(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】塗料組成物、金属塗装物の製造方法および金属塗装物
(51)【国際特許分類】
C09D 167/00 20060101AFI20240208BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20240208BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240208BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240208BHJP
C09D 7/44 20180101ALI20240208BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240208BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240208BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240208BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240208BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240208BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D161/28
C09D175/04
C09D133/00
C09D7/44
C09D7/65
C09D7/61
C09D163/00
B32B27/20
B32B27/00 B
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2022059125
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-23
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章玄
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059824(JP,A)
【文献】特開2019-085463(JP,A)
【文献】特開平06-017001(JP,A)
【文献】特開2020-180245(JP,A)
【文献】特開2018-069185(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012290(WO,A1)
【文献】特開2014-047272(JP,A)
【文献】特開2008-050486(JP,A)
【文献】特開2007-277540(JP,A)
【文献】特開2019-172895(JP,A)
【文献】特開2018-123227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、顔料(C)および粘性制御剤を含む塗料組成物であって、
該水酸基含有樹脂(A)が、ポリエステル樹脂及び/又はアクリル樹脂であって、
該架橋剤(B)が、アミノ樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物であって、
該顔料(C)は、少なくとも鱗片状顔料(C1)および該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)を含み、
該顔料(C)の含有量は、該塗料組成物の固形分に対して、20~70質量%であり、
該粘性制御剤は、少なくとも1種の無機系粘性制御剤と少なくとも1種の有機系粘性制御剤とを含み、
該粘性制御剤の含有量が、該塗料組成物の固形分中の0.1~2.5質量%であり、
該塗料組成物の25℃におけるせん断速度0.1s
-1の粘度(X)とせん断速度100s
-1の粘度(Y)の粘度比(X/Y)が10~150である、塗料組成物。
【請求項2】
前記(C1)と前記(C2)の合計量に対する前記(C1)の質量割合が、40~92.5質量%である、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、水酸基価が30~150mgKOH/g、重量平均分子量が4000~100000、数平均分子量が1000~20000である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アミノ樹脂はメラミン樹脂であって、前記塗料組成物の固形分に対して、0.5~15質量%である、請求項1~3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記塗料組成物の25℃におけるせん断速度0.1s
-1の粘度(X)が0.1~100Pa・sで、かつ、せん断速度100s
-1の粘度(Y)が0.01~1Pa・sである、請求項1~4記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物は、さらにエポキシ樹脂(D)を含有し、
該エポキシ樹脂(D)の含有量が、前記水酸基含有樹脂(A)、前記架橋剤(B)および
該エポキシ樹脂(D)の合計量に対して、1~50質量%である、請求項1~5記載の塗料組成物。
【請求項7】
金属基材に、請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物を塗装した後、完全硬化する前に上塗り塗料を塗装する
、金属塗装物の製造方法。
【請求項8】
金属基材、該金属基材に隣接して請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物からなる塗布層を有する
、金属塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面、特に金属基材に塗膜を形成するための塗料組成物、金属塗装物の製造方法および金属塗装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根材、外装材、サイディング材、シャッター、雨戸等の建材、エアコンの屋内外機器、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品、ドアパネルやルーフパネル等の自動車用品、事務機器、家具等の多くの用途において、構造材として用いられる金属については、この金属を用いて製造される製品や部品に対して高い耐久性や美観が要求されることから、その表面を塗料組成物で塗装することが行われている。
【0003】
そして、このような金属の塗装については、金属基材に中塗り塗料によるプライマー層を設けその上に上塗り塗装を施すことが一般に行われている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-161229号公報
【文献】特開2005-272607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで上塗り塗料は、熱硬化型の液体塗料や粉体塗料が採用されることが多いため、塗膜全体としての金属基材との付着性(金属基材/プライマー層間及びプライマー/上塗り塗膜層間)が求められている。また、金属の腐食を防止するため厚膜の形成も求められるが、これらの課題の解決はいまだ十分であるとは言えなかった。
【0006】
本発明の目的は、金属基材(特には鉄、非鉄金属)との優れた付着性を有し、厚膜化が可能である塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくとも、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)および顔料(C)を含む塗料組成物であって、該顔料(C)は、少なくとも鱗片状顔料(C1)および該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)を含み、該塗料組成物の25℃におけるせん断速度0.1s-1の粘度(X)とせん断速度100s-1の粘度(Y)の比(X/Y)が10~150である塗料組成物。
2. 前記顔料(C)の含有量は、前記塗料組成物の固形分に対して、20~70質量%である前記1記載の塗料組成物。
3. 前記(C1)と(C2)の合計量に対する(C1)の質量割合が、40~92.5質量%である前記1または2記載の塗料組成物。
4. 前記架橋剤(B)がアミノ樹脂である前記1~3いずれかに記載の塗料組成物。
5. さらにエポキシ樹脂(D)を含有する前記1~4いずれかに記載の塗料組成物。
6. 前記エポキシ樹脂(D)の含有量は、前記水酸基含有樹脂(A)、前記架橋剤(B)および前記エポキシ樹脂(D)の合計量に対して、1~50質量%である前記5に記載の塗料組成物。
7. 金属基材に、請求項1~6いずれかに記載の塗料組成物を塗装した後、完全硬化する前に上塗り塗料を塗装する金属塗装物の製造方法。
8. 金属基材、該基材に隣接して前記1~6いずれかの塗料組成物からなる塗布層を有する金属塗装物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属基材との優れた付着性を有し、厚膜化が可能である塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の塗料組成物、金属塗装物の製造方法および金属塗装物を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0011】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、少なくとも、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)および顔料(C)を含む塗料組成物であって、該顔料(C)は少なくとも鱗片状顔料(C1)および該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)を含み、該塗料組成物の25℃におけるせん断速度0.1s-1の粘度(X)とせん断速度100s-1の粘度(Y)の比(X/Y)が10~150である、ことを特徴とする。
【0012】
<水酸基含有樹脂(A)>
水酸基含有樹脂(A)としては、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂(A1)や水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A2)が挙げられる。
【0013】
水酸基含有樹脂(A)は、水酸基価1~200mgKOH/gのものを適宜選択することができ、30~150mgKOH/gが好ましい。水酸基含有樹脂の重量平均分子量は4000~100000であり、好ましくは8000~80000である。水酸基含有樹脂の数平均分子量は1000~20000であり、好ましくは1500~10000である。ガラス転移温度(Tg)は1~100℃であり、好ましくは10~80℃である。
【0014】
本発明における水酸基価は、試料1g中の水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0015】
本発明における数平均分子量は、SEC法(サイズ排除クロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。またTgは、DSCによって測定できる。
【0016】
≪水酸基含有ポリエステル樹脂(A1)≫
本発明で使用できる水酸基含有ポリエステル樹脂として、多価アルコールと多塩基酸とから公知のエステル化法により得られる種々のポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0017】
多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0018】
多塩基酸として、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水マレイン酸、フマール酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、さらに、必要に応じて、安息香酸、p-ターシャリーブチル安息香酸等の一塩基酸を併用することもできる。
【0019】
上記の水酸基含有ポリエステル樹脂(A1)は、単独で用いることができるほか、必要により、2種以上を併用して使用することもできる。
【0020】
≪水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A2)≫
本発明で使用できる水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A2)は、例えば、水酸基を含有する(メタ)アクリレートモノマー1種以上と、水酸基を含有しない(メタ)アクリレートモノマー1種以上との共重合体が挙げられる。
【0021】
必要に応じて、他の重合性不飽和モノマーを共重合させたものであってもよい。なお、ここで、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0022】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と2価アルコールとのモノエステル化物や、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
水酸基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート、(アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
共重合させてもよい他の重合性不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル基含有芳香族化合物や、酢酸ビニル等のビニル基含有化合物、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0025】
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A2)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<架橋剤(B)>
水酸基含有樹脂(A)に対して使用できる架橋剤としては、例えば、アミノ樹脂およびポリイソシアネート化合物(好ましくはブロック化ポリイソシアネート化合物)が好適に挙げられる。
【0027】
架橋剤は、塗料組成物の固形分に対して、0.5~15質量%であることが好ましく、さらには2~10質量%であることが好ましい。架橋剤は、市販品を好適に使用することができる。また、架橋剤は、反応させる樹脂の種類に応じて適宜選択されるものであるが、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
≪アミノ樹脂≫
アミノ樹脂としては、硬化触媒の存在下又は非存在下において、樹脂の水酸基と反応して樹脂を硬化することができるものであればよく、特には限定されないが、好適なものとしてメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられ、この中でもメラミン樹脂が好ましい。
【0029】
メラミン樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノ成分と、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒドとの反応によって得られる樹脂や、アルデヒドがアミノ成分に付加した部分を、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-プロピルアルコール、i-ブチルアルコール等のアルコールによって、エーテル化した樹脂等が挙げられる。
【0030】
≪ポリイソシアネート化合物≫
ポリイソシアネート化合物としては、硬化触媒の存在下又は非存在下において、樹脂の水酸基と反応して樹脂を硬化することができるものであればよく、特に限定されるものではなく、好適なものとしてポリイソシアネート化合物の遊離イソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物(いわゆるブロック化イソシアネート化合物)が挙げられる。
【0031】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート若しくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、水素添加キシリレンジイソシアネート若しくはイソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート若しくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体、さらにはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。
【0032】
また、イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系、メタノール、エタノール、n-又はi-プロピルアルコール、n-,i-又はt-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系、ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等のブロック化剤を好適に使用することができる。
【0033】
そして、これらポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0034】
<その他の樹脂>
本発明の塗料組成物には、付着性改良のためエポキシ樹脂(D)を含有することができる。
【0035】
≪エポキシ樹脂(D)≫
本発明のエポキシ樹脂(D)としては、ビスフェノール型、およびフェノールノボラック型に代表される一般的なエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「jER♯828」(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194、分子量約380、三菱ケミカル社製)、「jER♯834」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270、分子量約470、三菱ケミカル社製)、「jER♯1001」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500、分子量約900、三菱ケミカル社製)、「jER♯1004」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量875~975、分子量約1600、三菱ケミカル社製)、「jER♯1007」(ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量1750~2200、分子量約2900、三菱ケミカル社製)、「jER♯807」(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、分子量約330、三菱ケミカル社製)商品名「jER♯154」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量176~180、分子量約540、三菱ケミカル社製)、商品名「YR-450」(ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ当量400~500、分子量約800~1000、東都化成社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明に用いられるエポキシ樹脂(D)は上記エポキシ樹脂に限定されるものではなく、一般に市販されているその他のエポキシ樹脂等も使用することができる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂(D)は、付着性の点からエポキシ当量が100~3000のものが好ましい。また塗膜の付着性の点からより好ましくは、150~1000である。
【0038】
エポキシ樹脂(D)は、塗膜物性や塗装作業性の点から数平均分子量(SECによるポリスチレン換算)が200~5000のものが好ましく、より好ましくは300~2000である。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂(D)は、水酸基含有樹脂(A)、前記架橋剤(B)およびエポキシ樹脂(D)の合計量に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましい。本発明のエポキシ樹脂(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<顔料(C)>
本発明の顔料(C)は、少なくとも鱗片状顔料(C1)および該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)を含み、場合により鱗片状顔料(C1)および体質顔料(C2)以外の顔料を含んでもよい。
【0041】
顔料(C)の含有量は、塗料組成物の固形分に対して、20~70質量%であることが好ましく、さらには40~70質量%であることが好ましい。鱗片状顔料(C1)の含有量は、塗料組成物の固形分に対して、10~40質量%であることが好ましい。
【0042】
また、鱗片状顔料(C1)と該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)の合計量(C1+C2)に対する(C1)の含有量の割合は、40~92.5質量%であることが好ましい。
【0043】
鱗片状顔料(C1)を含むことにより、乾燥膜厚60μm以上になるよう塗装した場合においても、基材(特にはアルミニウムやステンレスなどの非鉄金属)および上塗り塗膜との付着性に優れる。
【0044】
≪鱗片状顔料(C1)≫
発明の鱗片状顔料(C1)は、箔のような薄く平らな形状をした顔料であり、その具体例としては、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、アルミニウム等の金属顔料や、ガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリンクレー、雲母状酸化鉄等が挙げられるが、中でもガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリンクレーが好ましく、タルクがより好ましい。
【0045】
なお、金属顔料には、ステンレス等の合金の顔料も含まれる。また、例えばタルクやマイカは、酸化チタン等の金属酸化物で表面処理されていてもよい。これら鱗片状顔料(C1)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アスペクト比は、付着性を向上させる観点から、2~100であることが好ましく、3~50であることがより好ましく、5~40であることがさらに好ましい。そして平均粒子径が0.5~50μmであることが好ましく、1~30μmであることが好ましい。平均粒子径は、投影した面の最も長い径を、アスペクト比とは、粒子の最長径と最短径の比率をいい電子顕微鏡写真による100個の粒子での平均値をいう。
【0047】
≪該鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)≫
本発明の塗料組成物は、鱗片状顔料以外(C1)の体質顔料(C2)を含むものである。鱗片状顔料(C1)以外の体質顔料(C2)(以下単に、体質顔料(C2)ともいう)を鱗片状顔料以外(C1)と共に含むことにより、本発明の塗料組成物を塗装した後に上塗り塗料を塗装して作製される塗装体の外観が良好で、さらに基材および上塗り塗膜との付着性に優れる。
【0048】
体質顔料(C2)は、公知の材料が使用でき、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、および酸化マグネシウムなどが挙げられるが、中でも炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく、硫酸バリウムがより好ましい。
【0049】
≪(C1)、(C2)以外の顔料≫
本発明の塗料組成物は、鱗片状顔料(C1)および体質顔料(C2)以外の機能を有する顔料として、防錆顔料、着色顔料を含むことができる。
【0050】
[防錆顔料]
防錆顔料としては、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/ リン酸混合顔料等が挙げられる。
【0051】
本発明の塗料組成物において、固形分中における防錆顔料の含有量は、1~15質量%であることが好ましい。これら防錆顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
[着色顔料]
着色顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、等の無機着色顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ナフトールレッド、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、およびジオキサジンバイオレット等の有機着色顔料が挙げられる。
【0053】
本発明の塗料組成物において、固形分中における着色顔料の含有量は、1~25質量%であることが好ましい。これら顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
<せん断速度>
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s-1の粘度(X)が0.1~100Pa・sであり、かつせん断速度1,000s-1の粘度(Y)が0.01~1Pa・sであることが好ましい。粘度はレオメーター(TAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を25℃に調整した後測定される。
【0055】
本発明においては、鱗片状顔料(C1)と体質顔料(C2)との組み合わせによってせん断速度を調整することができることを見出した。さらにこの組み合わせは、金属基材への付着性も向上させる。
【0056】
<その他の添加剤>
本発明の塗料組成物には、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、粘性制御剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、溶剤および導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0057】
≪粘性制御剤≫
本発明の塗料組成物は、25℃におけるせん断速度0.1s-1の粘度(X)とせん断速度100s-1の粘度(Y)の比(X/Y)が10~150に調整するために粘性制御剤を補助的に用いることができる。
【0058】
粘性制御剤としては、一般にチクソトロピー性を示すものを含有でき、例えば、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドの燐酸塩等のポリアマイド系粘性制御剤、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系粘性制御剤、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系粘性制御剤等を粘性制御剤として挙げることができる。耐水性および厚膜塗装性を向上させる点から、無機系粘性制御剤(例えば、有機ベントナイト系粘性制御剤など)と有機系粘性制御剤(例えば、ポリアマイド系粘性制御剤、ポリエチレン系粘性制御剤など)を組み合わせることが好ましい。
【0059】
粘性制御剤は、塗料組成物の固形分中の0.1~2.5質量%であることが好ましい。
【0060】
≪シランカップリング剤≫
本発明の塗料組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、アクリル基、イソシアネート基等の反応性基を有するものが好ましく、特にエポキシ基を有するものが好ましい。具体的には、信越シリコーン社製、東レ・ダウコーニング社製等の市販のシランカップリング剤を使用することができる。
【0061】
シランカップリング剤の含有量は、塗料組成物の固形分中0~5.0質量%であり、0.5~3.0質量%であることが好ましい。
【0062】
≪溶剤≫
本発明の塗料組成物は、溶剤を使用してもよい。溶剤としては、特に限定なく使用することができるが、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素類、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル、2-エチルヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。本発明においては、炭化水素類、アルコール類を好ましく使用することができる。
【0063】
<金属基材>
本発明の塗料組成物を適用するのが好ましい金属基材としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、該基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、鉄鋼が好ましい。
【0064】
さらに、上記金属基材としては、各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法でアルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。
【0065】
なお、金属基材には、金属薄膜を表面に備える各種プラスチック基材(その形状は、例えば3次元の構造を持つ筐体およびフィルム等がある)も含まれる。金属の成膜には、蒸着、スパッタ、メッキ法等が利用できる。金属薄膜としては、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銀、白金、ニッケル等の金属の薄膜が挙げられる。
【0066】
<上塗り塗料>
金属基材に、本発明の塗料組成物を塗装した後、高い耐久性や美観を付与するなどの目的で上塗り塗料を塗装してもよい。
【0067】
上記上塗り塗料には、主溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料、主溶媒として水を用いる水系塗料、無溶剤系塗料、粉体塗料の各種エナメル又はクリア塗料等の従来から公知の各種塗料が利用可能である。
【0068】
上記上塗り塗料は、塗膜形成性能を有する樹脂および硬化剤等を含有するものが好ましく使用できる。塗膜形成性能を有する樹脂と硬化剤の組み合わせとしては、例えば、水酸基含有樹脂とアミノ樹脂の組み合わせ、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート系硬化剤(ブロック化されたポリイソシアネートであってもよい。)の組み合わせ、カルボキシル基含有樹脂とβ-ヒドロキシアクリルアミドの組み合わせなどが挙げられる。
【0069】
上記水酸基含有樹脂としては、例えば、水酸基含有アルキド樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有フッ素樹脂が挙げられる。これらの水酸基含有樹脂は一部が変性されていてもよい。
【0070】
上記カルボキシル基含有樹脂としては、カルボキシル基含有アルキド樹脂、カルボキシル基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、カルボキシル基含有フッ素樹脂が挙げられる。これらのカルボキシル基含有樹脂は一部が変性されていてもよい。
【0071】
上記上塗り塗料中において、上記硬化剤成分の含有量は、上塗り塗料を十分に硬化させることができる量であれば良い。硬化剤成分がアミノ樹脂である場合、水酸基含有樹脂/アミノ樹脂の質量比=95/5~35/65の範囲で調製されることが好ましい。なお、アミノ樹脂は自己架橋も起こすため、アミノ樹脂が当量より多く含まれていても塗膜の形成に寄与する。
【0072】
また、ポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、水酸基とNCO基のモル比(OH/NCO)=0.8~1.2で調整されることが好ましい。β-ヒドロキシアクリルアミドを硬化剤として使用する場合、カルボキシル基と水酸基のモル比(COOH/OH)=0.8~1.2で調整されることが好ましい。
【0073】
<金属塗装物の製造方法>
本発明の金属塗装物の製造方法は、金属基材である被塗物上に、本発明の塗料組成物をプライマー塗料として被塗布物に塗装した後、上塗塗料組成物を塗装し、積層塗膜を形成する。
【0074】
上塗塗料組成物については、プライマー塗料の塗装物が十分に乾燥又は硬化させた後に塗装してもよいし、プライマー塗料の塗装物が未乾燥または未硬化の完全硬化する前の状態で塗装してもよい。上塗塗料組成物を塗装し、積層塗膜を形成した後、乾燥および硬化反応を完結させ、最終目的物である積層塗装物を形成する。
【0075】
本発明においては、プライマー塗料の塗装物を十分に乾燥又は硬化させた後に、粉体塗料を塗装した場合においても、塗膜外観に優れる積層塗装物を得ることができる。
【0076】
本発明の塗料組成物および上塗塗料組成物を塗装してプライマー塗膜および上塗塗膜を製造するにあたっては、通常の塗装方法を適用することができる。
【0077】
例えば、例えば、ディッピング法、静電塗装法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法及びロールコート法が好ましい。
【0078】
本発明の塗料組成物を塗装して得られるプライマー塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、10~80μmが好ましい。また、上塗塗料組成物を塗装して得られる上塗塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、10~80μmが好ましい。
【0079】
プライマー塗膜や上塗塗膜の膜厚をそれぞれ上記範囲に設定することにより、積層塗膜の防食性、層間付着性及び塗膜外観を優れたものとすることができる。
【0080】
最終目的物である積層塗装物を作製するにあたり、プライマー塗膜や上塗塗膜の乾燥および硬化反応を完結させるために焼付け(加熱乾燥)を行うことが好ましい。プライマー塗膜の焼付条件については、100~200℃で5~90分加熱乾燥することが好ましい。
【0081】
上塗塗膜の焼付条件については、100~200℃で5~90分加熱乾燥することが好ましい。また、プライマー塗膜と上塗塗膜とを積層塗膜として同時に最終的に硬化反応させる場合は、100~200℃で5~90分加熱乾燥することが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、断りの無い限り23℃、50%RH雰囲気下で測定した。
【0083】
<1.ポリエステル樹脂溶液Aの製造方法>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン5部、ネオペンチルグリコール22部、無水フタル酸13部、イソフタル酸13部、アジピン酸10部、及びキシレン3部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が8mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン34部を入れ、混合して加熱残分60%、水酸基価73mgKOH/g、及び数平均分子量3200、重量平均分子量30000のポリエステル樹脂の樹脂溶液Aを得た。
【0084】
<2.プライマー塗料組成物1(比較例1)の調製>
容器に、ポリエステル樹脂溶液Aを32.2質量部、メラミン樹脂溶液を3.8質量部、タルク(C1-1)を21.7質量部、酸化チタンを12.6質量部、トリポリリン酸アルミニウム5.2質量部、エポキシ樹脂溶液を1.65質量部、粘性調整剤溶液E1を0.5質量部、粘性調整剤溶液E2を0.52質量部、粘性調整剤溶液E3を5.2質量部、シリコーン系表面調整剤溶液を0.1質量部、シランカップリング剤(KBM-403)を1.05質量部、キシレン10.33質量部、イソブチルアルコール5.15質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、プライマー塗料組成物1を調製した。
【0085】
<3.プライマー塗料組成物2~18の調製>
プライマー塗料組成物1の原料配合を、表1~表4の配合に変更する以外は、実施例1と同様の製造方法により、プライマー塗料組成物2~18(実施例1~13、比較例2~5)を調製した。
【0086】
表1~表4に記載の原料は次の通りである。
1)ポリエステル樹脂溶液A(上述の製造方法により調製される。)
2)メラミン樹脂溶液(ブチル化メラミン樹脂のイソブチルアルコール/キシレン混合溶液、商品名:メラン 284A、昭和電工マテリアルズ社製、不揮発分60質量%)
3)タルク(C1-1)(商品名:MS-K、日本タルク社製、白色度93%、平均粒子径D50:16μm(レーザー回折法)、吸油量25ml/100g)
4)タルク(C1-2)(商品名:シムゴン、日本タルク社製、白色度83%、平均粒子径D50:8μm(レーザー回折法)、吸油量35ml/100g)
5)タルク(C1-3)(商品名:RA、日本タルク社製、白色度91%、平均粒子径D50:14μm(レーザー回折法)、吸油量26ml/100g)
【0087】
6)沈降性硫酸バリウム(商品名:沈降性硫酸バリウム100、堺化学工業社製、平均粒子径0.5μm、吸油量15ml/100g)
7)炭酸カルシウム(商品名:サンライトSL-1000、竹原化学社製、平均粒子径3μm、吸油量20ml/100g)
8)酸化チタン(商品名:TITONE R-5N、堺化学工業社製)
9)カーボンブラック(商品名:MA100、三菱ケミカル社製)
10)トリポリリン酸二水素アルミニウム(商品名:K-White G105、テイカ社製、表面を亜鉛化合物で処理したトリポリリン酸2水素アルミニウム)
【0088】
11)エポキシ樹脂溶液D1(三菱ケミカル社製エポキシ樹脂JER1001のキシレン溶液(不揮発分70質量%)
12)粘性調整剤溶液E1(楠本化成社製ディスパロン4200(酸化ポリエチレン)のキシレン溶液、不揮発分20質量%)
13)粘性調整剤溶液E2(商品名:共栄社化学社製、高級脂肪酸アマイドのキシレン/エタノール/メタノール混合溶液、不揮発分10質量%)
14)粘性調整剤溶液E3(ELEMENTIS社製BENTONE 34(有機ベントナイト)のキシレン/メタノール混合溶剤、不揮発分10質量%)
15)表面調整剤溶液(信越シリコーン社製KF-69(シリコーンオイル)のキシレン溶液、不揮発分1質量%)
【0089】
<4-1.上塗塗料組成物(艶有り)の調製>
容器に、アクリル樹脂溶液(商品名:アクリディック44-127、DIC社製、不揮発分50質量%、Tg35℃、水酸基価(固形分)70)を35質量部、メラミン樹脂溶液(ブチル化メラミン樹脂のイソブチルアルコール/キシレン混合溶液、商品名:メラン 284A、昭和電工マテリアルズ社製、不揮発分60質量%)を10質量部、エポキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製エポキシ樹脂JER1001のキシレン溶液(不揮発分60質量%))を2質量部、酸化チタン(商品名:TITONE R-5N、堺化学工業社製)を34.85質量部、赤色酸化鉄(Sicotrans Red L2817,BASF社製)を0.1質量部、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱ケミカル社製)を0.05質量部、炭酸カルシウム(商品名:サンライトSL-1000、竹原化学社製)を5質量部、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業社製)を0.5質量部、表面調整剤溶液(信越シリコーン社製KF-69(シリコーンオイル)のキシレン溶液、不揮発分1質量%)を0.2質量部、イプゾール100(出光興産社製溶剤)を9.3質量部、イソブチルアルコール3質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、上塗塗料組成物(艶有り)を調製した。
【0090】
<4-2.上塗塗料組成物(艶なし)の調製>
容器に、アクリル樹脂溶液(商品名:アクリディック44-127、DIC社製、不揮発分50質量%、Tg35℃、水酸基価(固形分)70)を35質量部、メラミン樹脂溶液(ブチル化メラミン樹脂のイソブチルアルコール/キシレン混合溶液、商品名:メラン 284A、昭和電工マテリアルズ社製、不揮発分60質量%)を10質量部、エポキシ樹脂溶液(三菱ケミカル社製エポキシ樹脂JER1001のキシレン溶液(不揮発分60質量%))を2質量部、酸化チタン(商品名:TITONE R-5N、堺化学工業社製)を34.85質量部、赤色酸化鉄(Sicotrans Red L2817,BASF社製)を0.1質量部、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱ケミカル社製)を0.05質量部、炭酸カルシウム(商品名:サンライトSL-1000、竹原化学社製)を5質量部、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業社製)を0.5質量部、表面調整剤溶液(信越シリコーン社製KF-69(シリコーンオイル)のキシレン溶液、不揮発分1質量%)を0.2質量部、イプゾール100(出光興産社製溶剤)を6.8質量部、イソブチルアルコール3質量部、シリカ(SYLOID C906、WRグレース社製、平均粒子径6μm)2.5質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、上塗塗料組成物(艶なし)を調製した。
【0091】
<5-1.複層塗膜形成塗板の作成>
(実施例1(プライマー塗料3)の複層塗膜形成塗板の作成)
下記の工程1~工程3によって、実施例1の複層塗膜形成塗板(本発明の積層塗装物に該当する)を作製した。
【0092】
工程1:冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)にプライマー塗料組成物1を用い、乾燥膜厚が60μmになるようにスプレー塗装にて垂直塗装、25℃で5分間セッティングしプライマー塗膜を形成した。
工程2:次いでプライマー塗膜上に、上塗塗料組成物1を用い、乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装にてウエットオンウエットで垂直塗装をして、上塗塗膜を形成した。
工程3:工程1~工程2によって得られた積層塗膜を、25℃で10分間セッティングした後、150℃で20分間加熱乾燥(焼き付け)させて実施例1の複層塗膜形成塗板(積層塗装物)を得た。
【0093】
(実施例2~13、比較例1~5)
工程1のプライマー塗料組成物と工程2の上塗塗料組成物を表に示す組み合わせとする以外は、実施例1と同様にして、複層塗膜形成塗板を作製した。
また、各プライマー塗料について、上塗塗料組成物1と塗装した塗板と上塗塗料組成物2を塗装した塗板をそれぞれ作製した。
【0094】
<5-2:光沢値評価のための基準塗板作成>
下記の方法によって、光沢値評価のための基準塗板A、Bを作製した。
冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)に上塗塗料組成物(艶有)を用い、乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、25℃で10分間セッティングし、その後、150℃で20分間加熱乾燥(焼き付け)することにより、基準塗板Aを作製した。
【0095】
また、上塗塗料組成物(艶有)の代わりに、上塗塗料組成物(艶なし)を用い、上述の方法と同様の方法により、基準塗板Bを作製した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
<6.性能評価>
下記の評価を行った。結果を表5~8に示す。
≪レオロジー評価≫
実施例1~13及び比較例1~5のプライマー塗料について、レオメーター(TAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を25℃に調整した後、各々のプライマー塗料の25℃におけるせん断速度0.1s-1の粘度(X)とせん断速度100s-1の粘度(Y)をそれぞれ測定し、その比(X/Y)を算出した。粘度の単位はPa・sである。
【0101】
<評価結果>
・X/Yが10未満では、厚膜塗装(膜厚60μm)を行った際、たれやすい状態であった。
・X/Yが10~150では、問題なく、厚膜塗装(膜厚60μm)を行うことができた。
・X/Yが150超では、静置している状態の塗料の流動性が低く、塗装がしにくい状態であった。
【0102】
≪塗板の光沢値測定≫
実施例1~13、比較例1~5の複層塗膜形成塗板、基準塗板A、基準塗板Bについて、「VG7000」(商品名、日本電色工業株式会社製)によって20°光沢及び60°光沢の値をそれぞれ測定した。
複層塗膜形成塗板の光沢値と、基準塗板の光沢値との差が10以下(好ましくは7以下)であれば、プライマー塗膜の外観が良好であると判定した。
【0103】
≪防食性の評価≫
実施例1~13、比較例1~5の複層塗膜形成塗板をJIS K5600 7-1:1999に規定されている耐中性塩水噴霧性試験に供した。240時間保管し、取り出した後の剥離箇所の錆の状態を評価した。
○:カット線からの片側最大錆幅 3.0mm以下。
△:カット線からの片側最大錆幅 3.0~5.0mm。
×:カット線からの片側最大錆幅 5.0mm以上。
【0104】
≪付着性の評価≫
JIS K 5600-5-6:1999に準じて各複層塗膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥した後に、残ったゴバン目塗膜の数を評価した。剥離個所が被塗物とプライマー塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存しなかったとして評価した。剥離個所が複層塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存したが層間付着性において残存しなかったとして評価した。
○:残存個数/全体個数=100個/100個。
△:残存個数/全体個数=90個~99個/100個。
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
上記の通り本発明は、金属基材との優れた付着性を有し、厚膜化が可能である塗料組成物であることが判る。
【符号の説明】
【0110】
1 基材
2 本発明の塗料組成物による塗膜
3 上塗塗膜