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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20240209BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240209BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240209BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B01D21/02 Z
B01D21/24 F
B01D21/30 G
B01D21/30 K
B01D21/01 B
B01D21/01 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021514825
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010453
(87)【国際公開番号】W WO2020213305
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019076938
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519137350
【氏名又は名称】株式会社ツーフィールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正章
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-067966(JP,U)
【文献】特開昭59-066393(JP,A)
【文献】米国特許第02230386(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103241815(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-35/95
B01D 21/00
C02F 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽と前記沈殿室の少なくとも一方に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記水処理装置は、前記攪拌槽の被処理水への散気、前記攪拌槽の被処理水に入っている攪拌翼の駆動、の少なくとも一方により、前記攪拌槽の被処理水を前記垂直断面における前記沈殿室の外側において循環させる攪拌手段をさらに備える、水処理装置。
【請求項2】
流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記水処理装置は、前記沈殿室の外壁部の最上部よりも低い位置において前記攪拌槽の側壁と前記沈殿室の外壁部との間に前記流入水を導入し、前記攪拌槽の被処理水に含まれる微生物からの気泡により、前記攪拌槽の被処理水を前記垂直断面における前記沈殿室の外側において循環させる、水処理装置。
【請求項3】
流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽と前記沈殿室の少なくとも一方に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記沈殿室は、前記被処理水流通部よりも高く前記処理水流出部よりも低い位置において当該沈殿室の被処理水が前記攪拌槽に流出する浮遊物質返送部を有する、水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水処理場において標準活性汚泥法により下水処理が行われている。図14は、下水処理場で行われている標準活性汚泥法のフローを模式的に示している。図14に示すフローの場合、最初沈殿池において、流入水がゆっくりと流れ、沈降した最初沈殿池汚泥が除去される。最初沈殿池から流出した上澄みは、反応タンクに流入し、散気装置から大量の空気が送り込まれて攪拌される。これにより、微生物が被処理水中の汚れを分解し、微生物を含む活性汚泥のフロックが増える。反応タンクは、微生物が汚れを分解することから生物反応槽とも呼ばれる。活性汚泥を含む被処理水は、反応タンクとは別の場所に設置されている最終沈殿池に流入してゆっくりと流れ、沈殿成分である汚泥と上澄み成分である処理水とに分離する。最初沈殿池において沈殿した汚泥は、一部が返送汚泥として反応タンクに戻され、残りが余剰汚泥として汚泥処理が行われる。最終沈殿池から流出した処理水は、必要に応じて塩素で消毒され、河川や海に放流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】「下水道施設計画・設計指針と解説 後編-2009年版-」、社団法人日本下水道協会、2009年9月、p.86
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術は、最終沈殿池を反応タンクとは別の場所に設置する必要があるため、反応タンクと最終沈殿池を設置するために広い面積が必要である。
尚、上述のような課題は、下水以外の廃水、さらに廃水以外の水を処理する場合にも存在する。
【0005】
本発明は、少ない設置面積で水処理を行うことが可能な水処理装置を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理装置は、流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽と前記沈殿室の少なくとも一方に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記水処理装置は、前記攪拌槽の被処理水への散気、前記攪拌槽の被処理水に入っている攪拌翼の駆動、の少なくとも一方により、前記攪拌槽の被処理水を前記垂直断面における前記沈殿室の外側において循環させる攪拌手段をさらに備える、態様を有する。
また、本発明の水処理装置は、流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記水処理装置は、前記沈殿室の外壁部の最上部よりも低い位置において前記攪拌槽の側壁と前記沈殿室の外壁部との間に前記流入水を導入し、前記攪拌槽の被処理水に含まれる微生物からの気泡により、前記攪拌槽の被処理水を前記垂直断面における前記沈殿室の外側において循環させる、態様を有する。
さらに、本発明の水処理装置は、流入水から処理水を得る水処理装置であって、
被処理水が入っている攪拌槽と、
前記被処理水が流通する被処理水流通部、及び、該被処理水流通部よりも高い位置において前記処理水が流出する処理水流出部を少なくとも有し、前記攪拌槽の被処理水の水面下において外側から隔てられ、固形物を沈殿させる沈殿室と、を備え、
前記流入水が前記攪拌槽と前記沈殿室の少なくとも一方に流入し、
前記処理水が前記処理水流出部から前記攪拌槽外へ流出し、
前記沈殿室を通る垂直断面において前記攪拌槽の被処理水が前記沈殿室の外側を循環するようにされ、
前記沈殿室は、前記被処理水流通部よりも高く前記処理水流出部よりも低い位置において当該沈殿室の被処理水が前記攪拌槽に流出する浮遊物質返送部を有する、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少ない設置面積で水処理を行うことが可能な水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A,1Bは水処理装置の例を模式的に示す図、図1C図1Bに示す沈殿室を模式的に示す図。
図2図2A,2Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図3図3は、水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図4図4は、水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図5図5A,5Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図6図6A,6Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図7図7A,7Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図8図8A,8Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図9図9A,9Bは水処理装置の別の例を模式的に示す図。
図10図10は、水処理装置の試験装置を模式的に示す図。
図11図11は、反応槽滞留時間に応じたCOD除去率の測定結果を示す図。
図12図12は、水処理装置の設計例を模式的に示す図。
図13図13は、比較例として標準活性汚泥法による生物反応槽及び沈殿槽の設計例を模式的に示す図。
図14図14は、比較例として標準活性汚泥法のフローを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~14に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る水処理装置1は、流入水W1から処理水W3を得る水処理装置1であって、被処理水W2が入っている攪拌槽10と、沈殿室(例えば図1B等に示す沈殿槽20)と、を備える。前記沈殿室(20)は、前記被処理水W2が流通する被処理水流通部21、及び、該被処理水流通部21よりも高い位置において前記処理水W3が流出する処理水流出部22を少なくとも有し、前記攪拌槽10の被処理水W2の水面下において外側から隔てられ、汚泥等といった固形物を沈殿させる。本水処理装置1において、前記流入水W1が前記攪拌槽10と前記沈殿室(20)の少なくとも一方に流入し、前記処理水W3が前記処理水流出部22から前記攪拌槽外へ流出し、前記沈殿室(20)を通る垂直断面において前記攪拌槽10の被処理水W2が前記沈殿室(20)の外側を循環するようにされている。
【0012】
本技術の水処理は、廃水処理でもよいし、廃水処理でなくてもよく、例えば、流入水W1の生物処理、流入水W1に含まれる固形物の凝集処理、流入水W1に含まれる汚泥の濃縮処理、等を含む。上記態様1では、攪拌槽10の被処理水W2が垂直断面において沈殿室(20)の外側を循環することにより被処理水W2の流れのエネルギー損失が少なくなって効率良く攪拌され、例えば、微生物による被処理水中の汚れの分解や、被処理水中の固形物の凝集や、被処理水中の固形物の濃縮が促進される。被処理水W2は、被処理水流通部21により攪拌槽10と沈殿室(20)との間で流通する。沈殿室(20)では、被処理水中の固形物が沈殿し、被処理水流通部21よりも高い位置にある処理水流出部22から攪拌槽外へ処理水W3が流出する。これにより、例えば、被処理水W2を固形物と処理水W3とに分離する最終沈殿池の機能が攪拌槽10の内部において実現される。本態様は、被処理水中の固形物を沈殿させるために沈殿槽を攪拌槽10とは別に設ける必要が無いので、少ない設置面積で水処理を行うことが可能な水処理装置を提供することができる。
【0013】
ここで、流入水には、下水や工場排水や生活排水といった生物処理の対象となる汚水、固形物の凝集対象となる汚水、濃縮対象となる汚泥、等が含まれる。
攪拌槽の上部は、開口していてもよいし、密閉等、閉じていてもよい。例えば、攪拌槽の被処理水の循環を促進させるために散気する場合、攪拌槽の上部に開口等、空気を排出する手段があると好ましい。また、本水処理装置をメタン発酵装置に適用する場合、上部が閉じていると好ましい。
沈殿室において沈殿する固形物は、泥状の物質である汚泥を含むが、汚泥に限定されない。汚泥は、多量の微生物を含む活性汚泥を含むが、活性汚泥に限定されない。
沈殿室における被処理水流通部は、沈殿室の最下部にあってもよいし、沈殿室の最下部よりも上にあってもよい。
沈殿室における処理水流出部は、沈殿室の最上部にあってもよいし、沈殿室の最上部よりも下にあってもよい。
沈殿室において沈殿した固形物は、被処理水流通部から攪拌槽に戻ってもよい。本水処理装置において沈殿した固形物は、ポンプに繋がっている管を人手で攪拌槽に差し込んで吸い上げる等、人手により除去されてもよい。
流入水は、攪拌槽に流入してもよいし、沈殿室に流入してもよいし、攪拌槽と沈殿室の両方に流入してもよい。
攪拌槽の被処理水の水面下に配置される沈殿室の数は、一つでもよいし、2以上でもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
[態様2]
本水処理装置1は、前記攪拌槽10内において沈殿した固形物と、前記沈殿室(20)内に存在する固形物と、の少なくとも一方を前記攪拌槽外へ排出する固形物排出部(例えば図1B等に示す汚泥管70)を備えていてもよい。この態様は、攪拌槽10内において沈殿した固形物と、沈殿室(20)内に存在する固形物と、の少なくとも一方が固形物排出部(70)により攪拌槽外へ排出されるので、少ない設置面積で水処理を行う好適な水処理装置を提供することができる。
ここで、固形物排出部は、攪拌槽内において沈殿した固形物のみ排出してもよいし、沈殿室内に存在する固形物のみ排出してもよいし、攪拌槽内と沈殿室内の両方に存在する固形物を排出してもよい。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様3]
図3等に例示するように、本水処理装置1は、前記固形物排出部(70)の流路を開閉する固形物流路開閉弁(例えば汚泥弁75)を備えていてもよく、前記沈殿室(20)内と前記攪拌槽10内の少なくとも一方の被処理水W2の浮遊物質濃度(例えばMLSS濃度)を検出する濃度検出部80を備えていてもよく、該濃度検出部80により検出された浮遊物質濃度に基づいて前記固形物流路開閉弁(75)を動作させる固形物排出制御部91を備えていてもよい。この場合、沈殿室(20)内と攪拌槽10内の少なくとも一方の被処理水W2の浮遊物質濃度に基づいて固形物流路開閉弁(75)により固形物排出部(70)の流路が開閉するので、沈殿室(20)内や攪拌槽10内の固形物濃度を制御することが可能になる。従って、本態様は、少ない設置面積で水処理を行う好適な水処理装置を提供することができる。
ここで、濃度検出部は、沈殿室内の被処理水の浮遊物質濃度のみ検出してもよいし、攪拌槽内の被処理水の浮遊物質濃度のみ検出してもよいし、沈殿室内と攪拌槽内の両方の被処理水の浮遊物質濃度を検出してもよい。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様4]
図4等に例示するように、本水処理装置1は、前記処理水流出部22の流路を開閉する処理水流路開閉弁(例えば処理水弁65)を備えていてもよく、前記濃度検出部80により検出された浮遊物質濃度に基づいて前記処理水流路開閉弁(65)を動作させる処理水流出制御部92を備えていてもよい。この場合、沈殿室(20)内と攪拌槽10内の少なくとも一方の被処理水W2の浮遊物質濃度に基づいて処理水流路開閉弁(65)により処理水流出部22の流路が開閉するので、固形物が処理水W3とともに流出することを回避することが可能になる。従って、本態様は、少ない設置面積で水処理を行う好適な水処理装置を提供することができる。
【0017】
[態様5]
図6A等に例示するように、前記沈殿室(20)は、前記被処理水流通部21よりも高く前記処理水流出部22よりも低い位置において当該沈殿室(20)の被処理水W2が前記攪拌槽10に流出する浮遊物質返送部23を有していてもよい。気泡が付着した固形物は、見掛け比重が小さくなり、処理水W3中に流出する可能性がある。沈殿室(20)に浮遊物質返送部23があることにより、沈殿室(20)内にある気泡や浮上固形物が攪拌槽10に返送され、固形物が処理水W3とともに流出することを回避することが可能になる。従って、本態様は、少ない設置面積で水処理を行う好適な水処理装置を提供することができる。
【0018】
[態様6]
本水処理装置1は、前記攪拌槽10の被処理水W2への散気(例えば図1B参照)、前記攪拌槽10の被処理水W2に入っている攪拌翼の駆動(例えば図2A参照)、前記攪拌槽10への流入水W1の流れ(例えば図2A参照)、及び、前記攪拌槽10の被処理水W2に含まれる微生物からの気泡(例えば図2B参照)、の少なくとも一つにより、前記攪拌槽10の被処理水W2を前記垂直断面における前記沈殿室(20)の外側において循環させる攪拌手段40を備えていてもよい。本態様は、攪拌手段40により攪拌槽10の被処理水W2の循環が促進されるので、水処理の効率を向上させることができる。
【0019】
(2)水処理装置の具体例:
図1~9は、水処理装置1の概念に含まれる種々の具体的な廃水処理装置1A~1Oを模式的に例示している。まず、図1A,1Bに示す廃水処理装置1Aを説明する。図1Aは廃水処理装置1Aを上から見た平面図であり、図1Bは沈殿槽20(沈殿室の例)を通る廃水処理装置1Aの垂直断面図であり、図1Cは廃水処理装置1Aの沈殿槽20を示す垂直断面図である。図1B,1C等において、UPは上を示し、DOWNは下を示している。本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、左右を逆にしたり、前後を逆にしたり、循環流C1の向きを逆にしたりすること等も、本技術に含まれる。
尚、沈殿室は、標準活性汚泥法の最終沈殿池と同じ機能を発揮することが可能である。そこで、本具体例では、符号20で示される要素を沈殿槽と呼んでいる。
【0020】
廃水処理装置1Aは、攪拌槽10、沈殿槽20、攪拌手段40、流入管50、処理水管60、汚泥管70(固形物排出部の例)、等を備えている。廃水処理の対象である流入水W1は、流入管50を経由して攪拌槽10の中に導入される。流入管50からの流入水W1は、図1Bに示すように、攪拌槽10内の被処理水W2の水面WSに落下してもよいし、水面WSよりも下の位置において攪拌槽10内に導入されてもよい。攪拌槽10内の被処理水W2の一部は、沈殿槽20に入り、汚泥S1(固形物の例)と処理水W3とに分離する。処理水W3は処理水管60を経由して攪拌槽10の外へ流出し、汚泥S1は攪拌槽10から汚泥管70を経由して攪拌槽10の外へ排出される。
【0021】
攪拌槽10は、略水平の矩形状の底10b、及び、4面ある略鉛直の矩形状の側壁10wを有し、上部に開口11を有している。開口11は、蓋12で覆われてもよい。廃水処理装置1Aを標準活性汚泥法の代わりに使用する場合、蓋12は無くてもよい。廃水処理装置1Aをメタン発酵装置に適用する場合、攪拌槽10に蓋12を取り付けることによりメタンガスを集めることができる。攪拌槽10は、沈殿槽20を収容し、沈殿槽20の外側において被処理水W2を貯留する。攪拌槽10に入っている被処理水W2は、流入水W1の流入及び沈殿槽20への流出により徐々に流れている。
攪拌槽10と蓋12には、生物反応槽やメタン発酵装置に使用されている構造物、例えば、コンクリート、ポリオレフィンといった合成樹脂、鋼といった金属、等といった材質の構造物を使用することができる。攪拌槽10の形状は図1A,1Bに示す形状に限定されず、例えば、底10bが水平からずれてもよいし、側壁10wが鉛直からずれてもよいし、底10bが楕円形といった非矩形でもよい。
【0022】
沈殿槽20は、攪拌槽10の被処理水W2の水面下において攪拌槽10の内部に設置され、外側から隔てられた内部において汚泥S1を沈殿させる。すなわち、攪拌槽10の内部空間は、沈殿槽20の存在により、沈殿槽20の内部空間と沈殿槽20から外側の空間とに分割されている。沈殿槽20は、傾斜部31~34と立壁部35を含む外壁部30を備えている。外壁部30は、水平である軸方向D1に対して直交する垂直断面の形状がほぼ同じであり、閉じた最上部に繋がっている上傾斜部31,32、開いた最下部に繋がっている下傾斜部33,34、及び、軸方向D1における両端部を閉塞する略鉛直の立壁部35を含んでいる。外壁部30は、軸方向D1に対して直交する垂直断面において、下傾斜部33、上傾斜部31、上傾斜部32、及び、下傾斜部34が順に繋がり、沈殿槽20の内部空間を囲んでいる。上傾斜部31の傾斜角θ1、上傾斜部32の傾斜角θ2、下傾斜部33の傾斜角θ3、及び、下傾斜部34の傾斜角θ4は、汚泥の堆積を抑制する点から、40~80°程度が好ましく、50~70°程度がより好ましい。軸方向D1に対して直交する垂直断面における外壁部30の外面には、被処理水流通部21を除いて凹んだ部位が無い。これにより、外壁部30の外側を廻る循環流C1に小さな旋回流が生じ難く、循環流C1のエネルギー損失が抑制され、攪拌槽10の被処理水W2が効率良く攪拌される。
【0023】
沈殿槽20は、支持部36により攪拌槽10に支持されている。支持部36は、図1Aに示すように立壁部35を支持してもよいし、傾斜部31~34の少なくとも一部を支持してもよい。支持部36の設置箇所は、図1Aに示すように攪拌槽の底10bでもよい、攪拌槽の側壁10wでもよいし、蓋12等でもよい。
尚、軸方向D1における外壁部30の両端部のうち少なくとも一方は、立壁部35の代わりに攪拌槽の側壁10wにより閉塞されてもよい。この場合、側壁10wにより外壁部30が支持されるので、沈殿槽20に支持部36が無くてもよい。
【0024】
外壁部30の最下部は、軸方向D1に沿って開口している。これにより、沈殿槽20は、攪拌槽10の被処理水W2が流入する被処理水流通部21を外壁部30の最下部に有している。また、上傾斜部32の上部には、処理水管60を経由して処理水W3が流出する処理水流出部22が配置されている。従って、処理水流出部22は、被処理水流通部21よりも高い位置にある。むろん、処理水流出部22の位置は、上傾斜部32に限定されず、上傾斜部31、立壁部35、等でもよい。被処理水流通部21の位置は、処理水流出部22よりも低い位置であればよく、立壁部35、下傾斜部33,34において最下部を除く位置、等でもよい。
沈殿槽20には、ポリオレフィンといった合成樹脂、鋼といった金属、コンクリート、等といった材質の構造物を使用することができる。沈殿槽20の材質が比重1.0未満の合成樹脂である場合、支持部36をロープといった沈殿槽20の浮上を防ぐ構造物にすればよい。沈殿槽20の形状は図1A~1Cに示す形状に限定されず、例えば、傾斜部31~34が曲面形状でもよいし、立壁部35が鉛直からずれてもよい。
【0025】
攪拌手段40は、沈殿槽20を通る垂直断面において沈殿槽20の外側を廻るように攪拌槽10の被処理水W2を循環させる。図1Bには、攪拌手段40として攪拌槽10の被処理水W2への散気を行う散気装置41が被処理水W2中において沈殿槽20の下傾斜部33の外側に設置されていることが示されている。散気装置41が攪拌槽10の被処理水W2に空気を送り込むと、生じる多数の気泡B1の浮力により攪拌槽10の側壁10wと沈殿槽20の傾斜部33,31との間で被処理水W2に上昇流が生じ、この上昇流が向きを変えて沈殿槽20の最上部を超え、側壁10wと傾斜部32,34との間で被処理水W2に下降流が生じ、この下降流が向きを変えて底10bと沈殿槽20との間を通って散気装置41の近傍に戻ってくる。すなわち、攪拌槽の被処理水W2の水面下において沈殿槽20の外側が被処理水W2の循環経路となっており、この循環経路に沿って攪拌槽10の被処理水W2に沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が生じる。
【0026】
流入管50は、外部から攪拌槽10に内部に繋がり、流入水W1を攪拌槽10の被処理水W2に導入する。処理水管60は、沈殿槽20の処理水流出部22から攪拌槽10の内部を通り過ぎて攪拌槽10の外へ出ており、処理水W3を沈殿槽20から攪拌槽10外へ流出させる。処理水管60にポンプを接続し、ポンプで流量を調整しながら処理水W3を流出させてもよい。汚泥管70は、攪拌槽10の側壁10wの下部から外へ出ており、汚泥S1を攪拌槽10外へ排出する。汚泥管70にポンプを接続し、ポンプで流量を調整しながら汚泥S1を排出させてもよい。
流入管50と処理水管60と汚泥管70には、ポリオレフィンといった合成樹脂、コンクリート、鋼といった金属、等といった材質の管を使用することができる。
【0027】
次に、廃水処理装置1Aの作用及び効果を説明する。
流入管50からの流入水W1は、攪拌槽10の被処理水W2に導入される。散気装置41が沈殿槽20の下傾斜部33の外側において被処理水W2に多数の気泡B1を発生させると、垂直断面において傾斜部33,31,32,34の順に沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が攪拌槽10の被処理水W2に生じる。沈殿槽20が無ければ被処理水に小さな旋回流が生じることによりエネルギー損失が生じるが、攪拌槽の被処理水W2の水面下に沈殿槽20が有ることにより形成された循環経路に沿って被処理水W2に大きな循環流C1が生じ、被処理水W2の流れのエネルギー損失が少なくなって被処理水W2が効率良く攪拌される。攪拌された被処理水W2の一部は、被処理水流通部21から沈殿槽20内に入ると、汚泥S1と処理水W3とに分離する。沈殿した汚泥S1は、被処理水流通部21から落下して攪拌槽10の底10bに堆積し、汚泥管70を通って攪拌槽外へ排出される。沈殿槽20内において上澄み成分である処理水W3は、処理水流出部22から処理水管60を通って攪拌槽外へ流出する。
【0028】
以上説明したように、廃水処理装置1Aは、被処理水中の汚泥S1を沈殿させるために沈殿槽を攪拌槽10とは別に設ける必要が無いので、少ない設置面積で廃水処理を行うことが可能である。
例えば、廃水処理装置1Aを標準活性汚泥法の好気性処理の代わりに使用する場合、流入水W1が被処理水W2中の活性汚泥に混合され、好気性菌を含む微生物による被処理水中の汚れの分解が散気により促進される。沈殿槽20内に入った被処理水W2の上澄みは、処理水W3として攪拌槽外へ流出する。攪拌槽10内において沈殿した汚泥S1を汚泥管70から適宜引き抜くことにより、攪拌槽10内の活性汚泥の濃度を制御することができる。従って、被処理水W2を汚泥S1と処理水W3とに分離する最終沈殿池の機能が攪拌槽10の内部において実現される。
【0029】
また、汚泥S1が自動的に沈殿槽20から攪拌槽10に返送されるので、標準活性汚泥法では必要な汚泥返送ポンプが不要となる。これにより、廃水処理装置に必要な機器点数を削減することができ、廃水処理装置の建設コストを削減することができる。さらに、攪拌槽の被処理水を攪拌する動力の費用を削減することができ、廃水処理装置の維持管理コストを削減することができる。
【0030】
また、本技術を嫌気性処理に適用することも可能である。図2Aは、メタン発酵装置に好適な廃水処理装置1Bを模式的に示す垂直断面図である。以下の説明において、既に説明した要素に同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
廃水処理装置1Bには、被処理水W2の機械攪拌を行うため、攪拌翼42aが被処理水W2中において沈殿槽20の下傾斜部33の外側に設置され、攪拌翼42aを回転させる駆動装置42bが攪拌槽10外に設置されている。駆動装置42bが攪拌翼42aを回転駆動すると、側壁10wと傾斜部33,31との間で被処理水W2に上昇流が生じ、沈殿槽20の外側の循環経路に沿って被処理水W2に沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が生じる。攪拌翼42aと駆動装置42bは、攪拌槽10の被処理水W2に入っている攪拌翼42aの駆動により被処理水W2を垂直断面における沈殿槽20の外側において循環させる攪拌手段40の例である。攪拌槽の被処理水W2が効率良く攪拌されることにより、嫌気性菌による被処理水中の汚れの分解が促進される。攪拌された被処理水W2の一部は、沈殿槽20内で汚泥S1と処理水W3とに分離し、攪拌槽10に戻った汚泥S1が汚泥管70から排出され、処理水W3が処理水管60から流出する。従って、廃水処理装置1Bは、少ない設置面積で嫌気性処理を行うことが可能である。
【0031】
また、廃水処理装置1Bは、流入管50としてサイフォン50Aを備えている。サイフォン50Aの先端部は、被処理水W2の水面上において循環流C1の向きに向いた流入構造43を有している。これにより、流入タンク51に一時的に貯留される流入水W1がサイフォン50Aの上端に達すると、流入タンク51内の流入水W1がサイフォン50Aから勢いよく循環流C1の向きに吐出し、攪拌槽10の被処理水W2に沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が生じる。流入構造43は、攪拌槽10への流入水W1の流れにより被処理水W2を垂直断面における沈殿槽20の外側において循環させる攪拌手段40の例である。攪拌槽の被処理水W2が効率良く攪拌されることにより、嫌気性菌による被処理水中の汚れの分解が促進される。
尚、流入管50に流入構造43が有れば、廃水処理装置に攪拌翼42a及び駆動装置42bは無くてもよい。むろん、廃水処理装置に攪拌翼42aと駆動装置42bが有れば、流入管50に流入構造43は無くてもよい。また、廃水処理装置1Bを好気性処理に適用することも可能である。
【0032】
さらに、図2Bに示す廃水処理装置1Cの攪拌手段40のように、攪拌槽10の被処理水W2に含まれる微生物からの多数の気泡B1により被処理水W2により垂直断面における沈殿槽20の外側において循環させてもよい。廃水処理装置1Cの流入管50は、攪拌槽10の側壁10wと沈殿槽20の下傾斜部33との間に流入水W1を導入する。微生物が流入水W1中の汚れを分解すると、生じる多数の気泡B1の浮力により側壁10wと傾斜部33,31との間で被処理水W2に上昇流が生じ、沈殿槽20の外側の循環経路に沿って被処理水W2に沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が生じる。廃水処理装置1Cの傾斜部31~34の傾斜角θ1~θ4(図1C参照)は、60~80°程度と急な角度が好ましい。攪拌槽の被処理水W2が効率良く攪拌されることにより、嫌気性菌による被処理水中の汚れの分解が促進される。尚、汚れを分解する処理は、嫌気性処理に限定されず、好気性処理でもよい。
上述した各種攪拌手段は、任意に2種類以上組み合わせて使用することが可能である。
【0033】
図示していないが、本技術を固形物の凝集処理に適用することも可能である。例えば、攪拌槽10の被処理水W2に凝集剤添加装置又は人手により凝集剤を添加すると、循環流C1により効率良く攪拌される被処理水W2に含まれる固形物の凝集が促進される。攪拌された被処理水W2の一部は、沈殿槽20内で固液分離し、攪拌槽10に戻って沈殿した固形物が汚泥管70から排出され、処理水W3が処理水管60から流出する。従って、少ない設置面積で凝集処理が行われる。
【0034】
また、本技術を汚泥の濃縮処理に適用することも可能である。例えば、比較的低濃度の汚泥を流入水W1として流入管50から攪拌槽10の被処理水W2に導入すると、循環流C1により効率良く攪拌される被処理水W2としての汚泥から水が分離され易くなる。攪拌された汚泥(被処理水W2)の一部は、沈殿槽20内で固液分離し、攪拌槽10に戻った比較的高濃度の汚泥が汚泥管70から排出され、汚泥成分の少ない処理水W3が処理水管60から流出する。従って、少ない設置面積で濃縮処理が行われる。
【0035】
図3に示す廃水処理装置1Dのように、沈殿槽20内の浮遊物質濃度に基づいて固形物の排出を制御することも可能である。廃水処理装置1Dは、汚水の生物処理に好適な構成として、汚泥弁75(固形物流路開閉弁の例)、濃度検出部80、及び、制御部90をさらに備えている。
尚、攪拌手段40及び流入管50は、上述した廃水処理装置1A~1Cに用いられた構成のいずれでもよい。後述する廃水処理装置1E~1Oについても、同じである。
【0036】
汚泥弁75は、汚泥管70の途中に設けられ、汚泥管70の流路を開閉する。汚泥弁75には、電動弁、電磁弁、等、制御部90により流路を開閉可能なバルブを用いることができる。
【0037】
濃度検出部80は、水中のMLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)濃度を検出する。濃度検出部80には、制御部90にMLSSの検出濃度を送信可能な種々のMLSS計を使用することができる。廃水処理装置1Dには、濃度検出部80として、沈殿槽20内の被処理水W2のMLSS濃度を検出する内側濃度検出部81が設置されている。内側濃度検出部81は、攪拌槽10の被処理水W2の水面上から外壁部30を通して沈殿槽20内に差し込まれている。
【0038】
制御部90は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)、I/O(入出力)回路、等を有している。汚泥弁75と内側濃度検出部81は、I/O回路に接続されている。CPUは、RAMをワークエリアとして使用しROMに保持されているプログラムを実行することにより、ステップS11~S13の処理を含む各種処理を行う。ステップS11~S13の処理を行う制御部90は、固形物排出制御部91を構成する。
制御部90には、PLC(Programmable Logic Controller)、パーソナルコンピューター、等を用いることができる。また、CPUによらずに処理を行う回路で制御部90を構成することも可能である。
【0039】
固形物排出制御部91は、内側濃度検出部81により検出されるMLSS濃度を監視している。ROMとRAMの少なくとも一方には、MLSSの検出濃度と対比される設定値が保持されている。固形物排出制御部91は、ステップS11において、検出濃度が設定値よりも大きいか否かに応じて処理を分岐させる。攪拌槽10に汚泥S1が蓄積したり流入水W1の水量が増加したりする等により沈殿槽20内の汚泥界面が上昇し、内側濃度検出部81の検出濃度が設定値を上回ると、処理がステップS12に進められる。ステップS12において、固形物排出制御部91は、汚泥弁75を開け、攪拌槽10内の余剰汚泥を汚泥管70から攪拌槽外へ排出させる。これにより、処理水W3への汚泥S1の流出が回避される。その後、処理がステップS11に戻される。一方、検出濃度が設定値よりも大きくない場合、固形物排出制御部91は、ステップS13において、汚泥弁75を閉じる。これにより、攪拌槽10内の固形物濃度が一定範囲に制御される。その後、処理がステップS11に戻される。
廃水処理装置1Dは、攪拌槽10内の固形物濃度を一定範囲に制御することができるので、維持管理労力を低減させることができる。また、内側濃度検出部81の高さを変えることにより、攪拌槽10内の固形物濃度を調整することができる。
【0040】
図4に示す廃水処理装置1Eのように、攪拌槽10内の浮遊物質濃度に基づいて処理水W3の流出を制御することも可能である。廃水処理装置1Eは、汚泥の濃縮処理に好適な構成として、処理水弁65(処理水流路開閉弁の例)、濃度検出部80の例としての外側濃度検出部82、及び、制御部90の例としての処理水流出制御部92を備えている。処理水弁65は、処理水管60の途中に設けられ、処理水管60の流路を開閉する。処理水弁65には、電動弁、電磁弁、等、制御部90により流路を開閉可能なバルブを用いることができる。外側濃度検出部82は、攪拌槽10の被処理水W2の水面上から被処理水W2中の水面近くに差し込まれている。処理水流出制御部92は、ステップS21~S23の処理を行う。
【0041】
攪拌槽10の被処理水W2には、流入水W1として比較的低濃度の汚泥が流入管50から導入されている。処理水流出制御部92は、外側濃度検出部82により検出されるMLSS濃度を監視している。ROMとRAMの少なくとも一方には、MLSSの検出濃度と対比される設定値が保持されている。処理水流出制御部92は、ステップS21において、検出濃度が設定値よりも小さいか否かに応じて処理を分岐させる。外側濃度検出部82の検出濃度が設定値を下回っている場合、処理水流出制御部92は、ステップS22において、処理水弁65を開けておき、処理水W3を処理水管60から攪拌槽外へ流出させる。これにより、攪拌槽10の固形物濃度を高める。その後、処理がステップS21に戻される。一方、検出濃度が設定値に到達した場合、処理水流出制御部92は、ステップS23において、処理水弁65を閉じる。これにより、流入水W1の水量に応じて攪拌槽10の被処理水W2の水面WSが上昇する。その後、処理がステップS21に戻される。
以上により、攪拌槽10内の固形物濃度が自動で制御される。また、廃水処理装置1Eは、濃縮汚泥の貯留を兼ねている。
【0042】
図5Aに示す廃水処理装置1Fのように、攪拌槽10の下部から外へ出ている汚泥管70を第一汚泥管71として、沈殿槽20内に存在する汚泥S1を攪拌槽外へ排出する第二汚泥管72(汚泥管70の例)が沈殿槽20から外へ出ていてもよい。廃水処理装置1Fは、汚水の生物処理に好適である。第二汚泥管72は、被処理水流通部21よりも高く処理水流出部22よりも低い位置において沈殿槽20から攪拌槽10の内部を通り過ぎて攪拌槽10の外へ出ている。被処理水W2中に浮遊している汚泥S1のうち比較的粒径が小さな汚泥は、沈殿槽20で沈降し難い。第二汚泥管72は、沈殿槽20の被処理水W2に含まれる比較的粒径が小さな汚泥を攪拌槽外へ排出する。これにより、攪拌槽10内には比較的沈降速度の高い汚泥を保持させることができる。例えば、活性汚泥法において汚泥の沈降を阻害するバルキングは糸状菌の増殖によるものと考えられているが、廃水処理装置1Fは、沈降し難い汚泥を第二汚泥管72により排出することができるので、バルキングを抑制することができる。
尚、第二汚泥管72にポンプを接続し、ポンプで流量を調整しながら汚泥S1を排出させてもよい。
【0043】
また、廃水処理装置1Fは、被処理水W2に生物担体を添加した生物処理を行うことができる。生物担体の比重を活性汚泥の比重よりも大きくすると、第二汚泥管72から生物担体を流出させずに汚泥を排出することができる。
【0044】
図5Bに示す廃水処理装置1Gのように、濃度検出部80による検出濃度に基づいて第二汚泥管72の固形物の排出を制御することも可能である。廃水処理装置1Dは、汚水の生物処理に好適な構成として、第二汚泥管72の途中において第二汚泥管72の流路を開閉する汚泥弁75、内側濃度検出部81、及び、固形物排出制御部91を備えている。固形物排出制御部91の構成及び処理は、図3で示した構成及び処理と類似しているので、図3を参照して説明する。固形物排出制御部91は、ステップS11において、内側濃度検出部81の検出濃度が設定値よりも大きいか否かに応じて処理を分岐させる。攪拌槽10の固形物濃度の上昇に伴って沈殿槽20の汚泥界面が上昇し、内側濃度検出部81の検出濃度が設定値を上回ると、固形物排出制御部91は、ステップS12において、汚泥弁75を開け、沈殿槽20内の沈降し難い汚泥S1を第二汚泥管72から攪拌槽外へ排出させる。これにより、処理水W3への汚泥S1の流出が回避される。一方、検出濃度が設定値よりも大きくない場合、固形物排出制御部91は、ステップS13において、汚泥弁75を閉じる。これにより、攪拌槽10内の固形物濃度が一定範囲に制御される。
廃水処理装置1Gも、攪拌槽10の被処理水W2に生物担体を添加した生物処理を行うことができる。
【0045】
図6Aに示す廃水処理装置1Hのように、沈殿槽20内の気泡や浮上汚泥を集めて攪拌槽10へ返送する浮遊物質返送部23を沈殿槽20に設けてもよい。廃水処理装置1Hは、汚水の生物処理に好適である。浮遊物質返送部23は、被処理水流通部21よりも高く処理水流出部22よりも低い位置、例えば、下傾斜部34において沈殿槽20の被処理水W2が攪拌槽10に流出する。浮遊物質返送部23の位置は、下傾斜部34に限定されず、上傾斜部32等でもよい。気泡が付着した汚泥は、見掛け比重が小さくなり、浮遊物質返送部23が無ければ処理水W3とともに処理水流出部22から流出することがある。浮遊物質返送部23は、沈殿槽20内の気泡や浮上汚泥を集めて再び攪拌槽10に返送する。
沈殿槽20に浮遊物質返送部23があることにより、沈殿槽20内にある気泡や浮上固形物が攪拌槽10に返送され、固形物が処理水W3とともに流出することを回避することが可能になる。
【0046】
図6Bに示す廃水処理装置1Iのように、沈殿槽20内の浮遊物質濃度に基づいて処理水W3の流出を制御することも可能である。廃水処理装置1Iは、汚水の生物処理や固形物の凝集処理等に好適な構成として、処理水弁65、内側濃度検出部81、及び、ステップS31~S33の処理を行う処理水流出制御部92を備えている。処理水流出制御部92は、ステップS31において、内側濃度検出部81の検出濃度が設定値よりも大きいか否かに応じて処理を分岐させる。内側濃度検出部81の検出濃度が設定値を上回っていない場合、処理水流出制御部92は、ステップS32において、処理水弁65を開けておき、処理水W3を処理水管60から攪拌槽外へ流出させる。一方、検出濃度が設定値を上回った場合、処理水流出制御部92は、ステップS33において、処理水弁65を閉じる。これにより、処理水W3への汚泥S1の流出が回避される。
【0047】
図7Aに示す廃水処理装置1Jのように、攪拌槽10内の浮遊物質濃度に基づいて汚泥S1の排出を制御することも可能である。廃水処理装置1Jは、汚泥の濃縮処理や固形物の凝集処理に好適な構成として、汚泥弁75、外側濃度検出部82、及び、固形物排出制御部91を備えている。固形物排出制御部91の構成及び処理は、図3で示した構成及び処理と類似しているので、図3を参照して説明する。固形物排出制御部91は、ステップS11において、外側濃度検出部82の検出濃度が設定値よりも大きいか否かに応じて処理を分岐させる。外側濃度検出部82の検出濃度が設定値を上回っていない場合、固形物排出制御部91は、ステップS13において、汚泥弁75を閉じておく。一方、検出濃度が設定値を上回ると、固形物排出制御部91は、ステップS12において、汚泥弁75を開け、汚泥S1を汚泥管70から攪拌槽外へ排出させる。
【0048】
図7Bに示す廃水処理装置1Kのように、流入水W1を沈殿槽20内に導入することも可能である。廃水処理装置1Kは、汚泥の濃縮処理に好適な構成である。廃水処理装置1Kの流入管50の先端部は、略水平に向き、沈殿槽20において上傾斜部31と下傾斜部33との間に接続されている。これにより、流入管50からの流入水W1が沈殿槽20内に略水平に流入する。沈殿槽20内の被処理水W2は、汚泥S1を多く含む成分と上澄み成分である処理水W3とに分離する。処理水W3は、処理水流出部22から処理水管60を通って攪拌槽外へ流出する。沈殿槽20内において汚泥S1を多く含む被処理水W2は、被処理水流通部21から攪拌槽10内に入る。攪拌槽10内には攪拌手段40により垂直断面において沈殿槽20の外側を廻る被処理水W2の循環流C1が生じているので、被処理水W2が効率良く攪拌される。尚、攪拌された被処理水W2の一部が被処理水流通部21から沈殿槽20内に入るが、当該被処理水W2も汚泥S1と処理水W3とに分離する。攪拌槽10の底10bに堆積した濃縮汚泥S1は、汚泥管70を通って攪拌槽外へ排出される。
【0049】
図8Aに示す廃水処理装置1Lのように、浮遊物質返送部23を有する沈殿槽20の内部に流入水W1を導入することも可能である。廃水処理装置1Lも、汚泥の濃縮処理に好適な構成である。例えば、攪拌手段40に散気装置41(図1B参照)を使用する等により攪拌槽10内の汚泥に微細な気泡が付着した場合、浮遊物質返送部23が無ければ沈殿槽20から処理水W3とともに汚泥が流出することがある。浮遊物質返送部23は、沈殿槽20内の気泡や浮上汚泥を集めて再び攪拌槽10に戻す。
【0050】
図8Bに示す廃水処理装置1Mのように、沈殿槽20において上傾斜部32と下傾斜部34との間に第二汚泥管72を接続することも可能である。廃水処理装置1Mは、汚水の生物処理に好適であり、被処理水W2に生物担体を添加した生物処理も行うことができる。第二汚泥管72は、被処理水流通部21よりも高く処理水流出部22よりも低い位置において沈殿槽20から攪拌槽10の内部を通り過ぎて攪拌槽10の外へ出ている。第二汚泥管72は、沈殿槽20の被処理水W2に含まれる比較的粒径が小さな汚泥を攪拌槽外へ排出する。これにより、バルキングが抑制される。
【0051】
図9Aに示すように、汚水の嫌気性処理に好適な廃水処理装置1Nも実施可能である。廃水処理装置1Nは、図2Aで示した廃水処理装置1Bに、沈殿槽20内に存在する汚泥S1を攪拌槽外へ排出する第二汚泥管72、第一汚泥弁76、及び、第二汚泥弁77が追加されている。第一汚泥弁76と第二汚泥弁77は、汚泥弁75の例である。第一汚泥弁76は、第一汚泥管71の途中に設けられ、第一汚泥管71の流路を開閉する。第二汚泥弁77は、第二汚泥管72の途中に設けられ、第二汚泥管72の流路を開閉する。また、処理水管60は、沈殿槽20の外壁部30の最上部から上方へ引き出され、途中で略水平方向に折れ曲がって攪拌槽10外に引き出されている。
【0052】
攪拌翼42aと駆動装置42bの組合せ、及び、サイフォン50Aの流入構造43は、攪拌槽10の被処理水W2に循環流C1を生じさせ、嫌気性菌による被処理水中の汚れの分解を促進させる。攪拌された被処理水W2の一部は、沈殿槽20内で汚泥S1と処理水W3とに分離し、沈降し難い汚泥S1が第二汚泥管72から排出され、攪拌槽10に沈降した汚泥S1が第一汚泥管71から排出され、処理水W3が処理水管60から流出する。第一汚泥管71からの汚泥S1の排出は、不図示の固形物排出制御部が不図示の濃度検出部による浮遊物質の検出濃度に基づいて第一汚泥弁76を動作させることにより制御されてもよい。第二汚泥管72からの汚泥S1の排出は、不図示の固形物排出制御部が不図示の濃度検出部による浮遊物質の検出濃度に基づいて第二汚泥弁77を動作させることにより制御されてもよい。廃水処理装置1Nは、少ない設置面積で嫌気性処理を行うことが可能である。
【0053】
図9Bに示す廃水処理装置1Oのように、一つの攪拌槽10に複数の沈殿槽20を配置することも可能である。図9Bには攪拌手段40として散気装置41が示されているが、散気装置41以外の攪拌手段40を廃水処理装置1Oに使用することも可能である。複数の沈殿槽20は、軸方向D1(図1A参照)が互いに平行となるように配置されている。軸方向D1と直交する垂直断面において沈殿槽20同士の間で攪拌手段40が被処理水W2に上昇流を生じさせると、水面WSの近くで被処理水W2の流れが各沈殿槽20の方へ曲がり、攪拌槽10の被処理水W2に各沈殿槽20の外側を廻る循環流C1が生じる。隣り合う二つの沈殿槽20の内、一方の沈殿槽の外側を廻る循環流と他方の沈殿槽の外側を廻る循環流とは、互いに逆向きである。
廃水処理装置1Oは、下水処理場の生物反応槽等、攪拌槽の面積が大きい場合に好適である。
【0054】
(3)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、水処理装置は、汚泥に含まれない固形物と処理水とを被処理水から分離させる処理を行ってもよい。
また、水処理装置は、浄水等を得るために使用されてもよい。
さらに、水処理装置は、晶析反応装置等に適用することができる。流入水中にアンモニア性窒素及びりん酸イオンが高濃度に存在する場合、攪拌槽内にマグネシウムイオンを添加し、pHを調整すると、りん酸マグネシウムアンモニウム六水和物の固形物を生成させることができる。当該固形物を沈殿槽で沈殿させると、当該固形物を回収することができる。攪拌槽の固形物濃度の制御は、生物処理と同じ制御を適用することができる。
【0055】
水処理装置への流入水は、例えば図1B,7Bに示す流入管50を組み合わせる等により、攪拌槽と沈殿室の両方に導入されてもよい。この場合も、攪拌槽の被処理水は循環流により効率良く攪拌され、沈殿室の被処理水が固液分離する。
固形物排出部は、例えば沈殿槽20から攪拌槽10の内部を通り過ぎて攪拌槽外へ出た第二汚泥管72のみ水処理装置に設ける等、沈殿室内に存在する固形物のみ攪拌槽外へ排出してもよい。
【0056】
汚泥管70や処理水管60の流路を開閉させる制御の判断処理において、不等号(<,>)を等号付き不等号(≦,≧)に置き換えることは均等の範囲なので可能である。
水処理装置は、内側濃度検出部81と外側濃度検出部82の両方を備えていてもよい。固形物排出制御部91は、両濃度検出部81,82の検出濃度に基づいて汚泥弁75を動作させてもよい。処理水流出制御部92は、両濃度検出部81,82の検出濃度に基づいて処理水弁65を動作させてもよい。
水処理装置が汚泥弁75と処理水弁65の両方を備えている場合、制御部90が内側濃度検出部81の検出濃度に基づいて汚泥弁75と処理水弁65とを別々に動作させてもよく、制御部90が外側濃度検出部82の検出濃度に基づいて汚泥弁75と処理水弁65とを別々に動作させてもよい。
【0057】
上述した水処理装置を2以上組み合わせて使用することも可能であり、上述した廃水処理装置1A~1O等の水処理装置のうち2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。例えば、廃水処理装置1D(図3参照)を汚水の生物処理に使用し、この廃水処理装置1Dから排出される汚泥S1を流入水W1とした廃水処理装置1E(図4参照)を汚泥の濃縮処理に使用することが可能である。この処理システムでは、廃水処理装置1Dの汚泥濃度管理が不要となる。また、廃水処理装置1Dを2以上使用し、前段の廃水処理装置1Dの処理水W3を後段の廃水処理装置1Dの流入水W1として生物処理を行うことが可能である。この場合、前段の廃水処理装置1Dの汚泥濃度を高めることにより、複数の廃水処理装置1Dを含む処理システムのコンパクト化を図ることができる。
尚、攪拌槽は、既に存在する池等、地形を利用した要素でもよい。また、攪拌槽は、人工の池といった人工物に限定されず、天然の池といった天然の構造を利用した要素でもよい。
【0058】
(4)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0059】
図10は、廃水処理装置の試験装置を模式的に示している。試験装置の外壁部30の軸方向における両端部は、攪拌槽10としての生物反応層の側壁により閉塞されている。生物反応槽は、幅90mm、奥行き10mm、及び、高さ130mmの大きさであり、沈殿槽20を除く容量が87mLである。沈殿槽20は、最大幅55mm、奥行き10mm、及び、最大高さ80mmの大きさであり、容量が30mLである。処理水流出部22は生物反応槽の側壁において沈殿槽20の最上部近傍にあり、処理水流出部22の内径は10mmである。散気装置41としての空気管の先端は、水面WSから生物反応槽の底近傍まで差し込まれている。
流入水W1には、COD(化学的酸素要求量)100mg/Lのグルコース溶解水に窒素源13mgN/L以上とリン源1mgP/L以上添加した原水を用いた。CODの測定には、株式会社共立理化学研究所製パックテスト(登録商標)CODを用いた。
【0060】
微生物を添加した原水を生物反応槽と沈殿槽20に満たし、ヒーターで水温を20℃に保ち、生物反応槽での原水の滞留時間を20~180分の範囲で複数設定し、設定した各滞留時間となるように原水を流入管50から生物反応槽に導入した。各滞留時間について、処理水管60から流出した処理水W3のCODを測定し、COD除去率を算出した。
【0061】
図11は、生物反応槽での原水の滞留時間に応じたCOD除去率の測定結果を示している。図11において、横軸の「反応槽滞留時間」は生物反応槽での原水の滞留時間(分)を示し、縦軸はCOD除去率(%)を示している。図11に示すように、滞留時間30分位でCOD除去率が85%に到達し、滞留時間50分位でCOD除去率90%に到達した。従って、短時間で原水の生物処理を行うことが可能であることが確認された。
【0062】
(5)水処理装置の設計例:
次に、水処理装置の設計例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0063】
図13は、比較例として標準活性汚泥法による生物反応槽及び沈殿槽の設計例を模式的に示している。尚、図13の上部に生物反応槽と沈殿槽の平面図が示され、図13の下部に生物反応槽と沈殿槽の垂直断面図が示されている。処理水量を1000m3/日として、滞留時間が8時間となる生物反応槽は、例えば、幅5m、長さ13.3m、設置面積67m2、有効水深5m、及び、容量333m3の大きさとなる。水面積負荷が20m3/(m2・日)となる沈殿槽は、例えば、幅5m、長さ10m、設置面積50m2、有効水深2.5m、及び、容量125m3の大きさとなる。生物反応槽と沈殿槽を合わせた容量は458m3であり、生物反応槽と沈殿槽を合わせた設置面積は117m2である。
【0064】
図12は、本技術の廃水処理装置の設計例を模式的に示している。ここでも、処理水量を1000m3/日とする。一つの生物反応槽に沈殿槽を2基入れるとして、水面積負荷が20m3/(m2・日)となる沈殿槽は、例えば、最大幅1.4m、長さ17.9m、2基分の最大面積50m2、及び、2基分の容量118m3の大きさとなる。各沈殿槽において、最大幅の部位から上の長さは2.425mであり、最大幅の部位から下の長さは1.905mであり、被処理水流通部の幅が0.3mである。滞留時間が8時間となる生物反応槽は、例えば、幅5m、長さ18.1m、設置面積90m2、有効水深5m、及び、容量334m3の大きさとなる。生物反応槽と沈殿槽を合わせた容量は452m3であり、生物反応槽と沈殿槽を合わせた設置面積は生物反応槽の面積90m2である。
【0065】
以上より、容量の比率は(452/458)×100=99%であり、設置面積の比率は(90/117)×100=77%である。従って、本技術の廃水処理装置は、少ない設置面積で廃水処理を行うことが可能である。容量には大きな差が無いものの、本技術の廃水処理装置の設置面積は標準活性汚泥法による設置面積よりも23%少なくて済む。容量に大きな差は無くても、準活性汚泥法は生物反応槽と沈殿池の二池に分割され、且つ、沈殿池の形状が複雑であるので、標準活性汚泥法の土木工事費は比較的高いと考えられる。本技術の廃水処理装置は、沈殿槽を例えば鋼製加工品にすることができ、これにより土木工事が生物反応槽のみとなり、土木工事費の大幅な削減を見込むことができる。従って、本技術の廃水処理装置は、コストダウンを図ることが可能である。
【0066】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、少ない設置面積で水処理を行うことが可能な水処理装置等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…水処理装置、1A~1O…廃水処理装置、
10…攪拌槽、20…沈殿槽(沈殿室の例)、
21…被処理水流通部、22…処理水流出部、23…浮遊物質返送部、
30…外壁部、31~34…傾斜部、35…立壁部、36…支持部、
40…攪拌手段、
41…散気装置、42a…攪拌翼、42b…駆動装置、43…流入構造、
50…流入管、50A…サイフォン、51…流入タンク、
60…処理水管、65…処理水弁(処理水流路開閉弁の例)、
70…汚泥管(固形物排出部の例)、71…第一汚泥管、72…第二汚泥管、
75…汚泥弁(固形物流路開閉弁の例)、76…第一汚泥弁、77…第二汚泥弁、
80…濃度検出部、81…内側濃度検出部、82…外側濃度検出部、
90…制御部、91…固形物排出制御部、92…処理水流出制御部、
C1…循環流、S1…汚泥(固形物の例)、
W1…流入水、W2…被処理水、W3…処理水、WS…水面。
図1
図2
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