(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】単位倍率顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20240209BHJP
G02B 13/22 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B13/22
(21)【出願番号】P 2021537130
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 IB2020050866
(87)【国際公開番号】W WO2020188368
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521276250
【氏名又は名称】オメック オプティクス エルティーディー.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンバーグ,シャイ
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-500986(JP,A)
【文献】特公昭46-002940(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0266655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 19/00 - 21/36
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位倍率顕微鏡であって、
(a)第1のレンズ組立体であって、該第1のレンズ組立体の外部焦点面に位置する物体から光を受けるための無限遠補正された対物レンズを形成する複数のレンズを含む、第1のレンズ組立体と、
(b)複数のレンズを含む第2のレンズ組立体であって、前記第2のレンズ組立体は前記第1のレンズ組立体と同一であり、前記第2のレンズ組立体は前記第1のレンズ組立体に対して、光路に沿って反対方向に備え付けられている、第2のレンズ組立体と、
(c)前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体の間にある
前記光路に沿って、中心点に位置する物理的ストップ装置と、
(d)前記光路に配置されるビームスプリッタキューブと補償要素であり、前記ビームスプリッタキューブは、物体に向けられた照明を前記光路に導入することを可能にするために配置され、前記ビームスプリッタキューブと前記補償要素は同様の光学特性を有しており、前記物理的ストップ装置の反対側に位置する、ビームスプリッタキューブと補償要素と、
(e)第2のレンズ組立体の外部焦点面に備え付けられている焦点面アレイイメージセンサであって、物体からの光が、
前記光路に沿って前記第1のレンズ組立体、前記物理的ストップ装置、および前記第2のレンズ組立体を通過した後、単位倍率により前記焦点面アレイイメージセンサに焦点を合わせられるようになる、焦点面アレイイメージセンサと、
を含む、単位倍率顕微鏡。
【請求項2】
前記ビームスプリッタキューブと前記補償要素は両方とも、前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体の間に位置する、請求項
1に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項3】
照明光源と、前記ビームスプリッタキューブを介して前記照明光源から前記第1のレンズ組立体へと照明を向けるように構成された照明光学配置と、をさらに含む、請求項2に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項4】
前記物理的ストップ装置は前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体の後焦点面に位置しており、前記照明光学配置は、前記物理的ストップ装置の面または前記物理的ストップ装置と光学的に同等な面において、前記照明光源の画像を生成するように構成されるレンズの配置を含む、請求項
3に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項5】
前記ビームスプリッタキューブと前記補償要素は、前記第1のレンズ組立体と物体との間または前記第2のレンズ組立体と前記焦点面アレイイメージセンサとの間にある
前記光路に位置する、請求項
1に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項6】
前記ビームスプリッタキューブは金属性ビームスプリッタを含む、請求項
1から5のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項7】
前記ビームスプリッタキューブは偏光ビームスプリッタを含む、請求項
1から5のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項8】
前記ビームスプリッタキューブはダイクロイックビームスプリッタを含む、請求項
1から5のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項9】
前記補償要素は第2ビームスプリッタキューブとして実装される、請求項
1から5のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項10】
前記単位倍率顕微鏡は、前記第2ビームスプリッタ
キューブに関連する光学機器をさらに含むとともに、顕微鏡への光学ポートとして前記第
2ビームスプリッタ
キューブを使用し、前記光学機器はレーザー照明装置、振動計、および分光計からなる群から選択される、請求項
9に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項11】
前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体は共通の光軸に沿って配置される、請求項1から
10のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項12】
前記第1のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第1の光軸上で位置合わせされ、前記第2のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第2の光軸上で位置合わせされ、前記第1の光軸と第2の光軸は垂直である、請求項1から
10のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項13】
前記第1のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第1の光軸上で位置合わせされ、前記第2のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第2の光軸上で位置合わせされ、前記第1の光軸と第2の光軸は平行である、請求項1から
10のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項14】
前記第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体を支持する硬質ハウジングをさらに含み、前記第1のレンズ組立体の前記複数のレンズは、前記硬質ハウジングに形成された第1の中空チャネル内に配置され、前記第2のレンズ組立体の前記複数のレンズは、前記硬質ハウジングに形成された第2の中空チャネル内に配置される、請求項
13に記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項15】
前記物理的ストップ装置は前記第1のレンズ組立体および前記第2のレンズ組立体の後焦点面に位置する、請求項1から
14のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項16】
前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体の前記複数のレンズは屈折レンズである、請求項1から
15のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項17】
前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体は反射屈折組立体である、請求項1から
15のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【請求項18】
前記第1のレンズ組立体と前記第2のレンズ組立体の前記複数のレンズは反射レンズである、請求項1から
15のいずれか1つに記載の単位倍率顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は顕微鏡に関するもので、それは特に単位倍率顕微鏡に関するものである。
【0002】
光学顕微鏡は、一般的に対物レンズ組立体(あるいは単に「対物レンズ」)とチューブレンズ組立体(あるいは単に「チューブレンズ」)から組み立てられる。対物レンズは一般的に無限遠補正され、対物面はコリメートされた画像に写り、それがチューブレンズによって、画像面に焦点が合わせられることになる。工業用の顕微鏡の場合には、焦点面アレイイメージセンサがチューブレンズの後焦点面に配置される。対物レンズはしばしば交換することができ、異なる倍率の範囲を提供する。
【0003】
高性能顕微鏡の対物レンズとチューブレンズの両方のレンズ系を設計する際、様々な光学要素と表面は、画質に影響を与えることができる様々な種類の光学収差を最小限におさえるために、最適化されるべきである。これらは球面収差、コマ収差、ゆがみ、軸と横色収差、非点収差および像面湾曲を含む。光学面は異なる種類の収差に対応する複数のパラメータを同時に最小化しようとする数値方法によって一般的に最適化される。残存収差はしばしば大きく、特定の用途に必要なレベルまで減らそうとすると、多くの表面を使用することとなり、その結果、顕微鏡が複雑化しコストが高くなる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は単位倍率顕微鏡である。
【0005】
本発明の実施形態の教示によれば、以下を含む単位倍率顕微鏡が提供され、前記単位倍率顕微鏡は、(a)第1のレンズ組立体であって、該第1のレンズ組立体の外部焦点面に位置する物体から光を受けるための無限遠補正された対物レンズを形成する複数のレンズを含む、第1のレンズ組立体と、(b)複数のレンズを含む第2のレンズ組立体であって、第2のレンズ組立体は第1のレンズ組立体と同一であり、第2のレンズ組立体は第1のレンズ組立体に対して、光路に沿って反対方向に備え付けられている、第2のレンズ組立体と、(c)第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の間にある光路に沿って、中心点に位置する物理的ストップ装置と、(d)第2のレンズ組立体の外部焦点面に備え付けられている焦点面アレイイメージセンサであって、物体からの光が、光路に沿って第1のレンズ組立体、物理的ストップ装置、および第2のレンズ組立体を通過した後、単位倍率により焦点面アレイイメージセンサに焦点を合わせられるようになる、焦点面アレイイメージセンサと、を含む、単位倍率顕微鏡。
【0006】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、光路に配置されるビームスプリッタキューブと補償要素がさらに提供され、ビームスプリッタキューブは、物体に向けられた照明を光路に導入することを可能にするために配置され、ビームスプリッタキューブと補償要素は同様の光学特性を有しており、物理的ストップ装置の反対側に位置する。
【0007】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、ビームスプリッタキューブと補償要素は両方とも、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の間に位置する。
【0008】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、照明光源と、ビームスプリッタキューブを介して照明光源から第1のレンズ組立体へと照明を向けるように構成された照明光学配置がさらに提供される。
【0009】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、物理的ストップ装置は第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の後焦点面に位置しており、照明光学配置は、物理的ストップ装置の面または物理的ストップ装置と光学的に同等な面において、照明光源の画像を生成するように構成されるレンズの配置を含む。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、ビームスプリッタキューブと補償要素は、第1のレンズ組立体と物体との間または第2のレンズ組立体と焦点面アレイイメージセンサとの間にある光路に位置する。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、ビームスプリッタキューブは金属性ビームスプリッタを含む。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、ビームスプリッタキューブは偏光ビームスプリッタを含む。
【0013】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、ビームスプリッタキューブはダイクロイックビームスプリッタを含む、
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、補償要素は第2のビームスプリッタキューブとして実装される。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば第2のビームスプリッタに関連する光学機器をさらに含むとともに、顕微鏡への光学ポートとして前記第2のビームスプリッタを使用し、光学機器はレーザー照明装置、振動計、および分光計からなる群から選択される。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体は共通の光軸に沿って配置される。
【0017】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第1の光軸上で位置合わせされ、第2のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第2の光軸上で位置合わせされ、第1の光軸と第2の光軸は垂直である。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第1の光軸上で位置合わせされ、第2のレンズ組立体の少なくとも1つのレンズは第2の光軸上で位置合わせされ、第1の光軸と第2の光軸は平行である。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体を支持する硬質ハウジングがさらに提供され、第1のレンズ組立体の複数のレンズは、前記硬質ハウジングに形成された第1の中空チャネル内に配置され、第2のレンズ組立体の複数のレンズは、硬質ハウジングに形成された第2の中空チャネル内に配置される。
【0020】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、物理的ストップ装置は第1のレンズ組立体および第2のレンズ組立体の後焦点面に位置する。
【0021】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体との間にある光路に位置する、対角線上に配置される少なくとも1つのビームスプリッタがさらに提供され、ビームスプリッタは、物体に向けられた照明を光路に導入することを可能にするために配置される。
【0022】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の複数のレンズは屈折レンズである。
【0023】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体は反射屈折組立体である。
【0024】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の複数のレンズは反射レンズである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面を参照して、例示のみによって、本明細書で説明される。
【
図1A】本発明の実施形態に従って組立され、動作する単位倍率顕微鏡の略図である。
【
図1B】
図1Aの単位倍率顕微鏡の光学要素を定義するデータを提供する表である。
【
図1C】
図1Aの単位倍率顕微鏡における各表面が様々な種類の光学収差に寄与することに関するデータを提供する表である。
【
図2】顕微鏡を介して照明を導入するためのビームスプリッタキューブを含む
図1Aの単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図3A】補助の光学的ポートと共に、およびそのポートなしで、それぞれL字形の構造における
図2の単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図3B】補助の光学的ポートと共に、およびそのポートなしで、それぞれL字形の構造における
図2の単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図4A】補助の光学的ポートと共に、およびそのポートなしで、それぞれU字型の構造における
図2の単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図4B】補助の光学的ポートと共に、およびそのポートなしで、それぞれU字型の構造における
図2の単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図5】ハウジングの上部が取り除かれた、硬質ハウジングにおける
図4Aの光学配置の実装の概要の等角図法である。
【
図6】レンズ組立体の外部にビームスプリッティングキューブを配置した、
図2の単位倍率顕微鏡のさらなる異なる実装の略図である。
【
図7】対角線上に配置されるビームスプリッタを用いて実装された
図3Bの単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図8】対角線上に配置されるビームスプリッタを用いて実装された
図4Bの単位倍率顕微鏡の異なる実装の略図である。
【
図9】透過照明システムを備え、位相差顕微鏡を実行するように適合された、
図3Bの顕微鏡に基づく単位倍率顕微鏡の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は単位倍率顕微鏡である。
【0027】
本発明による単位倍率顕微鏡の原理および動作は、図面および添付の説明を参照することで、よりよく理解され得る。
【0028】
最初に、本明細書に図示および記載されている本発明の複数の異なる実施を一般的に参照すると、一般的には、本発明の特定の実施形態による単位倍率顕微鏡は、第1のレンズ組立体(20)の外部焦点面(対物面(30)でもある)に位置する物体から光を受けるための、無限遠補正された物体レンズを形成する複数のレンズを含む、第1のレンズ組立体(20)と、第1のレンズ組立体(20)に対して光路(光線(24))に沿って反対方向に備え付けられている、第1のレンズ組立体(20)と同一である、第2のレンズ組立体(22)と、を含む。物理的ストップ装置(26)は、第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)の間の光路に沿って中心点に位置する。焦点面アレイ(FPA)イメージセンサ(28)は第2のレンズ組立体(22)の外部焦点面に備え付けられ、
対物レンズからの光が、光路に沿って第1のレンズ組立体(20)、物理的ストップ装置(26)、および第2のレンズ組立体(22)を通過した後、単位倍率によりFPAイメージセンサ(28)に焦点を合わせられるようになる。
【0029】
上記の定義による本発明の実施形態は、従来の顕微鏡に比べて多くの顕著な利点を提供する。第1に、本発明のこれらの実施形態によって教示されたアプローチは、現在利用可能なFPAイメージセンサを用いる利用可能な高画素分解能による単位倍率光学配置を用いて、驚くべきことに、高品質顕微鏡検査を実現することができるという観測によって可能になる。例えば、本発明の特定の特に効果的な実装は、およそ2.2ミクロン正方形の画素の寸法を有するFPAイメージセンサを用いて実現されている。
【0030】
第2に、対称的な第1のレンズ組立体および第2のレンズ組立体(逆方向に配置された同一レンズ配置)を用いることを決めることによって、多くの種類の光学収差が光学の対称性により相殺することによって本質的に補われることが分かっている。具体的には、開口絞りに関して対称的に位置する第1のレンズ組立体および第2のレンズ組立体の配置は、一般的にコマ収差、ゆがみおよび横色収差を完全な相殺を実質上実現する。これは光学的設計過程を非常に単純化し、それは対称性によって本質的に相殺される上述の収差を無視する間、球面収差、非点収差、軸色および像面湾曲を最小化することに取り組むことができる。これにより、従来の顕微鏡設計に比べて光学性能が向上し、および/または必要な光学要素の数が少なくなる。
【0031】
既に言及したとおり、第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)は無限遠補正され、つまり対物面(30)にある物体の画像はコリメートされた画像として第1のレンズ組立体(20)からストップ装置(26)に向かって出て、第2のレンズ組立体(22)に入るコリメートされた画像はFPAイメージセンサ(28)で焦点が合わされる。実装の特に好ましい部分集合によると、ストップ装置(26)の位置は、各レンズ組立体(20)および(22)の後焦点面であるように選択され、光学系はテレセントリックになるようにする。
【0032】
本明細書で記載され、図面に示されている例では、第1のレンズ配置(20)および第2のレンズ配置(22)は、屈折レンズを用いて実装されている。しかし、同じ原理は、第1のレンズ配置および第2のレンズ配置に反射レンズを使用する実装、もしくは反射屈折組立と呼ばれる屈折要素と反射要素を組み合わせた様々な配置を利用するために用いることができることに、留意する必要がある。
【0033】
ここでは、
図1Aの具体例について説明すると、第1のレンズ配置(20)および第2のレンズ配置(22)は各々、1つのシングレットレンズおよび2つのダブレットを含む、各レンズ配置に光強度を伴う合計8つの表面がある、本発明の限定されない例示的な実装が示される。表面は、9番目の要素としての位置を占めるストップ装置(26)と共に、対物面(30)からFPAイメージセンサ面(28)へ連続的に番号付けされる。
【0034】
この限定されない例示的な光学配置の詳細は、
図1Bとしてここで示された表において提供され、それは各表面に、曲率半径、次の表面への光軸(あるいは中心光線パス)に沿った距離、レンズ(空間にはブランク)の介在する材料および表面の直径を提供する。対物面(「OBJ」)(30)およびFPAイメージセンサ(「IMA」)(28)は平面で、従って無限の曲率半径を有する。すべての寸法はミリメートルで表示されている。
【0035】
図1Cは、列の上部に記載されている、7種類の光学収差の各々に対する各表面の寄与を定量化する表である。収差は、ZEMAX(商標)の光学設計プログラムで算出されたザイデル収差係数によって定量化される。コマ収差、ゆがみおよび横色の値を対に見ることによって、表面1を表面17、表面2を表面13、表面3を表面15等と比較すると、値が非常に近い値でありながら、反対になっていることが留意されるだろう。その結果、各レンズ組立体の正味の値とは実質的に無関係に、コマ収差、ゆがみ、横色の全体的な累積収差は実質的に相殺される。したがって、これらの種類の収差は、光学部品の最適化の間、無視することができる。
【0036】
対照的に、球面収差、像面湾曲、非点収差、軸色に対する各表面の寄与は、似ているが同符号であるため相殺されない。これらの収差を最小化するために、各レンズ配置の表面は各レンズ組立体、従って光学系全体の球面収差、非点収差、像面湾曲および軸色の総計を個々に最小化するために最適化されるべきである。最小化する必要がある変数の数が少ないという事実は、一定数の表面数で光学性能を向上させた。以下示されたさらなる例では、より多くの表面が用いられ、一般的に3つのシングレットレンズと1つのダブレットレンズで、各レンズ組立体に合計9つの表面があり、それにより収差低減とテレセントリックのための配置を、さらに最適化することができる。示された例はすべて限定されず、当業者であれば明らかなように、幅広いレンズの組み合わせと表面数を用いることができる。
【0037】
本発明を実施するために用いられるFPAイメージセンサは一般的にCMOSイメージセンサであり、データ記憶への出力、および/またはモニターにおける即時表示のための画像を生成するために、様々な駆動回路、リードアウト回路および補足的な画像処理回路が提供される。そのような詳細はすべて顕微鏡検査の分野内の標準的技法であり、本明細書ではこれ以上説明をしない。
【0038】
図1Aの基礎的な実施形態は、サンプルの透過照明や暗視野照明との使用に適しているが、顕微鏡を通した明視野(EPI)照明には対応しない。後述する多くの特に好ましい変形実施は、物体に向けられた照明を光路に導入することを可能にするために、少なくとも1つのビームスプリッタ要素を使用する。
【0039】
図2の限定されない例では、ビームスプリッタ(32)はビームスプリッタキューブ(34)の対角面に組込まれる。ストップ装置の両側にある光路の対称性を維持するために、補償要素(36)はビームスプリッタキューブ(34)に対して同様の光学特性を有し、また光路に配置される。ビームスプリッタキューブ(34)および補償要素(36)は物理的ストップ装置(26)の反対側に位置する。
図2で示された特に好ましい実装では、ビームスプリッタキューブ(34)および補償要素(36)は、いずれも第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)との間で、ストップ装置(26)の両側に位置している。ビームスプリッタキューブ(34)はストップ装置のどちら側にでも位置することができ、ここでは第1のレンズ組立体(20)に隣接する側に示される。
【0040】
図示されている顕微鏡は、好ましくは、照明光源(38)と、対物面(30)を照明するように、照明光源(38)からビームスプリッタキューブ(34)を介して第1のレンズ組立体(20)に照明を向けるように構成された照明光学配置(40)も含む。照明光源(38)および照明光学配置(40)は、使用する顕微鏡検査技術に応じて、可視光、近赤外、または紫外線を使用し、全視野照明または走査照明を提供し、偏光または非偏光で、分光フィルタの有無にかかわらず、任意の所望の種類の照明を提供し得る。ここで示される実施形態では、スロット(42)は偏光子やフィルタの挿入をするために提供される。1以上のミラー(44)は照明光学配置の便利な配置のための照明路を折り返すために提供され得る。
【0041】
照明の均一性に特に価値があると考えられる照明の配置の1つの部分集合によれば、照明光学配置(40)は、第1のレンズ組立体(20)の後焦点面に照明光源(38)の画像を生成するように構成されたレンズの配置を含み、それにより、ケーラー照明を生成し、照明光源の各点が対物面を照らす照明の平行なビームを生成する。テレセントリック光学系の好ましい場合では、第1のレンズ(および第2)のレンズ組立体の後焦点面が物理的ストップ装置(26)にあるため、照明光源の画像は物理的ストップ装置(26)の平面にあるように構成される。ここでは、ビームスプリッタキューブ(34)がストップ装置の対物側にある場合を示しており、照明光源画像は、(ビームスプリッタ(32)で反射された代替光路を介して)物理的ストップ装置に光学的に同等な面(46)で生成される。照明ストップ装置(48)は照明分野を制御する。明白に、ケーラー照明の選択肢は多くの可能な照明配置のうちのたった1つであり、他の選択肢もまた、本発明の範囲内である。
【0042】
ビームスプリッタ(32)は任意の種類のビームスプリッタであり得るし、顕微鏡を用いることを対象とする用途に応じて選択される。第1の群の実装では、ビームスプリッタ(32)は金属性ビームスプリッタ、例えば、半透鏡である。他の用途では、ビームスプリッタ(32)は、偏光ビームスプリッタであり、その一方で用途のさらなるセットでは、ビームスプリッタ(32)は、どの波長が透過され、どの波長が反射されるかについての波長感度を有するダイクロイックビームスプリッタである。また、用途によって、様々な追加のフィルタや偏光アナライザ(50)は、例えば、第2のレンズ配置(22)とFPAイメージセンサ(28)の間のスロットに提供され得る。フィルタまたはアナライザのための他の位置も可能である。
【0043】
上述したように、補償要素(36)は顕微鏡の2つの半分を通る光路の対称性を維持するために好ましく含まれる。有利に、補償要素(36)は、対角線上に配置される第2のビームスプリッタ(52)を備えた第2のビームスプリッタキューブとして実装されており、用途に応じて、ビームスプリッタ(32)と同じ種類、または異なる種類であり得る。ビームスプリッタ(52)は、光学機器の配置を可能にし、光学機器は矢印(54)で模式的に表され、第2のビームスプリッタ(52)に関連付けられ、第2のビームスプリッタを顕微鏡への光ポートとして使用する。光ポートに関連する可能性のある光学機器(54)の限定されないが、特に好ましい例としては、レーザー照明装置、振動計、および分光計が含まれる。
【0044】
図2の顕微鏡では、第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)は、顕微鏡の光軸を定義する共通の軸に沿って配置される。この構成は「チューブ」構成顕微鏡に適切である。
図3Aから
図5は、
図2の設計と光学的に同等またはほぼ同等である多くの変形実施を示しているが、光軸は、特定の用途に有利な可能性があり、設計のコンパクト化を高めることができる代替のフォームファクタを実現するために、折り返される。
【0045】
例として、
図3Aは、
図2のものと本質的に同じである顕微鏡構造を示しているが、第1のレンズ組立体(20)の少なくとも1つのレンズと好ましくは全体が第1の光軸(56)上に位置合わせされ、第2のレンズ組立体(22)の少なくとも1つのレンズと好ましくは全体が第1の光軸(56)に垂直な第2の光軸(58)上に位置合わせされる。これにより、「L字形」設計と呼ぶことができる。光軸を折り返すことは第2のビームスプリッタ(52)での反射によって行なわれ、ここではストップ装置(26)の対物レンズ側の第2のビームスプリッタキューブ(36)の一部として実装される。上記で説明されたとおり、第2のビームスプリッタ(52)のストレートスルーチャネルは、補助光学ポートとして使用してもよい。第1の(照明)ビームスプリッタキューブ(32)は、ここでストップ装置のチューブレンズ側に配置される。
【0046】
図3Bは、
図3Aと光学的で幾何学的には同じだが、補助光学ポートを持たない顕微鏡構造を示す。この場合、補償要素(36)は、プリズムリフレクタとして有利に実装される。
【0047】
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ
図3Aおよび
図3Bの装置と光学的に同等な、さらなる構造配置を示しているが、顕微鏡の光路は、さらに折り返されることで、第1のレンズ組立体(20)の少なくとも1つのレンズと好ましくは全体が第1の光軸(56)上に位置合わせされ、第2のレンズ組立体(22)の少なくとも1つのレンズと好ましくは全体が第1の光軸(56)に平行な第2の光軸(60)上に位置合わせされる。この場合、顕微鏡を通る主な光学チャネルは、好ましくは補償要素(36)とビームスプリッタキューブ(32)の各々で、2回折り返される。その結果、非常にコンパクトな構成になり、顕微鏡を通る主な光路は、2回折り返され、「U字型」や「馬蹄型」と呼ばれ得る。FPAイメージセンサ(28)(これらの図面では見えない)のために十分な容積を提供するため、折り返しミラー62は、第2のレンズ組立体(22)から出てくる光を、光軸の面から上向きに折り返す。
【0048】
これまでの図面では、様々な光学配置を模式的に表し、光学部品のみを示してきた。いずれの場合も、光学部品は、所望の相対的な位置で部品を支持するように構成された適切な支持構造に収容されていることが理解される。
図1Aおよび
図2の一列に並んだ構成については、従来のチューブフォームファクタハウジングは一般に適切である。L字型およびU字型の実装については、硬質材料の一体を使用して任意に実装され、第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)を支持する、硬質ハウジングを提供することによって、部品の必要な位置は、有利に維持される。
図4Aの光学構成に対応する、そのような1つの限定されない例は、カバーを取り除いた
図5に模式的に示される。第1のレンズ組立体(20)のレンズは、ここでは、硬質ハウジング(64)に形成された第1の中空チャネル(66)内に配置され、第2のレンズ組立体(22)のレンズは、硬質ハウジング(64)に形成された第2の中空チャネル(68)内に配置される。この例において、チャネル(66)およびチャネル(68)の縦軸(すなわち、一般的な輪郭のある円筒の中心軸)は、
図4Aの平行な光軸(56)および光軸(60)に対応して、平行である。この場合、照明光学系(40)は、チャネル(66)およびチャネル(68)に再び平行な第3の中空チャネル(70)に配置される。FPAイメージセンサ(28)自体は、
図5では直接見ることができないが、矢印の付いた参照数字は、図のように組立体の下に延び、イメージセンサ自体を収容するセンサハウジングを示している。
【0049】
チャネル内の様々な光学部品の位置は一般的に固定される。任意に、当技術分野で知られているように、工場での組み立て時に部品の位置合わせを微調整するために、様々な調整機構(図示せず)が提供され得るが、使用時の調整は一般的に不要である。焦点は、物体に対する顕微鏡全体の相対的な位置決めを調整して、物体を光学系の対物面にもってくることで実現される。
【0050】
ここで示される実施では、図示されている方向でハウジングの下に位置するFPAイメージセンサ(28)に向かって図示されているように光軸を下向きに折り返す、折り返しミラー(62)に加えて、ここでは追加の折り返しミラー(72)が図示されており、図示されているように装置の上に位置する対物面に向かって、示されているように対物レンズの光軸を上向きに折り返すように配置される。図示された構造は、別の相補形状のハウジング部分で閉じられており、このハウジング部分は、ここで図示されているようにハーフハウジングと嵌合して閉じられ、対物面への光路のために折り返しミラー(72)の上に開口部を残している。
【0051】
これらの要素の各々によって形成された平行面の「窓」は、2つのレンズ組立体の間に存在するコリメートされた画像に、追加の収差発生の影響を最小限に抑えることができるため、第1のレンズ組立体と第2のレンズ組立体の間のビームスプリッタキューブ(32)および補償要素(36)の上述の位置決めは、特に有利であると考えられる。しかしながら、代替実装では、ビームスプリッタと補償要素をレンズ組立体の外側に配置する可能性があり、すなわち、一方を第1のレンズ組立体(20)と対物面(30)の間の光路に配置し、他方を第2のレンズ組立体(22)とFPAイメージセンサ(28)の間に配置される可能性があることを留意するべきである。そのような1つの実施は
図6に示され、ビームスプリッタキューブ(32)は、照明光学系(40)および照明折り返しミラー(44)を通過する光源(38)からの照明を導入するために、第1のレンズ組立体(20)と対物面(30)との間に位置する。第2のビームスプリッタキューブとして実装された補償要素(36)は、外部装置54の統合のために従来通り光学ポートを提供する。他のすべての点において、この配置は上記の実施と同様にラベル付けされた類似の部品を持ち、同様に機能する。
【0052】
上述したように、特別な利点は、様々な種類の収差を相殺することに寄与する光学構成の対称性を維持することによって、実現される。第1のレンズ組立体(20)および第2のレンズ組立体(22)の間の対称性は、生産および組立公差の制限に従い、同一のレンズ組立体を用いることで、好ましく実現される。同様に、ビームスプリッタキューブ(32)が用いられる場合、キューブの光学影響は、上記の例のように、対応する補償要素(36)によって対称的にオフセットされることが好ましい。しかしながら、特に光強度を伴わない比較的薄い要素や、特に光軸に対して垂直に方向づけされた要素の場合、非対称な配置が全体の光学性能に大きな不利となる影響を与えるおそれがない。従って、例えば、上記の様々な実装において、薄いフィルタまたは偏光アナライザ(50)の配置は、対称性からの許容可能な逸脱と考えられる。
【0053】
許容できる不完全な対称性のさらなる例は、
図7に示されており、平坦で対角線上に配置されたビームスプリッタ(74)が、第1のレンズ組立体(20)と第2のレンズ組立体(22)との間の光路に位置する。光路の折り返しは、ここではミラー(76)によって行なわれる。全体の光学構成は、
図7においても、上述した
図3Bと基本的に同じであるが、ビームスプリッタ(74)を通過した画像照明は、ビームスプリッタの前面と後面で屈折を経る。例えば厚さ約2mm以下の比較的薄いフラットビームスプリッタの場合、画質への全体的な影響は許容限度内であることがわかっている。他のすべての点において、
図7の構造および機能は
図3Bのものと同等である。
【0054】
図8は同様の実装を示すが、この場合、
図4Bのものと同様に、光学構成はU字形実装である。この場合、対角線上に配置されたビームスプリッタの使用は、画像照明がビームスプリッタ(74)の表面から反射され、屈折をしないため、画質には全く影響がない。照明チャネルへの影響は、一般的に大きなものではなく、照明光源をストップ装置の面に再度焦点を向けるだけで補うことができる(ケーラー照明の場合)。他のすべての点において、
図8の構造および機能は
図4Bのものと同等である。
【0055】
最後に
図9を参照すると、これは、
図3Bの顕微鏡に追加の機能を提供するために、対物面の後方/向こう側に透過照明システムが補完された、顕微鏡システムを図示しており、ここで示した特定の実装では、位相差顕微鏡の実施に適している。位相差顕微鏡の目的で、透過照明システムは、照明を対物面(30)内の見本に向けるために、光源開口絞り(78)、ケーラー視野絞り(80)、第1の照明光学系(82)、任意に照明フィルタ(84)、位相ストップ装置(86)、第2の照明光学系(88)、および任意に折り返しリフレクタ(90)を有する光源を含む。顕微鏡の光学構成は基本的に上述の通りであるが、第1のレンズ組立体(20)および第2のレンズ組立体(22)の間のストップ装置(26)が位相板で補完されている。ストップ装置(26)にある開口絞り(78)、位相ストップ装置(86)および位相板は、すべて結合した面である。また、この顕微鏡の構造は、上述の前方照明配置も含め、これにより、複数の画像モダリティに柔軟に対応する。明白に、もし位相差顕微鏡が必要ならば、顕微鏡は
図1Aに関連して上述されたように、ビームスプリッタのない単純構造として任意に実装され得る。
【0056】
従って、本発明の顕微鏡の様々な実装は、半導体、ソーラーパネル、LED、微小電子機械システム(MEMS)、プリント回路板、平面パネルディスプレイ(FPD)、光学計測、ウエハダイシング、ロボット工学、宝石学評価、ライフサイエンス、バイオーム(蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡、細胞画像化を含む)および医療診断に限定されないものを、含む幅広い範囲の用途に非常に適している。
【0057】
上記の説明は例としての役割を果たすことのみを意図しており、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内において、他の多くの実施形態が可能であることが理解されよう。