(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電子回路装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240208BHJP
H01L 21/50 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H05K3/34 501Z
H01L21/50 F
(21)【出願番号】P 2021541766
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033067
(87)【国際公開番号】W WO2021038631
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】市野 慎次
(72)【発明者】
【氏名】岩城 範明
(72)【発明者】
【氏名】濱根 剛
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】河本 充雄
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-335694(JP,A)
【文献】特開平8-18208(JP,A)
【文献】特開平2-281684(JP,A)
【文献】実開平2-26274(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成された傾斜実装面に複数の回路素子がリフロー半田付けにより実装された電子回路装置を製造する方法であって、
前記複数の回路素子のうち、半田リフロー時に前記傾斜実装面を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子の位置ずれを防止する手段として、前記傾斜実装面のうちの前記回路素子のずれ方向側の側縁に当接する位置に位置ずれ防止用のストッパ部が設けられた電子回路装置を製造する方法において、
前記傾斜実装面に半田を付着する半田付着工程と、
前記回路素子を前記傾斜実装面に搭載する搭載工程と、
前記傾斜実装面に搭載した前記回路素子の端子を前記傾斜実装面の配線パターンの電極にリフロー半田付けするリフロー工程と
を含み、
前記半田付着工程及び前記搭載工程では、前記傾斜実装面が形成された立体成形品を前記傾斜実装面が水平になるまで傾けた状態で前記半田の付着及び前記回路素子の搭載を実行し、
前記リフロー工程では、前記立体成形品を搬送パレットに載せて前記傾斜実装面が傾斜した状態でリフロー炉に搬入してリフロー半田付けする、電子回路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、配線パターンが形成された傾斜実装面に回路素子がリフロー半田付けにより実装された電子回路装置の製造方法に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
近年、配線パターンが形成された立体的な樹脂成形品であるMID(Molded Interconnect Device)が電子機器の小型化、部品点数削減、組立工数削減等を実現する実装技術として注目されている。このMIDの実装技術は、特許文献1(国際公開WO2018/163323号公報)等に提案されている。このMIDの実装面に半導体部品等の回路素子を実装する工程は、一般的な平板状の回路基板に回路素子を実装する工程と同様に、MIDの実装面の電極にクリーム状の半田を塗布してから、その実装面に回路素子を搭載した後、MIDをリフロー炉に搬入して回路素子の端子を実装面の電極にリフロー半田付けするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、MIDの実装面は、水平面になるとは限らず、傾斜面になる場合もある。MIDの傾斜実装面に搭載した回路素子をリフロー炉内でリフロー半田付けする場合、半田リフロー時に回路素子が傾斜実装面を滑って位置ずれすることがある。この半田リフロー時の回路素子の位置ずれは、回路素子の半田接続信頼性を低下させたり、接続不良を発生させたりする要因となっている。この半田リフロー時の回路素子の位置ずれの問題は、回路素子の重量が重くなるほど顕著な問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、配線パターンが形成された傾斜実装面に複数の回路素子がリフロー半田付けにより実装された電子回路装置を製造する方法であって、前記複数の回路素子のうち、半田リフロー時に前記傾斜実装面を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子の位置ずれを防止する手段として、前記傾斜実装面のうちの前記回路素子のずれ方向側の側縁に当接する位置に位置ずれ防止用のストッパ部が設けられた電子回路装置を製造する方法において、
前記傾斜実装面に半田を付着する半田付着工程と、
前記回路素子を前記傾斜実装面に搭載する搭載工程と、
前記傾斜実装面に搭載した前記回路素子の端子を前記傾斜実装面の配線パターンの電極にリフロー半田付けするリフロー工程と
を含み、
前記半田付着工程及び前記搭載工程では、前記傾斜実装面が形成された立体成形品を前記傾斜実装面が水平になるまで傾けた状態で前記半田の付着及び前記回路素子の搭載を実行し、
前記リフロー工程では、前記立体成形品を搬送パレットに載せて前記傾斜実装面が傾斜した状態でリフロー炉に搬入してリフロー半田付けすることを特徴とするものである。
【0006】
この製造方法で製造した電子回路装置は、傾斜実装面に実装する複数の回路素子のうち、半田リフロー時に前記傾斜実装面を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子の位置ずれを防止する手段として、前記傾斜実装面のうちの前記回路素子のずれ方向側の側縁に当接する位置に位置ずれ防止用のストッパ部が設けられているため、半田リフロー時に回路素子が傾斜実装面を滑って位置ずれするのを防止することができて、回路素子の半田接続信頼性を向上でき、半田リフロー時の回路素子の位置ずれに起因する接続不良を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は実施例1のMIDの一部分の正面図である。
【
図2】
図2は実施例1のMID部品実装プロセスを示す工程図である。
【
図3】
図3は実施例2のMIDの一部分の正面図である。
【
図4】
図3は実施例3のMIDの一部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書に開示した3つの実施例1~3を説明する。
【実施例1】
【0009】
【0010】
まず、
図1に基づいて配線パターンが形成された立体的な樹脂成形品であるMIDの構成を説明する。
MIDの樹脂部11は、絶縁性樹脂の射出成形、型成形等により傾斜面のある立体的な形状に成形されている。この樹脂部11の表面のうちの傾斜面は、電気回路を構成する複数の回路素子13,14を実装する傾斜実装面12となっている。各回路素子13,14は、例えば、半導体部品、コンデンサ、抵抗器、コネクタ等の様々な回路構成部品である。
【0011】
傾斜実装面12には、配線パターン形成技術により配線パターン(図示せず)が形成され、更に、傾斜実装面12のうちの回路素子13,14の端子13a,14a(リード、バンプ等)をリフロー半田付けする位置には、配線パターンにつながる電極15,16(パッド、ランド等)が形成されている。回路素子13,14の端子13a,14aは、傾斜実装面12の電極15,16に半田17で接続されている。MIDの樹脂部11の形状は、傾斜実装面12を持つ立体的形状であれば、どの様な形状であっても良い。
【0012】
傾斜実装面12には、複数の回路素子13,14がリフロー半田付けにより実装され、それら複数の回路素子13,14のうち、半田リフロー時に傾斜実装面12を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子13を実装する位置には、位置ずれ防止部として接着部19が設けられ、当該回路素子13が接着部19により傾斜実装面12に接着されている。
【0013】
本実施例1では、接着部19は、回路素子13のうちの端子13a以外の部分(ボディ部分)と傾斜実装面12とを絶縁性の接着剤により接着している。
【0014】
次に、
図2に基づいてMID部品実装プロセスを説明する。
まず、傾斜実装面12の電極15,16にクリーム状の半田17を付着する。この際、例えば転写ピン(図示せず)の下端にクリーム状の半田17を付着して傾斜実装面12の電極15,16に転写する。転写以外の付着方法を用いてクリーム状の半田17を電極15,16に付着しても良い。
【0015】
この後、傾斜実装面12のうち、搭載する回路素子13のボディ部分に対向する所定位置に接着部19となる絶縁性の接着剤を付着する。この際、例えば転写ピン(図示せず)の下端に絶縁性の接着剤19を付着して傾斜実装面12の所定位置に転写する。転写以外の付着方法を用いて絶縁性の接着剤19を付着しても良い。
【0016】
尚、傾斜実装面12の所定位置に絶縁性の接着剤19を付着する工程と、傾斜実装面12の電極15,16にクリーム状の半田17を付着する工程との順序を逆にして、絶縁性の接着剤19を傾斜実装面12の所定位置に付着した後に、クリーム状の半田17を傾斜実装面12の電極15,16に付着するようにしても良い。
【0017】
クリーム状の半田17と絶縁性の接着剤19を付着する工程では、MIDをロボット(図示せず)で保持して傾斜実装面12が水平になるまで傾けた状態でクリーム状の半田17と絶縁性の接着剤19を付着する。
【0018】
クリーム状の半田17と絶縁性の接着剤19を付着した後、部品実装機(図示せず)を使用して傾斜実装面12に回路素子13,14を搭載する。これにより、半田リフロー時に傾斜実装面12を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子13のボディ部分が絶縁性の接着剤19により傾斜実装面12に接着された状態となる。
【0019】
回路素子13,14を搭載する工程では、MIDをロボット(図示せず)で保持してMIDを傾斜実装面12が水平になるまで傾けた状態で傾斜実装面12に回路素子13,14を搭載する。
【0020】
この後、MIDをリフロー炉(図示せず)に搬入して回路素子13,14の端子13a,14aを傾斜実装面12の電極15,16にリフロー半田付けする。この半田リフロー工程では、MIDは搬送パレット(図示せず)上に載せられているだけで傾斜実装面12が傾斜した状態のまま半田17がリフローされる。何故なら、リフロー炉にはMIDを傾けた状態に保持するロボットを配置するスペースがない。また、搬送パレット上で治具等によりMIDを傾けた状態でリフロー炉に搬入することが考えられるが、一般にMIDを傾けた状態にすると、MIDの高さ寸法が高くなるため、MIDがリフロー炉の入口と干渉してリフロー炉に搬入できない。
【0021】
本実施例1では、半田リフロー時に傾斜実装面12を滑って位置ずれする可能性のある所定重量以上又は所定サイズ以上の回路素子13については、当該回路素子13のボディ部分が絶縁性の接着剤19により傾斜実装面12に接着されているため、半田リフロー時に当該回路素子13が傾斜実装面12を滑って位置ずれすることを防止できて、当該回路素子13の半田接続信頼性を向上でき、半田リフロー時の回路素子13の位置ずれに起因する接続不良を未然に防止できる。
【0022】
尚、本実施例1では、半田リフロー時に傾斜実装面12を滑って位置ずれする可能性のない小型軽量の回路素子14については、傾斜実装面12に接着していないが、この小型軽量の回路素子14についても傾斜実装面12に接着するようにしても良いことは勿論である。
【実施例2】
【0023】
次に、
図3に基づいて実施例2を説明する。但し、上記実施例1と実質的に同じ部分については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0024】
上記実施例1では、回路素子13のボディ部分を絶縁性の接着剤19により傾斜実装面12に接着するようにしたが、
図3に示す実施例2では、回路素子13の少なくとも1つの端子13aと傾斜実装面12の電極15とを導電性の接着剤21(接着部)により接着している。この場合、導電性の接着剤21は、電極15の一部についてのみ転写等で付着し、電極15の残りの部分にクリーム状の半田17を転写等で付着する。この場合、導電性の接着剤21を用いることで、回路素子13の端子13aと電極15との間の半田接続信頼性を確保できる。
【0025】
以上説明した本実施例2においても、前述した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0026】
次に、
図4に基づいて実施例3を説明する。但し、前記実施例1,2と実質的に同じ部分については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0027】
前記実施例1,2では、回路素子13を接着部19,21により傾斜実装面12に接着することで半田リフロー時の回路素子13の位置ずれを防止するようにしたが、
図4に示す実施例3では、傾斜実装面12のうちの回路素子13のずれ方向側の側縁(本実施例3では回路素子13のずれ方向側に位置する端子13aの側縁)に当接する位置に、位置ずれ防止用のストッパ部31を位置ずれ防止部として設け、このストッパ部31によって半田リフロー時の回路素子13の位置ずれを防止するようにしている。このストッパ部31の上部のうちの回路素子13側には、回路素子13の端子13aを傾斜実装面12の電極15側へガイドする傾斜状のガイド面31aが形成されている。
【0028】
この場合、ストッパ部31は、MIDの樹脂部11の傾斜実装面12に一体成形しても良いし、或は、MIDの樹脂部11とは別体に形成したストッパ部31を樹脂部11に接着、融着、ねじ止め、係合等により固定するようにしても良い。ストッパ部31の形状は、半田リフロー時の回路素子13の位置ずれを防止できる凸形状であれば、どの様な形状であっても良い。
【0029】
或は、回路素子13の端子13a以外の部分であるボディ部分の側縁に当接するストッパ部を傾斜実装面12に設けて、このストッパ部によって半田リフロー時の回路素子13の位置ずれを防止するようにしても良い。
【0030】
以上説明した本実施例3においても、前述した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
尚、本発明は、上記各実施例1~3に限定されず、例えば、MIDの樹脂部11の形状を変更したり、樹脂部11の傾斜実装面12に実装する回路素子13,14の種類や個数を変更したり、MIDの樹脂部11、配線パターン及び電極15,16を3Dプリンタで形成しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
11…樹脂部、12…傾斜実装面、13,14…回路素子、13a,14a…端子、15,16…電極、17…半田、19…接着部(絶縁性の接着剤)、21…接着部(導電性の接着剤)、31…位置ずれ防止用のストッパ部、31a…ガイド面