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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】力覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/165 20200101AFI20240209BHJP
【FI】
G01L5/165
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023122825
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511071234
【氏名又は名称】株式会社トライフォース・マネジメント
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】江良 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和廣
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-119359(JP,A)
【文献】特開2021-135104(JP,A)
【文献】特開平5-312659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01L 1/00-1/26
G01L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる力またはモーメントの作用を受ける第1センサ体と、
第1方向において前記第1センサ体と異なる位置に配置された第2センサ体と、
前記第1センサ体と前記第2センサ体とを接続し、前記第1センサ体が受けた力またはモーメントの作用により弾性変形する起歪体と、
前記起歪体の弾性変形により生じた変位を検出する検出素子と、
前記検出素子の検出結果に基づいて、前記第1センサ体に作用した力またはモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において互いに反対側に変位する第1変位部および第2変位部を含み、
前記検出素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの一方の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第1容量素子と、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの他方の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第2容量素子と、を含み、
前記起歪体は、前記第1センサ体と前記第2センサ体との間に配置された傾動構造体と、前記第1センサ体と前記傾動構造体とを接続する第1接続部と、前記第2センサ体と前記傾動構造体とを接続する第2接続部と、を含み、
前記傾動構造体は、前記第1接続部に接続されるとともに前記第1接続部に対して前記第1方向に直交する第2方向の両側に配置された一対の第1傾動部と、前記第2接続部に接続されるとともに前記第2接続部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2傾動部と、を含み、
前記第1変位部は、前記第1接続部に対して前記第2方向における一側に配置された前記第1傾動部に接続され、
前記第2変位部は、前記第2接続部に対して前記第2方向における他側に配置された前記第2傾動部に接続されている、
力覚センサ。
【請求項2】
前記第1変位部は、対応する前記第1傾動部に対して他の前記第1傾動部の側に配置され、
前記第2変位部は、対応する前記第2傾動部に対して他の前記第2傾動部の側に配置されている、
請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項3】
前記第1変位部は、第1腕部を介して前記第1傾動部に接続され、
前記第1腕部は、前記第2方向のうち対応する前記第1傾動部から他の前記第1傾動部に向かう方向に延び、
前記第2変位部は、第2腕部を介して前記第2傾動部に接続され、
前記第2腕部は、前記第2方向のうち対応する前記第2傾動部から他の前記第2傾動部に向かう方向に延びている、
請求項2に記載の力覚センサ。
【請求項4】
前記第1腕部は、対応する前記第1傾動部の前記第1センサ体に対向する面に、第1連結部を介して取り付けられ、
前記第2腕部は、対応する前記第2傾動部の前記第2センサ体に対向する面に、第2連結部を介して取り付けられている、
請求項3に記載の力覚センサ。
【請求項5】
前記第1変位部および前記第2変位部は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において、前記傾動構造体の一側に配置されている、
請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項6】
前記傾動構造体は、対応する前記第1傾動部を前記第1接続部に接続する一対の第1変形部と、対応する前記第2傾動部を前記第2接続部に接続する一対の第2変形部と、を更に含み、
前記第1変形部の前記第1方向の寸法は、前記第1傾動部の前記第1方向の寸法よりも小さく、
前記第2変形部の前記第1方向の寸法は、前記第2傾動部の前記第1方向の寸法よりも小さい、
請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項7】
前記第1変形部は、前記第1センサ体に対向する第1対向面を含み、
前記第1対向面は、前記第1傾動部の前記第1センサ体に対向する面よりも前記第2センサ体の側に配置され、
前記第2変形部は、前記第2センサ体に対向する第2対向面を含み、
前記第2対向面は、前記第2傾動部の前記第2センサ体に対向する面よりも前記第1センサ体の側に配置されている、
請求項6に記載の力覚センサ。
【請求項8】
前記第1対向面および前記第2対向面はそれぞれ、湾曲状に形成されている、
請求項7に記載の力覚センサ。
【請求項9】
前記傾動構造体は、前記第1傾動部と対応する前記第2傾動部とを接続する一対の第3変形部を更に含み、
前記第3変形部の前記第2方向の寸法は、前記第1傾動部の前記第2方向の寸法よりも小さく、前記第2傾動部の前記第2方向の寸法よりも小さい、
請求項8に記載の力覚センサ。
【請求項10】
前記第3変形部は、他の前記第3変形部に対向する湾曲状の第3対向面を含んでいる、
請求項9に記載の力覚センサ。
【請求項11】
前記第1容量素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの一方に設けられた第1変位電極基板と、前記第1変位電極基板に対向する第1固定電極基板と、を含み、
前記第2容量素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの他方に設けられた第2変位電極基板と、前記第2変位電極基板に対向する第2固定電極基板と、を含む、
請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項12】
前記第1固定電極基板および前記第2固定電極基板は、前記第2センサ体に支持されている、
請求項11に記載の力覚センサ。
【請求項13】
前記第1固定電極基板および前記第2固定電極基板はそれぞれ、台座を介して前記第2センサ体に支持されている、
請求項11に記載の力覚センサ。
【請求項14】
前記第1センサ体と前記第2センサ体とは、4つの前記起歪体で接続され、
4つの前記起歪体は、第1起歪体と、第2起歪体と、第3起歪体と、第4起歪体と、を含み、
前記第1方向をXYZ三次元座標系におけるZ軸方向とし、
前記第1センサ体の中心に対してY軸方向正側に前記第1起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してX軸方向負側に前記第2起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してY軸方向負側に前記第3起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してX軸方向正側に前記第4起歪体が配置されている、
請求項1に記載の力覚センサ。
【請求項15】
前記第1変位部および前記第2変位部は、対応する前記傾動構造体に対して、前記第1センサ体の中心側に配置されている、
請求項14に記載の力覚センサ。
【請求項16】
検出対象となる力またはモーメントの作用を受ける第1センサ体と、
第1方向において前記第1センサ体と異なる位置に配置された第2センサ体と、
前記第1センサ体と前記第2センサ体とを接続し、前記第1センサ体が受けた力またはモーメントの作用により弾性変形する2つの起歪体と、
各々の前記起歪体の弾性変形により生じた変位を検出する検出素子と、
前記検出素子の検出結果に基づいて、前記第1センサ体に作用した力またはモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
2つの前記起歪体は、第1起歪体と、第2起歪体と、を含み、
前記第1起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において一側に変位する第1変位部を含み、
前記第2起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において他側に変位する第2変位部を含み、
前記検出素子は、前記第1変位部の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第1容量素子と、前記第2変位部の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第2容量素子と、を含み、
前記第1起歪体および前記第2起歪体はそれぞれ、前記第1センサ体と前記第2センサ体との間に配置された傾動構造体と、前記第1センサ体と前記傾動構造体とを接続する第1接続部と、前記第2センサ体と前記傾動構造体とを接続する第2接続部と、を含み、
前記傾動構造体は、前記第1接続部に接続されるとともに前記第1接続部に対して前記第1方向に直交する第2方向の両側に配置された一対の第1傾動部と、前記第2接続部に接続されるとともに前記第2接続部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2傾動部と、を含み、
前記第1変位部は、前記第1起歪体の前記第1傾動部に接続され、
前記第2変位部は、前記第2起歪体の前記第2傾動部に接続されている、
力覚センサ。
【請求項17】
前記第1起歪体は、2つの前記第1変位部を含み、
一方の前記第1変位部は、前記第1起歪体の一方の前記第1傾動部に接続され、他方の前記第1変位部は、前記第1起歪体の他方の前記第1傾動部に接続され、
前記第2起歪体は、2つの前記第2変位部を含み、
一方の前記第1変位部は、前記第2起歪体の一方の前記第2傾動部に接続され、他方の前記第2変位部は、前記第2起歪体の他方の前記第2傾動部に接続されている、
請求項16に記載の力覚センサ。
【請求項18】
前記第1方向をXYZ三次元座標系におけるZ軸方向とし、
前記第1センサ体の中心に対してY軸方向正側に前記第1起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してY軸方向負側に前記第2起歪体が配置されている、
請求項16に記載の力覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の軸方向に作用した力および所定の回転軸周りに作用したモーメント(トルク)を電気信号として出力する力覚センサが知られている。力覚センサは、産業用ロボットを初めとして、協働ロボット、生活支援ロボット、医療用ロボットおよびサービスロボット等、各種ロボットの力制御等に幅広く利用されている。
【0003】
力覚センサは、ロボットアームとエンドエフェクター(グリッパー等)の間に配置され、ワークに作用した力を検出する。検出された力は、ロボットの制御に用いられる。例えば、ロボットアームが人に接触した場合には、その接触を力覚センサが検出する。このことにより、ロボットアームの動作を緊急停止することができる。
【0004】
近年の市場規模の拡大に伴い、力覚センサの高性能化が求められている。より具体的には、従来の静電容量型力覚センサ(例えば、特許文献1参照)では、1つの起歪体に、偶数個(例えば、2個)の容量素子が設けられている。Z軸方向(力覚センサの高さ方向)の力Fzが作用すると、これらの容量素子は一様に増大したり、または一様に減少したりしている。この場合、力Fzの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受け易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-135103公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、高性能化を図ることができる力覚センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本開示は、
検出対象となる力またはモーメントの作用を受ける第1センサ体と、
第1方向において前記第1センサ体と異なる位置に配置された第2センサ体と、
前記第1センサ体と前記第2センサ体とを接続し、前記第1センサ体が受けた力またはモーメントの作用により弾性変形する起歪体と、
前記起歪体の弾性変形により生じた変位を検出する検出素子と、
前記検出素子の検出結果に基づいて、前記第1センサ体に作用した力またはモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において互いに反対側に変位する第1変位部および第2変位部を含み、
前記検出素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの一方の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第1容量素子と、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの他方の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第2容量素子と、を含み、
前記起歪体は、前記第1センサ体と前記第2センサ体との間に配置された傾動構造体と、前記第1センサ体と前記傾動構造体とを接続する第1接続部と、前記第2センサ体と前記傾動構造体とを接続する第2接続部と、を含み、
前記傾動構造体は、前記第1接続部に接続されるとともに前記第1接続部に対して前記第1方向に直交する第2方向の両側に配置された一対の第1傾動部と、前記第2接続部に接続されるとともに前記第2接続部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2傾動部と、を含み、
前記第1変位部は、前記第1接続部に対して前記第2方向における一側に配置された前記第1傾動部に接続され、
前記第2変位部は、前記第2接続部に対して前記第2方向における他側に配置された前記第2傾動部に接続されている、
力覚センサであってもよい。
【0008】
[2]本開示は、
前記第1変位部は、対応する前記第1傾動部に対して他の前記第1傾動部の側に配置され、
前記第2変位部は、対応する前記第2傾動部に対して他の前記第2傾動部の側に配置されている、
[1]に記載の力覚センサであってもよい。
【0009】
[3]本開示は、
前記第1変位部は、第1腕部を介して前記第1傾動部に接続され、
前記第1腕部は、前記第2方向のうち対応する前記第1傾動部から他の前記第1傾動部に向かう方向に延び、
前記第2変位部は、第2腕部を介して前記第2傾動部に接続され、
前記第2腕部は、前記第2方向のうち対応する前記第2傾動部から他の前記第2傾動部に向かう方向に延びている、
[2]に記載の力覚センサであってもよい。
【0010】
[4]本開示は、
前記第1腕部は、対応する前記第1傾動部の前記第1センサ体に対向する面に、第1連結部を介して取り付けられ、
前記第2腕部は、対応する前記第2傾動部の前記第2センサ体に対向する面に、第2連結部を介して取り付けられている、
[3]に記載の力覚センサであってもよい。
【0011】
[5]本開示は、
前記第1変位部および前記第2変位部は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において、前記傾動構造体の一側に配置されている、
[1]~[4]のいずれかに記載の力覚センサであってもよい。
【0012】
[6]本開示は、
前記傾動構造体は、対応する前記第1傾動部を前記第1接続部に接続する一対の第1変形部と、対応する前記第2傾動部を前記第2接続部に接続する一対の第2変形部と、を更に含み、
前記第1変形部の前記第1方向の寸法は、前記第1傾動部の前記第1方向の寸法よりも小さく、
前記第2変形部の前記第1方向の寸法は、前記第2傾動部の前記第1方向の寸法よりも小さい、
[1]~[4]のいずれかに記載の力覚センサであってもよい。
【0013】
[7]本開示は、
前記第1変形部は、前記第1センサ体に対向する第1対向面を含み、
前記第1対向面は、前記第1傾動部の前記第1センサ体に対向する面よりも前記第2センサ体の側に配置され、
前記第2変形部は、前記第2センサ体に対向する第2対向面を含み、
前記第2対向面は、前記第2傾動部の前記第2センサ体に対向する面よりも前記第1センサ体の側に配置されている、
[6]に記載の力覚センサであってもよい。
【0014】
[8]本開示は、
前記第1対向面および前記第2対向面はそれぞれ、湾曲状に形成されている、
[7]に記載の力覚センサであってもよい。
【0015】
[9]本開示は、
前記傾動構造体は、前記第1傾動部と対応する前記第2傾動部とを接続する一対の第3変形部を更に含み、
前記第3変形部の前記第2方向の寸法は、前記第1傾動部の前記第2方向の寸法よりも小さく、前記第2傾動部の前記第2方向の寸法よりも小さい、
[6]~[8]のいずれかに記載の力覚センサであってもよい。
【0016】
[10]本開示は、
前記第3変形部は、他の前記第3変形部に対向する湾曲状の第3対向面を含んでいる、
[9]に記載の力覚センサであってもよい。
【0017】
[11]本開示は、
前記第1容量素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの一方に設けられた第1変位電極基板と、前記第1変位電極基板に対向する第1固定電極基板と、を含み、
前記第2容量素子は、前記第1変位部および前記第2変位部のうちの他方に設けられた第2変位電極基板と、前記第2変位電極基板に対向する第2固定電極基板と、を含む、
[1]~[10]のいずれかに記載の力覚センサであってもよい。
【0018】
[12]本開示は、
前記第1固定電極基板および前記第2固定電極基板は、前記第2センサ体に支持されている、
[11]に記載の力覚センサであってもよい。
【0019】
[13]本開示は、
前記第1固定電極基板および前記第2固定電極基板はそれぞれ、台座を介して前記第2センサ体に支持されている、
[11]または[12]に記載の力覚センサであってもよい。
【0020】
[14]本開示は、
前記第1センサ体と前記第2センサ体とは、4つの前記起歪体で接続され、
4つの前記起歪体は、第1起歪体と、第2起歪体と、第3起歪体と、第4起歪体と、を含み、
前記第1方向をXYZ三次元座標系におけるZ軸方向とし、
前記第1センサ体の中心に対してY軸方向正側に前記第1起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してX軸方向負側に前記第2起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してY軸方向負側に前記第3起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してX軸方向正側に前記第4起歪体が配置されている、
[1]~[13]のいずれかに記載の力覚センサであってもよい。
【0021】
[15]本開示は、
前記第1変位部および前記第2変位部は、対応する前記傾動構造体に対して、前記第1センサ体の中心側に配置されている、
[14]に記載の力覚センサであってもよい。
【0022】
[16]本開示は、
検出対象となる力またはモーメントの作用を受ける第1センサ体と、
第1方向において前記第1センサ体と異なる位置に配置された第2センサ体と、
前記第1センサ体と前記第2センサ体とを接続し、前記第1センサ体が受けた力またはモーメントの作用により弾性変形する2つの起歪体と、
各々の前記起歪体の弾性変形により生じた変位を検出する検出素子と、
前記検出素子の検出結果に基づいて、前記第1センサ体に作用した力またはモーメントを示す電気信号を出力する検出回路と、
を備え、
2つの前記起歪体は、第1起歪体と、第2起歪体と、を含み、
前記第1起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において一側に変位する第1変位部を含み、
前記第2起歪体は、前記第1センサ体が前記第1方向の力を受けた場合に前記第1方向において他側に変位する第2変位部を含み、
前記検出素子は、前記第1変位部の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第1容量素子と、前記第2変位部の前記第1方向の変位により静電容量値の変化を検出する第2容量素子と、を含み、
前記第1起歪体および前記第2起歪体はそれぞれ、前記第1センサ体と前記第2センサ体との間に配置された傾動構造体と、前記第1センサ体と前記傾動構造体とを接続する第1接続部と、前記第2センサ体と前記傾動構造体とを接続する第2接続部と、を含み、
前記傾動構造体は、前記第1接続部に接続されるとともに前記第1接続部に対して前記第1方向に直交する第2方向の両側に配置された一対の第1傾動部と、前記第2接続部に接続されるとともに前記第2接続部に対して前記第2方向の両側に配置された一対の第2傾動部と、を含み、
前記第1変位部は、前記第1起歪体の前記第1傾動部に接続され、
前記第2変位部は、前記第2起歪体の前記第2傾動部に接続されている、
力覚センサであってもよい。
【0023】
[17]本開示は、
前記第1起歪体は、2つの前記第1変位部を含み、
一方の前記第1変位部は、前記第1起歪体の一方の前記第1傾動部に接続され、他方の前記第1変位部は、前記第1起歪体の他方の前記第1傾動部に接続され、
前記第2起歪体は、2つの前記第2変位部を含み、
一方の前記第1変位部は、前記第2起歪体の一方の前記第2傾動部に接続され、他方の前記第2変位部は、前記第2起歪体の他方の前記第2傾動部に接続されている、
[16]に記載の力覚センサであってもよい。
【0024】
[18]本開示は、
前記第1方向をXYZ三次元座標系におけるZ軸方向とし、
前記第1センサ体の中心に対してY軸方向正側に前記第1起歪体が配置され、前記第1センサ体の中心に対してY軸方向負側に前記第2起歪体が配置されている、
[16]または[17]に記載の力覚センサであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1の実施の形態による力覚センサを適用したロボットの一例を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態による力覚センサを示す断面図であって、後述する図3のA-A線断面に相当する図である。
図3図3は、図2の力覚センサを示す平面断面図である。
図4図4は、図2の第1起歪体を示す正面図である。
図5図5は、図4の第1起歪体を示す平面図である。
図6図6は、図4の第1起歪体を示す側面図である。
図7図7は、図3に示す力覚センサの起歪体を平面展開した図である。
図8図8は、図4の起歪体がX軸方向正側の力を受けた場合の起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
図9図9は、図4の起歪体がY軸方向正側の力を受けた場合の起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
図10A図10Aは、図4の起歪体がZ軸方向正側の力を受けた場合の起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
図10B図10Bは、図4の起歪体がZ軸方向負側の力を受けた場合の起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
図11図11は、図4の起歪体における各容量素子の静電容量値の変化を示す表である。
図12図12は、図7の力覚センサにおける各容量素子の静電容量値の変化を示す表である。
図13図13は、図4の起歪体の変形例を示す正面図である。
図14図14は、図4の起歪体の他の変形例を示す正面図である。
図15図15は、図3の力覚センサの他の変形例を示す平面断面図である。
図16図16は、図15の力覚センサにおける各容量素子の静電容量値の変化を示す表である。
図17図17は、第2の実施の形態による力覚センサを示す平面断面図である。
図18図18は、Z軸方向正側の力を受けた場合の図17の第1起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
図19図19は、Z軸方向正側の力を受けた場合の図17の第2起歪体の変形状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0028】
本明細書において用いる、幾何学的条件と、物理的特性と、幾何学的条件または物理的特性の程度を特定する用語と、幾何学的条件または物理的特性を示す数値等については、厳密な意味に縛られることなく解釈してもよい。そして、これらの幾何学的条件、物理的特性、用語、および数値などについては、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈してもよい。幾何学的条件を特定する用語の例としては、「長さ」、「角度」、「形状」、「平行」、「直交」および「同一」等が挙げられる。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1図16を用いて、本発明の第1の実施の形態による個別力覚センサについて説明する。
【0030】
まず、本実施の形態によるロボット1について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態によるロボット1の一例を示す斜視図である。ロボット1には、本実施の形態等による力覚センサ10が取り付けられる。ロボット1の例としては、産業用ロボット、協働ロボット、生活支援ロボット、医療用ロボットおよびサービスロボット等の各種ロボットが挙げられる。以下では、便宜上、力覚センサ10が取り付けられる産業用ロボットを例にとって説明する。
【0031】
図1に示すように、産業用ロボット1は、ロボット本体2と、ツール3と、力覚センサ10と、コントローラ5と、を備えている。ロボット本体2は、ロボットアーム4を含んでいる。ロボットアーム4は、多関節アーム構造を有している。
【0032】
ロボットアーム4の先端に、力覚センサ10が取り付けられている。より具体的には、ロボットアーム4とツール3との間に、力覚センサ10が取り付けられている。力覚センサ10は、図示しない電気ケーブルを介して、コントローラ5に電気的に接続されている。ツール3の例としては、エンドエフェクター(グリッパー等)およびツールチェンジャー(いずれも図示せず)等が挙げられる。
【0033】
コントローラ5は、力覚センサ10から出力された電気信号に基づいて、ロボット1の力制御を行う。このことにより、ロボット本体2およびツール3の動作が制御される。
【0034】
以下、図2図5を参照して本発明の実施の形態による力覚センサ10について説明する。図2は、本実施の形態による力覚センサを示す断面図であって、図3のA-A線断面に相当する図である。図3は、図2の力覚センサを示す平面断面図である。図4は、図2の起歪体を示す正面図である。図5は、図4の起歪体を示す平面図であり、図6は、図4の起歪体を示す側面図である。図7は、図3に示す力覚センサの起歪体を平面展開した図である。
【0035】
以下の説明では、XYZ三次元座標系を定義し、Z軸方向(第1方向)を上下方向とし、受力体20が上側に配置され、固定体25が下側に配置されるように力覚センサ10を配置した状態で説明を行う。このため、本実施の形態による力覚センサ10は、Z軸方向を上下方向とした姿勢で使用されることに限られることはない。また、受力体20と固定体25のいずれかを上側または下側に配置するかは任意である。
【0036】
力覚センサ10は、所定の軸方向に作用した力および所定の回転軸まわりに作用したモーメント(トルク)を電気信号として出力する機能を有している。しかしながら、このことに限られることはなく、力およびモーメントの一方のみを電気信号として出力するように構成されていてもよく、更には、力またはモーメントの少なくとも1つの軸成分を電気信号として出力するように構成されていてもよい。
【0037】
力覚センサ10は、図2および図3に示すように、受力体20と、固定体25と、起歪体30A~30Dと、検出素子70と、検出回路75と、外装体80と、を備えている。以下、各構成要素についてより詳細に説明する。
【0038】
受力体20は、第1センサ体の一例である。受力体20は、検出対象となる力またはモーメントの作用を受ける。この作用を受けることにより、受力体20は固定体25に対して相対移動する。上述した図1の例で言えば、受力体20はツール3にボルト等で固定されており、ツール3から力またはモーメントを受ける。受力体20には、起歪体30A~30Dが接続されている。
【0039】
図3に示すように、本実施の形態では、受力体20の平面形状は円形である。しかしながら、受力体20の平面形状は円形に限られることはなく、矩形であってもよく、任意である。受力体20は、平板状に形成されていてもよい。
【0040】
図2に示すように、固定体25は、第2センサ体の一例である。固定体25は、受力体20を支持している。固定体25は、Z軸方向において、受力体20と異なる位置に配置されている。より具体的には、固定体25は、Z軸方向において受力体20の負側に配置されている。受力体20と固定体25は、Z軸方向において互いに異なる位置に配置されており、固定体25は、受力体20に離間している。図1の例で言えば、固定体25はロボットアーム4の先端にボルト等で固定されており、ロボット本体2に支持される。固定体25には、起歪体30A~30Dが接続されている。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態では、固定体25の平面形状は、受力体20と同様に円形である。しかしながら、固定体25の平面形状は円形に限られることはなく、矩形であってもよく、任意である。固定体25は、平板状に形成されていてもよい。なお、受力体20の平面形状および固定体25の平面形状のうちの少なくとも一方は、円形であってもよい。この場合、受力体20の平面形状および固定体25の平面形状のうちの一方が円形で、他方が円形以外の形状であってもよい。
【0042】
図2および図3に示すように、起歪体30A~30Dは、受力体20と固定体25とを接続している。より具体的には、起歪体30A~30Dは、受力体20と固定体25との間に配置されており、起歪体30A~30Dは、受力体20に接続されるとともに固定体25に接続されている。これらの起歪体30A~30Dを介して受力体20は固定体25に支持されている。
【0043】
本実施の形態においては、受力体20と固定体25とは、4つの起歪体30A~30Dで接続されていてもよい。4つの起歪体30A~30Dは、第1起歪体30Aと、第2起歪体30Bと、第3起歪体30Cと、第4起歪体30Dと、を含んでいてもよい。図3に示すように、Z軸方向で見たときに、受力体20の中心Oに対してY軸方向正側に第1起歪体30Aが配置されていてもよい。同様にZ軸方向で見たときに、受力体20の中心Oに対してX軸方向負側に第2起歪体30Bが配置されていてもよい。受力体20の中心Oに対してY軸方向負側に第3起歪体30Cが配置されていてもよい。受力体20の中心Oに対してX軸方向正側に第4起歪体30Dが配置されていてもよい。この場合、第1起歪体30Aと第3起歪体30Cとの間に、受力体20の中心Oが配置され、第2起歪体30Bと第4起歪体30Dとの間に、受力体20の中心Oが配置されている。なお、受力体20と固定体25とを接続する起歪体の個数は、4つに限られることはなく、2つまたは3つでもよく、5つ以上でもよく、任意である。また、受力体20と固定体25とは、1つだけの起歪体で接続されていてもよく、この場合、検出素子70を図4に示すように2つの容量素子で構成すると、後述するように力の2軸成分を検出することができる。検出素子70が、1つだけの容量素子で構成されて、力の1軸成分を検出するようにしてもよい。
【0044】
図3に示すように、本実施の形態による4つの起歪体30A~30Dの傾動構造体31(後述)は、環状配置されている。すなわち、上述したように、受力体20および固定体25がZ軸方向で見たときに円形形状で形成されており、4つの起歪体30A~30Dの傾動構造体31が、矩形の環状をなすように配置されている。各起歪体30A~30Dの傾動構造体31は、Z軸方向で見たときに、第2方向に沿って直線状に形成されている。すなわち、第1起歪体30Aの第2方向および第3起歪体30Cの第2方向は、X軸方向に相当している。第1起歪体30Aの傾動構造体31および第3起歪体30Cの傾動構造体31は、X軸方向に沿って直線状に形成されている。第2起歪体30Bの第2方向および第4起歪体30Dの第2方向は、Y軸方向に相当している。第2起歪体30Bの傾動構造体31および第4起歪体30Dの傾動構造体31は、Y軸方向に沿って直線状に形成されている。なお、各起歪体30A~30Dの第2方向は、図3に示す例に限られることはなく、任意である。また、各起歪体30A~30Dの第2方向は、X軸方向にもY軸方向にも沿っていなくてもよい。例えば、4つの起歪体30A~30Dの配置は、環状配置であることに限られることはなく、それぞれを任意の位置で不規則に配置してもよい。
【0045】
次に、本実施の形態による起歪体30A~30Dについてより具体的に説明する。
【0046】
本実施の形態による起歪体30A~30Dは、受力体20が受けた力またはモーメントの作用により弾性変形して歪みを生じさせ、変位するように構成されている。ここでは、上述した4つの起歪体30A~30Dのうち、X軸方向を第2方向とする第1起歪体30Aを例にとって説明する。第2起歪体30B、第3起歪体30Cおよび第4起歪体30Dについては、同様の構成を有しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0047】
図2および図4に示すように、第1起歪体30Aは、傾動構造体31と、第1接続部32と、第2接続部33と、開口部34と、を含んでいてもよい。
【0048】
傾動構造体31は、受力体20と固定体25との間に配置されている。傾動構造体31は、Z軸方向と、Z軸方向に直交するX軸方向とを含むXZ平面に配置されている。Y軸方向で見たときに、傾動構造体31は、概略的にはX軸方向およびY軸方向に沿う矩形状に形成されていてもよい。傾動構造体31は、X軸方向における中心軸線CLであって、Z軸方向に延びる中心軸線CLに対して左右対称に形成されていてもよい。開口部34も同様に、X軸方向およびY軸方向に沿う矩形状に形成されていてもよい。傾動構造体31の詳細については後述する。
【0049】
第1接続部32は、受力体20と傾動構造体31とを接続している。第1接続部32は、受力体20から傾動構造体31までZ軸方向に延びている。第1接続部32は、上述した開口部34まで延びていてもよい。第1接続部32は、第2接続部33の後述する第2接続対向面33aに対向する第1接続対向面32aを含んでいてもよい。第2接続対向面33aは、開口部34を画定している。
【0050】
本実施の形態による第1接続部32は、X軸方向寸法が比較的大きい。そして、第1接続部32の平面面積は比較的大きい。より具体的には、図4および図5に示すように、第1接続部32は、受力体20と当接する第1当接面32bを含んでおり、この第1当接面32bの面積が比較的大きい。第1当接面32bには、受力体20に第1接続部32を取り付けるためのボルト(図示せず)が挿入される複数のボルト孔32cが形成されていてもよい。
【0051】
第2接続部33は、固定体25と傾動構造体31とを接続している。第2接続部33は、固定体25から傾動構造体31までZ軸方向に延びている。第2接続部33は、上述した開口部34まで延びていてもよい。第2接続部33は、第1接続部32の上述した第1接続対向面32aに対向する第2接続対向面33aを含んでいてもよい。
【0052】
本実施の形態による第2接続部33は、X軸方向寸法が比較的大きい。そして、第2接続部33の平面面積は比較的大きい。より具体的には、図4に示すように、第2接続部33は、固定体25と当接する第2当接面33bを含んでおり、この第2当接面33bの面積が比較的大きい。第2当接面33bには、上述したボルト孔32cと同様に、固定体25に第2接続部33を取り付けるためのボルト(図示せず)が挿入される複数のボルト孔(図示せず)が形成されていてもよい。第2接続部33のZ軸方向寸法(図14のLz2参照)は、第1接続部32のZ軸方向寸法(図14のLz1参照)と等しくてもよいが、異なっていてもよい。
【0053】
第1接続部32および第2接続部33は、Z軸方向で見たときに互いに重なる位置に配置されている。すなわち、第1接続部32および第2接続部33は、X軸方向において同じ位置に配置されている。第1接続部32および第2接続部33は、X軸方向において傾動構造体31の中心に配置されていてもよい。
【0054】
傾動構造体31は、一対の第1傾動部35L、35Rと、一対の第1変形部36と、一対の第2傾動部37L、37Rと、一対の第2変形部38と、一対の第3変形部39と、を含んでいる。
【0055】
各々の第1傾動部35L、35Rは、第1接続部32に接続されている。第1傾動部35L、35Rは、第1接続部32に対してX軸方向の両側に配置されている。第1傾動部35Lは、第1接続部32に対してX軸方向負側に配置されている。第1傾動部35Rは、第1接続部32に対してX軸方向正側に配置されている。第1傾動部35L、35Rは、第2傾動部37L、37Rよりも受力体20の側に配置されており、第2傾動部37L、37Rよりも受力体20に近い位置に配置されている。第1傾動部35L、35Rは、上述した開口部34よりも受力体20の側に配置されている。
【0056】
第1傾動部35L、35Rは、第1起歪体30Aが弾性変形する際にX軸に対して傾斜するように構成されている。第1傾動部35L、35Rはそれぞれ、受力体20に対向する第1傾動対向面35aを含んでいる。一方の第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aに、後述する第1変位体50が取り付けられていてもよい。
【0057】
各々の第1変形部36は、対応する第1傾動部35L、35Rを第1接続部32に接続している。第1変形部36は、第1起歪体30Aが弾性変形する際に弾性変形可能に構成されている。第1変形部36は、上述した開口部34よりも受力体20の側に配置されている。
【0058】
第1変形部36のZ軸方向寸法t1は、第1傾動部35L、35RのZ軸方向寸法t2よりも小さくてもよい。このことにより、第1変形部36が弾性変形しやすくなっている。図4では、第1傾動部35RのZ軸方向寸法がt2で示されているが、第1傾動部35LのZ軸方向寸法は、第1傾動部35RのZ軸方向寸法t2と等しくてもよい。第1変形部36の下面は、第1接続部32の第1接続対向面32aと同一面を構成していてもよい。第1変形部36の下面は、上述した開口部34を画定している。
【0059】
第1変形部36は、受力体20に対向する第1対向面36aを含んでいる。本実施の形態による第1対向面36aは、平坦状に形成されていてもよい。第1対向面36aは、上述した第1傾動対向面35aよりも固定体25の側に配置されている。このことにより、第1接続部32と各第1傾動部35L、35Rとの間に、受力体20の側に開口するように凹状の第1切欠部40が形成されている。この第1切欠部40によって第1変形部36のZ軸方向寸法t1が小さくなっている。図4に示すように、Y軸方向で見たときに、第1切欠部40は矩形状に形成されていてもよい。
【0060】
各々の第2傾動部37L、37Rは、第2接続部33に接続されている。第2傾動部37L、37Rは、第2接続部33に対してX軸方向の両側に配置されている。第2傾動部37Lは、第2接続部33に対してX軸方向負側に配置されている。第2傾動部37Rは、第2接続部33に対してX軸方向正側に配置されている。第2傾動部37L、37Rは、第1傾動部35L、35Rよりも固定体25の側に配置されており、第1傾動部35L、35Rよりも固定体25に近い位置に配置されている。第2傾動部37L、37Rは、上述した開口部34よりも固定体25の側に配置されている。
【0061】
第2傾動部37L、37Rは、第1起歪体30Aが弾性変形する際にX軸に対して傾斜するように構成されている。第2傾動部37L、37Rはそれぞれ、固定体25に対向する第2傾動対向面37aを含んでいる。一方の第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aに、後述する第2変位体60が取り付けられている。
【0062】
各々の第2変形部38は、対応する第2傾動部37L、37Rを第2接続部33に接続している。第2変形部38は、第1起歪体30Aが弾性変形する際に弾性変形可能に構成されている。第2変形部38は、上述した開口部34よりも固定体25の側に配置されている。
【0063】
第2変形部38のZ軸方向寸法t3は、第2傾動部37L、37RのZ軸方向寸法t4よりも小さくてもよい。このことにより、第2変形部38が弾性変形しやすくなっている。図4では、第2傾動部37LのZ軸方向寸法がt4で示されているが、第2傾動部37RのZ軸方向寸法は、第2傾動部37LのZ軸方向寸法t4と等しくてもよい。第2変形部38の上面は、第2接続部33の第2接続対向面33aと同一面を構成していてもよい。第2変形部38の上面は、上述した開口部34を画定している。
【0064】
第2変形部38は、固定体25に対向する第2対向面38aを含んでいる。本実施の形態による第2対向面38aは、平坦状に形成されていてもよい。第2対向面38aは、上述した第2傾動対向面37aよりも受力体20の側に配置されている。このことにより、第2接続部33と各第2傾動部37L、37Rとの間に、固定体25の側に開口するように凹状の第2切欠部41が形成されており、この第2切欠部41によって第2変形部38のZ軸方向寸法t3が小さくなっている。図4に示すように、Y軸方向で見たときに、第2切欠部41は矩形状に形成されていてもよい。
【0065】
各々の第3変形部39は、対応する第1傾動部35L、35Rと対応する第2傾動部37L、37Rとを接続している。第3変形部39は、第1起歪体30Aが弾性変形する際に弾性変形可能に構成されている。第3変形部39は、上述した開口部34に対してX軸方向正側およびX軸方向負側にそれぞれ配置されている。X軸方向正側に配置された第3変形部39は、第1傾動部35Rおよび第2傾動部37Rを接続している。X軸方向負側に配置された第3変形部39は、X軸方向負側に配置された第1傾動部35Lおよび第2傾動部37Lを接続している。
【0066】
第3変形部39のX軸方向寸法t5は、第1傾動部35L、35RのX軸方向寸法t6よりも小さくてもよく、第2傾動部37L、37RのX軸方向寸法t7よりも小さくてもよい。このことにより、第3変形部39が弾性変形しやすくなっている。図4では、第1傾動部35RのX軸方向寸法がt6で示されているが、第1傾動部35LのX軸方向寸法は、第1傾動部35RのX軸方向寸法t6と等しくてもよい。第2傾動部37LのX軸方向寸法がt7で示されているが、第2傾動部37RのX軸方向寸法は、第2傾動部37LのX軸方向寸法t7と等しくてもよい。X軸方向負側に配置された第3変形部39のX軸方向負側(図4における左側)の面は、対応する第1傾動部35LのX軸方向負側の面と同一面を構成していてもよく、対応する第2傾動部37LのX軸方向負側の面と同一面を構成していてもよい。X軸方向正側に配置された第3変形部39のX軸方向正側(図4における右側)の面は、対応する第1傾動部35RのX軸方向正側の面と同一面を構成していてもよく、対応する第2傾動部37RのX軸方向正側の面と同一面を構成していてもよい。
【0067】
各々の第3変形部39は、他の第3変形部39に対向する平坦状の第3対向面39aを含んでいる。本実施の形態による第3対向面39aは、Y軸方向とZ軸方向とを含むYZ平面に配置されている。第3対向面39aは、上述した開口部34を画定している。本実施の形態においては、開口部34は、第1傾動部35Lと第2傾動部37Lとの間の位置まで延びるとともに、第1傾動部35Rと第2傾動部37Rとの間の位置まで延びている。言い換えると、開口部34は、Z軸方向で見たときに、第1傾動部35Lおよび第2傾動部37Lの一部に重なるとともに、第1傾動部35Rおよび第2傾動部37Rの一部に重なっている。
【0068】
第1起歪体30Aは、第1変位体50と、第2変位体60と、を含んでいる。第1変位体50は、第1接続部32に対してX軸方向負側に配置された第1傾動部35Lに接続されている。第2変位体60は、第2接続部33に対してX軸方向正側に配置された第2傾動部37Rに接続されている。
【0069】
図4に示すように、第1変位体50は、第1連結部51と、第1延長部52と、第1腕部53と、第1変位部54と、を含んでいてもよい。第1連結部51、第1延長部52、第1腕部53および第1変位部54は、一体に連続状に形成されていてもよい。
【0070】
第1連結部51は、第1傾動部35Lの上述した第1傾動対向面35aに取り付けられていてもよい。第1連結部51は、第1傾動対向面35aに対向して当接する第1連結当接面51aを含んでいてもよい。第1連結部51は、図示しないボルト等を用いて第1傾動対向面35aに取り付けられていてもよい。しかしながら、第1連結部51は、第1傾動部35LのY軸方向正側の面またはY軸方向負側の面に取り付けられていてもよい。図5および図6に示すように、第1連結部51は、傾動構造体31からY軸方向負側に延びていてもよい。
【0071】
図4および図6に示すように、第1延長部52は、第1連結部51の先端から固定体25に向かう方向に延びていてもよい。より具体的には、第1延長部52は、第1連結部51の先端からZ軸方向負側であって、下方に延びていてもよい。第1連結部51の先端は、第1連結部51のY軸方向負側の端部である。第1延長部52は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されている。
【0072】
図4および図5に示すように、第1腕部53は、X軸方向のうち対応する第1傾動部35Lから他の第1傾動部35Rに向かう方向に延びている。より具体的には、第1腕部53は、第1連結部51および第1延長部52を介して第1傾動対向面35aに取り付けられている。第1腕部53は、第1延長部52の下端からX軸方向正側に延びている。第1腕部53は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されている。
【0073】
第1変位部54は、第1連結部51、第1延長部52および第1腕部53を介して第1傾動部35Lに接続されている。本実施の形態による第1変位部54は、対応する第1傾動部35Lに対して他の第1傾動部35Rの側に配置されており、第1傾動部35Lに対してX軸方向正側に配置されている。第1変位部54は、第1腕部53の先端に配置されていてもよい。第1腕部53の先端は、第1腕部53のX軸方向正側の端部である。しかしながら、本実施の形態による第1起歪体30Aの第1変位部54は、第1起歪体30Aの後述する第2変位部64に対してX軸方向負側に配置されている。図4に示すように、第1変位部54は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されていてもよい。第1変位部54に、後述する第2変位電極基板Ed2が設けられている。
【0074】
図4に示すように、第2変位体60は、第2連結部61と、第2延長部62と、第2腕部63と、第2変位部64と、を含んでいてもよい。第2連結部61、第2延長部62、第2腕部63および第2変位部64は、一体に連続状に形成されていてもよい。
【0075】
第2連結部61は、第2傾動部37Rの上述した第2傾動対向面37aに取り付けられていてもよい。第2連結部61は、第2傾動対向面37aに対向して当接する第2連結当接面61aを含んでいてもよい。第2連結部61は、図示しないボルト等を用いて第2傾動対向面37aに取り付けられていてもよい。しかしながら、第2連結部61は、第2傾動部37RのY軸方向正側の面またはY軸方向負側の面に取り付けられていてもよい。図5および図6に示すように、第2連結部61は、傾動構造体31からY軸方向負側に延びていてもよい。
【0076】
図4に示すように、第2延長部62は、第2連結部61の先端から受力体20に向かう方向に延びていてもよい。より具体的には、第2延長部62は、第2連結部61の先端からZ軸方向正側であって、上方に延びていてもよい。第2連結部61の先端は、第2連結部61のY軸方向負側の端部である。第2延長部62は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されている。
【0077】
図4および図5に示すように、第2腕部63は、X軸方向のうち対応する第2傾動部37Rから他の第2傾動部37Lに向かう方向に延びている。より具体的には、第2腕部63は、第2連結部61および第2延長部62を介して第2傾動対向面37aに取り付けられている。第2腕部63は、第2延長部62の上端からX軸方向負側に延びている。第2腕部63は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されている。
【0078】
第2変位部64は、第2連結部61、第2延長部62および第2腕部63を介して第2傾動部37Rに接続されている。本実施の形態による第2変位部64は、対応する第2傾動部37Rに対して他の第2傾動部37Lの側に配置されており、第2傾動部37Rに対してX軸方向負側に配置されている。第2変位部64は、第2腕部63の先端に配置されていてもよい。第2腕部63の先端は、第2腕部63のX軸方向負側の端部である。しかしながら、本実施の形態による第1起歪体30Aの第2変位部64は、第1起歪体30Aの第1変位部54に対してX軸方向正側に配置されている。図4に示すように、第2変位部64は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されていてもよい。第2変位部64に、後述する第1変位電極基板Ed1が設けられている。
【0079】
図3に示すように、第1起歪体30Aの第1変位部54および第2変位部64は、第1起歪体30Aの傾動構造体31に対して、受力体20の中心側に配置されている。より具体的には、第1変位部54および第2変位部64は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されており、傾動構造体31の一側に配置されている。上述したように、第1起歪体30Aの第1変位部54は、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してX軸方向負側に配置され、第1起歪体30Aの第2変位部64は、中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。第1起歪体30Aの第1変位部54および第2変位部64は、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合に、Z軸方向において互いに反対側に変位するように構成されている。第1変位部54および第2変位部64の変位状態の詳細については、後述する。
【0080】
図3に示すように、第2起歪体30Bの第1変位部54および第2変位部64は、第2起歪体30Bの傾動構造体31に対して、受力体20の中心側に配置されている。より具体的には、第1変位部54および第2変位部64は、傾動構造体31に対してX軸方向正側に配置されており、傾動構造体31の一側に配置されている。第2起歪体30Bの第1変位部54は、第2起歪体30Bの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してY軸方向正側に配置され、第2起歪体30Bの第2変位部64は、中心軸線CLに対してY軸方向負側に配置されている。第2起歪体30Bの第1変位部54および第2変位部64は、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合に、Z軸方向において互いに反対側に変位するように構成されている。
【0081】
図3に示すように、第3起歪体30Cの第1変位部54および第2変位部64は、第3起歪体30Cの傾動構造体31に対して、受力体20の中心側に配置されている。より具体的には、第1変位部54および第2変位部64は、傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置されており、傾動構造体31の一側に配置されている。第3起歪体30Cの第1変位部54は、第3起歪体30Cの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してX軸方向正側に配置され、第3起歪体30Cの第2変位部64は、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。第3起歪体30Cの第1変位部54および第2変位部64は、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合に、Z軸方向において互いに反対側に変位するように構成されている。
【0082】
図3に示すように、第4起歪体30Dの第1変位部54および第2変位部64は、第4起歪体30Dの傾動構造体31に対して、受力体20の中心側に配置されている。より具体的には、第1変位部54および第2変位部64は、傾動構造体31に対してX軸方向負側に配置されており、傾動構造体31の一側に配置されている。第4起歪体30Dの第1変位部54は、第4起歪体30Dの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してY軸方向負側に配置され、第4起歪体30Dの第2変位部64は、中心軸線CLに対してY軸方向正側に配置されている。第4起歪体30Dの第1変位部54および第2変位部64は、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合に、Z軸方向において互いに反対側に変位するように構成されている。
【0083】
検出素子70は、上述した第1起歪体30Aの弾性変形により生じた変位を検出するように構成されている。本実施の形態による検出素子70は、静電容量を検出する素子として構成されている。
【0084】
図4に示すように、検出素子70は、第1容量素子C1と、第2容量素子C2と、を含んでいる。第1容量素子C1は、上述した第1変位部54および第2変位部64のうちの一方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第2容量素子C2は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第1容量素子C1および第2容量素子C2は、図4に示す第1起歪体30A用の容量素子である。第1容量素子C1の変位の検出対象となる変位部と、第2容量素子C2の変位の検出対象となる変位部は、第1変位部54および第2変位部64のうち互いに異なる変位部であればよい。本実施の形態においては、第1容量素子C1は、第1起歪体30Aの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出し、第2容量素子C2は、第1起歪体30Aの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。しかしながら、第1容量素子C1が、第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出し、第2容量素子C2が、第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出してもよい。
【0085】
図4に示す例においては、第1容量素子C1は、第1変位部54および第2変位部64のうちの一方に設けられた第1変位電極基板Ed1と、第1変位電極基板Ed1に対向する第1固定電極基板Ef1と、を含んでいる。第2容量素子C2は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方に設けられた第2変位電極基板Ed2と、第2変位電極基板Ed2に対向する第2固定電極基板Ef2と、を含んでいる。本実施の形態においては、第1固定電極基板Ef1および第2固定電極基板Ef2は、固定体25に支持されている。
【0086】
第1固定電極基板Ef1は、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。第2固定電極基板Ef2は、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。第1固定電極基板Ef1は、第2台座27を介して固定体25に支持されていてもよく、第2固定電極基板Ef2は、第1台座26を介して固定体25に支持されていてもよい。各台座26、27は、固定体25における受力体20の側の面に固定されていてもよい。この場合、固定電極基板Ef1、Ef2は、台座26、27の上面に、接着剤で接合されていてもよく、またはボルト等で固定されていてもよい。固定電極基板Ef1、Ef2は、対応する変位電極基板Ed1、Ed2に対向する固定電極Efと、固定電極Efと台座26、27との間に介在された絶縁体IBf(図6参照)と、を含んでいる。固定電極Efは、絶縁体IBfを介して台座26、27に固定されている。第1台座26と第2台座27は、別体に形成されていてもよいが、一体に連続状に形成されていてもよい。第1台座26および第2台座27は、固定体25にボルト等で固定されていてもよく、固定体25と一体に連続状に形成されていてもよい。
【0087】
第1変位電極基板Ed1は、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。第2変位電極基板Ed2は、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。本実施の形態においては、第1起歪体30Aの第1変位電極基板Ed1は第2変位部64に設けられており、第2変位電極基板Ed2は第1変位部54に設けられている。本実施の形態においては、変位電極基板Ed1、Ed2は、対応する変位部64、54における固定体25の側の面に設けられている。変位電極基板Ed1、Ed2は、対応する変位部64、54における固定体25の側の面に接着剤で接合されていてもよく、またはボルト等で固定されていてもよい。変位電極基板Ed1、Ed2は、対応する固定電極基板Ef1、Ef2に対向する変位電極Edと、変位電極Edと変位部64、54との間に介在された絶縁体IBd(図6参照)と、を含んでいる。変位電極Edは、絶縁体IBdを介して変位部64、54に固定されている。
【0088】
第1固定電極基板Ef1は、第1変位電極基板Ed1に対向しており、第1変位電極基板Ed1の下方に配置されている。第1固定電極基板Ef1は、第1変位電極基板Ed1とともに、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。第2固定電極基板Ef2は、第2変位電極基板Ed2に対向しており、第2変位電極基板Ed2の下方に配置されている。第2固定電極基板Ef2は、第2変位電極基板Ed2とともに、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。受力体20が力またはモーメントの作用を受けていない状態では、第1変位電極基板Ed1のZ軸方向位置と第2変位電極基板Ed2のZ軸方向位置は等しくてもよい。この場合、第1変位電極基板Ed1と第1固定電極基板Ef1との電極間距離と、第2変位電極基板Ed2と第2固定電極基板Ef2との電極間距離は、等しくてもよい。
【0089】
第1容量素子C1および第2容量素子C2は、Y軸方向において同じ位置に配置されている。すなわち、図3図5図6に示すように、第1変位電極基板Ed1および第2変位電極基板Ed2は、Y軸方向において同じ位置に配置されるとともに、第1固定電極基板Ef1および第2固定電極基板Ef2も、Y軸方向において同じ位置に配置されている。図3図5図6に示すように、第1容量素子C1および第2容量素子C2は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されている。
【0090】
本実施の形態では、固定電極基板Ef1、Ef2の平面形状は、矩形になっている。変位電極基板Ed1、Ed2の平面形状も、矩形になっている。しかしながら、固定電極基板Ef1、Ef2および変位電極基板Ed1、Ed2の平面形状は、矩形に限られることはなく、円形、多角形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0091】
Z軸方向で見たときに、第1固定電極基板Ef1は、第1変位電極基板Ed1よりも大きく形成されていてもよい。例えば、第1固定電極基板Ef1の平面形状は、第1変位電極基板Ed1の平面形状よりも大きくなっていてもよい。そして、第1変位電極基板Ed1がX軸方向、Y軸方向またはZ軸方向に変位した場合であっても、Z軸方向で見たときに第1変位電極基板Ed1が全体として、第1固定電極基板Ef1に重なっていてもよい。言い換えると、第1変位電極基板Ed1がX軸方向、Y軸方向またはZ軸方向に変位した場合であっても、第1容量素子C1を構成する変位電極Edと固定電極Efとが重なるように、変位電極Edの大きさと固定電極Efの大きさが設定されていてもよい。このようにして、第1変位電極基板Ed1が変位した場合であっても、変位電極Edと固定電極Efの対向面積が変化することを防止することができ、静電容量値の変化に、対向面積の変化が影響を及ぼすことを防止することができる。このため、変位電極Edと固定電極Efとの距離の変化に応じて静電容量値を変化させることができる。ここで、対向面積とは、Z軸方向で見たときに変位電極Edと固定電極Efとが重なる面積を言う。傾動構造体31が傾動した場合には、固定電極Efよりも小さい変位電極Edが傾斜して対向面積が変動し得るが、この場合の変位電極Edの傾斜角度は小さい。このことにより、静電容量値の変化には、変位電極Edと固定電極Efとの距離が支配的となる。このため、本明細書では、変位電極Edの傾斜による対向面積の変動は考慮せず、静電容量値の変化は、変位電極Edと固定電極Efとの距離の変化に起因すると考える。なお、後述する図8等では、図面を明瞭にするために、傾動構造体31の傾斜を誇張している。また、第1固定電極基板Ef1の平面形状が第1変位電極基板Ed1の平面形状よりも大きくなっていることに限られることはなく、第1変位電極基板Ed1の平面形状が、第1固定電極基板Ef1の平面形状よりも大きくなっていてもよい。
【0092】
同様に、Z軸方向で見たときに、第2固定電極基板Ef2の平面形状も、第2変位電極基板Ed2の平面形状よりも大きくなっていてもよい。なお、第2変位電極基板Ed2の平面形状が、第2固定電極基板Ef2の平面形状よりも大きくなっていてもよい。
【0093】
固定電極基板Ef1、Ef2の固定電極Efの平面形状と絶縁体IBfの平面形状は、同一の大きさであってもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、固定電極Efの平面形状が絶縁体IBfの平面形状より小さくてもよい。変位電極基板Ed1、Ed2の変位電極Edの平面形状と絶縁体IBdの平面形状も同様である。
【0094】
絶縁体IBfは、ガラスエポキシ樹脂またはセラミックなどの絶縁性を有する材料で形成されていてもよい。あるいは、固定電極基板Ef1、Ef2は、FPC基板(フレキシブルプリント回路基板)で構成されていてもよい。FPC基板は、薄いフィルム状に形成されており、フレキシブル性を有しているプリント基板である。FPC基板は、ポリイミドフィルムの上面に、電極および配線を構成する金属薄膜が形成されている。FPC基板のうち固定電極基板Ef1、Ef2に相当する部分が台座26、27に固定されていてもよい。FPC基板は、固定電極Efを検出回路75に接続する配線を含んでいてもよい。
【0095】
絶縁体IBfと同様に、絶縁体IBdは、ガラスエポキシ樹脂またはセラミックなどの絶縁性を有する材料で形成されていてもよい。あるいは、変位電極基板Ed1、Ed2は、FPC基板(フレキシブルプリント回路基板)で構成されていてもよい。FPC基板のうち変位電極基板Ed1、Ed2に相当する部分が変位部54、64に固定されていてもよい。FPC基板は、変位電極Edを検出回路75に接続する配線を含んでいてもよい。
【0096】
第1固定電極基板Ef1と第2固定電極基板Ef2とは、図4に示すように、別体に形成されて互いに離間していてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1固定電極基板Ef1と第2固定電極基板Ef2とは一体化されて、1つの共通の固定電極基板で構成されていてもよい。この場合、第1固定電極基板Ef1の絶縁体IBfと第2固定電極基板Ef2の絶縁体IBfを一体化するとともに、第1固定電極基板Ef1の固定電極Efと第2固定電極基板Ef2の固定電極Efを一体化してもよい。また、2つの台座26、27も一体化されて、1つの共通の台座で構成されていてもよい。また、第1固定電極基板Ef1と第2固定電極基板Ef2が別体に形成されている場合であっても、2つの台座26、27は一体化されていてもよい。
【0097】
上述した第1起歪体30Aとこれに対応する検出素子70の構成は、第2起歪体30B、第3起歪体30Cおよび第4起歪体30Dにも同様に適用できる。
【0098】
すなわち、図3に示すように、検出素子70は、第3容量素子C3と、第4容量素子C4と、を更に含んでいる。第3容量素子C3は、第2起歪体30Bの第1変位部54および第2変位部64のうちの一方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第4容量素子C4は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第3容量素子C3および第4容量素子C4は、第2起歪体30B用の容量素子である。本実施の形態においては、第3容量素子C3は、第2起歪体30Bの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出し、第4容量素子C4は、第2起歪体30Bの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。
【0099】
第3容量素子C3は、固定体25に設けられた第3固定電極基板Ef3と、第3固定電極基板Ef3に対向する第3変位電極基板Ed3と、を含んでいる。第4容量素子C4は、固定体25に設けられた第4固定電極基板Ef4と、第4固定電極基板Ef4に対向する第4変位電極基板Ed4と、を含んでいる。
【0100】
第3変位電極基板Ed3および第3固定電極基板Ef3は、第2起歪体30Bの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してY軸方向正側に配置されている。上述したように、第2起歪体30Bの第1変位部54は、中心軸線CLに対してY軸方向正側に配置されており、第3変位電極基板Ed3は、第1変位部54に支持されている。第3固定電極基板Ef3は、第1台座26(図4参照)を介して固定体25に支持されている。第4変位電極基板Ed4および第4固定電極基板Ef4は、中心軸線CLに対してY軸方向負側に配置されている。上述したように、第2起歪体30Bの第2変位部64は、中心軸線CLに対してY軸方向負側に配置されており、第4変位電極基板Ed4は、第2変位部64に支持されている。第4固定電極基板Ef4は、第2台座27(図4参照)を介して固定体25に支持されている。
【0101】
第3容量素子C3および第4容量素子C4は、X軸方向において同じ位置に配置されている。図3に示すように、第3容量素子C3および第4容量素子C4は、傾動構造体31に対してX軸方向正側に配置されている。固定電極基板Ef3、Ef4は、上述した固定電極基板Ef1、Ef2と同様の構成を有している。変位電極基板Ed3、Ed4は、上述した変位電極基板Ed1、Ed2と同様の構成を有している。
【0102】
また、図3に示すように、検出素子70は、第5容量素子C5と、第6容量素子C6と、を更に含んでいる。第5容量素子C5は、第3起歪体30Cの第1変位部54および第2変位部64のうちの一方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第6容量素子C6は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第5容量素子C5および第6容量素子C6は、第3起歪体30C用の容量素子である。本実施の形態においては、第5容量素子C5は、第3起歪体30Cの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出し、第6容量素子C6は、第3起歪体30Cの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。
【0103】
第5容量素子C5は、固定体25に設けられた第5固定電極基板Ef5と、第5固定電極基板Ef5に対向する第5変位電極基板Ed5と、を含んでいる。第6容量素子C6は、固定体25に設けられた第6固定電極基板Ef6と、第6固定電極基板Ef6に対向する第6変位電極基板Ed6と、を含んでいる。
【0104】
第5変位電極基板Ed5および第5固定電極基板Ef5は、第3起歪体30Cの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してX軸方向負側に配置されている。上述したように、第3起歪体30Cの第2変位部64は、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されており、第5変位電極基板Ed5は、第2変位部64に支持されている。第5固定電極基板Ef5は、第2台座27(図4参照)を介して固定体25に支持されている。第6変位電極基板Ed6および第6固定電極基板Ef6は、中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。上述したように、第3起歪体30Cの第1変位部54は、中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されており、第6変位電極基板Ed6は、第1変位部54に支持されている。第6固定電極基板Ef6は、第1台座26(図4参照)を介して固定体25に支持されている。
【0105】
第5容量素子C5および第6容量素子C6は、Y軸方向において同じ位置に配置されている。図3に示すように、第5容量素子C5および第6容量素子C6は、傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置されている。固定電極基板Ef5、Ef6は、上述した固定電極基板Ef1、Ef2と同様の構成を有している。変位電極基板Ed5、Ed6は、上述した変位電極基板Ed1、Ed2と同様の構成を有している。
【0106】
また、図3に示すように、検出素子70は、第7容量素子C7と、第8容量素子C8と、を含んでいる。第7容量素子C7は、第4起歪体30Dの第1変位部54および第2変位部64のうちの一方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第8容量素子C8は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第7容量素子C7および第8容量素子C8は、第4起歪体30D用の容量素子である。本実施の形態においては、第7容量素子C7は、第4起歪体30Dの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出し、第8容量素子C8は、第4起歪体30Dの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。
【0107】
第7容量素子C7は、固定体25に設けられた第7固定電極基板Ef7と、第7固定電極基板Ef7に対向する第7変位電極基板Ed7と、を含んでいる。第8容量素子C8は、固定体25に設けられた第8固定電極基板Ef8と、第8固定電極基板Ef8に対向する第8変位電極基板Ed8と、を含んでいる。
【0108】
第7変位電極基板Ed7および第7固定電極基板Ef7は、第4起歪体30Dの傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)に対してY軸方向負側に配置されている。上述したように、第4起歪体30Dの第1変位部54は、中心軸線CLに対してY軸方向負側に配置されており、第7変位電極基板Ed7は、第1変位部54に支持されている。第7固定電極基板Ef7は、第1台座26(図4参照)を介して固定体25に支持されている。第8変位電極基板Ed8および第8固定電極基板Ef8は、中心軸線CLに対してY軸方向正側に配置されている。上述したように、第4起歪体30Dの第2変位部64は、中心軸線CLに対してY軸方向正側に配置されており、第8変位電極基板Ed8は、第2変位部64に支持されている。第8固定電極基板Ef8は、第2台座27(図4参照)を介して固定体25に支持されている。
【0109】
第7容量素子C7および第8容量素子C8は、X軸方向において同じ位置に配置されている。図3に示すように、第7容量素子C7および第8容量素子C8は、傾動構造体31に対してX軸方向負側に配置されている。固定電極基板Ef7、Ef8は、上述した固定電極基板Ef1、Ef2と同様の構成を有している。変位電極基板Ed7、Ed8は、上述した変位電極基板Ed1、Ed2と同様の構成を有している。
【0110】
図2に示すように、検出回路75は、検出素子70の検出結果に基づいて、起歪体30A~30Dに作用した力またはモーメントを示す電気信号を出力する。この検出回路75は、例えばマイクロプロセッサにより構成された演算機能を有していてもよい。また、検出回路75は、上述した検出素子70から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換機能や、信号を増幅する機能を有してもよい。検出回路75は、電気信号を出力する端子を含んでいてもよく、この端子から図示しない電気ケーブルを介して上述したコントローラ5に電気信号が送信される。
【0111】
図2および図3に示すように、外装体80は、Z軸方向で見たときに、4つの起歪体30A~30Dを外側から覆うように構成されている。外装体80は、力覚センサ10を構成する筒状の筐体である。起歪体30A~30Dは、外装体80に収容されている。本実施の形態では外装体80の平面断面形状(XY平面に沿う断面における形状)は円形枠形状になっている。受力体20と外装体80との間の隙間に、緩衝部材81が介在されていてもよい。緩衝部材81は、例えば、ゴムまたはスポンジなどの弾性変形可能な柔軟な材料で形成されていてもよい。
【0112】
次に、このような構成からなる本実施の形態による力覚センサ10に力またはモーメントが作用して、その力またはモーメントを検出する方法について図8図10Bを参照して説明する。図8は、図4の起歪体がX軸方向正側の力Fxを受けた場合の第1起歪体30Aの変形状態を模式的に示す正面図であり、図9は、図4の起歪体がY軸方向正側の力Fyを受けた場合の第1起歪体30Aの変形状態を模式的に示す正面図である。図10Aは、図4の第1起歪体30AがZ軸方向正側の力Fzを受けた場合の第1起歪体30Aの変形状態を模式的に示す正面図である。図10Bは、図4の第1起歪体30AがZ軸方向負側の力を受けた場合の第1起歪体30Aの変形状態を模式的に示す正面図である。
【0113】
受力体20が力またはモーメントの作用を受けると、その力またはモーメントが、第1起歪体30A~第4起歪体30Dに伝わる。より具体的には、その力またはモーメントが傾動構造体31に伝わり、傾動構造体31に弾性変形が生じる。このことにより、傾動構造体31の第1変位部54および第2変位部64に変位が生じる。このため、検出素子70の各固定電極基板Ef1~Ef8と対応する変位電極基板Ed1~Ed8との間の距離が変化し、各容量素子C1~C8の静電容量値が変化する。この静電容量値の変化が、起歪体30A~30Dに生じた変位として検出素子70で検出される。この場合、各容量素子C1~C8の静電容量値の変化が異なり得る。このため、検出回路75は、検出素子70で検出された各容量素子C1~C8の静電容量値の変化に基づいて、受力体20に作用した力またはモーメントの向きと大きさを検出することができる。
【0114】
ここでは、まず、第1起歪体30Aを例にとって、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fzが作用した場合の第1容量素子C1および第2容量素子C2の静電容量値の変化について説明する。
【0115】
(+Fxが作用した場合)
第1起歪体30AにX軸方向正側に力Fxが作用した場合には、図8に示すように、第1起歪体30Aの傾動構造体31が弾性変形する。より具体的には、傾動構造体31の第1傾動部35L、35Rおよび第1変形部36がX軸方向正側に変位し、主として、傾動構造体31の一対の第3変形部39が弾性変形する。このことにより、各第1傾動部35L、35Rの第1傾動対向面35aと、対応する第2傾動部37L、37Rの第2傾動対向面37aが傾斜する。
【0116】
この場合、X軸方向負側に配置されている第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aとX軸方向負側に配置されている第2傾動部37Lの第2傾動対向面37aが連動する。第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aおよび第2傾動部37Lの第2傾動対向面37aは、Y軸方向正側に向かって見たとき(図8の紙面に向かって見たときに)に時計回りに回動し、同じ方向に傾斜する。第1傾動部35Lに接続された第1変位体50は、第1傾動対向面35aと同様に傾斜し、Y軸方向正側に向かって見たときに時計回りに回動する。このことにより、第1変位部54はZ軸方向負側に変位する。このため、第2変位電極基板Ed2は第2固定電極基板Ef2に近づき、第2変位電極基板Ed2と第2固定電極基板Ef2との電極間距離(Z軸方向の距離)が減少する。このため、第2容量素子C2の静電容量値が増大する。
【0117】
一方、X軸方向正側に配置されている第1傾動部35Rの第1傾動対向面35aとX軸方向正側に配置されている第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aが連動する。第1傾動部35Rの第1傾動対向面35aおよび第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aは、Y軸方向正側に向かって見たときに時計回りに回動し、同じ方向に傾斜する。第2傾動部37Rに接続された第2変位体60は、第2傾動対向面37aと同様に傾斜し、Y軸方向正側に向かって見たときに時計回りに回動する。このことにより、第2変位部64はZ軸方向正側に変位する。このため、第1変位電極基板Ed1は第1固定電極基板Ef1から遠ざかり、第1変位電極基板Ed1と第1固定電極基板Ef1との電極間距離が増大する。このため、第1容量素子C1の静電容量値が減少する。
【0118】
(-Fxが作用した場合)
第1起歪体30AにX軸方向負側に力Fxが作用した場合には、図示しないが、図8に示す場合と逆の現象が生じる。すなわち、第2容量素子C2の静電容量値が減少し、第1容量素子C1の静電容量値が増大する。
【0119】
(+Fyが作用した場合)
第1起歪体30AにY軸方向正側に力Fyが作用した場合には、図9に示すように、第1起歪体30AはX軸周りに、すなわちX軸方向正側に向かって反時計回りに回動するように弾性変形する。このことにより、第1起歪体30Aの第1接続部32がY軸方向正側に倒れるように、第1起歪体30Aが全体的にZ軸方向に対して傾斜するように弾性変形する。このため、第1起歪体30Aは、厚み方向に撓むように弾性変形する。
【0120】
この場合、各第1傾動部35L、35Rの第1傾動対向面35aが、X軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動し、傾斜する。第1傾動部35Lに接続された第1変位体50は、第1傾動対向面35aと同様に傾斜し、X軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動する。このことにより、第1変位部54はZ軸方向正側に変位する。このため、第2変位電極基板Ed2は第2固定電極基板Ef2から遠ざかり、第2変位電極基板Ed2と第2固定電極基板Ef2との電極間距離が増大する。このため、第2容量素子C2の静電容量値が減少する。
【0121】
同様に、各第2傾動部37L、37Rの第2傾動対向面37aが、X軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動し、傾斜する。図示しないが、第2傾動部37Rに接続された第2変位体60は、第2傾動対向面37aと同様に傾斜し、X軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動する。このことにより、第2変位部64はZ軸方向正側に変位する。このため、第1変位電極基板Ed1は第1固定電極基板Ef1から遠ざかり、第1変位電極基板Ed1と第1固定電極基板Ef1との電極間距離が増大する。このため、第1容量素子C1の静電容量値が減少する。
【0122】
(-Fyが作用した場合)
第1起歪体30AにY軸方向負側に力Fyが作用した場合には、図示しないが、図9に示す場合と逆の現象が生じる。すなわち、第2容量素子C2の静電容量値が増大し、第1容量素子C1の静電容量値が増大する。
【0123】
(+Fzが作用した場合)
第1起歪体30AにZ軸方向正側に力Fzが作用した場合には、図10Aに示すように、傾動構造体31が弾性変形する。より具体的には、第1接続部32がZ軸方向正側に変位し、主として、傾動構造体31の一対の第1変形部36、一対の第2変形部38および一対の第3変形部39が弾性変形する。このことにより、各第1傾動部35L、35Rの第1傾動対向面35aと、対応する第2傾動部37L、37Rの第2傾動対向面37aが傾斜する。
【0124】
この場合、第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aと第2傾動部37Lの第2傾動対向面37aが連動して、互いに異なる方向に傾斜する。第1傾動部35Lに接続された第1変位体50は、第1傾動対向面35aと同様に傾斜し、第1変位部54がZ軸方向正側に変位する。このことにより、第2変位電極基板Ed2は第2固定電極基板Ef2から遠ざかり、第2変位電極基板Ed2と第2固定電極基板Ef2との電極間距離が増大する。このため、第2容量素子C2の静電容量値が減少する。
【0125】
より具体的には、第1変位体50は、第1傾動対向面35aと同様に傾斜した場合、Y軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動する。第1変位体50の反時計回りの回動は、第1変位部54をZ軸方向に変位させる1つの変位成分である。また、Z軸方向正側に力Fzが作用した場合、第1傾動対向面35aがZ軸方向正側に変位する。第1傾動対向面35aのZ軸方向正側への変位は、第1変位部54をZ軸方向に変位させるもう1つの変位成分である。これら2つの変位成分はいずれも第1変位部54のZ軸方向正側の変位に寄与するため、第1変位部54はZ軸方向正側に変位する。そして、第1変位部54のZ軸方向正側への変位量(絶対値)は、後述する第2変位部64のZ軸方向負側への変位量(絶対値)よりも大きくなる。このため、第2容量素子C2の静電容量値の減少量は、第1容量素子C1の静電容量値の増大量よりも大きくなる。
【0126】
一方、第1傾動部35Rの第1傾動対向面35aと第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aが連動して、互いに異なる方向に傾斜する。第2傾動部37Rに接続された第2変位体60は、第2傾動対向面37aと同様に傾斜し、第2変位部64がZ軸方向負側に変位する。このことにより、第1変位電極基板Ed1は第1固定電極基板Ef1に近づき、第1変位電極基板Ed1と第1固定電極基板Ef1との電極間距離が減少する。このため、第1容量素子C1の静電容量値が増大する。
【0127】
より具体的には、第2変位体60は、第2傾動対向面37aと同様に傾斜した場合、Y軸方向正側に向かって見たときに反時計回りに回動する。第2変位体60の反時計回りの回動は、第2変位部64をZ軸方向に変位させる1つの変位成分である。また、Z軸方向正側に力Fzが作用した場合、第2傾動対向面37aがZ軸方向正側に変位する。第2傾動対向面37aのZ軸方向正側への変位は、第2変位部64をZ軸方向に変位させるもう1つの変位成分である。第2変位体60の反時計回りの回動による変位成分は、第2変位部64のZ軸方向負側の変位に寄与するが、第2傾動対向面37aのZ軸方向正側への変位は、第2変位部64のZ軸方向正側の変位に寄与する。しかしながら、第2変位体60の反時計回りの回動による変位成分の変位量(絶対値)は、第2傾動対向面37aのZ軸方向正側への変位による変位成分の変位量(絶対値)よりも大きい。このため、第2変位部64はZ軸方向負側に変位する。そして、第2変位部64のZ軸方向負側への変位量(絶対値)は、上述した第1変位部54のZ軸方向正側への変位量(絶対値)よりも小さくなる。このため、第1容量素子C1の静電容量値の増大量は、第2容量素子C2の静電容量値の減少量よりも小さくなる。
【0128】
ここで、本実施の形態による第2変位体60は、Z軸方向正側への力Fzが作用した場合に、第2変位部64がZ軸方向負側に変位するように構成されている。すなわち、第2変位体60の反時計回りの回動による変位成分の変位量が、第2傾動対向面37aのZ軸方向正側への変位による変位成分の変位量よりも大きくなるように、第2変位体60のX軸方向寸法Lx2(図5参照)が設定されていてもよい。第1変位体50は、第2変位体60との対称性を有するように構成されていてもよい。すなわち、第1変位体50のX軸方向寸法Lx1(図5参照)が、第2変位体60のX軸方向寸法Lx2と等しくてもよい。
【0129】
(-Fzが作用した場合)
第1起歪体30AにZ軸方向負側に力Fzが作用した場合には、図10Bに示すように、傾動構造体31が弾性変形する。より具体的には、第1接続部32がZ軸方向負側に変位し、主として、傾動構造体31の一対の第1変形部36、一対の第2変形部38および一対の第3変形部39が弾性変形する。このことにより、各第1傾動部35L、35Rの第1傾動対向面35aと、対応する第2傾動部37L、37Rの第2傾動対向面37aが傾斜する。
【0130】
この場合、第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aと第2傾動部37Lの第2傾動対向面37aが連動して、互いに異なる方向に傾斜する。第1傾動部35Lに接続された第1変位体50は、第1傾動対向面35aと同様に傾斜し、第1変位部54がZ軸方向負側に変位する。このことにより、第2変位電極基板Ed2は第2固定電極基板Ef2に近づき、第2変位電極基板Ed2と第2固定電極基板Ef2との電極間距離が減少する。このため、第2容量素子C2の静電容量値が増大する。
【0131】
より具体的には、第1変位体50が、第1傾動対向面35aと同様に傾斜した場合、第1変位体50は、Y軸方向正側に向かって見たときに時計回りに回動する。第1変位体50の時計回りの回動は、第1変位部54をZ軸方向に変位させる1つの変位成分である。また、Z軸方向負側に力Fzが作用した場合、第1傾動対向面35aがZ軸方向負側に変位する。第1傾動対向面35aのZ軸方向負側への変位は、第1変位部54をZ軸方向に変位させるもう1つの変位成分である。これら2つの変位成分はいずれも第1変位部54のZ軸方向負側の変位に寄与するため、第1変位部54はZ軸方向負側に変位する。そして、第1変位部54のZ軸方向負側への変位量(絶対値)は、後述する第2変位部64のZ軸方向正側への変位量(絶対値)よりも大きくなる。このため、第2容量素子C2の静電容量値の増大量は、第1容量素子C1の静電容量値の減少量よりも大きくなる。
【0132】
一方、第1傾動部35Rの第1傾動対向面35aと第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aが連動して、互いに異なる方向に傾斜する。第2傾動部37Rに接続された第2変位体60は、第2傾動対向面37aと同様に傾斜し、第2変位部64がZ軸方向正側に変位する。このことにより、第1変位電極基板Ed1は第1固定電極基板Ef1から遠ざかり、第1変位電極基板Ed1と第1固定電極基板Ef1との電極間距離が増大する。このため、第1容量素子C1の静電容量値が減少する。
【0133】
より具体的には、第2変位体60が第2傾動対向面37aと同様に傾斜した場合、第2変位体60は、Y軸方向正側に向かって見たときに時計回りに回動する。第2変位体60の時計回りの回動は、第2変位部64をZ軸方向に変位させる1つの変位成分である。また、Z軸方向負側に力Fzが作用した場合、第2傾動対向面37aがZ軸方向負側に変位する。第2傾動対向面37aのZ軸方向負側への変位は、第2変位部64をZ軸方向に変位させるもう1つの変位成分である。第2変位体60の時計回りの回動による変位成分は、第2変位部64のZ軸方向正側の変位に寄与するが、第2傾動対向面37aのZ軸方向負側への変位は、第2変位部64のZ軸方向負側の変位に寄与する。しかしながら、第2変位体60の時計回りの回動による変位成分の変位量(絶対値)は、第2傾動対向面37aのZ軸方向負側への変位による変位成分の変位量(絶対値)よりも大きい。このため、第2変位部64はZ軸方向正側に変位する。そして、第2変位部64のZ軸方向正側への変位量(絶対値)は、上述した第1変位部54のZ軸方向正側への変位量(絶対値)よりも小さくなる。このため、第1容量素子C1の静電容量値の減少量は、第2容量素子C2の静電容量値の増大量よりも小さくなる。
【0134】
ここで、本実施の形態による第2変位体60は、Z軸方向負側への力Fzが作用した場合に、第2変位部64がZ軸方向正側に変位するように構成されている。すなわち、第2変位体60の時計回りの回動による変位成分の変位量が、第2傾動対向面37aのZ軸方向負側への変位による変位成分の変位量よりも大きくなるように、第2変位体60のX軸方向寸法Lx2(図5参照)が設定されていてもよい。
【0135】
ここで、図4に示す第1起歪体30Aに設けられた各容量素子C1、C2の静電容量値の変化を、図11に示す。図11は、図4の第1起歪体30Aにおける各容量素子C1、C2の静電容量値の変化を示す表である。
【0136】
図11においては、X軸方向の力FxとY軸方向の力FyとZ軸方向の力Fzについての容量素子C1、C2の静電容量値の変化を示している。静電容量値が減少した場合を「-(マイナス)」で示し、静電容量値が増大した場合を「+(プラス)」で示している。例えば、図11に示す表中のFxの行のC1に「+」が示されているが、これは、上述したように+Fxの力が作用した場合には第1容量素子C1の静電容量値が増大することを示している。一方、図11に示す表中のFxの行のC2に「-」が示されているが、これは、上述したように+Fxの力が作用した場合には第2容量素子C2の静電容量値が減少することを示している。上述したように、力Fzが作用した場合には、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と、第2容量素子C2の静電容量値の変化量が異なっている。しかしながら、簡略化のため、図11では、静電容量値の変化を単に符号で表している。
【0137】
図11に示す表から、受力体20と固定体25とが第1起歪体30Aだけで接続されている力覚センサ10において、受力体20に作用した力Fx、Fy、Fzは、以下の式で算出することができる。なお、以下の式では、便宜上、力またはモーメントと静電容量値の変化量とを「=」で結んでいる。しかしながら、力またはモーメントと、静電容量値とは互いに異なる物理量であるため、実際には、静電容量値の変化量を変換することにより、力が算出される。以下の式中のC1、C2は、各容量素子における静電容量値の変化量を示す。
【数1】
【数2】
【数3】
【0138】
図11に示すように、受力体20と固定体25とが第1起歪体30Aだけで接続されている力覚センサ10においては、X軸方向の力FxとZ軸方向の力Fzは共に、第1容量素子C1の静電容量値と第2容量素子C2の静電容量値との差で検出することができる。とりわけ、力Fzについて、上述の式(3)に示されているように、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と第2容量素子C2の静電容量値の変化量との差分によって力Fzの出力値を算出することができる。第1容量素子C1の静電容量値および第2容量素子C2の静電容量値のそれぞれに、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響が含まれていたとしても、その影響は、上述の式(3)の差分によって相殺され得る。
【0139】
例えば、上述した特許文献1に示す力覚センサにおいては、Z軸方向正側の力Fzが作用した場合には、第1容量素子C1と第2容量素子C2は共に減少し、Z軸方向負側の力Fzが作用した場合には、第1容量素子C1と第2容量素子C2は共に増大する。この場合、力Fzの出力値は、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と第2容量素子C2の静電容量値の変化量との加算によって算出される。このため、力Fzの出力値に、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響が含まれ得る。
【0140】
これに対して本実施の形態においては、上述したように、力Fzが作用した場合、第1容量素子C1の静電容量値および第2容量素子C2の静電容量値のいずれか一方が増大し、他方は減少する。このことにより、力Fzの出力値は、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と第2容量素子C2の静電容量値の変化量との差分によって算出することができる。この場合、上述した外乱による影響を相殺することができる。このため、力Fzの出力値が、外乱の影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0141】
なお、FxとFzでは、符号が異なるだけであるため、検出された力がFxおよびFzのいずれであるかを判別することが困難になる。このため、1つの第1起歪体30Aだけを用いた力覚センサ10は、力Fxおよび力Fzのいずれか一方と、Y軸方向の力Fyが作用する場合に用いることができる。この場合の力覚センサ10は、2軸成分を検出可能な力覚センサである。
【0142】
次に、図7に示す力覚センサ10において、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸周りのモーメントMx、Y軸周りのモーメントMy、Z軸周りのモーメントMzが作用した場合の各容量素子C1~C8の静電容量値の変化について図12を参照して説明する。図12は、図7の力覚センサにおける各容量素子の静電容量値の変化を示す表である。
【0143】
(+Fxが作用した場合)
まず、受力体20にX軸方向正側に力Fxが作用した場合について説明する。
【0144】
この場合、第1起歪体30Aは、図8に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第1容量素子C1の静電容量値が減少するとともに第2容量素子C2の静電容量値が増大する。この場合、第1容量素子C1の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFxの行のC1は、「--」としている。第2容量素子C2の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のFxの行のC2は、「++」としている。
【0145】
第2起歪体30Bは、図9に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形する。すなわち、第2起歪体30Bは、Y軸周り、すなわちY軸方向正側に向かって時計回りに回動する。このことにより、第3容量素子C3の静電容量値が増大するとともに第4容量素子C4の静電容量値が増大する。しかしながら、第3容量素子C3の静電容量値の増大量および第4容量素子C4の静電容量値の増大量は無視できる程度に小さい。このため、図12に示す表中のFxの行のC3、C4は「0(ゼロ)」としている。
【0146】
第3起歪体30Cは、図8に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形する。すなわち、第5容量素子C5の静電容量値が増大するとともに第6容量素子C6の静電容量値が減少する。この場合、第5容量素子C5の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のFxの行のC5は、「++」としている。第6容量素子C6の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFxの行のC6は、「--」としている。
【0147】
第4起歪体30Dは、図9に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形する。すなわち、第4起歪体30Dは、Y軸周り、すなわちY軸方向正側に向かって時計回りに回動する。このことにより、第7容量素子C7の静電容量値が減少するとともに第8容量素子C8の静電容量値が減少する。しかしながら、第7容量素子C7の静電容量値の減少量および第8容量素子C8の静電容量値の減少量は無視できる程度に小さい。このため、図12に示す表中のFxの行のC7、C8は、「0(ゼロ)」としている。
【0148】
(+Fyが作用した場合)
次に、受力体20にY軸方向正側に力Fyが作用した場合について説明する。以下の説明においても、静電容量値の変化に応じて、上述したように図12の表中の符号が定められる。
【0149】
第1起歪体30Aは、図9に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形する。すなわち、第1起歪体30Aは、X軸周り、すなわちX軸方向正側に向かって反時計回りに回動する。このことにより、第1容量素子C1の静電容量値が減少するとともに第2容量素子C2の静電容量値が減少する。しかしながら、第1容量素子C1の静電容量値の減少量および第2容量素子C2の静電容量値の減少量は無視できる程度に小さい。このため、図12に示す表中のFxの行のC1、C2は「0(ゼロ)」としている。
【0150】
第2起歪体30Bは、図9に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形する。すなわち、第3容量素子C3の静電容量値が減少するとともに第4容量素子C4の静電容量値が増大する。この場合、第3容量素子C3の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFyの行のC3は、「--」としている。第4容量素子C4の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のFyの行のC4は、「++」としている。
【0151】
第3起歪体30Cは、図9に示す第1起歪体30Aと反対方向に弾性変形する。すなわち、第3起歪体30Cは、X軸周り、すなわちX軸方向正側に向かって反時計回りに回動する。このことにより、第5容量素子C5の静電容量値が増大するとともに第6容量素子C6の静電容量値が増大する。しかしながら、第5容量素子C5の静電容量値の増大量および第6容量素子C6の静電容量値の増大量は無視できる程度に小さい。このため、図12に示す表中のFxの行のC5、C6は、「0(ゼロ)」としている。
【0152】
第4起歪体30Dは、図8に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形する。すなわち、第7容量素子C7の静電容量値が増大するとともに第8容量素子C8の静電容量値が減少する。この場合、第7容量素子C7の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のFyの行のC7は、「++」としている。第8容量素子C8の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFyの行のC8は、「--」としている。
【0153】
(+Fzが作用した場合)
次に、受力体20にZ軸方向正側に力Fzが作用した場合について説明する。以下の説明においても、静電容量値の変化に応じて、上述したように図9の表中の符号が定められる。
【0154】
この場合、第1起歪体30Aは、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第1容量素子C1の静電容量値が増大するとともに第2容量素子C2の静電容量値が減少する。この場合、第1容量素子C1の静電容量値の増大量は比較的小さいため、図12に示す表中のFzの行のC1は、「+」としている。第2容量素子C2の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFzの行のC2は、「--」としている。
【0155】
第2起歪体30Bは、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第3容量素子C3の静電容量値が減少するとともに第4容量素子C4の静電容量値が増大する。この場合、第3容量素子C3の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFzの行のC3は、「--」としている。第4容量素子C4の静電容量値の増大量は比較的小さいため、図12に示す表中のFzの行のC4は、「+」としている。
【0156】
第3起歪体30Cは、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第5容量素子C5の静電容量値が増大するとともに第6容量素子C6の静電容量値が減少する。この場合、第5容量素子C5の静電容量値の増大量は比較的小さいため、図12に示す表中のFzの行のC5は、「+」としている。第6容量素子C6の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFzの行のC6は、「--」としている。
【0157】
第4起歪体30Dは、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第7容量素子C7の静電容量値が減少するとともに第8容量素子C8の静電容量値が増大する。この場合、第7容量素子C7の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のFzの行のC7は、「--」としている。第8容量素子C8の静電容量値の増大量は比較的小さいため、図12に示す表中のFzの行のC8は、「+」としている。
【0158】
(+Mxが作用した場合)
次に、受力体20にX軸周り、すなわちX軸方向正側に向かって時計回りのモーメントMx(図7参照)が作用した場合について説明する。以下の説明においても、静電容量値の変化に応じて、上述したように図12の表中の符号が定められる。
【0159】
この場合、第1起歪体30Aは、図10Aに示すようにZ軸方向正側を向く力Fzが作用した第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第1容量素子C1の静電容量値が増大するとともに第2容量素子C2の静電容量値が減少する。この場合、上述したように、第1容量素子C1の静電容量値の増大量は、第2容量素子C2の静電容量値の減少量よりも小さく、第1容量素子C1の静電容量値の増大量は比較的小さい。このため、図12に示す表中のMxの行のC1は、「+」としている。第2容量素子C2の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のMxの行のC2は、「--」としている。
【0160】
第2起歪体30Bにおいては、傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)が、Y軸方向において受力体20の中心Oに位置しているため、第2起歪体30Bの弾性変形は、第1起歪体30Aおよび第3起歪体30Cに比べて小さい。ここでは、説明を簡略化するために、第2起歪体30Bは弾性変形しないとみなす。このため、第3容量素子C3の静電容量値が変化せず、第4容量素子C4の静電容量値も変化しない。図12に示す表中のMxの行のC3およびC4は、「0(ゼロ)」としている。
【0161】
第3起歪体30Cは、図10Bに示すようにZ軸方向負側を向く力Fzが作用した第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第5容量素子C5の静電容量値が減少するとともに第6容量素子C6の静電容量値が増大する。この場合、上述したように、第1容量素子C1の静電容量値の減少量は、第2容量素子C2の静電容量値の増大量よりも小さくなり、第5容量素子C5の静電容量値の減少量は比較的小さい。このため、図12に示す表中のMxの行のC5は、「-」としている。第6容量素子C6の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のMxの行のC2は、「++」としている。
【0162】
第4起歪体30Dにおいては、傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)が、Y軸方向において受力体20の中心Oに位置しているため、第4起歪体30Dの弾性変形は、第1起歪体30Aおよび第3起歪体30Cに比べて小さい。ここでは、説明を簡略化するために、第4起歪体30Dは弾性変形しないとみなす。このため、第7容量素子C7の静電容量値が変化せず、第8容量素子C8の静電容量値も変化しない。図12に示す表中のMxの行のC7およびC8は、「0(ゼロ)」としている。
【0163】
(+Myが作用した場合)
次に、受力体20にY軸周り、すなわちY軸方向正側に向かって時計回りのモーメントMy(図7参照)が作用した場合について説明する。以下の説明においても、静電容量値の変化に応じて、上述したように図12の表中の符号が定められる。
【0164】
この場合、第1起歪体30Aにおいては、傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)が、X軸方向において受力体20の中心Oに位置しているため、第1起歪体30Aの弾性変形は、第2起歪体30Bおよび第4起歪体30Dに比べて小さい。ここでは、説明を簡略化するために、第1起歪体30Aは弾性変形しないとみなす。このため、第1容量素子C1の静電容量値が変化せず、第2容量素子C2の静電容量値も変化しない。図12に示す表中のMyの行のC1およびC2は、「0(ゼロ)」としている。
【0165】
第2起歪体30Bは、図10Aに示すようにZ軸方向正側を向く力Fzが作用した第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第3容量素子C3の静電容量値が減少するとともに第4容量素子C4の静電容量値が増大する。この場合、上述したように、第3容量素子C3の静電容量値の減少量は、第4容量素子C4の静電容量値の増大量よりも大きく、第3容量素子C3の静電容量値の減少量は比較的大きい。このため、図12に示す表中のMyの行のC3は、「--」としている。第4容量素子C4の静電容量値の増大量は比較的小さいため、図12に示す表中のMyの行のC4は、「+」としている。
【0166】
第3起歪体30Cにおいては、傾動構造体31の中心軸線CL(図4参照)が、X軸方向において受力体20の中心Oに位置しているため、第3起歪体30Cの弾性変形は、第2起歪体30Bおよび第4起歪体30Dに比べて小さい。ここでは、説明を簡略化するために、第3起歪体30Cは弾性変形しないとみなす。このため、第5容量素子C5の静電容量値が変化せず、第6容量素子C6の静電容量値も変化しない。図12に示す表中のMyの行のC5およびC6は、「0(ゼロ)」としている。
【0167】
第4起歪体30Dは、図10Bに示すようにZ軸方向負側を向く力Fzが作用した第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第7容量素子C7の静電容量値が増大するとともに第8容量素子C8の静電容量値が減少する。この場合、上述したように、第7容量素子C7の静電容量値の増大量は、第8容量素子C8の静電容量値の減少量よりも大きくなり、第7容量素子C7の静電容量値の増大量は比較的大きい。このため、図12に示す表中のMyの行のC7は、「++」としている。第8容量素子C8の静電容量値の減少量は比較的小さいため、図12に示す表中のMyの行のC8は、「-」としている。
【0168】
(+Mzが作用した場合)
次に、受力体20に、Z軸周り、すなわちZ軸方向正側に向かって時計回りのモーメントMz(図7参照)が作用した場合について説明する。以下の説明においても、静電容量値の変化に応じて、上述したように図12の表中の符号が定められる。
【0169】
この場合、第1起歪体30Aは、X軸方向負側の力Fxが作用した場合と同様に弾性変形する。このことにより、第1起歪体30Aは、図8に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形し、第1容量素子C1の静電容量値が増大し、第2容量素子C2の静電容量値が減少する。この場合、第1容量素子C1の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC1は、「++」としている。第2容量素子C2の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC2は、「--」としている。
【0170】
第2起歪体30Bは、Y軸方向負側の力Fyが作用した場合と同様に弾性変形する。このことにより、第2起歪体30Bは、図8に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第3容量素子C3の静電容量値が増大し、第4容量素子C4の静電容量値が減少する。この場合、第3容量素子C3の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC3は、「++」としている。第4容量素子C4の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC4は、「--」としている。
【0171】
第3起歪体30Cは、X軸方向正側の力Fxが作用した場合と同様に弾性変形する。このことにより、第3起歪体30Cは、図8に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形し、第5容量素子C5の静電容量値が増大し、第6容量素子C6の静電容量値が減少する。この場合、第5容量素子C5の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC5は、「++」としている。第6容量素子C6の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC6は、「--」としている。
【0172】
第4起歪体30Dは、Y軸方向正側の力Fyが作用した場合と同様に弾性変形する。このことにより、第4起歪体30Dは、図8に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形し、第7容量素子C7の静電容量値が増大し、第8容量素子C8の静電容量値が減少する。この場合、第7容量素子C7の静電容量値の増大量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC7は、「++」としている。第8容量素子C8の静電容量値の減少量は比較的大きいため、図12に示す表中のMzの行のC8は、「--」としている。
【0173】
このようにして、各容量素子C1~C8の静電容量値の変化が検出されると、受力体20に作用した力またはモーメントの向きと大きさが検出される。そして、図12に示すように、各容量素子C1~C8の静電容量値が変化する。
【0174】
図12に示す表から、受力体20に作用した力Fx、Fy、Fz、およびモーメントMx、My、Mzは、以下の式で算出することができる。これにより、力の6軸成分を検出することができる。なお、以下の式では、便宜上、力またはモーメントと静電容量値の変化量とを「=」で結んでいる。しかしながら、力またはモーメントと、静電容量値とは互いに異なる物理量であるため、実際には、静電容量値の変化量を変換することにより、力またはモーメントが算出される。以下の式中のC1~C8は、各容量素子における静電容量値の変化量を示す。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0175】
上述したように、図7に示す力覚センサ10は、上述した式(4)~式(9)で示したように、力Fx、Fy、Fz、およびモーメントMx、My、Mzを検出することができるため、力の6軸成分を検出することが可能になっている。しかしながら、力覚センサ10が検出することが可能な力の軸成分は6つであることに限られることはなく、起歪体の個数や構造、形状に応じて、検出可能な軸成分は任意である。上述した式(4)~式(9)に含まれる係数a1~a8は、静電容量値の変化量(増大量または減少量)が比較的小さいことを示す係数である。上述したように、力Fzが作用した場合には、各容量素子C1~C8の静電容量値の変化量が異なるため、変化量が比較的小さい静電容量について、係数を乗じている。係数a1~a8は、互いに異なり得る。
【0176】
とりわけ、力Fzの出力値は、上述の式(6)に示されているように、各起歪体30A~30Dの2つの容量素子C1~C8の静電容量値の変化量の差分によって算出することができる。このことにより、上述したように、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響が含まれていたとしても、その影響を相殺することができる。すなわち、式(6)には、係数a1~a4が含まれているが、容量素子C1~C8の静電容量値の変化量の差分によって力Fzの出力値を算出しているため、少なくとも部分的には外乱による影響を相殺することができる。このため、力Fzの出力値が、外乱の影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0177】
上述した式(4)~式(9)に係数a1~a8が含まれていることにより、各軸成分に他軸感度が発生している。例えば、第1起歪体30AについてZ軸方向正側に力Fzが作用した場合、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と、第2容量素子C2の静電容量値の変化量とは異なる。この場合、力Fzに対して他軸感度が発生し得る。他の軸成分についても同様である。
【0178】
しかしながら、他軸感度が発生した場合であっても、他軸感度のマトリックスの逆行列を求め、この逆行列を力覚センサの出力(特性行列)に乗じることによって補正演算を行うことができる。この結果、他軸感度を低減することができ、他軸感度の発生を無視できる程度に他軸感度を低減することができる。
【0179】
このように本実施の形態によれば、起歪体30Aは、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合にZ軸方向において互いに反対側に変位する第1変位部54および第2変位部64を含んでいる。このことにより、第1容量素子C1の静電容量値および第2容量素子C2の静電容量値のいずれか一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。この場合、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と第2容量素子C2の静電容量値の変化量との差分によって、Z軸方向の力Fzの大きさを示す出力値を算出することができる。このため、力Fzの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の検出精度を向上させることができる。この結果、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0180】
また、本実施の形態によれば、傾動構造体31の第1傾動部35L、35Rは、第1接続部32を介して受力体20に接続され、第2傾動部37L、37Rは、第2接続部33を介して固定体25に接続されている。第1起歪体30Aの第1変位部54は、第1接続部32に対してX軸方向における一側に配置された第1傾動部35Lに接続されている。第1起歪体30Aの第2変位部64は、第2接続部33に対してX軸方向における他側に配置された第2傾動部37Rに接続されている。このことにより、Z軸方向の力Fzが作用した場合、第1変位体50および第2変位体60を傾斜させることができる。この場合、第1変位部54および第2変位部64のうちの一方を、Z軸方向正側に変位させることができるとともに、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方を、Z軸方向負側に変位させることができる。このため、第1容量素子C1の静電容量値と第2容量素子C2の静電容量値の一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。この結果、第1容量素子C1の静電容量値の変化量と第2容量素子C2の静電容量値の変化量との差分によって、力Fzの大きさを示す出力値を算出することができる。
【0181】
また、本実施の形態によれば、第1変位部54は、第1接続部32に対してX軸方向負側に配置された第1傾動部35Lに接続され、当該第1傾動部35Lに対して他の第1傾動部35Rの側に配置されている。このことにより、第1変位部54が、対応する第1傾動部35Lに対してX軸方向正側に配置することができ、第1変位部54が、傾動構造体31に対してX軸方向の外側に配置されることを防止することができる。同様に、第2変位部64は、第2接続部33に対してX軸方向正側にされた第2傾動部37Rに接続され、当該第2傾動部37Rに対して他の第2傾動部37Lの側に配置されている。このことにより、第2変位部64が、対応する第2傾動部37Rに対してX軸方向負側に配置することができ、第2変位部64が、傾動構造体31に対してX軸方向の外側に配置されることを防止することができる。この結果、スペース効率を向上させることができ、力覚センサ10の小型化を図ることができる。
【0182】
また、本実施の形態によれば、第1変位部54を第1傾動部35Lに接続する第1腕部53は、X軸方向のうち対応する第1傾動部35Lから他の第1傾動部35Rに向かう方向に延びている。すなわち、第1腕部53は、第1傾動部35LからX軸方向正側に延びている。このことにより、第1傾動部35Lが傾斜した場合に、第1変位部54のZ軸方向変位を増大させることができる。同様に、第2変位部64を第2傾動部37Rに接続する第2腕部63は、X軸方向のうち対応する第2傾動部37Rから他の第2傾動部37Lに向かう方向に延びている。すなわち、第2腕部63は、第2傾動部37RからX軸方向負側に延びている。このことにより、第2傾動部37Rが傾斜した場合に、第2変位部64のZ軸方向変位を増大させることができる。このため、検出感度を高めることができ、力覚センサ10の信頼性を向上させることができる。
【0183】
また、本実施の形態によれば、第1腕部53は、対応する第1傾動部35Lの受力体20に対向する第1傾動対向面35aに、第1連結部51を介して取り付けられている。このことにより、第1傾動部35Lが傾斜した場合に、第1変位部54をZ軸方向に変位させることができる。同様に、第2腕部63は、対応する第2傾動部37Rの固定体25に対向する第2傾動対向面37aに、第2連結部61を介して取り付けられている。このことにより、第2傾動部37Rが傾斜した場合に、第2変位部64をZ軸方向に変位させることができる。
【0184】
また、本実施の形態によれば、第1変位部54および第2変位部64は、Y軸方向において傾動構造体31の一側に配置されている。このことにより、スペース効率を向上させることができ、力覚センサ10の小型化を図ることができる。
【0185】
また、本実施の形態によれば、傾動構造体31の各第1変形部36は、対応する第1傾動部35L、35Rを第1接続部32に接続し、傾動構造体31の各第2変形部38は、対応する第2傾動部37L、37Rを第2接続部33に接続している。第1変形部36のZ軸方向寸法t1は、第1傾動部35L、35RのZ軸方向寸法t2よりも小さく、第2変形部38のZ軸方向寸法t3は、第2傾動部37L、37RのZ軸方向寸法t4よりも小さくなっている。このことにより、Z軸方向の力Fzが作用した場合、第1変形部36および第2変形部38を弾性変形させることができ、第1傾動部35L、35Rおよび第2傾動部37L、37Rを傾斜させることができる。
【0186】
また、本実施の形態によれば、第1変形部36は、受力体20に対向する第1対向面36aを含み、第1対向面36aは、第1傾動部35L、35Rの受力体20に対向する第1傾動対向面35aよりも固定体25の側に配置されている。このことにより、第1接続部32と各第1傾動部35L、35Rとの間に第1切欠部40を形成することができる。このため、Z軸方向の力Fzが作用した場合、各第1傾動部35L、35Rを傾斜させやすくすることができる。同様に、第2変形部38は、固定体25に対向する第2対向面38aを含み、第2対向面38aは、第2傾動部37L、37Rの固定体25に対向する第2傾動対向面37aよりも受力体20の側に配置されている。このことにより、第2接続部33と各第2傾動部37L、37Rとの間に第2切欠部41を形成することができる。このため、Z軸方向の力Fzが作用した場合、第2傾動部37L、37Rを傾斜させやすくすることができる。
【0187】
また、本実施の形態によれば、第1傾動部35L、35Rと対応する第2傾動部37L、37Rとが第3変形部39によって接続されている。第3変形部39のX軸方向寸法t5は、第1傾動部35L、35RのX軸方向寸法t6よりも小さく、第2傾動部37L、37RのX軸方向寸法t7よりも小さい。このことにより、Z軸方向の力Fzが作用した場合、各第3変形部39を弾性変形させることにより、各第1傾動部35L、35Rおよび対応する第2傾動部37L、37Rを、互いに反対方向に傾斜させることができる。この場合、第1変位部54および第2変位部64のうちの一方を、Z軸方向正側に変位させることができるとともに、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方を、Z軸方向負側に変位させることができる。
【0188】
また、本実施の形態によれば、第1起歪体30Aの第1容量素子C1は、第1変位部54および第2変位部64のうちの一方に設けられた第1変位電極基板Ed1と、第1変位電極基板Ed1に対向する第1固定電極基板Ef1と、を含んでいる。このことにより、第1容量素子C1は、第1変位部54および第2変位部64のうちの一方のZ軸方向の変位による静電容量値の変化を検出することができる。また、第1起歪体30Aの第2容量素子C2は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方に設けられた第2変位電極基板Ed2と、第2変位電極基板Ed2に対向する第2固定電極基板Ef2と、を含んでいる。このことにより、第2容量素子C2は、第1変位部54および第2変位部64のうちの他方のZ軸方向の変位による静電容量値の変化を検出することができる。
【0189】
また、本実施の形態によれば、第1固定電極基板Ef1および第2固定電極基板Ef2は、固定体25に支持されている。このことにより、第1変位電極基板Ed1のZ軸方向の変位の検出精度を向上させることができるとともに、第2変位電極基板Ed2のZ軸方向の変位の検出精度を向上させることができる。
【0190】
また、本実施の形態によれば、第1固定電極基板Ef1は、第2台座27を介して固定体25に支持され、第2固定電極基板Ef2は、第1台座26を介して固定体25に支持されている。このことにより、第1固定電極基板Ef1を第1変位電極基板Ed1に近づけることができ、第1変位電極基板Ed1の変位の検出精度を向上させることができる。同様に、第2固定電極基板Ef2を第2変位電極基板Ed2に近づけることができ、第2変位電極基板Ed2の変位の検出精度を向上させることができる。
【0191】
また、本実施の形態によれば、受力体20の中心Oに対してY軸方向正側に第1起歪体30Aが配置され、X軸方向負側に第2起歪体30Bが配置され、Y軸方向負側に第3起歪体30Cが配置され、X軸方向正側に第4起歪体30Dが配置されている。そして、第1起歪体30Aおよび第3起歪体30Cの第2方向をX軸方向とし、第2起歪体30Bおよび第4起歪体30Dの第2方向をY軸方向としている。このことにより、Z軸方向で見たときに、第1起歪体30A~第4起歪体30Dを、受力体20の中心Oに対して環状に配置することができる。また、第1起歪体30A~第4起歪体30Dを、受力体20の中心Oの周囲に均等に配置することができる。このため、任意の方向の力またはモーメントの検出精度を向上させることができ、力またはモーメントの検出精度が、力の方向またはモーメントの方向によって低下することを抑制することができる。
【0192】
また、本実施の形態によれば、各起歪体30A~30Dの第1変位部54および第2変位部64は、対応する傾動構造体31に対して、受力体20の中心側に配置されている。このことにより、スペース効率を向上させることができ、力覚センサ10の小型化を図ることができる。また、各起歪体30A~30Dの傾動構造体31を、対応する第1変位部54および第2変位部64に対して受力体20の中心Oとは反対側に配置することができる。このため、受力体20の中心側にスペースを確保することができる。この場合、受力体20の中心部および固定体25の中心部に貫通孔(図示せず)を形成することができ、貫通孔付き力覚センサを構築することができる。
【0193】
(変形例1)
なお、上述した本実施の形態においては、固定電極基板Ef1、Ef2が、台座26、27を介して固定体25に固定されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、図13に示すように、固定電極基板Ef1、Ef2は、台座26、27を介することなく、固定体25に直接的に固定されていてもよい。図13は、図4の第1起歪体30Aの変形例を示す正面図である。
【0194】
例えば、図13に示すように、第1起歪体30Aの第1変位部54のZ軸方向位置を、図4に示す第1変位部54のZ軸方向位置よりも固定体25に近い位置に配置してもよい。この場合、第1変位体50の第1延長部52を、図4に示す第1延長部52よりも長くしてもよい。同様に、例えば、第2変位部64のZ軸方向位置を、図4に示す第2変位部64のZ軸方向位置よりも固定体25に近い位置に配置してもよい。この場合、第2変位体60の第2延長部62を、図4に示す第2延長部62よりも短くしてもよい。図13に示す変形例によれば、図4に示す台座26、27を不要にすることができ、部品点数を削減することができる。図13に示す第2起歪体30B~第4起歪体30Dおよび各検出素子70についても同様である。
【0195】
(変形例2)
また、上述した本実施の形態においては、第1変形部36の第1対向面36aおよび第2変形部38の第2対向面38aがそれぞれ平坦状に形成されて、矩形状の第1切欠部40および矩形状の第2切欠部41がそれぞれ形成されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、図14に示すように、第1対向面36aおよび第2対向面38aはそれぞれ、湾曲状に形成されていてもよい。図14は、図4の第1起歪体30Aの他の変形例を示す正面図である。
【0196】
図14に示すように、第1起歪体30Aの第1対向面36aは、固定体25に向かう方向に膨張するように湾曲していてもよい。第1切欠部40は、第1変形部36から第1接続部32の一部にわたって形成されていてもよく、第1変形部36から第1接続部32のうちの第1変形部36の側の部分が連続状かつ湾曲状に切り欠かれていてもよい。第1切欠部40は、円弧状に形成されていてもよい。同様に、第2対向面38aは、受力体20に向かう方向に膨張するように湾曲していてもよい。第2切欠部41は、第2変形部38から第2接続部33の一部にわたって形成されていてもよく、第2変形部38から第2接続部33のうちの第2変形部38の側の部分が連続状かつ湾曲状に切り欠かれていてもよい。第2切欠部41は、円弧状に形成されていてもよい。
【0197】
図14に示す変形例によれば、X軸方向における第1対向面36aの両端部に、応力を集中させる角部が形成されることを防止することができる。同様に、X軸方向における第2対向面38aの両端部に、応力を集中させる角部が形成されることを防止することができる。このため、受力体20に力またはモーメントが作用した際に、傾動構造体31に応力集中が発生することを防止することができ、力覚センサ10の信頼性を向上させることができる。
【0198】
図14に示す例においては、第3対向面39aが湾曲状に形成されていてもよい。第3対向面39aは、他の第3変形部39の第3対向面39aとは反対側に膨張するように湾曲していてもよい。このことにより、Z軸方向における第3対向面39aの両端部に、応力を集中させる角部が形成されることを防止することができる。このため、受力体20に力またはモーメントが作用した際に、傾動構造体31に応力集中が発生することを防止することができ、力覚センサ10の信頼性を向上させることができる。図14に示すように、第3対向面39aは、Y軸方向で見たときに、半円弧状に形成されていてもよい。
【0199】
図14に示す例では、第2接続部33のZ軸方向寸法Lz2が、第1接続部32のZ軸方向寸法Lz1よりも小さくなっていてもよい。この場合、固定電極基板Ef1、Ef2を固定するための台座26、27のZ軸方向寸法を小さくすることができる。
【0200】
図14に示す第1起歪体30Aの構成は、第2起歪体30B~第4起歪体30Dにも同様に適用されていてもよい。
【0201】
(変形例3)
また、上述した本実施の形態においては、第1起歪体30Aの第1変位部54が、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置され、第1起歪体30Aの第2変位部64が、中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている例について説明した。また、上述した本実施の形態においては、第3起歪体30Cの第1変位部54が、第3起歪体30Cの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置され、第3起歪体30Cの第2変位部64が、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。
【0202】
例えば、図15に示すように、第1起歪体30Aの第1変位部54が、第1起歪体30Aの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置され、第1起歪体30Aの第2変位部64が、中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されていてもよい。第3起歪体30Cの第1変位部54が、第3起歪体30Cの傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置され、第3起歪体30Cの第2変位部64が、中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されていてもよい。図15に示すように、各起歪体30A~30Dの第1変位部54および第2変位部64が、周方向に交互に並んでいてもよい。
【0203】
図15に示す力覚センサ10の各容量素子C1~C8の静電容量値は、図16に示すように変化する。図16に示す第1容量素子C1の静電容量値の変化は、図12に示す第1容量素子C1の静電容量値の変化と反対になる。図16に示す第2容量素子C2の静電容量値の変化は、図12に示す第2容量素子C2の静電容量値の変化と反対になる。図16に示す第5容量素子C5の静電容量値の変化は、図12に示す第5容量素子C5の静電容量値の変化と反対になる。図16に示す第6容量素子C6の静電容量値の変化は、図12に示す第6容量素子C6の静電容量値の変化と反対になる。
【0204】
図16に示す表から、受力体20に作用した力Fx、Fy、Fz、およびモーメントMx、My、Mzは、以下の式で算出することができる。これにより、力の6軸成分を検出することができる。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0205】
上述したように、図15に示す力覚センサ10は、上述した式(10)~式(15)で示したように、力Fx、Fy、Fz、およびモーメントMx、My、Mzを検出することができるため、力の6軸成分を検出することが可能になっている。しかしながら、力覚センサ10が検出することが可能な力の軸成分は6つであることに限られることはなく、起歪体の個数や構造、形状に応じて、検出可能な軸成分は任意である。上述した式(10)~式(15)に含まれる係数b1~b8は、静電容量値の変化量(増大量または減少量)が比較的小さいことを示す係数である。係数b1~b8は、互いに異なり得る。
【0206】
とりわけ、図15に示す力覚センサ10においても、力Fzが作用した場合に、各起歪体30A~30Dの2つの容量素子C1~C8の静電容量値の変化量の差分によって算出することができる。このことにより、上述したように、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響が含まれていたとしても、その影響を相殺することができる。このため、力Fzの出力値が、外乱の影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。すなわち、式(12)には、係数b1~b4が含まれているが、容量素子C1~C8の静電容量値の変化量の差分によって力Fzの出力値を算出しているため、少なくとも部分的には外乱による影響を相殺することができる。このため、力Fzの出力値が、外乱の影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0207】
各軸成分に他軸感度が発生した場合であっても、上述のように補正演算を行うことができる。このため、他軸感度を低減することができ、他軸感度の発生を無視できる程度に抑制することができる。
【0208】
図15に示す力覚センサ10においても、力Fzの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の検出精度を向上させることができる。この結果、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0209】
(変形例4)
また、上述した本実施の形態においては、第1変位体50が、第1接続部32に対してX軸方向負側に配置された第1傾動部35Lに接続されるとともに、第2変位体60が、第2接続部33に対してX軸方向正側に配置された第2傾動部37Rに接続されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1変位体50は、第1接続部32に対してX軸方向正側に配置された第1傾動部35Rに接続されるとともに、第2変位体60が、第2接続部33に対してX軸方向負側に配置された第2傾動部37Lに接続されていてもよい。この場合においても、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合に、第1変位部54および第2変位部64をZ軸方向において互いに反対側に変位させることができる。
【0210】
(変形例5)
また、上述した本実施の形態においては、第1起歪体30Aの第1変位部54および第2変位部64は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されており、いずれも傾動構造体31の一側に配置されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1変位部54は、傾動構造体31に対して一側に配置され、第2変位部64は、傾動構造体31に対して他側に配置されていてもよい。より具体的には、第1変位部54が傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置される場合には、第2変位部64は、傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置されてもよい。あるいは、第1変位部54が傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置される場合には、第2変位部64は、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されてもよい。第2起歪体30B~第4起歪体30Dについても同様である。
【0211】
(第2の実施の形態)
次に、図17図19を用いて、本発明の第2の実施の形態による力覚センサについて説明する。
【0212】
図17図19に示す第2の実施の形態においては、受力体と固定体が2つの起歪体で接続されている点が主に異なる。他の構成は、図1図16に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図17図19において、図1図16に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図17は、第2の実施の形態による力覚センサを示す平面断面図である。図18は、Z軸方向正側の力を受けた場合の図17の第1起歪体の変形状態を模式的に示す正面図であって、Y軸方向正側に向かって見た図である。図19は、Z軸方向正側の力を受けた場合の図17の第2起歪体の変形状態を模式的に示す正面図であって、Y軸方向負側に向かって見た図である。
【0213】
本実施の形態においては、図17に示すように、受力体20と固定体25は、2つの起歪体30E、30Fで接続されている。2つの起歪体30E、30Fは、第1起歪体30Eと、第2起歪体30Fと、を含んでいる。図17に示す例では、Z軸方向で見たときに、第1起歪体30Eは、受力体20の中心Oに対してY軸方向正側に配置されている。同様にZ軸方向で見たときに、第2起歪体30Fは、受力体20の中心Oに対してY軸方向負側に配置されている。第1起歪体30Eの第2方向および第2起歪体30Fの第2方向はいずれもX軸方向としてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1起歪体30Eの第2方向および第2起歪体30Fの第2方向はY軸方向としてもよい。また、第1起歪体30Eの第2方向および第2起歪体30Fの第2方向のうちの一方がX軸方向で他方がY軸方向でもよい。あるいは、第1起歪体30Eの第2方向および第2起歪体30Fの第2方向のうちの少なくとも一方は、X軸方向にもY軸方向にも沿ってなくてもよい。本実施の形態においては、第1起歪体30Eは、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合にZ軸方向において一側に変位する2つの第1変位部54を含んでいる。第2起歪体30Fは、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合にZ軸方向において他側に変位する2つの第2変位部64を含んでいる。第1起歪体30Eおよび第2起歪体30Fはそれぞれ、変位体以外の構成について図4等に示す第1起歪体30Aと同様であるため、変位体以外の構成についての詳細な説明は省略する。
【0214】
図18に示すように、本実施の形態による第1起歪体30Eは、2つの第1変位体50L、50Rを含んでいる。一方の第1変位体50Lは、第1接続部32に対してX軸方向負側に配置された第1傾動部35Lに接続されている。他方の第1変位体50Rは、第1接続部32に対してX軸方向正側に配置された第1傾動部35Rに接続されている。第1変位体50Lは、図4等に示す第1変位体50と同様に構成されているとともに同じ向きに配置されている。第1変位体50Rは、図4等に示す第1変位体50と同様に構成されているが、第1変位体50とは反対向きに配置されている。
【0215】
より具体的には、第1変位体50Lの第1連結部51は、第1傾動部35Lの第1傾動対向面35aに取り付けられている。第1変位体50Lの第1腕部53は、第1傾動部35LからX軸方向正側に向かう方向に延びている。第1変位体50Lの第1変位部54は、第1連結部51、第1延長部52および第1腕部53を介して第1傾動部35Lに接続されており、第1傾動部35Lに対してX軸方向正側に配置されている。第1変位体50Lの第1変位部54は、第1変位体50Rの第1変位部54に対してX軸方向負側に配置されている。第1変位体50Lの第1変位部54は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。
【0216】
第1変位体50Rの第1連結部51は、第1傾動部35Rの第1傾動対向面35aに取り付けられている。第1変位体50Rの第1腕部53は、第1傾動部35RからX軸方向負側に向かう方向に延びている。第1変位体50Rの第1変位部54は、第1連結部51、第1延長部52および第1腕部53を介して第1傾動部35Rに接続されており、第1傾動部35Rに対してX軸方向負側に配置されている。第1変位体50Rの第1変位部54は、第1変位体50Lの第1変位部54に対してX軸方向正側に配置されている。第1変位体50Rの第1変位部54は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。
【0217】
図17に示すように、本実施の形態による第1変位体50Lの第1変位部54および第1変位体50Rの第1変位部54はそれぞれ、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されていてもよい。しかしながら、2つの第1変位部54はそれぞれ、傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置されていてもよい。
【0218】
図19に示すように、本実施の形態による第2起歪体30Fは、2つの第2変位体60L、60Rを含んでいる。一方の第2変位体60Lは、第2接続部33に対してX軸方向正側に配置された第2傾動部37Lに接続されている。他方の第2変位体60Rは、第2接続部33に対してX軸方向負側に配置された第2傾動部37Rに接続されている。第2変位体60Lは、図4等に示す第2変位体60と同様に構成されているが、第2変位体60とは反対向きに配置されている。第2変位体60Rは、図4等に示す第2変位体60と同様に構成されているとともに同じ向きに配置されている。
【0219】
より具体的には、第2変位体60Lの第2連結部61は、第2傾動部37Lの第2傾動対向面37aに取り付けられている。第2変位体60Lの第2腕部63は、第2傾動部37LからX軸方向負側に向かう方向に延びている。第2変位体60Lの第2変位部64は、第2連結部61、第2延長部62および第2腕部63を介して第2傾動部37Lに接続されており、第2傾動部37Lに対してX軸方向負側に配置されている。第2変位体60Lの第2変位部64は、第2変位体60Rの第2変位部64に対してX軸方向正側に配置されている。第2変位体60Lの第2変位部64は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向正側に配置されている。
【0220】
第2変位体60Rの第2連結部61は、第2傾動部37Rの第2傾動対向面37aに取り付けられている。第2変位体60Rの第2腕部63は、第2傾動部37RからX軸方向正側に向かう方向に延びている。第2変位体60Rの第2変位部64は、第2連結部61、第2延長部62および第2腕部63を介して第2傾動部37Rに接続されており、第2傾動部37Rに対してX軸方向正側に配置されている。第2変位体60Rの第2変位部64は、第2変位体60Lの第2変位部64に対してX軸方向負側に配置されている。第2変位体60Rの第2変位部64は、傾動構造体31の中心軸線CLに対してX軸方向負側に配置されている。
【0221】
図17に示すように、本実施の形態による第2変位体60Lの第2変位部64および第2変位体60Rの第2変位部64はそれぞれ、傾動構造体31に対してY軸方向正側に配置されていてもよい。しかしながら、2つの第2変位部64はそれぞれ、傾動構造体31に対してY軸方向負側に配置されていてもよい。
【0222】
図17図19に示すように、本実施の形態による検出素子70は、2つの第1容量素子C1L、C1Rと、2つの第2容量素子C2L、C2Rと、を含んでいる。
【0223】
第1容量素子C1L、C1Rは、第1起歪体30E用の容量素子である。第1容量素子C1Lは、第1変位体50Lの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第1容量素子C1Rは、第1変位体50Rの第1変位部54のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第1容量素子C1Lおよび第1容量素子C1Rはそれぞれ、図4等に示す第1変位電極基板Ed1と、第1固定電極基板Ef1と、を含んでいてもよい。第1容量素子C1Lの第1固定電極基板Ef1は、図4等に示す第1台座26を介して固定体25に支持されていてもよい。第1容量素子C1Rの第1固定電極基板Ef1は、図4等に示す第2台座27を介して固定体25に支持されていてもよい。第1容量素子C1Lの第1変位電極基板Ed1は、第1変位体50Lの第1変位部54に設けられていてもよい。第1容量素子C1Rの変位電極基板Ed1は、第1変位体50Rの第1変位部54に設けられていてもよい。
【0224】
第2容量素子C2L、C2Rは、第2起歪体30F用の容量素子である。第2容量素子C2Lは、第2変位体60Lの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第2容量素子C2Rは、第2変位体60Rの第2変位部64のZ軸方向の変位により静電容量値の変化を検出する。第2容量素子C2Lおよび第2容量素子C2Rはいずれも、図4等に示す第2変位電極基板Ed2と、第2固定電極基板Ef2と、を含んでいてもよい。第2容量素子C2Lの第2固定電極基板Ef2は、図4等に示す第1台座26を介して固定体25に支持されていてもよい。第2容量素子C2Rの第2固定電極基板Ef2は、図4等に示す第2台座27を介して固定体25に支持されていてもよい。第2容量素子C2Lの第2変位電極基板Ed2は、第2変位体60Lの第2変位部64に設けられていてもよい。第2容量素子C2Rの変位電極基板Ed2は、第2変位体60Rの第2変位部64に設けられていてもよい。
【0225】
図18に示す第1起歪体30EにX軸方向正側に力Fxが作用した場合には、図8に示す第1起歪体30Aと同様に傾動構造体31が弾性変形する。このことにより、第1変位体50Lは、図8に示す第1変位体50と同じ方向に回動し、第1変位体50Lの第1変位部54は、Z軸方向負側に変位する。このため、第1容量素子C1Lの静電容量値が増大する。第1変位体50Rは、図8に示す第2変位体60と同じ方向に回動し、第1変位体50Rの第1変位部54は、Z軸方向正側に変位する。このため、第1容量素子C1Rの静電容量値が減少する。
【0226】
図19に示す第2起歪体30FにX軸方向正側に力Fxが作用した場合には、図8に示す第1起歪体30Aとは反対方向に傾動構造体31が弾性変形する。すなわち、第2容量素子C2Lの静電容量値が減少するとともに第2容量素子C2Rの静電容量値が増大する。
【0227】
図18に示す第1起歪体30EにY軸方向正側に力Fyが作用した場合には、図9に示す第1起歪体30Aと同様に弾性変形する。このため、第1容量素子C1Lの静電容量値が減少するとともに、第1容量素子C1Rの静電容量値が減少する。しかしながら、第1容量素子C1Lの静電容量値の減少量および第1容量素子C1Rの静電容量値の減少量は無視できる程度に小さい。
【0228】
図19に示す第2起歪体30FにY軸方向正側に力Fyが作用した場合には、図9に示す第1起歪体30Aとは反対方向に弾性変形する。このため、第2容量素子C2Lの静電容量値が増大するとともに、第2容量素子C2Rの静電容量値が増大する。しかしながら、第2容量素子C2Lの静電容量値の減少量および第2容量素子C2Rの静電容量値の減少量は無視できる程度に小さい。
【0229】
図18に示す第1起歪体30EにZ軸方向正側に力Fzが作用した場合には、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に第1起歪体30Eは弾性変形する。このことにより、第1変位体50Lは、図10Aに示す第1変位体50と同じ方向に回動し、第1変位体50Lの第1変位部54は、Z軸方向正側に変位する。このため、第1容量素子C1Lの静電容量値が減少する。第1変位体50Rは、図10Aに示す第2変位体60とは反対方向に回動し、第1変位体50Rの第1変位部54は、Z軸方向正側に変位する。このため、第1容量素子C1Rの静電容量値が減少する。
【0230】
図19に示す第2起歪体30FにZ軸方向正側に力Fzが作用した場合には、図10Aに示す第1起歪体30Aと同様に第2起歪体30Fは弾性変形する。このことにより、第2変位体60Lは、図10Aに示す第1変位体50とは反対方向に回動し、第2変位体60Lの第2変位部64は、Z軸方向負側に変位する。このため、第2容量素子C2Lの静電容量値が増大する。第2変位体60Rは、図10Aに示す第2変位体60と同じ方向に回動し、第2変位体60Rの第2変位部64は、Z軸方向負側に変位する。このため、第2容量素子C2Rの静電容量値が増大する。
【0231】
このように本実施の形態によれば、第1起歪体30Eは、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合にZ軸方向において一側に変位する第1変位部54を含んでいる。第2起歪体30Fは、受力体20がZ軸方向の力Fzを受けた場合にZ軸方向において他側変位する第2変位部64を含んでいる。このことにより、第1容量素子C1L、C1Rの静電容量値および第2容量素子C2L、C2Rの静電容量値のいずれか一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。この場合、第1容量素子C1L、C1Rの静電容量値の変化量と第2容量素子C2L、C2Rの静電容量値の変化量との差分によって、Z軸方向の力Fzの大きさを示す出力値を算出することができる。このため、力Fzの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の検出精度を向上させることができる。この結果、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0232】
また、本実施の形態によれば、第1起歪体30Eの傾動構造体31の第1傾動部35L、35Rは、第1接続部32を介して受力体20に接続され、第2起歪体30Fの第2傾動部37L、37Rは、第2接続部33を介して固定体25に接続されている。第1起歪体30Eの第1変位部54は、第1接続部32に接続された第1傾動部35L、35Rに接続されている。第2起歪体30Fの第2変位部64は、第2接続部33に接続された第2傾動部37L、37Rに接続されている。このことにより、Z軸方向の力Fzが作用した場合、第1起歪体30Eの第1変位体50L、50Rを傾斜させることができるとともに、第2起歪体30Fの第2変位体60L、60Rを傾斜させることができる。この場合、第1変位体50L、50Rの第1変位部54および第2変位体60L、60Rの第2変位部64のうちの一方を、Z軸方向正側に変位させることができるとともに、他方を、Z軸方向負側に変位させることができる。このため、第1容量素子C1L、C1Rの静電容量値と第2容量素子C2L、C2Rの静電容量値の一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。この結果、第1容量素子C1L、C1Rの静電容量値の変化量と第2容量素子C2L、C2Rの静電容量値の変化量との差分によって、力Fzの大きさを示す出力値を算出することができる。
【0233】
また、本実施の形態によれば、第1起歪体30Eは2つの第1変位部54を含み、第2起歪体30Fは2つの第2変位部64を含んでいる。2つの第1変位部54の変位はそれぞれ、対応する容量素子C1L、C1Rによって検出され、2つの第2変位部64の変位はそれぞれ、対応する容量素子C2L、C2Rによって検出される。このことにより、4つの容量素子C1L、C1R、C2L、C2Rによって力Fzを検出することができ、検出感度を高めることができるとともに検出精度を高めることができる。このため、力覚センサ10の信頼性を向上させることができる。
【0234】
また、本実施の形態によれば、第1起歪体30Eは、2つの第1変位部54を含み、第1変位体50Lの第1変位部54が、第1起歪体30Eの一方の第1傾動部35Lに接続され、第1変位体50Rの第1変位部54が、第1起歪体30Eの他方の第1傾動部35Rに接続されている。このことにより、2つの第1変位部54は、Z軸方向の力Fzが作用した場合、Z軸方向において同じ側に変位させることができる。2つの第1変位部54は、X軸方向の力Fxが作用した場合、Z軸方向において互いに反対側に変位させることができる。この場合、第1容量素子C1Lおよび第1容量素子C1Rのいずれか一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。このため、第1容量素子C1Lの静電容量値の変化量と第1容量素子C1Rの静電容量値の変化量との差分によって、X軸方向の力Fxの大きさを示す出力値を算出することができる。このため、力Fxの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の検出精度を向上させることができる。この結果、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0235】
また、本実施の形態によれば、第2起歪体30Fは、2つの第2変位部64を含み、第2変位体60Lの第2変位部64が、第2起歪体30Fの一方の第2傾動部37Lに接続され、第2変位体60Rの第2変位部64が、第2起歪体30Fの他方の第2傾動部37Rに接続されている。このことにより、2つの第2変位部64は、Z軸方向の力Fzが作用した場合、Z軸方向において同じ側に変位させることができる。2つの第2変位部64は、X軸方向の力Fxが作用した場合、Z軸方向において互いに反対側に変位させることができる。この場合、第2容量素子C2Lおよび第2容量素子C2Rのいずれか一方を増大させることができ、他方を減少させることができる。このため、第2容量素子C2Lの静電容量値の変化量と第2容量素子C2Rの静電容量値の変化量との差分によって、X軸方向の力Fxの大きさを示す出力値を算出することができる。このため、力Fxの出力値が、ノイズまたは周囲温度等の外乱による影響を受けることを防止でき、力覚センサ10の検出精度を向上させることができる。この結果、力覚センサ10の高性能化を図ることができる。
【0236】
また、本実施の形態によれば、第1起歪体30Eが受力体20の中心Oに対してY軸方向正側に配置され、第2起歪体30Fが受力体20の中心Oに対してY軸方向負側に配置されている。このことにより、Z軸方向で見たときに、受力体20の中心Oに対してY軸方向の両側に配置することができる。このため、力またはモーメントの検出精度を向上させることができる。
【0237】
(変形例6)
なお、上述した本実施の形態においては、第1起歪体30Eは、2つの第1変位体50L、50Rを含んでいる例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1起歪体30Eが含む変位体の個数は1つでもよい。より具体的には、第1起歪体30Eは、第1変位体50Lおよび第1変位体50Rのうちの一方を含み、他方を含んでいなくてもよい。この場合においても、第1容量素子の静電容量値の変化量と第2容量素子の静電容量値の変化量との差分によって、Z軸方向の力Fzの大きさを示す出力値を算出することができる。同様に、第2起歪体30Fが含む第2変位部64の個数も1つでもよい。
【0238】
(変形例7)
また、上述した本実施の形態においては、受力体20と固定体25が、2つの起歪体30E、30Fで接続されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、受力体20と固定体25は、4つの起歪体で接続されていてもよい。例えば、2つの第1起歪体30Eと、2つの第2起歪体30Fとによって、受力体20と固定体25を接続してもよい。この場合、図3に示す力覚センサ10と同様にして、2つの第1起歪体30Eと2つの第2起歪体30Fを環状配置してもよい。このことにより、力の6軸成分を検出することができる。
【0239】
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【要約】      (修正有)
【課題】高性能化を図ることができる力覚センサを提供する。
【解決手段】第1センサ体と、第2センサ体と、第1センサ体と第2センサ体とを接続する起歪体と、検出素子と、検出回路と、を備えている。起歪体は、第1変位部と、第2変位部と、傾動構造体と、第1接続部と、第2接続部と、を含んでいる。傾動構造体は、第1接続部に対して第2方向の両側に配置された一対の第1傾動部と、第2接続部に対して第2方向の両側に配置された一対の第2傾動部と、を含んでいる。第1変位部は、第1接続部に対して第2方向における一側に配置された第1傾動部に接続され、第2変位部は、第2接続部に対して第2方向における他側に配置された第2傾動部に接続されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
図19