(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】新規なラクトバチルスサケイHEM224菌株、及び上記菌株又はその培養物を含む炎症又は喘息の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240208BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240208BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240208BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K35/747
A61P11/06
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2022547304
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 KR2020019432
(87)【国際公開番号】W WO2021157867
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0013674
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 14065BP
(73)【特許権者】
【識別番号】522074556
【氏名又は名称】エイチイエム ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ヨ セフ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソ ヨン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0100608(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1678317(KR,B1)
【文献】特開2013-193996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064766(US,A1)
【文献】国際公開第2019/172598(WO,A1)
【文献】特表2009-501160(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0120264(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0108751(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0108645(KR,A)
【文献】韓国登録特許第1708173(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第101575582(CN,A)
【文献】Journalof Functional Foods,2017年,vol.29,p.256-268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)
であって、
前記菌株は、肺におけるIL-4及びIL-5の生成を抑制する、菌株。
【請求項2】
ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む
、喘息の改善又は予防用食品組成物
であって、
前記菌株は、肺におけるIL-4及びIL-5の生成を抑制する、食品組成物。
【請求項3】
ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む
、喘息の治療又は予防用薬学組成物
であって、
前記菌株は、肺におけるIL-4及びIL-5の生成を抑制する、薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)、それを含む炎症又は喘息の治療、予防又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息は、一度発病すれば一生治療を続けなければならない慢性疾患であり、国民の保健上、負担の大きい疾患である。特に、高血圧、糖尿病などの他の慢性疾患が中年以上の成人で発生することとは異なり、気管支喘息は小児から老年層に至るまで全年令層において起こる疾患である。急速な産業化による生活環境の変化などによりアレルギー性喘息の有病率が持続的に増加し、2兆ウォンに迫る莫大な社会的費用が所要されることが推定されている。また、温暖化による地球の温度、二酸化炭素の数値が上昇することに従って人間にアレルギーを起こし得る植物が多様になり、花粉症と喘息になる危険度も高くなっていると報告されている。
【0003】
アレルギー性喘息は、アレルゲンにより気管支が過敏に反応することで、気管支の収縮、粘液の過分泌などにより呼吸困難が生じる疾患である。このうち、粘液の過分泌症状は、気道においてチリダニや花粉のような抗原により生じる。抗原が気道に浸透すると、体内免疫系がそれを感知して抗体IgEを生成する。IgEは気管支上肥満細胞の受容体として作用し、後で抗原が再浸透した際、肥満細胞に抗原に反応してヒスタミンのような気道の炎症反応を起こす様々な物質を分泌させる。このような炎症性物質によって粘膜に炎症が生じ、過多な粘液の分泌により気道抵抗が増加し、肺の過膨張など呼吸困難を起こすことになる。アレルギー性喘息が誘発されれば、正常な気道細胞である線維芽細胞(fibroblast)、筋線維芽細胞(myofibroblast)、上皮細胞、平滑筋細胞などは、慢性気道炎症と関連したサイトカインと成長因子を分泌する。
【0004】
アレルギー性喘息は、病気の原因が明らかではないので、環境療法、気管支拡張剤とアレルギー炎症を治療する抗炎症製剤を利用した薬物療法、アレルギー体質を改善する免疫療法などが試みられており、様々な喘息治療用組成物などが開発されているが(大韓民国登録特許第10-1731903号)、慢性的で且つ再発性であるので、治療が容易ではない実情である。
【0005】
そこで、本発明者らは、炎症反応を抑制し、喘息を治療又は改善できる優れた組成物を開発するために鋭意努力した結果、喘息を誘発し得る因子や炎症反応を誘発する因子の生成を抑制しつつ、抗炎症因子の生成を促進できる新規な菌株を開発して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)、それを含む炎症又は喘息の治療、予防又は改善用組成物を提供することを目的とする。
【0007】
しかし、本願が解決しようとする課題は、上記したような課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)を提供する。
【0009】
本願の第2の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む、炎症又は喘息の改善又は予防用食品組成物を提供する。
【0010】
本願の第3の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む、炎症又は喘息の治療又は予防用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願の一具現例に係るラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)は、前炎症性因子又は炎症性因子の生成を抑制し、喘息動物モデルにおいて喘息治療効果を現わすので、上記菌株は、炎症又は喘息の治療、予防又は改善用薬学組成物、食品組成物、健康機能食品組成物、飼料組成物などに応用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の新規な菌株のIL-10生成促進効果を確認した図である。
【
図2】本願の新規な菌株の炎症反応抑制効果を動物レベルで確認するための実験設計を示す図である。
【
図3】肺組織において本願の新規な菌株のIL-4生成抑制効果を確認した図である。
【
図4】肺組織において本願の新規な菌株のIL-5生成抑制効果を確認した図である。
【
図5】肺胞洗浄液において本願の新規な菌株のIL-4生成抑制効果を確認した図である。
【
図6】肺胞洗浄液において本願の新規な菌株のIL-5生成抑制効果を確認した図である。
【
図7】血清において本願の新規な菌株のIgE生成抑制効果を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付した図面を参照しながら、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施例を詳しく説明する。ところが、本願は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本願を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0014】
本願の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0015】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。本願の明細書全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、又はその数値に近接した意味として使用され、本願の理解を助けるために正確あるいは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。本願の明細書全体において使用される程度の用語「~(する)ステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0016】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ(たち)」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであり、上記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0017】
本願の明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A又はB、あるいはA及びB」を意味する。
【0018】
以下では、添付した図面を参照しながら本願の具現例及び実施例を詳しく説明する。しかし、本願がこのような具現例及び実施例と図面に限定されるものではない。
【0019】
本願の第1の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)を提供する。
【0020】
本願の一具現例において、上記菌株は、前炎症性又は炎症性因子の生成、発現、活性などを抑制するものであっても良く、具体的に、上記前炎症性又は炎症性因子は、前炎症性又は炎症性サイトカインであって、IL-4、IL-5、IL-3、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-13、IL-14、IL-17A、IL-33、及びIgEから構成された群より選択された1つ以上であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0021】
本願の一具現例において、上記菌株は、抗炎症性因子の生成、発現、活性などを促進するものであっても良く、具体的に、上記抗炎症性因子は、サイトカインであって、IL-10、又はTGF-βであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0022】
本願の一具現例において、上記菌株は、炎症反応又は免疫反応を抑制するものであっても良く、具体的に、抗炎症機能を有するものであっても良い。
【0023】
本願の明細書全体において使用される用語「抗炎症」は、炎症反応を抑制することを意味し、具体的に、炎症反応などにより発病し得る炎症性疾患の改善、症状の軽減、治療、上記疾患の発病抑制又は遅延などを意味するものであっても良い。
【0024】
本願の明細書全体において使用される用語「炎症性疾患」は、外部からの物理・化学的刺激又はバクテリア、かび、ウイルス、各種アレルギー誘発物質などの外部感染源による感染又は自己免疫に対する局所的又は全身的な生体防御反応として特定される炎症反応が引き起こす病理的症状に定義されても良い。このような炎症反応は、各種炎症媒介因子と兔疫細胞に係わる酵素(例えば、iNOS、COX-2など)の活性化、炎症媒介物質の分泌(例えば、NO、TNF-α、IL-6、インターロイキンなどの分泌)、体液の浸潤、細胞移動、組織破壊などの一連の複合的な生理的反応を伴い、紅斑、痛症、浮腫、発熱、身体の特定機能の低下又は喪失などの症状により外的に現われる。上記炎症性疾患は、急性、慢性、潰瘍性、アレルギー性又は壊死性を帯び得るので、ある疾患が上記のような炎症性疾患の定義に含まれる限り、それが急性か、慢性か、潰瘍性か、アレルギー性か、あるいは壊死性かを問わない。具体的に、上記炎症性疾患には、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎又は膓炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉塞性肺疾患、肺線維腫、過敏性大腸症候群、炎症性痛症、片頭痛、頭痛、腰痛、線維筋肉痛、筋膜疾患、ウイルス感染(例えば、C型感染)、バクテリア感染、かび感染、火傷、外科的又は歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症候群、アテローム性動脈硬化症、通風、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎を含む)、湿疹、多発性硬化症などが含まれても良い。
【0025】
本願の一具現例において、上記菌株は、炎症性疾患を治療、改善、緩和又は予防できるものであっても良く、具体的に、上記炎症性疾患は、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎及び副鼻腔炎から構成された群より選択された1つ以上であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0026】
本願の一具現例において、上記菌株は、喘息の治療、予防、改善、又は緩和の機能を有するものであっても良い。
【0027】
本願の一具現例において、上記菌株は、抗炎症効果を有するか、炎症性疾患又は喘息を治療又は予防するものであっても良く、具体的に、上記菌株は、炎症又は喘息の治療、予防又は改善用薬学組成物、食品組成物、健康機能食品組成物、飼料組成物、化粧料組成物、皮膚外用剤組成物など様々な組成物に含まれても良い。
【0028】
本願の第2の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む、炎症又は喘息の改善又は予防用食品組成物を提供する。第1の側面と重複する内容は、第2の側面の食品組成物にも共に適用される。
【0029】
本願の明細書全体において使用される用語「改善」は、上記組成物の投与により抗炎症効果が現われるか、炎症、炎症性疾患又は喘息の症状が好転したり、良く変更される全ての行為を意味する。
【0030】
本願の一具現例において、上記組成物は、前炎症性又は炎症性因子の生成、発現、又は活性などを抑制するか、抗炎症性因子の生成、発現又は活性などを促進するものであっても良く、具体的に、上記組成物は、抗炎症用組成物であっても良い。
【0031】
本願の一具現例において、上記組成物は、ラクトバチルスサケイHEM224菌株、その生菌体、その死菌体、その培養液、その破砕物及び/又はその抽出物を含んでいても良い。
【0032】
本願の明細書全体において使用される用語「死菌体」は、生菌の反対概念であり、醗酵により得られた生菌と代謝産物を熱処理などによって菌を成長できなくした形態を意味する。死菌体は、細胞質(cytoplasm)、細胞壁(cell wall)、バクテリオシン(bacteriocin)などの抗菌活性物質、多糖類(polysaccharide)、有機酸などを含んでいても良い。上記死菌体を利用した製品は、生菌製品と比べて安全性が高く、特に耐熱性に優れており、外部環境に対する安全性が高く、既存の生菌製品よりも保管が容易で、流通期間を延ばすことができるという長所がある。また、抗生剤の使用に対する規制が強化されているため、代替品としての活用性と、まだ死菌体製品の生産に本格的に参入した会社が数えるほどしかないため、市場性と成長可能性が非常に高い。
【0033】
本願の明細書全体において使用される用語「培養物」は、本願の菌株を公知になった液体培地又は固体培地で培養させることにより得られたモノを意味し、「培養液」と混用して使用されても良い。
【0034】
本願の明細書全体において使用される用語「食品」は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品及び健康食品などがあり、通常の意味での食品を全て含む。
【0035】
本願の明細書全体において使用される用語「健康機能食品」は、健康機能食品に関する法律第6727号による人体に有用な機能性を持つ原料や成分を使用して製造及び加工した食品を意味し、「機能性」というのは、人体の構造及び機能に対し栄養素を調節することや生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0036】
本願の食品は、当業界において通常使用される方法により製造可能であり、上記製造の際は、当業界において通常添加する原料及び成分を添加して製造しても良い。また、上記食品の剤形も、食品として認められる剤形であれば制限なしに製造されても良い。本発明の食品用組成物は、様々な形態の剤形に製造されても良く、一般薬品とは異なり食品を原料としているので、薬品の長期服用時に生じ得る副作用などがないという長所があり、携帯性に優れているので、本発明の食品は、腸内環境改善の効果を増進させるための補助剤として摂取可能である。
【0037】
上記健康食品(health food)は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は、健康補助目的の食品を意味する。場合によって、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用され得る。具体的に、上記健康機能食品は、本願のラクトバチルスサケイHEM224菌株を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液などに製造した食品であり、これを摂取する場合に健康上特定の効果をもたらすものを意味するが、一般薬品とは異なり食品を原料としているので、薬品の長期服用時に生じ得る副作用がないという長所がある。
【0038】
本願の食品組成物は、日常的に摂取することが可能なため、腸内環境改善について高い効果が期待できるので、非常に有用に使用されることができる。
【0039】
上記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含んでいても良いが、担体の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野において通常使用されている担体であれば何でも使用することができる。
【0040】
また、上記食品組成物は、食品組成物に通常使用され、匂い、味、視覚などを向上させることのできる追加成分を含んでいても良い。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含んでいても良い。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラルを含んでいても良い。また、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含んでいても良い。
【0041】
また、上記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(さらし粉と高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜窒酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGグルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、被膜剤、ガム基礎剤、泡止め剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含んでいても良い。上記添加物は、食品の種類によって選別され、適切な量で使用しても良い。
【0042】
本願のラクトバチルスサケイHEM224菌株は、そのまま添加するか、他の食品又は食品成分と共に使用しても良く、通常の方法により適切に使用しても良い。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康又は治療的処置)に応じて適宜に決定しても良い。一般的に、食品又は飲料の製造時に、本発明の食品組成物は、食品又は飲料に対して50重量部以下、具体的に、20重量部以下の量で添加しても良い。しかし、健康及び衛生を目的に長期間取る場合は上記範囲以下の含量を含んでいても良く、安全性の面で何の問題もないため、有効成分は上記範囲以上の量で使用しても良い。
【0043】
本願の食品組成物の一例に、健康飲料組成物として使用しても良く、この場合、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有していても良い。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド;マルトース、スクロースのようなジサッカライド;デキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド;キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであっても良い。甘味剤は、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤;サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用しても良い。上記天然炭水化物の割合は、本発明の健康飲料組成物100mL当たり一般的に約0.01~0.04g、具体的に、約0.02~0.03gであっても良い。
【0044】
上記した他にも、健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール又は炭酸化剤などを含有していても良い。その他に、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、又は野菜飲料を製造するための果肉を含有していても良い。このような成分は、独立に又は混合して使用しても良い。このような添加剤の割合は特に重要ではないが、本発明の健康飲料組成物100重量部当たり0.01~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0045】
本願の食品組成物は、炎症又は喘息の改善又は予防効果を現わすことさえできれば本願のラクトバチルスサケイHEM224菌株を様々な重量%で含んでいても良く、具体的に、本願のラクトバチルスサケイHEM224菌株を食品組成物の総重量に対して0.00001~100重量%又は0.01~80重量%で含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0046】
本願の一具現例において、上記食品組成物は、健康機能食品組成物であっても良い。
【0047】
本願の第3の側面は、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224菌株(KCTC14065BP)又はその培養物を有効成分として含む、炎症又は喘息の治療又は予防用薬学組成物を提供する。第1の側面及び第2の側面と重複する内容は、第3の側面の薬学組成物にも共に適用される。
【0048】
本願の一具現例において、上記組成物は、ラクトバチルスサケイHEM224菌株、その生菌体、その死菌体、その培養液、その破砕物及び/又はその抽出物を含んでいても良い。
【0049】
本願の明細書全体において使用される用語「治療」は、本願のラクトバチルスサケイHEM224菌株を有効成分として含む薬学組成物を炎症、炎症性疾患又は喘息が発病した個体に投与することで、上記疾患の症状を好転させるか、良くなるようにする全ての行為を意味する。
【0050】
本願の一具現例において、上記組成物は、前炎症性又は炎症性因子の生成、発現、又は活性などを抑制するか、抗炎症性因子の生成、発現又は活性などを促進するものであっても良く、具体的に、上記組成物は、抗炎症用組成物であっても良い。
【0051】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態に製剤化して使用しても良いが、これに限定されるものではない。
【0052】
本願の一具現例において、上記薬学組成物を製剤化する場合、一般的に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、又は界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調剤されても良いが、これに限定されるものではない。
【0053】
本願の一具現例において、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、又はカプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、上記菌株の死菌体に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、又はゼラチンなどを交ぜて調剤されても良い。また、例えば、単なる賦形剤の他にも、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤を使用しても良いが、これに限定されるものではない。
【0054】
本願の一具現例において、経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが当たり、良く使用される単なる希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれても良いが、これに限定されるものではない。
【0055】
本願の一具現例において、非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれても良いが、これに限定されるものではない。例えば、上記非水性溶剤又は懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されても良いが、これに限定されるものではない。例えば、上記坐剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されても良いが、これに限定されるものではない。
【0056】
本願の一具現例に係る薬学組成物は、医薬品組成物又は医薬部外品組成物であっても良い。
【0057】
本願の明細書全体において使用される用語「医薬部外品」は、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置又は予防する目的で使用される物品のうち、医薬品よりも作用が軽微な物品を意味するものであり、例えば、薬事法によると、医薬部外品とは、医薬品の用途で使用される物品を除くものであり、ヒト・動物の疾病の治療や予防に使用される製品、人体への作用が軽微であるか、直接作用しない製品などが含まれる。
【0058】
本願の上記医薬部外品組成物は、ボディクレンザー、消毒清潔剤、洗浄剤、キッチン用洗浄剤、掃除用洗浄剤、歯磨き粉、うがい剤、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドウォッシュ、ヘア洗浄剤、ヘア柔軟剤、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤及びフィルタ充填剤からなる群より選択される剤形に製造しても良いが、これに限定されるものではない。
【0059】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、薬剤学的に有効な量で投与されても良いが、本願の用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療又は予防に適用可能な合理的な受恵/危険率で疾患を治療又は予防するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物感受性、使用された本発明の組成物の投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、使用された本発明の組成物と配合又は同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野において良く知られた要素によって決定しても良い。本願の薬学組成物は、単独で投与するか、公知になった腸疾患に対して治療効果を現わすと知られている成分と併用して投与しても良い。上記要素を全て考慮し、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0060】
本願の一具現例において、上記薬学組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、又は有効成分として使用される物質の種類などを考慮して当業者が決定しても良い。例えば、本発明の薬学組成物は、成人1人当たり約0.1ng~約1,000mg/kg、好ましくは1ng~約100mg/kgで投与しても良く、本願の組成物の投与頻度は、特にこれに限定されるものではないが、1日1回投与するか、あるいは用量を分割して数回投与しても良い。上記投与量又は投与回数は、どのような面からも本願の範囲を限定するものではない。
【0061】
本願の第4の側面は、本願の上記薬学組成物を薬剤学的に有効な量で炎症、炎症性疾患又は喘息が発病した個体に投与するステップを含む炎症、炎症性疾患又は喘息の治療方法を提供する。第1の側面乃至第3の側面と重複する内容は、第4の側面の治療方法にも共に適用される。
【0062】
本願の明細書全体において使用される用語「個体」は、炎症、炎症性疾患又は喘息が発病するか、発病の危険性があるマウス、家畜、人間などを含む哺乳動物、養殖魚類などを制限なく含んでいても良い。
【0063】
本願の一具現例において、上記個体は、人間を除くものであっても良い。
【0064】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、薬剤学的に有効な量で単一又は多重投与されても良い。このとき、組成物は、液剤、散剤、エアロゾル、注射剤、点滴剤(リンゲル)、カプセル剤、丸剤、錠剤、坐剤又はパッチの形態に製剤化して投与しても良い。
【0065】
本願の炎症、炎症性疾患又は喘息の予防又は治療用薬学組成物の投与経路は、目的組織に到逹できる限り如何なる一般的な経路を通じて投与しても良い。
【0066】
本願の薬学組成物は、特にこれに限定されるものではないが、目的とするところによって腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経皮パッチ投与、経口投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などの経路を通じて投与しても良い。但し、経口投与の際は、剤形化されていない形態で投与しても良く、胃酸によって上記ラクトバチルスサケイHEM224菌株が変性又は分解され得るため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化された形態又は経口用パッチ形態で口腔内に投与しても良い。また、上記組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されても良い。
【実施例】
【0067】
以下、本願の実施例を参照しながら本発明をより詳しく説明するが、下記実施例は本願の理解を助けるために例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例]
実施例1:ラクトバチルスサケイHEM224の抗炎症及び喘息治療効果の確認(In-vitro)
本願の新規な菌株であるラクトバチルスサケイHEM224(Lactobacillus sakei HEM224、寄託機関:韓国生命工学研究院韓国生物資源センター、受託番号:KCTC14065BP、受託日:2019年12月10日)の抗炎症効果及び喘息の治療及び予防効果を細胞レベルで確認するために、下記のような実験を行った。
【0069】
具体的に、10%のFBSが含まれたDMEM培地にRAW264.7細胞(Murine macrophage cell line、マウス大食細胞細胞株)を37℃、10%のCO2の条件で培養し、12-ウェルプレートに1×105の細胞/ウェルの条件で48時間維持した。無血清-DMEMに変えた細胞を実験群であるプロバイオティクス(HEM224、HEM792、HEM382)を1×106のCFU/ウェルの濃度で16時間、5%のCO2、37℃の条件で共培養(co-incubate)した。上記実験群の菌株HEM382、HEM792、及びHEM224は、それぞれラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)HEM224、ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)HEM792、及びラクトバチルスクルヴァトゥス(Lactobacillus curvatus)HEM382を意味する。上記培養された細胞は、PBS(phosphate-buffered saline)で2回洗浄し、TRIzol(Invitrogen社)を使用して上記共培養された細胞からRNAを抽出した。抽出の後、T-reg細胞と係わるサイトカインの発現レベルを測定するために、qRT-PCR(Quantitative Real-time PCR)を利用してIL-10のmRNA発現レベルを測定した(CTRL群は何も処理していない対照群である)。
【0070】
その結果、マウスの兔疫細胞であるRAW264.7細胞(Murine macrophage cell line)において、抗炎症(Anti-inflammatory)物質であるIL-10のmRNA発現量が、対照群と比べて実験群(HEM224、HEM792、HEM382)において統計的に有意に増加したことが確認されたところ(
図1)、HEM224、HEM792、HEM382菌株は、免疫細胞と共に培養する際に、免疫細胞において抗炎症物質又は喘息抑制物質であるIL-10のmRNA発現量を増加させることが分かる。
【0071】
また、各実験群と対照群(CTRL)のRAW264.7細胞においてIL-10のmRNA発現量を比較するために、対照群と実験群にそれぞれT-testを行うことで統計的有意性があることを確認した(棒グラフに*(P-value<0.05)、**(P-value<0.01)、***(P-value<0.001)で表記した)。
【0072】
上記結果を基に、本願のHEM224菌株は、抗炎症因子であるIL-10の活性又は発現レベルを向上させることができるので、抗炎症効果、及びアレルギー又は喘息を治療又は改善する効果があることが分かる。
【0073】
実施例2:ラクトバチルスサケイHEM224の抗炎症及び喘息治療効果の確認(In-vivo)
本願の新規な菌株であるラクトバチルスサケイHEM224の抗炎症効果及び喘息の治療及び予防効果を動物レベルで確認するために、下記のような実験を行った。
【0074】
具体的に、5週齢の雌マウス(BALB/c)を用意して2週間環境に適応させ、抗原(antigen)とアジュバント(adjuvant)を腹腔内注入(intraperitoneal(i.p)injection)して7日間感作(sensitization)させた。このとき、抗原は卵白アルブミン(ovalbumin、Sigma)を使用し、アジュバントは水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)を使用した。次に、実験11日目~15日目、18日目~22日目、25日目~29日目の間は各プロバイオティクス(HEM382、HEM792、HEM224)を毎日1回ずつ鼻腔内注入(intranasal injection)し、実験14日目、17日目、21日目、24日目、28日目、31日目にはそれぞれ卵白アルブミン(0.2mg/ml)を鼻腔内注入することで喘息を誘導した。実験32日目に上記マウスから得られた肺組織、肺胞洗浄液(BALF)及び血清(Serum)からIL-4、IL-5、IgEのmRNA発現レベル又は濃度を分析した(
図2)。
【0075】
実施例2-1:肺組織におけるIL-4及びIL-5発現レベルの確認
上記から得られた肺組織からIL-4及びIL-5の発現レベルを確認するために、下記のような実験を行った。
【0076】
具体的に、上記から得られた肺組織をTRIzol(700ul)で均質化して室温で5分間インキュベーションし、クロロホルム(Chloroform)140ulを追加して溶解(lysis)し、3分間インキュベーションした後、15分間12,000g、4℃の条件で遠心分離することにより水相部分(aqueous phase)が得られた。上記得られた水相部分にイソプロパノール(Isopropanol)350ulを添加して10分間インキュベーションした後、10分間12,000g、4℃の条件で遠心分離し、上澄液を捨ててペレット(pellet)部分を75%のエタノール(EtOH)700uに混合した。上記得られたサンプルを簡潔にボルテックスし、5分間12,000g、4℃の条件で遠心分離することにより得られた上澄液は捨てて残りのペレット部分を乾燥させ、ヌクレアーゼのない水(Nuclease-Free water)に混合して260nmと280nmでの吸光度からRNA収得量を測定した。
【0077】
次に、上記得られたRNAからcDNAを合成するために、上記RNA溶液をヌクレアーゼのない水で希釈して2000ng/ulの濃度に合わせ(RNA鋳型(template)の総体積は9ulとなるようにする)、1ulのoligo dT(18mer)溶液と交ぜることで計10ulとなるようにした。上記サンプルは、5分間70℃の熱を加えてから直ぐ氷水に5分以上冷やし、逆転写反応溶液を用意した[各cDNA反応に10ulを活用、逆転写反応溶液の組成:GoScriptTM 5X Reaction buffer(4ul)、MgCl2(2.4ul)、PCR Nucleotide(dNTP)mix(1ul)、GoScriptTM Reverse Transcriptase(1ul)、Nuclease-Free water(1.6ul)]。上記逆転写反応溶液15ulとRNA&プライマーミックス5ulを交ぜ、25℃の条件で5分間アニーリング(anneal)し、42℃の条件で1時間延長(extend)反応を行うことでcDNAを合成した。
【0078】
次に、上記で合成したcDNAにおいてIL-4及びIL-5のmRNA発現レベルを確認するために、qRT-PCR準備溶液を用意し[準備溶液の組成:Takara TB GreenTM RT-PCR buffer(10ul)、Target primer solution(100pmol、F+R)(2ul)、ROX reference dye(0.4ul)、Nuclease-Free water(2.6ul)]、cDNA溶液(5ul)を準備溶液(15ul)と混合して、qRT-PCRを行った。
【0079】
上記実験の結果、肺組織において、前炎症(Pro-inflammatory)物質であるIL-4のmRNA発現レベルが、陽性対照群(PC、抗原を処理して炎症又は喘息を誘導した対照群)と比べてHEM224及びHEM382を処理した実験群において統計的に有意に減少したことが確認され、HEM792を処理した実験群の場合も、p-値が0.051であって、統計的有意に近くIL-4発現レベルを減少させることが確認された(
図3)。
【0080】
また、他の前炎症(Pro-inflammatory)物質であるIL-5のmRNA発現レベルの場合も、陽性対照群と比べてHEM224、HEM792及びHEM382を処理した実験群において統計的に有意に減少したことが確認された(
図4)。
【0081】
(各実験群と陽性対照群(PC)のIL-4又はIL-5のmRNA発現レベル(mRNA発現量)を比較するために、PCと実験群にそれぞれT-testを行うことで統計的有意性を確認し、棒グラフに*(P-value<0.05)、**(P-value<0.01)、***(P-value<0.001)で表記し、それぞれのP-値と有意性は表に作成した。)
【0082】
上記実験の結果を基に、本願のHEM224菌株は、肺組織において炎症を誘導し、喘息の原因物質として知られているIL-4、IL-5のmRNA発現量を減少させることが分かるので、上記菌株を利用して炎症反応を抑制し、喘息を治療、予防又は改善できることが分かる。
【0083】
実施例2-2:肺胞洗浄液におけるIL-4及びIL-5の発現レベルの確認
上記得られた肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid、BALF)からIL-4及びIL-5の発現レベルを確認するために、下記のような実験を行った。
【0084】
具体的に、ELISA実験方法によりIL-4及びIL-5の発現レベルを確認するために、先ず、コーティングバッファで希釈したキャプチャ抗体(Capture Antibody)40μLで各マイクロウェルをコーティングし、実験プレートを密封した後、4℃で一晩中インキュベーションし、各ウェルの溶液を除去して各ウェル当たり120ulの洗浄バッファで3回洗浄した。次に、各ウェル当たり80ulのアッセイ希釈剤(Assay Diluent)で実験プレートをブロックし、室温で1時間インキュベーションした。各ウェルの溶液を除去し、各ウェル当たり120ulの洗浄バッファで3回洗浄し、標準希釈(Standard dilution)とサンプル希釈(Sample dilution)をアッセイ希釈剤で2倍ずつ希釈して準備した[濃度勾配:(IL-4の実験:500pg/mL~7.8pg/mL)、(IL-5の実験:1000pg/mL~15.6pg/mL]。次に、それぞれの標準、サンプル及び対照群(control)を40ulずつウェルにピペットし、実験プレートを密封した後、室温で2時間インキュベーションし、各ウェルの溶液を除去して各ウェル当たり120ulの洗浄バッファで3回洗浄した。各ウェルに作用検出剤(Working Detector)である検出抗体(Detection Antibody)及びストレプトアビジン-HRP製剤(Streptavidin-HRP reagent)を40ulずつ添加し、実験プレートを密封した後、室温で1時間インキュベーションし、各ウェルの溶液を除去して各ウェル当たり120ulの洗浄バッファで7回洗浄した。次に、基質溶液(Substrate Solution)を各ウェルに40ulずつ添加して、室温の暗い所で30分間インキュベーションし、停止溶液(Stop Solution)を各ウェルに20ulずつ添加して、停止反応の後、30分以内に450nmで吸光度を測定し、もし波長補正が可能であれば450nmの吸光度から570nmの吸光度を差し引いて補正した。
【0085】
上記実験の結果、肺胞洗浄液において、前炎症物質であるIL-4の濃度が、陽性対照群(PC、抗原を処理して炎症又は喘息を誘導した対照群)と比べてHEM224、HEM382及びHEM792を処理した実験群において統計的に有意に減少したことが確認された(
図5)。
【0086】
また、他の前炎症物質であるIL-5の濃度は、陽性対照群と比べてHEM224、HEM792及びHEM382を処理した実験群において統計的に有意に減少したことが確認された(
図6)。
【0087】
(各実験群と陽性対照群(PC)のIL-4又はIL-5の濃度を比較するために、PCと実験群にそれぞれT-testを行うことで統計的有意性を確認し、棒グラフに*(P-value<0.05)、**(P-value<0.01)、***(P-value<0.001)で表記し、それぞれのP-値と有意性は表に作成した。)
【0088】
上記実験の結果を基に、本願のHEM224菌株は、肺において炎症を誘導し、喘息の原因物質として知られているIL-4、IL-5の濃度を減少させることが分かるので、上記菌株を利用して炎症反応を抑制し、喘息を改善できることが分かる。
【0089】
実施例2-3:血清におけるIgEの発現レベルの確認
上記得られた血清(Serum)からIgEの発現レベルを確認するために、下記のような実験を行った。
【0090】
具体的に、ELISA実験方法によりIgEの発現レベルを確認するために、一日前にキャプチャ抗体(Capture Antibody)をコーティングバッファA製造液(Coating Buffer A Preparation)で希釈し、40ulのキャプチャ抗体(Capture Antibody)溶液を全てのウェルにそれぞれ添加して、実験プレートを密封した後、2℃と8℃の間の温度で16時間~18時間一晩中インキュベーションし、各ウェル当たりに洗浄バッファ120ulで4回洗浄して、残りのバッファを除去した。次に、ノイズ(Background)を低減して非特異的結合を防ぐために、各ウェルに80ulのアッセイ希釈剤A(Assay Diluent A)を添加し、実験プレートを密封した後、プレートシェーカを利用して室温で30分間300rpmでシェークし、血清サンプルをアッセイ希釈剤Aと標準(standard)を利用して2倍ずつ希釈して1/10,000の割合まで用意した(濃度勾配:10ng/mL~0.156ng/mL)。洗浄バッファでプレートを4回洗浄し、各ウェル当たり40ulの標準又はサンプルを添加して、密封してから室温で2時間シェークしながらインキュベーションし、洗浄バッファでプレートを4回洗浄した。次に、各ウェルに検出抗体(Detection Antibody)溶液を40ulずつ添加して、密封してから室温で1時間シェークしながらインキュベーションした後、洗浄バッファでプレートを4回洗浄し、各ウェルにAvidin-HRP溶液を40ulずつ添加して、密封してから室温で1時間シェークしながらインキュベーションした後、洗浄バッファでプレートを5回洗浄し、各ウェルに新たに作ったTMB基質溶液(Substrate Solution)を40ulずつ添加して、暗い所で20分間インキュベーションした後、各ウェルに停止溶液(stop solution)を40ulずつ添加して反応を停止させた。次に、15分内に450nmで吸光度を測定し、もし測定機器が570nmを測定することが可能であれば、450nmの吸光度から570nmの吸光度を差し引いた値を使用した。
【0091】
上記実験の結果、血清において、前炎症物質であるIgEの濃度が、陽性対照群(PC、抗原を処理して炎症又は喘息を誘導した対照群)と比べてHEM224、HEM382及びHEM792を処理した実験群において統計的に有意に減少したことが確認された(
図7)。
【0092】
(各実験群と陽性対照群(PC)のIgEの濃度を比較するために、PCと実験群にそれぞれT-testを行うことで統計的有意性を確認し、棒グラフに*(P-value<0.05)、**(P-value<0.01)、***(P-value<0.001)で表記し、それぞれのP-値と有意性は表に作成した。)
【0093】
上記実験の結果を基に、本願のHEM224菌株は、炎症を誘導し、喘息の原因物質として知られているIgEの濃度を減少させることが分かるので、上記菌株を利用して炎症反応を抑制し、喘息を改善できることが分かる。
【0094】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0095】
本願の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【受託番号】
【0096】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14065BP
受託日:20191210