(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
D06F 58/38 20200101AFI20240209BHJP
D06F 58/00 20200101ALI20240209BHJP
【FI】
D06F58/38
D06F58/00 Z
(21)【出願番号】P 2019228734
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 真弓
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/113284(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155291(WO,A1)
【文献】特開2017-104384(JP,A)
【文献】特開2013-057474(JP,A)
【文献】特開2011-144776(JP,A)
【文献】特開2005-348861(JP,A)
【文献】特開2009-186133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/38
D06F 58/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間の温度を検知する温度検知部と、
前記所定の空間の湿度を検知する湿度検知部と、
前記所定の空間内の対象物の水分量を算出する水分量算出部と、
前記対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記温度と前記湿度と前記水分量と前記距離とをもとに、前記水分量算出部における算出の時点から所定時間後までの対象物の水分量の推移を予測する水分量予測部と、
前記水分量予測部において予測した水分量の推移をもとに、乾燥終了時間を予測する乾燥予測部と、
前記乾燥予測部において予測した乾燥終了時間に応じて、吹出口から風を送風させる送風制御部と、を備え、
前記水分量算出部は、
検出範囲を分割した複数の単位領域のそれぞれに対して水分量を算出し、
前記水分量予測部は、
単位領域毎の距離と単位領域毎の水分量をもとに、2つ以上の単位領域をグループとしてまとめる領域分割部を備え、
前記領域分割部は、
前記単位領域毎の距離と前記単位領域毎の水分量の類似度をもとに、類似した素材である2つ以上の単位領域をグループとしてまとめ、
前記水分量予測部は、
前記領域分割部によりまとめられたグループに含まれた2つ以上の単位領域における水分量をもとにグループに対する水分量を導出し、
前記グループに対する水分量の一定期間の時系列データと、前記温度検知部により検知された温度、前記湿度検知部により検知された湿度の一定長の時系列データとを受けつけ、前記グループに対する水分量の将来の一定期間の時系列データを出力する水分量予測モデルを機械学習により作成する学習部と、
前記学習部によって作成された前記水分量予測モデルを使って将来の前記グループに対する水分量の推移を予測する予測実行部と、を備える送風装置。
【請求項2】
前記送風制御部は、前記乾燥予測部において予測された乾燥終了時間の遅い単位領域を
向くように風向を制御する請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記送風制御部は、前記乾燥予測部において予測された乾燥終了時間をもとに送風量を制御する請求項1
または2に記載の送風装置。
【請求項4】
人感センサをさらに備え、
前記送風制御部は、前記人感センサにおいて人を検知した場合に送風を停止する請求項1から
3のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
吸込口から前記吹出口への通風経路に配置される加熱部をさらに備える請求項1から
4のいずれか1項に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の乾燥に使用される送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室内や室内のカビの発生を防止するための送風装置として、浴室暖房乾燥機が知られている。カビの繁殖を抑制するために壁面に付着した水滴を除去する工程が必要であるが、送風制御によって水分を完全に除去するには長時間運転する必要があり、また室内に充満する高湿度空気によって壁面の水滴が生じるなど、壁面を乾燥させるために多くのエネルギーを要する。この種の送風装置の制御装置については、特許文献1にあるように、温度と湿度と測定時間間隔からなるカビ指標値のテーブルを用いてカビがどの程度繁殖しているかを判定するカビ判定方法を用いたカビ判定手段を用いて乾燥運転を最適制御する方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような送風装置における乾燥運転制御方法では、初期から存在する水滴の量や壁面の結露による水滴の発生を検知することができず、壁面の一部に水滴が残ったままであるにもかかわらずカビが発生しないと判断して乾燥運転を停止する。カビは水分の存在する場所から発生するため、周囲の温度と湿度と測定時間間隔からカビの発生を正確に判定することは困難であり、対象物の乾燥終了時間の予測精度の向上が求められる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、対象物の乾燥終了時間の予測精度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の送風装置は、所定の空間の温度を検知する温度検知部と、所定の空間の湿度を検知する湿度検知部と、所定の空間内の対象物の水分量を算出する水分量算出部と、対象物までの距離を算出する距離算出部と、温度と湿度と水分量と距離とをもとに、水分量算出部における算出の時点から所定時間後までの対象物の水分量の推移を予測する水分量予測部と、水分量予測部において予測した水分量の推移をもとに、乾燥終了時間を予測する乾燥予測部と、乾燥予測部において予測した乾燥終了時間に応じて、吹出口から風を送風させる送風制御部と、を備え、水分量算出部は、検出範囲を分割した複数の単位領域のそれぞれに対して水分量を算出し、水分量予測部は、単位領域毎の距離と単位領域毎の水分量をもとに、2つ以上の単位領域をグループとしてまとめる領域分割部を備え、領域分割部は、前記単位領域毎の距離と前記単位領域毎の水分量の類似度をもとに、類似した素材である2つ以上の単位領域をグループとしてまとめ、水分量予測部は、領域分割部によりまとめられたグループに含まれた2つ以上の単位領域における水分量をもとにグループに対する水分量を導出し、グループに対する水分量の一定期間の時系列データと、温度検知部により検知された温度、湿度検知部により検知された湿度の一定長の時系列データとを受けつけ、グループに対する水分量の将来の一定期間の時系列データを出力する水分量予測モデルを機械学習により作成する学習部と、学習部によって作成された水分量予測モデルを使って将来のグループに対する水分量の推移を予測する予測実行部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象物の乾燥終了時間の予測精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係る浴室乾燥機の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の浴室乾燥機の発光部と受光部の構成と対象物とを示す模式図である。
【
図3】
図1の浴室乾燥機の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】水分と水蒸気との吸光スペクトルを示す図である。
【
図5】
図1の浴室乾燥機の検出範囲と単位領域を示す模式図である。
【
図6】
図1の浴室乾燥機の発光部と受光部の走査方向を示す模式図である。
【
図7】
図1の浴室乾燥機の水分量分布のテーブルを示す図である。
【
図8】
図1の浴室乾燥機の水分量算出のフローチャートである。
【
図9】
図1の浴室乾燥機の距離分布のテーブルを示す図である。
【
図10】
図3の水分量予測部の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図3の水分量予測部と乾燥予測部による処理概要を示す図である。
【
図13】
図3の乾燥予測部の処理結果を示す図である。
【
図14】
図1の浴室乾燥機による予測手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施例に係る送風装置について、図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0011】
図1は、浴室乾燥機91の概略構成を示す断面図である。浴室乾燥機91は、送風装置の一例であり、浴室内における浴室乾燥に使用される。浴室乾燥機91は、浴室内における衣類乾燥に使用されてもよい。ここで、浴室は、対象物100として示され、対象物100は、床101と、壁102と総称される第1壁102a、第2壁102bを含む。第1壁102aと第2壁102bは対向して配置される。対象物100には、第1壁102a、第2壁102bとの間において対向して配置される第3壁102c(図示せず)、第4壁102d(図示せず)も含まれる。浴室乾燥機91は、本体ケース92と、送風部93と、加熱部95と、風向制御部96と、換気部97と、制御部5と、表示部6と、水分量検知部9とを備える。
【0012】
本体ケース92は、浴室乾燥機91の外装を構成する。本体ケース92には、浴室の空気を浴室乾燥機91内に吸込むための吸込口10と、吸込口10から吸込んだ空気を本体ケース92の外部へ吹出すための吹出口11が設けられている。吸込口10と吹出口11は本体ケース92の下方に設けられる。加熱部95は、吸込口10と吹出口11とを結ぶ送風経路に設けられており、吸込口10より吸い込んだ空気を加熱する。送風部93は、送風経路に設けられ、吸込口10から吹出口11へと空気を循環させる。風向制御部96は、吹出口から送風される風の風向を変化させる。換気部97は、浴室を換気する。浴室乾燥機91は、浴室または衣類を乾燥させることを目的として加熱量、送風量、風向等を制御する乾燥モードを有する。
【0013】
浴室乾燥あるいは衣類乾燥等の乾燥モードにおいて、乾燥させる対象物100の材質、位置、大きさ等が異なるので、浴室乾燥機91は、適切に乾燥状態を検知し、運転を制御する必要がある。そこで、浴室乾燥機91は、乾燥させる対象物100の水分量を検知する水分量検知部9を備える。水分量検知部9は発光部7と受光部8とを有しており、発光部7は、対象物100に向かって発光し、受光部8は、対象物100で反射された光を受光する。
【0014】
制御部5は、光源制御部51(
図3参照)と、水分量算出部56(
図3参照)と、を備える。光源制御部51は、発光部7より照射される光を制御する。水分量算出部56は、受光部8によって受光された光を検知し、水分量を算出する。ここで、水分量算出部56は、受光部8で受光される波長の異なる2つの光の強度を比較することによって、対象物100の水分量を算出する。詳細については後述する。制御部5は、算出された水分量に応じて、浴室乾燥機91の加熱量、送風量、風向等を制御する。
【0015】
制御部5は、少なくとも1つのマイクロコントローラで構成され、浴室乾燥機91の統括的な動作プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0016】
以下では、浴室乾燥機91の構成を、(1)水分量の算出、(2)距離、温度、湿度の取得、(3)水分量の推移の予測、(4)乾燥終了時間の予測、(5)送風の制御、(6)乾燥終了時間の表示の順に説明する。
【0017】
(1)水分量の算出
図2は、浴室乾燥機91の発光部7と受光部8の構成と対象物とを示す模式図である。
図3は、浴室乾燥機91の制御構成を示すブロック図である。本実施例では、
図2に示すように、発光部7は、空間を隔てて存在する対象物100に向けて光を照射する。発光部7から照射された光は、対象物100で反射される。反射された光である反射光RA1は、受光部8で検出される。受光部8で検出された反射光RA1に基づいて、
図3に示す水分量算出部56で対象物100に含まれる水分量が算出される。対象物100に含まれる水分量とは、対象物100上に溜まった水分と、対象物100の表面部分に浸透した水分のことである。
【0018】
発光部7は、水に吸収される波長の光である第一波長帯を含む検知光と、第一波長帯よりも水による吸収が小さい波長の光である第二波長帯を含む参照光とを対象物100に向けて発する。具体的には、発光部7は、投光レンズ21と、光源22とを備える。投光レンズ21は、光源22が発した光を、対象物100に対して集光する集光レンズである。投光レンズ21は、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。光源22は、検知光をなす第一波長帯と参照光をなす第二波長帯とを含み、ピーク波長が第二波長帯側にある連続した光を発するLED(Light Emitting Diode)光源である。具体的には、光源22は、化合物半導体からなるLED光源である。
【0019】
図4は、水分と水蒸気との吸光スペクトルを示す。
図4に示すように、水分は、約1450nmおよび約1940nmの波長に吸収ピークを有する。水蒸気は、水分の吸収ピークよりやや低い波長、具体的には約1350nm~1400nmおよび約1800nm~1900nmの波長に吸収ピークを有する。このため、検知光をなす第一波長帯としては、水の吸光度が高い波長帯を選択し、参照光をなす第二波長帯としては、第一波長帯よりも水の吸光度が小さい波長帯を選択する。
【0020】
一例としては、第二波長帯の平均波長は、第一波長帯の平均波長よりも長くする。また、光学的なバンドパスフィルタの最大透過率の半値である波長の中心値で定義される中心波長に関して、例えば第一波長帯の中心波長は1450nmとし、第二波長帯の中心波長は1700nmとする。光源22は、第一波長帯と第二波長帯とを連続して含む光を照射するので、対象物100には、水による吸収が大きな第一波長帯を含む検知光と、水による吸収が第一波長帯よりも小さい第二波長帯を含む参照光が照射される。
【0021】
図2の受光部8は、発光部7から照射され対象物100で反射された反射光RA1を受光する。つまり、受光部8は、発光部7から照射され、対象物100で反射された検知光と参照光を受光する。受光部8は、受光レンズ71と、ハーフミラー34と、第一受光素子73と、第二受光素子43と、第一バンドパスフィルタ72と、第二バンドパスフィルタ42とを有する。反射光RA1は、受光レンズ71によって集光され、ハーフミラー34によって第一光路LR01を通る光と第二光路LR02を通る光に分割される。
【0022】
受光レンズ71は、対象物100によって反射された反射光RA1を第一受光素子73および第二受光素子43に集光するための集光レンズである。受光レンズ71は、例えば、焦点が第一受光素子73の受光面に位置するように受光部8に固定されている。受光レンズ71は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。
【0023】
ハーフミラー34は、例えば、受光レンズ71と第一受光素子73の間に配置され、受光レンズ71によって集光された光のうち半分を透過し、残りを反射する。ハーフミラー34を透過した光の光路である第一光路LR01の先には、第一バンドパスフィルタ72と、第一受光素子73とが設けられている。
【0024】
第一バンドパスフィルタ72は、反射光RA1から検知光である第一波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。具体的には、第一バンドパスフィルタ72は、ハーフミラー34と、第一受光素子73との間に配置されており、ハーフミラー34を透過して第一受光素子73に入射する反射光RA1の光路上に設けられている。第一バンドパスフィルタ72は、第一波長帯の光を透過するとともに、それ以外の波長帯の光を反射または吸収する。
【0025】
第一受光素子73は、対象物100によって反射され、ハーフミラー34を透過し、第一バンドパスフィルタ72を透過した第一波長帯の光を受光し、第一電気信号に変換する受光素子である。第一受光素子73は、受光した第一波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第一電気信号を生成する。生成された第一電気信号は、制御部5に出力される。第一受光素子73は、例えば、フォトダイオードであるが、これに限定されない。例えば、第一受光素子73は、フォトトランジスタ、または、イメージセンサでもよい。
【0026】
第二バンドパスフィルタ42は、ハーフミラー34で反射された光から参照光である第二波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。具体的には、第二バンドパスフィルタ42は、ハーフミラー34と、第二受光素子43との間に配置されており、ハーフミラー34を反射して第二受光素子43に入射する光の光路上に設けられている。第二バンドパスフィルタ42は、第二波長帯の光を透過し、かつ、それ以外の波長帯の光を反射または吸収する。
【0027】
第二受光素子43は、対象物100によって反射され、第二バンドパスフィルタ42を透過した第二波長帯の光を受光し、第二電気信号に変換する受光素子である。第二受光素子43は、受光した第二波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第二電気信号を生成する。生成された第二電気信号は、制御部5に出力される。第二受光素子43は、第一受光素子73と同形の受光素子である。つまり、第一受光素子73がフォトダイオードである場合には、第二受光素子43もフォトダイオードである。
【0028】
図3の制御部5は、光源制御部51と、第一増幅部52と、第二増幅部53と、第一信号処理部54と、第二信号処理部55と、水分量算出部56と、送風制御部57と、距離算出部58と、水分量予測部60と、乾燥予測部62と、を備える。制御部5は、本体ケース92に収容されていてもよく、本体ケース92の外側面に取り付けられていてもよい。あるいは、制御部5は、複数に分かれていてもよい。
【0029】
光源制御部51は、発光部7の光源22の点灯を制御する。光源制御部51は、駆動回路およびマイクロコントローラで構成される。光源制御部51は、光源22の制御プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。光源制御部51は、光源22の点灯および消灯が所定の発光周期で繰り返されるように、光源22を制御する。具体的には、光源制御部51は、所定の周波数(例えば、1kHz)のパルス信号を光源22に出力することで、光源22を所定の発光周期で点灯および消灯させる。
【0030】
制御部5は、第一受光素子73からの第一電気信号と第二受光素子43からの第二電気信号とを受信する。第一増幅部52は、第一受光素子73が出力した第一電気信号を増幅して第一信号処理部54に出力する。具体的には、第一増幅部52は、第一電気信号を増幅するオペアンプである。第一信号処理部54は、マイクロコントローラで構成される。第一信号処理部54は、第一電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第一信号処理部54は、第一電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第一電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、第一電気信号に発生する外乱光に基づくノイズを抑制する。
【0031】
第二増幅部53は、第二受光素子43が出力した第二電気信号を増幅して第二信号処理部55に出力する。具体的には、第二増幅部53は、第二電気信号を増幅するオペアンプである。第二信号処理部55は、マイクロコントローラで構成される。第二信号処理部55は、第二電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第二信号処理部55は、第二電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第二電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、第二電気信号に発生する外乱光に基づくノイズを抑制する。
【0032】
水分量算出部56は、第一受光素子73から出力された第一電気信号と、第二受光素子43から出力された第二電気信号とに基づいて、対象物100が含む水分を検出する。具体的には、水分量算出部56は、第一電気信号の電圧レベルと第二電気信号の電圧レベルとの比(信号比)に基づいて、対象物100の水分量を算出する。ここでは、水分量算出部56における水分量の算出処理をさらに詳細に説明する。水分量算出部56は、反射光RA1に含まれる検知光の光エネルギーPdと、参照光の光エネルギーPrとを比較することで、対象物100に含まれる水分量を検出する。検知光の光エネルギーPdは、第一受光素子73から出力される第一電気信号の強度に対応し、参照光の光エネルギーPrは、第二受光素子43から出力される第二電気信号の強度に対応する。
【0033】
光エネルギーPdは、次の(式1)で表される。
Pd=Pd0×Gd×Rd×Td×Aad×Ivd (式1)
ここで、Pd0は、光源22が発した光のうち、検知光をなす第一波長帯の光の光エネルギーである。Gdは、第一波長帯の光の第一受光素子73に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Gdは、光源22が発した光のうち、対象物100で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる検知光)になる部分の割合に相当する。
【0034】
Rdは、対象物100による検知光の反射率である。Tdは、第一バンドパスフィルタ72による検知光の透過率である。Ivdは、第一受光素子73における反射光RA1に含まれる検知光に対する受光感度である。Aadは、対象物100に含まれる成分(水分)による検知光の吸収率であり、次の(式2)で表される。
Aad=10-αa×Ca×D (式2)
ここで、αaは、予め定められた吸光係数であり、具体的には、成分(水分)による検知光の吸光係数である。Caは、対象物100に含まれる成分(水分)の体積濃度である。Dは、検知光の吸収に寄与する成分の厚みの2倍である寄与厚みである。
【0035】
より具体的には、水分が均質に分散した対象物100では、光が対象物100に入射し、反射して対象物100から出射する場合において、Caは、対象物100の成分に含まれる体積濃度に相当する。また、Dは、反射して対象物100から出射するまでの光路長に相当する。例えば、Caは、対象物100を覆っている液相に含まれる水分の濃度である。また、Dは、対象物100を覆っている液相の平均的な厚みとして換算される寄与厚みである。したがって、αa×Ca×Dは、対象物100に含まれる成分量(水分量)に相当する。以上のことから、対象物100に含まれる水分量に応じて、第一電気信号の強度に相当する光エネルギーPdが変化することが分かる。水分と比べて湿気の吸光度は極端に小さいので、無視することができる。
【0036】
同様に、第二受光素子43に入射する参照光の光エネルギーPrは、次の(式3)で表される。
Pr=Pr0×Gr×Rr×Tr×Ivr (式3)
本実施例では、参照光は、対象物100に含まれる成分によって実質的には吸収されないとみなすことができるので、(式1)と比較して分かるように、水分による吸収率Aadに相当する項は(式3)には含まれていない。
【0037】
(式3)において、Pr0は、光源22が発した光のうち、参照光をなす第二波長帯の光の光エネルギーである。Grは、光源22が発した参照光の第二受光素子43に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Grは、参照光のうち、対象物100で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる参照光)になる部分の割合に相当する。Rrは、対象物による参照光の反射率である。Trは、第二バンドパスフィルタ42による参照光の透過率である。Ivrは、第二受光素子43の反射光に対する受光感度である。
【0038】
本実施例では、光源22から照射される光、つまり、検知光と参照光とは、同軸かつ同スポットサイズで照射されるため、検知光の結合効率Gdと参照光の結合効率Grとは略等しくなる。また、検知光と参照光とはピーク波長が比較的近いので、検知光の反射率Rdと参照光の反射率Rrとが略等しくなる。
【0039】
したがって、(式1)と(式3)との比(信号比)を取ることにより、次の(式4)が導き出される。
Pd/Pr=Z×Aad (式4)
ここで、Zは、定数項であり、(式5)で示される。
Z=(Pd0/Pr0)×(Td/Tr)×(Ivd/Ivr) (式5)
光エネルギーPd0およびPr0はそれぞれ、光源22の初期出力として予め定められている。また、透過率Tdおよび透過率Trはそれぞれ、第一バンドパスフィルタ72および第二バンドパスフィルタ42の透過特性により予め定められている。受光感度Ivdおよび受光感度Ivrはそれぞれ、第一受光素子73および第二受光素子43の受光特性により予め定められている。したがって、(式5)で示されるZは、定数とみなすことができる。
【0040】
水分量算出部56は、第一電気信号に基づいて検知光の光エネルギーPdを算出し、第二電気信号に基づいて参照光の光エネルギーPrを算出する。具体的には、第一電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPdに相当し、第二電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPrに相当する。したがって、水分量算出部56は、(式4)に基づいて、対象物に含まれる水分の吸収率Aadを算出することができる。これにより、水分量算出部56は、(式2)に基づいて水分量を算出することができる。空間には湿気(水蒸気)も存在しているが、水蒸気によって検知光および参照光が吸収される場合も想定される。この水蒸気による吸収分をキャンセルするように第一電気信号および第二電気信号を補正する補正部を制御部5に設けてもよい。
【0041】
このような処理は、
図5に示す単位領域R毎になされる。
図5は、浴室乾燥機91の検出範囲と単位領域を示す模式図である。検出範囲Aは、受光部8の受光範囲と同等または広い範囲であり、浴室乾燥機91によって除湿された風が送風される範囲と同等または広く設定されていることが好ましい。また、単位領域Rは、受光部8によって個別に光の検出が行われる領域である。単位領域Rは検出範囲Aと同等サイズでもよいし、検出範囲Aよりも小さいサイズでもよい。後者において、検出範囲Aは複数の単位領域Rに分割される。例えば、単位領域Rは検出範囲Aを縦方向に6分割し、横方向に6分割したサイズである。単位領域RのS11~S66毎に検出を行う方法として、例えば、第一受光素子73と第二受光素子43にイメージセンサを採用してもよい。
【0042】
図6は、浴室乾燥機91の発光部7と受光部8の走査方向を示す模式図である。また、他の方法として
図6のように発光部7の照射領域を走査させながら光を照射すると同時に受光部8の受光領域も走査させて、各領域の反射光RA1を受光する方法を採用してもよい。走査方法としては、例えば発光部7と受光部8を固定した台座を2つのステッピングモータ(図示せず)を用いて直交する2軸に回転可能に配置する方法がある。一方のステッピングモータは、
図6の主走査方向に照射領域を走査できる角度に配置し、もう一方のステッピングモータは、
図6の副走査方向に照射領域を走査できる角度に配置する。
図5および
図6では、一行あたり等間隔で6箇所検出し、一列あたり等間隔で6箇所検出する場合を例示している。
【0043】
図7は、浴室乾燥機91の水分量分布のテーブルを示す。水分量算出部56は、検出動作が終了したとき、単位領域R毎の水分量の算出結果を
図7のようなテーブルTに一時的に記録する。「T11」は、単位領域「R11」において算出された水分量を示す。以下では、説明を明瞭にするために、単位領域「R11」を単位領域「T11」と示すこともある。つまり、「T11」は、単位領域を示すこともあれば、水分量を示すこともある。「T12」等についても同様である。テーブルTの情報は、単位領域R毎に個別に判断してもよいし、平均化して1つまたは少数の情報に加工してもよい。
【0044】
図8は、浴室乾燥機91の水分量算出のフローチャートである。ここで、単位領域Rのn行、6列における位置を、Sn6と定義する(n=1~6)。つまり、S11は、単位領域Rの1行、1列における位置のことである。先ず、発光部7の照射領域と受光部8の受光領域とを
図6のS11に移動する(n=1)。次に各領域(照射領域と受光領域)の指定位置をSn6に設定する(Step1)。ステッピングモータを駆動し、台座を
図6の主走査方向と平行に移動させ、照射領域と受光領域をSn6に位置させる(Step2)。これと同時に照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置するかどうかを判定する。単位領域Rの中心に位置しているかどうかの判定は、例えばステッピングモータの駆動ステップ数から算出する。照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置していない場合、Step2に戻りステッピングモータの駆動を続ける。照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置していた場合、受光強度を取得し、強度の比すなわち水分量を算出しテーブルTに格納する。その後現在位置する単位領域Rが指定位置であるSn6かどうかの判定を行う(Step3)。現在位置する単位領域RがSn6でなければ、Step2に戻りステッピングモータの駆動を続ける。ここで、現在位置する単位領域RがSn6であればステッピングモータの駆動を停止させる(Step4)。その後、nに1を足して、
図6の副走査方向と平行にSn6に向かって照射領域と受光領域を動かす。
【0045】
次に指定位置をSn1に設定する(Step5)。照射領域と受光領域を、
図6の主走査方向と平行にStep2とは逆方向に移動させ、指定位置であるSn1に位置するようにステッピングモータを駆動させる(Step6)。同時に照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置するかどうかを判定する。単位領域Rの中心に位置しているかどうかの判定は、例えばステッピングモータの駆動ステップ数から算出する。照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置していない場合、Step6に戻りステッピングモータの駆動を続ける。照射領域と受光領域が単位領域Rの中心に位置していた場合、受光強度を取得し、強度の比すなわち水分量を算出しテーブルTに格納する。
【0046】
次に、現在位置する単位領域Rが指定位置であるSn1かどうかの判定を行う(Step7)。現在位置する単位領域RがSn1でなければ、Step6に戻りステッピングモータの駆動を続ける。ここで、現在位置する単位領域RがSn1であればステッピングモータの駆動を停止させる(Step8)。ここでnが6でなければ、nに1を足して指定位置Sn1に向かって
図6の副走査方向と平行に照射領域と受光領域を動かす(Step9)。以後Step1に戻り、動作を繰り返す。nが6であれば、検出動作を終了する。
図3に戻る。
【0047】
水分量算出部56は、算出した水分量を
図7のテーブルとして水分量予測部60に出力する。このような水分量算出部56は、例えば、マイクロコントローラである。水分量算出部56は、信号処理プログラムが格納された不揮発性メモリと、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリと、入出力ポートと、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0048】
(2)距離、温度、湿度の取得
温度検知部80は、所定の空間、つまり浴室の温度を検知する。温度検知部80は、検知した温度を水分量予測部60に出力する。湿度検知部82は、浴室の湿度を検知する。湿度検知部82は、検知した湿度を水分量予測部60に出力する。温度の検知と湿度の検知には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0049】
距離算出部58は、浴室の床101、壁102等までの距離を算出する。具体的に説明すると、距離算出部58は、第二信号処理部55からの第二電気信号を受けつけ、第二電気信号に対して三角測距法を実行することによって距離を算出する。三角測距法は、例えば、特開2017-161424号公報のようになされればよいので、ここでは説明を省略するが、距離を算出するために、公知の測距センサが使用されてもよい。ここで、距離算出部58は、水分量予測部60と同様に単位領域R毎に距離を算出する。
【0050】
図9は、浴室乾燥機91の距離分布のテーブルを示す。距離算出部58は、算出動作が終了したとき、水分量予測部60と同様に、単位領域R毎の距離の算出結果を
図9のようなテーブルHに一時的に記録する。「H11」は、単位領域「R11」において算出された水分量を示す。以下では、説明を明瞭にするために、単位領域「R11」を単位領域「H11」と示すこともある。つまり、「H11」は、単位領域を示すこともあれば、水分量を示すこともある。「H12」等についても同様である。テーブルHの情報は、単位領域R毎に個別に判断してもよいし、平均化して1つまたは少数の情報に加工してもよい。
図3に戻る。
【0051】
(3)水分量の推移の予測
水分量予測部60は、単位領域R毎の水分量を水分量算出部56から受けつけ、単位領域R毎の距離を距離算出部58から受けつける。また、水分量予測部60は、浴室の温度を温度検知部80から受けつけ、浴室の湿度を湿度検知部82から受けつける。水分量予測部60は、温度と湿度と水分量と距離とをもとに、水分量算出部56における算出の時点から所定時間後までの対象物100の水分量の推移を予測する。
【0052】
図10は、水分量予測部60の構成を示すブロック図である。水分量予測部60は、領域分割部200、特徴量記憶部202、学習部204、予測実行部206、予測結果記憶部208を含む。領域分割部200は、単位領域R毎の距離と単位領域R毎の水分量をもとに、2つ以上の単位領域をグループとしてまとめる。例えば、領域分割部200は、距離と水分量の類似度(相関行列等)をもとに、類似度がしきい値よりも小さい2つ以上の単位領域をグループとしてまとめる。距離と水分量の類似度は、例えば、任意の1つの単位領域(以下、「第1単位領域」という)における距離と水分量とをそれぞれ「A1」、「B1」とし、別の1つの単位領域(以下、「第2単位領域」という)における距離と水分量とをそれぞれ「A2」、「B2」とする場合、次のように示される。
類似度=C*|A1-A2|+D*|B1-B2|
ここで、「C」と「D」は任意の定数である。また、「+」が「×」であってもよい。
【0053】
その結果、
図7のT22からT25、T32からT35、T42からT45、T52からT55が
図1の床101としてまとめられる。また、
図7のT11、T21、T31、T41、T51、T61が
図1の第1壁102aとしてまとめられ、
図7のT16、T26、T36、T46、T56、T66が
図1の第2壁102bとしてまとめられる。さらに、
図7のT12からT15が第3壁102cとしてまとめられ、
図7のT62からT65が第4壁102dとしてまとめられる。つまり、壁102(四面)、ドア、浴槽、床101等の素材が異なるパーツ毎にまとめられる。領域分割部200は、グループの情報を学習部204に出力する。特徴量記憶部202は、水分量、温度、湿度、つまり実測データを記憶する。特徴量記憶部202は、水分量、温度、湿度を学習部204、予測実行部206に出力する。
【0054】
ここで、水分量予測部60は、グループ毎に機械学習を実行する。
図11(a)-(c)は、水分量予測部60による処理概要を示す。
図11(a)は、水分量予測部60における機械学習の処理手順を示し、一例として畳み込みニューラルネットワークを示す。畳み込みニューラルネットワークでは、入力層300、第1畳み込み層302a、第1プーリング層304a、第2畳み込み層302b、第2プーリング層304b、全結合層306が順に実行される。第1畳み込み層302a、第2畳み込み層302bは、畳み込み層302と総称され、第1プーリング層304a、第2プーリング層304bは、プーリング層304と総称される。畳み込み層302の数、プーリング層304の数、およびそれぞれの処理の組み合わせ方はこれに限定するものではない。また、畳み込み層302とプーリング層304がペアでなくてもよく、畳み込み層302が連続して配置されてもよく、活性化関数が挿入されてもよい。
【0055】
図11(b)は、畳み込みニューラルネットワークにおいて使用されるデータを示す。現在時刻を「T1」とする場合に、学習部204は、T1を起点にした過去の時系列データ(X1)とT1以降の時系列データ(Y1)を学習させる。X1は、「-n1+1~0」の時刻のデータを含み、Y1は、「1~n3」の時刻のデータを含む。また、現在時刻を「T1」から「T2」にずらせた場合に、T2を起点にした過去の時系列データ(X2)とT2以降の時系列データ(Y2)を学習させる。
【0056】
図11(c)は、入力層300に入力されるデータを示す。入力層300は、特徴量記憶部202からの水分量、温度、湿度を学習用入力データとして受けつける。学習用入力データは、例えば、
図11(b)の時系列データ(X1)に相当し、水分量、温度、湿度の3つの成分に対してn1時刻分のデータを含むので、3×n1行列で示される。前述のごとく、水分量予測部60は、グループ毎に機械学習を実行するので、例えば、床101に対する学習用入力データには、床101の水分量、浴室の温度、浴室の湿度が含まれる。ここで、水分量は単位領域毎に導出されているので、入力層300は、グループに含まれた2つ以上の単位領域における水分量をもとにグループに対する水分量を導出する。グループに対する水分量は、グループに含まれた2つ以上の単位領域における水分量の平均値であってもよく、中央値であってもよく、最大値であってもよく、最小値であってもよい。また、3つの成分の学習用入力データは、
図11(b)に示されるように、p1回ずらして与えられる。
【0057】
第1畳み込み層302aは、パターンの特徴を抽出するためのフィルタを有する。フィルタは、例えば、1×m1の重みを有し、フィルタ内の各重みは合計1になるように作成されている。また、行データが予測に影響を与えるので、フィルタの行数は1にされている。第1畳み込み層302aは、3×n1の入力データに対して、1×m1のフィルタを行方向に1つずつずらしながら、データ×フィルタの重みの合計を出力する。
【0058】
第1プーリング層304aは、第1畳み込み層302aの処理結果の行列から有効なデータのみ残すことによって、情報圧縮による変形を吸収する。第1プーリング層304aは、例えば、1×m2のフィルタを有する。第1プーリング層304aでは、最大プーリングや、平均プーリングが実行される。
【0059】
第2畳み込み層302b、第2プーリング層304bは、第1畳み込み層302a、第1プーリング層304aと同様の処理を実行する。一方、第2畳み込み層302bのフィルタのサイズは、第1畳み込み層302aのフィルタのサイズと異なり、第2プーリング層304bのフィルタのサイズは、第1プーリング層304aのフィルタのサイズと異なる。
【0060】
全結合層306は、多層パーセプトロンであり、第2プーリング層304bからのデータを受けつける。全結合層306におけるノード数、中間層の数は任意でよく、全結合層306における出力層からは、n3個のデータ列が出力される。これが、
図11(b)の時系列データ(Y1)等に相当する。
【0061】
学習部204は、水分量予測部60の畳み込みニューラルネットワークにおいて使用される水分量予測モデルを作成する。水分量予測モデルは、水分量の一定期間の時系列データと、温度、湿度の一定長の時系列データとを受けつけると、水分量の将来の一定期間の時系列データを出力するモデルである。学習部204は、学習用入力データを入力層300に与え、全結合層306から出力された予測データと、学習用出力データとを用いて、例えば、誤差逆伝播法により、畳み込み層302と全結合層306の重みを更新する。ここで、学習用出力データは、学習用入力データに時間的に続く実際の時系列データである。学習部204は、これを時間をずらしたデータp1回分に対して実施することによって、水分量予測モデルを作成する。
【0062】
予測実行部206は、学習部204によって作成された水分量予測モデルを使って将来の水分量の推移を予測する。
図12は、水分量予測部60と乾燥予測部62による処理概要を示す。これは、予測実行部206において予測された水分量の推移を示す。横軸が乾燥時間を示し、縦軸が水分量を示す。また、
図12は、複数のグループのうち、任意の3つのグループに対する水分量の推移を示すが、他の単位領域に対する水分量の推移も同様に示される。
図10に戻る。つまり、水分量予測部60は、距離をもとに2つ以上の単位領域をグループとしてまとめ、グループに対して、温度と湿度と水分量とをもとに、水分量の推移を予測する。予測実行部206は、予測した水分量の推移を乾燥予測部62と予測結果記憶部208に出力する。予測結果記憶部208は、グループ毎の水分量の推移と温度と湿度とを記憶する。
【0063】
(4)乾燥終了時間の予測
乾燥予測部62は、水分量予測部60において予測した水分量の推移をもとに乾燥終了時間を予測する。このような予測はグループ毎になされる。乾燥予測部62は、乾燥判断しきい値を予め規定しており、グループ毎の水分量の推移と乾燥判断しきい値を比較して、水分量が乾燥判断しきい値よりも小さくなる時間を乾燥終了時間として特定する。これは、絶対値判断といえる。
図12において、乾燥終了時間Ta、Tb、Tcが特定される。
【0064】
また、乾燥予測部62は、グループ毎の水分量の推移を微分することによって、水分量の推移の変化率を導出してもよい。乾燥予測部62は、比しきい値を予め規定しており、グループ毎の水分量の推移の変化率と比しきい値とを比較して、変化率が比しきい値よりも小さくなる時間を乾燥終了時間として特定してもよい。これは相対値判断といえる。さらに、乾燥予測部62は、絶対値判断と相対値判断とを組み合わせて、乾燥終了時間を特定してもよい。例えば、乾燥予測部62は、絶対値判断を実行してから相対値判断を実行してもよい。
図13は、乾燥予測部62の処理結果を示す。これはテーブルKとも呼ばれる。
図13では、各単位領域に対する乾燥終了時間がK11等として示されるが、1つのグループに含まれる2つ以上の単位領域に対する乾燥終了時間は同一の値を有する。ここでも、K11等が単位領域と呼ばれてもよい。
【0065】
図14は、浴室乾燥機91による予測手順を示すフローチャートである。水分量算出部56は、水分量(テーブルT)を算出終了し、距離算出部58は、距離(テーブルH)を算出終了する(S100)。水分量予測部60は、(m回目の)水分量テーブルTと距離テーブルH、温度、湿度を特徴量記憶部202に格納する(S102)。水分量予測部60は、特徴量記憶部202のデータと水分量予測モデルからm+1回目以降の水分量を予測する(S104)。水分量予測部60は、予測結果を予測結果記憶部208に格納する(S106)。乾燥予測部62は、予測結果記憶部208の水分量時系列データから各グループの乾燥終了時間を算出する(S108)。学習部204は、前回の予測結果と実測結果をもとに、水分量予測モデルを修正する(S110)。
図3に戻る。
【0066】
(5)送風の制御
送風制御部57は、乾燥予測部62において予測した乾燥終了時間に応じて、吹出口11から風を送風させる。その際、送風制御部57は、乾燥終了時間の遅い単位領域を向くように風向を制御する。具体的に説明すると、送風制御部57は、K11~K66の中で乾燥終了時間の遅い場所に対して、風向制御部96の角度を向けて送風を行う。送風制御部57は、乾燥終了時間のテーブルKに基づいて、
図1の加熱部95を制御してもよい。つまり、送風制御部57は、乾燥終了時間の遅い単位領域に対して風向制御部96の角度を制御し、加熱された空気を単位領域に集中して送風する。これにより水分量の多い単位領域は水分の蒸発が促進される。これは、乾きにくい箇所に優先的に送風することに相当する。送風制御部57は、風向制御部96の角度を制御することとともに、あるいは風向制御部96の角度を制御することに変えて、送風部93の送風量を変更してもよい。さらに、浴室乾燥機91には人感センサ(図示せず)が接続されており、人感センサが浴室内の人を検知した場合に、送風制御部57は送風を停止してもよい。
【0067】
(6)乾燥終了時間の表示
乾燥予測部62は、予測したグループ毎の乾燥終了時間、つまりテーブルKを表示部6に表示する。表示部6は、ディスプレイであり、
図13のようなテーブルKを表示する。表示部6は、テーブルKの中で最も遅い乾燥終了時間、すなわち、乾燥運転を停止する時刻または乾燥運転の残時間を表示してもよい。
【0068】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備える。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0069】
本実施例によれば、温度と湿度と水分量と距離とをもとに、算出の時点から所定時間後までの対象物100の水分量の推移を予測して、水分量の推移をもとに乾燥終了時間を予測するので、対象物100の乾燥終了時間の予測精度を向上できる。また、距離と水分量とをもとに2つ以上の単位領域をグループとしてまとめ、グループに対して予測を実行するので、予測精度を向上できる。また、乾燥終了時間の遅い単位領域を向くように風向を制御するので、乾燥終了時間の遅い方に優先的に送風できる。また、乾燥終了時間の遅い方に優先的に送風するので、乾燥終了時間を短縮できる。また、乾燥終了時間が短縮されるので、消費電力を削減できる。また、乾燥終了時間をもとに送風量を制御するので、乾燥終了時間が遅い場合に送風量を増加できる。
【0070】
また、人感センサにおいて人を検知した場合に送風を停止するので、人が不在の際に送風を実行できる。また、人が不在の際に送風を実行するので、人が不在であれば送風量を上げることができる。また、人感センサにおいて人を検知した場合に送風を停止するので、不快感を与えることを抑制できる。また、加熱部95が備えられるので、高温の風を送風できる。また、高温の風が送風されるので、水滴を短時間で蒸発させることができる。また、予測した乾燥終了時間を表示するので、使用者が対象物100の乾燥に要する時間の目安を知ることができる。また、使用者が対象物100の乾燥に要する時間の目安を知るので、家事のスケジュール管理を実行できる。
【0071】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の送風装置は、所定の空間の温度を検知する温度検知部(80)と、所定の空間の湿度を検知する湿度検知部(82)と、所定の空間内の対象物の水分量を算出する水分量算出部(56)と、対象物までの距離を算出する距離算出部(58)と、温度と湿度と水分量と距離とをもとに、水分量算出部(56)における算出の時点から所定時間後までの対象物の水分量の推移を予測する水分量予測部(60)と、水分量予測部(60)において予測した水分量の推移をもとに、乾燥終了時間を予測する乾燥予測部(62)と、乾燥予測部(62)において予測した乾燥終了時間に応じて、吹出口から風を送風させる送風制御部(57)と、を備える。
【0072】
水分量算出部(56)は、検出範囲を分割した複数の単位領域のそれぞれに対して水分量を算出し、水分量予測部(60)は、距離と水分量とをもとに2つ以上の単位領域をグループとしてまとめ、グループに対して、温度と湿度と水分量とをもとに、水分量の推移を予測してもよい。
【0073】
送風制御部(57)は、乾燥終了時間の遅い単位領域を向くように風向を制御してもよい。
【0074】
送風制御部(57)は、乾燥終了時間をもとに送風量を制御してもよい。
【0075】
人感センサをさらに備えてもよい。送風制御部(57)は、人感センサにおいて人を検知した場合に送風を停止してもよい。
【0076】
吸込口から吹出口への通風経路に配置される加熱部(95)をさらに備えてもよい。
【0077】
乾燥予測部(62)において予測した乾燥終了時間を表示する表示部(6)をさらに備えてもよい。
【0078】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
本実施例における水分量予測部60は、初期段階において、グループ毎の水分量の推移に対して、予め記憶しておいた水分量の推移パターンと類似する傾向に近いものを検索して予測してもよい。本変形例によれば、初期段階においても水分量の推移を予想できる。
【符号の説明】
【0080】
5 制御部、 6 表示部、 7 発光部、 8 受光部、 9 水分量検知部、 10 吸込口、 11 吹出口、 21 投光レンズ、 22 光源、 34 ハーフミラー、 42 第二バンドパスフィルタ、 43 第二受光素子、 51 光源制御部、 52 第一増幅部、 53 第二増幅部、 54 第一信号処理部、 55 第二信号処理部、 56 水分量算出部、 57 送風制御部、 58 距離算出部、 60 水分量予測部、 62 乾燥予測部、 71 受光レンズ、 72 第一バンドパスフィルタ、 73 第一受光素子、 80 温度検知部、 82 湿度検知部、 91 浴室乾燥機、 92 本体ケース、 93 送風部、 95 加熱部、 96 風向制御部、 97 換気部、 100 対象物、 200 領域分割部、 202 特徴量記憶部、 204 学習部、 206 予測実行部、 208 予測結果記憶部、 300 入力層、 302 畳み込み層、 304 プーリング層、 306 全結合層。