(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240209BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240209BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
F25B1/00 304P
F25D11/00 101B
F25B49/02 510C
(21)【出願番号】P 2019210969
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 智裕
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 好正
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143819(JP,A)
【文献】特開昭60-191150(JP,A)
【文献】特開昭60-243465(JP,A)
【文献】特開昭58-104465(JP,A)
【文献】特開昭61-050028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F25D 11/00-16/00
F25D 27/00-31/00
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクル
で、前記凝縮器と前記絞り手段との間の
細径管の冷媒配管の温度を検知
し、前記冷媒配管の上流部に上流部温度センサと
下流部に下流部温度センサを備え、前記上流部温度センサ
と前記下流部温度センサはサーミスタとして、分圧抵抗と直列接続で直流電源に接続し、前記上流部温度センサ側の分圧電圧を差動増幅回路の-端子に入力し、前記下流部温度センサ側の分圧電圧を前記差動増幅回路の+端子に入力し
、
前記上流部温度センサに第一の分圧抵抗、前記下流部温度センサに第二の分圧抵抗を接続し、
前記上流部温度センサと前記下流部温度センサで検知する温度差がゼロの時に、冷蔵庫使用温度範囲の中心温度で、前記差動増幅回路の出力電圧が上に凸の変曲点を持つように、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第一の分圧抵抗
と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を、前記差動増幅回路のオフセット電圧影響を排除するように設定したことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を、使用温度範囲のサーミスタRT特性において、前記下流部温度センサ側の分圧電圧が、前記上流部温度センサ側の分圧電圧よりも大きくなるように設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記上流部温度センサと前記下流部温度センサで検知する温度差がゼロの時に、前記差動増幅回路の出力電圧が全出力電圧範囲の中心値となるように、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を設定したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒配管の2点の温度差を検知して、絞り量を可変する膨張弁を搭載した冷蔵庫等の冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の膨張弁を搭載した冷凍サイクル装置である冷蔵庫を開示する。この冷蔵庫は、
図7に示すように蒸発器の出口温度を検知する蒸発器出口温度センサ1と、入口温度を検知する蒸発器入口温度センサ2と、冷媒圧力を検知する圧力センサ4と、冷却装置の庫内温度を検知する庫内温度センサ3と、前記各センサからのアナログ信号がA/D変換部5を介して入力される制御部7と、制御部7によって制御される弁駆動部8及び弁駆動部8により駆動される電動膨張弁9とを備えている。そして、前記各センサからの入力はA/D変換部でデジタル信号に変換されてマイクロコンピュータ6へ出力され、マイクロコンピュータ6内部で蒸発器出入口の温度差を演算して過熱度を算出し、更にこの過熱度に、庫内温度と冷媒圧力の状態を加味した処理で決定した冷媒絞り量を弁駆動部8へ送り、電動膨張弁9の開度を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、検知した温度をアナログ値のまま差動増幅回路で瞬時に温度差として変換出力して制御する冷凍サイクル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における冷凍サイクル装置は、冷媒配管の温度を検知する上流部温度センサと下流部温度センサを備え、前記各温度センサはサーミスタとして分圧抵抗と直列接続で直流電源に接続し、一方の温度センサ側の分圧電圧を差動増幅回路の-端子に入力し、他方の温度センサ側の分圧電圧を差動増幅回路の+端子に入力して、当該作動増幅回路の出力を基に膨張弁の絞り量を制御する構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷凍サイクル装置は、検知した温度をアナログ値のまま瞬時に温度差として出力し絞り量を制御できる。よって、時間遅れのない高応答かつ高精度な冷凍システム性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の冷凍サイクル構成図
【
図2】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の温度差検知回路の構成図
【
図3】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫のサーミスタのR-T特性図
【
図4】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の検知温度と分圧電圧の相関図
【
図5】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の温度差と回路出力電圧の相関図
【
図6】実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の使用温度範囲と温度差ゼロでの回路出力電圧の相関図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、特許文献1に記載された冷凍サイクル装置があった。これは、
図7示すように、検知した温度のアナログ値を一旦A/D変換部5でデジタル変換し、マイクロコンピュータ6で温度差を演算処理するので、ソフト処理による時間遅れが発生し、刻々と変化する温度の検知に時間ズレが発生したり、A/D変換部5の分解能限界による精度ダウンが発生したりする。また、温度センサは一般に温度特性を持つが、その精度影響を排除する補正手段がないため、更に冷却システム制御が不十分になる、と言う課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0009】
そこで本開示は、検知した温度をアナログ値のまま差動増幅回路で瞬時に温度差として変換出力して絞り量を制御する冷凍サイクル装置を提供する。
【0010】
(実施の形態1)
以下、冷凍サイクル装置の実施の形態として冷蔵庫を例にして
図1~
図6を用い説明する。
【0011】
[1-1.構成]
図1は本開示の実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の冷凍サイクル構成図、
図2は同実施の形態による冷蔵庫の温度差検知回路の構成図、
図3は同実施の形態による冷蔵庫のサーミスタのR-T特性図、
図4は同実施の形態による冷蔵庫の検知温度と分圧電圧の相関図、
図5は同実施の形態による冷蔵庫の温度差と回路出力電圧の相関図、
図6は同実施の形態による冷蔵庫の使用温度範囲と温度差ゼロでの回路出力電圧の相関図を示す図である。
【0012】
まず
図1において、冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の冷凍サイクルの構成、動作、作用について説明する。
【0013】
冷蔵庫の冷凍システム10は、能力可変の圧縮機11、凝縮器12、ドライヤ13、絞り手段14、キャピラリチューブ15、蒸発器16、アキュームレータ17、吸入管18、内部熱交換部19の順に、配管で接続され内部に冷媒が封入されている。更に、ドライヤ13と絞り手段14との間には、細径管の冷媒配管20が挿入されており、冷媒配管20の上流部(入口)には上流部温度センサ21が、下流部(出口)には下流部温度センサ22がそれぞれ配置されている。
【0014】
ここで、ドライヤ13は、冷凍システム10内を循環する冷媒を乾燥するものであり、液冷媒と効率よく接触するために凝縮器12の下流に配置する。また、アキュームレータ17は、安定状態における余剰冷媒を貯留するものであり、蒸発器16と略同一の温度を保持するために蒸発器16の下流に配置する。
【0015】
また、絞り手段14とキャピラリチューブ15を直列に配置することにより、キャピラリチューブ15と吸入管18を熱交換する内部熱交換部19を実現しており、吸入管18内を還流する低温冷媒のエンタルピーを回収して冷凍システムの効率を向上させている。
【0016】
更に、冷媒配管20の内部を流れる冷媒状態に応じて、冷媒配管20内部の微小抵抗のため温度差(ΔTとする)も変化する。すなわち気相状態であればΔTは大きく(上流部温度<下流部温度)、液相状態になればΔT=0℃に近づく。このΔTを乾き度と呼び、乾き度をゼロに近づけることで、冷凍能力を最大限引き出すことができる。
【0017】
システムとしては限りなく液相に近い二相状態が好ましいが、ΔTを完全に0℃(液相状態)にすると、逆に圧縮機11が液圧縮する不具合発生の可能性もあり、少し高めの値に設定するのが良い。
【0018】
従って、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22で配管温度を測定すれば、その温度差ΔTの結果に基づいて絞り手段14で冷媒流量を可変することで、冷凍システム10を最適な乾き度に制御することができる。
【0019】
次に、この乾き度を推定するために、冷媒配管20の上流部と下流部の温度差ΔTを検知する温度差検知回路の構成について、
図2を用いて説明する。
【0020】
上流部温度センサ21はサーミスタを適用し、一端が制御装置26から供給される直流電源のGNDに接続され、他端が固定抵抗値を持つ第一の分圧抵抗23の一端に接続される。第一の分圧抵抗23の他端は直流電源の5Vに接続され、上流部温度センサ21と第一の分圧抵抗23の接続点の分圧電圧(V1とする)が、差動増幅回路25の-端子に入力される。同様に、下流部温度センサ22も同特性のサーミスタを適用し、一端がGNDに接続され、他端が固定抵抗値を持つ第二の分圧抵抗24の一端に接続される。第二の分圧抵抗24の他端も5Vに接続され、下流部温度センサ22と第二の分圧抵抗24の接続点の分圧電圧(V2とする)が、差動増幅回路25の+端子に入力される。
【0021】
次に差動増幅回路25では入力された電圧V1とV2の差分V2-V1が、予め設定された増幅率Aで増幅され、出力電圧(Voutとする)すなわち、Vout=A×(V2-V1)の式となる電圧が制御装置26にアナログ電圧として入力される。そして、制御装置26内のマイクロコンピュータにより、入力された電圧Voutから演算処理で温度差ΔTが算出され、その温度差ΔTの結果に応じた絞り量を決定して、信号S1を駆動装置27へ出力する。絞り手段14としては、ステッピングモーター搭載の膨張弁が一般的であり、駆動装置27から弁開度に応じたパルス信号S2が入力され、所定の開度に弁が調整される。
【0022】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷蔵庫の温度差検知回路について、以下その作用、動作について、
図3~6を用いて説明する。
【0023】
まず初期状態として冷凍システム10の停止で冷媒の還流がない場合、配管温度は均一で上流部温度センサ21と下流部温度センサ22も同値となり、温度差ΔTは0℃となる。いま、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22を同一特性のNTC型サーミスタとすると、
図3に示すような右下がりの放物曲線になる。ここでは、温度24℃の時(冷凍システムの使用温度範囲の中心温度)に抵抗値50kΩとなり、既定のB定数特性のサーミスタを使用するものとする。
【0024】
この時、冷媒配管20の上流部温度での分圧電圧V1は、直流電源電圧をVddとすると、第一の分圧抵抗23(抵抗値をR1とする)と上流部温度センサ21(サーミスタ抵抗値をRth1とする)との分圧比による(式1)となる。
【0025】
V1=(Rth1/(Rth1+R1))×Vdd (1)
ここで第一の分圧抵抗23を固定抵抗値50kΩとし(式1)に代入すると、V1=(50kΩ/(50kΩ+50kΩ))×5V=2.5Vとなる。
【0026】
次に、下流部温度での分圧電圧V2も同様に求めることができ、第二の分圧抵抗24(抵抗値をR2とする)と上流部温度センサ22(サーミスタ抵抗値をRth2とする)との分圧比の(式2)となる。
【0027】
V2=(Rth2/(Rth2+R2))×Vdd (2)
ここで差動増幅回路25に使用するオペアンプのオフセット電圧(一般に±10mV程度)を考慮する必要がある。すなわち+端子に入力されるV2と-端子に入力されるV1には、
図4に示すようなV2>V1、かつ(V2-V1)>オフセット電圧の関係が必要となる。更に、差動増幅回路25のオペアンプの出力電圧(Voutとする)を、全出力電圧範囲(0~5V)のフルスケールで十分精度よく使用するために、この温度差ΔT=0℃でのVoutを出力電圧範囲の中心2.5V付近に設定することが好ましい。
【0028】
次に、差動増幅回路25の増幅率をAとすると、差動増幅回路25には(式3)の関係がある。
【0029】
Vout=A×(V2-V1) (3)
今、増幅率Aを50倍に設定した場合の例で、Vout=2.5Vになる第二の分圧抵抗24の抵抗値R2を求めるため、(式3)を変形した(式4)に代入して、まずV2を求める。
【0030】
V2=Vout/A+V1 (4)
よって、V2=2.5V/50+2.5V=2.55Vとなる。
【0031】
最後に、R2を求める式を(式2)を変形して(式5)として、各数値を代入する。
【0032】
R2=Rth2×Vdd/V2-Rth2 (5)
よって、R2=50kΩ×5V/2.55V-50kΩ=48.039kΩとなる。
【0033】
従って、上述した例の場合、第一の分圧抵抗23を50kΩ、第二の分圧抵抗24を48.039kΩの固定抵抗値とすることで、
図5に示すような温度差ΔTが大きくなると出力電圧Voutも一次関数的に増加する(後段の制御装置26で処理が行い易い)特性を得ることができる。
【0034】
具体的には、絞り手段14が開状態で、例えばΔT=0.5℃だと乾き度が大きい(気相状態)と判断し、絞り手段14を閉方向に調整して、ΔT=0℃に近づけるように制御をかける。逆にΔT=0℃では完全液相状態の可能性があるので、例えばΔT<0.2℃だと絞り手段14を開方向にし、理想的な二相状態になるように調整を行う。
【0035】
更に、正常な状態ではV1<V2の関係であるが、システム異常等によりこの関係が崩れV1>V2になった場合でも、
図5に示すようにVoutが逆に減少方向に出力されるので、異常判定としても使用可能な温度差検知回路となる。
【0036】
尚、R2=48.039kΩという高精度な固定抵抗値は、現実的ではなく汎用品として入手可能な、48kΩを採用すると、Voutは2.551Vに若干変動するが、実使用においては問題のない程度のゼロ点シフトである。
【0037】
次に、この温度検知回路を使用温度範囲の上下限温度の環境下で、ゼロ点の温度差ΔT=0℃での出力電圧Voutを算出してみる。
図3で示すように、サーミスタは使用温度範囲での変化量はほぼ均一になるようにB定数が調整されており、ここでは1kΩ/℃の変化量があるものを使用し、中心温度24℃の50kΩを基準に(上述した結果でVout=2.551V)、上限温度32℃では42kΩ、下限温度では58kΩの抵抗値に変化するものとする。
【0038】
まず、上限温度32℃では、(式1)より、V1=42kΩ/((42kΩ+50kΩ))×5V=2.2826Vとなり、(式2)より、V2=42kΩ/((42kΩ+48kΩ))×5V=2.3333Vとなる。次にこれらの値を(式3)に代入すると、Vout=50×(2.3333V-2.2826V)=2.535Vになる。
【0039】
そして、同様にして下限温度16℃について求めると、Vout=2.530Vとなり、これらの結果は
図6に示したように、中心温度24℃で上に凸とした変曲点を持つ実線の特性上のポイントとなる。この時、使用温度範囲(16℃~32℃)におけるVoutの変動幅Cは、0.021V程度と非常に小さく温度変動による影響はなく、温度補正を考慮する必要はほとんどない。
【0040】
ここで温度影響を確認するために、第一の分圧抵抗23と第二の分圧抵抗24の抵抗値を、最適値(R1=50kΩ、R2=48kΩ)以外を選定した場合のVoutの変動を確認する。まず、抵抗値を最適値よりも小さな値で、24℃でのVoutが2.5V付近になることを考慮して選んだ例として、R1=5kΩ、R2=4.4kΩで上述と同様に求めると、上限温度32℃ではVout=2.89V、下限温度16℃ではVout=2.08Vとなる。これは、
図6に示す一点鎖線の特性上のポイントで、この間の変動幅Dは0.81Vとなり、温度補正を実施しないと使用不可能な特性である。次に、同様に最適値よりも大きな値を選んだ例として、R1=500kΩ、R2=445kΩで求めると、上限温度32℃ではVout=2.19V、下限温度16℃ではVout=2.84Vとなり、
図6に示す点線の特性で、変動幅Eは0.65Vと非常に大きくなる。
【0041】
まとめると、R1とR2が最適値よりも大きいと、上に凸の変曲点が左方向に大きく移動し、サーミスタ抵抗値と分圧抵抗値の分圧比が、最適値の時よりも温度影響を受けやすくなっているからである。また、最適値よりも小さいと逆に、上に凸の変曲点が右方向に大きく移動し、同様に温度影響を受けやすくなるからである。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては、冷凍システム10のドライヤ13とキャピラリチューブ15に直列接続される絞り手段14との間に冷媒配管20を設けて、細径管である冷媒配管20の内部微小抵抗を利用した出入口温度差ΔTの結果で、乾き度を推定して最大効率に調整する制御において、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22をサーミスタとし、各分圧電圧の差分を差動増幅回路25で増幅し、アナログ電圧として後段の制御装置26へ出力することにより、乾き度をリアルタイムに高精度で検知できるので、絞り手段14による冷媒流量の最適制御が高速で可能となり、この冷凍システム10を搭載する冷蔵庫の省エネルギー性を優れたものとすることができる。
【0043】
また、上流部温度を分圧電圧に変換する第一の分圧抵抗23と、下流部温度を分圧電圧に変換する第二の分圧抵抗24を、差動増幅回路25のオペアンプが持つオフセット電圧を考慮した抵抗値にそれぞれ設定し、(分圧電圧V2-分圧電圧V1)>オフセット電圧にすることにより、分圧電圧間の差分電圧がオフセット電圧によりかき消されないので、微小な電圧差すなわち温度差ΔTを更に高精度に検知できる。
【0044】
また、第一の分圧抵抗23と第二の分圧抵抗24の抵抗値を、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22として使用するサーミスタの使用温度範囲において、下流部温度センサ22側の分圧電圧V2が、必ず上流部温度センサ21側の分圧電圧V1よりも大きくなるように設定したことにより、温度差ΔTに対する出力電圧Voutを正方向の増加として検知できるので、乾き度を推定する制御装置26での処理を容易にすることができる。
【0045】
また、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22で検知する温度差ΔTがゼロの時(ΔT=0℃)に、差動増幅回路25の出力電圧Voutが全出力電圧範囲の中心値となるように、第一の分圧抵抗23と第二の分圧抵抗24の抵抗値を設定したことにより、下流部温度<上流部温度となるシステム異常の温度差ΔTを、出力電圧Voutを負方向の減少として出力できるので、システム異常を検知することができる。
【0046】
また、上流部温度センサ21と下流部温度センサ22で検知する温度差ΔTがゼロの時(ΔT=0℃)に、使用温度範囲の中心温度で、差動増幅回路25の出力電圧Voutが上に凸の変曲点を持つように、第一の分圧抵抗23と第二の分圧抵抗24の抵抗値を設定したことにより、温度センサであるサーミスタの温度特性による出力電圧の変動幅が最小になるので、後段の制御装置26で温度補正を行う複雑な演算処理が簡素化でき、高速で精度の良い検知が可能になる。更に、この温度検知回路を用いた冷凍システム10を搭載した冷蔵庫も、設置環境の温度変動に対して柔軟で、省エネルギー性の高いものとすることができる。
【0047】
尚、実施の形態では、細径管である冷媒配管20の出入口の温度差ΔTを本温度検知回路で検知し、乾き度を推定して絞り手段14による最適制御を説明したが、例えば蒸発器16の出入口の温度差を同様に検知して着霜量推定による最適除霜制御や、空調機器であれば加熱度を推定した膨張弁による制御に用いることも可能である。
【0048】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫を例にして示した冷凍サイクル装置は、少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクルの、前記凝縮器と前記絞り手段との間の冷媒配管の温度を検知する上流部温度センサと下流部温度センサを備え、前記各温度センサはサーミスタとして分圧抵抗と直列接続で直流電源に接続し、前記上流部温度センサ側の分圧電圧を差動増幅回路の-端子に入力し、前記下流部温度センサ側の分圧電圧を前記差動増幅回路の+端子に入力したことにより、冷媒の流速や脈動で刻々と変化する冷媒配管の上流部と下流部の温度差をリアルタイムに検知することができる。したがって、上記冷媒配管の上流部と下流部の温度差により乾き度を推定して、絞り手段で冷媒流量を高速に精度よく行うことができる。また、後述するように、分圧抵抗の抵抗値で決定される差動増幅回路への分圧電圧の初期値を調整することで、回路誤差やセンサ温度特性影響を排除することができる。
【0049】
また、前記上流部温度センサに接続される第一の分圧抵抗と、前記下流部温度センサに接続される第二の分圧抵抗の抵抗値を、前記差動増幅回路のオフセット電圧影響を排除するように設定したことにより、差動増幅回路の+端子と-端子に入力される分圧電圧の差が小さな場合でも、確実に温度差として出力されるので、冷媒流量の調整を最大限に行うことができる。
【0050】
また、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を、使用温度範囲のサーミスタRT特性において、前記下流部温度センサ側の分圧電圧が、必ず前記上流部温度センサ側の分圧電圧よりも大きくなるように設定したことにより、下流部温度>上流部温度となる温度差を正方向の増加として出力できるので、温度差と出力電圧の関係を明確に判断することができる。
【0051】
また、前記上流部温度センサと前記下流部温度センサで検知する温度差がゼロの時に、前記差動増幅回路の出力電圧が全出力電圧範囲の中心値となるように、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を設定したことにより、下流部温度<上流部温度となるシステム異常の温度差も負方向の減少として出力できるので、システム異常を検知することができる。
【0052】
また、前記上流部温度センサと前記下流部温度センサで検知する温度差がゼロの時に、冷蔵庫使用温度範囲の中心温度で、前記差動増幅回路の出力電圧が上に凸の変曲点を持つように、前記第一の分圧抵抗と前記第二の分圧抵抗の抵抗値を設定したことにより、温度センサであるサーミスタの温度特性による出力電圧の変動幅が最小になり、後段での複雑なソフト演算処理が簡素化され、高速で精度の良い検知が可能になる。
【0053】
なお、上記実施の形態では冷凍サイクル装置の一例として冷蔵庫を例示したが、これに限定されるものではない。
【0054】
以上、本開示の冷凍サイクル装置についてその一実施の形態を説明したが、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示にかかる冷凍サイクル装置は、微小な温度差を検知して乾き度を推定し制御する冷凍サイクル装置、例えば、家庭用又は業務用冷蔵庫はもちろん、冷凍サイクルを搭載する空調機器や厨房機器などに適用できる。
【符号の説明】
【0056】
10 冷凍システム
11 圧縮機
12 凝縮器
13 ドライヤ
14 絞り手段
15 キャピラリチューブ
16 蒸発器
17 アキュームレータ
18 吸入管
19 内部熱交換部
20 冷媒配管(細径管)
21 上流部温度センサ
22 下流部温度センサ
23 第一の分圧抵抗
24 第二の分圧抵抗
25 差動増幅回路
26 制御装置
27 駆動装置