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特許7432863結合構造、結合構造の製造方法、刃物及びルアー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】結合構造、結合構造の製造方法、刃物及びルアー
(51)【国際特許分類】
   F16B 4/00 20060101AFI20240209BHJP
   A01K 85/16 20060101ALI20240209BHJP
   B26B 3/00 20060101ALI20240209BHJP
   B25G 1/00 20060101ALI20240209BHJP
   B25G 3/34 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
F16B4/00 J
A01K85/16
B26B3/00 C
B25G1/00 F
B25G3/34 Z
F16B4/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019219401
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089025
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】713005864
【氏名又は名称】有限会社志津刃物製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】堀部 喜学
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良一
(72)【発明者】
【氏名】森茂 智彦
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-001214(JP,A)
【文献】実開昭56-015680(JP,U)
【文献】実開昭54-100847(JP,U)
【文献】登録実用新案第3049136(JP,U)
【文献】特開2004-222630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
B26B 1/00- 11/00
B26B 23/00- 29/06
B25G 3/34
B25G 1/00
A01K 83/00- 85/18
A01K 91/00- 91/16
A01K 91/20- 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体及び該本体を結合するための結合部を有する第1部材と、
前記第1部材の前記結合部を挿入するための挿入部を有する木製部材と、
を備え、
前記木製部材は、
前記挿入部に前記結合部を挿入した状態で加熱及び木目と水平方向の圧縮を行うことにより、前記結合部を前記木製部材に固定したことを特徴とする結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の結合構造において、
前記第1部材の前記結合部は、
前記木製部材の前記挿入部に挿入可能な大きさの突起部を備えていることを特徴とする結合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の結合構造において、
前記第1部材は、
前記本体として物体を切るための金属製の刃部と、前記結合部として前記刃部を固定するための金属製の中子と、を有する刃体であり、
前記木製部材は、前記刃体の柄部であることを特徴とする結合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の結合構造により、前記刃体と前記柄部とを結合したことを特徴とする刃物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の結合構造において、
前記第1部材は、
前記本体として釣り用の金属製の針部と、前記結合部として前記針部を固定するための金属製の固定部と、を有する釣針であり、
前記木製部材は、前記釣針の疑似餌部であることを特徴とする結合構造。
【請求項6】
請求項5に記載の結合構造により、前記釣針と前記疑似餌部とを結合したことを特徴とするルアー。
【請求項7】
本体及び該本体を結合するための結合部を有する第1部材の前記結合部を、前記第1部材の前記結合部を挿入するための挿入部を有する木製部材の前記挿入部に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程により前記挿入部に前記結合部を挿入した木製部材を、加熱するとともに木目と水平方向に圧縮する加熱圧縮工程と、
により前記第1部材を前記木製部材に固定することを特徴とする結合構造の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の結合構造の製造方法において、
前記第1部材は、
前記本体として物体を切るための金属製の刃部及び前記結合部として前記刃部を固定するための金属製の中子を有する刃体であり、
前記木製部材は、前記刃体の柄部であることを特徴とする結合構造の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の結合構造の製造方法において、
前記第1部材は、
前記本体として釣り用の金属製の針部及び前記結合部として前記針部を固定するための金属製の固定部を有する釣針であり、
前記木製部材は、前記針部の疑似餌部であることを特徴とする結合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃体などの部材を柄などの木製部材に固定するための結合構造、結合構造の製造方法、その結合方法を用いた刃物及びルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
包丁などの刃物は、一般に、刃体と柄部とによって構成されている。従来、刃体を柄部に固定する場合、刃体と柄部との連結部分が外れてしまわないように口輪を設けた包丁がある。この包丁では、口輪は、包丁の木柄の柄部の段部に嵌着可能な筒状の本体と、本体の内周方向に沿って少なくとも1つ設けられたリング状の突起部とを合成樹脂材料で一体形成したものである。この口輪の突起部は、木柄の柄部の先端に向かう方向に対応して、本体の一端側から他端側までの間に、本体の内径から漸次に縮径する傾斜面を有するとともに、傾斜面の所定高さ位置において本体の内径にまで拡径する直立面を有するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、刃体と柄部とを結合するために、刃体の基端部に一体形成された中子に対して柄部を構成する左右一対の柄部構成片を結合して、カシメピンによりカシメ付けしたり、ボルトによって締め付け固定したりするものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-291256号公報
【文献】特開2005-177014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の刃体と柄部との結合構造を用いた刃物では、口輪やカシメピンあるいはボルトなどの結合用部材を用いている。したがって、それらのゆるみや劣化によって、刃体と柄部との間に水が浸入して不衛生となったり、刃体が柄部から抜けてしまったりするという問題があった。また、それらの結合用部材によって刃物の外観上の美観が失われてしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、刃体と柄部とを結合したり、釣針と疑似餌部を結合したりするための結合用部材を必要としない結合構造を有する刃物やルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る結合構造(1)は、
本体(12)及び該本体(12)を結合するための結合部(14)を有する第1部材(10)と、
前記第1部材(10)の前記結合部(14)を挿入するための挿入部(22)を有する木製部材(20)と、
を備え、
前記木製部材(20)は、
前記挿入部(22)に前記結合部(14)を挿入した状態で加熱及び木目と水平方向の圧縮を行うことにより、前記結合部(14)を前記木製部材(20)に固定したことを要旨とする。
【0009】
このような結合構造(1)では、木製部材(20)の挿入部(22)に挿入された結合部(14)が、木製部材(20)が加熱され、木目と水平方向に圧縮されることにより、第1部材(10)が木製部材(20)に固定される。
【0010】
つまり、木製部材(20)が木製であるため、加熱・圧縮されると、木製部材(20)が収縮し、それに伴い挿入部(22)の内面が結合部(14)の外面に密着する。したがって、第1部材(10)が木製部材(20)に強固に固定されるとともに、第1部材(10)と木製部材(20)との接合部分に隙間がなくなるので、結合部(14)に対する水などの液体の侵入が非常に少なくなる。したがって衛生的ともなる。
【0011】
さらに、木製部材(20)や第1部材(10)と木製部材(20)の結合部(14)などに、第1部材(10)を木製部材(20)に固定するための金属製の口輪や結合部材(カシメピンやボルトなど)が不要となり、木製部材(20)の表面に結合部材が現れることがなくなるため、木製部材(20)の表面全体を木目で覆うことが可能となる。したがって、外観の意匠性をよくすることもできる。
【0012】
[適用例2]
適用例2に記載の結合構造(1)は、適用例1に記載の結合構造(1)において、
前記第1部材(10)の前記結合部(14)は、
前記木製部材(20)の前記挿入部(22)に挿入可能な大きさの突起部(16)を備えていることを要旨とする。
【0013】
このような結合構造(1)によれば、木製部材(20)の挿入部(22)に結合部(14)を挿入した状態で、木製部材(20)を加熱して圧縮すると、挿入部(22)の内面が結合部(14)の外面に密着するとともに、突起部(16)が挿入部(22)から木製部材(20)の内部に食い込むような状態となる。したがって、この突起部(16)によって、より引張強度が高い結合構造(1)となる。
【0014】
[適用例3]
適用例3に記載の結合構造(1)は、適用例1に記載の結合構造(1)において、
前記第1部材(10)は、
前記本体(12)として物体を切るための金属製の刃部(12)と、前記結合部(14)として前記刃部(12)を固定するための金属製の中子(14)と、を有する刃体(10)であり、
前記木製部材(20)は、前記刃体(10)の柄部(20)であることを要旨とする。
【0015】
このような結合構造(1)では、木製の柄部(20)の挿入部(22)に挿入された金属製の中子(14)が、柄部(20)が圧縮されることにより、金属製の刃部(12)が柄部(20)に固定される。
【0016】
このとき、柄部(20)が木製であるため、圧縮される際に、挿入部(22)の内面が中子(14)の外面に密着する。したがって、金属製の刃部(12)が柄部(20)に強固に固定されるとともに、金属製の刃部(12)と柄部(20)の接合部分に隙間がなくなるので、結合部(14)に対する水などの液体の侵入が非常に少なくなる。したがって、衛生的となる。
【0017】
さらに、柄部(20)や金属製の刃部(12)と柄部(20)の結合部(14)などに、刃部(12)と柄部(20)とを結合するための金属製の口輪や結合部材(カシメピンやボルトなど)が不要となり、木製部材(20)の表面に結合部材が現れることがなくなるため、木製部材(20)の表面全体を木目で覆うことが可能となる。したがって、外観の意匠性をよくすることもできる。
【0018】
[適用例4]
適用例4に記載の刃物(5)は、
適用例2に記載の結合構造(1)により、前記刃体(10)と前記柄部(20)とを結合したことを要旨とする。
【0019】
このような刃物(5)は、適用例2に記載の結合方法を用いた刃物であるため、適用例2に記載の結合方法と同様の特徴を有する刃物(5)となる。
【0020】
[適用例5]
適用例5に記載の結合構造(1)は、適用例1又は適用例2に記載の結合構造(1)において、
前記第1部材(10)は、
前記本体(12)として釣り用の金属製の針部(12)と、前記結合部(14)として前記針部(12)を固定するための金属製の固定部(14)と、を有する釣針(10)であり、
前記木製部材(20)は、前記釣針(10)の疑似餌部(20)であることを要旨とする。
【0021】
このような結合構造(1)では、木製の疑似餌部(20)の挿入部(22)に挿入された釣針(10)の金属製の固定部(14)が、疑似餌部(20)が圧縮されることにより、金属製の針部(12)が疑似餌部(20)に固定される。
【0022】
このとき、疑似餌部(20)が木製であるため、圧縮される際に、挿入部(22)の内面が固定部(14)の外面に密着する。したがって、針部(12)が疑似餌部(20)に強固に固定されるとともに、針部(12)と疑似餌部(20)の接合部分に隙間がなくなるので、固定部(14)に対する水などの液体の侵入が非常に少なくなる。したがって、水分による疑似餌部(20)の劣化を少なくすることができる。
【0023】
さらに、疑似餌部(20)や針部(12)と疑似餌部(20)の固定部(14)などに、針部(12)と疑似餌部(20)とを結合するための金属製の口輪や結合部材(カシメピンやボルトなど)が不要となり、疑似餌部(20)の表面に結合部材が現れることがなくなるため、疑似餌としての模擬度を高めることが可能となる。
【0024】
[適用例6]
適用例6に記載のルアー(5)は、適用例5に記載の結合構造(1)により、前記釣針(10)と前記疑似餌部(20)とを結合したことを要旨とする。
このようなルアー(5)は 適用例5に記載の結合方法を用いたルアーであるため、適用例5に記載の結合方法と同様の特徴を有するルアー(5)となる。
【0025】
[適用例7]
本発明に係る結合構造(1)の製造方法は、
本体(12)及び該本体(12)を結合するための結合部(14)を有する第1部材(10)の前記結合部(14)を、前記第1部材(10)の前記結合部(14)を挿入するための挿入部(22)を有する木製部材(20)の前記挿入部(22)に挿入する挿入工
程と、
前記挿入工程により前記挿入部(22)に前記結合部(14)を挿入した木製部材(20)を、加熱するとともに木目と水平方向に圧縮する加熱圧縮工程と、
により前記第1部材(10)を前記木製部材(20)に固定することを要旨とする。
【0026】
このような結合構造(1)の製造方法によれば、適用例1に記載の結合構造(1)と同様に、第1部材(10)と木製部材(20)とを強固に結合でき、衛生的で意匠性にも優れた結合構造(1)を製造できる。
【0027】
[適用例8]
適用例8に記載の結合構造(1)の製造方法は、適用例7に記載の結合構造(1)の製造方法において、
前記第1部材(10)は、
前記本体(12)として物体を切るための金属製の刃部(12)及び前記結合部(14)として前記刃部(12)を固定するための金属製の中子(14)を有する刃体(10)であり、
前記木製部材(20)は、前記刃体(10)の柄部(20)であることを要旨とする。
【0028】
このような結合構造(1)の製造方法によれば、適用例2に記載の結合構造(1)と同様に、刃部(12)と柄部(20)とを強固に結合でき、衛生的で意匠性にも優れた結合構造(1)を製造できる。
【0029】
[適用例9]
適用例9に記載の結合構造(1)の製造方法は、適用例7に記載の結合構造(1)の製造方法において、
前記第1部材(10)は、
前記本体(12)として釣り用の金属製の針部(12)及び前記結合部(14)として前記針部(12)を固定するための金属製の固定部(14)を有する釣針(10)であり、
前記木製部材(20)は、前記針部(12)の疑似餌部(20)であることを要旨とする。
【0030】
このような結合構造(1)の製造方法によれば、適用例2に記載の結合構造(1)と同様に、針部(12)と疑似餌部(20)とを強固に結合でき、衛生的で意匠性にも優れた結合構造(1)を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】刃物の概略の構成を示す外観図である。
図2】結合構造の製造方法の概略を示す図である。
図3】柄部の圧縮方向の定義を説明する図である。
図4】柄部の木目と圧縮方向の定義を説明する図である。
図5】圧縮率を得るための圧縮試験の試験条件を示す図である。
図6】プレス温度を得るための圧縮試験の試験条件を示す図である。
図7】引張試験の条件を示す図であり、
図8】引張試験の結果を示す図である。
図9】第2実施形態におけるルアーの概略の構成を示す断面図である。
図10】挿入部を挿入穴以外の形態で実現する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0033】
[第1実施形態]
(刃物の構成)
図1に基づき、本発明を刃物5に適用した第1実施形態について説明する。図1は、刃物5の概略の構成を示す外観図であり、図1(A)は、刃物5全体の外観図であり、図1(B)は、刃体10の外観図である。
【0034】
図1(A)に示すように、刃物5は、金属製の刃体10と木製の柄部20とを結合構造1により結合・固定したものである。
刃体10は、刃部12及び中子14を備えており、刃部12は、物体を切るための部分であり、包丁やナイフなどのいわゆる金属製の刃の部分であり、物体を切りやすいように、図示しない切っ先、そり、刃先、刃元、峰などの部分からなる。
【0035】
また、中子14は、刃部12を柄部20に結合し固定するため、刃部12と一体に形成された金属製の部分であり、刃部12の刃元部分から先を細く成形したものである。さらに、中子14の上下側面に鋸の刃状の突起部16が設けられている。
【0036】
柄部20は、使用者が刃物5を使用する際に把握する部分であり、刃物5の用途に応じて、断面形状が楕円形や三角形の柱状に形成されており、一端面から長手方向に中子14を挿入するための、直径8.5[mm]、端面からの深さ50[mm]以上の挿入孔22(図3参照)が穿たれている。
【0037】
本第1実施形態では、柄部20は、圧縮工程での圧縮率を考慮し、木材を、コッピングマシンを用いて、圧縮方向のみに引き伸ばした形状とし、具体的には、断面の形状が、短径:30[mm]、長辺:55[mm]であり、長さ:200[mm]となるように加工してある。
【0038】
結合構造1は、柄部20の挿入孔22に刃体10の中子14を挿入した状態で、柄部20を加熱、圧縮して挿入孔22の内面を中子14の外面に密着させて形成した、刃体10と柄部20の結合部分である。
【0039】
(結合部1の製造方法)
次に、図2に基づき結合構造1の製造方法について説明する。図2は、結合構造1の製造方法の概略を示す図である。
【0040】
結合構造1の製造工程は、下記に示すように、煮沸工程、挿入工程、圧縮工程及び冷却工程である。
【0041】
(1)煮沸工程
柄部20を圧縮しやすくするため、図2(A)に示すように、柄部20を沸騰した水の中に入れて煮沸する。煮沸条件は、用いる木材の種類や圧縮の際の加熱温度によって異なるため、煮沸条件については、詳細を後述する。
【0042】
(2)挿入工程
図2(B)に示すように、煮沸工程が完了した柄部20の挿入口に刃体10の中子14を挿入し、中子14を挿入した柄部20を金型30に入れる。このとき、突起部16が圧縮方向に対して水平方向となるように挿入すると、突起部16が圧縮方向に対して垂直方向となるように挿入した場合に比べ、引っ張り強度が向上する。
【0043】
金型30は、SUS材などの金属材を2分割し、片方の金型に、柄部20を長手方向の半面の成形後の形状を彫り込んで凹部を形成し、他方の金型に柄部20の他方の半面を掘り込んで凹部を形成したものとなっている。
また、金型30は、圧縮工程において、圧縮前の柄部20を凹部に入れてホットプレスで圧縮する際に安定した圧縮ができるように、圧縮方向にガイドが設けられている。
【0044】
(3)圧縮工程
図2(C)に示すように、挿入工程で、柄部20を入れて金型30をホットプレスで圧縮し、熱を加えたまま所定の時間、加熱状態を保持する。
【0045】
ここで、図3及び図4に基づき、圧縮方向と柄部20の木目の関係について説明する。図3は、柄部20の圧縮方向の定義を説明する図であり、図4は、柄部20の木目と圧縮方向の定義を説明する図である。
【0046】
図3(A)に示す完成品の刃物5の刃部12の面と垂直な方向を左右方向と呼び(図3(B)参照)、刃部12の面に平行な方向を上下方向と呼ぶこととする(図3(C)参照)。また、図4の中に矢印で示す圧縮方向に対し垂直方向の木目を柾目(図4(A),図4(B)参照)と呼び、圧縮方向に対し平行な方向の木目を板目(図4(C)、図4(D)参照)と呼ぶこととする。
【0047】
圧縮工程においては、使用する木材の種類、圧縮率、圧縮温度、圧縮方向によって圧縮の成否が決まるため、試験を行った。その試験結果については、詳細を後述する。
【0048】
(4)冷却工程
圧縮工程で所定時間経過後、ホットプレスから金型30を取り出し、金型30の温度が40℃以下まで冷えたら刃物5を金型30から取り出す。
【0049】
(ア)圧縮率
圧縮工程において適切な圧縮率を得るため、複数の種類の木材(樹種)、圧縮方向、沸騰時間、プレス温度をパラメータとして予備的な圧縮試験を行い、外観評価を行った。図5に圧縮率を得るための圧縮試験の試験条件を示す。
【0050】
図5に示すように、樹種としてヒノキ、ホオノキを用い、木目を柾目、圧縮率を30[%]、50[%]、圧縮方向を上下方向とし、煮沸時間とプレス温度を変更させて圧縮試験を行った。
【0051】
その結果、圧縮率50[%]の場合、圧縮された木材の金型30内での逃げ場がなくなり、金型30の隙間に木材が流れ込んだ。圧縮率30[%]の場合、木材の押し出しが少ないため、圧縮率は30[%]とすることとした。
また、どの条件においても木材の焦げ目が少なく、更に焦げ目を付けて意匠性を高めるため、プレス温度を更に高めることとした。
【0052】
(イ)プレス温度
圧縮時の適切なプレス温度を得るため、図6に示す試験条件で予備的に圧縮試験を行い、外観評価を行った。図6に、プレス温度を得るための圧縮試験の試験条件を示す。
【0053】
図6に示すように、ウォルナット、ナラは、プレス温度180[℃]では著しく黒色となった。プレス温度160[℃]では黒さは軽減したため、この2樹種のプレス温度は、160[℃](ホットプレスの設定温度は金型30における熱伝導時の損失を見込んで175[℃])とする。また、その他の樹種のプレス温度は、180[℃](ホットプレスの設定温度は金型30における熱伝導時の損失を見込んで195[℃])とする。
【0054】
(ウ)引張試験
次に図7図8に基づき、引張試験について説明する。図7は、引張試験の条件を示す図であり、図8は、引張試験の結果を示す図である。なお、図7のNo欄の数字で示す試験条件が、図8のNo欄の数字で示す試験結果と対応している。また、引張試験の様子を図2(D)に示す。
【0055】
引張試験では、万能試験機(株式会社島津製作所製 UH-100kNXR)を用いて、刃部12と柄部20とを把握しながら、柄部20を引っ張り、抜け始め荷重と最大荷重とを測定する。抜け始め荷重における抜け始めは目視により確認し、最大荷重は荷重曲線より求める。また、荷重速度は、10[mm/min]とする。
また、本第1実施形態では、引張試験を行うための、刃部12の一部に穴が設けられている。
【0056】
図8に示すように、柄部20として何れの樹種を採用してもある程度の引張強度を確保することは可能であるが、刃物5としての安全性や耐久性を確保することを考慮して、588[N]以上の樹種を採用することとする。
【0057】
[第2実施形態]
次に、図9に基づき、本発明を釣り用のルアー5、特にハードルアーに適用した第2実施形態について説明する。図9は、ルアー5の概略の構成を示す外観図である。
【0058】
(ルアーの構成)
ルアー5は、金属部材10として釣針10、木製部材20及び疑似餌部20を備えている。
【0059】
釣針10は、釣りの対象となる獲物に引っかかる部分である針部12、疑似餌部20の針部12を結合・固定する固定部14とを備えている。
針部12は、針先、返し、先曲げ、胴曲げ、軸(胴)及びチモトからなる、いわゆる釣針であり、固定部14は、針部12を疑似餌部20に結合するための部品であり、挿入部とチモトとを連結するための連結部とを備えている。
【0060】
挿入部の一端とチモト部分はリング状になっており、挿入部のリング部分にチモトのリング部分が挿入されることにより、連結部に対して針部12が回動可能となっている。
疑似餌部20は、第1実施形態で用いた木材を用いて形成されており、種々の疑似餌の外観形状に形成されている。
【0061】
疑似餌部20には、釣針10の固定部14の挿入部のリング部分と反対端を挿入するための挿入孔22が設けられている。
【0062】
(結合部1の製造方法)
第1実施形態における結合部1の製造方法と同様に、煮沸工程で疑似餌部20を煮沸し、続く挿入工程で疑似餌部20の挿入孔22に針部12の固定部14の挿入部を挿入し、続く圧縮工程で疑似餌部20を入れた金型30をホットプレスで圧縮し、続く冷却工程で冷却した後ルアー5を金型30から取り出す。
【0063】
(引張試験)
製造したルアー5の引張試験を第1実施形態における引張試験と同様に実施した。引張試験では、大小各1個の疑似餌部20を用いて試験を行った。その結果、大型の疑似餌部20では、引張荷重273[N]で、針部12が折れた。
【0064】
また、小型の疑似餌部20では、引張荷重239[N]で固定部14が疑似餌部20から抜けた。この結果、引張強度は230[N]以上を得ることができ、ルアーとしては十分な引張強度が得られることが確認できた。
【0065】
[その他の実施形態]
(1)上記第1実施形態では、結合構造1を刃物5に適用し、第2実施形態では、ルアー5に適用したが、金属部材10の一部(刃部12、針部12)を木製部材(柄部20、疑似餌部20)に挿入して、木製部材20を加熱・圧縮して、木製部材20に金属部材10を固定するものであれば、その他の物に適用してもよい。
【0066】
(2)上記第2実施形態では、釣針10の数を1個として説明したが、複数個の釣針10を備えるようにしてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、柄部20や疑似餌部20に孔(挿入孔22)を穿って挿入部を形成していたが、他の方法、例えば図10に示すように、柄部20や疑似餌部20の木製部材を2分割し、接合面24を平面にして、接合面24で中子14や突起部16を挟み込んだ状態で圧縮するようにしてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、刃体12や針部12の本体を金属製としていたが、セラミック製や樹脂製としてもよい。
【0069】
(5)上記第1実施形態では、刃部12、中子14及び突起部16を一体としていたが、それぞれ別体として、それらを結合するようにしてもよい。
【0070】
(6)上記第1実施形態では、柄部20の断面形状を楕円形や三角形の柱状に形成していたが、断面形状が一定の単なる柱状ではなく、例えば、使用者が柄部20を把持しやすくなるように、柄部20の長手方向の途中で断面形状を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…結合構造 5…刃物、 ルアー 10…刃体、釣針(第1部材) 12…刃部、針部(本体) 14…中子(結合部) 16…突起部 20…柄部、疑似餌部(木製部材) 22…挿入孔(挿入部) 24…接合面 30…金型。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10