(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】光検出及び測距用ライダーセンサー、ライダーモジュール、ライダー対応装置、及び光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240208BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
(21)【出願番号】P 2022564640
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(86)【国際出願番号】 SG2021050238
(87)【国際公開番号】W WO2021225520
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522211759
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム エイジア パシフィック プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM Asia Pacific Pte. Ltd.
【住所又は居所原語表記】7000 Ang Mo Kio Avenue 5, #02-00, Singapore 569877, Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルスルート ミヒール
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0260830(US,A1)
【文献】特開2015-215282(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出及び測距用ライダー(LiDAR)センサーであって、
発光体(LE)のアレイを含む光源(LS)であって、前記発光体(LE)は複数のグループとして電気的に相互接続され、前記発光体は前記ライダーセンサーから発光するように動作可能であり、少なくとも2つの前記発光体(LE)のグループが、互いに異なる幾何学的形状に類似した前記光源(LS)の領域を形成する、前記光源(LS)と、
同じグループからの前記発光体(LE)が同じ発光特性を有する光を出射するように、前記発光体(LE)のグループを個別にアドレス指定するように動作可能な駆動回路(DC)と、
ここで、前記アドレスは、前記発光体のグループ及び前記発光体のグループの発光特性を指定する、
光検出器(PD)のアレイを含む検出器(DT)であって、各光検出器(PD)は、前記光源(LS)によって出射され、前記ライダーセンサーの外部の物体によって反射された光を検出し、検出された前記光の関数として検出信号を生成するように動作可能である、前記検出器(DT)と、
ここで、前記光検出器(PD)は、グループとして電気的に相互接続されている、
それぞれの発光体(LE)のグループに関連付けられた前記検出信号に基づいて、前記物体までの距離を示す出力を供給するように動作可能である処理ユニット(PU)と、を有する、
ライダーセンサー。
【請求項2】
前記発光体(LE)のグループ及び/または光検出器のグループは、その電気相互接続によって、前記発光体(LE)のアレイまたは前記検出器(DT)のアレイの連続した領域を形成する、請求項1に記載のライダーセンサー。
【請求項3】
少なくとも1つの発光体及び/または光検出器のグループによって形成される前記領域は、非矩形の幾何学的形状に類似している、請求項
1に記載のライダーセンサー。
【請求項4】
前記処理ユニット(PU)は、出力としてライダー画像を提供するように動作可能であり、
前記発光体(LE)のグループは、前記ライダー画像の関心領域に従って配置される、請求項
1に記載のライダーセンサー。
【請求項5】
前記複数のグループとしての前記発光体(LE)のアドレス指定は、少なくとも1つの配線接続、プログラマブルスイッチ及び所定の発光体(LE)のグループと前記駆動回路(DC)との間の専用の電力/制御ルーティングによって確立される、請求項
1に記載のライダーセンサー。
【請求項6】
前記駆動回路(DC)は、走査処理に従って前記発光体(LE)のグループをアドレス指定するように動作可能であり、
前記走査処理の間、
発光体(LE)の1つ以上のグループは、前記走査処理の間、常に光を出射し、
発光体(LE)の1つ以上のグループは、所定の時間、光を出射し、
発光体(LE)の1つ以上のグループは、時系列順に順次光を出射する、
請求項
4に記載のライダーセンサー。
【請求項7】
前記処理ユニット(PU)は、前記駆動回路(DC)によって、所定の発光体(LE)のグループがいつ、どのような発光特性を用いてアドレス指定されるかについての前記時系列順を設定することによって、前記走査処理を規定するように動作可能である、請求項6に記載のライダーセンサー。
【請求項8】
前記発光体(LE)の発光特性は、光強度及び/または光波長を含み、以下のうちの一つに従う:
使用される前記発光特性に従って、所定の発光体(LE)または発光体(LE)のグループは、特定の強度及び/または特定の波長の光を出射する、及び/または
所定の発光体(LE)または発光体(LE)のグループは、使用される前記発光特性に従って、発光しない、
請求項
1に記載のライダーセンサー。
【請求項9】
前記駆動回路は、複数の駆動チャネル(CH)を備え、
各駆動チャネル(CH)は、前記光源(LS)の区分に関連付けられ、
前記駆動チャネル(CH)は、前記発光体(LE)のグループのアドレス指定に関して同期される、
請求項
1に記載のライダーセンサー。
【請求項10】
前記処理ユニット(PU)は、前記ライダー画像内の前記関心領域(ROI)を前記発光体(LE)のグループに割り当てるように動作可能であり、
前記走査処理は、前記走査処理の間、前記関心領域(ROI)の相対照射をさらに規定する、
請求項
6又は7に記載のライダーセンサー。
【請求項11】
少なくとも前記検出器(DT)、前記少なくとも1つの駆動回路(DC)及び前記処理ユニット(PU)が、共通の集積回路(IC)内に集積される、請求項1~
9のうちいずれか一項に記載のライダーセンサー。
【請求項12】
前記光源は、VCSELレーザーのアレイを含み、
前記検出器は、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイを含む、
請求項1~
9のうちいずれか一項に記載のライダーセンサー。
【請求項13】
前記光検出器(PD)のグループのうちの少なくとも2つは、互いに異なる幾何学的形状に類似している前記検出器(DT)の領域を形成する、
請求項1~9のうちいずれか一項に記載のライダーセンサー。
【請求項14】
前記光検出器(PD)のグループによって形成される前記検出器(DT)の隣接領域が重なり合わない、
請求項2に記載のライダーセンサー。
【請求項15】
光源(LS)は、センターフレーム(CF)の内側に配置された内側グループで構成され、
前記内側グループは三角形の形状をしており、
各内側グループの1つのコーナーポイント(CP)は、センターフレーム(CF)の中心(CT)に固定される、
請求項1~9のうちいずれか一項に記載のライダーセンサー。
【請求項16】
前記光源(LS)は、前記センターフレーム(CF)の外側に外側グループを備え、前記外側グループは、非三角形の形状を有する、
請求項15に記載のライダーセンサー。
【請求項17】
ライダーモジュールであって、
少なくとも1つの、請求項1~
16のうちいずれか一項に記載のライダーセンサーと、
前記光源(LS)を前記検出器(DT)から光学的に遮蔽する光バリア(LB)を有する前記ライダーセンサーを囲むパッケージであって、
前記発光体(LE)は、ライダーモジュールから発光するように動作可能であり、
前記光検出器は、前記ライダーモジュールの外部の物体によって反射された出射光を検出するように動作可能である、前記パッケージと、を含む、
前記ライダーモジュール。
【請求項18】
ホストシステムに組み込まれた、少なくとも1つの、請求項
17に記載のライダーモジュールを含むライダー対応装置であって、前記ホストシステムは、
運転制御、飛行制御、交通制御のような距離制御の支援システム、
先進運転支援システム(ADAS)、
監視システム、
物流システムのような産業システム、
携帯機器、
ナビゲーションシステム、及び/または
カメラ、
のうち一つを備える、
前記ライダー対応装置。
【請求項19】
光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法であって、前記ライダーセンサーは、
発光体(LE)のアレイを含む光源(LS)であって、前記発光体(LE)は複数のグループとして電気的に相互接続され、前記発光体はライダーセンサーから発光するように動作可能である、前記光源(LS)と、
駆動回路(DC)と、
光検出器(PD)のアレイを含む検出器(DT)と、
ここで、前記光検出器(PD)は、グループとして電気的に相互接続されている、
以下のステップを含む処理ユニットと、を含み、
前記駆動回路(DC)を用いて、同じグループからの前記発光体(LE)が同じ発光特性を有する光を出射するように、前記発光体(LE)のグループを個別にアドレス指定するアドレス指定ステップと、
ここで、前記アドレスは、前記発光体のグループ及び前記発光体のグループの発光特性を指定する、
前記光検出器(PD)を用いて、前記光源(LS)によって出射され、前記ライダーセンサーの外部の物体によって反射された光を検出し、検出された前記光の関数として検出信号を生成する検出ステップと、
前記処理ユニット(PU)を用いて、それぞれの発光体(LE)のグループに関連付けられた前記検出信号に基づいて、前記物体までの距離を示す出力する提供ステップと、を含む、
前記光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出及び測距用ライダーセンサー、ライダーモジュール、ライダー対応装置及び光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法に関する。
【0002】
本特許出願は、欧州特許出願第20173458.9号の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
光検出及び測距(Light detection and ranging;LiDAR:ライダー)は、光源と受光器を用いた遠隔物体検出測距用センシング技術である。一般的な態様では、出射された(emitted)光パルスは、物体に当たって反射し、ライダーシステムに戻ることで、その戻り光のパルスをレシーバが検出する場合がある。光パルスを送受信する間の時間は、ライダーシステムと物体との間の距離に依存する。移動時間を知ることにより、距離を計算することができる。この概念の一つの態様として、直接飛行時間(Direct Time of Flight;D-TOF)が考えられる。このシステムでは、近赤外光等の短いパルスが出射される。そのエネルギーの一部は戻され、距離情報、任意で強度や方向、そして最終的には複数回の連続測定から速度に変換される。ライダーセンサーは、例えば、自動運転車両、ロボットまたは先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance;ADAS)など、撮像システムとしてさまざまな用途に使用されている。ライダーセンサーは、短距離(最大15~20M)、中距離(10~80M)、長距離(75Mを超える)に使用できる。
【0004】
ライダーシステムは、視野全体を一度に観察することができ、フラッシュシステムと呼ばれる。フラッシュは、通常、短距離から中距離(0~100M)に適しており、景色全体を一度に撮像することで、相対速度の高い対象物も適切に検出することができる。もう一つの態様は、FOVの一部分に焦点を当て、FOV全体がカバーされるまで、一度に一部分を観測するもので、スキャニングライダーと呼ばれている。スキャニングは、FOV全体ではなく、サブセットに光を当てることができるので、フラッシュに比べてより長い距離で物体を検出することができる。スキャナーはFOVの1つのサブセットしか取らないので、サブセットからサブセットへ光ビームを移動させるための何らかのステアリングを行う必要がある。現行のシステムでは、センサーヘッド全体を回転させる(いわゆるスピニングライダー)か、センサー内部の機械部品(ポリゴンミラーやMEMSミラーなど)を使って、機械的にビームを操る方法が一般的である。しかし、機械的な部品は故障のリスクがある。
【0005】
ライダーシステムにおける主要な性能パラメータは、視野、角度分解能、範囲、及びフレームレートである。これらに影響を及ぼす主要なパラメータは、エミッタ及び受信画素の開口数、エミッタの出力及び受信器の感度であり、平均化、ヒストグラムなどの信号処理と組み合わせて、確率ノイズを低減することができる。従来、ライダー性能は、FOV、出射出力、画素サイズ及び平均化量の微妙なバランスによるものである。多くの場合、特に長距離のライダーでは、フレームレート及びFOVを犠牲にして、より良好な距離性能を達成する。同時に、ライダーシステムは、十分な距離性能を有する実現可能で、コンパクトで、コスト効率の良い解決策を提供するという課題に直面し続けている。
【0006】
当技術分野では、可動部品を有さない、True-solid-state型のビームステアリングを目的とした最初の試みがなされてきた。走査型ライダーとフラッシュ型ライダーの両方の現行システムは、視野全体の等照射に依拠している。
図6は、単一列走査による照射の概念に基づく従来技術の垂直共振器型面発光レーザー(Vertical-cavity surface-emitting laser;VCSEL)の一例を示す図である。この手法は一般的に適用できる手法ではあるが、視野内の特定の関心領域(Regions of Interest;ROI)をアドレス指定する方法がないため、これらのシステムは自由度が低く、電力効率が悪くなる。
【0007】
一般的な走査型ライダーの欠点を解決することができる光検出及び測距用ライダーセンサー、ライダーモジュール、ライダー対応装置及び光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法を提供することを目的とする。
【0008】
これらの目的は独立請求項の発明の対象によって達成される。さらに別の発展及び実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
任意の1つの実施形態に関連して説明される任意の特徴は、単独で、または本明細書に記載される他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、代替案として説明されない限り、実施形態の他の任意の1つ以上の特徴、または実施形態の他の任意の組み合わせと組み合わせてもよいことが理解されたい。さらに、以下に記載されていない同等物及び変形例を、添付の特許請求の範囲に規定された光検出及び測距用ライダーセンサー、ライダーモジュール、ライダー対応装置及び光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法の範囲から逸脱することなく採用することもできる。
【0010】
以下は、光検出及び測距(ライダー)システムの分野における改良された概念に関する。1つの態様は、ライダーセンサーのセグメント化に関する。例えば、ライダーセンサーは、発光体のアレイを有する光源を含む。光源を行及び/または列にグループ化する代わりに、改善された概念は、必ずしも完全な行または列に類似していない発光体のグループを提案する。代わりに、グループは、任意の形状及び形態を有することができる光源の領域に類似していてもよい。同様に、ライダーセンサーは、検出器を形成する光検出器のアレイを含む。例えば、グループ化は、グループが、ライダー画像などのライダー出力における関心領域に関連付けられることができるように、及び/またはグループに光検出器を配線接続することによって、検出器に拡張することができる。これらのグループ、または関心領域は、任意の形状及び形態を有することができる検出器の領域に類似していてもよい。したがって、グループ化は、関心領域または視野の領域において、発光側及び検出側の両方に導入することができる。
【0011】
少なくとも1つの実施形態では、光検出及び測距用ライダーセンサーは、光源、駆動回路、検出器及び処理ユニットを含む。
【0012】
光源は、グループとして電気的に相互接続された発光体のアレイを含む。発光体は、ライダーセンサーから光を出射するように動作可能である。発光体のグループのうちの少なくとも2つのグループは、互いに異なる幾何学的形状に類似した光源の領域を形成する。つまり、1つのグループが、光源の輪郭全体、例えば、光源の行または列全体と一致する領域に類似している場合、異なる形状または幾何学的形状を有する領域をカバーする少なくとも1つのグループが存在することになる。これは、行列として配置されていない発光体のアレイ、例えば六角形の配置にも当てはまる。実際には、これらのグループは、可能な任意の形状または幾何学的形状(自由形状)を有することができる。したがって、グループは、光源を配置するために採用される構造から分離されていると考えることができる。その代わりに、それらの形状及び面積は、電気相互接続及び駆動回路によるアドレス指定によって大きく左右される。
【0013】
発光体は、光源の画素または素子とみなすことができ、例えば、発光ダイオードまたは半導体レーザーダイオードを含む。全ての発光体、または少なくとも所定のグループ内の発光体は、同じタイプであってもよい。しかしながら、光源は、異なるタイプの発光体を有してもよい。光源または発光体は、1つ以上の特徴的な発光波長を有してもよい。例えば、発光体の発光波長は、近赤外線(NIR)にある。その他の波長としては、例えば、可視光または紫外線、赤外線(IR)または遠赤外線(FIR)を挙げることができる。
【0014】
駆動回路は、発光体のグループを個別にアドレス指定するように動作可能である。アドレス指定は、同じグループからの発光体が、同じ発光特性で発光するようにする。例えば、駆動回路は、レーザードライバーを含み、1つまたは複数のチャネルを有してもよい。アドレス指定は、例えば、複数のチャネルのいずれかを介して行われる。
【0015】
検出器は、光検出器のアレイを含む。各光検出器は、光源によって出射され、ライダーセンサーの外部の物体によって反射された光を検出するように動作可能である。さらに、光検出器は、検出された光を表す検出信号を生成するように動作可能である。例えば、光検出器は、アレイを形成するように配置または集積されたsolid-state型または半導体光検出器として実現することができる。それらの例として、CCDまたはCMOSイメージセンサー、シングルフォトン・アバランシェ・ダイオード(single-photon avalanche diodes;SPAD)、または他のタイプのアバランシェ・ダイオード(APD)のアレイが挙げられる。これらのタイプの光検出器は、NIR、VIS、及びUVのような光に対して感度を有してもよく、発光器による発光の狭パルス幅の使用を容易にしてもよい。
【0016】
最後に、処理ユニットは、それぞれの発光体のグループに関連付けられた検出信号に基づいて、物体までの距離を示す出力を提供するように動作可能である。例えば、処理ユニットは、例えば、ライダーセンサーの操作を制御するための、プロセッサまたはマイクロプロセッサを有する。ライダー処理全体を、処理ユニットによって実行してもよい。ただし、ライダー処理は、「オフチップ(off-chip)」で実行されてもよく、処理ユニットは、出力として距離情報を提供するために、前処理のみを実行してもよい。
【0017】
動作中、光源は「各グループ」単位で発光する。これは、所定のグループの発光体が、共に同じ発光特性で発光することを意味する。同時に、他の発光体のグループは、全く発光しないか、または異なる発光特性、例えば異なる強度を有する光を出射してもよい。最終的に、発光体のグループによって出射された光は、その場面における1つ以上の外部物体に衝突し、反射され、ライダーセンサーに戻ることで、1つ以上の光検出器が戻り光を受け取り、検出された光を表す検出信号を生成する。光の送受信間の時間は、ライダーセンサーとその場面の所定の物体との間の距離に依存する。時間を知ることにより、例えば飛行時間の概念に基づいて距離を計算することができる。通常、ライダーセンサーは、開始時間及び停止時間を測定する手段、例えば、時間-デジタル変換器を有する。飛行時間は、測定された開始時間及び停止時間に基づいて、例えば、処理ユニットによって導出することができる。発光は、パルス化されてもよく、例えば、光源は、近赤外光のような短いパルスの光を出射する。そのエネルギーの一部は戻され、距離、任意で強度、そして最終的に速度で変換される。
【0018】
改良された概念により、一般的なライダーセンサーにおける多くの制限が解決される。例えば、電気相互接続による発光体のグループ化は、従来の行/列分割による等照射との差別化を可能にする。あるいは、電気相互接続は、自由な形状に分割する方式を可能にする。これにより、個々のグループをアドレス指定することによって、最適化した電力による照射を可能にする。これは、視野内の対象場面のタイプに関する先験的知識に基づいて行われてもよい。例えば、エミッタ側、駆動回路側、レシーバ側において、利用可能なリソースをより多くの範囲を必要とする領域により多く向けることができる。受信機チェーンは、例えば、処理ユニットの制御下で、ノイズを低減し、検出可能範囲を改善するためにより多くの統計処理を含んでもよい。
【0019】
改善された概念は、従来技術の解決策において差し迫っているいくつかの問題及び問題の組合せを解決するのに役立つ。例えば、駆動回路は、駆動チャネルの数を減らし、より重要性の低い領域を省電力化し、重要な領域に対し電力処理を最適化してもよい。光源のグループ化またはセグメント化は、電力のルーティングをより容易にし、全視野の照射をより少ないチャネルで実現し、VCSELのアレイ等の1Dアドレス指定可能アレイによる関心領域への電力の集中を可能にする。2Dアドレス指定可能性は必ずしも必要ではないが、適応型ROIの可能性を広げることができる場合がある。検出器または受信器側では、関心領域とエミッタのグループとのマッチングにより、デジタル処理チャネル(TDC、ADC)の数を減らし、利用可能なリソースをより効果的に使用することができる場合がある。その結果、処理装置の性能、例えば必要となる画像処理装置のチップサイズに対する必要条件が緩和される場合がある。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、発光体のグループは、電気相互接続によって、発光体(light emitters;LE)のアレイの連続した領域を形成する。すなわち、隣接する発光体がグループを形成する。光源に対して異なる位置を有する発光体は、異なるグループのメンバーであってもよい。しかしながら、異なるグループは、使用される発光特性に従って、並列に発光するように、同時に駆動回路によってアドレス指定されてもよい、すなわち、動作してもよい。少なくとも1つの実施形態では、グループによって形成される連続した領域は、重複しない。少なくとも1つの実施形態では、グループによって形成される連続した領域は、光源の発光領域全体をカバーする。
【0021】
加えて、またはその代わりに、電気相互接続によって、光検出器のグループは、検出器の連続した領域を形成する。すなわち、隣接する光検出器が、連続した領域を形成し、それにより関心領域を形成してもよい。光源に対して異なる位置を有する光検出器は、異なる領域の部材であってもよい。そして、検出は、検出器のレベルにおいて、領域、または関心領域の入射光にそれぞれ関連付けられてもよい。少なくとも1つの実施形態では、グループによって形成される連続した領域は、重複しない。これにより、領域、または関心領域は、検出器側でも配線接続されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、光検出器によって形成される連続した領域は、検出器の感光性領域全体をカバーする。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、発光体及び/または光検出器の少なくとも1つのグループによって形成される領域は、非矩形の幾何学的形状に類似している。所定のグループの形状及び幾何学的形状は、光源の構造に限定されない。例えば、所定のグループの形状及び幾何学的形状は、光源の行または列の形状及び幾何学的形状に必ずしも類似していなくてもよい。非矩形の幾何学的形状は、矩形以外の任意の形状、例えば、三角形、五角形、六角形、または任意の多角形を含んでもよい。ただし、非矩形の幾何学的形状は必ずしも正多角形でなくてもよい。しかしながら、非矩形の幾何学的形状は、菱形、凧型(kite)、平行四辺形、等脚台形、または4つの角部を有する不定形の幾何学的形状等の4つの角部を有する幾何学的図形に類似してもよい。長方形の幾何学的形状は、隣り合う辺がそれぞれ垂直である任意の幾何学的図形とみなす。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、処理ユニットは、出力としてライダー画像を提供するように動作可能である。発光体のグループは、ライダー画像の関心領域に従って配置される。発光体のグループ化はライダーセンサーの発光側に影響する。しかしながら、受信側は、反射または散乱によってライダーセンサーに反射して戻される光を含む。このように、発光体のグループ化は、ライダーセンサーの受信側にも影響を及ぼす。ライダー撮像の場合、すなわち、ライダーセンサーの出力が画像である場合、所定の発光体のグループは、ライダー画像内に対応する部分、関心領域(ROI)を有する場合がある。
【0024】
上述のように、処理ユニットは、それぞれの発光体のグループに関連付けられた検出信号に基づいて、物体までの距離を示す出力を提供するように動作可能である。ライダー撮像の場合、ライダー画像の区分は、発光体のグループによって規定されてもよい。すなわち、所定のグループの形状および位置が、出射光の反射によってライダー画像内で視認可能であってもよい。これにより、関心領域は、光源の区分化またはグループ化によって規定することができる。これにともない、例えば、場面についての先験的知識、またはライダー画像がどのように見えるかについての予測または想定に基づいて、関心領域をライダー画像内で規定することができる。ただし、関心領域は、光検出器の電気相互接続によって規定することもできる。規定は、例えば、発光体のグループとして、ライダー画像に対して規定される関心領域に類似する発光体の電気相互接続の配置を選択することによって、製造者によって行われてもよい。これにより、例えば、視野内の特定のまたは予測可能な領域(field of view:FOV)に対して、ライダーセンサーの適応性を高め、最適化することが可能になる。グループ及び/または関心領域の形状は、大幅に自由に選択することができるので、一般的なライダーシステムと比較して、設計上の自由度が非常に高い。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、発光体のグループのアドレス指定は、配線接続によって確立される。それに加えて、またはその代わりに、アドレス指定は、所定の発光体のグループと駆動回路との間の専用の電力/制御ルーティング、及び/またはプログラマブルスイッチによって確立される。
【0026】
発光体のグループ化を決定する電気相互接続は、それらが生産レベルにおいて設定されるという意味においては、固定される。しかし、駆動回路によるアドレス指定は、ライダーセンサーの操作中に変更することができる。常にオンにされる、または常にオフにされる等、常にアドレス指定される1つまたは複数のグループが存在してもよい。これは、駆動回路と所定のグループの発光体との間の配線接続によって実現することができる。1つ以上の他のグループが、特定の時点でのみアドレス指定される、例えば、特定の時点で、または特定の期間、オンまたはオフにされるようにしてもよい。これは、プログラマブルスイッチ及び/または専用の電力/制御ルーティングによって実現してもよい。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、駆動回路は、走査処理に従って発光体のグループをアドレス指定するように動作可能である。走査処理の間、1つまたは複数の発光体のグループが、走査処理の間、絶えず発光する。しかしながら、同じまたは他の1つまたは複数の発光体のグループは、所定の時間発光する。加えて、またはその代わりに、1つまたは複数の発光体のグループは、時系列順に発光する。
【0028】
走査処理によれば、駆動回路は、発光体のグループの1つのサブセットのみをアドレス指定してもよい。その結果、FOVの特定の関心領域のみに対応するサブセットのみが照射される。基本的に、これにより、FOVの1つのサブセットから別のサブセットへ光ビームを機械的に操縦する必要なしに、スピニングライダーを実現する。これにより、可動部品が必要とされないので、機械部品が故障するリスクを効果的に回避することができ、True-solid-state型の解決策を実現することができる。
【0029】
さらに、走査処理は、利用可能なリソースをより多くの範囲を必要とする領域に向けることができるように、例えば処理ユニットにより、大幅にプログラム可能とすることができる。走査を行うことにより、発光体やセンサー全体をより強力にする必要性を伴うような領域にも、利用可能な光学エネルギーをより多く向けることができる。このように、従来の均一に照射する手法よりも電力効率の良い解決策を提供する。例えば、特定の関心領域を、他の領域よりも頻繁に照射、または他の領域とは異なる発光特性を用いて照射することができ、または他の領域よりもより多くの時間、測定、観察することができる。これにより、処理ユニットは、例えば、ノイズを低減し、検出可能範囲を改善するためにより多くの統計処理を適用することができる。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、処理ユニットは、所定の発光体のグループが駆動回路によって、いつ、どのような発光特性を用いてアドレス指定されるかについての時系列順を設定することによって、走査処理を規定するように動作可能である。
【0031】
時系列順は、一般的なライダーシステムの走査を効果的に模倣しているが、MEMSミラーまたはステアリング装置のような機械部品を必要としない。走査は、自由度の高い時間依存プロセスである。時系列順を変更することで、異なる走査パターンを設定することができる。例えば、「環状」走査パターンは、発光体のグループを時計回りまたは反時計回りにアドレス指定することによって実現することができる。「前向き」走査パターンは、ライダー画像内の線に沿った関心領域、例えば、水平線を好む場合があり、長距離ライダーに使用される場合がある。処理ユニットは、ユーザのカスタマイズされた走査パターンを受信するように配置可能であり、または現在の走査処理用時系列順を設定するようにプログラム可能である。例えば、走査パターンは、角(中距離)/横向き(短距離)ライダー、製造現場や監視現場における特定の環境設定可能な現場、自律ロボット等に対して最適化が可能である。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、発光体の発光特性は、光強度及び/または光波長を含む。発光特性は、以下のいずれかによって規定される。所定の発光体または発光体のグループは、使用される発光特性に従って、特定の強度及び/または特定の波長で発光する。加えて、またはその代わりに、使用される発光特性に従って、所定の発光体または発光体のグループは、発光しない。
【0033】
走査処理及び時系列順は、駆動回路によってアドレス指定されたときに、所定の発光体のグループがいつ、どのような発光特性で発光するのかを規定する。この時間依存型の走査処理は、走査パターンに類似している。光強度及び/または光波長は、所定の用途に合わせて走査パターンを整えるために、さらに別の自由度を提供する。例えば、第1の例では、走査処理の間、あるグループを、例えば第1の強度及び/または波長を有する第1の発光特性に従って発光するために、ある時点でアドレス指定する。第2の例では、同じグループを、再び第1の発光特性に従って、または、例えば、第2の強度及び/または波長を有する第2の発光特性に従って、第2の発光特性に従って発光するようにアドレス指定することができる。この概念は、全ての発光体のグループに適用することができる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、駆動回路は複数の駆動チャネルを含む。各駆動チャネルは、光源の区分に関連付けられる。さらに、駆動チャネルは、発光体のグループをアドレス指定することに関して同期される。駆動回路は、駆動チャネルを介して発光体のグループをアドレス指定するように動作可能である。
【0035】
例えば、駆動回路は、単一のユニットとして実現することができ、光源の近傍に配置することができる。そして、駆動チャネルは、単一回路から、光源の対応する区分、例えば、当該区分に関連する1つ以上の発光体のグループへの電気接続を確立する。別の態様によれば、駆動回路は、多数のより小さな駆動ユニットを含み、これらの駆動ユニットは一緒になって駆動回路を形成する。これらの駆動ユニットは、光源の周りに配置され、それらがアドレス指定すべき区分の近傍に配置される。より小さいユニットは、それぞれ専用の駆動チャネルを介して区分に接続される。
【0036】
したがって、駆動回路は、手元のアプリケーションに応じて柔軟に実現することができる。従来の手法では困難である場合もあった、駆動ユニットの光源の全周に対する配置が可能になる。これにより、電力のルーティング及び電流の密度分布が非常に簡単になる。例えば、光源としてのVCSELレーザーは、VCSELの4つの側面のうちの2つの側面のみにドライバーを配置することができることが多い。これは、ドライバーのVCSELへの直接ボンディングによって迂回することができるが、結果として、VCSELに輸送されているドライバーからの熱が過剰となる。提案された駆動ユニットの分割及び使用は、より簡単な解決策を可能にする。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、処理ユニットは、ライダー画像内の関心領域を発光体のグループに割り当てるように動作可能である。さらに、走査処理は、走査処理中、関心領域の相対照射をさらに規定する。
【0038】
例えば、視野の中心の周りにグループ化された関心領域が、FOVの端部よりも多く照射されるようにすることができる。別の例では、より遠くの物体が集中する関心領域は、より近い物体を有する関心領域とは異なる、例えば、より多くの照射を必要とし得る。実際、ライダーセンサーは、学習モードで動作可能であってもよい。学習モードの間、距離の分布及び/またはアクティビティが記録され、例えば処理ユニットによって関心領域に参照される。これにより、実際の測定対象シーンに合わせて、走査処理を動作中に調整することができる。学習モードは、ライダーセンサーの操作中、繰り返すことができる。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも検出器、少なくとも1つの駆動回路及び処理ユニットが共通の集積回路内に集積される。例えば、光源及び共通の集積回路は、共有キャリアまたは基板を介して配置され、互いに電気的に接触する。しかしながら、他の態様では、光源は、共通の集積回路に統合されてもよい。統合することにより、コンパクトな設計が可能になり、限られた面積の設計における薄型システムの設計と、基板占有面積の削減が可能になる。加えて、発光及び検出用ビーム経路の複雑さを低減することができる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、光源は、発光体のアレイを含む垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)を含む。検出器は、単一光子アバランシェダイオードのアレイ(SPAD)を含む。
【0041】
あるタイプ半導体レーザーダイオードは、例えば、垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)等の面発光レーザー、またはエッジエミッタレーザーを含む。VCSELは、表面発光の特性と、アドレス指定が可能なアレイにおける設計の自由度、レーザー発振波長の低温依存性、向上した信頼性、及びウェハレベルの製造プロセスの使用可能性等を兼ね備える。例えば、VCSELは、アレイとして実現することができ、通常、50~10K個の個別の発光体を含む。これにより、1つのエミッタの故障の影響が抑制される。多数の発光体により、グループ及び/または関心領域の形状及び幾何学的形状を微調整することが可能になる。
【0042】
さらに、VCSELは、波長帯域幅が狭いため(特に、過熱)、検出器アレイなど受信側でのフィルタリングを効果的に行い、S/N比を向上させることが可能である。VCSELは、垂直な円筒形のビームを放射することができ、撮像システムへの統合をより容易にする。単光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイは、高感度検出が可能で、高速小型時間-デジタル変換器との組み合わせにより、高精度な距離計測を実現する。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、ライダーモジュールは、上述の概念による少なくとも1つのライダーセンサーを有する。パッケージは、光源を検出器から光学的に遮蔽する光バリアによってライダーセンサーを囲う。発光体は、ライダーモジュールから発光するように動作可能である。光検出器は、ライダーモジュールの外部の物体によって反射された出射光を検出するように動作可能である。
【0044】
ライダーモジュールとして実装することで、ライダーセンサーの構成要素を同じセンサーパッケージに組み込むことができる。これにより、走査処理に応じた走査により視野全体を観察することができる撮像システムを実現することができる。このような撮像システムは、赤外線等の光のパルスを出射することができる。そのエネルギーの一部が戻り、例えば距離や任意で速度に変換される。
【0045】
少なくとも1つの実施形態では、ライダー対応装置は、ホストシステムに組み込まれた提案された概念に係るライダーモジュールを少なくとも1つ含む。ホストシステムは、運転制御、飛行制御、交通制御等の距離制御用支援システム、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System:ADAS)、監視システム、物流システム等の産業システム、携帯機器、ナビゲーションシステム、及び/またはカメラのうちの1つを有する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法は、ライダーセンサーを含む。ライダーセンサーは、発光体のアレイを更に含む光源を含み、発光体はグループとして電気的に相互接続され、発光体はライダーセンサーから発光するように動作可能である。発光体(LE)のグループのうちの少なくとも2つのグループは、互いに異なる幾何学的形状に類似した光源(Light source:LS)の領域を形成する。さらに、ライダーセンサーは、駆動回路、光検出器のアレイを含む検出器、及び処理ユニットを含む。
【0047】
当該方法は、同じグループからの発光体が同じ発光特性を有する光を出射するように、発光体のグループを個々に、駆動回路を用いてアドレス指定するステップを含む。光検出器を使用して、光源によって出射され、ライダーセンサーの外部の物体によって反射される光が検出され、検出信号が、検出された光の関数として生成される。最後に、処理ユニットを使用して、それぞれの発光体のグループに関連付けられた検出信号に基づいて、物体までの距離を示す出力が提供される。
【0048】
光検出及び測距用ライダーセンサーの操作方法のさらに別の態様は、光検出及び測距用ライダーセンサー、ライダーモジュール及びライダー対応装置、様々な態様及び実施形態から容易に導出され、逆の場合も同様である。
【0049】
以下、上記で提示された概念を、実施形態の例を示す図面を参照してさらに詳細に説明する。以下の実施形態及び図面において、類似または同一の要素には、それぞれ、同一の参照番号が与えられる場合がある。しかしながら、図面に示された要素及びそれらの寸法の相互関係は、正確な縮尺でない場合があり、層、構成要素、及び領域等の個々の要素は、説明または理解を容易にするために誇張して示される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図5A】ライダー画像における関心領域の一例を示す図。
【
図5B】ライダー画像における関心領域の一例を示す図。
【
図5C】ライダー画像における関心領域の一例を示す図。
【
図6】単一列走査による照射の概念に基づく従来技術のVCSELの一例を示す図。
【0051】
図1にライダーセンサーの一例を示す。ライダーセンサーは、光源LS、検出器DT、駆動回路DC及び処理ユニットPUを有し、これらはキャリアCAと連続して配置され、電気的に結合されている。例えば、キャリアは、電気的接続性及び機械的支持力を付与するための基板を有する。検出器DT、駆動回路DC及び処理ユニットPUは、共通の集積回路ICを構成する同じチップCHに集積化されている。通常、光源及び共通の集積回路は、キャリアを介して、互いに電気的に接触するように配置される。撮像システムの構成要素は、センサーパッケージ(図示せず)内に組み込まれ、ライダーモジュールを形成する。検出方法を実行するための、例えばプロセッサまたはマイクロプロセッサ等の処理ユニット等のさらに別の構成要素、及びADC、TDC等が、センサーパッケージ内に配置されていてもよく、また同じ集積回路内に統合されていてもよい。パッケージ内において、光バリアLBは、光源LSを検出器DTから光学的に遮蔽する。
【0052】
光源LSは、発光体LEのアレイを含む。本実施形態では、発光体は、面発光レーザー、例えば垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)である。発光体は、1つ以上の特徴的な発光波長を有する。例えば、発光体の発光波長は、近赤外(NIR)域にあり、例えば、800nmより大きく、10,000nmより小さい。ライダーの適用は、確実な発光及び検出を可能にする、840nm以上1610nm以下の発光体の発光波長範囲に依存する場合がある。この範囲は、VCSELによって提供することができる。検出器アレイDAは、1つまたは複数の光検出器、すなわち画素を有する。画素のアレイは、イメージセンサーを形成する。本実施形態では、SPADであるが、例えば、ピン型フォトダイオード、ピンフォトダイオードまたはその他のタイプのフォトダイオードであってもよい。処理ユニットPUは、例えば、ライダーセンサーの操作を制御するために、プロセッサまたはマイクロプロセッサを有する。ライダー処理全体を、処理ユニットによって実行してもよい。ただし、ライダー処理は、「オフチップ」で実行されてもよく、処理ユニットは、出力として距離情報を提供するために、前処理のみを実行してもよい。
【0053】
図2Aは、ライダーセンサーの光源の一例を示す。光源LSは、個別の発光体LEの二次元アレイである。光源LSの発光領域は、外枠OFによって制限される。発光体LEは、図中では点として示されている。本実施形態では、発光体LEは、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)として実現される。例えば、アレイは、50~10kの個別の発光体を含む。
【0054】
発光体LEは、発光体のグループGRとして電気的に相互接続される。図面は、異なる形状または幾何学的形状のグループGRを示す。センターフレームCFの内部には、内側グループが配置されている。内側グループは、三角形を有し、各三角形グループの1つの角部CPがセンターフレームCFの中心CT、または光源LSに固定される。センターフレームCFの外側には、センターCTの周囲にさらに別のグループが配置される。外側のグループは、非三角形または正方形の形状、すなわち合計360度の4つの任意のコーナー角を有する。内側及び外側のグループを合わせて、外枠OFの全領域、すなわち光源LSの発光面全体をカバーする。この例では、光源LSは、40個の発光体のグループに区分される。
【0055】
図2Bは、ライダーセンサーの光源の別の一例を示す。グループへの区分化については同様であるが、発光体のグループ数がより少なく、グループ数は、例えば28である。最適な構成については、ライダーセンサーの用途に応じて決定されてもよい。
【0056】
一般に、グループの形状または幾何学的形状は、個々の発光体LE間の電気相互接続によって決定される。発光体LEは、例えば駆動回路DC(図示せず)のチャネルCHを介して、グループとして一緒にアドレス指定できるように、電気的に相互接続される。このように、発光体のグループは、任意の形態または形状を有することができ、駆動回路への電気相互接続の態様によってのみ制限される。ただし、発光体のグループへの電気相互接続は、ハードウェアによって、例えば生産ラインのレベルで設定される。しかしながら、ライダーセンサーの操作中に発光体のグループがアクティブ化されるかどうか、さらにはアクティブ化させるタイミングは、走査処理において大幅に制御することができる。これについては、以下でより詳細に説明する。
【0057】
発光体のグループは、個々に、すなわち「各グループ」単位でアドレス指定することができる。アドレス指定されている場合、同じグループの発光体LEは、同じ発光特性を持つ光を出射する。同時に、他の発光体のグループは、全く発光しないか、または異なる発光特性を有する光を出射してもよい。発光特性は、例えば、強度及び/または波長を含む。グループのアドレス指定は、例えば、専用の駆動チャネルを介して、駆動回路DCによって制御することができる。
【0058】
図3A~
図3Cは、走査処理の一例を示す。駆動回路DCによるアドレス指定は、ライダーセンサーの操作中に変更することができる。駆動回路DCは、走査処理に従って発光体LEのグループをアドレス指定する。走査処理は、所定の発光体のグループがいつ、どのような発光特性を用いてアドレス指定されるかについての順序または時系列順を規定する。例えば、走査処理の間、1つ以上の発光体のグループは、常に、または所定の時間発光する。他の発光体のグループは、順次発光してもよい。
【0059】
図3A、3B、及び3Cの図面は、走査処理の一例からの3つの連続するステップを示す。これは、以下では「環状走査パターン」と見なされる。光源は、
図2Bの実施形態で示したように区分化される。第1のステップ(
図3A参照)では、外側のグループからの2つのグループG1及びG2がアクティブ化、すなわち、(使用される発光特性に従って)特定の強度で発光するようにアドレス指定される。グループG1、G2は、中心点CFに対して互いに反対側に位置している。同時に、内側グループからの、すなわちセンターフレームCFを有する2つのグループG3及びG4が、特定の強度で(使用される発光特性に従って)発光するようにアドレス指定される。グループG3、G4は、中心点CPに対して互いに反対側に位置している。
【0060】
第2のステップ(
図3B参照)では、外側のグループからの2つのグループG1及びG2が非アクティブ化される。しかしながら、外側のグループから、さらに2つの別のグループG5及びG6が代わりにアクティブ化、すなわち、特定の強度で(使用される発光特性に従って)発光するようにアドレス指定される。ただし、グループG1及びG2は、それまでと同様にアクティブ化された状態が維持される。さらに別のグループG5及びG6は、中心点CFに対して互いに反対側に位置している。第3のステップ(
図3C参照)では、外側のグループからの2つのグループG5及びG6が非アクティブ化される。しかしながら、外側のグループから、さらに別の2つのグループG7及びG8が代わりにアクティブ化、すなわち、特定の強度で(使用される発光特性に従って)発光するようにアドレス指定される。ただし、この場合も、グループG1及びG2は、それまでと同様にアクティブ化された状態が維持される。さらに別のグループG7及びG8は、中心点CTに対して互いに反対側に位置している。
【0061】
さらに別のステップ毎に、さらに別のグループの隣接する一対がアクティブ化され、前のステップでアクティブ化された一対が非アクティブ化される。このステップの繰り返しは、上述の走査処理を規定する走査を模倣したものとなる。1回の走査処理が一巡するまで、内側グループからの2つのグループG3及びG4はアクティブ化された状態が維持される。次の一巡では、一対の内側グループG3、G4が非アクティブ化され、隣接する一対の内側グループに進んでもよい。例えば、N対の外側グループ毎に、すなわち全体を一巡する毎に、一対の内側グループが「作動」、すなわちN回アクティブ化され、次の一巡まで、隣接する一対の内側グループが、N対の外側グループ毎にN回「作動」する、等である。
【0062】
この走査処理の一例は、異なる走査パターンを実現するように調整することができる。したがって、設計により配線接続されたグループであっても、駆動回路を介した走査処理制御によって自由度が与えられる。走査処理及び時系列順は、一般的なライダーシステムの走査を効果的に模倣しているが、MEMSミラーまたはステアリング装置のような機械部品を必要としない。走査は、自由度の高い時間依存プロセスである。時系列順を変更することで、異なる走査パターンを設定することができる。例えば、「環状」走査パターンは、発光体のグループを時計回りまたは反時計回りにアドレス指定することによって実現することができる。「前方向」走査パターンは、ライダー画像内の線に沿った関心領域、例えば、水平線を好む場合があり、長距離ライダーに使用される場合がある。処理ユニットは、ユーザのカスタマイズされた走査パターンを受信するように配置することができ、または現在の走査処理のための時系列順を設定するようにプログラム可能に構成することができる。例えば、走査パターンは、角(中距離)/横向き(短距離)ライダー、製造現場や監視現場における特定の環境設定可能な現場、自律型ロボット等に対して最適化が可能である。
【0063】
図4A、4Bは、駆動回路の一例を示す。駆動回路は、駆動回路DCを形成する4つの駆動ユニットDU1、…、DU4から構成される。各駆動ユニットは、複数の駆動チャネルCH1、…、CH6を備え、これらの駆動チャネルは、それぞれの発光体のグループに電気的に接続される。駆動チャネルは、発光体のグループへの配線回路接続を確立する。接続は、専用の電力/制御ルーティングとして、または、発光体のグループを含む光源の区分を拡大して示す
図4Bに示されるようなプログラマブルスイッチPSを介して、実現することができる。したがって、本実施形態では、従来の手法では困難であった、駆動ユニットのVCSELの全周に対する配置が可能になる。これにより、VCSELの4辺のうちの2辺にしかドライバーを配置できない従来の手法に比べて、電力のルーティング及び電流の密度分布が非常に簡単になる。
【0064】
図5A~
図5Cは、ライダー画像における関心領域の一例を示す。ライダーセンサーは、異なる走査パターンを採用することができる。例えば、検出器の画素は、イメージセンサーを形成する。処理ユニットは、出力としてライダー画像を提供するように動作可能である。ライダー画像では、関心領域を規定することができ、また、例えば、処理ユニットPUによって、発光体のグループに割り当てることができる。
【0065】
走査処理は、走査中の被照射関心領域を規定するために使用することができる。例えば、視野の中心の周りにグループ化された関心領域が、FOVの端部よりも多く照射されるようにすることができる。別の例では、より遠くの物体が集中する関心領域は、より近い物体を有する関心領域とは異なる、例えば、より多くの照射を必要とし得る。
【0066】
発光体及び関心領域のグループ分けの両方を、ライダーセンサーで何を見るかに関する先験的な知識または想定の観点から選択することができる。例えば、これは、車載アプリケーションに対し、ある程度予測することができる。
【0067】
図5Aは、車載アプリケーションに対する様々な場面で撮影された画像の重なりを示す。この重なりにより、画像内の反復する分布または活動を識別することが可能になる。このような反復するモチーフの一例として、通常、画像の中心点CPに向かって収束するように見える、道路がある。反復するモチーフの他の例として、画像の中心の領域に渡って画像の水平軸に沿って延在する、地平線も考えられる。発光体のグループの配置は、これらの知見を模倣するように選択することができる。例えば、画像は、画像の中心点CPに向かって集中する三角形のグループを示す。これらのグループは、例えば、道路を模倣している。これにより、例えば、ライダーセンサーの製造時における光源のレベルにおいて、電気相互接続を規定してもよい。
【0068】
図5Bは、同様に様々なシーンで撮影された画像の重なりを示す。しかしながら、特定の関心領域において相対強度がグレースケールで示される。これらの領域は、画像解析によって識別することができる。画像において、暗いスケールを有するいくつかの領域は、より多くの照射を必要とし、対応するグループは、より頻繁に発光するようにアドレス指定されるか、または明るいスケール領域よりもより頻繁に検出器によって観察される。これにより、受信機チェーンは、ノイズを低減し、検出可能範囲を改善するために、より統計処理を適用することができる。
図5Cは、分析の結果得られた走査パターンを示す。
【0069】
ライダーセンサーは、学習モードで動作可能であってもよい。学習モードの間、距離の分布及び/またはアクティビティが記録され、例えば処理ユニットによって関心領域に参照される。これにより、実際の測定対象シーンに合わせて、走査処理を動作中に調整することができる。学習モードは、ライダーセンサーの操作中に繰り返すことができる。
【0070】
提案された概念は、従来の行列分割による等照射との差別化を実現する。代わりに、自由な形状に分割する方式が、視野内の対象場面のタイプに関する先験的知識に基づいて最適化された照射力により実現される。発光体のグループ化は、セグメント化、不均一照射方式における自由な形状を用いる手法を可能にし、また、環状パターンの場合には、環状作動方式を従来の水平/垂直作動方式の代わりに使用することができる。この手法は、発光体やセンサー全体をより強力にする必要性を伴うような領域に対して、利用可能な光エネルギーをより多く向けることができるという意味で優れている。このように、従来の均一に照射する手法に比べ、より電力効率の高い解決策が提供される。
【符号の説明】
【0071】
CA キャリア
CF センターフレーム
CH1~CH6 駆動チャネル
CP 角部
CT 中心
DC 駆動回路
DU1~DU4 駆動ユニット
DT 検出器
GR 発光体のグループ
G1~G8 発光体のグループ
LB 光バリア
LE 発光体
LS 光源
OF 外枠
PD 光検出器
PS プログラマブルスイッチ
PU 処理ユニット
ROI 関心領域