(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤としての5-(4-アミノピロロ[2,1-F][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6558 20060101AFI20240208BHJP
A61K 31/688 20060101ALI20240208BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240208BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240208BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240208BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
C07F9/6558 CSP
A61K31/688 ZNA
A61P11/00
A61P11/06
A61P31/14
A61P31/20
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022549448
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 US2021018415
(87)【国際公開番号】W WO2021168008
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ビョン-クウォン
(72)【発明者】
【氏名】ドーフラー, エドワード
(72)【発明者】
【氏名】シーゲル, ダスティン エス.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス, アンドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイラ, ティアゴ
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533903(JP,A)
【文献】特表2017-502925(JP,A)
【文献】国際公開第2016/069827(WO,A1)
【文献】特表2018-531227(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
A61K 31/00
A61P 11/00
A61P 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化43】
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
治療有効量の請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む、医薬製剤。
【請求項3】
Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項4】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項7】
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項9】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項16】
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項21】
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う
ための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項23】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項30】
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
Pneumoviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項32】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
Picornaviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項35】
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
Flaviviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、請求項
36に記載の使用。
【請求項39】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、請求項36に記載の使用。
【請求項40】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、請求項36に記載の使用。
【請求項41】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、請求項36に記載の使用。
【請求項42】
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、請求項36に記載の使用。
【請求項43】
Filoviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項44】
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含み、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、組成物。
【請求項46】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための組成物であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含み、前記呼吸器状態が、喘息である、組成物。
【請求項47】
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、請求項45又は46に記載の組成物。
【請求項48】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とし、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、方法。
【請求項49】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とし、前記呼吸器状態が、喘息である、方法。
【請求項50】
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化のヒトにおける治療又は予防のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、使用。
【請求項52】
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化のヒトにおける治療又は予防のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用であて、
前記呼吸器状態が、喘息である、使用。
【請求項53】
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、請求項51又は52に記載の使用。
【請求項54】
式I-6の化合物を作製する方法であって、
【化47】
(i)式I-7の化合物:
【化48】
及び
(ii)式I-5の化合物:
【化49】
を、NdCl
3及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させることを含み、式中、Rが、ヒドロキシル保護基である、方法。
【請求項55】
Rが、ベンジル基である、請求項5
4に記載の方法。
【請求項56】
Rが、シリル保護基である、請求項5
4に記載の方法。
【請求項57】
Rが、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)である、請求項
56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月18日に出願された米国特許仮出願第62/977,969号に対する優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(0001.1)
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年2月17日に作成された当該ASCIIコピーは、1307-WO-PCT_SL.txtと名付けられ、1,537バイトのサイズである。
【背景技術】
【0002】
Pneumoviridaeウイルスは、多くの一般的なヒト及び動物疾患に関与するマイナスセンス一本鎖RNAウイルスである。Pneumoviridae科のウイルスは、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(human respiratory syncytial virus、HRSV)及びヒトmetapneumovirusを含む。ほとんど全ての子供は、2歳の誕生日までにHRSV感染症を有するであろう。HRSVは、乳児期及び小児期における下気道感染症の主な原因であり、感染者の0.5%~2%が入院を必要とする。
【0003】
HRSV感染症を防ぐ現在利用可能なワクチンはない。モノクローナル抗体パリビズマブは、免疫予防に利用可能であるが、その使用は、高リスクの乳児、例えば、早産児又は先天性の心臓疾患若しくは肺疾患のいずれかを有する乳児に制限され、一般的な使用のための費用は、法外に高いことが多い。更に、ヌクレオシド類似体リバビリンは、HRSV感染症を治療するために唯一の抗ウイルス剤として承認されているが、有効性が限られている。したがって、抗Pneumoviridae治療薬が必要とされている。
【0004】
慢性心臓、肺疾患、又は免疫抑制されるものを有する高齢者及び成人もまた、重度HRSV疾患を発症するリスクが高い(http://www.cdc.gov/rsv/index.html)。特に、慢性閉塞性肺障害(chronic obstructive pulmonary disorder、COPD)などの慢性呼吸器疾患を有する患者は、急性呼吸器悪化を発症するリスクが高い。急性呼吸器悪化は、罹患率、死亡率、及びCOPD患者の生活の質の低下の主な原因である(Frickmann,Eur.J.Microbiol.Immun.2012 Sep.2(3):176-185)。
【0005】
COPD患者の呼吸器悪化の約半分~3分の2は、ウイルス感染症によるものである。そのような呼吸器悪化に関与するいくつかの一般的なウイルス病原体には、HRSV、ヒトmetapneumovirus(human metapneumovirus、HMPV)、及びヒトライノウイルス(human rhinovirus、HRV)が含まれるが、これらに限定されない。感染性悪化を有するCOPD患者は、一般に、より長い入院期間を経験し、非感染性悪化を有する患者よりも重度の肺機能障害に苦しむ(Frickmann,Eur.J.Microbiol.Immun.2012 Sep.2(3):176-185)。
有効であり、許容可能な毒性プロファイルを有する、HRSV感染症などのPneumoviridaeウイルス感染症の治療に有用な新しい抗ウイルス剤への必要性が依然としてある。
2015年5月14日に公開された国際公開第2015/069939号は、Pneumovirinaeウイルス感染症の治療に有用な化合物を開示している。国際公開第2015/069939号は、とりわけ、以下の式の化合物、又はその薬学的に許容される塩に関し、
【化1】
式中、
R
1が、H又はFであり、
R
2が、H又はFであり、
R
3が、OH又はFであり、
R
4が、CN、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4アルケニル、C
2~C
4アルキニル、C
3~C
4シクロアルキル、アジド、ハロゲン、又はC
1~C
2ハロアルキルであり、
R
6が、OHであり、
R
5が、H、並びに
【化2】
の群から選択され、
式中、
n’が、1、2、3、及び4から選択され、
R
8が、C
1~C
8アルキル、-O-C
1~C
8アルキル、ベンジル、-O-ベンジル、-CH
2-C
3~C
6シクロアルキル、-O-CH
2-C
3~C
6シクロアルキル、及びCF
3から選択され、
R
9が、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、
【化3】
から選択され、
R
10が、H及びCH
3から選択され、
R
11が、H又はC
1~C
6アルキルから選択され、
R
12が、H、C
1~C
8アルキル、ベンジル、C
3~C
6シクロアルキル、及び-CH
2-C
3~C
6シクロアルキルから選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Frickmann,Eur.J.Microbiol.Immun.2012 Sep.2(3):176-185
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本開示は、式Iの化合物、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、Picornaviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。
【0012】
別の実施形態では、本開示は、Flaviviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、Filoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。
【0014】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Picornaviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Flaviviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Filoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるPneumoviridaeウイルス感染症の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるPicornaviridaeウイルス感染症の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるFlaviviridaeウイルス感染症の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるFiloviridaeウイルス感染症の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本開示は、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本開示は、Picornaviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本開示は、Flaviviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、Filoviridaeウイルス感染症の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含み、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0027】
別の実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含み、呼吸器状態は、喘息である。
【0028】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0029】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供し、呼吸器状態は、喘息である。
【0030】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0031】
別の実施形態では、本開示は、ヒトにおけるウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供し、呼吸器状態は、喘息である。
【0032】
別の実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0033】
別の実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、呼吸器状態は、喘息である。
【0034】
別の実施形態では、本開示は、医療療法で使用するための本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0035】
別の実施形態では、本開示は、式I-11の化合物を作製する方法を提供し、
【化5】
この方法は、
(i)式I-7の化合物:
【化6】
及び
(ii)式I-12の化合物:
【化7】
を、NdCl
3及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させることを含み、式中、Rが、ヒドロキシル保護基である。いくつかの実施形態では、Rは、ベンジル基である。いくつかの実施形態では、Rは、シリル保護基である。いくつかの実施形態では、Rは、tert-ブチルジメチルシリル(tert-butyldimethylsilyl、TBS)基である。
【0036】
別の実施形態では、本開示は、式I-6の化合物を作製する方法を提供し、
【化8】
この方法は、
(i)式I-7の化合物:
【化9】
及び
(ii)式I-5の化合物:
【化10】
を、NdCl
3及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させることを含み、式中、Rが、ヒドロキシル保護基である。いくつかの実施形態では、Rは、ベンジル基である。いくつかの実施形態では、Rは、シリル保護基である。いくつかの実施形態では、Rは、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】式I及び6の化合物を含む3ドナーにおけるNHBEのインビトロでの細胞内三リン酸塩形成の測定値を示す。
【0038】
【
図2】式Iの化合物並びに化合物2及び6を含むPBMCにおけるインビトロでの細胞内三リン酸塩形成の測定値を示す。
【0039】
【
図3】式Iの化合物及び化合物6についてのカニクイザル薬物動態データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の説明は、本開示が、特許請求される主題の例示として考慮されるべきであり、添付の特許請求の範囲を、例示される特定の実施形態に限定することを意図したものではない、との理解のもとに行われる。本開示全体を通して使用される見出しは便宜上のものであり、決して特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。いずれかの見出しの下に例示される実施形態を、他のいずれかの見出しの下で例示される実施形態と組み合わせることができる。
【0041】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
I.概論
【0042】
本開示は、Pneumoviridaeウイルス感染症などのウイルス感染症、ウイルス感染症、並びにPicornaviridae、Flaviviridae、Filoviridae、及び他のウイルス感染症を含むが、これらに限定されない他のウイルス感染症の治療のための2’,3’-ヒドロキシ-4’-シアノヌクレオシド類似体を提供する。
II.定義
【0043】
「本開示の化合物」は、式Iの化合物を指す。
【0044】
「薬学的有効量」は、所望の治療的又は薬学的結果を提供する、本開示の化合物の製剤又はその組み合わせにおける量を指す。
【0045】
「薬学的に許容される賦形剤」には、ヒト又は家畜における使用が許容されるものとして米国食品医薬品局によって承認されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、又は乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用する場合、「治療」又は「治療する」又は「治療すること」とは、有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを指す。本開示の目的のために、有益な又は所望の結果としては、症状の緩和及び/又は症状の程度の減少、及び/又は疾患若しくは状態と関連する症状の悪化の予防が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、「治療」又は「治療する」は、以下のa)疾患若しくは状態を阻害すること(例えば、疾患若しくは状態から生じる1つ以上の症状を減少させること、及び/又は疾患若しくは状態の程度を減少させること)、b)疾患又は状態と関連する1つ以上の症状の発症を遅延又は停止すること(例えば、疾患又は状態を安定化すること、疾患又は状態の悪化又は進行を遅延すること)、及びc)疾患又は病態を緩和すること、例えば、臨床症状を退縮させること、疾患状態を改善すること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を高めること、及び/又は生存期間を延長することのうちの1つ以上を含む。
【0047】
「予防」は、ウイルス感染症に罹患している患者における臨床疾患の進行を予防又は遅延させることを指す。
【0048】
「呼吸器状態」は、ウイルス感染症、アレルギー性鼻炎、鼻血症、鼻漏、乳頭鼻炎、経鼻性炎症、全てのタイプの喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)、慢性若しくは急性気管支狭窄、慢性気管支炎、小気道閉塞、肺気腫、慢性好酸球性肺炎、成人呼吸困難症候群、他の薬物療法に起因する気道過敏性の悪化、肺血管疾患(肺動脈高血圧症を含む)、急性肺損傷症、気管支拡張症、副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、特発性肺線維症、又はアトピー性皮膚炎、特に喘息又はアレルギー性鼻炎又はアトピー性皮膚炎又はアレルギー性結膜炎によって引き起こされる呼吸器感染症などの疾患又は状態を指す。
【0049】
「呼吸器状態の悪化」は、ウイルス感染症によって誘発される悪化を指す。代表的なウイルス感染症には、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus、RSV)、ライノウイルス、及びmetapneumovirusが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」は、疾患を治療するために対象に投与された場合、疾患のそのような治療を行うのに十分な化合物の量を含む、所望の生物学的又は医学的応答を誘発するのに有効な量を指す。有効量は、化合物、疾患、及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに応じて変動する。有効量は、ある範囲の量を含むことができる。当該技術分野において理解されるように、有効量は、1回以上の用量であってもよく、すなわち、所望の治療エンドポイントを達成するために単回用量又は複数回用量が必要とされてもよい。有効量は、1つ以上の治療剤を投与する文脈において考えることができ、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併用して、望ましい若しくは有益な結果が達成され得るか、又は達成される場合に、有効量で投与されるとみなされ得る。任意の共投与される化合物の好適な用量は、任意選択的に、化合物の併用作用(例えば、相加効果又は相乗効果)によって低下され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「共投与」は、単位投与量の1つ以上の追加の治療剤の投与前又は投与後の、単位投与量の本明細書に開示される化合物の投与を指し、例えば、1つ以上の追加の治療剤の投与の数秒、数分、又は数時間以内の、本明細書に開示される化合物の投与を指す。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の化合物の単位用量を最初に投与し、続いて数秒又は数分以内に、1つ以上の追加の治療剤の単位用量を投与する。代替的に、他の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤の単位用量を最初に投与し、続いて数秒又は数分以内に、本開示の化合物の単位用量を投与する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物の単位用量を最初に投与し、続いて数時間(例えば、1~12時間)後に、1つ以上の追加治療剤の単位用量を投与する。他の実施形態では、1つ以上の追加治療剤の単位用量を最初に投与し、続いて、数時間(例えば、1~12時間)後に、本開示の化合物の単位用量を投与する。本明細書に開示される化合物と1つ以上の追加の治療剤との共投与は、概して、本明細書に開示される化合物と1つ以上の追加の治療剤との、治療有効量の各剤が患者の体内に存在するような、同時投与又は連続投与を指す。
【0052】
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、及びプロドラッグも提供される。「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」は、獣医学的又はヒトの薬学的使用に好適な医薬組成物を調製するのに有用である化合物、塩、組成物、剤形、及び他の物質を指す。
【0053】
本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩として、又は適切な場合には、遊離塩基として調製及び/又は製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、遊離塩基の所望の薬理学的活性を有する化合物の遊離塩基形態の非毒性塩である。これらの塩は、無機又は有機の酸又は塩基に由来し得る。例えば、塩基性窒素を含有する化合物は、化合物を無機酸又は有機酸と接触させることによって、薬学的に許容される塩として調製され得る。薬学的に許容される塩の非限定的な例には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、二硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素、リン酸二水素、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、オキサル酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、及びマンデル酸塩が含まれる。他の好適な薬学的に許容される塩の一覧は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Wiliams and Wilkins,Philadelphia,Pa.,2006に見出される。
【0054】
本明細書に開示される化合物の「薬学的に許容される塩」の例にはまた、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びNX4
+(Xは、C1~C4アルキル)などの適切な塩基に由来する塩も含まれる。ナトリウム塩又はカリウム塩などの塩基付加塩も含まれる。
【0055】
本明細書に記載の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩、異性体、若しくは混合物もまた提供され、ここで、炭素原子に結合した1~n個の水素原子は、重水素原子又はDによって置き換えられ得、nは、分子中の水素原子の数である。当該技術分野で既知であるように、重水素原子は、水素原子の非放射性同位体である。そのような化合物は、代謝に対する耐性を高めることができ、したがって、哺乳動物に投与される場合、本明細書に記載の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩、異性体、若しくは混合物の半減期を増加させるのに有用であり得る。例えば、Foster,「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」,Trends Pharmacol.Sci.,5(12):524-527(1984)を参照されたい。そのような化合物は、当該技術分野で周知の手段によって、例えば、1個以上の水素原子が重水素によって置き換えられている出発物質を用いることによって合成される。
【0056】
開示された化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、及び125Iが含まれる。陽電子放出同位体での置換、例えば、11C、18F、15O及び13Nは、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィ(Positron Emission Topography、PET)研究において有用であり得る。式Iの同位体標識化合物は、概して、以前に用いられた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、当業者に既知の従来技法によって、又は後述の実施例に記載されるものと類似したプロセスによって調製され得る。
【0057】
本明細書に開示される実施形態の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩は、1つ以上の不斉中心、例えば、キラル炭素及びリン原子を含み得、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-若しくは(S)-として、又はアミノ酸については(D)-若しくは(L)-として定義され得るエナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の立体異性体形態を生じさせ得る。本開示は、全てのそのような可能な異性体、並びにそれらのラセミ体形態及び光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学活性な(+)及び(-)、(R)-及び(S)-、又は(D)-及び(L)-異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を使用して調製され得るか、又は従来の技術、例えば、クロマトグラフィ及び分別結晶化を使用して分割され得る。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、あるいは例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィ(high pressure liquid chromatography、HPLC)を使用してラセミ化合物(又は塩若しくは誘導体のラセミ化合物)の分割を含む。化合物がそれらのキラル形態で表される場合、実施形態は、特定のジアステレオマー的又はエナンチオマー的に濃縮された形態を包含するが、これらに限定されないことが理解される。キラリティが特定されていないが存在する場合、実施形態は、特定のジアステレオマー的若しくはエナンチオマー的に濃縮された形態、又はそのような化合物のラセミ若しくはスカレミック混合物のうちのいずれかを対象とすることが理解される。本明細書で使用される場合、「スカレミック混合物」は、1:1以外の比での立体異性体の混合物である。
【0058】
「ラセミ体」は、エナンチオマーの混合物を指す。混合物は、等しい又は等しくない量の各エナンチオマーを含み得る。
【0059】
「立体異性体(stereoisomer)」及び「立体異性体(stereoisomers)」は、1つ以上の立体中心のキラリティが異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマー及びジアステレオマーが含まれる。化合物は、1つ以上の不斉中心又は非対称置換を有する二重結合を有し、したがって、個々の立体異性体として、又は混合物として産生され得る場合、立体異性体形態で存在し得る。別段の指示がない限り、本明細書は、個々の立体異性体並びに混合物を含むことを意図している。立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Advanced Organic Chemistry,4th ed.,J.March,John Wiley and Sons,New York,1992の第4章を参照されたい)。
【0060】
「互変異性体」は、エノール-ケト及びイミン-エナミン互変異性体などのプロトンの位置が異なる化合物の代替形態、又はピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、及びテトラゾールなどの環-NH-及び環=N-の両方に結合した環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性形態を指す。
【0061】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」は、溶媒と化合物との相互作用の結果を指す。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供される。本明細書に記載の化合物の水和物も提供される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、ヒト体内への投与の際に、いくつかの化学的経路又は酵素経路に従って活性薬物に変換される、薬物の誘導体を指す。
III.化合物
【0064】
本開示は、式Iの化合物、
【化11】
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0065】
本明細書に記載の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩のインビボ代謝産物もまた、そのような生成物が先行技術と比べて新規かつ非自明である限り、本明細書の範囲内である。そのような生成物は、例えば、主に酵素プロセスによる投与化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などをもたらし得る。したがって、その代謝産物を得るのに十分な期間、化合物を哺乳動物と接触させることを含むプロセスによって産生された新規かつ非自明の化合物が含まれる。そのような生成物は、典型的には、放射標識(例えば、14C若しくは3H)化合物を調製すること、それを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)で非経口的に、ラット、マウス、モルモット、サルなどの動物、又はヒトに投与すること、代謝が発生するのに十分な時間(典型的には約30秒~30時間)を与えること、及び尿、血液、又は他の生物学的試料からその変換産物を単離することによって同定される。これらの生成物は、標識されているため、容易に単離することができる(他のものは、代謝産物中で生存するエピトープに結合することができる抗体の使用によって単離される)。代謝産物構造は、従来の様式で、例えば、MS又はNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方式で行われる。変換産物は、インビボで別途見出されない限り、それ自体の抗ウイルス活性を有しない場合でも、式Iの化合物の治療的投与のための診断アッセイにおいて有用である。
【0066】
より低いEC50値を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を発見することが望ましい目標である。EC50値、最大有効性の50%を達成するアッセイにおける化合物の濃度を指す。より低いEC50を有する化合物は、より高いEC50を有する化合物と比較して、より低い化合物濃度と同様の有効性を達成する。したがって、薬物開発には、より低いEC50が一般に好ましい。
【0067】
更に、高い選択性指数(selectivity index、SI)を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を発見することが望ましい。SIは、所与のAVA値をTOX(毒性)値(AVA/TOX)に分割することによって、細胞傷害性と抗ウイルス活性(AVA)との間のウィンドウを測定する比である。SI比が高いほど、薬物は、所与のウイルス感染に対するインビボでの治療中、理論的により効果的かつ安全となる。理想的な薬物は、非常に高い濃度でのみ細胞傷害性であり、非常に低い濃度で抗ウイルス活性を有し、したがって、高いSI値(高AVA/低TOX)をもたらし、それによって、その細胞傷害性濃度を十分に下回る濃度で標的ウイルスを除去することができる(Human Herpesviruses HHV-6A,HHV-6B&HHV-7(Third Edition),Diagnosis and Clinical Management,2014,Chapter 19,Pages 311-331)。
【0068】
良好な物理的及び/又は化学的安定性を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を発見することも望ましい。化合物の全体的な安定性の増加は、体内の循環時間の増加を提供することができる。劣化が少ないほど、安定した化合物をより低用量で投与し、依然として有効性を維持することができる。また、分解が少ないほど、化合物の分解からの副生成物に関する懸念が少ない。薬物のより高い安定性は、代謝されることなく、標的細胞により多くの薬物が利用可能であることを意味する。
【0069】
改善された薬物動態及び/又は薬力学的プロファイル、並びに長い半減期を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を発見することが更に望ましい。これは良好な生物学的利用能及び高い全身曝露につながる可能性があるため、薬物が中等度又は低いクリアランス及び長い半減期を有することが有利である。クリアランスを低減し、化合物の半減期時間を増加させることは、有効性に必要な1日用量を低減し、したがって、より良好な有効性及び安全性プロファイルをもたらし得る。したがって、改善された薬物動態及び/又は薬力学的プロファイル、並びに長い半減期は、より良好な患者コンプライアンスを提供することができる。
【0070】
溶解度が改善された化合物を開発することも望ましい。より低い溶解度化合物は、多くの場合、不十分な吸着及び生物学的利用能を特徴とする。低溶解度化合物はまた、一般に、製剤化が困難であり、開発コスト及び/又は時間の増加につながる開発課題に直面している。
【0071】
標的細胞及び/又は組織において選択的代謝を受けることができるプロドラッグ化合物を開発することが更に望ましい。標的細胞/組織における選択的代謝は、活性代謝物が標的細胞/組織に送達されることを確実にし、それによって有効性の増加をもたらす。これはまた、より低い用量要件及び副作用につながり得る。
【0072】
有利なことに、式Iの化合物は、国際公開第2015/069939号に記載されている構造的に関連する化合物(ここでは、化合物1及び2として指定された後)と比較して、改善された特性を示す。
【化12】
IV.医薬製剤
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩(活性成分)、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤を提供する。本明細書では、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び/又はエステル、並びに薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤も提供される。
【0074】
本明細書に記載の式Iの化合物は、従来の実施に従って選択される従来の担体及び賦形剤と共に製剤化される。錠剤は、賦形剤、滑剤、充填剤、結合剤等を含有する。水性製剤は、無菌形態で調製され、経口投与以外による送達が意図される場合、概して等張となる。全ての製剤は、任意選択的に、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)に記載されているものなどの賦形剤を含有する。賦形剤としては、アスコルビン酸及び他の酸化防止剤、EDTAなどのキレート剤、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸等の炭水化物を挙げることができる。製剤のpHは、約3~約11の範囲であるが、通常は約7~10である。
【0075】
活性成分を単独で投与することが可能であるが、それらを医薬製剤として提示することが好ましい場合がある。獣医学的使用とヒトでの使用との両方のための製剤は、1つ以上の許容可能な担体及び任意選択的に他の治療成分、特に本明細書で考察される追加の治療成分と共に、上記で定義されるように、活性成分を含む。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して生理的に無害であるという意味で「許容可能」である必要がある。
【0076】
製剤は、便利に単位剤形で提示され得、薬学の分野において周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。技法及び製剤は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に見出される。そのような方法は、活性成分を、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。概して、製剤は、活性成分を、液体担体若しくは微細に分割された固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0077】
経口投与に好適な製剤は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ、若しくは錠剤などの別個の単位として、粉末若しくは顆粒として、水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして提示され得る。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与されてもよい。
【0078】
錠剤は、任意選択的に、1つ以上の副成分と共に圧縮又は成形することによって作製される。圧縮錠剤は、任意選択的に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤、又は分散剤と混合された、粉末又は顆粒などの自由流動性形態で活性成分を好適な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末活性成分の混合物を、好適な機械で成形することによって作製され得る。錠剤は、任意選択的にコーティング又はスコアリングされてもよく、任意選択的に、そこから活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤化される。
【0079】
眼又は他の外部組織、例えば、口及び皮膚の感染症の場合、製剤は、好ましくは、活性成分を、例えば、0.075~20%w/w(例えば0.6%w/w、0.7%w/wなど、0.1%w/wの増分で0.1%~20%の範囲の活性成分を含む)、好ましくは0.2~15%w/w、最も好ましくは0.5~10%w/wの量で含有する局所軟膏又はクリームとして適用される。軟膏に製剤化される場合、活性成分は、パラフィン系又は水混和性軟膏基剤のいずれかで用いられ得る。代替的に、活性成分は、水中油型クリーム基剤を有するクリームに製剤化され得る。
【0080】
必要に応じて、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)などの2つ以上のヒドロキシル基、並びにそれらの混合物を有するアルコールを含み得る。局所製剤は、望ましくは、皮膚又は他の患部を通して活性成分の吸収又は浸透を増強する化合物を含み得る。そのような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシド及び関連する類似体が挙げられる。
【0081】
エマルジョンの油性相は、既知の様式で既知の成分から構成され得る。相は、単に乳化剤(そうでなければエマルジョンとして知られる)を含み得るが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と脂肪又は油との混合物、又は脂肪及び油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。いくつかの実施形態では、油及び脂肪の両方が含まれ得る。一緒に、安定剤を含むか又は含まない乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油及び脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0082】
製剤における使用に好適なエマルジョン及びエマルジョン安定剤としては、Tween(登録商標)(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0083】
製剤の好適な油又は脂肪の選択は、所望の化粧品特性を達成することに基づく。クリームは、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏れを回避するために好適な稠度を有する非油性、非染色及び洗浄可能な製品であるべきである。直鎖又は分岐鎖、一又は二塩基性アルキルエステル、例えばジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルのブレンドを使用してもよい。これらは、必要な特性に応じて単独で、又は組み合わせて使用され得る。代替的に、白色軟質パラフィン及び/又は液体パラフィン又は他の鉱油などの高融点脂質が使用される。
【0084】
本明細書の医薬製剤は、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤、及び任意選択的に他の治療剤と共に、活性成分を含む。活性成分を含有する医薬製剤は、意図される投与方法に好適な任意の形態であり得る。例えば、経口使用に使用される場合、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルジョン、硬質若しくは軟質カプセル、液剤、シロップ又はエリキシル剤を調製することができる。経口使用を目的とする組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、及び保存剤を含む1つ以上の薬剤を含有し得る。錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する錠剤が許容される。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;トウモロコシデンプン、又はアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン、又はアカシアなどの結合剤;並びにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなどの潤滑剤であり得る。錠剤は、コーティングされていない場合があるか、又は胃腸管内での崩壊及び吸着を遅延させ、それによって長期間にわたって持続的作用を提供するためのマイクロカプセル化を含む既知の技術によってコーティングされ得る。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質は、単独で、又はワックスと共に用いられ得る。
【0085】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される硬質ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水又はピーナッツ油、液体パラフィン若しくはオリーブ油などの油媒体と混合される軟質ゼラチンカプセルとして提示され得る。
【0086】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合して活性物質を含有する。そのような賦形剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムなどの懸濁剤、並びに天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)などの分散剤又は湿潤剤、アルキレンオキシドと脂肪酸(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)との縮合生成物、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール(例えば、ヘプタデカチエチレンオキシセタノール)との縮合生成物、エチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルとの縮合生成物、及びヘキシトール無水物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁液はまた、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-安息香酸塩などの1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及びスクロース又はサッカリンなどの1つ以上の甘味剤を含有し得る。
【0087】
油懸濁液は、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油などの植物油中、又は液体パラフィンなどの鉱油中に活性成分を懸濁することによって製剤化され得る。経口懸濁液は、蜜蝋、硬質パラフィン、又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有し得る。上記のような甘味剤、及び香味剤を添加して、口当たりのよい経口調製物を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加によって保存され得る。
【0088】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の防腐剤と混合して活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上記に開示されたものによって例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も存在し得る。
【0089】
医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。油相は、オリーブ油又はピーナッツ油などの植物油、液体パラフィンなどの鉱油、又はこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤としては、アカシアガム及びトラガカントガムなどの天然に存在するガム、ダイズレシチンなどの天然に存在するホスファチド、脂肪酸に由来するエステル又は部分エステル、及びモノオレイン酸ソルビタンなどのヘキシトール無水物、並びにモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。エマルジョンはまた、甘味剤及び香味剤を含有し得る。シロップ剤及びエリキシル剤は、グリセロール、ソルビトール、又はスクロースなどの甘味剤と共に製剤化され得る。そのような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤、香味剤、又は着色剤を含有し得る。
【0090】
医薬組成物は、滅菌注射用水性又は油性懸濁液などの滅菌注射用又は静脈内調製物の形態であり得る。この懸濁液は、上述されている好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用又は静脈内調製物はまた、1,3-ブタン-ジオール中の溶液などの非毒性の非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒中の滅菌注射用溶液若しくは懸濁液であり得るか、又は凍結乾燥粉末として調製され得る。用いられ得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。更に、滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁媒体として用いられ得る。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無溶剤固定油を用いることができる。更に、オレイン酸などの脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用され得る。
【0091】
単一剤形を産生するために担体物質と組み合わされてもよい活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与を目的とした徐放性製剤は、総組成物の約5~約95%(重量:重量)まで変化し得る適切かつ簡便な量の担体物質とのおよそ1~1000mgの活性物質化合物を含み得る。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入を目的とした水溶液は、約30mL/時間の速度で好適な体積の注入が起こり得るために、溶液1ミリリットル当たり約3~500μgの活性成分を含有し得る。
【0092】
眼への局所投与に好適な製剤はまた、有効成分が好適な担体、特に活性成分の水性溶媒に溶解又は懸濁される点眼薬を含む。活性成分は、好ましくは、0.5~20%、有利には0.5~10%、特に約1.5%w/wの濃度でそのような製剤中に存在する。
【0093】
口内での局所投与に好適な製剤には、風味を付けた主成分、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性な主成分中に活性成分を含むパステル剤、並びに好適な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが含まれる。
【0094】
直腸投与用の製剤は、例えば、カカオバター又はサリチル酸塩を含む好適な基剤を有する坐剤として提示され得る。
【0095】
肺内又は経鼻投与に好適な製剤は、例えば、0.1~500ミクロンの範囲、例えば0.5、1、30、35などの粒径を有し、これは、経鼻通路を通る吸入によって、又は口を通る吸入によって投与される。好適な製剤としては、活性成分の水性又は油性溶液が挙げられる。エアロゾル又は乾燥粉末投与に好適な製剤は、従来の方法に従って調製することができ、以下に記載されるように、Pneumoviridae感染症の治療又は予防においてこれまで使用された化合物などの他の治療剤と共に送達され得る。
【0096】
別の実施形態は、Pneumoviridae感染症及び関連する可能性のある細気管支炎を治療するのに好適な、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、新規、有効、安全、非刺激性、及び生理学的に適合性である吸入可能な組成物を提供する。非限定的な例示的な薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩を含む無機酸塩であり、肺刺激を引き起こす可能性が低い。いくつかの実施形態では、吸入可能な製剤は、約1~約5μmの空気動力学的直径の質量中央値(mass median aerodynamic diameter、MMAD)を有する粒子を含むエアロゾル中で気管支内空間に送達される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、噴霧器、加圧定量噴霧式吸入器(pressurized metered dose inhalerm、pMDI)、又は乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler、DPI)を使用してエアロゾル送達用に製剤化される。
【0097】
噴霧器の非限定的な例としては、霧化、ジェット、超音波、加圧された振動多孔質プレート、又は適応エアロゾル送達技術を利用するそれらの噴霧器(Denyer,J.Aerosol medicine Pulmonary Drug Delivery 2010,23 Supp 1,S1-S10)を含む同等の噴霧器が挙げられる。ジェット噴霧器は、空気圧を利用して液体溶液をエアロゾル液滴に破壊する。超音波噴霧器は、液体を小さなエアロゾル液滴に剪断する圧電結晶によって機能する。加圧噴霧システムは、小さな細孔を通して圧力下で溶液を押し出してエアロゾル液滴を生成する。振動多孔質プレートデバイスは、急速な振動を利用して、液体の流れを適切な液滴サイズに剪断する。
【0098】
いくつかの実施形態では、噴霧用の製剤は、式Iの化合物の製剤を必要とされるMMADの粒子にエアロゾル化することができる噴霧器を使用して、主に約1μm~約5μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾル中で気管支内空間に送達される。最適に治療的に有効であり、上気道及び全身的な副作用を回避するために、エアロゾル化された粒子の大部分は、約5μm超のMMADを有してはならない。エアロゾルが5μmより大きいMMADを有する多数の粒子を含有する場合、粒子は上気道に堆積され、下気道の炎症部位及び気管支狭窄の部位に送達される薬物の量を減少させる。エアロゾルのMMADが約1μmよりも小さい場合、粒子は吸入空気中に懸濁したままであり、続いて呼気の間に吐き出される傾向を有する。
【0099】
本明細書の方法に従って製剤化及び送達される場合、噴霧用のエアロゾル製剤は、治療有効用量の式Iの化合物を、Pneumoviridae感染症を治療するのに十分なPneumoviridae感染症の部位に送達する。投与される薬物の量は、治療有効用量の式Iの化合物の送達の効率を反映するように調整されなければならない。いくつかの実施形態では、水性エアロゾル製剤と噴霧化、ジェット、加圧、振動多孔質プレート、又は超音波噴霧器との組み合わせは、噴霧器に応じて、その気道への式Iの化合物の投与された用量の少なくとも約20~約90%、例えば、約70%の送達を可能にする。いくつかの実施形態では、活性化合物の少なくとも約30~約50%が送達される。いくつかの実施形態では、約70~約90%の活性化合物が送達される。
【0100】
別の実施形態では、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、乾燥吸入可能な粉末として送達される。化合物は、乾燥粉末製剤として気管支内に投与されて、乾燥粉末又は計量用量吸入器を使用して、化合物の微粒子を気管支内空間に有効に送達する。DPIによる送達のために、式Iの化合物は、粉砕スプレー乾燥、臨界流体加工、又は溶液からの沈殿によって、主に約1μm~約5μmのMMADを有する粒子に加工される。約1μm~約5μmのMMADで粒径を生成することができる媒体粉砕、ジェット粉砕及びスプレー乾燥デバイス及び手順は、当該技術分野において周知である。一実施形態では、賦形剤は、必要なサイズの粒子に加工する前に、式Iの化合物に添加される。別の実施形態では、賦形剤は、例えば、賦形剤としてラクトースを使用することによって、薬物粒子の分散を助けるために必要なサイズの粒子とブレンドされる。
【0101】
粒径測定は、当該技術分野で周知のデバイスを使用して行われる。例えば、計量用量及び乾燥粉末吸入器内のエアロゾルのためのデバイスを特徴とするように、米国薬局方第601章で具体的に引用されたものなどの多段アンダーソンカスケードインパクター又は他の好適な方法。
【0102】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、乾燥粉末吸入器又は他の乾燥粉末分散デバイスなどのデバイスを使用して、乾燥粉末として送達される。乾燥粉末吸入器及びデバイスの非限定的な例としては、米国特許第5,458,135号、同第5,740,794号、同第5775320号、同第5,785,049号、同第3,906,950号、同第4,013,075号、同第4,069,819号、同第4,995,385号、同第5,522,385号、同第4,668,218号、同第4,667,668号、同第4,805,811号及び同第5,388,572号に開示されているものが挙げられる。乾燥粉末吸入器の2つの主要な設計がある。1つの設計は、薬物のためのリザーバがデバイス内に配置され、患者がある用量の薬物を吸入チャンバに追加する計量デバイスである。第2の設計は、各個々の用量が別個の容器内で製造されている工場計量デバイスである。両方のシステムは、1μm及び約5μmのMMADの小さい粒子への薬物の製剤化に依存し、しばしば、限定されないが、ラクトースなどのより大きい賦形剤粒子との共製剤化を伴う。薬物粉末を吸入チャンバに入れ(デバイス計測又は工場計量投与量の破損のいずれかによって)、患者の吸気流は、デバイスから口腔内への粉末を加速させる。粉末経路の非層流特徴は、賦形剤-薬物凝集体を分解させ、大きな賦形剤粒子の質量は、喉の後部でそれらの圧入を引き起こし、一方、より小さい薬物粒子は、肺の深部に堆積される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載されるいずれかのタイプの乾燥粉末吸入器を使用して乾燥粉末として送達され、この場合、任意の賦形剤を除く乾燥粉末のMMADは、主に1μm~約5μmの範囲である。
【0103】
別の実施形態では、式Iの化合物は、計量用量吸入器を使用して乾燥粉末として送達される。計量用量吸入器及びデバイスの非限定的な例としては、米国特許第5,261,538号、同第5,544,647号、同第5,622,163号、同第4,955,371号、同第3,565,070号、同第3,361306号及び同第6,116,234号に開示されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩は、計量用量吸入器を使用して乾燥粉末として送達され、この場合、任意の賦形剤を除く乾燥粉末のMMADは、主に約1~5μmの範囲である。
【0104】
膣内投与に好適な製剤は、当該技術分野において適切であることが知られているような担体の活性成分に加えて、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体又はスプレー製剤として提示され得る。
【0105】
非経口投与に好適な製剤には、製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、バクテリオスタット及び溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注入溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
【0106】
製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示され、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管され得る。即時注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。例示的な単位投与量製剤は、活性成分の本明細書の上記に列挙したような1日用量若しくは単位1日サブ用量、又はそれらの適切な画分を含有するものである。
【0107】
特に上述の成分に加えて、製剤は、問題の製剤のタイプに関して当該技術分野において従来の他の薬剤を含み得、例えば、経口投与に好適なものは、香味剤を含み得ることを理解されたい。
【0108】
そのための獣医学的担体と共に上記で定義される、少なくとも1つの活性成分を含む獣医学的組成物が更に提供される。
【0109】
獣医学的担体は、組成物を投与する目的で有用な物質であり、そうでなければ獣医技術において不活性であるか又は許容可能であり、活性成分と適合性がある固体、液体又はガス状の物質であり得る。これらの獣医学的組成物は、経口、非経口又は任意の他の所望の経路によって投与され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するように製剤化され、式Iの化合物の放出は、より少ない頻度の投与を可能にするか、又は所与の活性成分の薬物動態又は毒性プロファイルを改善するように制御及び調節される。
【0111】
有効な用量の活性成分は、少なくとも治療されている状態の性質、毒性、化合物が予防的に(低用量)又は活動性ウイルス感染症、送達方法、及び医薬製剤に対して使用されているかどうかに依存し、従来の用量漸増研究を使用して臨床医によって決定される。1日当たり約0.0001~約100mg/kg体重、例えば、1日当たり約0.01~約10mg/kg体重であると予想され得る。いくつかの実施形態では、有効用量は、1日当たり約0.01~約5mg/kg体重であり、例えば、典型的には、1日当たり約0.05~約0.5mg/kg体重である。例えば、体重およそ70kgの成人に対する1日候補用量は、1mg~1000mg、例えば、5mg~500mgの範囲であり、単回又は複数回用量の形態を取り得る。
V.投与経路
【0112】
式Iの化合物(本明細書では活性成分とも称される)は、適切な任意の適切な経路によって投与することができる。好適な経路には、経口、直腸、経鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、経皮、膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)等が含まれる。好ましい経路は、例えば、レシピエントの状態によって変化し得ることが理解されよう。
【0113】
本開示の化合物は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、又は少なくとも約12ヶ月以上など、所望の期間又は持続時間にわたって、有効な投与計画に従って個体に投与され得る。一変形例では、化合物は、個体の寿命まで必要な期間にわたって毎日又は断続的なスケジュールで投与される。
【0114】
本開示の化合物の投与量又は投与頻度は、投与医師の判断に基づいて、治療の過程にわたって調整され得る。
【0115】
化合物は、個体(例えば、ヒト)に有効量で投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物を1日1回投与する。
【0116】
化合物は、経口又は非経口(例えば、静脈内)投与などの任意の有用な経路及び手段によって投与することができる。化合物の治療有効量は、1日当たり約0.00001mg/kg体重~1日当たり約10mg/kg体重、例えば1日当たり約0.0001mg/kg体重~1日当たり約10mg/kg体重、又は例えば1日当たり約0.001mg/kg体重~1日当たり約1mg/kg体重、又は例えば1日当たり約0.01mg/kg体重~1日当たり約1mg/kg体重、又は例えば1日当たり約0.05mg/kg体重~1日当たり約0.5mg/kg体重、又は例えば1日当たり約0.3g~約30mg、又は例えば1日当たり約30g~約300gを含み得る。
【0117】
本開示の化合物は、本開示の化合物の任意の投与量(例えば、1mg~1000mgの化合物)で1つ以上の追加の治療剤と組み合わせることができる。治療有効量は、1用量当たり約1mg~1用量当たり約1000mg、例えば1用量当たり約50mg~1用量当たり約500mg、又は例えば1用量当たり約100mg~1用量当たり約400mg、又は例えば1用量当たり約150mg~1用量当たり約350mg、又は例えば1用量当たり約200mg~1用量当たり約300mgを含み得る。本開示の化合物の他の治療有効量は、1用量当たり約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、又は約500mgである。本開示の化合物の他の治療有効量は、1用量当たり約100mg、又は1用量当たり約125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、又は約500mgである。単回投与は、毎時間、毎日、又は毎週投与することができる。例えば、単回投与は、1、2、3、4、6、8、12、16時間毎に1回、又は24時間毎に1回投与することができる。単回投与はまた、1、2、3、4、5、6日毎に1回、又は7日毎に1回投与することもできる。単回投与はまた、1、2、3週間毎に1回、又は4週間毎に1回投与することもできる。いくつかの実施形態では、単回用量は、1週間毎に1回投与され得る。単回投与は、毎月1回投与することもできる。
【0118】
本開示の化合物の他の治療有効量は、1用量当たり約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は約100mgである。
【0119】
本開示の化合物の投薬の頻度は、個々の患者の必要性によって決定され、例えば、1日当たり1回、又は1日当たり2回、又はそれ超であり得る。ウイルス感染症を治療するために必要である限り、化合物の投与は継続する。例えば、化合物は、ウイルスに感染しているヒトに、20日~180日の期間、又は例えば、20日~90日の期間、又は例えば、30日~60日間の期間にわたって投与することができる。
【0120】
投与は、患者が、本開示の化合物の1日用量を受ける数日以上の期間に続いて、患者が化合物の1日用量を受けない数日以上の期間で断続的であり得る。例えば、患者は、ある用量の化合物を1日おきに又は1週間当たり3回受けることができる。更に一例として、患者は、ある用量の化合物を1~14日間の期間にわたって毎日受けることができ、続いて7~21日の期間の間、患者はある用量の化合物を受けず、続いてその後の期間(例えば、1~14日)の間、患者は再び1日用量の化合物を受ける。化合物の投与、続いて化合物の非投与の交互の期間は、患者を治療するために臨床的に必要とされるように繰り返され得る。
【0121】
一実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、1若しくは2つ、1~3つ、又は1~4つ)の追加の治療剤と組み合わせて、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0122】
一実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、1若しくは2つ、1~3つ、又は1~4つ)の追加の治療剤と組み合わせて含むキットが提供される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、1、2、3、4つ以上の追加の治療剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、2つの追加の治療剤と組み合わされる。他の実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、3つの追加の治療剤と組み合わされる。更なる実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、4つの追加の治療剤と組み合わされる。1、2、3、4以上の追加の治療剤は、同じ部類の治療剤から選択される異なる治療剤であってもよく、及び/又は異なる部類の治療剤から選択してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物が本明細書に記載の1つ以上の追加の治療剤と組み合わされる場合、組成物の成分は、同時又は連続レジメンとして投与される。連続的に投与される場合、組み合わせは、2回以上の投与で投与されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、例えば経口投与のための固体剤形として、患者への同時投与のための単位剤形において1つ以上の追加の治療剤と組み合わされる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、1つ以上の追加の治療剤と共に投与される。
【0127】
本開示の化合物の効果を延長するために、多くの場合、皮下又は筋肉内注射からの化合物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶質又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成され得る。化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、次に、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。代替的に、非経口投与された化合物形態の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁することによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物対ポリマーの比、及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン製剤中に化合物を封入することによっても調製される。
VI.併用療法
【0128】
本明細書で提供される式Iの化合物及び組成物はまた、ウイルス感染症、例えば、Pneumoviridae、Picornaviridae、Flaviviridae、又はFiloviridaeウイルス感染症の治療のための他の活性治療剤と組み合わせて使用される。
Pneumoviridaeの治療のための併用療法
【0129】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、他の活性治療剤と組み合わせて使用される。Pneumoviridaeウイルス感染症の治療の場合、好ましくは、他の活性治療剤は、Pneumoviridaeウイルス感染症、特に呼吸器合胞体ウイルス感染症及び/又はmetapneumovirus感染症に対して活性である。RSVに対するこれらの他の活性治療剤の非限定的な例は、リバビリン、パリビズマブ、モタビズマブ、RSV-IGIV(RespiGam(登録商標))、MEDI-557、A-60444(RSV604としても知られる)、MDT-637、BMS-433771、ALN-RSV0、ALX-0171、及びそれらの混合物である。呼吸器合胞体ウイルス感染症に対して活性な他の活性治療剤の他の非限定的な例としては、AK-0529などの呼吸器合胞体ウイルスタンパク質F阻害剤;RV-521、ALX-521、ALX-0171、JNJ-53718678、BTA-585、及びプレサトビル;ルミシタビン及びALS-8112などのRNAポリメラーゼ阻害剤;抗Gタンパク質mAbなどの抗RSV Gタンパク質抗体;ニタゾキサニドなどのウイルス複製阻害剤が挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、MVA-BN RSV、RSV-F、MEDI-8897、JNJ-64400141、DPX-RSV、SynGEM、GSK-3389245A、GSK-300389-1A、RSV-MEDI δM2-2ワクチン、VRC-RSVRGP084-00VP、Ad35-RSV-FA2、Ad26-RSV-FA2、及びRSV融合糖タンパク質サブユニットワクチンを含むがこれらに限定されない、RSVの治療又は予防のためのワクチンであり得る。
【0131】
metapneumovirus感染に対して活性な他の活性治療剤の非限定的な例としては、DAS-181などのシアリダーゼモジュレータ、ALS-8112などのRNAポリメラーゼ阻害剤、及びEV-046113などのMetapneumovirus感染症の治療のための抗体が挙げられる。
【0132】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、mRNA-1653及びrHMPV-Paワクチンを含むがこれらに限定されないmetapneumovirus感染症の治療又は予防のためのワクチンであり得る。
Picornaviridaeの治療のための併用療法
【0133】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、他の活性治療剤と組み合わせて使用される。Picornaviridaeウイルス感染症の治療の場合、好ましくは、他の活性治療剤は、Picornaviridaeウイルス感染症、特にエンテロウイルス感染症に対して活性である。これらの他の活性治療剤の非限定的な例は、プレコナリル、BTA-798(バペンダビル)、並びにWuら(米国特許第7,078,403号)及びWatson(米国特許第7,166,604号)によって開示される他の化合物などのカプシド結合阻害剤;DAS-181などの融合シアリダーゼタンパク質;VVX-003及びAZN-001などのキャプシドタンパク質VP1阻害剤;CW-33などのウイルスプロテアーゼ阻害剤;GSK-480及びGSK-533などのホスファチジルイノシトール4キナーゼβ阻害剤;抗EV71抗体である。
【0134】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、EV71ワクチン、TAK-021、及びEV-D68アデノベクターベースのワクチンを含むがこれらに限定されない、Picornaviridaeウイルス感染症の治療又は予防のためのワクチンであり得る。
呼吸器感染のための併用療法
【0135】
Pneumoviridae及びPicornaviridaeウイルスの感染症の多くは、呼吸器感染症である。したがって、呼吸器症状及び感染症の後遺症を治療するために使用される追加の活性治療薬は、式Iの化合物と組み合わせて使用され得る。追加の薬剤は、好ましくは経口投与されるか、又は直接吸入によって投与される。例えば、ウイルス呼吸器感染症の治療のために式Iの化合物と組み合わせた追加の治療剤には、気管支拡張剤及びコルチコステロイドが含まれるが、これらに限定されない。
糖質コルチコイド
【0136】
1950年に喘息療法として最初に導入された糖質コルチコイド(Carryer,Journal of Allergy,21,282-287,1950)は、依然としてこの疾患に対して最も強力で一貫した効果的な療法であるが、それらの作用機序はまだ完全には理解されていない(Morris,J.Allergy Clin.Immunol.,75(1 Pt)1-13,1985)。残念ながら、経口糖質コルチコイド療法は、体幹肥満、高血圧、緑内障、グルコース不耐性、白内障形成の加速、骨ミネラル損失、及び心理的効果などの望ましくない副作用と関連しており、それらの全ては、長期治療剤としての使用を制限する(Goodman and Gilman,10th edition,2001)。全身的な副作用に対する解決策は、ステロイド薬を炎症の部位に直接送達することである。経口ステロイドの重度の悪影響を軽減するために、吸入コルチコステロイド(inhaled corticosteroid、ICS)が開発されている。式Iの化合物と組み合わせて使用され得るコルチコステロイドの非限定的な例は、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、ロテプレドノール、エタボン酸ロテプレドノール、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルドロコルチゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ジプロプリオン酸ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルニソリド、フルオコルチン-21-ブチラート、フルメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸ハロベタソール、フロン酸モメタゾン、フルチカゾン、AZD-7594、シクレソニド;又はその薬学的に許容される塩である。
抗炎症剤
【0137】
抗炎症カスケード機序を介して作用する他の抗炎症剤もまた、ウイルス呼吸器感染症の治療のために式Iの化合物と組み合わせて追加の治療剤として有用である。ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、PDE-4、PDE-5、若しくはPDE-7特異的)、転写因子阻害剤(例えば、IKK阻害によりNFκBを遮断する)、又はキナーゼ阻害剤(例えば、P38 MAP、JNK、PI3K、EGFR若しくはSykを遮断する)のような「抗炎症シグナル伝達モジュレータ」(この文書ではAISTMと称される)を適用することは、これらの小分子が限定数の一般的な細胞内経路、すなわち抗炎症治療介入にとって重大なポイントであるシグナル伝達経路を標的とするため、炎症を止めるための論理的アプローチである(P.J.Barnes,2006によるレビューを参照されたい)。これらの非限定的な追加の治療剤としては、5-(2,4-ジフルオロ-フェノキシ)-1-イソブチル-1H-インダゾール-6-カルボン酸(2-ジメチルアミノ-エチル)-アミド(P38 Mapキナーゼ阻害剤ARRY-797)、3-シクロプロピルメトキシ-N-(3,5-ジクロロ-ピリジン-4-イル)-4-ジフルオロメトキシ-ベンズアミド(PDE-4阻害剤Roflumilast)、4-[2-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-2-フェニル-エチル]-ピリジン(PDE-4阻害剤CDP-840)、N-(3,5-ジクロロ-4-ピリジニル)-4-(ジフルオロメトキシ)-8-[(メチルスルホニル)アミノ]-1-ジベンゾフランカルボキサミド(PDE-4阻害剤Oglemilast)、N-(3,5-ジクロロ-ピリジン-4-イル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル]-2-オキソ-アセトアミド(PDE-4阻害剤AWD 12-281)、8-メトキシ-2-トリフルオロメチル-キノリン-5-カルボン酸(3,5-ジクロロ-1-オキシ-ピリジン-4-イル)-アミド(PDE-4阻害剤Sch 351591)、4-[5-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メタンスルフィニル-フェニル)-1H-イミダゾール-4-イル]-ピリジン(P38阻害剤SB-203850)、4-[4-(4-フルオロ-フェニル)-1-(3-フェニル-プロピル)-5-ピリジン-4-イル-1H-イミダゾール-2-イル]-ブタ-3-イン-1-オール(P38阻害剤RWJ-67657)、4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシ-フェニル)-シクロヘキサンカルボン酸2-ジエチルアミノ-エチルエステル(シロミラスト、PDE-4阻害剤の2-ジエチル-エチルエステルプロドラッグ)、(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-[7-メトキシ-6-(3-モルホリン-4-イル-プロポキシ)-キナゾリン-4-イル]-アミン(ゲフィニブ、EGFR阻害剤)、及び4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3-イル-ピリミジン-2-イルアミノ)-フェニル]-ベンズアミド(イマチニブ、EGFR阻害剤)。
β2-アドレナリン受容体アゴニスト気管支拡張剤
【0138】
式Iの化合物を有する、ホルモテロール、アルブテロール、又はサルメテロールなどの吸入β2-アドレナリン受容体アゴニスト気管支拡張剤を含む組み合わせもまた、呼吸器ウイルス感染症の治療に有用な好適であるが非限定的な組み合わせである。
【0139】
ICSを有するホルモテロール又はサルメテロールなどの吸入β2-アドレナリン受容体アゴニスト気管支拡張剤の組み合わせもまた、気管支狭窄及び炎症(それぞれSymbicort(登録商標)及びAdvair(登録商標))の両方を治療するために使用される。式Iの化合物と共にこれらのICS及びβ2-アドレナリン受容体アゴニストの組み合わせを含む組み合わせもまた、呼吸器ウイルス感染症の治療に有用な好適であるが非限定的な組み合わせである。
【0140】
β2アドレナリン受容体アゴニストの他の例は、ベドラドリン、ビランテロール、インダカテロール、オロダテロール、ツロブテロール、ホルモテロール、アベジテロール、サルブタモール、アルホルモテロール、レバルブテロール、フェノテロール、及びTD-5471である。
抗コリン薬
【0141】
肺気管支狭窄の治療又は予防の場合、抗コリン薬が役立つ可能性があり、したがって、ウイルス呼吸器感染症の治療のために式Iの化合物と組み合わせて追加の治療剤として有用である。これらの抗コリン薬としては、ムスカリン受容体(特にM3サブタイプの)が挙げられるが、これらに限定されず、これはCOPDにおけるコリン作動性トーンの制御に対するヒトにおける治療有効性を示している(Witek,1999)。1-{4-ヒドロキシ-1-[3,3,3-トリス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピオニル]-ピロリジン-2-カルボニル}-ピロリジン-2-カルボン酸(1-メチル-ピペリジン-4-イルメチル)-アミド、3-[3-(2-ジエチルアミノ-アセトキシ)-2-フェニル-プロピオニルオキシ]-8-イソプロピル-8-メチル-8-アゾニア-ビシクロ[3.2.1]オクタン(イプラトロピウム-N,N-ジエチルグリシネート)、1-シクロヘキシル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イルエステル(ソリフェナシン)、2-ヒドロキシメチル-4-メタンスルフィニル-2-フェニル-酪酸1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イルエステル(レバトロパート)、2-{1-[2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-5-イル)-エチル]-ピロリジン-3-イル}-2,2-ジフェニル-アセトアミド(ダリフェナシン)、4-アゼパン-1-イル-2,2-ジフェニル-ブチルアミド(ブゼピド)、7-[3-(2-ジエチルアミノ-アセトキシ)-2-フェニル-プロピオニルオキシ]-9-エチル-9-メチル-3-オキサ-9-アゾニア-トリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン(オキシトロピウム-N,N-ジエチルグリシネート)、7-[2-(2-ジエチルアミノ-アセトキシ)-2,2-ジ-チオフェン-2-イル-アセトキシ]-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニア-トリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン(チオトロピウム-N,N-ジエチルグリシネート)、ジメチルアミノ酢酸2-(3-ジイソプロピルアミノ-1-フェニル-プロピル)-4-メチル-フェニルエステル(トルテロジン-N,N-ジメチルグリシネート)、3-[4,4-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-2-オキソ-イミダゾリジン-1-イル]-1-メチル-1-(2-オキソ-2-ピリジン-2-イル-エチル)-ピロリジニウム、1-[1-(3-フルオロ-ベンジル)-ピペリジン-4-イル]-4,4-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-イミダゾリジン-2-オン、1-シクロオクチル-3-(3-メトキシ-1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル)-1-フェニル-プロパ-2-イン-1-オール、3-[2-(2-ジエチルアミノ-アセトキシ)-2,2-ジ-チオフェン-2-イル-アセトキシ]-1-(3-フェノキシ-プロピル)-1-アゾニア-ビシクロ[2.2.2]オクタン(アクリジニウム-N,N-ジエチルグリシネート)、又は(2-ジエチルアミノ-アセトキシ)-ジ-チオフェン-2-イル-酢酸1-メチル-1-(2-フェノキシ-エチル)-ピペリジン-4-イルエステル、レベフェナシン、臭化グリコピロニウム、臭化ウメクリジニウム、臭化チオトロピウム、臭化アクリジニウム、臭化ベンシクロキジウム。
粘液溶解剤
【0142】
本明細書で提供される式Iの化合物及び組成物はまた、呼吸器感染症の感染及び症状の両方を治療するために粘液溶解剤と組み合わされ得る。粘液溶解剤の非限定的な例は、アンブロキソールである。同様に、式Iの化合物は、呼吸器感染症の感染及び症状の両方を治療するために去痰薬と組み合わされてもよい。去痰薬の非限定的な例は、グアイフェネシンである。
【0143】
噴霧性高張生理食塩水は、肺疾患を有する患者における小気道の即時及び長期クリアランスを改善するために使用される(Kuzik,J.Pediatrics 2007,266)。したがって、式Iの化合物はまた、特に、Pneumoviridaeウイルス感染症が細気管支炎を併発する場合に、噴霧性高張生理食塩水と組み合わされてもよい。式Iの化合物と高張生理食塩水との組み合わせはまた、上で考察された追加の薬剤のうちのいずれかを含み得る。一実施形態では、約3%の噴霧性高張生理食塩水が使用される。
COPDの治療のための併用療法
【0144】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、他の活性治療剤と組み合わせて使用される。COPDの呼吸器悪化の治療の場合、他の活性治療剤は、COPDに対する他の活性剤を含む。これらの他の活性治療剤の非限定的な例としては、ベンラリズマブ、メポリズマブなどの抗IL5抗体;AZD-7986(INS-1007)などのジペプチジルペプチダーゼI(DPP1)阻害剤;シプロフロキサシン塩酸塩などのDNAジャイレース阻害剤/トポイソメラーゼIV阻害剤;RPL-554などのMDR関連タンパク質4/ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase、PDE)3及び4阻害剤;イバカフトール、QBW-251などのCFTR刺激剤;RBx-10017609’アデノシンA1受容体アンタゴニストなどのMMP-9/MMP-12阻害剤、例えば、PBF-680;SB-010などのGATA3転写因子阻害剤;ASM-024などのムスカリン受容体モジュレータ/ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト;BIO-11006などのMARCKSタンパク質阻害剤;マシチニブなどのキットチロシンキナーゼ/PDGF阻害剤;ロフルミラスト、CHF-6001などのホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害剤;ネミラリシブなどのホスホイノシチド-3キナーゼδ阻害剤;TA-270などの5-リポキシゲナーゼ阻害剤;コハク酸バテフェンテロール、AZD-887、臭化イプラトロピウムなどのムスカリン受容体アンタゴニスト/β2アドレナリン作動性アゴニスト;TRN-157;エルドステインなどのエラスターゼ阻害剤;FP-025などのメタロプロテアーゼ-12阻害剤;タデキニグαなどのインターロイキン18リガンド阻害剤;CK-2127107などの骨格筋トロポニン活性化剤;アクマピモド(acumapimod)などのp38 MAPキナーゼ阻害剤;CNTO-6785などのIL-17受容体修飾因子;ダニリキシンなどのCXCR2ケモカインアンタゴニスト;POL-6014などの白血球エラスターゼ阻害剤;GSK-2256294などのエポキシドヒドロラーゼ阻害剤;CHF-6333などのHNE阻害剤;アビプタジルなどのVIPアゴニスト;RV-1729などのホスホイノシチド-3キナーゼδ/γ阻害剤;APL-1などの補体C3阻害剤、及びAM-211などのGタンパク質共役受容体-44アンタゴニスト。
【0145】
活性治療剤の他の非限定的な例としては、ブデソニド、脂肪細胞、一酸化窒素、PUR-1800、YLP-001、LT-4001、アジスロマイシン、ガムネックス、QBKPN、ピルビン酸ナトリウム、MUL-1867、マンニトール、MV-130、MEDI-3506、BI-443651、VR-096、OPK-0018、TEV-48107、ドキソフィリン、TEV-46017、OligoG-COPD-5/20、Stempeucel(登録商標)、ZP-051、リジンアセチルサリチレートが挙げられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、MV-130及びGSK-2838497Aを含むがこれらに限定されない、COPDに対して活性であるワクチンであり得る。
デングの治療のための併用療法
【0147】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、他の活性治療剤と組み合わせて使用される。Flaviviridaeウイルス感染症の治療の場合、好ましくは、他の活性治療剤は、Flaviviridaeウイルス感染症、特にデング感染症に対して活性である。これらの他の活性治療剤の非限定的な例は、GBV-006などの宿主細胞因子モジュレータ;フェンレチニド ABX-220、BRM-211;セルゴシビルなどのα-グルコシダーゼ1阻害剤;モジパファントなどの血小板活性化因子受容体(platelet activating factor receptor、PAFR)アンタゴニスト;FX-06などのカドヘリン-5/第Ia因子モジュレータ;JNJ-8359などのNS4B阻害剤;ABX-202などのウイルスRNAスプライシングモジュレータ;NS5ポリメラーゼ阻害剤;NS3プロテアーゼ阻害剤;及びTLRモジュレータである。
【0148】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、TetraVax-DV、Dengvaxia(登録商標)、DPIV-001、TAK-003、生弱毒化デングワクチン、四価デング熱ワクチン、四価DNAワクチン、rDEN2δ30-7169、及びDENV-1 PIVを含むがこれらに限定されない、デングの治療又は予防のためのワクチンであり得る。
エボラの治療のための併用療法
【0149】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、他の活性治療剤と組み合わせて使用される。Filoviridaeウイルス感染症の治療の場合、好ましくは、他の活性治療剤は、Filoviridaeウイルス感染症、特にマールブルグウイルス、エボラウイルス、及びCuevaウイルス感染症に対して活性である。これらの他の活性治療剤の非限定的な例は、リバビリン、パリビズマブ、モタビズマブ、RSV-IGIV(RespiGam(登録商標))、MEDI-557、A-60444、MDT-637、BMS-433771、アミオダロン、ドロネダロン、ベラパミル、エボラ回復期血漿(Ebola Convalescent Plasma、ECP)、TKM-100201、BCX4430((2S,3S,4R,5R)-2-(4-アミノ-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-7-イル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3,4-ジオール)、TKM-エボラ、T-705一リン酸塩、T-705二リン酸塩、T-705三リン酸塩、FGI-106(1-N,7-N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3,9-ジメチルキノリノ[8,7-h]キノロン-1,7-ジアミン)、rNAPc2、OS-2966、ブリンシドフォビル、レムデシビル;
【0150】
ガリデシビル、ファビピラビル(T-705又はアビガンとしても知られる)、JK-05などのRNAポリメラーゼ阻害剤;GMV-006などの宿主細胞因子モジュレータ;FX-06などのカドヘリン-5/第Ia因子モジュレータ;並びにREGN-3470-3471-3479及びZMappなどのエボラの治療のための抗体である。
【0151】
エボラに対して活性な他の非限定的な活性治療剤には、α-グルコシダーゼ1阻害剤、カテプシンB阻害剤、CD29アンタゴニスト、樹状ICAM-3結合ノンインテグリン1阻害剤、エストロゲン受容体アンタゴニスト、第VII因子アンタゴニストHLAクラスII抗原モジュレータ、宿主細胞因子モジュレータ、インターフェロンαリガンド、中性αグルコシダーゼAB阻害剤、ニーマン-Pick C1タンパク質阻害剤、核タンパク質阻害剤、ポリメラーゼ共因子VP35阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、組織因子阻害剤、TLR-3アゴニスト、ウイルスエンベロープ糖タンパク質阻害剤、及びエボラウイルス侵入阻害剤(NPC1阻害剤)が含まれる。
【0152】
いくつかの実施形態では、他の活性治療剤は、エボラの治療又は予防のためのワクチンであり得、VRC-EBOADC076-00-VP、アデノウイルス系エボラワクチン、rVSV-EBOV、rVSVN4CT1-EBOVGP、MVA-BN Filo+Ad26-ZEBOVレジメン、INO-4212、VRC-EBODNA023-00-VP、VRC-EBOADC069-00-VP、GanEvac-combiワクチン、SRC VBベクター、HPIV3/EboGPワクチン、MVA-EBOZ、エボラ組換え糖タンパク質ワクチン、Vaxartアデノウイルスベクター5系エボラワクチン、FiloVaxワクチン、GOVX-E301、及びGOVX-E302が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、特定のRNA配列と塩基対二重鎖を形成することによって翻訳プロセスを干渉するように設計された合成アンチセンスオリゴヌクレオチド類似体である、ホスホルアミデートモルホリノオリゴマー(phosphoramidate morpholino oligomer、PMO)と組み合わせて使用され得る。PMOの例としては、AVI-7287、AVI-7288、AVI-7537、AVI-7539、AVI-6002及びAVI-6003が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
本明細書で提供される化合物及び組成物はまた、非経口流体(デキストロース生理食塩水及び乳酸リンゲル液を含む)並びに栄養、抗生物質(メトロニダゾール及びセファロスポリン抗生物質、例えば、セフトリアキソン及びセフロキシムを含む)並びに/又は抗真菌予防、解熱及び鎮痛薬、制吐薬(メトクロプラミドなど)及び/又は下痢止め薬、ビタミン及びミネラルサプリメント(ビタミンK及び硫酸亜鉛を含む)、抗炎症剤(イブプロフェンなど)、鎮痛薬、並びに抗マラリア薬(アルテメテル及びアルテスナート-ルメファントリン併用療法を含む)、腸チフス(シプロフロキサシンなどのキノロン抗生物質、アジスロマイシンなどのマクロリド抗生物質、セフトリアキソンなどのセファロスポリン抗生物質、若しくはアンピシリンなどのアミノペニシリンを含む)、あるいは細菌性赤痢などの患者集団における他の一般的な疾患のための薬物療法を含む、Filoviridaeウイルス感染症を有する患者に提供される一般的なケアとの併用が意図される。
VII.ウイルス感染症を治療する方法
【0155】
本開示は、式Iの化合物を使用して、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、HRV、hMPV、エボラ、ジカ、ウェストナイル、デング、HCV、及びHBVなどの様々な疾患を治療するための化合物を提供する。
Pnuemoviridae
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、Pneumoviridaeウイルスに感染した個体(例えば、ヒト)に投与することを含む、Pneumoviridaeウイルス感染症を治療するための方法を提供する。Pneumoviridaeウイルスには、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及び他のPneumoviridaeウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示は、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。Pneumoviridaeウイルスには、呼吸器合胞体ウイルス及びヒトmetapneumovirusが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、ヒトmetapneumovirus感染症である。
【0158】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるPneumoviridaeウイルス感染症の治療のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、ヒトmetapneumovirus感染症である。
【0159】
いくつかの実施形態では、本開示は、Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Pneumoviridaeウイルス感染症は、ヒトmetapneumovirus感染症である。
【0160】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、呼吸器合胞体ウイルスに感染した個体(例えば、ヒト)に投与することを含む、RSV感染症を治療するための方法を提供する。典型的には、個体は、慢性呼吸器合胞体ウイルス感染症に罹患しているが、RSVに急性感染した人々を治療することは、本開示の範囲内である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を個体(例えば、ヒト)に投与することを含む、RSV複製を阻害する方法が提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、本開示は、RSV感染症と関連するウイルス負荷を低減するための方法を提供し、この方法は、RSVに感染した個体(例えば、ヒト)に治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、治療有効量は、個体におけるRSVウイルス負荷を低減するのに十分である。
【0163】
本明細書でより十分に説明されるように、本開示の化合物は、1つ以上の追加の治療剤を、RSVに感染した個体(例えば、ヒト)に投与することができる。追加の治療剤は、本開示の化合物と同時に、又は本開示の化合物の投与前若しくは投与後に、感染した個体(例えば、ヒトに)に投与することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防に使用するための本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。いくつかの実施形態では、RSV感染症を治療又は予防するための医薬品の製造のために、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0165】
本明細書でより十分に説明されるように、本開示の化合物は、1つ以上の追加の治療剤を、RSVに感染した個体(例えば、ヒト)に投与することができる。更に、いくつかの実施形態では、RSVを治療又は予防するために使用される場合、本開示の化合物は、RSV併用薬、RSVワクチン、RSV DNAポリメラーゼ阻害剤、免疫調節剤、toll様受容体(toll-like receptor、TLR)モジュレータ、インターフェロンα受容体リガンド、ヒアルロニダーゼ阻害剤、呼吸器合胞体表面抗原阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(ipi4)阻害剤、シクロフィリン阻害剤、RSVウイルス侵入阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド標的化ウイルスmRNA、短干渉RNA(short interfering RNA、siRNA)及びddRNAiエンドヌクレアーゼモジュレータ、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤、RSV E抗原阻害剤、共有結合閉環状DNA(covalently closed circular DNA、cccDNA)阻害剤、ファルネソイドX受容体アゴニスト、RSV抗体、CCR2ケモカインアンタゴニスト、チモシンアゴニスト、サイトカイン、ヌクレオタンパク質モジュレータ、レチノイン酸誘導性遺伝子1刺激因子、NOD2刺激因子、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(phosphatidylinositol 3-kinase、PI3K)阻害剤、インドレアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine-2,3-dioxygenase、IDO)経路阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、組換えチモシンα-1アゴニスト、ブルトン型チロシンキナーゼ(bruton's tyrosine kinase、BTK)阻害剤、KDM阻害剤、RSV複製阻害剤、アルギナーゼ阻害剤、及び他のRSV薬物からなる群から選択される、1つ以上(例えば、1、2、3、4つ以上)の追加の治療剤と共に投与され得る。
Picornaviridae
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示は、Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。Picornaviridaeウイルスは、ヘルパンギーナ、無菌髄膜炎、風邪様症候群(ヒトライノウイルス感染症)、非麻痺性ポリオ様症候群、流行性胸膜痛(一般的には流行中に発生する急性、発熱性、感染性疾患)、手足口病、小児及び成人膵炎、並びに重篤な心筋炎を含む、混成群の感染症を引き起こすエンテロウイルスである。いくつかの実施形態では、Picornaviridaeウイルス感染症は、ヒトライノウイルス感染症である。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるPicornaviridaeウイルス感染症の治療のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、Picornaviridaeウイルス感染症は、ヒトライノウイルス感染症である。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は、Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、Picornaviridaeウイルス感染症は、ヒトライノウイルス感染症である。
Flaviviridae
【0169】
いくつかの実施形態では、本開示は、Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。代表的なFlaviviridaeウイルスには、デング、黄熱、ウェストナイル、ジカ、日本脳炎ウイルス、C型肝炎(Hepatitis C、HCV)、及びB型肝炎(Hepatitis B、HBV)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、デングウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、黄熱ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ウェストナイルウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ジカウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、日本脳炎ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、C型肝炎ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、B型肝炎ウイルス感染症である。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるFlaviviridaeウイルス感染症の治療のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、デングウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、黄熱ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ウェストナイルウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ジカウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、C型肝炎ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、B型肝炎ウイルス感染症である。
【0171】
いくつかの実施形態では、本開示は、Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、デングウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、黄熱ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ウェストナイルウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、ジカウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、C型肝炎ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、Flaviviridaeウイルス感染症は、B型肝炎ウイルス感染症である。
Filoviridae
【0172】
いくつかの実施形態では、本開示は、Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含む。代表的なFiloviridaeウイルスには、エボラ及びマールブルグが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Filoviridaeウイルス感染症は、エボラウイルス感染症である。
【0173】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるFiloviridaeウイルス感染症の治療のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、Filoviridaeウイルス感染症は、エボラウイルス感染症である。
【0174】
いくつかの実施形態では、本開示は、Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、Filoviridaeウイルス感染症は、エボラウイルス感染症である。
VIII.ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防の方法
【0175】
式Iの化合物はまた、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用することもできる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含み、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusの投与によって引き起こされる。
【0177】
いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法を提供し、この方法は、治療有効量の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩をヒトに投与することを含み、呼吸器状態は、喘息である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる。
【0178】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusの投与によって引き起こされる。
【0179】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法を提供し、呼吸器状態は、喘息である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる。
【0180】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusの投与によって引き起こされる。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおけるウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防のための医薬品の製造のための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供し、呼吸器状態は、喘息である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる。
【0182】
いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、呼吸器状態は、慢性閉塞性肺疾患である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusの投与によって引き起こされる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、呼吸器状態は、喘息である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる。
【実施例】
【0184】
IX.(実施例)
略語
ある特定の略語及び頭字語は、実験の詳細を説明する際に使用される。これらのほとんどは当業者によって理解されるが、以下の表は、これらの略語及び頭字語の多くのリストを含む。
【表1】
【0185】
化合物及び中間体は、分取HPLC(Phenomenex Gemini 10u C18 110Å AXIA 250×21.2mmカラム、0.1% TFAを含む30~70%のアセトニトリル/水勾配)に供することができる。いくつかの化合物は、この分取HPLCプロセス後にTFA塩として得られる。
A.中間体
中間体1.
【化13】
【0186】
反応器1に、3-O-ベンジル-4-(ヒドロキシメチル)-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-リボフラノース(125g、402mmol、1.0当量)を充填する。THF(625mL、5体積)、続いて臭化ベンジル(106mL、2.2当量)を充填する。ジャケットを0℃に設定する。T
intを10℃未満に保持する様式で、NaHMDS(THF中40重量%、450mL、2.2当量)を充填する。添加が完了した後、ジャケットを15℃に設定し、60分間撹拌する。TLC(80%ヘキサン中の20%酢酸エチル)によって反応を監視し、モリブデン酸アンモニウムセリウム(ceric ammonium molybdate、CAM)で染色する。ジャケットを5℃に設定する。酢酸(70mL、2.5当量)を水(1L、8体積)に溶解する。T
intを15℃未満に保持する様式で、水溶液を反応に充填し、相を分離させる。下部水層を反応器2に排出する。反応器1の内容物を約50%濃縮する。MTBE(1.25L、10体積)を反応器2に充填する。15分間撹拌し、層を分離させる。下部水層を排出し、廃棄する。反応器2の内容物を反応器1に充填する。14%ブライン溶液(1L、8体積)を反応器1に充填する。15分間撹拌し、下部水層を排出する。有機物を約50%濃縮する。内容物をメタノール(3×8体積)で共蒸発させる。中間体1を約4体積に濃縮し、次のステップにそのまま使用する。
中間体2.
【化14】
【0187】
粗中間体1(197g、402mmol、1当量)を含有する反応器1に、メタノール(1L、5体積)、ジオキサン(120mL、1.2当量)中の4M HCl、及び濃硫酸(1.1mL、0.05当量)を充填する。周囲温度で2時間撹拌する。TLC(30%酢酸エチル、70%ヘキサン)によって反応を監視し、CAM染色する。5M KOH溶液をpH>7(100mL、1.25当量)になるまでゆっくりと充填する。反応混合物を約2体積に濃縮する。酢酸エチル(1L、5体積)を充填する。水(1L、5体積)を充填する。15分間撹拌する。下部水層を反応器2に排出する。酢酸エチル(1L、5体積)を反応器2に充填し、15分間撹拌する。下部水層を排出し、廃棄する。残りの反応器2の内容物を反応器1に充填する。反応器1の内容物を約3体積に濃縮する。MTBE(400mL、2体積)を反応器1に充填する。硫酸ナトリウム(400g、2S)を充填し、15分間撹拌する。固体を濾別し、ケーキをMTBE(200mL、1体積)で洗浄する。有機物を反応器1に充填する。約3体積に濃縮する。THF(400mL、2体積)を充填し、約3体積に濃縮する。THF(400mL、2体積)を充填し、約3体積に濃縮して、中間体2を得る。30%酢酸エチル、70%ヘキサン中約0.1及び0.4のR
f。
中間体3.
【化15】
【0188】
粗中間体2(186g、402mmol)を含有する反応器1に、THF(1L、5体積)及び臭化ベンジル(60mL、1.25当量)を充填する。ジャケットを5℃に設定する。T
intを20℃未満に保持する様式で、NaHMDS 40重量%(245mL、1.25当量)を充填する。ジャケットを15℃に設定し、60分間撹拌する。TLC(30%酢酸エチル、70%ヘキサン)によって反応の進行を監視し、CAM染色する。ジャケットを0℃に設定する。酢酸(46mL、2当量)を水(1L、5体積)に取り込む。T
intを15℃未満に保持する様式で、水溶液を反応器1に充填する。ジャケットを15℃に設定し、15分間撹拌する。相を分離させ、下部水層を反応器2に排出する。MTBE(1L、5体積)を反応器2に充填し、15分間撹拌する。反応器1を約50%濃縮する。相を反応器2内で分離させ、下部水層を排出し、廃棄する。反応器2の内容物を反応器1に充填する。14%ブライン溶液(1L、5体積)を充填する。15分間撹拌する。下部水層を排出し、廃棄する。粗中間体3(30%酢酸エチル、70%ヘキサン中約0.8のR
f)を約1体積に濃縮し、次のステップにそのまま使用する。
中間体4.
【化16】
【0189】
ジャケットが20℃に設定された状態で、中間体3(222g、401mmol)を含有する反応器1に、水(222mL、1Vol)を充填する。T
intを30℃未満に保持する様式で、TFA(667mL、3体積)を充填する。20℃で24時間撹拌する。TLC(30%酢酸エチル、70%ヘキサン)によって監視し、CAM染色する。反応器1の内容物を約2体積に濃縮する(550mLの溶媒を除去)。MTBE(1.5L、7体積)を充填する。ジャケットを10℃に設定する。T
intを25℃未満に保持する様式で、5M NaOH(600mL、7.5体積)をpH>6まで充填する。ガス放出を最小限に抑える様式で、5重量%のNaHCO
3(1.1L、5体積)を充填する。15分間撹拌する。下部水層を排出し、廃棄する。14%ブライン溶液(1.1L、5体積)を充填する。15分間撹拌する。下部水層を排出し、廃棄する。MTBE層を約4.5体積に濃縮し、次のステップにそのまま使用する。中間体4 30%酢酸エチル、70%ヘキサン中約0.5のR
f。
中間体5.
【化17】
【0190】
MTBE 4.5体積中の粗中間体4(216g、401mmol)を含有する-5℃に設定された反応器1に、TEMPO(0.6g、0.01当量)及びKBr(4.53g、0.1当量)を充填する。K
2HPO
4
*3H
2O(87g、1当量)を水(1.5体積)に溶解する。反応器に充填する。T
intを10℃未満に保持する様式で(約50分)、8.25%の漂泊溶液(425mL、1.35当量)を充填する。ジャケットを5℃に設定し、1時間撹拌する。TLC(30%酢酸エチル、70%ヘキサン)によって反応を監視し、CAM染色する。チオ硫酸ナトリウム(30g、0.5当量)を水(310mL、1.5体積)に溶解する。T
intを15℃未満に保持する様式で、反応器1に充填する。ジャケットを15℃に設定する。15分間撹拌する。KIストリップを使用して、漂白剤の消費について試験する。下部水層を排出し、廃棄する。1S硫酸ナトリウムを充填し、15分間撹拌する。固体を濾別し、ケーキを1体積のMTBEで洗浄する。油に濃縮し、ヘキサン中25Sシリカ0~50%酢酸エチルを使用したシリカゲルクロマトグラフィにより45分間にわたって精製して、3R,4S)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-5,5-ビス((ベンジルオキシ)メチル)ジヒドロフラン-2(3H)-オン(中間体5)を得る。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 7.40-7.24(m,18H),7.24-7.19(m,2H),4.87-4.74(m,2H),4.74-4.68(m,2H),4.61-4.39(m,6H),3.83-3.66(m,4H)。
中間体6.
【化18】
【0191】
反応器1に、中間体7(50.83g、195.5mmol、1.11当量)、続いてTHF(5体積)。反応器1のジャケットを0℃に設定する。反応器2に、中間体5(94.84g、176.1mmol、1.0当量)、THF(5体積)、及びTHF(290mL、170mmol、1当量)中の0.6M LaCl
3
*2LiClを充填する。反応器2を周囲温度で30分間撹拌する。反応器1に、T
intを5℃未満に保持する様式で、TMS-Cl(25.1mL、197.2mmol、1.12当量)を充填する。15分間撹拌する。反応器1のジャケットを-10℃に設定し、T
intを0℃未満に保持する様式で、THF(185mL、370mmol、2.1当量)中の2.0M PhMgClを充填する。15分間撹拌する。反応器1及び2のジャケットを-20℃に設定する。反応器1に、T
intを-15℃未満に保持する様式で、THF(100mL、199mmol、1.13当量)中の2.0M iPrMgClを充填する。-15℃で15分間撹拌する。T
intを-15℃未満に保持する様式で、反応器1の内容物を反応器2に移す。-15℃で60分間撹拌する。T
intを20℃未満に保持する様式で、水(5体積)中の酢酸(66mL、1145mmol、6.5当量)を反応器2に充填する。反応器2のジャケットを20℃に設定する。15分間撹拌する。層を分離する。反応器2に、酢酸イソプロピル(4体積)及び水(3体積)を充填する。5分間撹拌する。層を分離し、有機物を0.5M HCl(2体積)で洗浄する。層を分離し、有機物を2×5体積の10重量% KHCO
3(水性)で洗浄する。有機物を14%ブライン溶液(5体積)で洗浄する。層を分離し、有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させる。固体を濾別し、液を濃縮して次のステップにはめ込まれる中間体6を得る。
UPLC/MS t
R=3.759及び3.825分、MS m/z=673.33[M+1];
UPLC/MSシステム:Waters Acquity Hクラス
カラム:Waters Acquity BEH 1.7μM C18 2.1×50mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:2% ACN 0~0.5分。2% ACN-98% ACN 0.5分~3.0分。98% ACN 3分~4分。98% ACN~2% ACN 4分~4.5分。2% ACN 4.5分~5分。
流量:0.5mL/分
質量範囲:100~1200
中間体6の代替合成。
【化19】
【0192】
反応器1に、中間体7(5.90g、22.7mmol、1.11当量)、続いてTHF(5体積)。反応器1のジャケットを0℃に設定する。反応器2に、無水NdCl
3(5.1g、20.4mmol、1当量)、TBACl(6.1g、22.1mmol、1.08当量)、及びTHF(10体積)を充填する。反応器2のジャケットを90℃に設定する。蒸留してTHFの約50%を取り除き、内容物を共沸乾燥させる。中間体5(11g、20.4mmol、1.0当量)を反応器2に充填し、周囲温度で30分間撹拌する。反応器1に、T
intを5℃未満に保持する様式で、TMS-Cl(2.9mL、22.9mmol、1.12当量)を充填する。15分間撹拌する。反応器1のジャケットを-10℃に設定し、T
intを0℃未満に保持する様式で、THF(22.2mL、44.3mmol、2.1当量)中の2.0M PhMgClを充填する。15分間撹拌する。反応器1及び2のジャケットを-20℃に設定する。反応器1に、T
intを-15℃未満に保持する様式で、THF(11.5mL、199mmol、1.13当量)中の2.0M iPrMgClを充填する。-15℃で15分間撹拌する。T
intを-15℃未満に保持する様式で、反応器1の内容物を反応器2に移す。-15℃で60分間撹拌する。T
intを20℃未満に保持する様式で、水(5体積)中の酢酸(66mL、1145mmol、6.5当量)を反応器2に充填する。反応器2のジャケットを20℃に設定する。15分間撹拌する。層を分離する。反応器2に、酢酸イソプロピル(4体積)及び水(3体積)を充填する。5分間撹拌する。層を分離し、有機物を0.5M HCl(2体積)で洗浄する。層を分離し、有機物を2×5体積の10重量% KHCO
3(水性)で洗浄する。有機物を14%ブライン溶液(5体積)で洗浄する。層を分離し、有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させる。固体を濾別し、液を濃縮して、次のステップにはめ込まれる中間体6を得る。
UPLC/MS t
R=3.759及び3.825分、MS m/z=673.33[M+1]
UPLC/MSシステム:Waters Acquity Hクラス
カラム:Waters Acquity BEH 1.7μM C18 2.1×50mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:2% ACN 0~0.5分。2% ACN-98% ACN 0.5分~3.0分。98% ACN 3分~4分。98% ACN~2% ACN 4分~4.5分。2% ACN 4.5分~5分。
流量:0.5mL/分
質量範囲:100~1200
中間体8.
【化20】
【0193】
反応器に、DCM(10体積)中の中間体6(約118g、176mmol)を充填する。ジャケットを-20℃に設定する。トリエチルシラン(73mL、456mmol、2.6当量)を充填する。T
intを-15℃未満に保持する様式で、ジエチルエーテル(72mL、263.1mmol、1.5当量)中46.5質量%の三フッ化ホウ素を充填する。30分間撹拌する。ジャケットを0℃に設定する。T
intを20℃未満に保持する様式で、5M NaOH(175mL、877mmol、5体積)を充填する。ジャケットを20℃に設定する。水(10体積)を充填する。層を分離する。有機物層を濃縮する。水層を酢酸エチル(2×5体積)で逆抽出する。有機物を合わせ、14%ブライン(8体積)で洗浄する。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。中間体8を、シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン中50~100%酢酸エチル)によって単離する。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 7.83(s,1H),7.71(brs,2H),7.37-7.14(m,20H),6.83(d,J=4.5Hz,1H),6.61(d,J=4.4Hz,1H),5.47(d,J=7.0Hz,1H),4.68(d,J=11.6Hz,1H),4.61-4.43(m,8H),4.34(d,J=4.8Hz,1H),3.81-3.64(m,3H),3.62(d,J=10.0Hz,1H)。
UPLC/MS t
R=3.919分、MS m/z=657.32[M+1]
UPLC/MSシステム:Waters Acquity Hクラス
カラム:Waters Acquity BEH 1.7μM C18 2.1×50mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:2% ACN 0~0.5分。2% ACN-98% ACN 0.5分~3.0分。98% ACN 3分~4分。98% ACN~2% ACN 4分~4.5分。2% ACN 4.5分~5分。
流量:0.5mL/分
質量範囲:100~1200
中間体9.
【化21】
【0194】
窒素パージされた丸底フラスコに、中間体8(21.7g、33mmol、1当量)を充填する。THF(3体積)、2,2-ジメトキシプロパン(3体積)、及びpTsOH(6.6g、34.6mmol、1.05当量)を充填する。ドライアイス浴中で冷却する。10% Pd/Cを充填する。排気し、水素で3回バックフィルする。周囲温度及び圧力で撹拌する。飽和NaHCO
3(水性)でpH>7にクエンチする。触媒を濾別し、ケーキをメタノール(2.5体積)で洗浄する。酢酸エチル(10体積)とブライン(10体積)とに分配する。層を分離し、有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させる。固体を濾別し、濃縮して中間体9を得、これを次のステップにはめ込む。
UPLC/Ms t
R=2.580分、MS m/z=477.14[M+1]
UPLC/MSシステム:Waters Acquity Hクラス
カラム:Waters Acquity BEH 1.7μM C18 2.1×50mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:2% ACN 0~0.5分。2% ACN-98% ACN 0.5分~3.0分。98% ACN 3分~4分。98% ACN~2% ACN 4分~4.5分。2% ACN 4.5分~5分。
流量:0.5mL/分
質量範囲:100~1200
中間体10.
【化22】
【0195】
丸底フラスコに、中間体9(12.3g、32.7mmol、1当量)、THF(10体積)、及びジ-tert-ブチル-ジカルボネート(14.4g、65.4mmol、2.0当量)を充填する。DMAP(10.1g、81.7mmol、2.5当量)を少量ずつ充填して、ガス放出及び発熱を最小限に抑える。60分間撹拌して、モノ及びビス-Bocの混合物を生成する。反応物を約50%濃縮する。MTBE(10体積)及び2.0M HCl(3.5体積)を充填する。層を分離する。水溶液を酢酸エチル(10体積)で逆抽出する。有機物を合わせ、飽和NaHCO
3(水性)で洗浄する。有機物を濃縮する。メタノール(10体積)を粗混合物に充填し、続いてKOH(3.67g、2.0当量)を充填する。ビス-Bocがモノ-Bocに変換されるまで撹拌する。反応物を濃縮する。酢酸エチル(10体積)と水(10体積)とに分配する。層を分離し、濃縮する。メタノール(8体積)を粗製物に充填し、続いてpTsOH(6.5g、34.2mmol、1.05当量)を充填する。周囲温度で撹拌する。5.25% NaHCO
3(水性)(80mL、52mmol、1.5当量)でクエンチする。約25%濃縮し、一晩撹拌する。固体を濾別し、ケーキをMTBE(8体積)で洗浄する。真空オーブン内で乾燥させて、中間体10を得る。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 10.45(s,1H),8.20(s,1H),7.19(d,J=4.3Hz,1H),6.95(d,J=4.7Hz,1H),5.35(d,J=5.2Hz,1H),5.06(t,J=5.7Hz,1H),4.79-4.74(m,2H),4.45(t,J=5.8Hz,1H),3.73-3.46(m,3H),3.40-3.30(m,1H),1.50(s,12H),1.27(s,3H)。
UPLC/MS t
R=2.767分、MS m/z=437.17[M+1]
UPLC/MSシステム:Waters Acquity Hクラス
カラム:Waters Acquity BEH 1.7μM C18 2.1×50mm
溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水
勾配:2% ACN 0~0.5分。2% ACN-98% ACN 0.5分~3.0分。98% ACN 3分~4分。98% ACN~2% ACN 4分~4.5分。2% ACN 4.5分~5分。
流量:0.5mL/分
質量範囲:100~1200
中間体11.(3R,4R,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-5-((ベンジルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン-2-オール
【化23】
【0196】
生成物を、国際公開第2015/069939号に従って調製した。例えば、国際公開第2015/069939号の43~45ページは、(国際公開第2015/069939号において化合物1dとして同定された)この化合物を調製するためのプロセスを提供する。代替的に、それを以下のように調製した。
【化24】
【0197】
リトリートカーブオーバーヘッド撹拌機、熱電対、及びN
2バブラーを備えた円筒型反応器に、無水NdCl
3(60.00g、239mol、1.00当量)、n-Bu
4NCl(71.51g、239mmol、1.0当量)、及びTHF(900g)を充填した。得られた混合物を、90℃のジャケット温度を使用して、N
2パッド下、周囲温度で約450mLに濃縮した。THF(500g)を充填し、蒸留を繰り返した(2回)。混合物を22℃に冷却し、中間体12((3R,4R,5R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-5-((ベンジルオキシ)メチル)ジヒドロフラン-2(3H)-オン)(100.02g、239mmol、1.00当量)を充填した。30分後、混合物を-20℃まで冷却し、保持した。別個の反応フラスコにおいて、ヨードピロロトリアジン中間体7(68.52g、264mmol、1.10当量)及びTHF(601g)を合わせ、0℃まで冷却した。TMSCl(28.64g、264mmol、1.10当量)をゆっくりと添加し、約30分後、混合物を10℃まで冷却した。PhMgCl(THF中2.0M、270.00g、5.18mmol、2.17当量)をゆっくりと添加し、混合物を約30分間撹拌し、-20℃まで冷却した。i-PrMgCl(THF中2.0M、131.13g、269mmol、1.13当量)をゆっくりと添加した。約2時間後、グリニャール反応混合物を、カニューレを介して、ラクトン/NdCl
3/nBu
4NCl/THF混合物に移し、混合物を約20℃で撹拌した。約16時間後、水(440g)中の酢酸(100g)の溶液を添加し、混合物を22℃まで温めた。
iPrOAc(331g)を添加し、層を分離した。有機層を10% KHCO
3(水性)(2×500g)及び10% NaCl(水性)(500g)で洗浄した。有機層を約450mLに濃縮し、
iPrOAc(870g)を充填した。有機混合物を水(2×500g)で洗浄し、約450mLに濃縮した。
iPrOAc(435g)を充填し、混合物を約450mLに濃縮した。混合物を濾過し、残渣を129gの
iPrOAcで前方にすすいだ。濾液を約250mLに濃縮し、MTBE(549g)を充填し、混合物を22℃に調整した。種結晶(0.15g)を充填し、続いてn-ヘプタン(230mL)を充填し、混合物を0℃まで冷却した。固体を濾過によって単離し、MTBE/n-ヘプタン混合物(113g/30g)で前方にすすいだ。得られた固体を真空下、35℃で乾燥させて、中間体11(収率79%及びLC純度99.92%)を得た。
中間体13.(3aS,4R,6S,6aS)-6-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-4-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-カルボニトリル
【化25】
【0198】
生成物を、国際公開第2015/069939号に従って調製した。例えば、国際公開第2015/069939号の127~138ページは、(国際公開第2015/069939号において化合物14kとして同定された)この化合物を調製するためのプロセスを提供する。
【0199】
代替的に、中間体10を上記のように調製し、次いで、国際公開第2015/069939号に記載されているように中間体13に変換した(国際公開第2015/069939号の133~138ページに記載される、国際公開第2015/069939号における化合物14fの国際公開第2015/069939号における化合物14kへの変換)。
【0200】
代替的に、中間体11を上記のように調製し、次いで、国際公開第2015/069939号に記載されているように中間体13に変換した(国際公開第2015/069939号の45~46ページ及び127~138ページに記載される、国際公開第2015/069939号における化合物1dの国際公開第2015/069939号における化合物14kへの変換)。
中間体14.(3aS,4R,6S,6aS)-6-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-4-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-カルボニトリル
【化26】
【0201】
中間体13(8.41g、18.87mmol)をTHF(100mL)に取り込んだ。THF(28.31mL、28.31mmol)中のTBAF 1.0Mを周囲温度で一度に添加した。周囲温度で10分間撹拌した。反応は、LCMSによって完了したと決定された。反応混合物を水でクエンチし、有機物を減圧下で除去した。粗製物をEtOAcとブラインとに分配した。層を分離し、水層をEtOAcで洗浄した。有機物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させた。固体を濾別し、溶媒を減圧下で除去した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィ120gカラム、CH
2Cl
2中0~10%のCH
3OHによって精製して、生成物を得た。LC/MS:t
R=0.76分、MS m/z=332.14[M+1];LCシステム:Thermo Accela 1250 UHPLC。MSシステム:Thermo LCQ Fleet;カラム:Kinetex 2.6μ XB-C18 100A、50×3.00mm。溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水。勾配:1.8mL/分で0分~2.4分 2~100% ACN、2.4分~2.80分 100% ACN、2.8分~2.85分 100%~2% ACN、2.85分~3.0分 2% ACN。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 7.87-7.80(m,3H),6.85(d,J=4.5Hz,1H),6.82(d,J=4.5Hz,1H),5.74(t,J=5.8Hz,1H),5.52(d,J=4.2Hz,1H),5.24(dd,J=6.8,4.2Hz,1H),4.92(d,J=6.8Hz,1H),3.65(dd,J=6.1,1.7Hz,2H),1.61(s,3H),1.33(s,3H)。
中間体15.(S)-シクロヘキシル2-アミノプロパノエート塩酸塩
【化27】
【0202】
L-アラニン(5g、56.12mmol)及びシクロヘキサノール(56g、561mmol)の混合物にTMSCl(20mL)を添加した。得られた混合物を約70℃で約15時間撹拌し、約80℃で真空中で濃縮し、トルエンで共蒸発させ、ヘキサンに溶解し、約室温で撹拌し、その間に固体を沈殿させた。固体を濾過によって収集し、濾過ケーキをヘキサン中5%のEtOAcで数回洗浄し、高真空下で約15時間乾燥させて生成物を得た。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.76(s,3H),4.85(tt,J=8.7,3.8Hz,1H),4.17(p,J=6.5Hz,1H),1.84(dd,J=9.9,5.5Hz,2H),1.70(d,J=7.3Hz,5H),1.57-1.42(m,3H),1.32(m,3H)。
中間体16.(2S)-シクロヘキシル2-(((4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート
【化28】
【0203】
中間体15(3.4g、16.37mmol)を塩化メチレン(45mL)に溶解し、-78℃まで冷却し、ジクロロリン酸フェニル(2.45mL、16.37mmol)を素早く添加した。トリエチルアミン(4.54mL、32.74mmol)を-78℃で60分かけて添加し、次いで、4-ニトロフェノール(2277mg、16.37mmol)を一度に添加した。トリエチルアミン(2.27mL、16.37mmol)を-78℃で60分かけて添加した。得られた混合物を、-78℃で2時間撹拌し、塩化メチレン(100mL)で希釈し、水で2回及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中0~20%のEtOAc)によって精製して、生成物を得た。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.22(m,2H),7.46-7.30(m,4H),7.29-7.09(m,3H),4.76(m,1H),4.20-4.02(m,1H),3.92(m,1H),1.87-1.64(m,4H),1.54(m,2H),1.46-1.18(m,7H)。
31P NMR(162MHz,クロロホルム-d)δ-2.94,-3.00。MS m/z=449(M+H)
+。
B.化合物
実施例1.(2S)-シクロヘキシル2-(((((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート(式Ia)の調製
【化29】
【0204】
DMF(4mL)中の中間体14(99mg、0.30mmol)、中間体16(201mg、0.45mmol)、及びMgCl2(43mg、0.45mmol)の混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL、0.75mmol)を室温で滴加した。得られた混合物を室温で15時間撹拌し、分取HPLC(Phenominex Synergi 4u Hydro-RR 80Å 150×30mmカラム、10~100%アセトニトリル/水勾配)によって精製して中間体を得、これをACN(3mL)に溶解し、c-HCl(0.1mL)を添加した。得られた混合物を50℃で2時間撹拌し、冷却し、分取HPLC(Phenominex Synergi 4u Hydro-RR 80Å 150×30mmカラム、10~80%アセトニトリル/水勾配)によって精製して、生成物を得た。1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ 7.80(s,0.5H),7.78(s,0.5H),7.42-7.05(m,5H),6.84(m,1H),6.73(m,1H),5.50(m,1H),4.64(m,2H),4.57-4.25(m,3H),3.86(m,1H),1.91-1.61(m,4H),1.61-1.09(m,9H)。31P NMR(162MHz,メタノール-d4)δ 3.3。MS m/z=601(M+H)+。
【0205】
ジアステレオマーの分離。生成物をキラル分取HPLC(Chiralpak IA、150×4.6mm、ヘプタン70%エタノール30%)によって精製した。
実施例2.シクロヘキシル((R)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(式Ib)の調製
【化30】
【0206】
実施例1の第1の溶出ジアステレオマー:
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ 7.78(s,1H),7.34-7.23(m,2H),7.19-7.10(m,3H),6.85(d,J=4.5Hz,1H),6.73(d,J=4.5Hz,1H),5.51(d,J=5.0Hz,1H),4.69(td,J=8.8,4.2Hz,1H),4.62(t,J=5.3Hz,1H),4.53-4.44(m,2H),4.36(dd,J=10.9,5.2Hz,1H),3.86(dq,J=9.4,7.1Hz,1H),1.85-1.62(m,4H),1.58-1.20(m,9H)。
31P NMR(162MHz,メタノール-d
4)δ 3.31。
実施例3.シクロヘキシル((S)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(式I)の調製
【化31】
【0207】
実施例1の第2の溶出ジアステレオマー:
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ 7.80(s,1H),7.37-7.27(m,2H),7.26-7.13(m,3H),6.84(d,J=4.5Hz,1H),6.73(d,J=4.5Hz,1H),5.49(d,J=5.0Hz,1H),4.71-4.56(m,2H),4.46(d,J=5.6Hz,1H),4.45-4.30(m,2H),3.97-3.77(m,1H),1.80-1.61(m,4H),1.55-1.21(m,9H)。
31P NMR(162MHz,メタノール-d
4)δ 3.31。
実施例4.イソプロピル((((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(化合物3)の合成。
【化32】
【0208】
(2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-カルボニトリルを、国際公開第2015/069939号に従って調製した。例えば、国際公開第2015/069939号の43~54ページは、国際公開第2015/069939号において化合物1として同定された化合物を調製するためのプロセスを提供する。
【0209】
(2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-カルボニトリル(0.149g、0.512mmol)を無水THFに取り込み、濃縮した。得られた残渣を高真空下で1.5時間置いた。次いで、残渣をNMP(4mL)に溶解し、次いでTHF(1mL)を添加した。この溶液を氷浴中で冷却し、THF(0.767mL、0.767mmol)中のtert-BuMgClの1M溶液を添加し、白色の沈殿物を形成させた。5分後、冷浴を除去し、混合物を音波処理して沈殿物固体を分散させ、反応物を室温で10分間撹拌した。THF(0.9mL)中の中間体イソプロピル((4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(0.251g、0.614mmol;国際公開第2011/123668号)を添加した。反応物を室温で撹拌し、進行をLC/MSによって監視した。1時間45分後、反応物を氷浴中で冷却し、氷AcOH(0.25mL)の添加によってクエンチした。氷浴を除去して、撹拌を室温で5分間続けた。揮発性物質を蒸発によって除去し、生成物をHPLCによって残渣から単離した。1H NMR(400MHz,メタノール-d4,アスタリスク(*)が付いた化学シフトは、第2の異性体上に存在する関連プロトンのシフトを示す)δ 7.81(s,0.41H),7.79*(s,0.59H),7.36-7.12(m,5H),6.85(m,1H),6.74(m,1H),5.50(m,1H),4.97-4.85(m,1H),4.63(m,1H),4.54-4.32(m,3H),3.85(m,1H),1.25(d,J=7.1Hz,2H),1.20*(d,J=6.3Hz,4H),1.16(t,J=6.3Hz,3H)。31P NMR(162MHz,メタノール-d4)δ 3.30(s)。MS m/z=561.03[M+1]。
実施例5.(S)-イソプロピル2-(((S)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート(化合物4)の合成。
【0210】
(2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-カルボニトリルを、実施例4に記載されているように調製した。
【0211】
イソプロピル((S)-(4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネートを、Cho et al.,J.Med.Chem.2014,57,1812-1825に記載されているように調製した。
【0212】
(2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-カルボニトリル(50mg、0.172mmol)及びイソプロピル((S)-(4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(84mg、0.206mmol)を、無水N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中で混合した。塩化マグネシウム(36mg、0.378mmol)を一度に添加した。反応混合物を50℃で加熱した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(75μL,0.43mmol)を添加し、反応物を50℃で4.5時間撹拌した。反応混合物を冷却し、酢酸エチル(30mL)で希釈し、5%クエン酸水溶液(10mL)、次いでブライン(10mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製物をSiO
2カラムクロマトグラフィ(4g SiO
2 Combiflash(登録商標) HP Gold Column、0~2~5%メタノール/ジクロロメタン)によって精製して、生成物を得た。
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ 7.79(s,1H),7.36-7.25(m,2H),7.25-7.12(m,3H),6.84(d,J=4.5Hz,1H),6.73(d,J=4.5Hz,1H),5.49(d,J=5.1Hz,1H),4.91-4.84(m,1H),4.62(dd,J=5.6,5.0Hz,1H),4.47(d,J=5.6Hz,1H),4.45-4.30(m,2H),3.85(dq,J=10.0,7.1Hz,1H),1.25(d,J=7.2Hz,3H),1.15(t,J=6.4Hz,6H)。
31P NMR(162MHz,メタノール-d
4)δ 3.31。MS m/z=561.0[M+1],559.0[M-1]。
実施例6.(2S)-ペンタン-3-イル2-(((((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート(化合物5)の合成。
【化33】
【0213】
(S)-ペンタン-3-イル2-アミノプロパノエート塩酸塩。L-アラニネート(5g、56.12mmol)及び3-ヒドロキシペンタン(50mL)の混合物に、TMSCl(20mL)を添加した。得られた混合物を70℃で15時間撹拌し、80℃で回転蒸発器で濃縮した。得られた固体をヘキサン中5%のEtOAcで粉砕し、濾過し、ヘキサン中5%のEtOAcで数回洗浄し、高真空下で一晩乾燥させて中間体を得た。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.79(s,3H),4.83(p,J=6.2Hz,1H),4.19(p,J=6.5Hz,1H),1.72(d,J=7.2Hz,3H),1.67-1.52(m,4H),0.88(td,J=7.5,1.7Hz,6H)。
【化34】
【0214】
(2S)-ペンタン-3-イル2-(((4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート。(S)-ペンタン-3-イル2-アミノプロパノエート塩酸塩(1.00g、5.11mmol)を、塩化メチレン(15mL)に懸濁し、-78℃に冷却し、ジクロロリン酸フェニル(0.76mL、5.11mmol)を素早く添加した。トリエチルアミン(1.42mL、10.22mmol)を-78℃で30分かけて添加し、得られた混合物を-78℃で30分間撹拌した。次いで、4-ニトロフェノール(711mg、5.11mmol)を一度に添加し、トリエチルアミン(0.71mL、5.11mmol)を-78℃で30分かけて添加した。混合物を-78℃で30分間撹拌し、水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中0~20%のEtOAc)によって精製して、(2S)-ペンタン-3-イル2-(((4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエートを得た。
1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.22(m,2H),7.46-7.30(m,4H),7.31-7.14(m,3H),4.78(m,1H),4.27-4.04(m,1H),3.98-3.77(m,1H),1.72-1.45(m,4H),1.42(m,3H),0.84(m,6H)。
31P NMR(162MHz,クロロホルム-d)δ-2.99,-3.06。MS m/z=437(M+H)
+。
【化35】
【0215】
(2S)-ペンタン-3-イル2-(((((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート。DMF(3mL)中の中間体14(66mg、0.30mmol)、(2S)-ペンタン-3-イル2-(((4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)プロパノエート(170mg、0.39mmol)、及びMgCl
2(28mg、0.30mmol)の混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.087mL、0.50mmol)を室温で滴加した。得られた混合物を60℃で15時間撹拌し、HPLC(水中0~100%のACN)によって精製して中間体を得、これをACN(3mL)に溶解し、C-HCl(0.1mL)を添加した。得られた混合物を50℃で2時間撹拌し、分取HPLC(Phenominex Synergi 4u Hydro-RR 80Å 150×30mmカラム、5~100%アセトニトリル/水勾配)によって精製して、生成物を得た。
1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ 7.79(m,1H),7.36-7.07(m,5H),6.84(m,1H),6.73(m,1H),5.50(m,1H),4.76-4.59(m,2H),4.54-4.40(m,2H),4.34(m,1H),3.89(m,1H),1.63-1.42(m,4H),1.27(m,3H),0.91-0.75(m,6H)。
31P NMR(162MHz,メタノール-d4)δ 3.37,3.29。MS m/z=589(M+H)
+。
実施例7.2-エチルブチル((S)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アラニネート(化合物6)の合成。
【化36】
【0216】
2-エチルブチル((S)-(4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)(ホスホリル)-L-アラニネートを、国際公開第2016/069825号に記載されているように調製した。
【0217】
中間体14(700mg、2.113mmol)、2-エチルブチル((S)-(4-ニトロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(998mg、2.218mmol)、及び塩化マグネシウム(302mg、3.169mmol)の混合物に、テトラヒドロフラン(8.5mL)を室温で添加し、続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.92mL、5.282mmol)を添加した。得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を飽和塩化ナトリウム溶液及びジクロロメタンで希釈した。層を分割し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残渣をSiO
2カラムクロマトグラフィ(80g SiO
2 Combiflash(登録商標) HP Gold Column、100%ジクロロメタン-溶出液としてジクロロメタン中14%メタノール)によって精製した。得られた純粋な物質を無水アセトニトリル(10mL)に溶解し、氷浴中で冷却し、続いて濃塩酸(4mL、48mmol)を滴加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。1時間後、反応混合物を氷浴中で冷却し、水で希釈した。溶液を3N水酸化ナトリウムで中和し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣を、SiO
2カラムクロマトグラフィ(40g SiO
2 Combiflash(登録商標)HP Gold Column、100%ジクロロメタン-ジクロロメタン中20%メタノール)によって精製して、生成物を得た。
1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ 7.80(s,1H),7.38-7.29(m,2H),7.27-7.13(m,3H),6.84(d,J=4.5Hz,1H),6.74(d,J=4.5Hz,1H),5.49(d,J=5.0Hz,1H),4.61(t,J=5.3Hz,1H),4.49-4.29(m,3H),4.04-3.82(m,3H),1.43(dq,J=12.5,6.1Hz,1H),1.37-1.23(m,7H),0.84(td,J=7.5,1.1Hz,6H)。
31P NMR(162MHz,アセトニトリル-d3)δ 2.73。MS m/z=603[M+1]。
実施例8.2-エチルブチル((R)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(化合物7)の合成。
【化37】
【0218】
この化合物を、国際公開第2015/069939号からの実施例34のSp及びRpジアステレオマーの分解によって調製した。国際公開第2015/069939号からの実施例34を、キラル分取SFC(Chiralpak AD-H、30%イソクラティックエタノール)によって、国際公開第2015/069939号からの実施例34の第1の溶出ジアステレオマーとしての化合物7に精製した:
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ 7.78(s,1H),7.32-7.24(m,2H),7.19-7.10(m,3H),6.84(d,J=4.5Hz,1H),6.72(d,J=4.5Hz,1H),5.51(d,J=5.0Hz,1H),4.63(t,J=5.3Hz,1H),4.54-4.43(m,2H),4.36(m,1H),4.07-3.84(m,3H),1.53-1.42(m,1H),1.38-1.24(m,7H),0.86(t,J=7.5Hz,6H)。
31P NMR(162MHz,メタノール-d
4)δ 3.26(s)。HPLC:t
R=5.068分;HPLCシステム:Agilent 1290 II;カラム:Phenomenex Kinetex C18、2.6u 110A、100×4.6mm;溶媒:A:0.1% TFAを含む水、B:0.1% TFAを含むアセトニトリル;勾配:1.5mL/分で8.5分勾配を有する2~98%B。
実施例9.エチル((S)-(((2R,3S,4R,5S)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-2-シアノ-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(化合物8)の合成。
エチル((S)-(ペルフルオロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート
【化38】
【0219】
DCM(15mL)中のL-アラニンエチルエステル-HCl(631mg、2.465mmol)の溶液に、フェニルホスホロジクロリダート(0.368mL、2.465mmol)を-78℃で一度に添加し、トリエチルアミン(0.68mL、4.93mmol)を-78℃で5分かけて滴加した。得られた混合物を、ドライアイス浴の除去後に30分間撹拌し、次いで-78℃まで冷却した。ペンタフルオロフェノール(454mg、2.465mmol)を一度に添加し、トリエチルアミン(0.34mL、2.465mmol)を-78℃で5分かけて添加した。得られた混合物を、ドライアイス浴の除去後に1時間撹拌し、次いでDCMで希釈し、ブラインで洗浄し、真空中で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中0~60%のEtOAc)によって精製してジアスティオマー混合物を得、これにジイソプロピルエーテル(4mL)を添加した。懸濁液を音波処理し、濾過した。濾過ケーキの1H NMRは、それが3:1比の混合物であることを示した。ジイソプロピルエーテル(5mL)を濾過ケーキに添加し、懸濁液を70℃で透明な溶液になるまで加熱した。加熱浴を除去すると、針状結晶が形成し始め、10分後に混合物を濾過し、濾過ケーキを高真空下で30分間乾燥させて、Sp異性体を得た。
【0220】
ジアステレオマー混合物:1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.43-7.30(m,2H),7.32-7.17(m,3H),4.29-4.11(m,3H),3.94(m,1H),1.52-1.42(m,3H),1.28 (q,J=7.0Hz,3H)。
【0221】
Sp異性体:
1H NMR(400MHz,アセトニトリル-d3)δ 7.50-7.36(m,2H),7.32-7.21(m,3H),4.75(t,J=11.5Hz,1H),4.17-3.98(m,3H),1.37(dd,J=7.1,1.1Hz,3H),1.22(t,J=7.1Hz,3H)。
31P NMR(162MHz,アセトニトリル-d3)δ-0.51。
19F NMR(376MHz,アセトニトリル-d3)δ-155.48--155.76(m),-162.73(td,J=21.3,3.7Hz),-165.02--165.84(m)。LCMS m/z=440.5(M-エチル+H),t
R=1.57分;LCシステム:Thermo Accela 1250 UHPLC;MSシステム:Thermo LCQ Fleet;カラム:Phenomenex Kinetex 2.6μ、XB-C18 100A、50×3.0mm;溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水;勾配:1800μl/分で、0分~1.8分2~100%アセトニトリル、1.8分~1.85分100%~2%アセトニトリル、1.85分~2.00分2% ACN。
【化39】
【0222】
THF(6mL)中の中間体14(150mg、0.45mmol)、エチル((S)-(ペルフルオロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート(298mg、0.68mmol)、及びMgCl2(65mg、0.68mmol)の混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.20mL、1.13mmol)を滴加した。得られた混合物を50℃で2時間撹拌し、冷却し、EtOAc(150mL)で希釈し、ブライン(50mL×2)で洗浄し、乾燥させ、真空中で濃縮し、アセトニトリル(6mL)に再溶解し、c-HCL(0.3mL)を氷浴中で添加した。得られた混合物を氷浴中で1時間及び室温で1時間撹拌し、飽和NaHCO3(2mL)で処理し、HPLC(Phenomenex Gemini-NX 10μ C18 110Å、250×30mmカラム、25分の実行で5~70%アセトニトリル/水勾配)によって精製して、生成物を得た。1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ 7.80(s,1H),7.31(d,J=7.7Hz,2H),7.25-7.14(m,3H),6.84(d,J=4.5Hz,1H),6.73(d,J=4.6Hz,1H),5.49(d,J=5.1Hz,1H),4.62(t,J=5.3Hz,1H),4.46(d,J=5.6Hz,1H),4.40(dd,J=10.9,6.2Hz,1H),4.33(dd,J=10.9,5.4Hz,1H),4.11-3.98(m,2H),3.87(dd,J=9.9,7.1Hz,1H),1.25(dd,J=7.1,1.0Hz,3H),1.16(t,J=7.1Hz,3H)。31P NMR(162MHz,メタノール-d4)δ 3.26。LCMS:MS m/z=547.12[M+1];tR=0.76分;LCシステム:Thermo Accela 1250 UHPLC;MSシステム:Thermo LCQ Fleet;カラム:Phenomenex Kinetex 2.6μ、XB-C18 100A、50×3.0mm;溶媒:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル、0.1%ギ酸を含む水;勾配:1800μl/分で、0分~1.8分 2~100%アセトニトリル、1.8分~1.85分 100%~2%アセトニトリル、1.85分~2.00分 2% ACN。HPLC:tR=4.03分;HPLCシステム:Agilent 1290 II;カラム:Phenomenex Kinetex C18、2.6u 110A、100×4.6mm;溶媒:A:0.1% TFAを含む水、B:0.1% TFAを含むアセトニトリル;勾配:1.5mL/分で8.5分勾配を有する2~98%B。
C.生物学的実施例
実施例10.DENV Pol IC50
【0223】
配列5’-(UCAG)20(UCCAAG)14(UCAG)20-3’(配列番号1)を有する244ヌクレオチドの二次無構造ヘテロポリマーRNA(secondary structureless heteropolymeric RNA、sshRNA)を、DENV2-NS5ポリメラーゼアッセイにおいて5’-CUG-3’プライマーと共にテンプレートとして使用した。200nMから開始した化合物の6つの2倍希釈物を阻害剤対照なしで96ウェルプレートに播種した。100nMのDENV2 NS5を、40mMのトリス-HCl(pH7.5)、10mMのNaCl、3mMのDTT、0.2単位/μLのRNasin Plus RNase阻害剤、200ng/μLのsshRNA、20μMのCUG、及び2mMのMgCl2を含有する反応混合物中、室温で5分間プレインキュベートした。酵素混合物を化合物希釈物に添加し、20μMの3つの天然NTP+2μMの類似体:1:100 α-33P-NTPを含有する塩基整合した競合天然NTPを含有する混合物の添加によって反応を開始した。30℃で90分後、5μLの反応混合物をDE81陰イオン交換紙にスポットした。濾紙をNa2HPO4(125mM、pH9)で3回、5分間洗浄し、水及びエタノールですすいだ後、空気乾燥させ、ホスホイメージャに曝露した。合成RNAは、Typhoon Trio Imager及びImage Quant TLソフトウェアを使用して定量化し、反応速度は、GraphPad Prism 5.0を使用した線形回帰によって計算した。IC50値は、用量応答(可変勾配)式(4パラメータロジスティック方程式)を使用し、非線形回帰分析によってPrismで計算する:Y=底部+(上部-底部)/(1+10^((LogIC50-X)*HillSlope))。
実施例11.RSV RNP調製
【0224】
RSVリボ核タンパク質(RNP)複合体を、Mason et al.(Mason,S.,Lawetz,C.,Gaudette,Y.,Do,F.,Scouten,E.,Lagace,L.,Simoneau,B.and Liuzzi,M.(2004)Polyadenylation-dependent screening assay for respiratory syncytial virus RNA transcriptase activity and identification of an inhibitor.Nucleic Acids Research,32,4758-4767)から修飾された方法から調製した。HEp-2細胞を、MEM+10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum、FBS)中の7.1×104細胞/cm2の密度で播種し、37℃(5% CO2)で一晩付着させた。付着後、細胞を35mLのMEM+2% FBS中でRSV A2(MOI=5)に感染させた。感染後20時間で、培地を2μg/mLのアクチノマイシンDで補足したMEM+2% FBSで置き換え、37℃に1時間戻した。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、35mLのPBS+250μg/mL溶解レシチンで1分間処理した後、全ての液体を吸引した。細胞を1.2mLの緩衝液A[50mMの酢酸トリス(pH8.0)、100mMの酢酸カリウム、1mMのDTT及び2μg/mLのアクチノマイシンD]中に廃棄することによって採取し、18ゲージ針(10回)を繰り返し通過させることによって溶解した。細胞溶解物を氷上に10分間置き、次いで4℃で10分間、2400gで遠心分離した。上清(S1)を除去し、ペレット(P1)を、1% Triton(登録商標) X-100で補足した600μLの緩衝液B[10mM TRIS酢酸塩(pH8.0)、10mM酢酸カリウム及び1.5mM MgCl2]中で、18ゲージ針(10回)を繰り返し通過させることによって破壊した。再懸濁したペレットを氷上に10分間置き、次いで4℃で10分間、2400gで遠心分離した。上清(S2)を除去し、ペレット(P2)を、0.5%デオキシコール酸塩及び0.1% Tween(登録商標) 40で補足した600μLの緩衝液B中で破壊した。再懸濁したペレットを氷上に10分間置き、次いで4℃で10分間、2400gで遠心分離した。濃縮RSV RNP複合体を含有する上清(S3)画分を収集し、タンパク質濃度を280nmでのUV吸光度によって決定した。分割量のRSV RNP S3画分を-80℃で保存した。
実施例12.RSV RNPアッセイ
【0225】
転写反応は、30μLの反応緩衝液[50mMのTRIS-酢酸塩(pH8.0)、120mMの酢酸カリウム、5%のグリセロール、4.5mMのMgCl2、3mMのDTT、2mMのエチレングリコール-ビス(エチルエーテル)-四酢酸(ethyleneglycol-bis(ethylether)-tetraacetic acid、EGTA)、50μg/mLのBSA、2.5U RNasin(Promega)、ATP、GTP、UTP、CTP、及び1.5uCi[α-32P]NTP(3000Ci/mmol)]中に25μgの粗RSV RNP複合体を含有していた。転写アッセイで使用される放射性標識ヌクレオチドは、RSV RNP転写の阻害について評価されているヌクレオチド類似体に一致するように選択された。冷たい競合NTPを、そのKmの半分の最終濃度で添加した(ATP=20μM、GTP=12.5μM、UTP=6μM及びCTP=2μM)。3つの残りのヌクレオチドを100μMの最終濃度で添加した。
【0226】
ヌクレオチド類似体がRSV RNP転写を阻害したかどうかを決定するために、5倍増分で6ステップの連続希釈を使用して化合物を添加した。30℃で90分間インキュベートした後、RNP反応を350μLのQiagen RLT溶解緩衝液で停止させ、Qiagen RNeasy 96キットを使用してRNAを精製した。精製RNAを、65℃で10分間、RNA試料充填緩衝液(Sigma)中で変性し、2Mホルムアルデヒドを含有する1.2%アガロース/MOPSゲルで実行した。アガロースゲルを乾燥させ、Stormホスホイメージャスクリーンに曝露し、Stormホスホイメージャ(GE Healthcare)を使用して開発した。全放射性標識転写物を50%(IC50)低減した化合物の濃度を、2つの複製の非線形回帰分析によって計算した。
実施例13.DENV-2 moDC EC50
【0227】
ヒト単球由来樹状細胞(monocyte-derived dendritic cell、moDC)は、GM-CSF及びIL-4(Miltenyi Biotec)を含有するヒトMo-DC分化培地で培養されたCD14+単球(AllCells)に由来した。7日目に、moDCを機械的破壊によって採取し、洗浄し、無血清RPMIに懸濁した。moDCを、37℃で穏やかに撹拌しながら無血清RPMI中で2時間、MOI=0.1でVero由来のデング2、ニューギニア株(New Guinea strain、NGC)に感染させた。細胞を洗浄し、10%の血清含有RPMI(Gibco、ピルビン酸ナトリウム、NEAA、ペニシリン-ストレプトマイシンで補足)に再懸濁した。10^5細胞を96ウェルプレートで3回播種し、化合物を段階的用量で分配した(Hewlett-Packard D300デジタルディスペンサ)。全てのウェルを0.25% DMSOに対して正規化した。48時間で、細胞を1×PBSで洗浄し、全ての上清を除去した。RNEasy 96プレート(Qiagen)を使用して全RNAを抽出し、XLT cDNA 5×Supermix(QuantaBio)を使用して第1鎖cDNAを生成するために使用した。cDNAをDENV2ウイルス及びGAPDH遺伝子発現に特異的なTaqman qPCR二重反応においてテンプレートとして使用した。EC50値は、Prism Graphpadソフトウェアを使用して、陽性対照を含むが化合物陰性対照を含まないウェルに対して正規化した。
実施例14.DENV-2 Huh-7 EC50
【0228】
Huh7(ヒト肝癌7)細胞を、10% FCS含有DMEM完全培地中で維持した。アッセイの日に、細胞をトリプシン処理し(0.1%トリプシン-EDTA)、洗浄し、デング血清型2ニューギニアC(NGC)株を有する無血清DMEMで2時間、MOI=0.1で37℃で穏やかに撹拌しながら感染させた。2時間後、細胞を無血清培地で洗浄し、10%FCS含有DMEM(Gibco、ピルビン酸ナトリウム、NEAA、ペニシリン-ストレプトマイシンで補足)に懸濁した。10^5細胞を96ウェルプレートで3回播種し、化合物を段階的用量で分配した(Hewlett-Packard D300デジタルディスペンサ)。全てのウェルを0.25% DMSOに対して正規化した。48時間で、細胞を1×PBSで洗浄し、全ての上清を除去した。RNEasy 96プレート(Qiagen)を使用して全RNAを抽出し、XLT cDNA 5×Supermix(QuantaBio)を使用して第1鎖cDNAを生成するために使用した。cDNAをDENV2ウイルス及びGAPDH遺伝子発現に特異的なTaqman qPCR二重反応においてテンプレートとして使用した。EC50値は、Prism Graphpadソフトウェアを使用して、陽性対照を含むが化合物陰性対照を含まないウェルに対して正規化した。
実施例15.DENV-2 Huh-7 Rep EC50
【0229】
384ウェルプレート(Greiner,カタログ番号781091)において、化合物を、8つの化合物(4複製)又は40化合物の用量反応形式(3複製)で、ウェル当たり200nlで音響的に移した。試験した全てのプレートについて、バラピラビル、GS-5734、及びNITD008は、陽性阻害対照として、0%阻害、DMSOのみの陰性対照ウェルと共に含まれた。化合物の添加に続いて、DENV2レプリコン構築物を含有するHuh-7細胞を標準細胞培養手順、続いて採取し、genticinを含まないcDMEMから構成される細胞培養培地中の1.25E5細胞/mLの濃度に調整した。次いで、40μLの細胞ストックを、5,000細胞/ウェルの最終細胞密度で各ウェルに添加した。細胞及び化合物混合物を、37℃/5% CO2で48時間インキュベートした。細胞を採取する前に、EnduRen生細胞基質(Promega、カタログ番号E6481)を、3.4mgを100μLのDMSOに懸濁することによって調製して、60mMのストック溶液を生成した。次いで、ストック溶液を予熱したcDMEMで1:200に希釈し、10uLのこの希釈溶液を384ウェルプレートの各ウェルに添加した。次いで、プレートを500rpmで短時間遠心分離し、プレートシェーカー上に2分間置いた。混合後、プレートを、Envisionルミノメータ上で発光を測定する前に、7℃/5% CO2で1.5時間インキュベートした。レプリコンシグナルの阻害率は、0%及び100%阻害対照に対して試験された各濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、レプリコンシグナルを50%阻害した化合物の有効濃度として4-パラメトリック非線形回帰によって決定された。
実施例16.RSV HEp-2 EC50
【0230】
RSVに対する抗ウイルス活性は、HEp-2細胞における感染性細胞変性細胞保護アッセイを使用して決定される。このアッセイでは、ウイルス感染及び/又は複製を阻害する化合物は、細胞生存率試薬を使用して定量化され得るウイルス誘発性細胞殺傷に対する細胞保護効果を生じる。本明細書で使用される技法は、公開文献に記載されている方法の新規の適応である(Chapman et al.,Antimicrob Agents Chemother.2007,51(9):3346-53)。
【0231】
HEp-2細胞は、ATCC(Manassas,VI)から入手し、10%ウシ胎仔血清及びペニシリン/ストレプトマイシンで補足したMEM培地中で維持する。細胞を週に2回継代し、サブコンフルエント段階で保持する。RSV株A2(Advanced Biotechnologies,Columbia,MD)の市販のストックを、化合物試験の前に滴定して、HEp-2細胞において望ましい細胞変性効果を生成するウイルスストックの適切な希釈を決定する。
【0232】
抗ウイルス試験のために、HEp-2細胞を大きな細胞培養フラスコで、完全にではないが、ほぼコンフルエンシまで増殖させる。試験される化合物は、プレート標準化用量応答形式当たり8又は40試料のいずれかで、384ウェル化合物希釈プレート内のDMSO中で予め希釈される。各試験化合物の3倍連続希釈増分をプレート内で調製し、試験試料を、ウェル当たり100nLの音響移送装置(Echo,Labcyte)を介して細胞培養アッセイ384ウェルプレートに移す。各化合物希釈物を、単一又は四連の試料中で乾燥アッセイプレートに移し、アッセイの準備ができるまで保存する。陽性及び陰性対照を、垂直ブロック(1カラム)でプレートの両端の反対側に配置する。
【0233】
続いて、感染性混合物を、50,000/mLの密度で細胞を滴定することによって以前に決定されたウイルスストックの適切な希釈を使用して調製し、20μL/ウェルを、オートメーション(uFlow、Biotek)を介して化合物を含む試験プレートに添加する。各プレートには、それぞれ0%及び100%のウイルス阻害標準を作成するために、陰性対照及び陽性対照(各々16複製)が含まれる。RSVでの感染後、プレートを37℃の細胞培養インキュベータ内で4日間インキュベートする。インキュベーション後、細胞生存率試薬、Cell TiterGlo(Promega,Madison,WI)をアッセイプレートに添加し、これを短時間インキュベートし、全てのアッセイプレートで発光読み取り値を測定する(Envision,Perkin Elmer)。RSV誘発性細胞変性効果、阻害率は、残りの細胞生存率のレベルから決定される。これらの数は、0%及び100%阻害対照に対する各試験濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、RSV誘発性細胞変性効果を50%阻害する濃度として非線形回帰によって決定される。様々な強力な抗RSVツール化合物を、抗ウイルス活性の陽性対照として使用する。
実施例17.RSV NHBE EC50
【0234】
正常なヒト気管支上皮(normal human bronchial epithelial、NHBE)細胞は、Lonza(Walkersville,MD,カタログ番号CC-2540)から購入し、気管支上皮増殖培地(Bronchial Epithelial Growth Media、BEGM)(Lonza,Walkersville,MD,カタログ番号CC-3170)で培養した。細胞を1週間当たり1~2回継代して、80%未満のコンフルエンシを維持した。NHBE細胞を、培養中6継代後に廃棄した。
【0235】
RSV A2抗ウイルスアッセイを実施するために、NHBE細胞を、BEGM中のウェル当たり7,500細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩付着させた。付着後、100μLの細胞培養培地を除去し、Hewlett-Packard D300デジタルディスペンサを使用して、3倍連続希釈化合物を添加した。DMSOの最終濃度を0.05%に対して正規化した。化合物の添加に続いて、NHBE細胞を、BEGM中1×104.5組織培養感染用量/mLの力価で100μLのRSV A2を添加することによって感染させた後、37℃で4日間インキュベートした。次いで、NHBE細胞を25℃に平衡化させ、100μLの培養培地を除去し、100μLのCell-Titer Glo生存率試薬を添加することによって細胞生存率を決定した。混合物を25℃で10分間インキュベートし、発光シグナルをEnvision発光プレートリーダーで定量化した。
実施例18.RSV HAE EC50
【0236】
HAE細胞は、空気-液体界面で培養され、空気に曝露される頂端側及び媒体と接触している基底側を有する。実験の前に、HAEを寒天ベースの出荷用パッケージから取り出し、1mlのHAEアッセイ培地(AIR-100-MM、Mattek Corp)中で37℃/5% CO2に一晩順応させた。HAEは、頂端面を400μLのPBSで(直接ピペッティング方法を利用するか、又はPBSを含有するトラフを通して各トランスウェルを実行することによってかのいずれかで)2回洗浄して、粘液層を除去することによって、感染のために調製した。頂端室からPBSを排出し、吸収性物質上に穏やかにタップして、可能な限り多くのPBSを除去した。洗浄後、細胞を4倍連続希釈化合物を含有する新鮮なHAE維持培地に移し、細胞単層の基底側に送達し、HAEアッセイ培地中の100μLの1:600希釈のRSV A株A2 1000×ストック(AB、Columbia,MD、カタログ番号10-124-000)に、5% CO2中37℃で3時間、頂部に感染させた。ウイルス接種物を除去し、細胞の頂端面を、前述のいずれかの方法を使用してPBSで3回洗浄した。次いで、細胞を化合物の存在下、37℃で3日間培養した。インキュベーション後、MagMAX-96ウイルスRNA単離キット(Applied Biosystems,Foster City,CA,カタログ番号AM1836)を使用してHAE細胞から全RNAを抽出し、細胞内RSV RNAをリアルタイムPCRによって定量化した。およそ25ngの精製RNAを、0.9μMのRSV N順方向及びRSV N逆方向プライマー、0.2μMのRSV Nプローブ及び1× Taqman RNA-Ct1-ステップキット(Applied Biosystems,FosterCity,CA,カタログ番号4392938)を含有するPCR反応混合物に添加した。RNAレベルは、Taqman GAPDH対照プライマーセット(Applied Biosystems,Foster City,CA,カタログ番号402869)を使用して正規化した。RSV A2 HAE抗ウイルスアッセイで使用されるリアルタイムPCRプライマー及びプローブ:RSV N順方向CATCCAGCAAATACACCATCCA(配列番号2)、RSV N逆方向TTCTGCACATCATAATTAGGAGTATCAA(配列番号3)、RSV NプローブFAM-CGGAGCACAGGAGAT-BHQ(配列番号4)。
実施例19.HRV16 HeLa EC50
【0237】
10%の熱不活性化FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全なDMEM培地で培養されたH1-HeLa細胞を、化合物投与及び感染の1日前に3000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。各化合物の抗ウイルス活性を3回測定した。化合物を、感染の直前にHP300デジタルディスペンサ(Hewlett Packard,Palo Alto,CA)を使用して、連続3倍希釈で細胞培養物に直接添加した。プレートをBSL-2コンテインメントに移し、滴定によって以前に決定し、細胞培養培地中で調製したウイルスストックの適切な希釈を、細胞及び連続希釈化合物を含む試験プレートに添加した。各プレートには、6ウェルの感染した未処理細胞及び6ウェルの非感染細胞が含まれ、それぞれ0%及び100%ウイルス阻害対照として機能した。感染後、試験プレートを、33℃/5% CO2に設定した組織培養インキュベータ内で96時間インキュベートした。インキュベーション後、H1-HeLa細胞をインキュベーションから除去し、25℃に平衡化させた。100μLの培養培地を除去し、100μLのCell-Titer Glo生存率試薬を添加することによって細胞生存率を決定した。混合物を25℃で10分間、シェーカー上でインキュベートし、発光シグナルをEnvision発光プレートリーダーで定量化した。ウイルス感染の阻害率は、0%及び100%阻害対照に対して、試験された各濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、細胞変性効果を50%阻害した化合物の有効濃度として4-パラメトリック非線形回帰によって決定された。
実施例20.HRV1A HeLa EC50
【0238】
10%の熱不活性化FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全なRPMI 1640で培養されたH1-HeLa細胞を、化合物投与及び感染の1日前に5000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。各化合物の抗ウイルス活性を3回測定した。化合物を、感染の直前にHP300デジタルディスペンサ(Hewlett Packard,Palo Alto,CA)を使用して、連続3倍希釈で細胞培養物に直接添加した。プレートをBSL-2コンテインメントに移し、100μLのHRV1aウイルスストックの1/4000希釈を、細胞及び連続希釈化合物を含有する各ウェルに添加した。各プレートには、6ウェルの感染した未処理細胞及び6ウェルの5μMのルピントリビルを含有する細胞が含まれ、それぞれ0%及び100%ウイルス阻害対照として機能した。感染後、試験プレートを、37℃/5% CO2に設定した組織培養インキュベータ内で96時間インキュベートした。インキュベーション後、H1-HeLa細胞をインキュベーションから除去し、25℃に平衡化させた。100μLの培養培地を除去し、100μLのCell-Titer Glo生存率試薬を添加することによって細胞生存率を決定した。混合物を25℃で10分間、シェーカー上でインキュベートし、発光シグナルをEnvision発光プレートリーダーで定量化した。ウイルス感染の阻害率は、0%及び100%阻害対照に対して、試験された各濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、細胞変性効果を50%阻害した化合物の有効濃度として4-パラメトリック非線形回帰によって決定された。
実施例21.HRV14 HeLa EC50
【0239】
10%の熱不活性化FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全なRPMI 1640で培養されたH1-HeLa細胞を、化合物投与及び感染の1日前に5000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。各化合物の抗ウイルス活性を3回測定した。化合物を、感染の直前にHP300デジタルディスペンサ(Hewlett Packard,Palo Alto,CA)を使用して、連続3倍希釈で細胞培養物に直接添加した。プレートをBSL-2コンテインメントに移し、100μLのHRV14ウイルスストックの1/4000希釈を、細胞及び連続希釈化合物を含有する各ウェルに添加した。各プレートには、6ウェルの感染した未処理細胞及び6ウェルの5μMのルピントリビルを含有する細胞が含まれ、それぞれ0%及び100%ウイルス阻害対照として機能した。感染後、試験プレートを、37℃/5% CO2に設定した組織培養インキュベータ内で96時間インキュベートした。インキュベーション後、H1-HeLa細胞をインキュベーションから除去し、25℃に平衡化させた。100μLの培養培地を除去し、100μLのCell-Titer Glo生存率試薬を添加することによって細胞生存率を決定した。混合物を25℃で10分間、シェーカー上でインキュベートし、発光シグナルをEnvision発光プレートリーダーで定量化した。ウイルス感染の阻害率は、0%及び100%阻害対照に対して、試験された各濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、細胞変性効果を50%阻害した化合物の有効濃度として4-パラメトリック非線形回帰によって決定された。
実施例22.HRVc15及びHRVc25 HeLa EC50
【0240】
第1に、HRVレプリコンRNAを調製する。5ugのDNAテンプレート(HRVc15又はHRVc25)を、NEB緩衝液-3中の2μLのMluI酵素により、25μLの最終体積で37℃で3時間線形化する。インキュベーション後、線形化されたDNAをPCR精製カラムで精製し、以下の条件を使用して、以下のインビトロ転写を行った:10μLのRiboMAX Express T7 2×緩衝液、1~8μLの線形DNAテンプレート(1μg)、0~7μLのヌクレアーゼ不含水、2μLの酵素ミックスT7 express。20μLの最終体積を混合し、37℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、1μLのRQ1 RNase不含DNaseを添加し、混合物を37℃で15分間インキュベートする。次いで、得られたRNAをMegaClearキット(Gibco Life Technologiesカタログ番号11835-030)で精製し、50μLの溶出緩衝液で95℃で2回溶出する。10%の熱不活性化FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全RPMI 1640培地で培養されたH1-HeLa細胞を、トランスフェクションの1日前に、2E6細胞/フラスコの濃度でT-225フラスコに播種し、37℃/5% CO2で一晩インキュベートする。トランスフェクションの日に、標準細胞培養プロトコル後に細胞をトリプシン処理し、PBSで2回洗浄する。洗浄後、細胞をPBS中の1E7細胞/mLの濃度で再懸濁し、懸濁液を湿潤氷上で保存する。エレクトロポレーションを使用して、レプリコンRNAをH1-HeLa細胞に導入する。それぞれ10μgのレプリコンc15又は1μgのc25レプリコンRNAを含有する10μLの最終体積を、4mmのエレクトロポレーションキュベットにピペットで移す。H1-HeLa細胞ストックを穏やかに回転させることによって混合し、0.5mLの以前に調製した細胞ストックを、レプリコンRNAを含有するキュベットに移す。合わせた溶液をフリックして混合する。混合後、以下の設定:900V、25uF、無限抵抗、1パルスを使用して、細胞を直ちにエレクトロポレーションする。キュベットを氷上で10分間静置する。10分間のインキュベーション後、エレクトロポレーション当たり10%の熱不活性化FBSを含有する、19mLの周囲温度のフェノールレッド不含及び抗生物質不含RPMI 1640を添加する。150μL(4E4細胞)のエレクトロポレーションされた細胞懸濁液を、ウェル当たり96ウェルの透明底の白色細胞培養プレートに播種し、25℃で30分間インキュベートする。化合物を、HP300デジタルディスペンサ(Hewlett Packard,Palo Alto,CA)を使用して、連続3倍希釈で細胞培養物に直接添加し、3回試験した。化合物の添加に続いて、プレートを33℃で48時間インキュベートする。次いで、Renilla-Gloルシフェラーゼアッセイシステムによって、レプリコン活性を測定する。シグナル定量化の前に、プレートをインキュベータから除去し、50uLを各ウェルから除去した後、25℃に平衡化させる。製造業者のプロトコルに従い、緩衝液に対して1:100希釈のRenilla-Glo基質を調製し、100uLのRenill-Gloルシフェラーゼミックスを各ウェルに添加する。次いで、プレートを穏やかに撹拌しながら25℃で20分間インキュベートし、ルシフェラーゼシグナルを、EnVisionルシフェラーゼ定量化リーダーを使用して0.1秒の検出設定で決定する。レプリコン阻害の阻害率は、実験に含まれた0%及び100%阻害対照に対して試験された各濃度について計算され、各化合物についてのEC50値は、ルシフェラーゼシグナルを50%阻害した化合物の有効濃度として4-パラメトリック非線形回帰によって決定された。
実施例23.HCV Rep 1B及び2A EC50及びCC50
【0241】
化合物を384ウェルプレートで1:3希釈の10ステップで連続希釈した。全ての連続希釈物を、同じ384ウェルプレート内の化合物当たり4複製で行った。100μMのHCVプロテアーゼ阻害剤ITMN-191を、HCV複製の100%阻害の対照として添加し、一方で10mMのピューロマイシンを100%細胞傷害性の対照として含めた。黒色ポリスチレン384ウェルプレート(Greiner Bio-one,Monroe,NC)の各ウェルに、2000個の懸濁HCVレプリコン細胞を含有する90μLの細胞培養培地(Geneticinを含まない)をBiotek μFlowワークステーションで添加した。細胞培養プレートへの化合物移動の場合、化合物連続希釈プレートからの0.4μLの化合物溶液を、Biomek FXワークステーションで細胞培養プレートに移した。最終アッセイウェルのDMSO濃度は、0.44%であった。プレートを37℃で3日間、5% CO2及び湿度85%でインキュベートした。HCVレプリコンアッセイは、同じウェルから細胞傷害性及び抗レプリコン活性の両方を評価することができるマルチプレックスアッセイであった。CC50アッセイを最初に行った。384ウェル細胞培養プレート内の培地を吸引し、ウェルを、Biotek ELX405プレートワッシャーを使用して、各々100μLのPBSで4回洗浄した。1×PBS中の400nMカルセインAM(Anaspec,Fremont,CA)を含有する体積50μLの溶液を、Biotek μFlowワークステーションでプレートの各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートした後、蛍光シグナル(励起490nm、発光520nm)をPerkin-Elmer Envisionプレートリーダーで測定した。EC50アッセイを、CC50アッセイと同じウェルで行った。384ウェル細胞培養プレート中のカルセイン-PBS溶液を、Biotek ELX405プレートワッシャーで吸引した。体積20μLのDual-Gloルシフェラーゼ緩衝液(Promega,Madison,WI)を、Biotek μFlowワークステーションでプレートの各ウェルに添加した。プレートを室温で10分間インキュベートした。Dual-Glo Stop&Glo基質(Promega,Madison,WI)及びDual-Glo Stop&Glo緩衝液(Promega,Madison,WI)の1:100混合物を含有する体積20μLの溶液を、Biotek μFlowワークステーションでプレートの各ウェルに添加した。次いで、プレートを室温で10分間インキュベートした後、発光シグナルをPerkin-Elmer Envisionプレートリーダーで測定した。
実施例24.ヒトミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)の阻害
【0242】
全ての反応混合物は、50mMのトリス-HCl緩衝液(pH8.0)、0.2mg/mlのBSA、2mMのDTT、0.05mg/mlの活性化された魚類精子DNA、10mMのMgCl2、1.3μCi[α-33P]dTTP(3,000Ci/mmol)、並びに各々2μMのdATP、dGTP、及びTTPを含有していた。最適な酵素濃度は、酵素濃度([E])対活性の線形範囲にあるように選択され、反応時間は、基質の10%が消費されたことを確実にするように選択された。全ての反応を37℃で実行した。ミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)の阻害を、10mMのHEPES(pH7.5)、20mMのNaCl、10mMのDTT、0.1mg/mlのBSA、及び10mMのMgCl2を含有する緩衝液中にPOLRMT軽鎖プロモーター領域及びミトコンドリア転写因子A(mtTFA)(100nM)、及びmt-TFB2(20nM)を含有する20nMのテンプレートプラスミド(pUC18-LSP)でプレインキュベートされた20nMのPOLRMTを使用して評価した。反応物を32℃まで加熱し、各々2.5μMの4つの天然NTP及び1.5μCiの[33P]GTPを添加することによって開始した。32℃で30分間インキュベートした後、定量化のために処理される前に、反応物をDE81紙にスポットした。
実施例25.ヒトミトコンドリアRNAポリメラーゼ(POLRMT)による単一ヌクレオチドの組み込み
【0243】
MTCN緩衝液(50mMのMES、25mMのトリス-HCl、25mMのCAPS、及び50mMのNaCl、pH7.5)、200nMの5’-
32P-R12/D18、10mMのMgCl
2、1mMのDTT、及び376nMのPOLRMTの混合物を、30℃で1分間プレインキュベートした。500μM(最終)の天然のNTP又はNTP類似体の添加によって反応を開始した。選択された時点で、反応混合物を除去し、100mMのEDTA、80%のホルムアミド、及びブロモフェノールブルーを含有するゲル充填緩衝液でクエンチし、65℃で5分間加熱した。試料を20%ポリアクリルアミドゲル(8M尿素)上で実行し、生成物の形成を、Typhoon Trio Imager及びImage Quant TLソフトウェア(GE Healthcare、Piscataway,NJ)を使用して定量化した。mt RNA polによる単一ヌクレオチド組み込みの速度は、単一指数式:[R13]=A(1-e
-kt)を使用して生成物形成をフィッティングすることによって計算され、[R13]は、形成された伸長生成物の(nM単位の)量を表し、tは、反応時間を表し、kは、観察された速度を表し、Aは、指数関数の振幅を表す。
【表2】
全ての値はnM単位。
【表3】
全ての値はnM単位。
【表4】
全ての値はnM単位。
【表5】
全ての値はnM単位。
【表6】
全ての値はnM単位。
【表7】
全ての値はnM単位。
【0244】
表5~7に見られるように、式Iの化合物は、化合物1と比較して、RSV抗ウイルスアッセイ(Hep-2及びNHBE)においてより強力である(それぞれ約4.0及び4.4より強力)。式Iの化合物はまた、化合物1と比較して、HRVに対して(HRV16 HeLa、HRV1A HeLa、及びHRV14 HeLaアッセイにおいて)より強力である(それぞれ約4.2、51.1、及び12.8倍より強力)。同様に、式Iの化合物は、化合物1よりもデングに対して(Denv huh7 Repアッセイにおいて)より強力である(約25.0倍より強力)。
【0245】
同様に、式Iの化合物はまた、HAEアッセイにおいて化合物2に対してより高い抗RSV活性を示す(Mirabelli,C.et al J.Antimicrob.Chemother.2018,73,1823-1829)(約8.1倍より強力)。式Iの化合物はまた、化合物2と比較して、複数のHRV抗ウイルスアッセイにおいて(HRV1A HeLa、HRV14 HeLa、及びHRV15 Repアッセイにおいて)より強力である(HRV1A HeLaアッセイにおいて約12.1倍強力、HRV14 HeLaアッセイにおいて約2.2倍強力、及びHRV15 Repアッセイにおいて約2.3倍より強力)。式Iの化合物は、デング抗ウイルスアッセイにおいて更により強力である(DENV huh7 Repアッセイにおいて約1.9倍より強力)。同様に、式Iの化合物は、HCV抗ウイルスアッセイにおける化合物2に対してより強力である(HCV Rep 1Bにおいて約3.5倍及びHCV Rep 2Aにおいて1.4倍)。
実施例26.構造的に関連する化合物3~5と比較した、式Iの化合物のRSV効力。
【0246】
式Iの化合物は、とりわけ、エステル基のシクロヘキシル基(以下の構造において
*で示される位置)を特徴とする。
【化40】
【0247】
式Iの化合物及び化合物3~5の効力(以下に示される構造)を、上記のアッセイに従って測定した。化合物3~5の構造は、分岐エステルにおいて環状環を欠いていること(以下の構造において
*によって示される位置)を除いて、式Iの化合物と同等である。これらの実験の結果を以下の表8に要約する。
【化41】
【表8】
全ての値はnM単位。
【0248】
上記の表8において見られるように、式Iの化合物は、RSV及びHRV抗ウイルスアッセイにおいて、化合物3(RSV Hep-2アッセイにおいて約5倍、RSV NHBEアッセイにおいて約9.3倍、HRV16 HeLaアッセイにおいて約6.2倍、HRV1A HeLaアッセイにおいて約91.9倍、及びHRV14 HeLaアッセイにおいて約23.2倍)、4(RSV Hep-2において約3.9倍、RSV NHBEアッセイにおいて約7.1倍、及びHRV16 Helaアッセイにおいて約4.3倍)、並びに5(RSV Hep-2アッセイにおいて約19.8倍、RSV NHBEアッセイにおいて約10.0倍、HRV16 HeLaアッセイにおいて約13.8倍、HRV1A HeLaアッセイにおいて約203.1、及びHRV14 HeLaアッセイにおいて約44.0倍)に対してより強力であり、これらの各々は、分岐エステルにおいて環状シクロヘキシル基を欠いている。したがって、式Iの化合物は、化合物3~5と比較して改善された特性を示し、分岐アルキル基を有するが、エステル基においてシクロヘキシル基を欠いている。
実施例27.式Ia、式Ibの化合物、並びに化合物2、6、7、及び8の化合物と比較した、式Iの化合物の効力。
【0249】
式Iの化合物、並びに構造的に関連する式Ia及び式Ibの化合物と化合物2、6、7、及び8の効力を、上記のアッセイに従って測定した。式Ia、式Ib、6、7、及び8の化合物の構造を以下に示し、その結果を以下の表9に要約する。
【化42】
【表9】
全ての値はnM単位。
【0250】
上記の表9のEC50データは、RSVアッセイ及びHRVアッセイの両方において、PにS立体化学を有する式Iの化合物が、PにR立体中心を有する式Ibの化合物よりも著しく強力であることを示す。具体的には、式Iの化合物は、RSV HEp-2アッセイにおいて式Ibの化合物よりも31.1倍強力であり、RSV NHBEアッセイにおいて5.1より強力である。同様に、式Iの化合物は、HRV16 HeLaアッセイにおいて式Ibの化合物よりも2.9倍強力である。
【0251】
対照的に、Pにおける立体化学のみが異なる化合物6及び7の効力は(化合物6はPにS立体化学を有し、化合物7はR立体化学を有する)、式I及び式Ibの化合物ほど異なっていない。化合物6は、RSV HEp-2アッセイにおいて化合物7よりも4.8倍強力であり、HRV16 HeLaアッセイにおいて1.4倍強力である。RSV NHBEアッセイにおいて、化合物6は、化合物7に対してわずか0.7倍強力である。
実施例28.HEp-2及びMT-4細胞傷害性アッセイ
【0252】
式Iの化合物、並びに化合物1、2、及び6の細胞傷害性は、他の細胞型について前述されたものと同様の様式で、細胞生存率試薬を使用して、非感染細胞において決定された(Cihlar et al.,Antimicrob Agents Chemother.2008,52(2):655-65)。HEp-2(1.5×103細胞/ウェル)及びMT-4(2×103細胞/ウェル)細胞を384ウェルプレートに播種し、15nM~100,000nMの範囲の3倍連続希釈化合物を含む適切な培地でインキュベートした。細胞を37℃で4~5日間培養した。インキュベーション後、細胞を25℃に平衡化させ、細胞生存率を、Cell-Titer Glo生存率試薬を添加することによって決定した。混合物を10分間インキュベートし、Envisionプレートリーダーを使用して発光シグナルを定量化した。未処理細胞及び2μMのピューロマイシン(Sigma,St.Louis,MO)で処理した細胞は、それぞれ100%及び0%の細胞生存率対照として機能する。細胞生存率のパーセントは、0%及び100%対照に対して試験された各化合物濃度について計算され、CC50値は、細胞生存率を50%低減する化合物濃度として非線形回帰によって決定された。
実施例29.NHBE及びSAEC細胞傷害性アッセイ
【0253】
正常なヒト気管支上皮(NHBE)細胞は、Lonza(Walkersville,MD,カタログ番号CC-2540)から購入し、気管支上皮増殖培地(BEGM)(Lonza,Walkersville,MD,カタログ番号CC-3170)で培養した。製造元のプロトコルに従って、細胞を1週間当たり1~2回継代して、80%未満のコンフルエンシを維持した。NHBE細胞を、培養中5継代後に廃棄した。
【0254】
ヒト小気道上皮細胞(Human Small Airway Epithelial cell、SAEC)は、Lonza(Walkersville,MD,カタログ番号CC-2547)から購入し、補足した小気道上皮細胞増殖培地(Small Airway Epithelial Cell Growth Medium、SAGM)(lonza,Walkersville,MD,カタログ番号CC-3118)で培養した。製造元のプロトコルに従って、細胞を1週間当たり1~2回継代して、80%未満のコンフルエンシを維持した。SAEC細胞を、培養中5継代後に廃棄した。
【0255】
式Iの化合物、並びに化合物1、2、及び6の50%細胞傷害性濃度(CC50)を決定するために、NHBE又はSAEC細胞を、200μLのBEGM又はSAGM中、ウェル当たり10,000細胞の密度で透明底の黒壁96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩付着させた。付着後、3倍連続希釈化合物を、Hewlett-Packard D300デジタルディスペンサ(Hewlett Packard、Palo Alto,CA)を使用して3回添加した。DMSOの最終濃度を1.0%に対して正規化した。化合物の添加後、NHBE又はSAEC細胞を37℃で5日間インキュベートした。次いで、NHBE又はSAEC細胞を25℃に平衡化させ、100μLの培養培地を除去し、100μLのCell-Titer Glo生存率試薬(Promega、Madison,WI)を添加することによって、細胞生存率を決定した。混合物を25℃で10分間インキュベートし、発光シグナルをEnvision発光プレートリーダー(PerkinElmer、Waltham,MA)で定量化した。バックグラウンド発光シグナルを差し引いた、1.0%のDMSOのみの対照ウェルに対する正規化によって生存率の値を決定した。
実施例30.PHH細胞傷害性アッセイ
【0256】
式Iの化合物、並びに化合物1、2、及び6の3倍連続希釈物を、50又は100μMの濃度で開始して、96ウェルプレートで2回調製した。新鮮なヒト肝細胞を、Geltrexオーバーレイを有するMatrigelオーバーレイ又はInvitrogen(Durham,North Carolina、カタログ番号HMFY96)を用いてBioIVT(Baltimore,Maryland、カタログ番号F/M91565)から96ウェルプレートフォーマットで順序付けた。ドナープロファイルは、アルコール消費が最小限である4~65歳に制限された。PHH細胞を、化合物で処理した後、湿度90%の5% CO2インキュベータ内で37℃で、ベンダーによって供給された補助剤を添加した完全培地で4~24時間回復させた。連続希釈化合物及び完全培地を、0.5%に等しい最終量のDMSOで5日間毎日置き換えた(130μL/ウェル)。5日目に、培地をアッセイプレートから除去し、各ウェルに添加された100μLのCell-Titer Glo生存率試薬(Promega、Madison,WI、カタログ番号G7573)の添加によって、細胞生存率を決定した。室温で5~10分間のインキュベーション後、発光シグナルをVictor発光プレートリーダー(Perkin-Elmer、Waltham,MA)で定量化した。
実施例31.PRPT細胞傷害性アッセイ
【0257】
式Iの化合物、並びに化合物1、2、及び6のPRPT細胞傷害性アッセイを、以下の化合物プロトコルを使用して行った。
【0258】
凍結保存されたヒト初代腎近位尿細管上皮細胞(primary renal proximal tubule epithelial cell、PRPTEC)を、LifeLine Cell Technology(Frederick,MD、カタログ番号FC-0013)から入手し、ヒト腎臓の組織から単離した。細胞を、T75フラスコ中のRenaLife完了培地(LifeLine、Frederick,MD、カタログ番号LL-0025)で凍結保存されたバイアルから3~4日間培養した後、90%コンフルエンス後に細胞をアッセイプレートに播種した。PRPTEC細胞を、ウェル当たり160mLの最終体積で、コラーゲンコーティングした96ウェルプレートに、ウェル当たり5×103細胞の密度で播種した。翌日、HP D300ディスペンサ(Hewlett-Packard、Palo Alto,CA)を使用して、化合物ストック濃度よりも200倍低い濃度から始まるプログラム、及び0.5%に等しい一定量のDMSOで2回の1:3倍希釈で、化合物を細胞プレートに直接添加した。5日間のインキュベーション後、培養培地を除去し、細胞生存率を、CellTiter Glo生存率試薬(Promega、Madison,WI、カタログ番号G7573)のウェル当たり100mLの添加によって測定し、発光シグナルを発光プレートリーダー(Perkin-Elmer、Waltham,MA)で定量化した。
実施例32.GALHEPG2細胞傷害性アッセイ
【0259】
式Iの化合物、並びに化合物1、2、及び6を、ガラクトース適合HepG2細胞(ヒト肝臓癌細胞株)における細胞傷害性について、ハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。
【0260】
細胞を培地(DMEM(11966)、10% FBS、1% NEAA、0.2%ガラクトース、1%ピルビン酸塩、1% Glutamax、1% PSG)で16.6K細胞/mLに希釈し、90uL/ウェルで384ウェルポリ-D-リジンコーティングアッセイプレートに播種し、37℃及び5% CO2のインキュベータに入れた。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈した(1:3)。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。細胞播種の24時間後、384チャンネルピペッターを使用して、化合物プレートからアッセイプレートに0.4uLを移動させた。アッセイプレートをインキュベータに戻した。5日後、20uLのCell Titer Gloを添加する前に、アッセイプレートを80uL/ウェルのPBSで洗浄した。アッセイプレートをEnvisionプレートリーダーで読み取った。CC50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義された。CC50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
実施例33.GALPC3細胞傷害性アッセイ
【0261】
化合物を、ガラクトース適合PC3細胞(ヒト前立腺癌細胞株)における細胞傷害性について、ハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。細胞を培地(DMEM(11966)、10% FBS、1% NEAA、0.2%ガラクトース、1%ピルビン酸塩、1% Glutamax、1% PSG)で16.6K細胞/mLに希釈し、90uL/ウェルで384ウェルポリ-D-リジンコーティングアッセイプレートに播種し、37℃及び5% CO2のインキュベータに入れた。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈した(1:3)。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。細胞播種の24時間後、384チャンネルピペッターを使用して、化合物プレートからアッセイプレートに0.4uLを移動させた。アッセイプレートをインキュベータに戻す。5日後、20uLのCell Titer Gloを添加する前に、アッセイプレートを80uL/ウェルのPBSで洗浄した。アッセイプレートをEnvisionプレートリーダーで読み取る。CC50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義される。CC50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
実施例34.Huh-7細胞傷害性アッセイ
【0262】
化合物をHuh7細胞(肝癌細胞株)における細胞傷害性のハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。細胞を培地(DMEM(15-018-CM)、10% FBS、1% NEAA、1% PSG)で16.6K細胞/mLに希釈し、90uL/ウェルで384ウェルポリ-D-リジンコーティングアッセイプレートに播種し、37℃及び5% CO2のインキュベータに入れた。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈した(1:3)。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。細胞播種の24時間後、384チャンネルピペッターを使用して、化合物プレートからアッセイプレートに0.4uLを移動させた。アッセイプレートをインキュベータに戻した。5日後、20uLのCell Titer Gloを添加する前に、アッセイプレートを80uL/ウェルのPBSで洗浄した。アッセイプレートをEnvisionプレートリーダーで読み取った。CC50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義された。CC50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
実施例35.MRC5細胞傷害性アッセイ
【0263】
化合物を、MRC5細胞(ヒト胎児肺線維芽細胞株)における細胞傷害性のハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。細胞を培地(MEM(10-010-CM)、10% FBS、1% PSG)で16.6K細胞/mLに希釈し、90uL/ウェルで384ウェルポリ-D-リジンコーティングアッセイプレートに播種し、37℃及び5% CO2のインキュベータに入れた。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈した(1:3)。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。細胞播種の24時間後、384チャンネルピペッターを使用して、化合物プレートからアッセイプレートに0.4uLを移動させた。アッセイプレートをインキュベータに戻した。5日後、20uLのCell Titer Gloを添加する前に、アッセイプレートを80uL/ウェルのPBSで洗浄した。アッセイプレートをEnvisionプレートリーダーで読み取った。CC50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義された。CC50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
実施例36.NRVM新生児ラット心筋細胞の細胞傷害性アッセイ
【0264】
化合物を、新たに採取された新生児ラット心筋細胞(neonatal rat cardiomyocytes、NRVM)に対する細胞傷害性について、ハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。細胞を培地(DMEM+10% FBS+1% PSG+1% NEAA)で25,000細胞/mLに希釈し、384ウェル細胞アッセイプレートでウェル当たり90ulで播種し、化合物添加前に37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈(1:3)することによって調製した。400nL/ウェルの化合物を、Biocel(Agilent Technologies)を介して細胞アッセイプレートに移した。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。5日後、プレートをBiotekプレート洗浄機で100ul/ウェルのPBSで1回洗浄し、20uLのCell Titer Gloを各ウェルに添加した。プレートを10分インキュベートし、EnVisionリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。CC50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義された。CC50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
実施例37.PBMC細胞傷害性アッセイ
【0265】
化合物を、凍結保存されたヒトPBMCにおける細胞傷害性について、ハイスループット384ウェルアッセイフォーマットで試験した。化合物を、384ウェルプレート中の100% DMSO中で4回連続希釈した(1:3)。音響ディスペンサを使用して、310nLの化合物をアッセイプレートに移した。DMSO及び2mMのピューロマイシンは、それぞれ陰性対照及び陽性対照として含まれた。細胞を培地(RPMI+10% FBS+1% PSG+10mM Hepes+1%ピルビン酸塩+0.1% BMe)で72K細胞/mLに希釈し、37℃及び5% CO
2のインキュベータ内で4時間静置した後、70uL/ウェルでプレスポットされたアッセイプレートに播種した。5日後、25uLのCell Titer Gloをアッセイプレートに添加した。CC
50値は、発光シグナルで測定されるように、成長の50%阻害をもたらす化合物濃度として定義された。CC
50値を、一部位用量応答モデルを使用して、Accord(オンラインツール)において計算して、シグモイド曲線フィットを生成した。
【表10】
全ての値はnM単位。
【0266】
上記の表は、式Iの化合物が、化合物1、2、6、及び8と比較して、複数の細胞株(NHBE、SAEC、Huh-7、NRVM、PBMC、PHH、及びPRPT)にわたってより良好な二次細胞傷害性プロファイルを示すことを示す。
実施例38.血漿安定性アッセイ
【0267】
血漿安定性のために、化合物をカニクイザル又はヒト血漿中2μMで、37℃で最大4時間インキュベートした。所望の時点で、インキュベーションからのアリコートを、内部標準で補足された9体積の100%アセトニトリルを添加することによってクエンチした。最後の収集後、試料を3000gで30分間遠心分離し、上清を、トリプル四重極質量分析(LC-MS/MS)に結合した液体クロマトグラフィによる分析のために等量の水を含有する新しいプレートに移した。データ(分析物対内部標準ピーク面積比)を半対数スケールでプロットし、指数関数的フィットを使用してフィッティングした。半減期(T1/2)は、一次速度論を仮定して決定された。
実施例39.S9画分における安定性アッセイ
【0268】
S9の安定性のために、化合物を、NADPH及びUDPGA(第I相及び第II相補因子、Sigma-Aldrich)の存在下で、37℃で最大90分間、カニクイザル又はヒト肝S9画分中2μMでインキュベートした。化合物の添加後の所望の時点で、試料を、内部標準、50%アセトニトリル、及び25%メタノールを含有する9体積の水溶液でクエンチした。試料プレートを3000gで30分間遠心分離し、10μLの得られた溶液をLC-MS/MSによって分析した。データ(分析物対内部標準ピーク面積比)を半対数スケールでプロットし、指数関数的フィットを使用してフィッティングした。半減期(T
1/2)は、一次速度論を仮定して決定された。
【表11】
【0269】
上記の表におけるデータは、式Iの化合物が、2、6、及び7の化合物よりも高い半減期(ヒト及びカニクイザルhepS9並びにヒト及びカニクイザル血漿)を有することを示す。
実施例40.熱力学的溶解度アッセイ
【0270】
化合物の熱力学的溶解度は、リン酸緩衝生理食塩水溶液(pH7.4)及び10mM塩酸(pH2.0)中の室温で決定された。過剰な固体化合物を使用して、化合物の水性試料を飽和させた。チューブを1000rpmに設定した撹拌機上に置き、一定の撹拌下で4日間維持した。撹拌後、過剰な固体が全てのチューブに存在したことが確認された。チューブを10,000rpmで5分間遠心分離して過剰な固体を除去し、上清を新しいバイアルに移した。濃度分析をUPLCによって決定し、内部標準に対して定量化した。
【表12】
【0271】
上記の表に見られるように、式Iの化合物は、化合物2及び6よりもpH2及び7の両方でより高い溶解度を有する。
実施例41.NHBEのインビトロでの細胞内三リン酸塩形成
【0272】
インビトロでの細胞内三リン酸塩形成を、以下のプロトコルを使用して、式Iの化合物及び化合物6について測定した。正常なヒト気管支気道上皮細胞(NHBE)(25万細胞/ウェル)を、10μMの化合物と26時間連続的にインキュベートした。選択された時点(2、4、6、及び26時間)で、細胞外培地をウェルから除去し、細胞を2mLの氷冷0.9%通常生理食塩水で2回洗浄し、100nMの2-クロロ-アデノシン-5’-三リン酸塩(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)を内部標準として0.5mLの氷冷70%メタノールに抽出した。試料を-20℃で一晩保存して、ヌクレオチド抽出を促進し、15,000×gで15分間遠心分離し、次いで上清をMiVac Duo濃縮器(Genevac,Gardiner,NY)で乾燥させるために清浄なチューブに移した。次いで、乾燥試料を、LC-MS/MSによって分析するために、水中の10mMのジメチルヘキシルアミン(DMHA)を含む3mMギ酸アンモニウム(pH5.0)を含む移動相Aで再構成した。これらの実験の結果を
図1に示す。
実施例42.PBMCのインビトロでの細胞内三リン酸塩形成アッセイ
【0273】
インビトロでの細胞内三リン酸塩形成を、以下のプロトコルを使用して、式Iの化合物、並びに化合物2及び6について測定した。新たに単離されたPBMCは健康なドナーに由来し、実験の開始前に培養培地(L-グルタイミンを含むRPMI 1164)中の500万細胞/mLの濃度に懸濁した。10mLのPBMCアリコートを、キャップを緩めた50mLのコニカルチューブに移し、化合物を2μMの最終濃度まで添加した。次いで、1mLのアリコートを、試料当たり24ウェルプレートのウェルに移した。PBMC-化合物混合物を、穏やかに撹拌しながら37℃/5% CO
2で2時間インキュベートした。インキュベーション後、PBMCを5000RPMで3分間回転させ、細胞ペレットを乱すことなく上清を吸引した。即時分析を受けている試料について、試料を予冷した1×トリス緩衝生理食塩水に再懸濁し、0.5mLのnyosil M25を含有する1.5mLのコニカルチューブに移した。次いで、試料/油のアリコートを13,000RPMで1分間回転させた。遠心分離後、油層を乱すことなく、全ての培地をチューブから吸引した。油層の上に水を添加し、回転/吸引プロセスを繰り返し、続いて追加の水洗浄を行った。第2の洗浄ステップの後、全ての油及び水を除去し、細胞ペレットをドライアイスで急速凍結し、更に処理するまで-80℃で保存した。即時分析を受けていない試料を無血清培養培地で2回洗浄し、1mLの培養培地に再懸濁し、それらが前述のプロトコルによって処理されるまで37c/5% CO
2でインキュベートした。各PBMC試料を、500μLのドライアイス冷抽出緩衝液(70%メタノール、内部標準として0.5μMのクロロ-アデノシン三リン酸塩を含む)で処理した。上記の溶液を5分間ボルテックスし、次いで20,000×gで20分間遠心分離した。上清を清浄な1.5mLのエッペンドルフバイアルに移し、遠心分離蒸発器に装填した。乾燥させたら、試料を80μLの移動相Aで再構成し、20,000×gで20分間遠心分離し、上清を分析のためにHPLC注入バイアルに移した。10μLのアリコートをSciex 6500 LC/MS/MSシステムに注入した。PBMCの標準較正曲線を、試料当たりの化合物のpmolに基づいて構築した。次いで、各試料からの値を試料中の細胞の総数で除算して、百万個の細胞当たりのpmolを得る。次いで、細胞当たり0.2pLの細胞内体積を使用して、マイクロモル濃度を導出した。これらの実験の結果を
図2に示す。
【0274】
図1及び
図2に見られるように、式Iの化合物は、化合物2及び/又は6と比較して、NHBEにおいて等しいか、又はより良いインビトロでの細胞内NTP(ヌクレオチド三リン酸塩)形成を示すが、PBMCにおいて低いことを示す。これは、式Iの化合物が、化合物2及び/又は6と比較して、PBMCに対してNHBE(標的細胞型)においてより選択的な代謝を受けることを示唆している。
実施例43.動物薬物動態アッセイ
【0275】
式I及び6の化合物についての動物PK研究を、以下の化合物プロトコルを使用して行った。体重3~6kgの動物を、研究の生命部分に使用した。試験物品は、pH3の水中の12%カプチゾールの水溶液として、10mg/kg体重で、30分間にわたって定速注入によって雄カニクイザルに静脈内投与した。投与後0.25、0.5、1、1.5、2、4、8、及び24時間で血漿試料を収集し、投与後2時間及び24時間でPBMC試料を収集した。
【0276】
血液試料(およそ1mL)を、K2EDTAを含む予め冷却した収集チューブに収集し、4℃で遠心分離して血漿を分離した。PBMC収集のために、およそ8mLの血液試料を室温で、単離のためにヘパリンナトリウムを含有するCPTバキュテイナチューブに収集した。各末端収集では、動物を麻酔し、動物が生存している間に肺を採取した。収集した肺を、除去直後に液体窒素中で瞬間凍結させた。
【0277】
薬物動態研究からの血漿試料は、内部標準として5-ヨード結節を含有する75%の最終濃度にアセトニトリルを添加することによってタンパク質沈殿に供された。血漿試料中の分析物を、0.2%ギ酸を含有する移動相と、250μL/分の流量で2%~100%アセトニトリルの直線勾配とを使用して、7分間にわたって4μmの150×2mmのSynergi Max-RPカラム(Phenomenex、Torrance,CA)で分離した。5.1~5000nMのブランク血漿で覆われた濃度で調製された8つの点標準曲線であり、0.99のR2値を超える直線性を示した。20%以内の正確性及び精度を確保するために、血漿中の120及び3,000nMの別個の調製された品質管理試料を、各試料セットの開始及び終了時に分析した。
【0278】
各PBMC試料を、70%メタノール中の67mMのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediamine tetraacetic acid、EDTA)を含有する500μLの抽出緩衝液で、0.5μMのクロロ-アデノシン三リン酸塩を内部標準として用いて処理した。抽出緩衝液をドライアイス上で冷却した。上記の溶液を5分間ボルテックスし、次いで20,000×gで20分間遠心分離した。上清を清浄な1.5mLのエッペンドルフバイアルに移し、遠心分離蒸発器に装填した。乾燥させたら、試料を80μLの1mMのリン酸アンモニウム緩衝液(pH=7)で再構成し、20,000×gで20分間遠心分離し、上清を分析のためにHPLC注入バイアルに移した。10μLのアリコートを、API 5000 LC/MS/MSシステムに注入した。代謝産物の細胞内濃度を計算するために、各試料中の細胞の総数を、総DNAカウント法を使用して決定した(Benech,et al.Peripheral Blood Mononuclear Cell Counting Using a DNA-detection-based Method.2004 July 1;330(1):172-4)。PBMCの標準較正曲線を、試料当たりの化合物のpmolに基づいて構築した。次いで、各試料からの値を試料中の細胞の総数で除算して、百万個の細胞当たりのpmolを得た。次いで、細胞当たり0.2pLの細胞内体積を使用して、マイクロモル濃度を導出した。
【0279】
肺試料は、より小さい断片に切片化し、ドライアイス上に保持された予め秤量された15mLのコニカルチューブに分配することによって調製された。氷冷抽出緩衝液(0.5μMのクロロ-アデノシン三リン酸塩を内部標準として含む70%メタノール中の0.1%のKOH及び67mMのエチレンジアミン四酢酸、約2mL)を、約0.5gの各肺試料に添加した。混合物を、使い捨ての硬組織ホモジナイザープローブ(Omni International)を用いて、Omni-Tip TH(商標)を使用して迅速に均質化した。ホモジネートのアリコートを、0.2μmの96ウェルポリプロピレンフィルタープレート(Varian Captiva(商標))を使用することによって濾過した。濾液を蒸発乾固させ、LC-MS/MS分析の前に等量の1mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH=7)で再構成した。
【0280】
ヌクレオシド三リン酸塩の定量化は、イオン対合ヌクレオチド検出LC-MS/MS法を使用した。分析物は、10mMのジメチルヘキシルアミン(DMH)を含む3mMのリン酸アンモニウム(pH5)を含有するイオン対合緩衝液、及び10%~50%のアセトニトリルからの多段線状勾配を使用して、2.5μmの2.0×50mmのLuna C18カラム(Phenomenex、Torrance,CA)によって160μL/分の流量で11分間にわたって分離した。ブランクマトリックスで調製された7点標準曲線は、24.0~17,500nMの濃度をカバーし、R2値0.99の過剰で直線性を示した。
【0281】
これらの実験の結果を
図3及び以下の表に示す。
【表13】
【0282】
見られるように、式Iの化合物は、カニクイザルPK研究においてより高い肺NTP濃度及びより低いPBMC NTP濃度を示す。これは、化合物6と比較して、式Iの化合物が、PBMCに対して肺組織においてより選択的な代謝を受けることを示す。
【0283】
上述の発明は、理解を明確にするために、説明及び例示としてある程度詳細に説明されているが、当業者であれば、特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることを理解するであろう。加えて、本明細書に提供される各参照は、各参照が参照により個別に組み込まれているかのように、その全体が参照により組み込まれる。本出願と、本明細書に提供される参照との間に矛盾が存在する場合、本出願が支配するものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iの化合物、
【化43】
又はその薬学的に許容される塩。
(項目2)
治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む、医薬製剤。
(項目3)
Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、前記ヒトに投与することを含む、方法。
(項目4)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、項目3に記載の方法。
(項目6)
Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、前記ヒトに投与することを含む、方法。
(項目7)
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、項目6に記載の方法。
(項目8)
Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、前記ヒトに投与することを含む、方法。
(項目9)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、項目8に記載の方法。
(項目15)
Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行う方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、前記ヒトに投与することを含む、方法。
(項目16)
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、項目15に記載の方法。
(項目17)
Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
(項目18)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、項目17に記載の方法。
(項目20)
Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
(項目21)
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、項目20に記載の方法。
(項目22)
Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
(項目23)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、項目22に記載の方法。
(項目29)
Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とする、方法。
(項目30)
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、項目29に記載の方法。
(項目31)
Pneumoviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
(項目32)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、項目31に記載の使用。
(項目33)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、項目31に記載の使用。
(項目34)
Picornaviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
(項目35)
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、項目34に記載の使用。
(項目36)
Flaviviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
(項目37)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目38)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目39)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目40)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目41)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目42)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、項目36に記載の使用。
(項目43)
Filoviridaeウイルス感染症のヒトにおける治療のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
(項目44)
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、項目43に記載の使用。
(項目45)
Pneumoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目46)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス感染症である、項目45に記載の化合物。
(項目47)
前記Pneumoviridaeウイルス感染症が、ヒトmetapneumovirus感染症である、項目45に記載の化合物。
(項目48)
Picornaviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目49)
前記Picornaviridaeウイルス感染症が、ヒトライノウイルス感染症である、項目48に記載の化合物。
(項目50)
Flaviviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目51)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、デングウイルス感染症である、項目50に記載の化合物。
(項目52)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、黄熱ウイルス感染症である、項目50に記載の化合物。
(項目53)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ウェストナイルウイルス感染症である、項目50に記載の化合物。
(項目54)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、ジカウイルス感染症である、項目50に記載の化合物。
(項目55)
Filoviridaeウイルス感染症の治療を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目56)
前記Filoviridaeウイルス感染症が、エボラウイルス感染症である、項目55に記載の化合物。
(項目57)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス感染症である、項目55に記載の使用。
(項目58)
前記Flaviviridaeウイルス感染症が、B型肝炎ウイルス感染症である、項目55に記載の使用。
(項目59)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を前記ヒトに投与することを含み、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、方法。
(項目60)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための方法であって、治療有効量の項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を前記ヒトに投与することを含み、前記呼吸器状態が、喘息である、方法。
(項目61)
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、項目59又は60に記載の方法。
(項目62)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とし、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、方法。
(項目63)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うための医薬品を製造するための方法であって、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩が使用されることを特徴とし、前記呼吸器状態が、喘息である、方法。
(項目64)
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、項目62又は63に記載の方法。
(項目65)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化のヒトにおける治療又は予防のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、使用。
(項目66)
ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化のヒトにおける治療又は予防のための医薬品の製造のための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用であて、前記呼吸器状態が、喘息である、使用。
(項目67)
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、項目65又は66に記載の使用。
(項目68)
前記呼吸器状態が、慢性閉塞性肺疾患である、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目69)
前記呼吸器状態が、喘息である、ウイルス感染症による呼吸器状態の悪化の治療又は予防を必要とするヒトにおいてそれを行うことに使用するための、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目70)
前記ウイルス感染症が、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、又はmetapneumovirusによって引き起こされる、項目68又は69に記載の使用。
(項目71)
式I-11の化合物を作製する方法であって、
【化44】
(i)式I-7の化合物:
【化45】
及び
(ii)式I-12の化合物:
【化46】
を、NdCl
3
及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させることを含み、式中、Rが、ヒドロキシル保護基である、方法。
(項目72)
Rが、ベンジル基である、項目71に記載の方法。
(項目73)
Rが、シリル保護基である、項目71に記載の方法。
(項目74)
Rが、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)である、項目73に記載の方法。
(項目75)
式I-6の化合物を作製する方法であって、
【化47】
(i)式I-7の化合物:
【化48】
及び
(ii)式I-5の化合物:
【化49】
を、NdCl
3
及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させることを含み、式中、Rが、ヒドロキシル保護基である、方法。
(項目76)
Rが、ベンジル基である、項目75に記載の方法。
(項目77)
Rが、シリル保護基である、項目75に記載の方法。
(項目78)
Rが、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)である、項目77に記載の方法。
【配列表】