(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240209BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240209BHJP
H01M 50/195 20210101ALI20240209BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/195
(21)【出願番号】P 2021511122
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001200
(87)【国際公開番号】W WO2020202698
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019069045
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】小林 信幸
(72)【発明者】
【氏名】筒井 靖貴
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220107(JP,A)
【文献】特開2012-59489(JP,A)
【文献】特開2006-216373(JP,A)
【文献】特開2000-77103(JP,A)
【文献】特開2019-207872(JP,A)
【文献】特開2019-106372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
発電要素、および
絶縁性材料及びゼオライト粒子を含む封止部材
を具備し、
ここで、
前記発電要素は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、
を具備し、
前記ゼオライト粒子の平均粒径が1μm以下である、
電池。
【請求項2】
前記固体電解質層は、硫化物固体電解質を含む、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記絶縁性材料は、樹脂を含む、
請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記樹脂は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記封止部材は、前記発電要素の周囲を封止している、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記封止部材は、第1部分及び第2部分を含み、
前記第1部分は前記発電要素に接し、
前記第2部分は前記第1部分を被覆し、かつ
前記第1部分及び前記第2部分から選ばれる少なくとも1つが前記ゼオライト粒子を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記発電要素を収容しているケースをさらに備え、かつ
前記封止部材は、前記ケースのシール部分に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記発電要素に電気的に接続され、前記シール部分を通じて前記ケースの外部に延びている取り出し電極をさらに備え、かつ
前記封止部材は、前記シール部分において前記ケースと前記取り出し電極との間の隙間を封止している、
請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記封止部材は、水分及び硫化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記ゼオライト粒子は、SiO
2およびAl
2O
3を含み、かつ
前記ゼオライト粒子に含まれる前記SiO
2の前記ゼオライト粒子に含まれる前記Al
2O
3に対するモル比は、1よりも大きい、
請求項1から9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記ゼオライト粒子は、Agを含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
前記ゼオライト粒子は、Znを含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載の電池。
【請求項13】
前記ゼオライト粒子の平均粒径が0.1μm以下である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゼオライトを含むガス吸着層を有する双極型二次電池モジュールが記載されている。
【0003】
特許文献2には、密封部材に含まれる吸湿材として、粒子径が3μm以上10μm以下のゼオライト粉末が使用された硫化物固体電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-140633号公報
【文献】特開2013-25798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電池は、ゼオライト粒子の粒子径が比較的大きいため、ガス吸着能力及び吸湿能力が十分でない。そのため、電池の内部に水分などが浸入することをより確実に防ぐための技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
発電要素、および
絶縁性材料及びゼオライト粒子を含む封止部材
を具備し、
ここで、
前記発電要素は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、
を具備し、
前記ゼオライト粒子の平均粒径が1μm以下である、
電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、電池の内部に水分などが浸入することをより確実に防ぐことができる。これにより、電池の耐環境性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電池の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る電池の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態3に係る電池の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態4に係る電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る電池は、
発電要素、および
絶縁性材料及びゼオライト粒子を含む封止部材
を具備し、
ここで、
前記発電要素は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、
を具備し、
前記ゼオライト粒子の平均粒径が1μm以下である。
【0010】
第1態様によれば、電池の内部に水分などが浸入することをより確実に防ぐことができる。これにより、電池の耐環境性能が向上する。
【0011】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る電池では、前記固体電解質層は、硫化物固体電解質を含んでいてもよい。このような構成によれば、高い信頼性を有する電池を実現できる。
【0012】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る電池では、前記絶縁性材料は、樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
本開示の第4態様において、例えば、第3態様に係る電池では、前記樹脂は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であってもよい。
【0014】
第3及び第4態様によれば、集電体同士が接触することによる短絡、及び集電体と電極端子とが接触することによる短絡を防止できる。
【0015】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る電池では、前記封止部材は、前記発電要素の周囲を封止していてもよい。このような構成によれば、固体電解質層を外部環境から隔離できる。
【0016】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つに係る電池では、前記封止部材は、第1部分及び第2部分を含んでいてもよく、前記第1部分は前記発電要素に接していてもよく、前記第2部分は前記第1部分を被覆していてもよく、かつ前記第1部分及び前記第2部分から選ばれる少なくとも1つが前記ゼオライト粒子を含んでいてもよい。このような構成によれば、固体電解質層を外部環境からより十分に隔離できる。
【0017】
本開示の第7態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る電池は、前記発電要素を収納しているケースをさらに備えていてもよく、かつ前記封止部材は、前記ケースのシール部分に配置されていてもよい。
【0018】
本開示の第8態様において、例えば、第7態様に係る電池は、前記発電要素に電気的に接続され、前記シール部分を通じて前記ケースの外部に延びている取り出し電極をさらに備えていてもよく、かつ前記封止部材は、前記シール部分において前記ケースと前記取り出し電極との間の間隙を封止していてもよい。
【0019】
第7及び第8態様によれば、電池を薄型化できる。
【0020】
本開示の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つに係る電池では、前記封止部材は、水分及び硫化物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。このような構成によれば、電池の使用によって発生した硫化物ガスをより十分に吸着できる。
【0021】
本開示の第10態様において、例えば、第1から第9態様のいずれか1つに係る電池では、前記ゼオライト粒子は、SiO2およびAl2O3を含んでもよく、かつ前記ゼオライト粒子に含まれる前記SiO2の前記ゼオライト粒子に含まれる前記Al2O3に対するモル比は、1よりも大きくてもよい。このような構成によれば、ゼオライト粒子の細孔内に存在する金属カチオンの量を減少させることができるため、低極性の硫化物ガスの吸着量をより十分に増加させることができる。
【0022】
本開示の第11態様において、例えば、第1から第10態様のいずれか1つに係る電池では、前記ゼオライト粒子は、Agを含んでいてもよい。
【0023】
本開示の第12態様において、例えば、第1から第11態様のいずれか1つに係る電池では、前記ゼオライト粒子は、Znを含んでいてもよい。
【0024】
第11及び第12態様によれば、硫化物ガスをより十分に吸着できる。
【0025】
本開示の第13態様において、例えば、第1から第12態様のいずれか1つに係る電池では、前記ゼオライト粒子の平均粒径が0.1μm以下であってもよい。
【0026】
第13態様によれば、電池の内部に水分などが浸入することをより確実に防ぐことができる。これにより、電池の耐環境性能が向上する。
【0027】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
(実施形態1)
[積層電池の概要]
まず、本実施形態に係る電池について説明する。
【0029】
図1は、本実施形態1に係る積層電池100の断面図である。本実施形態において、電池100は、積層電池である。そのため、本明細書では、「電池100」を「積層電池100」と呼ぶことがある。
【0030】
図1に示すように、電池100は、複数のセル30、正極端子16及び負極端子17を備える。本明細書では、「セル」を「固体電池セル」と呼ぶことがある。複数のセル30は、電気的に並列に接続されている。複数のセル30のそれぞれは、互いに向かい合う1対の端面を2組有する。電池100において、複数のセル30が積層されている。
【0031】
複数のセル30の数は、特に限定されず、20以上100以下であってもよく、2以上100以下であってもよく、2以上10以下であってもよい。本実施形態では、電池100は、複数のセル30a,30b及び30cを備えている。複数のセル30a,30b及び30cがこの順番で積層されている。
【0032】
正極端子16及び負極端子17は、それぞれ、複数のセル30と電気的に接続されている。正極端子16及び負極端子17のそれぞれの形状は、例えば、板状である。正極端子16及び負極端子17は、互いに対向している。正極端子16と負極端子17との間に、複数のセル30が位置している。本明細書では、正極端子16及び負極端子17を単に「電極端子」又は「端子」と呼ぶことがある。
【0033】
複数のセル30のそれぞれは、正極集電体11、正極層12、負極集電体13、負極層14、固体電解質層15及び第1封止部材20を有している。正極集電体11、正極層12、固体電解質層15、負極層14及び負極集電体13は、この順番で積層されている。本明細書では、正極集電体11及び負極集電体13を単に「集電体」と呼ぶことがある。
【0034】
正極集電体11は、例えば、板状の形状を有している。正極集電体11は、正極層12及び正極端子16のそれぞれに電気的に接続されている。正極集電体11は、正極層12及び正極端子16のそれぞれに直接接していてもよい。例えば、正極集電体11の主面が正極層12に直接接していてもよい。「主面」は、正極集電体11の最も広い面積を有する面を意味する。正極集電体11の端部(端面)が正極端子16に直接接していてもよい。正極集電体11と負極端子17とは、間隙を介して互いに電気的に分離している。正極集電体11と負極端子17との最短距離は、特に限定されず、20μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよい。
【0035】
正極層12は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。正極層12は、正極集電体11の上に配置されている。正極層12は、例えば、正極集電体11の主面を部分的に被覆している。正極層12は、正極集電体11の主面の重心を含む領域を被覆していてもよい。本明細書では、「正極集電体及び正極層」を「正極」と呼ぶことがある。
【0036】
負極集電体13は、例えば、板状の形状を有している。負極集電体13は、負極層14及び負極端子17のそれぞれに電気的に接続されている。負極集電体13は、負極層14及び負極端子17のそれぞれに直接接していてもよい。例えば、負極集電体13の主面が負極層14に直接接していてもよい。負極集電体13の端部(端面)が負極端子17と直接接していてもよい。負極集電体13と正極端子16とは、間隙を介して互いに電気的に分離している。負極集電体13と正極端子16との最短距離は、特に限定されず、20μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよい。
【0037】
平面視において、負極集電体13と正極端子16との間隙は、例えば、正極集電体11と負極端子17との間隙に重ならない。
【0038】
負極層14は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。負極層14は、負極集電体13の上に配置されている。負極層14は、例えば、負極集電体13の主面を部分的に被覆している。負極層14は、負極集電体13の主面の重心を含む領域を被覆していてもよい。本明細書では、「負極集電体及び負極層」を「負極」と呼ぶことがある。
【0039】
固体電解質層15は、正極集電体11と負極集電体13との間に配置されている。言い換えると、固体電解質層15は、正極層12と負極層14との間に配置されている。固体電解質層15は、正極層12及び負極層14のそれぞれに接していてもよい。
【0040】
第1封止部材20は、正極、負極及び固体電解質層15によって構成された発電要素の周囲を封止している。第1封止部材20は、平面視で固体電解質層15よりも外側に位置している。第1封止部材20は、正極集電体11及び負極集電体13のそれぞれに接していてもよい。正極集電体11の一部は、第1封止部材20に埋め込まれていてもよい。負極集電体13の一部は、第1封止部材20に埋め込まれていてもよい。第1封止部材20は、固体電解質層15に接していてもよい。詳細には、第1封止部材20は、固体電解質層15の側面全体に接していてもよい。第1封止部材20は、正極端子16及び負極端子17のそれぞれに接していてもよい。電池100において、固体電解質層15は、例えば、端子16及び17に接していない。このような構成によれば、第1封止部材20は、電池100の内部の発電要素を保護できる。また、固体電解質層を外部環境から隔離できる。そのため、高い信頼性を有する電池100を提供できる。本明細書では、「発電要素」を「セル」と呼ぶことがある。
【0041】
電池100において、セル30aは、第1封止部材20aを有している。セル30bは、第1封止部材20bを有している。セル30cは、第1封止部材20cを有している。負極集電体13aと正極端子16との間隙において、第1封止部材20aは、第1封止部材20bに接していてもよい。正極集電体11bと負極端子17との間隙において、第1封止部材20bは、第1封止部材20cに接していてもよい。
【0042】
第1封止部材20は、発電要素の外側に位置していてもよい。発電要素の外側とは、電気特性に影響を与えないセル30の部分であり、例えば、正極層12及び負極層14によって囲まれた部分の外側を意味する。ただし、セル30における短絡を防止し、耐衝撃性を向上するために、第1封止部材20は、発電要素の内側に位置していてもよい。発電要素の内側とは、例えば、正極層12及び負極層14によって囲まれた部分の内側を意味する。
【0043】
[積層電池の構成]
以下、電池100の各構成についてより具体的に説明する。
【0044】
まず、本発明の一実施形態の積層電池100の各構成について説明する。
【0045】
正極層12は、正極活物質を含む正極活物質層として機能する。正極層12は、正極活物質を主成分として含んでいてもよい。主成分とは、正極層12に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。正極活物質は、負極よりも高い電位において、その結晶構造内にリチウム(Li)イオン、マグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は離脱され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質をいう。正極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の正極活物質が用いられうる。正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む化合物が用いられうる。この化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物、及び、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が用いられうる。リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物、層状酸化物、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムが用いられうる。リチウムニッケル複合酸化物としては、例えば、LiNixM1-xO2で表されるリチウムニッケル複合酸化物が用いられうる。ここで、Mは、Co、Al、Mn、V、Cr、Mg、Ca、Ti、Zr、Nb、Mo及びWからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。xは、0<x≦1を満たす。層状酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)が用いられうる。スピネル構造を有するマンガン酸リチウムとしては、例えば、LiMn2O4、Li2MnO3、LiMO2などが用いられうる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが用いられうる。正極活物質には、硫黄(S)、硫化リチウム(Li2S)などの硫化物を用いることもできる。硫化物を含む粒子に、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などをコーティング又は添加することにより得られた粒子を正極活物質として用いることもできる。正極活物質は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
上述のとおり、正極層12は、正極活物質を含んでいれば特に限定されない。正極層12は、正極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、固体電解質、導電助剤、及びバインダーなどが用いられうる。固体電解質としては、例えば、無機系固体電解質が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックが挙げられる。バインダーとしては、ポリエチレンオキシド及びポリフッ化ビニリデンが挙げられる。正極層12において、正極活物質と他の添加材料とを所定の割合で混合することによって、正極層12内でのリチウムイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性も向上させることができる。
【0047】
正極層12の厚さは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0048】
負極層14は、負極活物質などの負極材料を含む負極活物質層として機能する。負極層14は、負極材料を主成分として含んでいてもよい。負極活物質は、正極よりも低い電位において、その結晶構造内にリチウム(Li)イオン、マグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は脱離され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質をいう。負極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の負極活物質が用いられうる。負極活物質としては、炭素材料、固体電解質と合剤化されるべき合金系材料が用いられうる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素が用いられうる。固体電解質と合剤化されるべき合金系材料としては、例えば、リチウム合金、リチウムと遷移金属元素との酸化物、金属酸化物が用いられうる。リチウム合金としては、例えば、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C、LiC6が用いられうる。リチウムと遷移金属元素との酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)が用いられうる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiOx)が用いられうる。負極活物質は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
上述のとおり、負極層14は、負極活物質を含んでいれば特に限定されない。負極層14は、負極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、固体電解質、導電助剤、及びバインダーなどが用いられうる。固体電解質としては、例えば、無機系固体電解質が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックが挙げられる。バインダーとしては、ポリエチレンオキシド及びポリフッ化ビニリデンが挙げられる。負極層14において、負極活物質と他の添加材料とを所定の割合で混合することによって、負極層14内でのリチウムイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性も向上させることができる。
【0050】
負極層14の厚さは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0051】
固体電解質層15は、固体電解質を含む。固体電解質は、イオン導電性を有していれば特に限定されず、公知の電池用の電解質を用いることができる。固体電解質としては、例えば、Liイオン、Mgイオンなどの金属イオンを伝導する電解質が用いられうる。固体電解質は、伝導イオン種に応じて適宜選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質などの無機系固体電解質が用いられうる。硫化物固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-Ge2S2、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-GeS2-ZnSなどのリチウム含有硫化物が用いられうる。酸化物固体電解質としては、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有金属窒化物、リチウム含有遷移金属酸化物が用いられうる。リチウム含有金属酸化物として、例えば、Li2O-SiO2、Li2O-SiO2-P2O5が挙げられる。リチウム含有金属窒化物として、例えば、LixPyO1-zNzが挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物として、例えば、リン酸リチウム(Li3PO4)、リチウムチタン酸化物が挙げられる。固体電解質として、これらの材料の1種のみが用いられてもよく、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0052】
固体電解質層15は、上記の固体電解質に加えて、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダーなどを含有しうる。
【0053】
固体電解質層15の厚さは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0054】
固体電解質は、粒子の形状を有していてもよい。固体電解質は、焼結体であってもよい。
【0055】
次に、正極端子16及び負極端子17について説明する。これらの端子16及び17は、例えば、低抵抗の導体で構成されている。端子16及び17としては、例えば、Agなどの導電性金属粒子を含む導電性樹脂を硬化することにより形成される。端子16及び17は、SUS板などの導電性の金属板に導電性接着剤を塗布することにより形成されてもよい。導電性接着剤を用いることにより、2つの金属板によって複数のセル30の積層体を挟持できる。導電性接着剤は、積層電池100の使用温度の範囲及び積層電池100の製造プロセスにおいて、導電性及び接合性を維持できる限り、特に限定されない。導電性接着剤の構成、厚さ及び材料も特に限定されない。積層電池100の使用環境下で要求される最大レートでの電流が導電性接着剤に通電されたときに、導電性接着剤が積層電池100の寿命特性及び電池特性に影響を与えず、導電性接着剤の耐久性を維持できればよい。端子16及び17は、Ni-Snなどによってめっき処理されていてもよい。
【0056】
正極集電体11及び負極集電体13は、導電性を有する材料で構成されていれば特に限定されない。集電体11及び13の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅、パラジウム、金及び白金が挙げられる。これらの集電体11及び13の材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた合金として使用してもよい。集電体11及び13は、箔状体、板状体、網目状体などであってもよい。集電体11及び13の材料は、電池100の製造プロセス、電池100の使用温度、及び、電池100内の圧力によって、集電体11及び13が溶融及び分解しなければ特に限定されない。集電体11及び13の材料は、集電体11及び13に印加される電池100の動作電位と、集電体11及び13の導電性を考慮して適宜選択できる。さらに、集電体11及び13の材料は、集電体11及び13に要求される引張強度及び耐熱性に応じても選択されうる。集電体11及び13の材料の例としては、銅、アルミ及びそれらを主成分として含む合金が挙げられる。集電体11及び13は、高い強度を有する電解銅箔、又は、異種金属箔を積層したクラッド材であってもよい。集電体11及び13の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0057】
第1封止部材20は、絶縁性材料及びゼオライト粒子を含む。ゼオライト粒子は、絶縁性材料のマトリクスに分散されている。絶縁性材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。第1封止部材20が絶縁性材料を含むことによって、正極集電体11と負極集電体13とが接触することによる短絡を抑制できる。正極集電体11と負極端子17とが接触することによる短絡を抑制できる。負極集電体13と正極端子16とが接触することによる短絡を抑制できる。
【0058】
ゼオライト粒子は、Mx/n(Al2O3)x(SiO2)y)・wH2Oで示される組成を有する。Mはn価の陽イオンを示す。Al2O3のモル量xに対するSiO2のモル量yの割合、すなわちモル比(y/x)は、例えば、1≦y/x≦5であってもよい。また、ゼオライト粒子に含まれるSiO2のモル量は、Al2O3のモル量より多くてもよい。例えば、モル比(y/x)は、1<y/x≦2.5であってもよい。Al2O3に対するSiO2のモル比が1よりも大きいと、ゼオライト粒子の細孔内に存在する金属カチオンの量を減少させることができる。そのため、低極性の硫化物ガスの吸着量をより十分に増加させることができる。その結果、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気をより抑制できる。
【0059】
ゼオライト粒子は、Agを含んでいてもよい。ゼオライト粒子は、Znを含んでいてもよい。Ag及び/又はZnがゼオライト粒子に含まれることによって、Ag及び/又はZnが硫化物ガスと化学反応できる。その結果、ゼオライト粒子は、硫化物ガスをより十分に吸着できる。
【0060】
第1封止部材20に含まれるゼオライト粒子の形状及びサイズは特に限定されない。ゼオライト粒子の形状は、例えば、粒子状である。ゼオライト粒子の平均粒径は、例えば、0.01μm以上1μm以下であってもよく、0.01μm以上0.1μm以下であってもよい。平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置を用いて測定されたメジアン径(d50)でありうる。第1封止部材20に含まれるゼオライト粒子のサイズが小さいため、ゼオライト粒子は電池の内部で発生した硫化物ガス又は外部からの水分をより多く吸着できる。その結果、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気、硫化物ガスによる電極層などの腐食、又は電池の内部に水分が浸入することによる電池の性能の劣化を抑制できる。さらに、第1封止部材20に含まれるゼオライト粒子のサイズが小さいため、電池を薄型化できる。
【0061】
粒度分布を測定できない場合、ゼオライト粒子の平均粒径は、次の方法によって算出されうる。封止部材に含まれたゼオライトの粒子群を電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡像における特定の粒子の面積を画像処理にて算出する。粒子群のみを直接観察できない場合、粒子が含まれた構造を電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡像における特定の粒子の面積を画像処理にて算出する。算出された面積に等しい面積を有する円の直径をその特定の粒子の直径とみなす。任意の個数(例えば10個)の粒子の直径を算出し、それらの平均値を粒子の平均粒径とみなす。
【0062】
第1封止部材20は、水分及び/又は硫化物を含んでいてもよい。封止部材にあらかじめ水分及び/又は硫化物が含まれていることによって、第1封止部材20は、電池の使用によって発生した硫化物ガスをより十分に吸着できる。その結果、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気を抑制できる。
【0063】
第1封止部材20が発電要素を封止することによって、水などで劣化しやすい固体電解質層15を外部環境から隔離できる。さらに電池の内部で発生した硫化物ガスの外部への流出が抑制できる。これにより、高いエネルギー密度及び高い信頼性を有し、かつ大容量の積層電池100の耐環境性を向上させることができる。
【0064】
上述の積層電池100の構成は、適宜、互いに組み合わされてもよい。
【0065】
[電池の製造方法]
次に、本実施形態に係る電池100の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係る電池100は、例えば、シート作製法によって作製できる。
【0066】
本明細書では、セル30を作製する工程を「シート作製工程」と呼ぶことがある。シート作製工程では、例えば、本実施形態に係る電池100に含まれるセル30の各構成の前駆体が積層された積層体を作製する。積層体では、例えば、正極集電体11の前駆体、正極層12のシート、固体電解質層15のシート、負極層14のシート及び負極集電体13の前駆体がこの順番で積層されている。並列接続されるべきセル30の数に併せて、所定の数の積層体を作製する。積層体に含まれる部材を形成する順番は、特に限定されない。
【0067】
まず、シート作製工程について説明する。シート作製工程は、セル30の各構成の前駆体であるシートを作製し、そのシートを積層する工程を含む。
【0068】
正極層12のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、正極活物質、合剤としての固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、正極層12のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、正極層12のシートを作製するためのスラリーを「正極活物質スラリー」と呼ぶことがある。次に、正極活物質スラリーを正極集電体11の前駆体上に、印刷法などを利用して塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、正極層12のシートが形成される。
【0069】
正極集電体11の前駆体としては、例えば、約30μmの厚さを有する銅箔を用いることができる。正極活物質としては、例えば、約5μmの平均粒子径を有するとともに、層状構造を有するLi・Ni・Co・Al複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)の粉末を用いることができる。合剤としての固体電解質としては、例えば、約10μmの平均粒子径を有するとともに、三斜晶系結晶を主成分として含むLi2S-P2S5系硫化物のガラス粉末を用いることができる。固体電解質は、例えば、2×10-3S/cm以上3×10-3S/cm以下の高いイオン導電性を有する。
【0070】
正極活物質スラリーは、例えば、スクリーン印刷法によって、正極集電体11の前駆体である銅箔の片方の表面上に塗布できる。得られた塗布膜は、例えば、所定形状を有するとともに、約50μm以上100μm以下の厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させることによって、正極層12のシートが得られる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。正極層12のシートの厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。
【0071】
負極層14のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、負極層14のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、負極層14のシートを作製するためのスラリーを「負極活物質スラリー」と呼ぶことがある。負極活物質スラリーを負極集電体13の前駆体上に、印刷法などを利用して塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、負極層14のシートが形成される。
【0072】
負極集電体13の前駆体としては、例えば、約30μmの厚さを有する銅箔を用いることができる。負極活物質としては、例えば、約10μmの平均粒子径を有する天然黒鉛の粉末を用いることができる。固体電解質としては、例えば、正極層12のシートの作製方法で例示した固体電解質を用いることができる。
【0073】
負極活物質スラリーは、例えば、スクリーン印刷法によって、負極集電体13の前駆体である銅箔の片方の表面上に塗布できる。得られた塗布膜は、例えば、所定形状を有するとともに、約50μm以上100μm以下の厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させることによって、負極層14のシートが得られる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。負極層14のシートの厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。
【0074】
固体電解質層15のシートは、正極層12のシートと負極層14のシートとの間に配置される。固体電解質層15のシートは、例えば、次の方法で作製できる。まず、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒を混合し、固体電解質層15のシートを作製するためのスラリーを得る。本明細書では、固体電解質層15のシートを作製するためのスラリーを「固体電解質スラリー」と呼ぶことがある。固体電解質スラリーを正極層12のシートの上に塗布する。同様に、固体電解質スラリーを負極層14のシートの上に塗布する。固体電解質スラリーの塗布は、例えば、メタルマスクを用いた印刷法によって行う。得られた塗布膜は、例えば、約100μmの厚さを有する。次に、塗布膜を乾燥させる。塗布膜の乾燥は、80℃以上130℃以下の温度で行ってもよい。これにより、正極層12のシートの上、及び、負極層14のシートの上のそれぞれに固体電解質層15のシートが形成される。
【0075】
固体電解質層15のシートの作製方法は、上述の方法に限定されない。固体電解質層15のシートは、次の方法によって作製されてもよい。まず、印刷法などを利用して、固体電解質スラリーを基材上に塗布する。基材の上に固体電解質層15のシートを形成できる限り、基材は特に限定されず、例えば、テフロン(登録商標)またはポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられ得る。基材の形状は、例えば、フィルム状又は箔状である。次に、基材上に形成された塗布膜を乾燥させることによって固体電解質層15のシートが得られる。固体電解質層15のシートは、基材から剥がして用いることができる。
【0076】
正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーに用いられる溶媒は、バインダーを溶解可能であり、かつ電池特性へ悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールエチルエーテル、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶剤及び水を用いることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
本実施形態では、正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーを塗布する方法として、スクリーン印刷法を例示した。ただし、塗布方法は、これに限られない。塗布方法として、ドクターブレード法、カレンダー法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、オフセット法、ダイコート法、スプレー法などを用いてもよい。
【0078】
正極活物質スラリー、負極活物質スラリー及び固体電解質スラリーには、上述した正極活物質、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー及び溶媒の他に、必要に応じて可塑剤などの助剤が混合されていてもよい。スラリーの混合方法は、特に限定されない。スラリーには、必要に応じて、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0079】
次に、第1封止部材20を作製する。第1封止部材20のシートは、正極集電体11及び負極集電体13の端部に、ディスペンサーを用いて所定の量の封止材を塗布することによって作製される。
【0080】
次に、正極層12のシートの上に形成された固体電解質層15のシートと、負極層14のシートの上に形成された固体電解質層15のシートとを重ね合わせる。これにより、正極集電体11の前駆体、正極層12、固体電解質層15、負極層14及び負極集電体13の前駆体がこの順番で積層された積層体が得られる。
【0081】
次に、正極集電体11が得られるように正極集電体11の前駆体を切断する。詳細には、負極端子17を配置したときに、正極集電体11と負極端子17とが間隙を介して互いに電気的に分離するように、正極集電体11の前駆体を切断する。正極集電体11の前駆体の切断は、例えば、レーザーによって行うことができる。正極集電体11の前駆体を切断することによって、正極集電体11を形成できる。正極集電体11負極端子17との最短距離は、例えば、10μmである。正極集電体11と負極電極端子17との間の間隙によって、正極集電体11と負極端子17とが互いに電気的に分離している。すなわち、正極集電体11と負極端子17との間の間隙は、電気的に絶縁している。
【0082】
次に、負極集電体13が得られるように負極集電体13の前駆体を切断する。詳細には、正極端子16を配置したときに、負極集電体13と正極端子16とが間隙を介して互いに電気的に分離するように、負極集電体13の前駆体を切断する。負極集電体13の前駆体の切断は、例えば、レーザーによって行うことができる。負極集電体13の前駆体を切断することによって、負極集電体13を形成できる。負極集電体13と正極端子16との最短距離は、例えば、10μmである。負極集電体13と正極端子16との間の間隙によって、負極集電体13と正極端子16とが互いに電気的に分離している。すなわち、負極集電体13と正極端子16との間の間隙は、電気的に絶縁している。
【0083】
正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断の順番は、特に限定されない。正極集電体11の前駆体を切断したあとに負極集電体13の前駆体を切断してもよく、負極集電体13の前駆体を切断したあとに正極集電体11の前駆体を切断してもよい。正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断は、正極層12のシートの上に形成された固体電解質層15のシートと、負極層14のシートの上に形成された固体電解質層15のシートとを重ね合わせる前に行ってもよい。正極集電体11の前駆体の切断、及び、負極集電体13の前駆体の切断は、ダイシングなどの手段を用いて行ってもよい。正極集電体11の前駆体を切断するとともに、その前駆体の一部を除去することによって絶縁部を設けてもよい。負極集電体13の前駆体を切断するとともに、その前駆体の一部を除去することによって絶縁部を設けてもよい。
【0084】
以上のとおり、正極集電体11の前駆体を切断し、さらに、負極集電体13の前駆体を切断することによってセル30が得られる。
【0085】
次に、所定の数のセル30を準備する。セル30の外部に露出した正極集電体11の主面、及び、セル30の外部に露出した負極集電体13の主面のそれぞれに、例えば導電性接着剤を塗布する。導電性接着剤を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法が挙げられる。本明細書では、正極集電体11及び負極集電体13において、接着性材料が塗布された主面を「接着面」と呼ぶことがある。次に、セル30の正極集電体11の接着面を他のセル30の正極集電体11の接着面と接着させる、又は、セル30の負極集電体13の接着面を他のセル30の負極集電体13の接着面と接着させる。これにより、複数のセル30を積層できる。接着面同士は、例えば、加圧接着によって互いに接着させることができる。接着面同士を接着させるときの温度は、例えば、50℃以上100℃以下である。接着面同士を接着させるときに、セル30に印加する圧力は、例えば、300MPa以上400MPa以下である。セル30に圧力を印加する時間は、例えば、90秒以上120秒以下である。接着には、導電性接着剤に代えて、低抵抗の導電性テープを用いることもできる。導電性接着剤に代えて、ペースト状の銀粉又は銅粉を用いることもできる。ペースト状の銀粉又は銅粉が塗布されたセル30の接着面を他のセル30の接着面に加圧接着すれば、金属粒子を介して集電体同士をアンカー効果によって機械的に接合できる。接着性及び導電性が得られる方法である限り、複数のセル30を積層する方法は、特に限定されない。
【0086】
次に、複数のセル30のそれぞれと、正極端子16及び負極端子17とを電気的に接続させる。複数のセル30のそれぞれと端子16及び17とは、例えば、次の方法によって電気的に接続させることができる。まず、複数のセル30の積層体において、端子16及び17が配置されるべき面に、導電性樹脂ペーストを塗布する。導電性樹脂ペーストを硬化させることによって、端子16及び17が形成される。これにより、本実施形態に係る電池100が得られる。導電性樹脂ペーストを硬化させるときの温度は、例えば、約100℃以上300℃以下である。導電性樹脂ペーストを硬化させる時間は、例えば、60分である。導電性樹脂ペーストを硬化させるときの条件は、例えば、80℃で60分であってもよい。導電性樹脂ペーストを硬化させるときに、減圧してもよい。
【0087】
導電性樹脂ペーストとしては、例えば、Ag、Cu、Ni、Zn、Al、Pd、Au、Pt又はこれらの合金を含む高融点の高導電性金属粒子と、低融点の金属粒子と、樹脂とを含む熱硬化性導電ペーストを用いることができる。高導電性金属粒子の融点は、例えば、400℃以上である。低融点の金属粒子の融点は、導電性樹脂ペーストの硬化温度以下であってもよく、300℃以下であってもよい。低融点の金属粒子の材料としては、例えば、Sn、SnZn、SnAg、SnCu、SnAl、SnPb、In、InAg、InZn、InSn、Bi、BiAg、BiNi、BiSn、BiZn及びBiPbが挙げられる。このような低融点の金属粉末を含有する導電性ペーストを使用することによって、低融点の金属粒子の融点よりも低い熱硬化温度で、導電性ペーストと、集電体との接触部位において、固相及び液相反応が進行する。これにより、例えば、導電性ペーストに含まれる金属と、集電体に含まれる金属とを含む合金が形成される。集電体と端子との接続部近傍に、合金を含む拡散層が形成される。導電性粒子としてAg又はAg合金を使用し、集電体にCuを使用した場合には、AgCuを含む高導電性合金が形成される。さらに、導電性粒子の材料と集電体の材料との組み合わせによって、AgNi、AgPdなども形成されうる。このようにして、端子と集電体とは、合金を含む拡散層によって一体的に接合される。このような構成によれば、端子と集電体とは、アンカー効果よりも強固に接続される。そのため、電池100の各部材での熱サイクルなどによる熱膨張の差、又は、衝撃に起因して、各部材の接続が外れるという問題が生じにくい。
【0088】
高導電性金属粒子及び低融点の金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、鱗片状、針状などであってもよい。これらの金属粒子の粒子サイズは、小さければ小さいほど、低温度で合金化反応及び合金の拡散が進行する。そのため、これらの金属粒子の粒子サイズ及び形状は、プロセス設計及び電池特性への熱履歴の影響を考慮して、適宜調節されうる。
【0089】
熱硬化性導電ペーストに用いられる樹脂は、バインダーとして機能する限り特に限定されず、印刷法に対する適性、塗布性など、採用するべき製造プロセスによって適切に選択される。熱硬化性導電ペーストに用いられる樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン変性有機樹脂が挙げられる。アミノ樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式が挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、オキセタン樹脂、レゾール型、ノボラック型が挙げられる。シリコーン変性有機樹脂としては、例えば、シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステルが挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
本実施形態の製造方法では、圧粉プロセスで電池100を作製する例を示している。ただし、焼成プロセスを使用して焼結体の積層体を作製し、さらに、積層体に導電性樹脂ペーストを塗布し、焼け付けを行うことによって端子16及び17を作製してもよい。
【0091】
電池100は、負極集電体13を共用して複数のセル30を並列に接続している。正極集電体11はセルの上面及び下面に位置している。ただし、電池は、正極集電体11を共用して複数のセル30を並列に接続してもよい。この場合、負極集電体13はセルの上面及び下面に位置する。さらに正極集電体11の大部分が固体電解質層15に埋設されており、正極集電体11は、正極端子16に接するための露出部分を有していてもよい。なお、複数のセルを電気的に直列に接続することによって、全固体電池を得ることもできる。
【0092】
(実施形態2)
図2は、本実施形態2に係る電池200の断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。実施形態1の電池100と本実施形態の電池200とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
【0093】
図2及び
図3に示すように、電池200では、第1封止部材20は、第1部分21及び第2部分22を含む。つまり、発電要素の周囲を封止している封止部材は、第1部分21及び第2部分22を含む。第1部分21は、正極集電体11と負極集電体13との間に配置されている。第1部分21は、固体電解質層15を囲んでいる。すなわち、第1部分21は、正極、負極及び固体電解質層15によって構成された発電要素の周囲を封止している。第1部分21は、平面視で固体電解質層15よりも外側に位置している。第1部分21は、正極集電体11及び負極集電体13のそれぞれに接していてもよい。正極集電体11の一部は、第1部分21に埋め込まれていてもよい。負極集電体13の一部は、第1部分21に埋め込まれていてもよい。第1部分21は、固体電解質層15に接していてもよい。詳細には、第1部分21は、固体電解質層15の側面全体に接していてもよい。第1部分21は、例えば、正極端子16及び負極端子17のそれぞれに接していない。
【0094】
第2部分22は、正極集電体11と負極集電体13との間に配置されている。第2部分22は、第1部分21を被覆している。すなわち、第1部分21は電池200の発電要素に接し、第2部分22は第1部分21を被覆している。第2部分22は、例えば、第1部分21に接している。第2部分22は、平面視で第1部分21よりも外側に位置している。第2部分22は、正極集電体11及び負極集電体13のそれぞれに接していてもよい。正極集電体11の一部は、第2部分22に埋め込まれていてもよい。負極集電体13の一部は、第2部分22に埋め込まれていてもよい。第2部分22は、例えば、固体電解質層15に接していない。第2部分22は、正極端子16及び負極端子17のそれぞれに接していてもよい。このような構成によれば、第1部分21及び第2部分22は、電池200の内部の発電要素をより十分に保護できる。そのため、高い信頼性を有する電池200を提供できる。
【0095】
第1部分21及び第2部分22のそれぞれに含まれる絶縁性材料及びゼオライト粒子の構成は、同じでもよく、異なっていてもよい。例えば、第1部分21及び第2部分22から選ばれる少なくとも1つがゼオライト粒子を含んでいてもよい。複数の封止部材によって発電要素を封止することによって、電池の内部で発生した硫化物ガス又は外部からの水分をより十分に吸着できる。その結果、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気、硫化物ガスによる電極層などの腐食、又は電池の内部に水分が浸入することによる電池の性能の劣化をより十分に抑制できる。さらに、高いエネルギー密度及び高い信頼性を有し、かつ大容量の積層電池200の耐環境性を向上させることができる。
【0096】
(実施形態3)
図4は、本実施形態3に係る電池300の断面図である。
図5は、
図4の部分拡大図である。実施形態1の電池100と本実施形態の電池300とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
【0097】
図4及び
図5に示すように、正極、負極及び固体電解質層15によって構成された発電要素を収容しているケース40をさらに備えていることによって電池300が構成されている。つまり、複数のセル30が積層された積層電池がケース40によって覆われることによって電池300が構成されている。電池300に使用されるケース40の材料としては、樹脂フィルムでラミネートされたアルミニウム箔、金属、及び樹脂などが挙げられる。金属の例としては、ステンレス、鉄、及びアルミニウムが挙げられる。電池300のケース40は、例えば、アルミラミネートフィルムでありうる。複数のセル30が積層された積層電池はアルミラミネートフィルムによって封止されている。アルミラミネートフィルムに含まれる樹脂は、例えば、ゼオライト粒子を含まない。
【0098】
ケース40はシール部分をさらに有する。ケース40のシール部分には、第2封止部材23がさらに配置されていてもよい。第2封止部材23は、例えば、絶縁性材料及びゼオライト粒子を含む。第2封止部材23の材料は、第1封止部材20と同じでもよく、異なっていてもよい。ケース40のシール部分に第2封止部材23を使用することによって、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気、硫化物ガスによる電極層などの腐食を抑制できる。また、電池の内部に水分が浸入することによる電池の性能の劣化を抑制できる。さらに、電池を薄型化できる。
【0099】
電池300の内部に配置された発電要素は第1封止部材20によって封止され、かつ電池300はケース40のシール部分において第2封止部材23で封止されている。その結果、発電要素をより十分に保護できるため、高い信頼性を有する電池300を提供できる。なお、第2封止部材23がケース40のシール部分を封止している場合、発電要素は第1封止部材20によって封止されていなくてもよい。
【0100】
電池300は、取り出し電極26及び27をさらに備える。取り出し電極26及び27は積層電池の発電要素に電気的に接続されている。具体的には、正極側取り出し電極26は、正極集電体11に電気的に接続されている。正極側取り出し電極26は、正極集電体11の端面に直接接していてもよい。正極側取り出し電極26は正極集電体11aの主面に直接接していてもよい。負極側取り出し電極27は、負極集電体13に電気的に接続されている。負極側取り出し電極27は、負極集電体13に直接接していてもよい。負極側取り出し電極27は、負極集電体13bの主面に直接接していてもよい。取り出し電極26及び27は、第1封止部材20に接していてもよい。取り出し電極26及び27は、ケース40に接していてもよい。正極側取り出し電極26と負極側取り出し電極27とは、互いに接していない。
【0101】
取り出し電極26及び27は、ケース40のシール部分を通じてケース40の外部に延びている。第2封止部材23は、シール部分において、ケース40と取り出し電極26及び27との間の間隙を封止している。ケース40のシール部分において第2封止部材23が取り出し電極26及び27を封止することによって、電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気、硫化物ガスによる電極層などの腐食を抑制できる。また、電池の内部に水分が浸入することによる電池の性能の劣化を抑制できる。さらに、電池を薄型化できる。
【0102】
(実施形態4)
図6は、本実施形態4に係る電池400の断面図である。実施形態3の電池300と本実施形態の電池400とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
【0103】
図6に示すように、電池400の内部に配置された発電要素において、第1封止部材20は、第1部分21及び第2部分22を含む。つまり、発電要素の周囲を封止している封止部材は、第1部分21及び第2部分22を含む。取り出し電極26及び27は、第2部分22に接していてもよい。発電要素は第1部分21及び第2部分22によって封止され、かつ電池400はケース40のシール部分において第2封止部材23で封止されている。その結果、発電要素をより十分に保護できるため、高い信頼性を有する電池400を提供できる。さらに電池の使用によって発生する硫化物ガスによる臭気、硫化物ガスによる電極層などの腐食を抑制できる。また、電池の内部に水分が浸入することによる電池の性能の劣化を抑制できる。さらに、電池を薄型化できる。なお、第2封止部材23がケース40のシール部分を封止している場合、発電要素は第1部分21及び第2部分22によって封止されていなくてもよい。
【0104】
(実施例)
以下、実施例によって本開示をさらに詳細に説明する。以下の実施例は一例であり、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0105】
(実施例1)
シリコーン樹脂(信越化学社製、X-40-2756)に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):100nm、SiO2/Al2O3=1.0)を5wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は15μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、120℃で2時間焼成することによって、実施例1に係る全固体電池を作製した。
【0106】
(実施例2)
エポキシ樹脂EPICLON(登録商標)(DIC株式会社製、EXA-4816)に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):100nm、SiO2/Al2O3=1.0)を15wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は2μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、100℃で1時間焼成することによって、実施例2に係る全固体電池を作製した。
【0107】
(実施例3)
シリコーン樹脂(信越化学社製、X-40-2756)に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):50nm、SiO2/Al2O3=1.0)を10wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は5μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、120℃で2時間焼成することによって、実施例3に係
全固体電池を作製した。
【0108】
(実施例4)
シリコーン樹脂(信越化学社製、X-40-2756)に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):100nm、SiO2/Al2O3=2.5)を5wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は5μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、120℃で2時間焼成することによって、実施例4に係る全固体電池を作製した。
【0109】
(実施例5)
シリコーン樹脂(信越化学社製、KE-109E(A/B))に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):50nm、SiO2/Al2O3=1.0)を10wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は5μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、100℃で1時間焼成することによって、実施例5に係る全固体電池を作製した。
【0110】
(比較例1)
エポキシ樹脂EPICLON(登録商標)(DIC株式会社製、EXA-4816)に、ゼオライト粒子(東ソー社製、平均粒径(d50):4μm、SiO2/Al2O3=1.0)を5wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は50μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、100℃で1時間焼成することによって、比較例1に係る全固体電池を作製した。
【0111】
(比較例2)
シリコーン樹脂(信越化学社製、X-40-2756)に、ゼオライト粒子(パナソニック社製、平均粒径(d50):4μm、SiO2/Al2O3=0.8)を5wt%添加し、混合して混合液を得た。混合液を、Al板上に滴下し、バーコーターで塗布することによってアルミラミネートフィルムを作製した。シール部分の膜厚は100μmであった。このアルミラミネートフィルムを2枚作製した。次に、アルミラミネートフィルム上に、上記[電池の製造方法]で説明した方法によって作製した積層電池を積層させ、積層電池の上にもう1枚のアルミラミネートフィルムを積層させた。アルミラミネートフィルムを5kg/cm2で貼り合わせ、120℃で2時間焼成することによって、比較例2に係る全固体電池を作製した。
【0112】
作製した全固体電池について、充放電試験を行った。充放電試験は、充電及び放電の電流値を変化させることによって実施した。放電における電流値が所定の電流値を示したときの電圧値を出力電圧とした。この一連の充電及び放電を1サイクルとし、充放電試験を100サイクル実施した。1サイクル目の出力電圧及び電池の容量、並びに100サイクル目の出力電圧及び電池の容量を測定した。1サイクル目の出力電圧と100サイクル目の出力電圧との差を「出力電圧の変化量」とした。1サイクル目の電池の容量に対する1サイクル目の電池の容量と100サイクル目の電池の容量との差の比率を「電池の容量の変化量」とした。充放電試験は、温度25℃、湿度40%の条件にて実施した。出力電圧及び電池の容量は、充放電電源(松定プレシジョン社製、ECD)を用いて測定した。また、充放電試験後において、それぞれの全固体電池の臭気について評価した。臭気は、充放電試験後の全固体電池を直接嗅ぐことによる官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
表1に示すように、実施例1から実施例5の電池では、充放電試験後も臭気はなかった。実施例1から実施例5の電池では、出力電力の変化量は、-0.01Vであった。電池の容量の変化量は、-2%から-5%であった。
【0115】
他方、表1に示すように、比較例1及び比較例2の電池では、全固体電池の充放電試験後に臭気が感じられた。これは、電池の内部で発生した硫化物ガスが電池の外部に流出したためであると考えられる。比較例1の電池では、出力電力の変化量は-0.2Vであり、電池の容量の変化量は-40%であった。比較例2の電池では、出力電力の変化量は-0.2Vであり、電池の容量の変化量は-38%であった。これは、電池の内部に水分が浸入することによって電解質の伝導度が低下し、それに伴って抵抗が増加したためであると考えられる。以上の結果から、ゼオライト粒子の平均粒径が0.1μm以下であることで、電池の耐環境性能が向上することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示における電池は、例えば、固体電解質を用いた電池に適用できる。
【符号の説明】
【0117】
11 正極集電体
12 正極層
13 負極集電体
14 負極層
15 固体電解質層
16 正極端子
17 負極端子
20 第1封止部材
21 第1部分
22 第2部分
23 第2封止部材
26 正極側取り出し電極
27 負極側取り出し電極
30 セル
40 ケース
100,200,300,400 電池