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▶ セント・ジュード・メディカル・インターナショナル・ホールディング・エスエーアールエルの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】歪み検出へのハイブリッドアプローチ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/06 20060101AFI20240208BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240208BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20240208BHJP
【FI】
A61B5/06
A61B34/20
A61B5/367 100
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022547747
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2020062604
(87)【国際公開番号】W WO2021156673
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】62/971,039
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516134383
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル・インターナショナル・ホールディング・エスエーアールエル
【氏名又は名称原語表記】St. Jude Medical International Holding S.a,r.l.
【住所又は居所原語表記】Regus Center, 26, boulevard Royal,L-2449 Luxembourg,Luxembourg
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム フィッシュバッハ
(72)【発明者】
【氏名】スコット メイヤーソン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047213(JP,A)
【文献】特表2014-507195(JP,A)
【文献】国際公開第2019/005699(WO,A1)
【文献】特表2019-508100(JP,A)
【文献】特開2014-128676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
A61B 5/02-5/03
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムであって、
前記患者の身体の外面に接続されるように構成される第1の駆動パッチおよび第2の駆動パッチを備え、前記第1の駆動パッチおよび前記第2の駆動パッチは、前記医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を前記身体内に生成するように構成されている、インピーダンス位置特定システムと、
磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、
前記第1の駆動パッチおよび前記第2の駆動パッチのうち1つに接続され、前記磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、
前記インピーダンス位置特定システムからの駆動パッチ位置データおよび前記磁気位置特定システムからの磁気センサ位置データを受信するように構成される電子制御ユニットと、
を備えており、
前記電子制御回路は、前記磁気センサの位置変化を検出し、前記駆動パッチ位置データおよび前記磁気センサ位置データを用いて、前記磁気センサの検出された前記位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成される、
システム。
【請求項2】
前記磁気センサが、基準信号を出力することをさらに備えており、
前記基準信号は、座標系の原点を確立する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁気センサが、互いに対して固定された距離および向きで位置する複数のセンサコイルを備えており、
各前記センサコイルが、前記センサコイルの前記向きと同一平面上にある前記磁場を感知し、感知された磁場を示す電気信号を出力するように構成され、配置されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、第1の磁気センサの位置、第2の磁気センサの位置、および磁場歪みセンサベクトルを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、インピーダンスベクトルを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電子制御ユニットが、磁場歪みが生じたかどうかを決定するときに、元の磁気センサ位置、測定された磁気センサの位置、元の駆動パッチの位置、および測定された駆動パッチの位置を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電子制御ユニットが、前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、元の磁気センサの位置、測定されたセンサの位置、元の駆動パッチの位置、および測定された駆動パッチの位置を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記磁気センサが、第1の磁気センサを備えており、
前記システムが、第3の駆動パッチと、前記第3の駆動パッチに接続される第2の磁気センサと、をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記インピーダンス位置特定システムが、前記医療デバイスの測定された位置を決定するように構成されており、
前記電子制御ユニットが、前記磁場歪みまたは前記磁気センサの前記物理的な動きのため、前記医療デバイスの測定された前記位置を補正するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記電子制御ユニットが、磁場歪みが検出されたとき、前記磁気位置特定システムからの情報を無視しながら、前記医療デバイス上の前記電極の位置を出力するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムであって、
磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、
第1のセンサコイルと、前記第1のセンサコイルに直交して配向される第2のセンサコイルと、前記第1のセンサコイルおよび前記第2のセンサコイルに直交して配向される第3のセンサコイルと、を備え、前記磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、
前記患者の身体内に、医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を生成するように構成される複数のインピーダンスパッチと、
前記磁気センサおよび前記複数のインピーダンスパッチから情報を受信するように構成される電子制御ユニットと、
を備えており、
前記電子制御ユニットは、磁気センサベクトルおよびインピーダンスベクトルを決定するように構成されており、
前記電子制御回路が、前記磁気センサの位置変化を検出し、前記磁気センサベクトルおよび前記インピーダンスベクトルを用いて、検出された前記位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成されており、
前記電子制御ユニットが、補正アルゴリズムを開始するように構成されており、
前記補正アルゴリズムは、前記磁場歪みに基づく、または前記磁気センサの前記物理的な動きによる、前記医療デバイスの位置における変化を補正するように構成されている、
システム。
【請求項12】
前記第1のセンサコイル、前記第2のセンサコイル、および前記第3のセンサコイルが、エネルギを受信するように構成および配置されており、
前記エネルギが、磁場強度および前記受信している前記センサコイルと実質的に同軸である磁場向きを示す、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記磁気センサが、前記複数のインピーダンスパッチのうちの1つに接続される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きのしきい値が生じたときに、通知を送出するように構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
患者内において医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムの作動方法であって、
第1の時間に磁気センサ内の複数のセンサコイルの各々によって感知された磁場を示す1つまたは複数の信号の第1のセットを前記磁気センサから受信するステップと、
座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第1のセットをインピーダンスセンサから受信するステップと、
第2の時間に各前記センサコイルに感知された前記磁場を示す1つまたは複数の信号の第2のセットを前記磁気センサから受信するステップと、
前記座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第2のセットを前記インピーダンスセンサから受信するステップと、
磁気センサベクトルを決定するステップと、
インピーダンスベクトルを決定するステップと、
前記磁気センサの位置変化を検出するステップと、
前記磁気センサの検出された前記位置変化が、磁場歪みよって引き起こされるのか、または発生した前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するために、前記磁気センサベクトルを第1のしきい値と比較し、および前記インピーダンスベクトルを第2のしきい値と比較するステップと、
を備えており、
前記磁気センサベクトルが前記第1のしきい値を超え、かつ、前記インピーダンスベクトルが前記第2のしきい値を下回る場合、検出された前記位置変化は、磁場歪みによって引き起こされており、
前記磁気センサベクトルが前記第1のしきい値を超え、かつ、前記インピーダンスベクトルも前記第2のしきい値を超えた場合、検出された前記位置変化は、前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされている、
作動方法。
【請求項16】
磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたときに、医師に通知するステップをさらに含む、
請求項15に記載の作動方法。
【請求項17】
前記インピーダンスセンサが、パッチを備える、
請求項15に記載の作動方法。
【請求項18】
前記磁気センサが前記インピーダンスセンサに接続される、
請求項15に記載の作動方法。
【請求項19】
前記インピーダンスセンサが、医療デバイス上の電極を備える、
請求項15に記載の作動方法。
【請求項20】
補正アルゴリズムを実行するステップをさらに備えており、
前記補正アルゴリズムが、前記磁場歪みに基づく、または前記磁気センサの前記物理的な動きによる、前記医療デバイスの位置における変化を補正するように構成される、
請求項19に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
a.技術分野
本開示は、概して、人体内の医療器具の位置特定に関する。より具体的には、本開示は、ハイブリッド磁気追跡およびインピーダンスベース追跡システム内の磁場歪みおよび位置変化歪みを検出することおよびそれらを区別することに関する。
【背景技術】
【0002】
b.背景技術
電気生理学(EP)カテーテルは、ますます多くの処置に使用されるようになってきている。例えば、カテーテルは、ほんの数例を挙げると、診断、治療、マッピング、およびアブレーション処置のために使用されている。典型的には、カテーテルは、意図された部位、例えば、患者の心臓内の部位へ、患者の脈管構造を通して操作され、診断、マッピング、アブレーション、または他の治療のために使用することができる1つまたは複数の電極を運ぶ。患者の体内における、カテーテルの正確な位置決め、および正確な位置を把握していることは、処置の成功率を改善するために望ましいことである。
【0003】
体内の所望の部位にカテーテルを配置するためには、何らかのタイプの位置特定システムが使用されなければならない。患者の解剖学的構造に対するカテーテルの相対位置を決定するために、周知の制御された磁場内のカテーテルの位置を提供する磁気位置特定システムが開発されており、電流を用いて3対の電極内でカテーテルの位置を提供するインピーダンス位置特定システムが開発されてきた。外部で生成された磁場は、磁場内に位置するカテーテルに(例えば、コイルなどのエレメントに)感知される正確な磁気勾配(磁力線)を含む。センサにおいて磁場に誘導される電流は、アルゴリズムプロセスを使用して分析され、患者の体内のカテーテルの位置を決定するために使用される。カテーテルが患者内に配置されると、臨床医は、望むままカテーテルを操作して、例えば、組織をアブレートして、潜在的に病原性の心臓リズムを妨害することができる。
【0004】
しかしながら、磁気的位置特定システムは、例えば、磁場内に侵入する外部由来の鉄または金属物体によって生じる磁場内の磁気歪みによって誘発されるエラーの影響を受けやすい。このような歪みが入ってくると、システムが患者の体内のカテーテルの不正確な位置を提示する結果を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
身体内の医療デバイスの位置を決定するためのシステムを提供することが望ましい。特に、位置のエラーを低減するシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムは、患者の身体の外面に接続されるように構成される第1の駆動パッチおよび第2の駆動パッチを備え、第1の駆動パッチおよび第2の駆動パッチは、医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を身体内に生成するように構成されている、インピーダンス位置特定システムと、磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、第1の駆動パッチおよび第2の駆動パッチのうち1つに接続され、磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、前記インピーダンス位置特定システムから駆動パッチ位置データおよび前記磁気位置特定システムから磁気センサ位置データを受信するように構成される電子制御ユニットと、を備えることができる。電子制御回路は、磁気センサの位置変化を検出し、駆動パッチ位置データおよび磁気センサ位置データを用いて、磁気センサの検出された位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成されることができる。
【0007】
別の実施形態では、患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムは、磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、第1のセンサコイルと、第1のセンサコイルに直交して配向される第2のセンサコイルと、第1のセンサコイルおよび第2のセンサコイルに直交して配向される第3のセンサコイルと、を備え、磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、患者の身体内に、医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を生成するように構成される複数のインピーダンスパッチと、磁気センサおよび複数のインピーダンスパッチから情報を受信するように構成される電子制御ユニットと、を備えることができる。電子制御ユニットは、磁気センサベクトルおよびインピーダンスベクトルを決定するように構成されることができ、電子制御回路は、磁気センサの位置変化を検出し、磁気センサベクトルおよびインピーダンスベクトルを用いて、検出された位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成されることができ、前記電子制御ユニットが、補正アルゴリズムを開始するように構成されることができ、補正アルゴリズムは、磁場歪みに基づく、または磁気センサの物理的な動きによる、医療デバイスの位置における変化を補正するように構成されている。
【0008】
さらに別の実施形態では、患者内において医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するための方法は、第1の時間に磁気センサ内の複数のセンサコイルの各々によって感知された磁場を示す1つまたは複数の信号の第1のセットを磁気センサから受信するステップと、座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第1のセットをインピーダンスセンサから受信するステップと、第2の時間に各前記センサコイルに感知された磁場を示す1つまたは複数の信号の第2のセットを磁気センサから受信するステップと、座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第2のセットをインピーダンスセンサから受信するステップと、磁気センサベクトルを決定するステップと、インピーダンスベクトルを決定するステップと、磁気センサの位置変化を検出するステップと、磁気センサの検出された位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または発生した前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかどうかを決定するために、前記磁気センサベクトルを第1のしきい値と比較し、および前記インピーダンスベクトルを第2のしきい値と比較するステップと、を備えることができる。磁気センサベクトルが第1のしきい値を超え、かつ、インピーダンスベクトルが第2のしきい値を下回る場合、検出された位置変化は、磁場歪みによって引き起こされている可能性があり、磁気センサベクトルが第1のしきい値を超え、かつ、インピーダンスベクトルも第2のしきい値を超えた場合、検出された位置変化は、磁気センサの物理的な動きによって引き起こされている可能性がある。
【0009】
本発明の前述並びに他の態様、特徴、詳細、効用、および利点は、以下の明細書および特許請求の範囲を読むこと、ならびに添付の図面をレビューすることにより、明らかになるだろう。本開示のさらなる特徴、利点、および実施形態は、詳細な説明および図面を考慮することにより示すこと、または明らかにすることができる。さらに、前述の概要並びに以下の詳細な説明、図面、および添付は、特許請求された本開示の範囲を限定することなく、さらなる説明を提供することが意図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の様々な態様による、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムの概略図である。
【0011】
図2A】本開示の様々な態様による、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける位置特定のために構成されるカテーテルと、イントロデューサとを備える、カテーテルアセンブリの部分等角図である。
【0012】
図2B】本開示の様々な態様による、図2Aのカテーテルの遠位先端アセンブリの拡大部分側面図である。
【0013】
図3A】本開示の様々な態様による、内部の特徴が見えるように、センサハウジングの一部が分離された磁気検出センサの上面図である。
【0014】
図3B】本開示の様々な態様による、図3Aの磁気検出センサの等角図である。
【0015】
図3C】本開示の様々な態様による、例えば、図3Aおよび3Bの磁気検出センサから分離したセンサコイルアレイの構成の一実施形態の拡大上面図である。
【0016】
図3D】センサコイルの互いに対する機械的位置および向きに関連するマグニチュード位置および向きを計算する方法を詳述するフローチャートを示す。
【0017】
図4】ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおけるインピーダンスパッチ上の磁気センサの配置の等角図である。
【0018】
図5】本開示の様々な態様による、医療処置中の患者上の磁気検出センサの配置の側面図である。
【0019】
図6A】歪みが発生しているシステムのいくつかの実施形態の図形的表現である。
図6B】歪みが発生しているシステムのいくつかの実施形態の図形的表現である。
図6C】歪みが発生しているシステムのいくつかの実施形態の図形的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
心臓位置特定システムは、心腔の重ね合わされたモデルまたは画像内に従来の電気生理学的カテーテルの3次元(3D)位置を表示することができる。これらの位置特定システムは、心臓の電気活動を波形トレースとして、および心腔のモデル上の動的3次元等電位マップとして、表示することができる。これらの3次元モデルの輪郭付けされた表面は、患者自身の心腔の解剖学的構造に基づいている。これらの位置特定システムは、カテーテルの位置およびモデル作成を描写(render)するために、インピーダンスベースおよび/または磁気ベースの位置特定技術を使用することができる。
【0021】
磁気的位置特定を使用する場合、ある局所的な源から生成される磁場は、生成される磁場に侵入する、または近接して配置される金属または鉄の物体によって引き起こされる歪みの影響を本質的に受けやすい。このような歪みは、計算されたまたは特定された医療デバイスの位置について、ならびに関連する解剖学的モデルおよび他の表現について不正確を引き起こす可能性がある。さらに、磁気的位置特定システムおよびインピーダンス位置特定システムを使用する場合、患者の動きは、計算されたまたは特定された医療デバイスの位置について、ならびに関連する解剖学的モデルおよび他の表現において歪みおよび不正確を引き起こす可能性がある。ナビゲーションシステムは、医療デバイスの位置を決定する際に、患者の動きを補償するために、患者の動きを監視するための様々なセンサを利用することができる。さらに、本明細書で説明するように、ナビゲーションシステムは、磁気歪みまたは患者の動きが生じたかどうかを決定するために、磁気センサおよびインピーダンスセンサをペア化することができる。
【0022】
心臓内デバイス内に埋め込まれた磁気センサは、1つまたは複数の既知の基準位置に対するデバイスの位置および向きを決定するために使用される。これらのデバイスは、カテーテルと、シースと、ガイドワイヤと、当業者に公知の他のデバイスを備え得る。さらに、心臓内デバイス内に埋め込まれたインピーダンスセンサが、そのようなデバイスの位置および向きを決定するために使用することができる。この位置および向き情報は、デバイスをナビゲートするために使用することができ、また、磁気およびインピーダンスベースのデバイス位置特定を最適化するために使用することもできる。空間内の医療デバイスをナビゲートするとき、患者内のデバイスの物理的な位置における実際の変化がないにもかかわらず(または極小の実際の変化だったとしても)、基礎の磁場が変化した/歪んだ、または患者の位置が変化した場合、表示された、または他の方法で報告されたデバイスの位置は、顕著にシフトすることがある(例えば、デバイスの位置の表示を表示する画面上で視覚的にシフトする)。当然、このシフトは、報告されたデバイス位置を使用して作り出されたモデルに対して不正確を引き起こす可能性がある。また、デバイスからの磁気位置および向きデータは、インピーダンスベースの位置特定技術と併用し、非線形インピーダンス場を最適化/スケーリングするために使用することができる。図面を参照して以下により詳細に説明するように、本開示の実施形態は、患者の動き、患者に挿入された他のデバイスの存在、および周囲環境内の外乱の結果としての、磁場内のそのような歪みおよび読み取り値の変化の存在を認識する。本開示の実施形態は、歪みまたは動きが存在することを決定した後に、磁場内のそのような歪みと、患者の動きの結果としての読み取り値の変化をさらに区別することができる。
【0023】
図1は、医療処置を行いながら、患者11(簡略化のために、図1では楕円として描かれている)の人間解剖学的構造をナビゲートするために使用されるハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8の概略図を示す。例えば、図1に示すように、システム8は、患者の心臓10をマッピングし、心臓の心腔を通して心臓カテーテルをナビゲートするために使用することができる。ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、典型的には、3次元空間内の物体(例えば、図2Aおよび2Bに示される電極アセンブリ112などの、診断またはアブレーションカテーテルの一部)の位置(および、いくつかの実施形態では、向き)を決定し、少なくとも1つの基準に対して決定された位置情報としてそれらの位置を表す。具体的には、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、磁場および/またはインピーダンス場内の心臓カテーテルの位置を決定するために使用することができ、当該位置は次いで、例えば、心臓10の画像またはモデル上に重ね合わされる。他の実施形態では、他の基準データの中でも核磁気共鳴画像データは、他の基準データの中でも、患者の心臓10に対する心臓カテーテルのリアルタイム位置を参照するための仮想作業環境を臨床医に提供するために、3次元空間上に重ね合わせることができる。
【0024】
ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、可視化、位置特定、マッピング、およびナビゲーションの様々なコンポーネントを含むことができる。例えば、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、Biosense Webster社から市販されているCARTO(商標)システム、ならびに米国特許第6,498,944号、第6,788,967号、および第6,690,963号のうちの1つまたは複数を参照して概して示されるような磁場ベースのシステムを部分的に備えることができ、これらの開示は、本明細書に完全に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、Abbott Laboratoriesから入手可能なMEDIGUIDE(商標)技術システム、ならびに米国特許第6,233,476号、第7,197,354号、第7,386,339号、2014年3月13日に出願された「Medical Device Navigation System」と題する米国特許出願第14/208,120号、2013年6月12日に出願された「Medical Device Navigation System」と題する米国仮特許出願第61/834,223号、および2014年3月13日に出願された「Medical Device Navigation System」と題する国際出願第PCT/IB2014/059709号のうちの1つまたは複数を参照して概して示されるような磁場ベースのシステムを部分的に備えることができ、これらの開示は、本明細書に完全に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、限定ではなく例として、2011年9月13日に出願された「Catheter Navigation Using Impedance and Magnetic Field Measurements」と題する係属中の米国特許出願第13/231,284号、および2011年4月14日に出願された「System and Method for Registration of Multiple Navigation Systems to a Common Coordinate Frame」と題する米国特許出願第13/087,203号に記載されたシステムなどのハイブリッド電場ベースおよび磁場ベースのシステム、それらのシステムの各々が本明細書に完全に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書中に組み込まれ、またはBiosense Webster社から市販されているCARTO(商標)3システムを備えることができる。いくつかの実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、例えば限定ではないが、蛍光透視法、コンピュータ断層撮影法(CT)、および核磁気共鳴画像法(MRI)ベースのシステムなどの他の一般に利用可能なシステムを備える、またはそれらと併用することができる。明確さおよび例示のみの目的のために、位置特定システム8は、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムを備えるものとして以下に記載される。
【0025】
ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、可視化、位置特定、マッピング、およびナビゲーションの様々なコンポーネントを含むことができる。例えば、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、すべてがAbbott Laboratories社から市販されているEnSite(商標)NavX(商標)電子解剖学的マッピングシステム、EnSite(商標)Velocity(商標)電子解剖学的マッピングシステム、およびEnSite Precision(商標)電子解剖学的マッピングシステム、または米国特許第7,263,397号(’397特許)、米国特許公開第2007/0060833A1号、2005年9月15日に出願された米国出願第11/227,580号(’580出願)、米国公開第2018/0296111A1号、もしくは2018年4月13日に出願された米国出願第15/953,155号(’155出願)を参照して概して見られるような、インピーダンス位置特定システム、および/またはハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムを部分的に備えることができる。’397特許、’580出願、および’155出願はすべて、本明細書に完全に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々なEnSite(商標)システムは、電流が胸郭を通過するときに、心臓などの内部器官にわたって電圧降下が生じ、この電圧降下を体内の医療デバイスの位置を特定するために測定し、および使用することができるという原理に基づいている。
【0026】
図1は、インピーダンスベースの位置特定システムと、磁気ベースの位置特定システムとの2つの位置特定システムを含むハイブリッド位置特定システムをさらに例示することができる。一般に、図1に示すように、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、患者の身体11を横切る磁場を放出する複数の磁場トランスミッタ(例えば、12、14、16、18、19、および21)を含むことができる。これらの磁場トランスミッタは、患者の上に配置される、患者に取り付けられる/貼り付けられる、または外部装置に固定されることができ、3つのほぼ直交する軸、例えば、x軸、y軸、およびz軸を規定する。磁場トランスミッタは、磁場生成器に電気的に接続される。磁場生成器は、磁場トランスミッタを介して、同時に送信される、時間多重化される、および/または周波数多重化されることができる1つまたは複数の磁場を生成する。スイッチ13は、1つまたは複数のレシーバ17、22、および31(例えば、カテーテル、患者基準センサ、内部基準センサ、磁気センサなど)から受信した信号をサンプリングする。
【0027】
システムはさらに、身体の対向する表面(例えば、胸部および背中、胸郭の左側および右側、ならびに首および脚)上に配置され、ほぼ直交するx、y、およびz軸を形成する3対のパッチ電極と、典型的には胃の近くに配置され、基準値を提供し、ナビゲーションシステムの座標系の原点として働く基準電極と、を含むことができる。図1は、それらの直交して配置された駆動パッチのうちの2対、31、32、33、34を示す。正弦波電流は、電場を生成するために、各対のパッチ電極の各対を経由させることができ、医療デバイスに関連する1つまたは複数の電極に対する電圧測定値を得ることができる。測定された電圧は、パッチ電極からデバイス電極までの距離に比例する。測定された電圧は、基準電極における電位と比較され、ナビゲーションシステムの座標系内のデバイス電極の位置が決定される。
【0028】
1つまたは複数のトランスミッタから患者の身体11を横切る磁場、および/または複数の駆動パッチからのインピーダンスデータを示す、レシーバから受信した信号は、次いでコンピュータシステム7によってさらなる処理のために、アナログからデジタル信号に変換される。コンピュータシステム7は、例えば、患者の心臓内の心臓カテーテルの位置を決定するために、レシーバおよび/または駆動パッチから受信されたデータに対して計算を実行する。図示の実施形態では、コンピュータシステムは、磁気追跡システムとインピーダンス追跡システムの両方と接続することができる。他の実施形態では、磁気追跡システムおよびインピーダンス追跡システムは、別個のデバイスに接続することができ、あるいは、追加のコンポーネントが、システム内に存在することができる。さらに、実際のカテーテル位置は、他の鉄/金属体によって引き起こされる磁場内の磁気歪みによって不明瞭にされ得る。これらの磁気歪みは、カテーテルの実際の位置と比較したカテーテルの知覚される位置の誤り率に関連する。コンピュータはさらに、電子制御ユニットを備えることができる。本出願全体にわたって説明されるように、コンピュータは、本明細書で説明される様々な装置およびシステムからのデータを受信し、計算し、決定し、送信することができる。
【0029】
処置中の臨床医が参考にできるように、磁場内のカテーテルの知覚される位置は、既知の参照点、例えば、心腔、動脈などに関連させてディスプレイ6上に提示することができる。
【0030】
一実施形態では、カテーテルなどの医療デバイスは、患者の心臓10の左心室内に延在することができる。他の実施形態では、医療デバイスは、左心房、冠状静脈洞、肺静脈、または体内の別の動脈、静脈、または管腔内に延在することができる。これらの実施形態のいくつかでは、医療デバイスは、血管系の外側で使用することができる。カテーテルは、その長さに沿って間隔を置いて配置された複数のセンサコイルおよび電極を含む。本明細書で使用される「センサコイル」という用語は、概してそれの磁場内の位置がそのシステム(例えば、磁気センサ)によって測定できる任意の要素に言及する。各センサコイルは磁場内にあるので、各センサコイルについて同時に位置特定データを収集することができる。さらに、各電極は、インピーダンス駆動パッチによって作り出された場内に位置し、各電極に対する位置特定データを同時に収集することもできる。
【0031】
ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8は、磁気ベースの位置特定システムの座標系の原点を規定するために、固定基準22を含むことができる。この固定基準が、相対位置を提供し、カテーテル上のセンサコイルの位置がその相対位置に対して測定される。このような固定基準は同様に、固定された内部または外部位置にあってもよい。同様に、複数の基準は、同じまたは異なる目的(例えば、呼吸、患者の移動、システムドリフトなどのために補正をする)のために使用することができる。固定基準が磁気基準センサを備える場合、磁気基準センサは、金属干渉、ならびに、患者の動き、皮膚の動きもしくは伸長、偶発的な動き、または他の方法のいずれによるに関わらず磁気基準センサの物理的な動きの影響を受けやすい可能性がある。さらに、固定基準22は、磁気ベースの位置特定システムの座標フレームの原点を規定するために使用されるので、追跡されるツール位置データにおいて、固定基準の物理的な移動が観測されることはあり得ない。磁場歪みと固定基準22の物理的な動きとの組み合わせは、エラーの種類を区別できるシステムを要求し得る。本システムは、インピーダンスベースのナビゲーションシステムからの位置データと、磁気ベースのナビゲーションシステムからの磁気位置データとの両方の組合せを使用することによって、物理的な患者の動きと、磁場歪みによって引き起こされた知覚された動きと、を識別することができる。磁気基準センサは、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム、すなわちEnSite Precision(商標)を使用して追跡を可能にする、患者に張り付けるパッチまたは他の手段に物理的に接続することができる。パッチと磁気基準センサの位置が結びつくので、磁気基準センサに対するパッチの相対的な位置を監視することができる。本明細書に記載のように、パッチまたは他のインピーダンスデバイスのインピーダンス位置データと、磁気基準センサ位置データとの両方が一緒に移動する場合、これは、患者の(物理的な)動きに起因し得る。しかしながら、基準の磁気位置データが変化するが、インピーダンス位置データが変化しない場合、干渉によって磁気基準センサが乱されていると決定することができる。
【0032】
コンピュータシステムであって、従来の汎用コンピュータ、専用コンピュータ、分散型コンピュータ、または任意の他のタイプのコンピュータを備えることができ、単一の中央処理装置(CPU)などの1つまたは複数のプロセッサ、または並列処理環境と通常呼ばれる複数の処理ユニットを備えることができる、コンピュータシステムは、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム8を制御することができ、かつ/または本明細書の実施形態の様々な態様を実施する命令を実行することができる。
【0033】
図2Aは、カテーテルアセンブリ100の簡略化された等角図であり、カテーテルアセンブリ100は、遠位端部においてカテーテル先端アセンブリ(または電極アセンブリもしくは遠位先端アセンブリ)112を含み、臨床医の制御により診断または治療処置を実施することに操作可能に適合されているカテーテル106を含む。カテーテル106の近位端部104は、ステアリングハンドルまたは他の機構(図示せず)を含むことができる。本実施形態では、カテーテル106はマッピングカテーテルである。カテーテル106は、近位端部104とカテーテル先端アセンブリ112との間に延在する可撓性シャフト102を含む。カテーテルアセンブリ100は、例えば、位置特定、マッピング、アブレーション、および/またはペーシング処置を実行するために、カテーテル先端アセンブリ112と外部の電気コンポーネント(図示せず)との間に電気的接続を確立するように構成された電気コネクタ(図示せず)をさらに含む。図2は、カテーテルアセンブリ100の一部を備えるイントロデューサ114をさらに示す。カテーテル先端アセンブリ112は、例えば、本出願の図3A、3B、および3Cに概略的に示されるような複数のセンサコイル(または位置特定コイルもしくはセンサ)、または本明細書に完全に記載されるかのように、その全体が参考により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,690,963号に示されるセンサ(例えば、図2および図3に示されるセンサ30、32、34を参照)を備えることができる。これらの位置特定コイルは、例えば、図2Bの破線のボックス122によって示される領域に配置することができる。
【0034】
図2Bは、先端アセンブリ112をより詳細に示す拡大側面図である。先端アセンブリ112は、先端電極124(図2Bに概略的に示す)と、複数のリング電極128R-2、128R-3、128R-4と、複数の電気伝導体120(例えば、3つのリング電極それぞれに電気的に接続された1つの導体、および先端電極124に電気的に接続された別個の導体)とを含む。付加的な電気コネクタは、位置特定コイルが、例えば、破線のボックス122によって輪郭が描かれた領域内に位置する場合、先端アセンブリ112から近位に延在することができる。
【0035】
図3Aおよび図3Bは、第1、第2、および第3のセンサコイル315、320、および325にそれぞれ電気的に接続された回路基板310を含む磁気センサ300の一実施形態の図である。いくつかの実施形態では、磁気センサは、磁気ベースの位置特定システムの座標系の原点を規定するために、固定基準を備えることができる。他の実施形態では、磁気センサは、図3Aおよび図3Bで使用される数よりも多いまたは少ないセンサコイルを備えることができる。一実施形態では、磁気センサは、5つのセンサコイルを備えることができる。別の実施形態では、磁気センサが6つのセンサコイルを備えることができる。センサコイルの各々は、図示の実施形態では、センサコイルが互いに対して直交する向きで固定された状態で、磁気センサハウジング305および回路基板310に対して固定される。さらなる実施形態では、センサコイルは、様々な向きで固定することができる。いくつかの実施形態では、センサコイルは、平行、オフセット、または追加の向きを含むことができる。操作中、磁気センサ300は、生成された磁場内に配置され、センサコイルの各々は、磁場の強さおよび向きを示すエネルギを受け取る。1つの具体的な実施形態では、センサコイルの互いに対する位置の知覚された変化を決定するために、受信されたエネルギのベクトル和が計算される。知覚される変化は、磁気センサ近傍の磁場における磁気歪みを示す。医療用磁気位置特定の用途(上記でより詳細に論じたような)において、このような磁気歪みは、例えば、患者の体内のカテーテルの位置を正確に特定するシステムの能力に影響を及ぼす。
【0036】
第1、第2、および第3のセンサコイル315、320、および325からの受信された信号をそれぞれ、磁場における歪みの量を処理および決定するために計算回路に送信する前に、回路基板310内の回路は、例えば、アナログ-デジタル変換、前置増幅、および信号ノイズフィルタリングを含むいくつかの種類の信号処理機能を実施することができる。信号処理の後に、受信された信号は、ボンディングパッド335を介して回路基板310に接続されたケーブル330を介して磁気位置特定システムプロセッサ回路に送信される。さらなる実施形態では、磁気センサは、当業者に公知の無線データ送信プロトコルを用いて、各センサコイルからの受信された信号を磁気位置特定システムのプロセッサ回路に無線送信することができる。
【0037】
図3Cは、ハウジング305、回路基板310、及び図3A及び図3Bに示される他のコンポーネントから離れて分離されたセンサコイルアレイ370(第1、第2、及び第3のセンサコイル315、320、及び325それぞれを含む)の実施形態を示す。図3Cに示すように、センサコイルは、互いに直交して配向され、互いに正確な距離で固定される。上述のように、センサコイルの図示の実施形態は互いに直交して配向されるが、追加の向きが可能である。磁場において磁気センサの操作中、センサコイルアレイの出力は、センサコイルの互いに対する機械的位置および向きに関連するマグニチュード位置および向きを計算するために使用される。
【0038】
図3Dは、センサコイルの互いに対する機械的位置および向きに関連するマグニチュードの位置および向きを計算する1つの方法を示す。
【0039】
ステップ381において、第1の時間において3つのセンサコイルの長手方向軸の中心の間の距離のベクトル和が計算される。ベクトル和は、初期の指標値と見なすこともできる。磁場における歪みに反応して、これらのセンサコイルのうちの1つ(または複数)の知覚される位置は、他のセンサコイルに対してその既知の/固定位置からずれる可能性がある。その結果、対応するベクトル和は、対応して影響を受けることとなる。
【0040】
ステップ383において、第2の時間において3つのセンサコイルの長手方向軸の中心の間の距離の更新されたベクトル和が計算される。更新されたベクトル和は、現在の指標値と見なすこともできる。
【0041】
ステップ385において、初期ベクトル和と更新されたベクトル和との間の変化を決定することができる。
【0042】
ステップ387において、初期ベクトル和と更新されたベクトル和との間の変化は、決定されたしきい値と比較することができる。決定したしきい値は、生成された磁場に対する歪みを示すことができる。この歪みのため、生成された磁場からの読み取り値が信頼できないものとなりうる。
【0043】
ステップ389において、生成された磁場に対する歪みが存在するか否かの決定が行われる。
【0044】
追加の実施形態では、初期の指標値(磁場に歪みがない場合)を確定した後、後続のマグニチュードの位置および向きは、時間的に相関し得る。上述のように、これらの後のマグニチュードの値は、磁場内の局地的な磁気歪みにより、初期の指標値から変動する可能性があり、その結果、センサコイルの互いに対する位置および向きの知覚されるスキューが生じる(たとえ、センサコイルの互いに対する向きおよび位置が固定されているとしても)。医療処置中に、磁場歪みの許容可能なレベルが超えられたときを決定するために、初期の指標値は、後続の指標値と比較することができる。このデルタ値(初期の指標値と後続の指標値との間の値の変化)は、カテーテルの位置特定において歪みに関連するドリフトに関連する。
【0045】
一実施形態では、磁気歪みに対して許容可能なデルタ値は、臨床医(例えば、ソフトしきい値)、および/またはプロセッサ回路(例えば、ハードしきい値)によって決定されることができる。別の実施形態では、磁気歪みに対して許容可能なデルタ値をシステム内に予め設定することができる。さらに他の実施形態では、システムは、臨床医が選択できる、様々な要因に基づく磁気歪みに対する1つまたは複数の許容可能なデルタ値を提案することができる。1つのそのような実施形態では、磁気位置特定システムは、ソフトしきい値を超えることにより、歪みが患者内のカテーテルの知覚される位置に影響を及ぼしていることを示しているが、ディスプレイ上にカテーテルの知覚される位置を引き続き表示することができる。別の実施形態では、指標値のデルタ値がハードしきい値を超えるとき、磁気位置特定システムは、位置情報の知覚された不正確により、新たに計算されたカテーテルの知覚位置をディスプレイに更新しないことができる。この情報は、聴覚、視覚、触覚、または他の感覚フィードバックを使用して臨床医に伝えることができる。いくつかの実施形態では、この操作を磁気モードと呼ぶことができる。磁気モードは、医療デバイスの位置の表示を停止することを含むこと、またはその位置がもはや正確ではないことを示す視覚的インジケータを提供することができる。一部の実施形態では、視覚インジケータは、位置がもはや正確ではないことを示すために、ゴースト像または光る電極を備えることができる。他の実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムが、デルタ値がハードしきい値を超え、磁気位置特定システムがディスプレイを更新することができないことをシステムが検出した場合のみ、位置検出をインピーダンス位置データに戻し、またはインピーダンス位置データに制限することができる。一実施形態では、ハイブリッド磁気及びインピーダンス追跡システムが、磁気歪みがシステムに影響を与えているとシステムが決定するときに、インピーダンス位置検知のみに依存するように医療デバイスの位置検知を自動的に変更することができる。他の実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムは、磁気歪みが存在することをユーザに信号で伝達することができ、ユーザは次に、医療デバイスのインピーダンス位置データを感知するだけで進行するための選択肢を選択することができる。いくつかの実施形態では、この操作をインピーダンスモードと呼ぶことができる。様々な実施形態では、磁気歪みがシステムに影響を及ぼさなくなるまで、インピーダンス位置検出モードが継続することができ、その時点で、システムは、磁気歪みが存在する前と同じように、自動的に切替え戻して磁気追跡システムを使用することができる。他の実施形態では、磁気歪みがシステムに影響を及ぼさなくなるまで、インピーダンス位置検出モードが継続することができ、その時点で、システムは、磁気歪みが存在する前と同じように、磁気追跡システムを使用することに切替え戻すことを希望しているかどうかをユーザに信号で伝達することができる。インピーダンス専用モードへの切り替えが行われない他の実施形態では、計算された指標値がハードしきい値を下回ると、磁気位置特定システムは、患者内のカテーテルの知覚位置でディスプレイを更新することを再開することができる。他の実施形態では、指標値のデルタ値がハードしきい値を超えた場合、システムは、ディスプレイにカテーテルの知覚位置を引き続き表示することができる。様々な実施形態では、システムは、本明細書で説明されるように、これを臨床医に表示することができる。
【0046】
図3Cに示されるように、センサコイルアレイ370の具体的な実験/詳細構成が提示される。第1のセンサコイル315は、第2のセンサコイル320及び第3のセンサコイル325の両方に直交して配向されている。従って、各センサコイルは、3つの次元軸のうちの1つに対して平面的に配向され、そのセンサコイルと実質的に同軸である磁界エネルギを受け取る。図示の実施形態では、第1のコイルの中心点は、第2のセンサコイルの中心点から5.596ミリメートル(mm)離間させることができ、第1と第2のセンサコイルの、および第3と第2のセンサコイルの中心点の間の距離は3.006mmであることができ、第1のセンサコイルに対して、第2と第3のセンサコイルの角度オフセットは22度であり、第2のセンサコイルに対して、第1と第3のセンサコイルの角度オフセットも22度である。他の実施形態では、センサコイルアレイの他の相対的位置および向きを利用することもできる。
【0047】
図3Cに示されるように)センサコイルアレイ370を利用する磁気位置特定システムの操作中、いつ過度に偏ったカテーテル位置データが磁場における磁気歪みにより生じているかを決定するために、感知された磁場の計算されたマグニチュードの値は、センサコイルの固定された間隔に依存する。
【0048】
磁気センサは、本明細書で記載されるように、磁場歪みを検出するためそれ自体を使用することができるが、歪みによって、磁気センサ内のすべてのコイルが、同じ方向に移動するというケースもありうる。その結果、歪みは正しく検出されないこととなる。こういったケースを減らすために、少なくとも1つの磁気センサを少なくとも1つのインピーダンスパッチ上に配置することができる。
【0049】
図4は、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システム401における複数のインピーダンスパッチ上に配置された複数の磁気センサの等角図を示す。図示の実施形態では、第1の磁気センサ403を第1のインピーダンスパッチ405上に配置することができ、第2の磁気センサ407を第2のインピーダンスパッチ409上に配置することができ、第3の磁気センサ411および第4の磁気センサ413を第3のインピーダンスパッチ415上に配置することができる。図示の実施形態では、第3のインピーダンスパッチ415は、基準パッチを備えることができる。さらに、図示されるように、第3のインピーダンスパッチ415は、それに接続された2つの磁気センサを備えることができる。様々な実施形態では、磁気センサは、直交パッチシステム内の異なるパッチ上に配置することができる。一実施形態では、第1の磁気センサをネックパッチ上に配置することができ、第2の磁気センサを右側のパッチ上に配置することができ、第3及び第4の磁気センサを基準電極上に配置することができる。別の実施形態では、第1の磁気センサを胸部パッチ上に配置することができ、第2の磁気センサを背部パッチ上に配置することができ、第3の磁気センサを右のパッチ上に配置することができ、第4の磁気センサを基準電極上に配置することができる。他の実施形態では、追加の配置およびいくつかの磁気センサをインピーダンスセンサ上に配置することができる。インピーダンスパッチは、本出願を通して記載されるように、患者上に配置することができる。
【0050】
図5は、ハイブリッド歪み検出システム501の一実施形態を示す。図示されたシステムは、患者内の医療デバイスの磁気位置特定が役に立つ医療処置中に、患者513に対するインピーダンスパッチ上の磁気センサの配置を示す。図示の実施形態は、前部インピーダンスパッチ503、背部インピーダンスパッチ505、および基準インピーダンスパッチ507の1つの可能な配置を示す。図示された実施形態はさらに、前部インピーダンスパッチ503に接続された第1の磁気センサ519と、背部インピーダンスパッチ505に接続された第2の磁気センサ521と、基準インピーダンスパッチ507に接続された第3の磁気センサ523とを含む。本実施形態では、前部インピーダンスパッチ503は患者513の前部(例えば、患者の胸部)に配置され、背部インピーダンスパッチ505は患者の後部(例えば、患者の背中と手術台517との間)に配置される。インピーダンスシステムはまた、本明細書で記載されるように、さらなる直交配向パッチ(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、第1および第2の磁気センサは、処置が行われている患者の解剖学的構造に、理想的には隣接して(かつ互いに対向して)配置される。図5に示されるように、第1および第2の磁気センサは、心臓内に延在するカテーテル511を介して治療を受けている心臓515に対して互いに対向する。
【0051】
本明細書で記載されるように、患者を取り囲む磁場トランスミッタは、カテーテルの位置を特定するために使用される磁場を放射する。具体的に、カテーテルは、その先端領域において、コイルを含み、コイル近傍の磁場を感知する。次いで、処理回路は、カテーテルの先端で感知された磁場に基づいて、コイルが磁場内のどこに位置されているか、したがってカテーテルの先端がどこに位置しているかを決定することができる。さらに、インピーダンスパッチは、カテーテル上の少なくとも1つの電極の位置を特定するために使用することができる。しかしながら、磁場内への他の鉄物体の入り込みが、磁場内のカテーテルの位置特定に影響を及ぼす磁場内の磁気歪みを作り出す。患者のさらなる移動も、場内のカテーテルの位置特定に影響を及ぼし得る。したがって、第1の磁気センサ519は、患者の前部に近接する磁気歪み(例えば、医療器具および機器)を検出し、第2の磁気センサ521は、患者の後部に近接する磁気歪み(例えば、手術室テーブルに関連する鉄物体、またはその下の磁場における他の物体)を検出する。このような構成では、磁気歪みを認識することができ、カテーテル上の磁気歪みの影響(例えば、カテーテルに近接する磁場が磁気歪みによって過度に影響を受けているかどうか)に対する決定を行うことができる。少なくとも1つの磁気センサがインピーダンスパッチ上に配置されるので、磁場歪みおよび患者の動きに関するさらなる情報を決定することもできる。
【0052】
医療処置中に、複数のインピーダンスパッチおよび複数のセンサコイルを磁場内に配置することができる。各磁場歪みセンサにおける各センサコイルそれぞれは、磁場の強度および向きを示すエネルギを受け取ることができる。直交して配置されたインピーダンスパッチは、少なくとも1つの磁気センサと接続することができ、少なくとも1つの磁気センサは、複数のセンサコイルを含み、複数のセンサコイルは、患者内の医療デバイスに近接する磁気歪みまたは物理的な動きを検出するという目的でハイブリッド位置特定システムによって生成された磁場内に配置することができる。ハイブリッド位置特定システムは、医療デバイスの位置をより正確に決定するために、インピーダンスベース、および磁場ベースの位置特定方法の両方を利用する。磁場歪みセンサそれぞれにおけるセンサコイルのそれぞれは、磁場の強度および向きを示すエネルギを受け取ることができる。インピーダンス位置の変化を観測しない間に、受信されたエネルギの経時的な知覚される変化は、磁気センサ近傍の磁場における磁気歪みを示す。あるいは、インピーダンス位置の変化を観測する間に、受信されたエネルギの経時的な知覚される変化は、インピーダンスパッチおよびそれに取り付けられた磁気センサの物理的な動きを示す。
【0053】
このようなシステムの一例は、Abbott Laboratoriesから市販されているEnSite Precision(商標)マッピングシステムである。EnSite Precision(商標)マッピングシステムは、インピーダンスベース、および磁場ベースの位置特定方法(例えば、ハイブリッドシステム)の両方を利用することができる。インピーダンス測定パッチは、患者に電気的に接続することができる。EnSite Precision(商標)マッピングシステムのいくつかの実装形態では、インピーダンス測定パッチは、患者の胸部、患者の胸部の任意の片側、および患者の脚のうちの少なくとも1つに配置することができる。インピーダンス測定パッチによって検出された変化するインピーダンス値に基づいて、医療デバイスのインピーダンスベースの位置を決定することができる。
【0054】
一実施形態では、センサコイルの互いに対する位置における知覚された変化(および/または磁場歪みセンサの互いに対する位置における知覚された変化)を決定するために、受信されたエネルギのベクトル和が計算される。知覚された変化は、インピーダンスパッチおよびセンサコイルに隣接する磁場における磁気歪みを示す。
【0055】
磁場における磁気センサの操作中に、各磁気歪みセンサの出力は、磁気歪みセンサの互いに対する機械的位置および向きに関連するマグニチュードの位置および向きを計算するために、使用することができる。一つの具体的な実施形態では、例えば、距離のベクトル和は、磁気歪みセンサの間で計算される。磁場における歪みに反応して、磁気歪みセンサのうちの1つ(または複数)の知覚される位置は、他の磁気歪みセンサに対してその既知の/固定位置からずれる可能性がある。その結果、対応するベクトル和は、それに応じた影響を受ける。決定されたしきい値を超えた初期の指標値からのベクトル和における変化は、生成された磁場に対する歪みを示す。初期の指標値(磁場において歪みがない場合の)を確定した後、後続のマグニチュードの位置および向きは、時間的に相関することができる。これらの後のマグニチュードの値は、磁場内の局地的な磁気歪みにより、初期の指標値から変動する可能性があり、その結果、磁気歪みセンサの互いに対する位置および向きの誤った報告が生じる(たとえ、磁気歪みセンサの向きおよび位置が互いに対して固定されているとしても)。医療処置中に、いつ磁場歪みの許容可能なレベルが超えたのかを決定するために、初期の指標値は、後続の指標値と比較することができる。デルタ値(初期の指標値と後続の指標値との間の値の変化)は、カテーテルの位置特定における歪みに関連するドリフトに関連する。
【0056】
さらに、インピーダンスパッチの操作中に、少なくとも1つのインピーダンス位置の出力は、インピーダンス位置の動きを計算するために使用することができる。インピーダンスパッチの動きに反応して、インピーダンスデバイスのうちの1つ(または複数)の知覚される位置が変わる可能性がある。その結果、この位置における変化のベクトルが作成されうる。決定されたしきい値を超えたベクトルにおける変化は、パッチの物理的な動きを示すことができる。一実施形態では、インピーダンスの動きに対する許容可能なベクトル値は、臨床医(例えば、ソフトしきい値)および/またはプロセッサ回路(例えば、ハードしきい値)によって決定することができる。別の実施形態では、インピーダンスの動きに対する許容可能なベクトル値は、システム内に予め設定することができる。さらに他の実施形態では、システムは、臨床医が選択できる、様々な要因に基づくインピーダンスの動きに対する1つまたは複数の許容可能なベクトル値を提案することができる。
【0057】
図6A図6Cは、異なる状況下で起こり得る動きの検出を示す。図6Aは、磁場歪みが存在する場合に生じるであろう動きを示す。図6Aは、インピーダンスパッチ位置603、第1の磁気センサ位置605、第2の磁気センサ位置607、および磁気センサベクトル609を備える。システムは、少なくとも1つの磁気センサに対する位置における変化を検出し、パッチインピーダンスにおける変化を検出しない場合、磁場歪みを見つけることができる。図6Bは、患者の動きが存在する場合に生じるであろう動きを示す。図6Bは、第1のインピーダンスパッチ位置621と、第2のインピーダンスパッチ位置623と、第1の磁気センサ位置625と、第2の磁気センサ位置627と、磁気センサベクトル631と、インピーダンスパッチベクトル629とを備える。システムが、少なくとも1つの磁気センサに対する位置における変化を検出し、インピーダンスにおける変化も検出する場合、次にシステムは、患者またはパッチおよび磁気センサの他の物理的な動きが生じたと決定することができる。図6Cは、第1のインピーダンスパッチ位置641と、第1の磁気センサ位置643と、第1のカテーテル位置645と、第1のカテーテル先端電極位置649と、第1のカテーテルリング電極位置647と、第2の磁気センサ位置651と、第2のカテーテル位置653と、第2のカテーテル先端電極位置657と、第2のカテーテルリング電極位置655と、磁気センサベクトル659と、カテーテルベクトル661とを備える。システムが、少なくとも1つの磁気センサに対する位置における変化を検出し、カテーテルベクトルにおける変化も検出する場合、次にシステムは、患者またはカテーテル電極および磁気センサの他の物理的な動きが生じたと決定することができる。インピーダンスパッチベクトルおよびカテーテルベクトルの両方は、インピーダンス読み取り値における変化によって影響を受ける可能性がある。これらのベクトルは、インピーダンスベクトルと呼ぶこともできる。
【0058】
一実施形態では、カテーテルベクトルは、単一の電極において観測される動きに関連するベクトルを備えることができる。別の実施形態では、カテーテルベクトルは、カテーテル上に存在する複数の電極の動きに関連するベクトルを備えることができる。さらに別の実施形態では、カテーテルベクトルは、複数のカテーテル上の複数の電極から観測される動きに関連するベクトルを備えることができる。一実施形態では、カテーテルは、基準カテーテルを備えることができる。基準カテーテルは、処置中に外れる可能性が低い心臓内の領域において、医師によって配置することができる。一実施形態では、基準カテーテルは、冠状静脈洞内に配置することができる。他の実施形態では、基準カテーテルは、患者の心臓または他の器官の中またはその周囲の他の位置内に配置することができる。別の実施形態では、カテーテルは、心房、心室、または心臓の他の部分において、カテーテルを備えることができる。いくつかの実施形態では、カテーテルは、マッピングカテーテル、またはアブレーションカテーテルを備えることができる。
【0059】
マッピングシステムは、上記の情報を使用して、システムに存在するエラーのタイプを決定することができる。上述のように、システムが、磁気センサの検出された位置の位置における変化および/または動きを記録するが、インピーダンスシステムにおける位置における変化を記録しない場合、次に磁気歪みが存在すると決定される。あるいは、システムが、磁気センサの検出された位置の位置における変化および/または動きを記録し、また、インピーダンスシステムにおいて位置における変化を記録する場合、次に物理的な動きが存在すると決定される。システム内に存在する歪みおよび/または動きの量、および動きのタイプを特定することによって、システムは、磁気歪みまたは物理的移動が存在するか否かを決定することができる。上述のように、一実施形態では、システムは、システムによって知覚される動きの量が検出するほど大きいかどうかを決定するためにしきい値を使用することができる。一実施形態では、磁気歪みまたは物理的な動きが検出された場合、システムは、医師または医者にこのエラー状態を警告することができる。この情報は、聴覚、視覚、触覚、または他の感覚フィードバックの使用により、臨床医に伝えることができる。別の実施形態では、システムは、医師に通知することができ、医師は、動きを物理的に修正することができる。別の実施形態では、システムが、医師に通知することができ、システムは、システム内で発生した任意のシフトまたは動きを、アルゴリズムを用いて修正することができる。
【0060】
本明細書に記載されるマッピングシステムは、ミリ秒の時間長で発生する動きを検出することができる。一実施形態では、マッピングシステムは、これらのミリ秒の時間長における値に対する変化をレビューし、動きおよび/または歪みが生じた場合に医師に警告することができる。他の実施形態では、マッピングシステムは、単一の秒から複数秒の時間長上の変化を探すことができる。さらに、マッピングシステムは、患者の呼吸のなどの正常なリズミカルな動きを検出してもよい。いくつかの実施形態では、患者の呼吸中の位置の動きの量は、しきい値よりも大きいことができる。いくつかの実施形態では、システムは、この呼吸動きを補償するように構成することができる。一実施形態では、システムは、呼吸中の動きを補償するために補償アルゴリズムを使用することができる。
【0061】
他の実施形態では、システムは、呼吸などの周期的な動きを無視し、代わりに、永久的な変化のために、データをレビューすることができる。一実施形態では、システムは、永久的な変化のために、1秒未満の時間周期をレビューすることができる。別の実施形態では、システムは、永久的な変化のために、1~5秒の時間周期をレビューすることができる。さらに別の実施形態では、システムは、永久的な変化のために、1~10秒の時間周期をレビューすることができる。
【0062】
それに応答して、マッピングシステムは、システムの磁場ベースの部分からの位置データを無視し、または歪みを補正することができる。例えば、1つまたは複数の磁気歪みセンサからのデータは、実際の位置(システム内の磁気歪みセンサの既知の/固定位置に基づく)と知覚位置(磁気歪みセンサで受信された磁場および後処理に基づいて判定されたそれら)との間の差異を決定するために、使用することができる。決定された差異は、磁場への鉄/金属物体の入り込み、またはセンサの物理的な動きにより、磁場全体にわたる磁気歪み又は物理的な動きを示すことができる。各磁気歪みセンサ位置の差異に基づいて、医療デバイスが経験している、磁気で位置特定されている磁気歪みまたは動きを含む、磁場内のあらゆる位置における歪みまたは動きを補正するために変換を計算することができる。他の実施形態では、ハイブリッド磁気及びインピーダンス追跡システムが、磁気歪みがシステムに影響を与えているとシステムが決定するときに、インピーダンス位置検知のみに依存するように医療デバイスの位置検知を自動的に変更することができる。他の実施形態では、ハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムは、磁気歪みが存在することをユーザに信号で伝達することができ、ユーザは次に、医療デバイスのインピーダンス位置データを感知するだけで進行するための選択肢を選択することができる。一部の実施形態では、この操作をインピーダンスモードと呼ぶことができる。様々な実施形態では、磁気歪みがシステムに影響を及ぼさなくなるまで、インピーダンス位置検出モードが継続することができ、その時点で、システムは、磁気歪みが存在する前と同じように、自動的に切替え戻して磁気追跡システムを使用することができる。他の実施形態では、磁気歪みがシステムに影響を及ぼさなくなるまで、インピーダンス位置検出モードが継続することができ、その時点で、システムは、磁気歪みが存在する前と同じように、磁気追跡システムを使用することに切替え戻すことを希望しているかどうかをユーザに信号で伝達することができる。
【0063】
本明細書に記載された実施形態では、磁気歪みセンサは、医療デバイスの位置特定が行われる患者の身体の一部を概して中心とすることができる。例えば、心臓関連手術において、磁気歪みセンサは、患者の心臓に近接して配置され、そこの医療デバイスに影響を及ぼす磁気歪みの検出を改善することができる。
【0064】
図面に示された特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれるわけではなく、1つの実施形態の特徴は、本明細書に明示的に記載されていなくても、当業者が理解するように、他の実施形態とともに使用することができることに留意されたい。本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないように、周知のコンポーネントおよび処理技術の説明を省略することができる。本明細書で使用された例は単に、本開示を実施することができる方法の理解を容易にし、当業者が本開示の実施形態を実施することをより可能にすることを意図する。したがって、本明細書の例および実施形態は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0065】
本開示で使用される用語「含む」、「備える」、およびその変形は、明示的に特定された場合を除き、「含むが、それに限定されない」を意味する。
【0066】
本明細書で使用される用語「a」、「an」、および「the」は、明示的に特定された場合を除き、「1つまたは複数」を意味する。
【0067】
プロセスステップ、方法ステップ、アルゴリズムなどは、連続する順序で説明することができるが、そのようなプロセス、方法、およびアルゴリズムは、代替の順序で働くように構成することができる。言い換えれば、記述されることができる任意のシーケンスまたはステップの順序は、必ずしもステップがその順序で実行されるべきという要件を示すわけではない。本明細書で説明されるプロセス、方法、またはアルゴリズムのステップを任意の実証的な順序で実行することができる。さらに、いくつかのステップを同時に実行することができる。
【0068】
単一のデバイスまたは物体が本明細書に記載される場合、単一のデバイスまたは物体の代わりに、2つ以上のデバイスまたは物体を使用することができることは、容易に明らかとなるだろう。同様に、2つ以上のデバイスまたは物体が本明細書に記載される場合、2つ以上のデバイスまたは物体の代わりに、単一のデバイスまたは物体を使用することができることは、容易に明らかとなるだろう。デバイスの機能または特徴は、そのような機能または特徴を有するものとして明確的に説明されなく1つまたは複数の他のデバイスによって代替的に実施することができる。
【0069】
様々な装置、システム、および/または方法の様々な実施形態が、本明細書で説明される。本明細書に記載され、添付の図面に示されるように、実施形態の全体的な構造、機能、製造、および使用への完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、そのような特定の詳細がなくとも、実施形態を実施することができることは、当業者に理解されるのであろう。他の例において、周知の動作、コンポーネント、および要素は、本明細書で説明された実施形態を不明瞭にしないように、詳細に説明されていない。当業者であれば、本明細書に記載され、または図示された実施形態が、非限定的な例であることを理解し、したがって、本明細書に開示された特定の構造および機能の詳細は、代表的なものとすることができ、必ずしも実施形態の範囲を限定するわけではなく、添付の特許請求のみに定義される範囲を限定するわけではないことを理解することができる。
【0070】
本明細書全体を通して、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、または「実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構成、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、「様々な実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「一実施形態において」、または「実施形態において」などの語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。したがって、1つの実施形態に関連して図示され、または説明された特定の特徴、構造、または特性は、そのような組合せが非論理的または非機能的ではないことを前提として、限定なしに、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造、または特性と、全体的または部分的に組み合わせることができる。
【0071】
用語「近位」および「遠位」は、患者を治療するために使用される器具の一端を操作する臨床医を基準として、本明細書全体にわたって使用されることができることを理解されたい。用語「近位」は、器具の、臨床医に最も近い部分を指し、用語「遠位」は、臨床医から最も遠く位置する部分を指す。簡潔さおよび明瞭さのために、「垂直」、「水平」、「上」、および「下」などの空間用語は、図示された実施形態に関して本明細書で使用することができることをさらに理解されたい。しかし、外科用器具は、多くの向きおよび位置で使用することができ、これらの用語は、限定的かつ絶対的であることを意図されていない。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムであって、
前記患者の身体の外面に接続されるように構成される第1の駆動パッチおよび第2の駆動パッチを備え、前記第1の駆動パッチおよび前記第2の駆動パッチは、前記医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を前記身体内に生成するように構成されている、インピーダンス位置特定システムと、
磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、
前記第1の駆動パッチおよび前記第2の駆動パッチのうち1つに接続され、前記磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、
前記インピーダンス位置特定システムからの駆動パッチ位置データおよび前記磁気位置特定システムからの磁気センサ位置データを受信するように構成される電子制御ユニットと、
を備えており、
前記電子制御回路は、前記磁気センサの位置変化を検出し、前記駆動パッチ位置データおよび前記磁気センサ位置データを用いて、前記磁気センサの検出された前記位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成される、
システム。
(項目2)
前記磁気センサが、基準信号を出力することをさらに備えており、
前記基準信号は、座標系の原点を確立する、
項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記磁気センサが、互いに対して固定された距離および向きで位置する複数のセンサコイルを備えており、
各前記センサコイルが、前記センサコイルの前記向きと同一平面上にある前記磁場を感知し、感知された磁場を示す電気信号を出力するように構成され、配置されている、
項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、第1の磁気センサの位置、第2の磁気センサの位置、および磁場歪みセンサベクトルを決定する、
項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、インピーダンスベクトルを決定する、
項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記電子制御ユニットが、磁場歪みが生じたかどうかを決定するときに、元の磁気センサ位置、測定された磁気センサの位置、元の駆動パッチの位置、および測定された駆動パッチの位置を決定する、
項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記電子制御ユニットが、前記磁気センサの物理的な動きが生じたかどうかを決定するときに、元の磁気センサの位置、測定されたセンサの位置、元の駆動パッチの位置、および測定された駆動パッチの位置を決定する、
項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記磁気センサが、第1の磁気センサを備えており、
前記システムが、第3の駆動パッチと、前記第3の駆動パッチに接続される第2の磁気センサと、をさらに備える、
項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記インピーダンス位置特定システムが、前記医療デバイスの測定された位置を決定するように構成されており、
前記電子制御ユニットが、前記磁場歪みまたは前記磁気センサの前記物理的な動きのため、前記医療デバイスの測定された前記位置を補正するように構成される、
項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記電子制御ユニットが、磁場歪みが検出されたとき、前記磁気位置特定システムからの情報を無視しながら、前記医療デバイス上の前記電極の位置を出力するように構成される、
項目1に記載のシステム。
(項目11)
患者内にて医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するためのシステムであって、
磁場を生成するように構成される磁気位置特定システムと、
第1のセンサコイルと、前記第1のセンサコイルに直交して配向される第2のセンサコイルと、前記第1のセンサコイルおよび前記第2のセンサコイルに直交して配向される第3のセンサコイルと、を備え、前記磁気位置特定システムから信号を受信するように構成される磁気センサと、
前記患者の身体内に、医療デバイス上の電極を位置特定するための電場を生成するように構成される複数のインピーダンスパッチと、
前記磁気センサおよび前記複数のインピーダンスパッチから情報を受信するように構成される電子制御ユニットと、
を備えており、
前記電子制御ユニットは、磁気センサベクトルおよびインピーダンスベクトルを決定するように構成されており、
前記電子制御回路が、前記磁気センサの位置変化を検出し、前記磁気センサベクトルおよび前記インピーダンスベクトルを用いて、検出された前記位置変化が、磁場歪みによって引き起こされるのか、または前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するように構成されており、
前記電子制御ユニットが、補正アルゴリズムを開始するように構成されており、
前記補正アルゴリズムは、前記磁場歪みに基づく、または前記磁気センサの前記物理的な動きによる、前記医療デバイスの位置における変化を補正するように構成されている、
システム。
(項目12)
前記第1のセンサコイル、前記第2のセンサコイル、および前記第3のセンサコイルが、エネルギを受信するように構成および配置されており、
前記エネルギが、磁場強度および前記受信している前記センサコイルと実質的に同軸である磁場向きを示す、
項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記磁気センサが、前記複数のインピーダンスパッチのうちの1つに接続される、
項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記電子制御ユニットが、磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きのしきい値が生じたときに、通知を送出するように構成される、
項目11に記載のシステム。
(項目15)
患者内において医療デバイスをナビゲートするためのハイブリッド磁気およびインピーダンス追跡システムにおける磁場歪みと物理的な動きとを区別するための方法であって、
第1の時間に磁気センサ内の複数のセンサコイルの各々によって感知された磁場を示す1つまたは複数の信号の第1のセットを前記磁気センサから受信するステップと、
座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第1のセットをインピーダンスセンサから受信するステップと、
第2の時間に各前記センサコイルに感知された前記磁場を示す1つまたは複数の信号の第2のセットを前記磁気センサから受信するステップと、
前記座標系内の位置を示す1つまたは複数の信号の第2のセットを前記インピーダンスセンサから受信するステップと、
磁気センサベクトルを決定するステップと、
インピーダンスベクトルを決定するステップと、
前記磁気センサの位置変化を検出するステップと、
前記磁気センサの検出された前記位置変化が、磁場歪みよって引き起こされるのか、または発生した前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされるのかを決定するために、前記磁気センサベクトルを第1のしきい値と比較し、および前記インピーダンスベクトルを第2のしきい値と比較するステップと、
を備えており、
前記磁気センサベクトルが前記第1のしきい値を超え、かつ、前記インピーダンスベクトルが前記第2のしきい値を下回る場合、検出された前記位置変化は、磁場歪みによって引き起こされており、
前記磁気センサベクトルが前記第1のしきい値を超え、かつ、前記インピーダンスベクトルも前記第2のしきい値を超えた場合、検出された前記位置変化は、前記磁気センサの物理的な動きによって引き起こされている、
方法。
(項目16)
磁場歪みまたは前記磁気センサの物理的な動きが生じたときに、医師に通知するステップをさらに含む、
項目15に記載の方法。
(項目17)
前記インピーダンスセンサが、パッチを備える、
項目15に記載の方法。
(項目18)
前記磁気センサが前記インピーダンスセンサに接続される、
項目15に記載の方法。
(項目19)
前記インピーダンスセンサが、医療デバイス上の電極を備える、
項目15に記載の方法。
(項目20)
補正アルゴリズムを実行するステップをさらに備えており、
前記補正アルゴリズムが、前記磁場歪みに基づく、または前記磁気センサの前記物理的な動きによる、前記医療デバイスの位置における変化を補正するように構成される、
項目19に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C