(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】アシルホスフィンオキシド化合物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/53 20060101AFI20240208BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
C07F9/53
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021554784
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2018119922
(87)【国際公開番号】W WO2020113585
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521248729
【氏名又は名称】アンチン ライティング オプトエレクトロニクス テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾン シャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ シャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ティエナン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-13794(JP,A)
【文献】特表2002-531460(JP,A)
【文献】特開昭58-77890(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103073658(CN,A)
【文献】Organic Letters,2018年,Vol. 20, No. 4,pp. 1224-1227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルホスフィンオキシド化合物の調製方法であって、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、アシルホスフィンオキシド化合物を得るステップを含み、
前記方法は、前記化合物Bと前記化合物Cとから構成される反応系にルイス酸を添加するステップをさらに含み、
前記ルイス酸はクロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシラン、クロロトリブチルシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、クロロトリメチルシラン-臭化ナトリウム、クロロトリメチルシラン-ヨウ化ナトリウム、トリメチルシリルメタンスルホネート、t-ブチルジメチルシリルメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸t-ブチルジメチルシリルのうちの少なくとも一つから選ばれ、
ここで、前記化合物Bの化学構造式は以下のとおりであり、
【化1】
前記化合物Cの化学構造式は以下のとおりであり、
【化2】
前記アシルホスフィンオキシド化合物の化学構造式は以下のとおりであり、
【化3】
式中、R
1は水素、
メチル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、
又はフェニ
ルであり、
R
2はR
1と同じであり、
nは対応したベンゼン環上のR
1の置換数であり、且つnは1、2又は3であり、
mは対応したベンゼン環上のR
2の置換数であり、且つmは1、2又は3である、アシルホスフィンオキシド化合物の調製方法。
【請求項2】
前記化合物Bと、前記化合物Cと、前記有機塩基と、前記ルイス酸とのモル比は1:1~2:1~5:0.01~2である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機塩基はトリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジンのうちの少なくとも一つから選ばれる、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒はトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランのうちの少なくとも一つから選ばれる、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物Bと前記化合物Cとの反応温度が-20℃~150℃であり、反応時間が1~8時間である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させるステップは、
前記化合物Cと前記有機溶媒とを含む第一の混合液体を得て、それを第一の反応器で前記有機塩基と混合するステップと、
前記第一の反応器に前記化合物Bを加えて、前記化合物Bを前記化合物Cと反応させるステップとを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の、前記第一の反応器に前記化合物Bを加えるステップは、
前記化合物Bと前記有機溶媒とを含む第二の混合液体を得るステップと、
前記第一の反応器に前記第二の混合液体を滴下するステップとを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記の、前記化合物Cと前記有機溶媒とを含む第一の混合液体を得るステップは、
前記有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をして、前記化合物Cと前記有機溶媒とを含む前記第一の混合
液体を得るステップを含み、
前記グリニャール試薬の化学構造式は以下のとおりであり、
【化4】
式中、R
2は水素、C
1-C
6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルであり、
mは対応したベンゼン環上のR
2の置換数であり、且つmは1、2又は3であり、
Xは塩素、臭素又はヨウ素である、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
前記亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比は1:3~5である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸溶液は塩酸溶液、臭化水素酸溶液、ヨウ化水素酸溶液、硫酸溶液、酢酸溶液、シュウ酸溶液、クエン酸溶液のうちの少なくとも一つから選ばれる、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記グリニャール試薬と前記亜リン酸ジエチルとの反応温度が-20℃~150℃であり、反応時間が1~4時間である、請求項
8~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記の、前記有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をするステップは、
前記グリニャール試薬と前記有機溶媒とを有する第三の混合溶液の第二の反応器に前記亜リン酸ジエチルを加えて、前記グリニャール試薬を前記亜リン酸ジエチルと反応させて、前記酸溶液で反応をクエンチして後処理をするステップを含む、請求項
8~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記グリニャール試薬と前記有機溶媒との第三の混合溶液は、以下の方法により調製されて得られ、
開始剤及び前記有機溶媒の条件下で、マグネシウム粉末を芳香族ハロゲン化物と反応させて、前記グリニャール試薬と前記有機溶媒とを含む第三の混合溶液を得、
ここで、前記芳香族ハロゲン化物の化学構造式は以下のとおりであり、
【化5】
式中、R
2は水素、C
1-C
6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルであり、
mは対応したベンゼン環上のR
2の置換数であり、且つmは1、2又は3であり、
Xは塩素、臭素又はヨウ素である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記芳香族ハロゲン化物と前記マグネシウム粉末とのモル比は1:1~2である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記開始剤はヨウ素及びジブロモエタンのうちの少なくとも一つから選ばれる、請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項16】
前記マグネシウム粉末と前記芳香族ハロゲン化物との反応時間が2~4時間である、請求項
13~
15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本開示は開始剤の分野に関し、特にアシルホスフィンオキシド化合物及びその調製方法に関する。
【0002】
[背景技術]
光開始剤は感光剤又は光硬化剤ともいい、輻射エネルギーを吸収して化学的変化を生じさせて重合開始能力のある活性中間体を発生することができる試薬である。その中で、アシルホスフィンオキシド化合物は光開始活性の高い光開始剤であって、広く使われている。
【0003】
関連技術は、商業的に使用される(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyl)diphenylphosphine oxide,TPO)を提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0004】
【0005】
ここで、TPOの工業的調製方法は主に2種類を含む。第1の方法において、ジフェニルホスフィンクロリドをアルカリ性環境中でメタノールとエステル化反応させてジフェニルホスフィン酸メチル中間体を得、これを2,4,6-トリメチルベンゾイルクロライドと縮合反応させてTPOを得る。第2の方法において、ジフェニルホスフィンクロリドを加水分解させてジフェニルホスフィンオキシドを得、これを2,4,6-トリメチルベンズアルデヒドと縮合させて酸化によってTPOを得る。ジフェニルホスフィンクロリドの調製方法は次のとおりである。ベンゼンと三塩化リンを三塩化アルミニウムで触媒反応させた後、まず常圧蒸留で未反応のベンゼンと三塩化リン、フェニルホスフィンクロリドを収集し、そしてケトル残留物を塩化ナトリウムで脱錯させた後、ジフェニルホスフィンクロリドを蒸留により収集する。
【0006】
ジフェニルホスフィンクロリドを調製する過程で、遊離リンが発生しやすくて、安全上のリスクがあり、且つジフェニルホスフィンクロリドの収率が低くて、塩化水素や三塩化アルミニウムなどのプロセス廃棄物が生じやすくて、環境を汚染する。ジフェニルホスフィンクロリドの製造過程には多くの問題があるため、TPOの製造を制限しており、且つTPOを調製する第2の方法において、酸化過程にも安全上のリスクがある。
【0007】
[発明の概要]
本開示の実施例は、上記の技術的問題を解決できるアシルホスフィンオキシド化合物及びその調製方法を提供する。具体的な技術的解決策は次のとおりである。
【0008】
一方では、本開示の実施例は、アシルホスフィンオキシド化合物の調製方法を提供し、上記の方法は、以下を含む。
有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、上記アシルホスフィンオキシド化合物を得る。
【0009】
ここで、上記化合物Bの化学構造式は以下のとおりである:
【0010】
【0011】
上記化合物Cの化学構造式は以下のとおりである:
【0012】
【0013】
上記アシルホスフィンオキシド化合物の化学構造式は以下のとおりである:
【0014】
【0015】
式中、R1は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0016】
R2はR1と同じである。
nは対応したベンゼン環上のR1の置換数であり、且つnは1、2又は3である。
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
【0017】
可能な設計において、上記の方法はさらに以下を含む。
上記化合物Bと上記化合物Cとから構成される反応系にルイス酸を添加する。
可能な設計において、上記化合物Bと、上記化合物Cと、上記有機塩基と、上記ルイス酸とのモル比は1:1~2:1~5:0.01~2である。
【0018】
可能な設計において、上記ルイス酸はクロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシラン、クロロトリブチルシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、クロロトリメチルシラン-臭化ナトリウム、クロロトリメチルシラン-ヨウ化ナトリウム、トリメチルシリルメタンスルホネート、t-ブチルジメチルシリルメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸t-ブチルジメチルシリルのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0019】
可能な設計において、上記有機塩基はトリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジンのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0020】
可能な設計において、上記有機溶媒はトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0021】
可能な設計において、上記化合物Bと上記化合物Cとの反応温度が-20℃~150℃であり、反応時間が1~8時間である。
可能な設計において、上記の、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させるステップは、以下を含む。
【0022】
上記化合物Cと上記有機溶媒とを含む第一の混合液体を得て、それを第一の反応器で上記有機塩基と混合する。
上記第一の反応器に上記化合物Bを加えて、上記化合物Bを上記化合物Cと反応させる。
【0023】
可能な設計において、上記の、上記第一の反応器に上記化合物Bを加えるステップは、以下を含む。
上記化合物Bと上記有機溶媒とを含む第二の混合液体を得る。
【0024】
上記第一の反応器に上記第二の混合液体を滴下する。
可能な設計において、上記の、上記化合物Cと上記有機溶媒とを含む第一の混合液体を得るステップは、以下を含む。
【0025】
上記有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をして、上記化合物Cと上記第一の有機溶媒とを含む第一の混合溶液を得る。
【0026】
上記グリニャール試薬の化学構造式は以下のとおりである:
【0027】
【0028】
式中、R2は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0029】
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
Xは塩素、臭素又はヨウ素である。
可能な設計において、上記亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比は1:3~5である。
【0030】
可能な設計において、上記酸溶液は塩酸溶液、臭化水素酸溶液、ヨウ化水素酸溶液、硫酸溶液、酢酸溶液、シュウ酸溶液、クエン酸溶液のうちの少なくとも一つから選ばれる。
可能な設計において、上記グリニャール試薬と上記亜リン酸ジエチルとの反応温度が-20℃~150℃であり、反応時間が1~4時間である。
【0031】
可能な設計において、上記の、上記有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をするステップは、以下を含む。
上記グリニャール試薬と上記有機溶媒とを有する第三の混合溶液の第二の反応器に上記亜リン酸ジエチルを加えて、上記グリニャール試薬を上記亜リン酸ジエチルと反応させて、上記酸溶液で反応をクエンチして後処理をする。
【0032】
可能な設計において、上記グリニャール試薬と上記有機溶媒との第三の混合溶液は、以下の方法により調製されて得られる。
開始剤及び上記有機溶媒の条件下で、マグネシウム粉末を芳香族ハロゲン化物と反応させて、上記グリニャール試薬と上記有機溶媒とを含む第三の混合溶液を得る。
【0033】
ここで、上記芳香族ハロゲン化物の化学構造式は以下のとおりである:
【0034】
【0035】
式中、R2は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0036】
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
Xは塩素、臭素又はヨウ素である。
可能な設計において、上記芳香族ハロゲン化物と上記マグネシウム粉末とのモル比は1:1~2である。
【0037】
可能な設計において、上記開始剤はヨウ素及びジブロモエタンのうちの少なくとも一つから選ばれる。
可能な設計において、上記マグネシウム粉末と上記芳香族ハロゲン化物との反応時間が2~4時間である。
【0038】
もう一方では、本開示の実施例は、アシルホスフィンオキシド化合物を提供し、上記の化合物の化学構造式は以下のとおりである:
【0039】
【0040】
式中、R1は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0041】
R2はR1と同じである。
nは対応したベンゼン環上のR1の置換数であり、且つnは1、2又は3である。
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
【0042】
本開示の実施例が提供した技術的解決策による有利な効果は、少なくとも以下を含む。
本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物の調製方法において、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、アシルホスフィンオキシド化合物を得る。この調製方法は、ジフェニルホスフィンクロリドを製造原料とせず、且つ酸化操作が不要となるので、安全性がよかったり、環境に優しかったり、操作が簡単だったり、収率が高かったりするという特徴を有して、アシルホスフィンオキシド化合物の製造に有利である。この方法で調製されたアシルホスフィンオキシド化合物は、安定した品質、高純度、高収率、及び低コストを有して、工業化生産に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照して、本開示の実施形態をさらに詳細に説明する。
一方では、本開示の実施例は、アシルホスフィンオキシド化合物の調製方法を提供し、この方法は以下を含む。
【0044】
有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、アシルホスフィンオキシド化合物を得る。
ここで、化合物Bの化学構造式は以下のとおりである:
【0045】
【0046】
化合物Cの化学構造式は以下のとおりである:
【0047】
【0048】
アシルホスフィンオキシド化合物の化学構造式は以下のとおりである:
【0049】
【0050】
式中、R1は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0051】
R2はR1と同じである。
nは対応したベンゼン環上のR1の置換数であり、且つnは1、2又は3である。
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
【0052】
対応したベンゼン環上のR1の置換位置はアシル基のオルト位、メタ位またはパラ位であってよく、対応したベンゼン環上のR2の置換位置はホスフィンオキシ基のオルト位、メタ位またはパラ位であってよいことに留意されたい。
【0053】
本発明の実施例において、このアシルホスフィンオキシド化合物は、光開始剤として使用でき、且つ重合開始活性が高い、光硬化速度が速い、熱安定性が良い、後重合効果が低い、残留物がないなどの利点を有するので、紫外線硬化塗料、印刷インク、紫外線硬化接着剤、光ファイバー塗料、フォトレジスト、光重合性印刷版、ステレオリソグラフィ樹脂、歯の詰め物などに適用できる。
【0054】
本開示の実施例において、有機溶媒の使用量は、各組成分を溶解させて、反応を発生させることができれば特に制限はない。
化合物Bと化合物Cとの化学反応は、次の化学方程式を参照してよい:
【0055】
【0056】
本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物の調製方法において、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、アシルホスフィンオキシド化合物を得る。この調製方法は、ジフェニルホスフィンクロリドを製造原料とせず、且つ酸化操作が不要となるので、安全性がよかったり、環境に優しかったり、操作が簡単だったり、収率が高かったりするという特徴を有して、アシルホスフィンオキシド化合物の製造に有利である。この方法で調製されたアシルホスフィンオキシド化合物は、安定した品質、高純度、高収率、及び低コストを有して、工業化生産に有利である。
【0057】
本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物の調製方法はさらに、化合物Bと化合物Cとから構成される反応系にルイス酸を添加するステップを含む。
化合物Bと化合物Cとから構成される反応系は化合物B、化合物C、有機塩基、及び有機溶媒を含むことは理解可能である。
【0058】
化合物Bと化合物Cとから構成される反応系にルイス酸を添加することにより、化合物Bと化合物Cとの反応を促進して、副反応を生じさせることなく化合物Aを生成することができる。
【0059】
化合物Bと、化合物Cと、有機塩基と、ルイス酸とのモル比は、アシルホスフィンオキシド化合物を効率的に調製できるかどうかに重要な影響を及ぼす。これに基づいて、化合物Bと、化合物Cと、有機塩基と、ルイス酸とのモル比は1:1~2:1~5:0.01~2であってもよく、1:1:1~3:1であってもよい。
【0060】
例えば、化合物Bと、化合物Cと、有機塩基と、ルイス酸とのモル比は、1:1:1:0.01、1:1.1:1.1:0.3、1:1.4:2:0.5、1:1.7:2.4:0.7、1:1.8:3:0.9、1:1:1:1、1:1:2:1、1:1:3:1、1:1.9:4:1.5、1:2:5:2などであってよい。
【0061】
このように、化合物Bを化合物Cと十分に反応させることができ、且つ反応速度が速いため、高収率でアシルホスフィンオキシド化合物を効率的に調製することに有利である。
本開示の実施例は、ルイス酸のタイプについて以下の例を与える。ルイス酸はクロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシラン、クロロトリブチルシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、クロロトリメチルシラン-臭化ナトリウム、クロロトリメチルシラン-ヨウ化ナトリウム、トリメチルシリルメタンスルホネート、t-ブチルジメチルシリルメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸t-ブチルジメチルシリルのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0062】
ここで、ルイス酸は、上記のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、…から選ばれてよい。ルイス酸が混合物である場合、各組成分の比例は特に限定されない。
上記の何種類かのルイス酸は、化合物Bと化合物Cとの反応を効果的に促進でき、他の組成分との相互溶解性がよく、且つ安価で入手しやすい。
【0063】
ルイス酸を添加した後、0.8~1.5時間撹拌してよく、例えば、0.8時間、0.9時間、1時間、1.1時間、1.2時間、1.3時間、1.4時間、1.5時間などであってよい。
【0064】
このように、ルイス酸の触媒効果を効果的に確保して、化合物Bと化合物Cとの反応を促進することができる。
有機塩基は、化合物Bと化合物Cとの反応により発生する塩化水素を吸収でき、且つ有機塩基は副反応を発生させることはない。本開示の実施例は、有機塩基のタイプについて以下の例を与える。有機塩基はトリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジンのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0065】
即ち、有機塩基は、上記のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つから選ばれる。有機塩基が混合物である場合、各組成分の比例は特に限定されない。例えば、有機塩基がトリエチルアミンとN,N-ジイソプロピルエチルアミンとの混合物である場合、両者の質量比は1:1、1:2、1:3、2:1、2:3などであってよい。有機塩基がトリエチルアミンと、N,N-ジイソプロピルエチルアミンと、N,N-ジメチルアニリンとの混合物である場合、三者の質量比は1:1:1、1:2:1、1:3:1、2:1:1、2:3:1、2:2:1、2:3:1、2:1:3、2:3:3などであってよい。
【0066】
上記の何種類かの有機塩基は、化合物Bと化合物Cとの反応を効果的に促進して化合物Aを生成できる上に、安価で入手しやすい。
有機溶媒は、化合物Bと化合物Cを十分かつ均一に分散させることができ、両者の間の反応を発生させることに有利である。本開示の実施例は、有機溶媒のタイプについて以下の例を与える。有機溶媒はトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランのうちの少なくとも一つから選ばれる。
【0067】
即ち、有機溶媒は、上記のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、…、又はすべてから選ばれてよい。有機溶媒が混合物である場合、各組成分の比例は特に限定されない。例えば、有機溶媒がトルエンとテトラヒドロフランとの混合物である場合、トルエンとテトラヒドロフランとの質量比は1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.5、1:1.7、1:1.9、1:2などであってよい。
【0068】
上記の何種類かの有機溶媒は、化合物Bと化合物Cとの相互溶解性を良くする上に、安価で入手しやすい。
化合物Bと化合物Cとの反応温度は-20℃~150℃であってよく、例えば、-20℃、-10℃、-5℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃などであってよい。反応時間は1~8時間であってよく、例えば、1時間、1.8時間、1.9時間、2時間、2.1時間、2.2時間、2.3時間、2.4時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間などであってよい。
【0069】
このように、有機塩基及び有機溶媒の条件下で化合物Bが化合物Cと十分に反応することを確保できる。
本開示の実施例は、如何に化合物B、化合物C、有機塩基、及び有機溶媒を混合反応させるかについて、以下の二通りの例を与える。
【0070】
(1)第1の例として、化合物B、化合物C、有機塩基、及び有機溶媒はすべて第1の反応器に添加され、撹拌によって混合反応する。
(2)第2の例として、有機塩基及び有機溶媒の条件下の化合物Bと化合物Cとの反応は、以下を含む。
【0071】
ステップAにおいて、化合物Cと有機溶媒とを含む第一の混合溶液を得て、それを第一の反応器で有機塩基と混合する。
ここで、化合物Cと有機溶媒とを含む第一の混合溶液は、化合物Cを有機溶媒と混合することにより得てもよく、以下のステップにより得てもよい。
【0072】
有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をして、化合物Cと有機溶媒とを含む第一の混合溶液を得る。
グリニャール試薬の化学構造式は以下のとおりである:
【0073】
【0074】
式中、R2は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0075】
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
Xは塩素、臭素又はヨウ素である。
このように、化合物Cを分離するステップを省いて、アシルホスフィンオキシド化合物を効率的に調製することができる。
【0076】
ここで、亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比は、両者を十分に反応できるかどうかに重要な影響を及ぼす。これに基づいて、本開示の実施例において、亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比は1:3~5であってもよく、1:3~3.5であってもよい。例えば、亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比は1:3、1:3.1、1:3.3、1:3.5、1:3.7、1:3.9、1:4、1:4.1、1:4.3、1:4.5、1:4.7、1:4.9、1:5などであってよい。
【0077】
グリニャール試薬と亜リン酸ジエチルとの反応温度は-20℃~150℃であってよく、例えば、-20℃、-10℃、-5℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃などであってよい。グリニャール試薬と亜リン酸ジエチルの反応時間は1~4時間であってよく、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、2.8時間、2.9時間、3時間、3.1時間、3.2時間、3.3時間、3.4時間、3.5時間、4時間などであってよい。
【0078】
このように、上記の亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬とのモル比、反応温度、及び反応時間が協同することにより、亜リン酸ジエチルがグリニャール試薬と十分に反応することに有利である。
【0079】
有機溶媒の中に亜リン酸ジエチルをグリニャール試薬と反応させた後、酸溶液で反応をクエンチして後処理をすることで、化合物Cと有機溶媒とを含む第一の混合溶液を高収率で得ることができる。
【0080】
一例として、酸溶液は塩酸溶液、臭化水素酸溶液、ヨウ化水素酸溶液、硫酸溶液、酢酸溶液、シュウ酸溶液、クエン酸溶液のうちの少なくとも一つから選ばれる。
即ち、酸溶液は、上記のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つから選ばれる。酸溶液が混合物である場合、各組成分の比例は特に限定されない。例えば、酸溶液が酢酸溶液とクエン酸溶液との混合物である場合、酢酸溶液とクエン酸溶液とのモル比は、1:1、1:2、1:3、2:1、2:3などであってよい。
【0081】
上記の何種類かの酸溶液は、安価で入手しやすく、且つ良いクエンチ効果と水和効果を有する。
ここで、酸溶液の質量濃度は、30%~60%であってよい。
【0082】
亜リン酸ジエチルとグリニャール試薬との化学反応は、次の化学方程式を参照してよい:
【0083】
【0084】
ステップBにおいて、第一の反応器に化合物Bを加えて、それを化合物Cと反応させる。
第一の反応器に化合物Bを加えるステップは、以下の方法を含むが、これに限定されない。
【0085】
化合物Bと有機溶媒とを含む第二の混合溶液を得る。
第一の反応器に第二の混合溶液を滴下する。
このように、化合物Bが化合物Cと効率的かつ十分に反応することに有利である。
【0086】
本開示の実施例は、ステップAで如何にグリニャール試薬及び亜リン酸ジエチルを添加するかについて、以下の例を与える。
有機溶媒の中にグリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をするステップは、グリニャール試薬と有機溶媒とを有する第三の混合溶液の第二の反応器に亜リン酸ジエチルを加えて、グリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて、酸溶液で反応をクエンチして後処理をするステップを含む。
【0087】
ここで、グリニャール試薬と有機溶媒との第三の混合溶液は、直接グリニャール試薬を有機溶媒と混合することにより得てもよく、以下の方法により調製してもよい。
開始剤及び有機溶媒の条件下で、マグネシウム粉末を芳香族ハロゲン化物と反応させて、グリニャール試薬と有機溶媒とを含む第三の混合溶液を得る。
【0088】
ここで、芳香族ハロゲン化物の化学構造式は以下のとおりである:
【0089】
【0090】
式中、R2は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0091】
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
Xは塩素、臭素又はヨウ素である。
このように、グリニャール試薬を分離するステップを省いて、アシルホスフィンオキシド化合物を効率的に調製することができる。
【0092】
芳香族ハロゲン化物とマグネシウム粉末とのモル比は、両者を十分に反応できるかどうかに重要な影響を及ぼす。これに基づいて、芳香族ハロゲン化物とマグネシウム粉末とのモル比は1:1~2であってもよく、1:1~1.2であってもよい。例えば、芳香族ハロゲン化物とマグネシウム粉末とのモル比は、1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.5、1:1.7、1:1.9、1:2などであってよい。
【0093】
開始剤はヨウ素及びジブロモエタンのうちの少なくとも一つから選ばれてよい。即ち、開始剤は、ヨウ素、ジブロモエタン、ヨウ素とジブロモエタンとの混合物から選ばれる。
上記の何種類かの開始剤は、良い開始効果を有して、芳香族ハロゲン化物がマグネシウム粉末と十分に反応することを確保できる。しかも、上記の何種類かの開始剤は安価で入手しやすい。
【0094】
マグネシウム粉末と芳香族ハロゲン化物との反応時間は2~4時間であってよく、例えば、2時間、2.2時間、2.5時間、2.7時間、2.8時間、2.9時間、3時間、3.1時間、3.2時間、3.3時間、3.4時間、3.5時間、3.7時間、4時間などであってよい。このように、開始剤の開始作用下で芳香族ハロゲン化物がマグネシウム粉末と十分に反応することを確保できる。
【0095】
マグネシウム粉末を芳香族ハロゲン化物と混合する場合、先ず第二の反応器に開始剤と、芳香族ハロゲン化物と、有機溶媒との混合溶液を滴下して、次に第二の反応器に芳香族ハロゲン化物と有機溶媒との混合溶液を滴下してよい。2つのステップで滴下することにより、開始剤にマグネシウム粉末と芳香族ハロゲン化物との反応を開始させて、その後に加えられた芳香族ハロゲン化物で反応を継続させて、開始剤の用量を減らすことができる。
【0096】
芳香族ハロゲン化物とマグネシウム粉末との化学反応は、次の化学方程式を参照してよい:
【0097】
【0098】
滴下により第二の反応器に亜リン酸ジエチルを添加して、グリニャール試薬を亜リン酸ジエチルと反応させて反応液を得て、それを1~4時間撹拌して、室温に冷却してよい。その後、該反応液を酸溶液に滴下して、クエンチ反応を行って、最後に化合物Cを得る。
【0099】
本開示の実施例における室温は20℃~30℃であってよく、例えば、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃などであってよい。具体的な室温は実際の操作環境に応じて確定すればよい。
【0100】
本開示の実施例において、第一の反応器及び第二の反応器は同じ反応器であってよい。化合物Cと有機溶媒との混合溶液を調製する場合、グリニャール試薬と化合物Cを個別に分離せず、対応した混合溶液を直接採用して調製を行うので、中間体の発生を回避して、工業化生産を容易にする。
【0101】
化合物Bと化合物Cとの反応が完了した後、洗浄処理及び分離処理によりアシルホスフィンオキシド化合物を得ることができる。
ここで、洗浄処理は混合溶液中の不純物を洗い落とすことができ、洗浄処理は有機溶媒又は水で行ってよい。分離処理は減圧蒸留、抽出などの処理であってよい。
【0102】
本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物の調製方法において、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させて、アシルホスフィンオキシド化合物を得る。この調製方法は、ジフェニルホスフィンクロリドを製造原料とせず、且つ酸化操作が不要となるので、安全性がよかったり、環境に優しかったり、操作が簡単だったり、収率が高かったりするという特徴を有して、アシルホスフィンオキシド化合物の製造に有利である。この方法で調製されたアシルホスフィンオキシド化合物は、安定した品質、高純度、高収率、及び低コストを有して、工業化生産に有利である。
【0103】
もう一方では、本開示の実施例はアシルホスフィンオキシド化合物を提供し、ここで、該化合物の化学構造式は以下のとおりである:
【0104】
【0105】
式中、R1は水素、C1-C6アルキル、メトキシ、メチルチオ、ジメチルアミノ、クロロホルミル、フェニル、ベンゾイル、(4-ジメチルアミノ)フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル又は(9-エチル-9H-カルバゾール)-3-イルである。
【0106】
R2はR1と同じである。
nは対応したベンゼン環上のR1の置換数であり、且つnは1、2又は3である。
mは対応したベンゼン環上のR2の置換数であり、且つmは1、2又は3である。
【0107】
本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物は、有機塩基及び有機溶媒の条件下で、化合物Bを化合物Cと反応させることによって得られ、該アシルホスフィンオキシド化合物は、製品の品質が安定しており、純度が高く、光開始活性が比較的に高いので、工業生産に広く適用できる。
【0108】
例示的には、この例は(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)を提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0109】
【0110】
該TPOは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下が完了した後、マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0111】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0112】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに105gのクロロトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに185gの2,4,6-トリメチルベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0113】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供したTPOを324g得、その純度は99.6%であり、亜リン酸ジエチルとしてTPOの収率は93%であった。
【0114】
例示的には、この例は(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジ(p-トリル)ホスフィンオキシドを提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0115】
【0116】
該(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジ(p-トリル)ホスフィンオキシドは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、30gのp-クロロトルエンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をp-クロロトルエンと反応させる。そして、フラスコに353gのp-クロロトルエンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下が完了した後、マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0117】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジ(p-トリル)ホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジ(p-トリル)ホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジ(p-トリル)ホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0118】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジ(p-トリル)ホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに197gのヨードトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに195gの2,4,6-トリメチルベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0119】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供した(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジ(p-トリル)ホスフィンオキシドを346g得、その純度は99.7%であり、亜リン酸ジエチルとして(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジ(p-トリル)ホスフィンオキシドの収率は92%であった。
【0120】
例示的には、この例は(p-ジアミノベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0121】
【0122】
該(p-ジアミノベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下が完了した後、マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0123】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0124】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに148gのブロモトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに176gのp-ジアミノベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0125】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供した(p-ジアミノベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを318g得、その純度は99.6%であり、亜リン酸ジエチルとして(p-ジアミノベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドの収率は91%であった。
【0126】
例示的には、この例は(p-メトキシベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0127】
【0128】
該(p-メトキシベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下が完了した後、マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0129】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0130】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに105gのクロロトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに164gのp-メトキシベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0131】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供した(p-メトキシベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを309g得、その純度は99.8%であり、亜リン酸ジエチルとして(p-メトキシベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドの収率は92%であった。
【0132】
例示的には、この例は(p-メチルチオベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0133】
【0134】
該(p-メチルチオベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下後、マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0135】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0136】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに105gのクロロトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに181gの(p-メチルチオベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0137】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供したTPOを310g得、その純度は99.6%であり、亜リン酸ジエチルとして(p-メチルチオベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドの収率は88%であった。
【0138】
例示的には、この例は(p-トリルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0139】
【0140】
該(p-トリルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドは以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下後、マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0141】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0142】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに105gのクロロトリメチルシランと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに208gのp-フェニルベンゾイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0143】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供した(p-トリルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドを344g得、その純度は99.6%であり、亜リン酸ジエチルとして(p-トリルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドの収率は90%であった。
【0144】
例示的には、この例は(1,4-フタロイル)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)を提供し、その化学構造式は以下のとおりである:
【0145】
【0146】
該(1,4-フタロイル)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)は以下の方法により調製される。
無水、無酸素、60℃のマイクロ還流及び撹拌の条件下で、75gのマグネシウム粉末と500mlのテトラヒドロフランとの混合溶液をフラスコに入れた。撹拌条件下で、フラスコに5gのジブロモエタンと、20gのクロロベンゼンと、200mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を1時間滴下して、マグネシウム粉末をクロロベンゼンと反応させる。そして、フラスコに320gのクロロベンゼンと300mlのテトラヒドロフランとの混合溶液を3時間滴下した。滴下が完了した後、マイクロ還流の状態で撹拌し続けて3時間反応して、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液を得た。
【0147】
フラスコにおける、グリニャール試薬とテトラヒドロフランとを含む混合溶液の温度を40℃~50℃とし、撹拌条件下でフラスコに138gの亜リン酸ジエチルを30分間滴下した。マイクロ還流の状態で撹拌を継続して3時間反応した後、室温に下げた。そして、撹拌条件下で、徐々にフラスコに質量濃度50%のクエン酸溶液を500ml加え、30分間撹拌し続け、30分間静置分層した。有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で減圧濃縮して有機残留物(ジフェニルホスフィンオキシドを含む)を得、テトラヒドロフランを回収した。水相を1Lのトルエンと混合し、室温で30分間撹拌し、30分間静置分層し、そしてトルエン相を分離し、上記分離した有機残留物と合わせて、ジフェニルホスフィンオキシド(化合物C)、トルエン及び塩化水素などの不純物を含む混合溶液を得た。順に300mlの質量濃度10%の重曹水溶液及び300mlの水で該混合溶液を洗浄し、50℃~60℃の条件下で約400mlのトルエンを減圧蒸留し、残りはジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液であった。
【0148】
室温及び撹拌の条件下で、フラスコの中にジフェニルホスフィンオキシドとトルエンとの混合溶液を220gのトリエチルアミンと混合し、40℃~50℃の条件下でフラスコに203gのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルと100mlのトルエンとの混合液を1時間滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し続けた。そして、フラスコに97gの1,4-フタロイルクロライド(化合物B)と200mlのトルエンとの混合溶液を2時間滴下した。そして、50℃の条件下で撹拌して2時間反応し、室温に下げた。
【0149】
室温の条件下で、500mlの水でフラスコ内の反応液を2回洗浄した。洗浄後、有機相を分離し、40℃~50℃の条件下で揮発物質を減圧蒸留により除去した。そして、有機相に600mlのイソプロピルエーテルを加え、55℃~65℃の条件下で2時間撹拌叩解し、その後5℃~10℃の条件下で1時間撹拌叩解し続け、吸引濾過をし、フィルターケーキを得た。フィルターケーキを冷たいイソプロピルエーテルで洗浄した後、40℃~50℃の条件下で減圧乾燥し、本実施例が提供した(1,4-フタロイル)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)を243g得、その純度は99.8%であり、亜リン酸ジエチルとして(1,4-フタロイル)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)の収率は91%であった。
【0150】
以上をまとめると、本開示の実施例が提供したアシルホスフィンオキシド化合物の調製方法を採用することで、安定した製品品質、高純度、及び高収率を有する製品を得ることができ、工業化生産に有利である。
【0151】
上述したのは本開示の例示的な実施例に過ぎず、本開示を制限するために用いられるわけではなく、本開示の精神及び原則の範囲内で行った全ての修正、同等の置換、改良などは本開示の請求範囲内に含まれる。