(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】光の伝搬方向に影響を与える方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240209BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/157 20060101ALI20240209BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20240209BHJP
G02F 1/17 20190101ALI20240209BHJP
G02F 1/01 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/13 505
G02F1/13357
G02F1/1347
G02F1/1334
G02F1/157
G02F1/167
G02F1/17
G02F1/01 D
(21)【出願番号】P 2022543542
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021056653
(87)【国際公開番号】W WO2021190997
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102020002052.6
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516243364
【氏名又は名称】ジオプティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SIOPTICA GMBH
【住所又は居所原語表記】Moritz-von-Rohr-Strasse 1a, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘーバー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブレグラ
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-219486(JP,A)
【文献】特開2008-089728(JP,A)
【文献】特開2016-045429(JP,A)
【文献】特開2008-009061(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1257931(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231952(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015012271(DE,A1)
【文献】特開2008-107404(JP,A)
【文献】特開2009-110765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光出射側に透明な基体(1)を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)の光伝搬方向に影響を与える方法であって、前記基体(1)は前記自己照明面又は前記被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されており、第1の選択ではそれぞれの基体(1)のそれぞれ1つ以上の部分面上に各面(F1、F2、 ...)が固有の基体(1)を有し、第2の選択ではすべての面(F1、F2、 ...)が平面状に拡張された共通の基体(1)を有しており、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、第1の選択ではそれぞれの基体(1)の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体(1)の1つ以上の部分面上に、切替え可能な吸収体(2)をそれぞれ配置し、これらの切替え可能な吸収体(2)の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体(1)の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置するステップと、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体(1)又は基体(1)の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分(1)のみを通って出射するように制限するステップ
であって、各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の前記制限は、望ましくない光線が全反射に移行するように、空気に対する基体(1)の屈折率比を選択することによって行われるステップと、
- 第1の動作モードB1に対しては、切替え可能な吸収体(2)の吸収作用をオンにし、その結果として面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体(2)が塗布されていない基体(1)の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体(2)の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体(1)の厚さによって定義される制限された視野角のみから見えるステップと、
- 第2の動作モードB2に対しては、切替え可能な吸収体(2)の吸収作用をオフにし、その結果として面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体(2)をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から見えるステップと、を含む方法。
【請求項2】
すべての面(F1、F2、 ...)に割り当てられた吸収体(2)が、動作モードB1とB2の間の全面的な切り替えのために同時に切り替えられるか、又は
、動作モードB1とB2の間の
切り替え
が、前記基体(1)の1つ以上の部分面上のみ
で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更なる光線収束を達成するために、切替え可能な吸収体(2)が塗布されていない1つ以上の基体(1)の部分面上に、それぞれ1つのコリメートレンズ(4)が配置されていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
各切替え可能な吸収体(2)は、エレクトロクロミック層及び/又は液晶層及び/又は電気泳動ベース層及び/又は吸収粒子を用いたエレクトロウェッティングベース層を有し、これらはそれぞれ電界によって操作できることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各切替え可能な吸収体(2)は、それぞれ下方の面(F1、F2、 ...)によって放射された色スペクトルを第1の状態では吸収し、第2の状態では透過するように切替え可能なカラーフィルタを有しており、この切替え可能なカラーフィルタは電界によってその状態に関して操作可能であることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各切替え可能な吸収体(2)は、ピンホール又は逆ピンホールの形状を有することを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自己照明面又は前記被照明面(F1、F2、 ...)が多数存在して、全体として画面を形成しており、そのような画面は、制限された視野角に対する動作モードB1と、制限されない視野角に対する動作モードB2の間で切り替えることができることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記自己照明面(F1、F2、 ...)は、それぞれOLED画面、ミニLED画面、VCSEL画面、QLED画面、LED画面又はマイクロLED画面の最小ピクセル又は最小ピクセルのクラスタに対応していることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
各切替え可能な吸収体(2)がピンホールの形状を有しており、前記自己照明面又は前記被照明面(F1、F2、 ...)と、切替え可能な吸収体(2)によって覆われていない面部分の幾何学的重心が、少なくとも面(F1、F2、 ...)の一部で平行投影において互いに一致しないように、ピンホールが共通の基体(1)又はそれぞれの基体(1)上又はそれらの部分面上に配置されることを特徴とする、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
各切替え可能な吸収体(2)がピンホールの形状を有しており、吸収体(2)によって覆われていない部分面上に微細構造化された出力素子(5)が配置されており、これらの出力素子(5)は共通の基体(1)又はそれぞれの基体(1)から内部全反射光を方向転換して出力し、微細構造化された出力素子(5)によって出力された光は制限された視野角からのみ見えることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
切替え可能な吸収体(2)上に永久散乱微細構造(6)が配置されていることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
散乱微細構造(6)は基体(1)内で内部全反射光を出力及び/又は散乱させることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記被照明面(F1、F2、 ...)はそれぞれLCD画面の最小ピクセル又は最小ピクセルのクラスタに対応していることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項14】
LCDパネルのバックライトのために、前記自己照明面又は前記被照明面(F1、F2、 ...)からなる面状光源に請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法を使用することであって、それによってLCDパネルが制限された視野角に対する第1の動作モードB1と制限されない視野角に対する第2の動作モードB2で操作することが可能となる使用。
【請求項15】
光の伝搬方向に影響を与えるための装置であって、
- 光出射側に透明な基体(1)を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)と、ここで、前記基体(1)は自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面(F1、F2、 ...)は固有の基体(1)を有し、第2の選択ではすべての面(F1、F2、 ...)が平面状に拡張された共通の基体(1)を有しており、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、第1の選択ではそれぞれの基体(1)の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体(1)の1つ以上の部分面上に、それぞれ配置された切替え可能な吸収体(2)と、ここで、これらの切替え可能な吸収体(2)の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体(1)の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置しており、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体(1)又は基体(1)の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分(1)のみを通って出射するように制限する手段
であって、各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の前記制限は、望ましくない光線が全反射に移行するように、空気に対する基体(1)の屈折率比を選択することによって行われる手段と、
- 切替え可能な吸収体(2)の吸収作用をオン/オフする手段と、を有しており、その結果として
- 第1の動作モードB1に対しては、切替え可能な吸収体(2)の吸収作用がオンにされ、それによって面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体(2)が塗布されていない基体(1)の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体(2)の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体(1)の厚さによって定義される制限された視野角のみから見え、その結果として
- 第2の動作モードB2に対しては、切替え可能な吸収体(2)の吸収作用がオフにされ、それによって面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体(2)をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から見える装置。
【請求項16】
光出射側に透明な基体(1)を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)の光伝搬方向に影響を与える方法であって、前記基体(1)は自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面(F1、F2、 ...)が固有の基体(1)を有し、第2の選択ではすべての面(F1、F2、 ...)が平面状に拡張された共通の基体(1)を有しており、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体(1)の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体(1)の1つ以上の部分面上に切替え可能な吸収体(2)を配置し、これらの切替え可能な吸収体(2)の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体(1)の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置し、そして各面(F1、F2、 ...)の前にそれぞれ互いに相補的に透明及び不透明に切り替えることができる少なくとも2つの別個に切替え可能な吸収体が存在するステップと、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体(1)又は基体(1)の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分(1)のみを通って出射するように制限するステップ
であって、各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の前記制限は、望ましくない光線が全反射に移行するように、空気に対する基体(1)の屈折率比を選択することによって行われるステップと、
- 動作モードB5に対しては、選択された切替え可能な吸収体(2)の吸収作用をオンにし、且つ前記選択された切替え可能な吸収体(2)に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体(2)の透明作用をオンにし、その結果として面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体(2)が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体(2)が塗布されている基体(1)の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体(2)の選択及び幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体(1)の厚さによって定義される第1の制限された視野角のみから見えるステップと、
- 動作モードB6に対しては、前記選択された切替え可能な吸収体(2)の透明作用をオンにし、且つ前記選択された切替え可能な吸収体(2)に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体の吸収作用をオンにし、その結果として面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体(2)が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体(2)が塗布されている基体(1)の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体(2)の選択及び幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体(1)の厚さによって定義される第2の制限された視野角のみから見えるステップと、を含み、
- 動作モードB5とB6は周期的サイクルで順次オンにされ、面(F1、F2、 ...)上に少なくとも2つの異なる画像内容が同じ周期的サイクルで交互に表示され、
- その結果として第1の制限された視野角と第2の制限された視野角に応じて、且つ面(F1、F2、 ...)上に表示される画像内容に応じて、自動立体視表示又はデュアルビュー表示が実現される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、LCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)の視野角の拡大が著しく進歩した。しかしながら、このように画面の視野領域が非常に大きいことが欠点となり得る状況がしばしばある。また、ノートパソコンや携帯電話、タブレットPCなどのモバイル端末で、銀行データ又はその他の個人情報や機密データなどの情報をますます利用できるようになっている。それに応じてこれらの機密データを見ることができる人間をコントロールする必要がある。例えば休暇の写真を見るときや、宣伝目的のためにもディスプレイ上の情報を他人と共有するために広い視野角を選択しなければならない。他方、画像情報を機密に扱おうとする場合は、小さい視野角が必要となる。
【0002】
車の製造でも類似の問題がある。運転手はエンジンがかかっている間はデジタルエンターテインメントプログラムなどの画像内容に気を取られてはならないが、同乗者は運転中もそれらを楽しみたいと思う。したがって相応の表示モードを切り替えることのできる画面が必要になる。
【背景技術】
【0003】
既に携帯用ディスプレイではその覗き見防止を達成するために、マイクロルーバーを用いた追加フィルムが使用された。しかしながらこれらのフィルムは切替え不能であり、必ず最初に手で装着してから、再び取り外す必要があった。また、必要のないときでもディスプレイと別に持ち運ばなければならない。さらに、このようなルーバーフィルムの使用は、光の損失という重大な欠点を伴う。
【0004】
米国特許出願US5956107A号は、画面を複数のモードで操作できる切替え可能な光源を開示している。この場合の欠点は、すべての光出力が散乱に基づいているため、それによって得られる効率は低く、光方向効果が最適ではないことである。特に収束された光円錐の実現は、詳細に開示されていない。
【0005】
中国特許出願CN107734118A号には、2つのバックライトを使用して画面の視野角を制御する画面が記載されている。両バックライトのうち上側のバックライトは、このために収束光を出射させることになっている。そのための実施形態として、特に不透明部分と透明部分を備えたグリッドが挙げられている。しかしこのことは、LCDパネルの方向に第1のバックライトを透過しなければならない第2のバックライトの光も同様に収束され、したがって本来広い視野角のために設けられた公開観視モードで顕著な狭角化を被ることにつながると推測される。
【0006】
米国特許出願US2007/030240A1号には、バックライトから出た光の伝搬方向を制御するための光学素子が記載されている。この光学素子は、例えばPDLC(高分子分散型液晶)という形態の液晶を必要とし、これは一方では高価であり、他方ではPDLC液晶は通常その回路に60V以上の電圧を必要とするので、特にエンドユーザー向け用途では安全性に問題がある。
【0007】
中国特許出願CN1987606A号には、再び2つのバックライトを使用して画面の視野角を制御可能に形成する画面が記載されている。ここでは特に「第1光板」(first light plate)が使用され、これは意図した収束光出力を可能にするために楔形でなければならない。収束光出力を相応の角度条件で実現するための正確な詳細は開示されていない。
【0008】
さらに、米国特許出願US2018/0267344A1号は、2つの平板な照明モジュールを有する構成を記載している。ここでは観視方向で後方に位置する照明モジュールの光が別の構造によって収束される。光は収束後になおも散乱素子を有する前部照明モジュールを通過しなければならない。そのため覗き見防止のための強い光収束は最適に実現することができない。
【0009】
最後に、米国特許出願US2007/0008456A1号には、光放射角を少なくとも3つの領域に分割し、そのうち原則として2つの領域が照明されることが開示されている。その結果として、このように照明されたディスプレイを使用する覗き見防止は、一方向からしか見ることができないものではない。
【0010】
上述した方法及び装置に共通する欠点は、原則として基本画面の明るさを著しく低下させ、及び/又はモード切り替えのための能動的な、少なくとも特殊な光学素子を必要とし、及び/又は複雑で高価な製造が必要であり、及び/又は自由に観視可能なモードでの解像度を低下させ、及び/又は弱い覗き見防止しか可能にしないことである。
【発明の概要】
【0011】
それゆえ、本発明の課題は光の伝搬方向に影響を与えるための方法及び配置を記述することである。本方法は、廉価で大量生産に適しており、特にOLED画面で、しかしまた他のタイプの画面でも汎用的に使用でき、覗き見防止モードと自由観視モードの切替えを可能にし、その際にそのような画面の解像度を実質的に低下させることがない。
【0012】
本発明によれば、この課題は、光出射側に透明な基体を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)の光伝搬方向に影響を与える方法によって解決される。この場合、第1の選択では各面は固有の基体を有し、又は第2の選択では複数の又はすべての面(F1、F2、 ...)が共通の基体を利用する。その際に、上記の基体は自己照明面又は被照明面(F1、F2、・・・)の光発生層の上方に配置されているが、必ずしも直上である必要はない。以上を前提として、本発明による方法は、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体の1つ以上の部分面上に切替え可能な吸収体を配置し、これらの切替え可能な吸収体の空間的な主延伸方向(Hauptausbreitungsrichtung)は、1つ以上の基体の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置するステップと、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体又は基体の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分のみを通って出射するように制限するステップと、
- 第1の動作モードB1に対しては、切替え可能な吸収体の吸収作用をオンにし、その結果として面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体が塗布されていない基体の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体の厚さによって定義される制限された視野角のみから見えるステップと、
- 第2の動作モードB2に対しては、切替え可能な吸収体の吸収作用をオフにし、その結果として面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から(しかし少なくとも動作モードB1におけるよりも大きい視野角から)見えるステップと、を含む。
【0013】
本発明のこの第1の実施形態において、以下のすべての実施形態と同様、制限された視野角は必ずしも特定の方向に光が全く放射されないことを意味しない。むしろ、そこにはなおある程度の残光が放射されることもあるが、それは快適なビューを妨げる。そのような残光(輝度として測定)の典型的な値は、ビューを制限するために設けられたゾーンでも、ピーク値(制限された視野角の専用ビューゾーンから知覚可能な最大値)の数%、通常は最大1~5%である。
【0014】
第1の選択では、各面(F1、F2、 ...)は、固有の基体(若しくは1.1、1.2、1.3など)を有する。これらの基体は、好ましくは実質的に1つの平面上に配置されている。これに対して第2の選択では、すべての面(F1、F2、 ...)が、平面状に拡張された共通の基体を有することも可能である。さらに、それぞれ複数の面(F1、F2、 ...)のクラスタが1つの基体を有することも可能であり、この場合は複数の基体が存在する。
【0015】
特に、すべての面(F1、F2、 ...)に割り当てられた切替え可能な吸収体を、動作モードB1とB2の間の全面的な切り替えのために同時に切り替えるか、又は切替え可能な吸収体の純粋な部分量のみを切り替えることによって、動作モードB1とB2の間の部分面的な切り替えのみを実施することが可能である。
【0016】
共通の基体若しくは個々の基体は、例えばガラスやポリマー製の透明なスペーサーとみなすことができる。同様に、そのような基体は、例えばOLED画素やOLEDパネルの基体、又はLCDパネルの基体など、画像表示装置の不可欠な構成部分であってもよい。しかしながら、OLEDパネルやLCDパネルのような別個の基体が既に存在する場合は、本発明で記載された共通の基体若しくは個々の基体は追加の光学層となる。一般に、本発明に用いられる基体は、実施形態に応じて、数ミクロンから約1ないし数ミリメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0017】
各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の制限は、例えば吸収層を、第1の選択では個々の基体の間に、又は第2の選択では共通の基体内に、永久的に又は切り替え可能に配置することによって行われ、好ましくは切替え可能な吸収体と吸収層がそれぞれ配置されている平面は、最大25度の公差で互いに垂直である。
【0018】
代替的に、各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の制限は、それぞれ隣接する部分面に向かう望ましくない光線が全反射に移行するように、それにより基本設計において光平衡から抹消されるように、空気に対する基体の屈折率比を選択することによって行うことが考えられる。実際には、この光を吸収するために、基体の狭幅側に吸収体を取り付けるのが一般的である。
【0019】
本発明の別の実施形態では、更なる光線収束を達成し、視野角の制限をより良好に可能にするために、切替え可能な吸収体が塗布されていない1つ以上の基体の部分面上に、それぞれ1つのコリメートレンズが配置されている。
【0020】
各切替え可能な吸収体は、例えばエレクトロクロミック層及び/又は液晶層及び/又は電気泳動をベースとする層及び/又は吸収粒子を用いたエレクトロウェッティングをベースとする層及び/又は不透明-透明切り替えPDLC(「ポリマー分散液晶」)層を有し、これらはそれぞれ電界によって操作できる。
【0021】
別の選択では、各切替え可能な吸収体は、それぞれ下方の面(F1、F2、 ...)によって放射された色スペクトルを第1の状態では吸収し、第2の状態では透過するように切替え可能なカラーフィルタを有しており、この切替え可能なカラーフィルタは電界によってその状態に関して操作できる。
【0022】
各切替え可能な吸収体は、好ましくはピンホールの形状を有する。ピンホールは、例えば円形、多角形、特に長方形であることができる。切替え可能な吸収体の面積比で見た大きさは、通常は自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の約25%~90%である。絶対数では、面(F1、F2、 ...)の実施形態に応じて数十平方マイクロメートルから数平方ミリメートル、さらには数平方センチメートルであろう。別の実施形態も考えられる。
【0023】
本発明の特別な実施形態では、逆ピンホールの形状も可能である。そのような逆ピンホールでは、逆でないピンホールと比較して、通常は覆われていない基体の部分面若しくは領域が切替え可能な吸収体で覆われ、及びその逆である。
【0024】
本発明による方法は、自己照明面(F1、F2、 ...)が多数存在し、それぞれが最小の画素(単色/モノクロ、例えば赤、緑、青、或いはまたフルカラー)又はOLED画面、ミニLED画面、VCSEL画面、QLED画面、LED画面又はマイクロLED画面の最小画素のクラスタに対応しており、そのような画面は、制限された視野角に対する動作モードB1と、制限されない視野角に対する動作モードB2の間で切り替えることができる。換言すれば、多数の被照明面又は自己照明面(F1、F2、・・・)が全体として上記の画面を形成する。
【0025】
最小画素のクラスタが自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...の場合、1つ以上の画素が、それらの面内で隣接する異なるそのようなクラスタに分割されていることも考えられる。換言すれば、2つの自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...が、画面の最小画素を共有することもできる。このことは、特に本発明による方法がOLEDパネル又はLCDパネルなどの完成したディスプレイパネルに適用される場合に興味深く、基体には後工程で切替え可能な吸収体が取り付けられる。
【0026】
画面技術は、一般にLCD、SED、FED又はその他の自己照明画面又は被照明画面であることができる。LCDパネルの場合、通常は面状に操作可能な光源によってバックライトされる。しかしまたこの場合、局所的に異なる照度を可能にする、いわゆる「ダイレクトバックライト」を使用することも可能である。その場合には、画素のクラスタは個別に操作可能なLEDで照明される。ここでも、本発明による方法を適用することができる。
【0027】
さらに、本発明による方法を実施できるように、LCDバックライト(ダイレクトバックライト又は全面制御)のような面状光源が個々の面F1、F2、 ...(例えば垂直ストライプ又は二次元グリッド)に分割されるか、自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...からなることも可能である。それにより、光を制限された視野角か、又は制限されない視野角で放つバックライトが生じる。そのようなバックライトが観視方向でLCDパネルの後方に使用されると、LCDパネルを制限された視野角に対する動作モードB1と制限されない視野角に対する動作モードB2の間で切り替えることができる。
【0028】
したがって、本発明は、LCDパネルのバックライトのために自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)からなる面状光源を使用することも含み、それによってLCDパネルは、制限された視野角に対する第1の動作モードB1と制限されない視野角に対する第2の動作モードB2で操作することができる。
【0029】
別の有利な実施形態において、各切替え可能な吸収体は、ピンホールの形状を有する。この場合、用途に応じて、自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...と、切替え可能な吸収体によって覆われていない面部分の幾何学的重心が、少なくとも面F1、F2、 ...の一部で平行投影において互いに一致しないように、ピンホールが共通の基体又はそれぞれの基体上又はそれらの部分面上に配置されることが好都合であり得る。こうすることにより、個々の面F1、F2、 ...の制限された光伝搬方向が変化し、特に有利には、観視者が面F1、F2、 ...を見る際に、左端の面F1、F2、 ...は光を右へ、即ち観視者に向かって放射又は放出し、右端の面F1、F2、 ...は光を左へ、即ち再び観視者に向かって放射又は放出することが達成され得る。このようにして光の方向が制限されても改善された均質性を達成できる。
【0030】
さらに別の実施形態では、各切替え可能な吸収体は、逆ピンホールの形状を有する。そのような逆ピンホールでは、既に述べたように、逆でないピンホールと比較して、通常は覆われていない基体の部分面若しくは領域が切替え可能な吸収体で覆われ、及びその逆である。
【0031】
その結果、切替え可能な吸収体が自己照明面又は被照明面F1に対して実質的に前面に配置されているこの実施形態では、制限されたモードに対する動作モードB1が生成される。ここで面F1から放出された光は、切替え可能な吸収体によって吸収される。しかしながら、基体内部で全反射する光線は、基体内で空間的に吸収体の横に到達する。そのために有効なのは、吸収体によって覆われていない部分面上に微細構造化された出力素子が配置されることであり、これらの出力素子は、共通の基体又はそれぞれの基体から上記の内部全反射光を方向転換して出力し、微細構造化された出力素子によって出力された光は制限された視野角からのみ見えるようになる。
【0032】
一方、この実施形態が動作モードB2に切り替えられると、即ち吸収体が透明に切り替えられると、出力素子による光だけではなく、技術的に制約された損失を除いて吸収体を通過できる面F1の光も直接観視者に届くようになる。
【0033】
最後に、本発明は、切替え可能な吸収体上に永久散乱微細構造を配置することにより発展させることができる。切替え可能な吸収体上に永久散乱微細構造を使用することは、本発明のすべての実施形態にとって、特に動作モードB2に対して光分布を最適化するために効果的な手段である。
【0034】
動作モードB1では、散乱微細構造は効果を発揮しない。なぜなら、そこでは吸収体が吸収するように切り替えられていて、面F1の光は事実上散乱微細構造に届かないか、ほとんど届かないからである。
【0035】
これに対して、切替え可能な吸収体が透明に切り替えられた動作モードB2において、特に動作モードB2に対する光分布を散乱によって最適化するために、散乱微細構造が内部全反射光、(及び吸収体の位置によっては)場合により面F1から直接切替え可能な吸収体に到達する光も散乱させる。
【0036】
また、例えば側方からの光は明度が減少して部分的にしか知覚できないようにするために、切替え可能な吸収体が一部吸収する状態に切り替えられた別の動作モードB3、B4などを設定することも考えられる。
【0037】
特に特殊な用途にとって、2つの動作モードB5及びB6においてそれぞれ切替え可能な吸収体の互いに相補的な部分が相補的に吸収及び透過するように切り替えられることが有利である。例示的な実施形態において、動作モードB5に対してそれぞれ吸収体の半分を吸収し、残りの半分を透過するように切り替えることができる。次に動作モードB6に対して回路が逆転され、即ち吸収体の第1に挙げた半分が透過し、第2に挙げた半分が吸収するように切り替えられる。さらに、ここでは画素ごとに少なくとも2つの切替え可能な吸収体が存在するようになっており、それぞれ第1の半分と第2の半分に属している。そうすると、例えば動作モードB5とB6の周期的サイクルで、面の光が一方向に、次に別の方向に交互に放出されることが可能である。換言すれば、時間的に連続して光方向に影響を与えるために、オン可能な両動作モードB5、B6が周期的サイクルで切り替えられる。このことは、例えば本発明による方法に基づいて時間的に連続して表示される2つの異なる画像を異なる方向にそれぞれ順次且つ周期的に表示される画像を結像する目的で、2つの異なる方向で結像を生成するために利用できる。これが十分に速く、即ち人間の目のフリッカー融合頻度以上で提示されたら、方向指定と画像内容に応じて、面F1、F2、 ...上で自動立体視表示(観視者の両目が2つの異なる画像をほぼ同時に見る)か、又は2人の異なる観視者に対して同時に異なる2つの画像(いわゆるデュアルビュー)が可能になる。
【0038】
換言すれば、この実施形態において、光出射側に透明な基体を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面F1、F2、 ...の光伝搬方向に影響を与える方法が使用され、この方法では上記の基体は自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面F1、F2、 ...が固有の基体を有し、第2の選択ではすべての面F1、F2、 ...が平面状に拡張された共通の基体を有しており、
- 少なくとも一定数の面F1、F2、 ...に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体の1つ以上の部分面上に切替え可能な吸収体を配置し、これらの切替え可能な吸収体の空間的な主延伸方向は、1つ以上の基体の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置し、そして各面F1、F2、 ...の前にそれぞれ互いに相補的に透明及び不透明に切り替えることができる少なくとも2つの別個に切替え可能な吸収体が存在するステップと、
- 各個々の面F1、F2、 ...から出る光の伝搬を、ある面F1、F2、 ...の光が平行投影において別の面の前にある基体又は基体の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分のみを通って出射するように制限するステップと、
- 動作モードB5に対しては、選択された切替え可能な吸収体の吸収作用をオンにし、且つ前記選択された切替え可能な吸収体に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体の透明作用をオンにし、その結果として面F1、F2、・・・から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体が塗布されている基体の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面F1、F2、 ...の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体の選択及び幾何学的形状、それぞれの面F1、F2、 ...の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体の厚さによって定義される第1の制限された視野角のみから見えるステップと、
- 動作モードB6に対しては、前記選択された切替え可能な吸収体の透明作用をオンにし、且つ前記選択された切替え可能な吸収体に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体の吸収作用をオンにし、その結果として面F1、F2、・・・から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体が塗布されている基体の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面F1、F2、 ...の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体の選択及び幾何学的形状、それぞれの面F1、F2、 ...の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体の厚さによって定義される第2の制限された視野角のみから見えるステップと、を含み、
- 動作モードB5とB6は周期的サイクルで順次オンにされ、面F1、F2、 ...上に少なくとも2つの異なる画像内容が同じ周期的サイクルで交互に表示され、
- その結果として第1の制限された視野角と第2の制限された視野角に応じて、且つ面F1、F2、 ...上に表示される画像内容に応じて、自動立体視表示又はデュアルビュー表示が実現される。
【0039】
基本的に、各面F1、F2、 ...ごとに2つ以上の切替え可能な吸収体を有する相応の実施形態において、2つ以上の画像を2つ以上の方向に時間的に連続して結像することも可能である。これにより、例えば頭部を動かすと一種の全方位視野も可能にする、いわゆるマルチビュー3Dシステムが可能である。
【0040】
本発明の課題は、光の伝搬方向に影響を与えるための本発明による装置によって解決され、この装置は、
- 光出射側に透明な基体を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)と、ここで、上記の基体は自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面(F1、F2、 ...)は固有の基体を有し、第2の選択ではすべての面F1、F2、 ...が平面状に拡張された共通の基体を有し、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体の1つ以上の部分面上に配置された切替え可能な吸収体と、ここで、これらの切替え可能な吸収体の空間的な主延伸方向は、1つ以上の基体の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置しており、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体又は基体の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分のみを通って出射するように制限する手段と、
- 切替え可能な吸収体の吸収作用をオン/オフする手段と、を有しており、
- その結果として、第1の動作モードB1に対しては、切替え可能な吸収体の吸収作用がオンにされ、それによって面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体が塗布されていない基体の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体の厚さによって定義される制限された視野角のみから見え、
- 第2の動作モードB2に対しては、切替え可能な吸収体の吸収作用がオフにされ、それによって面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から見える。
【0041】
ここで本発明による方法の前述した実施形態及び手段と効果の関係が準用され、冗長性の理由からここでは繰り返さない。
【0042】
基本的に、上述したパラメータを一定の範囲内で変化させれば、本発明の性能は維持される。
【0043】
上記の特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせや単独でも使用できることは自明である。
【0044】
以下に本発明に必須の特徴も示した図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明による方法を動作モードB1で説明するための原理図である。
【
図2】
図2は、本発明による方法を動作モードB2で説明するための原理図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における斜め方向の光線の制限を説明するための原理図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態における斜め方向の光線の制限を説明するための原理図である。
【
図5】
図5は、本発明による方法を拡張された実施形態における動作モードB1で説明するための原理図である。
【
図6】
図6は、本発明による方法を拡張された実施形態における動作モードB2で説明するための原理図である。
【
図7a】
図7aは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図出示す原理図である。
【
図7b】
図7bは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7c】
図7cは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7d】
図7dは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7e】
図7eは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7f】
図7fは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7g】
図7gは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図7h】
図7hは、切替え可能な吸収体の可能な実施形態を平面図で示す原理図である。
【
図8】
図8は、各切替え可能な吸収体がピンホールの形状を有し、幾何学的重心が面ごとに移動する実施形態の原理図である。
【
図9a】
図9aは、逆ピンホールが使用され、内部全反射光が利用される実施形態の原理図である。
【
図9b】
図9bは、逆ピンホールが使用され、内部全反射光が利用される実施形態の原理図である。
【
図10a】
図10aは、切替え可能な吸収体上に永久散乱微細構造が使用された実施形態の原理図である。
【
図10b】
図10bは、切替え可能な吸収体上に永久散乱微細構造が使用された実施形態の原理図である。
【
図11a】
図11aは、それぞれ異なる方向に異なる画像を表示できる動作モードB5及びB6を有する実施形態の原理図である。
【
図11b】
図11bは、それぞれ異なる方向に異なる画像を表示できる動作モードB5及びB6を有する実施形態の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面は縮尺どおりではなく、原理的な表現を示している。
【0047】
図1には、本発明による方法を動作モードB1で説明するための原理図が示されている。これに対して
図2は動作モードB2を示している。光出射側にそれぞれ1つの透明な基体1を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)の光伝搬方向に影響を与える本発明による方法において、第1の選択では各面が固有の基体1を有し、又は第2の選択ではすべての面(F1、F2、 ...)が共通の基体1を利用する。この場合、上記の基体1は、
図1に示されているように、自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されているが、必ずしも直上である必要はない。
【0048】
本発明による方法は、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体1の1つ以上の(純粋な)部分面上に、又は第2の選択では共通の基体1の1つ以上の部分面上に切替え可能な吸収体2を配置し、これらの切替え可能な吸収体2の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体1の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置するステップと、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体1又は基体1の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分1のみを通って出射するように制限するステップと(これについては以下に
図3及び
図4を参照して詳しく説明する)、
- 第1の動作モードB1に対しては、(
図1に示されているように)切替え可能な吸収体2の吸収作用をオンにし、その結果として面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体2が塗布されていない基体1の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体2の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体1の厚さによって定義される制限された視野角のみから見えるステップと、
- 第2の動作モードB2に対しては、
図2に示されているように、切替え可能な吸収体2の吸収作用をオフにし、その結果として面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体2をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から(しかし少なくとも動作モードB1におけるよりも大きい視野角から)見えるステップと、を含む。
【0049】
本発明のこの第1の実施形態において、以下のすべての実施形態と同様、制限された視野角は必ずしも特定の方向に光が全く放射されないことを意味しない。むしろ、そこにはなおある程度の残光が放射されることもあるが、それは快適なビューを妨げる。そのような残光(輝度として測定)の典型的な値は、ビューを制限するために設けられたゾーンでも、ピーク値(制限された視野角の専用ビューゾーンから知覚可能な最大値)の数%、通常は最大1~5%である。
【0050】
第1の選択では、各面(F1、F2、 ...)は、固有の基体1(若しくは1.1、1.2、1.3など)を有する。これらの基体は、好ましくは実質的に1つの平面上に配置されている。これに対して第2の選択では、すべての面(F1、F2、 ...)が、平面状に拡張された共通の基体1を有することも可能である。
【0051】
特に、すべての面(F1、F2、 ...)に割り当てられた切替え可能な吸収体を、動作モードB1とB2の間の全面的な切り替えのために同時に切り替えるか、又は切替え可能な吸収体の純粋な部分量のみを切り替えることによって、動作モードB1とB2の間の部分面的な切り替えのみを実施することが可能である。
【0052】
各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の上記の制限は、例えば第1の選択では個々の基体1の間に、又は第2の選択では共通の基体1の内部に、永久吸収層3を配置することによって行われる。この方策は
図3に再現されており、ここでは第1の実施形態において斜め方向の光線の制限の原理図が示されている。吸収層3は、例えば接着剤、シリコーン又はポリマー中の不透明な粒子からなってよい。代替的に、金属などの不透明な固体材料や、1つ以上の蒸着層であってもよい。
図3に示す状況によれば、例えば面F1から面F2の前に位置する基体部分1に向かって放射された光線は、吸収層3によって抹消されることになろう。逆に、面F2から面F1の前に位置する基体部1に向かって放射された光線についても同様である。
【0053】
特別な実施形態において、吸収層3も透明状態と吸収状態との間で切り替えられることができる。好ましくは、切替え可能な吸収体2と(永久的な又は任意に切替え可能なな)層3がそれぞれ配置されている平面は、最大25度の公差で互いに垂直である。
【0054】
これに対して、
図4は、第2の実施形態における斜め方向の光線の制限の原理図である。ここでは各個別面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬は、それぞれ隣接する部分面に向かう望ましくない光線が全反射(
図4では破線の光線で示す)に移行し、それにより光平衡から抹消されるように、基体1と空気の屈折率比を選択することによって制限される。実際には、この光を全反射の角度から吸収するために、基体の狭幅側に(図示されていない永久的な)吸収体を取り付けるのが一般的である。
【0055】
上記の斜め方向への光線を制限するための他の実施形態も考えられる。
【0056】
本発明の別の実施形態において、更なる光線収束を達成し、視野角の制限をより良好に可能にするために、それぞれ切替え可能な吸収体2が塗布されていない1つ以上の基体1の部分面に、それぞれ1つのコリメートレンズ4が配置されている。これについて
図5はこの実施形態を動作モードB1で、
図6は動作モードB2で説明するための原理図を示している。
【0057】
各切替え可能な吸収体2は、例えばエレクトロクロミック層及び/又は液晶層及び/又は電気泳動ベース層及び/又は吸収粒子を用いたエレクトロウェッティングベース層を有し、これらはそれぞれ電界によって操作できる。このようにすることによって、吸着作用を簡単にオン/オフできる。これを操作する手段は、言うまでもなく存在する。
【0058】
吸収体2としてエレクトロクロミック層を用いる場合、これらは例えば1つ以上の基体1上に廉価に蒸着でき、操作用の電極と接触させることができる。別の実施形態において、各切替え可能な吸収体2は、それぞれ下方の面(F1、F2、 ...)によって放射された色スペクトルを第1の状態では吸収し、第2の状態では透過するように切替え可能なカラーフィルタを有しており、この切替え可能なカラーフィルタは電界によってその状態に関して操作できる。これは例えば量子ドットであってよい。
【0059】
各切替え可能な吸収体2は、好ましくはピンホールの形状を有する。この場合、切替え可能な吸収体2ごとに若しくはピンホールごとに、1つ以上の(永久的に)吸収しない幾何学的部分が設けられていることが明示的に可能である。
【0060】
これについて、
図7a~
図7hは、切替え可能な吸収体2の可能な実施形態の様々な原理図を平面図で示す。
図7a~
図7hのうちの1つの図面に従って面(F1、F2、・・・)の前にそれぞれ1つの吸収体が配置されていると、それぞれ動作モードB1で動作モードB2と比較して(観視者が基体1をほぼその中心垂線の周りで見ると仮定して)、光伝搬方向に次の影響が生じる。
-
図7a:光伝搬方向を左右及び上下に制限する。
-
図7b:光伝搬方向を左右のみに制限する。
-
図7c:光伝搬方向を左右にのみに制限し、右への制限を左への制限より強くする。
-
図7d:光伝搬方向が左右及び上下に制限するが、断面が円形の円錐状の伝搬角を有する。
-
図7e:基体1の上方で全方向に光伝搬方向を制限するが、断面が六角形の円錐状の伝搬角を有する。
-
図7f:基体1の上方で全方向に光伝搬方向を制限するが、断面が円形の円錐状の伝搬角を有する。
-
図7g:基体1の上方で全方向に光伝搬方向を制限するが、2つの円形断面を持つ円錐状の伝搬角を有する。
-
図7h:断面が円形の円錐状の遮断角の外部にのみ光が到達するように、光伝搬方向を左右及び上下に制限する(いわゆる逆ピンホール形状)。
【0061】
上記の
図7a~
図7hにおいて、吸収体部分2が塗布されていない箇所は、基体1と表示されている。これは特に吸収体2が1つ以上の基体1の全面を覆っていないことを図解するものである。
【0062】
また、異なる切替え可能な吸収体2が、例えば
図7a~
図7hの2つ以上の図面に従い異なる幾何学的形状を有することも可能である。しかし多くの場合、すべての吸収体2は実質的に同じ幾何学的形状を有することになろう。すべての吸収体2に同じ形状を適用すると、補正係数を用いて端部に向かってわずかに伸縮させることができる。
【0063】
さらに、吸収体2は、
図7h(
図7dの逆)に示すように、逆ピンホールの形状を有することができる。そのような逆ピンホールでは、逆でないピンホールと比較して、通常は覆われていない基体の部分面若しくは領域が切替え可能な吸収体で覆われ、及びその逆である。そのような逆ピンホールは、本発明の特別な実施形態で使用される(
図9a及び
図9bの説明参照)。
【0064】
吸収体2の表面の大きさは、面(F1、F2、 ...)の実施形態に応じて絶対数で数十平方マイクロメートルから数平方ミリメートル、場合によってはそれ以上であり得る。別の実施形態も考えられ、用途に応じて実施可能である。
【0065】
図7gによる実施形態は、例えば動作モードB5に対してそれぞれ各吸収体2の左吸収体部分(即ち破線の左側の部分)が吸収し、他方の右半分が透過するように切り替えられるように構成することもできる。次に動作モードB6に対して回路が逆転され、即ち吸収体2の第1に挙げた半分が透過し、第2に挙げた半分が吸収するように切り替えられる。これにより例えば、動作モードB5とB6の周期的サイクルで、面の光が一方向に、次に別の方向に交互に放出されることが可能である。換言すれば、時間的に連続して光方向に影響を与えるために、動作モードB5とB6が周期的サイクルで切り替えられる。このことは、例えば本発明による方法に基づいて時間的に連続して表示される2つの異なる画像を異なる方向にそれぞれ順次且つ周期的に表示される画像を結像する目的で、2つの異なる方向で結像を生成するために利用できる。これが十分に速く、即ち人間の目のフリッカー融合頻度以上で提示されたら、方向指定と画像内容に応じて、面F1、F2、 ...上で自動立体視表示(観視者の両目が2つの異なる画像をほぼ同時に見る)か、又は2人の異なる観視者に対して同時に異なる2つの画像(いわゆるデュアルビュー)を可能にすることができる。
【0066】
これについて
図11a及び
図11bは、それぞれ異なる画像を異なる方向に表示できる動作モードB5及びB6を有する実施形態の原理図を示している。この実施形態では、換言すれば隣接する複数の自己照明面及び/又は被照明面F1、F2、 ...の光伝搬方向に影響を与える方法が用いられ、この方法では面F1、F2、 ...は、光出射側に透明な基体1を含み、上記の基体1は自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面F1、F2、 ...が固有の基体1を有し、第2の選択ではすべての面F1、F2、 ...が平面状に拡張された共通の基体1を有しており、
- 少なくとも一定数の面F1、F2、 ...に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体1の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体1の1つ以上の部分面上に切替え可能な吸収体2を配置し、これらの切替え可能な吸収体2の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体1の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置し、そして各面F1、F2、 ...の前にそれぞれ互いに相補的に透明及び不透明に切り替えることができる少なくとも2つの別個に切替え可能な吸収体が存在するステップと、
- 各個々の面F1、F2、 ...から出る光の伝搬を、ある面F1、F2、 ...の光が平行投影において別の面の前にある基体1又は基体1の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分1のみを通って出射するように制限するステップと、
- 動作モードB5に対しては、選択された切替え可能な吸収体2の吸収作用をオンにし、且つ上記の選択された切替え可能な吸収体2に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体2の透明作用をオンにし、その結果として面F1、F2、・・・から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体2が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体2が塗布されている基体1の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面F1、F2、 ...の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体2の選択及び幾何学的形状、それぞれの面F1、F2、 ...の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体1の厚さによって定義される第1の制限された視野角のみから見えるステップと、
- 動作モードB6に対しては、上記の選択された切替え可能な吸収体2の透明作用をオンにし、且つ前記選択された切替え可能な吸収体2に対して相補的に選択された切替え可能な吸収体の吸収作用をオンにし、その結果として面F1、F2、・・・から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体2が塗布されていないか又は透明に切り替えられた吸収体2が塗布されている基体1の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面F1、F2、 ...の光は、それぞれ特に切替え可能な吸収体2の選択及び幾何学的形状、それぞれの面F1、F2、 ...の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体1の厚さによって定義される第2の制限された視野角のみから見えるステップと、を含み、
- 動作モードB5とB6は周期的サイクルで順次オンにされ、面F1、F2、 ...上に少なくとも2つの異なる画像内容が同じ周期的サイクルで交互に表示され、
- その結果として第1の制限された視野角と第2の制限された視野角に応じて、且つ面F1、F2、 ...上に表示される画像内容に応じて、自動立体視表示又はデュアルビュー表示が実現される。
【0067】
これについて、
図11aは動作モードB5を示している。ここでは透明に切り替えられた切替え可能な吸収体2-aを選択することによって、右方向の光線のみが(即ち相補的に選択された透明に切り替えられた切替え可能な吸収体2-bを通って)通過する。ところで、ここでも各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬の上記の制限は、例えば永久吸収層3を第1の選択では個々の基体1の間に、又は第2の選択では共通の基体1内に配置することによって行われる。
【0068】
これに対して、
図11bは動作モードB6を有する次の周期的サイクルを示している。ここでは不透明に切り替えられた切替え可能な吸収体2-bを選択することによって、左方向の光線のみが(即ち相補的に選択された透明に切り替えられた切替え可能な吸収体2-aを通って)通過する。
【0069】
本発明による方法が特に実用的な意義を獲得するのは、自己照明面(F1、F2、 ...)が多数存在し、それぞれOLED画面、ミニLED画面、VCSEL画面、QLED画面、LED画面又はマイクロLED画面の最小ピクセルに対応して、そのような画面の1つが制限された視野角に対する動作モードB1と制限されない視野角に対する動作モードB2との間で切り替えることができる場合である。最小画素として、画像表示技術の実施形態に応じて、RGBサブピクセル(赤、緑、青)、他のモノクロ画素、又はフルカラー画素が考慮される。画面技術は、一般にLCD、SED、FEDなどの自己照明画面又は被照明画面であることができる。
【0070】
図8に示す別の実施形態では、各切替え可能な吸収体2は、ピンホールの形状を有する。用途によっては、自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...と、切替え可能な吸収体2によって覆われていない面部分の幾何学的重心が、少なくとも面F1、F2、 ...の一部で平行投影において互いに一致しないように、ピンホールが共通の基体1又はそれぞれの基体1上又はそれらの部分面上に配置されることが好都合であり得る。このことは
図8に見ることができる。こうすることにより、個々の面F1、F2、 ...の制限された光伝搬方向が変化し、特に有利には、観視者7が面F1、F2、 ...を見る際に、左端の面F1、F2、 ...は光を右へ、即ち観視者に向かって放射又は放出し、右端の面F1、F2、 ...は光を左へ、即ち再び観視者に向かって放射又は放出することが達成される。このようにして光の方向が制限されても改善された均質性を達成できる。
【0071】
図8で、観視者7に向かう面F1、F2、F3の光方向のそのような最適化が認識される。これはあくまで原理図であるため、相応の実施において左側、中央及び右側の面を代表する3つの面F1、F2、F3しか記入されていない。しかしながら実際には、このような自己照明面又は被照明面F1、F2、F3、 ...が多数存在する。自己照明面又は被照明面F1、F2、 ...の幾何学的重心が、前述のようにこれらの面の全体にわたって移動することは、当業者には明らかなように徐々に行われる。
【0072】
さらに、
図8では面F1、F2、F3が間隔を空けて記入されている。これらの面は実際に互いに間隔を空けることができるが、必ずしも空ける必要はない。
【0073】
図9a及び
図9bに原理図として示されている別の実施形態では、各切替え可能な吸収体2は(例えば
図7hに示されているように)逆ピンホールの形状を有する。そのような逆ピンホールでは、逆でないピンホールと比較して、通常は覆われていない基体の部分面若しくは領域が切替え可能な吸収体2で覆われている。
【0074】
その結果、切替え可能な吸収体が自己照明面又は被照明面F1に対して実質的に前面に配置されている
図9aによる実施形態では、制限されたモードに対する動作モードB1が示されている。ここで面F1から放出された光は、切替え可能な吸収体によって吸収される。しかしながら、なおも基体1の内部で全反射される光線は、基体内で空間的に吸収体2の横に到達する。
【0075】
この実施形態における別の特別な特徴は、吸収体2によって覆われていない部分面上に微細構造化された出力素子5が配置されて、共通の基体1又はそれぞれの基体1から前述の内部全反射光を方向転換して出力し、微細構造化された出力素子5によって出力された光は制限された視野角からのみ見えることである。このことは、
図9aに示すように、上方に出力された光線によって略示されている。
【0076】
一方、この実施形態が
図9bに示すように動作モードB2に切り替えられると、即ち吸収体が透明になると、出力素子5による光だけではなく、技術的に制約された損失を除いて吸収体2を通過できる面F1の光も直接観視者に届くようになる。
【0077】
この点でこの実施形態は、前述したすべての実施形態とは一部異なる効果を有する。なぜなら、ここでは逆ピンホールの形での吸収体2の分布と内部全反射光の使用が効果を発揮するからである。
【0078】
最後に、
図10a及び
図10bは、切替え可能な吸収体2上に永久散乱微細構造6が配置される別の実施形態を示す。
図10a及び
図10bの原理図は、
図5及び
図6による実施形態を相応に発展させたものと見ることができるが、切替え可能な吸収体上に永久散乱微細構造6を使用することは、本発明のすべての実施形態にとって、特に動作モードB2に対して光分布を最適化するために効果的な手段である。
図10aによれば動作モードB1では、散乱微細構造は効果を発揮しない。なぜなら、そこでは吸収体2が吸収するように切り替えられていて、面F1の光は事実上散乱微細構造6に届かないからである。これに対して
図10bは、切替え可能な吸収体が透明に切り替えられた動作モードB2において、特に動作モードB2に対する光分布を散乱によって最適化するために、散乱微細構造が内部全反射光、(及び吸収体の位置によっては)場合により面F1から直接切替え可能な吸収体に到達する光も散乱させることを示している。
【0079】
図1及び
図2を参照して、光の伝搬方向に影響を与えるための本発明による配置も説明することができる。この装置は
- 光出射側に(それぞれ1つの)透明な基体1を有する、複数の隣接する自己照明面及び/又は被照明面(F1、F2、 ...)と、ここで、上記の基体1は自己照明面又は被照明面(F1、F2、 ...)の光発生層の上方に配置されており、第1の選択では各面(F1、F2、 ...)は固有の基体(1)を有し、第2の選択ではすべての面(F1、F2、 ...)が平面状に拡張された共通の基体(1)を有しており、
- 少なくとも一定数の面(F1、F2、 ...)に対して光出射側に、それぞれ第1の選択ではそれぞれの基体1の1つ以上の部分面上に、又は第2の選択では共通の基体1の1つ以上の部分面上に配置された切替え可能な吸収体2と、ここで、これらの切替え可能な吸収体2の空間的な主
延伸方向は、1つ以上の基体1の光出射面に対して最大10度の公差で平行に位置しており、
- 各個々の面(F1、F2、 ...)から出る光の伝搬を、ある面(F1、F2、 ...)の光が平行投影において別の面の前にある基体1又は基体1の部分を通って出射せず、平行投影において当該面の前にある基体部分1のみを通って出射するように制限する手段と、ここで、このような方策は
図3及び
図4に例示されており、
- 切替え可能な吸収体2の吸収作用をオン/オフする(図示されていない)手段と、を有しており、
- その結果として、第1の動作モードB1に対しては、
図1に示すように、切替え可能な吸収体2の吸収作用がオンにされ、それによって面(F1、F2、・・・)から出る光の一部が吸収され、残りの光は切替え可能な吸収体2が塗布されていない基体1の光出射側の面部分で妨げられることなく出射し、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光はそれぞれ特に切替え可能な吸収体2の幾何学的形状、それぞれの面(F1、F2、 ...)の幾何学的形状、構成における屈折率比、並びに基体1の厚さによって定義される制限された視野角のみから見え、
- その結果として、第2の動作モードB2に対しては、
図2に示すように、切替え可能な吸収体2の吸収作用がオフにされ、それによって面(F1、F2、 ...)から出る光が切替え可能な吸収体2をその残留吸収損失を除いて妨げられることなく通過することができ、それによってそれぞれ該当する面(F1、F2、 ...)の光は制限されない視野角から見える。
【0080】
これについては前述した実施形態及び手段と効果の関係が準用され、冗長性の理由からここでは繰り返さない。
【0081】
上述した光の伝搬方向に影響を与えるための本発明による方法及び本発明による装置は、設定された課題を解決する。方法も装置も、廉価で大量生産に適しており、特にOLED画面で、しかしまた他のタイプの画面でも汎用的に使用でき、覗き見防止モードと自由観視モードの切替えを可能にし、その際にそのような画面の解像度を実質的に低下させることがない。
【0082】
上述した発明は、ATMや決済端末での暗証番号入力やデータ表示、パスワード入力、携帯端末でのメール閲覧など、機密データの表示や入力が行われる場所で画像表示装置と組み合わせて有利に利用することができる。また、本発明は、乗用車において、運転者に見えるように内容を選択的に表示し、或いは運転者に邪魔な画像内容を見せないようにするために利用することもできる。その他の用途は照明や広告の分野であり、特にライトスモッグを避けるために用いられる。