(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
F04B49/06 341E
(21)【出願番号】P 2022544461
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029874
(87)【国際公開番号】W WO2022044862
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020140799
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】矢部 利明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 航平
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/044231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機の回転数を制御するインバータと、
前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体の吐出圧力を検出する吐出圧力センサと、
前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力
が設定圧力である制御圧力となるように、前記インバータを介し前記電動機の回転数を可変する運転制御を実行する
機能を有する制御装置とを備えた空気圧縮機において、
大気圧力を検出又は入力する装置を備え、
前記制御装置は、前記装置で検出又は入力された大気圧力と前記
制御圧力との比が予め設定された設定値となるように、前記制御圧力を補正することを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
請求項
1に記載の空気圧縮機において、
前記圧縮機本体の吸入側を閉止可能な吸込絞り弁と前記圧縮機本体の吐出側を放気可能な放気弁のうちの少なくとも一方を備え、
前記制御装置は、
前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力が上限圧力以上となる場合に、前記吸込絞り弁及び前記放気弁のうちの少なくとも一方を制御して負荷運転から無負荷運転に切換え、前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力が下限圧力以下となる場合に、前記吸込絞り弁及び前記放気弁のうちの少なくとも一方を制御して無負荷運転から負荷運転に切換える運転制御を実行する機能を更に有し、
前記上限圧力と前記制御圧力との差が予め設定された設定値となるように、前記上限圧力を補正し、前記制御圧力と前記下限圧力との差が予め設定された設定値となるように、前記下限圧力を補正することを特徴とする空気圧縮機。
【請求項3】
請求項
1に記載の空気圧縮機において、
前記圧縮機本体の吸入側を閉止可能な吸込絞り弁と前記圧縮機本体の吐出側を放気可能な放気弁のうちの少なくとも一方を備え、
前記制御装置は、
前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力が上限圧力以上となる場合に、前記吸込絞り弁及び前記放気弁のうちの少なくとも一方を制御して負荷運転から無負荷運転に切換え、前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力が下限圧力以下となる場合に、前記吸込絞り弁及び前記放気弁のうちの少なくとも一方を制御して無負荷運転から負荷運転に切換える運転制御を実行する機能を更に有し、
前記装置で検出又は入力された大気圧力と前記上限圧力との比が予め設定された設定値となるように、前記上限圧力を補正し、前記装置で検出又は入力された大気圧力と前記下限圧力との比が予め設定された設定値となるように、前記下限圧力を補正することを特徴とする空気圧縮機。
【請求項4】
請求項
2又は3に記載の空気圧縮機において、
通常モード及び補正モードのうちのいずれかを選択するモード選択装置を備え、
前記制御装置は、前記モード選択装置で通常モードが選択された場合に、
前記制御圧力、前記上限圧力、及び前記下限圧力を補正する機能を無効化し、前記モード選択装置で補正モードが選択された場合に、
前記制御圧力、前記上限圧力、及び前記下限圧力を補正する機能を有効化することを特徴とする空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の空気圧縮機は、電動機と、電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機本体と、圧縮機本体の吐出圧力を検出する吐出圧力センサと、制御装置とを備える。制御装置は、吐出圧力センサで検出された吐出圧力を設定圧力(詳細には、後述の制御圧力、上限圧力、及び下限圧力)と比較し、その比較結果に基づいた運転制御を実行する。
【0003】
特許文献1の空気圧縮機は、電動機の回転数を制御するインバータを更に備える。制御装置は、吐出圧力センサで検出された吐出圧力が制御圧力(例えば0.69MPa(ゲージ圧))となるように、インバータを介し電動機の回転数を可変する。
【0004】
特許文献1の空気圧縮機は、圧縮機本体の吐出側を放気可能な放気弁を更に備える。制御装置は、吐出圧力センサで検出された吐出圧力が上限圧力(例えば0.72MPa(ゲージ圧))以上となる場合に、放気弁を閉状態から開状態に切換えて、圧縮機本体の吐出側を放気する。これにより、負荷運転から無負荷運転に切換える。その後、吐出圧力センサで検出された吐出圧力が下限圧力(例えば0.69MPa(ゲージ圧))以下となる場合に、放気弁を開状態から閉状態に切換える。これにより、無負荷運転から負荷運転に切換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば空気圧縮機が高地に設置された場合や、悪天候となる場合は、大気圧力が標準値(0.101MPa)より低くなり、圧縮機本体の吸入圧力が低くなる。一方、上述した設定圧力がそのままであれば、圧縮機本体の吐出圧力の可変範囲がそのままである。そのため、圧縮機本体の吸入圧力と吐出圧力との比が増加して過圧縮となり、吐出温度が上昇する。その結果、部品の寿命が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、大気圧力の変化による吐出温度の上昇を抑制して、部品の寿命を向上させることを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、電動機と、前記電動機の回転数を制御するインバータと、前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吐出圧力を検出する吐出圧力センサと、前記吐出圧力センサで検出された吐出圧力が設定圧力である制御圧力となるように、前記インバータを介し前記電動機の回転数を可変する運転制御を実行する機能を有する制御装置とを備えた空気圧縮機において、大気圧力を検出又は入力する装置を備え、前記制御装置は、前記装置で検出又は入力された大気圧力と前記制御圧力との比が予め設定された設定値となるように、前記制御圧力を補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大気圧力の変化による吐出温度の上昇を抑制して、部品の寿命を向上させることができる。
【0010】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態における空気圧縮機の構成を表す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態における空気圧縮機の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態を、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態における空気圧縮機の構成を表す概略図である。
【0013】
本実施形態の空気圧縮機1は、電動機2(駆動源)と、電動機2によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機本体3と、圧縮機本体3の吸入側に配置されたエアフィルタ4と、圧縮機本体3の吐出側に配置された逆止弁5、熱交換器6、及びリリーフ弁7とを備えており、これらの機器が筐体に収納されている。
【0014】
圧縮機本体3は、図示しないものの、例えば、互いに噛み合う雌雄一対のスクリューロータと、スクリューロータを収納するケーシングとを有しており、スクリューロータの歯溝に複数の作動室が形成されている。電動機2の回転力が増速ギヤ8などを介し伝達されることにより、スクリューロータが回転する。各作動室は、ロータの回転に伴ってロータの軸方向に移動すると共に、空気を吸入する吸入過程と、空気を圧縮する圧縮過程と、圧縮空気を吐出する吐出過程とを順次行う。
【0015】
逆止弁5は、圧縮機本体3から熱交換器6への圧縮空気の流れを許容し、熱交換器6から圧縮機本体3への圧縮空気の逆流を阻止する。熱交換器6は、冷却風又は冷却水などの冷媒との熱交換により、圧縮機本体3からの圧縮空気を冷却する。リリーフ弁7は、圧縮空気の圧力がリリーフ圧力(詳細には、後述の上限圧力より高い圧力)以上となる場合に作動して、放気する。なお、熱交換器6で冷却された圧縮空気は、筐体の外部へ供給されて使用されるようになっている。
【0016】
本実施形態の空気圧縮機1は、電動機2の回転数を制御するインバータ9と、圧縮機本体3と逆止弁5の間から分岐された経路に設けられた放気弁10(電磁弁)及び放気サイレンサ11と、熱交換器6の下流側に配置され、圧縮機本体3の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ12と、大気圧力を検出する大気圧力センサ13と、大気温度を検出する大気温度センサ14と、制御装置15と、ユーザーインターフェース16とを更に備える。
【0017】
制御装置15は、図示しないものの、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。ユーザーインターフェース16は、図示しないものの、複数の操作スイッチ及びモニタを有する。
【0018】
制御装置15は、大気温度センサ14で検出された大気温度が上限温度以上であるかどうかを判定する。大気温度が上限温度以上である場合、制御装置15は、ユーザーインターフェース16に警報指令を出力して、警報を表示させる。
【0019】
制御装置15は、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力を設定圧力(詳細には、後述の制御圧力、上限圧力、及び下限圧力)と比較し、その比較結果に基づいた運転制御を実行する。
【0020】
制御装置15は、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が制御圧力となるように、インバータ9を介し電動機2の回転数を可変制御する。すなわち、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が制御圧力より高ければ、電動機2の回転数を下げ、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が制御圧力より低ければ、電動機2の回転数を上げる。これにより、圧縮空気の使用量の変化に応じて、圧縮空気の吐出量を変化させるようになっている。
【0021】
しかし、圧縮空気の使用量が少なければ、電動機2の回転数が最低回転数に達してしまい、吐出圧力が制御圧力より上昇する。制御装置15は、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が上限圧力(詳細には、上述の制御圧力より高い圧力)以上になる場合に、放気弁10を閉状態から開状態に切換えて、圧縮機本体3の吐出側を放気する。これにより、負荷運転から無負荷運転に切換える。その後、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が下限圧力(詳細には、上述の制御圧力より低い圧力)以下となる場合に、放気弁10を開状態から閉状態に切換える。これにより、無負荷運転から負荷運転に切換える。
【0022】
なお、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力と設定圧力(詳細には、上述の制御圧力、上限圧力、及び下限圧力)は、両方とも絶対圧であってもよいし、両方ともゲージ圧であってもよい。また、吐出圧力センサ12で検出された圧力と設定圧力は、一方が絶対圧であって、他方がゲージ圧であってもよい。この場合、制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力を用いて、絶対圧又はゲージ圧に換算する必要がある。
【0023】
ところで、例えば空気圧縮機1が高地に設置された場合や、悪天候となる場合は、大気圧力が標準値(0.101MPa)より低くなり、圧縮機本体3の吸入圧力が低くなる。一方、仮に、設定圧力(詳細には、上述の制御圧力、上限圧力、及び下限圧力)がそのままであれば、圧縮機本体3の吐出圧力の可変範囲がそのままである。そのため、圧縮機本体3の吸入圧力と吐出圧力との比が増加して過圧縮となり、吐出温度が上昇する可能性がある。
【0024】
そこで、本実施形態の最も大きな特徴として、制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力Paと制御圧力(絶対圧)Pcとの比が予め設定された設定値となるように、制御圧力を補正する。詳細には、下記の式(1)を用いて、制御圧力(絶対圧)Pcを演算するか、若しくは、下記の式(2)を用いて、制御圧力(ゲージ圧)Pc’を演算する。
【0025】
【0026】
【0027】
式(1)中の「Pao」は、大気圧力の標準値(0.101MPa)、「Pco」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された制御圧力(絶対圧)、「Pco/Pao」は、設定値である。式(2)中の「Pco’」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された制御圧力(ゲージ圧)、「(Pao+Pco’)/Pao」は、設定値である。例えば、Pco=0.801MPa、又は、Pco’=0.700MPaが設定されていれば、Pco/Pao=(Pao+Pco’)/Pao=7.93である。そして、例えば、Pa=0.090MPaであれば、Pc=0.714MPa、又は、Pc’=0.624MPaとなる。
【0028】
制御装置15は、上述した制御圧力の補正と共に、上限圧力及び下限圧力を補正する。詳細には、上限圧力と制御圧力との差が予め設定された設定値(例えば0.02MPa)となるように、上限圧力を補正する。また、制御圧力と下限圧力との差が予め設定された設定値(例えば0.1MPa)となるように、下限圧力を補正する。例えば、制御圧力(絶対圧)Pc=0.714MPa、又は、制御圧力(ゲージ圧)Pc’=0.624MPaであれば、上限圧力(絶対圧)Pu=0.734MPa、又は、上限圧力(ゲージ圧)Pu’=0.644MPaとなり、下限圧力(絶対圧)Pd=0.614MPa、又は、下限圧力(ゲージ圧)Pd’=0.524MPaとなる。なお、下限圧力は、予め設定された最低圧力を下回らないように補正する。
【0029】
以上のように本実施形態では、大気圧力センサ13で検出された大気圧力と制御圧力との比が設定値となるように、制御圧力を補正すると共に、上限圧力及び下限圧力を補正する。これにより、大気圧力の変化によって圧縮機本体3の吸入圧力と吐出圧力との比が増加するのを抑制して、吐出温度の上昇を抑制することができる。その結果、部品の寿命を向上させることができる。
【0030】
また、圧縮機本体3の吐出圧力(ゲージ圧)が最大圧力(詳細には、大気圧力が標準値である場合の上限圧力)より上昇するのを抑制することができる。これにより、例えばリリーフ弁7のリリーフ圧がゲージ圧であれば、リリーフ弁7の作動を抑制することができる。
【0031】
なお、第1の実施形態において、制御装置15は、上限圧力と制御圧力との差が予め設定された設定値となるように、上限圧力を補正し、制御圧力と下限圧力との差が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正する場合を例にとって説明したが、これに限られない。制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力Paと上限圧力(絶対値)Puとの比が予め設定された設定値となるように、上限圧力を補正してもよい。詳細には、下記の式(3)を用いて、上限圧力(絶対圧)Puを演算するか、若しくは、下記の式(4)を用いて、上限圧力(ゲージ圧)Pu’を演算してもよい。
【0032】
【0033】
【0034】
式(3)中の「Puo」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された上限圧力(絶対圧)、「Puo/Pao」は、設定値である。式(4)中の「Puo’」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された上限圧力(ゲージ圧)、「(Pao+Puo’)/Pao」は、設定値である。例えば、Puo=0.821MPa、又は、Puo’=0.720MPaが設定されていれば、Puo/Pao=(Pao+Puo’)/Pao=8.13である。そして、例えば、Pa=0.090MPaであれば、Pu=0.732MPa、又は、Pu’=0.642MPaとなる。
【0035】
また、制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力Paと下限圧力(絶対値)Pdとの比が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正してもよい。詳細には、下記の式(5)を用いて、下限圧力(絶対圧)Pdを演算するか、若しくは、下記の式(6)を用いて、下限圧力(ゲージ圧)Pd’を演算してもよい。
【0036】
【0037】
【0038】
式(5)中の「Pdo」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された下限圧力(絶対圧)、「Pdo/Pao」は、設定値である。式(6)中の「Pdo’」は、大気圧力が標準値である場合を想定して設定された下限圧力(ゲージ圧)、「(Pao+Pdo’)/Pao」は、設定値である。例えば、Pdo=0.701MPa、又は、Pdo’=0.600MPaが設定されていれば、Pdo/Pao=(Pao+Pdo’)/Pao=6.94である。そして、例えば、Pa=0.090MPaであれば、Pd=0.625MPa、又は、Pd’=0.535MPaとなる。
【0039】
上述した第1の変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、第1の実施形態及び第1の変形例において、空気圧縮機1は、大気圧力センサ13を備えた場を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、大気圧力センサ13の代わりに、大気圧力を入力する装置を備えてもよい(詳細には、例えば、ユーザーインターフェース16が大気圧力を入力する機能を有してもよいし、外部から情報を受信する通信装置であってもよい)。制御装置15は、前述の装置で入力された大気圧力と制御圧力との比が予め設定された設定値となるように、制御圧力を補正してもよい。また、制御装置15は、前述の装置で入力された大気圧力と上限圧力との比が予め設定された設定値となるように、上限圧力を補正し、前述の装置で入力された大気圧力と下限圧力との比が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正してもよい。
【0041】
また、第1の実施形態及び第1の変形例において、特に説明しなかったが、空気圧縮機1は、通常モード及び補正モードのうちのいずれかを選択するモード選択装置を備えてもよい(詳細には、例えば、ユーザーインターフェース16が通常モード及び補正モードのうちのいずれかを選択する機能を有してもよい)。制御装置15は、モード選択装置で通常モードが選択された場合に、設定圧力(詳細には、制御圧力、上限圧力、及び下限圧力)を補正する機能を無効化し、モード選択装置で補正モードが選択された場合に、設定圧力を補正する機能を有効化してもよい。
【0042】
また、第1の実施形態及び第1の変形例において、空気圧縮機1は、放気弁10を備え、制御装置15は、放気弁10を制御して負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、放気弁10に加えて、圧縮機本体3の吸入側を閉止可能な吸込絞り弁17(後述の
図2参照)を備え、制御装置15は、放気弁10及び吸込絞り弁17を制御して負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有してもよい。また、空気圧縮機1は、放気弁10の代わりに、吸込絞り弁17を備え、制御装置15は、吸込絞り弁17を制御して負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有してもよい。
【0043】
また、空気圧縮機1は、放気弁10及び吸込絞り弁17を備えず、制御装置15は、負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有しなくてもよい。この場合、制御装置15は、設定圧力として制御圧力のみを補正すればよい。
【0044】
本発明の第2の実施形態を、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態における空気圧縮機の構成を表す概略図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0045】
本実施形態の空気圧縮機1は、インバータ9を備えず、制御装置15は、インバータ9を介し電動機2の回転数を可変する運転制御を実行する機能を有しない。
【0046】
本実施形態の空気圧縮機1は、圧縮機本体3の吸入側を閉止可能な吸込絞り弁17と、熱交換器6とリリーフ弁7の間から分岐された経路に設けられた制御弁18(電磁弁)とを備える。吸込絞り弁17の操作室は、熱交換器6とリリーフ弁7の間から分岐された経路に接続されている。吸込絞り弁17の弁体と放気弁10Aの弁体は、互いに連結されて、連動するようになっている。制御弁18が閉状態である場合に、吸込絞り弁17の操作室の圧力が降下するので、吸込絞り弁17が開状態となる。これに連動して、放気弁10Aが閉状態となる。一方、制御弁18が開状態である場合に、吸込絞り弁17の操作室の圧力が上昇するので、吸込絞り弁17が閉状態となる。これに連動して、放気弁10Aが開状態となる。
【0047】
制御装置15は、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が上限圧力以上になる場合に、制御弁18を閉状態から開状態に切換えて、負荷運転から無負荷運転に切換える。すなわち、吸込絞り弁17が閉状態となって、圧縮機本体3の吸入側を閉止し、放気弁10Aが開状態となって、圧縮機本体3の吐出側を放気する。その後、吐出圧力センサ12で検出された吐出圧力が下限圧力以下となる場合に、制御弁18を開状態から閉状態に切換えて、無負荷運転から負荷運転に切換える。すなわち、吸込絞り弁17が開状態となり、放気弁10Aが閉状態となる。
【0048】
本実施形態の最も大きな特徴として、制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力Paと上限圧力(絶対圧)Puとの比が予め設定された設定値となるように、上限圧力を補正する。詳細には、上記の式(3)を用いて、上限圧力(絶対圧)Puを演算するか、若しくは、上記の式(4)を用いて、上限圧力(ゲージ圧)Pu’を演算する。例えば、Puo=0.821MPa、又は、Puo’=0.720MPaが設定されていれば、Puo/Pao=(Pao+Puo’)/Pao=8.13である。そして、例えば、Pa=0.090MPaであれば、Pu=0.732MPa、又は、Pu’=0.642MPaとなる。
【0049】
制御装置15は、上述した上限圧力の補正と共に、下限圧力を補正する。詳細には、上限圧力と下限圧力との差が予め設定された設定値(例えば0.12MPa)となるように、下限圧力を補正する。例えば、上限圧力(絶対圧)Pu=0.732MPa、又は、上限圧力(ゲージ圧)Pu’=0.642MPaであれば、下限圧力(絶対圧)Pd=0.612MPa、又は、下限圧力(ゲージ圧)Pd’=0.522MPaとなる。なお、下限圧力は、予め設定された最低圧力を下回らないように補正する。
【0050】
以上のように本実施形態では、大気圧力センサ13で検出された大気圧力と上限圧力との比が設定値となるように、上限圧力を補正すると共に、下限圧力を補正する。これにより、大気圧力の変化によって圧縮機本体3の吸入圧力と吐出圧力との比が増加するのを抑制して、吐出温度の上昇を抑制することができる。その結果、部品の寿命を向上させることができる。また、リリーフ弁7の作動を抑制することができる。
【0051】
なお、第2の実施形態において、制御装置15は、上限圧力と下限圧力との差が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正する場合を例にとって説明したが、これに限られない。制御装置15は、大気圧力センサ13で検出された大気圧力Paと下限圧力(絶対値)Pdとの比が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正してもよい。詳細には、上記の式(5)を用いて、下限圧力(絶対圧)Pdを演算するか、若しくは、上記の式(6)を用いて、下限圧力(ゲージ圧)Pd’を演算してもよい。例えば、Pdo=0.701MPa、又は、Pdo’=0.600MPaが設定されていれば、Pdo/Pao=(Pao+Pdo’)/Pao=6.94である。そして、例えば、Pa=0.090MPaであれば、Pd=0.625MPa、又は、Pd’=0.535MPaとなる。この第2の変形例においても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、第2の実施形態及び第2の変形例において、空気圧縮機1は、大気圧力センサ13を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、大気圧力センサ13の代わりに、大気圧力を入力する装置を備えてもよい(詳細には、例えば、ユーザーインターフェース16が大気圧力を入力する機能を有してもよいし、外部から情報を受信する通信装置であってもよい)。制御装置15は、前述の装置で入力された大気圧力と上限圧力との比が予め設定された設定値となるように、上限圧力を補正してもよい。また、制御装置15は、前述の装置で入力された大気圧力と下限圧力との比が予め設定された設定値となるように、下限圧力を補正してもよい。
【0053】
また、第2の実施形態及び第2の変形例において、特に説明しなかったが、空気圧縮機1は、通常モード及び補正モードのうちのいずれかを選択するモード選択装置を備えてもよい(詳細には、例えば、ユーザーインターフェース16が通常モード及び補正モードのうちのいずれかを選択する機能を有してもよい)。制御装置15は、モード選択装置で通常モードが選択された場合に、設定圧力(詳細には、上限圧力及び下限圧力)を補正する機能を無効化し、モード選択装置で補正モードが選択された場合に、設定圧力を補正する機能を有効化してもよい。
【0054】
また、第2の実施形態及び第2の変形例において、空気圧縮機1は、放気弁10A及び吸込絞り弁17を備え、制御装置15は、放気弁10A及び吸込絞り弁17を制御して負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、放気弁10及び吸込絞り弁17のうちの一方を備え、制御装置15は、放気弁10及び吸込絞り弁17のうちの一方を制御して負荷運転と無負荷運転を切換える運転制御を実行する機能を有してもよい。
【0055】
また、第1及び第2の実施形態などにおいて、空気圧縮機1は、無給液式(詳細には、圧縮機本体3の作動室に液体を供給しないで、空気を圧縮するもの)である場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、給液式(詳細には、圧縮機本体3の作動室に油又は水などの液体を供給しつつ、空気を圧縮するもの)であってもよい。すなわち、空気圧縮機1は、圧縮機本体3の作動室に油又は水などの液体を供給する給液系統と、圧縮機本体3から吐出された圧縮空気とこれに含まれる液体を分離する気液分離器とを備えてもよい。
【0056】
また、第1及び第2の実施形態などにおいて、空気圧縮機1は、単段の圧縮機本体3を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機1は、複数段の圧縮機本体を備えてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…空気圧縮機、2…電動機、3…圧縮機本体、4…エアフィルタ、5…逆止弁、6…熱交換器、7…リリーフ弁、8…増速ギヤ、9…インバータ、10,10A…放気弁、11…放気サイレンサ、12…吐出圧力センサ、13…大気圧力センサ、14…大気温度センサ、15…制御装置、16…ユーザーインターフェース、17…吸込絞り弁、18…制御弁