(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】シミュレータ用駆動ユニット及びシミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 9/04 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G09B9/04 A
(21)【出願番号】P 2022169165
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522414051
【氏名又は名称】村山 嘉明
(73)【特許権者】
【識別番号】522414062
【氏名又は名称】竹内 匡弘
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】村山 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 匡弘
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-319377(JP,A)
【文献】特開2000-120765(JP,A)
【文献】特開2000-262758(JP,A)
【文献】特開2000-056667(JP,A)
【文献】特開2010-012973(JP,A)
【文献】特開2019-138376(JP,A)
【文献】特開2017-166518(JP,A)
【文献】特開2000-125917(JP,A)
【文献】特開平08-241031(JP,A)
【文献】特開平07-114331(JP,A)
【文献】特許第6618946(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/039058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/02-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレータの本体ユニットを支持するシミュレータ用駆動ユニットであって、
ロッドと、前記ロッドを格納する直線運動装置本体と、モータと、を有し、前記モータの駆動によってロッド先端部の前記直線運動装置本体に対する相対的距離が伸縮する直線運動装置と、
前記ロッド先端部と連結するゴム製自在継手と、
前記シミュレータを据え置くための据置具と、
前記ゴム製自在継手と前記据置具との間に配置された復元力のある移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記ゴム製自在継手に固定された上部材と、前記据置具に固定された下部材と、を
有すると共に、前記上部材と前記下部材の他に、前記上部材と前記下部材との間に配置されたすべり部材と、上からみたとき前記すべり部材を内側にする円周に沿って上部材下面及び下部材上面にそれぞれ装着された上磁石と下磁石と、を有するスライド機構で構成されており、前記伸縮に起因する前記下部材に対する前記上部材の水平方向の移動を許容すると共に、前記上部材が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記直線運動装置として電動シリンダを用い、
前記電動シリンダは、前記ロッドと、前記ロッドを格納する電動シリンダ本体と、前記モータと、を有し、前記モータの駆動によって前記ロッド先端部の前記電動シリンダ本体に対する相対的距離が伸縮するように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項3】
請求項
1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、前記伸縮に起因して前記ロッド先端部及び前記上部材が水平方向に移動した後、前記上磁石及び前記下磁石の吸引による復元力で元の水平位置の方向に水平移動するように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項4】
請求項
1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、
前記すべり部材上面の形状、及び当該すべり部材上面に対向する前記上部材下面の形状の組み合わせ、又は、
前記すべり部材下面の形状、及び当該すべり部材下面に対向する前記下部材上面の形状の組み合わせが、
平面形状及び平面形状の組み合わせ、又は凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項5】
請求項
4に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記すべり部材上面、及び当該すべり部材上面に対向する前記上部材下面の形状の組み合わせ、並びに、
前記すべり部材下面、及び当該すべり部材下面に対向する前記下部材上面の形状の組み
合わせが、
凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項6】
請求項
1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、
前記ロッド先端部の伸縮状態にかかわらず、前記上磁石と前記下磁石とは互いに直接接触しないように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項7】
請求項
1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、
前記上部材及び前記下部材の少なくとも前記上磁石及び前記下磁石の周囲が非磁性材で構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項8】
請求項
1に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、更に、
上からみたとき前記すべり部材を内側にする円周に沿って、上部材下面に設けられた上部材円周上突起と、下部材上面に設けられた下部材円周上突起と、を有し、
前記上部材円周上突起の円弧と、前記下部材円周上突起の円弧とは、一方が他方の内側になるような異なる径で構成され、
前記上部材円周上突起及び前記下部材円周上突起は、前記上部材が前記下部材に対して水平方向に移動すると、前記上部材円周上突起及び前記下部材円周上突起が互いに当たることにより、それ以上の移動を制限されるように構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項9】
請求項
8に記載のシミュレータ用駆動ユニットにおいて、
前記スライド機構は、
前記上部材が前記下部材に対して傾くことにより、前記下部材円周上突起が前記上部材下面に当たる箇所、又は前記上部材円周上突起が前記下部材上面に当たる箇所、に設けられた突起受けを更に有し、当該突起受けはフッソ系樹脂材で構成されている
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項10】
シミュレータの本体ユニットを支持するシミュレータ用駆動ユニットであって、
ロッドと、前記ロッドを格納する直線運動装置本体と、モータと、を有し、前記モータの駆動によってロッド先端部の前記直線運動装置本体に対する相対的距離が伸縮する直線運動装置と、
前記ロッド先端部と連結するゴム製自在継手と、
前記シミュレータを据え置くための据置具と、
前記ゴム製自在継手と前記据置具との間に配置された復元力のある移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記ゴム製自在継手に固定された上部材と、前記据置具に固定された下部材と、を有し、前記伸縮に起因する前記下部材に対する前記上部材の水平方向の移動を許容すると共に、前記上部材が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されており、
復元力のある前記移動機構は、
第1ブロックと、前記第1ブロックの移動を支持する第1レールと、前記第1レールの方向に沿って前記第1ブロックの両側に設けられた第1バネ及び第2バネと、を有する第1玉循環リニア軸受と、
第2ブロックと、前記第2ブロックの移動を支持する第2レールと、前記第2レールの方向に沿って前記第2ブロックの両側に設けられた第3バネ及び第4バネと、を有する第2玉循環リニア軸受と、
を備えたリニア軸受機構で構成され、
前記リニア軸受機構は、
前記第1玉循環リニア軸受を上にし、前記第2玉循環リニア軸受を下にして、上からみたときに前記第1レールの方向と前記第2レールの方向とが交差するように積層され、
前記第1ブロックを前記上部材とし、前記第2レールを前記下部材とする
ことを特徴とするシミュレータ用駆動ユニット。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のシミュレータ用駆動ユニットと、
前記シミュレータ用駆動ユニットで支持される本体ユニットと、
を備えることを特徴とするシミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレータ用駆動ユニット及びシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
シミュレータは、スペースの制約、安全性等の理由で、現実的に生じさせることが困難な場合に、その仮想的なモデルを作成して、再現させるものである。車両、航空機等の乗物の挙動を模擬的に再現させること等に用いられる。例えば、ドライビングシミュレータは、乗り物の挙動(実際のモータースポーツにおける運転体感等に重きを置いた激しい動作を伴うレーシングでの挙動、一般的な乗り物の挙動、等の挙動)を模擬的に再現する。
【0003】
ドライビングシミュレータは、人が乗る本体ユニットと、それを支える支持部とがある。支持部は、本体ユニットを支えながら、ハンドルの運転、路面形状等の変化に合わせて本体ユニットを動かす。そのため、運転に合わせて駆動される駆動ユニット(シミュレータ用駆動ユニット)が支持部の重要な構成要素となっている、ドライビングシミュレータ全体は、コンピュータで制御される。
上記駆動ユニットは、モータを内蔵した電動シリンダ(電動アクチュエータ)を用いるのが一般的である。コンピュータが、電動シリンダのモータを駆動してロッドを伸縮する(ロッド先端部の電動シリンダ本体に対する相対的距離を伸縮する)ことにより、乗り物の挙動を模擬的に再現する。過酷な乗り物の挙動を再現すると、駆動ユニット(特にロッド)には大きな負荷(荷重、力)がかかる。
【0004】
このようなドライビングシミュレータとしては、例えば特許文献1に開示されるドライビングシミュレータ1がある。特許文献1の
図1等に示されるドライビングシミュレータ1は、電動シリンダである本体用リニアアクチュエータ28、29、30及び31(それぞれ左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪部に設置)で本体ユニット11を支持して動かし車体の挙動を再現する。
なお、特許文献1では、リニアアクチュエータとして更にシート用リニアアクチュエータ25、26及び27を用い、これらで回転ユニット22を支持して回転運動させている。(特許文献1に関する説明は、当該文献中の符号を使っておこなう。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実際の乗り物の挙動では急激な加速、減速、方向転換等があるため、シミュレータでそれらが再現されると、上記リニアアクチュエータ(28、29、30、31)のロッドには大きな負荷がかかる。このうち水平方向の大きな負荷(負荷の水平方向成分、負荷ベクトル)が、垂直方向に設置されたロッド(ロッドの中心軸芯は垂直方向に向いている)に加わると、ロッドに破損等の損傷が生じやすくなる、又はロッドが寿命劣化しやすくなる。
一方、急激な加速、減速、方向転換等が抑えられると、水平方向の負荷は低減できるが、乗り物の挙動の再現性を大幅に損なってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の負荷を低減することが可能な(それによりロッドに破損等の損傷が生じにくくする、又はロッドが寿命劣化しにくくすることが可能な)シミュレータ用駆動ユニット及び当該シミュレータ用駆動ユニットを備えたシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明のシミュレータ用駆動ユニットは、
シミュレータの本体ユニットを支持するシミュレータ用駆動ユニットであって、
ロッドと、前記ロッドを格納する直線運動装置本体と、モータと、を有し、前記モータの駆動によってロッド先端部が前記直線運動装置本体に対する相対的距離を伸縮する直線運動装置と、
前記ロッド先端部と連結するゴム製自在継手と、
前記シミュレータを据え置くための据置具と、
前記ゴム製自在継手と前記据置具との間に配置された復元力のある移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記ゴム製自在継手に固定された上部材と、前記据置具に固定された下部材と、を有し、前記伸縮に起因する前記下部材に対する前記上部材の水平方向の移動を許容すると共に、前記上部材が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されている
ことを特徴とする。
【0009】
本発明のシミュレータ用駆動ユニットによれば、ゴム製自在継手と据置具との間に復元力のある移動機構が配置され、当該移動機構は、ゴム製自在継手に固定された上部材と、据置具に固定された下部材と、を有し、前記伸縮に起因する下部材に対する上部材の水平方向の移動を許容すると共に、上部材が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されているため、急激な加減速等が再現されても、駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の大きな負荷(ラジアル方向の負荷)を低減することが可能(それによりロッドに破損等の損傷が生じにくくなる、又はロッドが寿命劣化しにくくなることが可能)である。また、ロッドの水平方向の負荷を気にせずロッドの急激な加減速(ロッド伸縮)を伴う激しい動作等の再現が可能であるため、乗り物の挙動の再現性が損なわれることを抑制できる。
そのため、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の負荷を低減することが可能なシミュレータ用駆動ユニットを提供することが可能となる。
【0010】
[12]本発明のシミュレータは、前記シミュレータ用駆動ユニットと、前記シミュレータ用駆動ユニットで支持される本体ユニットと、を備えることを特徴とする。
本発明のシミュレータによれば、[1]に記載したことと同様の理由で、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、シミュレータ用駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の負荷を低減することが可能である。また、水平方向の負荷が低減される(負荷の一部を逃がす)ため、駆動トルクが低減でき、消費電力も小さくできる。
そのため、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、シミュレータ用駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の負荷を低減すると共に、駆動トルクの低減を可能にして消費電力の小さいシミュレータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係るシミュレータ10Aを説明するために示す図(外観図)。
【
図2】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す図(外観図)。
【
図3】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す分解組立図。
【
図4】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す、スライド機構4Aの周辺の断面図。
【
図5】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(水平移動)を説明するために示す図(スライド機構4Aの部分の模式平面図)。
【
図6】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(水平移動)を説明するために示す図(スライド機構4Aの部分の模式断面図)。
【
図7】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(傾いた場合)を説明するために示す図(スライド機構4Aの周辺の断面図)。
【
図8】実施形態1に係るシミュレータ10Aの作用を説明するために示す図。
【
図9】実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aのカバー6を説明するために示す図。
【
図10】実施形態2に係るシミュレータ10B及びシミュレータ用駆動ユニット1Bを説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシミュレータ用駆動ユニット及びシミュレータについて、図を用いて説明する。各図面は模式図であり、必ずしも実際の構造や構成を厳密に反映するものではない。各実施形態は、特許請求の範囲を限定するものではない。各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。実質的に同等とみなせる構成要素に関しては実施形態をまたいで同じ符号を用い、再度の説明を省略する場合がある(説明が一部重複する場合もある)。
【0013】
[実施形態1]
[シミュレータ10A]
図1は、実施形態1に係るシミュレータ10A(ドライビングシミュレータ)を説明するために示す図(外観図)である。
図1に示すように、実施形態1に係るシミュレータ10Aは、シミュレータ用駆動ユニット1Aと、シミュレータ用駆動ユニット1Aで支持される本体ユニット11と、を備える。
シミュレータ10Aは、本体ユニット11(人が乗るユニット)が搭載された長方形のベースフレーム12(シャーシ)の4隅(4か所)が、垂直方向(上下方向)にそれぞれ設置された4つのシミュレータ用駆動ユニット1A(直動軸)に固定されている。各シミュレータ用駆動ユニット1Aの下端はゴム板等の据置具5(
図2参照)を介して床に設置される。4つのシミュレータ用駆動ユニット1Aは上下方向に動作する(動く)。シミュレータ用駆動ユニット1Aは、ロッド21、ロッド21を格納する電動シリンダ本体22を有する電動シリンダ2等を備える。
【0014】
ところで、
図1では図示を省略しているが、シミュレータ10Aは、疑似運転に対応して変化する車外の風景を表示する表示装置を備える。表示装置はハンドルの先の本体ユニット11上に設置したり、の本体ユニット11とは別に、4つのシミュレータ用駆動ユニット1Aの外側に設置したりする。
【0015】
なお、ベースフレーム12は必須ではなく、本体ユニット11がシミュレータ用駆動ユニット1A(直動軸)に直接固定されるようにしてもよい。
また、シミュレータ用駆動ユニット1Aは4つに限定されるものではなく、例えば、6つ、8つ、又は2つ用いる等してもよい。2つ用いる場合は、ベースフレーム12(又は本体ユニット11)を三角形の3点で支え、そのうちの1点に固定支軸を設け、他の2点にそれぞれシミュレータ用駆動ユニット1Aを設置して、ベースフレーム12を上下に動作させる。
【0016】
[シミュレータ用駆動ユニット1A]
図2~
図4を用いて、シミュレータ用駆動ユニット1Aについて、主として構造を説明する。
図2は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す図(外観図)であり、
図2(a)は通常の外観図で、
図2(b)は一部分を断面図とした外観図である。
図3は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す分解組立図である。
図4は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aを説明するために示す、スライド機構4Aの周辺の断面図であり、
図4(a)はスライド機構4Aを含むロッド先端部21aから据置具5までの断面図で、
図4(b)はスライド機構4Aの部分を更に拡大した断面図である。
【0017】
図2~
図4に示されるように、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aは、シミュレータ10Aの本体ユニット11を支持するシミュレータ用駆動ユニット1Aであって、ロッド21と、ロッド21を格納する直線運動装置本体(電動シリンダ本体22)と、モータ23(例えばサーボモータ)と、モータ23の駆動によってロッド先端部21aの直線運動装置本体(電動シリンダ本体22)に対する相対的距離が伸縮する直線運動装置(電動シリンダ2)と、ロッド先端部21aと連結するゴム製自在継手3と、シミュレータ10Aを据え置くための据置具5と、ゴム製自在継手3と据置具5との間に配置された復元力のある移動機構4(スライド機構4A)と、を備える。そして、移動機構4(スライド機構4A)は、ゴム製自在継手3に固定された上部材41と、据置具5に固定された下部材42と、を有し、前記伸縮に起因する下部材(42、72b)に対する上部材41の水平方向の移動を許容すると共に、上部材41が元の水平位置(基準水平位置)に戻ろうとする復元力が働くように構成されている。
以下、「ロッド先端部21aの電動シリンダ本体22に対する相対的距離の伸縮」を、「ロッド先端部21aの伸縮」又は「ロッド伸縮」と記載する場合がある。
【0018】
[直線運動装置]
「直線運動装置」は、「直線運動機構」又は「直動機構」と言い換えることができる。直線運動装置としては、例えば、回転型モータ、モータに直結(又はタイミングベルト等を介した駆動)されたネジ軸(ボールネジ、転造ネジ、台形ネジ他)、ネジ軸に平行に配置されたリニアガイド(又はボールブッシュ、スプライン軸他)、及びネジ軸のナット部に固定されたロッドを主要構成要素とし、ロッドの先端が直線運動する直線運動装置がある。電動シリンダは直線運動装置の1つである。
【0019】
[電動シリンダ2]
直線運動装置として電動シリンダ2を用い、電動シリンダ2が、ロッド21と、ロッド21を格納する電動シリンダ本体22と、モータ23と、を有し、モータ23の駆動によってロッド先端部21aの電動シリンダ本体22に対する相対的距離が伸縮するように構成してもよい。
なお、電動シリンダは、例えば、モータ、ネジ軸、ネジ軸の回転によって直線運動するナット部、ナット部に固定されたロッド21等で構成され、モータの駆動によってロッド先端部21aが直線運動する。
【0020】
[コイルバネ24]
実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aにおいては、直線運動装置(電動シリンダ2)が、更に、ロッド21の周囲に巻かれたコイルバネ24を有することが好ましい。
円筒形状のコイルバネ24(巻ばね、弦巻ばね)は、ロッド21を囲むようにしてコイルバネホルダー24hに取り付けられる。主として本体ユニット11(及びベースフレーム12)の荷重を打ち消す圧縮コイルバネとして機能する。
なお、コイルバネ24の代わりに(又はコイルバネ24と併用して)、電動シリンダに使用されるネジ軸のリードを小さなものを使用する、モータ出力を大型化する、等してもよい。
【0021】
シミュレータ用駆動ユニット1Aについて補足説明をする。
電動シリンダ2には電動シリンダ本体22を本体ユニット11、ベースフレーム12等に取り付けしやすくするため、マウント部22mを設けてもよい。
【0022】
ロッド先端部21aは、金属製のコイルバネホルダー24hの上部に開けられた穴に入れられ、ロッド先端部21aと穴の双方に形成された雄雌ネジ穴を使ったネジによるネジ結合、接着剤による接着等で結合されている。コイルバネホルダー24hはロッド21の中心軸線(以下、「中心軸線」と記載する場合がある)を中心(円中心)とする円筒形状をしている。
コイルバネホルダー24hは、その下部の棒状突出部が、ゴム製自在継手3(中心軸線を中心とする円筒形状)の上部に開けられた穴に挿入され、棒状突出部と穴の双方に形成された雄雌ネジ穴を使ったネジによるネジ結合、接着剤による接着等で結合されている。
【0023】
ゴム製自在継手3は、ロッド先端部21aとスライド機構4A(上部材41)とを繋ぎ(結合し)、繋いだ箇所の角度が自在に変化する継手である。ロッド21が傾いた場合にはそれに追従するが、元の姿勢への復元力を有する。また、ロッド21の振動を抑制する機能を有していてもよい。ゴム製自在継手3は、例えば防振用の硬質ゴムで構成する。
ゴム製自在継手3は、スライド機構4Aの上部材41の上に配置される。ゴム製自在継手3の下部周囲には広がった裾が形成され、そこにあけられた穴にゴム製自在継手取付ネジ3sを通して上部材41に取り付けることにより、移動機構4(スライド機構4A)がゴム製自在継手3に固定される。
【0024】
[復元力のある移動機構4(スライド機構4A)]
復元力のある移動機構4は、上部材41と下部材42の他に、上部材41と下部材42との間に配置されたすべり部材43と、上からみたときすべり部材43を内側にする円の円周に沿って(上部材下面41u及び下部材上面42uにそれぞれ)装着された上磁石45と下磁石46と、を有するスライド機構4Aで構成されている。
【0025】
上部材41と下部材42は円筒形状をしており、その中心(円中心)を中心軸線が通るように配置される。すべり部材43は円柱形状(円盤形状)をしている。上部材41の外側には下向きに上部材円周上突起41p(円筒形状の壁)が形成され、下部材42の外側には上向きに下部材円周上突起42p(円筒形状の壁)が形成されている(いずれも中心軸線を中心にする円周上に形成)。上部材41の直径(上部材円周上突起41pの直径)は、下部材42の直径(下部材円周上突起42pの直径)より大きく、上部材円周上突起41pの内側に下部材円周上突起42pがあるように構成されている。
【0026】
上部材下面41dの側には上磁石45が上磁石取付ネジ45sで上部材41に装着され、下部材上面42uの側には下磁石46が下磁石取付ネジ46sで下部材42に装着されている。上磁石45及び下磁石46は円筒形状をしており、その中央の穴を介してネジ(45s、46s)で装着されている。
上磁石45及び下磁石46はそれぞれ6つで、上部材41と下部材42に、中心軸線を中心(円中心)とする径が同じ円の円周上の同じ水平位置(360度の角度を6等分した角度位置)に配置されている。
上磁石45及び下磁石46としては、所謂、フェライト磁石、サマコバ磁石、アルニコ磁石、ネオジム磁石等を用いることができる。この中でネオジム磁石は特に磁力が強力であり磁力の点で好ましい。
【0027】
また、ネオジム磁石等で構成された磁石(45、46)の表面に、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ等のメッキをしたり、エポキシ樹脂、ポリアミド合成樹脂(ナイロン)等のコーティングをしたり、それらを併用したりして、磁石を腐食、傷等から保護するようにしてもよい。
【0028】
なお、上磁石45及び下磁石46の(各々の)数は6つに限られるものではない。3つ、4つ、5つ、7つ、8つ・・等の複数でもよいが、4つ以上が好ましい。その数をnとしたとき、360度/n/2で計算される角度が、ロッド21の最大回転角度(水平方向)より大きくなるような数nにすることが好ましい。
また、上磁石45及び下磁石46は、共に中心軸線を中心(円中心)とする円で、互いに径が異なる同心円、の円周上に配置されるようにしてもよい。
【0029】
スライド機構4Aは、前記伸縮(ロッド伸縮)に起因してロッド先端部21a及び上部材41が水平方向に移動した後、上磁石45及び下磁石46の吸引による復元力で元の水平位置の方向に水平移動するように構成されている。
例えば、上磁石45は6つとも上側をN極、下側をS極にし、下磁石46も6つとも上側をN極、下側をS極にして、上磁石45と下磁石46とをそれらが互いに対向する位置に配置する。
なお、上部材41が(下部材42に対して)水平方向に移動しても、(上部材41の下部材42に対する)垂直方向(上下方向)への移動は殆どない。
以下の例では上磁石45及び下磁石46の吸引(吸引力)による復元力を用いた例で説明するが、反発(反発力)による復元力を用いてもよい。
【0030】
上磁石45と下磁石46とをこのようにすると、シミュレータ用駆動ユニット1Aは、基本的には、上磁石45・下磁石46間の吸引力で、上部材41から上の部分と、下部材42から下の部分が、すべり部材43を挟んでユニットとしてまとまった構造(一体的された構造)となる。上の部分と下の部分とは、磁力による吸引力より強い力で一方又は双方を引っ張る、上磁石45・下磁石46間に磁力を遮るようなものを挟む、等することによって分離できる。例えば、すべり部材43がすり減った場合、上の部分と下の部分とを分離して取り換えることができる。
ネオジム磁石のような磁力の強い磁石を用いると、上の部分と下の部分とは上磁石45・下磁石46間の吸引力で繋がれる。電動シリンダ本体22の上部にあるモータ23を把持し、電動シリンダ2の長軸方向が上下方向になるようにして持ち上げると、ロッド21の軸芯、上部材41の円筒中心、下部材42の円筒中心等が、中心軸線(ロッド21の中心軸線)にほぼ揃った状態で全体が上下方向に持ち上がる(いわば、
図3のように分解された状態の部品が連結した状態で上下に持ち上がる)。
【0031】
スライド機構4Aは、すべり部材上面43uの形状、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41dの形状の組み合わせ、又は、すべり部材下面43dの形状、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42uの形状の組み合わせが、平面形状及び平面形状の組み合わせ、又は凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されていることが好ましい。
例えば、表1のような組み合わせである(NO.1~4参照)。
【表1】
【0032】
表1には形状の組み合わせを例示した。いずれの組合せも使用できるが、敢えて右の「評価」欄のように評価する。「評価」は、「1」が可、「2」が良、「3」が優良であり、この順番に評価が高くなる。主として、上部材41の下部材42に対する水平方向への移動しやすさを主眼とする評価である。NO.2~3の場合、NO.1、4と比較して、若干上下動しやすい。NO.4の場合、この形状自体でも元の位置への復元作用(復帰作用)が働く。この点で、NO.4はNO.1より優れる。
【0033】
また、スライド機構4Aは、すべり部材上面43u、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41dの形状の組み合わせ、並びに、すべり部材下面43d、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42uの形状の組み合わせが、凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されていることが好ましい(NO.4参照)。
【0034】
また、スライド機構4Aは、すべり部材上面43u、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41dの曲率半径(第1曲率半径)が等しく、すべり部材下面43d、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42uの曲率半径(第2曲率半径)も等しいように構成されていることが好ましい。なお、第1曲率半径と第2曲率半径とは同じでもよいが、異なっていてもよい。
ここで、「等しい」(同じ)とは、寸分の狂いもない場合だけでなく、概等しい場合(概ね等しい場合)や実質的に等しい場合も含む。
【0035】
また、すべり部材上面43u、上部材下面41d、すべり部材下面43d、又は下部材上面42uは、その形状が前記凹状球面形状又は前記凸状球面形状である場合、曲率半径がR100~R500mmの範囲内にあるように構成されていることが好ましい。
【0036】
また、スライド機構4Aは、すべり部材43の少なくとも表面がフッ素系樹脂材で構成されていることが好ましい。フッ素系樹脂材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような完全フッ素化樹脂の他、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような部分フッ素化樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)のようなフッ素化樹脂共重合体等がある。PTFEが特に好ましい。すべり部材43全体を円柱状のフッ素系樹脂材(PTFE等)で構成してもよい。又は、円柱形状の金属板やプラスチック板の表面にフッ素系樹脂材(PTFE等)をコーティングするようにしてもよい。
また、すべり部材43の表面をフッ素系樹脂材で構成する代わりに、フッ素系樹脂材以外の材料で構成されたすべり部材43の表面に潤滑材を塗布するようにしてもよい。あるいは、フッ素系樹脂材以外の材料で構成されたすべり部材43の表面をフッ素系樹脂材で構成(コーティング等)したり、その上に更に潤滑材を塗布するようにしてもよい。
【0037】
また、スライド機構4Aは、ロッド先端部21aの伸縮状態(ロッド伸縮の状態)にかかわらず、上磁石45と下磁石46とは互いに直接接触しないように構成されていることが好ましい。
例えば、スライド機構4Aが基準位置(元の位置)にある場合、断面は、
図4(a)、(b)に示すようになっており、上磁石45と下磁石46とは近接している。しかし、すべり部材43の厚みによって、両者間には間隙dがあり互いに直接接触しないように構成されている(
図4(b)参照)。ここに示す例では、直接接触しないことを一層確かにするため、上部材41が傾いても、下部材円周上突起42pの上端が上部材下面41d(突起受け41f)に当接することにより、どのような場合でも両者が直接接触しないように構成されている。
【0038】
なお、上磁石45と下磁石46とが互いに直接接触しないことを一層確かにする構成は、このような構成に限られるものではなく、例えば、上磁石45の下面を上部材下面41dより引き込んだ構成にする、及び/又は、下磁石46の上面を下部材上面42uより引き込んだ構成にする、ようにしてもよい。
【0039】
また、スライド機構4Aの上部材41及び下部材42は、少なくとも上磁石45及び下磁石46の周囲(周辺)が非磁性材で構成されていることが好ましい。
非磁性材としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼、高ニッケル合金等の非磁性鋼、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン他)、銅等の非磁性材がある。例えば、上部材41及び下部材42をアルミニウム(又はアルミニウム合金)とすることによって、上磁石45及び下磁石46の周囲を非磁性材で構成するようにしてもよい。アルミニウム(又はアルミニウム合金)で構成すると軽量化が可能になる。
なお、上磁石取付ネジ45sや下磁石取付ネジ46sは、非磁性材(アルミニウム等)であってもよいが、磁性材(鉄、ステンレス等)であってもよい。
【0040】
また、
図4(a)、(b)等に示すように、スライド機構4Aは、更に、上からみたときすべり部材43を内側にする円(すべり部材43が円内に入る円)の円周に沿って(上部材下面41dに)設けられた上部材円周上突起41pと、(下部材上面42uに設けられた)下部材円周上突起42pと、を有し、上部材円周上突起41pの円弧と、下部材円周上突起42pの円弧とを、一方が他方の内側になるような異なる径で構成し、上部材円周上突起41p及び下部材円周上突起42pは、上部材41が下部材42に対して水平方向に移動すると、上部材円周上突起41p及び下部材円周上突起42pが互いに当たる(接触する、衝突する)ことにより、それ以上の移動を制限するように構成することができる。
【0041】
上部材41が下部材42に対して水平方向に移動するとそれ以上の移動が制限されるようにするには、例えば、上部材円周上突起41pと下部材円周上突起42pとが、所定の範囲gで重なるように構成すればよい(
図4(a)参照)。
【0042】
また、スライド機構4Aは、上部材41が下部材42に対して傾くことにより、下部材円周上突起42pが上部材下面41dに当たる箇所(上部材41の径が下部材42の径より小さくなるように構成した場合には、上部材円周上突起41pが下部材上面42uに当たる箇所)に設けられた突起受け41fを更に有し、当該突起受け41fはフッソ系樹脂材で構成するようにしてもよい。
【0043】
[スライド機構4Aの作用]
図5~
図6を用いてスライド機構4Aの作用について説明する。主として、下部材42に対する上部材41の水平方向の移動に関して説明する。
図5は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(水平移動)を説明するために示す図(スライド機構4Aの部分の模式平面図)であり、
図5(a)は上部材41が基準水平位置(元の水平位置)にある場合を示す。
図5(b)に示すように、上部材41が下部材42に対して右方向に移動した場合、上磁石45及び下磁石46の吸引力で、上部材41が元の水平位置(
図5(a))に戻ろうとする復元力が働く。上部材41が左方向に移動した場合も同様である。
図5(c)に示すように、上部材41が下部材42に対して右回転方向に回転移動した場合、上磁石45及び下磁石46の吸引力で、上部材41が元の水平位置(
図5(a))に戻ろうとする復元力が働く。上部材41が左回転方向に回転移動した場合も同様である。
【0044】
図6は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(水平移動)を説明するために示す図(スライド機構4Aの部分の模式断面図)であり、
図6(a)は上部材41が基準水平位置(元の水平位置)にある場合を示す。
図6(b)に示すように、上部材41が下部材42に対して右方向に少し移動した場合、上磁石45及び下磁石46の吸引力で、上部材41が元の水平位置(
図6(a))に戻ろうとする復元力が働く。
【0045】
図6(c)に示すように上部材41が下部材42に対して右方向に最大限移動した場合や、
図6(d)に示すように上部材41が下部材42に対して左方向に最大限移動した場合も、上磁石45及び下磁石46の吸引力で、上部材41が元の水平位置(
図6(a))に戻ろうとする復元力が働く。
ここで、上部材下面41d・すべり部材上面43u又はすべり部材下面43d・下部材上面42uの組合せが、凹面・凸面の組合せであると、この形状自体でも元の位置への復元作用(復帰作用)が働くため、元の水平位置に復元(復帰)しやすい。
【0046】
なお、
図6(c)や
図6(d)に示すように、上部材41が右方向又は左方向に最大限移動した場合、下部材円周上突起42pの外壁が上部材円周上突起41pの内壁に当たってそれ以上の水平方向への移動を妨げるように構成(上部材41の径が下部材42の径より小さくなるように構成した場合には、上部材円周上突起41pの外壁が下部材円周上突起42pの内壁に当たってそれ以上の水平方向への移動を妨げるように構成)してもよい。
換言すると、ロッド伸縮が最大であっても上部材41の水平移動範囲が所定内となるように構成したり、必要以上の移動量が発生した場合であってもそれ以上の移動ができないように構成してもよい。
なお、上磁石45、下磁石46等は、事前に設定された各ロッド伸縮量の差がロッド伸縮が最大であっても元の水平位置に復帰できるように、所定位置に配置されている。
【0047】
図7は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aの作用(傾いた場合)を説明するために示す図(スライド機構4Aの周辺の断面図)である。
ロッド21が左に傾くと、上部材41の右側が浮き上がって、上部材41が左に傾く。また、ゴム製自在継手3の左側(縦方向)も少し縮む。このようにしてロッド21の傾きが吸収される。ゴム製自在継手3には傾き(傾斜)を吸収する機能がある。
そして、右側の上磁石45と下磁石46との吸引力で、上部材41が元の傾き(傾きのない状態)に戻ろうとする復元力が生ずる。また、ゴム製自在継手3によっても、左側の縮んだ箇所が元の長さに戻ろうとする復元力が生ずる。
【0048】
なお、
図7のように、上部材41が傾いても、右側の上磁石45と下磁石46の吸引力で、上部材41が下部材42から外れ難くなっている(上部材41が下部材42との繋がりを断ちにくくなっている)。上部材41が傾いても、下部材円周上突起42pの外壁が上部材円周上突起41pの内壁に当たるように構成されていると、上部材41が下部材42から一層外れ難くなる。
【0049】
[シミュレータ10Aの作用]
図8は、実施形態1に係るシミュレータ10Aの作用を説明するために示す図であり、
図8(a)は本体ユニット11を支える4つのシミュレータ用駆動ユニット1Aのうち、図面手前側の左右のロッド先端部21aが電動シリンダ本体22に対する相対的距離を縮め、図面向こう側のロッド先端部21aは同距離を伸ばした場合のシミュレータ10Aの外観を示す図である。
図8(b)は
図8(a)に図示されるシミュレータ10Aを右側から見た外観を示す図である。
【0050】
図8(b)に示されるように、図面左側のロッド先端部21aの前記距離が縮み(ストロークが短い)、図面右側のロッド先端部21aの前記距離が伸びている(ストロークが長い)場合、ベースフレーム12と縮んだロッド21と伸びたロッド21との間で、図に示すような、辺S1と辺S2と辺S3の3つの辺を有する三角形を描くことができる。辺S1(左右の電動シリンダ2の取り付け間距離に相当、固定長)と辺S2(ロッド21、伸縮、長さが可変)とで挟まれた角が直角(固定角度)で、辺S1の長さが固定されている直角三角形である。辺S3は、左右の電動シリンダ2の設置床側の先の部分を結ぶ辺である。
図8(b)では、左側の電動シリンダ2が最も縮んだ状態で説明しているが、辺S2は、左右の電動シリンダ2の伸縮差(ストローク差)によって構成される三角形の一辺としても同様の事となる。
【0051】
辺S2の長さが伸縮する(伸び縮みする、ロッド伸縮する)と、辺S3も伸縮しようとするが、上部材41が下部材42に対して水平移動するため、水平方向に働く力が吸収される。
また、辺S2の長さが伸縮すると、辺S2と辺S3とで形成される角度も変化しようとするが、上部材41が下部材42に対して傾くことによって角度変化が吸収される。更には、ゴム製自在継手3の伸縮も加わって傾きが吸収される場合もある。これらは復元力があり、傾きのない元の状態に戻ろうとする。
【0052】
辺S2の長さが伸縮すると(ロッド伸縮すると)、それに対応して辺S3の長さが伸縮するが、そうするには、電動シリンダ2の先の部分(設置床側)が水平方向に移動する(据置具5の上を移動する、又は据置具5と共に設置床上を移動する)必要がある。本体ユニット11等(搭乗者の体重等も加わる)には相当な重量があるため、電動シリンダ2の先の部分が移動したときにロッド先端が容易に水平移動できない場合には、大きな振動、ガタツキ、不快な搭乗体験等を生じる。また、電動シリンダ2のモータ23は大きな出力を必要とする事になると共に電動シリンダ2のロッド軸に過大なラジアル方向の負荷がかかり、最悪、短時間での損傷につながることも考えられる。
一方、電動シリンダ2の先の部分を、設置床に固定する等して、水平方向に移動しないようにすると、左右の電動シリンダ2のストローク差によって形成される本体を傾斜させるような動きは、構成するフレームが剛体である限り不可能となる。
しかし、実施形態1によれば、上部材41が下部材42に対して水平移動するため、辺S3の伸縮が容易になり、上部材41が大きく傾斜するような動作も容易に実現でき、シミュレーション体験がより迫力のある実際の動作に近づけることができる。
【0053】
一部繰り返しになるが、上述した内容を簡単に説明すると、本体ユニット11(ベースフレーム12)を傾けるためにロッド伸縮すると、辺S2の長さが伸縮するが、上部材41が水平方向に移動することによって水平方向の負荷を吸収する。
なお、傾きについては、ゴム製自在継手3が傾きを吸収するが、一部の傾きは上部材41が傾くことによって吸収することが可能である。なお、ゴム製自在継手3や上部材41には元の傾きに戻ろうとする復元力が働く。
また、上部材41には、前述のスライド機構4Aの磁石(45、46)による復元力が有効に作用し、床面と接している据置具5に対して、上部材41が常に基準位置に戻ることができるようになっている。このためスライド機構4Aに設けられた左右の許容ストローク量が確保されることにより、辺S3の伸縮を常に可能な状態にすることができる。
【0054】
図9は、実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aのカバー6を説明するために示す図である。
図9に示すように、シミュレータ用駆動ユニット1Aは、更に、スライド機構4Aを覆うカバー6を備えることが好ましい。
カバー6は、カバー本体6aがゴム製の蛇腹構造をしている。例えば、カバー本体6aは、上部材41及び下部材42の側壁に金属バンド6bを用いて装着される。
スライド機構4Aはカバー本体6a内を自由に動くことができる。
【0055】
[その他の構成]
据置具5としては、例えば、床側面に滑り止めパターンが形成されたゴムパッドを用いることができる。据置具5は、必要に応じて、据置具取付ネジ5bで下部材42に取り付けられる。据置具取付ネジ5bを用いる代わりに、又はそれと併用して、接着剤で取り付け等してもよい。据置具5としてゴムパッドを用いるとシミュレータ10の振動が床に伝わりにくくなる。また、傾きの一部を吸収できる場合もある。
【0056】
[実施形態1の効果]
実施形態1に係るシミュレータ用駆動ユニット1Aによれば、ゴム製自在継手3と据置具5との間に復元力のある移動機構4(スライド機構4A)が配置され、当該移動機構4は、ゴム製自在継手3に固定された上部材41と、据置具5に固定された下部材42と、を有し、ロッド伸縮に起因する下部材42に対する上部材41の水平方向の移動を許容すると共に、上部材41が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されているため、急激な加減速等が再現されても、シミュレータ用駆動ユニット1Aのロッド21にかかる水平方向の大きな負荷(ラジアル方向の負荷)を低減することが可能となる。また、ロッド21の水平方向の負荷を気にせず急激な加減速等の再現が可能であるため、乗り物の挙動の再現性が損なわれることを抑制できる。
そのため、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、シミュレータ用駆動ユニット1Aのロッド21にかかる水平方向の負荷を低減することが可能なシミュレータ用駆動ユニット1Aを提供することが可能となる。
【0057】
なお、ロッド先端部21aにはゴム製自在継手3が連結され、上部材41がゴム製自在継手3に固定される構成であるため、ゴム製自在継手3によって、シミュレータ10Aが設置された設置床への振動が抑制される。また、本体ユニット11(ベースフレーム12)の傾き(傾斜角度)へのスムーズな対応が可能となる。
【0058】
また、次のいずれかの効果を奏することも可能である。
(a)電動シリンダ2のモータ23の出力トルクの低減
シミュレータ10Aでは、本体ユニット11(ベースフレーム12)を支えるシミュレータ用駆動ユニット1Aのロッド先端部21aの伸縮する長さの差によって、本体ユニット11が傾く。そのような場合であっても、下部材42に対する上部材41の水平方向の移動が許容されるため、傾く際に生ずる水平方向の負荷の一部を機械的な水平移動によって逃がすため、電動シリンダ2のモータ23の出力トルクを低減できる。
そして、一層小さなモータ23で迫力あるシミュレーション動作を可能にすることができる。シミュレータ10A全体の省電力化にもなり、その設置場所を大電力使用が可能な業務用ゲームセンターに限ることなく、一般家庭等にも広げることが可能となる。
【0059】
(b)騒音低減
シミュレータ用駆動ユニット1Aが水平方向に移動できる構造でないと、シミュレータ10Aが設置床上を移動する、浮き上がる、又はシミュレータ10Aがガタつく等によって、騒音を発生しやすいが、移動機構4(スライド機構4A)によって水平方向の負荷の一部を機械的な水平移動で逃がすため、騒音が低減される。
【0060】
(c)安定感
急激な加速、減速、傾き等のドライビングシミュレーションが行われても、移動機構4(スライド機構4A)によって水平方向の負荷の一部を機械的な水平移動で逃がされ、その後、復元力でスムーズに元の水平位置に戻るため、本体ユニット11に搭乗した時にガタのない安定感のあるシミュレーション体験が可能となる。
また、各スライド機構4Aに組み込まれた復元力発生のための構造により、シミュレータに乗車する時の姿勢がふらつくことなく安定した状態で乗降することができる。また、シート座席に座った状態でもふらつきやガタのない安定した姿勢が保て乗り心地も向上する。
【0061】
(d)体感性向上
本体ユニット11を支える電動シリンダ2のロッド伸縮の差を大きくすることができ、シミュレーションの体感性を向上することが可能となる(迫力のある動作等が可能)。4軸駆動の場合には、ドライブシミュレータに必要なピッチング動作やローリング動作、更には疑似的なヨーイング動作を容易に再現できる。
【0062】
また、直線運動装置(
図2の電動シリンダ2参照)が、ロッド21の周囲に巻かれたコイルバネ24を更に有すると、本体ユニット11(及びベースフレーム12)の荷重を打ち消すことが容易になる。
また、コイルバネ24の代わりにモータ23で同様な制御をおこなう場合に比較して消費電力を低減することが可能となる。
【0063】
また、直線運動装置として電動シリンダ2を用いると、入手しやすい、ロッド伸縮等の制御が容易等の利点を有する。
また、電動シリンダ2を、ロッド21と、ロッド21を格納する電動シリンダ本体22と、モータ23と、を有し、モータ23の駆動によってロッド先端部21aの電動シリンダ本体22に対する相対的距離が伸縮するように構成すると、シミュレータ用駆動ユニット1Aを容易に構成することが可能となる。
【0064】
また、復元力のある移動機構4がスライド機構4Aで構成され、当該スライド機構4Aが、上部材41と下部材42の他に、上部材41と下部材42との間に配置されたすべり部材43と、上からみたときすべり部材43を内側にする円周に沿って上部材下面41u及び下部材上面42uにそれぞれ装着された上磁石45と下磁石46と、を有するように構成すると、シンプルな構成にすることが可能となる。
また、上磁石45と下磁石46とを対向させ、互いに引き付け合うように配置すると、磁石に鉄材を吸着させる状態に類似した状態となり、減磁を抑制することが可能となる。
【0065】
また、スライド機構4Aが、前記伸縮に起因してロッド先端部21a及び上部材41が水平方向に移動した後、上磁石45及び下磁石46の吸引による復元力で元の水平位置の方向に水平移動するように構成されていると、磁力の吸引力を復元力に利用したスムーズな元の水平位置への復帰(復元)が可能となる。
【0066】
また、スライド機構4Aは、すべり部材上面43uの形状、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41dの形状の組み合わせ、又は、すべり部材下面43dの形状、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42uの形状の組み合わせが、平面形状及び平面形状の組み合わせ、又は凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されていると、すべり部材43が上部材41・下部材42間をすべりやすくなり、上部材41の下部材42に対する水平方向への移動が一層容易になる。
【0067】
また、スライド機構4Aは、すべり部材上面43u、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41dの形状の組み合わせ、並びに、すべり部材下面43d、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42uの形状の組み合わせが、凸状球面形状及び凹状球面形状の組み合わせ、となるように構成されていると(表1、NO.4参照)、すべり部材43が上部材41・下部材42間を水平方向に移動した後の復帰が一層容易になる。NO.4の場合、この形状自体でも元の位置への復元作用(復帰作用)が良好に働くためである。また、上部材41が下部材42に対して傾いた場合の復帰も一層容易になる。
【0068】
また、スライド機構4Aは、すべり部材上面43u、及び当該すべり部材上面43uに対向する上部材下面41d、の曲率半径が等しく、すべり部材下面43d、及び当該すべり部材下面43dに対向する下部材上面42u、の曲率半径が等しいように構成されていると、対向する面が密着するため、すべり部材43が上部材41・下部材42間を一層すべりやすくなる。また、上下方向(中心軸線方向)の負荷(又は重量)を一層支えやすくなる。
【0069】
また、すべり部材上面43u、上部材下面41d、すべり部材下面43d、又は下部材上面42uは、その形状が前記凹状球面形状又は前記凸状球面形状である場合、曲率半径がR100~R500mmの範囲内にあるように構成されていると、すべり部材43の水平方向の移動を一層スムーズにすることができる。通常、電動シリンダ2の長さはロッド伸縮が最も伸びた場合でも50cm~200cm(ロッド先端部21aまで含めた長さ)の範囲内にあり、上部材41、下部材42及びすべり部材43の直径は2cm~20cmの範囲内にあるため、上述の曲率半径はそれらに比べて比較的大きいが、このような曲率半径にすると、シミュレータ10Aの挙動に対応する上部材41の水平方向への移動(復帰を含む)を一層スムーズにすることが可能になる。
なお、曲率半径はR200~R400mmの範囲内であることが一層好ましい。
【0070】
また、スライド機構4Aは、すべり部材43の少なくとも表面がフッ素系樹脂材で構成されていると、摩擦係数を小さくでき、水平方向の移動に必要な力を小さくすることが可能となる。
【0071】
また、スライド機構4Aは、すべり部材43が、ロッド先端部21aの伸縮状態にかかわらず、上磁石45と下磁石46とが互いに直接接触しないように構成されていると、上部材41の水平方向の移動及び復帰が一層容易になる。上磁石45と下磁石46とが一旦直接接触すると相互に引き合う磁力が強力に働くため引き離すのが困難になるが、直接接触しないように構成されていると、シミュレーション指令に対応した上部材41の移動を一層スムーズ又は迅速におこなうことが可能になるためである。
【0072】
また、スライド機構4Aの上部材41及び下部材42は、少なくとも上磁石45及び下磁石46の周囲(周辺)が非磁性材で構成されていると、磁石(45、46)の磁力によって周囲が磁化することがなく、周囲が磁化することによって生ずる本来の基準位置のズレ、誤動作等を抑制することが可能となる。
また、磁石(45、46)の磁力の長期間の維持が一層容易になる(減磁を抑制できる)。
【0073】
なお、磁石(45、46)の中心(円中心)に配置されたネジ(45s、46s)を磁性材(鉄、ステンレス等)で構成すると、磁石に鉄等がとりついたのと類似した状態となり、磁石(45、46)が一層減磁しにくくなる。
また、上部材41及び下部材42の一方又は双方を非磁性材であるアルミニウムで構成すると、スライド機構4Aを軽量化できる。
【0074】
またスライド機構4Aが、上からみたときすべり部材43を内側にする円の円周に沿って(上部材下面41dに)設けられた上部材円周上突起41pと、(下部材上面42uに設けられた)下部材円周上突起42pと、を更に有し、上部材円周上突起41pの円弧と、下部材円周上突起42pの円弧とは、一方が他方の内側になるような異なる径で構成され、上部材円周上突起41p及び下部材円周上突起42pは、上部材41が下部材42に対して水平方向に移動すると、上部材円周上突起41p及び下部材円周上突起42pが互いに当たることにより、それ以上の移動が制限されるように構成されていると(
図4等参照)、例えば、大きな径の方を、水平方向の最大移動量に対応する径にした場合、上部材41が下部材42に対して水平方向に最大移動量移動したとき、上部材円周上突起41pと下部材円周上突起42pとが当たってそれ以上の移動を制限されるため、最大移動範囲内でのスムーズな移動や復帰が可能となる等の作用効果を奏することが可能となる。
【0075】
また、スライド機構4Aは、上部材41が下部材42に対して傾くことにより、下部材円周上突起42pが上部材下面41dに当たる箇所(上部材41の径が下部材42の径より小さくなるように構成した場合には、上部材円周上突起41pが下部材上面42uに当たる箇所)に設けられた突起受け41fを更に有し、当該突起受け41fがフッソ系樹脂材で構成されていると、例えば、シミュレータの始動時のように、急に水平方向の力がかかる場合であっても、上部材円周上突起41p・下部材上面42u間の摩擦や、下部材円周上突起42pは上部材下面41d間の摩擦が小さいため、上部材41は水平方向に迅速に移動することが可能となる。
【0076】
また、上部材41が下部材42に対して傾くことにより、上部材円周上突起41pが下部材上面42uに当たる箇所、又は下部材円周上突起42pが上部材下面41dに当たる箇所に、フッ素系樹脂材で構成された突起受け41fがあると、シミュレーションが急激な動作、頻繁な揺れ等による傾きを生ずるものであっても、摩擦係数が小さな突起受け41fによって、衝突を緩和させること、衝突音(摩擦音)を小さくすること、又は衝突等に対する耐久性を向上させること、が可能となる。
【0077】
また、シミュレータ用駆動ユニット1Aが、更に、スライド機構4Aを覆うカバー6を備えると(
図9参照)、埃、ゴミ等が、すべり部材43・上部材41間や、すべり部材43・下部材42間に入り込むことによる移動の阻害を抑制できる。
また、スライド機構4Aは磁石(45、46)を有するため細かな鉄片等を引き寄せやすく、何等かの拍子それらが上磁石45・下磁石46間に入り込むことによる作動不良を抑制できる。
【0078】
なお、スライド機構4Aは、通常、上下運動はあまりなく、水平移動が多く、カバー6の内部の体積変化はあまりなく、フイゴのようになることも少ないため、カバー6がカバー6の外部のごみを吸い込んだり、内部のごみを外部に噴き出すこともあまりない。従って、カバー6があると、外部の粉塵等によるスライド機構4Aの動作不具合を一層抑制し、一層長期的に良好な動作を維持することが可能となる。
【0079】
実施形態1に係るシミュレータ10Aによれば、シミュレータ用駆動ユニット1Aと、シミュレータ用駆動ユニット1Aで支持される本体ユニット11と、を備えるため、シミュレータ用駆動ユニット1Aで述べたと同様の理由で、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、シミュレータ用駆動ユニット1Aのロッド21にかかる水平方向の負荷を低減することが可能である。また、水平方向の負荷が低減される(負荷の一部を逃がす)ため、モータ23の駆動トルクが低減でき、モータ23やシミュレータ10A全体の消費電力も小さくできる。
そのため、乗り物の挙動の再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、シミュレータ用駆動ユニット1Aのロッド21にかかる水平方向の負荷を低減すると共に、駆動トルクの低減を可能にした消費電力の小さいシミュレータ10Aを提供することが可能となる。
【0080】
[実施形態2]
図10は、実施形態2に係るシミュレータ10B及びシミュレータ用駆動ユニット1Bを説明するために示す図で、
図10(a)はシミュレータ10Bの外観図で、
図10(b)はシミュレータ用駆動ユニット1Bの構造説明図(断面図)である。
実施形態2に係るシミュレータ10B及びシミュレータ用駆動ユニット1Bは、基本的には、実施形態1に係るシミュレータ10A及びシミュレータ用駆動ユニット1Aと同様であるが、実施形態1では復元力のある移動機構4がスライド機構4Aで構成されているのに対し、実施形態2では復元力のある移動機構4がリニア軸受機構7Aで構成されている点が異なる。
【0081】
詳しく説明すると、シミュレータ用駆動ユニット1Bは、第1ブロック71aと、第1ブロック71aの移動を支持する第1レール71bと、第1レール71bの方向に沿って第1ブロック71aの両側に設けられた第1バネ71c及び第2バネ71dと、を有する第1玉循環リニア軸受71と、第2ブロック72aと、第2ブロック72aの移動を支持する第2レール72bと、第2レール72bの方向に沿って第2ブロック72aの両側に設けられた第3バネ72c及び第4バネ72dと、を有する第2玉循環リニア軸受72と、を備えたリニア軸受機構7Aで構成され、前記リニア軸受機構7Aは、第1玉循環リニア軸受71を上にし、第2玉循環リニア軸受72を下にして、上からみたときに第1レール71bの方向と第2レール72bの方向とが交差するように積層され、第1ブロック71aを上部材とし、第2レール72bを下部材とする。
上記以外の点については、実施形態2においても実施形態1で説明した態様がそのまま適用される。
【0082】
実施形態2に係るシミュレータ用駆動ユニット1Bによれば、第1玉循環リニア軸受71の第1レール71bの方向に水平方向の荷重がかかる場合は、第1ブロック71aがその方向に移動してその荷重(の一部)を吸収する。その後、第1ブロック71aの両側に設けられた第1バネ71c及び第2バネ71dの元の水平位置へ復帰させる復元力を発揮する。第2玉循環リニア軸受72も同様である。第1玉循環リニア軸受71を上にし、第2玉循環リニア軸受72を下にして、上からみたときに第1レール71bの方向と第2レール72bの方向とが交差するように積層されているから、どの水平方向にも対応できる。第1ブロック71aを上部材とし、第2レール72bを下部材とすることによって、急激な加減速等を再現しても、駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の大きな負荷(ラジアル方向の負荷)を低減することが可能等、移動機構4としてスライド機構4Aを用いた場合と同様の効果を奏する。
上記以外の点については、実施形態2においても実施形態1で説明した態様がそのまま適用される。
【0083】
なお、実施形態2では、第1ブロック71aの両側に設けられた第1バネ71c及び第2バネ71d(又は、第2ブロック72aの両側に設けられた第3バネ72c及び第4バネ72d)のバネ力にばらつきが生じやすいこと、又は構造が複雑なこと、又は移動機構が大型化しやすいこと、又はロッドに大きな負荷がかかったときに据置具5が床から離れやすいこと等があり、少なくともこれらの1つの点で実施形態1の方が優れる。
【0084】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能である。例えば、下記に示すような変形も可能である。
【0085】
(1)実施形態1においては、上磁石45は全て上側をN極、下側をS極にし、下磁石46も全て上側をN極、下側をS極とする配置にしたが、例えば、上磁石45は、「上側N極・下側S極」の隣が「上側S極・下側N極」となるように、交互に磁極配置を入れ替え、下磁石46は、「上側N極・下側S極」の隣が「上側S極・下側N極」となるように、交互に磁極配置を入れ替えた配置(上磁石45と下磁石46の相対する磁極は互いに異なる磁極)としてもよい。
【0086】
(2)実施形態1においては、上磁石45及び下磁石46は全て「上側N極・下側S極」のように、各々の磁石の一対の磁極(N極とS極)が上下方向となるような配置にしたが、各々の磁石の一対の磁極が平面の円周方向となるような配置にしてもよい。例えば、上磁石45は、平面内で一対の磁極「N極・S極」の円周方向隣に一対の磁極「N極・S極」を配置するようにし、上磁石45に対向する下磁石46は、平面内で、一対の磁極「S極・N極」の円周方向隣に一対の磁極「S極・N極」を配置するように(上磁石45と下磁石46の対向する磁極は互いに異なる磁極)、言わばリング状に配置してもよい。
【0087】
(3)実施形態1においては、すべり部材43の少なくとも表面をフッ素系樹脂材とする構成を説明したが、更に、すべり部材43、上部材下面41d、又は下部材上面42uのいずれか又は全部に潤滑剤を塗布してもよい。このようにすると、更に低摩擦化が可能となる。また摩耗防止も可能となる。なお、これらの表面に細かな多数の突起又は溝を設けておくと、潤滑剤の保持性がよくなる。
【0088】
(4)実施形態1においてはゴム製自在継手3を用いたが、その代わりに、例えば、(a)コイルバネ(圧縮バネ)を用い、軸芯線方向を上下方向にしたコイルバネの上の穴にロッド先端部21aを入れ、下を上部材41に固定する、(b)ステンレス棒とそれを支えるバネを用い、長手方向を上下方向にしたステンレス棒の上に形成した穴にロッド先端部21aを入れて固定し、ステンレス棒の下部は上部材41の上に形成した穴(ステンレス棒が多少揺動できる穴)に入れて、ステンレス棒を複数のバネで支柱のように支える、等の姿勢揺動装置を用いてもよい。
【0089】
(5)実施形態1においてはゴム製自在継手3を用いたが、傾き(傾斜)を吸収する機能の代わりに、据置具5として、大きな厚さのゴムパッドを用いるようにしてもよい。又は、ゴム製自在継手3と、大きな厚さのゴムパッドの据置具5とを併用するようにしてもよい。この場合、ゴム製自在継手3を無くしてコイルバネホルダー24hを上部材41に固定する。又は、ゴム製自在継手3を金属で構成しゴムのように曲がらないようにする、等の構造にすることもできる。
【0090】
(6)本明細書に記載の電動シリンダ2は、「モータ23の駆動によってロッド先端部21aの電動シリンダ本体22に対する相対的距離が伸縮するように構成してもよい」は、「モータ23の駆動によってロッド先端部21aの電動シリンダ本体22に対する相対的距離が増減又は変化するように構成してもよい」と言い換えることもできるし、「モータ23の駆動によって電動シリンダ2の長手方向に沿って電動シリンダ2が伸縮するように構成してもよい」と言い換えることもできる。
【0091】
(7)本明細書において、「ゴム製自在継手3と据置具5との間に配置された復元力のある移動機構4」は、「ゴム製自在継手3と据置具5との間に配置され、電動シリンダ2の長軸に沿ってロッド21が移動する際にロッド先端部21aが水平方向に移動するのを復元力をもって規制する移動規制機構(スライド機構4A、リニア軸受機構7A)」と言い換えることもできる。
【0092】
(8)実施形態1、2においては、本発明を、シミュレータ用駆動ユニット1A、2B(及びシミュレータ10A、10B)で説明したが、本発明は必ずしも「シミュレーション用」(シミュレータ)に限定されるものではない。例えば、リハビリのような「医療用」(医療装置)、「運動用」(運動装置)、「遊具用」(遊具)、搬送等の「工場用」(工場装置)、「ロボット用」(ロボット)等の駆動ユニットにも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1A…シミュレータ用駆動ユニット(第1実施形態)、1B…シミュレータ用駆動ユニット(第2実施形態)、2…電動シリンダ(直線運動装置)、21…ロッド、21a…ロッド先端部、22…電動シリンダ本体(ケース、直線運動装置本体)、22m…マウント部、23…モータ、24…コイルバネ、24h…コイルバネホルダー、3…ゴム製自在継手、3s…ゴム製自在継手取付ネジ、4…移動機構、4A…スライド機構(移動機構)、41…上部材、41d…上部材下面 、41f…突起受け 、41p…上部材円周上突起、42…下部材、42p…下部材円周上突起、42u…下部材上面、43…すべり部材、43u…すべり部材上面、43d…すべり部材下面、45…上磁石、45s…上磁石取付ネジ、46…下磁石、46s…下磁石取付ネジ、d…間隙、5…据置具、5b…据置具取付ネジ、6…カバー、6a…カバー本体、6b…金属バンド、7A…リニア軸受機構(移動機構)、71…第1玉循環リニア軸受、71a…第1ブロック(第1キャリッジ)、71b…第1レール、71c…第1バネ、71d…第2バネ、71e…第1ベース、72…第2玉循環リニア軸受、72a…第2ブロック(第2キャリッジ)、72b…第2レール、72c…第3バネ、72d…第4バネ、72e…第2ベース、10A…シミュレータ(ドライビングシミュレータ、第1実施形態)、10B…シミュレータ(ドライビングシミュレータ、第2実施形態)、11…本体ユニット、12…ベースフレーム(シャーシ)
【要約】
【課題】再現性が大幅に損なわれることを抑制しながら、駆動ユニットのロッドにかかる水平方向の負荷を低減することが可能なシミュレータ用駆動ユニットを提供すること。
【解決手段】本発明のシミュレータ用駆動ユニット1は、シミュレータ10の本体ユニット11を支持するシミュレータ用駆動ユニット1であって、モータ23の駆動によってロッド先端部21aの直線運動装置本体22に対する相対的距離が伸縮する直線運動装置2と、ロッド先端部21aと連結するゴム製自在継手3と、据置具5と、ゴム製自在継手3と据置具5との間に配置された復元力のある移動機構4と、を備え、移動機構4は、ゴム製自在継手3に固定された上部材41と、据置具5に固定された下部材42と、を有し、前記伸縮に起因する下部材42に対する上部材41の水平方向の移動を許容すると共に、上部材41が元の水平位置に戻ろうとする復元力が働くように構成されている。
【選択図】
図2