(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】高周波コネクタ及びフレキシブル配線基板
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6474 20110101AFI20240209BHJP
H01R 12/88 20110101ALI20240209BHJP
【FI】
H01R13/6474
H01R12/88
(21)【出願番号】P 2019088663
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜也
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186600(JP,A)
【文献】特開2011-159571(JP,A)
【文献】特開2017-004858(JP,A)
【文献】実開昭59-099381(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6474
H01R 12/00,12/50-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線基板が電気的に接続される高周波コネクタであって、
インシュレータと、
前記フレキシブル配線基板の幅方向に同列に配置された複数のパッドに対して個別に電気的に接続されるべく前記インシュレータ
の幅方向に配列された複数のコンタクト端子にして、複数のグランド端子及び複数の信号端子を含む複数のコンタクト端子とを備え、
前記グランド端子及び前記信号端子それぞれが、前記インシュレータによって片持ち状に支持されたアーム部を含み、前記アーム部が、コンタクト部と、前記コンタクト部からアーム先端側に延びる傾斜ガイド部を含み、
前記信号端子における前記傾斜ガイド部の長さは、前記グランド端子における前記傾斜ガイド部の長さよりも短
く、
前記信号端子のコンタクト部は、前記グランド端子のコンタクト部よりもアーム基端側にオフセットされている、高周波コネクタ。
【請求項2】
前記信号端子の前記傾斜ガイド部の長さは、前記グランド端子の前記傾斜ガイド部の長さの1/2以下である、請求項1に記載の高周波コネクタ。
【請求項3】
前記グランド端子及び前記信号端子それぞれが、前記アーム部の片持ち状の支持のために前記インシュレータに埋め込まれた埋め込み部と、外部配線が電気的に接続される外部接続部を含み、前記埋め込み部が平坦に延びる部分であり、前記外部接続部が2箇所で屈曲した部分である、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記インシュレータは、前記傾斜ガイド部と比較してアーム基端側からより離間して設けられた1以上のガイド突起を有し、
前記1以上のガイド突起は、前記高周波コネクタに結合されるべきフレキシブル配線基板の幅方向の反りを矯正するように設けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高周波コネクタ。
【請求項5】
前記1以上のガイド突起は、前記コンタクト部が凸状に突出する方向と同じ方向に突出して設けられる、請求項4に記載の高周波コネクタ。
【請求項6】
前記複数のコンタクト端子は、1以上のグランド端子及び1以上の信号端子を含む複数のサブセットを含み、
前記1以上のガイド突起は、隣接して配置された前記サブセットの間の中間領域に対応して設けられた中間ガイド突起を含む、請求項4又は5に記載の高周波コネクタ。
【請求項7】
前記1以上のガイド突起は、前記フレキシブル配線基板の幅方向中央と幅方向両端に対応付けて設けられた少なくとも3つのガイド突起を含む、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の高周波コネクタ。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の高周波コネクタに対して結合され
るフレキシブル配線基板であって、前記1以上のガイド突起との干渉を回避するための1以上の開口又は切り欠き部を有する、フレキシブル配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波コネクタ及びフレキシブル配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では板状金属材を打ち抜いて得られた接触子がハウジングに取り付けられている(同文献の
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタに対して基板が動かされて電気的及び機械的に結合される場合、コネクタのコンタクト端子が座屈してしまうことを抑制するため、コンタクト端子にガイド傾斜部を設けることが一般的である。しかしながら、このガイド傾斜部が、コンタクト端子を介して伝送される高周波信号の伝送線路に対してオープンスタブとして機能してしまうと、インピーダンスの小さな不整合が高周波帯域(30GHz以上)に影響して高周波伝送特性が劣化するため好ましくない。本願発明者は、このような知見に照らして、高周波伝送特性が改善されたコネクタを提供する意義を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る高周波コネクタは、
インシュレータと、
前記インシュレータにおいて所定方向に配列された複数のコンタクト端子にして、複数のグランド端子及び複数の信号端子を含む複数のコンタクト端子とを備え、
前記グランド端子及び前記信号端子それぞれが、前記インシュレータによって片持ち状に支持されたアーム部を含み、前記アーム部が、コンタクト部と、前記コンタクト部からアーム先端側に延びる傾斜ガイド部を含み、
前記信号端子における前記傾斜ガイド部の長さは、前記グランド端子における前記傾斜ガイド部の長さよりも短い。
【0006】
幾つかの実施形態においては、前記信号端子の前記傾斜ガイド部の長さは、前記グランド端子の前記傾斜ガイド部の長さの1/2以下である。
【0007】
幾つかの実施形態においては、前記信号端子のコンタクト部は、前記グランド端子のコンタクト部よりもアーム基端側にオフセットされている。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記インシュレータは、前記傾斜ガイド部と比較してアーム基端側からより離間して設けられた1以上のガイド突起を有し、
前記1以上のガイド突起は、前記高周波コネクタに結合されるべきフレキシブル配線基板の幅方向の反りを矯正するように設けられる。
【0009】
幾つかの実施形態においては、前記1以上のガイド突起は、前記コンタクト部が凸状に突出する方向と同じ方向に突出して設けられる。
【0010】
前記複数のコンタクト端子は、1以上のグランド端子及び1以上の信号端子を含む複数のサブセットを含み、
前記1以上のガイド突起は、隣接して配置された前記サブセットの間の中間領域に対応して設けられた中間ガイド突起を含む。
【0011】
前記1以上のガイド突起は、前記フレキシブル配線基板の幅方向中央と幅方向両端に対応付けて設けられた少なくとも3つのガイド突起を含む。
【0012】
本開示の一態様にかかるフレキシブル配線基板は、上述のいずれかの高周波コネクタに対して結合されるべきフレキシブル配線基板であって、前記1以上のガイド突起との干渉を回避するための1以上の開口又は切り欠き部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、高周波伝送特性が改善されたコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一態様に係る高周波コネクタの概略的な分解斜視図である。
【
図2】本開示の一態様に係る高周波コネクタの概略的な斜視図であり、高周波コネクタが前側から斜視される。
【
図3】本開示の一態様に係る高周波コネクタの概略的な斜視図であり、高周波コネクタが後側から斜視される。
【
図4】本開示の一態様に係る高周波コネクタの概略的な上面図である。
【
図5】本開示の一態様に係る高周波コネクタの概略的な前側面図である。
【
図6】本開示の一態様に係る高周波コネクタにおける
図5のVI-VI線に沿う概略的な断面図であり、ロックカバーがロック状態にある。
【
図7】本開示の一態様に係るコネクタにおける
図5のVII-VII線に沿う概略的な断面図であり、ロックカバーが非ロック状態にある。
【
図8】本開示の一態様に係るコネクタにおける信号端子とグランド端子の位置関係を示す概略的な側面図である。
【
図9】本開示の一態様に係るコネクタに結合されるフレキシブル配線基板の結合端の概略的な上面図である。
【
図10】
図10(a)は、左右端に対して左右中央が凹んだ状態のフレキシブル配線基板を示す。
図10(b)は、コネクタのガイド突起によりフレキシブル配線基板の反りが低減されることを示す。
【
図11】
図11(a)は、左右端に対して左右中央が張り出た状態のフレキシブル配線基板を示す。
図11(b)は、コネクタのガイド突起によりフレキシブル配線基板の反りが低減されることを示す。
【
図12】本開示の一態様に係る高周波コネクタにおいて、ロックカバーが非ロック状態においてフレキシブル配線基板が挿入されることを示す模式図である。
【
図13】本開示の一態様に係る高周波コネクタにおいて、フレキシブル配線基板がグランド端子のガイド傾斜部により案内されることを示す模式図である。
【
図14】本開示の一態様に係る高周波コネクタにおいて、ロックカバーが非ロック状態からロック状態に回動され、フレキシブル配線基板がロックカバーとインシュレータの間で挟まれることを示す模式図である。
【
図15】本開示の一態様に係る高周波コネクタにおいてフレキシブル配線基板がロックカバーとインシュレータの間で挟まれ、フレキシブル配線基板のパッドがコンタクト端子に接触した状態を示す模式図である。
【
図16】本開示の別態様に係る高周波コネクタの概略的な断面図であり、グランド端子に対して信号端子が後方にオフセットされていない。
【
図17】本開示の別態様に係る高周波コネクタにおけるグランド端子と信号端子の配列を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1乃至
図17を参照しつつ、本開示に係る様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された高周波コネクタにのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な高周波コネクタにも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0016】
図1は、高周波コネクタ9の概略的な分解斜視図である。
図2及び
図3は、高周波コネクタ9の概略的な斜視図である。高周波コネクタ9の構造を説明するため、次のように方向が定義される。
図1に示すように、幅方向は、L,Riの間を延びる双頭矢印により特定される。後述の説明から分かるように、幅方向は、ロックカバーの回動軸に沿う方向に等しい。代替的として、幅方向を左右方向と呼ぶこともできる。厚み方向は、U,Dの間を延びる双頭矢印により特定される。前後方向は、F,Reの間を延びる双頭矢印により特定される。RiからLに向かう方向が左方と呼ばれ、反対が右方と呼ばれる。DからUに向かう方向が上方と呼ばれ、反対が下方と呼ばれる。ReからFに向かう方向が前方と呼ばれ、反対が後方と呼ばれる。本段落で述べた方向は、本明細書の以下の記述又は図面の内容に照らして再定義可能であるものとする。
【0017】
高周波コネクタ9は、樹脂パーツと金属パーツの複合体であり、配線基板を機械的に固定する役割と配線基板を外部配線、ひいては外部回路に対して電気的に接続する役割を担う。以下、高周波コネクタ9に対して結合される配線基板の一例としてフレキシブル配線基板が参照されるが、これに限られない。高周波コネクタ9に対して結合される配線基板が可撓性を有しない形態も当然に想定される。外部配線は、例えば、高周波コネクタ9が実装された基板(不図示)上の配線である。高周波コネクタ9は、リフロー工程により実装基板に対して固定され得る。外部回路は、例えば、高周波コネクタ9が実装された基板上の回路である。
【0018】
図1乃至
図3に示すように、高周波コネクタ9は、インシュレータ10と、インシュレータ10により回動可能に支持されたロックカバー30を有する。
図1では、インシュレータ10に設けられたコンタクト端子20及び押圧片40を明示するため、インシュレータ10からロックカバー30が上方に取り外されている。インシュレータ10には、その幅方向にコンタクト端子20と押圧片40が設けられる。ロックカバー30には、その幅方向にロック部34とスロット35が設けられる。ロック部34は、押圧片40により押圧されてフレキシブル配線基板8をコンタクト端子20側に押圧する。これにより、フレキシブル配線基板8がロック部34とコンタクト端子20の間でロックされる。なお、高周波コネクタ9が、ロックカバー30や押圧片40を有しない形態も想定される。なお、インシュレータ10及びロックカバー30は、プラスチック材料(例えば、LCP)から成り、コンタクト端子20及び押圧片40は、導電性材料(例えば、りん青銅といった金属)から成る。コンタクト端子20は、表面保護又は半田ぬれ性を確保するためにメッキ(例えば、金メッキ)が施され得る。
【0019】
インシュレータ10は、高周波コネクタ9の幅方向(左右方向)において長尺であり、同方向において第1端部11と第2端部12を有する。第1端部11を右側端部と呼び、第2端部12を左側端部と呼んでも良い。インシュレータ10は、更に、第1端部11と第2端部12の間を延びる平板部13と壁部14を有する。平板部13は、壁部14の前方に間隔を開けて配置される。第1端部11及び第2端部12の各々に取付部18が設けられ、各取付部18に金属製の補強部材19が取り付けられる。第1端部11と第2端部12の間でロックカバー30が回動可能に軸支される。
【0020】
ロックカバー30は、インシュレータ10の第1端部11と第2端部12の間で回動可能に軸支される。ロックカバー30は、インシュレータ10とは別に射出成形により成形され、インシュレータ10に対して取り付けられる。ロックカバー30は、第1端部31、第2端部32、及び第1端部31と第2端部32の間を延びるカバー本体33を有する。第1端部31には右方に突出した凸部36が設けられ、インシュレータ10の第1端部11の凹部66に嵌合する。第1端部31に凹部が設けられ、インシュレータ10の第1端部11の凸部が設けられる形態も想定される。第2端部32には左方に突出した凸部37が設けられ、インシュレータ10の第2端部12の凹部77に嵌合する。第2端部32に凹部が設けられ、インシュレータ10の第2端部12に凸部が設けられる形態も想定される。
【0021】
インシュレータ10には、
図1及び
図4に示すように、複数の信号端子20Sと複数のグランド端子20Gが設けられ、端的には、1以上の信号端子20Sと1以上のグランド端子20Gの組み合わせから成る2以上の端子配列サブセット20Uが設けられる。端子配列サブセット20Uは、インシュレータ10の幅方向に配列される。必ずしもこの限りではないが、端子配列サブセット20Uは、信号端子20Sのペアと、信号端子20Sのペアを挟むグランド端子20Gのペアから構成された4端子サブセットである。端子配列サブセット20UをGSSG端子配列サブセットと呼ぶことができ、ここで、Gは、グランド端子を表し、Sは信号端子を表す。信号端子20Sのペアは、差動信号の伝送のために用いられ得る。高周波コネクタ9の幅方向において隣接する端子配列サブセット20Uの間に押圧片40が配置される。
【0022】
インシュレータ10に設けられる各押圧片40は、端子配列サブセット20Uの配列方向において隣接する一方の端子配列サブセット20Uに含まれる少なくとも一つの信号端子20Sと他方の端子配列サブセット20Uに含まれる少なくとも一つの信号端子20Sの間に設けられる。高周波信号の伝送線路である信号端子20Sに対して押圧片40が与え得る電気的な影響、例えば、寄生容量成分が低減される。
【0023】
コンタクト端子20は、インサート成形によってインシュレータ10に部分的に埋め込まれて固定される(
図6,7参照)。コンタクト端子20は、インシュレータ10、端的には、その壁部14によって片持ち状に支持されたアーム部20Aと、インシュレータ10に埋め込まれた埋め込み部26と、外部配線との電気的な接続のための外部接続部27を含む。アーム部20Aは、アーム部20Aの基端部を中心として上下に揺動可能である。埋め込み部26は、前後方向に平坦に延びる。外部接続部27は、2箇所で屈曲している。外部接続部27の後端部は、高周波コネクタ9の実装基板上に載置される。
【0024】
アーム部20Aは、アーム部20Aのバネ性のため、フレキシブル配線基板8により押されて下方に変位した位置から初期位置に弾性的に復帰可能である。アーム部20Aは、
図8に示すように形状づけられた金属プレートであり、その厚み方向が上下方向に一致し、その幅方向が左右方向に一致する。インシュレータ10に対するコンタクト端子20の固定の態様は図示のものに限らず、アーム部20Aの厚み方向が上下方向又はこれ以外の方向に一致する形態も想定される。言うまでもなく、コンタクト端子20がインシュレータ10に圧入されて固定される形態も想定される。
【0025】
アーム部20Aは、基端側傾斜部21と、コンタクト部22と、コンタクト部22からアーム先端側に延びる傾斜ガイド部23を含む。基端側傾斜部21は、アーム部20Aの基端部とコンタクト部22の間を延び、ここでは、前方に向かうに応じて斜め上方に延びる。コンタクト部22は、フレキシブル配線基板8のパッドに対して接触して電気的に接続されるべき部分であり、ここでは、基端側傾斜部21と傾斜ガイド部23の間で上側に凸状に湾曲する。傾斜ガイド部23は、コンタクト端子20が座屈しない方向にフレキシブル配線基板8を案内する部分であり、ここでは、前方に向かうに応じて斜め下方に延びる。
【0026】
図8に示すように、信号端子20Sにおける傾斜ガイド部23の長さL1は、グランド端子20Gにおける傾斜ガイド部23の長さL2よりも短い。これにより、コンタクト端子20に含まれるオープンスタブがより短長になり、高周波帯域(30GHz以上)に影響するインピーダンスの小さな不整合が抑制され、高周波コネクタ9の高周波伝送特性が高められる。必ずしもこの限りではないが、コンタクト端子20におけるコンタクト部22と傾斜ガイド部23の境界は、コンタクト部22の湾曲面と傾斜ガイド部23の平坦面の境界により定めることができる。幾つかの場合、信号端子20Sの傾斜ガイド部23の長さL1は、グランド端子20Gの傾斜ガイド部23の長さL2の1/2以下である。
【0027】
加えて、信号端子20Sのコンタクト部22は、グランド端子20Gのコンタクト部22よりもアーム基端側にオフセットされる。グランド端子20Gのより長い傾斜ガイド部23が、信号端子20Sの短長の傾斜ガイド部23よりも先にフレキシブル配線基板8に接触することが促進される。結果として、グランド端子20Gの傾斜ガイド部23によってフレキシブル配線基板8がより円滑に案内されてコンタクト端子20の座屈が抑制される。なお、図示例では、GSSG端子配列サブセット20Uにおいて信号端子ペアの傾斜ガイド部23が左右両側においてグランド端子ペアの傾斜ガイド部23により挟まれ、コンタクト端子20の座屈が更に抑制される。
【0028】
以下、高周波コネクタ9のロック機能に関して主に説明する。
図1及び
図7に示すように、ロックカバー30の第1端部31と第2端部32の間において複数のロック部34が同軸上に配置される。各ロック部34は、コンタクト部22の直上の位置でロックカバー30の回動に応じてロックカバー30の回動軸に関してロック位置と非ロック位置の間で回動する。ロック部34が非ロック位置の時、高周波コネクタ9に対してフレキシブル配線基板8が挿入される(
図7,
図14参照)。ロック部34がロック位置の時、ロック部34とコンタクト端子20の間でフレキシブル配線基板8がロックされる(
図15参照)。このようにロックされる時、フレキシブル配線基板8は、コンタクト端子20によってロック部34に向けて付勢された状態となり、コンタクト端子20とロック部34の間でフレキシブル配線基板8がより強固に挟まれる。
【0029】
ロック部34は、高周波コネクタ9の幅方向に直交する断面において1以上の(有利には複数の)弧状面を有する。
図7に示すように、ロック部34は、ロックカバー30の回動軸に対して直交する断面において反対側を臨むように設けられた第1及び第2弧状面34m,34nを含む。ロックカバー30が非ロック状態(ロック部34が非ロック位置)の時、ロック部34の第1弧状面34mが後方を臨み、第2弧状面34nが前方を臨む。ロックカバー30がロック状態(ロック部34がロック位置)の時、ロック部34の第1弧状面34mが上方を臨み、第2弧状面34nが下方を臨む。第1弧状面34mは、第2弧状面34nよりも大きい曲率半径を有する。第1弧状面34mと第2弧状面34nの間には第1弧状面34mから第2弧状面34nに向けてお互いに接近するテーパー状の傾斜面が設けられる。
【0030】
なお、各ロック部34は、高周波コネクタ9の幅方向に直交する断面において同一の断面形状を有するが、これに限られない。ロックカバー30に設けられるロック部34の個数は、インシュレータ10に対して取り付けられる押圧片40の個数と同一であるが、これに限られない。ロック部34は、ロックカバー30の回動軸上に配される部分を含むが、これに限られない。ロック部34が、ロックカバー30の回動軸からオフセットして配置される形態も想定される。一つのロック部34が、ロックカバー30の第1端部31と第2端部32の間で連続的に延びる形態も想定される。この形態では、インシュレータ10に対して取り付けられる複数の押圧片40に対して共通の単一のロック部34が用いられる。
【0031】
ロックカバー30の幅方向に複数のスロット35が配置される。各スロット35は、ロック部34に隣接して配置され、これにより、ロックカバー30と押圧片40の干渉が回避される。スロット35は、ロック部34に隣接する位置で、ロックカバー30の上面30pと下面30qの間を貫通する。ロックカバー30が非ロック状態の時、押圧部44(その前端部)がスロット35に挿入される。ロックカバー30がロック状態の時、押圧部44(その前端部)がスロット35上に配置される。スロット35は、矩形状の上側口及び下側口を有する。上側口は、下側口よりも広い開口面積を有する。
【0032】
ロックカバー30の幅方向に隣接するスロット35の間には、幅方向に延びるカバー本体33の部分が存在する(
図6参照)。ロックカバー30に設けられるスロット35の個数は、ロック部34の個数、押圧部44の個数と同一であり得るが、これに限られない。ロックカバー30の幅方向において隣接するスロット35を統合して一つの幅広なスロットを形成することもできる。
【0033】
インシュレータ10に設けられる各押圧片40は、ロックカバー30の回動軸に対して直交するように配置された平板部分を含み(端的には、平板材であり)、例えば、プレス機による金属板の打ち抜き加工により製造される。押圧片40は、ロック部34を下方に押圧する押圧部44を有する。押圧部44は、ロック部34の回動を妨げないように適切に形状付けられる。押圧部44は、ロック部34の第1弧状面34mを下方に押圧するための押圧面44pとこれに隣接して設けられた逃がし面44qを有する。ロックカバー30がロック状態から非ロック状態に回動する時、ロック部34の第1弧状面34mは、押圧面44pに接触又は対面した状態から逃がし面44qに接触又は対面した状態になる。逃がし面44qは、後方に向かうに応じて徐々に下降する傾斜面である。
【0034】
押圧片40は、少なくとも押圧片主部41と回転阻止部42を含む屈曲部材、端的には、L字形部材である。押圧片主部41は、高周波コネクタ9の前後方向(高周波コネクタ9に対するフレキシブル配線基板8の挿脱方向)に延び、インシュレータ10の貫通穴15に挿入される。回転阻止部42は、高周波コネクタ9の厚み方向に延び、インシュレータ10の壁部14の後方に配置される。フレキシブル配線基板8がロック部34とコンタクト端子20の間に挟まれる時、コンタクト端子20によりフレキシブル配線基板8が上方に付勢され、フレキシブル配線基板8によりロック部34、続いて押圧片40の押圧部44が上方に押される。押圧片40の押圧部44が上方に押され、押圧片40は、
図6及び
図7を正面視して時計回りの回転力を受ける。押圧片40に回転阻止部42を設けることにより、押圧片40の回転阻止部42とインシュレータ10、特にその壁部14の接触により、押圧片40は、上述の回転力に対して十分に耐えることができる。これにより、インシュレータ10に対する押圧片40のより強固な取付が促進される。
【0035】
押圧片主部41は、インシュレータ10の壁部14の貫通穴15に挿入される。貫通穴15は、矩形状の前口と後口を有する。インシュレータ10に対して押圧片40が取り付けられる時、貫通穴15の後口を介して貫通穴15内に押圧片主部41が挿入される。この挿入の結果、押圧片主部41が貫通穴15の前口から十分に突出し、回転阻止部42が壁部14に接触又は近接して配置される。なお、貫通穴15は、高周波コネクタ9の幅方向において狭く、高周波コネクタ9の厚み方向において長い開口である。インシュレータ10に対する押圧片40の取り付けは、他の様々な態様が想定され、図示例に限定されるべきではない。インシュレータ10の壁部14の上面に溝を設ける形態も想定される。
【0036】
コンタクト端子20及び押圧片40は、互いに電気的に非接続であって、インシュレータ10に対して別々に設けられる。これによりフレキシブル配線基板8との良好な電気的な接続のためにコンタクト端子20の形状を最適化することができる。また、コンタクト端子20に対してバネ性を付与することができ、フレキシブル配線基板8との良好な接触が確保される。更には、コンタクト端子20及び押圧片40が互いに非接触となるように分離したことにより、コンタクト端子20及び押圧片40が接触せず、かつ導通せず、高周波信号の伝送のためにコンタクト端子20の形状が最適化される。その結果、例えば、30GHz以上の高周波信号の伝送に高周波コネクタ9を用いることができる。
【0037】
インシュレータ10には、フレキシブル配線基板8との接触によってコンタクト端子20が座屈してしまうことを抑制するための1以上のガイド突起、図示例では、3つのガイド突起16a~16cが設けられる。3つの2ガイド突起16a~16cは、高周波コネクタ9に結合されるべきフレキシブル配線基板8の幅方向の反りを矯正するように設けられ、ここでは、フレキシブル配線基板8の幅方向中央と幅方向両端に対応付けて設けられる。ガイド突起16a~16cの位置又は形状は、高周波コネクタ9との電気的及び機械的な結合のためにフレキシブル配線基板8が動かされる方向に応じて設計される。なお、ガイド突起16cは、隣接して配置された端子配列サブセット20Uの間の中間領域に対応して設けられた中間ガイド突起である。
【0038】
各ガイド突起16a~16cは、傾斜ガイド部23と比較してアーム部20Aの基端側からより離間して設けられ、また、コンタクト部22が凸状に突出する方向と同じ方向に突出して設けられる。各ガイド突起16a~16cには、後方に向かうに応じて斜め上方に延びるガイド傾斜面が設けられ、これによりフレキシブル配線基板8が案内される。すなわち、フレキシブル配線基板8が高周波コネクタ9との結合のため後方に動かされる時、ガイド突起16a~16cのガイド傾斜面によって斜め上方に案内される。
【0039】
図9に示すように、フレキシブル配線基板8は、上述のガイド突起16a~16cとの干渉を回避するための開口又は切り欠き部86a~86cを有する。フレキシブル配線基板8のパッドがコンタクト部22に接触し、ロックカバー30とインシュレータ10の間でフレキシブル配線基板8がロックされる時、ガイド突起16a~16cは、各々、開口又は切り欠き部86a~86cに嵌合し、インシュレータ10からフレキシブル配線基板8が離脱することが阻止される。
【0040】
フレキシブル配線基板8は、
図10(a)又は
図11(a)のように反りを有する場合がある。フレキシブル配線基板8は、高周波コネクタ9に電気的及び機械的に結合される位置に向けて動かされる時、上述のガイド突起16a~16cによって斜め上方に案内される。
図10(a)に示すようにフレキシブル配線基板8が反る場合、フレキシブル配線基板8の中央領域がガイド突起16cによりロックカバー30側に押され、
図10(b)のように反りが低減される。
図11(a)に示すようにフレキシブル配線基板8が反る場合、フレキシブル配線基板8の左右の端部領域がガイド突起16a,16bによりロックカバー30側に押され、
図11(b)のように反りが低減される。フレキシブル配線基板8の平坦性が高められた状態でフレキシブル配線基板8のパッドとコンタクト端子20が接触し、フレキシブル配線基板8と高周波コネクタ9の安定した電気的接続が促進される。
【0041】
インシュレータ10は、誘電体50を収容する収容部10Hを含む。誘電体50は、例えば、液晶ポリマー(LCP)といった導電性樹脂から成る。押圧片40、特にその回転阻止部42は、収容部10Hから誘電体50が脱落することを阻止する。誘電体50は、高周波信号にリップルが生じることを抑制するために設けられる。
【0042】
図12乃至
図15を参照して高周波コネクタ9に対してフレキシブル配線基板8を取り付ける方法について説明する。
図12に示すように、まず、ロックカバー30を後方に回動し、ロック部34を非ロック位置まで回動させる。ロックカバー30が非ロック状態の時、平板部13上にロックカバー30が配されない。従って、ロックカバー30により妨害されることなく、平板部13上にフレキシブル配線基板8の挿入端を簡単に配置することができる。
【0043】
図13に示すようにコンタクト端子20に向けてフレキシブル配線基板8が動かされる。フレキシブル配線基板8の挿入端は、インシュレータ10の平板部13の上面に設けられたガイド突起16a~16cによって後方に向かって斜め上方に案内され、コンタクト端子20の座屈が抑制される。フレキシブル配線基板8は、その幅方向において平坦ではない。従って、ガイド突起16aとガイド突起16cの間において、又は、ガイド突起16aとガイド突起16cの間において、フレキシブル配線基板8の挿入端は、グランド端子20Gの傾斜ガイド部23に接触し、後方に向かって斜め上方に案内され得る。フレキシブル配線基板8の挿入端は、グランド端子20Gの傾斜ガイド部23のみではなく信号端子20Sの傾斜ガイド部23にも接触し得る。例えば、フレキシブル配線基板8の挿入端によってグランド端子20Gが後方に押され、フレキシブル配線基板8が信号端子20Sの傾斜ガイド部23に接触する。
【0044】
図14に示すように、フレキシブル配線基板8は、壁部14の前壁面に衝突して停止する。続いて、ロックカバー30を前側に回動させ、ロック部34をロック位置まで回動させる。これにより、
図15に示すように、ロックカバー30のロック部34とコンタクト端子20のコンタクト部22の間でフレキシブル配線基板8が挟まれてロックされ、同時に、フレキシブル配線基板8のパッド88がコンタクト端子20のコンタクト部22に接触して導通する。なお、インシュレータ10とロックカバー30の間でフレキシブル配線基板8が挟まれる時、第1弧状面34mと押圧部44が接触し、第2弧状面34nとフレキシブル配線基板8が接触する。
【0045】
図16は、別態様に係る高周波コネクタ9の概略的な断面図である。
図17は、別態様に係る高周波コネクタにおけるグランド端子20Gと信号端子20Sの配列を示す概略的な斜視図である。
図16及び
図17に示すように、グランド端子20Gに対して信号端子20Sを後方にオフセットする必要はない。
【0046】
上述の教示を踏まえると、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0047】
8 フレキシブル配線基板
9 高周波コネクタ
10 インシュレータ
13 平板部
14 壁部
16a~16c ガイド突起
20 コンタクト端子
20A アーム部
20G グランド端子
20S 信号端子
20U 端子配列サブセット
22 コンタクト部
23 傾斜ガイド部
30 ロックカバー
40 押圧片