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特許7432715非外傷性の取り外し可能な細胞カプセル化デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】非外傷性の取り外し可能な細胞カプセル化デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 31/00 20060101AFI20240208BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M31/00
C12M1/00 A
C12M3/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022522704
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2019056290
(87)【国際公開番号】W WO2021076105
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125632(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0224377(US,A1)
【文献】特開2018-029999(JP,A)
【文献】特表2016-512022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
C12M 1/00
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第一の端部及び第二の端部、
該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の複合層及び第二の複合層、ここで、該第一の複合層は、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞透過性層と、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞保持性層とを含み、
該第一の複合層と該第二の複合層との間に配置されたリザーバ、ここで、該リザーバは該第一の細胞保持性層に接触しており、
該リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含むポーチ、並びに
該ポーチの該第一の端部に取り付けられ、又は一体化された、取り外し要素であって、該第一の端部から管腔内に延在し、デバイス取り外しツールによってアクセスされ、該デバイス取り外しツールは、該ポーチの該第二の端部から該管腔内に挿入されて該取り外し要素を把持し、該管腔を通して該取り外し要素に対して力が加えられることで、デバイスが反転によって取り外されるように構成された取り外し要素、
を含んでなる、治療デバイス。
【請求項2】
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のそれぞれが複数のシワを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第一の細胞透過性層は、それを通る血管組織の成長を可能にするのに十分な細孔サイズを有する、請求項1又は2記載のデバイス。
【請求項4】
前記細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して5.0ミクロンより大きい、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一の細胞保持性層は、血管組織の内部成長を防止するのに十分な細孔サイズを有する、請求項1~4のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項6】
前記細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して1ミクロン未満である、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記第一の細胞透過性層及び前記第一の細胞保持性層のうちの少なくとも1つは延伸フルオロポリマーを含む、請求項1~6のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項8】
前記第二の複合層は、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞透過性層と、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞保持性層とを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
対向する第一の端部及び第二の端部、ここで、該対向する第一の端部及び第二の端部はそれらの間に長手方向軸を規定しており、
該第一の端部と該第二の端部との間に延在している第一の複合層、ここで、該第一の複合層は第一の複数のシワを含み、
該第一の端部と該第二の端部との間に延在している第二の複合層、ここで、該第二の複合層は第二の複数のシワを含み、
該第一の複合層と該第二の複合層との間に形成され、ある長さ、幅及び深さを有するリザーバ、並びに、
該リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含んでなる治療デバイスであって、
該治療デバイスは、該第一の複数のシワ及び該第二の複数のシワが該長手方向軸にほぼ垂直な方向に延在している第一の弛緩状態と、該第一の複数のシワ及び該第二の複数のシワが該第一の端部と該第二の端部との間で引き伸ばされ、該長手方向軸とほぼ平行になるように構成されている第二の伸長状態との間で移動可能である、治療デバイス。
【請求項10】
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞透過性層、及び、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞保持性層、
を含む、請求項9記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インプラント可能な生物学的デバイス、より具体的には、非外傷的に取り外しされうるインプラント可能なカプセル化デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的療法は、末梢動脈疾患、動脈瘤、心臓病、アルツハイマー病及びパーキンソン病、自閉症、失明、糖尿病及びその他の病状を治療するための益々実行可能な方法である。一般的な生物学的療法に関して、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、細菌、タンパク質、抗体及び他の生物活性部分は、生物活性部分を患者の組織床に配置する外科的又は介入的方法によって患者に導入されうる。しばしば、生物活性部分を最初にデバイスに配置し、次に患者に挿入する。あるいは、デバイスを最初に患者に挿入し、後で生物活性部分を添加することができる。
【0003】
これらのデバイスは、しばしば、一時的に患者にインプラント処置される。しかしながら、一時的なデバイスでさえ組織の内部成長があり、周囲の組織からデバイスを取り外すのが困難になることがある。例えば、周囲組織を切断することによるデバイスの従来の取り外しは、組織に対して外傷性である可能性がある。さらに、これらの手順は、患者に不快感を与えるだけでなく、将来の手順のために同じ組織を再利用することができなくなることがある。したがって、細胞及び/又は他の生物学的部分をカプセル化するインプラント可能なデバイスであって、患者から非外傷的に取り外し可能であるデバイスが必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で使用されるときに、「開示」、「前記開示」、「この開示」及び「本開示」という用語は、本特許出願及び以下の特許請求の範囲のすべての主題を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載されている主題を制限しないこと又は以下の特許請求の範囲の意味を制限することを理解すべきである。この要旨は、開示の様々な態様の高レベルの概要であり、以下の「詳細な説明」セクションでさらに詳細に説明されている概念の幾つかを紹介する。この要旨は、特許請求された主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、一部又はすべての図面及び各特許請求の範囲の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。本開示の実施形態は、対向する第一の端部及び第二の端部を有するポーチを含む治療デバイスに関する。前記ポーチは、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の複合層及び第二の複合層を含む。前記第一の複合層は、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞透過性層と、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞保持性層とを含む。前記ポーチはまた、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間に配置されたリザーバを含み、前記リザーバは前記第一の細胞保持性層に接触している。前記ポーチはまた、前記リザーバと流体連通している少なくとも1つのポートを含む。前記ポーチはまた、前記ポーチの第一の端部に動作可能に係合して、第一の端部が反転によって前記ポーチの第二の端部に向かって移動可能になるように構成された取り外し要素を含む。
【0005】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のそれぞれは、複数のシワを含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、前記第一の細胞透過性層は、それを通る血管組織の成長を可能にするのに十分な細孔サイズを有する。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記細孔サイズは、ポロメトリーにより測定して、5.0ミクロンを超える。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記第一の細胞保持性層は、血管組織の内部成長を防ぐのに十分な細孔サイズを有する。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記細孔サイズは、ポロメトリーにより測定して、1ミクロン未満である。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記第一の細胞透過性層及び前記第一の細胞保持性層のうちの少なくとも1つは延伸(expanded)フルオロポリマーを含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記第二の複合層は、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞透過性層と、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞保持性層とを含む。
【0012】
本開示の実施形態はまた、組織ポケットにインプラント処置された治療デバイスの第一の端部に動作可能に係合するように構成された取り外し可能な要素を係合させることを含む方法であって、ここで、前記インプラント処置された治療デバイス及び前記組織ポケットは平面を規定する方法に関する。この方法はまた、前記平面に平行な第一の方向に前記取り外し可能な要素に対して引張力を加えることを含む。この方法はまた、前記取り外し可能な要素を前記第一の方向に沿って移動させて、前記インプラント処置された治療デバイスが前記組織ポケットから剥がされるように、前記インプラント処置された治療デバイスの第一の端部を、前記第一の端部の反対側の前記インプラント処置された治療デバイスの第二の端部に向かって移動させることを含み、ここで、該移動工程は、前記インプラント処置された治療デバイスを反転して、前記インプラント処置された治療デバイスを非外傷的に前記組織ポケットから取り外す。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記治療デバイスは、対向する第一の端部及び第二の端部を含むポーチを含む。前記ポーチは、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の複合層及び第二の複合層を含む。前記第一の複合層は、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞透過性層を含む。前記第一の複合層はまた、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞保持性層を含む。前記ポーチはまた、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間に形成されたリザーバを含む。前記リザーバは前記第一の細胞保持性層に接触している。前記ポーチはまた、各リザーバと流体連通している少なくとも1つのポートを含む。前記治療デバイスはまた、前記ポーチの第一の端部に動作可能に係合して、前記第一の端部を反転によって前記第二の端部に向かって移動可能にするように構成された取り外し可能な要素を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のそれぞれは、複数のシワを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、この方法は、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つに形成された複数のシワが組織ポケット内の組織と係合する第一の弛緩状態から、前記複数のシワの少なくとも一部が引き離されて、組織の一部を少なくとも一部のシワから解放する第二の伸長状態に治療デバイスを移動させることをさらに含む。この移動工程は、複数の別個の個々の動きを含み、それによって、組織は、ポーチの複数のシワから徐々に解放され、その結果、前記ポーチは、非外傷的に前記組織ポケットから取り外される。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記第二の複合層は、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞透過性層と、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞保持性層とを含む。
【0017】
本開示の実施形態はまた、対向する第一の端部及び第二の端部を含む治療デバイスであって、ここで、対向する第一の端部及び第二の端部は、それらの間に長手方向軸を規定する治療デバイスに関する。前記治療デバイスはまた、前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第一の複合層を含む。前記第一の複合層は、第一の複数のシワを含む。前記治療デバイスはまた、前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第二の複合層を含む。前記第二の複合層は、第二の複数のシワを含む。前記治療デバイスはまた、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間に形成されたリザーバを含み、前記リザーバは、ある長さ、幅及び深さを有する。前記治療デバイスはまた、前記リザーバと流体連通している少なくとも1つのポートを含む。前記治療デバイスは、第一の複数のシワ及び第二の複数のシワが前記長手方向軸にほぼ垂直な方向に延在している第一の弛緩状態と、前記第一の複数のシワ及び前記第二の複数のシワが、前記長手方向軸とほぼ平行になるように、前記第一の端部と前記第二の端部との間に引き伸ばされるように構成された第二の伸長状態との間で移動可能である。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞透過性層と、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞保持性層とを含む。
【0019】
本開示の実施形態はまた、組織ポケットにインプラント処置された治療デバイスの第一の端部を係合させることを含む方法であって、ここで、前記インプラント処置された治療デバイス及び前記組織ポケットは平面を規定する方法に関する。この方法はまた、前記平面に平行な第一の方向で第一の端部に引張力を加えて、前記治療デバイス上に形成された複数のシワが前記組織ポケット内の組織に係合する第一の弛緩状態から、複数のシワの少なくとも一部が引き離され、前記組織の一部を少なくとも一部のシワから解放する第二の伸長状態へと前記治療デバイスを移動させることを含む。この移動工程は、複数の別個の個々の動きを含み、それによって、前記組織は、前記ポーチの複数のシワから徐々に解放され、その結果、前記ポーチは、非外傷的に前記組織ポケットから取り外される。
【0020】
幾つかの実施形態において、治療デバイスは、対向する第一の端部及び第二の端部を含む。前記対向する第一の端部及び第二の端部は、それらの間に長手方向軸を規定する。治療デバイスはまた、前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第一の複合層を含む。前記第一の複合層は、第一の複数のシワを含む。前記治療デバイスはまた、前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第二の複合層を含む。前記第二の複合層は、第二の複数のシワを含む。前記治療デバイスはまた、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間に形成されたリザーバを含み、ここで、前記リザーバは、ある長さ、幅及び深さを有する。前記治療デバイスはまた、前記リザーバと流体連通している少なくとも1つのポートを含む。前記治療デバイスは、前記第一の複数のシワ及び前記第二の複数のシワが前記長手方向軸にほぼ垂直な方向に延在している第一の弛緩状態と、前記第一の端部と前記第二の端部との間に引き伸ばされ、前記第一の複数のシワ及び前記第二の複数のシワが前記長手方向軸とほぼ平行になるように構成されている第二の伸長状態との間で移動可能である。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞透過性層と、前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞保持性層とを含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、細胞透過性層である。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、細胞保持性層である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0025】
図1図1は、本明細書に記載の実施形態による治療デバイスを示す斜視図である。
【0026】
図2図2は、本明細書に記載の実施形態による、組織ポケット内の図1の治療デバイスを示す断面図である。
【0027】
図3図3は、本明細書に記載の実施形態による、治療デバイスの取り外し要素に対して接線方向の力を及ぼす取り外しツールを備えた図1の治療デバイスを示す断面図である。
【0028】
図4図4は、治療デバイスの反転が本明細書に記載の実施形態による取り外しツールによって開始される、図1の治療デバイス及び図3の取り外しツールを示す断面図である。
【0029】
図5図5は、治療デバイスが、本明細書に記載の実施形態に従って、それを通って延在している管腔を通して取り外しツールによって部分的に反転されている、図1の治療デバイス及び図3の取り外しツールを示す断面図である。
【0030】
図6図6は、本明細書に記載の実施形態による、血管新生後の図1の治療デバイスの一部を示す拡大断面図である。
【0031】
図7図7は、本明細書に記載の実施形態による、シワを含む治療デバイスを示す斜視図である。
【0032】
図8図8は、本明細書に記載の実施形態による、組織ポケット内の図7の治療デバイスを示す断面図である。
【0033】
図9図9は、本明細書に記載の実施形態による、組織ポケット内の図7の治療デバイスを示す断面図である。
【0034】
図10図10は、本明細書に記載の実施形態による、取り外しツールによる組織ポケットからの図7の治療デバイスの取り外しの開始を示す断面図である。
【0035】
図11図11は、本明細書に記載の実施形態による、図10の取り外しツールによって組織ポケットから部分的に取り外された図7の治療デバイスを示す断面図である。
【0036】
図12図12は、本明細書に記載の実施形態に従って、シワの約半分が展開された、部分的に取り外された状態の図10の取り外しツール及び図7の治療デバイスを示す断面図である。
【0037】
図13図13は、本明細書に記載の実施形態に従ってすべてのシワが展開された、図10の取り外しツール及び図7の治療デバイスを示す断面図である。
【0038】
図14図14は、本明細書に記載の実施形態による、図7の治療デバイスの一部を示す拡大断面図である。
【0039】
図15図15は、本明細書に記載の実施形態による、反転によって取り外すことができるシワを含む治療デバイスを示す斜視図である。
【0040】
図16図16は、本明細書に記載の実施形態による、血管新生後の図15の治療デバイスの一部を示す拡大断面図である。
【0041】
図17図17は、本明細書に記載の実施形態による、治療デバイスの取り外し要素に対して接線方向の力を及ぼす取り外しツールを備えた、図15の治療デバイスを示す断面図である。
【0042】
図18図18は、本明細書に記載の実施形態に従って、治療デバイスの反転が、取り外しツールによって開始され、そしてシワが部分的に展開されている、図15の治療デバイス及び図3の取り外しツールを示す断面図である。
【0043】
図19図19は、本明細書に記載の実施形態に従って、治療デバイスがそれを通して延在している管腔を通して取り外しツールによって部分的に反転され、そしてシワがほぼ完全に展開されている、図1の治療デバイス及び図3の取り外しツールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。さらに、「治療デバイス」及び「デバイス」という用語は、本明細書で交換可能に使用されうる。「治療デバイス」という用語は、本明細書において「細胞封じ込めデバイス」という用語と交換可能に使用することもできることを理解されたい。
【0045】
生物学的治療を提供するために、生物学的デバイスが組織床など、患者にインプラント処置される生物学的部分をカプセル化するための治療デバイスが本明細書に記載されている。治療デバイスは、細胞カプセル化デバイス、ドラッグデリバリーデバイス又は遺伝子治療デバイスを含むことができる。また、本明細書には、デバイスを形成するための方法、及び生物学的部分をデバイスに導入するための方法も記載されている。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、複合層から形成されたポーチである。複合層のそれぞれは、生物学的部分を保持するための多孔質ポリマー層と、血管新生を可能にする多孔質層を有する。細胞保持性層及び細胞透過性層は、異なる多孔性を有し、同じ材料又は異なる材料を含むか、又はそれらから形成されることができる。幾つかの実施形態において、細胞保持性層は、細胞透過性層の多孔性よりも小さい多孔性を有する。複合層は、生物学的部分を保持するための少なくとも1つのリザーバ空間を画定するために、互いに間隔を置いて配置されている。
【0046】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載のデバイスを使用するカプセル化及びインプラント処置に適した生物学的部分としては、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、遺伝子治療、細菌、タンパク質、多糖類、抗体及び他の生物活性部分が挙げられる。簡単にするために、以下、生物学的部分は細胞と呼ばれるが、この記載では、生物学的部分を細胞又は任意の特定のタイプの細胞に限定するものはなく、以下の記載は、細胞ではない生物学的部分にも適用される。幾つかの実施形態において、様々なタイプの原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞及び/又は幹細胞は、本開示の細胞カプセル化デバイスとともに使用されうる。
【0047】
幾つかの実施形態において、細胞は、限定するわけではないが、ヒドロゲル材料を含む、天然又は合成起源の生体材料内にマイクロカプセル化されている。幾つかの実施形態において、細胞は、治療的に有用な物質を分泌する。幾つかの実施形態において、そのような物質としては、ホルモン、成長因子、栄養因子、神経伝達物質、リンホカイン、抗体又はデバイスレシピエントに治療上の利益を提供する他の細胞産生物が挙げられる。そのような治療用細胞製品の例としては、限定するわけではないが、インスリン、成長因子、インターロイキン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、トランスフェリン及び第VIII因子が挙げられる。幾つかの実施形態において、適切な成長因子の非限定的な例としては、血管内皮成長因子、血小板由来成長因子、血小板活性化因子、形質転換成長因子、骨形態形成タンパク質、アクチビン、インヒビン、線維芽細胞成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、成長分化因子-9、上皮成長因子及びそれらの組み合わせが挙げられる。本開示を通して、「細胞(cell)」又は「細胞(cells)」という用語は、それぞれ「生物学的部分(biological moiety)」又は「生物学的部分(biological moieties)」に置き換えることができることを理解されたい。
【0048】
I.反転により非外傷的に取り外し可能な治療デバイス
細胞をカプセル化するための治療デバイスを取り外すための反転法が本明細書に記載されている。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、治療される患者の組織にインプラント処置される。治療が完了した後に、又は他の方法で取り外しが必要なときに、治療デバイスは、デバイスに統合された及び/又はデバイスを取り巻く組織への外傷を最小化又は回避するために、引張力によって患者の組織から取り外されることができる。少なくとも1つの実施形態において、デバイスの取り外し要素は、例えば、デバイス取り外しツールによって係合される。引張力は、治療デバイスの第一の端部が治療デバイスの第二の端部に向かってそれ自体を通して内側に反転されるように、デバイス取り外しツールによって取り外し要素に加えられる。治療デバイスの第一の端部が第二の端部に向かって引っ張られると、治療デバイスは、周囲組織から非外傷的に取り外され(例えば、剥離され)、次いで、患者から引き出されることができる。本明細書で使用されるときに、「非外傷的に取り外される」は、組織への外傷を最小化又は回避する取り外しを意味することが意図される。
【0049】
細胞をカプセル化するための治療デバイスの1つの実施形態が図1~6に示されている。治療デバイスは、様々なサイズ(周囲など)で簡単に構成できるという点でスケーラブルであり、その結果、これらの細胞の生存及び機能の両方を確保しながら、デバイスを使用して細胞を収容することができる。1つの実施形態によれば、治療デバイス100は、ポーチ102及びそれに取り付けられた取り外し要素114を含む。ポーチ102は、第一の端部130から第二の端部132まで延在している。幾つかの実施形態において、ポーチ102は管状形状であることができる。しかしながら、ポーチは、インプラントの解剖学的位置に応じて、例えば、実質的に平面であるなど、任意の他の形状であることができる。ポーチ102は、第一の複合層104及び第二の複合層106を含む。リザーバ108は、第一の複合層及び第二の複合層104、106の間に形成される。リザーバ108は、細胞が収容され、リザーバ108と流体連通している少なくとも1つのポート107によりアクセス可能である収容空間である。ポーチ102の周囲110は、ポート107の位置までシールされている。例示的な実施形態において、図2に示されるように、管腔112はポーチ102を通って延在している。図は、誇張された直径を有する管腔112を示し、それを通してデバイス取り外しツールが到達することを示していることに留意されたい。しかしながら、デバイス取り外しツールは、管腔112をスリップする必要があるだけで、したがって、管腔112は、「開いた」状態に保持される必要はない。さらに、直径は、デバイス取り外しツールをその中に挿入するのにちょうど十分に大きくてもよい。幾つかの実施形態において、ツールは、管腔112を通して挿入されるときに、管腔112を通してそれ自体の空間を作成する。治療デバイス100の取り外し要素114は、反転による治療デバイス100の非外傷性取り外しのために、ポーチ102の第一の端部130に取り付けられる。
【0050】
図6に示されるように、幾つかの実施形態において、第一の複合層104は、細胞透過性層116及び該細胞透過性層116に隣接して配置された細胞保持性層118を含む複合層である。同様に、第二の複合層106は、細胞透過性層120及び細胞保持性層122を含む複合層である。細胞保持性ポリマー層は、細胞の内部成長に対して不透過性である。細胞透過性層は、細胞保持性層に至るまで、細胞透過性層の細孔内及び細孔を通って血管組織の成長を可能にする。幾つかの実施形態において、第一の複合層及び第二の複合層104、106の細胞透過性層116、120は、それぞれ、同じ材料から形成されている。他の実施形態において、細胞透過性層116、120は、異なる材料から形成されている。細胞透過性層116、120の両方は、図6に示されるように、患者から細胞透過性層116、120の細孔内及び細孔を通って血管組織137の成長を可能にするのに十分に多孔性である細胞透過性層である。細胞透過性層を通した血管組織の内部成長は、患者から治療デバイス内にカプセル化された細胞への栄養素の移動を促進する。しかしながら、血管組織の内部成長は、細胞保持性層を通して拡張されない。
【0051】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120は、5ミクロン未満の平均細孔サイズを有する。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して、5ミクロン~30ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、7ミクロン~30ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、10ミクロン~30ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、15ミクロン~30ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、25ミクロン~30ミクロンである。
【0052】
他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、5ミクロン~25ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、5ミクロン~20ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、5ミクロン~15ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、5ミクロン~10ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、5ミクロン~7ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、7ミクロン~15ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、10ミクロン~27ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、12ミクロン~15ミクロンである。他の実施形態において、細胞透過性層116、120の平均細孔サイズは、17ミクロン~25ミクロンである。
【0053】
様々な細胞タイプは、本明細書に記載されるように、治療デバイス100の多孔質材料の細胞透過性層内に成長することができる。多孔質材料内に成長する主な細胞タイプは、インプラント部位、材料の組成及び透過性、及び材料に組み込まれることができる又は多孔質材料を通して導入されることができるサイトカイン及び/又は細胞接着分子などの生物学的要因に主に依存する。幾つかの実施形態において、血管内皮は、細胞カプセル化デバイスで使用するために多孔質材料内に成長する主要な細胞タイプである。図6に示されるように、毛細血管ネットワーク137の形態での血管内皮細胞の十分に確立された集団による多孔質材料の血管新生は、患者の組織からの材料の血管新生の結果として、デバイス100の内面に非常に近い材料の厚さ内及びその全体にわたって発生するが、細胞保持性層を横切って発生しないことが奨励される。
【0054】
細胞保持性層及び細胞透過性層はそれぞれ、反転プロセス中に治療デバイスがそれ自体に対して折りたたむのに十分な順応性を備えているべきである。したがって、幾つかの実施形態において、細胞透過性層の血管新生は、治療デバイスの順応性を妨害しないように、所定の程度までのみ許可される。
【0055】
細胞保持性層118、122は、細胞の内部成長に対して不透過性であり、したがって、細胞保持性層である。両方の細胞保持性層118、122は、血管の内部成長を防ぐのに十分に小さい平均細孔サイズを有する。
【0056】
幾つかの実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは5ミクロン未満である。幾つかの実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して、0.001ミクロン~5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.001ミクロン~0.5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.001ミクロン~0.1ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.001ミクロン~0.05ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.001ミクロン~0.01ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.005ミクロン~0.001ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.001ミクロン~0.002ミクロンである。
【0057】
他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.005ミクロン~5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.01ミクロン~5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.05ミクロン~5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.1ミクロン~5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.5ミクロン~5ミクロンである。
【0058】
他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.01ミクロン~0.5ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.005ミクロン~0.2ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.25ミクロン~0.75ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.1ミクロン~0.2ミクロンである。他の実施形態において、細胞保持性層118、122の平均細孔サイズは、0.015ミクロン~0.045ミクロンである。
【0059】
小さな細孔サイズは、細胞保持性層118、122が細胞保持性層として機能し、細胞を治療デバイス100内のリザーバ108内に配置し続けることを可能にする。しかしながら、この小さな細孔サイズは、栄養素及び他の生体分子が入り、細胞廃棄物及び治療用製品を出させることを可能にする。これらの細胞保持性層118、122は、細胞保持性層と呼ばれる。
【0060】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120及び/又は細胞保持性層118、122としては、限定するわけではないが、アルギネート、酢酸セルロース、ポリポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコールなどのパンビニルポリマー、キトサン、ポリエチレン-コ-アクリル酸などのポリアクリレート、アガロース、加水分解ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン-コ-アクリル酸などのポリビニルアクリレート、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、多孔質変性ポリテトラフルオロエチレンポリマー、多孔質テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、多孔質ポリプロピレン及び多孔質ポリエチレンなどの多孔質ポリアルキレン、多孔質ポリビニリデンフルオリド、多孔質ポリエステルスルホン(PES)、多孔質ポリウレタン、多孔質ポリエステル、ならびにそれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態において、細胞透過性層の一方又は両方として有用な材料として、生体材料テキスタイルが挙げられる。
【0061】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120及び/又は細胞保持性層118、122は、単独又は組み合わせで、Sbrigliaらの米国特許第9,441,088号明細書に教示されているとおりの多孔質ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、Sbrigliaの米国特許公開番号2016/0032069号明細書で教示されるとおりの多孔質ポリ(p-キシリレン)(ePPX)、Sbrigliaの米国特許第9,926,416号明細書に教示されているとおりの多孔質超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、Sbrigliaの米国特許第9,932,429号明細書に教示されているとおりの多孔質エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、Sbrigliaの米国特許第9,441,088号明細書に教示されているとおりのフッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレン[VDF-コ-(TFE又はTrFE)]ポリマー、及び、それらのコポリマー及び組み合わせ、ならびに、繊維もしくは糸又は繊維状マトリックスの織布又は不織布コレクションを含むことができる。
【0062】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120及び/又は細胞保持性層118、122は延伸フルオロポリマー膜である。例えば、細胞透過性層116、120及び/又は細胞保持性層118、122は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は延伸修飾ポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120及び/又は細胞保持性層118、122は、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜(例えば、ePTFE膜)である。
【0063】
幾つかの実施形態において、治療デバイス100の細胞保持性層118、122及び細胞透過性層116、120の一方又は両方は、主に又は完全に、選択的ふるい分け及び/又は多孔質特性を有する多孔質材料から作られている。幾つかの実施形態において、多孔質材料は、主にサイズに基づいて、例えば、材料を通る溶質、生化学物質、ウイルス及び細胞の通過を制御する。多孔質材料の非限定的な例としては、限定するわけではないが、生体材料テキスタイルを含む、内層及び外層について上記に記載された1つ以上の材料が挙げられる。
【0064】
1つの実施形態において、治療デバイス100は複合層を含まない。代わりに、治療デバイスは、第一の細胞透過性層及び第二の細胞透過性層を含む。そのような実施形態において、治療デバイス100に挿入される細胞は、マイクロカプセル化され、これは、宿主免疫応答からの細胞の単離を提供するが、細胞が栄養素などを受け取ることを可能にする(例えば、細胞はデバイス100の外部の環境から栄養素及び他の生体分子を得ることができ、老廃物及び治療物質を排出することができる)。幾つかの実施形態において、細胞は、限定するわけではないが、ヒドロゲルを含む天然又は合成起源の生体材料内にマイクロカプセル化されうる。
【0065】
図6を見ると、上記のように、リザーバ108は、ポーチ102の第一の複合層104と第二の複合層106との間に形成されている。具体的には、リザーバ108は、ポーチ102の細胞保持性層118、122の間に形成される。本明細書で使用されるときに、「リザーバ」という用語は、第一の細胞保持性層と第二の細胞保持性層との間の治療デバイス100内、及び細胞の配置が行われる(又は細胞が存在する)治療デバイス100の周囲内の総領域を規定することが意図されている。リザーバ108は、例えば、レーン又は幾何学的形状(例えば、矩形、円、正方形、半円、半楕円形などの一般的な形態)などの多数の構成をとることができる。
【0066】
リザーバ108は、図6に示されるように、治療デバイス100内に細胞136を保持するように構成されており、細胞が患者に生物学的療法を提供する治療的に有用な物質を分泌することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞136は、リザーバ108に流体接続されている1つ以上のポート107を通して治療デバイス100のリザーバ108に導入される。ポート107は、それらがリザーバ108と流体連通しており、治療デバイス100の外部からアクセス可能である限り、治療デバイス100の周囲に沿ったどこに配置されてもよい。幾つかの実施形態において、ポート107は、治療デバイス100の周囲に配置されている。幾つかの実施形態において、ポート107は、シールされたポーチ102の第一の複合層104と第二の複合層106との間のシールされた周囲を通って延在し、その結果、細胞はポーチ材料の開口部を通してポーチ102のリザーバ108に導入される。
【0067】
幾つかの実施形態において、細胞136は、培地中の懸濁液又はスラリーの形態で導入される。細胞136は、個々の細胞、細胞集合体又は細胞クラスターであることができる。幾つかの実施形態において、培地は、細胞培養又は細胞増殖培地であることができ、場合により、所望の栄養素及び/又は他の生体分子を含む。幾つかの実施形態において、ポート107を通した細胞の挿入は、注射器によって達成されうる。
【0068】
細胞136は、治療デバイス100を患者に挿入する前又は後に、リザーバ108に導入することができる。例えば、治療デバイス100を患者内に挿入し、血管組織がデバイス100の血管新生層内に成長するように血管新生を可能にすることができる。次に、治療デバイス100がインビボにある間に細胞136を添加することができる。あるいは、細胞136は、治療デバイス100を患者の組織床に挿入する前に、治療デバイス100に添加されうる。
【0069】
上述のように、治療デバイス100は、幾つかの実施形態において、ポーチ102を含む。幾つかの実施形態において、ポーチは、形状が管状であることができる。ポーチ102は、ポーチ102の第一の端部130からポーチ102の第二の端部132まででそれを通して延在している中空管腔112を含む。図6に示されるように、第一の複合層104の細胞透過性層116の外面134は、ポーチ102の外壁を形成する。さらに、管腔112は、図2に示されるように、第二の層106の細胞透過性層120の管腔対向表面135によって画定される。
【0070】
図1~6は、ポーチ102のサイズに対して誇張された周囲長を有する管腔112を示しているが、管腔112の周囲長さは、非常に小さいか、又は幾つかの実施形態において、管腔に面する表面135の対向する面が接触しているように、実質的に存在していないことがある。幾つかの実施形態において、管腔112は、例えば、1mm~10mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、3mm~10mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、5mm~10mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、7mm~10mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、9mm~10mmの周囲長さを有する。
【0071】
他の実施形態において、管腔は、1mm~9mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、1mm~7mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、1mm~5mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、1mm~3mmの周囲長さを有する。
【0072】
他の実施形態において、管腔は、2mm~7mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、5mm~8mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、2mm~5mmの周囲長さを有する。他の実施形態において、管腔は、7mm~9mmの周囲長さを有する。
【0073】
治療デバイス100を非外傷的に取り外すために、デバイス100は、ポーチ102の第一の端部130に取り付けられた取り外し要素114を含む。取り外し要素114は、以下でさらに詳細に記載されるように、剪断力でなく、接線力によって治療デバイス100が取り外されることを可能にする。取り外し要素114は、ポーチ102の第一の端部130に引張力を伝達する、ポーチ102に一体型であるか又は取り付けられた任意の構造であることができる。幾つかの実施形態において、図1~4に示されるように、取り外し要素114はプルタブである。他の実施形態において、取り外し要素114は、フィラメント、ストリング、リボン、チューブ、縫合糸、シート又は他の長手方向要素を含む。取り外し要素114は生体適合性であり、金属又はポリマー材料であることができる。幾つかの実施形態において、取り外し要素114は、ePTFE又は別の強力で不活性な生体適合性材料を含む。幾つかの実施形態において、取り外し要素114は、治療デバイス100の第二の複合層106に取り付けられる。幾つかの実施形態において、取り外し要素114は、結束、接着又は留め具の使用によってポーチに取り付けられる。他の実施形態において、取り外し要素114は、ポーチ102の一体部分として形成される。一体の取り外し要素114は、他の「取り付け」モードにおけるポーチ102と取り外し要素114との間の接続点の故障を排除することができる。幾つかの実施形態において、図3~5に示されるように、取り外し要素114は、ポーチ102の第一の端部112から管腔112内に延在し、デバイス取り外しツール140によってアクセスされる。具体的には、デバイス取り外しツール140は、ポーチ102の第二の端部132から管腔112内に挿入され、取り外し要素114を把持する。したがって、以下でさらに詳細に記載されるように、管腔112を通して取り外し要素114に対して力が加えられ、デバイス100が反転によって取り外されるようにすることができる。
【0074】
図2~5に示される使用方法において、治療デバイス100は、患者の組織のポケット138内にインプラント処置される。治療デバイス100は、細胞136をリザーバ108に導入する前又は後に患者にインプラント処置されうる。治療デバイスがもはや不要になると、治療デバイス100は、接線力によって患者の組織から取り外され、患者の周囲組織への外傷を最小限に抑えるか又は回避する。具体的には、取り外し要素114は、図3に示されるように、管腔112を通してデバイス取り外しツール140によって係合される。図4に示されるように、ポーチ102の第一の端部130がポーチ102の第二の端部132に向かって管腔112内に引き込まれるように、引張力はデバイス取り外しツール140によって取り外し要素114に加えられる。デバイス取り外しツール140が管腔112を通してさらに引っ張られて、その結果、第一の端部130が管腔112を通ってポーチ102の外側に向かってデバイス取り外しツール140に追従するときに、ポーチ102は患者の周囲組織から非外傷的に取り外され(例えば、剥離され)、そして図5に示されるように、最終的に管腔112を通して反転される。治療デバイス100が組織のポケット138から取り外されると、それはデバイス取り外しツール140によって患者から引き出されることができる。
【0075】
本開示の実施形態は、管腔を通して反転される治療デバイスを記載しているが、治療デバイスが様々な他の方法で反転される可能性があるさらなる実施形態が考えられ、本開示の範囲内であると考えられる。治療デバイスは、治療デバイスの少なくとも1つの表面が遊離である、すなわち組織に付着していない限り、他の任意の形状又は形態をとることができる。例えば、本開示の幾つかの実施形態において、治療デバイスは、実質的に平面又はパッチ状であり、管腔がそれを通って延在していない。この実施形態において、治療デバイスの単一の表面は、血管新生を介して組織に付着し、一方、反対面は、組織の付着を防ぎ、したがって、遊離であるか、又は組織に付着していない。この実施形態において、取り外し要素は遊離表面に取り付けられ、その結果、取り外し要素に引張力を加えると、取り付けられた面は組織から剥がれる。
【0076】
I.シワにより取り外し可能な治療デバイス
さらなる実施形態では、治療デバイスに組み込まれた複数のシワを介して治療デバイスを取り外す方法が本明細書に記載される。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、例えば、患者の組織内にインプラント処置される。インプラント処置されると、治療デバイスは、上記で詳細に記載されているように、患者の周囲組織への外傷を最小限に抑えるように、取り外し要素に引張力を加えることによって組織から取り外される。例えば、治療デバイスの第二の端部は、デバイス取り外しツールによって係合されることができ、引張力が第二の端部に加えられて、治療デバイスの第一の端部から離れる方向に第二の端部を引っ張る。第二の端部が引張力の方向に引っ張られると、第二の端部に最も近い第一の微小シワが展開する。デバイス取り外しツールが第二の端部を第一の端部からさらに引き離すと、治療デバイスが患者の周囲組織から非外傷的に取り外される(例えば、剥離される)まで、各々の個々の微小シワが1つずつ展開される。
【0077】
図7~14は、第一の端部330から第二の端部332まで延在している治療デバイス300の例示的な実施形態を示す。治療デバイス300は第一の複合層304及び第二の複合層306を含み、これらの複合層はそれらの周囲310の一部に沿ってシールされている。リザーバ308は、第一の複合層及び第二の複合層304、306の間に形成される。リザーバ308は、細胞が収容される収容空間であり、リザーバ308と流体連通している少なくとも1つのポート307によってアクセス可能である。治療デバイス300の周囲310はポート307の位置までシールされている。ポート307は、シールされた周囲310を通って延在し、リザーバ308と流体連通している。幾つかの実施形態において、管腔312は、図8に示されるように、治療デバイス300を通って延在している。
【0078】
第一の複合層及び第二の複合層304、306は、同じ方法で形成することができ、本明細書に記載の第一の複合層及び第二の複合層104、106と同じ特性を有する。幾つかの実施形態において、その第一の複合層304は、細胞透過性層316及び細胞保持性層318を含む複合層である。幾つかの実施形態において、第二の複合層306は、細胞透過性層320及び細胞保持性層322を含む。細胞透過性層316、320及び細胞保持性層318、322は、それぞれ、細胞透過性層116、120及び細胞保持性層118、122と同じ方法で形成され、同じ特性を有することができる。具体的には、図14に示されるように、細胞透過性層316、320は、細胞増殖及び血管新生に対して不透過性である細胞保持性層319、322まで、それを通して血管新生を促進する(すなわち、毛細血管ネットワーク337を形成する)細胞透過性層である。細胞保持性層は非常に薄いため、細胞は血管新生層から栄養素を受け取ることができるが、血管新生はこれら2つの層の界面で停止する。
【0079】
図8~12に示されるように、例示的な実施形態において、第一の複合層及び第二の複合層304、306のそれぞれは、複数のシワ350を含む。本明細書において規定されるとおりの「シワ」は交互の頂部と谷部とのトポグラフィーパターンを形成する。第一の複合層及び第二の複合層304、306はこれらのシワ350を含むので、治療デバイス300は、複数のシワが治療デバイス300の長手方向軸に対してほぼ垂直な方向に延在している図9に示される弛緩状態と、複数のシワが第一の端部330と第二の端部332との間で治療デバイス300の長手方向軸にほぼ平行になるように第一の端部330と第二の端部332との間で伸ばされた伸長状態との間で移動可能である。部分的に伸長された状態は図11に示されている。具体的には、ポーチ302の第二の端部332が組織床から引っ張られると、治療デバイス300に加えられた張力により、シワ350が展開し、治療デバイス300がインプラント処置された組織床から治療デバイス300を脱接続する。弛緩状態から伸長状態へのこの移動は、治療デバイス300がインプラント処置されている組織への最小限の外傷を伴って、患者の組織床からの治療デバイス300の取り外しを可能にする。さらに、複数のシワ350は、シワが有効表面積を増加させるので、デバイスの有効性を増加させることができる。シワ305は、幾つかの実施形態において、Zagglらの米国特許第9,849,629号明細書の教示に従って形成することができる。
【0080】
第一の複合層及び第二の複合層304、306が複合層である幾つかの実施形態において、外層のみが、シワのない内層を覆う複数のシワ350を含む。幾つかの実施形態において、内層及び外層の両方が、複数のシワ350を含む。
【0081】
リザーバ308は、治療デバイス300の第一の複合層304と第二の複合層306との間に形成される。リザーバ108は、例えば、平面又は幾何学的形状(例えば、矩形、円、正方形、半円、半楕円形などの一般的な形態)などの多数の構成をとることができる。
【0082】
リザーバ308は、図12に示されるように、患者の組織床に配置される治療デバイス300内に細胞336を保持するように構成され、細胞336が患者に生物学的治療を提供することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞336は、1つ以上のポート307を通して治療デバイス300のリザーバ308内に導入される。ポート107と同様に、ポート307は、リザーバ308と流体連通しているかぎり、治療デバイス300に沿ったどの位置に配置されてもよい。幾つかの実施形態において、ポート307は、細胞336がリザーバ308に導入されるように、シールされたポーチ302の第一の複合層304と第二の複合層306との間のシールされた周囲を通って延在している。
【0083】
治療デバイス300が使用される少なくとも1つの実施形態において、治療デバイス300は、図9に示されるように、患者の組織のポケット338内にインプラント処置される。治療デバイス300は、細胞336を治療デバイス300のリザーバ308に導入する前又は後に患者にインプラント処置されうる。取り外しが必要される又は保証されると認められるときに、治療デバイス300は、デバイス300を取り巻く組織への外傷を最小化又は低減するために引張力を加えることにより患者の組織から取り外される。幾つかの実施形態において、治療デバイス300の第二の端部332は、図10に示されるように、デバイス取り外しツール340によって係合される。デバイス取り外しツール340は、例えば、スネア、止血鉗子などであることができ、これは、使用者に最も近い端部からの治療デバイス100の取り外しを可能にする。引張力(T)は、治療デバイス300の第二の端部332が第一の端部330から離れる方向に引っ張られるように、デバイス取り外しツール340によって第二の端部332に加えられ、その結果、第二の端部332に最も近い第一の微小シワは、図10に示されるように、展開する。デバイス取り外しツール340が第二の端部332を第一の端部330からさらに引き離すと、治療デバイス300が、図11~13に示されるように、患者の周囲組織から非外傷的に剥離されるまで、シワ350が展開される。
【0084】
III.シワ及び反転によって取り外し可能な治療デバイス
さらなる実施形態において、反転を介して複数のシワを有する治療デバイスを取り外す方法が記載されている。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、例えば、患者の組織にインプラント処置される。治療が完了した後、又はさもなければ取り外しが要求されるときに、治療デバイスは、治療デバイスに一体化された組織への外傷を最小化又は回避するために、接線力によって患者の組織から取り外されることができる。デバイスの取り外し要素は、例えば、デバイス取り外しツールによって係合される。引張力は、治療デバイスの第一の端部が治療デバイスの第二の端部に向かってそれ自体を通して内側に反転されるように、デバイス取り外しツールによって取り外し要素に加えられる。第一の端部が引張力の方向に引っ張られると、第一の端部に最も近い第一の微小シワは展開する。デバイス取り外しツールが第一の端部をさらに第二の端部に向かって引っ張ると、治療デバイスが患者の周囲組織から非外傷的に取り外される(例えば、剥離される)まで、個々のシワが展開される。
【0085】
図15~19は、治療デバイス500の例示的な実施形態を示している。治療デバイス500は、治療デバイス100と実質的に類似しており、ポーチ502及びそれに取り付けられた取り外し要素514を含む。ポーチ502は、第一の端部530から第二の端部532まで延在している。ポーチ502は、第一の複合層504及び第二の複合層506を含む。リザーバ508は、第一の複合層及び第二の複合層504、506の間に形成されている。リザーバ508は、細胞が収容される収容空間であり、リザーバ508と流体連通しているポート507によってアクセス可能である。ポーチ502の周囲510は、ポート507の位置までシールされている。例示的な実施形態において、中空管腔512は、図16に示されるように、ポーチ502を通って延在している。治療デバイス500の取り外し要素514は、反転による治療デバイス500の非外傷性取り外しのために、ポーチ502の第一の端部530に取り付けられる。
【0086】
治療デバイス300と同様に、複数のシワ550は治療デバイス500に組み込まれる。そのような実施形態において、第一の複合層及び第二の複合層504、506のそれぞれは、複数のシワ550を含む。第一の複合層及び第二の複合層504、506がこれらのシワを含むので、治療デバイス500は、患者の体内で、複数のシワが治療デバイス500の長手方向軸Lに対してほぼ垂直な方向に延在している弛緩状態と、複数のシワが、治療デバイス500の長手方向軸に対してほぼ平行になるように、第一の端部530と第二の端部532との間で引き伸ばされている伸長状態との間で移動可能である。
【0087】
第一の複合層及び第二の複合層504、506は、本明細書に記載の第一の複合層及び第二の複合層104、106と同じ方法で形成され、同じ特性を有することができる。幾つかの実施形態において、その第一の複合層504は、細胞透過性層516及び細胞保持性層518を含む複合層である。幾つかの実施形態において、第二の複合層506は、細胞透過性層520及び細胞保持性層522を含む。細胞透過性層516、520及び細胞保持性層518、522は、それぞれ、細胞透過性層116、120及び細胞保持性層118、122と同じ方法で形成され、同じ特性を有することができる。
【0088】
リザーバ508は、治療デバイス500の第一の複合層504と第二の複合層506との間に形成され、細胞536を保持するように構成されている収容空間である。リザーバ508は、本明細書に記載のリザーバ108と同じ方法で形成され、そして同じ特性を有することができる。
【0089】
治療デバイス500が使用される少なくとも1つの実施形態において、治療デバイス500は、図17に示されるように、患者の組織のポケット538内にインプラント処置される。治療デバイス500は、細胞536の導入の前又は後に患者にインプラント処置されることができる。取り外しが要求され又は保証されると認められるときに、治療デバイス500は、接線力を加えることによって患者の組織から取り外され、患者の周囲の組織への外傷を最小限に抑えるか又は回避する。具体的には、取り外し要素514は、図17に示されるように、管腔512を通してデバイス取り外しツール540によって係合される。図18に示されるように、ポーチ502の第一の端部530がポーチ502の第二の端部532に向かって管腔512内に引き込まれるように、引張力はデバイス取り付けツール540によって取り外し要素514に加えられる。同時に、図18に示されるように、第一の端部530に最も近い第一の微小シワが展開する。デバイス取り外しツール540が管腔512を通ってさらに引っ張られて、第一の端部530が管腔512を通ってポーチ502の外側に向かってデバイス除去ツール540に追従し、ポーチ502が患者の周囲組織から非外傷的に剥離され、最終的に図19に示される管腔512を通して反転されるまで、個々の微小シワ550のそれぞれは第一の端部530から第二の端部532まで展開する。したがって、この実施形態の治療デバイスは、周囲組織への外傷を最小限に抑えるために反転取り外し技術を使用しながら、複数のシワ350の表面積の増加により、より大きなデバイスの有効性を可能にすることができる。
【0090】
VI.生体吸収性材料
幾つかの実施形態において、記載された治療デバイスの一方又は両方の複合層は、生体吸収性材料であるか、又はそれを含む。生体吸収性材料は、固体(成形品、押出品又は結晶)、自己凝集ウェブ、隆起したウェビング又はスクリーンとして形成することができる。幾つかの実施形態において、生体吸収性材料の1つ以上の層は、巨視的多孔性を有する非生体吸収性材料に取り付けられて、細胞透過(例えば、細胞透過性層)が複合材を形成することを可能にする。他の実施形態において、細胞透過性を減少又は防止するための微視的多孔性を有する非生体吸収性材料が、多孔性自己凝集ウェブに解放可能に取り付けられて、インプラント処置の何日か後に患者から治療デバイス100、300の非外傷性取り外しを可能にする。患者に吸収されると、I型コラーゲン沈着、血管新生及び感染の減少が促進される。さらに、幾つかの実施形態において、細胞透過性層は、治療デバイスの外植が必要とされる速度で再吸収するように調整可能な生体吸収性材料から作られてよく、したがって、治療デバイスへの組織の内部成長はさほど有意でないので、取り外しが容易になる。
【0091】
適切な生体吸収性材料の非限定的な例としては、限定するわけではないが、ポリグリコリド:トリメチレンカーボネート(PGA:TMC)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)及びそれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。以下、本発明の態様を列挙する。
[態様1]
対向する第一の端部及び第二の端部、
該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の複合層及び第二の複合層、ここで、該第一の複合層は、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞透過性層と、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞保持性層とを含み、
該第一の複合層と該第二の複合層との間に配置されたリザーバ、ここで、該リザーバは該第一の細胞保持性層に接触しており、
該リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含むポーチ、並びに
該ポーチの該第一の端部に動作可能に係合して、該第一の端部を反転によって該ポーチの該第二の端部に向かって移動可能にするように構成された取り外し要素、
を含んでなる、治療デバイス。
[態様2]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のそれぞれが複数のシワを含む、態様1記載のデバイス。
[態様3]
前記第一の細胞透過性層は、それを通る血管組織の成長を可能にするのに十分な細孔サイズを有する、態様1又は2記載のデバイス。
[態様4]
前記細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して5.0ミクロンより大きい、態様3記載のデバイス。
[態様5]
前記第一の細胞保持性層は、血管組織の内部成長を防止するのに十分な細孔サイズを有する、態様1~4のいずれか1項記載のデバイス。
[態様6]
前記細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して1ミクロン未満である、態様5記載のデバイス。
[態様7]
前記第一の細胞透過性層及び前記第一の細胞保持性層のうちの少なくとも1つは延伸フルオロポリマーを含む、態様1~6のいずれか1項記載のデバイス。
[態様8]
前記第二の複合層は、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞透過性層と、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞保持性層とを含む、態様1記載のデバイス。
[態様9]
組織ポケットにインプラント処置された治療デバイスの第一の端部に動作可能に係合するように構成された取り外し要素を係合させること、ここで、該インプラント処置された治療デバイス及び該組織ポケットは平面を規定し、
該平面に平行な第一の方向で該取り外し要素に対して引張力を加えること、
該取り外し要素を該第一の方向に沿って移動させて、該インプラント処置された治療デバイスが該組織ポケットから剥がれるように、該インプラント処置された治療デバイスの第一の端部を、該第一の端部の反対側の該インプラント処置された治療デバイスの第二の端部に向かって移動させること、
を含み、
移動工程は、該インプラント処置された治療デバイスを反転させて、該インプラント処置された治療デバイスを非外傷的に該組織ポケットから取り外す、方法。
[態様10]
前記治療デバイスは、
対向する第一の端部及び第二の端部、
該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の複合層及び第二の複合層、ここで、該第一の複合層は、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞透過性層と、該対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第一の細胞保持性層とを含み、
該第一の複合層と該第二の複合層との間に形成されたリザーバ、ここで、該リザーバは前記第一の細胞保持性層に接触しており、
各リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含むポーチ、並びに
該第一の端部に動作可能に係合して、該第一の端部を反転によって該第二の端部に向かって移動可能にするように構成された取り外し要素、
を含んでなる、態様9記載の方法。
[態様11]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のそれぞれが複数のシワを含む、態様9記載の方法。
[態様12]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つに形成された前記複数のシワが組織ポケット内の組織と係合する第一の弛緩状態から、前記複数のシワの少なくとも一部が引き離され、前記少なくとも一部のシワから前記組織の一部を解放する第二の伸長状態に前記治療デバイスを移動させることをさらに含み、
ここで、移動工程は、複数の別個の個々の動きを含み、それによって、前記組織は、前記ポーチの複数のシワから徐々に解放され、その結果、前記ポーチは、非外傷的に前記組織ポケットから取り外される、態様9~11のいずれか1項記載の方法。
[態様13]
前記第二の複合層は、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞透過性層と、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している第二の細胞保持性層とを含む、態様9~12のいずれか1項記載の方法。
[態様14]
対向する第一の端部及び第二の端部、ここで、該対向する第一の端部及び第二の端部はそれらの間に長手方向軸を規定しており、
該第一の端部と該第二の端部との間に延在している第一の複合層、ここで、該第一の複合層は第一の複数のシワを含み、
該第一の端部と該第二の端部との間に延在している第二の複合層、ここで、該第二の複合層は第二の複数のシワを含み、
該第一の複合層と該第二の複合層との間に形成され、ある長さ、幅及び深さを有するリザーバ、並びに、
該リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含んでなる治療デバイスであって、
該治療デバイスは、該第一の複数のシワ及び該第二の複数のシワが該長手方向軸にほぼ垂直な方向に延在している第一の弛緩状態と、該第一の複数のシワ及び該第二の複数のシワが該第一の端部と該第二の端部との間で引き伸ばされ、該長手方向軸とほぼ平行になるように構成されている第二の伸長状態との間で移動可能である、治療デバイス。
[態様15]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞透過性層、及び、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞保持性層、
を含む、態様14記載のデバイス。
[態様16]
組織ポケットにインプラント処置された治療デバイスの第一の端部を係合させること、ここで、該インプラント処置された治療デバイス及び前記組織ポケットは平面を規定し、
該平面に平行な第一の方向で該第一の端部に対して引張力を加えて、該治療デバイス上に形成された複数のシワが該組織ポケット内の組織に係合する第一の弛緩状態から、該複数のシワの少なくとも一部が引き離され、該少なくとも一部のシワから該組織の一部を解放する第二の伸長状態に該治療デバイスを移動させること、
を含んでなり、
ここで、該移動工程は、複数の別個の個々の動きを含み、それによって、該組織は、該ポーチの複数のシワから徐々に解放され、その結果、該ポーチは、非外傷的に該組織ポケットから取り外される、方法。
[態様17]
前記治療デバイスは、
対向する第一の端部及び第二の端部、ここで、前記対向する第一の端部及び第二の端部はそれらの間に長手方向軸を規定し、
前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第一の複合層、ここで、前記第一の複合層は第一の複数のシワを含み、
前記第一の端部と前記第二の端部との間に延在している第二の複合層、ここで、前記第二の複合層は第二の複数のシワを含み、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間に形成され、ある長さ、幅及び深さを有するリザーバ、及び、
前記リザーバと流体連通している少なくとも1つのポート、
を含み、
前記治療デバイスは、前記第一の複数のシワ及び前記第二の複数のシワが前記長手方向軸にほぼ垂直な方向に延在している第一の弛緩状態と、前記第一の複数のシワ及び前記第二の複数のシワが前記第一の端部と前記第二の端部との間で引き伸ばされ、前記長手方向軸とほぼ平行になるように構成されている第二の伸長状態との間で移動可能である、態様16記載の方法。
[態様18]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞透過性層、及び、
前記対向する第一の端部と第二の端部との間に延在している細胞保持性層、
を含む、態様16又は17のいずれか1項記載の方法。
[態様19]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは細胞透過性層である、態様17記載の方法。
[態様20]
前記第一の複合層及び前記第二の複合層のうちの少なくとも1つは細胞保持性層である、態様17記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14