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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
H02M3/155 Z
H02M3/155 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020117360
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014805
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤居 直章
(72)【発明者】
【氏名】秋政 向志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-199708(JP,A)
【文献】特開2012-182977(JP,A)
【文献】特開2015-216789(JP,A)
【文献】特開2010-178605(JP,A)
【文献】特開2004-48893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側直流部に接続される少なくとも一つのリアクトルと、
高圧側直流部と並列に直列接続された第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路と、を備え、
前記第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路は、それぞれ直列に接続された複数の並列スイッチング素子を含み、
前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路に含まれる前記複数の並列スイッチング素子の直列回路の第1中点間が電気的に接続され、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路に含まれる前記複数の並列スイッチング素子の直列回路の第2中点間が電気的に接続され、
前記リアクトルは、前記低圧側直流部の正側端子と前記第1中点間を接続する経路と、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入され、
前記並列スイッチング素子は、少なくとも一つのスイッチング素子が並列接続されており、
各スイッチング素子には逆並列にダイオードが形成または接続されており、
複数の並列スイッチング素子のうち、並列数が他の並列スイッチング素子より少ない並列スイッチング素子を含む、
電力変換装置。
【請求項2】
リカバリ電流を低減させるべきダイオードが逆並列に形成または接続されたスイッチング素子を含む並列スイッチング素子の並列数が、他の並列スイッチング素子の並列数より少ない、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1フライングキャパシタ回路は、
直列接続された第1並列スイッチング素子、第2並列スイッチング素子、第3並列スイッチング素子及び第4並列スイッチング素子と、
前記第1並列スイッチング素子と第2並列スイッチング素子との接続点と、第3並列スイッチング素子と第4並列スイッチング素子との接続点との間に接続された第1フライングキャパシタと、を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路は、
直列接続された第5並列スイッチング素子、第6並列スイッチング素子、第7並列スイッチング素子及び第8並列スイッチング素子と、
前記第5並列スイッチング素子と第6並列スイッチング素子との接続点と、第7並列スイッチング素子と第8並列スイッチング素子との接続点との間に接続された第2フライングキャパシタと、を含む、
請求項に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1並列スイッチング素子、前記第2並列スイッチング素子、前記第7並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子の並列数が、前記第3並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第6並列スイッチング素子の並列数より少ない、
請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第3並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第6並列スイッチング素子の並列数が、前記第1並列スイッチング素子、前記第2並列スイッチング素子、前記第7並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子の並列数より少ない、
請求項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1フライングキャパシタ回路及び前記第2フライングキャパシタ回路を制御して、前記低圧側直流部から前記高圧側直流部へ昇圧動作で電力伝送、及び前記高圧側直流部から前記低圧側直流部へ降圧動作で電力伝送の少なくとも一方を実行可能な制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第2並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第7並列スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1並列スイッチング素子、前記第3並列スイッチング素子、前記第6並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1並列スイッチング素子、前記第3並列スイッチング素子、前記第6並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子をオン状態、並びに前記第2並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第7並列スイッチング素子をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1並列スイッチング素子、前記第2並列スイッチング素子、前記第7並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子をオン状態、並びに前記第3並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第6並列スイッチング素子をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3並列スイッチング素子、前記第4並列スイッチング素子、前記第5並列スイッチング素子及び前記第6並列スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1並列スイッチング素子、前記第2並列スイッチング素子、前記第7並列スイッチング素子及び前記第8並列スイッチング素子をオフ状態に制御する第4モード、
の4つのモードを使用して前記昇圧動作または前記降圧動作を実行する、
請求項からのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、
前記ダイオードは、前記NチャンネルMOSFETの寄生ダイオードである、
請求項1からのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力の電圧を変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、太陽電池、燃料電池などに接続されるパワーコンディショナでは、DC/DCコンバータとインバータが使用される。DC/DCコンバータとインバータは、高効率な電力変換と小型設計が望まれる。それを実現するためのDC/DCコンバータとして、リアクトルの後段に、フライングキャパシタ回路(直列接続された4つのスイッチング素子と、第2スイッチング素子と第3スイッチング素子に並列接続されたフライングキャパシタで構成される)を接続し、リアクトルとフライングキャパシタ回路の接続点の電圧を3レベル化したマルチレベル電力変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マルチレベル電力変換装置は、各スイッチング素子に印加される電圧を小さくでき、それによりスイッチング損失を少なくでき、高効率な電力変換を実現する。上記フライングキャパシタ回路を利用したマルチレベル電力変換装置では3レベル化することにより、フライングキャパシタ回路を構成する各スイッチング素子に印加される電圧を、直流バス電圧の1/2倍まで小さくすることができる。
【0004】
それにより、インバータのフルブリッジ部で使用している比較的高い耐圧(例えば、600V)のスイッチング素子を使用せずに、比較的低い耐圧(例えば、300V)のスイッチング素子で構成することが可能となる。耐圧の低いスイッチング素子は耐圧の高いスイッチング素子に対して安価であり、かつ電力変換中の導通損失、スイッチング損失などが少なく、さらなる高効率化に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-192383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安価なスイッチング素子として一般的に使用されるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)では、還流ダイオードとして寄生ダイオードが使用される。寄生ダイオードはリカバリ損失が大きく、スイッチング損失を増加させる要因となる。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストで高効率な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、少なくとも一つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子が、複数直列に接続された電力変換部を有する電力変換装置であって、各スイッチング素子には逆並列にダイオードが形成または接続されており、複数の並列スイッチング素子のうち、並列数が他の並列スイッチング素子より少ない並列スイッチング素子を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低コストで高効率な電力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図2】実施の形態1に係るDC/DC変換装置の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
図3図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
図4図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
図5】昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図6】昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図7図7(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図8図8(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
図9図9(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図10図10(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
図11図11(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図12図12(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
図13図13(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。
図14図14(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。
図15】実施の形態1の比較例に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図16】実施の形態1の実施例1に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図17】実施の形態1の実施例2に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図18】実施の形態1の実施例1の変形例に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図19図19(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
図20】N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す図である。
図21】実施の形態2の実施例1に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図22】実施の形態2の実施例2に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図23】実施の形態3の実施例1に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
図24】実施の形態3の実施例2に係るDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態1に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態1に係るDC/DC変換装置3は、双方向の昇降圧DC/DCコンバータである。DC/DC変換装置3は、第2直流電源2から供給される直流電力を昇圧して第1直流電源1に供給することができる。またDC/DC変換装置3は、第1直流電源1から供給される直流電力を降圧して第2直流電源2に供給することができる。本明細書では、第2直流電源2が第1直流電源1より低圧な電源であることを前提とする。
【0012】
第2直流電源2は例えば、蓄電池、電気二重層コンデンサなどが該当する。第1直流電源1は例えば、双方向DC/ACインバータが接続された直流バスなどが該当する。当該双方向DC/ACインバータの交流側は、蓄電システムの用途では商用電力系統と交流負荷に接続される。電気自動車の用途ではモータ(回生機能あり)に接続される。蓄電システムの用途では当該直流バスに、太陽電池用のDC/DCコンバータや、他の蓄電池用のDC/DCコンバータがさらに接続されていてもよい。
【0013】
DC/DC変換装置3は、DC/DC変換部30及び制御部40を備える。DC/DC変換部30は、入力コンデンサC5、リアクトルL1、第1フライングキャパシタ回路31、第2フライングキャパシタ回路32、第1分割コンデンサC3、第2分割コンデンサC4、及び出力コンデンサC6を含む。
【0014】
第2直流電源2と並列に入力コンデンサC5が接続される。第1直流電源1と並列に出力コンデンサC6が接続される。第1直流電源1の正側バスと負側バスの間に、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4が直列に接続される。第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4は、第1直流電源1の電圧Eを1/2に分圧する作用、DC/DC変換部30内で発生するサージ電圧を抑制するためのスナバコンデンサとしての作用を有する。本明細書では、入力コンデンサC5より前段の構成を低圧直流部と呼び、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4より後段の構成を高圧直流部と呼ぶ。
【0015】
第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32は、高圧側直流部と並列に直列接続される。リアクトルL1は、低圧側直流部の正側端子と、第1フライングキャパシタ回路31の中点間に接続される。低圧側直流部の負側端子と、第2フライングキャパシタ回路32の中点が接続される。第1フライングキャパシタ回路31と第2フライングキャパシタ回路32との間の接続点は、高圧側直流部の中間電位点M(第1分割コンデンサC3と第2分割コンデンサC4の分圧点)に接続される。
【0016】
なお、第1分割コンデンサC3及び第2分割コンデンサC4は省略可能であり、その場合、第1フライングキャパシタ回路31と第2フライングキャパシタ回路32との間の接続点は、必ずしも高圧側直流部の中間電位点Mに接続される必要はない。
【0017】
第1フライングキャパシタ回路31は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4及び第1フライングキャパシタC1を含む。第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3及び第4スイッチング素子S4は直列接続され、高圧直流部の正側バスと中間電位点Mの間に接続される。第1フライングキャパシタC1は、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2との接続点と、第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子S1-第4スイッチング素子S4により充放電される。
【0018】
第1フライングキャパシタ回路31の中点には、第1スイッチング素子S1の上側端子に印加される第1直流電源1の電圧E[V]と、第4スイッチング素子S4の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が生成される。第1フライングキャパシタC1は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路31の中点には、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が生成される。
【0019】
第2フライングキャパシタ回路32は、第5スイッチング素子S5、第6スイッチング素子S6、第7スイッチング素子S7、第8スイッチング素子S8及び第2フライングキャパシタC2を含む。第5スイッチング素子S5、第6スイッチング素子S6、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8は直列接続され、高圧直流部の中間電位点Mと負側バスの間に接続される。第2フライングキャパシタC2は、第5スイッチング素子S5と第6スイッチング素子S6との接続点と、第7スイッチング素子S7と第8スイッチング素子S8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子S5-第8スイッチング素子S8により充放電される。
【0020】
第2フライングキャパシタ回路32の中点には、第5スイッチング素子S5の上側端子に印加される1/2E[V]と、第8スイッチング素子S8の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が生成される。第2フライングキャパシタC2は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路32の中点には、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が生成される。
【0021】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第8ダイオードD8が逆並列に形成/接続される。
【0022】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8には、第1直流電源1及び第2直流電源2の電圧より低い耐圧のスイッチング素子が使用されることが好ましい。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8に、150V耐圧のNチャネルMOSFETを使用する例を想定する。NチャネルMOSFETでは、ソースからドレイン方向に寄生ダイオードが形成される。
【0023】
図1には示していないが、低圧直流部の電圧を検出する電圧センサ、リアクトルL1に流れる電流を検出する電流センサ、第1フライングキャパシタC1の電圧を検出する電圧センサ、第2フライングキャパシタC2の電圧を検出する電圧センサ、及び高圧直流部の電圧を検出する電圧センサが設けられ、それぞれの計測値が制御部40に出力される。
【0024】
制御部40は、第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32を制御して、低圧側直流部から高圧側直流部へ昇圧動作で直流電力を伝送することができる。また高圧側直流部から低圧側直流部へ降圧動作で直流電力を伝送することができる。より具体的には制御部40は、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のゲート端子に駆動信号(PWM(Pulse Width Modulation)信号)を供給することにより、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8をオン/オフ制御して、昇圧動作または降圧動作で、双方向に電力を伝送することができる。
【0025】
制御部40の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、ASIC、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0026】
図2は、実施の形態1に係るDC/DC変換装置3の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンをまとめた図である。図2に示すスイッチングパターンでは、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8の組と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5の組とが相補関係となる。また第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7の組と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6の組とが相補関係となる。
【0027】
制御部40は、4つのモードを使用して昇圧動作または降圧動作を実行する。
モードaでは制御部40は、第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードaでは、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点間の電圧(即ち、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧V)は1/2Eとなる。
【0028】
モードbでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオフ状態に制御する。モードbでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧Vは1/2Eとなる。
【0029】
モードcでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオフ状態に制御する。モードcでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧VはEとなる。
【0030】
モードdでは制御部40は、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードdでは、フライングキャパシタ部の低圧側の入出力電圧Vは0となる。
【0031】
図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。なお、図面の簡略化のためMOSFETを単純なスイッチ記号で描いている。
【0032】
図3(a)は昇圧動作時のモードaの電流経路を示し、図3(b)は昇圧動作時のモードbの電流経路を示し、図3(c)は昇圧動作時のモードcの電流経路を示し、図3(d)は昇圧動作時のモードdの電流経路を示している。同様に、図4(a)は降圧動作時のモードaの電流経路を示し、図4(b)は降圧動作時のモードbの電流経路を示し、図4(c)は降圧動作時のモードcの電流経路を示し、図4(d)は降圧動作時のモードdの電流経路を示している。
【0033】
昇圧動作時と降圧動作時とで電流の向きが反対になる。モードaにおいて、図3(a)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となるが、図4(a)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となる。モードbにおいて、図3(b)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となるが、図4(b)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となる。
【0034】
制御部40は低圧直流部から高圧直流部へ昇圧動作で電力を伝送する場合、正方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該正方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。反対に、制御部40は高圧直流部から低圧直流部へ降圧動作で電力を伝送する場合、負方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該負方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。
【0035】
また制御部40は、低圧側直流部の電圧と高圧側直流部の電圧との比率が設定値より小さい場合、モードa、モードb及びモードcを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値より大きい場合、モードa、モードb及びモードdを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値と一致する場合、モードa及びモードbを使用して電力を伝送する。
【0036】
低圧側直流部の電圧と高圧側直流部の電圧は、それぞれ電圧センサにより計測される。上記設定値は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧1/2Eと、第1直流電源1の電圧Eとの比率に応じて設定される。本実施の形態では上記設定値は2に設定される。
【0037】
制御部40は、電流指令値とリアクトルL1に流れる電流の計測値とが一致し、かつ第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eになるようにデューティ比を生成する。具体的には制御部40は、リアクトルL1に流れる電流の計測値が電流指令値に対して小さいほどデューティ比を上昇させ、大きいほどデューティ比を低下させる。
【0038】
図5は、昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。図6は、昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。図5及び図6に示す制御例は、ダブルキャリア駆動方式を使用した制御例を示している。ダブルキャリア駆動方式では、180°位相がずれた2つのキャリア信号(図5及び図6では三角波)を使用する。デューティ比dutyは2つのキャリア信号と比較される閾値となる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyは0.5~1.0の範囲の値をとり、昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyは0.0~0.5の範囲の値をとる。
【0039】
太線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に供給する第1ゲート信号と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に供給する第4ゲート信号を生成する。具体的には太線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第1ゲート信号がオン及び第4ゲート信号がオフになる。太線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第1ゲート信号がオフ及び第4ゲート信号がオンになる。第1ゲート信号と第4ゲート信号は相補関係にある。なお、第1ゲート信号と第4ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第1ゲート信号と第4ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0040】
細線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に供給する第2ゲート信号と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に供給する第3ゲート信号を生成する。具体的には細線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第2ゲート信号がオン及び第3ゲート信号がオフになる。細線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第2ゲート信号がオフ及び第3ゲート信号がオンになる。第2ゲート信号と第3ゲート信号は相補関係にある。なお、第2ゲート信号と第3ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第2ゲート信号と第3ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0041】
昇圧比が2倍以上の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードdを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードd→モードb→モードd→モードa→モードd→モードb→モードd・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードdの期間が長くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0042】
昇圧比が2倍未満の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードcを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードc→モードb→モードc→モードa→モードc→モードb→モードc・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードcの期間が短くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0043】
昇圧比が理想的に2倍を維持し、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ理想的に1/4Eを維持すれば、デューティ比dutyは0.5を維持する。
【0044】
制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを下回ると、モードa及びモードbの内、充電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。反対に制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを上回ると、モードa及びモードbの内、放電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。
【0045】
なお制御部40は、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を使用せずに、モードcとモードdを交互に切り替えることにより、DC/DC変換部30に、通常の昇圧チョッパの動作をさせることも可能である。この場合、昇圧比による動作モードの切り替えは発生しない。
【0046】
以下、昇圧比が2倍以上、降圧比が2倍以上、昇圧比が2倍未満、及び降圧比が2倍未満のそれぞれについて、デッドタイムを含めた詳細な切替パターンを説明する。
【0047】
図7(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。図8(a)-(d)は、昇圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。昇圧比が2倍以上の場合、制御部40は、モードd(図7(a))→デッドタイム1(図7(b))→モードa(図7(c))→デッドタイム1(図7(d))→モードd(図8(a))→デッドタイム2(図8(b))→モードb(図8(c))→デッドタイム2(図8(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0048】
昇圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム1では第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7はオフ状態であるため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7は同期整流ではなく、第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0049】
デッドタイム1(図7(d))からモードd(図8(a))に切り替わる際、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に上記リカバリ電流が流れ込むため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のターンオン時に流れる電流が増加し、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のスイッチング損失が増加する。
【0050】
昇圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム2では第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8はオフ状態であるため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8は同期整流ではなく、第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0051】
デッドタイム2(図8(d))からモードd(図7(a))に切り替わる際、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に上記リカバリ電流が流れ込むため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のターンオン時に流れる電流が増加し、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のスイッチング損失が増加する。
【0052】
図9(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。図10(a)-(d)は、降圧比が2倍以上の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。降圧比が2倍以上の場合、制御部40は、モードd(図9(a))→デッドタイム1(図9(b))→モードa(図9(c))→デッドタイム1(図9(d))→モードd(図10(a))→デッドタイム2(図10(b))→モードb(図10(c))→デッドタイム2(図10(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0053】
降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム1では第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6はオフ状態であるため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6は同期整流ではなく、第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0054】
デッドタイム1(図9(b))からモードa(図9(c))に切り替わる際、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に上記リカバリ電流が流れ込むため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のターンオン時に流れる電流が増加し、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のスイッチング損失が増加する。
【0055】
降圧比が2倍以上の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム2では第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5はオフ状態であるため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5は同期整流ではなく、第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0056】
デッドタイム2(図10(b))からモードb(図10(c))に切り替わる際、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に上記リカバリ電流が流れ込むため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のターンオン時に流れる電流が増加し、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のスイッチング損失が増加する。
【0057】
図11(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。図12(a)-(d)は、昇圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。昇圧比が2倍未満の場合、制御部40は、モードc(図11(a))→デッドタイム1(図11(b))→モードa(図11(c))→デッドタイム1(図11(d))→モードc(図12(a))→デッドタイム2(図12(b))→モードb(図12(c))→デッドタイム2(図12(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0058】
昇圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム1では第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8はオフ状態であるため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8は同期整流ではなく、第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0059】
デッドタイム1(図11(b))からモードa(図11(c))に切り替わる際、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第1スイッチング素子S1の寄生ダイオード及び第8スイッチング素子S8の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に上記リカバリ電流が流れ込むため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のターンオン時に流れる電流が増加し、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5のスイッチング損失が増加する。
【0060】
昇圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム2では第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7はオフ状態であるため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7は同期整流ではなく、第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0061】
デッドタイム2(図12(b))からモードb(図12(c))に切り替わる際、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第2スイッチング素子S2の寄生ダイオード及び第7スイッチング素子S7の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に上記リカバリ電流が流れ込むため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のターンオン時に流れる電流が増加し、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6のスイッチング損失が増加する。
【0062】
図13(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その1)。図14(a)-(d)は、降圧比が2倍未満の場合における、スイッチングパターンの遷移を示す回路図である(その2)。降圧比が2倍未満の場合、制御部40は、モードc(図13(a))→デッドタイム1(図13(b))→モードa(図13(c))→デッドタイム1(図13(d))→モードc(図14(a))→デッドタイム2(図14(b))→モードb(図14(c))→デッドタイム2(図14(d))を一サイクルとして、スイッチングパターンを切り替える。
【0063】
降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム1では、制御部40は、第1スイッチング素子S1、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第8スイッチング素子S8を同時にオフする。デッドタイム1では第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5はオフ状態であるため、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5は同期整流ではなく、第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0064】
デッドタイム1(図13(d))からモードc(図14(a))に切り替わる際、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第4スイッチング素子S4の寄生ダイオード及び第5スイッチング素子S5の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に上記リカバリ電流が流れ込むため、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のターンオン時に流れる電流が増加し、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8のスイッチング損失が増加する。
【0065】
降圧比が2倍未満の場合におけるデッドタイム2では制御部40は、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第7スイッチング素子S7を同時にオフする。デッドタイム2では第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6はオフ状態であるため、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6は同期整流ではなく、第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードを経由して電流が還流する。
【0066】
デッドタイム2(図14(d))からモードc(図13(a))に切り替わる際、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7がターンオンする。これにより、順方向に電流が流れていた第3スイッチング素子S3の寄生ダイオード及び第6スイッチング素子S6の寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる(R参照)。これにより、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に上記リカバリ電流が流れ込むため、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のターンオン時に流れる電流が増加し、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7のスイッチング損失が増加する。
【0067】
スイッチング素子として使用するMOSFETの寄生ダイオードによるリカバリ損失は無視できない大きさであり、寄生ダイオードによるリカバリ損失を低減することは、DC/DC変換装置3全体の効率改善に大きく寄与する。以下、リカバリ損失の対策が施された回路構成について説明する。
【0068】
図15は、実施の形態1の比較例に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。図15に示す実施の形態1の比較例に係るDC/DC変換装置3では、図1に示したDC/DC変換装置3の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8がそれぞれ3並列で構成されている。これにより、一つのスイッチング素子に流れる電流を1/3にすることができる。したがって、一つのスイッチング素子の許容電流を下げることができ、各スイッチング素子のサイズを小さくすることができる。また、一つのスイッチング素子からの発熱量を低減することができる。なお、並列数は3に限るものではない。並列数を増加させることにより、一つのスイッチング素子からの発熱量をさらに低減することができる。以下、並列接続された複数の第1スイッチング素子S1a-S1cを総称して、第1並列スイッチング素子S1a-S1cという。第2スイッチング素子S2-第8スイッチング素子S8も同様である。
【0069】
図16は、実施の形態1の実施例1に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。図16に示す実施例1に係るDC/DC変換装置3では、第1並列スイッチング素子S1a-S1b、第2並列スイッチング素子S2a-S2b、第7並列スイッチング素子S7a-S7b及び第8並列スイッチング素子S8a-S8bの並列数が、第3並列スイッチング素子S3a-S3c、第4並列スイッチング素子S4a-S4c、第5並列スイッチング素子S5a-S5c及び第6並列スイッチング素子S6a-S6cの並列数より少なく設計されている。具体的には前者のグループの並列数が2、後者のグループの並列数が3に設計されている。なお、前者のグループの並列数は1でもよい。また、後者のグループの並列数は4以上でもよい。
【0070】
図17は、実施の形態1の実施例2に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。図17に示す実施の形態1の実施例2に係るDC/DC変換装置3では、第3並列スイッチング素子S3a-S3b、第4並列スイッチング素子S4a-S4b、第5並列スイッチング素子S5a-S5b及び第6並列スイッチング素子S6a-S6bの並列数が、第1並列スイッチング素子S1a-S1c、第2並列スイッチング素子S2a-S2c、第7並列スイッチング素子S7a-S7c及び第8並列スイッチング素子S8a-S8cの並列数より少なく設計されている。具体的には前者のグループの並列数が3、後者のグループの並列数が2に設計されている。なお、前者のグループの並列数は4以上でもよい。また、後者のグループの並列数は1でもよい。
【0071】
図16に示す実施の形態1の実施例1では、昇圧動作時のリカバリ損失を低減することができる。昇圧動作時には第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8にリカバリ電流が発生する(図7(a)、図8(a)、図11(c)、図12(c)参照)。これに対して実施の形態1の実施例1では、第1並列スイッチング素子S1a-S1b、第2並列スイッチング素子S2a-S2b、第7並列スイッチング素子S7a-S7b及び第8並列スイッチング素子S8a-S8bの並列数を減らすことにより、リカバリ電流量を低減することができる。
【0072】
図17に示す実施の形態1の実施例2では、降圧動作時のリカバリ損失を低減することができる。降圧動作時には第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6にリカバリ電流が発生する(図9(c)、図10(c)、図13(a)、図14(a)参照)。これに対して実施の形態1の実施例2では、第3並列スイッチング素子S3a-S3b、第4並列スイッチング素子S4a-S4b、第5並列スイッチング素子S5a-S5b及び第6並列スイッチング素子S6a-S6bの並列数を減らすことにより、リカバリ電流量を低減することができる。
【0073】
図18は、実施の形態1の実施例1の変形例に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。図16に示した実施の形態1の実施例1のDC/DC変換装置3では、リアクトルL1を、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間に接続した。この点、図18に示す変形例では、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間に第1リアクトルL1を接続し、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間に第2リアクトルL2を接続している。第1リアクトルL1と第2リアクトルL2を、コアを共通にした磁気結合リアクトルで構成されてもよい。この場合、通電時に、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2の磁束を相互に強め合うことができる。
【0074】
なお、リアクトルL1は、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間に接続してもよい。このように、リアクトルL1は、低圧側直流部の正側端子と第1フライングキャパシタ回路31の中点間を接続する経路と、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入されていればよい。なお図示しないが、図17に示した実施の形態1の実施例2のDC/DC変換装置3においても、低圧側直流部の負側端子と第2フライングキャパシタ回路32の中点間に第2リアクトルL2を接続してもよい。
【0075】
図19(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。図19(a)は1段のフライングキャパシタ回路を示す。図19(a)に示すフライングキャパシタ回路は、上記実施の形態1で説明した回路構成と同様である。
【0076】
図19(b)は2段のフライングキャパシタ回路を示す。2段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42と、2つのフライングキャパシタC11、C12を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。
【0077】
図19(c)は3段のフライングキャパシタ回路を示す。3段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43と、3つのフライングキャパシタC11、C12、C13を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/8Eの電圧を維持するように制御される。
【0078】
図20は、N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す。N段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された(2N+2)個のスイッチング素子S1n、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4nと、N個のフライングキャパシタC11、C12、C13、・・・、C1nを備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。最も外側のフライングキャパシタC1nは、2N個のS1(n-1)、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4(n-1)に対して並列に接続され、N/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。
【0079】
図1に示した第1フライングキャパシタ回路31及び第2フライングキャパシタ回路32では、図19(a)に示した1段のフライングキャパシタ回路を使用している。1段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に3レベル(E、1/2E、0)の電圧を発生させることが可能となる。図19(b)に示した2段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に5レベル(E、2/3E、1/2E、1/3E、0)の電圧を発生させることが可能となる。図19(c)に示した3段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に7レベル(E、3/4E、5/8E、1/2E、3/8E、1/4E、0)の電圧を発生させることが可能となる。図20に示したN段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路31の中点と第2フライングキャパシタ回路32の中点との間に(2N+1)レベルの電圧を発生させることが可能となる。
【0080】
フライングキャパシタ回路の段数を増やすほど、安価で耐圧が低いスイッチング素子を使用することができる一方、使用するスイッチング素子の数が増大する。従って設計者は、トータルのコストとトータルの変換効率を考慮して、フライングキャパシタ回路の最適な段数を決定すればよい。また、高圧側直流部の電圧が1000Vを超えるアプリケーションや、10000Vを超えるアプリケーションでは、各スイッチング素子の耐圧を下げるために、フライングキャパシタ回路の段数を増やすことが有効である。
【0081】
実施の形態1では、フライングキャパシタ回路の段数がいずれの場合であっても、リカバリ電流を減少させるべきダイオードが接続されたスイッチング素子を含む並列スイッチング素子の並列数を、他の並列スイッチング素子の並列数より少なく設計することにより、リカバリ損失を低減することができる。
【0082】
図21は、実施の形態2の実施例1に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態2の実施例1に係るDC/DC変換装置3は、チョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータである。実施の形態2の実施例1に係るDC/DC変換部30は、上側のスイッチング素子S1と下側のスイッチング素子S3を含む。下側のスイッチング素子S3は、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S3a-S3bで構成される。
【0083】
制御部40は昇圧時、上側のスイッチング素子S1を常時オフに制御し、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bを昇圧比に応じてPWM制御する。制御部40は降圧時、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bを常時オフに制御し、上側のスイッチング素子S1を降圧比に応じてPWM制御する。
【0084】
昇圧時の昇圧比が大きいほど、デューティ比が高くなる。即ち、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bのオン時間が長くなる。
【0085】
下側の並列スイッチング素子S3a-S3bがオフの期間は、上側のスイッチング素子S1のダイオードD1に順方向電流が流れる。下側の並列スイッチング素子S3a-S3bのターンオン時に、順方向に電流が流れていた上側のスイッチング素子S1のダイオードD1に逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる。これにより、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bに当該リカバリ電流が流れ込むため、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bのターンオン時に流れる電流が増加し、下側の並列スイッチング素子S3a-S3bのスイッチング損失が増加する。
【0086】
これに対して実施の形態2の実施例1では、上側のスイッチング素子S1の並列数を、下側のスイッチング素子S3の並列数より減らすことにより、リカバリ電流量を低減することができる。
【0087】
実施の形態2の実施例1の構成は、昇圧比が大きいほど有効な構成である。昇圧比が大きいほど、下側のスイッチング素子S3の電流時間積が上側のスイッチング素子S1の電流時間積より大きくなる。したがって、上側のスイッチング素子S1の許容電流を、下側のスイッチング素子S3の許容電流より下げることができる。即ち、上側のスイッチング素子S1の並列数を、下側のスイッチング素子S3の並列数より減らすことができる。
【0088】
図22は、実施の形態2の実施例2に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態2の実施例2に係るDC/DC変換装置3も、チョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータである。実施の形態2の実施例2に係るDC/DC変換部30は、上側のスイッチング素子S1と下側のスイッチング素子S3を含む。上側のスイッチング素子S1は、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S1a-S1bで構成される。
【0089】
制御部40は昇圧時、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bを常時オフに制御し、下側のスイッチング素子S3を昇圧比に応じてPWM制御する。制御部40は降圧時、下側のスイッチング素子S3を常時オフに制御し、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bを降圧比に応じてPWM制御する。
【0090】
降圧時の降圧比が小さいほど、デューティ比が高くなる。即ち、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bのオン時間が長くなる。
【0091】
上側の並列スイッチング素子S1a-S1bがオフの期間は、下側のスイッチング素子S3のダイオードD3に順方向電流が流れる。上側の並列スイッチング素子S1a-S1bのターンオン時に、順方向に電流が流れていた下側のスイッチング素子S3のダイオードD3に逆バイアス電圧が印加され、逆方向にリカバリ電流が流れる。これにより、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bに当該リカバリ電流が流れ込むため、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bのターンオン時に流れる電流が増加し、上側の並列スイッチング素子S1a-S1bのスイッチング損失が増加する。
【0092】
これに対して実施の形態2の実施例2では、下側のスイッチング素子S3の並列数を、上側のスイッチング素子S1の並列数より減らすことにより、リカバリ電流量を低減することができる。
【0093】
実施の形態2の実施例2の構成は、降圧比が小さいほど有効な構成である。降圧比が小さいほど、上側のスイッチング素子S1の電流時間積が下側のスイッチング素子S3の電流時間積より大きくなる。したがって、下側のスイッチング素子S3の許容電流を、上側のスイッチング素子S1の許容電流より下げることができる。即ち、下側のスイッチング素子S3の並列数を、上側のスイッチング素子S1の並列数より減らすことができる。
【0094】
図23は、実施の形態3の実施例1に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態3の実施例1に係るDC/DC変換装置3は、インタリーブ方式のチョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータである。実施の形態3の実施例1に係るDC/DC変換部30は、第1相の上側のスイッチング素子S1と下側のスイッチング素子S3と、第2相の上側のスイッチング素子S2と下側のスイッチング素子S4を含む。第1相の下側のスイッチング素子S3は、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S3a-S3bで構成される。第2相の下側のスイッチング素子S4も、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S4a-S4bで構成される。
【0095】
制御部40は昇圧時、第1相及び第2相の上側のスイッチング素子S1、S3を常時オフに制御し、第1相及び第2相の下側の並列スイッチング素子S3a-S3b、S4a-S4bを昇圧比に応じてPWM制御する。インタリーブ方式では、制御部40は、第1相の下側の並列スイッチング素子S3a-S3bと、第2相の下側の並列スイッチング素子S4a-S4bを、位相を180°ずらして交互にオン/オフする。インタリーブ方式では、出力コンデンサC6に流れる電流を小さくすることができるため、出力コンデンサC6の容量を小さくすることができる。その他の説明は、図21に示したチョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータと同様である。
【0096】
図24は、実施の形態3の実施例2に係るDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。実施の形態3の実施例2に係るDC/DC変換装置3は、インタリーブ方式のチョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータである。実施の形態3の実施例2に係るDC/DC変換部30は、第1相の上側のスイッチング素子S1と下側のスイッチング素子S3と、第2相の上側のスイッチング素子S2と下側のスイッチング素子S4を含む。第1相の上側のスイッチング素子S1は、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S1a-S1bで構成される。第2相の上側のスイッチング素子S2も、2つのスイッチング素子が並列接続された並列スイッチング素子S2a-S2bで構成される。
【0097】
制御部40は降圧時、第1相及び第2相の下側のスイッチング素子S2、S4を常時オフに制御し、第1相及び第2相の上側の並列スイッチング素子S1a-S1b、S3a-S3bを降圧比に応じてPWM制御する。インタリーブ方式では、制御部40は、第1相の上側の並列スイッチング素子S1a-S1bと、第2相の上側の並列スイッチング素子S3a-S3bを、位相を180°ずらして交互にオン/オフする。その他の説明は、図22に示したチョッパ型の昇降圧DC/DCコンバータと同様である。
【0098】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0099】
上述した実施の形態では、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にMOSFETを使用する例を説明した。この点、寄生ダイオードが形成されないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を使用する場合にも、本開示を適用可能である。この場合も外付けダイオードに流れるリカバリ電流を低減することができ、リカバリ損失を低減することができる。
【0100】
なお、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンド(C)等を使用したワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子を使用する場合にも、本開示を適用可能である。
【0101】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0102】
[項目1]
少なくとも一つのスイッチング素子(S1a-S1b)が並列接続された並列スイッチング素子(S1)が、複数(S1-S8)直列に接続された電力変換部(30)を有する電力変換装置(3)であって、
各スイッチング素子(S1a-S1b)には逆並列にダイオード(D1a-D1b)が形成または接続されており、
複数の並列スイッチング素子(S1-S8)のうち、並列数が他の並列スイッチング素子より少ない並列スイッチング素子(S1)を含む、
電力変換装置(3)。
これによれば、ダイオード(D1a-D1b)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目2]
リカバリ電流を低減させるべきダイオード(D1a-D1b)が逆並列に形成または接続されたスイッチング素子(S1a-S1b)を含む並列スイッチング素子(S1)の並列数が、他の並列スイッチング素子の並列数より少ない、
項目1に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、対象となるダイオード(D1a-D1b)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目3]
低圧側直流部に接続される少なくとも一つのリアクトル(L1)と、
高圧側直流部と並列に直列接続された第1フライングキャパシタ回路(31)及び第2フライングキャパシタ回路(32)と、を備え、
前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路(31)の中点間が電気的に接続され、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路(32)の中点間が電気的に接続され、
前記リアクトル(L1)は、前記低圧側直流部の正側端子と前記第1フライングキャパシタ回路(31)の中点間を接続する経路と、前記低圧側直流部の負側端子と前記第2フライングキャパシタ回路(32)の中点間を接続する経路の少なくとも一方に挿入され、
前記第1フライングキャパシタ回路(31)及び第2フライングキャパシタ回路(32)は、それぞれ直列に接続された複数の前記並列スイッチング素子(S1-S8)を含む、
項目1または2に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、フライングキャパシタを用いたマルチレベル電力変換装置(3)における、ダイオードのリカバリ損失を低減することができる。
[項目4]
前記第1フライングキャパシタ回路(31)は、
直列接続された第1並列スイッチング素子(S1)、第2並列スイッチング素子(S2)、第3並列スイッチング素子(S3)及び第4並列スイッチング素子(S4)と、
前記第1並列スイッチング素子(S1)と第2並列スイッチング素子(S2)との接続点と、第3並列スイッチング素子(S3)と第4並列スイッチング素子(S4)との接続点との間に接続された第1フライングキャパシタ(C1)と、を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路(32)は、
直列接続された第5並列スイッチング素子(S5)、第6並列スイッチング素子(S6)、第7並列スイッチング素子(S7)及び第8並列スイッチング素子(S8)と、
前記第5並列スイッチング素子(S5)と第6並列スイッチング素子(S6)との接続点と、第7並列スイッチング素子(S7)と第8並列スイッチング素子(S8)との接続点との間に接続された第2フライングキャパシタ(C2)と、を含む、
項目3に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、フライングキャパシタを用いた3レベル電力変換装置(3)における、ダイオードのリカバリ損失を低減することができる。
[項目5]
前記第1並列スイッチング素子(S1a-S1b)、前記第2並列スイッチング素子(S2a-S2b)、前記第7並列スイッチング素子(S7a-S7b)及び前記第8並列スイッチング素子(S8a-S8b)の並列数が、前記第3並列スイッチング素子(S3a-S3c)、前記第4並列スイッチング素子(S4a-S4c)、前記第5並列スイッチング素子(S5a-S5c)及び前記第6並列スイッチング素子(S6a-S6c)の並列数より少ない、
項目4に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、昇圧動作時における、ダイオード(D1-D2、D7-D8)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目6]
前記第3並列スイッチング素子(S3a-S3b)、前記第4並列スイッチング素子(S4a-S4b)、前記第5並列スイッチング素子(S5a-S5b)及び前記第6並列スイッチング素子(S6a-S6b)の並列数が、前記第1並列スイッチング素子(S1a-S1c)、前記第2並列スイッチング素子(S2a-S2c)、前記第7並列スイッチング素子(S7a-S7c)及び前記第8並列スイッチング素子(S8a-S8c)の並列数より少ない、
項目4に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、降圧動作時における、ダイオード(D3-D6)によるリカバリ損失を低減することができる。
[項目7]
前記第1フライングキャパシタ回路(31)及び前記第2フライングキャパシタ回路(32)を制御して、前記低圧側直流部から前記高圧側直流部へ昇圧動作で電力伝送、及び前記高圧側直流部から前記低圧側直流部へ降圧動作で電力伝送の少なくとも一方を実行可能な制御部(40)をさらに備え、
前記制御部(40)は、
前記第2並列スイッチング素子(S2)、前記第4並列スイッチング素子(S4)、前記第5並列スイッチング素子(S5)及び前記第7並列スイッチング素子(S7)をオン状態、並びに前記第1並列スイッチング素子(S1)、前記第3並列スイッチング素子(S3)、前記第6並列スイッチング素子(S6)及び前記第8並列スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1並列スイッチング素子(S1)、前記第3並列スイッチング素子(S3)、前記第6並列スイッチング素子(S6)及び前記第8並列スイッチング素子(S8)をオン状態、並びに前記第2並列スイッチング素子(S2)、前記第4並列スイッチング素子(S4)、前記第5並列スイッチング素子(S5)及び前記第7並列スイッチング素子(S7)をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1並列スイッチング素子(S1)、前記第2並列スイッチング素子(S2)、前記第7並列スイッチング素子(S7)及び前記第8並列スイッチング素子(S8)をオン状態、並びに前記第3並列スイッチング素子(S3)、前記第4並列スイッチング素子(S4)、前記第5並列スイッチング素子(S5)及び前記第6並列スイッチング素子(S6)をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3並列スイッチング素子(S3)、前記第4並列スイッチング素子(S4)、前記第5並列スイッチング素子(S5)及び前記第6並列スイッチング素子(S6)をオン状態、並びに前記第1並列スイッチング素子(S1)、前記第2並列スイッチング素子(S2)、前記第7並列スイッチング素子(S7)及び前記第8並列スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第4モード、
の4つのモードを使用して前記昇圧動作または前記降圧動作を実行する、
項目4から6のいずれか1項に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、4つのモードを組み合わせて種々の制御が可能となる。
[項目8]
前記スイッチング素子(S1-S8)は、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、
前記ダイオード(D1-D8)は、前記NチャンネルMOSFETの寄生ダイオードである、
項目1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置(3)。
これによれば、寄生ダイオードに還流電流が流れることによるリカバリ損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 第1直流電源、 2 第2直流電源、 3 DC/DC変換装置、 30 DC/DC変換部、 31,32 フライングキャパシタ回路、 40 制御部、 C1,C2 フライングキャパシタ、 C3,C4 分割コンデンサ、 C5 入力コンデンサ、 C6 出力コンデンサ、 L1,L2 リアクトル、 S1-S8 スイッチング素子、 D1-D8 ダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
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図22
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図24