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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】プレス用金型
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/00 20060101AFI20240208BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20240208BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B21D37/00 Z
B21D22/20 Z
B21D37/20 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022072994
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2021118253の分割
【原出願日】2021-07-16
(65)【公開番号】P2023013940
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-04-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良裕
(72)【発明者】
【氏名】小柳 宗一郎
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-285547(JP,A)
【文献】特開昭59-171611(JP,A)
【文献】特開2002-224764(JP,A)
【文献】特開2000-334313(JP,A)
【文献】特開平09-099332(JP,A)
【文献】特開平06-106662(JP,A)
【文献】特開2000-024734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/00 - 47/00
B21D 11/00
B21D 22/20 - 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向下方に設けられた下金型と、上方に設けられた上金型と、この上金型を上下動させるプレス機構とを備える金属板材のプレス成型装置に使用する前記上金型において、
前記上金型は、平面視で第1方向及びこれと直交する第2の方向を有し、周囲の枠部と、加工面部と、前記加工面部と交差する前記枠部内に位置するリブとを一体に有し、
前記リブによって囲まれた空間、あるいは前記リブ及び前記枠部によって囲まれた空間によるセグメントが複数形成されており、
複数の前記セグメントは、前記第1の方向に隣接して複数及び前記第2の方向に隣接して複数、平面視で規則的な形状を形成しており、
前記リブとは別の第1のリブが、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントを区切って前記第1の方向に沿って延びており、
前記第1のリブは、平面視で、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントの規則的な形状を前記第2の方向に分割しており、
前記第1のリブは、前記加工面部における、前記プレス成型装置によるL曲げ加工の曲部に沿っており、
前記規則的な形状はハニカム形状である、
ことを特徴とするプレス用上金型。
【請求項2】
前記規則的な形状はハニカム形状であり、前記第1のリブは、平面視で、前記第1の方向に隣接する複数のハニカム形状の前記セグメントの規則的な形状を前記第2の方向に分割している、前記請求項1に記載のプレス用上金型。
【請求項3】
高さ方向下方に設けられた下金型と、上方に設けられた上金型と、この上金型を上下動させるプレス機構とを備える金属板材のプレス成型装置に使用する前記上金型において、
前記上金型は、平面視で第1方向及びこれと直交する第2の方向を有し、周囲の枠部と、加工面部と、前記加工面部と交差する前記枠部内に位置するリブとを一体に有し、
前記リブによって囲まれた空間、あるいは前記リブ及び前記枠部によって囲まれた空間によるセグメントが複数形成されており、
複数の前記セグメントは、前記第1の方向に隣接して複数及び前記第2の方向に隣接して複数、平面視で規則的な形状を形成しており、
前記リブとは別の第1のリブ(1A)が、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントを区切って前記第1の方向に沿って延びており、
前記第1のリブ(1A)は、平面視で、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントの規則的な形状を前記第2の方向に分割しており、
前記第1のリブ(1A)は、前記加工面部(1W)における、前記プレス成型装置によるL曲げ加工の曲部(Z)に沿っており、
前記セグメントは、前記第1のリブ(1A)と、この第1のリブ(1A)と交差する複数の第2のリブ(1B)とを有しており、
前記枠部(1F)と加工面部(1W)とがなす第1の方向に沿う角部が、前記第1のリブ(1A)と前記枠部(1F)とで囲まれた凹部(2)内方に曲率中心を有する弧状部(3A)を形成しており、
前記第1のリブ(1A)と加工面部(1W)とがなす第1の方向に沿う金型中央側の角部が、前記第1のリブ(1A)と第2のリブ(1B)とで囲まれた凹部(2)内方に曲率中心を有する弧状部(3B)を形成しており、
前記弧状部(3A)の曲率半径は、前記弧状部(3B)の曲率半径より大きい
ことを特徴とするプレス用上金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機に取付られるプレス用上金型に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板材のプレス成型は、生産性が高く、寸法精度に優れ、製品間の強度ばらつきが少なく品質が安定していることから、自動車、機械、電気機器、輸送用機器等の製造に広く用いられている最も一般的な加工方法である。
【0003】
しかるに、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、そのためにプレス加工性が難しくなる傾向にある。
【0004】
プレス成型機は、固定の下金型と、これに対して、プレス機により上下動する上金型とを有する。
上金型にはプレス加工性の観点から高い剛性が求められるために、従来は、加工面のみならず、背面に至る全体が無垢のブロック状のものであった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-175447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、無垢の上金型であると、重量的に重いので、プレス機の上下動機構などに負担がかかり、高速での成型が困難となり、生産性を阻害する要因となる。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、軽量化を図ることができるとともに、十分な剛性を有する上金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したプレス用上金型は次の態様を有する。
高さ方向下方に設けられた下金型と、上方に設けられた上金型と、この上金型を上下動させるプレス機構とを備える金属板材のプレス成型装置に使用する前記上金型において、
前記上金型は、平面視で第1方向及びこれと直交する第2の方向を有し、周囲の枠部と、加工面部と、前記加工面部と交差する前記枠部内に位置するリブとを一体に有し、
前記リブによって囲まれた空間、あるいは前記リブ及び前記枠部によって囲まれた空間によるセグメントが複数形成されており、
複数の前記セグメントは、前記第1の方向に隣接して複数及び前記第2の方向に隣接して複数、平面視で規則的な形状を形成しており、
前記リブとは別の第1のリブが、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントを区切って前記第1の方向に沿って延びており、
前記第1のリブは、平面視で、前記第1の方向に隣接する複数の前記セグメントの規則的な形状を前記第2の方向に分割しており、
前記第1のリブは、前記加工面部における、前記プレス成型装置によるL曲げ加工の曲部に沿っており、
前記規則的な形状はハニカム形状である、
ことを特徴とするプレス用上金型。
【0009】
この態様によれば、加工面に印加する上下方向の成形荷重を、リブ、あるいはリブ及び枠部と、これによって囲まれた空間との組み合わせによるセグメントの複数によって支持し、成型時の圧縮荷重による金型に作用する外向きの水平荷重を前記枠部で支持できる。
さらに、形成したセグメントの空間により軽量化を図ることができる。
要すれば、複数のセグメントと枠部とにより。軽量でありながら十分な剛性を有する金型を提供することができる。
【0010】
第1のリブは、複数の第2のリブを交差して第1の方向に延びるものであるから、第1の方向における曲げに対する剛性は高いものである。
【0011】
かかる第1のリブが、加工面部の曲部に沿っている、すなわち第1のリブが延びる方向と、加工面部の曲部が延在する方向とが一致し、その方向と交差する方向の位置も一致することにより、曲げ加工時に作用する大きな曲げ荷重を第1のリブで支持できる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量化を図ることができるとともに、十分な剛性を有する上金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例に係る上金型例の斜視図である。
図2】前後の後方からの視図である。
図3】3-3線矢視図である。
図4】参考例1の上金型の平面視図である。
図5】参考例2の上金型の平面視図である。
図6】参考例3の上金型例の斜視図である。
図7】参考例4の上金型の平面視図である。
図8】参考例5の上金型の平面視図である。
図9】参考例6の上金型の平面視図である。
図10】参考例7の上金型の平面視図である。
図11】プレス機の概要例を部分的に示す正面図である。
図12】シミュレーション評価結果の説明図である。
図13】参考例8の平面視図である。
図14】参考例8の平面視図である。
図15】参考例8の平面視図である。
図16】参考例8の平面視図である。
図17】態様を異にする実施例に係る上金型例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るプレス機は、高さ方向下方に設けられた下金型と、上方に設けられた上金型と、この上金型を上下動させるプレス機構とを備える。このプレス機としては、例えば図11に示す冷間プレス成型装置11を挙げることができる。熱間プレス成型装置であってもよい。
【0021】
プレス成型装置11は、金属板材12を成型するもので、下金型13と、上金型14とを含む成型部を有する。
プレス成型装置11の構成を説明するうえで、方向を示すにあたっては、便宜上、紙面の手前側を前側とし、紙面の裏側を後側として説明する。また、図11に示すプレス成型装置11を前側から見た状態で上側をプレス成型装置11の上側、左右をプレス成型装置11の左右として説明する。
金型についても同様であり、前後をX方向、左右をY方向、高さ方向をZ方向ともいう。また、X方向及びY方向の一方を第1の方向という場合、他方が第2の方向である。
【0022】
下金型13は、下金型ホルダー23を介して成型部の基台24に取付けられている。基台24には上下方向に延びる複数のガイドロッド25が立設されている。上金型14は、上金型ホルダー26に取付けられている。上金型ホルダー26は、ガイドロッド25に上下方向へ移動自在に支持されている。また、上金型ホルダー26は、図示していない加圧装置に接続されており、この加圧装置によって駆動されて上下方向に移動する。上型ホルダー26に取付けられた上金型14は、この上型ホルダー26の昇降に伴って、例えば図3に示す成型位置と、図11に示す退避位置との間で上下方向に移動する。このようにしてプレス機構が構成されている。
【0023】
金属板材12を成型する例として、例えば自動車車体用の金属板を成型する例、とりわけハイテン金属板を成型する挙げることができる。
【0024】
前述のように、上金型及び下金型にはプレス加工性に観点から高い剛性が求められるために、従来は、加工面のみならず、背面に至る全体が無垢のブロック状のものであった。
【0025】
以下の説明において、実施の形態の構成を上金型を中心に説明し、必要な限度で下金型についても説明を加えることとする。
【0026】
以下の態様においては、金型として、加工面を含む加工面部1Wと反対がわにおいて、枠部1F、第2のリブ1Bで仕切られた凹部(空間)2が形成され、複数のセグメントを有するものが使用される。下金型には第3のリブ1Cが形成されている(図3参照)。
これによって、軽量化を図ることができるとともに、十分な剛性を有する金型を提供することができる。また、特に上金型については、軽量化に伴って、プレス機の上下動機構などにかかる負担が小さくなり、高速での高精度での成型が可能となる。
【0027】
この上金型としては、種々の形態のものを使用可能である。その例として、次のものを挙げることができる。
(1)図4に示す平面視で正格子状のリブ1Bを有する正格子形上金型14A
(2)図5に示す平面視で斜格子状のリブ1Bを有する斜格子形上金型14B
(3)図6に示す斜視視でハニカム状のリブ1Bを有するハニカム形上金型14C
(4)図7に示す平面視でトラス状のリブ1Bを有するトラス形上金型14D
(5)図8に示す平面視で円状のリブ1Bを有する円形上金型14E
(6)図9に示す平面視で縦長(前後に長い)斜格子状のリブ1Bを有する縦長斜格子形上金型14F
(7)図10に示す平面視で縦長(前後に長い)斜格子状のリブ1Bを有する横長斜格子形上金型14G
【0028】
前記上金型は、例えば図1に示されているように、枠部1Fと、加工面部1Wと、前記加工面部1Wと交差するリブとを有し、リブ、あるいはリブ及び枠部1Fと、これによって囲まれた凹部(空間)2との組み合わせによるセグメントが複数形成されている。
リブは隣接する凹部(空間)2を仕切っており、凹部(空間)2の数だけセグメントが形成されている。
【0029】
セグメントは種々の形態をとる。すなわち、平面視で第1の方向(図1のX方向)に延びる第1のリブ1Aと、この第1のリブ1Aと交差する複数の第2のリブ1Bと枠部1Fとで、凹部(空間)2を有するセグメントを構成するものがある。
また、第1のリブ1Aと複数の第2のリブ1Bとで凹部(空間)2を有するセグメントを構成するものがある。
さらに、第2のリブ1Bは、第1のリブ1Aと交差しないで、複数の第2のリブ1Bの組み合わせで凹部(空間)2を有するセグメントを構成するものもある。
【0030】
第1のリブ1Aは、例えば図3に示すように、第1の方向(図1のX方向)に延びるものである。ここに、第1の方向(図1のX方向)に延びるとは、直線状に延びるほか、曲線状、あるいは段差を有しながらも、全体として第1の方向(図1のX方向)に整列しているものも含む意味である。
【0031】
かかる第1のリブ1Aは、例えば、対比的に図6に示すハニカム状のリブ1Bを有するハニカム形上金型14Cについて、剛性を部分的により高めるために形成するものである。
【0032】
なお第1のリブ1Aの意義は、「第1の方向に沿っている」ことのほか、剛性を部分的により高めるために、「所定の形状を形成するリブに対して、加重的にリブが形成された」ことの両者の条件を満たすリブである。
したがって、例えば図4に示す正格子形金型14Aの例では、リブが「第1の方向に沿っている」ことの条件を満たすが、後者の「加重的にリブが形成された」ことの条件を満たしていないので、第1のリブ1Aとは称しない。
【0033】
上金型の代表例のハニカム形上金型14C1を図1図3に示した。このハニカム形上金型14C1は、背面がわにおいて、多くのセグメントを有している。
すなわち、第1の方向(図1のX方向)に延びる第1のリブ1Aと、この第1のリブ1Aと交差する複数の第2のリブ1Bと枠部1Fとで、凹部(空間)2を有するセグメントを有する。
また、枠部1Fと交差しないで、第1のリブ1Aと複数の第2のリブ1Bとで凹部(空間)2を有するセグメントをも有する。
さらに、第2のリブ1Bは、枠部1F及び第1のリブ1Aと交差しないで、複数の第2のリブ1Bの組み合わせで凹部(空間)2を有するセグメントを構成するものもある。
【0034】
図2及び図3に上金型14と下金型13とで、自動車用金属板12(図11参照)を曲げプレス成型する態様例を示した。
【0035】
上金型14の枠部1Fの外周囲面に枠部1Fを周回して(前後面及び又は左右面に)中間リブ4が形成されている(図1においては中間リブ4の図示を省略している。)。
この態様によると、成型時の圧縮荷重により上金型に作用する外向きの水平荷重による枠部の外向きの倒れ変形を、中間リブの延在方向について、好適に抑制できる。また、中間リブ4の形成によって剛性が担保できるとともに、側面凹部5の形成によって軽量化を図ることができる。
【0036】
図示例においては、下金型15についても凹部(空間)2が形成されている。
【0037】
図3に示されているように、上金型14の加工面部1Wの両側部には、上金型14と別材質の高強度の上型ダイインサート(ブロック)6が設けられている。
下金型13の加工面部1Wの両側部には、下金型13と別材質のブランクホルダインサート(ブロック)15が設けられている。
下金型13の加工面部1Wの肩部と上型ダイインサート(ブロック)6との間は、曲げ加工部(曲部)Zとなっている。
【0038】
下金型13のブランクホルダインサート(ブロック)15は、ブランクホルダ16によって保持されている。
なお、図示例においては、下金型13の下側は、ボルト(図示せず)などによって連結された下型パンチホルダ17によって閉じられているが、凹部(空間)2の開放も可能である。
また、同様に、上金型14の上側を下型パンチホルダ(図示せず)によって閉じることも可能である。
【0039】
曲げ加工部(曲部)Zにおける曲げ加工時に大きな反力が上金型に作用する。そこで、曲げ加工部(曲部)Zに対応する位置において、第1のリブ1Aが第1の方向(X方向)に沿って形成されている。
【0040】
さらに、第1のリブ1Aに対応して、下金型13に第3のリブ1Cが形成されている。
第1のリブ1A及び第3のリブ1Cは、曲げ加工部(曲部)Zと完全に一致することを要求されるものではなく、50mm程度までの偏位があってもよい。
【0041】
一方、図3が参照されるように凹部2の底角部分に注目すると、枠部1Fと加工面部1Wとの連なる第1の方向に沿う角部は、凹部2内方に曲率中心を有する弧状部3Aとされ、第1のリブ1Aの中央側や第2のリブ1Bが加工面部1Wとの連なる第1の方向に沿う角部は、凹部2内方に曲率中心を有する弧状部3Bとされている。
仮に、底角部が例えば90度であると、プレス荷重が作用したとき、その部分が損傷する可能性があるのに対して、弧状部であると、荷重が分散し応力集中がなく、損傷を防止できるなどの利点をもたらす。
弧状部3A、3Bは円弧状のほか、曲率半径が相違するものをつないで組み合わせた弧状のものでもよい。
ここで、弧状部3Aの曲率は、弧状部3Bの曲率より大きいのが望ましい。弧状部3A及び弧状部3Bの曲率半径は20~70mmが望ましい。
【0042】
枠部1Fの壁厚tfは40~60mm、第1のリブ1Aの壁厚ta、第2のリブ1Bの壁厚tbは20~40mmが望ましい。セグメントのリブ間隔Lは170~230mm、特に180~220mmが望ましい。
【0043】
本発明者は、図4図10に示す上金型14A~14Gに示すリブ形状及び凹部形状を有する上金型における、主に剛性について検討した。
シミュレーションに際し、ヤング率が100~170Gaの範囲内の設定値を選択し、かつ、上金型の形状を単純に直方体とした条件で行った。
「縦荷重」として、底面の4隅をX方向及びY方向に拘束し、かつ、底面側をZ方向に拘束する、
「横荷重」として、Y方向の両側面(左右側面)をY方向に拘束し、かつ、底面側をZ方向に拘束する、
条件下で、「縦荷重」及び「横荷重」に伴う変形量を算出した。
【0044】
さらに、シミュレーション試料の体積(平面視での面積)は、実質的に同一とし、一つの凹部の面積、図面に示すように、区間長Lとして、対向する辺間長、直径、角間長を変えて、「縦荷重」及び「横荷重」に伴う変形における最大変位量及び平均変位量のシミュレーションを行った。
【0045】
結果を図12に示す。縦軸は評価値であり、評価値が大きいほど剛性が高いことを示している。
図12の結果から次のことが判る。
(1)縦荷重に対する剛性は、ハニカム形状が最も高い。
(2)斜格子形及び縦長斜格子形のものについても、縦荷重に対する剛性が高い。
(3)横荷重に対する剛性は、斜格子形、トラス形、縦長斜格子形のものが高い。
(4)他方で、ハニカム形状のものは、縦荷重に対する剛性は顕著に高いものの、横荷重については、格子状のものと同レベルである。
円形のものについても、同様の傾向がある。
(5)斜めにリブが通る形状のもの、すなわち格子形、トラス形、縦長斜格子形のものは、縦荷重及び横荷重の両者について、バランスのよい剛性を示す。
(6)横長斜格子のものは、縦荷重及び横荷重の両者について、バランスが高くない。
【0046】
以上の結果に示されているように、対象とする金属材料の種別、成型形状などに応じて、縦荷重及び横荷重について必要な剛性を要する対荷重方向の選定を行うことで、リブ形状を選定できる。
例えば、縦荷重及び横荷重の両者について、バランスのよい剛性を示すことが必要であれば、斜格子形、トラス形、縦長斜格子形のものを選定できる。
他方で、縦荷重を重視する観点からは、特にハニカム形状のもの、場合により円形ものを選定できる。
【0047】
他方で、上記各例においては、リブ形状が全体として同一である(ただし、図1の第1のリブ1Aを形成した例を除く。)。
しかるに、例えばリブ形状が異なるものを組み合せて使用することもできる。
【0048】
例えば、図13図16に示す例を挙げることができる。図13図16に示す例では、ハニカム形状リブ1の形成領域10Pを中心部に形成し、他の形状のリブ形成領域10Qを周辺部に形成した例である。
【0049】
具体的には、図13の例は、周辺部の形状をトラス形状にした第1例である。図14の例は、周辺部の形状を斜格子形状にした第2例である。図15の例は、周辺部の形状を円形状にした第3例である。図16の例は、周辺部の形状を正格子形状にした第4例である。
このリブ形状が異なるものを組み合せて使用することは、上記のシミュレーションによって得た、それぞれのリブ形状の利点を利用しながら、対象とする材料のプレス形態に好適に適応した上金型を得ることができるようになる。
【0050】
ところで、図1に示された第1のリブ1Aは、第1の方向(X方向)に沿って、剛性を部分的により高めるために形成されたものであるが、例えば図17に示す形態のように、第2の方向(Y方向)についても剛性を部分的により高めるために、同様の第1のリブ1Ayを形成できる。
なお、図17に仮想線で示すように、第1のリブ1A及び又は第1のリブ1Ayを枠部1Fと交差するようにしてもよい。
さらに、図1に示された第1のリブ1Aは長手方向に沿っているが、短手方向に沿っていてもよい。
【0051】
他方、図13図16に示す形態において、図示の第1のリブ1Ayは、ハニカム形状リブに注目すると、剛性を部分的により高めるために形成されたものといえる。
【0052】
セグメントの少なくとも一つが平面視でハニカム形状を示していると、加工面の押荷重と水平外側へ向く圧縮による潰れ荷重を効率よく支持できるとともに、空間が占める容積率を高めることができ、軽量化できるばかりでなく、押荷重(縦荷重)に対する剛性が高いものとなる。
【0053】
加工による歪みが大きく作用する曲部を、本体と材質が相違する別体のブロックにより形成することとし、そのブロックを高強度材料とすれば、歪みに十分耐えうるようになり、必要ならば交換可能とすることで、メンテナンス面において好都合となる。
【0054】
枠部と加工面部とが連なる第1の方向に沿う角部の弧状部の曲率を大きくすることで、成型時の圧縮荷重により金型に作用する外向きの水平荷重による枠部の外向きの倒れ変形を好適に抑制できる。
これに対して、倒れ変形を重視する必要のない、リブと加工面部とが連なる第1の方向に沿う角部の弧状部の曲率は、前記枠部側の弧状部の曲率より相対的に小さくすることにより、その分、空間の容積を大きくすることになり、軽量化に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、冷間加工用のプレスのほか、ホットスタンプ用のプレス機における金型についても適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1A、1Ay…第1のリブ、1B…第2のリブ、1F…枠部、1W…加工面部、2…凹部(空間)、3A、3B…弧状部、4…中間リブ、5…凹部、10P…ハニカム形状リブの形成領域、10Q…他の形状のリブ形成領域、11…プレス成型装置11、12…金属板材、13…下金型、14…上金型、14A…正格子形金型、14B…斜格子形金型、14C…ハニカム形金型、14D…トラス形金型、14E…円形金型、14F…縦長斜格子形金型、14G…横長斜格子形金型、14C1…ハニカム形金型。

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