(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020007589
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 光隆
(72)【発明者】
【氏名】浮津 博伸
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-517422(JP,A)
【文献】特開2006-329909(JP,A)
【文献】特開2009-300164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01L 1/14
G01G 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測領域に複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサと、
前記荷重センサを制御して荷重を計測する制御部と、を備え、
前記制御部は、
所定数の前記センサ部ごとに荷重を計測する第1モードと、
前記第1モードよりも多い数の前記センサ部ごとに荷重を計測する第2モードと、を選択的に実行し、
前記第2モードにおける検出周期を前記第1モードにおける検出周期よりも長く設定する、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重検出装置において、
前記制御部は、
前記第2モードの実行時に前記計測領域に物体が載置されていることを示す荷重を検出したことに基づいて、動作モードを前記第1モードに切り替え、
前記第1モードの実行時に前記計測領域に物体が載置されていることを示す荷重を検出していないことに基づいて、動作モードを前記第2モードに切り替える、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷重検出装置において、
前記制御部は、前記第1モードとして、互いに異なる数の前記センサ部ごとに荷重を計測する複数のモードの何れかを設定するための指示を受け付ける、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷重検出装置において、
前記制御部は、少なくとも前記第1モードと前記第2モードから、荷重の検出に用いるモードを選択する指示を受け付ける、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷重検出装置において、
前記制御部は、前記第1モードよりも多く前記第2モードより少ない数の前記センサ部ごとに荷重を計測する第3モードをさらに備え、
前記制御部は、前記第1モード、前記第2モードおよび前記第3モードから、荷重の検出に用いるモードを選択する指示を受け付ける、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の荷重検出装置において、
前記第2モードは、全ての前記センサ部により同時に荷重を検出するモードである、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の荷重検出装置において、
前記第1モードは、前記センサ部ごとに荷重を検出するモードである、
ことを特徴とする荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から付与される荷重を複数のセンサにより検出する荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷重センサは、産業機器、ロボットおよび車両などの分野において、幅広く利用されている。近年、コンピュータによる制御技術の発展および意匠性の向上とともに、人型のロボットおよび自動車の内装品等のような自由曲面を多彩に使用した電子機器の開発が進んでいる。それに合わせて、各自由曲面に高性能な荷重センサを装着することが求められている。
【0003】
以下の特許文献1には、誘電層の上下に、それぞれ、複数の第1電極と複数の第2電極とが互いに交差するように配置された静電容量型センサ装置が記載されている。第1電極の上面に外力が付与されると、誘電層が圧縮されて、第1電極と第2電極との距離が縮まる。これにより、第1電極と第2電極との交差部分の静電容量が変化する。
【0004】
測定動作時には、複数の第1電極に対し、順番に、電圧印加素子から矩形波電圧が印加される。矩形波電圧が印加される第1電極が、入力側切替回路により切り替えられる。また、複数の第2電極が、順番に、電圧計測器に接続される。電圧計測器に対する接続の切り替えは、出力側切替回路によって行われる。電圧計測部は、入力側切替回路と出力側切替回路とによって切り替えがなされた状態で、第1電極と第2電極との間の静電容量に応じた電圧を計測する。この電圧値は、これら第1電極と第2電極との交差部分の静電容量に対応する。この電圧値に基づいて、当該交差部分に付与された外力の大きさが測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構成では、計測領域全体の荷重を検出する際に、入力側切替回路と出力側切替回路とが頻繁に切り替えられるため、装置の消費電力が大きくなってしまう。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、装置の消費電力を抑制することが可能な荷重検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様は、荷重検出装置に関する。本態様に係る荷重検出装置は、計測領域に複数のセンサ部がマトリクス状に配置された荷重センサと、前記荷重センサを制御して荷重を計測する制御部と、を備える。前記制御部は、所定数の前記センサ部ごとに荷重を計測する第1モードと、前記第1モードよりも多い数の前記センサ部ごとに荷重を計測する第2モードと、を選択的に実行し、前記第2モードにおける検出周期を前記第1モードにおける検出周期よりも長く設定する。
【0009】
本態様に係る荷重検出装置によれば、第2モードでは、より多い数ごとに計測処理が行われるため、計測領域全体の荷重を検出するための頻度および処理負荷を軽減でき、消費電力を抑制できる。よって、荷重の検出において第2モードを選択的に実行することにより、装置の消費電力を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、装置の消費電力を抑制することが可能な荷重検出装置を提供できる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る、基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、実施形態1に係る、被覆付き銅線を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態1に係る、糸を模式的に示す斜視図である。
図2(b)は、実施形態1に係る、基材が設置されたことにより組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、実施形態1に係る、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線の周辺を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサを模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、荷重検出装置の回路構成を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る、個別モードにおいて矩形電圧の印加が開始された後の状態を模式的に示す回路図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る、放電が行われる状態を模式的に示す回路図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、個別モードおよび全体モードの概要を説明するための概念図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る、全体モードにおいて矩形電圧の印加が開始された後の状態を模式的に示す回路図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る、制御部による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)~(d)は、実施形態2に係る、ブロックモードの概要を説明するための概念図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る、ブロックモードにおいて矩形電圧の印加が開始された後の状態を模式的に示す回路図である。
【
図13】
図13(a)は、実施形態2に係る、ブロックモードおよび個別モードの何れを有効にするかを設定するための設定画面の構成を示す模式図である。
図13(b)は、実施形態2に係る、制御部によるモードの受付処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る、制御部による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る、自動モード、全体モード、ブロックモードおよび個別モードの何れを有効にするかを設定するための設定画面の構成を示す模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係る、制御部による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
【
図17】
図17(a)~(d)は、変更例に係る、ブロックモードの概要を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る荷重センサは、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0014】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0015】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0016】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0017】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0018】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0019】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0020】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0021】
以下の実施形態における荷重センサは、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる静電容量型荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における荷重検出装置は、上記のような荷重センサを備える荷重検出装置である。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0023】
<実施形態1>
図1(a)~
図4を参照して、荷重センサ1について説明する。
【0024】
図1(a)は、基材11と、基材11の上面に設置された4つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0025】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0026】
導電弾性体12は、基材11の上面(Z軸正側の面)に接着剤等により設置される。
図1(a)では、基材11の上面に、4つの導電弾性体12が設置されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に互いに離間した状態で並んで設置されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0027】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0028】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))、およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0029】
図1(b)は、
図1(a)の構造体に載置された4つの被覆付き銅線13を模式的に示す斜視図である。
【0030】
被覆付き銅線13は、
図1(a)に示した4つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、4つの被覆付き銅線13が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。各被覆付き銅線13は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。4つの被覆付き銅線13は、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、導電弾性体12に交差するように並んで配置されている。各被覆付き銅線13は、4つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線13の構成については、追って
図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0031】
図2(a)は、
図1(b)の構造体に設置された糸14を模式的に示す斜視図である。
【0032】
図1(b)のように4つの被覆付き銅線13が配置された後、各被覆付き銅線13は、被覆付き銅線13の長手方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に接続される。
図2(a)に示す例では、20個の糸14が、導電弾性体12と被覆付き銅線13とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線13を基材11に接続している。糸14は、導電性を有する材料により構成され、たとえば、繊維とその中に分散した導電性の金属材料から構成される。糸14に用いられる導電性の金属材料は、たとえば銀である。
【0033】
図2(b)は、
図1(b)の構造体に設置された基材15を模式的に示す斜視図である。
【0034】
図2(a)に示した構造体の上方から、
図2(b)に示すように、基材15が設置される。基材15は、絶縁性の部材である。基材15は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材15は、X-Y平面に平行な平板形状を有し、X-Y平面における基材15の大きさは、基材11と同様である。基材15の四隅の頂点が基材11の四隅の頂点に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材15が基材11に対して固定される。こうして、
図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0035】
図3(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線13の周辺を模式的に示す断面図である。
図3(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、
図3(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0036】
図3(a)に示すように、被覆付き銅線13は、銅線13aと、銅線13aを被覆する誘電体13bと、により構成される。銅線13aは、銅により構成されており、銅線13aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体13bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体13bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、Al
2O
3およびTa
2O
5などからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0037】
図3(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線13との間にかかる力、および、基材15と被覆付き銅線13との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、
図3(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材15の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線13によって導電弾性体12が変形する。なお、基材11の下面または基材15の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0038】
図3(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線13は、導電弾性体12に包まれるように導電弾性体12に近付けられ、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が増加する。これにより、被覆付き銅線13内の銅線13aと導電弾性体12との間の静電容量が変化し、この領域の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0039】
図4は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。
図4では、便宜上、糸14および基材15の図示が省略されている。
【0040】
図4に示すように、荷重センサ1の計測領域R10には、4つの導電弾性体12と4つの被覆付き銅線13とが交わる位置に、マトリクス状に複数のセンサ部A11~A14、A21~A24、A31~A34、A41~A44が配置されている。各センサ部は、導電弾性体12と被覆付き銅線13を含み、被覆付き銅線13は、静電容量の一方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12は、静電容量の他方の極(たとえば陰極)を構成する。すなわち、被覆付き銅線13の銅線13a(
図3(a)、(b)参照)は、荷重センサ1の一方の電極を構成し、導電弾性体12は、荷重センサ1の他方の電極を構成し、被覆付き銅線13の誘電体13b(
図3(a)、(b)参照)は、荷重センサ1において静電容量を規定する誘電体に対応する。
【0041】
各センサ部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線13が導電弾性体12に包み込まれる。これにより、被覆付き銅線13と導電弾性体12との間の接触面積が変化し、当該被覆付き銅線13と当該導電弾性体12との間の静電容量が変化する。被覆付き銅線13のX軸負側の端部およびケーブル12aのY軸負側の端部は、
図5を参照して後述する検出回路2に接続されている。
【0042】
図4に示すように、4つの導電弾性体12から引き出されたケーブル12aをラインL11、L12、L13、L14と称し、4つの被覆付き銅線13をラインL21、L22、L23、L24と称する。ラインL11に接続された導電弾性体12が、ラインL21~L24の被覆付き銅線13と交わる位置が、それぞれ、センサ部A11~A14であり、ラインL12に接続された導電弾性体12が、ラインL21~L24の被覆付き銅線13と交わる位置が、それぞれ、センサ部A21~A24であり、ラインL13に接続された導電弾性体12が、ラインL21~L24の被覆付き銅線13と交わる位置が、それぞれ、センサ部A31~A34であり、ラインL14に接続された導電弾性体12が、ラインL21~L24の被覆付き銅線13と交わる位置が、それぞれ、センサ部A41~A44である。
【0043】
センサ部A11に対して荷重が加えられると、センサ部A11において導電弾性体12と被覆付き銅線13との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、センサ部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他のセンサ部においても、当該他のセンサ部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他のセンサ部において加えられた荷重を算出することができる。
【0044】
次に、荷重検出装置3の構成について説明する。
【0045】
図5は、荷重検出装置3の回路構成を示す図である。荷重検出装置3は、上記のような荷重センサ1と、荷重センサ1に電気的に接続された検出回路2と、を備える。
図5において、便宜上、荷重センサ1については、被覆付き銅線13と導電弾性体12のみが図示されており、導電弾性体12は、線状に図示されている。
【0046】
検出回路2は、制御部21と、抵抗22と、第1切替部23と、等電位生成部24と、第2切替部25と、電圧計測部26と、スイッチ27と、抵抗28と、を備える。検出回路2は、荷重センサ1における静電容量の変化を検出するための検出回路である。
【0047】
制御部21は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。制御部21は、信号線を介して、抵抗22と、第1切替部23と、第2切替部25と、電圧計測部26とに接続されている。制御部21は、抵抗22を介して矩形の電圧信号(以下、「矩形電圧」と称する)を第1供給ラインL1に出力する。第1供給ラインL1は、抵抗22の下流側端子に接続されており、被覆付き銅線13の銅線13a(
図3(a)、(b)参照)に矩形電圧を供給する。制御部21により回路に出力された矩形電圧は、抵抗22と荷重センサ1のセンサ部とにより形成されるRC回路に印加される。第1供給ラインL1には、第1切替部23と、等電位生成部24と、電圧計測部26と、スイッチ27とが接続されている。
【0048】
第1切替部23は、制御部21の制御により、第1供給ラインL1を、被覆付き銅線13の銅線13aに対して、接続および非接続の何れかに選択的に切り替える。具体的には、第1切替部23は、4個のマルチプレクサ23aを備えている。4個のマルチプレクサ23aは、それぞれ、4個の被覆付き銅線13(銅線13a)に対応して設けられている。各マルチプレクサ23aの出力側端子に、被覆付き銅線13の銅線13aが接続されている。各マルチプレクサ23aの入力側端子は2つ設けられている。一方の入力側端子に第1供給ラインL1が接続されており、この入力側端子に、第1供給ラインL1および抵抗22を介して、制御部21から矩形電圧が印加される。マルチプレクサ23aの他方の入力側端子には何も接続されていない。
【0049】
等電位生成部24は、オペアンプであり、第1供給ラインL1の電位と等電位の電圧を第2供給ラインL2に出力する。
【0050】
第2切替部25は、制御部21の制御により、導電弾性体12を、第2供給ラインL2とグランドの何れかに選択的に切り替える。具体的には、第2切替部25は、4個のマルチプレクサ25aを備えている。4個のマルチプレクサ25aは、それぞれ、4個の導電弾性体12に対応して設けられている。各マルチプレクサ25aの出力側端子に、ケーブル12aを介して導電弾性体12が接続されている。各マルチプレクサ25aの入力側端子は2つ設けられている。一方の入力側端子に第2供給ラインL2が接続されており、この入力側端子に、第2供給ラインL2を介して、等電位生成部24から第1供給ラインL1の電位と等電位の電圧が印加される。マルチプレクサ25aの他方の入力側端子にはグランドが接続されている。
【0051】
電圧計測部26は、第1供給ラインL1の電位、すなわち、第1供給ラインL1とグランドとの電位差を測定し、測定した電位差を制御部21に出力する。
【0052】
スイッチ27および抵抗28は、第1供給ラインL1とグランドとの間に設置されている。スイッチ27は、制御部21の制御により、第1供給ラインL1を、抵抗28を介してグランドに対して接続および非接続の何れかに選択的に切り替える。
【0053】
制御部21は、抵抗22に対して印加する矩形電圧の電圧値および印加タイミングと、第1切替部23の切り替えタイミングと、第2切替部25の切り替えタイミングと、スイッチ27の切り替えタイミングと、を制御する。制御部21は、電圧計測部26により測定された第1供給ラインL1の電位に基づいて、対象となるセンサ部にかかる荷重を算出する。
【0054】
次に、荷重検出時の制御部21の制御について説明する。
【0055】
荷重検出装置3が起動すると、制御部21は、たとえば以下に示すように、被覆付き銅線13と導電弾性体12との交差位置におけるセンサ部の静電容量を順に測定し、各センサ部にかかる荷重を算出する。
【0056】
たとえば、
図5において最も左の導電弾性体12と最も上の被覆付き銅線13とが交わる位置のセンサ部A11について荷重の測定を行う場合について説明する。
【0057】
制御部21は、センサ部A11について測定を開始すると、計測対象のセンサ部A11の電極を構成する被覆付き銅線13の銅線13a(
図3(a)、(b)参照)に接続されたマルチプレクサ23aが第1供給ラインL1に接続されるよう、このマルチプレクサ23aの切り替えを行う。また、制御部21は、他の3個のマルチプレクサ23aが第1供給ラインL1に対して非接続となるよう、他の3個のマルチプレクサ23aの切り替えを行う。
【0058】
また、制御部21は、計測対象のセンサ部A11の電極を構成する導電弾性体12に接続されたマルチプレクサ25aがグランドに接続されるよう、このマルチプレクサ25aの切り替えを行う。また、制御部21は、他の3個のマルチプレクサ25aが第2供給ラインL2に接続されるよう、他の3個のマルチプレクサ25aの切り替えを行う。
【0059】
続いて、制御部21は、スイッチ27を非接続状態に設定する。そして、制御部21は、抵抗22を介して矩形電圧を出力させる。
【0060】
図6は、センサ部A11が計測対象となっている場合に、矩形電圧の印加が開始された後の状態を模式的に示す回路図である。
図6において、太線は、第1供給ラインL1の電位と等電位の部分を示している。
【0061】
図6に示すように、矩形電圧の印加が開始されると、計測対象のセンサ部A11に、抵抗22を介して矩形電圧が印加され、計測対象のセンサ部A11に電荷がチャージされる。これに伴い、抵抗22の抵抗値Rと、荷重に応じたセンサ部A11の容量とで規定される時定数により、センサ部A11の電位が上昇する。この電位は、第1供給ラインL1の電位に反映される。そして、この電位は、電圧計測部26により測定されて、制御部21に出力される。
【0062】
制御部21は、矩形電圧の印加期間の所定のタイミングにおいて、電圧計測部26の測定電圧を参照し、この測定電圧と上記時定数および矩形電圧の電圧値とに基づいて、測定対象のセンサ部A11の静電容量Cを算出する。そして、制御部21は、静電容量Cに基づいて、センサ部A11にかかる荷重を算出する。
【0063】
このとき、測定対象のセンサ部A11と同じ行(同じ被覆付き銅線13)の他のセンサ部A21、A31、A41には、陰極側に第2供給ラインL2を介して第1供給ラインL1と等電位の電圧が印加されるため、陽極の電位と陰極の電位とがほぼ等しくなる。これにより、他のセンサ部A21、A31、A41に電荷が貯まることが抑制されるため、測定対象のセンサ部A11に適切に電荷が貯まり、センサ部A11の電圧を精度良く計測できる。
【0064】
なお、測定対象のセンサ部A11と同じ行(同じ被覆付き銅線13)にはない他の12個のセンサ部は、陽極が第1供給ラインL1から切り離されているため、これら他のセンサ部に貯まった電荷が、電圧計測部26におけるセンサ部A11の電位の測定に影響を及ぼすことはない。
【0065】
制御部21は、測定対象のセンサ部A11に対して荷重を算出すると、矩形電圧の印加を停止する。こうして1つのセンサ部における荷重の測定が終了する。その後、制御部21は、全ての導電弾性体12をグランドに接続させ、スイッチ27を接続状態に設定する。これにより、各センサ部に貯まった電荷が放電される。
【0066】
図7は、放電が行われる状態を模式的に示す回路図である。
【0067】
図6の状態から、制御部21は、矩形電圧の印加を停止し、導電弾性体12がグランドに接続されるよう、各マルチプレクサ25aの切り替えを行う。これにより、全てのセンサ部に貯まった電荷が放電される。また、制御部21は、スイッチ27を接続状態に設定することにより、計測対象とされたセンサ部A11が位置する被覆付き銅線13の銅線13aを、第1供給ラインL1、スイッチ27、および抵抗28を介してグランドに接続する。これにより、導電弾性体12の放電に加えて、被覆付き銅線13の放電も行われるため、さらに短時間で電荷を放電することができる。
【0068】
その後、制御部21は、次のセンサ部の荷重を測定するために、スイッチ27を非接続状態に設定し、次の計測対象のセンサ部の位置に応じて、マルチプレクサ23a、25aの接続状態を設定する。そして、制御部21は、矩形電圧の印加を開始する。こうして、制御部21は、各センサ部の静電容量を順に測定し、各センサ部にかかる荷重を算出する。
【0069】
ここで、上記のようにセンサ部ごとに荷重が計測される場合、計測領域R10(
図4参照)全体の荷重を検出するために、頻繁にマルチプレクサ23a、25aおよびスイッチ27の切り替えを行う必要がある。このように頻繁な切り替えが行われると、制御部21の処理負荷が増大するため、荷重検出装置3の消費電力が大きくなってしまう。そこで、発明者らは、個別モードと全体モードを設け、これら2つのモードを切替可能に設定した。
【0070】
図8(a)、(b)は、それぞれ、個別モードおよび全体モードの概要を説明するための概念図である。
【0071】
図8(a)に示すように、個別モードは、
図5、6を参照して説明したように、計測領域R10内においてセンサ部ごとに順に荷重を計測するモードである。個別モードでは、個別のセンサ部に対応する計測対象範囲R11が計測領域R10において移動され、計測対象範囲R11のセンサ部の荷重が順に計測される。これに対し、
図8(b)に示すように、全体モードは、全てのセンサ部を1つのセンサ部と見なして計測領域R10における荷重を1回で計測するモードである。全体モードでは、全てのセンサ部に対応する計測対象範囲R12が計測領域R10に対して設定され、計測対象範囲R12の全てのセンサ部の荷重が1回で計測される。
【0072】
実施形態1では、計測領域R10に物体が載置されている場合には、動作モードが個別モードに設定され、計測領域R10に物体が載置されていない場合には、動作モードが全体モードに設定される。これにより、計測領域R10に物体が載置されていない場合には、全体モードにより計測領域R10全体の荷重を検出するための頻度および処理負荷が軽減されるため、荷重検出装置3の消費電力を抑制できる。
【0073】
以下、
図9を参照して全体モードの場合の荷重の計測を説明し、
図10を参照して個別モードと全体モードの切替処理を説明する。
【0074】
図9は、全体モードにおいて全てのセンサ部が計測対象となっている場合に、矩形電圧の印加が開始された後の状態を模式的に示す回路図である。
図9において、太線は、第1供給ラインL1の電位と等電位の部分を示している。
【0075】
図9に示すように、全体モードの場合、制御部21は、全ての被覆付き銅線13(銅線13a)が第1供給ラインL1に接続されるよう各マルチプレクサ23aの接続状態を設定し、全ての導電弾性体12がグランドに接続されるよう各マルチプレクサ25aの接続状態を設定する。そして、制御部21は、スイッチ27を非接続状態に設定し、矩形電圧の印加を開始する。
【0076】
矩形電圧の印加が開始されると、全てのセンサ部に抵抗22を介して矩形電圧が印加され、全てのセンサ部に電荷がチャージされる。これに伴い、抵抗22の抵抗値Rと、計測領域R10(
図8(b)参照)全体にかかる荷重に応じた全てのセンサ部の静電容量を統合した合成静電容量とで規定される時定数により、第1供給ラインL1の電位が上昇する。この電位は、電圧計測部26により測定されて、制御部21に出力される。
【0077】
制御部21は、上述した個別のセンサ部にかかる荷重を算出する場合(個別モード)と同様に、矩形電圧の印加期間の所定のタイミングにおいて、電圧計測部26の測定電圧を参照し、この測定電圧と上記時定数および矩形電圧の電圧値とに基づいて、全てのセンサ部を1つのセンサ部として見なした場合の静電容量Cを算出する。そして、制御部21は、静電容量Cに基づいて、全てのセンサ部にかかる荷重を算出する。
【0078】
制御部21は、全てのセンサ部にかかる荷重を算出すると、矩形電圧の印加を停止する。こうして、全てのセンサ部における荷重の測定が終了し、計測領域R10における荷重が1回で計測される。その後、制御部21は、スイッチ27を接続状態に設定し、全てのセンサ部に貯まった電荷を放電させる。
【0079】
なお、全体モードの場合に算出される全てのセンサ部にかかる荷重は、個別モードの場合に各センサ部にかかる荷重を合計して算出した全てのセンサ部にかかる荷重と異なる場合がある。このような場合、全体モードで算出される全てのセンサ部にかかる荷重が、個別モードで算出される各センサ部にかかる荷重の合計に対応するように、制御部21は、計算式や対応テーブルを用いて、全体モードで算出される全てのセンサ部にかかる荷重を補正すればよい。
【0080】
図10は、制御部21による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
【0081】
荷重検出装置3が起動すると、制御部21は、初期設定として、動作モードを全体モードに設定する(S11)。続いて、制御部21は、動作モードが全体モードであるか否かを判定する(S12)。動作モードが全体モードである場合(S12:YES)、制御部21は、全センサ結合計測を行う(S13)。すなわち、
図8(b)に示したように、全てのセンサ部に対応する計測対象範囲R12が計測領域R10に対して設定され、
図9を参照して説明したように、全てのセンサ部の荷重が1回で計測され、計測領域R10に対する荷重が取得される。
【0082】
ステップS13の計測では、個別モードにおいてセンサ部ごとに要する計測時間よりも長い時間間隔(周期)で1回の計測が行われる。たとえば、ステップS13の計測では、個別モードにおいて1つのセンサ部に対する計測が行われる時間Tの16倍の時間(16T)の周期で1回の計測が行われる。すなわち、全体モードでは、直前の計測が開始された後、時間16Tが経過したタイミングでステップS13の全センサ結合計測が1回だけ行われる。なお、全センサ結合計測が行われる周期は、16Tに限られるものではなく、16Tよりも短くても長くてもよい。
【0083】
続いて、制御部21は、ステップS13で算出された計測値が閾値Wth以上であるか否かを判定する(S14)。閾値Wthは、計測領域R10に物体が載置されているか否かを判定可能な値であり、使用状況に応じて可変設定が可能である。閾値Wthは、たとえば、ノイズレベルよりも所定の比率または所定の値だけ大きい値である。
【0084】
計測値が閾値Wth未満である場合(S14:NO)、すなわち計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重が検出されていない場合、制御部21は、処理をステップS13に戻し、全体モードにおける計測を継続させる。この場合、制御部21は、前回の計測から上記周期が経過したタイミングで計測を行う。計測値が閾値Wth以上である場合(S14:YES)、すなわち計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重が検出された場合、制御部21は、動作モードを個別モードに設定し(S15)、処理をステップS12に戻す。
【0085】
動作モードが個別モードに設定され処理が戻されると、ステップS12の判定は、NOとなる。これにより、制御部21は、センサ個別計測を行う(S16)。すなわち、
図8(a)に示したように、計測対象範囲R11に対応する1つのセンサ部の荷重が計測され、当該計測対象範囲R11に対する荷重が取得される。
【0086】
なお、ステップS16の計測では、計測対象範囲R11に対する計測が、時間Tの周期で行われる。すなわち、個別モードでは、直前の計測が開始された後、時間Tが経過したタイミングでステップS16のセンサ個別計測が1回だけ行われる。
【0087】
続いて、制御部21は、全てのセンサ部の計測が終了したか否かを判定する(S17)。全てのセンサ部の計測が終了していない場合(S17:NO)、制御部21は、計測領域R10内で計測対象範囲R11を移動させて、処理をステップS16に戻し、センサ個別計測を継続させる。この場合、制御部21は、前回の計測から周期Tが経過したタイミングで計測を行う。なお、計測対象範囲R11は、たとえば、A11、A12、A13、A14、A21、A22、A23、A24、A31、A32、A33、A34、A41、A42、A43、A44の順に移動される。
【0088】
全てのセンサ部の計測が終了した場合(S17:YES)、制御部21は、全てのセンサ部に対してステップS16の処理が行われたことにより算出された計測値の合計が、閾値Wth未満であるか否かを判定する(S18)。計測値の合計が閾値Wth以上であると(S18:NO)、制御部21は、処理をステップS16に戻し、個別モードを継続させる。計測値の合計が閾値Wth未満であると(S18:YES)、制御部21は、動作モードを全体モードに設定し(S19)、処理をステップS12に戻す。
【0089】
動作モードが全体モードに設定され処理が戻されると、ステップS12の判定は、YESとなる。これにより、制御部21は、処理をステップS13に進めて、上記と同様の処理を実行する。
【0090】
<実施形態1の効果>
以上、実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0091】
制御部21は、動作モードとして、1つのセンサ部ごとに荷重を計測する個別モード(第1モード)と、全体のセンサ部を1つのセンサ部と見なして荷重を計測する全体モード(第2モード)とを選択的に実行する。このように、全体モードでは、個別モードよりも多い数ごとに計測処理が行われるため、計測領域R10全体の荷重を検出するための頻度および処理負荷を軽減でき、消費電力を抑制できる。よって、荷重の検出において全体モードが選択的に実行されることにより、荷重検出装置3の消費電力を抑制できる。
【0092】
制御部21は、全体モードの実行時に、計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重を検出したことに基づいて、動作モードを個別モードに切り替え、個別モードの実行時に、計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重を検出していないことに基づいて、動作モードを全体モードに切り替える。これにより、物体が載置されていない状態において、個別モードにより冗長な検出処理が繰り返されることを抑制できるため、消費電力を抑制できる。また、物体が載置されると、より精緻な領域ごとに荷重を検出可能な個別モードに切り替えられるため、物体の荷重の分布をより精緻に検出できる。したがって、この構成によれば、消費電力を抑制しつつ、物体の荷重分布を精度良く検出できる。
【0093】
制御部21は、全体モードにおける検出周期(16T)を、個別モードにおける検出周期(T)よりも長く設定する。全体モードでは全てのセンサ部にかかる荷重を一度に検出するため、個別モードで荷重を検出する場合に比べて、迅速に計測領域R10全体の荷重を検出できる。よって、全体モードにおける検出周期を個別モードより長くしても、計測領域R10全体の荷重を同程度の周期で検出できる。また、このように全体モードにおける検出周期を個別モードより長くすることにより、全体モード実行時の処理負荷を軽減でき、結果、消費電力を抑制できる。
【0094】
全体モードは、全てのセンサ部により同時に荷重を検出するモードである。したがって、全体モードが実行されることにより、荷重の検出頻度を顕著に抑制できる。これにより、消費電力を顕著に抑制できる。
【0095】
個別モードは、センサ部ごとに荷重を検出するモードである。したがって、個別モードが実行されることにより、荷重の検出単位を最も細かくできる。これにより、荷重の分布を最も微細に検出できる。
【0096】
<実施形態2>
実施形態1では、全体モードとの間で切り替えが行われるモードが個別モードであったが、実施形態2では、さらにブロックモードが設けられ、全体モードとの間で切り替えが行われるモード(第1モード)が、個別モードとブロックモードの何れかに設定される。
【0097】
図11(a)~(d)は、ブロックモードの概要を説明するための概念図である。
【0098】
図11(a)に示すように、ブロックモードは、計測領域R10内において、全体の個数よりも少ない複数のセンサ部ごとに順に荷重を計測するモードである。ブロックモードでは、複数のセンサ部に対応する計測対象範囲R13が計測領域R10に設定され、計測対象範囲R13ごとに荷重が計測される。計測対象範囲R13は、個別モードよりも多く全体モードより少ない数のセンサ部を含む範囲である。ここでは、4つのセンサ部を含む正方形の範囲が、計測対象範囲R13に設定されている。そして、
図11(a)~(d)に示す順で、計測対象範囲R13が計測領域R10内で移動され、計測対象範囲R13のセンサ部の荷重が順に計測される。
【0099】
図11(a)に示すように計測対象範囲R13が設定された場合、
図12に示すように、上2つの被覆付き銅線13が第1供給ラインL1に接続され、左2つの導電弾性体12がグランドに接続され、右2つの導電弾性体12が第2供給ラインL2に接続される。
図11(b)~(d)の場合も同様に、計測対象範囲R13に含まれるセンサ部が位置する被覆付き銅線13および導電弾性体12が、それぞれ、第1供給ラインL1およびグランドに接続され、計測対象範囲R13に含まれないセンサ部が位置する導電弾性体12が第2供給ラインL2に接続される。
【0100】
これにより、計測対象範囲R13に含まれる4つのセンサ部に対してかかる荷重が、一度の計測により算出される。そして、
図11(a)~(d)に示すように4つの計測対象範囲R13においてそれぞれ算出された荷重が合計されることにより、全てのセンサ部にかかる荷重が算出される。
【0101】
なお、ブロックモードの場合に算出される全てのセンサ部にかかる荷重は、個別モードの場合に各センサ部にかかる荷重を合計して算出した全てのセンサ部にかかる荷重と異なる場合がある。このような場合、ブロックモードで算出される全てのセンサ部にかかる荷重が、個別モードで算出される各センサ部にかかる荷重の合計に対応するように、制御部21は、計算式や対応テーブルを用いて、ブロックモードで算出される全てのセンサ部にかかる荷重を補正すればよい。
【0102】
図13(a)は、表示入力部30に表示される、ブロックモードと個別モードの何れを有効にするかを設定するための設定画面31の構成を示す模式図である。
【0103】
荷重検出装置3は、
図5に示す構成に加えて、表示入力部30を備える。表示入力部30は、たとえばタッチパネル式のディスプレイである。表示入力部30は、制御部21と通信可能に接続されている。表示入力部30は、制御部21から送信された信号に基づいて画像を表示するとともに、表示入力部30を介してユーザにより入力された情報を制御部21に送信する。表示入力部30は、荷重検出装置3に対して着脱可能であってもよい。この場合、ユーザは、モード設定を行う場合に、本体側のコネクタに表示入力部30を接続して設定操作を行い、モード設定が完了すると、表示入力部30を本体側のコネクタから取り外す。
【0104】
設定画面31は、ブロックモードに対応するラジオボタン32aと、個別モードに対応するラジオボタン32bと、モードを決定するためのOKボタン33と、を備える。初期設定として、ブロックモードと個別モードの何れかが有効に設定されている。たとえば、個別モードが初期設定されている。ユーザは、有効なモードを変更する場合、2つのラジオボタン32a、32bの何れかを選択して、OKボタン33を操作する。これにより、ユーザにより選択されたモードが有効となる。
【0105】
図13(b)は、制御部21によるモードの受付処理を示すフローチャートである。
【0106】
制御部21は、設定画面31(
図13(a)参照)の呼び出しを受け付けたか否かを判定する(S21)。設定画面31の呼び出しは、たとえば、ユーザにより表示入力部30(
図13(a)参照)に表示されたメニュー等を介して行われる。
【0107】
設定画面31の呼び出しを受け付けると(S21:YES)、制御部21は、設定画面31を表示入力部30に表示する(S22)。そして、ユーザによりOKボタン33が押されると(S23:YES)、制御部21は、2つのラジオボタン32a、32bの選択状態に応じて、ブロックモードと個別モードの何れかを有効にし、有効にされたモードを記憶する(S24)。
【0108】
図14は、制御部21による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
図14の処理は、
図10の処理と比較して、ステップS15に代えてステップS31が追加され、ステップS12のNO側の後段にステップS32が追加され、ステップS32のYES側の後段にステップS33が追加され、ステップS32のNO側の後段にステップS16が追加されている。以下、
図10の処理と異なる点について説明する。
【0109】
ステップS13で算出された計測値が閾値Wth以上である場合(S14:YES)、すなわち計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重が検出された場合、制御部21は、全体モードを解除する(S31)。これにより、制御部21は、実行する動作モードを、全体モードから、
図13(b)のステップS24で記憶したブロックモードおよび個別モードの何れかに設定する。そして、制御部21は、処理をステップS12に戻す。
【0110】
全体モードが解除され処理が戻されると、ステップS12の判定は、NOとなる。制御部21は、ブロックモードと個別モードの何れが設定されているかを判定し(S32)、動作モードに応じて計測を行う。ブロックモードが設定されている場合(S32:YES)、制御部21は、ブロック結合計測を行う(S33)。すなわち、計測対象範囲R13に対応する4つのセンサ部の荷重が1回で計測され、当該計測対象範囲R13に対する荷重が取得される。他方、個別モードが設定されている場合(S32:NO)、制御部21はセンサ個別計測を行う(S16)。
【0111】
ステップS33の計測では、1つの計測対象範囲R13に対する計測が、センサ個別計測の周期よりも長く、全センサ結合計測の周期よりも短い周期で行われる。たとえば、1つの計測対象範囲R13に対する計測が時間4Tの周期で行われる。すなわち、ブロックモードでは、直前の計測が開始された後、時間4Tが経過するタイミングでステップS33のブロック結合計測が1回だけ行われる。なお、ブロック結合計測の周期は、4Tより長くても短くてもよい。
【0112】
続いて、制御部21は、全てのセンサ部の計測が終了したか否かを判定する(S17)。全てのセンサ部の計測が終了していない場合(S17:NO)、制御部21は、ブロックモードの場合、
図11(a)~(d)に示すように計測領域R10内で計測対象範囲R13を移動させて、処理をステップS32に戻し、ブロック結合計測を継続させる。
【0113】
全てのセンサ部の計測が終了した場合(S17:YES)、制御部21は、全てのセンサ部に対してステップS33またはステップS16の処理が行われたことにより算出された計測値の合計が、閾値Wth未満であるか否かを判定する(S18)。計測値の合計が閾値Wth以上であると(S18:NO)、制御部21は、処理をステップS32に戻し、ブロックモードまたは個別モードを継続させる。計測値の合計が閾値Wth未満である場合(S18:NO)、制御部21は、上記実施形態1と同様、動作モードを全体モードに設定し(S19)、処理をステップS12に戻す。これにより、動作モードが全体モードに切り替えられる。
【0114】
<実施形態2の効果>
以上、実施形態2によれば、以下の効果が奏される。
【0115】
図13(a)、(b)に示したように、設定画面31を介してブロックモードが設定された場合、制御部21は、動作モードとして、ブロックモード(第1モード)と、全体モード(第2モード)とを選択的に実行する。この場合も、実施形態1と同様、荷重の検出において全体モードが選択的に実行されることにより、荷重検出装置3の消費電力を抑制できる。また、個別モードに代えてブロックモードが設定されることにより、ブロックモードと全体モードとが選択的に実行されることになる。これにより、個別モードと全体モードとが選択的に実行される場合と比較して、荷重検出装置3の消費電力を抑制できる。
【0116】
制御部21は、全体モードの実行時に、計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重を検出したことに基づいて、全体モードを解除して動作モードをブロックモードまたは個別モードに切り替え(
図14のステップS31)、ブロックモードまたは個別モードの実行時に、計測領域R10に物体が載置されていることを示す荷重を検出していないことに基づいて、動作モードを全体モードに切り替える(
図14のステップS19)。よって、実施形態1と同様、物体が載置されていない状態において、個別モードにより冗長な検出処理が繰り返されることを抑制できるため、消費電力を抑制できる。
【0117】
制御部21は、全体モードとの間で切り替えが行われる動作モード(第1モード)として、ブロックモードおよび個別モードの何れかを設定するための指示を、表示入力部30に表示された設定画面31を介して受け付ける。これにより、第1モードにおいて荷重検出の細かさを適宜選択できる。よって、ユーザは、消費電力を抑制しつつ、適宜、計測対象の物体に適する細かさで荷重を検出できる。
【0118】
<実施形態3>
実施形態2では、全体モードとの間で切り替えが行われるモードとして、ブロックモードおよび個別モードの何れかがユーザにより設定され、全体モードと、ブロックモードまたは個別モードとの何れかが選択的に実行された。これに対し、実施形態3では、実行する動作モードとして、自動モード、全体モード、ブロックモードおよび個別モードの何れかがユーザにより設定される。自動モードは、実施形態1と同様、全体モードと個別モードの何れかを実行するモードである。
【0119】
図15は、表示入力部30に表示される、自動モード、全体モード、ブロックモードおよび個別モードの何れを有効にするかを設定するための設定画面31の構成を示す模式図である。
【0120】
実施形態3の設定画面31は、
図13(a)と比較して、自動モードに対応するラジオボタン34aと、全体モードに対応するラジオボタン34bと、ブロックモードに対応するラジオボタン34cと、個別モードに対応するラジオボタン34dと、を備える。初期設定として、4つのモードの何れかが有効に設定されている。たとえば、自動モードが初期設定される。ユーザは、有効なモードを変更する場合、4つのラジオボタン34a、34b、34c、34dの何れかを選択して、OKボタン33を操作する。これにより、ユーザにより選択されたモードが有効となる。この場合も、
図13(b)と同様、制御部21は、モードの受付処理を行う。
【0121】
図16は、制御部21による動作モードの切替処理を示すフローチャートである。
【0122】
荷重検出装置3が起動すると、制御部21は、自動モードの初期設定を全体モードに設定する(S41)。続いて、制御部21は、
図15の設定画面31を介して設定されたモードが自動モードであるか否かを判定する(S42)。設定されたモードが自動モードである場合(S42:YES)、制御部21は、自動計測処理を行う(S43)。すなわち、制御部21は、
図10のステップS12~S19の処理をステップS12から開始し、
図10のステップS15またはステップS19の処理が終わると、処理をステップS42に戻す。
【0123】
設定されたモードが自動モードでない場合(S42:NO)、制御部21は、設定された動作モードが、全体モード、ブロックモードおよび個別モードの何れであるかを判定し、設定された動作モードに応じて計測を行う。
【0124】
動作モードが全体モードの場合(S44:YES)、制御部21は、
図14のステップS13と同様、全センサ結合計測を行い(S45)、処理をステップS42に戻す。動作モードがブロックモードの場合(S44:NO、S46:YES)、制御部21は、
図14のステップS33と同様、ブロック結合計測を行う(S47)。動作モードが個別モードの場合(S44:NO、S46:NO)、制御部21は、
図14のステップS16と同様、センサ個別計測を行う(S48)。そして、制御部21は、
図14のステップS17と同様、全てのセンサ部の計測が終了したか否かを判定する(S49)。全てのセンサ部の計測が終了していない場合(S49:NO)、制御部21は、処理をステップS46に戻し、全てのセンサ部の計測が終了した場合(S49:YES)、制御部21は、処理をステップS42に戻す。
【0125】
<実施形態3の効果>
制御部21は、少なくとも全体モード(第2モード)と個別モード(第1モード)とから、荷重の検出に用いる動作モードを選択する指示を、
図15の設定画面31を介して受け付ける。このように、ユーザがマニュアルで全体モードと全体モード以外のモードとを選択できると、ユーザは、適宜、計測対象の物体に適する細かさで荷重を検出できる。
【0126】
制御部21は、個別モード(第1モード)よりも多く全体モード(第2モード)より少ない数のセンサ部ごとに荷重を計測するブロックモード(第3モード)を備え、個別モード、全体モードおよびブロックモードから、荷重の検出に用いる動作モードを選択する指示を、
図15の設定画面31を介して受け付ける。これにより、ユーザは、計測対象の物体に適する細かさで荷重を検出できる。
【0127】
<変更例>
以上、本発明の実施形態1~3について説明したが、本発明は、上記実施形態1~3に何ら制限されるものではない。また、本発明の実施形態は、上記実施形態1~3以外に種々の変更が可能である。
【0128】
たとえば、荷重センサ1、検出回路2および荷重検出装置3の構成、ならびに制御部21の処理は、上記実施形態に示した構成および処理以外に、種々の変更が可能である。
【0129】
また、上記実施形態2、3において、ブロックモードの計測対象範囲R13は、2×2のセンサ部を含む正方形に設定されたが、他の形状に設定されてもよい。たとえば、
図17(a)に示すように、ブロックモードの計測対象範囲R13が、行方向に並ぶ2つのセンサ部から構成されてもよく、あるいは、
図17(b)に示すように、1行分のセンサ部から構成されてもよい。また、
図17(c)に示すように、ブロックモードの計測対象範囲R13が、列方向に並ぶ2つのセンサ部から構成されてもよく、あるいは、
図17(d)に示すように、1列分のセンサ部から構成されてもよい。
【0130】
また、行方向(導電弾性体12の延びる方向)のセンサ部の個数をN1とし、列方向(被覆付き銅線13の延びる方向)のセンサ部の個数をN2としたときの計測対象範囲R13の形状をN1×N2と表すと、計測対象範囲R13が1×1と4×4となる場合を除いて、N1およびN2の値は、1~4の値から適宜組み合わせられてもよい。ただし、全てのセンサ部にかかる荷重(計測領域R10にかかる荷重)を簡易かつ円滑に算出するためには、計測対象範囲R13を計測領域R10内で移動させたときに、各タイミングの計測対象範囲R13が互いに重ならないことが好ましい。
【0131】
また、上記実施形態2、3において、
図11(a)~(d)に示したように、ブロックモードにおいて、一定の形状(2×2)の計測対象範囲R13が計測領域R10内で移動されたが、計測対象範囲R13は、各タイミングにおいて互いに異なる形状であってもよい。たとえば、計測対象範囲R13は、
図11(a)において、センサ部A11を含む3×3の形状であり、
図11(b)において、センサ部A14を含む1×3の形状であり、
図11(c)において、センサ部A41を含む3×1の形状であり、
図11(d)において、センサ部A44を含む1×1の形状であってもよい。
【0132】
また、ブロックモードにおいて、計測対象範囲R13は、周期Tの間に、計測領域R10の中心から段階的に大きくなるように変化してもよい。たとえば、計測対象範囲R13は、第1のタイミングにおいてセンサ部A22、A23、A32、A33を含む2×2の形状であり、第2のタイミングにおいて全てのセンサ部を含む4×4の形状であってもよい。
【0133】
また、上記実施形態2、3において、ブロックモードの計測対象範囲R13は、2×2の形状に固定されていたが、これに限らず、計測対象範囲R13の大きさおよび形状は、ユーザにより表示入力部30(
図13(a)と
図15参照)を介して指定されてもよい。
【0134】
また、上記実施形態3において、自動モードで切り替え対象となるモードは、全体モードと個別モードであったが、これに限らず、全体モードとブロックモードであってもよい。また、自動モードで切り替え対象となるモードは、ユーザにより表示入力部30を介して指定されてもよい。
【0135】
また、上記実施形態2において、制御部21は、全体モードとの間で切り替えを行うモードとして、2つのモード(ブロックモードと個別モード)の何れかを設定するための指示を、設定画面31を介して受け付けた。しかしながら、これに限らず、制御部21は、全体モードとの間で切り替えを行うモードとして、互いに異なる数のセンサ部ごとに荷重を計測する3以上のモードの何れかを設定するための指示を受け付けてもよい。
【0136】
また、上記実施形態3において、制御部21は、個別モードと全体モードに加えて、1つのブロックモード(第3モード)を備えたが、複数のブロックモード(第3モード)を備えてもよい。この場合も、制御部21は、個別モード、全体モード、および複数のブロックモードから、荷重の検出に用いるモードを選択する指示を、設定画面31を介して受け付ける。
【0137】
また、上記実施形態1の
図10のステップS11において、動作モードの初期設定は、全体モードに設定されたが、個別モードに設定されてもよい。また、上記実施形態2の
図14のステップS11において、動作モードの初期設定は、
図13(a)の設定画面31を介して設定されたブロックモードおよび個別モードの何れかに設定されてもよい。また、上記実施形態3の
図16のステップS41において、自動モードの初期設定は、全体モードに設定されたが、個別モードおよびブロックモードの何れかに設定されてもよい。
【0138】
また、上記実施形態において、荷重センサ1は、4つの被覆付き銅線13と4つの導電弾性体12を備えることにより、16個のセンサ部を備えた。しかしながら、これに限らず、荷重センサ1が少なくとも2つ以上のセンサ部を備えればよく、被覆付き銅線13の数と導電弾性体12の数は他の個数でもよい。すなわち、計測領域R10の形状や大きさ、および計測領域R10に含まれるセンサ部の数も、上記実施形態1~3に示したものに限定されるものではなく、適宜、変更可能である。この場合、ブロックモードの計測対象範囲R13の形状および計測対象範囲R13に含まれるセンサ部の数も、計測領域R10の変更に応じて変更され得る。
【0139】
また、上記実施形態において、被覆付き銅線13に代えて、銅以外の物質からなる線状の導電部材と、当該導電部材を被覆する誘電体と、により構成された電極が用いられてもよい。この場合の電極の導電部材は、たとえば、金属体、ガラス体およびその表面に形成された導電層、樹脂体およびその表面に形成された導電層などにより構成される。
【0140】
また、上記実施形態において、荷重センサ1の構成は、必ずしも、被覆付き銅線13と導電弾性体12とを組み合わせた構成でなくてもよく、たとえば、上下の電極の間に伸縮性の誘電体が挟まれた構成であってもよい。
【0141】
また、上記実施形態において、被覆付き銅線13の銅線13aは、第1切替部23(4個のマルチプレクサ23a)によって、第1供給ラインL1に対して接続および非接続の何れかに選択的に切り替えられた。また、導電弾性体12は、第2切替部25(4個のマルチプレクサ25a)によって、第2供給ラインL2およびグランドの何れかに選択的に切り替えられた。しかしながら、第1切替部23および第2切替部25はマルチプレクサによって構成されなくてもよく、マルチプレクサ以外の切替回路により構成されてもよい。この場合の切替回路も、制御部21によって切り替えが行われる。
【0142】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 荷重センサ
3 荷重検出装置
21 制御部
A11~A14、A21~A24、A31~A34、A41~A44 センサ部
R10 計測領域