは、高品質の低タンパク質結合エッペンドルフチューブで実行された。別の実験では、10μMの試験物質、20μMの試験物質、150μMのADPのみ、あるいは10μMの試験物質+150μMのADPおよび20μMの試験物質+150μMのADPの組み合わせをバッファー(40mMのHepes、0.5mM DTT、0.2mg/mlのゼラチンおよび0.4%DMSO)中、+/-0.25-0.5ng/μL PP2Cαおよび5mMのMnCl2、または5mMのMgCl2の条件で、1ng/μlのAMPKα2/β1/γ1もしくはAMPKα1/β1/γ1(Life Technologies社#PV4672)三量体とインキュベートした。AMPKは、試験物質およびADPまたは組み合わせと30℃で2分間、順次プレインキュベートし、その後PP2C/MnCl2またはPP2C/MgCl2を逐次添加し、脱リン酸化反応を開始した。これは、30℃で5~15分間続けた。その後、反応を停止し、上記のように分析した。
【0114】
PP2Cホスファターゼ活性アッセイ
PP2Cαの活性を測定するため、バッファー(50mM Tris-HCL pH7.5、0.1mM EDTA、0.5mM DTT、5mM MgCl2)中で3ng/μlのPP2Cα(Abcam ab51205)および5、10、または20μMの試験物質をSensolyte FDPプロテインホスファターゼアッセイキット(Anaspec#71100)で、製造元の指示に従い使用した。蛍光強度は、Bio Tek SynergyH4マルチモードマイクロプレートリーダーで測定した。
【0115】
定量化と統計分析
ウエスタンブロット実験の定量は、Image Lab(Bio-Rad Laboratoriesバージョン4.1 build 16)およびImage-J Software(バージョン1.45s)を使用して実行された。アミロイド含有量の定量は、Image-Jソフトウェア(バージョン1.49m)を使用して実行された。生体外およびマウス生体内のデータのすべての統計分析は、両側スチューデントのt検定によって実行された。P<0.05の値は統計的に有意であると見なした。患者データ分析は、混合モデルAnova検定(全体を通して、絶対変化には二元配置分散分析を使用し、変化率には一元配置分散分析を使用)とノンパラメトリックWilcoxon順位和検定を使用して実行した。複合エンドポイントは、カイ二乗検定とフィッシャーの直接確率検定を使用して分析された。
【0116】
結果
試験物質は、生体外でpAMPKの脱リン酸化を抑制し、細胞内で普遍的(PAN)-AMPK活性化因子として作用する。
上記と一致して、生体外では、試験物質は、PP2Cの活性を阻害することなく、ヒト組換えAMPKα、-β、および-γ三量体のp-T172のプロテインホスファターゼ2C媒介(PP2C媒介)脱リン酸化を抑制した(
図1A)。試験物質はまた、過剰なATPの存在下での脱リン酸化からpAMPKを保護し(
図1B)、ADPと相加的に作用したが、AMPKをアロステリックに活性化しなかった。したがって、試験物質は、AMPK活性に対するADPの効果を模倣したが、AMPの効果は模倣しなかった。
【0117】
形質転換されていないヒトWi-38肺線維芽細胞では、試験物質はpAMPK、下流の標的p-S79 ACC(pACC)、およびATP/タンパク質比のレベルを用量依存的に増加させた(
図1、C-F)。特に、試験物質は、β2サブユニットを優先的に発現するヒト骨格筋管や肝細胞などの2型糖尿病に関与する細胞を含む、β1またはβ2サブユニットのいずれかを発現するさまざまな異なるAMPKヘテロ三量体を含む多くの異なる細胞型でpAMPKを増加させた。したがって、試験物質は細胞内でPAN-AMPK活性化因子として機能する。試験物質の作用機序は、細胞が主要な上流キナーゼLKB1を発現することを必要とする。上記と一致して、LKB1非存在(null)である表現型、HeLa細胞では、試験物質は、非常に低い基礎レベルのpAMPKおよびpACCを増加させることができなかったが、対照として、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼキナーゼ(CaMKK)を介してAMPKを活性化するCa2+イオノフォア、イオノマイシンはこれらの細胞で容易にAMPKを活性化した。したがって、試験物質は、固有のAMPK活性を有する生理学的に関連する細胞においてAMPK活性をさらに増加させるだけである。
【0118】
試験物質は、DIOマウスのインスリン抵抗性と高血糖を予防する。
げっ歯類では、試験物質は長い血漿半減期により経口投与可能であるが、血液脳関門を通過しない。試験物質を単独で、または臨床設定のようにメトホルミンと組み合わせて生体内で高血糖およびインスリン抵抗性を軽減できるかどうかに対処するために、マウスに「DIO」(食餌誘発性肥満)と呼ばれる高脂肪食(HFD)を与え、ビヒクル、試験物質、メトホルミン、または試験物質+メトホルミン(100mg/kg/日)をそれぞれ8週間、強制的に経口投与した(
図2A)。このレジメンでは、メトホルミンではなく、試験物質および試験物質+メトホルミンは、HFDによって引き起こした空腹時血糖値および血漿インスリンレベルの上昇を回避した(
図2、BおよびC)。その結果、ビヒクルと比較して、試験物質および試験物質+メトホルミンで処理されたDIOマウスは、HOMA-IR計算によって評価されるようなインスリン抵抗性を発症しなかった(
図2D)。さらに、高血糖、高インスリン血症、およびインスリン抵抗性の強力な予防と一致して、メトホルミンではなく、試験物質および試験物質+メトホルミンは、DIOマウスのふくらはぎの筋肉で有意にpAMPKを増加させ(
図2E)、Txnip mRNAレベルを減少させ、Glut1 mRNAレベルを増加させた(
図2F)、これはインスリン依存性とインスリン非依存性の両方の効果と一致している。要約すると、試験物質はふくらはぎの筋肉のpAMPKを増加させ、DIOマウスの高血糖、高インスリン血症、およびインスリン抵抗性から強力に保護した。メトホルミンは有意な効果を示さなかったが、試験物質+メトホルミンは、試験物質単独と比較して最も効果的であり、HOMA-IRを有意に低下させたように見えた。
【0119】
2型糖尿病の患者では、確立された高血糖を軽減するために、試験物質をメトホルミンと組み合わせて使用されるであろう。これらの条件を模倣するために、マウスにHFDを7週間与え、通常の食餌(RD)を与えたマウスと比較して高血糖とインスリン抵抗性を生じさせ(
図2、GI)、ついで4週間、HFDを継続しながらビヒクルまたは試験物質+メトホルミンで治療した。空腹時インスリンレベルとHOMA-IRの低下は、試験物質+メトホルミンによる1週間の治療後に明らかだったが、空腹時血糖値は、ビヒクルと比較して、試験物質+メトホルミンによる2週間の治療後に初めて有意に低下した(
図2、GI)。長期治療は血糖値をさらに低下させ、4週間の治療後、空腹時血糖値はRDを与えられたマウスの血糖値まで低下した(
図2G)。したがって、試験物質+メトホルミンの代謝効果(すなわち、高血糖の減少)は、人間で観察される高血糖に対する運動および/またはカロリー制限の効果に十分に類似している。
【0120】
試験物質は、hIAPPtgDIOマウスの糖尿病を予防および回復させる。
DIOマウスは高血糖になるが、明白な糖尿病ではないため、次に、ヒト2型糖尿病を模倣したマウスモデル(すなわち、HFD誘発性のβ細胞機能障害と組み合わせたインスリン抵抗性/高血糖)での試験物質の効果を調査した。この目的のために、ラットインスリン2プロモーターの制御下でアミロイド形成性ヒトIAPP(hIAPP)遺伝子を発現するマウス(hIAPPtgマウスと呼ばれる)を使用し、HFD食を6週間与えた(
図3A)。hIAPPtg DIOマウスでは、ビヒクルと比較して、100mg/kg/日で強制経口投与された試験物質により、6時間の空腹時血糖および血漿インスリンレベルの増加が回避された(
図3、BおよびC)。腹腔内(I.p.)(
図3D)および経口(
図3E)耐糖能試験(GTT)は、試験物質が耐糖能障害および代償性高インスリン血症の発症を予防することを確認し、インスリン分泌過多の相対的正常化を示し、これはRDの10週齢のhIAPPtgマウスのそれを反映した(
図3F)。さらに、全身インスリン感受性のHOMA-IRおよび松田指数モデルは、試験物質がhIAPPtg DIOマウスの全身インスリン抵抗性の発症を抑制したことを示した(
図3、GおよびH)。
【0121】
試験物質が肥満の糖尿病hIAPPtgマウスで確立された糖尿病と肥満を元に戻すことができるかどうかを試験し、HFD誘発性肥満に対する強制経口投与の潜在的な交絡効果を回避するために、試験物質-HFDと呼ばれる試験物質を含有するHFDを処方した。グルコース恒常性に対する試験物質の用量反応効果を試験するために、次に、CBAマウスにHFDまたは0.4、0.8、および2mg/gの試験物質を配合した試験物質-HFDを7週間与えた。CBAマウスでは、試験物質-HFDはふくらはぎの筋肉のpAMPKを用量依存的に増加させ(
図4A)、高血糖、高インスリン血症、およびインスリン抵抗性を強力に予防した(
図4、B-D)。試験物質が確立された糖尿病を元に戻すことができるかどうかを試験するために、hIAPPtgマウスにHFDを9週間与え、次に試験物質-HFD(2mg/g)に7週間切り替えた(
図4E)。切り替え後6週間で、試験物質-HFDは、確立された高血糖、高インスリン血症、およびインスリン抵抗性を元に戻し、したがって糖尿病を元に戻した(
図4、F-H)。さらに、試験物質は、食物摂取量の増加にもかかわらず、体重および体脂肪の減少を誘発した。
【0122】
2mg/gの試験物質を配合したHFDを与えたhIAPPtgマウスの確立された糖尿病および肥満に対する試験物質の強力な効果は、これらのマウスで観察された有益な代謝効果(
図4、F-H)が体重と体脂肪に対する効果の二次的な作用である可能性を残す。したがって、この問題に対処するために、より低い試験物質-HFD濃度を使用する、hIAPPtgマウスに対する食餌切り替え実験を行い、マウスにHFDを9週間与えた後、7週間、HFDを継続するか、または試験物質-HFD(0.8mg/g)に切り替えた。このレジメンでは、7週間の試験物質-HFD(0.8mg/g)への切り替えは、体重または体脂肪の減少を引き起こさなかった(
図4、IおよびJ)。それにもかかわらず、試験物質-HFD(0.8mg/g)への切り替え後6週間で、グルコースおよびインスリンのレベルならびにHOMA-IRが有意に減少し(
図4、K-M)、これらの条件下では、試験物質の有益な代謝効果は、体重および体脂肪減少への効果とは独立していることを示す。総合すると、これらの結果は、試験物質が、肥満誘発性糖尿病である2型糖尿病マウスモデルにおいて、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高血糖症、および顕性糖尿病を強力に回避することを示している。
【0123】
試験物質は、生体外での骨格筋管および生体内での骨格筋におけるグルコース取り込みを増加させる。
骨格筋では、AMPKの活性化は、インスリン非依存性のグルコース取り込みの増加とインスリン抵抗性の低下の両方に関係している。したがって、骨格筋管では、試験物質は、インスリンの非存在下で、用量依存的およびAMPK依存的に2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)の取り込みを増加させた(
図5、A-D)。さらに、放射性標識グルコース類似体-フルオロデオキシグルコース(-FDG)の尾静脈注射のPET分析を使用すると、HFDを与えられたマウスと比較して、試験物質-HFD(2mg/g)を2週間与えられたマウスのふくらはぎのおよび大腿の筋肉において-FDG取り込みの有意な増加が観察された(
図5E)。これは、試験物質が生体内で骨格筋へのグルコース取り込みを促進することを示している。まとめると、これらの発見は、グルコース恒常性に対する試験物質の好ましい効果が、少なくとも部分的に、骨格筋における試験物質のグルコース取り込みへの刺激によって媒介されるという証拠を提供する。
【0124】
試験物質は、β細胞のストレスを軽減し、β細胞の休息を促進する。
2型糖尿病では、有毒なIAPP凝集体/アミロイドがβ細胞ストレスおよびβ細胞の劣化に関連している。HFDから試験物質-HFD(2mg/g)に7週間切り替えたhIAPPtg HFDマウスでは、形成された膵島アミロイドの量は、HFDを7週間継続したマウスと比較して有意に減少した(
図6、AおよびB)。しかし、試験物質-HFDを与えられたhIAPPtgマウスで観察されたアミロイドの量の減少は、高血糖とインスリン抵抗性の改善の二次的効果である可能性がある。しかし、試験物質は、ラットインスリノーマINS-1細胞、単離された初代マウスWTおよびhIAPPtg膵島、およびヒト膵島においてpAMPKαを直接増加させた(
図6C)。したがって、膵島細胞に対する試験物質の潜在的な直接効果を調査するために、次に、単離された初代hIAPPtg膵島を高グルコース(22mM)レベルで培養することによりアミロイド形成を誘発した。試験物質は、用量依存的に、22mMグルコースで培養されたhIAPPtg膵島におけるアミロイド形成を強力に弱めた(
図6、DおよびE)。基礎オートファジーはβ細胞をhIAPPオリゴマー毒性から保護することが示されており、AMPKの活性化はオートファジーを促進する。上記と整合して、試験物質は、β細胞株INS-1Eにおいて、オートファジーフラックスを増強した。およびオートファジー阻害剤3-MAの存在下で、22mMグルコースでのアミロイド形成に対する試験物質の予防効果は大幅に弱められた(
図6、FおよびG)。しかし、AMPKの活性化は、小胞体(ER)機能の維持を通じて代謝ストレスを受けたβ細胞の機能と生存を改善することも示され、試験物質は、22mMグルコースで培養された初代マウスの膵島における折りたたまれていないタンパク質応答遺伝子の発現の増加(すなわち、ERストレスを示す)を大幅に防止した。したがって、試験物質は、肥満誘発性の2型糖尿病マウスモデル、ならびに生体外で、高グルコースレベルで培養された単離されたマウス膵島におけるβ細胞アミロイド形成を回避する。まとめると、本発明者らの発見は、正確なメカニズムにはさらなる分析が必要であるが、試験物質は、高血糖症および全身インスリン抵抗性を低減し、ならびにβ細胞のオートファジーおよび/または小胞体機能を増強することの両者によって、生体内で代謝的に誘導されるβ細胞ストレスおよびアミロイド形成を打ち消すことを示唆している。
【0125】
おそらく間接的および直接的の両方で、β細胞ストレスを低減する試験物質の見かけの能力は、試験物質がβ細胞の休止も促進し、それが次に長期のβ細胞機能を維持するのではないかという疑問を提起する。インスリン分泌のアルギニン刺激は、第一段階のインスリン放出(すなわち、すぐに放出可能な顆粒のプール)を評価し、機能的なβ細胞予備能の推定値を提供する。したがって、β細胞機能に対する試験物質の効果を評価するために、次に、インスリン分泌のアルギニン刺激を分析した。インスリン分泌のアルギニン刺激は、HFD(
図6H)を与えられたマウスと比較して、試験物質-HFD(0.8mg/g)を11週間与えられたマウスで2倍増加した(
図6H)。これは、試験物質がβ細胞のストレスを軽減し、β細胞の休息を促進し、次いで、β細胞の機能を維持/回復させるというさらなる証拠を提供するものである。
【0126】
試験物質は、熱中性条件での肥満を減らし、エネルギー消費を増やす。
肥満に対する試験物質の効果をさらに調査するために、クロスオーバー実験を行った。14日間HFDを与えられたマウスは急速に体重が増加したが、試験物質-HFD(2mg/g)を与えられたマウスは、1~14日間にHFDを与えられたマウスよりも多くの食物を消費したが、ほとんど体重が増加しなかった(
図7、AおよびB)。HFDと試験物質-HFDをこれら2つの群のマウス間で切り替えると、15日目にHFDから試験物質-HFDに切り替えたマウスは急速に体重が減り始め、再び食物摂取量が相対的に増加した。逆に、試験物質-HFDからHFDに切り替えたマウスは、相対的な食物摂取量を減らしながら体重を増やした(
図7、AおよびB)。次に、試験物質が熱中性で体重減少を誘発するかどうかを試験し、試験物質-HFDを継続しながら、飼育温度から30℃に、49日目から移されたマウスは、依然として体重増加を回避したが、HFDを与えられたマウスは体重増加を続けた(
図7A)。さらに、30℃で飼育されたマウスは、57日目にHFDから試験物質-HFDに食餌を切り替えたとき、急速に体重が減り始めた。逆に、試験物質-HFDからHFDに切り替えたマウスは急速に体重が増加し始めた(
図7A)。これらの条件下では、コア温度のわずかな(0.2℃)有意でない上昇のみが観察された(HFD-処理マウスで37.7℃±0.12℃、n=5、および試験物質-HFD処理マウスで37.9℃±0.08℃、n=5)。したがって、試験物質はまた、熱中性で肥満を減少させる。
【0127】
試験物質がエネルギー消費量(EE)を増加させることによって肥満を回避するかどうかに直接対処するために、HFDまたは試験物質-HFD(0.8mg/g)を11週間投与されたマウスについて酸素消費(VO2)、呼吸交換率(PER)、およびエネルギー消費量(EE)を3日間測定した。VO2は、HFDのマウスと比較して、試験物質-HFDのマウスでは明期と暗期の両方で有意に増加した(
図7C)。RERは、2日目の明期および、暗期の3日間を通じた測定で有意に減少し、試験物質-HFDを与えられたマウスが主なエネルギー源を炭水化物から脂肪酸(FAs)に切り替えたという証拠を提供した(
図7D)。予想通り、EEは明期と暗期の両方で大幅に増加した(
図7E)。まとめると、これらのデータは、試験物質がエネルギー代謝を高めることによって体重増加を抑制することを強く示唆している。
【0128】
試験物質は、脂肪トリグリセライドリパーゼ(ATGL)活性と白色脂肪組織(WAT)および褐色脂肪組織(BAT)における脂肪酸(FA)酸化に関連する遺伝子の発現を増加させる。
体脂肪の減少と一致して、試験物質-HFDを与えられた(2mg/g)マウスは、HFDを与えられたマウスよりも鼠径部白色脂肪組織(iWAT)および精巣上体の白色脂肪組織(eWAT)の脂肪体の重量が著しく低かった。WAT貯蔵を減らすには、脂肪分解を強化する必要がある。基礎トリグリセリド(TG)加水分解を触媒する律速酵素をコードするデスヌトリン(desnutrin)/AtglはAMPKの直接の標的であり、AMPKによるS406のリン酸化はATGL活性を増加させ、脂肪分解を増加させるはずである。上記のとおり、試験物質-HFDはiWATのp-S406ATGLレベルとAtglmRNAレベルの両方を増加させた(
図7、FおよびG)。さらに、ミトコンドリアのFA取り込みを増加させるCpt1b、およびミトコンドリア活性/FA酸化を増加させるCox8bも、HFDを与えられたマウスと比較して試験物質-HFD(2mg/g)を与えられたマウスのiWATで増加した(
図7G)。試験物質は、用量依存的に、褐色脂肪組織(BAT)でのUCP1の発現およびiWATでの低レベルUCP1の発現をわずかに減少させ、試験物質の抗肥満効果の機構としてWATでの脱共役タンパク質(UCP1)の異所性発現に反することを示している。まとめると、これらのデータは、試験物質が、少なくとも部分的に、WATにおける脂肪分解およびFA酸化を増加させることによって肥満を回避するという証拠を提供する。
【0129】
BATでAMPKを活性化すると、FAの取り込み、代謝活性、およびEEが増加する。上記のとおり、HFDを与えられたマウスと比較して、BAT脂肪体の重量は試験物質-HFD(2mg/g)を与えられたマウスで減少し、BAT代謝活性の増加を示している。特に、試験物質-HFD(2mg/g)は、DIOマウスのBATにおけるCd36の発現を有意に増加させ、FAの取り込みの向上を示し、ならびにCpt1bの発現を増強し、FAシンターゼ(Fas)、ステアロイル-CoAデサチュラーゼ1(Scd1)、およびAcc1をコードする遺伝子の発現を強力に減じ、それらは、組み合わさって、BATにおける新規の(de novo)脂質生成(DNL)を減少させ、ミトコンドリアFAの取り込み/酸化を増加させるはずである(
図7H)。さらに、最近の結果は、細胞内脂肪分解なしに褐色脂肪で熱が発生する可能性があり、BATがWAT脂肪体での脂肪分解に由来するFAを吸収して燃焼できるという証拠を提供している。まとめると、これらの発見は、WATとBATの両方の活性の増加が組み合わさって、試験物質で処理されたDIOマウスのEEの増加と脂肪/体重の減少を促進する可能性を残している。
【0130】
WATから肝臓への脂肪分解流の増加は脂肪肝を引き起こす可能性がある。しかし、試験物質は用量依存的にヒト初代肝細胞の脂質合成を抑制した。試験物質はまた、肝臓の新規脂質生成(DNL)を約45%減少させた。食餌誘発性肥満(DIO)マウスの肝臓において、用量依存的にCpt1bが増加し、Acc2、Fas、およびScd1のmRNAレベルが減少した。DIOマウスの脂肪肝を予防および軽減した。
【0131】
試験物質は、心臓のpAMPKレベルを増加させ、一回拍出量を増加させ、心臓のグリコーゲンを減少させるが、心肥大を誘発しない。
運動は心臓のAMPKを活性化し、グルコースの取り込みを増加させ、心臓のグリコーゲンレベルを低下させる。HFDを与えられたマウスと比較して、0.8または2mg/gの試験物質-HFDを7週間与えられたマウスは、心臓のpAMPKレベルの有意な増加を示し、心臓のグリコーゲン含有量は用量依存的に減少した(
図8A)。別の実験では、HFDを与えられたマウスと比較して、試験物質-HFD(2mg/g)を2週間与えられたマウスの心臓で-FDG取り込みの有意な増加が観察された(
図8B)。したがって、試験物質の心臓への影響は、運動の心臓への影響に似ている。HFDと比較して、0.8または2mg/gで試験物質-HFDの7週間の投与は、心臓の重量/脛骨の長さの増加を引き起こさなかった(
図8C)。さらに、RDを与えられ、100、300、および600mg/kg/日の試験物質で6ヶ月間強制経口投与されたラットは、ビヒクルと比較して心臓/脳重量の増加を示さなかった。したがって、心臓における試験物質を介したAMPK活性化は、心肥大を引き起こさなかった。
【0132】
運動は一回拍出量を増やすことによって心機能を改善する。したがって、本発明者らは、RD、HFD、または試験物質-HFDを0.8mg/gまたは2mg/kgで与えられたマウスにおいて、心エコー検査によって左心室(LV)機能に対する試験物質の効果を調べた。RDと比較して、HFDは、拡張末期容積と収縮末期容積の両方の有意な減少と、わずかで有意ではない一回拍出量の減少を引き起こした(
図8、D-F)。試験物質-HFDは拡張末期容積を正常化し、用量依存的に改善したが、収縮末期容積を完全には回復しなかった(
図8、DおよびE)。重要なことに、試験物質-HFD0.8mg/gおよび2mg/gは、RDおよびHFDの両方と比較して1回拍出量の有意な増加(約20%)を誘発した(
図8F)。特に、これらの麻酔条件下では、HFDはRDと比較して心拍数の有意な増加を引き起こしたが、試験物質-HFD、0.8mg/gで正常化し、試験物質-HFD、2mg/gで心拍数が減少した(
図8G)。したがって、試験物質は、HFDによって誘発される拡張末期容積の減少を正常化し、一回拍出量の有意な増加を誘発し、試験物質が左心室(LV)機能に対する運動の有益な効果を模倣することを示している。
【0133】
試験物質は、マウスの微小血管機能と持久力を改善し、犬の血圧を下げる。
微小血管機能と末梢血流の低下は、2型糖尿病に重篤な合併症を引き起こす。内皮細胞および平滑筋細胞におけるAMPKの活性化は血管拡張を促進し、AMPK活性化因子である5-アミノイミダゾール-4-カルボキシアミド-1-β-D-リボフラノシド(AICAR)は筋肉の微小血管灌流を増加させる。したがって、末梢血流に対する試験物質の潜在的な影響を解明するために、レーザードップラーイメージングを使用して、ビヒクルまたは試験物質(40mg/kg/日)を8週間強制投与したDIOマウスの左後足の血液灌流をモニターした。これらの条件下で、体重に影響を与えることなく(ビヒクルを与えたマウスは24.5から34gに増加し、試験物質を与えたマウスは25.6から36.5gに増加した)、試験物質は-ビヒクルと比較して-後足の微小血管血流を有意に増加させた(
図9、AおよびB)。試験物質が微小血管の血流を増加させ、それが熱の放散を増加させるという考えを支持して、皮膚表面温度は、試験物質で処理されたザッカーラットにおいて上昇した。
【0134】
強化された心血管機能は、人間と動物の持久力の改善に関連している。試験物質が持久力を改善できるかどうかを試験するために、体力枯渇までの走行距離をモニターし、さまざまな程度の肥満の交絡効果を回避するために、30日間、RDを与え、ビヒクルまたは試験物質(20mg/kg/日)を強制投与した、体重を一致させた14月齢のマウスを使用した。トレッドミル運動は、ビヒクルを与えたマウス(33.4から31.4g)および試験物質を与えたマウス(34.1から32.2g)で同程度に体重を減少させました。ビヒクルと比較して、試験物質は、体力枯渇までの走行距離としてモニターされた持久力を有意に改善し(
図9C)、血中乳酸レベルの増加を有意に減少させ(
図9D)、酸化的代謝の増加を示している。したがって、DIOマウスで観察された有益な心血管効果と一致して、試験物質は、RDを与えられた痩せた活動的でない老齢マウスの持久力を改善する。
【0135】
AMPK活性化因子AICARは、高血圧ラットの血圧を急激に低下させ、単離した抵抗性動脈を弛緩させることが示されている。たとえば、研究的新薬毒物学パッケージの一部として、試験物質の単回投与後の意識のある犬での遠隔測定研究が行われ、これらの条件下で、試験物質は急激に血圧を低下させた(
図9、EおよびF)。したがって、試験物質は、心臓の1回拍出量を改善し、微小血管灌流を増加させ、血圧を低下させる。
【0136】
概要
DIOマウスでは、試験物質は骨格筋へのグルコース取り込みを増加させ、β細胞ストレスを減少させ、β細胞の休息を促進した。試験物質は、動物の末梢微小血管灌流を改善し、血圧を低下させた。また、心臓のAMPKを活性化し、心臓のグルコース取り込みを増加させ、心臓のグリコーゲンレベルを低下させ、マウスのLV一回拍出量を改善したが、マウスまたはラットの心臓重量は増加しなかった。
【0137】
実施例2-第IIa相臨床試験
方法
臨床試験デザイン
画期的新薬であるAMPK活性化因子(試験物質;1,000mg/日)の探索的概念実証ランダム化、並行群間、二重盲検、プラセボ対照第IIa相28日間試験(TELLUS)がメトホルミンを3か月以上服用している65人の2型糖尿病患者を対象に実施された。これは、単回投与レベルでの試験物質の安全性と空腹時血糖値(FPG)に対する試験物質の影響をさらに調査することを目的としている。
【0138】
TELLUSは、EudraCTデータベースプロトコル番号2016-002183-13にリストされている。この研究は、ヘルシンキ宣言を起源とし、国際調和会議(ICH)/医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)、欧州連合(EU)臨床試験指令、および該当する地域の規制要件と一致する倫理原則に従って実施された。研究プロトコルは、スウェーデンのウプサラにある地域倫理委員会によって承認された、プロジェクト番号/ID O304-2016-02。研究関連の手順を実行する前に、インフォームドコンセントフォームに署名し、すべての患者と研究者が個人的に日付を記入した。
【0139】
主な選択基準:メトホルミン単剤療法による3か月以上の安定した2型糖尿病治療を受けている、合併症のない2型糖尿病の18~80歳の男性および女性患者。1日目のFPGではなく、6.5%以上および9.0%以下のHbA1cが主要な選択基準として選択された。
【0140】
主な除外基準:心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の病歴。ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIII-IVとして定義されるうっ血性心不全。研究者が判断した、身体検査、エコー心電図(ECG)、または臨床化学の結果における臨床的に重大な異常。
【0141】
臨床試験化合物
医薬品の製造管理および品質管理の基準(GMP)を遵守した5kgの試験物質のバッチは、インドのカルナータカ州バンガロールにあるAnthem BioSciences Pvt.Ltdによって製造された。懸濁液は、リン酸緩衝液中の2%メチルセルロース中の試験物質20mg/mlで構成されている。色が活性製品と一致する2%メチルセルロース懸濁液をプラセボとして使用した。試験物質およびプラセボ懸濁液は、スウェーデンのソルナにあるRecipharm Pharmaceutical Development ABによって製造、包装、およびラベル付けされた。
【0142】
臨床方法論
65人の患者が当該物質またはプラセボのいずれかによる治療に無作為に(1:1)割り当てられた。スクリーニングのための訪問(訪問1)は、無作為化および治験薬(IMP)投与開始前の3週間以内に実施された。患者は1日目(訪問2)に無作為化され、試験物質またはプラセボ(1:1)のいずれかによる28日間の治療に割り当てられた。クリニックへの試験用訪問は、無作為化および治療開始後7、14、21、28、29および40日(訪問3~8)に実施された。患者は、空腹時血糖値の分析用のサンプルが収集される前に絶食状態を確保するために、1日目と28日目の前夜(それぞれ-1日目と27日目)から研究クリニックに収容された。磁気共鳴画像法(MRI)スキャンは、スクリーニング後であって1日目前、および治療終了後に、標準化された方法に従って、スウェーデンのウプサラにある大学病院で実施された。ウプサラのAntaros Medicalがデータ分析を行った。取得したスキャンの臨床読み取りは、Antaros Medicalの放射線科医によって行われた。放射線科医によって臨床的に重要な所見が認められた場合、研究者にその所見が通知された。研究者は、標準的な医学的/臨床的判断に従って所見を評価および処理することになっていた。
【0143】
治験薬の最初の投与後に始まり、または悪化した場合、いかなる所見も基礎的事象または有害事象として報告された。ふくらはぎの筋肉の微小血管機能を評価するために使用される方法(酸素化の代用)には、反応性充血の前、間および後の動的MRI検査のT2*測定が含まれる(参考文献4)。65人の患者がプラセボ群に32人、試験物質群に33人に無作為に割り付けられ、そして59人の患者が研究を完了した(2つの群でそれぞれ28人と31人)。MRI検査をスクリーニング後、1日目の前に実施する必要があったため、1日目のFPGではなく6.5%以上9.0%以下のHbA1cを選択基準として使用した。その後、ベースラインで広範囲のFPG値が<7および>13.3mmol/l(<126~>240mg/dl)の両方で観察され(13.3mmol/l(240mg/dl)は、制御不能な高血糖を表す)1日目でFPGが7mMを超え13.3mM未満の2型糖尿病患者における1日目と比較した28日目のFPGの変化の事後の統計分析を必要とした。
【0144】
結果
試験物質は、メトホルミン投与の2型糖尿病患者の血糖恒常性を改善する。
前臨床の動物種における試験物質の有益な代謝および心臓血管効果に基づいて、試験物質が臨床開発のために選択され、ラットおよびイヌにおける毒物学的研究および第I相安全性臨床試験が無事に終了した。したがって、メトホルミンで安定している65人の2型糖尿病(T2D)患者を対象に、TELLUSと呼ばれる28日間の概念実証第IIa相臨床試験が実施された。安全性とは別に、FPG、インスリン、血圧をモニターし、ふくらはぎの筋肉の微小血管灌流をMRIで検査した。
【0145】
2型糖尿病患者は、TELLUS研究に含まれるために、治療開始前にMRI検査を実施して合格する必要があった。したがって、1日目のFPGではなく、スクリーニング時にHbA1cが6.5%以上および9.0%以下を選択基準として使用した。したがって、1日目にFPG範囲が>7~<13.3mmol/l(>126~<240mg/dl)の患者の事後分析を実施した。ここで、13.3mmol/l(240mg/dl)は制御不能な高血糖を表す。1日目と比較した28日目のFPGの平均の絶対値の減少は、プラセボ群で-0.10mM、試験物質群で-0.60mMであった(
図10、AおよびB)。ウィルコクソンの順位和検定では、プラセボ群と比較して、試験物質群のFPGに統計的に有意な絶対的(P=0.010)および相対的(P=0.018)減少があり、混合モデルANOVA二元配置分散分析の絶対変化はP=0.049、および混合モデルANOVA一元配置分散分析の相対変化はP=0.037であった。プラセボ群ではなく、試験物質群内のウィルコクソン検定では、1日目と比較して28日目でFPGの有意な絶対的(P=0.0002)(
図10A)および相対的(P=0.0003)減少があった。DIOマウスでは、試験物質+メトホルミンによる2週間の治療後に空腹時血糖の有意な低下が観察され、治療期間と共に有効性が増加する(
図2G)。したがって、2型糖尿病患者のFPGに対する試験物質の効果は、観察するのに少なくとも2週間かかる可能性がある。上記の通り、試験物質群内のFPGの有意な減少は、21日目から28日目までの間に発生し(
図10B)、これはDIOマウスの対応する14日間の時間枠と一致している(
図2G)。さらに、試験物質の血漿t1/2が長いため、2型糖尿病患者では14日目まで血漿定常状態濃度に到達しない。特に、プラセボ群ではなく、試験物質群内のウィルコクソン検定では、1日目と比較して28日目にHOMA-IRの統計的に有意な絶対的(P=0.0097)および相対的(P=0.017)両方の減少が観察された(
図10C)。したがって、試験物質は、メトホルミンの投与を受ける2型糖尿病患者の血糖恒常性を改善した。
【0146】
試験物質は、メトホルミンを投与される2型糖尿病患者のふくらはぎの筋肉における末梢微小血管灌流を増加させる。
2型糖尿病は重度の微小血管合併症に関連し、試験物質はマウスの末梢微小血管灌流を増加させたので、TELLUS研究において充血性微小血管灌流がMRIおよび動的T2*定量化(局所磁場不均一性によって引き起こされる横緩和の時定数)により、2型糖尿病患者のふくらはぎの筋肉においてスクリーニング時および27~29日目にモニターされた。得られたT2*値の時間グラフを個別に分析し、自動カーブフィッティングにより一連のパラメータを抽出した。文献と比較して予想したとおり、TELLUS試験の患者の末梢循環状態は、ベースラインでは全体として低下しておらず、強力な介入効果の徴候は期待できなかった。それにもかかわらず、二元配置分散分析でベースラインと比較した28日目では、プラセボ群と比較して試験物質群でΔ-T2*(P=0.026)に統計的に有意な増加があり、これは最小虚血値とピーク充血値との差として明確化され、充血性灌流の増加を示した。さらに、ウィルコクソン検定では、ベースラインと比較して、28日目のプラセボ群ではなく試験物質群の充血性灌流の増加率として定義されるT2*勾配の有意な相対的増加があった(P=0.012)。ただし、末梢循環が比較的低下している被験者では、ピークの画定が不十分であり、反応性充血に従うピーク特性を正しく特定することが困難であった。したがって、事後分析では、画像ノイズと信号ドリフトが多くの被験者にわたって平均化され、有意差検定がノンパラメトリックリサンプリング手法である順列検定によって実行されたため、代替として群レベルでカーブフィッティングが実行された。これらの条件下で、プラセボ群と比較して、試験物質群のベースラインと比較して、28日目にΔ-T2*(P=0.037)およびT2*勾配(P=0.024)の両方に有意な増加があった。したがって、試験物質は、ベースラインと比較して、28日目のT2*勾配およびΔ-T2*の変化によって評価されるように、メトホルミンを投与される2型糖尿病患者のふくらはぎの筋肉における微小血管灌流を増加させることが見出された(表4)。
【0147】
【0148】
最後に、治療に反応したのがベースラインでの灌流が比較的低い被験者であるかどうかを解明するために、ベースラインでのピークまでの時間(TTP)に基づいて、試験物質群とプラセボ群を半分に分割した。短いTTPおよび長いTTPは、それぞれ充血性灌流の速度が比較的高い場合と低い場合を表す。次に、ベースライン時のMRI(MRI1)と治療終了時のMRI(MRI2)と比較して、順列分析で調査した。この層別分析から、試験物質群のベースラインでの灌流速度が比較的低い(長いTTP)被験者で、TTPの有意な短縮(P=0.043)とΔ-T2*の増加(P=0.034)が観察された。しかし、TTPが短い被験者では観察されず、プラセボ群のベースラインでTTPが短い被験者と長い被験者のどちらにも違いはなかった(
図10D)。したがって、試験物質は、ベースラインでの灌流速度が比較的低い2型糖尿病患者のふくらはぎの筋肉における充血性微小血管灌流を優先的に増加させる。
【0149】
試験物質は、メトホルミンの投与を受ける2型糖尿病患者の血圧を下げる。
微小循環は末梢血管抵抗を調節し、心拍出量と組み合わせて動脈血圧を決定する。AICARは自然発症高血圧ラットの血圧を急激に低下させ、この試験物質は犬の血圧を急激に低下させた(
図9、EおよびF)。上記のとおり、収縮期血圧(-5.8mmHg)および拡張期血圧(-3.8mmHg)の平均の絶対値の低下が、試験物質群の1日目と比較して28日目に観察されたが、他方、プラセボ群では、それぞれ、+1.2mmHgおよび+0.9mmHgのわずかな上昇が観察された。プラセボ群ではなく試験物質群内でのウィルコクソン検定では、収縮期血圧(P=0.030)および拡張期血圧(P=0.009)の両方で統計的に有意な絶対的低下があり、収縮期血圧(P=0.036)および拡張期血圧(P=0.014)の相対的低下(
図10E)があった。一元配置分散分析では、プラセボ群と比較して、試験物質群で収縮期血圧(P=0.047)および拡張期血圧(P=0.044)に統計的に有意な相対的低下が見られた。ベースラインと比較して、28日目にどちらの群でも平均心拍数に有意な変化は観察されなかった:プラセボ、-0.48;試験物質、-1.6bpm。したがって、試験物質は、2型糖尿病患者の収縮期血圧と拡張期血圧を低下させる。したがって、空腹時血糖値(FPG)、微小血管灌流、および血圧に対する試験物質の効果は、動物から2型糖尿病患者に援用される。
【0150】
まとめ
上記のとおり、メトホルミンで治療を受ける2型糖尿病患者を対象とした28日間の概念実証第IIa相臨床試験では、試験物質は空腹時血糖値(FPG)とインスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)を低下させ、また、それは十分に許容できるものであった。試験物質は、2型糖尿病患者の末梢微小血管灌流を改善し、血圧を低下させた。したがって、動物における主要な代謝および血管への効果は、2型糖尿病患者に援用された。
【0151】
参考文献
1.Ahren B, Simonsson E,Scheurink AJ, Mulder H,Myrsen U, and Sundler F.Dissociated insulinotropic sensitivity to glucose and carbachol in high-fat diet-induced insulin resistance in C57BL/6J mice.Metabolism.1997; 46(1):97-106.
2.Ly PT, Cai F, and Song W. Detection of neuritic plaques in Alzheimer’s disease mouse model.J VisExp. 201153).
3.Steneberg P, Rubins N, Bartoov-Shifman R, Walker MD, and Edlund H. The FFA receptor GPR40 links hyperinsulinemia, hepatic steatosis, and impaired glucose homeostasis in mouse.Cell Metab.2005; 1(4):245-58.
4.Jacobi B, Bongartz G, Partovi S, Schulte AC, Aschwanden M, Lumsden AB, Davies MG, Loebe M, Noon GP, Karimi S, et al.Skeletal muscle BOLD MRI: from underlying physiological concepts to its usefulness in clinical conditions.J Magn Reson Imaging.2012; 35(6):1253-65.
【0152】
実施例3-AMPK活性化因子+SGLT2阻害剤
試験化合物
この研究で使用された試験物質は次のとおりである。
(A)4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(本明細書では「化合物1」と呼ぶ)(Anthem Biosciences Pvt.Ltd.(バンガロール、インド)によって合成および精製された。)、および
(B)カナグリフロジン。
【0153】
動物と管理
8週齢の雄のC57BL/6Jマウスは、Jackson, Charles River Laboratories 社(ドイツ)から購入した。すべての動物は、12:12時間の明暗サイクル(午前6時に点灯)および21℃の一定温度で、the Umea Universityの動物施設(Umea Centre for Comparative Biology; UCCB)に飼育された。動物には固有の識別番号が耳に付けられ、5匹のマウスのグループは、科学的手順で使用される動物の飼育および世話に関する実施基準の要件を遵守する透明なポリカーボネートケージで飼育された。敷料には木材チップを使用し、環境を充実させた。動物は、研究の開始前に、15週間新しい環境に順応させた。動物は、収容および研究期間中、水道水への自由なアクセスを許された。順応期間中、動物は標準的なペレット飼料(CRM(E)Rodent、Special Diets Services、Scanbur BK、Sweden)を与えられた。研究の開始時に、標準的な食餌は非常に高脂肪の食餌(vHFD; Cat.No.D12492、Research Diets,Inc.)に変えられ、およびこの食餌は研究期間全体を通して維持された。すべての手順は、ウメオ地域のthe Local Ethics Review Committee on Animal Experimentsによって承認された。
【0154】
生化学的分析のための試薬と材料
超高感度マウスインスリンELISAキット(カタログ番号No.90080、Crystal Chem.)、OneTouch(登録商標)Ultra(登録商標)テストストリップ(LifeScan,Inc.)、OneTouch(登録商標)Ultra(登録商標)2血糖値計(LifeScan,Inc)、Microvette(登録商標)CB300カリウム-EDTAバイアル(カタログ番号16.444、Sarstedt)。
【0155】
実験のセットアップ:
23週齢の雄C57BL/6JマウスにHFDを与えて、食餌誘発性肥満(DIO)を促進し、以下を1日1回強制経口投与した。ビヒクル(リン酸緩衝液pH7.3、2%w/vメチルセルロース;n=11)、カナグリフロジン10mg/kg(n=14)、75mg/kgの化合物1(n=14)、ならびにカナグリフロジン10mg/kgおよびda75mg/kgの化合物1の組み合わせ(n=15)。治療の2週間後、空腹時(6時間)の血糖値と血漿インスリンレベル(尾静脈の血液サンプルで測定)を分析した。研究を通して、食物摂取量と体重をモニターした。
【0156】
生化学的分析
尾静脈から血液サンプルをカリウム-EDTAバイアルに収集し、血漿を遠心分離によって分離し、分析するまで-20℃で保存した。血漿インスリンは、マウスインスリンELISA(超高感度マウスインスリンELISAキット)で測定された。OneTouch(登録商標)Ultra(登録商標)2血糖値計(LifeScan,Inc)を使用して、尾静脈血中のグルコース濃度を分析した。
【0157】
データ分析
図に示されている結果は、平均±群あたりの動物数の平均の標準誤差(SEM)として表されている。対照群と3つの治療群の間の統計的有意性は、スチューデントのt検定によって分析され、P<0.05が統計的に有意であると見なされた。
【0158】
結果
結果を
図11に示す。化合物1とSGLT2阻害剤の組み合わせにより、空腹時血糖、空腹時血漿インスリン、およびHOMA-IRの結果が統計的に有意に(***)減少した。化合物1のみで、空腹時血漿インスリンおよびHOMA-IR結果に統計的に有意な(***)減少を示した。SGLT2阻害剤は、空腹時血糖、空腹時血漿インスリン、およびHOMA-IRの結果をより少ない程度で低下させた。
【0159】
結論
SGLT2阻害剤は、腎機能障害のある2型糖尿病患者では抗血糖効果を示さないため、この群の患者では禁忌である。しかし、化合物1とカナグリフロジンの組み合わせは、食事誘発性肥満マウスの高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性を強力かつ相乗的に低下させることがわかっており(
図11)、これら2つのクラスの化合物の組み合わせが、強力にグルコース恒常性を改善し、かつ2型糖尿病患者の糖尿病性腎疾患を予防する両方の可能性があることを示している。重度のインスリン抵抗性糖尿病(肥満(BMI約35)、インスリン抵抗性、高インスリン血症)を患う2型糖尿病患者のサブグループは、糖尿病性腎疾患を発症するリスクが5倍高く、現在有効な治療が不足している。これらの患者は、特に、式Iの化合物とSGLT2阻害剤とのそのような併用療法から利益を得る可能性がある。
【配列表】