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特許7432942高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20240209BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240209BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240209BHJP
   C11D 9/26 20060101ALI20240209BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C11D17/08
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/36
A61Q19/10
C11D9/26
C11D17/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021201288
(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公開番号】P2023086622
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503174051
【氏名又は名称】株式会社エス・ピー・エイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 満太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和子
(72)【発明者】
【氏名】中野 善郎
(72)【発明者】
【氏名】早▲崎▼ 泰
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199854(JP,A)
【文献】特開2013-28759(JP,A)
【文献】特開2008-239792(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122187(WO,A1)
【文献】特開2016-180066(JP,A)
【文献】特開2021-187744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12及び14の飽和脂肪酸を85~100モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸を、80℃以上に加温して溶融し、次いで、当該混合飽和脂肪酸に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、その後再び加温して40~55℃に保持し、該加温保持された混合脂肪酸含有液に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が90/10~30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、液状石鹸組成物を調製する、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法において、炭素数12の飽和脂肪酸は、炭素数14の飽和脂肪酸よりも多く含有されることを特徴とする、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法。
【請求項3】
炭素数12及び14の飽和脂肪酸を80~90モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸と、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~23質量部のステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物を80℃以上に加温して前記混合飽和脂肪酸を溶融し、
次いで、当該混合飽和脂肪酸とステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、当該グリセリンは混合飽和脂肪酸100質量部に対して30~75質量部で配合され、
前記冷却後に前記混合物を再び加温して40~55℃に保持し、
該加温保持された混合物に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が70/30~30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、ペースト状石鹸組成物を調製し、該ペースト状石鹸組成物中に、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~13質量部のタルク及び50~180質量部のソルビトールが含まれるように、前記中和前又は中和後にタルク及びソルビトールを配合する、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法において、更に糖類及び/又は油脂類を配合することを特徴とする、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄用の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法に関し、特に、高級脂肪酸ナトリウム石鹸を従来の石鹸組成物と比較して高濃度で含有し、低温であっても、ペースト状又は液状の状態を長期に維持することができ、使用性が良好で、高い起泡力を有し、皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優し高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤、皮膚洗浄剤、洗顔料などの身体洗浄用石鹸に関しては既に種々の技術が公開されており、身体洗浄剤としてアルキルサルフェート塩、アルキルエーテルサルフェート塩、α-オレフィンスルフォネート塩、アルキルカルボキシベタイン、アルキルメチルタウリン酸塩等の化学合成された界面活性剤(以下、「合成活性剤」と略記する)を含むものが多数市販されている。
【0003】
脂肪酸石鹸を製造する方法は古くから実用化されており、油脂にアルカリ水を加えて加熱するけん化法と脂肪酸にアルカリ水を加える中和法が一般的である。
特に、脂肪酸石鹸が主成分である液状身体石鹸には、脂肪酸または油脂を水酸化カリウムによって中和または鹸化して得られる脂肪酸カリウム塩(以下、「カリ石鹸」と略記する)が液状石鹸として広く用いられている。かかる液状カリ石鹸は、凝固したり、固結したりしない濃度まで水で希釈されて液状石鹸として流通しているものもある。
【0004】
例えば、特開2006-206525号公報(特許文献1)には、(a)高級脂肪酸石鹸を25~50質量%、(b)低級アルコールを0.5~10質量%、および(c)水を含有する、ペースト状皮膚洗浄料が開示されている。
また、特開2002-322498号公報(特許文献2)には、脂肪酸石鹸として、特定の重量比のミリスチン酸石鹸、パルミチン酸石鹸及びステアリン酸石鹸と、プロピレングリコール、グリセリン及び水を含有する組成物が提案されている。
【0005】
特開2004-210704号公報(特許文献3)には、(A)高級脂肪酸塩、(B)アミノ酸系ポリマー、(C)イオン性の異なる二種以上の水溶性高分子(成分Bを除く)を含有する、皮膚洗浄剤組成物が提案されている。
更に、特開2011-121870号公報(特許文献4)には、(A)硫酸基を有するアニオン性界面活性剤を1~10質量%、(B)高級脂肪酸又はその塩を1~25質量%、(C)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を0.1~2質量%、(D)(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテルを0.5~10質量%、(E)アルキルポリグルコシドを0.5~10質量%、(F)水を含有し、30℃における粘度が150~1000dPa・sである皮膚洗浄剤が提案されている。
【0006】
更に特開2015-196713号公報(特許文献5)には、脂肪酸組成がラウリン酸を50質量%以上含有する高級脂肪酸1モルに対して水酸化カリウム1~1.01モルで反応して得られた高級脂肪酸カリウム塩(A)の含有量が5~30質量%、アルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤(B)の含有量が1~10質量%であり、かつ(A):(B)の質量比が1:0.05~1である透明液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0007】
一方、飽和脂肪酸のナトリウム塩(以下、「ナトリウム石鹸」と略記する)は、主に固形石鹸として用いられているが、水に対する溶解性がカリ石鹸と比べて著しく低く、水にはほとんど解けないため、ナトリウム石鹸は工業原料であるソープチップとして流通し、混錬機にて加熱されて添加剤が配合された後、粘調液を型枠に流し込み化粧石鹸等に加工されている。ナトリウム石鹸のソープチップも水への溶解性は低く、温水でもその均質な溶解を得るのは容易ではない。
【0008】
しかし、カリ石鹸を主として含む液状石鹸は、泡立ちや洗浄力が十分ではなく、これを改善するため石油化学原料から合成された非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を少なくとも1種類以上が混合処方されて用いられている。更に、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール等の多価アルコール類及び水溶性高分子化合物等が配合されて、組成物の泡立ち等が工夫されている。
【0009】
脂肪酸石鹸は、人体への安全性に加えて環境への安全性にも問題がなく、泡切れや洗いあがりがさっぱりするなど、使用感への評価が高い。
しかし、上記したように、カリ石鹸は泡立ちや洗浄力が合成活性剤に比べて弱いことが難点とされ、一方でナトリウム石鹸は泡立ちが良く洗浄力も合成活性剤に匹敵するが、水への溶解度が小さいことが問題であった。
【0010】
ナトリウム石鹸の水溶性については、飽和脂肪酸のナトリウム塩のなかでも水への溶解性が比較的優れたラウリン酸のナトリウム石鹸であっても10質量%以上溶解するためには約40℃以上とすることが必要とされ、クラフト(Krafft)点は30℃以上であり、低濃度でも流動性を失ってしまい、パルミチン酸やステアリン酸等の、より長い炭素鎖を持つナトリウム石鹸は更に溶解性が低いとされている(新版 脂肪酸化学 第2版 平野二郎・稲葉恵一編者 幸書房)。
かかる溶解性の低さにより、得られる液状石鹸製品が分離したり、液状石鹸を入れた容器のノズルの詰まり等が発生してしまい、現状ではナトリウム石鹸を主成分とする液状脂肪酸石鹸組成物は商品化されていない。
【0011】
また、合成活性剤を配合した複合カリ石鹸洗浄剤は洗浄力や泡立ちの弱さは補えるものの、脂肪酸石鹸特有の使用感、即ち泡切れの良さ等が損なわれており、皮膚刺激やぬめり感があるなどの指摘がある。
従って、皮膚にマイルドでかつ粘性のある泡を豊富に発生し、洗い心地が良く、ヌメリ感なく、さっぱりとしたすすぎ易い飽和脂肪酸石鹸を主成分とする身体洗浄剤の製品化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2006-206525号公報
【文献】特開2002-322498号公報
【文献】特開2004-210704号公報
【文献】特開2011-121870号公報
【文献】特開2015-196713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高級脂肪酸ナトリウム石鹸分を高濃度で含むとともに、脂肪酸カリウム石鹸分をも含み、低温においても液状又はペースト状の状態を長期に維持するとともに、石鹸組成物が分離することなく、皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しく、高い起泡力と良好な洗浄力を有する、液状又はペースト状石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することにある。また、合成活性剤を含まない、液状又はペースト状石鹸組成物である、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することにある。
なお、本発明において、「低温」とは10℃より低い温度を表すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、通常使用されている合成活性剤を使用することなく、所定の混合脂肪酸、特に特定の飽和脂肪酸を所定割合で含む混合脂肪酸を用い、水で一定温度差にまで混合脂肪酸を冷却し、その後加温して、ナトリウム及びカリウムのアルカリで鹸化することで、上記課題を解決できる高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
即ち、第1の本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法は、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を85~100モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸を、80℃以上に加温して溶融し、次いで、当該混合飽和脂肪酸に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、その後再び加温して40~55℃に保持し、該加温保持された混合脂肪酸含有液に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が90/10から30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、液状石鹸組成物を調製する、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法である。
【0016】
好ましくは、上記第1の本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法において、炭素数12の飽和脂肪酸は、炭素数14の飽和脂肪酸よりも多く含有されることを特徴とする。
【0017】
第2の本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法は、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を80~90モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸と、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~23質量部のステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物を80℃以上に加温して前記混合飽和脂肪酸を溶融し、
次いで、当該混合飽和脂肪酸とステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、当該グリセリンは混合飽和脂肪酸100質量部に対して30~75質量部で配合され、
前記冷却後に前記混合物を再び加温して40~55℃に保持し、
該加温保持された混合物に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が70/30~30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、ペースト状石鹸組成物を調製し、該ペースト状石鹸組成物中に、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~13質量部のタルク及び50~180質量部のソルビトールが含まれるように、前記中和前又は中和後にタルク及びソルビトールを配合する、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法である。
【0018】
好ましくは、上記第2の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法において、更に糖類及び/又は油脂類を配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有液状石鹸組成物の製造方法は、低温においても長期間、均一な液状状態又はペースト状態を維持できるとともに、得られた石鹸組成物が経時的に分離することもなく安定性に優れ、皮膚や目に対して刺激が少なく、高い起泡力を有し、使用感に優れる透明な液状石鹸組成物又はペースト状石鹸組成物を、有効に生産性良く製造することができることとなる。
また、本発明の製造方法により得られた液状石鹸組成物及びペースト状石鹸組成物は、飽和脂肪酸石鹸分を洗浄成分とし界面活性剤を含むことがないため、皮膚への刺激が少なく、環境的にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を以下の好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法は、低温においても長期に液状又はペースト状保持性能を維持することができる石鹸組成物を調製することができる方法であり、特に本発明の第1の発明の透明な液状石鹸組成物の製造方法は、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を85~100モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸を、80℃以上に加温して溶融し、次いで、当該混合飽和脂肪酸に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、その後再び加温して40~55℃に保持し、該加温保持された混合脂肪酸含有液に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が90/10から30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、液状石鹸組成物を調製する、液状石鹸組成物の製造方法である。
【0021】
従来は、ナトリウム石鹸分を多く含む場合には、長期の低温性能に優れた透明な石鹸組成物を得ることはできなかったが、上記構成を有することで、低温域においても、得られる石鹸組成物は透明で、長期間分離をすることもなく、安定な液状状態を保持することが可能となる。
本発明の製造方法においては、化学合成された界面活性剤や粘性剤は配合されない。
【0022】
本発明の液状石鹸組成物の製造方法に用いる脂肪酸としては、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を85~100モル%含む、炭素数12~18の飽和脂肪酸よりなる混合飽和脂肪酸である。なお、炭素数8や10の飽和脂肪酸は含まれない。これは、炭素数8や10の飽和脂肪酸を含むと低温での液状石鹸組成物が液状を長期に保持する長期安定性が不安定となるからである。
本発明においては、不飽和脂肪酸は使用しない。不飽和脂肪酸を含むとその石鹸は酸化により色味や匂いが発生するため、皮膚洗浄用には適切ではないからである。
本発明の製造方法に用いる炭素数12~18、好ましくは炭素数12~16の飽和脂肪酸からなる混合脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が好ましく用いられ、複数の脂肪酸が混合された混合脂肪酸を使用する。
複数の飽和脂肪酸の混合脂肪酸とすることが低臭気性、色相の経時安定性の点から望ましい。
【0023】
更に、これらの飽和脂肪酸の全混合脂肪酸中には、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を85~100モル%、好ましくは88~98モル%含む。
全混合脂肪酸中に炭素数12及び14の飽和脂肪酸、ラウリン酸とミリスチン酸を上記高含量で配合することで、泡立ちが良好で、且つ透明な液状状態を低温域で長期間保持することが可能となる。
また、望ましくは、炭素数12の飽和脂肪酸は、炭素数14の飽和脂肪酸よりも多く配合されることが望ましく、これは上記液状石鹸組成物の効果を更に有効に発現できるからである。
【0024】
本発明の製造方法においては、前記混合飽和脂肪酸を攪拌しながら温度80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは80~95℃に加温して(加温温度)、混合飽和脂肪酸を均質に溶融させる。好ましくは攪拌しながら溶融を実施する。ここで、加温温度とは、混合飽和脂肪酸を加温して均質に溶融した最高加温温度をいうものとする。前記混合脂肪酸が均一に溶解できれば加温温度での保持時間は特に限定されないが、例えば20~60分ほど保持することが例示される。
【0025】
次いで、当該加温されて溶融した無色透明な混合脂肪酸を攪拌しながら、前記混合脂肪酸に冷却液を一度に添加して温度を前記加温温度よりも少なくとも20℃以上、好ましくは25℃以上低い温度に冷却する(冷却温度)。例えば、60℃以下、より好ましくは50℃以下に冷却する。
冷却液を加えて冷却した混合飽和脂肪酸と冷却液との混合物は、白色の小さな粒子が懸濁した状態を呈している。
【0026】
添加配合する冷却液の量は、80℃以上、好ましくは90℃以上に加温されて溶融した混合脂肪酸の加温温度が、冷却液を一気に加えることにより70℃以下、好ましくは60℃以下で、より好ましくは50℃以下で、前記加温温度より少なくとも20℃以上、好ましくは25℃以上低い温度に冷却できればよく、常温、例えば20℃程度の冷却液を添加する。
【0027】
また、冷却液には、グリンセリンと精製水とが含まれる。
例えば、冷却液中のグリセリンは、混合脂肪酸100質量部に対して、好ましくは15~30質量部、より好ましくは15~22質量部であり、精製水は好ましくは100~250質量部、より好ましくは115~200質量部であり、かかる割合のグリセリンと精製水との混合液である冷却液を添加することで上記加温温度から少なくとも20℃、好ましくは25℃以上低い冷却温度に冷却することができる。
【0028】
次いで、当該冷却温度の混合飽和脂肪酸含有液を、再び加温して40~55℃の加温制御温度に保持する。かかる工程を設けることで、得られる液状石鹸組成物が、低温での長期安定性(透明性・液状保持性能)を維持することができ、起泡性にも優れることができる。
【0029】
次いで、加温制御温度に保持された混合脂肪酸含有液に混合アルカリを一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、液状石鹸組成物を調製する。このように、冷却液を配合して急冷した後に再び加温して加温制御温度に保持された混合脂肪酸含有液にアルカリを加えて、攪拌しながら80~95℃に昇温して中和することで、得られる液状石鹸組成物が低温であっても長期に液状保持性能を有するとともに透明を保持することが可能となる。
混合飽和脂肪酸を中和して脂肪酸石鹸を得るために使用するアルカリは、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとの混合アルカリであり、かかる水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとの混合モル比の割合は90/10~30/70、好ましくは80/20~60/40である。
【0030】
更に、望ましくは、中和反応の際に粘性が向上することや、中和熱が局所的に発生することを抑制するため、混合アルカリに精製水を配合してもよい。
【0031】
かかる水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとは予め配合して混合アルカリを調製してから中和に用いても、予め配合することなく中和の際にそれぞれのアルカリを配合して用いてもいずれでも良い。
水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムのモル比率が90より高くなってしまうと、カリウム石鹸の影響が強くなり、泡立ちや洗浄力等が満足できるものではなく、また30より水酸化カリウムの比率が低くなると、得られる石鹸の硬度が上昇して液状でなくなるとともに、使用時に水に早く溶けず起泡性が低くなることがある。
また、混合脂肪酸の中和には、前記両アルカリを予めアルカリ水溶液(例えば、有効分濃度48%を基準)とし、これを中和に用いることも可能であり、これにより短時間で均一な溶液を得ることが可能となる。
【0032】
また、中和の際には発熱することになるが、上記昇温温度より温度が上昇してしまうと、得られる液状石鹸組成物が透明ではなくなるおそれがあるため、昇温に際しては、温度(昇温温度)が80~90℃になるように昇温をする。
【0033】
上記混合脂肪酸と混合アルカリを鹸化して得られた脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びステアリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩等が挙げられ、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩は必ず含まれるとともに、前記混合塩を2つ以上混合して使用することが起泡性で且つ泡立ちの良い液状石鹸を製造できる点から望ましい。
【0034】
本発明の方法により得られた液状石鹸組成物には、例えば、飽和脂肪酸石鹸分は8~35質量%、好ましくは10~35質量%、より好ましくは18~28質量%含まれることが、使用時、より充分な泡量が得られ、均質な液状石鹸組成物を、より保持できるからである。
【0035】
このようにして本発明の製造方法により得られた透明な液状石鹸組成物には、水が含まれ、該水は、上記冷却のための水及び各原料に含まれる水及び飽和脂肪酸とアルカリとの中和によって生成する水分等が該当し、液状石鹸組成物中、例えば、92~65質量%、好ましくは82~72質量%とすることが例示できる。かかる範囲となるように含有される水の量を調整すると、使用時に、より満足する起泡性が得られることとなる。
【0036】
なお、本発明の製造方法により得られる液状石鹸組成物は、下記実施例に記載の方法により測定して、低温において優れた長期液状保持性能及び透明性を有する液状石鹸組成物とすることができるものである。
なお、本発明の製造方法により得られる透明な液状石鹸組成物を、兵庫県RIKENのSPring-8により小角X線散乱(SAXS)にて測定した。水溶液中での石鹸ミセルの平均粒径は50nm以下で微細であり、透明状態を保持する石鹸溶液であることが裏付けられた。
【0037】
また、必要に応じて、上述した必須成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内において、高級アルコール類、スクワラン、種々の液体状あるいは固体状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ゴマ油等の各種精製天然油脂類などの油性成分、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコ―ンなどのシリコーン誘導体、ペクチン、アルギン酸などの天然水溶性高分子、グルコン酸ナトリウムなど生分解性のキレート剤、動植物由来の各種天然抽出物類、凝固点、硬度の調節に食塩、ボウ硝等の無機塩、d-トコフェロールなど天然酸化防止剤、天然色素類、天然香料類、その他を本発明の効果を損なわない程度の範囲内で任意に配合させることができる。
【0038】
第2の本発明の高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法は、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を80~90モル%含む炭素数12~炭素数18の飽和脂肪酸よりなる混合脂肪酸であって、炭素数8~10の飽和脂肪酸を含まない混合飽和脂肪酸と、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~23質量部のステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物を80℃以上に加温して前記混合飽和脂肪酸を溶融し、
次いで、当該混合飽和脂肪酸とステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとの混合物に、グリセリン及び水からなる冷却液を一度に加えて前記加温温度より少なくとも20℃以上低い温度に冷却し、当該グリセリンは混合飽和脂肪酸100質量部に対して30~75質量部で配合され、
前記冷却後に前記混合物を再び加温して40~55℃に保持し、
該加温保持された混合物に、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとのモル比が70/30~30/70の範囲で混合された混合アルカリの水溶液を一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、ペースト状石鹸組成物を調製し、該ペースト状石鹸組成物中に、前記混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~13質量部のタルク及び50~180質量部のソルビトールが含まれるように、前記中和前又は中和後にタルク及びソルビトールを配合する、高級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法である。
【0039】
従来は、ナトリウム石鹸を多く含む場合には、長期の低温ペースト保持性能に優れたペースト状石鹸組成物を得ることはできなかったが、本発明の上記構成を有することで、低温域において、ナトリウム石鹸を従来より多く含む場合であっても、得られるペースト状石鹸組成物は、長期のペースト状保持性能を有し、長期間分離しない安定なペースト状態を保持することが可能となる。
第2の本発明の製造方法においても、第1の本発明の製造方法と同様に、化学合成された界面活性剤や粘性剤は配合されないものである。
【0040】
本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法に用いる脂肪酸としては、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を80~90モル%含む、炭素数12~18の飽和脂肪酸よりなる混合飽和脂肪酸である。なお、炭素数8や10の飽和脂肪酸は含まれず、これは炭素数8や10の飽和脂肪酸が含まれると、低温でのペースト状石鹸組成物の長期ペースト状態保持性能の安定性が不安定となるからである。
本発明においては、不飽和脂肪酸は使用しない。不飽和脂肪酸を含むとその石鹸は酸化により色味や匂いが発生するため、皮膚洗浄用には適切ではないからである。
本発明の製造方法に用いる炭素数12~18、好ましくは炭素数12~16の飽和脂肪酸からなる混合脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が用いられ、ラウリン酸とミリスチン酸を含む複数の脂肪酸が混合された混合脂肪酸を使用する。
複数の飽和脂肪酸の混合脂肪酸とすることが低臭気性、色相の経時安定性の点から望ましい。
【0041】
更に、これらの飽和脂肪酸の全混合脂肪酸中には、炭素数12及び14の飽和脂肪酸を80~90モル%、好ましくは82~88モル%含む。
全混合脂肪酸中に炭素数12及び14の飽和脂肪酸、例えばラウリン酸とミリスチン酸を上記高含量で含むことを必須とすることで、泡立ちが良好で、且つペースト状態を低温域で長期間保持することが可能となる。
また、望ましくは、炭素数14の飽和脂肪酸は、炭素数12の飽和脂肪酸よりも多く含まれることが望ましく、これは上記ペースト状石鹸組成物の効果を更に有効に発現できるからである。
【0042】
また、ステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムを前記混合脂肪酸に配合する。かかるステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムは、混合飽和脂肪酸に予め配合されていることが望ましく、混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~23質量部、好ましくは8~16質量部の割合で配合される。
ステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムが混合飽和脂肪酸100質量部に対して3質量部未満となると、ペースト状石鹸組成物の流動性が大きくなることがあり、一方23質量部を超えると、ペースト状組成物の流動性は減少するがペーストのキメが粗くなってしまい望ましくない。
ステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムが配合されることで、得られるペースト状石鹸組成物は低温であっても長期にペースト状態を保持でき、低温での硬化を抑制するという作用があり、また洗浄時において制泡性もなく潤滑性のある泡を提供できると共に洗浄後にしっとり感等良好な感触を与えることができる。
【0043】
ここで、本発明の方法により調製されたペースト状石鹸組成物には、ステアリン酸カルシウム又はパルミチン酸カルシウムは含まれず、ステアリン酸カルシウム又はパルミチン酸カルシウムは、ステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムの代替として使用することはできない。これは、ステアリン酸カルシウム又はパルミチン酸カルシウムでは、ペースト状石鹸組成物の低温域での長期ペースト状態保持性能を維持することが難しいためである。
【0044】
次いで、前記混合飽和脂肪酸と、ステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウムとが配合された混合物を攪拌しながら温度80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは80~95℃に加温して(加温温度)、混合飽和脂肪酸を均質に溶融させる。好ましくは攪拌しながら溶融を実施する。ここで、加温温度とは、混合飽和脂肪酸を加温して均質に溶融した最高加温温度をいうものとする。前記混合脂肪酸が均一に溶解できれば加温温度での保持時間は特に限定されないが、例えば20~60分ほど保持される。
【0045】
また好ましくは、タルクを、混合飽和脂肪酸100質量部に対して3~13質量部の割合、より好ましくは、5~10質量部で配合することが望ましい。
かかる含有割合でタルクを含むことにより、低温域においてもペースト状石鹸組成物のペースト状態保持性能が、より有効に発現され、硬化を抑制するという効果があり望ましい。
タルクは、予め上記混合脂肪酸を調製する際に混合しても、ステアリン酸マグネシウム等とともに混合脂肪酸に配合しても、また後述する中和処理後に添加配合してもよい。
【0046】
また好ましくは、糖類を混合飽和脂肪酸100質量部に対して2~12質量部の割合、好ましくは2~8質量部で配合することが望ましい。
糖類としては、例えば、グラニュー糖等の市場で入手し得る糖を例示することができる。糖類を含むことにより、低温域においてもペースト状石鹸組成物のペースト状態保持性能が、より有効に発現され、硬化を抑制するという効果があり望ましい。
糖類は、予め上記混合脂肪酸を調製する際に混合しても、ステアリン酸マグネシウム等とともに混合脂肪酸に配合しても、また後述する中和処理後に添加配合してもよいが、後述する中和処理後に添加配合することが、より望ましい。
【0047】
次いで、当該加温されて溶融した混合脂肪酸とステアリン酸マグネシウム又はパルミチン酸マグネシウム、必要に応じて配合した糖類やタルクを配合したものを攪拌しながら、これに冷却液を一度に添加して温度を前記加温温度よりも少なくとも20℃以上、好ましくは25℃以上低い温度に冷却する(冷却温度)。例えば、60℃以下、より好ましくは50℃以下に冷却する。
冷却液を加えて冷却した混合飽和脂肪酸等と冷却液との混合物は、白色の小さな粒子が懸濁した状態を呈している。
【0048】
添加配合する冷却液の量は、80℃以上、好ましくは90℃以上に加温されて溶融した液状の混合脂肪酸の加温温度が、冷却液を一気に加えることにより70℃以下、好ましくは60℃以下で、前記加温温度より少なくとも20℃以上、好ましくは25℃以上低い温度に冷却できればよい。冷却液は、常温、例えば20℃程度の冷却液を配合に使用することができる。
当該冷却液には、グリンセリンと精製水とが含まれる。
冷却液中のグリセリンは、混合脂肪酸100質量部に対して、好ましくは30~75質量部、より好ましくは45~65質量部であり、精製水は好ましくは90~250質量部、より好ましくは90~150質量部であり、例えば、かかる割合のグリセリンと精製水との混合液である冷却液を添加することで上記加温温度から少なくとも20℃低い冷却温度に冷却することができる。
【0049】
また、本発明のペースト状石鹸組成物には、ソルビトールが配合されており、該ソルビトールは、前記冷却液に予め配合しておくことでも、一部を中和後に配合することでもかまわない。ソルビトールの配合量は、混合脂肪酸100質量部に対して、50~200質量部、好ましくは50~150質量部である。ソルビトールを含むことにより、低温域においてもペースト状石鹸組成物のペースト状態保持性能が、より有効に発現され、硬化を抑制するという効果があり望ましい。
【0050】
次いで、当該冷却温度の混合飽和脂肪酸等含有液を、再び加温して40~55℃の加温制御温度に保持する。かかる工程を設けることで、得られるペースト状石鹸組成物が、低温での長期安定性(ペースト状保持性能)を維持することができる。
【0051】
次いで、加温制御温度に保持された混合脂肪酸等含有液(混合物)に混合アルカリを一度に加えて、攪拌しながら昇温して80~95℃に保持して中和して、ペースト状石鹸組成物を調製する。このように、急冷した後に再び加温して加温制御温度に保持された混合脂肪酸含有液にアルカリを加えて、攪拌しながら80~95℃に昇温して中和することで、得られるペースト状石鹸組成物が低温であっても長期にペースト状保持性能を有することが可能となる。
冷却された上記混合飽和脂肪酸を中和して脂肪酸石鹸を得るために使用するアルカリは、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとの混合アルカリであり、かかる水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとの混合モル比の割合は70/30~30/70、好ましくは60/40~50/50である。
【0052】
更に、望ましくは、中和反応の際に粘性が向上することや、中和熱が局所的に発生することを抑制するため、混合アルカリに精製水を配合することが望ましい。
【0053】
かかる水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムと、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとは予め配合して混合アルカリを調製して中和に用いても、予め配合することなく中和の際にそれぞれ配合して用いてもいずれでも良い。
水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムのモル比率が70より高くなってしまうと、カリウム石鹸の影響が強くなり、泡立ちや洗浄力等が満足できるものではなく、また30より水酸化カリウムの比率が低くなると、得られる石鹸の硬度が上昇して液状でなくなるとともに、使用時に水に早く溶けず起泡性が低くなることがある。
また、混合脂肪酸の中和には、前記両アルカリを予めアルカリ水溶液(例えば、有効分濃度48%を基準)とし、これを中和に用いることも可能であり、これにより短時間で均一な溶液を得ることが可能となる。
【0054】
また、中和の際には発熱することになるが、上記昇温温度より温度が上昇してしまうと、得られるペースト状石鹸組成物が、上記効果を奏さない場合があるため、昇温に際しては、温度が80~90℃になるように昇温をする。
【0055】
上記混合脂肪酸と混合アルカリを鹸化して得られた脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びステアリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩等が挙げられ、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩は必ず含まれるとともに、前記混合塩を2つ以上混合して使用することが起泡性で且つ泡立ちの良いペースト状石鹸を製造できる点から望ましい。
【0056】
本発明の方法により得られたペースト状石鹸組成物には、例えば、飽和脂肪酸石鹸分は8~35質量%、好ましくは10~35質量%、より好ましくは18~28質量%含まれることが望ましく、かかる範囲であると、使用時、より充分な泡量が得られ、より均質なペースト状石鹸組成物が得られることとなるからである。
【0057】
このようにして得られた本発明の製造方法により得られたペースト状石鹸組成物には、水が含まれ、該水は添加水及び各原料に含まれる水及び脂肪酸とアルカリとの中和によって生成する水分等が該当し、ペースト状石鹸組成物中、28~65重量%、好ましくは35~50重量%であることが例示できる。
水分は水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が70/30~30/70になるにつれて、より多くの水分を含有することが必要となる。水酸化ナトリウムの使用割合が高くなるにつれて、鹸化によって生成する脂肪酸のナトリウム塩の濃度が高くなるが、生成する脂肪酸のナトリウム塩の水に対する溶解度が小さいためと考えられる。
例えば、水分が65重量%を超えると、使用時に満足する起泡性、泡量が得られにくくなり、一方28重量%未満となると、低温時で硬化しやすくなることが発生する場合がある。
かかる範囲で水の含有量を調整すると、低温域であっても適切で使いやすいペースト状となり、粘度も適正な範囲であり、流れ出す等の流動性を有さず、また硬く固形化することもない、ペースト状石鹸組成物を得ることができ望ましい。
【0058】
なお、本発明の製造方法において、最終的に得られる石鹸組成物が、下記条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200~3499g/cmの範囲のものをペースト状とするが、好ましくは200~999g/cmのものがペースト状態としては望ましい。なお、最大荷重が100~199g/cmのものを乳液状、99g/cm以下のものを本発明においては液状であると評価するものである。
(条件)粘性は、20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S-詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業、シリンジ出口直径を切削調整して6.0mmとする)に所定の温度(5℃)の石鹸組成物試料を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定した値で示す。
【0059】
また、必要に応じて、上述した必須成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内において、高級アルコール類、スクワラン、種々の液体状あるいは固体状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ゴマ油等の各種精製天然油脂類、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどの油性成分、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコ―ンなどのシリコーン誘導体、ペクチン、アルギン酸などの天然水溶性高分子、グルコン酸ナトリウムなど生分解性のキレート剤、動植物由来の各種天然抽出物類、凝固点、硬度の調節に食塩、ボウ硝等の無機塩、d-トコフェロールなど天然酸化防止剤、天然色素類、天然香料類、その他を本発明の効果を損なわない程度の範囲内で任意に配合させることができる。
【実施例
【0060】
以下、本発明を次の実施例、比較例及び試験例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用した原材料は下記のものである。
[原材料]
(1)脂肪酸
・ラウリン酸(炭素数12:Mw200.31):商品名 NAA122(日油(株)製)
・ミリスチン酸(炭素数14:Mw228.36):商品名 NAA142(日油(株)製)
・パルミチン酸(炭素数16:Mw256.42):商品名 NAA160(日油(株)製)
・ステアリン酸(炭素数18:Mw284.44):商品名 NAA180(日油(株)製)
(2)アルカリ
・水酸化ナトリウム:48%水酸化ナトリウム液(関東化学(株)製、試薬鹿1級)
・水酸化カリウム :48%水酸化カリウム液(関東化学(株)製、試薬鹿1級)
【0061】
(3)脂肪酸多価金属塩
・ステアリン酸マグネシウム:商品名ダイワックス M 大日化学工業株式会社製
(4)アルコール類
・グリセリン(和光一級:和光純薬(株)製)
・ソルビトール:商品名 NEOSORB70/70 シンコー・サイエンス・
コーポレーション社製(70%水溶性液)
(5)砂糖(三井製糖(株)グラニュー糖)
(6)タルク:商品名 SWA-A TALC 浅田製粉株式会社製
(7)精製水:商品名 日本薬局方 精製水 小堺製薬株式会社製
(8)MCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド;油分):商品名:日清MCTオイルHC100% 日清オイリオグループ株式会社製
(9)スクアラン:小城化成品株式会社製
【0062】
A.液状石鹸組成物
(実施例1~9、比較例1~10)
上記各脂肪酸を、下記表1及び2に示す配合割合で各脂肪酸を混合して、各混合脂肪酸を調製した。
次いで、撹拌機、温度計と滴下ロートを備えた1Lフラスコに、前記混合脂肪酸を仕込み、攪拌しながら加熱昇温して、表1及び2に示す各加温温度(a)で、混合脂肪酸がすべて溶融して均一に液状となるように20~60分間攪拌保持した。なお、溶融した混合脂肪酸は透明を呈していた。
なお、比較例5については、精製水及びグリセリンとを混合した液を、混合脂肪酸と予め混合し、当該混合液を表1及び2に示す温度に加温した(加温温度(a))。
【0063】
精製水とグリセリンとを表1及び2に示す割合で混合し、各冷却液を調製した。
上記各加温温度の液状混合脂肪酸を攪拌しながら、当該混合脂肪酸に約20℃の常温の冷却液を一度に加えて急冷し、前記フラスコ内の混合脂肪酸と冷却液との混合液の温度を表1及び2に示す各冷却温度(b)に冷却し、更に均一になるように約5分間攪拌して、白色の懸濁状態の液状分散液を得た。次いで、該液状分散液を40~50℃の加温制御温度(c)に加温して保持した。
なお、比較例5については、精製水を172(質量部/混合脂肪酸100質量部)及びグリセリン21(質量部/混合脂肪酸100質量部)とを混合した混合液を、予め混合脂肪酸と混合しているもので、冷却液としては用いられていない。従って、上記冷却工程はなく、加温温度の状態で約5分間攪拌した状態の温度を便宜上冷却温度(b)及び加温制御温度(c)の欄に記載しているものである。
【0064】
次いで、上記分散液が入っているフラスコに、48%水酸化カリウム水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液と(表1及び2)を予め混合して調製した混合アルカリ水溶液を一度に投入して、攪拌しながら中和(鹸化)を行った。
なお、混合アルカリ濃度(%)は、((48%KOH(g)+48%NaOH(g))×0.48)を(48%KOH(g)+48%NaOH(g)+希釈水(g)で割ったアルカリ濃度を示す。
【0065】
中和後、フラスコ内の中和液(鹸化液)が泡立たないように均一になるように攪拌しながら再び加温して、約30分間、表1及び2に示す昇温温度(d)に保持しながら熟成を行った。
熟成後、得られた組成物を室温にて放冷して、石鹸組成物を得た。
【0066】
実施例のものはすべて常温透明な液状状態(表8の評価)であった。比較例1~4及び7のものは、常温で透明な液状石鹸組成物であったが、比較例5のものは、常温で半固化状態となり、また比較例6、比較例8~10のものは常温で固体状態であった。
【0067】
試験例
(試験例1)常温での透明性・液状安定性
実施例1~10及び比較例1~4及び7により得られた各液状石鹸組成物を生成直後に、平底試験管F25-100(型番TEST-F25-100、AGCテクノグラス)に、泡立たないように高さ75mmとなるまで入れて、密栓して25℃恒温槽又は5℃恒温槽に静置して、組成物の温度が25℃になった状態で前記平底試験菅を縦(上部)及び横より目視にて、透明性を評価した。
なお、評価は、目視により、白色塊状物、白色沈殿、濁り、分離物はなく、更に前記平底試験管の上部より(縦方向)から観察して、当該試験管の底部に設置した明朝のフォント8ポイントの文字が鮮明に読解可能であった場合は透明性を有するものとして「透明」と評価し、その結果を表1及び2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
(石鹸水の調製)
上記各実施例及び比較例で得られた石鹸組成物を、精製水を用いて5%石鹸水及び10%石鹸水を調製し、以下の試験を実施した。
【0071】
(試験例2)液状保持性能・透明性
実施例1~9及び比較例1~10により得られた各石鹸組成物を使用して得られた前記各石鹸水を、平底試験管F25-100(型番TEST-F25-100、AGCテクノグラス)に、泡立たないように高さ75mmとなるまで入れて、密栓して5℃恒温槽に静置して、1週間静置する。1週間静置後における液状保持性能を目視にて、また前記平底試験菅を縦(上部)及び横よる透明性を目視にて評価した。
【0072】
なお、評価は以下のようにして、5℃(1週間後)での安定性を判定した。その結果を表3に示す。
・目視により、白色固体物が析出したり、固化が観察された場合は液状保持性能を有さず透明性も悪(×)
・目視により、白色塊状物、白色沈殿、濁り、分離物はなく、更に前記平底試験管の上部より(縦方向)から観察して、当該試験管の底部に設置した明朝のフォント8ポイントの文字が鮮明に読解可能であった場合は透明性良好であり、且つ下記の試験例4の基準で液状であるもの(〇)
【0073】
(試験例3)起泡性
上記実施例及び比較例のうち、5%及び10%石鹸水の双方ともが透明で液状であったものについて、5℃での起泡性の試験を簡易振盪法により実施した。
【0074】
具体的には、AGCテクノグラス(株)製の25mm径平底試験管(TEST-F25-100)3本に、得られた各石鹸水3gをスポイトを用いて秤量注入し、塩化ビニルラップと輪ゴムで密栓してから試験管立てをセットした5℃の恒温水槽に浸して30分間5℃に保持した後、20秒間で20回天地返しにより振盪させ、直後の起泡性試験として、当該試験管底部からの液面(=泡部の底の)高さと泡部の最高位の高さを測定して泡部の高さとした。
【0075】
その後再度、当該各試験管を恒温水槽に浸し、5分間静置後に5分後の起泡性試験として、液面高さと泡部の最高位の高さを測定して、泡部の高さとした。同様の操作を全3本の試験管にて行い、液面と泡部高さの平均値を算出し、各脂肪酸石鹸組成物の起泡性を判定した。
その結果を表3に示す。
【0076】
なお、評価結果は以下のようにした。
・5分後測定された泡部の高さが30mm以上の場合は起泡性高(〇)
・泡部の高さが20mm未満の場合は起泡性低(×)
・泡部の高さが20mm以上30mm未満の場合は起泡性中(△)
【0077】
総合評価(5℃)
・試験例2及び試験例3の評価がすべて〇であったものを〇とした。
・試験例2及び試験例3の評価のうち、いずれかが×のものを△とした。
・試験例2及び試験例3の評価がすべて×であったものを×〇とした。
その結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
上記表1~3より、実施例の液状石鹸組成物は、すべて低温下での液状保持性能及び透明性に優れ、起泡性にも優れるものである。
また、実施例の液状石鹸組成物、当該各液状石鹸組成物の5%水溶液、10%水溶液に関し、5℃の低温状態で1か月保存したものについて、上記試験例2~3を実施したところ、液状保持性能を維持し、透明であり、泡立ちも〇であり、表3の結果と同じ結果を得た。
【0080】
B.ペースト状石鹸組成物
(実施例10~20、比較例11~20)
上記各脂肪酸を、下記表4及び6に示す配合割合で各脂肪酸を混合して、各混合脂肪酸を調製した。該混合脂肪酸に、下記表4及び6に示す配合割合で、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを混合した(混合脂肪酸等混合物)。
次いで、撹拌機、温度計と滴下ロートを備えた1Lフラスコに、前記混合脂肪酸等混合物を仕込み、攪拌しながら加熱昇温して、表5及び7に示す各加温温度(a)で、混合脂肪酸をすべて溶融させて、20~60分間攪拌保持した。
【0081】
精製水にグリセリンとソルビトール(なお、表4及び6中のソルビトールの数値は、ソルビトール水溶液の質量部ではなく、実質的なソルビトールの質量部を表すものである)とを表4及び6に示す割合で混合し、各冷却液を調製した。
上記前記各加温温度の混合脂肪酸等混合物を攪拌しながら、当該混合脂肪酸等混合物に約20℃の冷却液を一度に加えて急冷し、前記フラスコ内の混合脂肪酸等混合物と冷却液との混合物の温度を表5及び7に示す各冷却温度(b)とし、更に均質になるように約5分間攪拌して、白色の懸濁状態の分散液を得た。次いで、該分散液を表5及び7に示す加温制御温度(c)に加温して保持した。
【0082】
次いで、加温制御温度の上記各分散液が入っているフラスコに、48%水酸化カリウム水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液と(表5及び7)を予め混合して調製した混合アルカリ水溶液を、一度に投入して、攪拌しながら中和(鹸化)を行った。
なお、混合アルカリ濃度(%)は、((48%KOH(g)+48%NaOH(g))×0.48)を(48%KOH(g)+48%NaOH(g)+希釈水(g)で割ったアルカリ濃度を示す。
【0083】
中和後、グラニュー糖、MCT、スクアランを必要に応じて表4~7に示す割合で配合した。次いで、フラスコ内の中和液(鹸化液)が泡立たないように均一になるように攪拌しながら加温して、約30分間、表5及び7に示す昇温温度(d)に保持しながら熟成を行った。
熟成後、得られた組成物を室温にて放冷して、石鹸組成物を得た。
実施例のものはすべてペースト状の脂肪酸石鹸組成物が得られた。
【0084】
(試験例4)ペースト状保持性能
実施例10~20及び比較例11~12、比較例14~16及び比較例18~20により得られた各石鹸組成物を、平底試験管F25-100(型番TEST-F25-100、AGCテクノグラス)に、泡立たないように高さ75mmとなるまで入れて、密栓して5℃恒温槽に静置して、1か月間静置した。1か月静置後におけるペースト保持性能を目視にて評価するとともに、以下の粘性試験で評価した。なお、比較例13及び17については、常温においても固化しており、5℃での1か月静置後においても固化状態であった。
【0085】
5℃で1か月静置した各石鹸組成物について、下記粘性試験して、5℃でペースト状であるかを試験した。
(粘性試験)
20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S-詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業)の注入口を内径6.0mmの孔となるように切削処理して調整したシリンジ(シリンジ出口直径:6.00mm)を用いて、所定の温度(5℃)で恒温となった各石鹸組成物を上記シリンジに約15ml注入し、空気が入らないように出口を塞いで圧縮した後、各試料が円柱状に押出されたことを確認してから垂直に支持台に固定した。
次いで、シリンジの注入棒の上に設置したプラスチック製の箱(13g)の中に分銅を積載して、シリンジ内の各石鹸組成物試料の吐出が開始するときの最大荷重を測定して、粘性の試験を行った。その評価は、以下の表8に示す評価基準とした。得られた結果を下記表9に示す。
【0086】
(試験例5)起泡性
試験例4でペースト状保持性能を維持した実施例について、5℃での起泡性の試験を簡易振盪法により実施した。
具体的には、AGCテクノグラス(株)製の25mm径平底試験管(TEST-F25-100)3本に、得られた各ペースト状石鹸3gと精製水5mlをスポイトを用いて秤量注入し、塩化ビニルラップと輪ゴムで密栓してから試験管立てをセットした5℃の恒温水槽に浸して30分間5℃に保持した後、20秒間で20回天地返しにより振盪させ、直後の起泡性試験として、当該試験管底部からの液面(=泡部の底の)高さと泡部の最高位の高さを測定して泡部の高さとした。
【0087】
その後再度、当該各試験管を恒温水槽に浸し、5分間静置後に5分後の起泡性試験として、液面高さと泡部の最高位の高さを測定して、泡部の高さとした。同様の操作を全3本の試験管にて行い、液面と泡部高さの平均値を算出し、各脂肪酸石鹸組成物の起泡性を判定した。
【0088】
なお、評価結果は以下のようにした。
・5分後測定された泡部の高さが30mm以上の場合は起泡性高(〇)
・泡部の高さが20mm未満の場合は起泡性低(×)
・泡部の高さが20mm以上30mm未満の場合は起泡性中(△)
得られた結果を下記表9に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
上記表9より、実施例のペースト状石鹸組成物は、すべて低温下でのペースト保持性能に優れ、起泡性にも優れるものである。一方、各成分の配合量等が本件発明の範囲外等であると、得られる石鹸は、5℃での長期ペースト保持性能が劣り、ペースト状を維持することができず、流れ出したり、固形化することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の級脂肪酸ナトリウム及び高級脂肪酸カリウム含有石鹸組成物の製造方法により調製された液状石鹸組成物及びペースト状石鹸組成物は、寒冷地域においても、また冬場においても、液状又はペースト状を維持することができるため、使い勝手がよく、顔や身体の皮膚洗浄用に有効に適用することができる。