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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】MEMS素子
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/00 20060101AFI20240208BHJP
   H04R 7/10 20060101ALI20240208BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04R19/00
H04R7/10
B81B3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022206865
(22)【出願日】2022-12-23
(65)【公開番号】P2023174480
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】17/826,185
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ボイド,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】カーギル,スコット
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114222213(CN,A)
【文献】特開2011-176532(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109714690(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00
H04R 7/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS素子であって、バックチャンバが貫通するベースと、前記ベースに接続されかつ前記バックチャンバを覆う振動膜と、対極と、同心に間隔を隔てて設置される複数の支持部材とを備え、
前記振動膜は、対向して設置された上ダイアフラム及び下ダイアフラムを備え、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムとの間に収容空間が形成され、
前記対極は、前記収容空間内に設けられ、
前記複数の支持部材は、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムとの間に設置されかつ前記対極と離間し、前記支持部材の対向する両端は、それぞれ前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムに接続され、少なくともいずれかの前記支持部材内には、複数の第1チャンバが開設され、
前記MEMS素子は、前記上ダイアフラムでの前記第1チャンバに対応する箇所に上通風溝が貫通し、前記下ダイアフラムでの前記第1チャンバに対応する箇所に下通風溝が貫通し、前記上通風溝及び前記第1チャンバは、前記下通風溝と連通する、ことを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
前記上ダイアフラムは、前記収容空間に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第1突起を備え、前記下ダイアフラムは、前記収容空間に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第2突起を備え、複数の前記支持部材、複数の前記第1突起及び複数の前記第2突起は、いずれも一対一に対応し、前記支持部材の両端は、それぞれ前記第1突起及び前記第2突起に接続され、前記上通風溝は、前記第1突起に開設され、前記下通風溝は、前記第2突起に開設される、ことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項3】
前記第1チャンバは、前記振動膜の周縁に位置する前記支持部材内のみに開設される、ことを特徴とする請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記上通風溝の内径は、前記下通風溝の内径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記上通風溝の内径は、前記下通風溝の内径よりも小さい、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMS素子。
【請求項6】
前記上ダイアフラム及び前記下ダイアフラムの複数の前記第1チャンバが開設された前記支持部材に対応する部分は、いずれも第1膜層及び第2膜層を備え、前記第1膜層は、前記第2膜層よりも前記収容空間に近接し、前記第1突起は、前記上ダイアフラムの第1膜層に形成され、前記第2突起は、前記下ダイアフラムの第1膜層に形成され、前記MEMS素子は、それぞれ前記上ダイアフラムの前記第2膜層及び前記下ダイアフラムの前記第2膜層を貫通する第1通孔及び第2通孔をさらに備え、前記第1通孔、前記上通風溝、前記第1チャンバ、前記下通風溝及び前記第2通孔は、順に連通し、前記第1通孔の孔径は、前記第2通孔の孔径と等しくない、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のMEMS素子。
【請求項7】
前記第1通孔の孔径と前記第2通孔の孔径は、いずれも前記上通風溝、前記第1チャンバ及び前記下通風溝の内径よりも小さい、ことを特徴とする請求項6に記載のMEMS素子。
【請求項8】
前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムは、いずれも導電性材料で製造され、または、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムのそれぞれは、導電性電極層を有する絶縁膜を含み、または、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムのそれぞれは、材料ドープ又は注入により形成された導電領域を有する絶縁膜を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項9】
各前記支持部材は、いずれも同心に設置された複数の第1円弧状部で構成され、複数の前記第1円弧状部は、環状に間隔を隔てて設置され、前記対極には複数のスルーホールが設置され、複数の前記第1円弧状部は、それぞれ複数の前記スルーホール内に対応して収容されかつ前記対極と間隔を隔てて設置され、各前記第1円弧状部の両端は、それぞれ前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムに接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のMEM素子。
【請求項10】
前記上通風溝、前記第1チャンバ及び前記下通風溝の形状は、いずれもそれに対応する前記第1円弧状部の形状と同じである、ことを特徴とする請求項9に記載のMEMS素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システムの技術分野に関し、特にMEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、二重膜構成のマイクロフォンが既に開発されて製造され、当該マイクロフォンは、対極の対向する両側に2つの薄膜がある。このように、2つの薄膜の間に密封可能な収容空間を生成し、外部環境に対して異なる圧力を有することができる。収容空間内の圧力を低下させると、当該構造は、対極に関連する自己ノイズ(MEMSマイクロフォンにおける主なノイズ源)を顕著に低減させる。
【0003】
従来の技術において、2つの隔膜の中心に1つの通風孔が存在し、この通風孔が対極の中心を貫通するため、構造全体に高圧荷重で生じ得る応力集中をもたらし、構造全体の剛性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の技術における技術課題を解決するために、MEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、MEMS素子を提供し、当該MEMS素子は、バックチャンバが貫通するベースと、前記ベースに接続されかつ前記バックチャンバを覆う振動膜と、対極と、同心かつ間隔を隔てて設置された複数の支持部材とを含み、
前記振動膜は、対向して設置された上ダイアフラム及び下ダイアフラムを備え、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムとの間に収容空間が形成され、
前記対極は、前記収容空間内に設けられ、
前記複数の支持部材は、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムとの間に設置されかつ前記対極と間隔を隔てて設置され、前記支持部材の対向する両端は、それぞれ前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムに接続され、少なくともいずれかの前記支持部材内には、複数の第1チャンバが開設されており、
前記MEMS素子は、前記上ダイアフラムでの前記第1チャンバに対応する箇所に上通風溝が貫通し、前記下ダイアフラムでの前記第1チャンバに対応する箇所に下通風溝が貫通し、前記上通風溝及び前記第1チャンバは、前記下通風溝と連通する。
【0006】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上ダイアフラムは、前記収容空間に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第1突起を備え、前記下ダイアフラムは、前記収容空間に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第2突起を備え、複数の前記支持部材、複数の前記第1突起及び複数の前記第2突起は、いずれも一対一に対応し、前記支持部材の両端は、それぞれ前記第1突起及び前記第2突起に接続され、前記上通風溝は、前記第1突起に開設され、前記下通風溝は、前記第2突起に開設される。
【0007】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記第1チャンバは、前記振動膜周縁に位置する前記支持部材内のみに開設される。
【0008】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上通風溝の内径は、前記下通風溝の内径よりも大きい。
【0009】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上通風溝の内径は、前記下通風溝の内径よりも小さい。
【0010】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上ダイアフラム及び前記下ダイアフラムにおける複数の前記第1チャンバが開設された前記支持部材に対応する部分は、いずれも第1膜層及び第2膜層を備え、前記第1膜層は、前記第2膜層よりも前記収容空間に近接し、前記第1突起は、前記上ダイアフラムの第1膜層に形成され、前記第2突起は、前記下ダイアフラムの第1膜層に形成され、前記MEMS素子は、それぞれ前記上ダイアフラムの前記第2膜層及び前記下ダイアフラムの前記第2膜層を貫通する第1通孔及び第2通孔をさらに備え、前記第1通孔、前記上通風溝、前記第1チャンバ、前記下通風溝及び前記第2通孔は、順に連通し、前記第1通孔の孔径は、前記第2通孔の孔径と等しくない。
【0011】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記第1通孔の孔径と前記第2通孔の孔径は、いずれも前記上通風溝、前記第1チャンバ及び前記下通風溝の内径よりも小さい。
【0012】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムは、いずれも導電性材料で製造され、或いは、前記上ダイアフラム及び前記下ダイアフラムは、それぞれ導電性電極層を有する絶縁膜を含む。
【0013】
或いは、前記上ダイアフラム及び前記下ダイアフラムは、それぞれ材料ドープ又は注入により形成された導電領域を有する絶縁膜を含む。
【0014】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、各前記支持部材は、いずれも同心に設置された複数の第1円弧状部で構成され、複数の前記第1円弧状部は、環状に間隔を隔てて設置され、前記対極には複数のスルーホールが設置され、複数の前記第1円弧状部は、それぞれ複数の前記スルーホール内に対応して収容されかつ前記対極と間隔を隔てて設置され、各前記第1円弧状部の両端は、それぞれ前記上ダイアフラムと前記下ダイアフラムに接続される。
【0015】
上記のようなMEMS素子であって、好ましくは、前記上通風溝、前記第1チャンバ及び前記下通風溝の形状は、いずれもそれに対応する前記第1円弧状部の形状と同じである。
【発明の効果】
【0016】
従来の技術に比べて、本発明の前記第1チャンバは、前記上ダイアフラムに上通風溝が開設され、前記下ダイアフラムに下通風溝が開設され、前記上通風溝は、前記下通風溝と連通して通風構造を構成し、それにより振動膜の局部的な剛性を低下させることはなく、振動膜の柔軟性及びマイクロフォンの感度を同時に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の提供する実施例1のMEMS素子の斜視図である。
図2】本発明の提供する実施例1のMEMS素子の平面図である。
図3】本発明の提供する実施例1の上通風溝及び下通風溝のレイアウト構成を示す模式図である。
図4】本発明の提供する実施例2のMEMS素子の平面図である。
図5】本発明の提供する実施例2の上通風溝及び下通風溝のレイアウト構成を示す模式図である。
図6】本発明の提供する実施例3の上通風溝及び下通風溝のレイアウト構成を示す模式図である。
図7】本発明の支持部材の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して説明した実施例は、例示的なものであり、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものと解釈することができない。
【0019】
実施例1
【0020】
図1図3に示すように、図1は本発明の提供する実施例1のMEMS素子の斜視図であり、図2は本発明の提供する実施例1のMEMS素子の平面図であり、図3は本発明の提供する実施例1の上通風溝及び下通風溝のレイアウト構成を示す模式図である。
【0021】
本発明の実施例は、MEMS素子を提供し、当該MEMS素子は、ベース10、振動膜20、複数の支持部材30及び対極40を備え、ここで、バックチャンバ11はベース10を貫通し、好ましくは、バックチャンバ11の内方輪郭面は円形溝構造である。
【0022】
振動膜20は、ベース10に接続され、かつバックチャンバ11を覆い、振動膜20は、対向して設置された上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22を備え、本実施例では、上ダイアフラム21と下ダイアフラム22は、いずれも同心に設置された円形構造であり、上ダイアフラム21と下ダイアフラム22との間には予め定められた間隙を保持して収容空間23を形成し、下ダイアフラム22は、上ダイアフラム21の下方に位置する。
【0023】
好ましくは、収容空間23は、気密封止されるものであり、収容空間23の内部圧力は、外部大気圧よりも小さい。ここで、収容空間23の内部圧力は、0.2atmよりも小さく、好ましくは、収容空間23内の圧力は、0.1atmに等しく、いくつかの実施例において、収容空間23は、真空である。
【0024】
対極40は、懸架状態で収容空間23内に設置され、常態で、対極40は、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22との間に接触がなく、かつ支持部材30との間に機械結合がない。上ダイアフラム21と対極40との間に第1容量が形成され、下ダイアフラム22と対極40との間に第2容量が形成される。上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22に印加された圧力に応答して、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22は、対応する対極40に対して移動可能となり、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22と対応する対極40との間の距離を変化させ、それにより容量が変化しかつそれに応じて電気信号を出力する。
【0025】
複数の支持部材30は、収容空間23内に同心かつ間隔を隔てて設置されかつ対極40と離間し、複数の支持部材30は、振動膜21の円心を中心として振動膜20の径方向に沿って間隔を隔てて設置され、少なくともいずれかの支持部材30内には、複数の第1チャンバ32が開設され、好ましくは、第1チャンバ32は、振動膜20の周縁に位置する支持部材30内のみに開設され、この支持部材30の局所領域において、支持部材30の対向する両端がそれぞれ上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22に接続される。
【0026】
支持部材30の作用は、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22を平坦に維持し、又は少なくとも支持部材30の間の上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22の屈曲/変形を制限/制御することによって、収容空間23の密封体積が低下した大気圧下にあるが外部が環境大気圧下にある時に、上ダイアフラム21と下ダイアフラム22が互いに折り畳まれることを回避することである。
【0027】
MEMS素子は、上ダイアフラム21での第1チャンバ36に対応する箇所に上通風溝211が貫通し、下ダイアフラム22での第1チャンバ36に対応する箇所に下通風溝221が貫通し、上通風溝211と下通風溝221は、第1チャンバ32を介して連通して通風通路を構成し、通風通路を振動膜20の中心に設置する場合に比べて、本実施例では、振動膜20の局部的な剛性を低下させることはなく、同時に振動膜20の柔軟性を向上させることができ、マイクロフォン感度も高くなる。
【0028】
上ダイアフラム21または下ダイアフラム22の開口によって音響抵抗を制御することにより、より浅く、より制御されたエッチングによって音響抵抗を制御することを可能にする。エッチング及びフォトリソグラフィをより均一なトポロジで行うことができ、プロセスを簡略化しかつ可変性を減少させる。
【0029】
この第1チャンバ32を支持部材30内に設置することによって、配置領域の局部的な剛性を変更しないことを確保するとともに、上通風溝211、第1チャンバ32及び下通風溝221のエッジが機械的に支持されることを確保することができる。これにより、振動膜20内の固有応力によって上通風溝211、第1チャンバ32及び下通風溝221が開いてしまい、音響抵抗が設計値からずれることを防止する。
【0030】
さらに、上通風溝211と下通風溝221とは、振動膜20のエッジに近接し、上通風溝211と下通風溝221は、スリット状槽体であることが好ましく、その長さは、幅よりもはるかに大きいため、薄膜内の固有応力によってスリットが開いてしまい、音響抵抗が設計値からずれることを防止する。
【0031】
続いて図3に示すように、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22は、いずれも蛇腹構造であり、かついずれも導電性材料又は導電性材料を含む絶縁膜で製造され、または材料ドーピング又は注入により形成された導電領域を有する絶縁膜で製造され、上ダイアフラム21は、収容空間23に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第1突起24を備え、下ダイアフラム22は、収容空間23に向かって突出しかつ互いに間隔を隔てて設置される複数の第2突起25を備え、複数の第1突起24及び複数の第2突起25は、いずれも振動膜20の径方向に沿って間隔を隔てて設置され、複数の支持部材30、複数の第1突起24及び複数の第2突起25は、いずれも一対一に対応し、支持部材30の両端は、それぞれ第1突起24及び第2突起25に接続され、上通風溝211は、第1突起24に開設され、下通風溝221は、第2突起25に開設される。
【0032】
好ましくは、第1突起24及び第2突起25の形状及び寸法は、いずれも同じであり、規則的な波形を形成することによって、振動膜20全体の応力分布を均一にするとともに、成形加工に有利である。同時に、第1突起24及び第2突起25の振動膜20に垂直である方向での断面形状は、矩形状、台形又は三角形などであってもよく、第1突起24及び第2突起25の傾斜面の角度は、0°より大きくかつ90°以下であり、当業者であれば分かるように、第1突起24及び第2突起25の振動膜20に垂直である方向での断面形状は、規則的な図形であっても不規則な図形であってもよく、ここで限定されない。
【0033】
第1突起24と第2突起25は、共に振動膜20の波形を構成し、それにより振動膜20が大きな張力を有して、大きな音圧に耐えることができることを可能にし、同時に構成された振動膜20が小さな内部応力を有し、振動膜20の剛性が減少し、MEMS素子200の機械感度を効果的に向上させる。
【0034】
続いて図3に示すように、上通風溝211の内径は、下通風溝221の内径よりも大きく、好ましくは、上通風溝211の内径は6umであり、下通風溝221の内径は4umであり、それにより抵抗変化の最小化と柱の寸法との間に最適なバランスを得る。当業者であれば分かるように、上通風溝211の内径を下通風溝221の内径よりも小さく又は下通風溝221の内径と等しく設定することができる。
【0035】
図7に示すように、図7は本発明の支持部材の構成を示す模式図であり、各支持部材30は、いずれも同心に設置された複数の第1円弧状部31で構成され、複数の第1円弧状部31は、環状に間隔を隔てて設置され、対極40には、複数のスルーホール(図示せず)が設置され、第1円弧状部31は、それぞれ複数のスルーホール内に対応して収容され、かつ対極40と間隔を隔てて設置され、各第1円弧状部31の両端は、それぞれ上ダイアフラム21と下ダイアフラム22に接続され、第1円弧状部31の頂端は、上ダイアフラム21に接続され、第1円弧状部31の底端は、スルーホールを通って延在した後、下ダイアフラム22に接続される。
【0036】
第1円弧状部31の横断面は、円弧状の構造であり、同一の支持部材30内の複数の第1円弧状部31の内径は、いずれも同じであり、上通風溝211、第1チャンバ32及び下通風溝221の形状は、それに対応する第1円弧状部32の形状と同じであり、複数の第1円弧状部31は、環状を呈して間隔を隔てて設置され、大きな第1円弧状部31を用いて上ダイアフラム21と下ダイアフラム22を支持することによって、対極40にスルーホールを大量に開設する必要があるという技術課題が解決され、対極40の設計を支持部材3の設計と分離し、同時に第1円弧状部31は、従来の技術における小さい円柱体よりもはるかに大きく、これによって同じアスペクト比の柱構造が非常に高くなり、これによってより厚い対極40を使用することを可能にし、より硬い構造が許容され、これは素子の安定性及び信頼性を顕著に向上させることができる。
【0037】
続いて図7に示すように、振動膜20の径方向に沿って、複数の支持部材30内の第1円弧状部31の弧長が徐々に増大し、2つの隣接する第1円弧状部31の隙間に、対極40にスルーホールを開設する必要がないため、対極40の剛性をさらに増加させる。
【0038】
複数の支持部材30内の第1円弧状部31の弧長は、線形的に増加してもよく、又は非線形的に増加してもよく、すなわち第1円弧状部31の弧長は、振動膜20の円心からエッジまで徐々に変化し、対極40の剛性を向上させることに有利である。
【0039】
実施形態2
【0040】
図4及び図5に示すように、図3は本発明の提供する実施例1の上通風溝及び下通風溝のレイアウト構成を示す模式図であり、図4は本発明の提供する実施例2のMEMS素子の平面図であり、上ダイアフラム21及び下ダイアフラム22における複数の第1チャンバが開設された支持部材に対応する部分は、いずれも第1膜層26及び第2膜層27を含み、第1膜層26は、第2膜層27よりも収容空間23に近接し、第1膜層26は、絶縁膜であり、第2膜層27は電極層である。それによって、第2膜層27を振動膜20の運動が電気信号に最も効果的に変換できる位置に設置して、マイクロフォンの感度を向上させることができる。
【0041】
第1突起24は、上ダイアフラム21の第1膜層26に形成され、第2突起25は、下ダイアフラム22の第1膜層26に形成され、MEMS素子は、それぞれ上ダイアフラム21の第2膜層27及び下ダイアフラムの第2膜層27を貫通する第1通孔28及び第2通孔29をさらに備え、第1通孔28、上通風溝211、第1チャンバ32、下通風溝221及び第2通孔29は、順に連通し、第1通孔28の孔径は、第2通孔29の孔径と等しくない。好ましくは、第1通孔28の孔径と第2通孔29の孔径は、いずれも上通風溝211、第1チャンバ32及び下通風溝221の内径よりも小さい。
【0042】
図4に示すように、いくつかの実施例において、第1膜層26及び第2膜層27は、いずれも円板状構造であり、第2膜層27は、第1膜層26の中部に同心に設けられ、本実施例では、振動膜20の周方向は、ベース10に接続され、その撓みは、放物線形であり、振動膜20の円心で最も大きく、エッジでゼロまで低下する。マイクロフォンの感度は、電気容量が圧力に応じて変化する比率により決定されるため、第2膜層27を振動膜20の運動が最も激しい場所、すなわち振動膜20の中部に設置すると同時に、振動膜20のエッジに第2膜層27を設置しないようにすることで、上ダイアフラム21と下ダイアフラム22との間の寄生容量を減少させ、マイクロフォンの感度を向上させることができる。
【0043】
実施例3
【0044】
本実施例は、図6に示すように、上ダイアフラム21と下ダイアフラム22がいずれも平面構造である点で、実施例1と相違する。図6は本発明が提供する実施例3の上通風溝と下通風溝のレイアウト構成を示す模式図であり、上通風溝211と下通風溝221の寸法関係は、実施例1を参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0045】
以上は図面に示す実施例に基づいて本発明の構造、特徴及び作用効果を詳細に説明し、上記したのは、本発明の好ましい実施例だけであるが、本発明は図面に示される実施範囲を限定せず、本発明の構想に応じて行われる変更、又は同等変化の等価実施例に修正することは、依然として明細書及び図面に含まれる精神を超えない場合、いずれも本発明の保護範囲内にあるべきである。
【符号の説明】
【0046】
10-ベース、11-バックチャンバ
20-振動膜、21-上ダイアフラム、211-上通風溝、22-下ダイアフラム、221-下通風溝、23-収容空間、24-第1突起、25-第2突起、26-第1膜層、27-第2膜層、28-第1通孔、29-第2通孔
30-支持部材、31-第1円弧状部、32-第1チャンバ
40-対極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7