(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】クワッド偏波アンテナモジュールアレイを用いてビームの空間‐偏波分離を具現するFDD方式のアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/30 20060101AFI20240208BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01Q3/30
H01Q21/24
(21)【出願番号】P 2022543097
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2021000623
(87)【国際公開番号】W WO2021145735
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0006676
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051182
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨウン チャン モーン
(72)【発明者】
【氏名】スン ホヮン ソ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソン チェ
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061903(WO,A1)
【文献】特表2015-529991(JP,A)
【文献】特開2011-120156(JP,A)
【文献】特開2017-118455(JP,A)
【文献】特開2010-233215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00- 3/46
H01Q 21/00- 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム(beam)の空間‐偏波分離を具現するFDD(frequency division duplexing)方式のアンテナ装置であって、
互いに異なる偏波方向を有し、第1の信号経路を共有する第1の放射素子、前記第1の放射素子に直交する偏波方向を有し、第2の信号経路を共有する第2の放射素子、前記第2の放射素子と45度の偏波方向差を有し、第3の信号経路を共有する第3の放射素子、及び前記第3の放射素子と直交する偏波方向を有し、第4の信号経路を共有する第4の放射素子を含むクワッド偏波アンテナモジュールアレイと、
前記第1の信号経路の信号をフィルタリングする第1のフィルタ、前記第2の信号経路の信号をフィルタリングする第2のフィルタ、前記第3の信号経路の信号をフィルタリングする第3のフィルタ、及び前記第4の信号経路の信号をフィルタリングする第4のフィルタを含むフィルタ部、及び、
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子を介して放射される第1のビームと、前記第3の放射素子及び第4の放射素子を介して放射される第2のビームとが空間上で分離するように、前記フィルタリングした信号の位相を設定する位相設定モジュールと、を含み、
前記第1のビームと前記第2のビームは、互いに異なる偏波方向を有
し、
前記第1の放射素子は、
前記第3の放射素子及び前記第4の放射素子の上側又は下側に配置し、
前記第2の放射素子は、
前記第3の放射素子及び前記第4の放射素子の右側又は左側に配置する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記クワッド偏波アンテナモジュールアレイは、
前記第1の放射素子のうちの1つ、前記第2の放射素子のうちの1つ、前記第3の放射素子のうちの1つ、及び前記第4の放射素子のうちの1つを含む第1のクワッド偏波アンテナモジュール、及び、
前記第1の放射素子のうちのもう1つ、前記第2の放射素子のうちのもう1つ、前記第3の放射素子のうちのもう1つ、及び前記第4の放射素子のうちのもう1つを含み、前記第1のクワッド偏波アンテナモジュールの上側又は下側に配置した第2のクワッド偏波アンテナモジュールを含み、
前記第2のクワッド偏波アンテナモジュールに含まれる第2の放射素子は、
前記第1のクワッド偏波アンテナモジュールに含まれる第2の放射素子が、前記第1のクワッド偏波アンテナモジュール内に配置された位置と逆となる位置に配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
ビーム(beam)の空間‐偏波分離を具現するFDD(frequency division duplexing)方式のアンテナ装置であって、
互いに異なる偏波方向を有し、第1の信号経路を共有する第1の放射素子、前記第1の放射素子に直交する偏波方向を有し、第2の信号経路を共有する第2の放射素子、前記第2の放射素子と45度の偏波方向差を有し、第3の信号経路を共有する第3の放射素子、及び前記第3の放射素子と直交する偏波方向を有し、第4の信号経路を共有する第4の放射素子を含むクワッド偏波アンテナモジュールアレイと、
前記第1の信号経路の信号をフィルタリングする第1のフィルタ、前記第2の信号経路の信号をフィルタリングする第2のフィルタ、前記第3の信号経路の信号をフィルタリングする第3のフィルタ、及び前記第4の信号経路の信号をフィルタリングする第4のフィルタを含むフィルタ部、及び、
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子を介して放射される第1のビームと、前記第3の放射素子及び第4の放射素子を介して放射される第2のビームとが空間上で分離するように、前記フィルタリングした信号の位相を設定する位相設定モジュールと、を含み、
前記第1のビームと前記第2のビームは、互いに異なる偏波方向を有
し、
前記第3の放射素子は、
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子の左下側又は右上側に配置し、
前記第4の放射素子は、
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子の右下側又は左上側に配置する、アンテナ装置。
【請求項4】
前記位相設定モジュールは、
前記第1のビームと前記第2のビームが空間上で水平方向に分離するように、前記フィルタリングした信号の位相を水平方向に設定する、請求項1
または3に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数分割デュープレクシングに用いられる4重偏波アンテナモジュール及びそれを用いてビームパターンを空間的に分離するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記載した内容は、単に本発明の背景情報を提供するだけであり、従来技術を構成するものではない。
【0003】
1つの伝送線やアンテナを用いて送受信信号を共に共有する方法として、周波数分割デュープレクシング(FDD:frequency-division duplexing)方式と時分割デュープレクシング(TDD:Time-division duplexing)方式が用いられる。
【0004】
FDD方式のアンテナは、マルチパスによるフェージング(fading)効果を低減し、偏波ダイバーシティ(diversity)機能を実行するために、2重偏波アンテナモジュールとして設計するのが一般的である。さらに、FDD方式のアンテナは、複数個の2重偏波アンテナモジュールがアレイした形態を有し、2重偏波アンテナモジュールの各々は複数個のアンテナ素子(放射素子)を含む。
【0005】
FDD方式の2重偏波アンテナモジュールアレイに関する一例を
図1に示す。
図1にて、各矢印は放射素子を示し、矢印の方向は各放射素子の偏波方向を示す。左側の2重偏波アンテナモジュール(第1のアンテナモジュール)と右側の2重偏波アンテナモジュール(第2のアンテナモジュール)のそれぞれに含まれる放射素子のうち、一方は+45度の角度で配置し、他方は-45度の角度で配置する。すなわち、放射素子は互いに直交又は垂直な偏波方向を有する。
【0006】
2T2Rである第1のアンテナモジュールは、ダイプレクサ(第1のダイプレクサ及び第2のダイプレクサ)を用いて送受信信号(Tx1、Rx1、Tx2及びRx2)のそれぞれを分離することによってFDD方式を具現する。第2のアンテナモジュールと、第2のアンテナモジュールの送受信信号をそれぞれ分離して処理する第3のダイプレクサ及び第4のダイプレクサ(図示せず)を追加的に構成すると、2T2R以上の送受信信号処理を具現することができる。
【0007】
しかしながら、第1のアンテナモジュールと第2のアンテナモジュールとの間の分離度(isolation)を確保し、ビームフォーミングの最適条件を達成するためには、第1のアンテナモジュールと第2のアンテナモジュールが予め設定した中心間距離(d、例えば、 0.5λ)を置いて配置する必要がある。限られた空間内に第1のアンテナモジュールと第2のアンテナモジュールを予め設定した中心間距離を確保した状態で配置しなければならないので、第2のアンテナモジュールのための第3のダイプレクサと第4のダイプレクサを追加的に配置するのに困難がある。
【0008】
もし、ダイプレクサ自体のサイズが大きくなる場合には、第3のダイプレクサと第4のダイプレクサの追加配置のためのスペース不足の問題がさらに深化する可能性がある。例えば、
図2に示すように、FDD方式の場合、PCS(personal communications service)通信に用いられる送信周波数(f
2)帯域(PCS Tx)と受信周波数(f
1)帯域(PCS Rx)との間の距離が非常に狭い区間(w)が存在する。このような場合、ダイプレクサはwでのスカート特性を確保するために、より多くの個数の共振器を含むように構成しなければならないため、ダイプレクサのサイズが増加することになり、これによりダイプレクサの追加配置のための空間の不足の問題はさらに深化し得る。
【0009】
一方、
図1に表現した2重偏波アンテナモジュールアレイを介したビームフォーミング(ビームパターン)を示すと、
図3と同様である。第1のアンテナモジュールによって放射されるビームは点線波形で示し、第2のアンテナモジュールによって放射されるビームは二点鎖線波形で示す。
【0010】
図3から分かるように、2重偏波アンテナモジュールアレイから放射されるビームはワイドビーム形態を有し、ワイドビーム形態のビームは周囲環境によってSNR(signal to noise ratio)が低下して遠い地点まで信号を伝送するのは難しいという限界がある。
【0011】
従来の方法は、2重偏波アンテナモジュールアレイ内の放射素子をカップリングして(信号経路を共有して)同じ周波数の信号(同じ偏波の信号)に対して空間(セクタ)を分離することで、この問題を解決しようとした。例えば、従来の方法は、同じ周波数の信号を3つ(
図4(a))又は6つ(
図4(b))の空間に分離してビームフォーミングした。しかしながら、このような方法は、互いに異なる偏波を有するビームが隣接する位置に配置されているので、各ビーム間の相関関係が高くなり、通信品質が低下するという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一実施例は、アンテナモジュールの構造的な変更を介してアンテナモジュール自体のサイズを減少させ、これを介してダイプレクサ又はフィルタの配置のための十分なスペースを確保することに主な目的がある。
【0013】
さらに、本発明の他の実施例は、アンテナモジュールアレイを介して放射されるビームを空間的に分離させ、隣接するビーム間の偏波を互いに異なるように設定することで、ビーム間の相関関係を減少させて通信品質を向上させることができるアンテナ装置を提供することに主な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例によると、ビーム(beam)の空間‐偏波分離を具現するFDD(frequency division duplexing)方式のアンテナ装置であって、互いに同じ偏波方向を有し、第1の信号経路を共有する第1の放射素子、前記第1の放射素子と直交する偏波方向を有し、第2の信号経路を共有する第2の放射素子、前記第2の放射素子と45度の偏波方向差を有し、第3の信号経路を共有する第3の放射素子、及び、前記第3の放射素子と直交する偏波方向を有し、第4の信号経路を共有する第4の放射素子を含むクワッド偏波アンテナモジュールアレイと、前記第1の信号経路の信号をフィルタリングする第1のフィルタ、前記第2の信号経路の信号をフィルタリングする第2のフィルタ、前記第3の信号経路の信号をフィルタリングする第3のフィルタ、及び、前記第4の信号経路の信号をフィルタリングする第4のフィルタを含むフィルタ部、及び、前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子を介して放射される第1のビームと、前記第3の放射素子及び前記第4の放射素子を介して放射される第2のビームが空間上で分離するように、前記フィルタリングした信号の位相を設定する位相設定モジュールを含み、前記第1のビームと前記第2のビームは互いに異なる偏波方向を有するアンテナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によると、放射素子の信号経路をカップリングし、カップリングした信号経路のそれぞれにフィルタをつなぐので、従来のダイプレクサの追加配置のための空間不足の問題を解決できる。
【0016】
また、本発明によると、物理的に区分した2重偏波アンテナモジュールを1つの4重偏波アンテナモジュールに一体化することで、面積の削減だけでなく、製作、設置、メンテナンスなどの利便性を提供する。
【0017】
さらに、本発明によると、ナロービームを放射することができ、アンテナの利得を向上させることができるし、ビームを空間上で様々な方向に分離することができ、カバレッジを広げることができるし、ビームの偏波分離を介してビーム間の相関関係を減らすことができるため、通信品質をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の2重偏波アンテナ装置を説明するための図である。
【
図2】従来の2重偏波アンテナ装置を説明するための図である。
【
図3】従来の2重偏波アンテナ装置を介して放射されるビームを説明するための図である。
【
図4】従来の2重偏波アンテナ装置を介して放射されるビームを説明するための図である。
【
図5】4重偏波アンテナモジュールに関する様々な例を説明するための図である。
【
図6】4重偏波アンテナモジュールに関する様々な例を説明するための図である。
【
図7】4重偏波アンテナモジュールに関する様々な例を説明するための図である。
【
図8】4重偏波アンテナモジュールアレイ及び4重偏波アンテナ装置に関する様々な例を説明するための図である。
【
図9】4重偏波アンテナモジュールアレイ及び4重偏波アンテナ装置に関する様々な例を説明するための図である。
【
図10】4重偏波アンテナモジュールアレイ及び4重偏波アンテナ装置に関する様々な例を説明するための図である。
【
図11】4重偏波アンテナモジュールアレイ及び4重偏波アンテナ装置に関する様々な例を説明するための図である。
【
図12】4重偏波アンテナモジュールアレイに関する他の例を説明するための図である。
【
図13】空間‐偏波分離を説明するための図である。
【
図14】空間‐偏波分離を説明するための図である。
【
図15】空間‐偏波分離を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を通して詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を追加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面に表示されても可能な限り同一の符号を有することに留意したい。なお、本発明の説明にあたり、関連する公知の構成又は機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断した場合には、その詳しい説明は省く。
【0020】
また、本発明の構成要素を説明するために、第1の、第2の、A、B、(a)、(b)などの用語を用いる場合がある。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためだけのものであり、その用語によって当該構成要素の本質、順番又は順序などが限定されない。本明細書全体にて、ある部分がある構成要素を「含む」、「具備」する場合、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。さらに、明細書に記載した「…部分」、「モジュール」などの用語は、少なくとも1つの機能又は動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現する。
【0021】
本明細書では、1)空間効率性を向上させることができるアンテナモジュール、及び2)フィルタの追加配置が可能な空間確保のためのアンテナモジュールの構造、3)ビームの空間‐偏波分離が可能なアンテナ装置を提案する。
【0022】
実施例1
実施例1では、空間効率性を向上させる4重(クワッド)偏波アンテナモジュール500を提案する。
【0023】
図5ないし
図7に示すように、クワッド偏波アンテナモジュール500は、第1の放射素子モジュール510及び第2の放射素子モジュール520を含んで構成する。
【0024】
第1の放射素子モジュール510は、相互間で直交する又は垂直な偏波方向を有する2つの放射素子512、514を含んでなる。第2の放射素子モジュール520はまた、相互間で直交する又は垂直な偏波方向を有する2つの放射素子522、524を含んでなる。
【0025】
ここで、「直交」又は「垂直」とは、放射素子の偏波方向が正確に90度の角度差を有する場合と、90±θの角度差を有する場合の両方を含む。 θは、アンテナモジュールの作製工程における誤差、他のアンテナモジュールとの相関関係(correlation)程度、ビームフォーミング方向の調整必要性などに応じて可変である。
【0026】
第1の放射素子モジュール510に含まれる2つの放射素子512、514のうち、いずれか一方を第1の放射素子512と称し、他方を第2の放射素子514と称する。第2の放射素子514は、第1の放射素子512の偏波方向と直交又は垂直な偏波方向を有するように設定する。
【0027】
第2の放射素子モジュール520に含まれる2つの放射素子522、524のうち、いずれか一方を第3の放射素子522と称し、他方を第4の放射素子524と称する。第3の放射素子522は、第1の放射素子512の偏波方向と45度の偏波方向差を有するように設定する。
【0028】
第4の放射素子524は、第3の放射素子522の偏波方向と直交又は垂直な偏波方向を有するように設定する。第2の放射素子514は第1の放射素子512と直交又は垂直な偏波方向関係を有し、第1の放射素子512は第3の放射素子522及び第4の放射素子524と45度の偏波方向関係を有し、第4の放射素子524が第3の放射素子522と直交又は垂直な偏波方向関係を有する。したがって、第4の放射素子524は、第1の放射素子512及び第2の放射素子514と45度の偏波方向関係を有する。
【0029】
ここで、「45度の偏波方向関係」とは、放射素子が正確に45度の偏波方向差を有する場合と、45±θの偏波方向差を有する場合のすべてを含む。 θは、アンテナモジュールの作製工程における誤差、他のアンテナモジュールとの相関関係の程度、ビームフォーミング方向の調整の必要性などに応じて可変である。
【0030】
実施形態により、放射素子512、514、522、524の偏波方向は多様である。例えば、第1の放射素子512と第2の放射素子514のそれぞれが+45度と-45度の偏波方向を有し、第3の放射素子522と第4の放射素子524のそれぞれが垂直方向(vertical)及び水平方向(horizontal)の偏波方向を有する。別の例として、第1の放射素子512と第2の放射素子514のそれぞれは、垂直方向と水平方向の偏波方向を有し、第3の放射素子522と第4の放射素子524のそれぞれは、+45度と-45度の偏波方向を有する。
【0031】
FDD方式の具現のために、放射素子512、514、522、524のそれぞれは、信号の送信又は受信に用いる。例えば、第1の放射素子512及び第2の放射素子514のうち、いずれか一方(第1の放射素子)が送信ラインTx1につながって信号の送信に用いられ、他方(第2の放射)素子は受信ラインRx2につながって信号の受信に用いられる。また、第3の放射素子522及び第4の放射素子524のうち、いずれか一方(第3の放射素子)が送信ラインTx2につながって信号の送信に用いられ、他方(第4の放射素子)が受信ラインRx1につながって信号の受信に用いられる。
【0032】
以下では、クワッド偏波アンテナモジュール500の面積効率を向上させることができる実施例について説明する。以下の実施例では、第1の放射素子512及び第3の放射素子522が信号の送信に用いられ、第2の放射素子514及び第4の放射素子524が信号の受信に用いると仮定する。
【0033】
実施例1-1
実施例1-1は、第1の放射素子512及び第2の放射素子514が第2の放射素子モジュール520の周辺に配置される実施例である。
【0034】
図5に示すように、第1の放射素子512は、第2の放射素子モジュール520の上側(上側周辺)に配置するか(
図5(a)及び(b))、もしくは第2の放射素子モジュール520の下側(下側周辺)に配置する(
図5(c)及び(d))。第2の放射素子モジュール520の上側又は下側に配置した第1の放射素子512は、第3の放射素子522及び第4の放射素子524と±45度の偏波方向差を有する。
【0035】
第2の放射素子514は、第2の放射素子モジュール520の左側(左周り)に配置するか(
図5(a)及び(c))、もしくは第2の放射素子モジュール520の右側(右周り)に配置する(
図5(b)及び(d))。第2の放射素子モジュール520の左側又は右側に配置した第2の放射素子514は、第1の放射素子512と直交又は垂直な偏波方向差を有し、第3の放射素子522及び第4の放射素子524と±45度の偏波方向差を有する。
【0036】
実施例1-2
実施例1-2は、第3の放射素子522及び第4の放射素子524が第1の放射素子モジュール510の周辺に配置される実施例である。
【0037】
図6に示すように、第3の放射素子522は、第1の放射素子モジュール510の左上側(左上側周辺)に配置するか(
図6(a)及び(b))、もしくは第1の放射素子モジュール510の右下側(右下側周辺)に配置する(
図6(c)及び(d))。第1の放射素子モジュール510の左上側又は右下側に配置した第3の放射素子522は、第1の放射素子512及び第2の放射素子514と±45度の偏波方向差を有する。
【0038】
第4の放射素子524は、第1の放射素子モジュール510の左下側(左下側周辺)に配置するか(
図6(a)及び(c))、もしくは第1の放射素子モジュール510の右上側(右上側周辺)に配置する(
図6(b)及び(d))。第1の放射素子モジュール510の左下側又は右上側に配置した第4の放射素子524は、第3の放射素子522と直交又は垂直な偏波方向差を有し、第1の放射素子512及び第2の放射素子514と±45度の偏波方向差を有する。
【0039】
実施例1-1及び1-2で説明したように、本発明のクワッド偏波アンテナモジュール500は、第2の放射素子モジュール520が占有する領域(
図5の実線ボックス)内に第1の放射素子512及び第2の放射素子514を配置するように構成するか、又は第1の放射素子モジュール510が占有する領域(
図6の実線ボックス)内に第3の放射素子522及び第4の放射素子524を配置するように構成する。
【0040】
したがって、実施例1-1及び1-2によると、2つの放射素子モジュールを物理的に区別して配置した従来のアンテナモジュールと比べ、より向上した面積効率性を提供する。また、面積効率性の向上は、製作、設置、メンテナンスなどの利便性につながる。
【0041】
実施例1-1で、第3の放射素子522と第4の放射素子524は様々な形態で配置する。例えば、第3の放射素子522と第4の放射素子524は互いに交差するように配置する。また、第3の放射素子522と第4の放射素子524は、それぞれの中心が互いに交差するように配置する。このような場合、第2の放射素子モジュール520が占有する領域(
図5の実線ボックス)の面積が最小となり、面積効率性がさらに向上する。
【0042】
実施例1-2で、第1の放射素子512と第2の放射素子514は様々な形態で配置する。例えば、第1の放射素子512と第2の放射素子514は互いに交差するように配置する。また、第1の放射素子512と第2の放射素子514は、それぞれの中心が互いに交差するように配置する。このような場合、第1の放射素子モジュール510が占有する領域(
図6の実線ボックス)の面積が最小となり、面積効率性がさらに向上する。
【0043】
実施例1-3
実施例1-3は、第1の放射素子512及び第2の放射素子514を互いに交差するように配置し、第3の放射素子522及び第4の放射素子524をも互いに交差するように配置する実施例である。
【0044】
図7に示すように、第1の放射素子512と第2の放射素子514は互いに交差するように配置する。第1の放射素子512と第2の放射素子514が互いに交差する地点又はポイントを「第1の交差点710」と称する。
【0045】
図7に示すように、第3の放射素子522と第4の放射素子524は互いに交差するように配置する。第3の放射素子522と第4の放射素子524が互いに交差する地点又はポイントを「第2の交差点720」と称する。
【0046】
クワッド偏波アンテナモジュール500が占める面積(
図7の実線ボックス)は、第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離に応じて決定する。第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離が増加するほど、クワッド偏波アンテナモジュール500が占める面積が増加し、第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離が減少するにつれて、クワッド偏波アンテナモジュール500が占める面積を減少させることができる。
【0047】
従来の方法(2つの放射素子モジュールを物理的に区分して配置)に比べてさらに向上した面積効率性を提供するためには、第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離が放射素子1つの長さ以下であることが望ましい。
【0048】
第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離が放射素子1つの長さ以下であれば、第1の交差点710と第2の交差点720との間の距離は設計者の意図やアンテナモジュールアレイを構成する他のアンテナモジュールとの配置関係などに応じて様々に設定できる。
【0049】
面積効率性を最大化するためには、第1の交差点710と第2の交差点720が互いに同じ位置にあってもよい。すなわち、第1の放射素子512と第2の放射素子514は、それぞれの中心が互いに交差(第1の交差点)するように配置し、第3の放射素子522と第4の放射素子524もそれぞれの中心が互いに交差(第2の交差点)するように配置し、第1の交差点710と第2の交差点720が互いに同じ位置にあれば、面積効率性が最大化する。
【0050】
実施例2
実施例2では、フィルタを追加で配置するのに十分な空間を確保することができ、空間‐偏波分離を具現できるアンテナ装置を提案する。
【0051】
前述のように、従来の2重偏波アンテナモジュールアレイから放射されるビームは、低いアンテナ利得を有するワイドビームの形態で現れるので、遠い地点まで信号を伝送することは困難である。アンテナモジュールをアレイ状に配置し、放射素子の信号経路をカップリングさせると、ナロービーム形態を導出することができ、遠い地点までの信号伝送が可能であるが、以下のような問題が発生する。
【0052】
1)アンテナモジュール間の分離度を確保し、ビームフォーミングの最適条件を達成するためにアンテナモジュールを予め設定した中心間距離を有するように配置しなければならず、このようなアンテナモジュールにつながるダイプレクサを配置するのに十分なスペースを確保するのは難しい。
【0053】
2)サイズ増加 - ナロービーム形態を導出するために複数個の放射素子又は複数個のアンテナモジュールを配置しなければならず、アンテナのサイズが増加して面積効率性が低下する。
【0054】
3)隣接するビーム間に重なりが生じ、ビームの偏波間の相関関係が高くなり通信品質が低下する。
【0055】
本明細書では、前記のような従来のアンテナ装置の問題をすべて解決する新しいアンテナ装置を提案する。
【0056】
図8に示すように、本発明に係るアンテナ装置は、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800、フィルタ部870、及び位相設定モジュール880を含んでなる。
【0057】
クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800は、それ自体に含まれる放射素子を用いて複数個のビームを放射する構成に対応する。クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800を介して放射されるビームは、ナロービームの形態を有し、これらのビームの中で互いに隣接する2つのビームは互いに異なる偏波方向を有する。
【0058】
クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800は、複数個のクワッド偏波アンテナモジュールを含んでなる。本明細書では、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800が2つのクワッド偏波アンテナモジュールを含んでなるものと仮定し、それらのうちの1つを第1のクワッド偏波アンテナモジュール810と称し、もう一つを第2のクワッド偏波アンテナモジュール820と称する。
【0059】
第1のクワッド偏波アンテナモジュール810と第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は、モジュール810、820との間の隔離度を確保し、ビームフォーミングの最適条件を達成するために予め設定した中心間距離(d、例えば、例えば、0.5λ)を置いて配置する。
【0060】
第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は、第1ないし第4の放射素子832、842、852、862を含んでなる。
【0061】
第2の放射素子842は第1の放射素子832に直交する偏波方向を有し、第3の放射素子852は第1の放射素子832及び第2の放射素子842の偏波方向と45度の偏波方向差を有し、第4の放射素子862は、第3の放射素子852に直交する偏波方向を有する。第3の放射素子852と第4の放射素子862は互いに直交する偏波方向を有するので、第4の放射素子862も第3の放射素子852と同様に第1の放射素子832及び第2の放射素子842の偏波方向と45度の偏波方向差を有する。
【0062】
第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は、第5ないし第8の放射素子834、844、854、864を含んでなる。
【0063】
第5の放射素子834は第1の放射素子832と同じ偏波方向を有し、第6の放射素子844は第2の放射素子842と同じ偏波方向を有し、第7の放射素子854は、第3の放射素子852と同じ偏波方向を有し、第8の放射素子864は、第4の放射素子862と同じ偏波方向を有する。
【0064】
したがって、第6の放射素子844は第5の放射素子834に直交する偏波方向を有し、第7の放射素子854は第5の放射素子834及び第6の放射素子844の偏波方向と45度の偏波方向差を有し、第8の放射素子864は、第7の放射素子854に直交する偏波方向を有する。第7の放射素子854と第8の放射素子864は互いに直交する偏波方向を有するので、第8の放射素子864も第7の放射素子854と同様に第5の放射素子834及び第6の放射素子844の偏波方向と45度の偏波方向差を有してもよい。
【0065】
クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800に含まれる放射素子のうち、互いに等しい偏波方向を有する放射素子は信号経路をカップリングする。例えば、第1の放射素子832と第5の放射素子834は、第1の信号経路Tx1を共有するようにカップリングし、第2の放射素子842と第6の放射素子844も第2の信号経路Rx2を共有するようにカップリングする。また、第3の放射素子852と第7の放射素子854は、第3の信号経路Tx2を共有するようにカップリングし、第4の放射素子862と第8の放射素子864も第4の信号経路Rx1を共有するようにカップリングする。信号経路をカップリングした放射素子を介して放射されるビームは、ナロービームの形態を有する。
【0066】
ここで、第1の信号経路Tx1を介してカップリングした第1の放射素子832と第5の放射素子834を「第1の放射素子又は第1の放射素子対830」と称し、第2の信号経路Rx2を介してカップリングした第2の放射素子842と第6の放射素子844を「第2の放射素子又は第2の放射素子対840」と称する。また、第3の信号経路Tx2を介してカップリングした第3の放射素子852と第7の放射素子854を「第3の放射素子又は第3の放射素子対850」と称し、第4の信号経路Rx1を介してカップリングした第4の放射素子862と第8の放射素子864を「第4の放射素子又は第4の放射素子対860」と称する。
【0067】
放射素子を介して放射されるビームは、自身が放射された放射素子の偏波方向(自分が放射された放射素子に設定されている偏波方向)を有する。例えば、第1の放射素子830を介して放射されるビームは水平方向の偏波方向を有し、第2の放射素子840を介して放射されるビームは垂直方向の偏波方向を有する。さらに、第3の放射素子850を介して放射されるビームは-45度の偏波方向を有し、第4の放射素子860を介して放射されるビームは-45度の偏波方向を有する。ここで、±45度の偏波方向を有するビームを第1のビームと称し、垂直方向の偏波方向を有するビームと水平方向の偏波方向を有するビームを第2のビーム(V/H)と称する。
【0068】
フィルタ部870は、信号経路Tx1、Tx2、Rx1、Rx2のそれぞれを介して移動する信号を予め設定した周波数帯域でフィルタリングする。フィルタ部870は、第1のフィルタ872、第2のフィルタ874、第3のフィルタ876、及び第4のフィルタ878を含んでなる。フィルタ部870に関する詳しい内容は後述する。
【0069】
位相設定モジュール880は、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800を介して放射されるビームが空間上で分離するように、フィルタリングした信号間の位相を互いに異なるように設定する。位相設定モジュール880は、フェーズシフター(phase shifter)などを用いて具現する。
【0070】
例えば、位相設定モジュール880は、第1の信号経路Tx1と第2の信号経路Rx2を介して移動する信号の位相及び、第3の信号経路Tx2と第4の信号経路Rx1を介して移動する信号間の位相を互いに異なるように設定する。第1の信号経路Tx1と第2の信号経路Rx2を介して移動する信号は、第1の放射素子830と第2の放射素子840を介して第1のビームに放射され、第3の信号炉Tx2と第4の信号経路Rx1を通って移動する信号は、第3の放射素子850と第4の放射素子860を介して第2のビームに放射されるため、結果的に第1のビームと第2のビームは空間上で互いに異なる位相で放射される。
【0071】
クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800を介して放射されるビームは、自身が放射された放射素子の偏波方向を有する状態で放射されるので、空間上で互いに隣接する2つのビームは互いに異なる偏波を有する。
【0072】
実施例2-1:十分なスペース確保
実施例2-1は、配置のための空間を十分に確保できるフィルタ部870の構造又は構成に関する実施例である。
【0073】
フィルタ部870は、第1のフィルタ872、第2のフィルタ874、第3のフィルタ876、及び第4のフィルタ878を含んでなる。
【0074】
第1のフィルタ872は、第1の信号経路Tx1を通して移動する信号を予め設定した周波数帯域でフィルタリングする。第1のフィルタ872に予め設定した周波数帯域は、第1の放射素子830を介して放射される信号の周波数帯域である。第2のフィルタ874は、第2の信号経路Rx2を通して移動する信号を予め設定した周波数帯域でフィルタリングする。第2のフィルタ874に予め設定した周波数帯域は、第2の放射素子840を介して放射される信号の周波数帯域である。
【0075】
第3のフィルタ876は、第3の信号経路Tx2を通して放射される信号を予め設定した周波数帯域にフィルタリングする。第3のフィルタ876に予め設定した周波数帯域は、第3の放射素子850を介して放射される信号の周波数帯域である。第4のフィルタ878は、第4の信号経路Rx1を通して移動する信号を予め設定した周波数帯域でフィルタリングする。第4のフィルタ878に予め設定した周波数帯域は、第4の放射素子860を介して放射される信号の周波数帯域である。
【0076】
前述のように、従来のアンテナ装置は、信号経路のそれぞれにダイプレクサがつながれ、このダイプレクサを介して送信信号と受信信号を分離することによってFDD方式を具現するように構成する。これとは異なり、本発明のアンテナ装置は、
図8ないし
図11に示すように、信号経路を信号の送信に用いる信号経路と信号の受信に用いる信号経路に分け、各信号経路にフィルタをつなぎ、このフィルタを介して送信信号又は受信信号をフィルタリングすることでFDD方式を具現するように構成する。
【0077】
本発明のアンテナ装置で用いるフィルタは、従来のアンテナ装置のダイプレクサに比べて小さいサイズを有するので、本発明のアンテナ装置は、フィルタを追加配置するための十分な空間を確保できる。すなわち、本発明のアンテナ装置は、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800が配置される面積を増やす必要がなく、十分な個数のフィルタを配置することができる。
【0078】
実施例2-2:面積効率性の向上(アンテナサイズ減少)
実施例2-2は、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800のサイズを小さくさせることで面積効率性を向上させることができる放射素子の効率的な配置構造に関する実施例である。放射素子の効率的な配置構造としては、実施例1で説明したクワッド偏波アンテナモジュールの配置構造を適用する。
【0079】
例えば、
図8に示すように、第1の放射素子830は、第3の放射素子850及び第4の放射素子860の上側に配置し、第2の放射素子840は、第3の放射素子850及び第4の放射素子860の右側又は左側に配置する。別の例で、第1の放射素子830は第3の放射素子850及び第4の放射素子860の下側に配置し、第2の放射素子840は第3の放射素子850及び第4の放射素子860の右側又は左側に配置する。
【0080】
また別の例として、
図10に示すように、第3の放射素子850は、第1の放射素子830及び第2の放射素子840の左下側に配置し、第4の放射素子860は、第1の放射素子830及び第2の放射素子840の左上側又は右下側に配置する。また別の例として、第3の放射素子850は第1の放射素子830及び第2の放射素子840の右上側に配置し、第4の放射素子860は第1の放射素子830及び第2の放射素子840の左上側又は右下側に配置する。
【0081】
また別の例として、
図11に示すように、第1の放射素子830のそれぞれは第2の放射素子840のそれぞれと互いに交差するように配置し、第3の放射素子850のそれぞれは第4の放射要素860のそれぞれと互いに交差するように配置する。ここで、第1の放射素子830及び第2の放射素子840が互いに交差する地点又はポイントを第1の交差点1110と称し、第3の放射素子850及び第4の放射素子860の各々が互いに交差する地点又はポイントを第2の交差点1120と称する。
【0082】
実施例1-3と同様に、第1の交差点1110と第2の交差点1120との間の距離が最小の場合に第1及び第2のクワッド偏波アンテナモジュール810、820が占める面積の効率性が最大になる。したがって、面積効率性を最大化するために、第1の交差点1110と第2の交差点1120は互いに同じ位置におかれる。
【0083】
一方、第1のクワッド偏波アンテナモジュール810と第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は、様々な位置に配置する。例えば、クワッド偏波アンテナモジュール810、820は、水平方向(horizontal)、垂直方向(vertical)、又は対角線方向に配置する。
【0084】
クワッド偏波アンテナモジュール810、820を水平方向に配置する場合、第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は左側に配置し、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は右側に配置するか、又は第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は右側に配置し、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は左側に配置する。
【0085】
クワッド偏波アンテナモジュール810、820を垂直方向に配置する場合、第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は上側に配置し、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は下側に配置するか、又は第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は下側に配置し、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は上側に配置する。この場合、放射素子830、840、850、860のうち、垂直方向に配置した放射素子は、垂直方向を基準にして互いに異なる位置、又は互いに対称となる位置、あるいは互いに逆の位置に配置する。
【0086】
例えば、
図9に示すように、第1のクワッド偏波アンテナモジュール810は上側に配置し、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820は下側に配置すると、第2の放射素子840のうち、第1のクワッド偏波アンテナモジュール810に含まれる第2の放射素子842と、第2のクワッド偏波アンテナモジュール820に含まれる第6の放射素子844が垂直方向に配列される。
【0087】
このような場合、第2の放射素子842と第6の放射素子844は、垂直方向を基準に互いに異なる位置(互いに逆の位置)に配置する。すなわち、第2の放射素子842は第3の放射素子852及び第4の放射素子862の左側に配置し、第6の放射素子844は第7の放射素子854及び第8の放射素子864の右側に配置するか、又は第2の放射素子842は第3の放射素子852及び第4の放射素子862の右側に配置し、第6の放射素子844は第7の放射素子842 854及び第8の放射素子864の左側に配置する。
【0088】
垂直方向に配列した放射素子が垂直方向を基準に互いに異なる位置に配置する理由は、十分な利得を有するナロービーム(予め設定した放射角度を有するナロービーム)を形成するためである。
【0089】
ビームの利得は放射素子の水平方向長さに依存するが、第1の放射素子832と第5の放射素子834の場合には水平方向に配列されており、それ自体で十分な利得を有するナロービームを放射できる。しかしながら、第2の放射素子842と第6の放射素子844は垂直方向に配置されており、水平方向の長さが非常に短く、十分な利得を有するナロービームを放射し難い。
【0090】
したがって、第2の放射素子842と第6の放射素子844を互いに対称となる位置に配置し、第2の放射素子842と第6の放射素子844との間の距離差を放射素子の水平方向長さとして活用すると、十分な利得を有するナロービームを形成することができる。
【0091】
実施例2-3:ビーム間の相関関係の改善(空間‐偏波分離)
実施例2-3は、ビーム間の相関関係を改善するためにビームを空間上で分離して放射し(空間分離)、空間上で分離したビームの中で互いに隣接するビーム間の偏波を異なるように設定(偏波分離)する方法である。
【0092】
位相設定モジュール880は、ビームが空間上で互いに分離されるように、入力した信号の位相又は角度を設定する。例えば、位相設定モジュール880は、入力した信号(フィルタリングした信号)のうち、Tx1及びRx2に入力される信号の位相と、Tx2及びRx1に入力される信号の位相を互いに異なるように設定する。
【0093】
互いに異なる位相に設定した信号は、放射素子830、840、850、860を介して放射され、このとき、各放射素子830、840、850、860に設定した偏波方向を有するビームの形態で放射される。
【0094】
例えば、Tx1で入力した信号は、第1の放射素子832及び第5の放射素子834によって水平方向の偏波方向を有するビームで放射され、Rx2で入力した信号は第2の放射素子842及び第6の放射素子844によって、垂直方向の偏波方向を有するビームで放射される(第2のビーム)。また、Tx2で入力した信号は、第3の放射素子852及び第7の放射素子854によって-45度の偏波方向を有するビームで放射され、Rx1で入力した信号は第4の放射素子862及び第8の放射素子864によって+45度の偏波方向を有するビームで放射される(第1のビーム)。
【0095】
水平方向空間‐偏波分離
位相設定モジュール880は、入力した信号の位相を水平方向に互いに異なるように設定する。信号の位相が水平方向に互いに異なるように設定されると、クワッド偏波アンテナモジュールアレイ800を介して放射されるビームを空間上で水平方向に分離することができる。
【0096】
ビームの水平方向空間‐偏波分離の関する一例を
図13に示す。±45度の偏波方向を有するビームは第1のビームを表し、V/Hの偏波方向を有するビームは第2のビームを表す。
図13を見ると、本発明のアンテナ装置により、互いに異なる偏波又は偏波方向を有するビーム(第1のビーム及び第2のビーム)が空間上で水平方向に分離して放射されることが分かる。
【0097】
本発明のアンテナ装置によって空間‐偏波分離したビームと従来のアンテナ装置によるビームとの比較を
図14に示す。
【0098】
図14にて、点線の波形は従来のアンテナ装置によるビームを表し、実線の波形のうちパターンで表していない波形は本発明のアンテナ装置による第1のビーム(±45度)を表し、パターンで表す波形は、本発明のアンテナ装置による第2のビーム(V/H)を表す。
【0099】
図14を介し、本発明のアンテナ装置によると、ビームの水平方向空間‐偏波分離を具現することができ、従来の方法に比べてさらに向上したアンテナ利得を導出することが分かる。また、本発明のアンテナ装置によると、セクタ(空間)が分離されるので、カバレッジを増加させる効果を提供できることが分かる。
【0100】
さらに、本発明のアンテナ装置によって放射されるビーム間にもオーバーラップ(overlap)する領域が存在するが、ビーム間の偏波が互いに異なるため(偏波分離)、信号間の相関関係の問題が解消されることが分かる。偏波分離による効果をより詳しく説明する図が
図15に示されている。
【0101】
左から右に向かう方向を基準に、1番目のビームは±45度の偏波方向を有し、2番目のビームはV/Hの偏波方向を有するため、2つのビーム間の相関関係は十分に小さくなる。この特性は、2番目のビームと3番目のビームの間、3番目のビームと4番目のビームの間でも成立する。
【0102】
1番目のビームと3番目のビームはどちらも±45度の偏波方向を有するが、空間分離によって距離が十分に離れているため(離間しているため)、2つのビーム間の相関関係も十分に小さくなる。この特性は、2番目のビームと4番目のビームの間でも成立する。
【0103】
以上説明したように、本発明のアンテナ装置は、空間上で互いに隣接して位置するナロービーム間の偏波を互いに異なるように構成するので、偏波間相関関係を改善して偏波の効率を完全に再利用できる偏波再利用(polarization reuse)を具現する。
【0104】
実施例3
実施例3は、アンテナモジュールアレイ内でアンテナモジュールを互いに異なる領域に配置することでフィルタサイズをさらに縮小させ、相対的に狭い空間にフィルタを配置することができる方法である。
【0105】
図12に示すように、アンテナモジュールアレイは、2重偏波アンテナモジュールに該当する第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244を含んでなる。第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242は、V/H又は±45度の偏波方向を有し、第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244は±45度又はV/Hの偏波方向を有する。
【0106】
第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244のそれぞれは、予め設定した中心間距離(d、例えば0.5λ)を置いて配置する。中心間距離dは、第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244との間の隔離度を確保し、ビームフォーミングの最適条件を達成するための距離に該当する。
【0107】
図12に示すように、第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244は互いに交差する(interleaved)ように配置する。 1216、1218、1226、1228、1236、1238、1246、及び1248は、第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、124を互いに交差するように配置することで発生する空間又は領域を示す。
【0108】
例えば、第1の放射素子モジュール1212と第2の放射素子モジュール1214は互いに対角方向に配置し、第1の放射素子モジュール1222と第2の放射素子モジュール1224も互いに対角となる方向に配置し、第1の放射素子モジュール1232と第2の放射素子モジュール1234も互いに対角となる方向に配置し、第1の放射素子モジュール1242と第2の放射素子モジュール1244も互いに対角となる方向に配置することで、第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244は互いに交差するように配置することができる。
【0109】
このように、第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242と第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244が互いに交差するように配置すると、±45度の2重偏波アンテナとV/Hの2重偏波アンテナとの間でさらに高い隔離度を確保できる。高い隔離度の確保は、フィルタの負担を軽減させるだけでなく、フィルタのサイズを相対的減少させることができ、結果としてフィルタをより狭い空間に配置できるようになる。
【0110】
第1の放射素子モジュール1212、1222、1232、1242のうちのいずれか1つと第2の放射素子モジュール1214、1224、1234、1244のうちのいずれか1つを結合して1つのクワッド偏波アンテナモジュールを構成する。例えば、1212と1214を結合して1つのクワッド偏波アンテナモジュール1210を構成し、1222と1224を結合して1つのクワッド偏波アンテナモジュール1220を構成し、1232と1234を結合して1つのクワッド偏波アンテナモジュール1230を構成し、1242と1244を結合して1つのクワッド偏波アンテナモジュール1240を構成する。
【0111】
さらに、本発明のアンテナ装置は、実施例2で説明したナロービームを放射するためにクワッド偏波アンテナモジュール1210、1220、1230、1240が結合するように構成してもよい。さらに、本発明のアンテナ装置は、信号経路を通して移動する信号の位相を、位相設定モジュール880を介して互いに異なるように設定する。このような場合、
図13ないし
図15で説明した空間‐偏波分離を具現できる。
【0112】
以上の説明は、本実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本実施例が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能であろう。したがって、本実施例は、本実施例の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本実施例の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施例の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本実施例の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0113】
CROSS-REFERENCE TO RELATED APPLICATION
本特許出願は、本明細書にその全体が参考として含まれる、2020年01月17日付で韓国に出願した特許出願番号第10-2020-0006676号及び、2020年04月28日付で韓国に出願した特許出願番号第10-2020-0051182号に対して優先権を主張する。
【符号の説明】
【0114】
800:クワッド偏波アンテナモジュールアレイ
500、1210、1220、1230、1240:クワッド偏波アンテナモジュール
810:第1のクワッド偏波アンテナモジュール
820:第2のクワッド偏波アンテナモジュール
510、1212、1222、1232、1242:第1の放射素子モジュール
520、1214、1224、1234、1244:第2の放射素子モジュール
830:第1の放射素子 840:第2の放射素子
850:第3の放射素子 860:第4の放射素子
512、832:第1の放射素子
514、842:第2の放射素子
522、852:第3の放射素子
524、862:第4の放射素子
834:第5の放射素子 844:第6の放射素子
854:第7の放射素子 864:第8の放射素子
710、1110:第1の交差点
720、1120:第2の交差点
870:フィルタ部 872:第1のフィルタ
874:第2のフィルタ 876:第3のフィルタ
878:第4のフィルタ
Tx1:第1の信号経路 Rx2:第2の信号経路
Tx2: 第3の信号経路 Rx1:第4の信号経路
1216、1218、1226、1228、1236、1238、1246、1248:スペース