(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】レーザレーダ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2021536637
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021729
(87)【国際公開番号】W WO2021019903
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019137672
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019154081
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】細川 哲央
(72)【発明者】
【氏名】加納 康行
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032552(JP,A)
【文献】特開2015-148589(JP,A)
【文献】特開2002-352188(JP,A)
【文献】特開2009-063339(JP,A)
【文献】特開2015-081921(JP,A)
【文献】特表2018-513365(JP,A)
【文献】特開2018-077088(JP,A)
【文献】特開2019-158546(JP,A)
【文献】特開2014-029318(JP,A)
【文献】特開2019-074480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出射されたレーザ光を目標領域に投射する投射光学系と、
前記目標領域に存在する物体によって前記レーザ光が反射された反射光を光検出器に集光させる受光光学系と、を備え、
前記投射光学系と前記受光光学系は、それぞれの光軸が互いに離間して配置され、
前記光検出器は、前記光軸の離間方向に垂直な方向に並ぶ複数のセンサ部を備え、
前記複数のセンサ部は、それぞれ、前記光軸の離間方向に長い形状を有
し、
前記投射光学系から離れた部分の幅が前記投射光学系に近い部分の幅よりも狭い、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザレーダにおいて、
前記投射光学系は、前記複数のセンサ部の並び方向に対応する方向に長いビーム形状で前記レーザ光を前記目標領域に投射する、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のレーザレーダにおいて、
前記センサ部は、前記投射光学系から離れるに従って幅が狭くなる部分を有する、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項4】
請求項
1ないし3の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
前記センサ部は、T字状の形状である、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項5】
請求項
1ないし3の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
前記センサ部は、台形状の形状である、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項6】
請求項1ないし
5の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
前記受光光学系は、測距範囲の最遠距離からの前記反射光を前記投射光学系に接近する側の前記センサ部の端部付近に集光させ、測距範囲の最近距離からの前記反射光を前記投射光学系に離間する側の前記センサ部の端部付近に集光させる、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項7】
請求項1ないし
6の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
前記受光光学系は、前記光検出器に前記反射光を集光する集光レンズを備え、
前記集光レンズに、前記投射光学系の光軸を通すための開口部が設けられている、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項8】
請求項1ないし
7の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
ベース部材と、
前記ベース部材を回転軸について回転させる駆動部と、
前記回転軸を中心とする周方向に所定の間隔で前記ベース部材に配置され、前記回転軸から離れる方向にレーザ光をそれぞれ投射する複数の光学ユニットと、を備え、
前記複数の光学ユニットは、それぞれ、前記投射光学系および前記受光光学系を含んでいる、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項9】
請求項
8に記載のレーザレーダにおいて、
前記複数の光学ユニットは、前記レーザ光の投射方向が前記回転軸に平行な方向に互いに異なっている、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項10】
請求項
8に記載のレーザレーダにおいて、
前記複数の光学ユニットは、前記レーザ光の投射方向が前記回転軸に平行な方向に互いに同じである、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【請求項11】
請求項
8ないし
10の何れか一項に記載のレーザレーダにおいて、
投射光学系の光軸と前記受光光学系の光軸とが前記回転軸の周方向に並んでおり、
前記受光光学系の光軸が、前記投射光学系の光軸に対して、前記ベース部材の回転方向において後方の位置にある、
ことを特徴とするレーザレーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて物体を検出するレーザレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物への侵入を検知するセキュリティ用途などに、レーザレーダが用いられている。一般に、レーザレーダは、目標領域にレーザ光を照射し、その反射光に基づいて、目標領域における物体の有無を検出する。また、レーザレーダは、レーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間に基づいて、物体までの距離を測定する。
【0003】
以下の特許文献1には、投光部からレーザ光を投射し、その反射光を受光部で受光して、物体までの距離を測定する光学距離測定装置が記載されている。この装置では、投光部と受光部がレーザ光の投射方向に垂直な方向に離間して配置されている。また、投光部と受光部の視差を補うために、受光部の受光素子が、投光部と受光部の離間方向に長い形状に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、投光部から投射されたレーザ光の反射光が単一の受光素子で受光される。このため、この構成では、目標領域(レーザ光の投射領域)全体について、物体の有無および当該物体までの距離が検出されるのみである。
【0006】
しかしながら、レーザレーダでは、目標領域中のどの位置に物体が存在するかを検出できることが好ましい。たとえば、目標領域を複数に分割した各分割領域において、物体の有無および当該物体までの距離が検出できることが好ましい。そのための構成として、たとえば、反射光を受光する光検出器の受光面を一方向に複数に分割する構成が用いられ得る。これにより、受光面の各分割領域に対応する目標領域の分割領域において、物体の有無および距離を検出できる。この構成では、受光面の分割数を増やすほど、目標領域における物体検出の分解能を高めることができる。
【0007】
しかしながら、投光部と受光部との間に視差があると、物体までの距離の変化に応じて、反射光の集光スポットが光検出器の受光面上を移動する。このため、上記のように、光検出器の受光面を複数に分割する場合、受光面の分割の仕方によっては、物体までの距離の変化に応じて、反射光の集光スポットが受光面の分割方向に移動することが起こり得る。こうなると、目標領域上の各分割領域において物体を適正に検出することが困難になる。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、目標領域を複数に分割した分割領域ごとに物体を適正に検出することが可能なレーザレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係るレーザレーダは、レーザ光源から出射されたレーザ光を目標領域に投射する投射光学系と、前記目標領域に存在する物体によって前記レーザ光が反射された反射光を光検出器に集光させる受光光学系と、を備える。ここで、前記投射光学系と前記受光光学系は、それぞれの光軸が互いに離間して配置される。前記光検出器は、前記光軸の離間方向に垂直な方向に並ぶ複数のセンサ部を備える。前記複数のセンサ部は、それぞれ、前記光軸の離間方向に長い形状を有し、前記投射光学系から離れた部分の幅が前記投射光学系に近い部分の幅よりも狭い。
【0010】
本態様に係るレーザレーダによれば、光検出器が複数のセンサ部を備えるため、各センサ部からの出力に基づいて、目標領域上の、各センサ部に対応する分割領域ごとに、物体を検出できる。また、複数のセンサ部が光軸の離間方向に垂直な方向に並んでいるため、反射光の集光スポットは、物体までの距離の変化に応じて、センサ部の並び方向に垂直な方向に移動する。このため、物体までの距離が変化しても、分割領域ごとに、物体を適正に検出できる。さらに、複数のセンサ部は、それぞれ、光軸の離間方向、すなわち、センサ部の並び方向に垂直な方向に長い形状を有するため、物体までの距離の変化に応じて反射光の集光スポットが移動しても、各センサ部で反射光を受光できる。よって、物体までの距離が変化しても、センサ部からの出力により適正に、物体を検出できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明によれば、目標領域を複数に分割した分割領域ごとに物体を適正に検出することが可能なレーザレーダを提供できる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、レーザレーダの組み立てを説明するための斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、カバーを除く部分の組み立てが完了した状態のレーザレーダの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、カバーが装着された状態のレーザレーダの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、レーザレーダの構成を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る、光学ユニットの光学系の構成を示す斜視図である。
図5(b)は、実施形態に係る、光学ユニットの光学系の構成を示す側面図である。
図5(c)は、実施形態に係る、光検出器のセンサの構成を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態に係る、レーザレーダをZ軸負方向に見た場合の上面図である。
図6(b)は、実施形態に係る、各光学ユニットが回転軸のX軸正側に位置付けられたときの、各光学ユニットの投射光の投射角度を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、レーザレーダの構成を示す回路ブロック図である。
【
図8】
図8(a)は、実施形態に係る、物体によって反射された反射光の進行方向を模式的に示す図であり、
図8(b)は、実施形態に係る、物体によって反射された反射光の集光状態を模式的に示す図である。
【
図9】
図9(a)~(d)は、比較例に係る、センサ部が正方形である場合の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【
図10】
図10(a)~(d)は、実施形態に係る、センサ部が長方形である場合の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る、1つのセンサ部に反射光が取り込まれる物体の範囲(1つのセンサ部に取り込まれる反射光を生じさせる物体上のビームサイズ)が物体までの距離に応じてどのように変化するかを模式的に示す図である。
【
図12】
図12(a)~(d)は、実施形態に係る、センサ部が台形状の形状である場合の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【
図13】
図13(a)~(d)は、実施形態に係る、センサ部がT字状の形状である場合の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【
図14】
図14(a)は、センサ部が正方形である場合(比較例)とT字状の形状である場合(実施形態)とで、反射光を受光すべき正規のセンサ部により受光される反射光の受光量が物体までの距離に応じてどのように変化するかを検証したシミュレーション結果を示す図である。また、
図14(b)は、センサ部が正方形である場合(比較例)とT字状の形状である場合(実施形態)とで、正規のセンサ
部とその上下のセンサ部によって受光される反射光の受光量が物体までの距離に応じてどのように変化するかを検証したシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る、シミュレーションにおいて設定されたセンサ部の各部の寸法を示す図である。
【
図16】
図16(a)~(c)は、それぞれ、変更例に係る、センサ部の形状を示す図である。
【
図17】
図17は、その他の変更例に係る、レーザレーダの構成を示す断面図である。
【0014】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸正方向は、レーザレーダ1の高さ方向である。
【0016】
図1は、レーザレーダ1の組み立て工程を説明するための斜視図である。
図2は、カバー70を除く部分の組み立てが完了した状態のレーザレーダ1の構成を示す斜視図である。
図3は、カバー70が装着された状態のレーザレーダ1の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、レーザレーダ1は、円柱形状の固定部10と、固定部10に回転可能に配置されたベース部材20と、ベース部材20の上面に設置された円盤部材30と、ベース部材20および円盤部材30に設置された光学ユニット40と、を備える。
【0018】
ベース部材20は、固定部10に設けられたモータ13(
図4参照)の駆動軸13aに設置されている。ベース部材20は、駆動軸13aの駆動により、Z軸方向に平行な回転軸R10を中心として回転する。ベース部材20は、円柱形状の外形を有している。ベース部材20には、回転軸R10の周方向に沿って6つの設置面21が等間隔(60°間隔)で形成されている。設置面21は、回転軸R10に垂直な平面(X-Y平面)に対して傾いている。設置面21の側方(回転軸R10から離れる方向)および設置面21の上方(Z軸正方向)は、開放されている。6つの設置面21の傾き角は、互いに異なっている。6つの設置面21の傾き角については、追って
図6(b)を参照して説明する。
【0019】
円盤部材30は、円盤状の外形を有する板部材である。円盤部材30には、回転軸R10の周方向に沿って円形の6つの孔31が等間隔(60°間隔)で形成されている。孔31は、回転軸R10の方向(Z軸方向)に円盤部材30を貫通している。6つの孔31が、それぞれベース部材20の6つの設置面21の上方に位置付けられるよう、円盤部材30がベース部材20の上面に設置される。
【0020】
光学ユニット40は、構造体41とミラー42を備える。構造体41は、2つの保持部材41a、41bと、遮光部材41cと、2つの基板41d、41eと、を備える。保持部材41a、41bと遮光部材41cは、構造体41が備える光学系の各部を保持している。保持部材41bは、保持部材41aの上部に設置されている。遮光部材41cは、保持部材41aに保持されている。
【0021】
基板41d、41eは、それぞれ、保持部材41a、41bの上面に設置されている。構造体41は、下方向(Z軸負方向)にレーザ光を出射するとともに、下側からレーザ光を受光する。構造体41が備える光学系については、追って、
図4および
図5(a)~(c)を参照して説明する。
【0022】
固定部10、ベース部材20および円盤部材30からなる構造体に対して、
図1に示すように、孔31の上側から、孔31の周囲の面31aに光学ユニット40の構造体41が設置される。これにより、6つの光学ユニット40は、回転軸R10の周方向に沿って等間隔(60°間隔)で並ぶことになる。なお、光学ユニット40は、必ずしも周方向に等間隔に並ばなくてもよい。
【0023】
ベース部材20の設置面21に光学ユニット40のミラー42が設置される。ミラー42は、設置面21に設置される面と、設置面21とは反対側の反射面42aとが平行な板部材である。このように、構造体41を設置するための面31aと、当該面31aの下方に位置しミラー42を設置するための設置面21とによって、1つの光学ユニット40を設置するための設置領域が構成される。本実施形態では、6つの設置領域が設けられており、各設置領域に対して光学ユニット40が設置される。
【0024】
続いて、6つの光学ユニット40の上面に、
図2に示すように、基板50が設置される。こうして、ベース部材20、円盤部材30、6つの光学ユニット40、および基板50からなる回転部60の組み立てが完了する。回転部60は、固定部10のモータ13の駆動軸13a(
図4参照)が駆動されることにより、回転軸R10を回転の中心として回転する。
【0025】
その後、
図2に示す状態から、
図3に示すように、固定部10の外周部分に対して、回転部60の上方および側方を覆う円筒形状のカバー70が設置される。カバー70の下端には開口が形成されており、カバー70の内部は空洞になっている。カバー70が設置されることにより、カバー70の内部で回転する回転部60が保護される。また、カバー70は、レーザ光を透過する材料によって構成される。カバー70は、たとえば、ポリカーボネートにより構成される。こうして、レーザレーダ1の組み立てが完了する。
【0026】
レーザレーダ1による物体の検出の際には、構造体41のレーザ光源110(
図4参照)からレーザ光(投射光)がZ軸負方向に出射される。投射光は、ミラー42により回転軸R10から遠ざかる方向に反射される。ミラー42により反射された投射光は、カバー70を透過し、レーザレーダ1の外部に出射される。
【0027】
図3の一点鎖線に示すように、投射光は、回転軸R10に対して放射状にカバー70から出射され、レーザレーダ1の周囲に位置する目標領域に向かって投射される。そして、目標領域に存在する物体によって反射された投射光(反射光)は、
図3の破線に示すように、カバー70に入射し、レーザレーダ1の内部に取り込まれる。反射光は、ミラー42によって反射され、構造体41の光検出器150(
図4参照)によって受光される。
【0028】
図2に示した回転部60は、回転軸R10を中心に回転する。回転部60の回転に伴い、レーザレーダ1から目標領域に向かう投射光の光軸が回転軸R10を中心に回転する。これに伴い、目標領域(投射光の走査位置)も回転する。
【0029】
レーザレーダ1は、反射光の受光の有無に基づいて、目標領域に物体が存在するか否かを判定する。また、レーザレーダ1は、目標領域に投射光を投射したタイミングと、目標領域から反射光を受光したタイミングとの間の時間差(タイムオブフライト)に基づいて、目標領域に存在する物体までの距離を計測する。回転部60が回転軸R10を中心に回転することにより、レーザレーダ1は、周囲360°のほぼ全範囲に存在する物体を検出できる。
【0030】
【0031】
図4には、
図3に示したレーザレーダ1を、X-Z平面に平行な平面により、Y軸方向の中央位置で切断したときの断面図が示されている。
図4では、光学ユニット40のレーザ光源110から出射され、目標領域へと向かうレーザ光(投射光)の光束が一点鎖線で示され、目標領域から反射されたレーザ光(反射光)の光束が破線で示されている。また、
図4では、便宜上、レーザ光源110とコリメータレンズ120の位置が点線で示されている。
【0032】
図4に示すように、固定部10は、円柱状の支持ベース11と、底板12と、モータ13と、基板14と、非接触給電部211と、非接触通信部212と、を備える。
【0033】
支持ベース11は、たとえば樹脂で形成されている。支持ベース11の下面は、円形皿状の底板12で塞がれる。支持ベース11の上面中央には、支持ベース11の上面をZ軸方向に貫通する孔11aが形成されている。支持ベース11の内面の孔11aの周囲に、モータ13の上面が設置される。モータ13は、Z軸正方向に延びた駆動軸13aを備え、回転軸R10を中心として駆動軸13aを回転させる。
【0034】
支持ベース11の外面の孔11aの周囲には、回転軸R10の周方向に沿って、非接触給電部211が設置されている。非接触給電部211は、後述する非接触給電部171との間で給電が可能なコイルにより構成される。また、支持ベース11の外面の非接触給電部211の周囲には、回転軸R10の周方向に沿って、非接触通信部212が設置されている。非接触通信部212は、後述する非接触通信部172との間で無線による通信が可能な電極等が配置された基板により構成される。
【0035】
基板14には、後述する制御部201と電源回路202(
図7参照)が設置される。モータ13と、非接触給電部211と、非接触通信部212とは、基板14に対して電気的に接続される。
【0036】
ベース部材20の中央には、ベース部材20をZ軸方向に貫通する孔22が形成されている。孔22にモータ13の駆動軸13aが設置されることにより、ベース部材20が回転軸R10について回転可能に固定部10に支持される。ベース部材20の下面側の孔22の周囲には、回転軸R10の周方向に沿って、非接触給電部171が設置されている。非接触給電部171は、固定部10の非接触給電部211との間で給電が可能なコイルにより構成される。また、ベース部材20の下面側の非接触給電部171の周囲には、回転軸R10の周方向に沿って、非接触通信部172が設置されている。非接触通信部172は、固定部10の非接触通信部212との間で無線による通信が可能な電極等が配置された基板により構成される。
【0037】
図1を参照して説明したように、ベース部材20には、回転軸R10の周方向に沿って6つの設置面21が形成されており、6つの設置面21に、それぞれミラー42が設置される。また、ベース部材20の上面には、円盤部材30が設置されている。円盤部材30の孔31と保持部材41aの下面に形成された開口とが一致するよう、円盤部材30の上面に光学ユニット40が設置されている。
【0038】
光学ユニット40の構造体41は、光学系の構成として、レーザ光源110と、コリメータレンズ120と、集光レンズ130と、フィルタ140と、光検出器150と、を備える。
【0039】
保持部材41a、41bと遮光部材41cには、Z軸方向に貫通する孔が形成されている。遮光部材41cは筒状の部材である。レーザ光源110は、保持部材41aの上面に設置された基板41dに設置され、レーザ光源110の出射端面は、遮光部材41cに形成された孔の内部に位置付けられている。コリメータレンズ120は、遮光部材41cに形成された孔の内部に位置付けられ、この孔の側壁に設置されている。集光レンズ130は、保持部材41aに形成された孔に保持されている。フィルタ140は、保持部材41bに形成された孔に保持されている。光検出器150は、保持部材41bの上面に設置された基板41eに設置されている。
【0040】
基板50には、後述する制御部101と電源回路102(
図7参照)が設置される。6つの基板41dと、6つの基板41eと、非接触給電部171と、非接触通信部172とは、基板50に対して電気的に接続される。
【0041】
レーザ光源110は、所定波長のレーザ光(投射光)を出射する。レーザ光源110の出射光軸は、Z軸に平行である。コリメータレンズ120は、レーザ光源110から出射された投射光を収束させる。コリメータレンズ120は、たとえば非球面レンズによって構成される。コリメータレンズ120により収束された投射光は、ミラー42に入射する。ミラー42に入射した投射光は、ミラー42によって、回転軸R10から離れる方向に反射される。その後、投射光は、カバー70を透過して、目標領域へと投射される。
【0042】
目標領域に物体が存在する場合、目標領域に投射された投射光は、物体で反射される。物体によって反射された投射光(反射光)は、カバー70を透過し、ミラー42に導かれる。その後、反射光は、ミラー42によってZ軸正方向に反射される。集光レンズ130は、ミラー42で反射された反射光を収束させる。
【0043】
その後、反射光は、フィルタ140に入射する。フィルタ140は、レーザ光源110から出射される投射光の波長帯の光を透過し、その他の波長帯の光を遮光するよう構成されている。フィルタ140を透過した反射光は、光検出器150に導かれる。光検出器150は、反射光を受光して、受光光量に応じた検出信号を出力する。光検出器150は、たとえば、アバランシェフォトダイオードである。
【0044】
図5(a)は、光学ユニット40の光学系の構成を示す斜視図である。
図5(b)は、光学ユニット40の光学系の構成を示す側面図である。
図5(c)は、光検出器150のセンサ部151の構成を示す模式図である。
【0045】
図5(a)~(c)には、
図4において回転軸R10のX軸正側に位置する光学ユニット40および光検出器150が示されている。
図5(a)~(c)では、便宜上、
図4において回転軸R10のX軸正側に位置する光学ユニット40および光検出器150を示したが、他の光学ユニット40も同様の構成である。
【0046】
図5(a)、(b)に示すように、レーザ光源110は、発光面がY軸方向よりX軸方向の方が長い面発光型のレーザ光源である。また、コリメータレンズ120は、X軸方向の曲率とY軸方向の曲率が等しくなるよう構成されている。レーザ光源110は、コリメータレンズ120の焦点距離よりもコリメータレンズ120側に近付けられた位置に設置されている。これにより、
図5(a)に示すように、ミラー42によって反射された投射光は、僅かに拡散した状態で投射領域に投射される。また、ミラー42によって反射された投射光の光束は、Y軸方向の長さよりも、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)の長さが長くなる。
【0047】
目標領域からの反射光は、ミラー42によってZ軸正方向に反射された後、集光レンズ130に入射する。投射光を投射するための投射光学系LS1(レーザ光源110、コリメータレンズ120、ミラー42)の光軸A1と、反射光を受光するための受光光学系LS2(集光レンズ130、フィルタ140、光検出器150、ミラー42)の光軸A2は、いずれもZ軸方向に平行であり、且つ、回転軸R10の周方向に所定の距離だけ離れている。
【0048】
ここで、本実施形態では、投射光学系LS1の光軸A1が集光レンズ130の有効径に含まれるため、集光レンズ130には、投射光学系LS1の光軸A1を通すための開口部131が形成されている。開口部131は、集光レンズ130の中心よりも外側に形成されており、Z軸方向に集光レンズ130を貫通する切欠きである。このように集光レンズ130に開口部131が設けられることにより、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2とを近付けることができ、レーザ光源110から出射されたレーザ光を、集光レンズ130にほぼ掛かることなくミラー42に入射させることができる。
【0049】
また、
図4に示した遮光部材41cは、投射光学系LS1の光軸A1を覆うとともに、レーザ光源110の位置から開口部131の下端まで延びている。また、遮光部材41cは、開口部131に嵌め込まれている。これにより、レーザ光源110から出射されたレーザ光が集光レンズ130に掛かることを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、Z軸負方向に見て回転軸R10を中心に回転部60が時計回りに回転される。これにより、
図5(a)に示す回転軸R10のX軸正側に位置する光学ユニット40の各部は、Y軸正方向に回転される。このように、本実施形態では、受光光学系LS2の光軸A2が、投射光学系LS1の光軸A1に対して、回転部60の回転方向において後方の位置にある。
【0051】
図5(b)に示すように、ミラー42に入射する投射光は、ミラー42の反射面42aのX-Y平面に対する角度θに応じた方向に反射される。上述したように、レーザレーダ1は6つの光学ユニット40を備えており、各光学ユニット40のミラー42が設置される設置面21の回転軸R10に垂直な平面(X-Y平面)に対する傾き角は、互いに異なっている。したがって、6つの設置面21にそれぞれ設置される6つのミラー42の反射面42aの傾き角も、互いに異なっている。よって、各ミラー42によって反射された投射光は、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)において、互いに異なる走査位置に投射される。
【0052】
図5(c)に示すように、光検出器150は、Z軸負側の面に6つのセンサ部151を備える。6つのセンサ部151は、X軸方向に一列に隣接して並んでいる。6つのセンサ部151の並び方向は、走査範囲のZ軸方向(回転軸R10に平行な方向)に対応する。6つのセンサ部151は、光軸A1、A2の離間方向に略垂直な方向に並んでいる。
【0053】
6つのセンサ部151は、たとえば、光検出器150の入射面に個別にセンサを配置することにより構成される。あるいは、光検出器150の入射面全体に1つのセンサを配置し、その上面に、センサ部151の配置領域のみを露出させるマスクを形成することにより、センサ部151が形成されてもよい。
【0054】
6つのセンサ部151には、目標領域をZ軸方向に6つに分割した各分割領域からの反射光が入射する。したがって、各センサ部151からの検出信号により、各分割領域に存在する物体を検出できる。センサ部151の数を増やすことにより、Z軸方向において、目標領域における物体検出の分解能が高められる。
【0055】
図6(a)は、レーザレーダ1をZ軸負方向に見た場合の上面図である。
図6(a)では、便宜上、カバー70と、基板50と、保持部材41bと、基板41d、41eとが省略されている。
【0056】
6つの光学ユニット40は、回転軸R10を回転の中心として回転する。このとき、6つの光学ユニット40は、回転軸R10から離れる方向(Z軸方向に見て放射状に)投射光を投射する。6つの光学ユニット40は所定の速度で回転しながら投射光を目標領域に投射し、目標領域からの反射光を受光する。これにより、レーザレーダ1の周囲全周(360°)にわたって物体の検出が行われる。
【0057】
図6(b)は、各光学ユニット40が回転軸R10のX軸正側に位置付けられたときの、各光学ユニット40の投射光の投射角度を示す模式図である。
【0058】
上述したように、6つのミラー42の設置角度は互いに異なっている。これにより、6つの光学ユニット40からそれぞれ出射される投射光の光束L1~L6の角度も互いに異なる。
図6(b)において、6つの光束L1~L6の光軸は一点鎖線で示されている。光束L1~L6の角度範囲を示す角度θ0~θ6は、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)に対する角度である。
【0059】
本実施形態では、隣り合う光束が互いにほぼ隣接するように、角度θ0~θ6が設定されている。すなわち、光束L1、L2、L3、L4、L5、L6の分布範囲は、それぞれ、角度θ0~θ1、角度θ1~θ2、角度θ2~θ3、角度θ3~θ4、角度θ4~θ5、角度θ5~θ6である。これにより、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)において、互いに隣接する走査位置に各光学ユニット40からの投射光が投射される。
【0060】
図7は、レーザレーダ1の構成を示す回路ブロック図である。
【0061】
レーザレーダ1は、回路部の構成として、制御部101と、電源回路102と、駆動回路161と、処理回路162と、非接触給電部171と、非接触通信部172と、制御部201と、電源回路202と、非接触給電部211と、非接触通信部212と、を備える。制御部101と、電源回路102と、駆動回路161と、処理回路162と、非接触給電部171と、非接触通信部172とは、回転部60に配置されている。制御部201と、電源回路202と、非接触給電部211と、非接触通信部212とは、固定部10に配置されている。
【0062】
電源回路202は、外部電源と接続されており、固定部10の各部には、電源回路202を介して外部電源から電力が供給される。非接触給電部211に供給された電力は、回転部60の回転に応じて、非接触給電部171へと供給される。電源回路102は、非接触給電部171と接続されており、回転部60の各部には、電源回路102を介して非接触給電部171から電力が供給される。
【0063】
制御部101、201は、演算処理回路とメモリを備え、たとえばFPGAやMPUにより構成される。制御部101は、メモリに記憶された所定のプログラムに従って回転部60の各部を制御し、制御部201は、メモリに記憶された所定のプログラムに従って固定部10の各部を制御する。制御部101と制御部201は、非接触通信部172、212を介して通信可能に接続される。
【0064】
制御部201は、外部システムと通信可能に接続されている。外部システムは、たとえば、侵入検知システム、車、ロボットなどである。制御部201は、外部システムからの制御に応じて、固定部10の各部を駆動し、非接触通信部212、172を介して制御部101に駆動指示を送信する。制御部101は、制御部201からの駆動指示に応じて、回転部60の各部を駆動し、非接触通信部172、212を介して制御部201に検出信号を送信する。
【0065】
駆動回路161と処理回路162は、6つの光学ユニット40にそれぞれ設けられている。駆動回路161は、制御部101からの制御に応じてレーザ光源110を駆動する。処理回路162は、光検出器150のセンサ部151から入力される検出信号に対して増幅やノイズ除去等の処理を施して、制御部101に出力する。
【0066】
検出動作において、制御部201は、モータ13を制御して回転部60を所定の回転速度で回転させつつ、6つの駆動回路161を制御して、所定のタイミングで所定の回転角度ごとにレーザ光(投射光)をレーザ光源110から出射させる。これにより、投射光が回転部60から目標領域に投射され、反射光が回転部60の光検出器150のセンサ部151により受光される。
【0067】
制御部201は、センサ部151から出力される検出信号に基づいて、目標領域に物体が存在するか否かを判定する。また、制御部201は、投射光を投射したタイミングと、目標領域から反射光を受光したタイミングとの間の時間差(タイムオブフライト)に基づいて、目標領域に存在する物体までの距離を計測する。
【0068】
ところで、上記構成では、
図5(a)に示すように、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2とが互いに離間しているため、光検出器150の受光面に集光される反射光の集光スポットが、物体までの距離の変化に応じて移動する。
【0069】
図8(a)は、物体によって反射された反射光の進行方向をX軸正側から見た図であり、
図8(b)は、物体によって反射された反射光の集光状態をY軸負側から見た図である。便宜上、
図8(a)では、集光レンズ130のY軸正側の開口部131に対応する部分が切りかかれた状態で、集光レンズ130が図示されている。
【0070】
図8(a)、(b)に示すように、集光レンズ130は、光軸に沿って無限遠から入射する反射光(平行光)を光検出器150の受光面に集光するよう構成されている。このとき、集光レンズ130の有効径の広さで反射光が集光レンズ130に入射すると、反射光は、光検出器150上の複数のセンサ部151の全てに係るように集光される。すなわち、
図5(a)に示すように、投射光学系LS1からは、Z軸方向に長いビーム形状で投射光が投射される。したがって、反射光が集光レンズ130の有効径の広さで入射する場合、集光レンズ130によって集光される反射光のビーム形状は、光検出器150の受光面においてX軸方向に長いビーム形状となる。複数のセンサ部151は、X軸方向に並んで配置されている。反射光が集光レンズ130の有効径の広さで入射する場合、集光レンズ130によって集光される反射光は、これら複数のセンサ部151の全てに掛かるように集光される。
【0071】
ここで、
図8(a)に示すように、物体T0が位置P1にある場合、物体T0で反射された反射光R1は、集光レンズ130の光軸に対して傾いた方向から集光レンズ130に入射する。このため、光検出器150の受光面上における反射光R1の集光位置は、無限遠からの反射光が入射する場合の集光位置に対してY軸負方向にシフトする。位置P1より近い位置P2に物体T0が存在する場合、受光面上における反射光R2の集光位置のY軸負方向のシフト量はさらに大きくなる。
【0072】
また、
図8(b)に示すように、物体T0が位置P1にある場合、物体T0で反射された反射光R1は、平行光から広がった状態で集光レンズ130に入射する。このため、光検出器150の受光面上における反射光R1の集光位置F1は、無限遠からの反射光が平行光で入射する場合の集光位置F0からZ軸正方向にシフトする。位置P1より近い位置P2に物体T0が存在する場合、受光面上における反射光R2の集光位置F2のZ軸正方向のシフト量はさらに大きくなる。
【0073】
図9(a)~(d)は、センサ部151が正方形である場合(比較例)の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【0074】
この検証の条件は、以下のように設定した。
【0075】
・集光レンズ130の有効径 … 18mm
・集光レンズ130の焦点距離 … 31.5mm
・センサ部151のサイズ … 横0.45mm×縦0.45mm
・センサ部151のピッチ … 0.55mm
・光軸A1、A2のずれ量 … 11.5mm
【0076】
集光レンズ130の光軸は、上から2番目および3番目のセンサ部151の間の隙間を垂直に貫くことを想定した。
【0077】
この条件の下、上から2番目のセンサ部151に集光される反射光の状態をシミュレーションにより求めた。ここでは、各センサ部151の画角(光の取り込み角)が1°であると想定し、上から2番目のセンサ部151の画角1°の範囲のみに物体が存在することを想定した。各距離の位置の物体の大きさは、画角1°の広がりに応じて変化させた。すなわち、各距離位置における画角の全範囲に物体が存在することを想定した。また、測距範囲を3~20mに想定した。
図9(a)~(d)は、それぞれ、物体までの距離が20m、2m、1m、0.3mの場合のシミュレーション結果である。
【0078】
図9(a)~(d)に示すように、反射光の集光スポットSP1は、物体までの距離が短くなるに伴い、Y軸負方向に移動する。この検証例では、物体までの距離が20~1mの範囲では、反射光の集光スポットSP1がセンサ部151に掛かっているが、物体までの距離が0.3mになると、反射光の集光スポットSP1がセンサ部151から外れている。より詳細には、物体までの距離が0.3
mよりやや長い0.5
m程度である場合に、集光スポットSP1がセンサ部151から外れてしまう。このため、センサ部151が縦横0.55mmサイズの正方形の場合、物体までの距離が0.5m程度よりも近くなると、物体を検出できない。
【0079】
また、
図9(a)~(d)に示すように、反射光の集光スポットSP1は、物体までの距離が短くなるに伴い、フォーカスずれにより、徐々にサイズが大きくなる。このため、物体までの距離が短くなると、反射光の集光スポットSP1が、上から2番目のセンサ部151のみならず、その上下のセンサ部151にも掛かってしまう。この検証例では、物体までの距離が2mの場合に、集光スポットSP1が上下のセンサ部151に僅かに掛かり、物体までの距離が1mの場合は、集光スポットSP1が上下のセンサ部151に掛かる量が増加している。
【0080】
以上のように、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2とが互いに離間する場合、特に、物体までの距離が短い場合に、物体検出に問題が生じる。すなわち、物体までの距離が短いと、反射光の集光スポットSP1がセンサ部151から外れてしまい、物体を検出できなくなるとの問題が生じる。また、物体までの距離が短いと、反射光の集光スポットSP1が、正規のセンサ部151の他、その隣のセンサ部151にも掛かってしまい、物体が存在する範囲を正規の範囲からやや広い範囲として検出するとの問題が生じる。
【0081】
本実施形態では、これら2つの問題のうち、まずは前者の問題を解消するために、センサ部151の形状が、Y軸方向、すなわち、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2との離間方向に長い長方形の形状となっている。
【0082】
図10(a)~(d)は、センサ部151が長方形である場合(実施形態)の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【0083】
この検証の条件は、センサ部151の形状を除いて、
図9(a)~(d)の検証条件と同様である。センサ部151の形状は、以下のように設定した。
【0084】
・センサ部151のサイズ … 横1mm×縦0.45mm
【0085】
図10(a)~(d)に示すように、センサ部151の形状を上記サイズの長方形に設定すると、物体までの距離が20~0.3mの範囲において、反射光の集光スポットSP1を上から2番目のセンサ部151に位置付けることができる。すなわち、この構成では、
図10(d)に示すように、物体までの距離が0.3mである場合においても、上から2番目のセンサ部151に反射光を入射させることができ、物体を適正に検出できる。よって、このように、センサ部151の形状を、Y軸方向、すなわち、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2との離間方向に長い長方形の形状に設定することにより、
図9(a)~(d)の場合(比較例)に比べて、物体の検出可能範囲を広げることができる。
【0086】
なお、
図10(a)~(d)の構成では、物体までの距離が短くなるにつれて2番目のセンサ部151の上下のセンサ部151に対する反射光の漏れ込み量が増加する。このため、物体までの距離が短いと、上下のセンサ部151に対応する位置にも物体が存在すると誤検出されることが起こり得る。
【0087】
しかしながら、物体までの距離が短いほど、1つのセンサ部151に取り込まれる反射光の物体上の範囲が小さくなるため、上下のセンサ部151に対応する位置にも物体が存在すると誤検出されたとしても、物体の検出範囲が正規の範囲からやや広がるに留まる。
【0088】
図11は、1つのセンサ部151の画角が1°である場合に、1つのセンサ部151に反射光が取り込まれる物体上の範囲(1つのセンサ部151に取り込まれる反射光を生じさせる物体上のビームサイズ)が物体までの距離に応じてどのように変化するかを模式的に示す図である。
【0089】
図11に示すように、物体までの距離が短くなるにつれて、1つのセンサ部151に対応する物体上のビームサイズが小さくなる。たとえば、物体までの距離が0.3mである場合、1つのセンサ部151に対応する物体上のビームサイズは数mm程度である。したがって、
図10(d)のように、物体までの距離が0.3mである場合に、2番目のセンサ部151の上下のセンサ部151に反射光が漏れ込むことにより、これら上下のセンサ部151に対応する位置にも物体が存在すると誤検出されたとしても、物体の検出範囲が正規の範囲から数mm程度だけ僅かに広がるに留まる。
【0090】
したがって、
図10(a)~(d)のように、センサ部151が長方形である場合、物体までの距離が0.3m程度であるときに、2番目のセンサ部151の上下のセンサ部151に反射光が漏れ込んで、これらセンサ部151に対応する位置に物体が存在すると誤検出されたとしても、この誤検出が正規の物体検出に対して与える影響は大きなものとはならないと考えられる。
【0091】
尤も、より正確に物体の位置を検出するためには、なるべく上下のセンサ部151に反射光が漏れ込まないようにすることが好ましい。すなわち、上記2つの問題のうち、後者の問題も解消されることが好ましい。
【0092】
この問題を解消するため、本実施形態では、さらに、センサ部151の形状を、Y軸正側に部分に比べてY軸負側の部分を幅狭に調整するよう構成される。これにより、上下のセンサ部151に対する反射光の漏れ込みを抑制でき、物体が存在する位置をより正確に検出することができる。以下、この構成について説明する。
【0093】
図12(a)~(d)は、センサ部151が台形状の形状である場合(実施形態)の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【0094】
この検証の条件は、センサ部151の形状を除いて、
図9(a)~(d)の検証条件と同様である。
【0095】
図12(c)に示すように、センサ部151の形状が台形状の形状である場合、物体までの距離が1mであるときの上下のセンサ部151に対する反射光の漏れ込み量が抑制される。なお、この場合も、上下のセンサ部151に僅かに反射光が漏れ込むが、その漏れ込み量は少ないため、上下のセンサ部151から出力される検出信号はかなり小さいものとなる。よって、上下のセンサ部151から出力される検出信号を所定の閾値によって除去することにより、上下のセンサ部151に対応する範囲に物体が存在すると誤検出されることを防ぐことができる。
【0096】
図13(a)~(d)は、センサ部151がT字状の形状である場合(実施形態)の反射光の受光状態を検証したシミュレーション結果である。
【0097】
この検証の条件は、センサ部151の形状を除いて、
図9(a)~(d)の検証条件と同様である。
【0098】
図13(c)に示すように、センサ部151の形状がT字状の形状である場合、物体までの距離が1mであるときの上下のセンサ部151に対する反射光の漏れ込み量が解消される。よって、物体までの距離が1mである場合に上下のセンサ部151に対応する範囲に物体が存在すると誤検出されることを防ぐことができる。また、
図13(b)に示すように、物体までの距離が2mであるときに反射光が上下のセンサ部151にやや漏れ込むが、その漏れ込み量はかなり少ない。よって、この場合も、上下のセンサ部151から出力される検出信号を所定の閾値によって除去することにより、上下のセンサ部151に対応する範囲に物体が存在すると誤検出されることを防ぐことができる。
【0099】
図14(a)は、センサ部151が正方形である場合(比較例)とT字状の形状である場合(実施形態)とで、2番目のセンサ部151により受光される反射光の受光量が物体までの距離に応じてどのように変化するかを検証したシミュレーション結果を示す図である。また、
図14(b)は、センサ部151が正方形である場合(比較例)とT字状の形状である場合(実施形態)とで、2番目のセンサ部151とその上下のセンサ部151によって受光される反射光の受光量が物体までの距離に応じてどのように変化するかを検証したシミュレーション結果を示す図である。
【0100】
これらの検証において、センサ部151がT字状の形状である場合(実施形態)のセンサ部151の各部の寸法は、
図15の上段のセンサ部151に付記した寸法に設定した。各部の寸法の単位はmm(ミリメートル)である。センサ部151のピッチは、上記検証と同様、0.55mmに設定した。
【0101】
また、
図15の下段に示すように、実施形態のセンサ部151は、幅が広い部分151aと、幅が次第に狭くなる部分151bと、幅が狭い部分151cとを有する形状とした。部分151bは、リニアに幅が狭くなる直線部分と円弧状に幅が狭くなる円弧部分とを有する形状とした。センサ部151が正方形である場合(比較例)の寸法は、
図9(a)~(d)の場合と同様とした。その他の検証条件は、
図9(a)~(d)の場合と同様であった。
【0102】
図14(a)、(b)において、縦軸は規格化され、横軸は対数軸となっている。
図14(a)において、白丸がプロットされた破線グラフは、センサ部151の形状が正方形である場合の検証結果を示し、黒丸がプロットされた実線のグラフは、センサ部151の形状がT字状の形状である場合の検証結果を示している。
【0103】
図14(a)に示すように、センサ部151が正方形の場合(比較例)、2番目のセンサ部151の受光量は、物体までの距離が1mを下回る辺りから大きく減少し、物体までの距離が0.3m辺りにおいて、受光量が略ゼロに到達した。これに対し、センサ部151がT字状の形状である場合(実施形態)、2番目のセンサ部151の受光量は、物体までの距離が1mを下回っても高く維持され、物体までの距離が0.3m辺りであっても、十分な受光量が確保された。この検証から、センサ部151の形状がT字状の形状である場合(実施形態)、物体までの距離が0.3~20mの範囲(測距範囲)において、物体を適正に検出できることが確認できた。
【0104】
図14(b)において、3つの破線のグラフは、センサ部151の形状が正方形である場合(比較例)の2番目のセンサ部151およびその上下のセンサ部151(1番目と3番目のセンサ部151)の受光量を示している。これらのうち、白丸がプロットされた破線のグラフは、2番目のセンサ部151における受光量を示し、白三角および白四角がプロットされた破線のグラフは、それぞれ、2番目のセンサ部151の上下のセンサ部151における受光量を示している。
【0105】
また、
図14(b)において、3つの実線のグラフは、センサ部151の形状がT字状の形状である場合(実施形態)の2番目のセンサ部151およびその上下のセンサ部151の受光量を示している。これらのうち、黒丸がプロットされた実線のグラフは、2番目のセンサ部151における受光量を示し、黒三角および黒四角がプロットされた実線のグラフは、それぞれ、2番目のセンサ部151の上下のセンサ部151における受光量を示している。
【0106】
図14(b)に示すように、センサ部151の形状が正方形の場合(比較例)、物体までの距離が6mを下回る辺りから上下のセンサ部151に反射光が漏れ込み始め、物体までの距離が2~0.5m辺りの範囲では、距離が20mである場合に正規に受光される反射光の光量よりも多くの光量の反射光が、上下のセンサ部151に漏れ込んでいる。このため、センサ部151の形状が正方形の場合(比較例)、物体までの距離が2~0.5m辺りの範囲において、上下のセンサ部151に対応する範囲にも物体が存在すると誤検出されることが分かる。
【0107】
これに対し、センサ部151の形状がT字状の形状の場合(実施形態)、物体までの距離が1mを下回る辺りから上下のセンサ部151に反射光が漏れ込み始め、物体までの距離が0.9~0.3m辺りの範囲において、距離が20mである場合に正規に受光される反射光の光量よりも多くの光量の反射光が、上下のセンサ部151に漏れ込んでいる。このため、センサ部151の形状がT字状の形状である場合(実施形態)、物体までの距離が0.9~0.3m辺りの範囲において、上下のセンサ部151に対応する範囲にも物体が存在すると誤検出されることが分かる。
【0108】
しかしながら、センサ部151の形状がT字状の形状である場合(実施形態)に物体を誤検出する距離範囲(0.9~0.3m)は、センサ部151の形状が正方形である場合(比較例)の誤検出の距離範囲(2~0.5m)に比べて、顕著に狭くなっている。また、上記のように、物体までの距離が短い場合は、上下のセンサ部151に対応する位置に物体が存在すると誤検出されたとしても、物体の検出範囲が正規の範囲からやや広がるに留まる。よって、センサ部151の形状がT字状である場合(実施形態)は、センサ部151の形状が正方形である場合(比較例)に比べて、物体の検出精度を顕著に高めることができることが確認できた。
【0109】
なお、
図14(b)の検証結果では、物体までの距離が2m付近の範囲において、上下のセンサ部151に反射光の漏れ込みが生じていることが分かる。しかし、この漏れ込み量は、物体までの距離が20mである場合に正規に受光される反射光の光量よりもかなり小さいため、この漏れ込みによる検出信号は、閾値を設定することにより除去され得る。よって、この範囲において僅かに反射光が上下のセンサ部151に漏れ込んだとしても、この漏れ込みによって物体の検出精度が低下することはない。
【0110】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0111】
光検出器150が複数のセンサ部151を備えるため、各センサ部151からの出力に基づいて、目標領域上の、各センサ部151に対応する分割領域ごとに、物体を検出できる。また、複数のセンサ部151が光軸A1、A2の離間方向に垂直な方向に並んでいるため、反射光の集光スポットSP1は、物体までの距離の変化に応じて、センサ部151の並び方向に垂直な方向に移動する。このため、物体までの距離が変化しても、分割領域ごとに、物体を適正に検出できる。さらに、複数のセンサ部151は、それぞれ、光軸A1、A2の離間方向、すなわち、センサ部151の並び方向に垂直な方向に長い形状を有するため、物体までの距離の変化に応じて反射光の集光スポットSP1が移動しても、各センサ部151で反射光を受光できる。よって、物体までの距離が変化しても、センサ部151からの出力により適正に、物体を検出できる。
【0112】
図5(a)に示したように、投射光学系LS1は、複数のセンサ部151の並び方向に対応する方向に長いビーム形状でレーザ光を目標領域に投射する。これにより、物体の検出範囲をビームの長手方向に広げることができる。また、ビームの長手方向に対応する方向にセンサ部151が並ぶため、各センサ部151に対応する分割領域を円滑に設定でき、センサ部151の数を増やすことにより、ビームの長手方向における物体検出の分解能を容易に高めることができる。
【0113】
図12(a)~(d)および
図13(a)~(d)に示したように、センサ部151は、投射光学系LS1から離れた部分(Y軸負側の部分)の幅が投射光学系LS1に近い部分(Y軸正側の部分)の幅よりも狭い形状を有する。これにより、物体までの距離が短くなるにつれて集光スポットSP1が広がった場合に、集光スポットSP1が隣のセンサ部151に掛かりにくくなる。よって、隣のセンサ部151に対応する分割領域に物体が存在するとの誤検出を抑制できる。
【0114】
図12(a)~(d)に示したように、センサ部151は、投射光学系LS1から離れるに従って幅が狭くなる部分(直線状に傾斜する部分)を有する。また、
図13(a)~(d)および
図15に示したように、センサ部151は、投射光学系LS1から離れるに従って幅が狭くなる部分(
図13(a)~(d)では円弧状に曲がった部分、
図15では直線状に傾斜する部分と円弧状に曲がった部分)を有する。これにより、物体までの距離が短くなるにつれて集光スポットSP1がY軸負方向に移動しつつ広がった場合に、正規のセンサ部151における反射光の受光量を確保しつつ、隣のセンサ部151に集光スポットSP1が掛かることを抑制できる。よって、測定精度を高めることができる。
【0115】
図13(a)~(d)および
図15の例では、センサ部151が、T字状の形状に設定されている。これにより、反射光を受光すべき正規のセンサ部151の隣のセンサ部151に反射光の集光スポットSP1が掛かることを、より適切に抑制できる。
【0116】
図12(a)~(d)の例では、センサ部151が、台形状の形状に設定されている。この構成では、センサ部151がT字状の形状である場合に比べて、正規のセンサ部151の隣のセンサ部151に反射光の集光スポットSP1が掛かりやすくなるものの、正規のセンサ部151における受光量を高めることができる。
【0117】
図10(a)~(d)、
図12(a)~(d)および
図13(a)~(d)に示したように、受光光学系LS2は、測距範囲の最遠距離(ここでは20m)からの反射光を投射光学系LS1に接近する側(Y軸正側)のセンサ部151の端部付近に集光させ、測距範囲の最近距離(ここでは0.3m)からの反射光を投射光学系LS1に離間する側(Y軸負側)のセンサ部151の端部付近に集光させる。これにより、測距範囲中の何れの距離位置に物体が存在しても測距を行うことができる。
【0118】
図5(a)に示したように、受光光学系LS2は、光検出器150に反射光を集光する集光レンズ130を備え、集光レンズ130に、投射光学系LS1の光軸A1を通すための開口部131が設けられている。これにより、光軸A1と光軸A2とを接近させることができるため、集光レンズ130の有効径を広く確保しながら、光学ユニット40をコンパクトに構成できる。また、光軸A1と光軸A2とを接近させることができるため、物体までの距離の変化に応じた集光スポットSP1の移動量を小さくできる。よって、反射光を光検出器150に受光させやすくなる。
【0119】
図6(a)に示したように、ベース部材20が回転軸R10について回転することにより、各光学ユニット40から出射される投射光によって、回転軸R10を中心とする周方向の範囲が走査される。このとき、
図6(b)に示したように、各光学ユニット40における投射光の投射方向が回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)に互いに異なっているため、各投射光によって走査される範囲は、回転軸R10に平行な方向に互いにシフトする。このため、これら投射光によって走査される全体の範囲は、回転軸R10に平行な方向に互いにシフトする各レーザ光の走査範囲を統合した広い範囲となる。したがって、回転軸R10に平行な方向における走査範囲を効果的に広げることができる。また、このように回転軸R10に平行な方向における走査範囲が広がると、回転軸R10に平行な広い走査範囲において物体を検出できるようになる。
【0120】
図5(a)に示したように、投射光学系LS1の光軸A1と受光光学系LS2の光軸A2とが、回転軸R10の周方向に並んでおり、受光光学系LS2の光軸A2が、投射光学系LS1の光軸A1に対して、回転部60の回転方向において後方の位置にある。これにより、レーザ光が投射されてから受光されるまでのフライングタイムにおいて、受光光学系LS2の光軸A2が、レーザ光を投射したタイミングの投射光学系LS1の光軸A1の位置に接近する。よって、受光光学系LS2によって反射光をより良好に受光できる。
【0121】
<変更例>
レーザレーダ1の構成は、上記実施形態に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0122】
たとえば、上記実施形態では、センサ部151の形状として数種の形状を示したが、センサ部151は、光軸A1、A2の離間方向に長い形状を有する限りにおいて、他の形状であってもよい。たとえば、
図16(a)のように、センサ部151が二等辺三角形の形状であってもよく、また、
図16(b)のように、上下の辺が内方に曲線状に凹む形状にセンサ部151が構成されてもよい。あるいは、
図16(c)のように、角部が矩形に屈曲するT字状の形状にセンサ部151が構成されてもよい。
【0123】
なお、光検出器150で受光される反射光の光量は、物体までの距離が長くなるほど少なくなる。すなわち、光検出器150における反射光の受光光量は、物体までの距離の2乗に反比例する。このため、センサ部151の形状は、さらにこの点を加味して設定されることが好ましい。すなわち、センサ部151の形状を、投射光学系LS1から離れた部分の幅が投射光学系LS1に近い部分の幅よりも狭い形状に設定する場合、物体までの距離が長い範囲において十分に反射光の受光光量を確保できるように、センサ部151の形状を設定することが好ましい。
【0124】
また、
図5(c)の構成例では、光検出器150が6つのセンサ部151を備えたが、光検出器150に配置されるセンサ部151の数はこれに限られるものではない。たとえば、光検出器150に2~5個のセンサ部151が設けられてもよく、7個以上のセンサ部151が設けられてもよい。光検出器150に配置されるセンサ部151の数を増やすほど、投射光の長手方向における物体検出の分解能を高めることができる。
【0125】
また、上記実施形態では、レーザ光源110は、発光面が一方向に長い面発光型のレーザ光源であったが、これに限らず、端面発光型のレーザ光源であってもよい。また、複数のレーザ光源110から出射されたレーザ光を統合して投射光が構成されてもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、複数の光学ユニット40が、回転軸R10の周方向に沿って等間隔(60°間隔)で配置されたが、必ずしも等間隔に設置されなくてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、回転部60を回転させる駆動部として、モータ13が用いられたが、モータ13に代えて、固定部10と回転部60にそれぞれコイルと磁石を配置して、回転部60を固定部10に対して回転させてもよい。また、回転部60の外周面に全周にわたってギアが設けられ、このギアに固定部10に設置されたモータの駆動軸に設置されたギアが噛み合わされることにより、回転部60を固定部10に対して回転させてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、各光学ユニット40のミラー42を互いに異なる傾き角で設置することにより、各光学ユニット40から投射される投射光の投射方向が互いに異なる方向に設定されたが、各光学ユニット40から投射される投射光の投射方向を互いに相違させる方法は、これに限られるものではない。
【0129】
たとえば、6つの光学ユニット40からそれぞれミラー42が省略され、6つの構造体41が、回転軸R10に垂直な平面に対して互いに異なる傾き角となるように、放射状に設置されてもよい。また、上記実施形態においてミラー42が省略され、代わりに、設置面21の反射率が高くなるよう設置面21に鏡面仕上げが施されてもよい。また、上記実施形態では、光学ユニット40は、1つのミラー42を備えたが、2つ以上のミラーを備えてもよい。この場合、複数のミラーによって反射され目標領域に投射される投射光のZ軸方向に対する角度は、複数のミラーのうちいずれかのミラーの角度によって調節されればよい。
【0130】
また、距離測定機能がなく光検出器150からの信号により投射方向に物体が存在するか否かの検出機能のみを備えた装置に本発明に係る構造を適用することも可能である。この場合も、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)における走査範囲を広げることができる。
【0131】
また、光学ユニット40の光学系の構成は、上記実施形態に示された構成に限られるものではない。たとえば、集光レンズ130から開口部131が省略され、投射光学系LS1の光軸A1が集光レンズ130に掛からないように、投射光学系LS1と受光光学系LS2とが離されてもよい。
【0132】
なお、上記実施形態では、走査範囲を回転軸R10に平行な方向に広げるために、複数の光学ユニット40から投射される投射光の投射方向を、回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)において互いに相違させたが、複数の光学ユニット40から投射される投射光の投射方向を回転軸R10に平行な方向(Z軸方向)において同じに設定してもよい。
【0133】
図17は、この変更例に係るレーザレーダ1の構成を示す断面図である。この変更例では、回転軸R10のX軸正側の設置面21の水平面(X-Y平面)に対する傾き角と、回転軸R10のX軸負側の設置面21の水平面に対する傾き角とが等しいため、これら設置面21に設置される2つのミラー42の傾き角も等しい。同様に、他の設置面21の傾き角も、上記2つの設置面21と同じ角度に設定され、他のミラー42の傾き角も、上記2つのミラー42と同じ角度に設定される。これにより、6つの光学ユニット40から投射される投射光の投射方向は、回転軸R10に平行な方向において同じになる。
【0134】
このように、回転軸R10に平行な方向において全ての光学ユニット40の投射方向を同じに設定すると、回転軸R10の周囲の範囲に対する検出頻度を高めることができる。これにより、回転速度を高めることなく高フレームレートを実現できる。
【0135】
また、上記実施形態では、レーザレーダ1に複数の光学ユニット40が設置されたが、レーザレーダ1が投射光学系LS1と受光光学系LS2の組を1つだけ備える構成であってもよい。また、レーザレーダ1は、必ずしも、投射光学系LS1と受光光学系LS2の組を回転軸について回転させる構成でなくてもよく、固定された目標領域に投射光を投射し、その反射光を受光して、当該目標領域に対する物体検出を行う構成であってもよい。
【0136】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
1 レーザレーダ
13 モータ(駆動部)
20 ベース部材
40 光学ユニット
110 レーザ光源
130 集光レンズ
131 開口部
150 光検出器
151 センサ部
LS1 投射光学系
LS2 受光光学系
R10 回転軸
A1、A2 光軸