(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】ナノエマルション及び改質層状複水酸化物を含む経皮デリバリー用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20240209BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240209BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240209BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240209BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240209BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240209BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240209BHJP
A61P 5/24 20060101ALI20240209BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240209BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240209BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240209BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240209BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240209BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240209BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/96
A61K9/107
A61K45/00
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/24
A61P3/02 101
A61P5/24
A61P17/00
A61P17/00 101
A61P17/02
A61P17/14
A61P29/00
A61P31/04
A61Q5/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019510318
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(86)【国際出願番号】 KR2017009058
(87)【国際公開番号】W WO2018034548
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2016-0104883
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519051964
【氏名又は名称】エイチ アンド エー ファーマケム カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】H&A PHARMACHEM CO., LTD
【住所又は居所原語表記】48, Bucheon-ro 186beon-gil, Wonmi-gu Bucheon-si Gyeonggi-do 14558, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,セ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ヨン リョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン ア
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ホン グン
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-56858(JP,A)
【文献】特表2004-538296(JP,A)
【文献】特開2014-205638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-38/58
A61K41/00-48/00
A61K51/00-51/12
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水からなるナノエマルション;及び
2)改質層状複水酸化物;
を含む経皮デリバリー用組成物であって、
前記ポリオールが、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、マルチトール及びエチレン グリコールからなる群から一つ以上選択され、
前記改質層状複水酸化物が、硫酸ドデシル
で改質された層状複水酸化物である
組成物。
【請求項2】
前記ナノエマルションが、1~40重量%の活性成分、0.1~20重量%の飽和レシチン、0.1~20重量%のフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイルグルタメート、2~70重量%のポリオール及び10~80重量%の水からなる、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項3】
前記ナノエマルションが、5~30重量%の活性成分、0.2~15重量%の飽和レシチン、0.2~15重量%のフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイルグルタメート、3~65重量%のポリオール及び15~75重量%の水からなる、請求項2に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項4】
前記活性成分が、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、UVブロック剤、育毛促進剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ざ瘡治療剤、殺菌剤、女性ホルモン、角質溶解剤及び天然物からなる群から一つ以上選択される、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項5】
前記保湿剤が、クレアチン、ポリグルタミン酸、乳酸ナトリウム、ヒドロプロリン、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、フィトステリル、コレステロール、シトステロール、プルラン及びプロテオグリカンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項6】
前記美白剤が、アルブチン及びアルブチン誘導体、コウジ酸、ビサボロール、ナイアシンアミド、ビタミンC及びビタミンC誘導体、プラセンタ及びアラントインからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項7】
前記抗シワ剤が、レチノール、レチノール誘導体、アデノシン、甘草エキス、紅参エキス及び朝鮮人参エキスからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項8】
前記UVブロック剤が、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体及びサリチル酸誘導体からなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項9】
前記育毛促進剤が、血行促進剤又は毛包刺激剤である、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物
【請求項10】
前記血行促進剤が、センブリエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体ならびにγ-オリザノールからなる群から一つ以上選択される、請求項9に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項11】
前記毛包刺激剤が、トウガラシチンキ、生姜チンキ、カンタリスチンキ及びニコチン酸ベンジルエステルからなる群から一つ以上選択される、請求項9に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項12】
前記ビタミン又はその誘導体が、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンD、ビタミンH、ビタミンK、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、パンテノール、コエンザイムQ10ならびにイデベノンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項13】
前記アミノ酸又はペプチドが、システイン、メチオニン、セリン、リシン、トリプトファン、アミノ酸エキス、上皮細胞成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トリペプチド-1銅、トリペプチド-29、トリペプチド-1、アセチル ヘキサペプチド-8、ニコチノイル トリペプチド-35、ヘキサペプチド-12、ヘキサペプチド-9、パルミトイル ペンタペプチド-4、パルミトイル テトラペプチド-7、パルミトイル トリペプチド-29、パルミトイル トリペプチド-1、ノナペプチド-7、トリペプチド-10 シトルリン、sh-ポリペプチド-15、パルミトイル トリペプチド-5、ジアミノプロピオノイル トリペプチド-33及びr-スパイダーポリペプチド-1からなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項14】
前記抗炎症剤が、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾン、β-グルカン及び甘草からなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項15】
前記ざ瘡治療剤が、エストラジオール、エストロゲン、エチニル エストラジオール、トリクロサン及びアゼライン酸からなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項16】
前記殺菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及びハロカルバンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項17】
前記女性ホルモンが、エストラジオール、エチニル エストラジオール及びイソフラボンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項18】
前記角質溶解剤が、硫黄、サリチル酸、AHA、BHA及びレゾルシンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項19】
前記天然物が、マンサクエキス、オドリコソウエキス、フタバムグラエキス、ショウヨウダイオウエキス、甘草エキス、アロエエキス、カモミールエキス、ローズヒップエキス、セイヨウトチノキエキス、朝鮮人参エキス、ヘチマエキス、キュウリエキス、アマノリエキス、ワカメエキス、ダイコンイモエキス、カタツムリエキス、ナガイモエキス、ヒノキチオール及びβ-カロテンからなる群から一つ以上選択される、請求項4に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項20】
前記硫酸ドデシル
で改質された層状複水酸化物がナノシートの形態である、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項21】
前記改質層状複水酸化物の層状複水酸化物が下記式を有する、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物:
[M
2+
1-xM
3+
x(OH)
2]
x+(A
n-)
x/n・mH
2O
(式中、M
2+とM
3+は金属カチオンであり、A
n-はアニオンであり、0.2≦x≦0.33であり、mは0.5~4である。)
【請求項22】
M
2+は、Ca
2+, Mg
2+, Zn
2+, Ni
2+, Mn
2+, Co
2+又はFe
2+であり、
M
3+は、Al
3+, Cr
3+, Mn
3+, Fe
3+, Ga
3+, Co
3+又はNi
3+ であり、
A
n-は、OH
-, F
-, Cl
-, Br
-, I
-, NO
3
-, CO
3
2-又はSO
4
2-である、請求項21に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項23】
30~70重量%のナノエマルション及び30~70重量%の改質層状複水酸化物を含む、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項24】
40~60重量%のナノエマルション及び40~60重量%の改質層状複水酸化物を含む、請求項23に記載の経皮デリバリー用組成物。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の経皮デリバリー用組成物を含むパーソナルケア組成物。
【請求項26】
経皮デリバリー用組成物を1~60重量%で含む請求項25に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項27】
前記パーソナルケア組成物が、スキンケア組成物、ボディケア組成物又はヘアケア組成物である、請求項25に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項28】
i)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロ
イル グルタメート、ポリオール及び水を混合しナノエマルションを製造する工程、及び
ii)前記工程i)で製造されたナノエマルションを改質層状複水酸化物と混合して、複合体を形成する工程
を含む、請求項1に記載の経皮デリバリー用組成物の製造方法であって、
前記ポリオールが、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、マルチトール及びエチレン グリコールからなる群から一つ以上選択され、
前記改質層状複水酸化物が、硫酸ドデシル
で改質された層状複水酸化物である
製造方法。
【請求項29】
前記工程i)において、1~40重量%の活性成分、0.1~20重量%の飽和レシチン、0.1~20重量%のフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、2~70重量%のポリオール及び10~80重量%の水を混合する、請求項28に記載の経皮デリバリー用組成物の製造方法。
【請求項30】
前記活性成分が、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、UVブロック剤、育毛促進剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ざ瘡治療剤、殺菌剤、女性ホルモン、角質溶解剤及び天然物からなる群から一つ以上選択される、請求項28に記載の経皮デリバリー用組成物の製造方法。
【請求項31】
前記工程ii)において、30~70重量%のナノエマルション及び30~70重量%の改質層状複水酸化物を混合する、請求項28に記載の経皮デリバリー用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート(phytosteryl/behenyl/octyldodecyl lauroyl glutamate)、ポリオール及び水を含むナノエマルション;及び2)改質(modified)層状複水酸化物を含む経皮デリバリー用組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、前記経皮デリバリー用組成物を含むパーソナルケア(personal care)組成物に関する。
【0003】
さらに、本発明は、i)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を混合し、ナノエマルションを製造する工程;及びii)前記工程i)で製造されたナノエマルションを改質層状複水酸化物と混合して複合体を得る工程;を含む経皮デリバリー用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
活性物質を安定化させ、経皮効率を高めるために、経皮デリバリーシステム(TDS;transdermal delivery system)を機能性化粧品に活用するための努力及び研究が活発に行われてきた。機能性材料の開発によって、より高い安定性をこのような材料に付与できる多様な機能化方法が広く研究されてきた。特に、光、熱及び空気中の酸素が機能性材料の生物学的活性を著しく低下させることはよく知られている。そのため、様々な活性成分を安定化させるための新しい機能化技術を開発する必要がある。
【0005】
皮膚の最も外側に存在する角質層は、バリア機能の役割を果たす主要な防御膜である。角質層では、角質細胞が煉瓦を積んだような形状をしており、角質細胞間脂質は、これらの角質細胞を支えるモルタルとしての役割を果たす。この脂質層は、高度に構造化されており、角質層のバリア機能において重要な役割を果たす。角質層を通過して物質を吸収させるために多くの方法が使用されてきた。第一に、皮膚に塗るための塗布領域が拡げられる。第二に、皮膚の透過性を増大させる。第三に、物質が独立して動く力を増大させるために活性化される。活性成分がその大きな分子サイズのために動くことができないか、もしくは角質層のバリア性を克服しなければならない場合、経皮経路による方法を使用することは、そのような問題を解決するために有用であり得る。
【0006】
経皮吸収用担体として、例えば、韓国 公開特許公報第10-2013-0042056号は、カロテノイド、平均分子量40,000以上のコラーゲン、及び重量平均分子量が200~5,000のコラーゲンペプチドを含有する化粧品組成物を開示し、韓国 公開特許公報第10-2014-0067748号は、プロピレングリコールを含むアルコール混合物にレシチンを分散させることによって製造された経皮吸収用薬剤デリバリーシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国 公開特許公報第10-2013-0042056号
【文献】韓国 公開特許公報第10-2014-0067748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は、活性成分を安定した状態で効率的に皮膚内に送達し得る経皮デリバリーシステムを提供することである。
【0009】
また、本発明の他の技術的課題は、前記経皮デリバリーシステムを含むパーソナルケア組成物を提供することである。
【0010】
さらに、本発明のさらに別の技術的課題は、前記経皮デリバリーシステムを効果的に製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、1)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を含むナノエマルション;及び2)改質層状複水酸化物を含む経皮デリバリー用組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記経皮デリバリー用組成物を含むパーソナルケア組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、i)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を混合しナノエマルションを製造する工程;及びii)前記工程i)で製造されたナノエマルションを改質層状複水酸化物と混合して複合体を形成する工程を含む、経皮デリバリー用組成物の製造方法を提供する。
【0014】
以下で、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の一つの側面によれば、1)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を含むナノエマルション;及び2)改質層状複水酸化物を含む経皮デリバリー用組成物が提供される。
【0016】
本発明において、活性成分は、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を使用して、ナノエマルションを形成することによって主に安定化される。
【0017】
本発明に係るナノエマルションは、活性成分を好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~30重量%の量で含む。本発明において、活性成分の量が1重量%未満のとき、活性成分による効能が弱くなることがあり、40重量%を超えると、ナノエマルションの形成に問題があり得る。
【0018】
本発明において、活性成分による特別な制限はない。本発明において、活性成分の例としては、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、UVブロック剤、育毛促進剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ざ瘡治療剤、殺菌剤、女性ホルモン、角質溶解剤及び天然物から選択される一つ以上が含まれるが、これらに制限されない。
【0019】
保湿剤の例としては、クレアチン、ポリグルタミン酸、乳酸ナトリウム、ヒドロプロリン、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、フィトステリル、コレステロール、シトステロール、プルラン及びプロテオグリカンが含まれるが、これらに制限されない。
【0020】
美白剤の例としては、アルブチン及びアルブチン誘導体、コウジ酸、ビサボロール、ナイアシンアミド、ビタミンC及びビタミンC誘導体、プラセンタ及びアラントインが含まれるが、これらに制限されない。
【0021】
抗シワ剤の例としては、レチノール、レチノール誘導体、アデノシン、甘草エキス、紅参エキス及び朝鮮人参エキスが含まれるが、これらに制限されない。
【0022】
UVブロック剤の例としては、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体及びサリチル酸誘導体が含まれるが、これらに制限されない。
【0023】
育毛促進剤としては、特に制限はないが、血行促進剤及び/又は毛包刺激剤が好ましい。
【0024】
血行促進剤の例としては、制限されないが、センブリエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体ならびにγ-オリザノールが含まれ、毛包刺激剤の例としては、トウガラシチンキ、生姜チンキ、カンタリスチンキ及びニコチン酸ベンジルエステルが含まれるが、これらに制限されない。
【0025】
ビタミン又はその誘導体の例としては、ビタミンA(レチノール)及びその誘導体、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンD、ビタミンH、ビタミンK、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、パンテノール、コエンザイムQ10ならびにイデベノンが含まれるが、これらに制限されない。
【0026】
アミノ酸又はペプチドの例としては、システイン、メチオニン、セリン、リシン、トリプトファン、アミノ酸エキス、上皮細胞成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トリペプチド-1銅、トリペプチド-29、トリペプチド-1、アセチル ヘキサペプチド-8、ニコチノイル トリペプチド-35、ヘキサペプチド-12、ヘキサペプチド-9、パルミトイル ペンタペプチド-4、パルミトイル テトラペプチド-7、パルミトイル トリペプチド-29、パルミトイル トリペプチド-1、ノナペプチド-7、トリペプチド-10 シトルリン(citrulline)、sh-ポリペプチド-15、パルミトイル トリペプチド-5、ジアミノプロピオノイル トリペプチド-33ならびにr-スパイダー(spider)ポリペプチド-1が含まれるが、これらに制限されない。
【0027】
抗炎症剤の例としては、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾン、β-グルカン及び甘草が含まれるが、これらに制限されない。
【0028】
ざ瘡治療剤の例としては、エストラジオール、エストロゲン、エチニル エストラジオール、トリクロサン及びアゼライン酸が含まれるが、これらに制限されない。
【0029】
殺菌剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)ならびにハロカルバンが含まれるが、これらに制限されない。
【0030】
女性ホルモンに特別な制限はないが、エストロゲンが好ましい。エストロゲンとしては、エストラジオール、エチニル エストラジオール又はフィトエストロゲンであるイソフラボンが好ましい。
【0031】
角質溶解剤の例としては、硫黄、サリチル酸、AHA、BHA及びレゾルシンが含まれるが、これらに制限されない。
【0032】
天然物のエキス又はそれから得られる成分の例としては、マンサク、オドリコソウ、フタバムグラ、ショウヨウダイオウ、甘草、アロエ、カモミール、ローズヒップ、セイヨウトチノキ、朝鮮人参、ヘチマ、キュウリ、アマノリ、ワカメ、ダイコンイモ、カタツムリ、ナガイモのエキス又はヒノキチオール及びβ-カロテンが含まれるが、これらに制限されない。また、酵母エキス、コラーゲン、エラスチン、DHA、EPA、香料成分などを用いてもよい。
【0033】
本発明のナノエマルションは、飽和レシチンを好ましくは0.1~20重量%、さらに好ましくは0.2~15重量%の量で含む。レシチンは、様々なリン脂質の混合物を指し、リン脂質の組成は由来によって異なり得る。飽和レシチンは、脂肪酸の炭化水素中の全ての二重結合を単結合に変えるレシチンの水素化によって調整することができる。本発明において、飽和レシチンの量が0.1重量%未満のとき、ナノエマルションの形成に問題があり得、20重量%を超えると、過剰な膜成分によってナノエマルション中に封入された活性成分の量を減少させることによって、本発明のナノエマルションの効果が不十分になり得る。
【0034】
本発明のナノエマルションは、補助乳化剤としてフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメートを好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.2~15重量%の量で含む。フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメートは、フィトステロール、ベヘニル アルコール及びオクチルドデカノールとラウロイル グルタミン酸との混合エステルである。本発明では、飽和レシチンのみでは、リポソームの二重膜を完全に形成するには不十分であり得ることから、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメートがナノエマルションの安定性を高めるために、補助乳化剤として使用される。本発明において、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメートの量が0.1重量%未満又は20重量%を超えると、ナノエマルションの形成に問題があり得る。
【0035】
本発明のナノエマルションは、ポリオールを好ましくは2~70重量%、より好ましくは3~65重量%の量で含む。本発明において、ポリオールは活性成分の溶解を促進することができる。本発明において、ポリオールの例としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、マルチトール、エチレングリコール又はそれらの混合物が含まれるが、これらに制限されない。ポリオールの量が2重量%未満のとき、活性成分の溶解に問題があり得、70重量%を超えると、ナノエマルションの形成に問題があり得る。
【0036】
本発明のナノエマルションは、水を好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~75重量%の量で含む。
【0037】
本発明のナノエマルションは植物油をさらに含んでもよい。本発明において、植物油は、ナノエマルションの安定性を助けることができる。本発明において、植物油の例としては、オリーブ油、マカダミア油、ヒマワリ種子油、カメリア油、ヒマシ油、ホホバ油、アーモンド油、杏子油、グリーンティ油、メドウフォーム種子油、アルガン油又はそれらの混合物が含まれるが、これらに制限されない。本発明のナノエマルションは、植物油を好ましくは10~30重量%、より好ましくは12~25重量%の量で含む。植物油の量が10重量%未満のとき、ナノエマルションの安定化を補助する効果が弱くなる可能性があり、30重量%を超えると、ナノエマルションの形成に問題があり得る。
【0038】
本発明では、前記ナノエマルションを改質層状複水酸化物(LDH)と混合し、LDHの層間領域に吸着させて複合体を形成し、経皮デリバリー用組成物を得ることによって活性成分を二次的に安定化させる。
【0039】
LDHは、層状構造を有する無機化合物であり、その組成は、[M2+
1-x M3+
x(OH)2]x+(An-)x/n・mH2Oの式で示される。前記式中、M2+とM3+は、水滑石(brucite)の八面体部位にある金属カチオンであり;An-は、層間に位置したアニオンを示し;M2+= Ca2+, Mg2+, Zn2+, Ni2+, Mn2+, Co2+, Fe2+ などであり;M3+= Al3+, Cr3+, Mn3+, Fe3+, Ga3+, Co3+, Ni3+ などであり;An-はOH-, F-, Cl-, Br-, I-, NO3
-, CO3
2-, SO4
2-などであり;固定組成物相では0.2≦x≦0.33であり;mは通常0.5~4である。
【0040】
層間領域に位置するアニオンは、容易に交換することができ、コラーゲントリペプチドのような生体分子及びAg, Au, Ptなどを含有する固体ナノ粒子、ならびにハロゲン化イオン及びDNAのような負電荷を有する生体高分子もインターカレートする(intercalate)ことができる。LDHの基本的な層状構造及び利用可能な金属カチオン及びアニオンの例を
図1に示す。LDHの製造は、当分野において公知である方法、例えば、熱水法、対流循環法、超音波法などで行うことができる。
【0041】
一方、LDHの金属水酸化物の表面は、種々の物質を用いて表面の機能化及び表面の改質を行うことができる。本発明において、LDHの表面を硫酸ドデシル(dodecyl sulfate)で改質することが好ましい。本発明の一実施形態では、硫酸ドデシルで改質されたLDHはナノシート(nanosheet)の形状に剥離(exfoliate)される。
【0042】
本発明の経皮デリバリー用組成物は、前記ナノエマルション及び改質層状複水酸化物を、それぞれ好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%の量で含む。
【0043】
本発明の他の側面によれば、前記経皮デリバリー用組成物を含むパーソナルケア組成物が提供される。
【0044】
本発明において、パーソナルケア組成物の例としては、スキンケア組成物、ボディケア組成物又はヘアケア組成物が含まれるが、これらに制限されない。パーソナルケア組成物は、好ましくは1~60重量%の本発明による経皮デリバリー用組成物を含む。本発明において、パーソナルケア組成物が1重量%未満の量で経皮デリバリー用組成物を含む場合、活性成分による効果が弱くなる可能性があり、経皮デリバリー用組成物の量が60重量%より多いと、添加量に見合った活性成分による効果の増大が期待できないため、経済的に好ましくない場合がある。
【0045】
本発明のまた別の側面によれば、i)活性成分、飽和レシチン、フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、ポリオール及び水を混合し、ナノエマルションを製造する工程;及びii)前記工程i)で製造されたナノエマルションを改質層状複水酸化物と混合して、複合体を形成する工程;を含む経皮デリバリー用組成物の製造方法が提供される。
【0046】
前記製造方法の工程i)において、好ましくは1~40重量%の活性成分、0.1~20重量%の飽和レシチン、0.1~20重量%のフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、2~70重量%のポリオール及び10~80重量%の水、より好ましくは5~30重量%の活性成分、0.2~15重量%の飽和レシチン、0.2~15重量%のフィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル ラウロイル グルタメート、3~65重量%のポリオール及び15~75重量%の水を混合して、ナノエマルションを製造する。
【0047】
前記製造方法の工程ii)において、好ましくは30~70重量%のナノエマルション及び30~70重量%の改質層状複水酸化物、より好ましくは40~60重量%のナノエマルション及び40~60重量%の改質層状複水酸化物を混合して、ナノエマルションを改質層状複水酸化物の層間に吸着させて、経皮デリバリー用組成物を製造する。
【発明の効果】
【0048】
本発明の経皮デリバリー用組成物は、活性成分を極めて安定な形態で皮膚内に効率的に送達して生物学的利用能を高めることにより、少量の活性成分でも優れた効能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、層状複水酸化物(LDH)の層状構造と組成を示した模式図である。
【
図2】
図2は、LDHの剥離と硫酸ドデシル(DS)イオンの吸着により形成された硫酸ドデシルにより改質された層状複水酸化物(DS-LDH)ナノシート合成の概略図である。
【
図3】
図3Aは、(1)ZnAl-カーボネートLDH(c-LDH)及び(2)ステアリン酸で表面処理されたZnAl-カーボネートLDH(SA-LDH)の電子顕微鏡写真であり、
図3Bは、XRD(x-ray diffraction)パターンを示し、
図3Cは、FT-IRスペクトルの結果を示した図である。
【
図4】
図4Aは、(1)熱水法、(2)対流循環法及び(3)超音波法で合成された硫酸ドデシルにより改質された層状複水酸化物(DS-LDHs)のXRDパターンを示し、
図4Bは、FT-IRスペクトルの結果を示し、
図4Cは、電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、ナノエマルションの直径をPhotal ELS-Zを用いて測定した結果である。
【
図6】
図6は、ナノエマルションとDS-LDHの複合体の直径をPhotal ELS-Zを用いて測定した結果である。
【
図7】
図7は、ナノエマルションの低温電子顕微鏡写真である。
【
図8】
図8は、ナノエマルションとDS-LDHの複合体の低温電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しなしながら、本発明の保護範囲は実施例に限定されないことを理解しなければならない。
【0051】
製造例1:層状複水酸化物(LDH)の製造
【0052】
1-1:ZnAl-カーボネートLDH(c-LDH)の合成
炭酸イオン含有ZnAl-LDHは、以下のように共沈法(co-precipitation)により合成した。0.2MのZn(NO3)2と0.1MのAl(NO3)3の混合溶液に最終pHが7.0程度になるまで1MのNa2CO3溶液を徐々に添加した。混合溶液を約70℃のオーブンに1日保管後、ろ過し、蒸溜水とエタノールで洗浄し、真空ポンプを用いて乾燥した。合成されたc-LDHの式は以下の通りである:
[Zn4Al2(OH)12]CO3・xH2O。
【0053】
1-2:ステアリン酸(SA)で表面処理されたZnAl-カーボネートLDH(SA-LDH)の合成
100gのZnAl-カーボネートLDHと3gのステアリン酸を100mLの蒸溜水に溶解し、その混合溶液を80℃で2時間撹拌した。得られた混合物をろ過し、蒸溜水とエタノールで洗浄し、真空ポンプを用いて乾燥した。
【0054】
1-3:硫酸ドデシル(DS)で表面処理されたCaAl LDH(DS-LDH)の合成
CaCl2とドデシル硫酸ナトリウムをモル比1:1で混合し、沈殿させてドデシル硫酸カルシウムの一次物質を得た。得られた一次物質とAl(NO3)3をモル比2:1で混合し、約50重量%のNaOHを添加して溶液のpHを13に調整した。反応溶液を水熱反応器に導入し、85℃で1日反応させた。沈殿物をろ過し、熱蒸溜水で洗浄し、真空ポンプを利用して乾燥した。また、反応溶液をフラスコに入れ、合成のために約85℃で撹拌し、合成のために超音波装置も利用した。合成されたDS-LDHの式は以下の通りである:
[Ca2Al(OH)6]硫酸ドデシルxH2O。
【0055】
1-4:DS-LDHナノシートの合成
LDHナノシートを製造するために、得られたc-LDHを硝酸イオンで置換し、60℃ホルムアミド溶液中で約4日間撹拌した。DS-LDHナノシートの製造のために、得られたLDHナノシート溶液100mLに約1gのドデシル硫酸ナトリウムを加えた後、約1時間撹拌し、得られた沈殿物を遠心分離機で洗浄した。
【0056】
図2は、DS-LDHナノシートの製造過程を示す。
図2から分かるように、LDHナノシート溶液は、透明度及びチンダル散乱の特徴を示す。ナノシート溶液に界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムを添加すると、LDHナノシートの表面のアニオン置換だけでなく、ナノシート間の静電引力と水素結合が生じることによって透明な溶液が生成され、それにより、十分な時間が経過すれば沈殿物が形成される。
【0057】
製造例2:保湿剤を含有するナノエマルションの製造
【0058】
下記表1の構成組成に従って、成分を容器に入れ、50℃の温度で溶解し、ホモミキサーを用いて5分間混合した。得られた混合物を800barの高圧マイクロフルダイザーに連続して5回通した後、冷却し、脱気して保湿剤を含有するナノエマルションを得た。
【表1】
【0059】
製造例3:美白剤を含有するナノエマルションの製造
【0060】
下記表2の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表2】
【0061】
製造例4:UVブロック剤を含有するナノエマルションの製造
【0062】
下記表3の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表3】
【0063】
製造例5:育毛促進剤を含有するナノエマルションの製造
【0064】
下記表4の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表4】
【0065】
製造例6:ビタミンを含有するナノエマルションの製造
【0066】
下記表5の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表5】
【0067】
製造例7:アミノ酸を含有するナノエマルションの製造
【0068】
下記表6の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表6】
【0069】
製造例8:抗炎症剤を含有するナノエマルションの製造
【0070】
下記表7の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表7】
【0071】
製造例9:ざ瘡治療剤を含有するナノエマルションの製造
【0072】
下記表8の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表8】
【0073】
製造例10:天然物を含有するナノエマルションの製造
【0074】
下記表9の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表9】
【0075】
製造例11:天然物を含有するナノエマルションの製造
【0076】
下記表10の構成組成を用いた以外は、製造例2と同じ方法でナノエマルションを製造した。
【表10】
【0077】
実施例1:保湿剤含有ナノエマルションとDS-LDHの複合体の製造
【0078】
下記表11の構成組成に従って、2つの成分をビーカーに入れ、3,000rpmで10~20分間分散ミキサーで混合して、保湿剤含有ナノエマルションとDS-LDHの複合体を得た。
【表11】
【0079】
実施例2:ビタミン含有ナノエマルションとDS-LDHの複合体の製造
【0080】
下記表12の構成組成に従って、2つの成分をビーカーに入れ、3,000rpmで10~20分間分散ミキサーで混合して、ビタミン含有ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を得た。
【表12】
【0081】
比較例:ビタミンを含有する一般的ナノエマルションの製造
【0082】
下記表13の構成組成に従って、成分を容器に入れ、50℃の温度で溶解し、ホモミキサーを利用して5分間混合した。得られた混合物を800barの高圧マイクロフルダイザーに5回連続して通したあと、冷却し、脱気して、ナノエマルションを得た。
【表13】
【0083】
実施例3:ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するトナー(拭き取り化粧水)の製造
【0084】
下記表14の構成組成に従って、ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するトナーを製造した。
【表14】
【0085】
実施例4:ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するローションの製造
【0086】
下記表15の構成組成に従って、ナノエマルショとDS-LDHとの複合体を含有するローションを製造した。
【表15】
【0087】
実施例5:ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するボディーローションの製造
【0088】
下記表16の構成組成に従って、ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するボディーローションを製造した。
【表16】
【0089】
実施例6:ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するクリームの製造
【0090】
下記表17の構成組成に従って、ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するクリームを製造した。
【表17】
【0091】
実施例7:ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するエッセンスの製造
【0092】
下記表18の構成組成に従って、ナノエマルションとDS-LDHとの複合体を含有するエッセンスを製造した。
【表18】
【0093】
実験例1:LDHの分析
【0094】
走査型電子顕微鏡(SEM)写真は、S-4800(株式会社 日立テクノロジーズ、日本)を使用して撮影し、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)写真は、JEM-3010(日本電子 株式会社、日本)を使用して撮影した。紫外線-可視光線分光スペクトル(UV/Vis spectra)は、Lamda1050(PerkinElmer Inc.,アメリカ)を使用して得た、そしてX線回折(XRD)パターンは、D5000(Siemens, ドイツ)を使用して得た。フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の結果は、400~4000cm-1の波数領域で減衰全反射(ATR)モードを備えたIRAffinity-1(株式会社 島津製作所、日本)を使用して得た。ゼータ電位は、Zetasizer nano ZS(Malvern Instruments, イギリス)を使用して測定し、熱重量分析(TGA)は、窒素雰囲気下でTGA 4000(PerkinElmer Inc.,アメリカ)を使用して行った。
【0095】
製造例1-1及び1-2でそれぞれ合成されたc-LDH及びSA-LDHの粒子の形態、大きさ、内部構造及び表面の化学官能基の結果を
図3に示す。
【0096】
c-LDHは、約100~200nmの大きさ及び約50nmの厚さを有する。そのXRDパターンは層状構造を有するハイドロタルク石と類似していることが確認された。鋭く且つ対称的なXRDパターンのピークは、c-LDHの優れた結晶性を示す。これらの結晶格子定数aは、60°付近の(110)ピークのa=2d(110)の関係を用いることにより、約0.306nmであることが分かった。また、結晶格子定数cは、(003)ピークに対応する層間距離(0.753nm)の3倍に適用可能であることから、約2.26nmであることが分かった。一般的なLDHの単層の厚さが0.48nmであることを考慮すると、アニオンが位置する層間距離は、約0.27nmであることが分かった。前記の合成の結果は、既に報告されている文献の値と非常によく一致することが確認された。
【0097】
c-LDHの化学官能基は、FT-IR分析により確認した。約3400cm
-1領域で観察される広い吸収帯は、多数の水酸基と表面に吸着した水分子によるものであり、そして、約1350cm
-1領域で観察される非常に強い吸収帯は、層間アニオンであるカーボネートのC-O振動によるものである。LDH層間の水分子の曲げ振動は、約1630cm
-1領域で観察される。一般的に、LDH物質は、800cm
-1領域未満の金属及び酸素の振動により赤外線吸収を示す。
図3Cの(1)に示されるFT-IR結果から、これが典型的なカーボネート形態のLDH物質に示されるものと非常に類似していることが確認された。
【0098】
図3Aの(2)の電子顕微鏡写真及び
図3Bの(2)のXRD結果から、疎水性有機酸処理されたSA-LDHは、c-LDHと類似の層状構造を有すること、そして表面処理の後でその形態及び大きさは変わらないことが確認された。
【0099】
図3Cの(2)に示すFT-IRの結果から、2800~3000cm
-1領域付近に疎水性アルキル鎖の強いC-H吸収振動が観察された。結果的に、疎水性有機酸処理は、c-LDHの内部構造、大きさ及び形態に影響を与えることなく、疎水性有機酸をLDHの表面に効果的に吸着させる方法であることが確認された。
【0100】
また、
図3Aの(2)から、粒子同士が面接触し、疎水的に変換された粒子表面の強い相互作用により粒子同士が部分的に凝集していることが分かった。
【0101】
熱水法、対流循環法及び超音波法で合成されたDS-LDHの粒子の形態及び大きさ、内部構造及び表面の化学官能基についての結果を
図4に示す。
【0102】
図4AのXRD分析結果から、3つの方法で合成された全DS-LDHが層状構造を有することが分かった。特に、回折角約3.7°の強いピークが層間距離を示しており、いずれも約2.3nmの層間距離を有することが確認された。この場合、ドデシル硫酸アニオンは、LDHの層間領域に位置するため、c-LDHと比較して非常に大きな層間距離を有すると推測される。DS-LDHのドデシル硫酸イオンの存在もFT-IR分析により確認された。
【0103】
図4Bは、3つの方法で合成されたDS-LDHのFT-IRスペクトルを示す。c-LDHと同様に、O-H振動、水分子の曲げ振動及び金属-酸素の振動に対応するLDH固有の吸収帯だけでなく、2800~3000cm
-1領域付近のアルキル鎖C-H振動も確認された。
【0104】
図4Cの電子顕微鏡検査の結果から、DS-LDH粒子の形態と大きさを確認することができた。すべてのサンプルは、コーンのような形をしており、粒子径は合成方法によって変わることが分かる。特に、熱水法で合成されたDS-LDHは、最大の粒子径及び明確な角を有する。
【0105】
図4Cの(1-1)の拡大電子顕微鏡写真から分かるように、平板状構造が丸められてコーンのような形を形成していることが分かった。
【0106】
実験例2:粒子分布の測定
【0107】
製造例6で製造されたナノエマルション及び実施例2で製造されたビタミン含有ナノエマルションとDS-LDHの複合体の粒子分布は、Photal ELS-Zを使用して測定し、その結果はそれぞれ
図5及び
図6に示される。測定結果から、平均粒度はそれぞれ52.1nm及び226nmであることが分かった。
【0108】
実験例3:低温電子顕微鏡検査
【0109】
製造例6で製造されたナノエマルション及び実施例2で製造されたビタミン含有ナノエマルションとDS-LDHの複合体を撮影した。粒径が非常に小さいため、一般的な光学顕微鏡で写真を撮ることは不可能であった。従って、低温電子顕微鏡(JEM1010、日本電子 株式会社、日本)を利用して撮影した(
図7及び8)。
図8から、ナノエマルションとDS-LDHとの複合体がよく形成されたことが分かる。
【0110】
実験例4:経皮吸収促進実験
【0111】
8週齢の雌無毛モルモット(系統IAF/HA-hrBR)を使用した。モルモットの腹部皮膚を切断し、フランツ型拡散セル(Lab Fine Instruments,韓国)に取り付けて実験した。50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4、0.1MのNaCl)をフランツ型拡散セルのレセプターセル(5mL)に添加した。次いで、拡散セルを32℃、600rpmで混合及び分散し、実施例2で製造された、ビタミンを含有するナノエマルションとDS-LDHとの複合体及び比較例のエマルションの50μLをそれぞれドナーセルに添加した。所定時間に応じて吸収拡散させたところ、吸収及び拡散された皮膚の面積は0.64cm
2であった。活性成分の吸収及び拡散が終了した後、吸収されずに皮膚に残った残留物を乾燥したKimwipes(登録商標)又は10mLのエタノールで洗浄した。活性成分を吸収拡散した皮膚を、チップ型ホモジナイザーを使用して均質化した後、皮膚に吸収されたコエンザイムQ10を4mLのジクロロメタンで抽出した。次いで、抽出物を0.45μmのナイロン膜フィルターでろ過した。以下の条件で高速液体クロマトグラフィーによりその含量を測定し、結果を表19に示す。
【表19】
【0112】
前記表19から分かるように、本発明の経皮デリバリー用組成物は、コエンザイムQ10を効率よく皮膚内に送達することができる。