(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】鉄筋支持機構
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20240209BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240209BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
E04C5/18 103
E04C5/18 104
E04G21/12 105D
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2020054463
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390027661
【氏名又は名称】株式会社金澤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 光雄
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-032528(JP,U)
【文献】特開2004-360234(JP,A)
【文献】特開2017-031584(JP,A)
【文献】特開2010-236182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00-5/20
E04G 21/12
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤に立設されたロッドに取り付けられ、基盤面から所定の間隔を離間させて配置される格子状に配筋された格子状鉄筋を支持する鉄筋支持部材であって、
前記ロッドが貫通する貫通口が形成された貫通プレートと、前記貫通プレートに接続され、前記格子状鉄筋を支持する支持部から構成
されている鉄筋支持部材と、
前記ロッドが挿通されたパイプと、
前記パイプに取り付けられ、他の鉄筋を支持する取付装置と、
前記パイプの下方において、前記ロッドの外周に形成されたネジと螺合するナットと
を備え、
前記貫通プレートが前記パイプと前記ナットの間に配置され、
前記ナットを回転させることにより、前記貫通プレート、前記取付装置、および前記パイプの位置が前記ロッドの軸方向に移動することを特徴とする鉄筋支持
機構。
【請求項2】
前記支持部は、切り欠きが形成された2枚の切欠プレートと、前記切欠プレート同士を接続する接続プレートとを備え、
前記切り欠きには、前記格子状鉄筋を構成する第1鉄筋が配置され、前記切欠プレート同士の間に形成された第1空間には、前記第1鉄筋と直交する第2鉄筋が配置され、
前記接続プレートには、前記第2鉄筋を前記第1鉄筋に向かって押え付ける押えボルトを挿入するネジ穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋支持
機構。
【請求項3】
前記ロッドの前記鉄筋支持部材が配置される側と反対側の端部が前記基盤に固定されていることを特徴とする請求項
1または2記載の鉄筋支持機構。
【請求項4】
前記鉄筋支持部材が配置される側に前記基盤に固定される支持板を有し、
前記鉄筋支持部材よりも前記基盤側
であって前記ナットよりも下方において前記ロッドを挿通させて配置された座金部と、
前記支持板に固定され、前記座金部の脱落を防止する抜止部と
を備え、
前記ロッドの下端部を前記支持板上にスライド可能に保持することを特徴とする請求項
1記載の鉄筋支持機構。
【請求項5】
前記抜止部は、前記座金部
の側に突出する当接部を備え、
前記座金部の
上面と当接部の
下面の間にはクリアランスが存在
し、
前記ロッドを所定の傾斜角以上に傾斜させた場合に、前記座金部が前記当接部と当接することを特徴とする請求項
4記載の鉄筋支持機構。
【請求項6】
前記取付装置は、
他の鉄筋を支持する凹状の切り欠きを有する2枚の切込プレートと、前記切込プレート同士を接続する連続プレートとを備え、
前記切込プレート及び前記連続プレートの底部には、
内側に突出する平面U字状の膜部が形成され、
前記膜部が延びる方向の先端には、前記膜部のさらに内側に向かって突出する突出部が形成され、
前記パイプが、前記膜部と前記突出部とによって形成される空間に挿通され、
前記連続プレートには、前記パイプを前記突出部に向かって押え付ける押付ボルトを挿入するネジ孔が形成され、
相対する前記膜部同士の間隔が前記パイプの外径よりも大きく前記ナットの外径よりも小さいことを特徴とする請求項
4または5に記載の鉄筋支持機構。
【請求項7】
非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の鉄筋支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤面から所定の間隔を離間させて配置される格子状に配筋された格子状鉄筋を支持する鉄筋支持部材を用いて格子状鉄筋を支持する鉄筋支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山岳トンネルを施工する際の施工方法としてNATM(New Austrian Tunneling Method)が知られている(例えば、特許文献1参照)。NATMでは、
図10(a)に示すように、まず、一次覆工が施工される。すなわち、トンネル102に空洞部103を掘削することで形成された掘削面104に、H形鋼を用いた支保工108がアーチ状に敷設されると共に掘削面104が吹付コンクリート106で被覆される。なお、支保工108には、後述するロッド114を固定するための固定部材(図示せず)が間隔を置いて溶接される。
【0003】
次に、二次覆工が施工される。具体的には、図示しない穿孔機を用いてロックボルト110が吹付コンクリート106の上からトンネル102に穿設される。次に、吹付コンクリート106面に防水シート112を張り付けた後に、防水シート112を貫通して固定部材にロッド114が立設される。この二次覆工においては、防水シート112よりもさらにトンネル102内側(空洞部103側)に補強鉄筋を格子状に組み合わせた格子状鉄筋118を配置した後に、図示しない型枠を用いて覆工コンクリート120が打設される。
【0004】
ここで、格子状鉄筋118は、ロッド114に取り付けられたクランプなどによって、防水シート112から所定の間隔を離間させて支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の二次覆工において、
図10(b)に示すように、格子状鉄筋118を配置してから覆工コンクリート120が打設されるまでの間に格子状鉄筋118が自重で撓み、垂れ下がる場合がある。このように格子状鉄筋118が垂れ下がった場合には、覆工コンクリート120のかぶり厚が維持できなくなるなど精度上の問題があった。
【0007】
本発明の目的は、精度よくコンクリートを打設するために配筋の位置を調整することが可能な鉄筋支持部材、および該鉄筋支持部材を用いて鉄筋を支持する鉄筋支持機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄筋支持機構は、
基盤に立設されたロッドに取り付けられ、基盤面から所定の間隔を離間させて配置される格子状に配筋された格子状鉄筋を支持する鉄筋支持部材であって、前記ロッドが貫通する貫通口が形成された貫通プレートと、前記貫通プレートに接続され、前記格子状鉄筋を支持する支持部から構成されている鉄筋支持部材と、
前記ロッドが挿通されたパイプと、
前記パイプに取り付けられ、他の鉄筋を支持する取付装置と、
前記パイプの下方において、前記ロッドの外周に形成されたネジと螺合するナットと
を備え、
前記貫通プレートが前記パイプと前記ナットの間に配置され、
前記ナットを回転させることにより、前記貫通プレート、前記取付装置、および前記パイプの位置が前記ロッドの軸方向に移動することを特徴とする。
【0009】
これにより、たとえばトンネル内において、格子状鉄筋を支持することが可能になる。
また、ナットで格子状鉄筋の位置を調整して、この鉄筋支持部材の位置をロッドの軸方向に移動させることにより、格子状鉄筋が垂れ下がった場合においてもその位置を調整し、かぶり厚などに狂いが生じないように、精度よく覆工コンクリートを打設することができる。
【0010】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
前記支持部は、切り欠きが形成された2枚の切欠プレートと、前記切欠プレート同士を接続する接続プレートとを備え、
前記切り欠きには、前記格子状鉄筋を構成する第1鉄筋が配置され、前記切欠プレート同士の間に形成された第1空間には、前記第1鉄筋と直交する第2鉄筋が配置され、
前記接続プレートには、前記第2鉄筋を前記第1鉄筋に向かって押え付ける押えボルトを挿入するネジ穴が形成されていることを特徴とする。
このような構造を有することにより、的確に格子状鉄筋を支持部に固定することが可能になる。
【0012】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
前記ロッドの前記鉄筋支持部材が配置される側と反対側の端部が前記基盤に固定されていることを特徴とする。
たとえば、鉄筋支持機構は、トンネルの内周面に沿って所定の間隔で取り付けられる。
【0013】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
前記鉄筋支持部材が配置される側に前記基盤に固定される支持板を有し、
前記鉄筋支持部材よりも前記基盤側であって前記ナットよりも下方において前記ロッドを挿通させて配置された座金部と、
前記支持板に固定され、前記座金部の脱落を防止する抜止部とを備え、
前記ロッドの下端部を前記支持板上にスライド可能に保持することを特徴とする。
これにより、ロッドが、支持板上にスライド可能に配置され、配筋の水平移動に鉄筋支持機構を追従させることができる。
【0014】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
前記抜止部が、前記座金部の側に突出する当接部を備え、
前記座金部の上面と当接部の下面の間にはクリアランスが存在し、
前記ロッドを所定の傾斜角以上に傾斜させた場合に、前記座金部が前記当接部と当接することを特徴とする。
これにより、倒れない程度にロッドを傾斜させることができ、配筋の傾斜にロッドを追従させることができる。
【0015】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
前記取付装置は、
他の鉄筋を支持する凹状の切り欠きを有する2枚の切込プレートと、前記切込プレート同士を接続する連続プレートとを備え、
前記切込プレート及び前記連続プレートの底部には、内側に突出する平面U字状の膜部が形成され、前記膜部が延びる方向の先端には、前記膜部のさらに内側に向かって突出する突出部が形成され、
前記パイプが、前記膜部と前記突出部とによって形成される空間に挿通され、
前記連続プレートには、前記パイプを前記突出部に向かって押え付ける押付ボルトを挿入するネジ孔が形成され、
相対する前記膜部同士の間隔が前記パイプの外径よりも大きく前記ナットの外径よりも小さいことを特徴とする。
これにより、パイプに装着されたクランプが何らかの事情で落下したとしても、ナットがクランプ内に入り込むことがなく、ナットを回転させることが可能である。
【0016】
また、本発明の鉄筋支持機構は、
非磁性体で形成されていることを特徴とする。
これにより、たとえば、磁性を利用した新交通機関などに利用される場合において、鉄筋支持機構が磁性の影響を受けないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、精度よくコンクリートを打設するために配筋の位置を調整することが可能な鉄筋支持部材、および該鉄筋支持部材を用いて鉄筋を支持する鉄筋支持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す正面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す側面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構が配置されるトンネルを示す概要図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る鉄筋支持部材を上方から視た斜視図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構に用いられるクランプを示す斜視図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す正面図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す側面図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構を用いて傾斜した配筋を支持する場合を示す図である。
【
図9】各実施の形態に係る鉄筋支持機構に用いられるクランプの変形例を示す斜視図である。
【
図10】従来の鉄筋支持機構が施工されたトンネルを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す正面図であり、
図2はその側面図である。なお、第1の実施の形態においては、
図3に示すように、トンネル2の頂部Xに配置された鉄筋支持機構4について説明する。また、本明細書において、「上」あるいは「下」とは鉛直方向を基準とした上下方向を表している。
【0020】
図1、2に示すように、鉄筋支持機構4は、固定部材13によって基盤である支保工8に立設して固定され、吊り下げられている。
ロッド10は、外周にネジが形成されており、上端が固定部材13によって基盤である支保工8に固定されている。なお、ロッド10は、防水シート6を貫通しており、防水シート6は、ロッド10の上端に螺合されたナット9により、パッキン7、ワッシャ11を介して固定部材13に押し当てられている。なお、パッキン7は、たとえば、ブチルゴムなどの耐漏水性に優れた材質で形成されている。
【0021】
パイプ12は、その内径がロッド10の外径よりも大径となるように形成され、空洞内にロッド10が挿通されている。また、ロッド10よりもその長さが短く、上端および下端からロッド10が露出している。
【0022】
ナット14は、後述する鉄筋支持部材16がロッド10に取り付けられた状態でロッド10の下端から螺合されており、パイプ12および鉄筋支持部材16の落下が防止されている。なお、ナット14の外径は、少なくともパイプ12の内径よりも大径となるように形成されている。このため、後述する鉄筋支持部材16を取り付ける前にナット14を仮止めした際にも、パイプ12の落下を防止することができる。
【0023】
鉄筋支持部材16は、ロッド10に取り付けられ、基盤面である支保工8から軸方向に所定の間隔を離間させて格子状鉄筋20を支持するための金具である。
図4は、鉄筋支持部材16を上方から視た斜視図である。
図4に示すように、鉄筋支持部材16は、ロッド10を貫通させる貫通プレート22、および貫通プレート22に接続され格子状鉄筋20を支持する支持部24を備えている。
【0024】
貫通プレート22は、パイプ12とナット14の間に配置され、ロッド10を貫通させる貫通口22aを有している。
支持部24は、切り欠き26が形成された2枚の切欠プレート28を有しており、これらの切欠プレート28同士は、上方において接続プレート30によって接続されている。なお、切り欠き26には、格子状鉄筋20を構成する第1鉄筋20aが配置され、切欠プレート28同士の間に形成された縦断面逆U字型の第1空間32には、第1鉄筋20aと直交する第2鉄筋20bが配置されている。また、接続プレート30には、第2鉄筋20bを第1鉄筋20aに向かって押え付ける押えボルト34を挿入するネジ穴36が形成されている。
【0025】
クランプ18は、パイプ12に取り付けられ、鉄筋40を支持するための金具である。
図5(a)は、クランプ18を上方から視た斜視図であり、
図5(b)は、これを下方から視た斜視図である。
図5(a)、(b)に示すように、クランプ18は、鉄筋40を支持する凹状の切り欠き42を有する2枚の切込プレート44、および切込プレート44同士を接続する連続プレート46を備え、横断面略コの字型を有している。
【0026】
また、クランプ18は、2枚の切込プレート44と連続プレート46とに囲まれた位置にパイプ12が挿通される第2空間48を有している。そして、クランプ18の底部には、内側に突出する平面U字状の膜部50が形成され、膜部50が延びる方向の先端には、内側に向かって突出する突出部51が形成されている。この突出部51は、パイプ12に当接し、クランプ18の傾斜を防止する機能を有している。
【0027】
また、連続プレート46には、ネジ孔46aが形成され、ネジ孔46aにはパイプ12を鉄筋40に向かって押さえつけるためのボルト56が挿入される。これにより、パイプ12上の所定の高さにクランプ18を固定することができる。
【0028】
なお、相対する膜部50同士の間の間隔Z(少なくとも間隔Zの最小幅)はパイプ12の外形よりも大きくかつナット14の外形よりも小さく形成されている。このため、パイプ12に装着されたクランプ18が何らかの事情で落下したとしても、ナット14が第2空間48内に入り込むことがなく、ナット14を回転させることが可能である。
【0029】
次に、鉄筋支持機構4の使用方法について説明する。まず二次覆工において、ロッド10が支保工8に溶接されている固定部材13に立設して固定される。この際、ロッド10は、防水シート6を貫通し、パッキン7、ワッシャ11を介して固定部材13に固定された後、ナット9を締めることにより、防水シート6がパッキン7、ワッシャ11を介して固定部材13に向かって押し当てられる。
【0030】
次に、パイプ12がロッド10に貫通されて配置され、パイプ12にクランプ18が装着される。なお、クランプ18は、ロッド10の下端側から第2空間48にパイプ12を挿通させて配設される。次に、パイプ12の下方において、ロッド10に貫通口22aを貫通させて鉄筋支持部材16が取り付けられた後、ナット14がその下方からロッド10に螺合されて貫通プレート22がナット14とパイプ12の間に配設される。
【0031】
このようにして、トンネル2の掘削面5に鉄筋支持機構4が取り付けられる。なお、鉄筋支持機構4は、トンネル2の掘削面5の頂部Xのみならず、トンネル2の掘削面5の内周に沿って所定の間隔で取り付けられる(
図3参照)。
【0032】
次に、トンネル2内に配筋がなされる。ここで、本実施の形態においては、配筋が2段から成るが、トンネル2の外側(地山1側)の鉄筋40がクランプ18に支持されるように配筋され、トンネル2の内側(空洞部3側)の格子状鉄筋20が支持部24に支持されるように配筋される。
【0033】
具体的には、クランプ18は、パイプ12の軸方向の所定の高さにおいて、鉄筋40をクランプ18の切り欠き42に載せて配置される。そして、ボルト56を締めることにより、鉄筋40に向かってパイプ12を押さえつけ、クランプ18が所定の高さに固定される。
【0034】
また、鉄筋支持部材16の支持部24は、第2鉄筋20bが第1空間32に配設されるように、第2鉄筋20bを跨いで配置される。さらに、第1鉄筋20aが支持部24の切り欠き26に載せて配置された後、押えボルト34を締めることにより、第2鉄筋20bを第1鉄筋20aに向かって押え付け、第1鉄筋20aと第2鉄筋20bが交差した状態の格子状鉄筋20が支持部24に固定される。
【0035】
ここで、覆工コンクリート68が打設されるまでの間に自重によって格子状鉄筋20が撓み、垂れ下がる場合がある。この際には、ナット14を回転させ、貫通プレート22とパイプ12の位置を上昇させることにより、鉄筋40および格子状鉄筋20の位置が調整される。鉄筋40および格子状鉄筋20の位置が調整された後、図示しない型枠が配置され、覆工コンクリート68が打設される。
【0036】
この第1の実施の形態に係る発明によれば、パイプ12、および鉄筋支持部材16の貫通プレート22をロッド10に挿通させ、ナット14で鉄筋40および格子状鉄筋20の位置をロッド10の軸方向に移動できるようにすることにより、精度よく覆工コンクリート68を打設することができる。具体的には、たとえば、覆工コンクリート68を打設する前に鉄筋40および格子状鉄筋20の位置を調整することにより、覆工コンクリート68のかぶり厚を正確に施工することができる。
【0037】
次に、第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構について説明する。この第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構4´は、第1の実施の形態のように、鉄筋支持機構4が基盤から吊り下げられているのではなく、ロッド10の鉄筋支持部材16が配置される側が基盤に固定されるようにしたものである。また、この第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構4´は、ロッド10が支持板67(
図6、7参照)上にスライド可能に配置されている点で第1の実施の形態と大きく異なる。従って、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略する。また、第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態に係る鉄筋支持機構4の構成と同一の構成には、第1の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行なう。
【0038】
図6は、第2の実施の形態に係る鉄筋支持機構を示す正面図であり、
図7はその側面図である。
図6、7に示すように、鉄筋支持機構4´においては、鉄筋支持部材16よりも基盤側、すなわち、ナット14の下方にさらに座金部60がロッド10を貫通して配置されている。
【0039】
また、ロッド10の下端には、端部ナット62がロッド10に装着されている。なお、この端部ナット62は、支持板67上に固定されておらず、支持板67上を滑走可能に配置されている。このため、パイプ12、鉄筋支持部材16、クランプ18等を装着したロッド10は、直立したままの状態で支持板67上を水平方向にスライドすることができる。なお、第2の実施の形態においては、鉄筋支持部材16がネジ穴36を下方に向けて取り付けられている。
【0040】
また、鉄筋支持機構4´は、その下方に保持部材66を有している。ここで、保持部材66は、基盤となるスラブであるインバートスラブ64上に固定されロッド10を水平方向にスライド可能に支持する支持板67と、座金部60の脱落を防止する抜止部69を備えている。なお、抜止部69は、座金部60と当接する当接部70a、および当接部70aを支持板67に固定する固定部70bを備えている。なお、座金部60の上面と当接部70aの下面の間にはクリアランスSが存在する。このため、端部ナット62を支点としてロッド10を所定の傾斜角以上に傾斜させた場合に(
図8参照)、座金部60が当接部70aに当接し、それ以上ロッド10が傾斜することや、ロッド10が倒れることが防止される。
【0041】
次に、鉄筋支持機構4´の使用方法について説明する。まず、基盤であるインバートスラブ64に、たとえば、マトリクス状に所定の間隔で鉄筋支持機構4´が据え付けられる。ここで、基盤は必ずしもトンネル2内に配置されたインバートスラブ64である必要はなく、トンネル2外に配置されたスラブなどでもよい。次に、格子状鉄筋20が支持部24に支持されるように配筋されると共に、鉄筋40がクランプ18に支持されて配筋される。
【0042】
ここで、コンクリートスラブ70(
図8参照)が打設されるまでの間に自重によって鉄筋40および格子状鉄筋20が撓み、垂れ下がる場合がある。この際には、ナット14を回転させることにより、貫通プレート22およびパイプ12を動かし、貫通プレート22とパイプ12の位置を上昇させることにより、鉄筋40および格子状鉄筋20の位置が調整される。鉄筋40および格子状鉄筋20の位置が調整された後、図示しない型枠が配置され、覆工コンクリート68が打設される。
【0043】
なお、鉄筋支持機構4´は、傾斜するコンクリートスラブ70を打設する場合において有効である。たとえば、軌道におけるカント部の軌道スラブを打設する場合などがこれに該当する。この場合、
図8(a)に示すように、支持部24やクランプ18を傾斜させてロッド10に固定しておき、傾斜した支持部24やクランプ18に格子状鉄筋20、鉄筋40を支持させる。
【0044】
ここで、コンクリートスラブ70を打設する前に配筋の傾斜角度や水平位置がずれる場合がある。かかる場合において、ロッド10は、支持板67上を水平方向にスライド可能に配置されているため、
図8(b)の水平方向の矢印に示すように、格子状鉄筋20や鉄筋40が水平に移動した際において、これに追従することができる。また、ロッド10は、支持板67上において、端部ナット62を支点として傾斜することもできるため、
図8(b)の上下方向の矢印に示すように、格子状鉄筋20や鉄筋40の傾斜にもまた追従することが可能である。
【0045】
この第2の実施の形態に係る発明によれば、ロッド10が、支持板67上にスライド可能に配置され、かつ座金部60を介して支持板67上に傾斜可能に取り付けられているため、配筋の水平移動や傾斜に追従することができる。このため、コンクリートスラブ70が打設されるまでの間に配筋が水平方向にずれたり傾斜した場合においても、配筋の位置を微調整することができ、精度よくコンクリートスラブ70を打設することができる。
【0046】
なお、上述の第1の実施の形態においては、鉄筋支持機構4がトンネル2の頂部X(
図3参照)に吊り下げられている場合を例に説明しているが、本発明は、もちろんトンネル2の頂部X以外の部分に配置された鉄筋支持機構4および鉄筋支持部材16にも適用できる。
【0047】
また、上述の各実施の形態において、鉄筋支持部材16を含む鉄筋支持機構4および鉄筋支持機構4´、鉄筋40、格子状鉄筋20は、たとえば、非磁性のステンレス鋼や高マンガン鋼などの非鉄の非磁性体で形成されていてもよい。これにより、たとえば、コンクリートスラブ70が磁性を利用した新交通機関などに用いられる場合において、鉄筋支持機構4´、鉄筋40、格子状鉄筋20が磁性の影響を受けないようにすることができる。
【0048】
また、上述の各実施の形態において、鉄筋40および格子状鉄筋20は異形鉄筋であることを想定しているが、必ずしも異形鉄筋のみに限定されるものではなく丸鋼などを用いてもよい。
【0049】
また、上述の各実施の形態においては、クランプ18が交差していない鉄筋40を支持しているが、クランプ18においても格子状鉄筋を支持することができる。また、覆工鉄筋としては、鉄筋40と格子状鉄筋20の2段構成である場合を例示しているが、もちろん2段に限定されず、3段以上の構成にしても構わない。
【0050】
また、上述の各実施の形態において、
図9(a)、(b)に示すように、膜部50が形成されていないクランプ18´を用いてもよい。このクランプ18´は、底面において連続プレート46から第2空間48に向けて突出する受部47を備えている。受部47の先端には弧状部分47aが形成され、弧状部分47aがパイプ12に当接することにより、クランプ18´が傾斜しないようにすることができる。なお、クランプ18´もまた、ボルト56を締め、切り欠き42に載せられた鉄筋40に向かってパイプ12を押さえつけることにより、所定の高さに固定される。
【0051】
また、クランプ18´は、突出部51を備えていないため、ロッド10に貫通口22aを貫通させて鉄筋支持部材16が取り付けられた後(
図1、2参照)においても、パイプ12に装着することが可能である。
【0052】
また、上述の第2の実施の形態においては、ナット14の下方に座金部60が配置されているが、座金部60は、必ずしも円環状である必要はなく、当接部70aと当接し、鉄筋支持機構4´が保持部材66から外れない構造を有していれば足りる。
【0053】
また、上述の各実施の形態において、トンネル2は、必ずしも山岳トンネルに限定されず、また、NATM以外の工法で施工されてもよい。
また、上述の各実施の形態において、鉄筋支持部材16、クランプ18は、金具でなくてもよく、たとえば樹脂などで形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 地山
2 トンネル
3 空洞部
4、4´ 鉄筋支持機構
5 掘削面
6 防水シート
7 パッキン
8 支保工
9 ナット
10 ロッド
11 ワッシャ
12 パイプ
13 固定部材
14 ナット
16 鉄筋支持部材
18、18´ クランプ
20 格子状鉄筋
20a 第1鉄筋
20b 第2鉄筋
22 貫通プレート
22a 貫通口
24 支持部
26 切り欠き
28 切欠プレート
30 接続プレート
32 第1空間
34 ボルト
36 ネジ穴
40 鉄筋
42 切り欠き
44 切込プレート
46 連続プレート
46a ネジ孔
47 受部
47a 弧状部分
48 空間
50 膜部
51 突出部
56 ボルト
60 座金部
62 端部ナット
64 インバートスラブ
66 保持部材
67 支持板
68 覆工コンクリート
69 抜止部
70 コンクリートスラブ
70a 当接部
70b 固定部
102 トンネル
103 空洞部
104 掘削面
106 吹付コンクリート
108 支保工
110 ロックボルト
112 防水シート
114 ロッド
118 格子状鉄筋
120 覆工コンクリート
S クリアランス
X 頂部