(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】端末機器のアンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 11/00 20060101AFI20240208BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01P11/00
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2022553183
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2021078079
(87)【国際公開番号】W WO2021238313
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】202010456663.X
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲賓▼
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】台湾特許出願公開第201332208(TW,A)
【文献】特開2007-288360(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103078181(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 11/00
H01Q 1/24
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部材用金型に金属導通部材を入れて、前記筐体部材用金型を用いて射出成形を行い、前記金属導通部材に結合された非金属製筐体部材を得るステップであって、前記金属導通部材が前記非金属製筐体部材の内面と外面を貫通するステップと、
レーザープロセスによって前記非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を形成するステップと、
コールドスプレープロセスによって前記アンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成するステップとを含む端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項2】
レーザープロセスによって前記非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を形成する前記ステップは、
前記非金属製筐体部材の外面に遮蔽層を設けるステップと、
レーザープロセスによって、アンテナ配線パターンと一致し、前記非金属製筐体部材の外面におけるアンテナ配線領域となる刳り抜き領域を前記遮蔽層に形成するステップとを含む請求項
1に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項3】
コールドスプレープロセスによって前記アンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成するステップは、
固体金属を気化して金属ガスを形成するステップと、
前記非金属製筐体部材の外面に前記金属ガスを噴射して、前記アンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成するステップとを含む請求項
1に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項4】
コールドスプレーアンテナ層を形成した後、前記非金属製筐体部材の外面の前記遮蔽層を除去するステップと、
前記非金属製筐体部
材を洗浄するステップとをさらに含む請求項
2に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項5】
前記コールドスプレーアンテナ層と前記非金属製筐体部材の外面とが面一となるように前記コールドスプレーアンテナ層を磨くステップをさらに含む請求項
3に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項6】
前記金属導通部材の一端と前記非金属製筐体部材の外面とが面一となるように、前記金属導通部材のうち前記非金属製筐体部材の外面に対して凸出する部分を磨くステップをさらに含む請求項
1に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【請求項7】
前記非金属製筐体部材の外面に上塗り塗料をスプレーするステップをさらに含む請求項
1~
6のいずれか1項に記載の端末機器のアンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願番号が202010456663.X、出願日が2020年5月26日の中国特許出願に基づいて提案されたものであり、当該中国特許出願の優先権を主張しており、当該中国特許出願の全内容は参照として援用により本願に組み込まれている。
【0002】
本開示は通信分野に関し、特に端末機器及び端末機器のアンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
端末機器の機能がますます強力になるに伴い、様々なセンサデバイス、カメラや大容量電池が端末機器内部のアンテナの配置スペースを占有してしまう。また、端末機器の薄型化と高画面化が日増しに求められていることによっても、アンテナの間隔スペースが減少しつつあり、複数のアンテナ間の間隔が不十分で相互に干渉し、さらに通信性能に影響を与える。
【0004】
現在よく見られるアンテナ構造は、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit、略称FPC)アンテナ、レーザーダイレクトストラクチャリング(Laser Direct Structuring、略称LDS)アンテナ、プリントダイレクトストラクチャリング(Printed Direct Structuring、略称PDS)アンテナなどを含む。FPCアンテナは通常、端末機器に内蔵されるしかなく、端末の内部スペースがますます限られる状況下で、FPCアンテナ構造は端末により要求されるアンテナの多周波数帯域化、大量化を満たすことができなくなっている。LDSアンテナは端末機器の筐体に設置することができるが、筐体の基材の材質に特殊な要件があり、しかも無電解メッキ、電解メッキを施した筐体が脆くなりやすく、筐体にひび割れが発生するリスクがある。PDSアンテナは、端末機器の筐体に設置することができるが、配線位置が要求され、隅部では配線の信頼性が低く、その結果、アンテナの配置スペースの無駄が生じる。このことから、上記3種類のアンテナ構造にはいずれも欠点があることがわかった。5G通信ネットワーク時代の到来に伴い、異なる国の異なるニーズを満たすため、端末機器はより多くの周波数帯域に対応する必要があり、この場合、端末機器のアンテナ数が必ず大幅に増加する。上記した3種類のアンテナ構造では、5G端末機器によるアンテナへの要件を満たすことができなくなっていることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下は、本明細書で詳細に記載されている主題の概要である。本概要は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0006】
本開示の実施例は、アンテナの間隔スペースの不足に起因する問題を解決し、端末アンテナの性能を確保しつつ、従来のアンテナ技術に存在する欠点を解消する端末機器及び端末機器のアンテナの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示の実施例は、非金属製筐体部材と、前記非金属製筐体部材の外面に設けられるコールドスプレーアンテナ層と、前記非金属製筐体部材の内側に設けられるマザーボードと、前記非金属製筐体部材の内面と外面を貫通し、第1端が前記コールドスプレーアンテナ層に電気的に接続され、第2端が前記マザーボードに電気的に接続される金属導通部材とを含む、端末機器を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示の実施例は、筐体部材用金型に金属導通部材を入れて、前記筐体部材用金型を用いて射出成形を行い、前記金属導通部材に結合された非金属製筐体部材を得るステップであって、前記金属導通部材が前記非金属製筐体部材の内面と外面を貫通するステップと、レーザープロセスによって前記非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を形成するステップと、コールドスプレープロセスによって前記アンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成するステップとを含む端末機器のアンテナの製造方法を提供する。
【0009】
本開示の他の特徴及び利点は以下の明細書で説明され、また、その一部は明細書から明らかになり、又は本開示を実施することにより把握される。本開示の目的及び他の利点は明細書、特許請求の範囲及び図面において特に記載される構造によって実現されたり取得されたりすることができる。
図面は本開示の技術案をさらに理解するために提供されるものであり、明細書の一部となり、本開示の実施例とともに本開示の技術案を説明するが、本開示の技術案を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施例に係る端末機器の断面構造概略図である。
【
図2】本開示の実施例に係る端末機器の部分構造概略図である。
【
図3】本開示の実施例に係る端末機器の部分構造概略図である。
【
図4】本開示の実施例に係る端末機器のアンテナの製造方法の流れの概略図である。
【
図5】本開示の実施例に係る端末機器のアンテナの製造方法のステップS200の流れの概略図である。
【
図6】本開示の実施例に係る端末機器のアンテナの製造方法のステップS300の流れの概略図である。
【
図7】本開示の実施例に係る別の端末機器のアンテナの製造方法の流れの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本開示についてさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する具体的な実施例は本開示を説明するためにのみ使用され、本開示を限定するものではない。
【0012】
なお、本開示の実施例の説明において、複数(又は複数種)は2つ以上を意味し、「よりも大きい」、「未満」、「超える」などは当該数を含まないものとし、「以上」、「以下」、「以内」などは当該数を含むものとする。「第1」、「第2」などが記載される場合、技術的特徴を区別するために過ぎず、相対重要性を指示又は示唆するか、又は係る技術的特徴の数量を暗黙的に示すか、又は係る技術的特徴の順番を暗黙的に示すものではない。
【0013】
以下の説明においては、構成要素を表す例えば「モジュール」、「部材」又は「ユニット」の接尾辞が使用される場合、本発明を説明しやするために過ぎず、その自体には特有の意味がない。このため、「モジュール」、「部材」又は「ユニット」は交換して使用してもよい。
【0014】
端末機器の機能がますます強力になるに伴い、様々なセンサデバイス、カメラや大容量電池が端末機器内部のアンテナの配置スペースを占有してしまう。また、端末機器の薄型化と高画面化が日増しに求められていることによっても、アンテナの間隔スペースが減少しつつあり、複数のアンテナ間の間隔が不十分で相互に干渉し、さらに通信性能に影響を与える。
【0015】
現在よく見られるアンテナ構造は、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit、略称FPC)アンテナ、レーザーダイレクトストラクチャリング(Laser Direct Structuring、略称LDS)アンテナ、プリントダイレクトストラクチャリング(Printed Direct Structuring、略称PDS)アンテナなどを含む。
【0016】
FPCアンテナは自体の可撓性の特性により、実装方式で円弧状の筐体の内側表面に設けられ得る。ただし、実装の一貫性が確保されにくく、しかも、FPCアンテナは端末機器に内蔵されるしかない。端末の内部スペースがますます限られる状況下で、FPCアンテナ構造は端末により要求されるアンテナの多周波数帯域化、大量化を満たすことができなくなっている。
【0017】
LDSアンテナは、柔軟な配線が可能であり、付着力が高く、筐体の形状への要求が低い。その反面、LDSアンテナは、プラスチック粒子について特殊な要件があり、全てのプラスチック製筐体がLDSアンテナの基材として利用できるわけではなく、しかも、無電解メッキ、電解メッキを施した筐体が脆くなりやすく、内部応力が放出されると、筐体の厚さが薄くなった箇所ではひび割れが発生するリスクがある。
【0018】
PDSアンテナは、配線位置が要求され、隅部では配線の信頼性が低く、その結果、アンテナの配置スペースの無駄が生じる。
【0019】
以上より、上記3種類のアンテナ構造にはいずれも欠点があることがわかった。5G通信ネットワーク時代の到来に伴い、異なる国の異なるニーズを満たすため、端末機器はより多くの周波数帯域に対応する必要があり、この場合、端末機器のアンテナ数が必ず大幅に増加する。上記した3種類のアンテナ構造では、5G端末機器によるアンテナへの要件を満たすことができなくなっていることは明らかである。
【0020】
以上に基づいて、本開示の実施例は、アンテナの間隔スペースの不足に起因する問題を解決し、端末アンテナの性能を確保する端末機器及び端末機器のアンテナの製造方法を提供する。
【0021】
第1態様では、本開示の実施例は端末機器を提供する。
図1~
図3に示すように、該端末機器100は、非金属製筐体部材110と、コールドスプレーアンテナ層150と、マザーボード130と、金属導通部材120とを含み、コールドスプレーアンテナ層150は非金属製筐体部材110の外面に設けられ、マザーボード130は非金属製筐体部材110の内側に設けられ、金属導通部材120は非金属製筐体部材110の内面と外面を貫通し、金属導通部材120の第1端はコールドスプレーアンテナ層150に電気的に接続され、金属導通部材120の第2端はマザーボード130に電気的に接続される。
【0022】
ここでは、本開示の実施例の端末機器100は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、スポーツブレスレット、スマートウォッチ、車両インテリジェントターミナルなどの電子機器であってもよい。
【0023】
図1に示すように、いくつかの実施例では、非金属製筐体部材110は端末機器100のミドルフレームであってもよい。ここでは、ミドルフレームは端末機器100の本体構造の一部であり、通常、ミドルフレームは端末機器100のディスプレイ及びリアカバーに接続され、これにより端末機器100の本体が構成される。
【0024】
いくつかの実施例では、非金属製筐体部材110は端末のリアカバーであってもよい。ここでは、リアカバーも端末機器100の本体構造の一部であり、通常、リアカバーはミドルフレームに接続されて、端末機器100の本体の裏面に位置する。別のいくつかの実施例では、非金属製筐体部材110は、ミドルフレームとリアカバーを一体化したケースとしてもよく、本発明はこれについて特に限定しない。
【0025】
ここでは、金属はアンテナが送受信する信号をシールドして、アンテナの信号の品質に悪影響を与えることから、本開示の実施例では、コールドスプレーアンテナ層150が設けられる筐体部材は非金属材質であるように限定される。具体的には、非金属製筐体部材110はプラスチック材質で製造されてもよい。
【0026】
ここでは、本開示の実施例では、コールドスプレーアンテナ層150はコールドスプレープロセスによって製造された、アンテナ機能を備えた金属層である。コールドスプレープロセスによってコールドスプレーアンテナ層150を製造するプロセスはおおよそ次のとおりである。固体金属を高温で気化して金属ガスを形成し、非金属製筐体部材110の表面に圧縮された金属ガスを噴射し、非金属製筐体部材110の基材に結合し、非金属製筐体部材110の基材上に付着した金属層を形成し、該金属層の外形は所望の周波数帯域のアンテナ配線パターンと一致し、このようにして、該金属層はアンテナの機能を備えるようになる。また、ここでは、本開示の実施例のコールドスプレーアンテナ層150は、端末機器100による多周波数帯域アンテナへの要件を満たすために、複数の周波数帯域のアンテナ配線を含む。
【0027】
一例として、コールドスプレーアンテナ層150の材質は、銅、錫、アルミニウム及び亜鉛のうちのいずれか1種又は複数種を含む。
【0028】
本開示の実施例では、コールドスプレープロセスによって製造されたアンテナは、従来のFPCアンテナ、LDSアンテナ、PDSアンテナのそれぞれに存在する欠点を解消することができる。具体的には、端末機器100の内部にしか配置できないFPCアンテナに比べて、本開示の実施例のコールドスプレーアンテナ層150は端末機器100の外面に設けられる。LDSアンテナに比べて、本開示の実施例のコールドスプレーアンテナ層150は非金属材質について特殊な要件がなく、また、無電解メッキ、電解メッキなしで金属アンテナ層を形成することができる。PDSアンテナに比べて、本開示の実施例のコールドスプレーアンテナ層150は金属ガスを噴射することにより形成され、隅部についても形成しやすく、しかも、隅部での配線の信頼性が確保される。
【0029】
一例として、本開示の実施例のマザーボード130は端末機器100の本体の内部に設けられるプリント回路基板(Printed Circuit Board、略語PCB)である。通常、端末機器100のマザーボード130には、CPU、電源管理チップ、ベースバンドコンポーネント、RFコンポーネント、ブルートゥース(登録商標)コンポーネント、ワイヤレス・フィディリティー(Wireless Fidelity、略語WiFi)コンポーネントなどの電子デバイスが集積されている。
【0030】
一例として、本開示の実施例の金属導通部材120は非金属製筐体部材110内に嵌設され、かつ、非金属製筐体部材110の内面と外面を貫通する。該金属導通部材120は、一端がコールドスプレーアンテナ層150に電気的に接続され、他端がマザーボード130に電気的に接続され、このようにして、コールドスプレーアンテナ層150とマザーボード130との間の信号通信が実現される。例えば、コールドスプレーアンテナ層150により受信されたRF信号が金属導通部材120を介してマザーボード130のRFコンポーネントに伝送されて処理されるとともに、マザーボード130のRFコンポーネントから出力されたRF信号が金属導通部材120を介してコールドスプレーアンテナ層150に伝送されて送信される。
【0031】
いくつかの実施例では、マザーボード130には金属弾性接続部材140が設けられる。具体的には、金属弾性接続部材140はチップの形態でマザーボード130に設けられてもよい。金属弾性接続部材140の第1端はマザーボード130に接続され、金属弾性接続部材140の第2端は金属導通部材120に弾性的に接触し、金属導通部材120は金属弾性接続部材140を介してマザーボード130に電気的に接続される。
【0032】
一例として、金属弾性接続部材140はマザーボード130の金属導通部材120に近い側に設けられてもよい。マザーボード130が非金属製筐体部材110の内側に装着されたときに、金属弾性接続部材140は非金属製筐体部材110内に嵌設された金属導通部材120に当たり、自体の付勢力を利用して金属導通部材120のフィードインポイントに当接し、このように、金属導通部材120は金属弾性接続部材140とともにアンテナとマザーボード130との間のRF信号の送受信を行う。
【0033】
ここでは、本開示の実施例の金属導通部材120及び金属弾性接続部材140はそれぞれ複数設けられ、金属導通部材120と金属弾性接続部材140は1対1で対応しており、各金属導通部材120はコールドスプレーアンテナ層150内の各周波数帯域のアンテナ配線に対応して接続される。
【0034】
いくつかの実施例では、金属導通部材120は、コールドスプレーアンテナ層150に電気的に接続された一端が非金属製筐体部材110の外面と面一であり、これにより、端末機器100の外観の平坦性が確保される。
【0035】
いくつかの実施例では、非金属製筐体部材110の外面には上塗り塗料層がさらに設けられ、上塗り塗料層はコールドスプレーアンテナ層150を遮蔽する。
【0036】
本開示の実施例の技術案では、端末機器100の非金属製筐体部材110にコールドスプレーアンテナ層150が設けられ、該コールドスプレーアンテナ層150はコールドスプレープロセスによって製造された、アンテナ機能を備えた金属層である。コールドスプレーアンテナ層150は、従来のFPCアンテナ、LDSアンテナ及びPDSアンテナの欠点を解消し、端末機器100の内部スペースの代わりに端末機器100の外面にアンテナを配列することを可能とし、端末機器100の内部スペースの不足に起因するアンテナの間隔スペースが不十分であるという問題を効果的に解決し、アンテナの性能を確保する。
【0037】
第2態様では、本開示の実施例は、本開示の実施例の第1態様に係る端末機器に適用される端末機器のアンテナの製造方法を提供する。
図4に示すように、該方法は、以下のステップS100~S300を含むが、これらに限定されるものではない。
ステップS100:筐体部材用金型に金属導通部材を入れて、筐体部材用金型を用いて射出成形を行い、金属導通部材に結合された非金属製筐体部材を得て、金属導通部材が非金属製筐体部材の内面と外面を貫通する。
【0038】
ここでは、該筐体部材用金型は非金属製筐体部材を製造するための射出成形金型である。一例として、本開示の実施例の方法では、まず、筐体部材用金型に金属導通部材を入れて、次に、非金属製筐体部材に溶融したプラスチップ材料を注入して硬化して冷却し、金属導通部材が内部に嵌め込まれた非金属製筐体部材の完成品を得て、また、金属導通部材は非金属製筐体部材の内面と外面を貫通する。本例では、金属導通部材と非金属製筐体部材は一体に射出成形されるので、金属導通部材と非金属製筐体部材との結合の信頼性が高い。
【0039】
1つの可能な実施形態では、ステップS100で製造された非金属製筐体部材の完成品において、金属導通部材の一端は非金属製筐体部材の外面に対して凸出しており、凸出高さが0.1mm~1mmであってもよい。ここで、金属導通部材は、非金属製筐体部材の外面に対して凸出した一端が後で形成されるコールドスプレーアンテナ層に電気的に接続するためのフィードインポイントである。この場合、ステップS100の後に、金属導通部材の一端と非金属製筐体部材の外面とが面一となるように金属導通部材のうち非金属製筐体部材の外面に対して凸出した部分を磨くステップS100Bをさらに含む。本実施形態では、まず、金属導通部材の一端が非金属製筐体部材の外面に対して凸出することを許容し、次に、非金属製筐体部材の外面と面一となるように凸出した部分を磨き、このようにすれば、生産が容易になり、生産精度への要求が低く、量産の可能性が高く、また、コストの面でも優位性がある。
【0040】
もちろん、他の可能な実施形態では、高精度制御を通じて、金属導通部材と非金属製筐体部材の外面とを直接面一としてもよく、金属導通部材が非金属製筐体部材の外面に対して窪むようにし、後でコールドスプレー金属層を利用して窪み部分を埋めるようにしてもよい。
【0041】
ステップS200:レーザープロセスによって非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を形成する。
【0042】
一例として、予め設定されたアンテナ配線パターンに従って、後続のコールドスプレーアンテナ層の形成の準備として、レーザープロセスによって非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を作製してもよい。
【0043】
具体的には、
図5に示すように、ステップS200は、以下のサブステップS210及びS220を含んでもよい。
【0044】
ステップS210:非金属製筐体部材の外面に遮蔽層を設ける。
【0045】
一例として、遮蔽層は被膜、例えばPET膜又はPE膜としてもよい。具体的に実施する際には、被膜の一方の面に粘着剤を設け、次に、非金属製筐体部材の外面に被膜を粘着する。
【0046】
ステップS220:レーザープロセスによって、アンテナ配線パターンと一致し、非金属製筐体部材の外面におけるアンテナ配線領域となる刳り抜き領域を遮蔽層に形成する。
一例として、予め設定されたアンテナ配線パターンに従って、レーザープロセスによって該アンテナ配線パターンと一致する刳り抜き領域を遮蔽層に刳り抜くことで、非金属製筐体部材の外面にアンテナ配線領域を形成してもよい。
【0047】
ここでは、該遮蔽層は、非金属製筐体部材の外面に仮配置されて、非金属製筐体部材の外面のうちアンテナ配線が不要な領域を遮蔽するものであるので、該遮蔽層は除去可能なものとされる。また、上記の被膜の代わりとしてインク層を利用してもよい。本開示の実施例はこれについて特に限定しない。
【0048】
ステップS300:コールドスプレープロセスによってアンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成する。
【0049】
ここでは、コールドスプレープロセスの原理は以下のとおりである。固体金属を昇温して気化して、金属ガスを形成し、金属ガスを圧縮させ、次に、ワークピースの表面に圧縮させた金属ガスを高速で噴射する。金属ガスがワークピースの表面に噴射されたときに常温に降温して、ワークピース基材の分子に結合され、これにより、ワークピースの表面に金属層が形成される。以上のプロセスは真空状態や不活性ガスによる補助を必要とせず、このため、実現の原理が簡単であり、また、ワークピース基材の材質に対しては特殊な要求がない。本開示の実施例では、上記のワークピースとは筐体部材であり、さらに、本開示の実施例では、コールドスプレープロセスによって得られた金属層はアンテナとして機能するので、筐体部材は非金属材質、例えばプラスチックであるように限定される。
【0050】
具体的には、
図6に示すように、ステップS300は、以下のサブステップS310及びS320を含んでもよい。
【0051】
ステップS310:固体金属を気化して金属ガスを形成する。
【0052】
一例として、固体金属は昇温により吸熱して気化し、金属ガスとなるようにしてもよい。ここで、金属は銅、錫、アルミニウム及び亜鉛のうちのいずれか1種又は複数種を含んでもよい。
【0053】
ステップS320:非金属製筐体部材の外面に金属ガスを噴射して、アンテナ配線領域上にコールドスプレーアンテナ層を形成する。
【0054】
一例として、ステップS310で得られた金属ガスを圧縮させ、次に、非金属製筐体部材の外面に圧縮させた金属ガスを高速で噴射してもよい。金属ガスは非金属製筐体部材の外面に噴射されると、非金属製筐体部材の分子に結合され、これにより、非金属製筐体部材の外面に金属層が形成される。
【0055】
ここでは、非金属製筐体部材の外面には遮蔽層が予め設けられているので、ステップS320では、遮蔽層の刳り抜き領域(即ち、アンテナ配線領域内)にのみコールドスプレー金属層が形成される。このように、非金属製筐体部材の外面には、予め設定されたアンテナ配線パターンと一致するコールドスプレーアンテナ層が形成される。
【0056】
いくつかの実施例では、
図6に示すように、ステップS320の後に、非金属製筐体部材の外面の遮蔽層を除去するステップS330をさらに含む。該遮蔽層はステップS210で設けられ、非金属製筐体部材の外面のうちアンテナ配線が不要な領域を遮断するものであり、コールドスプレーアンテナ層が形成された後、遮蔽層に対する除去処理が行われる。
【0057】
いくつかの実施例では、
図6に示すように、ステップS330の後に、非金属製筐体部材を洗浄するステップS340をさらに含む。
【0058】
いくつかの実施例では、
図6に示すように、ステップS340の後に、コールドスプレーアンテナ層と非金属製筐体部材の外面とが面一となるようにコールドスプレーアンテナ層を磨くステップS350をさらに含んでもよい。通常、遮蔽層が厚さを有するので、金属ガスが非金属製筐体部材の外面に噴射されてなる金属層も大きな厚さを有する。遮蔽層が除去された後、コールドスプレーアンテナ層が非金属製筐体部材の外面上で凸起となることを回避するために、本例では、コールドスプレーアンテナ層が形成された非金属製筐体部材を磨くことで、筐体部材の外面の平坦性を向上させ、後で上塗り塗料をスプレーすることを容易にする。なお、本開示の実施例のアンテナ層はコールドスプレープロセスにより非金属製筐体部材に結合されたものであるので、磨いても、コールドスプレーアンテナ層と非金属製筐体部材との結合の信頼性が影響を受けない。
【0059】
いくつかの実施例では、
図7に示すように、コールドスプレーアンテナ層を被覆して、端末機器の外面の外観性を向上させるために、非金属製筐体部材の外面に上塗り塗料をスプレーするステップS400をさらに含む。
【0060】
本開示の実施例は、非金属製筐体部材と、コールドスプレーアンテナ層と、マザーボードと、金属導通部材とを含み、前記マザーボードは前記非金属製筐体部材の内側に設けられ、前記コールドスプレーアンテナ層は前記非金属製筐体部材の外面に設けられ、前記金属導通部材は前記非金属製筐体部材の内面と外面を貫通し、一端が前記コールドスプレーアンテナ層に電気的に接続され、他端が前記マザーボードに電気的に接続される。本開示の実施例の形態では、非金属製筐体部材の外面にコールドスプレーアンテナ層が形成されており、コールドスプレーアンテナ層によって多周波数帯域アンテナのレイアウトが図れる。さらに、金属導通部材によってコールドスプレーアンテナ層とマザーボードが電気的に接続され、アンテナの送受信機能が発揮する。本開示の実施例は、従来のFPCアンテナ、LDSアンテナ及びPDSアンテナの欠点を解消し、端末の内部スペースの代わりに端末の側面にアンテナを配置することを可能とし、端末機器の内部スペースの不足に起因するアンテナの間隔スペースが不十分であるという問題を効果的に解決し、アンテナの性能を確保する。
【0061】
本開示の実施例の技術案では、射出成形プロセスによって金属導通部材が嵌め込まれた非金属製筐体部材を形成し、端末機器の非金属製筐体部材にコールドスプレーアンテナ層を設け、金属導通部材を通じてコールドスプレーアンテナ層とマザーボードとが電気的に接続され、アンテナによる信号送受信が行われる。コールドスプレーアンテナ層は、従来のFPCアンテナ、LDSアンテナ及びPDSアンテナの欠点を解消し、端末機器の内部スペースの代わりに端末機器の外面にアンテナを配置することを可能とし、端末機器の内部スペースの不足に起因するアンテナの間隔スペースが不十分であるという問題を効果的に解決し、アンテナの性能を確保する。
【0062】
以上は本開示の好適な実施を詳細に説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本開示の主旨に反しない共有条件でさまざまな等同の変形や置換を行ってもよく、これらの等同の変形や置換は全て本開示の請求の範囲により定められた範囲に含まれるものとする。