(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】インモールド成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240209BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/14
(21)【出願番号】P 2023551693
(86)(22)【出願日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2023019190
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312003595
【氏名又は名称】タカハタプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇
(72)【発明者】
【氏名】北山 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 英明
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 清
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-148554(JP,A)
【文献】特開2018-024141(JP,A)
【文献】特開平06-091660(JP,A)
【文献】特開2000-263590(JP,A)
【文献】特開2011-187690(JP,A)
【文献】特開2009-190359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート体を樹脂成形用の金型内に配置し、前記金型内に射出される樹脂と前記インサート体とを一体成形するインモールド成形方法であって、
前記インサート体に厚み方向に貫通する第1開口部を形成するインサート体準備工程と、
シート状体に平面視で前記第1開口部の一部または全部と重なって前記第1開口部と連通する第2開口部を形成するシート状体準備工程と、
前記第1開口部と前記第2開口部を位置合わせして貼り合わせた前記シート状体と前記インサート体をキャビティが形成されていない一方の金型の平坦面で保持して前記金型内の所定位置に配置する位置決め工程と、
前記シート状体と前記インサート体が配置された状態で前記金型を閉める型締め工程と、
型締めした前記金型内に樹脂を射出し、前記第1開口部を貫通して前記第2開口部
内に前記樹脂を充填させて
前記インサート体の厚み方向と交差する水平方向に広がり前記インサート体を厚み方向
で押さえ
る押さえ形状を形成して前記樹脂と一体成形する成形工程と、
前記金型を開いて前記シート状体を前記樹脂と一体成形された前記インサート体から剥離して除去する剥離工程と、を含む、
ことを特徴とするインモールド成形方法。
【請求項2】
前記シート状体は前記インサート体と貼り合わせる面に弱粘着強度を有する弱粘着層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形方法。
【請求項3】
前記インサート体準備工程において、前記第1開口部の周囲に前記インサート体の裏面と密着して前記樹脂の侵入を規制する進入規制体を更に設ける、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のインモールド成形方法。
【請求項4】
インサート体を樹脂成形用の金型内に配置し、前記金型内に射出される樹脂と前記インサート体とを一体成形するインモールド成形方法であって、
前記インサート体に孔を形成するインサート体準備工程と、
軸部を有し前記樹脂の流路となる第1貫通孔及び前記第1貫通孔と交差する方向で前記第1貫通孔と連通して前記樹脂の流路となる第2貫通孔が形成されたボス状体を形成するボス状体準備工程と、
前記ボス状体の前記軸部を前記インサート体の前記孔にはめ込んで前記ボス状体と前記インサート体を前記金型内の所定位置に配置する位置決め工程と、
前記ボス状体と前記インサート体が配置された状態で前記金型を閉める型締め工程と、
型締めした前記金型内に前記樹脂を射出し、前記第1貫通孔から前記第2貫通孔に前記樹脂を貫通させて前記インサート体に前記ボス状体を埋没させた状態で前記インサート体と前記樹脂とを一体成形する成形工程と、を含む、
ことを特徴とするインモールド成形方法。
【請求項5】
前記ボス状体は、前記インサート体の前記孔よりも大きい鍔部を有し、前記軸部が前記インサート体の前記孔にはめ込まれた状態で前記鍔部が前記インサート体の一面と弱粘着強度を有する弱粘着層を介して密着する、
ことを特徴とする請求項
4に記載のインモールド成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のインサート体が、該インサート体の構成樹脂よりも融点の高い樹脂材料からなる板状の成形品本体に対して、インサート成形によって一体的に接合されてなるインサート成形品の製造方法であって、インサート体として、成形品本体に対する接合面に凹所が設けられてなるものを準備する工程と、インサート体が収容配置される収容部と、成形品本体を成形する、該成形品本体に対応した形状の成形部とからなる成形キャビティが内部に形成される成形用型であって、該成形キャビティの該収容部内への該インサート体の収容状態下で、該成形品本体の該インサート体との接合部を形成する、該成形部のうちの接合部形成部分が、該成形部のうちの該接合部形成部分以外の部分の流路幅よりも、少なくとも該インサート体の前記凹所の深さの分だけ大きくされた流路幅を有する部分を含んで構成されたインサート成形用型を準備する工程と、該インサート成形用型の内部に形成される成形キャビティの収容部内に、インサート体を収容した後、該成形キャビティの成形部内に、成形品本体の構成樹脂を溶融状態で導入して、インサート成形を行うことにより、該成形品本体を成形すると共に、該成形品本体に対して該インサート体を一体的に接合する工程と、を含むインサート成形品の製造方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
基体シートと、基体シート上に形成された回路パターンと、回路パターン以外の領域に形成された樹脂貫通穴とを含む下導電回路シートを準備する工程と、下導電回路シートを射出成型用金型のキャビティに配置する工程と、キャビティに溶融樹脂を射出し、下導電回路シートに形成された樹脂貫通穴に樹脂を貫通させ、下導電回路シートの端部を下面側金型に形成された係止部形成用凹部へ押し下げ、係止部形成用凹部に樹脂を充填し、下導電回路シートの端部を巻き込ませ、下導電回路シートを樹脂成形体の下面に係止させる工程とを備えた、導電回路一体化成形品の製造方法も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-58665号公報
【文献】特開2022-28547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一方の金型の面にキャビティを形成することなくインサート体の一部を成形樹脂に一体化することができるインモールド成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のインモールド成形方法は、
インサート体を樹脂成形用の金型内に配置し、前記金型内に射出される樹脂と前記インサート体とを一体成形するインモールド成形方法であって、
前記インサート体に厚み方向に貫通する第1開口部を形成するインサート体準備工程と、
シート状体に平面視で前記第1開口部の一部または全部と重なって前記第1開口部と連通する第2開口部を形成するシート状体準備工程と、
前記第1開口部と前記第2開口部を位置合わせして貼り合わせた前記シート状体と前記インサート体をキャビティが形成されていない一方の金型の平坦面で保持して前記金型内の所定位置に配置する位置決め工程と、
前記シート状体と前記インサート体が配置された状態で前記金型を閉める型締め工程と、
型締めした前記金型内に樹脂を射出し、前記第1開口部を貫通して前記第2開口部内に前記樹脂を充填させて前記インサート体の厚み方向と交差する水平方向に広がり前記インサート体を厚み方向で押さえる押さえ形状を形成して前記樹脂と一体成形する成形工程と、
前記金型を開いて前記シート状体を前記樹脂と一体成形された前記インサート体から剥離して除去する剥離工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインモールド成形方法において、
前記シート状体は前記インサート体と貼り合わせる面に弱粘着強度を有する弱粘着層を有する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインモールド成形方法において、
前記インサート体準備工程において、前記第1開口部が形成された領域の前記インサート体と前記樹脂の間で前記樹脂の侵入を規制する進入規制体を更に設ける、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインモールド成形方法。
【0010】
前記課題を解決するために、請求項4に記載のインモールド成形方法は、
インサート体を樹脂成形用の金型内に配置し、前記金型内に射出される樹脂と前記インサート体とを一体成形するインモールド成形方法であって、
前記インサート体に孔を形成するインサート体準備工程と、
軸部を有し前記樹脂の流路となる第1貫通孔及び前記第1貫通孔と交差する方向で前記第1貫通孔と連通して前記樹脂の流路となる第2貫通孔が形成されたボス状体を形成するボス状体準備工程と、
前記ボス状体の前記軸部を前記インサート体の前記孔にはめ込んで前記ボス状体と前記インサート体を前記金型内の所定位置に配置する位置決め工程と、
前記ボス状体と前記インサート体が配置された状態で前記金型を閉める型締め工程と、
型締めした前記金型内に前記樹脂を射出し、前記第1貫通孔から前記第2貫通孔に前記樹脂を貫通させて前記インサート体に前記ボス状体を埋没させた状態で前記インサート体と前記樹脂とを一体成形する成形工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインモールド成形方法において、
前記ボス状体は、前記インサート体の前記孔よりも大きい鍔部を有し、前記軸部が前記インサート体の前記孔にはめ込まれた状態で前記鍔部が前記インサート体の一面と弱粘着強度を有する弱粘着層を介して密着する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、一方の金型の面にキャビティを形成することなくインサート体の一部を成形樹脂に一体化することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、シート状体とインサート体の位置ずれを抑制しながらインサート体からシート状体を剥離することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、インサート体の変形を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、一方の金型の面にキャビティを形成することなくインサート体の一部を成形樹脂に一体化することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ボス状体の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは第1実施形態に係るインモールド成形方法により製造される回路基板の一例を示す平面模式図、
図1Bは断面模式図である。
【
図2】第1開口部とシート状体に形成される第2開口部との重なりの一例を示す図である。
【
図3】
図3Aは進入規制体が設けられた回路基板の一例を示す平面模式図、
図3Bは断面模式図である。
【
図4】
図4Aは第1開口部が形成されたインサート体の一例を示す平面模式図、
図4Bはインサート体と樹脂層とを一体成形する射出成形用金型における樹脂の流動を説明する断面模式図である。
【
図5】インサート体と樹脂層とを一体成形する第1実施形態に係るインモールド成形方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図6】回路基板の製造過程における回路基板の部分断面模式図である。
【
図7】
図7Aは第2実施形態に係るインモールド成形方法により製造される回路基板の一例を示す平面模式図、
図7Bは断面模式図である。
【
図8】
図8Aはボス状体がはめ込まれたインサート体の一例を示す平面模式図、
図8Bはインサート体と樹脂層とを一体成形する射出成形用金型における樹脂の流動を説明する断面模式図である。
【
図9】インサート体と樹脂層とを一体成形する第2実施形態に係るインモールド成形方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図10】第2実施形態に係る回路基板の製造過程における回路基板の部分断面模式図である。
【
図11】シート状体を一方の金型の分割面に配置して金型内に樹脂を射出する成形体の製造方法を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0020】
「第1実施形態」
(1)回路基板の全体構成
図1Aは本実施形態に係るインモールド成形方法により製造される回路基板1の一例を示す平面模式図、
図1Bは断面模式図、
図2は第1開口部21とシート状体30に形成される第2開口部31との重なりの一例を示す図、
図3Aは進入規制体7が設けられた回路基板1の一例を示す平面模式図、
図3Bは断面模式図、
図4Aは第1開口部21が形成されたインサート体4の一例を示す平面模式図、
図4Bはインサート体4と樹脂層5とを一体成形する射出成形用金型Kにおける樹脂の流動を説明する断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、回路基板1の構成について説明する。
【0021】
回路基板1は、
図1に示すように、基材2の第1面2aに導電性パターン3が形成されたインサート体4と、基材2の第1面2aとは反対側の第2面2bを覆う樹脂層5と、基材2の第1面2a側で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する押さえ形状6と、を備えて構成されている。
【0022】
(基材)
基材2は、合成樹脂材料からなり変形可能な絶縁性のフィルム状又は板状の基材である。ここで、「変形可能な基材」は、導電性パターン3を配置後に変形できる、すなわち、熱成形、真空成形及び圧空成形等によって実質的に平坦な2次元形状から実質的に立体的な3次元形状に変形することができる基材を意味する。
【0023】
基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6-10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)など熱可塑性樹脂材料からなる絶縁性フィルム、フェノール、エポキシ、ポリイミド(PI)、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、オキセタンなど熱硬化性樹脂材料からなる絶縁性フィルム、またはガラスエポキシ(FR-4)、ガラスコンポジット(CEM3)などの絶縁性の板が挙げられる。
【0024】
また、本実施形態においては、後述するように、基材2の第1面2aに導電性パターン3が形成されたインサート体4に対して、接着層を介することなく樹脂層5をインサート成形する。そのために、基材2と樹脂層5の接着性を考慮する必要がなく、基材2の材質としては、熱可塑性樹脂のみならず、熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂などが挙げられ、これらの中では、特にポリイミド樹脂(PI)が好適である。
【0025】
基材2の厚みは、特に限定するものではないが、5μm~3mmが好ましく、12μm~1mmがより好ましく、50μm~200μmが最も好ましい。基材2の厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になるとともに、導電性パターン3のめっき工程時に基材2の歪みが大きくなる虞がある。なお、この厚みは基材2がフィルム状の基材である場合の条件であり、本発明が適用される基材2はフィルム状の基材に限定されない。
【0026】
基材2の表面には、金属ナノ粒子を含む導電性インクを均一に塗るために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理などの表面処理が施されている。
【0027】
また、基材2には、第1開口部21が形成されている。第1開口部21は、厚み方向に貫通するように形成され、後述する樹脂層5を形成する樹脂が貫通して押さえ形状6を形成してインサート体4と樹脂層5とが一体化される。
【0028】
図2には、第1開口部21と後述するシート状体30に形成される第2開口部31との重なりの一例を示す。
基材2に形成された第1開口部21に対して、シート状体30には、平面視で第1開口部21の一部または全部と重なって連通する第2開口部31が形成される。
図2Aには、第1開口部21の全部に対して第2開口部31が重なって連通している例、
図2Bには複数の第1開口部21の全部に対して第2開口部31が重なって連通している例を示している。
図2Cには、第1開口部21の一部に対して第2開口部31が重なって連通している例、
図2Dには複数の第1開口部21の一部に対して第2開口部31が重なって連通している例を示している。
【0029】
(導電性パターン)
基材2の第1面2aに導電性パターン3を配置する場合、さきに、金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒からなる下地層(不図示)を所定のパターン状に形成し、導電性パターン3は、下地層の上に電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、伸長性、導電性および価格の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0030】
(電子部品)
導電性パターン3は、
図1Aにおいては、タッチセンサ3Aとして配置されている例を示しているが、導電性パターン3には、複数の電子部品3B(不図示)が取り付けられてもよい。電子部品3Bとしては、制御回路、歪み、抵抗、静電容量、TIRなどの接触感知、および光検出部品、圧電アクチュエータまたは振動モータなどの触知部品または振動部品、LEDなどの発光部品、マイクおよびスピーカーなどの発音または受音、メモリチップ、プログラマブルロジックチップおよびCPUなどのデバイス操作部品、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ALSデバイス、PSデバイス、処理デバイス、MEMS等が挙げられる。
【0031】
(樹脂層)
樹脂層5は、基材2の導電性パターン3が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bに対して接着層を介することなく基材2の第2面2bを覆うように形成されている。樹脂層5は、後述するように、導電性パターン3が配置されたインサート体4を射出成形用金型K(以下、単に金型Kと記す)に位置決めしてセットした状態で溶融樹脂を射出成形することで形成される。
このとき、通常は、樹脂層5と基材2の接着性を向上させるために、樹脂素材の組み合わせに応じて接着層を形成するバインダーインクを塗布することが行われるが、本実施形態においては、接着層を介することなく、樹脂層5をインサート成形する。基材2と樹脂層5は、後述する押さえ形状6によって基材2と樹脂層5が当接するように固定している。これにより、基材2と樹脂層5の分離を容易にしてリサイクル性を向上させている。
【0032】
(押さえ形状)
押さえ形状6は、樹脂層5が基材2の厚み方向に貫通して形成された第1開口部21を貫通して基材2の第1面2a側に突出するように形成され、インサート体4と樹脂層5とが一体化されている。押さえ形状6は、
図4Bに矢印で示すように、後述するインモールド成形に使用されるシート状体30に設けられた第2開口部31に樹脂が充填されることで形成される。第2開口部31は、基材2に形成された第1開口部21の第1の大きさよりも大きい第2の大きさで形成されている。これにより、
図4Aに示すように、第1開口部21を貫通して第2開口部31に充填された樹脂は第1開口部21よりも大きく広がりインサート体4を押さえる形状となり、インサート体4と樹脂層5とが一体化される。押さえ形状6は、インサート体4の導電性パターン3及び電子部品が配置されている領域を除いて複数形成してもよい。
【0033】
(進入規制体)
第1開口部21が形成された領域は、基材2の第2面2bと樹脂層5の間に樹脂層5の進入を規制する進入規制体7を設けることが好ましい。
図3に示すように、進入規制体7は、基材2に形成された第1開口部21の周囲に基材2の第2面2bに密着するように、接着により固定される。接着の方法としては、溶融樹脂の樹脂圧により進入規制体7がずれないように、接着剤で固定する、両面テープで張り合わせる等が挙げられる。
進入規制体7の材料は特に限定されないが、樹脂層5の材料と同じ熱可塑性樹脂材料で形成されているのが好ましい。
【0034】
進入規制体7は、樹脂層5を射出成形で形成する際に、樹脂層5と一体として形成される押さえ形状6で覆われる基材2の第2面2bへの樹脂層5の進入を規制して樹脂層5を射出成形する際の樹脂圧による基材2の変形を抑制している。
【0035】
(2)インモールド成形方法
図5はインサート体4と樹脂層5とを一体成形するインモールド成形方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図6は回路基板1の製造過程における回路基板1の部分断面模式図である。
【0036】
本実施形態に係るインモールド成形方法は、インサート体4に第1開口部21を形成するインサート体準備工程S11と、シート状体30に平面視で第1開口部21の一部または全部と重なって連通する第2開口部31を形成するシート状体準備工程S12と、第1開口部21と第2開口部31を位置合わせして貼り合わせたシート状体30とインサート体4を金型K内の所定位置に配置する位置決め工程S13と、シート状体30とインサート体4が配置された状態で金型Kを閉める型締め工程S14と、型締めした金型K内に樹脂を射出し、第1開口部21から第2開口部31に樹脂を貫通させてインサート体4と樹脂とを一体成形する成形工程S15と、金型Kを開いてシート状体30を樹脂と一体成形されたインサート体4から剥離して除去する剥離工程S16と、を含み、インサート体4を樹脂成形用の金型K内に配置し、金型K内に射出される樹脂とインサート体4とを一体成形する。
【0037】
(インサート体準備工程S11)
インサート体準備工程S11においては、まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦な基材2に、基材2の厚み方向に貫通する第1開口部21を形成する(
図6A 参照)。第1開口部21は、樹脂層5を形成するキャビティCA1と押さえ形状6を形成するキャビティCA2とを連通する孔であり、押さえ形状6の大きさに合わせて、溶融樹脂が通過できる大きさで複数形成される。第1開口部21の開口形状は、溶融樹脂が通過できる形状であれば、円形、多角形等特に限定されない。
【0038】
そして、基材2上に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2には、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0039】
基材2上に金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを塗布する方法としては、インクジェット印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式が挙げられるが、本実施形態においてはインクジェット印刷方式を用いている。
【0040】
基材2上に形成された下地層に対し、電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させ導電性パターン3を配置する。
【0041】
(シート状体準備工程S12)
シート状体準備工程S12においては、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なシート状体30に第1開口部21に合わせて第2開口部31を形成する。第2開口部31は、平面視で第1開口部21の一部または全部と重なって連通するように形成される。具体的には、第1開口部21よりも大きく第1開口部21の全部と連通するように形成される(
図2A、
図2B 参照)。また、第1開口部21と同じ大きさで第1開口部21の一部と連通するように形成してもよく(
図2C 参照)、第1開口部21よりも大きく複数形成された第1開口部21の一部と連通と連通するように形成してもよい(
図2D 参照)。
【0042】
シート状体30は、合成樹脂材料からなるフィルム状又は板状の樹脂シートであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6-10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)が経済性、一定の耐熱性、耐薬品性等のバランスが良く好ましい。
【0043】
シート状体30のインサート体4と貼り合わせる面には弱粘着強度を有する弱粘着層32が形成されている。弱粘着層32を構成する粘着剤は、インサート成形時に貼り合わせたシート状体30とインサート体4がずれない程度の接着力を有し、インサート成形後シート状体30をインサート体4から容易に剥離することができる程度の粘着性のあるものが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル共重合体系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられるが、耐熱性に優れインサート成形時にも弱粘着性を維持できるという観点から、シリコーンゴムが好適である。
【0044】
また、基材2の押さえ形状6が形成される領域の基材2の第2面2bに進入規制体7を接着により取り付ける(
図6B 参照)。基材2に形成された第1開口部21の周囲に進入規制体7を基材2の第2面2bに密着するように接着により取り付ける。そして、シート状体30を基材2の第1面2aに第1開口部21と第2開口部31を位置合わせしてイン貼り合わせる(
図6B 参照)。
【0045】
シート状体30は、第2開口部31が形成された樹脂シートに開口部が形成されていない樹脂シート30Bを重ね合わせて構成してもよい(
図6C 参照)。第2開口部31の一端が樹脂シート30Bで塞がれることで、押さえ形状6を形成するキャビティの一端が平滑性の高い樹脂シート30Bで形成されることになり、樹脂が第2開口部31に充填されて形成される押さえ形状6が金型Kを開放する際に離型しやすくなる。
【0046】
(位置決め工程S13)
位置決め工程S13においては、第1開口部21と第2開口部31を位置合わせしてシート状体30を貼り合わせたインサート体4を金型Kの一方の金型(本実施形態においては固定側K1)の分割面に配置する(
図6D 参照)。これにより、一方の金型の面に予めキャビティを形成することなく金型K内に射出される樹脂で押さえ形状6を形成し樹脂層5とインサート体4とを一体成形することができる。
【0047】
(型締め工程S14)
型締め工程S14においては、第1開口部21と第2開口部31を位置合わせして貼り合わせたシート状体30とインサート体4が一方の金型(固定側K1)の分割面に配置された状態で他方の金型(可動側K2)を一方の金型(固定側K1)に対して移動当接させて型締めする。これにより、貼り合わせたシート状体30とインサート体4が金型Kの両分割面で挟持固定され金型K内に樹脂層5を形成するキャビティCA1及び押さえ形状6を形成するキャビティCA2を閉塞形成する。
【0048】
(成形工程S15)
成形工程S15では、型締めした金型K内に樹脂を射出してキャビティCA1に樹脂を充填する。キャビティCA1に充填された樹脂により、基材2の第2面2bを覆う樹脂層5が形成される。そして、キャビティCA1に充填される樹脂は、基材2に形成された第1開口部21を貫通してからシート状体30に形成された第2開口部31(キャビティCA2)に充填される。キャビティCA2に充填された樹脂により押さえ形状6が形成されインサート体4と樹脂層5とが一体成形される。
【0049】
(剥離工程S16)
剥離工程S16では、金型Kを開いてシート状体30をインサート体4から剥離して(
図6E中 矢印参照)インサート体4と樹脂層5とが一体成形された回路基板1を得る(
図6E 参照)。シート状体30は弱粘着層32でインサート体4と張り合わされているために、インサート体4から容易に剥離することができる。シート状体30が剥離された回路基板1は、押さえ形状6によってインサート体4と樹脂層5が当接するように固定されている。
【0050】
このように、本実施形態のインモールド成形方法によれば、インサート体4に形成した第1開口部21の一部または全部と重なって連通するように第2開口部31を形成したシート状体30をインサート体4に貼り合わせ、シート状体30とインサート体4を金型K内の所定位置に配置して金型K内に樹脂を射出することで第1開口部21から第2開口部31に樹脂を貫通させてインサート体4と樹脂層5とを一体成形する。そして、シート状体30をインサート体4から剥離してインサート体4と樹脂層5とが一体成形された回路基板1を得る。これにより、一方の金型の面にキャビティを形成することなくインサート体4の一部を樹脂層5に一体化することができる。
【0051】
本実施形態においては、シート状体30をインサート体4に貼り合わせて金型K内の所定位置に配置して金型K内に樹脂を射出することでインサート体4と樹脂層5とを一体成形するインモールド成形方法について説明したが、一面に所定の形状又は意匠を有するシート状体30Aのみを一方の金型(固定側K1)の分割面に配置して金型K内に樹脂を射出した後、シート状体30を成形体Sから剥離除去することで一方の金型の面にキャビティを形成することなく成形体Sの一面に所定の形状や意匠を付与することもできる。
【0052】
図11はシート状体30Aを一方の金型(固定側K1)の分割面に配置して金型K内に樹脂を射出する成形体Sの製造方法を示す断面模式図である。
シート状体30Aは、
図11Aに示すように、一面30Aaに凹凸からなる所定の形状、もしくは平滑面を含む意匠が形成されている。また、一面30Aaとは反対側の他面30Abには弱粘着強度を有する弱粘着層32が形成されている。弱粘着層32は、一方の金型(固定側K1)の分割面に貼り合わせたシート状体30Aがずれない程度の接着力を有し、インサート成形後シート状体30Aを成形体Sから容易に剥離することができる程度の粘着性を有することが好ましい。尚、一面30Aaにも意匠面を除いて弱粘着層32を設けることが好ましい。
【0053】
図11Bに示すように、シート状体30Aを金型Kの一方の金型(固定側K1)の分割面に配置して他方の金型(可動側K2)を一方の金型(固定側K1)に対して移動当接させて型締めする。これにより、シート状体30Aが金型Kの両分割面で挟持固定され金型K内に樹脂層5を形成するキャビティCAを閉塞形成される。
【0054】
型締めした金型K内に樹脂を射出してキャビティCAに樹脂を充填する。キャビティCAに充填された樹脂にシート状体30Aの一面30Aaに形成された所定の形状もしくは意匠が転写され、金型Kを開いてシート状体30Aを成形体Sから剥離する(
図11C 参照)。これにより、一方の金型(固定側K1)の面にキャビティを形成することなく成形体Sの一面に所定の形状や意匠を付与することができる。
【0055】
「第2実施形態」
図7Aは本実施形態に係るインモールド成形方法により製造される回路基板1Aの一例を示す平面模式図、
図7Bは断面模式図、
図8Aはボス状体6Aがはめ込まれたインサート体4の一例を示す平面模式図、
図8Bはインサート体4と樹脂層5とを一体成形する射出成形用金型Kにおける樹脂の流動を説明する断面模式図である。
本実施形態に係る回路基板1Aは、基材2の第1面2a側でインサート体4に埋没して基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定するボス状体6Aを備えている点で、基材2の第1面2a側で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する押さえ形状6を備えている第1実施形態に係る回路基板1とは異なっている。従って、第1実施形態に係る回路基板1と共通する構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
(1)回路基板の全体構成
回路基板1Aは、基材2の第1面2aに導電性パターン3が形成されたインサート体4と、基材2の第1面2aとは反対側の第2面2bを覆う樹脂層5と、基材2の第1面2a側でインサート体4に埋没して基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定するボス状体6Aと、を備えて構成されている。
【0057】
(基材)
基材2には、第1の大きさの孔部21A(
図10A 参照)が形成されている。孔部21Aは、厚み方向に貫通するように形成され、後述するボス状体6Aの軸部61がはめ込まれる。
【0058】
(ボス状体)
ボス状体6Aは、軸部61を有し樹脂の流路となる第1貫通孔62及び第1貫通孔62と交差する方向で第1貫通孔62と連通して樹脂の流路となる第2貫通孔63が形成されている。また、ボス状体6Aには、軸部61を中心として第1貫通孔62における樹脂の流れ方向と交差する方向に広がる鍔部64が形成されている。
【0059】
ボス状体6Aの軸部61が基材2の孔部21Aにはめ込まれた際に鍔部64が基材2の第1面2aと接触する一面64aには弱粘着強度を有する弱粘着層64b(不図示)が形成されている。弱粘着層64bを構成する粘着剤は、インサート成形時にはめ込んだボス状体6Aとインサート体4がずれない程度の接着力を有していれば、特に限定されない。
【0060】
ボス状体6Aは、
図8Bに矢印で示すように、樹脂層5を形成する樹脂が第1貫通孔62及び第1貫通孔62と連通する第2貫通孔63を貫通してインサート体4に埋没した状態で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する。
【0061】
(2)インモールド成形方法
図9はインサート体4と樹脂層5とを一体成形するインモールド成形方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図10は回路基板1Aの製造過程における回路基板1Aの部分断面模式図である。
【0062】
本実施形態に係るインモールド成形方法は、インサート体4に孔部21Aを形成するインサート体準備工程S21と、軸部61を有し樹脂の流路となる第1貫通孔62及び第1貫通孔62と交差する方向で第1貫通孔62と連通して樹脂の流路となる第2貫通孔63が形成されたボス状体6Aを形成するボス状体準備工程S22と、ボス状体6Aの軸部61をインサート体4の孔部21Aにはめ込んでボス状体6Aとインサート体4を金型K内の所定位置に配置する位置決め工程S23と、ボス状体6Aとインサート体4が配置された状態で金型Kを閉める型締め工程S24と、型締めした金型K内に樹脂を射出し、第1貫通孔62から第2貫通孔63に樹脂を貫通させてインサート体4にボス状体6Aを埋没させた状態でインサート体4と樹脂とを一体成形する成形工程S25と、を含み、ボス状体6Aがはめ込まれたインサート体4を樹脂成形用の金型K内に配置し、金型K内に射出される樹脂とインサート体4とを一体成形する。
【0063】
(インサート体準備工程S21)
インサート体準備工程S21においては、まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦な基材2に、基材2の厚み方向に貫通する孔部21Aを形成する(
図10A 参照)。孔部21Aは、樹脂の流路となるボス状体6Aの軸部61がはめ込まれる孔であり、ボス状体6Aの軸部61の大きさに合わせて複数形成される。
【0064】
そして、基材2上に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2は、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0065】
基材2上に形成された下地層に対し、電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させ導電性パターン3を配置する。
【0066】
(ボス状体準備工程S22)
ボス状体準備工程S22においては、軸部61を有し樹脂の流路となる第1貫通孔62及び第1貫通孔62と交差する方向で第1貫通孔62と連通して樹脂の流路となる第2貫通孔63が形成されたボス状体6Aを形成する。
ボス状体6Aには、軸部61を中心として第1貫通孔62における樹脂の流れ方向と交差する方向に広がる鍔部64が形成されている。鍔部64が基材2の第1面2aと接触する一面64aには弱粘着強度を有する弱粘着層64b(不図示)が形成され、ボス状体6Aの軸部61が基材2の孔部21Aにはめ込まれた際に基材2の第1面2aに粘着する(
図10B 参照)。
【0067】
ボス状体6Aは、樹脂層5を形成する樹脂が第1貫通孔62及び第1貫通孔62と連通する第2貫通孔63を貫通してインサート体4に埋没した状態で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する。
【0068】
(位置決め工程S23)
位置決め工程S23においては、ボス状体6Aがはめ込まれたインサート体4を金型Kの一方の金型(本実施形態においては固定側K1)の分割面に配置する(
図10C 参照)。これにより、一方の金型の面に予めキャビティを形成することなく金型K内に射出される樹脂でインサート体4にボス状体6Aを埋没させた状態でインサート体4と樹脂層5とを一体成形することができる。
【0069】
(型締め工程S24)
型締め工程S24においては、ボス状体6Aとインサート体4が配置された状態で金型Kを閉める。
型締め工程S24においては、ボス状体6Aの軸部61をインサート体4の孔部21Aにはめ込んだインサート体4が金型Kの一方の金型(本実施形態においては固定側K1)の分割面に配置された状態で他方の金型(可動側K2)を一方の金型(固定側K1)に対して移動当接させて型締めする。これにより、ボス状体6Aとインサート体4が金型Kの両分割面で挟持固定され金型K内に樹脂層5を形成するキャビティCA1及びボス状体6Aをインサート体4に埋没させるためのキャビティCA2を閉塞形成する(
図10C 参照)。
【0070】
(成形工程S25)
成形工程S25では、型締めした金型K内に樹脂を射出しキャビティCA1に樹脂を充填する。キャビティCA1に充填された樹脂により、基材2の第2面2bを覆う樹脂層5が形成される。そして、キャビティCA1に充填される樹脂は、インサート体4にはめ込まれたボス状体6Aの第1貫通孔62から第2貫通孔63を貫通してキャビティCA2に充填される。キャビティCA2に充填された樹脂によりインサート体4にボス状体6Aを埋没させた状態でインサート体4と樹脂層5とが一体成形される。
【0071】
金型Kを開いて成形品を取り出すと、局所的にボス状体6Aがインサート体4埋没してインサート体4と樹脂層5とが一体成形された回路基板1Aを得る(
図10D 参照)。
【0072】
このように、本実施形態のインモールド成形方法によれば、軸部61を有し樹脂の流路となる第1貫通孔62及び第1貫通孔62と交差する方向で第1貫通孔62と連通して樹脂の流路となる第2貫通孔63が形成されたボス状体6Aをインサート体4の孔部21Aにはめ込んでボス状体6Aとインサート体4を金型K内の所定位置に配置して型締めした金型K内に樹脂を射出し、第1貫通孔62から第2貫通孔63に樹脂を貫通させてインサート体4にボス状体6Aを埋没させた状態でインサート体4と樹脂層5とを一体成形する。
これにより、一方の金型の面にキャビティを形成することなくインサート体4の一部を樹脂層5に一体化することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1A・・・回路基板
2・・・基材、2a・・・第1面(導電性パターン側)、2b・・・第2面、21・・・第1開口部、21A・・・孔部
3・・・導電性パターン
4・・・インサート体
5・・・樹脂層
6・・・押さえ形状
6A・・・ボス状体
30、30A・・・シート状体
31・・・第2開口部、32・・・弱粘着層
K・・・射出成形用金型
CA1、CA2・・・キャビティ
【要約】
インサート体を樹脂成形用の金型内に配置し、金型内に射出される樹脂とインサート体とを一体成形するインモールド成形方法であって、インサート体に第1開口部を形成するインサート体準備工程と、シート状体に平面視で第1開口部の一部または全部と重なって連通する第2開口部を形成するシート状体準備工程と、第1開口部と第2開口部を位置合わせして貼り合わせたシート状体とインサート体を金型内の所定位置に配置する位置決め工程と、シート状体とインサート体が配置された状態で金型を閉める型締め工程と、型締めした金型内に樹脂を射出し、第1開口部から第2開口部に樹脂を貫通させてインサート体と樹脂とを一体成形する成形工程と、金型を開いてシート状体をインサート体から剥離する剥離工程と、を含む。