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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】リモートプログラミングによる血漿収集
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/38 20060101AFI20240208BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240208BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61M1/38
A61M1/36 100
A61M1/02 100
A61M1/02 120
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2023524647
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021047124
(87)【国際公開番号】W WO2022086623
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】63/104,813
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ケース,ブライアン,シー
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ラン,ティー
(72)【発明者】
【氏名】ペイテル,エイミット,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】プラナス,サマンサ,エム
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,ウォルター,ティー
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キュンヨーン
(72)【発明者】
【氏名】ボッグス,ダニエル,アール
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-282352(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226654(WO,A1)
【文献】特表2020-521572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0125881(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0239409(US,A1)
【文献】特表2003-525709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血漿を収集するためのシステムであって、
ドナーから全血を採取するように構成された静脈穿刺針と、
全血を血漿生成物と赤血球を含む第2の血液成分とに分離するように構成された血液分離器であって、前記血漿生成物を血漿生成物収集容器に送るように構成された血漿ラインに結合された血漿出力ポートを有する前記血液分離器と、
前記静脈穿刺針に流体的に結合され、全血をドナーから前記血液分離器に導入するように構成されるドナーラインであって、前記ドナーラインを通る流れは第1のポンプによって制御される前記ドナーラインと、
抗凝固剤供給源に結合された抗凝固剤ラインであって、前記抗凝固剤ラインは、抗凝固剤をドナーからの全血と混合するように構成され、前記抗凝固剤ラインを通る流れは第2のポンプによって制御される前記抗凝固剤ラインと、
操作者からの入力を受信するように構成されたタッチスクリーンと、
システムの動作を制御するように構成された制御部であって、前記制御部は、ネットワークを介してリモートコンピュータから血漿収集手順のパラメータを受信し、前記タッチスクリーンを介して少なくとも1つの前記パラメータおよび/または前記パラメータを使用して構成される前記血漿収集順を確認するためのユーザ入力を受信し、前記リモートコンピュータから前記ネットワークを介して受信した前記パラメータの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を決定し、少なくとも1つの前記パラメータおよび/または前記パラメータを使用して構成される前記血漿収集手順の確認に応答して、ドナーから全血を採取し、前記全血を前記血漿生成物と前記第2の血液成分に分離し、前記第2の血液成分をドナーに戻すための採取段階および返還段階を行うように前記システムを制御するように構成されている制御部、
とを備える、システム。
【請求項2】
前記パラメータは、前記ドナーの画像を含み、前記制御部は、前記画像を前記タッチスクリーン上に表示し、前記タッチスクリーンから前記ドナーを確認するための前記ユーザ入力を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パラメータは、ドナー識別子を含み、前記システムは、ドナーに関連付けられたコードをスキャンするように構成されたスキャナをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スキャナは、前記ドナーが着用するリストバンドから前記コードをスキャンするように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記パラメータは、前記ドナーに固有の、または前記ドナーに特徴的な、少なくとも1つのデータを含み、前記制御部は、前記ドナーに固有の前記少なくとも1つのデータを表示し、前記ドナーが前記ドナーに固有の前記データに関連付けられていることを確認するようにユーザに促すように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記ドナーに固有の、または前記ドナーに特徴的な前記少なくとも1つのデータは、社会保障番号または生年月日である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記リモートコンピュータから前記パラメータの1つとして血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を受信することによって、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を決定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記リモートコンピュータをさらに備え、前記リモートコンピュータは、前記ドナーの体重、身長、ヘマトクリットおよび性別のうちの少なくとも2つに基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を計算するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記リモートコンピュータと、前記リモートコンピュータおよび前記制御部のうちの一方に結合された体重計とをさらに備え、前記リモートコンピュータおよび前記制御部のうちの少なくとも一方は、前記ドナーの体重を前記体重計から受け取るように構成されており、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積は、前記体重計からの前記体重に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御部は、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を計算することによって血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を決定し、前記制御部は、前記血液分離器に対してローカルであり、かつ、前記血液分離器に結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
記パラメータはドナーの体重を含み、前記制御部は、前記ドナーの体重に少なくとも部分的に基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を決定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
記パラメータはドナーのヘマトクリットを含み、前記制御部は、前記ドナーのヘマトクリットに少なくとも部分的に基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を決定するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御部は、前記ドナーの総血液体積および前記ドナーの血漿体積に基づいて血漿生成物の前記目標体積を決定するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御部は、前記ドナーの体重および身長に基づいて、前記ドナーの総血液体積を決定するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御部は、血液提供中に前記ドナーから全血が採取される前に、前記ドナーの総血液体積を決定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御部は、原料血漿および抗凝固剤を含む血漿生成物の前記目標体積を決定するように構成されており、血漿生成物の前記目標体積は、ドナーから全血を採取する前に、抗凝固剤の比率、前記ドナーの体重、および前記ドナーのヘマトクリットに少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
濃縮された赤血球を受け入れるための、前記血液分離器とは別個の貯留部をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御部は、採取段階および返還段階を動作させるように前記システムを制御した後、前記ドナーのヘマトクリットの更新値と、ヘマトクリットの前記更新値に基づいた血漿生成物および/または原料血漿の新しい目標体積とを確立し、その後の採取および返還サイクルを行うように前記システムを制御し、それによって前記ドナーの変化するヘマトクリットが血漿生成物および/または原料血漿の前記新しい目標体積の計算において考慮されるようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御部によって受信される前記パラメータは、少なくともドナーの体重、身長、性別、およびヘマトクリットを含み、前記制御部は、前記ドナーの体重、身長、性別、およびヘマトクリットの少なくとも一部に基づいて血漿生成物および/または原料血漿の前記目標体積を決定し、前記目標体積が達成されるまで前記採取段階および前記返還段階を行うために前記システムを制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記リモートコンピュータをさらに備え、前記リモートコンピュータは、少なくともドナーの体重、身長、性別、およびヘマトクリットに基づいて前記目標体積を計算するように構成され、前記制御部は、前記リモートコンピュータから前記目標体積を受信することによって前記目標体積を決定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御部は、少なくともドナーの体重、身長、およびヘマトクリット値を受け取り、原料血漿と抗凝固剤とを含む血漿生成物の前記目標体積を決定するように構成されており、血漿生成物の前記目標体積は、前記ドナーからの全血の採取に先立って、少なくとも部分的に抗凝固剤比、前記ドナーの体重、身長、およびヘマトクリットに基づいて決定され、前記制御部は、その後前記採取および返還サイクルを行うように前記システムを制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御部は、前記ドナーの総血液体積および前記ドナーの血漿体積に基づいて血漿生成物の前記目標体積を決定するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記リモートコンピュータはドナー管理システムである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、血漿交換を実施するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、特定のドナーから収集され得る供給源または生の血漿生成物の体積が最適化される血漿交換システムおよび方法に関する。
本主題はまた、対象者に対する医療処置の実施を制御するためのシステムおよび方法にも関する。
【0002】
血漿交換は、ドナーから全血を採取し、血漿を細胞性血液成分(赤血球、血小板および白血球)から分離して保持し、細胞性血液成分をドナーに戻すアフェレーシス手順である。細胞成分からの血漿の分離は、通常、遠心分離または膜濾過による自動化手順で行われる。
【0003】
自動血漿交換では、全血がドナーから採取され、特定の比率で抗凝固剤(「AC」)と混合され、次いで、抗凝固処理された血漿、赤血球および他の細胞成分に分離される。血漿収集容器に付属の重量計で測定して、抗凝固処理された血漿(または「血漿生成物」)の目標体積が収集されると、ドナーからの全血の採取が停止され、赤血球およびその他の細胞成分がドナーに返還される。多くの場合、血漿生成物は、抗凝固処理された血漿の目標総体積が収集されるまで、複数の収集および再注入サイクルで収集される。抗凝固処理された血漿は、後の輸血またはさらなる製造に使用される。
【0004】
さらなる製造のための供給源物質(「供給源血漿」)として機能するために収集される血漿は、複数のドナーから収集され、この目的のために一緒に結合またはプールされる。FDAは、供給源血漿製造手順の一貫性を向上させ、スタッフによるミスの可能性を最小限に抑えるために、血漿交換中に供給源血漿として採取できる血漿の体積に関する登録血液収集センター向けのガイドラインを発行した。(FDAメモ:「体積制限-供給源血漿の自動収集(11/4/92)」)。FDAメモでは、使用される抗凝固剤溶液の種類、抗凝固剤の濃度の違い、抗凝固剤と血漿の比率の範囲の違いによる不一致が指摘されている。
【0005】
FDAメモは、図1に示す表に再現された単純化された血漿体積ノモグラムを記載しており、このグラフでは、ドナーの安全性と快適性を確保するために、特定のドナーから採取できる血漿の体積(または重量)が制限されている。より具体的には、FDAノモグラムはドナーの体重に基づいて血漿の体積(または重量)を制限し、特定のドナーにとって血漿と抗凝固剤の合計の最大採取体積に達するように、抗凝固剤と抗凝固処理された血液の比率が1:16、または1部の抗凝固処理された血液に対して0.06部の抗凝固剤になるように追加できる抗凝固剤の体積を確立する。
【0006】
FDAメモに記載されている単純化ノモグラムは、採血センターで使用される血漿生成物の収集体積を決定するための主要な方法である。したがって、このようなセンターで使用される血漿交換装置は一般に、FDAノモグラムで許可されている最大採取量に従って、抗凝固剤が1:16または0.06の比率で全血に添加された状態で、抗凝固処理された血漿を特定の体積/重量(既知の密度を想定)で収集するようにプログラムされている。
【0007】
FDAノモグラムで行われる1つの単純化は、血漿生成物の収集体積を決定する際にドナーのヘマトクリットの考慮を除外することである。ただし、血漿生成物中の原料血漿と抗凝固剤の相対的な割合は、ドナーの血液のヘマトクリットと、ACがドナーの全血と結合する比率によって異なる。結果として、ヘマトクリット値が高いドナーは、ドナーから安全に収集できる最大(原料)血漿体積に達する前に、FDAノモグラムに記載されている最大収集体積に達する。これは、収集される原料血漿の体積が可能な最大量よりも少ないという点で、血漿収集センターにとって非効率であることを意味する。
【0008】
さらに、ドナーから安全に収集できる血漿の量は、ドナーの体重およびヘマトクリットに加えて、ドナーの身長、性別および年齢などの要因に依存する可能性がある。これらの要因はドナーの総血液体積(および血漿の体積)に影響を与えるからである。
【0009】
複数のドナーからの供給源血漿が組み合わされるため、各個々のドナーから収集される血漿体積を最大化することが重要である。なぜなら、各個々のドナーから収集される体積のわずかな増加であっても、合計するとプールされた血漿の総体積において意味のある増加が得られるからである。血漿交換装置が原料血漿体積をより適切に目標とすることができれば、各ドナーからより多くの血漿タンパク質を収集でき、血漿収集センターの全体的な効率が向上する。したがって、本開示により、ドナーの安全性および快適性と一致する、収集される血漿の体積を最適化するためのシステムおよび方法が提供される。
【0010】
献血およびアフェレーシスを含むがこれらに限定されない、少なくとも部分的に自動化された医療処置が実行されるパラメータは、処置が実行されるドナーまたは患者の特性に対応するか、または適切であるべきである。例えば、献血手順を実行する場合、提供者または患者の性別および体重などの多くのパラメータを考慮することが有利である可能性がある。誤った操作パラメータが使用されると、手順の効率が他の場合よりも低下する可能性があり、および/または特定の状況ではドナーまたは患者に有害となる可能性がある。したがって、操作パラメータがドナーまたは患者の固有の特性に対応するように注意する必要がある。
【0011】
ドナーまたは患者に関する情報は、データシートまたは処方箋に記載されており、手順の最初にシステムの操作者(例えば、看護師、医師、または技術者)によってユーザインターフェースを介して自動装置またはシステムに入力される場合がある。操作者はシステムの設定と対象者の識別情報を確認し、医療処置の開始をシステムに指示する。手動のデータ入力に依存すると、当然ながら操作者の誤りの危険性があり、その結果、ドナーや患者の固有の特性に対応しない操作パラメータが生成されてしまう。したがって、データ入力エラーのリスクを軽減するシステムおよび方法があれば有利である。
【発明の概要】
【0012】
本開示によれば、血漿分離システムを操作して、FDAノモグラムやその他の方法論によって示されるように、ドナーの固有の身体的特徴によって決まるかどうかにかかわらず、ドナーの安全性と快適性と一致する、特定のドナーから収集され得る、血漿生成物中の原料血漿の総体積が確実に最大であることを保証する、抗凝固処理された血漿(すなわち、血漿生成物)の体積を収集するための方法が提供される。
【0013】
本開示の第1の態様に従って、ドナーの体重に基づいて決定されるFDAノモグラムに定められた制限に従って原料血漿の最大許容体積/重量を含む血漿生成物体積を収集する血漿交換システムを操作するための方法が提供される。
【0014】
FDAノモグラムによって許可される原料血漿の最大体積/重量を収集するために、ドナーのヘマトクリットを利用して、FDAノモグラムによって許可される原料血漿の最大体積を有する血漿生成物の目標体積/重量を計算する修正ノモグラムが提供される。計算された原料血漿の体積/重量は、FDAノモグラムで許可されている原料血漿の最大体積/重量と比較される。計算された原料血漿の体積/重量が最大許容体積/重量よりも小さい場合、収集される血漿生成物の体積/重量は、血漿生成物についてFDAノモグラムで許可されている最大体積/重量よりも、血漿の追加の体積/重量を処理するために追加される抗凝固剤の追加量を差に加えたものに等しい量、上方に調整される。
【0015】
したがって、ドナーのヘマトクリットおよび機器のAC比の知識を用いて、FDAノモグラムに定められた制限と一致してドナーから安全に収集できる追加の原料血漿の量が決定され、次に、FDAノモグラムに記載されているドナーの体重に基づいて収集される血漿生成物の総体積/重量がそれに応じて調整される。
【0016】
典型的には、血漿交換手順は、交互の段階の連続サイクルを含み、一方の段階ではドナーから全血が採取され、血漿が分離および収集され、もう一方の段階では、分離された赤血球および任意の他の非RBC細胞成分がドナーに返還される。ドナーのヘマトクリットは血漿交換手順の過程で変化し、そのため、あるサイクルから次のサイクルまでに収集される血漿生成物中の抗凝固剤の量に影響を与える。
【0017】
したがって、本開示の第1の態様では、FDAノモグラムで許可されている最大量の原料血漿が確実に収集されるようにするために、後続の抽出/分離段階の開始前にドナーの新しいヘマトクリット値が決定され、それぞれの抽出/分離段階の開始前に血漿生成物の目標体積/重量が再計算される。
【0018】
第2の態様に従って、アフェレーシス処置中に一定量の血漿を収集するためのさらなる方法が提供される。この方法のステップは、ドナーの総全血体積Vを決定し、Vに基づいてドナーから収集できる原料血漿(VRP)の体積を決定し、収集される血漿生成物(VPP)の目標体積を決定し、ここで、VPPは、収集される原料血漿(VRP)の体積に、アフェレーシス手順中にVRPに追加される抗凝固剤(VAC)の体積を加えたものに等しく、VPP=VRP×Kとなり、ここで、手順のために確立された抗凝固剤比(ACR、抗凝固剤を含まないドナー血液について抗凝固剤体積に対するドナー血液体積の比として定義される)とドナーのHctに基づいて、K=(ACR×(1-Hct/100)+1)/(ACR×(1-Hct/100))であり、ドナーから全血を採取し、ACRと一致する量の抗凝固剤を全血に添加し、全血から血漿生成物を分離し、収集容器内の血漿生成物の体積がVPPに達するまで、血漿生成物を収集容器に移すことを含む。血漿交換手順は複数の抽出/分離段階と返還段階で構成されているため、手順のVPPは、各抽出段階の開始前に決定されたドナーのヘマトクリットの値に基づいて、各抽出/分離段階が開始される前に再計算され、血漿生成物の目標体積はそれに応じて調整される。あるいは、VRPは、Vとドナーのヘマトクリットに基づいて、ドナーの総血漿体積の計算値に基づいて決定される場合もある。
【0019】
第3の態様では、アフェレーシス手順中に収集できる血漿生成物の体積(VPP)を決定するための方法が提供され、VPPは、収集できる原料血漿(VRP)の体積に、アフェレーシス手順中にVRPに追加される抗凝固剤の体積(VAC)を加えたものに等しい。この方法のステップは、ドナーの体重(Wkg)および性別(男性Mまたは女性F)を決定し、ドナーのヘマトクリット(Hct)を決定し、ドナーの体重(Wkg)および性別(MまたはF)に基づいて収集できる原料血漿(VRP)の量を決定し、抗凝固剤比(ACR)およびドナーのHctに基づいて、VPPとVRPとの間の比Kを、K=VPP/VRPとなるように決定し、VPP=VRP×KとなるようにVPPを決定することを含む。また、K=(ACR×(1-Hct/100)+1)/(ACR×(1-Hct/100))である。VPPが決定された後、ドナーから全血が採取される。抗凝固剤はACRと一致する量で全血に添加される。血漿生成物は全血から分離される。そして血漿生成物は収集容器に移される。所望の量の全血がドナーから採取された後、赤血球はドナーに戻される。次に、各採取段階の前にドナーのHctとVPPが決定される。
【0020】
関連する態様では、収集容器内の血漿生成物の体積がVPPに達するまで、採取ステップと分離ステップが繰り返される。
【0021】
関連する態様では、第1収集段階後のドナーのヘマトクリットは、ドナーの赤血球量が各採取サイクルの開始時に同じであり、血液の総体積があるサイクルから次のサイクルで収集された原料血漿の量に等しい量、減少すると仮定して、体積バランスによって計算することができる。あるいは、各採取サイクルの開始時のドナーのヘマトクリットを光学センサーまたはその他のセンサーで測定することもできる。
【0022】
さらなる態様では、特定のドナーから収集され得る原料血漿の体積は、いくつかの異なる手段のうちのいずれか1つによって決定され得る。このような手段には、例えば、ドナーの体重のみを考慮したFDAノモグラムと、ドナーのヘマトクリットをさらに考慮し、特定のドナーについて計算された総血液体積または総血漿体積の一部を考慮した、修正されたFDAノモグラムが含まれる。総血液体積または総血漿体積は、例えば、ナドラーの方程式、ギルチャーの五則、国際血液学標準化評議会(ICSH)によって提供される表、またはドナーの身長、体重、性別、年齢を使用する、ドナーの安全性と快適さと一致する他の一般に認められた方法を使用して決定され得る。
【0023】
第4の態様では、再利用可能なハードウェア構成要素および使い捨てキットを備える、全血から血漿を分離するための自動システムが提供される。使い捨てキットはさらに、i)全血を血漿画分と濃縮細胞画分に分離するための分離器を備え、この分離器は、ドナーから分離器に全血を輸送するための血液ラインが一体的に接続された入力部と、血漿ラインによって血漿収集容器に一体的に接続された血漿出力ポートと、ドナーに再注入する前に濃縮細胞を受け取るための貯留部に一体的に接続された濃縮細胞出口ポートとを備え、ii)全血をドナーから血液ラインに輸送するための静脈穿刺針で終わるドナーラインと、iii)血液ラインに一体的に接続され、抗凝固剤をドナーラインに輸送するために抗凝固剤の供給源に接続されるように構成された抗凝固剤ライン、およびiv)濃縮された細胞を貯留部からドナーラインに輸送するための再注入ラインとを備える。
【0024】
再利用可能なハードウェア構成要素はさらに、i)収集段階中に血液ラインに制御された速度で抗凝固剤を送達するための第1の蠕動ポンプと、ii)収集段階中に抗凝固処理された全血を分離器に送達し、再注入段階中に濃縮された細胞成分を戻すための第2のポンプと、iii)収集段階中に濃縮された細胞成分を分離器から貯留部に送達するための第3のポンプと、iv)血液ライン、血漿ライン、および再注入ラインのそれぞれに関連付けられたクランプと、v)血漿収集容器、貯留部および抗凝固剤源のそれぞれの重量を量る重量計、および、vi)操作者からの入力を受信するためのタッチスクリーンを備えるプログラム可能な制御部であって、プログラム可能な制御部は、重量計のそれぞれから信号を受信し、第1のポンプ、第2のポンプ、および第3のポンプおよびクランプを自動的に動作させて収集段階では全血を血漿画分と濃縮細胞画分とに分離し、再注入段階では濃縮細胞をドナーに返還するように構成されている制御部、とを備える。プログラム可能な制御部はさらに、本明細書に記載の方法のいずれかに従って、血漿収集容器内に収集される血漿生成物の目標量を決定し、血漿収集容器内の血漿生成物の量が制御部によって決定された血漿生成物の目標量に等しいという信号を受信すると収集段階を終了するように構成されている。収集される血漿生成物の目標量を決定する際に、制御部は、各サイクルの収集段階の前にドナーのヘマトクリットを計算するように構成され得る。代替的に、または追加的に、制御部は、ドナーのヘマトクリットを示すセンサーなどから信号を受信してもよい。さらに、血漿収集容器内の血漿生成物の量は、例えば、血漿収集容器に関連付けられた重量計、または体積を直接測定する光学センサーによって決定され得る。
【0025】
本発明の主題にはいくつかの態様があり、これらは、以下に記載され特許請求される装置およびシステムにおいて個別にまたは一緒に具現化され得る。これらの態様は、単独で使用することも、本明細書に記載の対象者の他の態様と組み合わせて使用することもでき、これらの態様を一緒に説明することは、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載されている、これらの態様を個別に使用すること、またはそのような態様を個別にまたは設定された異なる組み合わせで特許請求することを排除することを意図するものではない。
【0026】
一態様では、対象者に対して医療処置を実行するためのシステムが提供される。このシステムには、データベース、ユーザインターフェース、治療装置、および制御部が含まれている。データベースには、1つまたは複数の対象者データエントリが事前にプログラムされており、各対象者データエントリには関連付けられた対象者固有の情報が含まれている。ユーザインターフェースは、対象者からの識別情報入力を受信するように適合されている。制御部は、データベース、ユーザインターフェース、および治療装置と関連付けられ、またはそれらと通信し、入力された識別情報を対象者データエントリの対象者固有の情報と比較するように構成される。入力された識別情報が対象者データ入力の対象者固有の情報に対応する場合、制御部は治療装置に、対象者に対して医療処置を実行するよう命令する。識別情報入力が対象者データエントリのいずれかの対象者固有の情報に対応しない場合、制御部は、対象者に対する医療処置の実行を妨げるエラー信号を生成する。
【0027】
別の態様では、対象者に対して医療処置を実行するための方法が提供される。それぞれに関連付けられた対象者固有の情報が含まれる1つ以上の対象者データエントリが保存される。識別情報入力が対象者から受信される。識別情報入力は、対象者データエントリの対象者固有の情報と比較される。識別情報入力が対象者データエントリの対象者固有の情報に対応する場合、その対象者に対して医療処置が実行される。識別情報入力が対象者データエントリのいずれかの対象者固有の情報に対応しない場合、エラー信号が生成され、対象者に対する医療処置の実行が妨げられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】FDAメモ「体積制限-供給源血漿の自動収集(11/4/92)」に提示された単純化されたノモグラムを示す表である。
【0029】
図2】本出願のシステムおよび方法での使用に適した例示的な血漿交換器具の斜視図である。
【0030】
図3図2の血漿交換システムで使用可能な、使い捨てセットに組み込まれたタイプの回転膜分離器の斜視図であり、詳細を示すために一部が破断されている。
【0031】
図4図2の血漿交換システムの前面パネルの斜視図であり、そこに取り付けられた使い捨てセットの構成要素を示している。
【0032】
図5】収集段階における血漿交換システムの動作を示す概略図である。
【0033】
図6】再注入段階における血漿交換システムの動作を示す概略図である。
【0034】
図7】全血に対する抗凝固剤の1:16の比を使用するFDAノモグラムによって設定される血漿生成物体積制限内に含まれる、ドナーのヘマトクリットに基づく原料血漿の体積を示す表である。
【0035】
図8図7に示される値とFDAノモグラムに基づいて収集され得る原料血漿の最大体積との差に基づく、血漿生成物中の「請求されていない」原料血漿の体積を示す表である。
【0036】
図9】ドナーの体重およびヘマトクリットに基づいて、ドナーから収集され得る血漿生成物の体積を示す表であり、その結果、FDAノモグラムによって許可される原料血漿の最大許容体積が得られる。
【0037】
図10】本願の方法に従って仮想の血漿交換手順を実行するためのプログラム可能な制御部への入力を示す表である。
【0038】
図11図11a,11bは、図10の表からの入力に基づく仮説的な血漿交換手順の過程でドナーのヘマトクリットがどのように増加し、その結果、原料血漿の目標体積を収集するために必要な血漿生成物の総収集体積が増加するかを示す2つの部分に分割された表を含む。
【0039】
図12】血漿交換中のIgG希釈を示すグラフである。
【0040】
図13】本開示の一態様による医療装置の概略図である。
【0041】
図14】対象者から識別情報を受信し、次いで対象者に対して医療処置を実行するときに、図13の医療装置によって行われる工程を示すフローチャートである。
【0042】
図15】別の例示的な実施形態による、血漿を収集するための方法のフローチャートである。
【0043】
図16】本開示の一態様によるさらなる医療装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示によるシステムおよび方法のより詳細な説明を以下に記載する。特定の装置および方法に関する以下の説明は例示を目的としたものであり、考えられるすべての変形または応用を網羅するものではないことを理解されたい。したがって、本開示の範囲は、限定することを意図したものではなく、当業者が思いつく変形または実施形態を包含するものと理解されるべきである。
【0045】
本出願の文脈において、血漿交換は、供給源として処理される血漿を収集するための、全体的に符号10で示されるハードウェア構成要素(または血漿収集装置)と、全体的に符号12で示される使い捨てセットとを備える自動化システム上で実行される。図2~6を参照し、以下でより詳細に説明するように、使い捨てセット12は、滅菌流体経路内で血液および溶液を輸送するために一体的に接続された分離器、容器、および管からなる。
【0046】
図3に最もよく示されている分離器14は、血液を成分に分離するためにケース20内で回転するロータ18に取り付けられた回転膜フィルタ16を有する。回転膜分離器の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる、シェーンドルファーに対する米国特許第5,194,145号に見いだされ得る。理解されるように、別のシステムでは、全血の分離は遠心分離によって達成され得る。たとえば、ウィリアムソンらに対する米国特許第5,360,542号を参照せよ。
【0047】
血漿交換中、抗凝固処理された全血は、全血入力ポート22を通って分離器14に入る。血漿は、回転膜フィルタによって分離され、血漿出力ポート24から出て、血漿ライン26を通って血漿収集容器28に入る。濃縮細胞は、濃縮細胞出力ポート30から貯留部32にポンプで送り出され、細胞はドナーに再注入されるまでそこに留まる。
【0048】
使い捨てセット12はまた、収集中にドナーから全血をシステムに導入し、再注入中に濃縮細胞をドナーに戻すための管ライン(静脈穿刺針36で終わるドナーライン34)、および抗凝固化された全血を分離装置に輸送するための管ライン(血液ライン38)、貯留部へ濃縮細胞を輸送するための管ライン(細胞ライン40)、貯留部からドナーラインへ濃縮細胞を輸送するための管ライン(再注入ライン42)、血漿収集容器へ血漿を輸送するための管ライン(血漿ライン44)、生理食塩水を輸送するための管ライン(生理食塩水ライン46)、および抗凝固剤を輸送するための管ライン(ACライン48)を含む。
【0049】
ハードウェア構成要素10は、プログラム可能な制御部50と、操作者が手順を制御するグラフィカルユーザインターフェース(「GUI」)を備えたタッチスクリーン52とを含む。例えば、GUIは、ドナーID、ドナーの性別、ドナーの身長、ドナーの体重、ドナーの年齢、ドナーのヘマトクリット/ヘモグロビン、目標生理食塩水注入体積(生理食塩水プロトコルが選択された場合)、および目標血漿体積のいずれかの入力を可能にする。タッチスクリーン52により、操作者はステータス情報を収集し、エラー状態を処理することもできる。制御部50は、(例えば、プログラムされることによって)ここで説明されている機能を実行するように構成される、デジタルおよび/またはアナログ回路構成要素(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロ制御部、特定用途向け集積回路、ディスクリート構成要素、表面実装構成要素、プリント回路基板および/または他の回路)を備え得る。
【0050】
ACポンプ54、血液ポンプ56、および細胞ポンプ58を含む3つの蠕動ポンプがハードウェア構成要素10の前面パネルに配置されている。ACポンプ54は、全血がドナーからセットに入るときに、制御された速度で抗凝固剤溶液(AC)を血液ライン38に送達する。血液ポンプ56は、手順の収集段階中に抗凝固処理された全血を分離器に送出し、手順の再注入段階中に濃縮された細胞成分および必要に応じて補液をドナーに戻す。細胞ポンプ58は、収集段階中に、濃縮された細胞成分を分離器14から貯留部に送達する。
【0051】
一実施形態では、ハードウェア構成要素10は、全血から血漿および形成要素を分離するように構成された血液処理装置であり、全血ラインは入口流を制御するためのポンプ56を有し、ACポンプ54がACラインに接続されており、血漿ラインにはポンプがなく、血漿は血漿容器に押し込まれるだけである。
【0052】
前面パネルはまた、再注入クランプ60、血液クランプ62、生理食塩水クランプ64、および血漿クランプ66を含む、使い捨てセット12が取り付けられる4つのクランプを含む。再注入クランプ60は、収集段階(図5)中に閉じて再注入ライン(42)を遮断し、再注入段階(図6)中に開いて、血液ポンプが貯留部32からドナーに濃縮細胞成分を再注入できるようにする。血液クランプ62は、収集段階中に開いて抗凝固処理された全血が分離器14にポンプで送られることを可能にし、再注入段階中に閉じて血液ライン38を遮断する。生理食塩水クランプ64は、収集段階中および分離された細胞成分の再注入中に閉じて生理食塩水ライン46を遮断する。生理食塩水を補液として使用する場合、生理食塩水クランプ64は再注入段階中に開く。血漿クランプ66は、収集段階中に開いて血漿が血漿収集容器28に流入できるようにし、再注入段階中に閉じる。
【0053】
ハードウェア構成要素10は、現在の血漿収集体積(重量計68)、AC溶液体積(重量計70)、および濃縮された細胞内容体積(重量計72)を監視するための3つの重量計を含む。
このシステムはまた、静脈圧センサー74、分離器圧力センサー76、光学式血液検出器78、および空気検出器80を含む、様々なセンサーおよび検出器を含む。
【0054】
ドナーは、手順全体を通じてシステムに接続される。図示されるように、使い捨てセット12は、単一の静脈穿刺針36を含み、この静脈穿刺針36を通して、収集段階(図5)においてドナーから全血が採取され、再注入段階(図6)において濃縮された細胞がドナーに戻される。上で述べたように、血漿交換手順は複数のサイクルを含み、各サイクルは収集/分離段階とその後に返還または再注入段階を有する。収集段階では、全血が血漿と濃縮細胞に分離される。使い捨てセットは、分離された血漿を受け入れるための血漿収集容器28と、濃縮された細胞を受け入れるための貯留部32とを含む。再注入段階では、貯留部32からの濃縮細胞が静脈穿刺針36を通じてドナーに再注入される。典型的には、単一の静脈穿刺針36を用いて行われる血漿交換療法は、収集と再注入の複数のサイクルを伴う。
【0055】
図5に戻ると、収集段階中、抗凝固剤溶液(AC)は制御された速度でポンプで送られ、使い捨てセット12に入るときに全血と混合される。抗凝固処理された血液は分離器14にポンプで送られ、そこで血漿が細胞成分から分離され、血漿収集容器28に送られる。
【0056】
細胞成分は、分離器14から貯留部32にポンプで送られる。収集段階は、貯留部32が濃縮細胞の予想体積に達したとき、または目標血漿収集体積が達成された場合に停止する。
【0057】
次に、再注入段階が始まる。図6を参照すると、再注入段階中、血液ポンプ56は方向を逆転させ、濃縮された細胞を貯留部32からアフェレーシス針36を通してドナーに送り返す。収集された血漿の補液として生理食塩水がドナーに返される生理食塩水プロトコルが選択された場合、最終再注入段階の後に生理食塩水が注入される。
【0058】
本開示の一態様によれば、自動血漿収集装置は、FDAノモグラムに定められた制限下でドナーに許可された原料血漿の最大体積/重量を有する抗凝固処理された血漿(すなわち、血漿生成物)の体積/重量を収集するように構成される。血漿生成物を構成する原料血漿の体積を最大化するために、装置はドナーのヘマトクリットを考慮したノモグラムでプログラムされている。ドナーのヘマトクリットと機器のAC比を知ることで、FDAノモグラムに記載されている原料血漿の総体積/重量の制限と一致している、ドナーから収集できる原料血漿画分の最大体積/重量が血漿生成物に含まれるように、収集される血漿生成物の総体積/重量を決定できる。計算を制御部にプログラムすることにより、収集量をオフラインで計算してから装置に入力する場合と比較して、操作者の間違いの可能性が減少する。
【0059】
血漿交換中、抗凝固剤がドナーから採取された全血と混合される場合、抗凝固剤は血液中の原料血漿内に均一に分布される。
ただし、全血中の原料血漿の量は、全血のヘマトクリット(Hct)に依存する。
次の関係が確立される。
【0060】
RBCの体積=全血の体積×Hct/100 [1]
【0061】
原料血漿の体積=全血の体積×(1-Hct/100) [2]
【0062】
抗凝固剤を全血と混合する場合、典型的には、全血16部対AC1部のAC比(ACR)、または全血1部対AC0.06部で計量される。
【0063】
ACR=全血の体積/抗凝固剤の体積(抗凝固剤を含まないドナー血液) [3]
【0064】
(これは、上記のように、抗凝固剤対抗凝固処理された血液の比率が1:16、または抗凝固処理された血液1部に対して抗凝固剤0.06部となるように添加され得る抗凝固剤の量を標準化するFDAノモグラムとはわずかに異なる結果をもたらす。)
【0065】
抗凝固処理された血液の体積=抗凝固剤の体積+全血の体積 [4]
【0066】
方程式を組み合わせると、次のようになる。
【0067】
原料血漿の体積=ACR×抗凝固剤の体積×(1-Hct/100) [5]
【0068】
赤血球はドナーに返されるため、次のようになる。
【0069】
収集された血漿の体積=原料血漿の体積+抗凝固剤の体積 [6]
【0070】
式[5]および[6]を組み合わせて、所定量の収集された血漿中の抗凝固剤の量を計算することができる。
【0071】
抗凝固剤の体積=収集された血漿の体積/(1+ACR×(1-Hct/100) [7]
【0072】
さらに:
【0073】
収集された血漿の体積=原料血漿の体積×K、ここで、K=(ACR×(1-Hct/100)+1)/(ACR×(1-Hct/100)) [8]
【0074】
上記の方程式で表される関係を考慮すると、FDAノモグラムの下で許可される血漿生成物の体積内に含まれる原料血漿の体積は、ドナーのヘマトクリットに基づいて決定することができる。このような計算の結果を図7に示す。図7は、FDAノモグラムによって設定された血漿生成物の体積制限内に含まれるドナーのヘマトクリットに基づく原料血漿の体積を示す。
【0075】
図7を参照して理解できるように、ドナーの体重が110ポンドから149ポンドである場合(FDAノモグラムによる最大血漿生成物体積は690mLである)、ドナーのヘマトクリット値が42以上の場合、収集される原料血漿の体積はFDAノモグラムで許可されている625mL未満である。体重が150ポンドから174ポンドのドナーの場合(FDAノモグラムによる最大血漿採取量は825mL)と体重175ポンドのドナーの場合(FDAノモグラムによる最大血漿採取量は880mL)、ドナーのヘマトクリットが40以上の場合も状況は同様である。
【0076】
図8に示す表は、図7に示す値と、FDAノモグラムに基づいて収集され得る原料血漿の最大体積との差に基づいた、血漿生成物中の「請求されていない」原料血漿の体積を示す。したがって、図9に示される表に示されるように、任意の特定のドナーから収集された血漿生成物は、図8に示される「請求されていない」原料血漿の量に対応する量に追加の体積を処理するために必要な抗凝固剤の量を加えた量だけ、FDAノモグラムに示される血漿生成物から調整され得る。
【0077】
あるいは、収集される血漿生成物の体積は、最初にドナーの体重およびヘマトクリット(Hct)を決定し、ドナーの体重(Wkg)に基づいて収集できる原料血漿(VRP)の量を決定し、抗凝固剤比(ACR;FDAノモグラムに従って1:16または0.06:1)およびドナーのHctに基づいて、K=VPP/VRPとなるように、VPPとVRPとの間の比Kを決定し、VPP=VRP×KとなるようにVPPを決定することによって計算され得る。また、K=(ACR×(1-Hct/100)+1)/(ACR×(1-Hct/100))である。
【0078】
さらに別の方法では、収集される血漿生成物の体積(VPP)は、最初にドナーの体重(Wkg)およびヘマトクリット(Hct)を決定し、ドナーの体重(Wkg)に基づいて収集できる原料血漿(VRP)の体積を決定し、抗凝固剤比(ACR;FDAノモグラムに従って1:16または0.06:1)およびドナーのヘマトクリットに基づいて、VAC=VRP×(ACR×(1-Hct/100))となるように追加すべき抗凝固剤の体積(VAC)を決定し、そして、VPP=VRP+VACとなるように収集体積を決定することによって計算され得る。
【0079】
ドナーの体重に基づいて収集され得る原料血漿の体積を決定するために、様々な方法が使用され得る。例えば、ドナーの体重に、確立された定数「K」(10mL/kgなど)を乗じてもよい。あるいは、ドナーの体重を重量カテゴリーに分類し、カテゴリーごとに固定された体積を設定することもできる(前述のFDAノモグラムのように、ドナーの体重の範囲が3つのカテゴリーに分割されている)。
【0080】
あるいは、ドナーの血漿体積は、ドナーの総血液体積に基づいて推定することができ、ドナーの安全性および快適性と一致して採取できる血漿の体積は、この推定に基づき得る。ドナーパラメータを利用する方法は、ドナーの総血液体積を推定するために使用される場合がある。このような方法の例としては、ナドラーの方程式(ドナーの身長、性別、体重を考慮する)、ギルチャーの五則(性別、体重、形態(肥満、痩せ型、正常または筋肉質)を考慮する)、またはBr.J.Haem.1995,89:748-56に記載されている、国際血液学標準化審議会(ICSH)の規定(ドナーの身長、体重、年齢、性別が考慮される)による標準が挙げられる。レメンスらの「肥満および病的肥満患者の血液体積の推定」(肥満手術、16、773-776、2006年)に開示されているような、ドナーの総血液体積を決定するための他の一般に受け入れられている方法論も使用できる。
【0081】
InBv=70/√(BMI/22)
【0082】
ここで、InBvは患者の体重および身長に基づく指数化された血液体積であり、BMIは患者の体重および身長に基づく患者のボディマス指数である。以下に示すように、年齢依存の回帰式は、IBW(理想体重)での指数化された血液体積InBVにも使用できる。
【0083】
InBV=90-0.4×年齢(男性);InBV=85-0.4×年齢(女性)
したがって、指数化された血液体積は、ドナーの性別に基づいて計算することができる。
【0084】
ドナーの総血液体積が決定されると、ドナーの血漿体積は、総血液体積に定数「K」を乗算することによって推定され得る。ここで、Kは(1-ドナーのHct)に等しい。
【0085】
2015年から2016年の国民健康栄養検査調査からの人口統計、検査、および検査データの分析から、性別、年齢、身長、体重、妊娠データおよびヘマトクリットが抽出され、ピアソンらの成人における測定された赤血球量と血漿体積の解釈:血液学国際標準化評議会の放射性核種に関する専門家パネル、英国血液学雑誌(British J. Haematology)、89:748-756(1995)(ICSH推奨の公式はこれに基づいて導出された)、特定の特徴を持つドナー(すなわち、ヘマトクリット値が高く低体重の女性)の場合、現行の規制内で利用可能な血漿の最大36%を収集できることが判明している。このようなドナーを用いた血漿交換手順は副作用もなく日常的に実施されており、したがって安全であると考えられている。これは、ドナーの利用可能な血漿の最大36%が血漿交換手順で安全に収集できることを示唆している。
【0086】
予測/計算された総血液体積からのドナーの真の血液体積の負の偏差のみが潜在的なリスクを示すことを考慮すると、採取可能な血漿体積をさらに下方に調整することが適切である可能性がある。上で引用したピアソンらで決定された計算上の血液体積と、レツラフらの「成人男性および女性における赤血球量、血漿量、および除脂肪体重」血液学雑誌(J.Haematology)、33、5:649-667(1969)で示された実験的血液量データとの間の偏差の考慮に基づいて、個人の予測血液体積の差異が20.5%を超えないという95%の信頼がある。したがって、上記のドナーの総血漿体積の36%である採取可能な原料血漿の決定に0.795の倍率を適用することができ、その結果、ドナーの安全性および快適性と一致して、ドナーの計算された原料血漿体積の28.6%が採取され得る。
【0087】
あるいは、VRP=0.36(1-Hct)(VWB-V)のように、採取可能な血漿の体積VRPを計算する前に、計算された全血の体積VWBに対して調整Vを行ってもよい。レツラフが提示したデータの回帰分析の結果、V=523mLと決定された。
【0088】
したがって、収集体積(血漿生成物の体積)は、特定のドナーから収集することができる原料血漿体積の体積、ドナーのヘマトクリット、および固定された抗凝固剤比(ACR)に基づいて決定される。その結果、この方法により、ドナーの安全性に最も関係する変数であるドナーの原料血漿体積をより一貫して制御することが可能になる。
【0089】
実際には、操作者は、採取され得る原料血漿の目標体積に基づいて、特定のドナーに対する血漿生成物の収集体積をシステム制御部に入力する。目標血漿収集体積は、最初の収集段階におけるドナーの体重およびヘマトクリットに基づいて、または上記の他の方法のいずれかによって、図9に示すとおりであってよい。あるいは、制御部は、操作者が例えばドナーの体重およびヘマトクリット、および/または、ドナーの総血液体積、総血漿体積、および収集される採取可能な血漿の総体積を決定するために使用される方法論で必要とされる追加のドナー固有の情報(ドナーの性別、身長、年齢など)のいずれかを入力すると、上述のような方法論に従って、最初の収集段階の目標血漿生成物収集体積を計算するように構成される。さらに別の方法では、血漿収集装置をドナー管理システムと統合することもでき、これにより適格性スクリーニングに使用されるドナーパラメータ(体重、ヘマトクリットなど)を機器に電子的に送信できるため、ドナーパラメータを入力する際に操作者の間違いの可能性が排除される。ドナー管理システムは、ドナースクリーニング測定値と原料血漿体積と収集体積の関係を利用して、血漿交換装置の制御部に送信する血漿収集体積を自動的に計算することもできる。すべてのタイプのパラメータ(例:体重、身長、性別、ヘマトクリット、名前、生年月日、血漿生成物の目標体積、原料血漿の目標体積、抗凝固剤比、収集タイプ、収集する血液成分など)は、例えば、図13図14を参照して本明細書で説明される実施形態を使用して、ハードウェア構成要素10から遠隔にあり得る別のデータベース(例えば、中央データベースまたは遠隔データベース)からハードウェア10の制御部50によって取得され得る。リモートデータベースは、提供前のドナースクリーニング、ドナー募集、および/またはドナー記録管理に使用されるドナー管理システムであってもよい。制御部50は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、イーサネット、IEEE802.11x標準ネットワーク、またはその他のネットワークを使用するWi-Fiネットワークなどの1つまたは複数の有線および/または無線ネットワークを介してリモートデータベースからパラメータを取得またはダウンロードするように構成され得る。
【0090】
上で述べたように、血漿交換手順は、収集/採取段階および返還/再注入段階の複数のサイクルで実行される。返還/再注入段階に補液の再注入が含まれない場合、ドナーのヘマトクリットはサイクルごとに増加する。したがって、血漿生成物の目標体積がドナーの初期ヘマトクリットのみに基づいて決定され、ドナーの増加するヘマトクリットを考慮しない場合、血漿生成物中の抗凝固剤の体積は血漿生成物の目標体積を決定するための最初の計算で予測されたものよりも多くなる(原料血漿の体積は少なくなる)。したがって、収集される血漿生成物の体積に、特定のドナーから採取されると決定された原料血漿の最大体積が含まれることを保証するために、血漿生成物の目標体積は、ドナーのヘマトクリットの変化を考慮に入れるため、各サイクルの収集段階の開始前のように血漿交換手順全体を通じて定期的に再計算される。
【0091】
したがって、ドナーの開始ヘマトクリットに基づいて血漿生成物の目標体積が決定される。血漿交換手順は、第1の採取段階から始まり、指定された体積の全血(通常は約500mL)がドナーから採取されるまで行われる。抗凝固剤が全血に添加され、抗凝固処理された全血は、血漿生成物、赤血球、およびその他の非RBC血液成分に分離される。第1の採取段階の終わりに、赤血球と非RBC血液成分がドナーに返される。第1の採取段階の後の収集された血漿生成物の現在の体積は、例えば重量計によって決定される。次いで、ドナーのヘマトクリットの現在の値が確立され、収集される血漿生成物の新たな目標体積が決定され、採取段階と返還段階の第2のサイクルが実行される。採取段階と返還段階のサイクルは、各採取段階の開始前に再計算される血漿交換手順の血漿生成物の目標体積が収集されるまで繰り返される。最終収集段階の後、制御部は最終赤血球再注入段階を開始し、その後ドナーは接続を解除される。
【0092】
上述の方法論に従って複数の収集/再注入サイクルを有する血漿交換手順を実行する利点は、図10および11a、11bの表を参照することによって理解され得る。図10は、体重190ポンド(86.4kg)、初期ヘマトクリット値が44のドナーに対する仮想の血漿交換手順の入力データを示している。図1の表を参照すると、簡略化されたFDAノモグラムでは、このようなドナーから収集される血漿の体積は800mLに制限され、血漿生成物の総収集体積は880mLに制限される。この例では、収集できる原料血漿の体積に関するFDAノモグラム制限は、例示のみを目的としている。上述したように、ドナーから安全に抽出できる原料血漿の量を決定するために、FDAノモグラムによって示されるものとは異なる他の方法が使用されてもよい。
【0093】
血漿交換手順における収集および再注入サイクルの数は、3から12まで変化し得る。 仮想の血漿交換手順では、5つの収集および再注入サイクルがあり、これらは例示のために選択されている。
【0094】
第1の収集サイクルの開始前に、収集される原料血漿の体積および収集される血漿生成物の総目標体積は、ドナーの初期ヘマトクリットに基づいて、上記の方法論に従って決定される。表の最初の行(サイクル1開始)に記載されているように、収集される血漿生成物の最初の目標体積は889mLであり、これは、体重175ポンド以上のドナーであり、FDA制限の800mLの原料血漿をドナーから採取するためにはヘマトクリット44のドナーについて図9の表で示されているものと同じである。
【0095】
各収集段階中、500mLの全血がドナーから採取され、それに抗凝固剤が所定の比率(すなわち、1:16)で、500mLの各収集サイクルごとに31mLが添加される。全血と抗凝固剤は、血漿画分と赤血球画分に分離される。
【0096】
第1の返還段階(サイクル1の返還終了)中、赤血球および「非RBC」血液成分がドナーに戻されるため、第1の返還サイクルの終わりにはドナーのヘマトクリットは収集された原料血漿の体積によって減少する血液体積に基づいて制御部によって計算されるように45.6%に増加するが、総血液体積中の赤血球の体積は手順の開始時と同じままである。制御部は、次のサイクルのために新しいヘマトクリット値を決定する際に、赤血球とともに各返還段階で再注入される抗凝固剤の体積、およびサイクル2以降で採取されるドナーの全血に残留する抗凝固剤も考慮することができる。その後、ドナーの新たに増加したヘマトクリット値と原料血漿体積に基づいて、原料血漿体積とこの処置のために収集される血漿生成物の総目標体積が再計算される。これにより、新たな合計目標収集体積は891mLになる。
【0097】
次いで、第2の収集段階が実施され、最初の2つの収集段階にわたって収集される386mLの原料血漿を含む合計430mLの血漿生成物が得られる(サイクル2の採取終了)。赤血球と「非RBC」血液成分は再びドナーに戻され、その後ドナーのヘマトクリットは47.2%と計算される。
【0098】
500mLのさらに2つの収集段階が実行され、それぞれの後に返還段階が続き、各収集段階の開始前に、収集される原料血漿の体積および収集される血漿生成物の総体積の新しい値が決定される。ドナーのヘマトクリットが増加すると、再計算された手順の目標収集体積は893mL(第3収集段階の場合)に増加し、次に894mL(第4収集段階の場合)に増加する。第5の「ミニ」収集サイクルは、収集された原料血漿の体積を、仮想ドナーに対してFDAノモグラムで許可されている800mLまでにするために実行される。第5の収集段階で再計算された血漿生成物の目標収集体積は894mLのままである。
【0099】
したがって、上記の例に示されているように、血漿生成物の目標収集体積が採取段階ごとに再計算されると、血漿生成物の目標収集体積である894mLが得られる。これは、原料血漿の目標体積800mLを収集することが必要である。対照的に、目標収集体積がドナーの初期ヘマトクリットのみに基づいて決定された場合には889mLの血漿生成物が採取され、目標収集体積が簡略化されたFDAノモグラムに基づいている場合には880mLが採取されることになる。どちらの場合も、収集された体積は目標体積の800mL未満であった。
【0100】
理解できるように、処置前および処置中の両方でドナーのヘマトクリットを決定できる精度が高ければ高いほど、収集される血漿生成物の目標体積が、特定のドナーについて収集可能な原料血漿の最大体積を含む可能性が高くなる。上で説明したように、処置中のドナーのヘマトクリットは、各採取サイクルで採取された赤血球の100%が、非RBC細胞産物の100%とある量の抗凝固剤とともに各返還サイクルで再注入されるという仮定に基づいている。しかし、血液分離処置の過程で間質液が血管内空間に移動し、採取された体積の半分が回復する可能性があることが判明している。サイトウら、献血中の間質液の血漿コンパートメントへの移行、Transfusion 2013、53(11):2744-50を参照せよ。移動した間質液は、各返還段階で再注入される赤血球、非RBC細胞産物、および抗凝固剤に追加される。したがって、間質液の移行を考慮すると、より正確なヘマトクリット測定が得られ、したがって、原料血漿の最大量をもたらす血漿生成物の目標体積がより正確に決定されることになる。
【0101】
血漿交換中の間質液の移行は、血漿交換手順の過程にわたってドナーの免疫グロブリンG(IgG)のレベルを追跡することによって実証されている。例えば、バークハートら「分別のための大容量血漿の収集中の免疫グロブリンGレベル」(Transfusion、2017;56:417-420)を参照せよ。間質液が移動していない場合、ドナーのIgGレベルは血漿交換手順全体にわたって安定するであろう。しかし、IgGレベルは低下することが示されており、IgGレベルの低下量は血液系に移動した間質液の体積の関数である。
【0102】
図12を参照すると、経験的に作成された、収集された血漿の体積(X軸に沿ったもの)対IgG濃度(Y軸に沿ったもの)のプロットが示されている。ドナーのIgGは、血漿収集ゼロのベースライン(手順の開始時)から200mL収集までに9%の低下が見られ、200mLから800mL収集まではさらに4%の低下が見られる。これは、ドナーの最初の総血液体積の約9%(200mLの血漿が採取された後)、ドナーの最初の総血液体積の約13%(800mLの血漿が採取された後)に相当する間質液の移行に起因していた。
【0103】
図12のプロットに基づいて、ドナーのIgG濃度の量と収集された血漿の体積との間の以下の関係が確立された:y=1.0017x-0.02、ここで、y=IgG濃度およびx=収集された血漿体積である。したがって、間質液の移動によって置き換えられるドナーの血液体積の割合はV(1-y)に等しくなる。ここで、Vはドナーの全血の初期体積である。したがって、間質液の移動体積は、収集された血漿体積に基づいて計算でき、この量を各返還段階で再注入される赤血球、非RBC細胞産物、および抗凝固剤の体積に加算して、ドナーの現在の合計血液体積、したがってヘマトクリットを決定することができる。理解されるように、制御部は、収集された血漿の体積に基づいて移行した間質液の体積を自動的に決定し、各採取段階の前にドナーのヘマトクリットを決定するときに移行した体積を含めるように構成することができる。
【0104】
あるいは、光学センサー、または遠心分離器が使用されている場合には遠心分離器内の赤血球の体積を測定するなど、ドナーのヘマトクリットを直接測定する他の方法を使用することもできる。
【0105】
さらに、抗凝固剤は、一般に、使い捨てキットのプライミング、1つ以上の前サイクルの実施、または他の前処理ステップのような前処理ステップにおける血漿交換手順の開始前に、使い捨てキットに導入される。これらの目的で使用される抗凝固剤が最終的に血漿生成物収集容器に送られる限り、収集される原料血漿の目標体積をもたらす血漿収集容器に含まれる体積を決定する際に考慮されるべきである。これは、例えば、抗凝固剤の「満杯」容器の重量と、第1の採取サイクルの開始前の抗凝固剤の容器の重量を測定し、その体積の抗凝固剤を血漿生成物の目標体積に追加することによって行うことができる。制御部は、抗凝固処理された血漿とは別に血漿収集容器に導入される抗凝固剤を考慮するために必要なステップを自動的に実行するように構成することができる。
【0106】
上述の方法およびシステムは、いくつかの態様を有する。第1の態様では、血漿生成物が複数の収集段階で収集され、その間に分離された赤血球がドナーに再注入される、血漿を収集するための方法が提供される。この第1の態様の方法は、a)ドナーの全血の体積(Vb)およびヘマトクリット(Hct)を決定し、b)ドナーから収集できる原料血漿の体積(VRP)を決定し、c)収集可能な血漿生成物の体積(VPP)を決定し、ここで、血漿生成物は、原料血漿の体積に抗凝固剤の体積を加えたものを含み、d)ドナーから全血を採取し、e)抗凝固剤を特定の比率(ACR)で採取された全血に導入し、f)採取された全血を、血漿生成物と赤血球を含む第2の成分とに分離し、g)血漿生成物を血漿収集容器に収集し、h)所望の量の全血がドナーから採取された後、赤血球をドナーに戻し、i)各収集段階の前にドナーのHctおよびVPPを決定することを含む。
【0107】
第2の態様では、ステップd)~i)は、収集容器内の血漿生成物の測定された体積がVPPに等しくなるまで継続される。
【0108】
第3の態様では、血漿生成物が複数の収集段階で収集され、その間に分離された赤血球がドナーに再注入される、血漿を収集するための方法が提供される。この第2の態様の方法は、a)ドナーの全血の体積(V)およびヘマトクリット(Hct)を決定し、b)Vに基づいてドナーから採取できる原料血漿の体積(VRP)を決定し、c)抗凝固剤比(ACR)およびドナーのHctに基づいて、VAC=VRP×(ACR×(1-Hct))となるように、VRPに添加される抗凝固剤の体積VACを決定し、d)収集され得る血漿生成物の体積(VPP)を決定し、ここで、血漿生成物は、原料血漿の体積(VRP)と抗凝固剤の体積(VAC)とを含み、e)ドナーから全血を採取し、f)抗凝固剤を特定の比率(ACR)で採取された全血に導入し、g)採取した全血を血漿生成物と赤血球を含む第2の成分とに分離し、h)血漿生成物を血漿収集容器に収集し、i)所望の体積の全血がドナーから採取された後、赤血球をドナーに戻し、j)各収集段階の前にドナーのHctおよびVPPを決定することを含む。
【0109】
第4の態様では、ステップd)~j)は、収集容器内の血漿生成物の測定された体積がVPPに等しくなるまで継続される。
【0110】
第5の態様では、Vは、ドナーの体重、身長、性別、年齢、および形態を含む1つまたは複数のドナー固有の特性に基づいて決定される。
【0111】
第6の態様では、アフェレーシス手順においてある体積の血漿生成物(VPP)を収集するための方法が提供され、この方法では、血漿生成物が複数の収集段階で収集され、その間に分離された赤血球がドナーに再注入される。この第4の態様の方法では、VPPは、ドナーから採取できる原料血漿の体積(VRP)の体積に、アフェレーシス処置中にVRPに添加される抗凝血剤の体積(VAC)を加えたものに等しい。この方法のステップは、a)ドナーの体重(Wkg)および性別(男性Mまたは女性F)を決定し、b)ドナーのヘマトクリット(Hct)を決定し、c)ドナーの体重(Wkg)および性別(MまたはF)に基づいて採取できる原料血漿の体積(VRP)を決定し、d)抗凝固剤比およびドナーのHctに基づいて、VPPとVRPとの間の比Kを、K=VPP/VRPとなるように決定し、e)VPP=VRP×KとなるようにVPPを決定し、f)ドナーから全血を採取し、g)抗凝固剤を特定の比率(ACR)で採取された全血に導入し、h)採取した全血を血漿生成物と赤血球を含む第2の成分とに分離し、i)血漿生成物を血漿収集容器に収集し、j)所望の量の全血がドナーから採取された後、赤血球をドナーに戻し、k)各収集段階の前にドナーのHctおよび目標VPPを決定することを含む。
【0112】
第7の態様では、収集容器内の血漿生成物の測定量された体積がVPPに等しくなるまで、ステップc)~k)が繰り返される。好ましくは、K=VPP/VRP=(ACR×(1-Hct/100)+1)/(ACR×(1-HCT/100))である。
【0113】
第8の態様では、アフェレーシス手順においてある体積の血漿生成物(VPP)を収集するための方法が提供され、この方法では、血漿生成物が複数の収集段階で収集され、その間に分離された赤血球がドナーに再注入される。この第5の態様では、VPPは、ドナーから収集できる原料血漿の体積(VRP)と、アフェレーシス手順中にVRPに添加される抗凝血剤の体積(VAC)の体積とを加えたものに等しい。この方法のステップは、a)ドナーの体重(Wkg)および性別(男性Mまたは女性F)を決定し、b)ドナーのヘマトクリット(Hct)を決定し、c)ドナーの体重(Wkg)およびドナーの性別(MまたはF)に基づいて収集できる原料血漿の体積(VRP)を決定し、d)抗凝固剤比(ACR)およびドナーのHctに基づいて、VAC=VRP×(ACR×(1-Hct))となるように、VRPに加えられるVACを決定し、e)VPP=VRP+VACとなるようにVPPを決定し、f)ドナーから全血を採取し、g)抗凝固剤を特定の比率(ACR)で採取された全血に導入し、h)採取した全血を血漿生成物と赤血球を含む第2の成分とに分離し、i)血漿生成物を血漿収集容器に収集し、j)所望の量の全血がドナーから採取された後、赤血球をドナーに戻し、k)各収集段階の前にドナーのHctおよびVPPを決定することを含む。
【0114】
第9の態様では、ステップd)~k)は、収集容器内の血漿生成物の測定された体積がVPPに等しくなるまで継続される。
【0115】
第10の態様では、VRPは、複数のドナー体重範囲のそれぞれについてVRPを確立し、ドナーの体重を含む体重範囲についてVRPを選択することによって決定される。ドナーの体重の範囲は、110~149ポンド、150~174ポンド、および175ポンド以上の3つのカテゴリに分類できる。
【0116】
第11の態様では、VRP=K×Wkgである。
【0117】
第12の態様では、VRPは(1-Hct)×(V)の28.6%以下である。
【0118】
第13の態様では、Vは、ナドラーの方程式、ギルチャーの5則、ICSHの標準、およびその他の一般的に受け入れられている方法論のうちの1つを使用して決定される。
【0119】
第14の態様では、VRP=Wkg×10mL/kgである。
【0120】
第15の態様では、ドナーパラメータを使用してドナーの総血液体積(V)を推定する場合、VRP=K×Vである。
【0121】
第16の態様では、再利用可能なハードウェア構成要素および使い捨てキットを含む、全血から血漿を分離するための自動システムが提供される。使い捨てキットは、さらに、i)全血を血漿画分と濃縮細胞画分に分離するための分離器であって、分離器は、ドナーから分離器に全血を輸送するための血液ラインが一体的に接続された入力部と、血漿ラインによって血漿収集容器に一体的に接続された血漿出力ポートと、ドナーに再注入する前に濃縮細胞を受け取るための貯留部に一体的に接続された濃縮細胞出口ポートとを備えた分離器と、ii)全血をドナーから血液ラインに輸送するための静脈穿刺針で終わるドナーラインと、iii)血液ラインに一体的に接続され、抗凝固剤をドナーラインに輸送するために抗凝固剤の供給源に接続されるように構成された抗凝固剤ラインと、iv)生理食塩水を血液ラインに輸送するために生理食塩水の供給源に取り付けられるように構成された生理食塩水ラインと、v)濃縮された細胞を貯留部からドナーラインに輸送するための再注入ラインとを備える。再利用可能なハードウェア構成要素はさらに、i)収集段階中に制御された速度で抗凝固剤を血液ラインに送達するための第1の蠕動ポンプと、ii)収集段階中に抗凝固処理された全血を分離器に送達し、再注入段階中に濃縮された細胞成分を戻すための第2のポンプと、iii)収集段階中に濃縮された細胞成分を分離器から貯留部に送達するための第3のポンプと、iv)血液ライン、血漿ライン、再注入ラインおよび生理食塩水ラインのそれぞれに関連付けられたクランプと、v)血漿収集容器、貯留部および抗凝固剤供給源のそれぞれの重量を量る重量計、およびvi)操作者からの入力を受信するためのタッチスクリーンを備えるプログラム可能な制御部であって、プログラム可能な制御部は、重量計のそれぞれから信号を受信し、第1のポンプ、第2のポンプ、および第3のポンプおよびクランプを自動的に動作させて収集段階では全血を血漿画分と濃縮細胞画分に分離し、再注入段階では濃縮細胞をドナーに戻すように構成されている制御部とを備える。プログラム可能な制御部はさらに、本明細書に記載される態様のいずれかに従って血漿収集容器内に収集される血漿画分の重量を決定し、血漿収集容器のための重量計から、制御部によって決定された血漿画分の重量に等しいとの信号を受信すると収集段階を終了するように構成されている。収集される血漿生成物の目標量を決定する際に、制御部は、各サイクルの収集段階の前にドナーのヘマトクリットを計算するように構成され得る。代替的に、または追加的に、制御部は、ドナーのヘマトクリットを示すセンサーなどから信号を受信してもよい。さらに、血漿収集容器内の血漿生成物の量は、例えば、血漿収集に関連する重量計によって決定され得る。一実施形態では、分離器は回転膜分離器を含む。
【0122】
図13は、対象者に対して医療処置を実行するためのシステム110を概略的に示す。図13および図14の実施形態の1つ以上の特徴、機能または構成要素は、さらなる実施形態を提供するために図1図12の実施形態の1つまたは複数の特徴、機能、または構成要素と組み合わせることができる。図13のシステム110は、データ記憶場所(データベース112など)、ユーザインターフェース114、治療装置116、および制御部118を含む。このシステムは、任意の特定の医療処置を実行するために構成および使用することができる。より具体的には、システムは、健康なドナーまたは患者に対して自動または半自動のアフェレーシスまたは採血手順、例えば上述の血漿交換手順を実行するように構成され得る。
【0123】
データ記憶場所は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々に構成および配置することができる。例えば、図13のデータベース112の場合のように、データ記憶場所はシステム110に統合され、制御部118に関連付けられてもよい。他の実施形態では、データ記憶場所は、システム110から遠隔であってもよく、例えば、システム110の所有者の中央サーバまたは記憶設備に、またはその中に配置されてもよい。データ記憶場所が遠隔にある場合、これに限定されないが、無線インターネットアクセスなどの多くの既知または新規のリモートアクセス手段のいずれかによってシステム110と通信することができる。別の実施形態では、データ記憶場所は、対象者または操作者によってシステム110に関連付けられ得る、暗号化された識別カードなどの着脱可能な記憶装置である。本開示の範囲から逸脱することなく、データ記憶場所の他の構成を使用することもできる。
【0124】
データ記憶場所は、多種多様なデータおよび情報を記憶することができる。図13の実施形態では、データ記憶場所(データベース112の形態)は、1つまたは複数の対象者データエントリ120を記憶し、各対象者データエントリ120は、医療処置がシステム110を使用して実行されることになる対象となる対象者(すなわち、ドナーまたは患者)に対応する。データベース112は、システム110が特定の対象者に対して医療処置を実行する前の時点で、特定の対象者に対する対象者データエントリ120を用いて事前にプログラムされる。各対象者データエントリ120は、名前、体重、性別、年齢、生年月日、住所、一意のパスワード、指紋、顔または網膜データ、および/または秘密の質問に対する答えなどの対象者固有の情報122を含む。対象者固有の情報122は、対象者の識別情報に対応し、以下でより詳細に説明するように、対象者によってシステムに入力される識別情報入力126と比較される。
【0125】
対象者特有の情報122に加えて、各対象者データエントリ120は、1つ以上のパラメータ124を含んでもよく、あるいはそのようなパラメータは、医療処置および/または手順と対象者固有情報122の組み合わせに基づいて制御部118によって計算または決定されてもよい。パラメータ124の性質は、実行される医療処置の性質に応じて変化し得る。また、パラメータ124は、対象者の性別、対象者の体重、流体が対象者から採取され、及び/又は対象者に戻される許容可能な速度(例えば、クエン酸塩注入速度)等に関連するか、又はそれらに基づいて導出され得る。
【0126】
ユーザインターフェース114は、操作者または対象者から命令および情報を受け取り、操作者または対象者が実行すべき指示を表示するためのディスプレイを含む。ディスプレイは、タッチスクリーンの形態、あるいは、操作者または対象者がユーザインターフェース114(例えば、キーパッドまたはキーボード)と対話できるようにする関連装置を備えたスクリーンの形態など、様々に提供され得る。ユーザインターフェース114はまた、対象者の識別情報に対応する識別情報入力126を対象者から受信するための入力装置を含む。以下にさらに詳細に説明するように、対象者が自分自身を識別する方法はさまざまにあり、入力装置はさまざまに構成することができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイは入力装置として機能するが、他の実施形態では、入力装置はディスプレイとは別個である。
【0127】
本開示の原理は、多種多様な装置および多種多様な手順に使用することができる。したがって、対象者に医療処置(の少なくとも一部)を実際に実行する治療装置116は、様々に構成することができる。一実施形態では、治療装置116は、アフェレーシスシステム、例えば、対象から血液を採取し、その成分に分離し、成分の少なくとも1つを対象に戻すように構成された遠心分離システムであってもよい。例示的な遠心分離器システムには、イリノイ州レイク・ズーリックのフェンウォール,インコーポレイテッドによってALYX(登録商標)システムおよびAMICUS(登録商標)システムとして現在市販されているものが含まれ、それぞれ米国特許第6,325,775号および米国特許第5,868,696号に詳細に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本開示の範囲から逸脱することなく、透析システム、非経口栄養システムなどを含む(これらに限定されない)他の治療装置も使用することができる。
【0128】
制御部118は、データベース112、ユーザインターフェース114、および治療装置116と関連付けられるか、またはそれらと通信する。制御部118は、複数の機能または手順を用いて構成またはプログラムすることができ、システム110の他の様々な構成要素からデータを受信すること、システム110の他の様々な構成要素にコマンドを発行し、システム110の他の様々な構成要素のパフォーマンスを監視することを含む(しかしこれらに限定されない)様々な機能を有する。一実施形態では、制御部118は、対象者によって提供される識別情報入力126を、データベース112に格納されている対象者データエントリ120と比較するように構成される。識別情報入力126が対象者データエントリ120の1つに格納されている対象者固有の情報122に対応する場合(すなわち、システム110が対象者を「認識」する場合)、制御部118は治療装置116に対象者に対する医療処置を実行するよう命令する。これには、特定の対象者データエントリ120に関連付けられたパラメータ124(提供されている場合)を決定またはアクセスすることと、医療処置の実行に使用するためにパラメータ124を治療装置116に送信することが含まれ得る。
【0129】
識別情報入力126が対象データエントリ120のいずれかに格納されている対象固有情報122に対応しない場合、制御部118はいくつかの応答のいずれかを開始することができる。一実施形態では、制御部118は、対象者に対する医療処置の実行を妨げるエラー信号を生成する。エラー信号は、ディスプレイ上にエラーメッセージ(例えば、「個人を確認できません」)を表示するようにユーザインターフェース114に命令することを含む、可聴および/または視覚的な警報および警報をトリガすることができる。別の実施形態では、制御部118は、任意選択で、対象者に固有に適したパラメータの代わりにデフォルトの動作パラメータを使用して対象者に対する処置を実行するように治療装置116に命令する。
【0130】
図14は、本開示によるシステム110を使用する例示的な方法を示す。対象者に対して医療処置が行われる前に、対象者データエントリ120が対象者のデータベース112に事前にプログラムされる。これは、遠隔的に、またはユーザインターフェース114を使用して行うことができる。医療関係者は、少なくとも対象者を識別するために使用される対象者固有の情報122を含む、様々な情報を入力するよう促される。医療従事者はまた、対象者に対して医療処置を行う際に使用される1つ以上のパラメータ124を入力するように促されてもよい。識別情報入力126の性質に応じて、対象者固有情報122の性質、したがってそれがデータベース112に入力される方法および形式は変化し得る。例えば、情報は、直接の問い合わせおよびダウンロードによって、または対象者または医療関係者の入力に応答して、中央データベースまたは遠隔データベースなどの別のデータベースから取得されてもよい。リモートデータベースは、図1~12の実施形態を参照して本明細書で説明されるように、ドナー管理システムであってもよい。情報またはパラメータは、ここにある図1図12を参照して説明した血漿収集工程で使用するためにリモートデータベースから検索することができる。さらに、パラメータ124の性質は、対象者に対して実行される医療処置の性質に依存する可能性がある。対象者特有の情報122および任意のパラメータ124(提供されている場合)がシステム110に入力されると、医療関係者は入力されたデータを確認し、それによって、データベース112に格納され、対象者に固有のものである対象者データエントリ20を生成する。
【0131】
その後しばらくして、対象者は、システム110またはシステム110の動作可能な部分の近くまたは近接に持ち込まれる。対象者は、システム110の近くに連れてこられたときに治療装置116に接続されてもよいし、後で(例えば、システム110が対象者の身元を確認した後)に治療装置116に接続されてもよい。システム110の近くにいる間、対象者は、ユーザインターフェース114の入力装置を介して識別情報入力126を提供することによって、システム110に対して自分自身を識別しようと試みる。対象者の識別情報は、多くの方法のうちの任意の方法で表現することができるので、システム110は、識別情報入力126を受信するための1つまたは複数の異なる入力装置を含むことができる。
【0132】
一実施形態では、識別情報入力126は生体測定データの形式をとることができ、その場合、ユーザインターフェース114の入力装置は生体測定スキャナまたは読み取り装置として提供される。例えば、入力装置は、対象者の指紋を受信して分析するための指紋リーダとして提供されてもよい。別の実施形態では、入力装置は、対象者の網膜を観察および分析するための網膜スキャナとして提供される。さらに別の実施形態では、入力装置は、対象者の顔を観察および分析するための顔認識ソフトウェアを含む。別の実施形態では、入力装置は、対象者の心拍リズムを考慮するための心拍数モニタとして提供される。さらに別の実施形態では、入力装置は、対象者の音声を受信して分析するためのマイクロフォンまたは同等のオーディオ装置を含む。別の実施形態では、入力装置は、対象者から血液サンプルを受け取り、対象のDNAを分析するように構成される。他の生体認証識別子も(または追加で)対象者が自分の身元を表現するために提供する場合がある。
【0133】
別の実施形態では、対象者には、システム110に対して対象者を識別することを試みるために、入力装置によって分析される固有の対象者識別カード、バッジ、または取り外し可能な記憶装置が提供される。例えば、入力装置はバーコードリーダーを備え、対象者には、入力装置によって読み取れるバーコードにコード化された個人情報を有する対象者識別カードが提供されてもよい。別の例では、対象者は、個人情報が暗号化され、内蔵の高周波識別(「RFID」)回路を有する対象者識別カードを持っていてもよい。入力装置は、制御部118によるその後の分析のためにカード上の個人情報を読み取ることができるRFIDリーダを備える。カードは、制御部118によってパラメータ124をデータベース112に事前にプログラムしたり、パラメータ124を導出/計算したりするのではなく、対象者の固有の動作パラメータ124の1つまたは複数がさらに暗号化され、上述したように、データ記憶場所として機能することができる。この場合、識別情報入力126およびパラメータ124(存在する場合)は、入力装置によって読み取られ、識別情報入力126が1つまたは複数の対象データエントリ内の対象固有情報122に対応する場合、それらは入力装置によって読み取られ、制御部118はパラメータ124をカードから治療装置116に送信する。さらに、カードには複数の治療計画を暗号化することができ、各治療の結果はシステム110によって経時的に追跡される。
【0134】
1つまたは複数の実施形態では、制御部118は、対象者データエントリ120内の対象者固有の情報122のうちの特定の1つまたは複数が識別情報入力126に対応することを要求するようにプログラムされてもよい。例えば、システム110は、医療処置を進める前に、正しい対象者固有の情報122の組み合わせを必要とする場合がある。具体的には、システム110は、識別情報入力126と一致するために、および/または相互に一致するために、2つ以上の対象者固有情報122を必要とする場合がある。非限定的な例として、システム110は、名前と性別、名前とパスワード、名前と指紋と病状、指紋と顔の認識、または選択され得る他の組み合わせの間の一貫性を必要とする場合がある。
【0135】
さらに別の実施形態では、ユーザインターフェース114の入力装置は、携帯電話またはラップトップコンピュータなどの電子装置上で実行される認証ソフトウェアを認識し、読み取るようにプログラムされる。
【0136】
別の実施形態では、ユーザインターフェース114は、対象者から個人識別番号、コード、またはパスワードを受信するようにプログラムされる。ユーザインターフェース114のディスプレイがタッチスクリーンである場合、ディスプレイを使用して暗証番号を直接入力することができる(これにより、ディスプレイが入力装置として機能することが可能になる)。あるいは、対象者が個人識別番号を入力できるようにするために、キーパッドまたはキーボードを含む入力装置が提供されてもよい。
【0137】
対象者がシステム110に識別情報入力126を提供すると、制御部118は識別情報入力126をデータベース112に格納されている対象者データエントリ120と比較する。上述したように、識別情報入力126が、システム110の要求に応じて、1つ以上の対象者データエントリ120に格納された対象者固有の情報122に対応する場合(図14では、「医療機器が個人の認証を確認する」という言葉を含む「if-then」ダイヤモンドに対するYESの応答で示される)、システム110は対象者の識別に成功している。次いで、制御部118は、対象者に対して医療処置(例えば、血漿収集、赤血球収集など)を実行するように治療装置116に命令するが、これには、制御部118が、その特定の対象者データエントリ120に関連付けられたパラメータ124を計算し、受け取り、または、アクセスし、それを医療処置の実行に使用するために治療装置116に送信することを含み得る。
【0138】
制御部118が識別情報入力126を対象データエントリ120のいずれかに格納されている対象固有情報122と照合できない場合(図14では「医療機器が個人の認証を確認する」という言葉を含む「if-then」ダイヤモンドに対する「NO」応答で示される)、システム110は対象者を識別できていない。図14の実施形態では、制御部118は、医療処置の続行を無効にするか拒否することによって応答し、対象に対する医療処置の実行を妨げる信号を生成することができる。次いで、対象者には、同じまたは異なる識別情報入力126を使用して自分の識別情報を表現する1つまたは複数の追加の機会が与えられ得る。上で説明したように、本開示の範囲から逸脱することなく、失敗した識別に対する異なる応答を開始することもできる。
【0139】
次に図15を参照して、例示的な実施形態による、血漿を収集するためのシステムおよび方法を説明する。この実施形態は、静脈穿刺針、血液分離器、ドナーライン、抗凝固剤ライン、ポンプ、タッチスクリーンおよび制御部などの、上述の1つまたは複数の構成要素または機能を用いて実装され得る。ブロック1500で、制御部は、ネットワークを介してリモートコンピュータからパラメータを受信するようにプログラムされる。パラメータは、ドナーパラメータまたは動作パラメータのうちの1つ以上を含み得る。パラメータには、性別、年齢、身長、体重、妊娠データ、ヘマトクリット、対象者固有の情報、名前、生年月日、自宅住所、固有のパスワード、指紋、顔または網膜のデータ、秘密の質問への回答、クエン酸塩注入速度、ドナーの画像、血漿生成物の目標体積(例えば血漿と抗凝固剤)、原料血漿の目標体積、抗凝固剤比、ドナーの総血液体積、ドナーの総血漿体積、本明細書に記載されている総血液体積計算に関するパラメータおよび/または他のパラメータのうちの1つ以上が含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、リモートコンピュータは、パラメータのうちの1つまたは複数に基づいて、本明細書に記載される計算を実行する。いくつかの実施形態では、制御部は、パラメータのうちの1つまたは複数に基づいて、本明細書に記載される計算を実行する。
【0140】
ブロック1502で、制御部は、パラメータのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいてドナーを確認するための使用者の入力を受信するように構成され得る。例えば、制御部は、ドナーを識別するパラメータ(例えば、ドナーの識別コードまたは番号、名前、生年月日、社会保障番号、画像など)をタッチスクリーンまたは他のディスプレイ上に表示し、操作者/使用者からの確認入力を受信するように構成され得る。使用者は、タッチスクリーンに表示された「確認」というラベルの付いたボタンを押すか、制御部に接続されたマイクへの音声コマンド、キーボード、または他のユーザ装置を使用することによって確認できる。操作者は、最初にドナーに話しかけたり、ドナーを見て画像を確認したりすることによってドナーに確認を行ってから、タッチスクリーンなどの適切なユーザ装置を介して制御部に入力を提供することができる。
【0141】
ブロック1504において、制御部は、パラメータのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を決定するように構成され得る。上述のように、決定は、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積をリモートコンピュータから受信することによって、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を採血装置に対してローカルに計算することによって、ユーザ装置からの操作者からの入力されたデータを受信することによって、またはその他の決定方法によってなされる。リモートコンピュータ上で、または制御部でローカルに行われる計算は、先に説明したようにドナーの総血液体積および/または総血漿体積を最初に計算することによって、または本明細書に説明する任意の他の計算を使用することによって、上記の簡略化された血漿体積ノモグラムに基づいてよい。
【0142】
ブロック1506において、ドナーが操作者によって確認された場合、制御部は、ドナーから全血を採取し、全血を血漿生成物と第2の血液成分に分離し、第2の血液成分をドナーに戻すために、1つ以上(少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つなど)の採取および返還を動作させるようにシステムを制御するように構成され得る。
【0143】
制御部によって受信されるリモートコンピュータからのパラメータは、ドナーの画像を含み得、制御部は、タッチスクリーン上に画像を表示し、ドナーを確認するためのタッチスクリーンからのユーザ入力を受信するようにプログラムされる。制御部によって受信されるリモートコンピュータからのパラメータは、ドナー識別子を含むことができ、システムは、ドナーに関連付けられたコードをスキャンするように構成されたスキャナをさらに含む。スキャナは、バーコードスキャナ、カメラ、またはその他のスキャン 装置であってもよい。制御部および/またはスキャナは、ドナーのリストバンドからスキャナからスキャンされたデータを受信するように構成され得る。
【0144】
制御部によってリモートコンピュータから受信されるパラメータは、社会保障番号、生年月日、画像などの、ドナーに固有の、またはドナーの特性の少なくとも1つのデータを含み得る。制御部は、ドナーに固有または特徴的な少なくとも1つのデータを表示し、ドナーがドナーに固有または特徴的なデータに関連付けられていることを確認するようにユーザに促すように構成され得る。
【0145】
一実施形態では、リモートコンピュータは、ドナーの体重、身長、ヘマトクリットおよび性別のうちの少なくとも2つに基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を計算するように構成される。
【0146】
別の実施形態では、体重計を使用してドナーの体重を取得することができる。体重計は、リモートコンピュータおよび制御部のうちの1つに結合され得る。リモートコンピュータおよび制御部のうちの少なくとも1つは、体重計からドナーの体重を受け取るように構成され得る。血漿生成物および/または原料血漿の目標体積は、体重計からの体重に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。
【0147】
一実施形態では、制御部またはリモートコンピュータは、ドナーの画像を取得するカメラを備えて構成され得る。制御部またはリモートコンピュータは、画像処理技術を使用してドナーの体格指数(BMI)を決定するように構成された処理回路を備え得る。BMIは、総血液体積の計算に使用されるパラメータとなり得る。制御部またはリモートコンピュータは、計算されたBMIを、操作者によって入力された、または体重計から得られた体重および/または身長と比較するようにプログラムされ得る。体重が計算されたBMIによって予想される体重から逸脱する場合、制御部またはリモートコンピュータは、患者の体重および/または身長を再測定する必要があることを示すメッセージを生成して表示するように構成され得る。
【0148】
別の実施形態では、身長、体重などのドナーに関連するパラメータは、メモリ内で一定因子(例えば、性別)または変動因子(例えば、体重、ヘマトクリット、身長)として分類され得る。制御部またはリモートコンピュータは、血液提供のたびに変動因子の再測定または再入力を要求するように構成できるが、一定因子は再入力する必要がなく、ユーザ入力画面でグレー表示されることもある。
【0149】
図16を参照すると、携帯情報端末を使用してドナーから血漿(または他の血液成分)を収集するシステムおよび方法が説明される。リモートコンピュータ1600は、ドナーデータを管理するためのドナー管理システムとして機能するように構成された1つまたは複数のコンピューティング装置であってもよい。コンピュータ1600はまた、体重、身長、性別、ヘマトクリット、血圧、以前の血液提供の日付、およびドナーが血液提供をする資格があるかどうかを決定するためのドナー資格の質問に対する回答などのドナー取得データを受信し、保存することもできる。リモートコンピュータ1600は、採血施設の別の部屋、オフサイトの場所など、血液処理装置1604から遠隔に配置され得る。携帯コンピュータ1602は、スマートフォン、個人用携帯情報端末、携帯電話、または他の携帯装置など、使用中に手に持つように構成されたハウジングを備え得る。血液処理装置1604は、異なるモードで1つ以上の異なる血液成分を収集、処理、および/または治療するように設計され得る血漿交換装置または他の成分除去装置を備え得る。装置1600、1602、および1604のそれぞれは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、802.11xまたはWi-Fiネットワークなどのネットワークを介した有線および/または無線通信用に構成されたネットワークインターフェース回路を介して他の装置の1つまたは両方と通信するように構成され得る。
【0150】
一態様では、携帯装置1602は、ドナー識別子(例えば、名前、社会保障番号、デジタル画像、ドナーコード、生年月日、またはドナーに固有または特徴的な他のデータ等)、ドナーの身長、体重、ヘマトクリット、性別など、収集する目標血漿生成物および/または原料血漿(リモートコンピュータ1600によって計算される)、または他のパラメータなどのパラメータをリモートコンピュータ1600から受信するように構成され得る。パラメータのうちの1つまたは複数は、携帯コンピュータ1602のディスプレイ(例えば、入力および/または出力機能を有するディスプレイ、入力機能を有するタッチスクリーンディスプレイなど)上に表示され得、操作者はディスプレイ上で1つ以上のパラメータの確認を促され得る。例えば、操作者は、画面上にドナーの画像または名前を表示するだけでなく、血液提供を求めて提示したドナーが画面上で識別されたものと同じであることを操作者に確認するよう求めるプロンプト(例えば、テキスト)を見ることもできる。操作者がドナーまたは他のパラメータまたは手順を確認するために、タッチスクリーンボタンが提供されてもよい。
【0151】
操作者による確認に基づいて(例えば、確認時、確認後、または追加ステップが続く確認後)、携帯コンピュータ1602は、血液処理装置1604に1つまたは複数のパラメータを送信または提供するように構成され得る。例えば、パラメータは血液処理装置1604に無線でダウンロードされてもよい。あるいは、パラメータは携帯コンピュータ1602のディスプレイに表示され、操作者がそれらを見て、タッチスクリーンなどの入力装置を使用してそれらを手動で血液処理装置1606に入力できるようにしてもよい。
【0152】
別の実施形態では、パラメータは、リモートコンピュータ1600から血液処理装置1604に無線で直接送信されてもよく、血液処理装置1604は、携帯コンピュータ1602(または、本明細書に開示する他の実施形態で説明するように、血液処理装置1604上に直接)で確認が行われるまで、パラメータに基づいて使用、ロード、または血液処理手順の開始を待つ。一例では、実行パラメータ(例えば、収集する血漿生成物および/または原料血漿、収集する血液の成分など)は、ドナー識別データが携帯装置1602に送信されるのと同時にアフェレーシス装置に送信されてもよく、操作者はドナー識別情報が確認されるとすぐに血液処理装置1604で手順を開始することができ、ドナー識別情報は装置パラメータにリンクされ得る。
【0153】
リモートコンピュータ1600から、または携帯コンピュータ1602のユーザインターフェースから携帯コンピュータ1602で受信されたパラメータは、無線伝送、メモリカードなどの多くの技術のいずれかを使用して血液処理システム1604に送信され得る。一実施形態では、血液処理装置1604は、携帯コンピュータ1602のディスプレイ、紙、または別の供給源から画像暗号化パラメータを受信するように構成されたカメラ、バーコードリーダーなどのスキャン装置を備える。
【0154】
リモートコンピュータ1600は、体重、身長、性別、ヘマトクリット、年齢などのドナーパラメータを受信し、これらおよび/または所定の抗凝固剤比などの他のパラメータに基づいて目標血漿生成物(血漿生成物と抗凝固剤)および/または目標原料血漿を計算するように構成され得る。ドナーパラメータは、操作者入力装置、血液確立コンピュータソフトウェアシステム(BECS)、または他の供給源から受信され得る。リモートコンピュータ1600は、目標血漿生成物および/または目標原料血漿を携帯コンピュータ1602および/または血液処理システム1604に送信するように構成され得る。
【0155】
ドナーの性別など、一部のドナーパラメータは固定され得るが、体重および身長など、他のドナーパラメータは可変であり得る。一部のドナーパラメータは他のパラメータよりも変動しやすい場合がある。たとえば、体重は身長よりも変動しやすい場合がある。本明細書に記載されるシステム(例えば、リモートコンピュータ1600、携帯コンピュータ1602、および/またはドナー処理システム1604)は、異なる固定または可変特性識別子を有するドナーパラメータを記憶するように構成することができ、システムは、計算および/または操作がこれらのパラメータを使用して実行される前に、ドナーパラメータの異なる要件を有するように構成することができる。例えば、システムは、全身体積に基づいて目標血漿生成物および/または目標原料血漿を計算するように構成され得る。目標、全身体積、および/または血漿総体積の計算は、データベースから取得される既存のデータである少なくとも1つのパラメータと、現在取得されている測定データである少なくとも1つまたは少なくとも2つの追加パラメータとに基づいて、血液提供手順前の所定の期間内に行うことができる。一例では、ドナーの身長はデータベースからの既存のデータであり、体重とヘマトクリットはアフェレーシス手順と同じ日に測定され記録される。別の例では、システムは、血液提供の少なくとも所定の期間(例えば、1日、3日など)前に測定および記録された身長を使用するように構成され得る。システムは、たとえば自己報告シナリオで、システムへのユーザポータルを介して直接身長を受け取るように構成できる。このシステムは、異なる主体(例えば、かかりつけ医、別の献血施設など)によって発行され、処置の少なくとも3日前にデータベースに記録された身分証明書から身長を受け取るように構成することができる。さまざまなドナーパラメータは、システムのプログラミングによって固定または異なるパラメータで変更する必要がある場合がある。
【0156】
一実施形態では、ドナーから血漿を収集する方法は、血漿収集装置にローカルな制御においてネットワークを介してリモートコンピュータから血漿収集手順のパラメータを受信することを含み、血漿収集装置はタッチスクリーンユーザ入力装置を有する。この方法は、パラメータおよび/または手順の少なくとも1つを確認するために、タッチスクリーンでユーザ入力を受信することを含む。この方法は、リモートコンピュータからネットワークを介して受信したパラメータの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を決定することを含む。この方法は、パラメータおよび/または手順の少なくとも1つの確認に応答して、ドナーから全血を採取するように血漿収集装置を制御すること、抗凝固剤を全血と混合すること、全血を血漿生成物と赤血球を含む第2の血液成分とに分離すること、血漿生成物を血漿生成物収集容器に送ること、および、第2の血液成分をドナーに戻すことを含む。
【0157】
血漿生成物および/または原料血漿の目標体積は、リモートコンピュータで計算することができ、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を決定することは、血漿生成物および/または原料血漿の目標体積を制御部側のリモートコンピュータから受信することを含む。
【0158】
パラメータのうちの少なくとも1つはドナー識別子であってもよく、ドナー識別子の確認に応答して、血漿収集装置は、パラメータに従って血漿収集手順を実行するように制御される。
【0159】
制御部は、血漿収集手順を確認するためにタッチスクリーンを介してユーザ入力を受信するように構成され得る。
【0160】
制御部は、パラメータを受信し、パラメータを構成された手順としてメモリに記憶し、タッチスクリーンを介して構成された手順の表示を表示し、タッチスクリーンを介して構成された手順を確認するためのユーザ入力を受信するように構成され得る。
【0161】
説明される実施形態は、本対象者の原理の応用のいくつかを例示するものであることが理解されよう。当業者であれば、本明細書で個別に開示または請求される特徴の組み合わせを含む、特許請求される対象者の精神および範囲から逸脱することなく、数多くの修正を行うことができる。これらの理由により、特許請求の範囲は上記の説明に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16