(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】薬液噴霧システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20240209BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20240209BHJP
B05B 7/24 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61L2/18
B05B7/04
B05B7/24
(21)【出願番号】P 2022556972
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037603
(87)【国際公開番号】W WO2022080322
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020172676
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 航太
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-88390(JP,A)
【文献】特表2019-528043(JP,A)
【文献】実開昭49-36054(JP,U)
【文献】特開2019-146500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
A61L 9/00
B05B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体及び液体が供給され、前記気体及び前記液体を噴霧する少なくとも1つの二流体ノズルと、
前記二流体ノズルの液体側入口に前記液体として水を供給する水供給部と、
前記二流体ノズルの前記液体側入口に前記液体として除菌液を供給する除菌液供給部と、
前記二流体ノズルの気体側入口に前記気体として空気を供給する空気供給部と、
前記水と前記除菌液とを混合して前記水と前記除菌液との混合液を生成するための液体混合部と、
前記水供給部から前記液体混合部へ前記水を供給する水経路と、
前記除菌液供給部から前記液体混合部へ除菌液を供給する除菌液経路と、
前記液体混合部から前記二流体ノズルの液体側入口へ前記混合液を供給する混合液経路と、
前記空気供給部から前記二流体ノズルの気体側入口へ前記空気を供給する第1空気経路と、
前記空気供給部から前記水経路へ前記空気を供給する第2空気経路と、
前記第2空気経路を開閉する開閉弁と、
前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記開閉弁を開いて前記第2空気経路から前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、その後、停止するように制御する制御部と、を有する
薬液噴霧システム。
【請求項2】
前記液体混合部の流入口は流出口よりも重力方向の上方に配置されている、
請求項1に記載の薬液噴霧システム。
【請求項3】
前記液体混合部の流入口は流出口よりも重力方向の下方に配置されている、
請求項1に記載の薬液噴霧システム。
【請求項4】
前記水経路から、前記液体混合部を経由せずに前記混合
液経路に接続するバイパス経路と、
前記バイパス経路と前記水経路とを切り替える切替機構と、を備え、
前記制御部は、前記液体混合部に前記除菌液を供給し、前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記開閉弁を開き、且つ、前記切替機構で前記水経路を前記バイパス経路に切り替え、前記第2空気経路及び前記水経路及び前記バイパス経路を経由しかつ前記液体混合部を経由せずに前記混合
液経路に前記空気を供給し、停止する、
請求項1又は3に記載の薬液噴霧システム。
【請求項5】
前記液体混合部は、前記液体混合部の流入口に接続される前記水経路の配管内径よりも内径が大きい配管又は混合タンクである、
請求項1~4のいずれか1つに記載の薬液噴霧システム。
【請求項6】
気体及び液体が供給され、前記気体及び前記液体を噴霧する少なくとも1つの二流体ノズルと、
前記二流体ノズルの液体側入口に前記液体として水を供給する水供給部と、
前記二流体ノズルの前記液体側入口に前記液体として除菌液を供給する除菌液供給部と、
前記二流体ノズルの気体側入口に前記気体として空気を供給する空気供給部と、
前記水と前記除菌液とを混合して前記水と前記除菌液との混合液を生成するための液体混合部と、
前記水供給部から前記液体混合部へ前記水を供給する水経路と、
前記除菌液供給部から前記液体混合部へ除菌液を供給する除菌液経路と、
前記液体混合部から前記二流体ノズルの液体側入口へ前記混合液を供給する混合液経路と、
前記空気供給部から前記二流体ノズルの気体側入口へ前記空気を供給する第1空気経路と、
前記空気供給部から前記水経路へ前記空気を供給する第2空気経路と、
前記第2空気経路を開閉する開閉弁と、
前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記開閉弁を開いて前記第2空気経路から前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、その後、停止するように制御する制御部と、を有する薬液噴霧システムの運転方法であって、
前記水供給部により前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記制御部により、前記開閉弁を開いて前記空気供給部から前記第2空気経路を介して前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、
その後、前記制御部により、前記水経路に対する前記空気の供給を停止するように制御する、薬液噴霧システムの運転方法。
【請求項7】
前記薬液噴霧システムは、
前記水経路から、前記液体混合部を経由せずに前記混合
液経路に接続するバイパス経路と、
前記バイパス経路と前記水経路とを切り替える切替機構と、を備え、
前記制御部により、前記液体混合部に前記除菌液を供給し、
前記水供給部から前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記制御部により、前記開閉弁を開き、且つ、前記切替機構で前記水経路を前記バイパス経路に切り替えて、前記空気供給部から前記第2空気経路及び前記水経路及び前記バイパス経路を経由しかつ前記液体混合部を経由せずに前記混合
液経路に前記空気を供給し、
その後、前記制御部により、前記水経路に対する前記空気の供給を停止する、
請求項6に記載の薬液噴霧システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除菌又は殺菌の用途で、除菌液と水との混合液を薬液として噴霧する薬液噴霧システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
除菌又は殺菌の用途で、薬液を噴霧するためのシステムが用いられる。
【0003】
例えば特許文献1では、原水に炭酸ガスを混合することにより生成される殺菌水のpH値を安定的に調整するペーハー調整装置が開示されている。
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記従来のペーハー調整装置において、停止時に装置内で菌が発生することは想定されていなかった。除菌液と水とを混合する構成において、水を供給する水経路の中で残留した水に菌が繁殖してしまう場合がある。
【0006】
そこで、本開示の薬液噴霧システム及びその運転方法の目的は、水が通過する経路の残留水中で菌が繁殖することを抑制することである。
【0007】
本開示の1つの態様によれば、
気体及び液体が供給され、前記気体及び前記液体を噴霧する少なくとも1つの二流体ノズルと、
前記二流体ノズルの液体側入口に前記液体として水を供給する水供給部と、
前記二流体ノズルの前記液体側入口に前記液体として除菌液を供給する除菌液供給部と、
前記二流体ノズルの気体側入口に前記気体として空気を供給する空気供給部と、
前記水と前記除菌液とを混合して前記水と前記除菌液との混合液を生成するための液体混合部と、
前記水供給部から前記液体混合部へ前記水を供給する水経路と、
前記除菌液供給部から前記液体混合部へ除菌液を供給する除菌液経路と、
前記液体混合部から前記二流体ノズルの液体側入口へ前記混合液を供給する混合液経路と、
前記空気供給部から前記二流体ノズルの気体側入口へ前記空気を供給する第1空気経路と、
前記空気供給部から前記水経路へ前記空気を供給する第2空気経路と、
前記第2空気経路を開閉する開閉弁と、
前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記開閉弁を開いて前記第2空気経路から前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、その後、停止するように制御する制御部と、を有する
薬液噴霧システムを提供する。
【0008】
本開示の別の態様によれば、
気体及び液体が供給され、前記気体及び前記液体を噴霧する少なくとも1つの二流体ノズルと、
前記二流体ノズルの液体側入口に前記液体として水を供給する水供給部と、
前記二流体ノズルの前記液体側入口に前記液体として除菌液を供給する除菌液供給部と、
前記二流体ノズルの気体側入口に前記気体として空気を供給する空気供給部と、
前記水と前記除菌液とを混合して前記水と前記除菌液との混合液を生成するための液体混合部と、
前記水供給部から前記液体混合部へ前記水を供給する水経路と、
前記除菌液供給部から前記液体混合部へ除菌液を供給する除菌液経路と、
前記液体混合部から前記二流体ノズルの液体側入口へ前記混合液を供給する混合液経路と、
前記空気供給部から前記二流体ノズルの気体側入口へ前記空気を供給する第1空気経路と、
前記空気供給部から前記水経路へ前記空気を供給する第2空気経路と、
前記第2空気経路を開閉する開閉弁と、
前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記開閉弁を開いて前記第2空気経路から前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、その後、停止するように制御する制御部と、を有する
薬液噴霧システムの運転方法であって、
前記水供給部により前記水経路に前記水が流入しない状態で、前記制御部により、前記開閉弁を開いて前記空気供給部から前記第2空気経路を介して前記水経路及び前記混合液経路に前記空気を供給し、
その後、前記制御部により、前記水経路に対する前記空気の供給を停止するように制御する、薬液噴霧システムの運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の前記態様によれば、前記水経路に水が流入しない状態で、前記開閉弁を開いて前記第2空気経路から前記水経路に空気を供給し、その後、停止するように制御することにより、供給された空気で、水が通過する経路の残留水を流出させることができる。この結果、水が通過する経路の残留水中で菌が繁殖することを抑制することができる。また、混合経路の液体も排出できるため、除菌液の濃度にかかわらず、混合経路の残留水中で菌が繁殖することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態にかかる薬液噴霧システムの図
【
図3】本開示の第2実施形態にかかる薬液噴霧システムの図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示における実施形態を詳細に説明する。
【0012】
本開示の第1の実施形態にかかる薬液噴霧システムは、
図1に示すように、少なくとも1つの二流体ノズル40と、水供給部41と、除菌液供給部43と、空気供給部42と、液体混合部の一例としての混合タンク6と、水経路44と、除菌液経路45と、混合液経路46と、第1空気経路47と、第2空気経路48と、開閉弁49と、制御部50とを少なくとも備えている。
【0013】
図1では、二流体ノズル40は、複数個、例えば5個備えられ、各二流体ノズル40は、第1空気経路47の下流端と混合液経路46の下流端とが接続されて、第1空気経路47と混合液経路46とを介して気体と液体とが供給され、気体と液体とでミスト状に噴霧する。気体の例としては空気であり、液体の例としては水と除菌液との混合液である。
【0014】
水供給部41は、水経路44の上流端に接続されて、水経路44と混合液経路46とを介して水タンクからポンプにより、又は水道管から、二流体ノズルの液体側入口に水を供給する。
【0015】
除菌液供給部43は、二流体ノズル40の液体側入口に除菌液を供給する。詳しくは、後述するように、除菌液は水と混合されて混合液としたのち、二流体ノズル40の液体側入口に供給される。除菌液供給部43は、一例として、除菌液が保持される除菌液タンク9と、除菌液タンク9の除菌液を混合液経路46に供給する除菌液ポンプ10とで構成されている。
【0016】
空気供給部42は、第1空気経路47の上流端に接続されて、第1空気経路47を介して二流体ノズル40の気体側入口に空気を供給する。
【0017】
混合タンク6は、流入口側に水経路44が接続され、流出口側に混合液経路46が接続され、水経路44から流入する水と除菌液とを混合して、水と除菌液との混合液を生成して、混合液経路46から流出させる。
図1では、混合タンク6は、上下方向沿いに配置され、流入口は下端に、流出口は上端に配置されている。すなわち、流入口は流出口よりも重力方向の下方に配置されている。
【0018】
水経路44は、水供給部41から混合タンク6へ水を供給する経路である。水経路44には除菌液供給電磁弁1が配置されている。除菌液供給電磁弁1は、水供給部41と、除菌液経路45と水経路44との接続箇所との間の水経路44に配置され、一例としてノーマリー・クローズド弁であり、水供給時には開けるが、水供給停止時には閉じることにより、空気混入防止用の弁として機能する。
【0019】
除菌液経路45は、除菌液供給部43と、水経路44の水供給部41と混合タンク6との間とに接続されて、除菌液供給部43から水経路44の一部を介して混合タンク6へ除菌液を供給する経路である。具体的には、タンク9から除菌液ポンプ10を介して、水経路44の水供給部41と混合タンク6との間まで、除菌液経路45で接続されている。
【0020】
混合液経路46は、混合タンク6と二流体ノズル40の液体側入口とを接続し、混合タンク6から二流体ノズル40の液体側入口へ混合液を供給する経路である。
【0021】
第1空気経路47は、空気供給部42から二流体ノズル40の気体側入口へ空気を供給する経路である。
【0022】
第2空気経路48は、第1空気経路47の上流端近傍と水経路44の上流端近傍とを接続し、空気供給部42から水経路44へ空気を供給する経路である。
【0023】
開閉弁49は、第2空気経路48に配置され、第2空気経路48を開閉する。
【0024】
制御部50は、水経路44に水が流入しない状態で、開閉弁49を開いて第2空気経路48から水経路44及び混合液経路46に空気を供給し、その後、停止するように制御する。第2空気経路48に供給された空気は、水経路44に入り、後述するようにバイパス経路52に入る。制御部50は、開閉弁49を開閉制御するとともに、水経路44に水が流入しない状態となるように水供給部41の供給制御も行う。ここで、水が流入しない状態とは、水供給の停止、又は、水供給停止ではなく、水供給の圧力を空気供給の圧力よりも低くして水経路44に水が流入しない状態とすることなどを意味する。
【0025】
また、制御部50は、水供給部41と、除菌液供給部43と、空気供給部42と、開閉弁49とを動作制御して所望の動作を行うことができる。
【0026】
前記薬液噴霧システムは、さらに、バイパス経路52と切替機構とを備えていてもよい。
【0027】
すなわち、バイパス経路52は、水経路44から、混合タンク6を経由せずに混合液経路46に接続する。
【0028】
バイパス経路52と水経路44とを切り替える切替機構は、一例として、制御部50で動作制御される、開閉弁のバイパス電磁弁3と除菌液供給電磁弁1とを備えている。切替機構としては、例えば、三方弁、又は経路上の開閉弁など、バイパス経路52と水経路44とのどちらかに切り替える機能があればよい。ここでは、バイパス経路52に切り替えるときは、バイパス電磁弁3を開きかつ除菌液供給電磁弁1を閉じる。水経路44に切り替えるときは、バイパス電磁弁3を閉じかつ除菌液供給電磁弁1を開ける。切替は制御部50で制御することができる。
【0029】
制御部50は、混合タンク6に除菌液を供給し、水経路44の水供給停止後に、開閉弁49を開き、且つ、切替機構のバイパス電磁弁3と除菌液供給電磁弁1とで水経路44をバイパス経路52に切り替え、第2空気経路48を経由してバイパス経路52に空気を供給し、停止する。
【0030】
このようにすれば、少なくとも、水経路44とバイパス経路52との接続部分よりも上流側の水経路44内に残留する液体が、供給される空気によりノズル側に排出され、残留液体での菌の繁殖を抑制することができる。また、バイパス経路52と混合液経路46との接続部分から下流側の混合液経路46内に残留する液体も、供給される空気によりノズル側に排出され、除菌液の濃度にかかわらず、残留液体での菌の繁殖を抑制することができる。
【0031】
前記薬液噴霧システムは、さらに、以下の構成を備えていてもよく、備えることにより、より円滑に噴霧動作を行うことができる。
【0032】
三方弁2は、混合タンク6の流出口側の混合液経路46に配置され、噴霧水の濃度計測用の弁として機能する。
【0033】
逆止弁4は、バイパス経路52のバイパス電磁弁3の下流側に配置され、通常駆動時の逆流防止用の弁である。
【0034】
逆止弁5は、混合液経路46の三方弁2の下流側に配置され、停止時の空気逆流防止用の弁である。
【0035】
排水弁7は、混合タンク6の下方の流入口側に接続されて、混合タンク6内の液体を排出する排水用の弁である。
【0036】
フロートセンサ8は、上下方向沿いに配置された除菌液タンク9の下部内に配置され、除菌液タンク9内の除菌液の残量を検知するためのセンサであり、検知結果が除菌液ポンプ10に入力され、所定残量以下になると除菌液ポンプ10の駆動を停止する。
【0037】
逆止弁11は、除菌液経路45に配置され、水経路44からの水の逆流防止用の弁である。
【0038】
また、混合タンク6について以下に説明する。
【0039】
除菌液ポンプ10は定量ポンプであり、除菌液経路45従って水経路44に除菌液を間欠的に供給する。すると、水経路44上で、除菌液の濃度が不均一となる。これを防止するために、除菌液ポンプ10とノズル40との間に混合タンク6を設けて、除菌液の濃度変動を緩和させている。
【0040】
すなわち、除菌液ポンプ10の例としてダイアフラム定量ポンプを用いて除菌液を水経路44に注入した場合、除菌液ポンプ10の特性上、水が流れる水経路44には、除菌液が間欠的に注入される。そのため、水経路44の配管経路上で除菌液濃度に濃淡ができてしまうという課題があった。
【0041】
そこで、この課題を解決するため、除菌液ポンプ10からの除菌液経路45の水経路44に対する接続部分よりも下流側に、
図2に示すように、少なくとも水経路44の配管内径よりも内径が大きい配管又はタンクすなわち混合タンク6を有するように構成する。
【0042】
このような構成により、不均一な濃度分布がある希釈液体が、水経路44の内径よりも内径の大きい混合タンク6に流入した際、混合タンク6内で流路は急拡大する。その際、内径が水経路44の内径よりも大きい混合タンク6の流入口6a付近の外周部分に形成される負圧空間6bによって、流入した流体は拡散する。すなわち、混合タンク6の流入口付近の形状を、なだらかな傾斜面ではなく、L字状に屈曲した構成とすることで、水経路44の配管内径からタンク内径に急激に変化させることで、混合タンク6の流入口付近の縁に負圧空間6bを生じさせ、流体の流れが乱れて液体が拡散されるようにしている。また、混合タンク6の内径が大きいため管内流速は低下し、濃度の濃い部分と薄い部分とが混合される箇所が発生する。これらの作用によって、混合タンク6内で除菌液の濃度が均一化する。この結果、前記課題を解消して、ノズル40から噴霧するミストの薬液濃度を一定にすることができる。
【0043】
ここで、水経路44の配管内径より大きいとは、例えば水経路44の配管内径の2倍~10倍程度の内径を持つ混合タンク6が実用上、好ましい。水経路44の配管内径の2倍未満であると、水と除菌液との混合が十分でない可能性があるためである。また、水経路44の配管内径の10倍を越えると、混合タンク6が必要以上に大きくなり過ぎるためである。
【0044】
前記構成によれば、制御部50の動作制御により、以下のように動作する。
【0045】
まず、噴霧動作について説明する。
【0046】
開閉弁49を閉じた状態で、空気供給部42から、第1空気経路47を介して二流体ノズル40の気体側入口に空気を供給する。
【0047】
同時に、水供給部41から、二流体ノズル40の液体側入口に水を供給する。このとき、水は、水供給部41から水経路44に供給され(
図1の矢印A1及びA2参照)、混合タンク6を通過して、混合液経路46から二流体ノズルの液体側入口に供給する。
【0048】
また、同時に、除菌液ポンプ10の駆動により、除菌液を、除菌液タンク9から除菌液経路45を介して水経路44に供給したのち、混合タンク6で水と除菌液とを混合して混合液を生成する。その後、混合液を混合液経路46を介して二流体ノズル40の液体側入口に供給する(
図1の矢印A3及びA4参照)。
【0049】
各二流体ノズル40では、空気と混合液とでミストを形成して噴霧する。
【0050】
次に、残留水の排出動作について説明する。
【0051】
まず、水供給部41での水の供給を停止する。停止する代わりに、水供給の圧力を空気供給の圧力よりも低くして水経路44に水が流入しない状態としてもよい。
【0052】
次いで、開閉弁49を開き、且つ、切替機構のバイパス電磁弁3と除菌液供給電磁弁1とで水経路44をバイパス経路52に切り替える。これにより、空気供給部42から、第2空気経路48と水経路44の一部を経由してバイパス経路52に空気を供給する(
図1の矢印B1及びB2及びB3参照)。バイパス経路52に供給された空気は、混合液経路46に入り(
図1の矢印B4参照)、ノズル40から噴霧又は排出される。これにより、空気が流れた経路に存在した残留水は、経路から排出される。その後、空気供給部42からの空気の供給を停止する。
【0053】
前記第1実施形態によれば、水供給停止時に、空気が流れた経路であって水が通過する経路に存在した残留水、例えば、水経路44とバイパス経路52との接続部分よりも上流側の水経路44内に残留する液体が、供給される空気によりノズル側に排出され、残留液体での菌の繁殖を抑制することができる。また、バイパス経路52と混合液経路46との接続部分から下流側の混合液経路46内に残留する液体も、供給される空気によりノズル側に排出され、除菌液の濃度にかかわらず、残留液体での菌の繁殖を抑制することができる。また、バイパス経路52を通らない経路(主経路)、すなわち、除菌液投入後から混合タンク6を通って混合液経路46のバイパス経路52との接続部分までの経路の経路容積は、バイパス経路52の経路容積よりも大きいので、水供給停止時に空気供給により経路の液体を排出するとき、バイパス経路52を通る経路の方が、無駄に液体を使用しないといった効果がある。また、ノズル50から噴霧される流量はほぼ一定のため、水供給停止時に空気が通る経路の経路容積が小さければ、経路内の液体の排出時間が短くて済むので、バイパス経路52の配管内径を主経路の配管内径よりも小さくすれば、液体排出にかかる時間を少なくすることができる。
【0054】
また、混合タンク6を上下方向沿いに配置しかつ流出口を上端に配置するので、混合タンク6内から空気が抜き出しやすくなった混合タンク6内に空気が残りにくくなり、菌が繁殖しにくくすることができる。
【0055】
なお、本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0056】
例えば、第2実施形態にかかる薬液噴霧システムは、
図3に示すように、第1実施形態と比較して、バイパス経路52が無いとともに、上下方向沿いに配置された混合タンク6の流入口が上端で、流出口が下端に配置されており、混合タンク6内の残留水を排出できる点で異なっている。すなわち、混合タンク6の流入口は、流出口よりも重力方向の上方に配置されている。
【0057】
ここで、混合タンク6の長さは、例えば水経路44の配管内径の2倍以上10倍以下が実用上、好ましい。混合タンク6の長さが水経路44の配管内径の2倍未満であると、水と除菌液との混合が十分でない可能性があるためである。また、混合タンク6の長さが水経路44の配管内径の10倍を越えると、空気を供給して残留水を抜くために時間がかかり過ぎるためである。
【0058】
前記構成によれば、制御部50の動作制御により、以下のように動作する。
【0059】
まず、噴霧動作について説明する。
【0060】
開閉弁49を閉じた状態で、空気供給部42から、第1空気経路47を介して二流体ノズル40の気体側入口に空気を供給する。
【0061】
同時に、水供給部41から、二流体ノズル40の液体側入口に水を供給する。このとき、水は、水供給部41から水経路44に供給され(
図3の矢印D1参照)、混合タンク6を通過して、混合液経路46から二流体ノズルの液体側入口に供給する(
図3の矢印D2参照)。
【0062】
また、同時に、除菌液ポンプ10の駆動により、除菌液を、除菌液タンク9から除菌液経路45を介して水経路44に供給したのち、混合タンク6で水と除菌液とを混合して混合液を生成する。その後、混合液を混合液経路46を介して二流体ノズル40の液体側入口に供給する(
図3の矢印D2参照)。
【0063】
各二流体ノズル40では、空気と混合液とでミストを形成して噴霧する。
【0064】
次に、残留水の排出動作について説明する。
【0065】
まず、水供給部41での水の供給を停止する。停止する代わりに、水供給の圧力を空気供給の圧力よりも低くして水経路44に水が流入しない状態としてもよい。
【0066】
次いで、開閉弁49を開き、空気供給部42から、第2空気経路48と水経路44とを介して混合タンク6に上端の流入口から空気を供給する(
図3の矢印C1及びC2及びC3参照)。混合タンク6に供給された空気は、混合タンク6の下端の流出口から排出されて混合液経路46に入る(
図3の矢印C4参照)。その後、混合液経路46からノズル40に至り(
図3の矢印C5参照)、ノズル40から噴霧又は排出される。これにより、空気が流れた経路及び混合タンク6に存在した残留水は、経路及び混合タンク6から排出される。その後、空気供給部42からの空気の供給を停止する。
【0067】
前記第2実施形態によれば、空気が流れた経路であって水が通過する経路44,46及び混合タンク6に存在した残留液体が、供給される空気によりノズル側に排出され、残留液体での菌の繁殖を抑制することができる。
【0068】
なお、前記各実施形態において、除菌液供給電磁弁1は、混合タンク6の上流側に配置する代わりに、混合タンク6の下流側の逆止弁5の下流側に配置してもよい。
【0069】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示にかかる薬液噴霧システム及びその運転方法は、水が通過する経路の残留水中で菌が繁殖することを抑制することができ、除菌又は殺菌の用途で除菌液と水との混合液を薬液として噴霧するのに有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 除菌液供給電磁弁
2 三方弁
3 バイパス電磁弁
4 逆止弁
5 逆止弁
6 混合タンク
6a 流入口
6b 負圧空間
7 排水弁
8 フロートセンサ
9 除菌液タンク
10 除菌液ポンプ
11 逆止弁
40 二流体ノズル
41 水供給部
42 空気供給部
43 除菌液供給部
44 水経路
45 除菌液経路
46 混合液経路
47 第1空気経路
48 第2空気経路
49 開閉弁
50 制御部
A1、A2、A3、A4 液体供給時の液体の流れ
B1、B2、B3、B4 液体供給停止時の空気の流れ
C1、C2、C3、C4、C5 液体供給停止時の空気の流れ
D1、D2 液体供給時の液体の流れ