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特許7432602分散型および非集中型のDERシステムの最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】分散型および非集中型のDERシステムの最適化
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240208BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021531875
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019064332
(87)【国際公開番号】W WO2020117872
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】62/774,425
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521241133
【氏名又は名称】ヘイラ テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】Heila Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】444 Somerville Avenue, Somerville, MA 02143, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ エリソンド マルティネス
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514850(JP,A)
【文献】特表2014-505457(JP,A)
【文献】特開2005-130550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0103468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型エネルギリソース統合システム(「DERシステム」)を最適化する方法であって、
前記DERシステムが、各々が前記分散型エネルギリソースである複数の資産を含み、
前記複数の資産の各々が資産マネージャを有し、
当該方法は、
前記資産マネージャが、前記DERシステムのための電力目標を、集中型のエージェントおよび/または資産マネージャから受信するステップと
前記複数の資産のための共通結合点において、前記電力目標に関連する物理的パラメータを測定するステップと、
1つまたは複数の資産マネージャを権限者として設定するステップであって、前記権限者は、測定された前記物理的パラメータと前記電力目標との関数として、前記複数の資産間で電力および/またはエネルギを取引するための仮想価格を計算するように構成されている、ステップと、
前記仮想価格を前記資産マネージャのうちの1つまたは複数に転送するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
第1の時間に第1の資産マネージャを前記権限者として設定するステップと、
第2の時間に第2の資産マネージャを前記権限者として設定するステップと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の資産マネージャおよび前記第2の資産マネージャは、ランダムに選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の資産マネージャおよび前記第2の資産マネージャは、所定の順序に基づいて前記権限者として選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記権限者は、前記価格を他の資産マネージャにブロードキャストすることによって前記価格を転送する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記価格は、前記DERシステムを前記コスト関数によって定義された最適な動作点に実質的に維持する、種々の資産間でのエネルギ取引を表す、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記仮想価格に基づいて、前記資産マネージャのうちの1つまたは複数の各々において電力および/またはエネルギを取引するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
全ての電力取引および/またはエネルギ取引の結果が経済的交換に変換される決済ステップを実行するステップをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記複数の資産マネージャからのそれぞれの資産マネージャが、前記価格を計算して、計算された前記価格を、前記複数の資産マネージャのうちの他の資産マネージャにブロードキャストする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
システムレベルの価格は、ブロードキャストされた予備価格の関数である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記権限者が、前記仮想価格を計算するステップと、
前記仮想価格を他の資産マネージャに送信するステップと、
前記他の資産マネージャが、前記権限者に入札によって返答するステップと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
それぞれの資産マネージャは、複数の資産マネージャの各々との入札ペアを有し、
前記ペアは、
(i)各自自身の資産が別の資産にどれだけ供給する用意があるかの入札、および
(ii)別の資産が何を供給し返す用意があるかの入札
を含み、
当該方法は、入札ペアをピアツーピア取引のリストに変換するステップをさらに含み、ステップ前記入札間の差が実際の取引となる、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
パブリックのブロックチェーン台帳を作成するステップと、
前記台帳を使用して、前記システムの種々の資産間での電力取引またはエネルギ取引のリストを追跡し続けるステップと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記共通結合点は、仮想的な共通結合点である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
分散型エネルギリソースシステム(「DERシステム」)の内部での電力の分配を制御するように構成された資産マネージャであって、
前記DERシステムは、各々が前記分散型エネルギリソースである複数の資産を有し、
前記資産マネージャは、前記DERシステム内の所与の資産と共に動作するように構成されており、
前記資産マネージャは、インターフェースを含み、
前記インターフェースは、
前記DERシステム内の少なくとも1つの(a)他の資産マネージャ、(b)メータ、および/または(c)中央制御装置と通信するように、かつ
(a)集中型のエージェントおよび/または資産マネージャから受信したシステムレベルの目標、(b)メータ情報、および(c)当該資産マネージャが権限者として選択されているとの指示に関連する情報を受信する
ように構成されており、
前記資産マネージャは、価格計算エンジンを含み、前記価格計算エンジンは、当該資産マネージャが権限者として選択されているという指示を当該資産マネージャが受信した場合に、前記システムレベルの目標と前記メータ情報との関数として、前記複数の資産間で電力および/またはエネルギを取引するための価格を計算するように構成されており、
前記インターフェースはさらに、前記価格を1つまたは複数の資産マネージャに転送するように構成されている、
資産マネージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、2018年12月3日に出願された“Decentralized Virtual Market Optimization”と題され、発明者としてJorge Elizondo Martinezを挙げている仮米国特許出願番号第62/774,425号明細書による優先権を主張し、その開示内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0002】
発明の分野
例示的な実施形態は、全体的には、電力分配ネットワークに関するものであり、より具体的には、専用の中央制御装置の必要性を排除することによって電力ネットワークをよりロバストにすることに関する。
【0003】
発明の背景
電気グリッドは、家庭、企業、その他の建物を中央の電源に接続する。この相互接続性は、集中型の管理および計画を必要とし、この場合には、グリッドの脆弱性がネットワーク全体にわたって迅速に波及してしまう可能性がある。こうした危険性を軽減するために、マイクログリッドのような分散型エネルギリソース(distributed energy resource)統合システム(「DERシステム」)が一般的なソリューションになりつつある。マイクログリッドは、発電機および蓄電装置の統制されたクラスタを含むと共に、ユーティリティの需要に対して調整された応答を提供し、かつメイングリッドから切り離された状態でも動作することができる負荷を含む。これにより、電力システムの効率および信頼性が向上する。
【0004】
米国エネルギ省は、マイクログリッドの正式な定義を、グリッドに対する単一の制御可能なエンティティとして機能する、明確に定義された電気的境界を有する、負荷と分散型エネルギリソースとが含まれた、相互に接続された資産のグループとして定めている。マイクログリッドは、多くの場合、分散型の電源(例えば、ディーゼル発電機、ガスタービン等)と、バッテリと、ソーラーパネルまたは風力タービンのような再生可能なリソースとを有する。
【0005】
種々の実施の概要
本発明の一実施形態によれば、本方法は、分散型エネルギリソース統合システムを最適化する。本方法は、複数の資産を含むDERシステムのための電力目標を受信する。複数の資産の各々が資産マネージャを有する。複数の資産のための共通結合点において、電力目標に関連する物理的パラメータが測定される。本方法は、1つまたは複数の資産マネージャを権限者として選択する。権限者は、測定された物理的パラメータと電力目標との関数として仮想価格を計算するように構成されている。仮想価格は、資産マネージャのうちの1つまたは複数に転送される。
【0006】
目標は、目標設定者によって設定される。目標設定者は、集中型のエージェントおよび/または資産マネージャであり得る。例えば、集中型のエージェントは、ユーティリティおよび/または操作員であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の目標を、(例えば、単一の目標設定者の必要性を排除するために)資産マネージャにプログラミングすることができる。いくつかの実施形態では、DERシステムの1つまたは複数の特定の点に配置された1つまたは複数の独立したデバイスを、電力目標に関連する物理的パラメータを測定するためのメータとして使用することができる。例えば、資産マネージャをメータとして使用することができる。別の例として、電圧計および/または電流計をメータとして使用することができる。メータは、共通結合点において測定を行うことができる。これに加えてまたはこれに代えて、メータは、2つ以上の共通結合点において測定を行ってもよい。複数の測定値を使用して、1つの仮想的な共通結合点での測定値を決定することができる。メータは、パラメータの測定値を1つまたは複数の資産マネージャにブロードキャストすることができる。
【0007】
本方法は、第1の時間に第1の資産マネージャを権限者として選択し、第2の時間に第2の資産マネージャを権限者として選択する。いくつかの実施形態では、第1の資産マネージャおよび第2の資産マネージャは、ランダムに選択される。他のいくつかの実施形態では、第1の資産マネージャおよび第2の資産マネージャは、所定の順序に基づいて権限者として選択される。権限者は、価格を他の資産マネージャにブロードキャストすることによって価格を転送する。
【0008】
価格は、DERシステムをコスト関数によって定義された最適な動作点に実質的に維持する、種々の資産間でのエネルギ取引を表す。したがって、本方法は、仮想価格に基づいて、資産マネージャのうちの1つまたは複数の各々において電力および/またはエネルギを取引することができる。電力および/またはエネルギが取引された後、決済ステップを実行することができる。決済ステップ中に、全ての電力取引および/またはエネルギ取引の結果が経済的交換に変換される。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の資産マネージャからのそれぞれの資産マネージャが、価格を計算して、計算された価格を、複数の資産マネージャのうちの他の資産マネージャにブロードキャストする。システムレベルの価格は、計算されてブロードキャストされた予備価格の関数であり得る。例えば、システムレベルの価格は、計算されてブロードキャストされた価格の平均値または中央値であり得る。いくつかの実施形態では、資産マネージャ16の各々は、他の資産マネージャ16から予備価格を受信した後、システムレベルの価格を計算することができる。これに代えて、資産マネージャ16のうちの1つが、他の資産マネージャ16から予備価格を受信した後、システムレベルの価格を計算し、次いで、このシステムレベルの価格をブロードキャストしてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、権限者が、仮想価格を計算して、仮想価格を他の資産マネージャに送信する。その返信として、他の資産マネージャが、権限者に入札によって返答する。それぞれの資産マネージャは、複数の資産マネージャの各々との入札ペアを有する。それぞれの資産マネージャのための入札ペアは、(i)各自自身の資産が別の資産にどれだけ供給する用意があるかの入札、および(ii)別の資産が何を供給し返す用意があるかの入札を含む。入札ペアをピアツーピア取引のリストに変換することができ、ここで、入札間の差が実際の取引となる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、パブリックのブロックチェーン台帳を作成する。台帳を使用して、システムの種々の資産間での電力取引またはエネルギ取引のリストを追跡し続けることができる。前のブロックからのハッシュと、電力取引またはエネルギ取引のリストと、nonceを使用するプルーフ・オブ・ワークと、上記の全ての要素のハッシュとを含むブロックを作成することができる。
【0012】
別の実施形態によれば、分散型エネルギリソース統合システムを最適化する方法は、外部条件および/または内部条件に基づいて、DERシステムの目標を設定する。本方法は、DERシステムの目標に影響を与えるパラメータを監視する。1つまたは複数の資産マネージャは、DERシステムの目標と、監視されているパラメータとを受信する。本方法は、システムを当該システムの目標に即した動作点に維持するために、1つまたは複数の資産マネージャを使用して、種々の資産間でのエネルギ取引を決定する。
【0013】
本方法はまた、決定されたエネルギ取引を処理する。次いで、それぞれの資産が生成したドル収入を計算することによって取引を決済することができる。設定、監視、受信、決定、および取引のステップが1つのサイクルを定義することができる。本方法は、サイクルを繰り返すことができる。
【0014】
取引ステップ中に、資産マネージャを選択して、価格を計算することができる。資産マネージャは、価格を計算して、それを他の全ての資産マネージャにブロードキャストする。全ての資産マネージャは、各々のそれぞれの資産にディスパッチするために価格を使用する。いくつかの実施形態では、資産マネージャは、現在選択されている資産マネージャが「トークン」を次の資産マネージャに送信するように、事前に編集されたリストから価格を計算することができる。他のいくつかの実施形態では、資産マネージャは、価格を計算するためにランダムに選択される。これに加えてまたはこれに代えて、一部または全ての資産マネージャが交代で、各自自身が計算した価格をシステム内の他の全ての資産マネージャにブロードキャストしてもよい。次いで、本方法は、ブロードキャストされた全ての価格の関数として最適化価格を決定する。
【0015】
取引ステップ中に、資産マネージャは、価格を計算して、他の全ての資産マネージャに送信することができる。他の資産マネージャは、入札によって返答し、これらの入札が記録される。このプロセスを、全ての資産マネージャによって繰り返すことができ、したがって、プロセスの終了までに全ての資産マネージャは、他の全ての資産マネージャとの入札のペアを有することとなる。それぞれの資産マネージャのためのそれぞれの入札ペアは、(i)各自自身の資産が別の資産にどれだけ供給する用意があるかの入札、および(ii)別の資産が何を供給し返す用意があるかの入札を含む。この情報をピアツーピア取引のリストに変換することができ、ここで、入札間の差が実際の取引となる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、パブリックのブロックチェーン台帳を作成する。台帳を使用して、システムの種々の資産間での一連の電力取引またはエネルギ取引を追跡することができる。全ての資産マネージャは、価格および入札のペアを計算して、それを他の全ての資産マネージャにブロードキャストすることができる。全ての価格および入札のペアが受信された後、それぞれの資産マネージャは、全ての価格および入札のペアを、システム内の各自自身のパフォーマンスを最大化する取引の集合に変換することができる。即座にディスパッチする代わりに、それぞれの資産マネージャは、各自自身が計算した取引をブロードキャストすることができる。全ての取引の安全な記録を残すためのブロックを構築することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、決済ステップ中に、全ての取引の結果が実際の経済的交換に変換される。目標設定者によって定義された目標を達成することの経済的交換は、システム内のエージェント間で分配可能である。目標を達成することの利益は、システム内のアクティブな資産間で分配可能であり、各自の利益は、これらの資産が取引中に累積した仮想通貨利益に関連付けられる。いくつかの実施形態では、受信、測定、設定、および転送が1つのサイクルを定義する。いくつかの実施形態では、本方法は、約0.01Hz~約10Hzの間のレートでサイクルを繰り返すことができる。
【0018】
別の実施形態によれば、資産マネージャは、DERシステムの内部での電力の分配を制御するように構成されている。DERシステムは、複数の資産を有する。資産マネージャは、DERシステム内の所与の資産と共に動作するように構成されている。資産マネージャは、インターフェースを含み、インターフェースは、DERシステム内の少なくとも1つの(a)他の資産マネージャ、(b)メータ、および/または(c)中央制御装置と通信するように構成されている。資産マネージャは、(a)システムレベルの目標、(b)メータ情報、および(c)当該資産マネージャが権限者として選択されているとの指示に関連する情報を受信する。資産マネージャは、価格計算エンジンを含み、価格計算エンジンは、当該資産マネージャが権限者として選択されているという指示を当該資産マネージャが受信した場合に、価格を計算するように構成されている。価格は、システムレベルの目標とメータ情報との関数として計算される。
【0019】
インターフェースはさらに、価格を1つまたは複数の資産マネージャに転送するように構成されている。いくつかの実施形態では、資産マネージャは、データを独立して要求する。他のいくつかの実施形態では、資産マネージャは、データを受動的に受信する。
【0020】
本発明の例示的な実施形態は、コンピュータ可読プログラムコードが格納されたコンピュータ使用可能媒体を有するコンピュータプログラム製品として実装されている。コンピュータ可読コードは、従来のプロセスに従ってコンピュータシステムによって読み取り可能であり、かつ利用可能である。
【0021】
図面の簡単な説明
当業者は、すぐ下に要約されている図面を参照して論じられる以下の「例示的な実施形態の説明」から、本発明の種々の実施形態の利点をより完全に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の例示的な実施形態による、システム全体の目標を達成するために複数の資産の動作を最適化するために使用される資産マネージャを含む、DERシステムを概略的に示す図である。
図1B】本発明の例示的な実施形態による、2つの独立したDERシステムのための仮想的な共通結合点を概略的に示す図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に従って構成された資産マネージャを概略的に示す図である。
図3A】本発明の例示的な実施形態による、DERシステムを最適化するために使用することができる複数の異なるアプローチの例を概略的に示す図である。
図3B】本発明の例示的な実施形態による、DERシステムを最適化するために使用することができる複数の異なるアプローチの例を概略的に示す図である。
図3C】本発明の例示的な実施形態による、DERシステムを最適化するために使用することができる複数の異なるアプローチの例を概略的に示す図である。
図4】本発明の例示的な実施形態による、分散された資産マネージャを使用してDERシステムを最適化するプロセスを概略的に示す図である。
図5】本発明の例示的な実施形態による、1つまたは複数の資産マネージャに情報を送信する目標設定者およびメータを概略的に示す図である。
図6】本発明の例示的な実施形態による、価格を決定するためのローテーションスキームを概略的に示す図である。
図7】本発明の例示的な実施形態による、価格を決定するための価格合意スキームを概略的に示す図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による、価格を決定するための取引合意スキームを概略的に示す図である。
図9A】本発明の例示的な実施形態による、権限者を選択して、価格を決定するブロックスキームを概略的に示す図である。
図9B】本発明の例示的な実施形態による、最適化プロセスにおいて使用されるブロックチェーン台帳を概略的に示す図である。
図10】本発明の例示的な実施形態による、非集中型のアプローチを使用してDERシステムを最適化する周期的なプロセスを示す図である。
【0023】
例示的な実施形態の説明
例示的な実施形態では、-マイクログリッド、マイクログリッドのグループ、および/または比較的大規模なグリッドのような-分散型エネルギリソース統合システム(「DERシステム」)のための制御システムは、システム内の資産が電力出力を増加させるべきであるか、または電力出力を減少させるべきであるかを指図する価格を計算する。価格は、専用の中央制御装置を使用することなく計算される。これに代えて、例示的な実施形態は、価格を計算するために分散された資産マネージャのうちの1つまたは複数を使用する。例示的な実施形態は、分散された資産マネージャのうちのどの1つまたは複数の資産マネージャが価格を計算するのかを決定するためのいくつかの技術も提供する。いくつかの実施形態では、価格を計算する資産マネージャがサイクルごとに変化する。いくつかの実施形態では、複数の資産マネージャが同時に価格を計算する。例示的な実施形態の詳細を、以下に論じる。
【0024】
図1Aは、本発明の例示的な実施形態による、システム全体の目標を達成するために複数の資産14の動作を最適化するために使用される資産マネージャ16を含む、DERシステム100を概略的に示す図である。とりわけ、資産14は、有効電力および無効電力を電力ネットワークと交換するDERまたは負荷であり得る。伝統的に、DERおよび負荷15の両方を資産と見なしているが、本願の目的のために負荷15が別個に論じられる。いくつかの実施形態では、資産14のうちの少なくとも1つを資産マネージャ16によって制御することができる(図2との関連においてさらに詳細に説明する)。さらに、複数の資産14を単一の資産マネージャ16によって制御することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の資産14および/または負荷15を資産マネージャ16と結合しなくてもよい。
【0025】
多くのDERシステムと同様に、システム100は、共通結合点12を有し、この共通結合点12を介してシステム100からの電力がユーティリティ5のような外部ネットワークへと通過する。「共通結合点12」という用語は、ある特定の点として図示および説明されているが、ユーティリティ5からこの識別された点まで延びている電力ネットワーク部分に沿った任意の点(例えば、電力ネットワークが種々の資産14へと分岐する前の任意の部分)が、共通結合点12の一部であると見なされることを理解すべきである。さらに、例示的な実施形態は、(例えば、2つ以上の共通結合点12から計算される)仮想的な共通結合点を含むことが意図されている。
【0026】
図1Bは、本発明の例示的な実施形態による、2つの独立したDERシステム100Aおよび100Bのための仮想的な共通結合点を概略的に示す。仮想的な共通結合点は、2つ以上の独立したDER統合システム100Aおよび100Bの共通結合点12(例えば、12Aおよび12B)からのメータ情報を組み合わせることによって形成される。例えば、仮想的な共通結合点での有効電力は、共通結合点12Aでのメータ1によって測定された有効電力と、共通結合点12Bでのメータ2によって測定された有効電力との合計である。したがって、共通結合点12に関するあらゆる考察は、文脈上別段の解釈が必要でない限り、仮想的な共通結合点にも適用される。
【0027】
図2は、本発明の例示的な実施形態に従って構成された図1の資産マネージャ16のうちの1つを概略的に示す。図2の資産マネージャ16は、図示のように複数のコンポーネントを有し、これらのコンポーネントは、資産マネージャ16の機能のいくつかを一緒に実行する。これらのコンポーネントの各々は、任意の従来の相互接続メカニズムを介して動作可能に接続されている。図2は、コンポーネントの各々と通信するバスを簡略的に示す。当業者は、この一般化された表現を、その他の従来の直接的または間接的な接続を含むように修正してもよいことを理解すべきである。したがって、バスの考察は、種々の実施形態を制限することを意図したものではない。
【0028】
実際に、図2は、これらのコンポーネントの各々を概略的に示すに過ぎないことに留意すべきである。当業者は、これらのコンポーネントの各々が、1つまたは複数の他の機能コンポーネントにわたってハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用するなどにより、種々の従来の手法で実装可能であることを理解すべきである。例えば、制御装置は、ファームウェアを実行する複数のマイクロプロセッサを使用して実装可能である。別の例として、制御装置は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(すなわち、「ASIC」)および関連するソフトウェアを使用して、またはASICと、ディスクリート電子部品(例えば、トランジスタ)と、マイクロプロセッサとの組み合わせを使用して実装可能である。したがって、図2の単一のボックス内の制御装置およびその他のコンポーネントの表現は、簡略化のみを目的としたものである。実際に、いくつかの実施形態では、図2の制御装置は、-必ずしも同じハウジングまたはシャーシの内部になくてもよく-複数の異なるマシンにわたって分散されている。
【0029】
資産マネージャ16は、制御装置を含み、制御装置は、とりわけ、資産マネージャ16の資産14の動作を管理するためのローカルコスト関数を使用して、動作点を決定するように構成されている。例えば、資産14の動作点は、この資産14がシステム100に注入している有効電力と無効電力との組み合わせであり得る。動作点は、温度、蓄積エネルギ、電圧等のような、資産14の全ての内部状態を含むこともできる。
【0030】
資産マネージャ16は、他の資産14および/または他のデバイスと通信するためのインターフェース18も含む。例えば、インターフェース18は、他の資産マネージャ16と通信する(例えば、以下で論じられる価格計算エンジン20によって計算された価格を送信および/または受信する)ように構成されている。さらに、インターフェース18は、システム全体の目標を受信するように構成されている。例示的な実施形態では、システム全体の目標は、ユーティリティ5に一定量の有効電力および/または無効電力を供給するようにシステム100に指示することができる(例えば、DERシステム100内の全ての資産14の総出力電力を10kWとすることが求められる)。したがって、システム全体の目標に準拠しているかどうかは、共通結合点12における電力を測定することによって追跡可能である。
【0031】
資産マネージャ16は、他の資産マネージャ16に送信される価格を計算する価格計算エンジン20も含む。明確にするために、本発明のいくつかの実施形態では、「価格」または「価格信号」は、調整されたDERシステム100内で生成される信号であり、この信号は、エネルギの需要が供給よりも多い場合には値が増加し、エネルギの供給が需要よりも多い場合には減少する。例えば、電力需要は、負荷15および/またはユーティリティ5に由来し得る。さらに、供給は、資産14および/またはユーティリティ5に由来し得る。供給は、無効電力およびシステム損失のような他の変数にも依存し得る。いくつかの実施形態では、価格は、以下のコスト関数:
【数1】
を使用して計算可能である。
【0032】
ここで、
【数2】
は、時間“k”での価格ベクトル(またはスカラー)であり、gは、価格計算関数であり、youtは、追跡されている出力変数の値であり、yspは、そのような変数に対する設定値である。
【0033】
同様に、本発明のいくつかの実施形態では、「応答」は、DER資産14の変数のうちの1つまたは複数の変数のコスト関数を電力に関して最小化することによって得られる、DER資産14の有効電力および無効電力の出力の解答である。いくつかの例示的な実施形態では、コスト関数は、以下の形式:
【数3】
をとることができる。
【0034】
ここで、
【数4】
は、計算された最適な出力電力ベクトルであり、Jは、コスト関数であり、Pは、本発明によって最適化される出力電力変数であり、pは、上述した価格信号であり、xは、資産または複数の資産状態および重要な変数のベクトルであり、Θは、パフォーマンスに影響を与える外部変数のベクトルである。
【0035】
コスト関数および価格に関する追加的な考察は、米国特許出願番号第16/054,377号明細書および第16/683,148号明細書に記載されており、これら両方の内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0036】
資産マネージャ16は、資産14のデータを保存するためのメモリ22と、ローカルコスト関数を生成するように構成された関数生成器と、ディーゼル発電機、ガスタービン、バッテリ、ソーラーパネル、風力タービン、負荷等のような任意の資産の挙動をエミュレートするために使用される資産モデルとを含むこともできる。インターフェース18は、それぞれの資産14に専有であってよいプロトコルを使用して資産14と通信してもよいが、好ましくは、DERシステム100においてよく見られる通信プロトコルを使用して、DERシステム100の内側および外側の中央制御装置および/または他の資産マネージャ16および/または他のエージェントと通信する。これらのコンポーネントの各々と、他のコンポーネントとが連携して、論じられている種々の機能を実行する。
【0037】
図2の表現は、実際の資産マネージャ16を大幅に簡略化した表現であることを繰り返し述べておく。当業者は、そのようなデバイスが、中央処理装置、通信モジュール、プロトコルトランスレータ、センサ、メータ等のような、多数の他の物理的および機能的なコンポーネントを有し得ることを理解すべきである。したがって、この考察は、図2が資産マネージャ16の全ての要素を表現していることを示唆することを意図したものでは決してない。
【0038】
本明細書に記載のコンポーネントに加えて、資産マネージャ16は、米国特許出願番号第16/054,377号明細書、第16/054,967号明細書、および/または第16/683,148号明細書に記載されているように、電圧計、トポグラフィエンジン、または物性分析エンジン等のようなその他のモジュールを含むことができ、なお、上記の文献の内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0039】
図3A図3Cは、DERシステム100を最適化するための3つの異なるスキームを概略的に示す。図3Aおよび図3Bの両方において、中央制御装置25は、資産に関する価格および/または設定値を計算する。図3Aは、単一の集中型のアプローチを概略的に示し、このアプローチでは、設定点の計算などの全ての計算が中央制御装置25によって実行される。図3Bは、分散型のアプローチを概略的に示し、このアプローチでは、双対分解法またはその他の分散型の最適化アプローチの実装によって最適化が達成される。DERシステム100の場合には分散型のアプローチの方が、図3Aに示されている完全に集中型のアプローチよりもスケーラブルであり、モジュール式であり、安全であり、かつ信頼性がある。しかしながら、図3Bの分散型のアプローチは、コーディネータとして機能するため、かつ価格としても知られる二重変数の計算などのいくつかのタスクを実行するために中央エージェントに依存している。したがって、分散型のシステムでは、1つまたは複数のノードがサブノードに作業を分配する。
【0040】
本発明者は、図3Bに示されている双対分解がいくつかの欠点を有することを認識した。すなわち、
図3Bに示されている双対分解は、中央エージェント25を必要とする。
図3Bに示されている双対分解は、中央エージェント25が機能している場合にのみ機能するので、単一障害点を有する。例えば、中央制御装置25がダウンしている場合には、システム100の最適化は機能しない。さらに、中央制御装置25に障害が生じると、全ての資産に送信される価格に障害が生じる。
・全ての資産は、中央エージェント25を信頼する必要がある。例えば、全ての資産14がそれぞれ異なる住宅所有者のものであるような地区にわたってDERシステム100が存在している場合には、どの住宅所有者が権限者となるべきかを決定することは困難である。
【0041】
図3Cは、本発明の例示的な実施形態による、資産14のうちの1つまたは複数によって価格が計算されるようなシステム100を概略的に示す。専用の中央エージェント25は必要ない。したがって、本発明の種々の実施形態では、専用の中央エージェントの必要性が排除される。いくつかの実施形態では、非集中型のシステムは、(例えば、ノード/サブノードの分散型の配置を介する代わりに)他のピアと直接的に通信するノード(例えば、資産14および/または資産マネージャ16)を有する。
【0042】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、分散された資産マネージャ16を使用してDERシステム100を最適化するプロセス400を概略的に示す。この方法は、通常使用され得る比較的長いプロセスから大幅に簡略化されていることに留意すべきである。したがって、図4に示されている方法は、当業者が使用する可能性のある多数の他のステップを有することができる。さらに、いくつかのステップは、図示されている順序とは異なる順序で、または並行して実行可能である。さらに、いくつかの実施形態では、これらのステップのいくつかは、オプションであってよい。最後に、このプロセスは、単一の価格信号の計算および送信に関して論じられているが、図4のプロセスは、複数の価格信号を並行してまたは連続して計算および送信するためのプロセスを網羅するように拡張可能である。したがって、プロセス400は、本発明の例示的な実施形態による1つのプロセスの単なる例示に過ぎない。したがって、当業者は、必要に応じてプロセスを修正することができる。
【0043】
プロセスは、1つまたは複数の資産マネージャ16を、価格を計算する権限者として設定するステップ402において開始する。以下でさらに詳細に論じられるように、権限者とは、システムレベルのコスト関数を使用して価格を計算する1つまたは複数の資産マネージャである。いくつかの実施形態では、複数の資産マネージャ16がそれぞれの価格(例えば、予備価格)を計算し、これらの価格を使用してシステムレベルの価格が決定される。権限者はまた、システム100内の資産14の出力電力を制御するために、他の資産マネージャ16に価格を中継する。権限者として機能する1つまたは複数の資産マネージャ16は、他の資産マネージャ16によって信頼されている。いくつかの実施形態では、第1の時間には、第1の資産マネージャ16が権限者である。次いで、第2の時間には、第2の資産マネージャ16が権限者である。いくつかの他の実施形態では、複数の資産マネージャ16が同時に権限者になることができる。以下の図6図9Aは、システムレベルの価格を決定するための権限者として機能する1つまたは複数の資産マネージャ16の種々のスキームを概略的に示す。
【0044】
図4に戻ると、プロセス400は、DERシステム100のための目標を設定するステップ404に進む。図5は、本発明の例示的な実施形態による、1つまたは複数の資産マネージャ16に情報を送信する目標設定者30およびメータ32を概略的に示す。いくつかの実施形態では、目標設定者30は、調整されたDERシステム100がどのように挙動するかを決定するエンティティである。例えば、目標設定者30は、特定のレベルでの電力潮流の維持、周波数サポート等のようなゴールを設定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、目標設定者30は、ユーティリティ5、監視制御・データ取得(「SCADA」)システム、またはビル管理システム(「BMS」)等のような集中型のエージェントである。これに代えて、目標設定者30を、1つまたは複数の資産マネージャ16としてもよい(例えば、図2のモジュールとして)。他の実施形態では、1つまたは複数の目標を、複数の資産マネージャ16にプログラミングすることができ、これにより、単一の目標設定者30の必要性(例えば、この場合にはシステム100が、共通結合点12の電力潮流をゼロレベルに、または何らかの他の所定のレベルに維持する)が排除される。
【0046】
前述のように、目標は、システム100内の全ての資産14(負荷15を含む)からの所望の総電力出力であり得る。例示的な実施形態では、目標設定者30は、DERシステム100の目標を決定する。例えば、目標設定者30は、公益事業会社、および/または操作員として行動する人であり得る。例示的な実施形態では、目標は、システム100の外部条件および/または内部条件に基づいて設定される。外部条件は、例えば、所定の電力量をグリッド14に供給する必要があることであり得る。内部条件は、例えば、システム100内のバッテリ負荷の充電が少なすぎること、およびバッテリを充電する必要があることであり得る。目標は、資産マネージャ16のうちの1つまたは複数によって受信される。いくつかの実施形態では、資産マネージャ16は、目標に関連する情報を能動的に探索するように構成されている。いくつかの実施形態では、目標設定者30は、全ての資産マネージャ16に目標をブロードキャストすることができる。これに代えて、複数の資産マネージャ16のうちの部分集合のみに変数を転送してもよい。
【0047】
とりわけ、目標は、第1の時間中(例えば、昼間)にはシステム100の所定の電力出力を定義し、第2の時間中(例えば、夜間)にはシステム100の別の異なる所定の電力出力を定義することができる。これに加えてまたはこれに代えて、目標を、現時点での即時の電力出力としてもよい。いくつかの実施形態では、システム100の電力出力は、システム100内の全ての資産14からの電力が通過する共通結合点12において測定可能である。
【0048】
ステップ406において、プロセスは、目標に影響を与えるパラメータを測定する。例えば、図5のメータ32は、目標に影響を与えるパラメータを監視および/または測定する。メータ32は、例えば、電圧計および/または電流計であり得る。メータ32は、資産マネージャ16のうちの1つまたは複数と結合可能であり、かつ/または資産マネージャ16のうちの1つまたは複数の一部であり得る。測定されたパラメータは、資産マネージャのうちの1つまたは複数によって受信される。いくつかの実施形態では、資産マネージャ16は、メータ32によって測定されたパラメータに関連する情報を能動的に探索するように構成されている。いくつかの実施形態では、メータ32は、目標に影響を与える(例えば、測定される)変数を監視し、全ての資産マネージャ16にブロードキャストすることができる。これに代えて、複数の資産マネージャ16のうちの部分集合のみに変数を転送してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、メータ32は、システム100の現在の状態が何であるかを監視して、資産マネージャ16に通知する。この情報を、システムの目標に対する比較点として使用することができる。例示的な実施形態では、メータ32は、共通結合点12における電力潮流を測定する。いくつかの他の実施形態では、1つまたは複数のデバイスを専らメータ32として使用することができ、その一方で、他の実施形態では、1つまたは複数の資産マネージャ16をメータ32とすることができる。例えば、オフ・ザ・グリッドで動作していて、かつDERが「マスタ」または「系統形成型(grid-forming)」である場合には、資産マネージャ16をメータ32とすることができる。
【0050】
ステップ408において、資産のうちの、権限者である1つまたは複数の資産は、目標に関連する情報と、測定されたパラメータに関連する情報とを使用して、価格を計算する。例えば、資産マネージャ16は、インターフェース18を介して、関連する目標およびメータの情報を受信することができる。これらの情報は、メモリ22内に保存可能である。さらに、前述のように、価格計算エンジン20が、価格を計算することができる。ステップ410において、権限者は、この価格を他の資産マネージャ16に転送する。このことは、例えば、インターフェース18を介して実施可能である。
【0051】
図6図9Aは、ステップ408および410のように価格を計算して、計算された価格を他の資産マネージャに転送する1つまたは複数の資産マネージャ16の種々のスキームを概略的に示す。図6は、システムレベルの価格を計算する単一の資産マネージャ16を概略的に示し、その一方で、図7図9Aは、システムレベルの価格を計算するために使用される予備価格を計算する複数の資産マネージャを示す。
【0052】
図6は、本発明の例示的な実施形態による、権限者を選択して、価格を決定するためのローテーションスキームを概略的に示す。前述のように、権限者は、1つまたは複数の資産マネージャ16であり、この1つまたは複数の資産マネージャ16は、価格、および/またはシステムレベルの価格を計算するために使用される予備価格を計算し、いくつかの実施形態では、それを他の全ての資産マネージャ16にブロードキャストする。次いで、それぞれの資産マネージャ16は、各自のそれぞれの資産14にディスパッチするために価格を使用する。いくつかの実施形態では、価格を計算する資産マネージャ16は、現在選択されている資産マネージャ16が「トークン」を次の資産マネージャに送信するように(「トークンパッシング」と称される)、事前に編集されたリストから選択可能であり、その一方で、他の実施形態では、権限者である資産マネージャ16が、次の資産マネージャをランダムに選択して、その資産マネージャにトークンを送信することができる。
【0053】
図6は、価格を計算およびブロードキャストするものとして単一の資産マネージャ16のみを示しているが、いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16(例えば、資産マネージャ1,2,3,4,5,および6)が、各自のそれぞれの価格(例えば、予備価格)を計算して、それを他の資産マネージャ16に同時(例えば、時間=k)に送信することができることを理解すべきである。これに加えてまたはこれに代えて、全ての資産マネージャ16(例えば、資産マネージャ1,2,3,4,5,および6)が交代で、システムレベルの価格の計算とブロードキャストとをそれぞれ異なる時間に実施してもよい。
【0054】
図7は、本発明の例示的な実施形態による、システムレベルの価格を計算するための価格合意スキームを概略的に示す。いくつかの実施形態では、システムレベルの価格は、価格合意スキームを使用して設定される。資産マネージャ16のうちの1つまたは複数が交代で、各自自身のそれぞれの価格(予備価格とも呼ばれる)の計算と、システム100内の他の全ての資産マネージャ16へのブロードキャストとを実施する。いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16が、各自のそれぞれの価格を計算してブロードキャストする。しかしながら、いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16が、各自のそれぞれの価格を計算してブロードキャストするわけではない。全ての予備価格が累積され、最適化のために使用されるシステムレベルの価格は、ブロードキャストされた全ての予備価格の関数:
【数5】
である。
【0055】
いくつかの例示的な実施形態では、この関数は、予備価格の中央値または平均値であり得る。予備価格がブロードキャストされる順序は、前述した技術のいくつかの実施形態(例えば、権限者のローテーション)に従うことができる。さらに、図7は、予備価格を計算および送信するものとして資産マネージャ1,2,および3のみを示しているが、いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16(例えば、資産マネージャ1,2,3,4,5,および6)が、各自の予備価格を計算して送信(例えば、ブロードキャスト)してもよい。
【0056】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、システムレベルの価格を計算するための取引合意スキームを概略的に示す。権限者として選択された資産マネージャ16の各々は、予備価格(例えば、
【数6】
)を計算して、他の全ての資産マネージャ16に送信し、これらの他の全ての資産マネージャ16は、入札(例えば、
【数7】
)によって返答し、これらの入札が記録される。このプロセスを、全ての資産マネージャ16によって繰り返すことができ、したがって、終了までに全ての資産マネージャ16は、他の全ての資産マネージャ16との入札のペアを有することとなり、ここで、1つの入札(i)は、各自自身の資産14がどのくらいの有効電力および/または無効電力を別の資産14に供給する用意があるかを表し、もう1つの入札(ii)は、(例えば、それぞれの資産マネージャ16がコスト関数を使用して出力を決定する)最適化の結果として、別の資産14がどのくらいの有効電力および/または無効電力を供給し返すかを表す。この情報をピアツーピア取引のリストに編集することができ、ここで、入札間の差が実際の取引となり、これによって全ての資産マネージャ16の合意が保証される。
【0057】
図8に示されているように、時間kにおいて、資産マネージャ1および2は、各自のそれぞれの計算価格を、それぞれ他の資産マネージャ2,3,4,5,ならびに6、および資産マネージャ1,3,4,5,ならびに6に送信する。次いで、価格を受信した資産マネージャの各々は、入札によって応答する(例えば、資産マネージャ2,3,4,5,および6は、資産マネージャ1に入札を送信し、資産マネージャ1,3,4,5,および6は、資産マネージャ2に入札を送信する)。いくつかの実施形態では、最適化サイクルが完了した後(例えば、後々の時間、すなわちk+1)に、サイクルを繰り返すことができる。図8は、価格を計算および送信するものとして資産マネージャ1および2のみを示しているが、いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16(例えば、資産マネージャ1,2,3,4,5,および6)が、各自のそれぞれの価格を計算して、それを他の資産マネージャ16に送信し、これらの他の資産マネージャ16が、入札によって応答する。
【0058】
いくつかの実施形態では、時間ステップ“t”においてシステム内の全ての資産14(または少なくとも相互の取引が望まれている資産14)に対してプロセスが繰り返された後、資産“i”および“j”のそれぞれのペアが、「入札」のペアに関連付けられる:
・資産“i”が、資産“j”の価格に対する反応として資産“j”に送信することを希望している電力量:
【数8】
・資産“j”が、資産“i”の価格に対する反応として資産“i”に送信することを希望している電力量:
【数9】
【0059】
この「入札」のペアを、これら2つの資産14の間のピアツーピア取引として見なすことができ、ここで、入札間の差が実際の取引となる。例えば、資産1が資産2に合計20kWを供給することを希望していて、かつ資産2が資産1に合計5kWを供給することを希望している場合には、実際の取引は、資産1から資産2への15kWである。
【0060】
1つの例示的な実施形態によれば、時間“t”において、全ての資産に関する全てのピアツーピア取引全体が、資産“i”に対してディスパッチを与える:
【数10】
【0061】
図9Aは、システム100内の複数の異なるエージェント間での一連の電力取引またはエネルギ取引を安全な手法で追跡するためのブロックチェーン台帳スキームを概略的に示す。いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16が、価格および入札のペアを計算して、それを他の全ての資産マネージャ16にブロードキャストする。全てのペアが受信されると、全ての資産14は、全ての価格および入札ペアを、システム100内の各自自身のパフォーマンスを最適化する取引の集合に変換する。いくつかの実施形態では、即座にディスパッチする代わりに、全ての資産マネージャ16は、まず始めに各自自身が計算した取引をブロードキャストすることができ、これにより、全ての取引の安全な記録を残すためのブロックを構築することができる。
【0062】
図9Aは、価格を計算および送信するものとして資産マネージャ1および2のみを示しているが、いくつかの実施形態では、全ての資産マネージャ16(例えば、資産マネージャ1,2,3,4,5,および6)が、各自のそれぞれの価格を計算して、それを他の資産マネージャ16に送信することを理解すべきである。
【0063】
図9Bは、本発明の例示的な実施形態による、最適化プロセスにおいて使用されるブロックチェーン台帳を概略的に示す。前のブロックからのハッシュと、取引のリストと、(「nonce」を使用する)「プルーフ・オブ・ワーク」と、最後に、上記の全ての要素のハッシュとを含むブロックが作成され、安全な構造を獲得するために全てのブロックが一緒にリンクされる。
【0064】
ステップ412において、プロセスは、価格の関数としてエネルギおよび/または電力を取引する。資産マネージャ16は、システムが実質的に最適な動作点で維持されていると言えるように、複数の異なる資産間で必要とされるエネルギ取引を、受信した価格に基づいて決定する。
【0065】
ステップ414において、プロセスは、目標が達成されていないかどうか、または目標が変更されたかどうかを質問する。これらの質問のいずれかに対する回答がイエスである場合(例えば、目標が達成されていない、または目標が変更されている場合)には、サイクルが繰り返され、ステップ402に戻る。そうでない場合には、プロセスはステップ416に進む。
【0066】
次いで、プロセスはステップ416に進み、ここで、取引が金融的に決済される。決済ステップ中に、全ての取引の結果が実際の経済的交換に変換される。種々の実施形態では、目標設定者30によって定義された目標を達成することの経済的影響が、システム100のメンバー間で分配される。システム100は、全てのエネルギ交換を追跡し続ける。全ての価格信号に対してそれぞれの資産14が反応して、何らかの電力量を供給する。権限者によって計算された価格が高く、かつシステム100がエネルギを必要とする場合には、所与の価格信号に対してそれぞれの資産14が供給したエネルギの量を追跡することができる。例えば、システム100がある地区にあって、かつシステム100全体が100ドルを稼いだ場合には、それぞれの資産が権利を有する価値は、供給した電力と、電力が供給された時間における価格との関数として計算可能である。したがって、例示的な実施形態は、取引および価格を追跡して、種々の資産14の所有者を補償するための公正な手法を提供する。
【0067】
以下の例示的な例によって、以下のことが説明される:
・建物のエネルギ消費量を削減することにより、ユーティリティ5に支払うべき金額が削減される。節約分を種々の資産間で分配することができる。
・ユーティリティ5にエネルギを輸出することにより、新たな収入が得られる。収益または利益を分配することができる。
・アイランドグリッドでのディーゼル消費量の削減は、金銭的な節約につながる。節約分を分配することができる。
【0068】
さらに、いくつかの実施形態では、目標を達成することの利益は、システム100内のアクティブな資産14間で分配され、各自の利益は、資産14が取引中に累積した「仮想通貨利益」に関連付けられる。例示的な実施形態では、「仮想通貨利益」は、全ての資産14によって積分または合計
【数11】
として計算可能である。
【0069】
ここで、pは、それぞれの取引において計算された仮想価格であり、Pは、最適化された出力である。
【0070】
いくつかの実施形態では、最適化の決済ステップ416中に、全ての取引を実際の経済的交換に変換することができる。いくつかの実施形態では、決済ステップ416が行われる頻度は、取引サイクルから独立しているが、これらは、場合によっては同じであってもよい。その後、プロセス400は終了する。
【0071】
ステップ404は、ステップ402の後に来るものとして示されているが、いくつかの実施形態では、このステップ404をステップ402の前に持って来てもよいことを理解すべきである。さらに、プロセス400が繰り返される場合には、ステップ404を、ステップ402の前または後に実施してもよい。同様に、ステップ406をステップ402の前に持って来てもよい。図10は、いくつかの実施形態において、ステップ406およびステップ412をステップ416とは異なるループ上で実行してもよいことを概略的に示す。したがって、いくつかの実施形態では、プロセス400が開始から終了まで完全に完了する前に、いくつかのステップを複数回繰り返すことができる。
【0072】
図10は、同時に実行されている2つのループを有するプロセス400のうちの一部の代替的な実施形態を概略的に示す。プロセス400は、順次に実行されるステップ402~416を示しているが、いくつかの実施形態では、第1のプロセス400がまだ実行されている間に、第2のプロセス400を開始してもよい。例えば、プロセス400は、2つのループAおよびBを含むことができる。内側のループAは、システム100を最適な動作点またはその近傍に維持するのを助けるために短時間のスケール(典型的には、毎秒以下)で実行可能である。それぞれの資産14によって相殺される経済取引を決定することによって取引を決済する外側のループBは、可変のレートで実行可能である。
【0073】
当業者は、例示的な実施形態が多数の利点を提供することを理解するであろう。例えば、このような利点には、価格を計算するために専用の中央制御装置が必要ないことが含まれる。さらに、システム100は、単一障害点を有していないので、よりロバストである。さらに、ある1つの資産マネージャ16に障害が生じている場合には、他の資産マネージャ16が、実質的に価格を修正することができる(例えば、権限者ローテーションスキームの最中に、または複数の価格を平均化することによって)。
【0074】
本発明の種々の実施形態は、少なくとも部分的に、任意の従来のコンピュータプログラミング言語で実装可能である。例えば、いくつかの実施形態は、手続き型プログラミング言語(例えば、「C」)またはオブジェクト指向プログラミング言語(例えば、「C++」)で実装可能である。本発明の他の実施形態は、事前にプログラミングされたハードウェア要素(例えば、特定用途向け集積回路、FPGA、およびデジタル信号プロセッサ)、または他の関連するコンポーネントとして実装可能である。
【0075】
代替的な実施形態では、開示されている装置および方法(例えば、上記の種々のフローチャートを参照)は、コンピュータシステムと共に使用するためのコンピュータプログラム製品として実装可能である。そのような実装態様は、コンピュータ可読媒体(例えば、ディスケット、CD-ROM、ROM、または固定ディスク)のようないずれかの有形の非一時的な媒体上に固定された一連のコンピュータ命令を含むことができる。一連のコンピュータ命令は、システムに関して本明細書で前述した全部または一部の機能を具現化することができる。
【0076】
当業者は、そのようなコンピュータ命令が、多数のコンピュータアーキテクチャまたはオペレーティングシステムと共に使用するための多数のプログラミング言語で記述可能であることを理解すべきである。さらに、そのような命令は、半導体、磁気的、光学的、またはその他のメモリデバイスのような任意のメモリデバイス内に記憶可能であり、光学的、赤外線、マイクロ波、またはその他の伝送技術のような任意の通信技術を使用して伝送可能である。
【0077】
数ある手法の中でも、そのようなコンピュータプログラム製品は、印刷文書または電子文書が付属しているリムーバブル媒体(例えば、市販のパッケージソフトウェア)として配布可能であるか、コンピュータシステムによって(例えば、システムROM上または固定ディスク上に)プリロード可能であるか、またはサーバまたは電子掲示板からネットワーク(例えば、インターネットまたはワールドワイドウェブ)を介して配布可能である。実際に、いくつかの実施形態は、サービスとして提供されるソフトウェアモデル(「SAAS」)またはクラウドコンピューティングモデルで実装可能である。もちろん、本発明のいくつかの実施形態は、ソフトウェア(例えば、コンピュータプログラム製品)とハードウェアとの両方の組み合わせとして実装可能である。本発明のさらに他の実施形態は、完全にハードウェアとして、または完全にソフトウェアとして実装されている。
【0078】
開示されている実施形態またはその一部は、上に列挙されていない手法、および/または明示的に主張されていない手法で組み合わせ可能である。さらに、本明細書に開示されている実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない要素がなくても適切に実施可能である。したがって、本発明は、開示されている実施形態に限定されると見なされるべきではない。
【0079】
上記の本発明の実施形態は、単なる例示に過ぎないことが意図されている。すなわち、当業者には、多数の変形形態および修正形態が明らかであろう。そのような変形形態および修正形態は、添付した請求項のいずれかによって定義される本発明の範囲内にあることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10