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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】シートシステムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240209BHJP
【FI】
B60N2/90
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019024093
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020131770
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】郭 裕之
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/069756(WO,A1)
【文献】特開2006-149911(JP,A)
【文献】特開2003-038443(JP,A)
【文献】特開2017-176302(JP,A)
【文献】特開2015-176367(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0094060(KR,A)
【文献】特開平08-127264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/62 - A47C 7/74
A61B 5/107
A61B 5/16
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体、および、前記シート本体に設けられ、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する端末と、を備えたシートシステムであって、
前記端末は、
前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力し、
前記センサから取得した情報に基づいて着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定し、
前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知し、
前記センサから取得した情報の微分値を算出し、
前記微分値の大きさが第1閾値を超えたことを条件として、前記所定の動作が開始されたと判定することを特徴とするシートシステム。
【請求項2】
前記端末は、
前記微分値の大きさが第1閾値を超えたあと、前記第1閾値以下の第2閾値より小さくなったことを条件として、前記所定の動作が完了したと判定することを特徴とする請求項1に記載のシートシステム。
【請求項3】
前記端末は、前記センサから取得した情報の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートシステム。
【請求項4】
シート本体、および、前記シート本体に設けられ、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する端末と、を備えたシートシステムであって、
前記端末は、
前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力し、
前記センサから取得した情報に基づいて着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定し、
前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知
前記センサから取得した信号の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力することを特徴とするシートシステム。
【請求項5】
前記応答時間は、前記指示を出力してから前記所定の動作を開始するまでの反応時間と、前記指示を出力してから前記所定の動作を完了するまでの動作完了時間との少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項6】
前記端末は、算出した前記応答時間と、記憶している基準の応答時間とを比較して、前記評価した値を決定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項7】
前記センサは、圧力センサを含み、
前記端末は、前記圧力センサから取得した圧力の変化に基づいて着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項8】
前記端末は、前記所定の動作をすべき指示として、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項9】
前記端末は、前記指示の出力と応答時間の算出を複数回行い、複数取得した応答時間の平均を着座者に報知し、および/または応答時間の平均に基づいて評価した値を着座者に報知することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項10】
前記端末と通信可能なサーバをさらに備え、
前記端末は、着座者の属性を記憶しており、算出した応答時間および着座者の属性をサーバに送信し、
前記サーバは、前記着座者の属性と応答時間を蓄積することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項11】
シート本体に設けられたセンサから情報を取得可能な端末で実行されるプログラムであって、
シート本体に座った着座者に所定の動作をすべき指示を出力する指示ステップと、
センサから前記情報を取得する取得ステップと、
前記センサから取得した情報に基づいて前記着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定する判定ステップと、
前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知する報知ステップと、を前記端末に実行させるプログラムであり、
前記判定ステップにおいて、前記センサから取得した情報の微分値を算出し、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたことを条件として、前記所定の動作が開始されたと判定することを特徴とするプログラム。
【請求項12】
前記判定ステップにおいて、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたあと、前記第1閾値以下の第2閾値より小さくなったことを条件として、前記所定の動作が完了したと判定することを特徴とする請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記指示ステップにおいて、前記センサから取得した情報の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として着座者に所定の動作をすべき指示を出力することを特徴とする請求項11または請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
シート本体に設けられたセンサから情報を取得可能な端末で実行されるプログラムであって、
シート本体に座った着座者に所定の動作をすべき指示を出力する指示ステップと、
センサから前記情報を取得する取得ステップと、
前記センサから取得した情報に基づいて前記着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定する判定ステップと、
前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知する報知ステップと、を前記端末に実行させるプログラムであって、
前記指示ステップにおいて、前記センサから取得した情報の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として着座者に所定の動作をすべき指示を出力することを特徴とするプログラム。
【請求項15】
前記指示ステップにおいて、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力することを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを有するシートを備えたシートシステムと、センサを有するシートから取得した情報に基づいて端末を動作させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の着座姿勢を検出するために、シート上に複数の圧力センサを配置した車両用シートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-65504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の車両用シートは、運転者の着座姿勢を評価して提示するだけであるので、あまり有効に利用できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、シートの新たな価値を提案するべく、シートに着座した着座者が自分の反射神経(反応速度)を把握することができるシートシステムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明に係るシートシステムは、シート本体、および、前記シート本体に設けられ、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、前記センサから前記情報を取得する端末と、を備える。
前記端末は、前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力し、前記センサから取得した情報に基づいて着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定し、前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知する。
【0007】
また、本発明に係るプログラムは、シート本体に設けられたセンサから情報を取得可能な端末で実行されるプログラムであって、シート本体に座った着座者に所定の動作をすべき指示を出力する指示ステップと、センサから前記情報を取得する取得ステップと、前記センサから取得した情報に基づいて前記着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定する判定ステップと、前記指示を出力してから、前記所定の動作をするまでの応答時間および/または前記応答時間に基づいて評価した値を着座者に報知する報知ステップと、を前記端末に実行させる。
【0008】
このようなシートシステムまたはプログラムによれば、シートに着座した着座者が、端末からの指示に従って所定の動作を行うと、端末が、センサから取得した情報に基づいて、指示を出力してから所定の動作をするまでの応答時間などを着座者に報知する。そのため、シートに着座した着座者が、自分の反射神経を把握することができる。
【0009】
また、前記応答時間は、前記指示を出力してから前記所定の動作を開始するまでの反応時間と、前記指示を出力してから前記所定の動作を完了するまでの動作完了時間との少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0010】
これによれば、応答時間として反応時間と動作完了時間の少なくとも一方が含まれるので、着座者の反射神経を適正に測定することができる。
【0011】
また、前記端末は、算出した前記応答時間と、記憶している基準の応答時間とを比較して、前記評価した値を決定してもよい。
【0012】
これによれば、着座者は、基準の応答時間に基づいて評価された値を知ることができるので、自分の反射神経の能力がどの程度であるかを知ることができる。
【0013】
また、前記センサは、圧力センサを含み、前記端末は、前記圧力センサから取得した圧力の変化に基づいて着座者が前記所定の動作をしたか否かを判定してもよい。
【0014】
これによれば、圧力センサから取得した圧力値によって、着座者の動作を良好に判定することができる。
【0015】
また、前記端末は、前記センサから取得した信号の微分値を算出し、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたことを条件として、前記所定の動作が開始されたと判定してもよい。つまり、前記判定ステップにおいて、前記センサから取得した信号の微分値を算出し、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたことを条件として、前記所定の動作が開始されたと判定してもよい。
【0016】
これによれば、微分値に基づいて、所定の動作が開始されたことを良好に判定することができる。
【0017】
また、前記端末は、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたあと、前記第1閾値以下の第2閾値より小さくなったことを条件として、前記所定の動作が完了したと判定してもよい。つまり、前記判定ステップにおいて、前記微分値の大きさが第1閾値を超えたあと、前記第1閾値以下の第2閾値より小さくなったことを条件として、前記所定の動作が完了したと判定してもよい。
【0018】
これによれば、微分値に基づいて、所定の動作が完了したことを良好に判定することができる。
【0019】
また、前記端末は、前記センサから取得した信号の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として前記着座者に所定の動作をすべき指示を出力してもよい。つまり、前記指示ステップにおいて、前記センサから取得した信号の微分値の大きさが第3閾値よりも小さくなったことを条件として着座者に所定の動作をすべき指示を出力してもよい。
【0020】
これによれば、着座者がほぼ静止した状態であるときに、所定の動作をすべき指示がなされるので、反射神経を精度よく測定することができる。
【0021】
また、前記端末は、前記所定の動作をすべき指示として、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力してもよい。つまり、前記指示ステップにおいて、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力してもよい。
【0022】
これによれば、着座者に異なる動作を指示することができるので、各動作に対する反射神経を着座者が知ることができる。
【0023】
また、前記端末は、前記指示の出力と応答時間の算出を複数回行い、複数取得した応答時間の平均を着座者に報知し、および/または応答時間の平均に基づいて評価した値を着座者に報知してもよい。
【0024】
これによれば、指示の出力と応答時間の算出を複数回行い、応答時間の平均などが着座者に報知されるので、着座者が平均的な反射神経を知ることができる。
【0025】
また、前記端末と通信可能なサーバをさらに備え、前記端末は、着座者の属性を記憶しており、算出した応答時間および着座者の属性をサーバに送信し、前記サーバは、前記着座者の属性と応答時間を蓄積してもよい。
【0026】
これによれば、サーバによって、着座者の属性と応答時間が蓄積されるので、例えば着座者の属性と同じ属性の他人の応答時間と、着座者の応答時間を比較することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シートに着座した着座者が、自分の反射神経を把握することができる。
【0028】
また、応答時間として、指示を出力してから所定の動作を開始するまでの反応時間と、指示を出力してから所定の動作を完了するまでの動作完了時間との少なくとも一方を含めることで、着座者の反射神経を適正に測定することができる。
【0029】
また、算出した前記応答時間と、記憶している基準の応答時間とを比較して、評価した値を決定する構成とすることで、着座者が、基準の応答時間に基づいて評価された値を知ることができるので、自分の反射神経の能力がどの程度であるかを知ることができる。
【0030】
また、センサを、圧力センサを含む構成とすることで、圧力センサから取得した圧力値によって、着座者の動作を良好に判定することができる。
【0031】
また、センサから取得した信号の微分値を算出し、微分値が第1閾値を超えたことを条件として、所定の動作が開始されたと判定する構成とすることで、所定の動作が開始されたことを良好に判定することができる。
【0032】
また、微分値が第1閾値を超えたあと、第1閾値以下の第2閾値より小さくなったことを条件として、所定の動作が完了したと判定する構成とすることで、所定の動作が完了したことを良好に判定することができる。
【0033】
また、センサから取得した信号の微分値が第3閾値よりも小さくなったことを条件として着座者に所定の動作をすべき指示を出力する構成とすることで、着座者がほぼ静止した状態であるときに、所定の動作をすべき指示がなされるので、反射神経を精度よく測定することができる。
【0034】
また、所定の動作をすべき指示として、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力する構成とすることで、着座者に異なる動作を指示することができるので、各動作に対する反射神経を着座者が知ることができる。
【0035】
また、指示の出力と応答時間の算出を複数回行い、応答時間の平均などを着座者に報知する構成とすることで、着座者が平均的な反射神経を知ることができる。
【0036】
また、サーバによって、着座者の属性と応答時間を蓄積することで、例えば着座者の属性と同じ属性の他人の応答時間と、着座者の応答時間を比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施形態に係るシートシステムを示す図である。
図2】スマートフォンでの処理を示すフローチャートである。
図3】スタート画面を示す図である。
図4】着座者を基準の姿勢に促すための初期画面を示す図である。
図5】両膝を上げる動作を指示するときの画面を示す図である。
図6】左膝を上げる動作を指示するときの画面を示す図である。
図7】右膝を上げる動作を指示するときの画面を示す図である。
図8】着座者が両膝を上げる動作をしたときの圧力値の変化を示す図(a)と、圧力値の微分値を示す図(b)である。
図9】着座者が左膝を上げる動作をしたときの圧力値の変化を示す図(a)と、圧力値の微分値を示す図(b)である。
図10】着座者が右膝を上げる動作をしたときの圧力値の変化を示す図(a)と、圧力値の微分値を示す図(b)である。
図11】反射神経の測定結果を表示する画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のシートシステム1は、シートSと、シート体験装置10と、サーバSVとを含んでなる。
シートSは、シート本体S10と、圧力センサ21~26とを備えてなる。シート本体S10は、一例として、車両などの乗物に設置される乗物用シートであり、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を有する。シートクッションS1とシートバックS2には、表皮の下に複数の圧力センサ21~26が設けられている。圧力センサ21~26は、シート本体S10に座っている着座者の動作を検出するためのセンサである。
【0039】
圧力センサ21~26は、シート本体S10に着座する着座者に対向する座面の状態を検知可能に配置され、シート本体S10に座っている着座者からの圧力値を取得する。ECU(電子制御ユニット)100は、シート本体S10の動作(例えば、図示しない電動リクライニングのモータやヒータなど)を制御する装置であり、各圧力センサ21~26から、測定値を取得可能に圧力センサ21~26と接続されている。
【0040】
各圧力センサ21~26は、シートSの左右の中心に対して左右対称に1対ずつ設けられている。なお、以下の説明や図面においては、左側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「L」を付し、右側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「R」を付して区別することもある。
【0041】
シートクッションS1には、圧力センサ21~23が設けられている。
圧力センサ21は、着座者の坐骨の最下部に対応する位置に設けられている。この位置では、着座者の荷重が最も大きくかかる。
【0042】
圧力センサ22は、圧力センサ21の少し前に配置されている。
【0043】
圧力センサ21および圧力センサ22は、いずれも、着座者の臀部からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0044】
圧力センサ23は、圧力センサ21および圧力センサ22から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサ23は、着座者の大腿の下に位置し、着座者の大腿からの圧力値を測定可能である。
【0045】
シートバックS2には、圧力センサ24~26が設けられている。圧力センサ24は、着座者の腰の後ろに対応する位置に設けられている。
【0046】
圧力センサ25は、圧力センサ24の少し上に配置されている。
【0047】
圧力センサ24および圧力センサ25は、いずれも、着座者の腰からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0048】
圧力センサ26は、圧力センサ24および圧力センサ25から上方に大きく離れて配置されている。圧力センサ26は、着座者の肩に対応して位置し、着座者の肩からの圧力値を測定可能である。
【0049】
本実施形態においては、シートシステム1は、各圧力センサ21~26を使用した反射神経測定のゲームを提供するものとする。本実施形態においては、各圧力センサ21~26は、シート本体S10に座っている着座者の動作を検出するための測定値を取得するセンサの一例である。反射神経測定のゲームは、シート本体S10に座った着座者が、スマートフォンSPのディスプレイDSP上に表示されたキャラクターのポーズやメッセージに従って、反射神経の測定を行うことを可能なゲームとする。
【0050】
シート本体S10には、スマートフォンSPを保持するためのホルダ4が設けられている。ホルダ4は、ワイヤを屈曲させて形成され、一端がシートバックS2に固定され、他端にスマートフォンSPを固定する固定部4Aが設けられている。固定部4AにスマートフォンSPを固定することで、着座者は、スマートフォンSPを手に持たなくても、スマートフォンSPのディスプレイDSPを見ることができる。このため、着座者は、ディスプレイDSPを見ながら、反射神経測定のゲームで指示されている動きを、全身を使って行うことができる。
【0051】
シート体験装置10は、ECU100と、端末の一例としてのスマートフォンSPとを有してなる。
ECU100には、ブルートゥース(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を可能にする近距離通信機3Aが接続されている。また、ECU100は、圧力センサ21~26と接続されている。
【0052】
ECU100、スマートフォンSPおよびサーバSVは、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行する。なお、スマートフォンSPは、ディスプレイDSPをさらに備えている。スマートフォンSPは、プログラムに従って動作することで、反射神経測定のゲームを実行するための各ステップをスマートフォンSPに実行させる。
【0053】
具体的に、スマートフォンSPは、近距離通信機3AおよびECU100を介して各圧力センサ21~26から測定値を取得し、取得した測定値に基づいて反射神経測定のゲームを実行する機能を有している。また、スマートフォンSPは、インターネットを介してサーバSVと通信可能となっている。
【0054】
スマートフォンSPは、反射神経測定のゲーム中において、着座者に所定の動作をすべき指示を出力する機能を有している。詳しくは、スマートフォンSPは、所定の動作をすべき指示として、複数の指示の中からランダムに選択した指示を出力する。
【0055】
本実施形態では、スマートフォンSPは、着座者に対して、所定の動作をすべき指示として、図5に示す両膝を上げる動作を促す第1指示と、図6に示す左膝を上げる動作を促す第2指示と、図7に示す右膝を上げる動作を促す第3指示と、を、乱数値を使ってランダムに選択して出力する。ここで、図6および図7に示す各画面において、左膝または右膝を上げる動作を行っているキャラクターは、着座者が分かりやすいように、着座者をミラーで映したような態様で表示されている。なお、各指示は、ディスプレイDSPに表示した画像に加え、スマートフォンSPのスピーカーから出力する音声で行ってもよい。
【0056】
スマートフォンSPは、指示を出力した後、指示に対応した圧力センサから取得した測定値(圧力)の変化に基づいて、着座者が所定の動作をしたか否かを判定する機能を有している。詳しくは、スマートフォンSPは、選択した指示が第1指示である場合には、着座者の臀部の下に配置される圧力センサ21Lから測定値を取得する。
【0057】
スマートフォンSPは、選択した指示が第2指示である場合には、着座者の左腿の下に配置される圧力センサ23Lから測定値を取得する。スマートフォンSPは、選択した指示が第3指示である場合には、着座者の右腿の下に配置される圧力センサ23Rから測定値を取得する。
【0058】
ここで、着座者が第1指示に対応した両膝を上げる動作を行う場合には、図8(a)に示すような測定値が圧力センサ21Lから取得される。スマートフォンSPは、圧力センサ21Lから取得した測定値に基づいて、図8(b)に示す微分値を算出し、この微分値を第3閾値TH3および閾値TH11と比較することで、第1指示を出力するタイミングを決定するとともに、着座者が所定の動作をしたかの判定を行う。
【0059】
詳しくは、スマートフォンSPは、圧力センサ21Lから取得した測定値の微分値が第3閾値TH3よりも小さくなったことを条件として、着座者に所定の動作をすべき指示(第1指示)を出力する(時刻t1)。ここで、着座者の反射神経を精度よく測定するには、所定の動作を開始する前に、着座者が静止した状態でいることが望ましい。そのため、第3閾値TH3を0に近い値とし、この第3閾値TH3よりも微分値が小さくなったあと、乱数値に基づく時間が経過したときに、乱数値を使ってランダムに選択した指示を出力することで、着座者の反射神経を精度よく測定することが可能となっている。
【0060】
スマートフォンSPは、指示を出力した後、微分値が閾値TH11を超えたことを条件として、所定の動作が開始されたと判定する(時刻t2)。スマートフォンSPは、微分値が閾値TH11を超えたあと、閾値TH11より小さくなったことを条件として、所定の動作が完了したと判定する(時刻t3)。
【0061】
ここで、閾値TH11は、第1閾値および第2閾値に相当する。つまり、本実施形態では、第1閾値と第2閾値を同じ値(閾値TH1)としている。
【0062】
スマートフォンSPは、所定の動作をすべき指示を出力してから所定の動作をするまでの応答時間T1を算出する機能を有している。
【0063】
本実施形態において、応答時間T1は、所定の動作をすべき指示を出力してから所定の動作を開始するまでの反応時間T11と、所定の動作をすべき指示を出力してから所定の動作を完了するまでの動作完了時間T13とを含む。また、本実施形態において、スマートフォンSPは、反応時間T11および動作完了時間T13の他、所定の動作を開始してから完了するまでの動作時間T12を算出している。
【0064】
着座者が第2指示に対応した左膝を上げる動作を行う場合には、図9(a)に示すような測定値が圧力センサ23Lから取得される。スマートフォンSPは、圧力センサ23Lから取得した測定値に基づいて、図9(b)に示す微分値を算出し、この微分値を閾値TH3,TH12と比較することで、第2指示を出力するタイミングを決定するとともに、着座者が所定の動作をしたかの判定を行う。
【0065】
第3閾値TH3に基づいて第2指示を出力するタイミングを決定する方法は、前述した第1指示を出力するタイミングを決定する方法と同様である。
【0066】
閾値TH12は、第1閾値および第2閾値に相当する。閾値TH12は、左膝を上げる動作が行われる際に取得される測定値の微分値に対応した閾値であり、両膝を上げる動作が行われる際に用いる閾値TH11とは異なる値となっている。なお、図9(b)においては、便宜上、閾値TH12を負の領域に図示しているが、閾値TH2は正の値であるものとする。
【0067】
スマートフォンSPは、指示を出力した後(時刻t11)、微分値が負の値であり、かつ、微分値の大きさが閾値TH12を超えたことを条件として、所定の動作が開始されたと判定する(時刻t12)。また、スマートフォンSPは、微分値の大きさが閾値TH12を超えたあと、微分値の大きさが閾値TH12より小さくなったことを条件として、所定の動作が完了したと判定する(時刻t13)。
【0068】
なお、反応時間T11、動作時間T12および動作完了時間T13を算出する方法は、前述した両膝を上げる動作が行われる場合と同様である。
【0069】
着座者が第3指示に対応した右膝を上げる動作を行う場合には、図10(a)に示すような測定値が圧力センサ23Rから取得される。スマートフォンSPは、圧力センサ23Rから取得した測定値に基づいて、図10(b)に示す微分値を算出し、この微分値を閾値TH3,TH13と比較することで、第3指示を出力するタイミングを決定するとともに、着座者が所定の動作をしたかの判定を行う。
【0070】
ここで、閾値TH13は、第1閾値および第2閾値に相当する。本実施形態では、閾値TH13を、前述した閾値TH12と同じ値とする。なお、第3指示を出力するタイミング(時刻t21)の決定方法、所定の動作の開始を判定する方法(時刻t22)、所定の動作の完了を判定する方法(時刻t23)、および、各時間T11~T13の算出方法は、第2指示を出力する場合と同様である。
【0071】
スマートフォンSPは、所定の動作をすべき指示の出力と各時間T11~T13の算出を複数回行い、複数取得した各時間T11~T13の平均を着座者に報知するとともに、各時間T11~T13の平均に基づいて評価した値(以下、「評価値」ともいう。)を着座者に報知する機能を有している。また、スマートフォンSPは、複数取得した各時間T11~T13のそれぞれのベストタイムを着座者に報知するとともに、ベストタイムに基づいて決定した評価値を着座者に報知する機能を有している。詳しくは、図11に示すように、スマートフォンSPは、各時間T11~T13のベストタイム、平均値、評価値を、ディスプレイDSPに表示することで、着座者に報知する。
【0072】
スマートフォンSPは、算出した反応時間T11と、記憶している基準の反応時間T21とを比較して、評価値を決定している。詳しくは、スマートフォンSPは、算出した反応時間T11の平均値と、基準の反応時間T21とを比較して、反応時間T11の平均値に対する評価値を決定する。また、スマートフォンSPは、算出した反応時間T11のベストタイムと、基準の反応時間T21とを比較して、反応時間T11のベストタイムに対する評価値を決定する。なお、平均値と比較する基準の反応時間T21と、ベストタイムと比較する基準の反応時間T21は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0073】
より詳しくは、スマートフォンSPは、算出した反応時間T11(平均、ベストタイム)が、基準の反応時間T21(平均、ベストタイム)よりも短いほど、高い評価値を決定し、長いほど、低い評価値を決定する。本実施形態では、高い評価値と、通常の評価値と、低い評価値といった3段階の評価値を例示する。評価値は、高い順に、「Excellent」、「Good」、「Bad」とする。
【0074】
スマートフォンSPは、T11-T21<-α1の場合に、「Excellent」の評価値を選択し、-α1≦T11-T21≦α2の場合に、「Good」の評価値を選択し、T11-T21>α2の場合に、「Bad」の評価値を選択する。ここで、α1,α2は、正の値である。
【0075】
なお、スマートフォンSPは、動作時間T12および動作完了時間T13について、反応時間T11のときと同様の方法で、それぞれ、基準の動作時間T22および基準の動作完了時間T23と比較して、評価値を決定してもよい。
【0076】
スマートフォンSPは、着座者の属性、例えば性別、年齢などを記憶しており、算出した各時間T11~T13および着座者の属性をサーバSVに送信する機能を有している。サーバSVは、着座者の属性と各時間T11~T13を蓄積する機能を有している。
【0077】
次に、スマートフォンSP(詳しくは、スマートフォンSP内の処理部)の動作について詳細に説明する。
スマートフォンSPは、着座者が反射神経測定ゲームを行うためのアプリを立ち上げると、図2に示す処理を開始する(START)。この処理において、スマートフォンSPは、まず、シートSと通信可能な状態であるか否かを判定する(S11)。
【0078】
ステップS11において通信可能な状態でないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。ステップS11において通信可能な状態であると判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、反射神経測定ゲームのスタート画面(図3参照)をディスプレイDSP上に表示する(S12)。
【0079】
なお、図3に示すスタート画面では、反射神経測定ゲームを開始するためのスタートボタンB1と、反射神経測定ゲームを終了するための終了ボタンB2とが表示されている。
【0080】
ステップS12の後、スマートフォンSPは、スタートボタンB1が選択されたか否かを判定する(S13)。ステップS13においてスタートボタンB1が選択されていないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、終了ボタンB2が選択されたか否かを判定する(S14)。
【0081】
ステップS14において終了ボタンB2が選択されていないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、ステップS12の処理に戻る。ステップS14において終了ボタンB2が選択されたと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。
【0082】
ステップS13においてスタートボタンB1が選択されたと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、図4に示す初期画面を表示する。初期画面には、着座者が最初にとるべき基準の姿勢が、シートおよびキャラクターからなる絵の画像とメッセージを用いて表示されている。具体的には、初期画面には、シートに腰深く座っているキャラクターが色付きで目立つように表示されるとともに、「背中をつけて腰深く座ってください。」というメッセージが表示される。これにより、着座者は、シートに腰深く座るといった基準の姿勢をとることができる。
【0083】
また、初期画面には、着座者が、基準の姿勢からどのような動作をすべきかを示す、3種類の絵の画像と、3種類のメッセージとが、細線やグレーなどの目立たない態様で表示されている。具体的には、初期画面には、左膝を上げる動作を行っているキャラクターが「左膝を上げる」というメッセージとともに表示されている。
【0084】
同様に、初期画面には、両膝を上げる動作に対応したキャラクターおよびメッセージと、右膝を上げる動作に対応したキャラクターおよびメッセージが表示されている。また、初期画面には、「姿勢が安定したら、いずれかの姿勢を表示します。画面に集中してください。」といった、着座者に動作の準備を促すためのメッセージが表示されている。
【0085】
各動作に対応した3つの画像は、基準の姿勢を示す画像の下に左右に並んで表示される。両膝を上げる動作に対応した画像は、3つの画像のうち真ん中に配置される。左膝を上げる動作に対応した画像は、両膝を上げる動作に対応した画像の左に配置される。右膝を上げる動作に対応した画像は、両膝を上げる動作に対応した画像の右に配置される。
【0086】
図2に戻って、スマートフォンSPは、ステップS15において初期画面を表示させた後、所定の動作をすべき指示をランダムに選択する(S16)。詳しくは、スマートフォンSPは、両膝を上げる動作を促す第1指示、左膝を上げる動作を促す第2指示、および、右膝を上げる動作を促す第3指示の中からランダムに1つの指示を選択する。
【0087】
ステップS16の後、スマートフォンSPは、所定の動作を判定するための閾値として、選択した指示に応じた閾値を設定する(S17)。具体的には、スマートフォンSPは、例えば、所定の動作をすべき指示として第1指示を選択した場合には、ステップS16において閾値TH11(図8(b)参照)を設定する。
【0088】
ステップS17の後、スマートフォンSPは、選択した指示に応じた圧力センサから測定値の取得を開始する(S18)。具体的には、スマートフォンSPは、例えば、所定の動作をすべき指示として第1指示を選択した場合には、ステップS18において臀部に対応した圧力センサ21Lから測定値の取得を開始する。なお、ステップS18は、取得ステップに相当する。
【0089】
ステップS18の後、スマートフォンSPは、取得した測定値の微分値の算出を開始する(S19)。ステップS19の後、スマートフォンSPは、微分値が第3閾値TH3よりも小さいか否かを判定する(S20)。
【0090】
ステップS20において微分値が第3閾値TH3よりも小さいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者が基準の姿勢で静止していると判定し、その後、乱数値に基づく時間が経過したら、選択した指示を出力する(S21)。なお、前述したステップS20,S21は、指示ステップに相当する。
【0091】
具体的に、スマートフォンSPは、ステップS21において指示を出力する場合には、指示に対応した画面(図5図7)をディスプレイDSPに表示する。図5に示すように、第1指示に対応した画面では、両膝を上げる動作に対応したキャラクターおよびメッセージが、着色の有無や線の太さなどにより、他の画像よりも強調して表示される。図6に示すように、第2指示に対応した画面では、左膝を上げる動作に対応したキャラクターおよびメッセージが、着色の有無や線の太さなどにより、他の画像よりも強調して表示される。図7に示すように、第3指示に対応した画面では、右膝を上げる動作に対応したキャラクターおよびメッセージが、着色の有無や線の太さなどにより、他の画像よりも強調して表示される。
【0092】
図2に戻って、スマートフォンSPは、ステップS21の後、微分値が第1閾値を超えたか否かを判定することで、着座者が所定の動作を開始したか否かを判定する(S22)。具体的には、例えば、選択した指示が第1指示である場合には、スマートフォンSPは、微分値が、第1指示に対応した閾値TH11を超えたか否かを判定する。
【0093】
ステップS22において微分値が第1閾値を超えたと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、指示を出力してから所定の動作を開始するまでの反応時間T11を算出する(S23)。ステップS23の後、スマートフォンSPは、微分値が第2閾値よりも小さくなったか否かを判定することで、着座者による所定の動作が完了したか否かを判定する(S24)。
【0094】
具体的には、例えば、選択した指示が第1指示である場合には、スマートフォンSPは、微分値が、第1指示に対応した閾値TH11よりも小さくなったか否かを判定する。なお、前述したステップS22,S24は、判定ステップに相当する。
【0095】
ステップS24において微分値が第2閾値よりも小さくなったと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、所定の動作を開始してから完了するまでの動作時間T12と、所定の動作をすべき指示を出力してから所定の動作を完了するまでの動作完了時間T13を算出する(S25)。なお、動作時間T12と動作完了時間T13の算出は、どちらを先に行ってもよい。つまり、動作時間T12を先に算出し、反応時間T11に動作時間T12を加算することで動作完了時間T13を算出してもよいし、動作完了時間T13を先に算出し、動作完了時間T13から反応時間T11を減算することで、動作時間T12を算出してもよい。
【0096】
ステップS25の後、スマートフォンSPは、所定の動作をすべき指示を所定回数出力したか否かを判定する(S26)。ここで、所定回数は、任意に設定すればよいが、本実施形態では、6回とする。
【0097】
ステップS26において指示を所定回数出力していないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、ステップS15の処理に戻る。ステップS26において指示を所定回数出力したと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、第1指示における各時間T11~T13のベストタイム・平均値と、第2指示における各時間T11~T13のベストタイム・平均値と、第3指示における各時間T11~T13のベストタイム・平均値と、をディスプレイDSPに表示して、着座者に報知する(S27:図11参照)。さらに、ステップS27において、スマートフォンSPは、各指示における評価値もディスプレイDSPに表示して、着座者に報知する(図11参照)。ここで、ステップS27は、報知ステップに相当する。
【0098】
ステップS27の後、スマートフォンSPは、算出した各指示に対応した各時間T11~T13を、着座者の属性とともにサーバSVに送信して、本処理を終了する。
【0099】
次に、シートシステム1の具体的な動作の一例を詳細に説明する。
図1に示すように、シートシステム1を構成する各機器(S,SP)が通信可能な状態において、着座者がスマートフォンSPを操作して反射神経測定アプリを立ち上げると、図2に示す処理において、ステップS11:Yes→ステップS12の処理が順次実行される。これにより、図3に示すスタート画面が、ディスプレイDSP上に表示される。
【0100】
着座者がスタートボタンB1を選択すると、ステップS13:Yes→ステップS15の処理が順次実行される。これにより、図4に示す初期画面が、ディスプレイDSP上に表示される。着座者は、初期画面に従って、シートSに背中をつけて腰深く座る基準の姿勢をとり、この姿勢を保ったまま指示を待つ。
【0101】
着座者が指示を待っている間、スマートフォンSPは、まず、3つの指示の中から1つの指示をランダムに選択する(S16)。ここで、最初の指示として、第2指示が選択されたものとする。
【0102】
第2指示を選択したスマートフォンSPは、ステップS17~S19の処理を順次実行することで、第2指示に応じた閾値TH12(図9(b)参照)を設定するとともに、第2指示(左腿)に対応した圧力センサ23Lから測定値を取得して、測定値の微分値の算出を行う。スマートフォンSPがステップS20を実行する際において、着座者が基準の姿勢を保っている場合には、図9(b)に示すように、微分値が第3閾値TH3より小さくなるので(時刻t11)、スマートフォンSPは、ステップS20においてYesと判定して、選択した第2指示を出力する(S21、時刻t11)。
【0103】
これにより、ディスプレイDSPの表示が、初期画面から図6の画面に切り替わるので、着座者は、図6の画面に従って、左膝を上げる動作を行う。このような動作を行うことで、左腿に対応した圧力センサ23Lの測定値は、図9(a)に示すように変化し、測定値の微分値は、図9(b)に示すように変化する。
【0104】
スマートフォンSPは、微分値が負であり、かつ、微分値の大きさが閾値TH12を超えたと判定すると(S22:Yes)、左膝上げ動作時の反応時間T11を算出する(S23)。その後、スマートフォンSPは、微分値の大きさが閾値TH12より小さくなったと判定すると(S24:Yes)、左膝上げ動作時の動作時間T12と動作完了時間T13を算出する(S25)。
【0105】
その後、スマートフォンSPは、ステップS26において、指示を所定回数(6回)出力していないと判定して(No)、ステップS15に戻る。これにより、ディスプレイDSPの表示が、図6の画面から再び初期画面に戻る。そのため、着座者は、初期画面に従って、基準の姿勢を再びとり、次の指示を待つ。
【0106】
その後、例えば、第1指令、第3指令、第3指令、第2指令、第1指令の順で、順次指示が選択されて、ステップS15~S26の処理が5回繰り返されると、スマートフォンSPは、ステップS26においてYesと判定して、図11に示す画面をディスプレイDSPに表示する。これにより、着座者は、左膝上げ動作時、両膝上げ動作時および右膝上げ動作時の各時間T11~T13のベストタイムと平均値を知ることができる。また、着座者は、各動作時の評価値も知ることができる。
【0107】
以上、本実施形態のシートシステム1によれば、次の各効果を奏することができる。
シートSに着座した着座者が、スマートフォンSPからの指示に従って所定の動作を行うと、スマートフォンSPが、圧力センサから取得した測定値に基づいて、指示を出力してから所定の動作をするまでの応答時間T1などを着座者に報知する。そのため、シートSに着座した着座者が、自分の反射神経を把握することができる。
【0108】
応答時間T1として反応時間T11と動作完了時間T13の両方が含まれるので、着座者の反射神経を適正に測定することができる。
【0109】
スマートフォンSPが、算出した反応時間T11と、記憶している基準の反応時間T21とを比較して、評価値を決定するので、着座者が、評価値に基づいて、自分の反射神経の能力がどの程度であるかを知ることができる。
【0110】
圧力センサから取得した圧力値、詳しくは微分値に基づいて着座者の動作を判定するので、着座者の動作を良好に判定することができる。
【0111】
微分値が第3閾値TH3よりも小さくなったことを条件として指示を出力することで、着座者が基準の姿勢でほぼ静止した状態であるときに、所定の動作をすべき指示がなされるので、反射神経を精度よく測定することができる。
【0112】
これによれば、着座者に対してランダムに選択された異なる動作を指示することができるので、各動作に対する反射神経を着座者が知ることができる。また、着座者が、自分の得意な動作と、不得意な動作を把握することができる。
【0113】
指示の出力と各時間T11~T13の算出を複数回行い、各時間T11~T13の平均値が着座者に報知されるので、着座者が平均的な反射神経を知ることができる。
【0114】
サーバSVによって、着座者の属性と応答時間(各時間T11~T13)が蓄積されるので、例えば着座者の属性と同じ属性の他人の応答時間と、着座者の応答時間を比較することができる。
【0115】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。なお、以下の説明において、前記実施形態と略同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0116】
前記実施形態では、応答時間と評価値の両方を着座者に報知したが、本発明はこれに限定されず、応答時間のみを着座者に報知してもよいし、評価値のみを着座者に報知してもよい。
【0117】
前記実施形態では、応答時間として、反応時間T11と動作完了時間T13の両方を報知したが、本発明はこれに限定されず、応答時間として、反応時間と動作完了時間の少なくとも一方を報知すればよい。
【0118】
前記実施形態では、第1閾値と第2閾値を同じ値としたが、本発明はこれに限定されず、第1閾値と第2閾値は、異なる値であってもよい。例えば、第2閾値は、第1閾値よりも小さな値であってもよい。また、第1閾値および第2閾値を各指示に応じて異なる値にしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2指示に対応した第1閾値および第2閾値と、第3指示に対応した第1閾値および第2閾値を、同じ値に設定してもよい。
【0119】
前記実施形態では、第1指示に対応した圧力センサを、着座者の臀部の下に配置される1つの圧力センサ21Lとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、着座者の臀部の下に配置される4つの圧力センサ21L,21R,22L,22Rとしてもよい。この場合、スマートフォンSPは、例えば、4種類の圧力値の微分値のすべて、または、平均値が第3閾値TH3よりも小さいことを条件として、第1指示を出力してもよい。また、スマートフォンSPは、4種類の微分値のうちの1つが、第1指示に対応した閾値TH11を超えた場合に、着座者が所定の動作を開始したと判定してもよい。さらに、スマートフォンSPは、所定の動作を開始したと判定した後、4種類の微分値のすべてが、第1指示に対応した閾値TH11よりも小さくなった場合に、所定の動作が完了したと判定してもよい。
【0120】
前記実施形態では、シートSとして、乗物用シートを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、病院などの施設に設置されるシートなどであってもよい。本発明に係るシートSを病院に設置した場合には、患者のリハビリにシートSを利用することができるため、本発明のシートSを有効に活用することができる。
【0121】
詳しくは、リハビリの必要な患者にアドバイスを送る療法士が、シートSで測定した患者の反射神経を、スマートフォンSPのディスプレイDSPから定量的に見て取ることができる。そのため、療法士の個人差によるバラツキを平準化することができる。また、シートSで測定した患者の反射神経に基づいて、療法士は、患者の回復度合いを見て取ることができる。また、図11に示すように、各動作に対応した反応時間等を数値化することで、療法士が、患者が正しい動きをやっているかを知ることができる。
【0122】
普段の反射神経よりも悪い結果の場合に、スマートフォンSPが着座者に注意を促す報知を行うように構成されていてもよい。例えば、図11に示す右膝上げ動作時の今回のベストタイムが、普段のベストタイム(例えば、過去数十回行ったベストタイムの平均値)よりも大きい値の場合に、スマートフォンSPが、「右脚の反射速度が非常に遅くなっているため、病院での受診をお勧めします。」などの注意を促すメッセージを着座者に報知してもよい。
【0123】
また、この際、身体の不具合を修正する運動、広告、病院、生活習慣改善案などを提案するようにスマートフォンSPを構成してもよい。
【0124】
また、反応時間などの目標を画面に表示し、着座者が目標を達成したら、ポイントを獲得できるようにスマートフォンSPを構成してもよい。ポイントは、例えば買い物などに使用できるポイントなどとすることができる。また、ポイントを所定数貯めた場合に、その人の趣味に合わせた情報(豆知識)を提供するようにスマートフォンSPを構成してもよい。
【0125】
また、反射神経測定ゲームは、高齢者の運転適性テストとして利用してもよいし、運転前の運転可能判断テストで利用してもよい。
【0126】
また、各動作からのずれを自動で判定してもよい。例えば、右膝上げ動作時において、指示を出力してから所定時間経過しても微分値が第1閾値を超えなければ、微分値と第1閾値との差に応じて、「もっと右膝を上げてください。」というメッセージや、「あと少しだけ右膝を上げてください。」というメッセージなどを用いて、エラーを報知してもよい。
【0127】
サーバSVに蓄積した各属性の応答時間に基づいて、各属性の指標を作ってもよい。
【0128】
前記実施形態では、シートSの座面の一部(一点)にかかる圧力を検出する圧力センサを例示したが、本発明はこれに限定されず、圧力センサは、例えば、座面全体にかかる圧力の分布を検出する圧力分布センサであってもよい。そして、スマートフォンSPは、圧力分布に基づいて、着座者が正しい動作をしたかを判断してもよい。また、圧力分布センサの上に、前記実施形態のような圧力センサを設けてもよい。
【0129】
センサは、圧力センサに限らず、光センサ、音を検知するセンサ、位置を検出するセンサ、静電容量センサなどであってもよい。光センサや静電容量センサの場合、所定の動作は、例えば、センサで検知される位置に手を置いたり、その位置から手をどかしたりする動作であってもよい。音を検知するセンサの場合、所定の動作は、着座者が声を発することであってもよい。
【0130】
動作の判定は、微分値に限らず、圧力値に基づいて判定してもよい。
【0131】
前記実施形態では、端末としてスマートフォンSPを例示したが、本発明はこれに限定されず、端末は、例えばタブレットなどのスマートフォンSP以外の携帯端末であってもよい。また、端末は、シートに備え付けの端末であり、シートに一体に設けられていてもよい。また、端末は、カーナビゲーションシステムを構成する端末であってもよい。
【0132】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 シートシステム
21~26 圧力センサ
S シート
S10 シート本体
SP スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11