(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】固体熱化学燃料装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
F28D20/00 G
(21)【出願番号】P 2023510376
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 US2021044651
(87)【国際公開番号】W WO2022035672
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502243376
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クラウスナー,ジェームス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ペトラッシュ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ランディール,ケルビン
(72)【発明者】
【氏名】ラーマティアン,ニーマ
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/146361(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/048845(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0298822(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0253039(US,A1)
【文献】特開2017-003154(JP,A)
【文献】特開2014-133918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D20/00
C22B1/00-61/00
F24S10/00-90/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを使用する方法であって、前記方法は、以下:
(a)入口から復熱領域へ固体のワークピースを供給する工程と、
(b)前記復熱領域から還元領域へ前記ワークピースを連続供給する工程と、
(c)前記還元領域から急冷領域へ前記ワークピースを供給する工程と、
(d)前記急冷領域から回収エリアへ前記ワークピースを供給する工程と、
(e)前記急冷領域内にガスを通流させる工程と、
(f)工程(c)の間、前記ガスを前記急冷領域から前記還元領域へ連続的に通流させる工程と、
(g)工程(b)の間、前記還元領域から前記復熱領域へ前記ガスを通流させる工程と、
(h)前記ワークピースおよび前記ガスが前記復熱領域にある場合、前記ワークピースを前記ガスにより予熱し、前記ガスを前記ワークピースにより冷却する工程と、
(i)前記ワークピースおよび前記ガスが前記還元領域にある間、前記ワークピースを前記エネルギーにより加熱し、前記ワークピースから前記ガスへ酸素を移動させる工程と、
(j)前記ワークピースと前記ガスが前記急冷領域にある間、前記ワークピースを前記ガスにより冷却し、前記ガスを前記ワークピースにより予熱する工程と、
(k)少なくとも工程(i)によって前記ワークピースを低酸素燃料へ変換する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
さらに、
(a)第2入口から第2復熱領域へ前記低酸素燃料を供給する工程と、
(b)前記低酸素燃料を、前記
第2復熱領域から酸化領域に連続的に供給する工程であって、これにより、前記低酸素燃料は酸素を受け取り、前記還元領域より前と実質的に同じ量の酸素を含む前記ワークピースに再変換させる工程と、
(c)前記酸化領域から第2急冷領域へ前記ワークピースを供給する工程と、
(d)前記第2急冷領域から第2回収エリアへ前記ワークピースを供給する工程と、
(e)第2ガスまたは蒸気を前記第2急冷領域内に通流させる工程と、
(f)前記酸化領域から前記第2急冷領域へ前記ワークピースを供給する間、前記第2ガスまたは前記蒸気を、前記第2急冷領域から前記酸化領域へと連続的に通流させる工程と、
(g)前記低酸素燃料を第2復熱領域から前記酸化領域に供給する工程の間、前記第2ガスまたは前記蒸気を、前記酸化領域から前記第2復熱領域に通流させる工程と、
(h)前記低酸素燃料と、前記第2ガスまたは前記蒸気と、が前記第2復熱領域にある場合、前記低酸素燃料を前記第2ガスまたは前記蒸気により予熱し、前記第2ガスまたは前記蒸気を前記低酸素燃料により冷却する工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に純粋な水素を生成するため、前記酸化領域および前記第2復熱領域のうちの少なくとも1つの中で前記蒸気を分解する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ワークピースおよび前記ガスが前記還元領域内で1,300℃を超えて加熱された後に、前記復熱領域から
前記ガスを実質的に室温で排気する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記急冷領域からの前記低酸素燃料を、前記回収エリア内において実質的に室温で受け取る工程をさらに含み、前記ガスが前記複数の領域間を上方に移動する間に、前記ワークピースおよび前記低酸素燃料は前記領域間を下方に移動する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記低酸素燃料を、そのエネルギー含有量を失うことなく、実質的に室温で、2ヶ月を超えて貯蔵する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
(a)前記回収エリア
に接続された定流ガス吸気口へ、実質的に定流であるガスを供給する工程と、
(b)
前記急冷領域の出口に接続された脈流吸気口に脈流の前記ガスを供給する工程と、
(c)前記ガスの前記脈流を、前記複数の領域のうちの少なくとも1つを通って下方に移動する前記低酸素燃料の前記流れを制御するため
に作用させる工程と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記実質的に定流である前記ガスは、前記低酸素燃料が移動する供給管が有する、メッシュで覆われた開口部から供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非機械的な流量制御バルブシステムを用いて前記ワークピースの流れを制御する工程をさらに含み、
前記流量制御バルブシステムは、以下:
(a)前記回収エリア内の前記低酸素燃料の重量または量を検知し、
(b)前記複数の領域の少なくとも1つから移動する前記低酸素燃料の流量を取得し、
(c)取得した前記低酸素燃料の前記流量に少なくとも部分的に基づいた脈流ガスの、空気脈流特性を自動的に制御するように構成される
、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピースはマグネシウムマンガン酸化物であり、前記ガスは、前記ガスが前記還元領域に入る前の低酸素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ワークピースはマグネシウム鉄酸化物であり、前記ガスは、前記ガスが前記還元領域に入る前の低酸素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギーは、前記還元領域内の炉に入る、集光太陽エネルギーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記還元領域における封止炉の内部の加熱エレメントに、
再生可能エネルギーを利用する再生可能発電機から
前記エネルギーを送る工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エネルギーを使用する方法であって、前記方法は、以下:
(a)ホッパーから反応器の上部熱交換エリアに粒子を下向きに供給する工程であって、前記
粒子は、マグネシウムマンガン酸化物、マグネシウム鉄酸化物、またはマグネシウムフェライトのうち、少なくともいずれか1つである工程と、
(b)前記上部熱交換エリアから炉へ、前記粒子を下方に供給する工程と、
(c)前記炉から下部熱交換エリアへ、前記粒子を下方に供給する工程と、
(d)前記下部熱交換エリアへガスを通流させる工程であって、前記ガスは、前記下部熱交換エリアにあるとき、低酸素である工程と、
(e)前記下部熱交換エリアから前記炉へ前記ガスを上向きに流す工程と、
(f)前記炉から前記上部熱交換エリアへ前記ガスを上向きに流す工程と、
(g)前記ガスが前記上部熱交換エリア内の前記粒子を通流するときに、前記ガスによって前記粒子を予熱する工程と、
(h)前記ガスが前記炉内の前記粒子を通流するときに前記粒子から前記ガスに酸素を移動させる工程と、
(i)前記ガスが前記下部熱交換エリア内の前記粒子を通流するときに、前記ガスによって前記粒子を冷却する工程と、を含む方法。
【請求項15】
固体燃料を製造するための装置であって、前記装置は、以下:
(a)ディスチャージされた固体燃料を貯蔵するように構成されたホッパーと、
(b)反応器チャンバとアパーチャとを備える還元反応器であって、前記アパーチャはエネルギーを受け取るように構成されている還元反応器と、
(c)前記ホッパーに接続された導入口と、復熱領域と、還元領域と、急冷領域と、排出口とを有する反応器管であって、前記還元領域は前記反応器チャンバを通貫している、反応器管と、
(d)前記反応器管の前記排出口に接続された回収タンクであって、前記回収タンクは、チャージされた固体燃料を回収するように構成されている回収タンクと、
(e)前記反応器管の前記排出口に近接して前記反応器管と流体的に接続されたガス吸気口であって、前記ガス吸気口は、低酸素ガスを前記反応器管に送達するように構成され、
(f)前記反応器管の前記導入口に近接して前記反応器管と流体的に接続されたガス排気口であって、前記ガス排気口は、前記反応器管から高酸素ガスを排出するように構成されているガス排気口と、を備え、
(i)前記ディスチャージされた固体燃料は、前記導入口から前記排出口まで前記反応器管を下って供給されるように構成され、
(ii)前記低酸素ガスは、前記反応器管を流れるように構成され、
(iii)前記ディスチャージされた固体燃料は、前記還元領域において高吸熱性還元反応を受けるように構成され、前記ディスチャージされた固体燃料中の酸素は、前記ディスチャージされた固体燃料から除去され、前記低酸素ガス中に混合され、前記高酸素ガスおよび前記チャージされた固体燃料を形成する、装置。
【請求項16】
さらに、
(a)実質的に定流の前記ガスを、
前記回収タンクに接続された定流ガス吸気口に流入させ、
(b)脈流の前記ガスを、
前記反応器管の前記排出口に流入させ、
(c)前記脈流の前記ガスを、前記領域のうちの少なくとも1つを通って下方に移動する前記固体燃料の流れを制御するため
に作用させる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記実質的に定流である前記ガスは、前記固体燃料が移動する前記反応器管が有する、メッシュで覆われた開口部から供給される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
反応器をさらに含み、前記反応器は、以下:
(a)前記チャージされた燃料が供給される、反応器復熱領域と、
(b)前記チャージされた燃料が、前記反応器復熱領域から連続的に供給される反応器酸化領域であって、前記反応器酸化領域において、前記チャージされた燃料は、反応器ガスまたは蒸気が前記反応器酸化領域内の前記燃料を通流するときに、酸素によってディスチャージされる、反応器酸化領域と、
(c)前記ディスチャージされた燃料が前記反応器酸化領域から供給される反応器急冷領域と、含む、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記反応器復熱領域に接続された、酸素排気口と、水素排気口とをさらに備え、
前記蒸気は、前記反応器酸化領域内で分離され、実質的に純粋な水素および酸素を生成し、
前記生成された水素は、前記水素が前記チャージされた燃料を流通するときに前記反応器復熱領域内で冷却され、前記水素排気口を介して前記反応器から排出され、
前記蒸気から分離された前記酸素は、前記酸素が前記チャージされた燃料を流通するときに前記反応器復熱領域内で冷却され、前記酸素排気口を介して前記反応器から排出される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記固体燃料は、マグネシウムマンガン酸化物またはマグネシウム鉄酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記エネルギーは、前記反応器に入る集光太陽エネルギーである、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
前記反応器の内部の加熱エレメントに
前記エネルギーを送る再生可能発電機をさらに備え
、前記再生可能発電機は、再生可能エネルギーを利用するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は2021年2月1日に出願された米国仮特許出願第63/144120号、および2020年8月11日に出願された米国仮特許出願第63/064256号の優先権を主張し、その両方は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔背景と要約〕
本開示は一般に、固体熱化学燃料および固体熱化学燃料を生成するための装置に関する。
【0003】
長期間の蓄熱は、全ての高温システムに固有の、熱損失に起因する重大な課題である。長期貯蔵の実行可能な方法は、熱化学反応を使用して、集光した太陽エネルギーを、室温で貯蔵することができる燃料に変換することである。かなり以前からの試みとして、水およびCO2を分解して、合成ガスを生成する太陽熱化学が考案されてきた。著しい進歩がなされているが、欠点は、水およびCO2の分解に関して、太陽エネルギーから燃料への変換効率が低いままであることである(<10%)。さらに、高い稼働温度域での材料安定性および互換性の問題によって、従来の高温エネルギー技術は最終的に性能目標を下回った。
【0004】
Wokon et al.,「Investigations on Thermochemical Energy Storage Based on Technical Grade Manganese-Iron Oxide In A Lab-Scale Packed Bed Reactor,」Solar Energy 153(2017)200-214による刊行物は、集光型太陽熱発電炉における粒状マンガン鉄酸化物の充填床または固定床を使用する実験を論じている。材料中に熱エネルギーを貯蔵するために、可逆的な還元-酸化(レドックス/redox)反応が用いられる。しかしながら、Wokonの装置は、他にも理由はあるものの、開示される反応器管材料に起因するその最高炉温度に制限を受ける。Wokonの装置において使用されるマンガン鉄酸化物は、最適なチャージおよびエネルギー貯蔵容量にあまり適していない。このシステムは追加水冷器を必要とする排出ガスの高い温度に悩まされ、それによってエネルギーを消耗し、複雑さを増加させる。さらに、Wokonのシステムは、定常条件ではなく、バッチモードで操作される。このバッチモードは、エネルギー効率が悪く、商業的に実用的なスループットを扱うことができない。さらに、Wokonの材料は、その固定され、静止した床の配置に起因して、望ましくないレドックス層化を示す。
【0005】
本願発明によれば、固体熱化学燃料が提供される。別の態様において、製造プラントは、固体熱化学燃料をチャージするために、集光した太陽光線を捕捉するように構成された還元反応器を含むことができる。さらなる態様は、風力タービン、水力タービン、太陽光発電パネル、地熱などの再生可能発電によって生成された余分な電気エネルギーを使用して、固体熱化学燃料をチャージ(charge:充電)および/またはディスチャージ(discharge:放電)するように構成された還元反応器を含む製造プラントを使用する。記載された固体熱化学燃料、製造プラント、およびプロセスは、他の従来の燃料、装置、およびプロセスよりも有利である。反応性金属酸化物を使用して水とCO2を分解する方法は非効率であり、実用化から数年間経過している可能性があるため、この方法に代わり、反応性金属酸化物そのものを固体燃料として使用する。熱力学的モデルにおいては、太陽光から燃料への変換効率が54%と高く、エネルギー貯蔵費用が5[ドル/kWhthermal]未満である可能性があることを示している。本開示の固体燃料は、ソーラーフィールドおよび光学をパワーブロックから切り離す。従来の集光型太陽熱発電(CSP、Concentrated Storage Power)の熱エネルギー貯蔵に代わる新規の固体燃料は、CSPプラントの制限された設置面積を超えて、CSPの限界および関連性を拡大し、CSPおよび再生可能エネルギー貯蔵産業に著しい発展を提供することができる。本開示の固体燃料、製造プラント、およびプロセスのさらなる利点には、(1)短期間または長期間の貯蔵に対し低コストなゼロエミッション燃料、(2)使用されるまで周辺温度にて低コストの貯蔵庫内に貯蔵することができる固体燃料、(3)妥当なコストの長期間の太陽光エネルギー貯蔵、および(4)パワーブロックをソーラーフィールドから切り離すことが含まれる。
【0006】
さらに、本開示によれば、再利用可能なワークピースまたは粒子に、エネルギーをチャージおよび/またはディスチャージする方法は、対向流するワークピースおよび気体が互いに熱交換し、ガスおよびワークピースを、ほぼ周囲温度で排出する太陽光炉を含む。本開示における装置の別の態様は、空気脈流を使用する燃料流量制御バルブを含む。本開示における方法および装置のさらなる態様は、低酸素固体燃料から熱エネルギーを得る酸化反応器において、蒸気から水素を分離することを含む。マグネシウムマンガン酸化物、またはマグネシウム鉄酸化物などの低酸素で再利用可能な燃料も、本装置のさらなる態様において提供される。
【0007】
本開示における方法、装置、および燃料は、従来のシステムよりも有利である。例えば、本開示の燃料は、燃料のエネルギー貯蔵ポテンシャルを実質的に失うことなく、室温域において、数か月の間、場合によっては外気中で有利に貯蔵することができる。これにより、航空機にアクセス可能なダンプ、鉄道車両および船舶など、低コストの海上輸送コンテナおよび車両における長距離輸送に非常に適している。本開示における燃料もまた生成され、一般的に炭素を排出せず非常に効率的な方法において、エネルギーは燃料から抽出される。
【0008】
さらに、本開示に係る装置が排出するワークピースおよびガスの室温の性質は、より効率的なエネルギーの使用、排出材料のより容易な取り扱い、および低コストの処理装置を可能にする。別の利点は、予熱または復熱領域、還元またはエネルギー抽出中間領域、および急冷または冷却領域含む同一または類似の装置において、熱交換ガスと対向して流れる燃料を、チャージおよびディスチャージできることである。本開示における空気脈流バルブは、より耐久性のある空気バルブであり、より容易かつ迅速に制御され、自動化された閉ループ方式で調整される。空気脈流バルブは、ワークピースに対するバルブの摩擦を生じさせず、それによってワークピースの摩耗または望ましくないワークピースの特性変化を抑止するからである。本開示のシステム、方法、および装置のさらなる利点および特徴は、以下の説明および特許請求の範囲ならびに添付の図面から明らかになるのであろう。
【0009】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示に係る、固体燃料をチャージするために用いられるプラントの断面図である。
【0010】
図2は、本開示に係る、略球形のペレット形態の固体燃料の図である。
【0011】
図3は、太陽光から燃料への変換効率のグラフである。
【0012】
図4は、0.01atmのP
O2(還元)及び0.91atmのP
O2(酸化)の環境下で、1000~1500℃の間で実行された、本開示に係る固体燃料の熱重量分析(thermogravimetric analysis:TGA)グラフである。
【0013】
図5は、本開示の固体燃料の、推定エネルギー固有貯蔵コストおよび平準化貯蔵コストのグラフである。
【0014】
図6は、太陽光反射器と、その中に還元反応器および任意選択的に分割反応器があるソーラータワーとを含む、太陽光集光装置におけるプラントを示す概略図である。
【0015】
図7は、本開示の還元反応器のいずれかに使用する、本開示に係る固体燃料の製造工程を示す一連の顕微鏡写真である。
【0016】
図8は、還元反応器および酸化反応器を含む第2の実施形態のプラントを示す概略図である。
【0017】
図9は、第2の実施形態のプラントのためのプロセスフロー図である。
【0018】
図10は、本開示に係る還元反応器のいずれかのための、任意の固体燃料流量制御システムを示す概略図である。
【0019】
【0020】
図12は、
図10および
図11における制御システムを使用するためのソフトウェアフローチャートである。
【0021】
図13は、第3の実施形態の還元反応器を示す概略図である。
【0022】
図14および
図15は、第2の実施形態のプラントについてのO
2放出量を示すグラフである。
【0023】
図16および
図17は、第2の実施形態のプラントについてのH
2放出量を示すグラフである。
【0024】
図18は、第2の実施形態のプラントについて、20サイクルにわたる、時間に対するTGA変換および温度を示すグラフである。
【0025】
図19は、再生可能発電機によって生成された余分な電気エネルギーを使用するように構成された還元反応器および/または酸化反応器を含む第4の実施形態のプラントを示す概略図である。
【0026】
〔詳細な説明〕
製造プラント100の実施形態、および当該プラント100によって生産されるゼロエミッション固体燃料102の形態での、高エネルギー密度の集光型太陽熱化学蓄積の解決策が、
図1および2に示される。固体燃料(太陽光燃料またはソーフュエル(SoFuel))102は、長期間貯蔵することができ、パワーブロック(例えば発電所)から距離を置いて生成することができる、カーボンフリー燃料を提供する。固体燃料102の特徴は、通常の使用形態において固体であることである。固体燃料102は、例えば発電用のパワーブロックに1000℃の熱量を供給することができる。固体燃料102は、好ましくはマグネシウム対マンガンのモル比が1:1の高反応性マグネシウムマンガン酸化物(Mg-Mn-O)である。いくつかの実施形態において、固体燃料102は、2020年7月16日にミシガン州立大学理事会に公開され、本明細書に参照として組み込まれる「System and Operation for Thermochemical Renewable Energy Storage」と題された国際特許出願公開2020/146361号に記載されている反応性材料でもよい。固体燃料102は1~100MWの生産に対応する固有の拡張可能性のために、潜在的に変換価値を有する。
【0027】
図2に示されるように、固体燃料102は、粒子またはペレット化された形態で生成されてよい。いくつかの実施形態において、固体燃料ペレット102は、約600μm~約5000μmのサイズ範囲であってよい。いくつかの実施形態において、固体燃料ペレット102は、3000μm(3mm)の直径を有する略球形である。いくつかの実施形態において、固体燃料ペレット102は、約2.5mm~約3.5mmの範囲の直径および約1.5mm~約2.1mmの範囲の長さを有する円筒形であってもよい。
【0028】
再び
図1を参照する。固体燃料102の生成は、ソーラーフィールドからの集光太陽光線を捕捉する中空円筒形化学反応器内で行われる。高反応性マグネシウムマンガン酸化物(Mg-Mn-O)固体燃料102は、中空円筒形化学反応器を通流し、温度が1350℃を超えると熱還元される。固体燃料102を含む、熱還元されたMg-Mn-O多孔質ペレットまたは粒子は、冷却され、パワーブロックによって使用されるまで低コストの貯蔵庫内に貯蔵され得る。固体燃料102は、パワーブロックにおいて酸化され得、ここで、固体燃料102は、パワーブロックの作動流体に1000℃の熱を供給する。次いで、固体燃料102は集光型ソーラーフィールドに戻され、ここで、固体燃料102は、再利用のためプラント100において再生される。固体燃料102の冷却によって失われた顕熱は、プラント100の粒子下降反応器構造において対向流ガスを使用して回収される。
【0029】
固体燃料製造プラント100は、還元反応器104および反応器管106を含む。還元反応器104は、反応器チャンバ108と、集光太陽エネルギーが反応器チャンバ108内に通過するように構成されるアパーチャ110とを含む。還元反応器104は、アパーチャ110を通してソーラーフィールドからの集光太陽光線を捕捉する。捕捉された太陽光線は、反応器チャンバ108内に吸収され、反応器チャンバ108を加熱する。還元反応器104は、太陽光炉として作用する。アパーチャ110は反応器チャンバ108内への十分なソーラーパワーフラックスを可能にするサイズとされる。しかしアパーチャ110のサイズに対する反応器チャンバ108のサイズは、アパーチャ110を通って反応器チャンバ108からから出る著しい再放射を防止する大きさでよい。いくつかの実施形態において、アパーチャ110は、反応器チャンバ108の効率を高めるために、第2集光器を備えてもよい。いくつかの実施形態において、還元反応器104の壁は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ムライト、またはアルミノシリケート断熱材などの多孔質高温セラミック断熱材を含むか、またはこれらから形成され得る。
【0030】
反応器管106は、導入口112および排出口114を含む。反応器管106は、導入口112が排出口114の上方に位置する状態で垂直に配向される。いくつかの実施形態において、反応器管106は、ある角度で配向されてもよい。反応器管106の一部は、反応器チャンバ108を通って延在し、反応器チャンバ108内に位置している。反応器管106の内部は、反応器チャンバ108に対して開口していない。反応器管106は3つの領域、すなわち、復熱領域116、還元領域118、および急冷領域120を含む。復熱領域116は反応器チャンバ108の上方に配置され、還元領域118は反応器チャンバ108内に配置され、急冷領域120は反応器チャンバ108の下方に配置される。固体燃料ペレット102は、反応器管106を通って導入口112から排出口114まで下方に流れるように構成される。いくつかの実施形態において、反応器管106は、酸化アルミニウム(アルミナ)の内側スリーブを有する炭化ケイ素の外側スリーブで形成されてもよい。他の実施形態では、反応器管106は酸化アルミニウムの内部コーティングを有する炭化ケイ素で形成されてもよい。いくつかの実施形態において、反応器管106は外側表面上にブラックコーティングを有する酸化アルミナで形成されてもよい。単一の反応器管106が
図1に示されているが、プラント100は反応器チャンバ108内において複数の反応器管106を使用することによってスケーリングすることができる。
【0031】
燃料保管装置、例えば、ホッパー122は、反応器管106の導入口112に接続されてもよい。再生(熱還元)を必要とする、ある量の使用済み固体燃料ペレット102(ディスチャージまたは酸化された固体燃料ペレット102としても知られる)を、処理のためにホッパー122に入れてもよい。
図1に示すように、いくつかの実施例において、蓋124がホッパー122を閉じるために設けられている。回収装置、例えば、回収タンク126は、反応器管106の排出口114に連結されてよい。回収タンク126は処理後に、チャージされた固体燃料ペレット102(還元された固体燃料ペレット102としても知られる)を貯蔵するように構成される。
【0032】
断熱材128は、反応器管106、還元反応器104、および/またはホッパー122を取り囲むように配置されてよい。いくつかの実施形態において、断熱材128はまた、回収タンク126を取り囲むように配置されてよい。断熱材128は、石綿断熱材、シリカ断熱材、および/またはアルミナ断熱材を含むがこれらに限定されない、任意の適切な断熱材であってもよい。
【0033】
固体燃料製造プラント100は、ガス吸気口130およびガス排気口132をさらに含む。ガス吸気口130は、反応器管106の排出口114に近接して反応器管106と流体的に接続される。
図1に示すように、ガス吸気口130は、回収タンク126に位置してもよい。ガス排気口132は、反応器管106の導入口112に近接して反応器管106と流体的に接続される。ガス排気口132は、ホッパー122に位置してもよい。ガス吸気口130は、低酸素ガスを反応器管106に送達するように構成される。低酸素ガスは、約0.01atm~約0.05atmの酸素分圧(P
O2)を有する。いくつかの実施形態において、低酸素ガスは、低酸素空気、または窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスでよい。不活性ガスを使用することは有利になりうる一方、一定量の酸素が許容されてよい。ガス排気口132は、反応器管106から高酸素ガスを排出するように構成される。前記ガスは好ましくは低温(例えば、周囲温度またはその付近)でプラント100に出入りする。
【0034】
固体燃料製造プラント100は、反応器管106を通る固体燃料102の流れを制御するように構成された流量制御機構134をさらに含む。いくつかの実施形態において、流量制御機構134はバタフライバルブ、ナイフバルブ、または多孔質ナイフバルブを含んでよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、流量制御機構134は、反応器管106を通る固体燃料102の流れを減速させる脈流空気ジェットであってもよい。他の実施形態では、流量制御機構134は、粒子スクリューフィーダであってもよい。
【0035】
運転において、使用済み(酸化された)固体燃料102は、プラント100の上部のホッパー122から下方に供給される(矢印Aで示す)。一方、低温低酸素ガスは、ガス吸気口130を通ってプラント100に対向流で供給され(矢印Bで示す)、プラント100の底部から上方に流れる(矢印Cで示す)。固体燃料ペレット102は、ホッパー122から出て、導入口112を通って反応器管106に入る。反応器管106の復熱領域116において、固体燃料ペレット102は、還元領域118から上方に流れる高温の高酸素ガスによって予熱される。低酸素ガスからの熱は、下降する固体燃料ペレット102に伝達され、直接接触によって固体燃料ペレット102をさらに加熱する。固体燃料ペレット102の下向きの流れの速度は、還元領域118を通る長い滞留時間(約15~20分)を維持するために、小さい(約0.05cm/s)。固体燃料ペレット102が還元領域118に入ったとき、固体燃料ペレット102は、アパーチャ110を通って反応器チャンバ108に入る集光太陽エネルギー(矢印Dで示す)によって、迅速な動力学のための1350℃を超える温度、好ましくは1500℃まで加熱される。固体燃料ペレット102は、還元領域118を通って下方に流れ続けながら、上方に流れる低酸素ガスによって高度に吸熱還元される。還元領域118内の低いO2分圧は、上向きに流れる低酸素ガスによって維持される。低いO2分圧は、その熱力学的限界に向けて反応の更なる拡張を可能にすることによって、エネルギー貯蔵能力の増大を可能にする。還元領域118における高吸熱還元反応の間、使用済み(酸化された)固体燃料102中の酸素は固体から解離され、低酸素ガスに混合され、高酸素ガスおよびチャージされた(還元された)固体燃料102を形成する。その熱化学反応は、以下の式で表される。
【0036】
【0037】
対向流型粒子下降反応器構造内での低酸素ガスの使用は、固体燃料102のエネルギー貯蔵能力を1360MJm-3(溶融塩のエネルギー貯蔵能力の2倍)に高める。
【0038】
還元領域118を通過した後、固体燃料ペレット102は急冷領域120内に流れ落ち、急冷領域120を通過する。急冷領域120内では、高温固体燃料ペレット102は上向きに流れる低酸素ガスによって急冷(冷却)され、一方、低酸素ガスは加熱される。固体燃料ペレット102は、反応器管106の排出口114を通って、周囲温度またはその付近の温度で回収タンク126内に排出される。次いで、急冷領域120を出る低酸素ガスは、還元領域118を通過し、熱還元からの酸素を取り込む。ここで高酸素ガスは、1350℃を超える温度で還元領域118を出る。高温ガスは、復熱領域116を通流して、熱還元の前に固体燃料ペレット102を予熱し、ガスは冷却される。その後、低温高酸素ガスは、ガス排気口132を通ってプラントから排出される(矢印Eで示す)。
【0039】
プラント100に流入する低酸素ガスは、少なくとも3つの機能を果たす。第1に、急冷領域120を通流する還元された固体燃料102を急冷し、固体燃料102の再酸化を防止する。第2に、還元領域118を通過する固体燃料102から酸素を除去する。第3に、高温ガスが復熱領域116を通過する場合、ガスは加熱されて上方に移動し、下降する固体燃料102を予熱する。
【0040】
固体燃料102の観点から言い換えると、固体燃料102は周囲温度またはその付近で反応器管106に入り、還元領域118から反応器管106を通って上方に流れる高温高酸素ガスによって、復熱領域116内で予熱される。固体燃料102は、反応器チャンバ108に入る集光太陽エネルギーによって還元領域118内でさらに加熱される。固体燃料102は、還元領域118内で、上向きに流れる低酸素ガスとの化学反応を通して、低酸素ガスに向けて酸素を失い、チャージされた(還元された)固体燃料102になる。次いで、チャージされた固体燃料は低酸素ガスに熱を移動させることによって急冷領域120内で冷却され、最終的に、周囲温度またはその付近で回収タンク126内に排出される。
【0041】
さらにガスの観点から、プロセス中、ガスは、周囲温度またはその付近の温度で、低酸素濃度でガス吸気口130を介して回収タンク126に入る。ガスは、反応器管106内を下方に流れる、加熱された固体燃料ペレット102によって、急冷領域120内で予熱される。ガスは反応器チャンバ108に入る集光太陽エネルギーによって、還元領域118内でさらに加熱される。熱化学的還元反応を介して、固体燃料102は酸素を放出する。酸素がガスに混合されて高酸素ガスになる。高酸素ガスは、固体燃料ペレット102に熱を伝達することによって、復熱領域116内で冷却され、次いで、周囲温度またはその付近でガス排気口132から排出される。いくつかの実施形態において、高酸素ガスは、ガス排気口132を出た後、酸素除去プロセスに供され、次いで、低酸素ガスとしてガス吸気口130を通してプラント100にフィードバックされ得る。
【0042】
図3は、固体燃料102の酸化温度に対する太陽光から燃料への効率のグラフである。
図3は、非効率であり、実用化から数年間経過している可能性がある、反応性金属酸化物を使用せずに水とCO
2を分離する方法ではなく、反応性金属酸化物それ自体が固体燃料である場合を示している。
図3に示されているモデルは、固体燃料102を用いた太陽光から燃料への変換率が54%と高く、エネルギー貯蔵コストは、5[ドル/kWh
thermal]に満たないことを示している。1000℃において、固体燃料102の総エネルギー効率は約0.54であり、エクセルギー効率は約0.50である。固体燃料102は、パワーブロックからのソーラーフィールド及び光学系のデカップリングを可能にする。技術開発の現状は、固体燃料102を3~5年以内に商業的に実用可能にすることができる。従来のCSP熱エネルギー貯蔵に代わる、この新規の”優れたバッテリー”は、CSPプラントの制限された設置面積を超えてCSPの到達範囲および関連性を拡大し、CSP産業に著しい発展を提供することができる。固体燃料102は固体燃料102のエネルギーの損失をほとんどまたは全く伴わずに、ソーラーフィールドから離れたパワーブロックまで長距離輸送することができる。
【0043】
固体燃料102は運転温度範囲において多くのサイクルにわたって安定したままであり、劣化することなく燃料源として何度も再利用することができる。固体燃料102は、その耐用年数が終わる前に何千回もサイクルさせることができると予想される。マグネシウムマンガン酸化物である固体燃料102は、測定されたエネルギー密度(反応のエンタルピーに基づく)が1360MJm-3と高い。以下の熱化学反応:
【0044】
【0045】
は、高温(>1000℃)の空気中で可逆的に起こる。異なるMn/Mgモル比を有するマグネシウムマンガン酸化物の反応安定性研究は、大気圧および減圧状態の空気において、1500℃~1000℃のサイクルで高い熱化学安定性を示す。これは、
図4に示すように、TGA中で1500℃~1000℃の間でサイクルさせたとき、Mn/Mg=1を用いて調製された試料の、安定した酸素吸収速度/放出速度から推測することができる。対向流型粒子下降反応器であるプラント100内での低酸素ガス、例えば低酸素空気(0.01atm<P
O2<0.05atm)の使用は、固体燃料102のエネルギー貯蔵能力を高め、熱回収および周囲温度貯蔵を可能にする。
【0046】
予備的な技術経済分析は、長期間の貯蔵のために固体燃料102の経済的実行可能性を調べた。固体燃料102の総材料コストは、原料、合成コスト、および合成のためのエネルギーコストを含む。総材料コストは、Mg/Mn=1:1の場合620ドル/トンである。総貯蔵コストは、材料、生産反応器、サブシステム、および保持容器のための資本コスト、ならびに反応器およびサブシステムのための運転および維持コストを含む。30年間の耐用年数は、すべての構成要素について、減価償却率3.1%であると仮定される。
【0047】
図5は、固体燃料102の長期貯蔵に関する、推定貯蔵コスト(CE、(有効な)エネルギー固有成分についての資本コスト)および平準化コスト(LC)を示す。
図5に示す結果は、太陽運行において、それぞれの日に、使用可能な太陽光が8時間あることを仮定している。さらに、プラント100は、100MWのパワーブロックが動作していないそれぞれの日に、動作していると仮定される(すなわち、年間3サイクルで90日間の貯蔵の場合、プラント100は365-90×3=95日間動作する)。反直感的に思えるが、
図5は季節サイクルの数が増加することにつれて、エネルギー貯蔵コストが増加することを示している。これは、太陽運行日数が減少するので、100MWの電力要件を満たすために、より大きなプラント100が必要とされるからである。考慮されるすべての場合において、エネルギー貯蔵費用は、5[ドル/kWh
thermal]未満である。これは、最先端の溶融塩貯蔵(26[ドル/kWh
thermal])およびGen3CSPシステムのエネルギー省の目標(15[ドル/kWh
thermal])の費用を大幅に下回っている。また、4つの季節サイクルでは、貯蔵の平準化された費用が0.05[ドル/kWh
thermal]未満であることも注目に値する。これらの予備的なコスト計算は、固体燃料102が、エネルギー貯蔵を、低コストかつ長期間/季節的に、実行可能な筋道に見込みがあることを示している。固体燃料102を使用するパワーブロックは、特定のマーケットにおいて、追加のクリーンエネルギー助成金およびエネルギー貯蔵助成金を受け取ることができる。パワーブロックは、固体燃料102の製造から切り離すことができるので、パワーブロックとプラント100を同時に運転させることが可能である。
【0048】
本明細書で説明されるシステム、装置、および方法は、重要な利点を提供することができる。例えば、プラント100は、固体燃料102を生成する連続流太陽光反応器である。固体燃料102の製造は、太陽熱エネルギーのための長期間の貯蔵オプションを提供する。
【0049】
加えて、容易な輸送が可能である固体燃料102が製造され、ソーラーフィールドおよびプラント100はパワーブロックから物理的に切り離すことができ、その切り離しは、多くの運転上およびコスト上の利点を有する。例えば、大きいギガワット規模プラントではなく、多くの小規模プラントを、必要に応じて開発および配給することができる。固体燃料102は、石炭プラントにおいて、石炭の投入代替物として使用することができる。したがって、石炭火力発電所を停止する代わりに、石炭の代わりに固体燃料102を使用することができる。固体燃料102の酸化は、炭素排出物を生成しない。
【0050】
さらに、対向流モードにおいてプラント100を通流する不活性ガスは、少なくとも3つの目的:(1)低酸素環境を提供し、熱還元中に放出される酸素を押し流すこと、(2)固体燃料102の再酸化を防止すること、(3)復熱効果を提供すること、を果たすため、反応器を出る落下固体燃料ペレット102からの熱が回収され、その熱が還元反応器104に入る低温固体燃料ペレット102に移動するこれは、還元反応器104への入口および出口が、太陽光炉において1500℃に曝露された還元反応器104の中間部分と比較して低温であるという点において、大きなエンジニアリング上の利点を有する。対向流配置は、固体燃料102に移動した熱の効率的な復熱を可能にする。すなわち、固体燃料102ならびに不活性ガスは、周囲温度に近い温度で反応器管106に入って出る。
【0051】
プラント100の備える簡潔さは、反応器管106の導入口112および排出口114の両方が周囲温度に近い事象にある。したがって、高温の固体およびガスの取り扱い、ならびに太陽光反応器において通常遭遇する高温封止の問題を回避するという事実にある。対向流の構成により、固体燃料102と、プラント100内に導入されたガスとの間で直接接触熱交換が起こる。プラント100は、反応器チャンバ108内にのみ高温領域がある。この設計は高温に耐えることができる材料(例えば、セラミック)が還元領域118内でのみ必要とされるので、反応器の運転を大幅に単純化し、資本コストを低減する。さらに、固体燃料102およびプラント100は、その拡張性と、Mg-Mn-Oの低いコストと、非毒性(取り扱いが安全)で低温において非反応性でありカーボンニュートラルかつ貯蔵および輸送が安価である固体燃料の形態においてエネルギーを貯蔵する能力と、によって、長期間の太陽エネルギー貯蔵を変化させることができる。
【0052】
図6を参照すると、ソーラーコレクタタワー150は、本明細書に開示されるプラントまたは炉の実施形態のいずれかを備える。タワー150は、太陽を追跡する可動ヘリオスタットミラー154の列が取り付けられたグランド152の上方に垂直に延在する。ミラー154は、太陽放射光線Dをプラント100内の炉104のアパーチャ110へ集中させるように、太陽放射光線Dを反射し、集光させる。ペレットを、タワーを昇ってホッパー122に搬送するために、エレベータまたは一連のコンベヤバケット156が使用されるが、連続的に供給するオーガなどを使用してもよい。
【0053】
図7は、ペレットの製造工程を示している。例えば、ペレットは、最初にディスクペレット化され(102a)、次いで球状化が起こり(102b)、反応器のホッパーに投入される前に熱処理される(102c)。固体燃料のこの合成は、好ましくは各々が約3mmの平均直径を有し、鋭い縁部を有さない、概ね球状に丸みを帯びたペレットを生成する。燃料ペレットまたは燃料粒子の、このサイズおよび形状は、ペレット間の空間に、対向流ガスが通過するのに有利であるとともに、目詰まりすることなく、反応器および後続のプラントを通して燃料ペレットが連続的に重力供給されるのに最適である。EirichによるディスクペレタイザーモデルEL1が適切であることが見出された。
【0054】
CSPの第2の実施形態は
図8および
図9に示されており、ワークピースまたは粒子としても知られている固体燃料ペレット202を処理するための、反応器プラント200および燃料使用プラント201を含む。この第2の実施形態の装置は、ペレット(好ましくは、多孔質マグネシウム鉄酸化物(Mg-Fe-O)であり、ドープの有無を問わずマグネシオフェライトとして知られている)の熱化学的還元と、蒸気を用いた還元燃料材料の酸化による水素の生成を引き起こす。還元反応器プラント200は入口ホッパー222と、出口回収タンクまたは出口回収エリア226と、集光太陽エネルギーDを受け取るように構成された開口部210を有する反応器チャンバまたは太陽光炉204とを含む。さらに、概ね垂直に細長い反応器管206はホッパー222と回収タンク226との間に延在し、それらを接続する。反応器管206は、復熱領域または予熱領域216、還元領域またはチャージ領域218、および急冷領域または冷却領域220を含み、反応器管の還元領域エリアは反応器チャンバを通過する。
【0055】
第1に、新品か、または再利用され、使用済みの酸化された固体ペレット202は、矢印Aで示されるように、入口ホッパー222から連続的に重力供給され、反応器管206を下がっていく。一方、低酸素ガスは矢印Cで示されるように反応器管の上方に流れる。例示的な低酸素ガスは、約96~99.99%の純粋窒素である。第2に、高温の高酸素ガスは、流入する酸化ペレットを熱還元の前に予熱するために、復熱領域216内のペレット202間を通流する。これは、最初のガス-ワークピース間における熱交換機として機能する。補助ガスまたは空気加熱器は、熱交換が自続する前の初期動作中に復熱領域内のガスおよび/またはペレットを加熱するために、任意選択的に使用されてもよい。
【0056】
第3に、ペレット202は還元領域218(温度は1350℃より高く維持される)において高吸熱性の還元反応を受ける。還元領域218において、ペレットおよびガスは、太陽光炉204内の反応器管206の中を互いに反対方向に流れる。この領域では、酸化されたペレット中の酸素は、分離され(
図9のボックス217を参照)、Cにおいて還元領域を通流する低酸素ガスに混合され、これにより、高酸素ガスおよび熱化学的に還元またはチャージされたペレット202が形成される。これらの、還元され、チャージされたペレットは、その後、その内部に潜在的に貯蔵された燃料エネルギーを有する、酸素欠乏(低酸素)粒子(ワークピース)として機能する。完全にチャージされたペレットにどれだけのエネルギーが貯蔵されるかを示すために使用され得る、例示的かつ非限定的な数値は、865[kJ/kg]+/-7.6%である。還元領域の太陽光炉内のペレットの例示的かつ非限定的な滞留時間は、1500℃で少なくとも5分、1400℃で少なくとも20分である。
【0057】
第4に、還元されてチャージされた燃料ペレット202が急冷領域220内で下方に移動すると、低酸素ペレットは低酸素ガスによって急冷または冷却され、一方、ペレットは熱交換により、そこを通過するガスを加熱する。還元されてチャージされたペレット202は、次いで、回収タンク226に一時的に貯蔵されるか、遠隔であればバッチ積載輸送車両、または近隣であれば自動的に供給される導管またはコンベヤによって、流路227に沿って後続の反応器プラント201に連続的に輸送される。
【0058】
有利には、反応器管の導入口および排出口、ならびに流入および流出する、燃料ペレットおよびガスの両方は全て、周囲温度または室温に近く(例えば、24.5℃の室温目標の+/-100℃内)、したがって、高温固体およびガスの取り扱いにおける従来の困難さ、ならびに従来の高温ハードウェアのシーリングの問題を回避する。ペレットおよびガスの対向流の構成により、反応器または炉空洞内にある唯一の高温領域において、固体とガスとの間で直接接触熱交換が起こる。プラントが定常状態に達した後、熱交換ハードウェアは不要である。本設計は、反応器運転を大幅に簡略化し、セラミック管材が還元領域内でのみ必要とされるので、資本コストを低減する。したがって、復熱領域216および急冷領域220において、例えばハステロイ×ニッケルベースの合金材料(Hastelloy X nickel based alloy material)、Haynes(登録商標)214(登録商標)(ニッケル-クロム-アルミニウム-鉄の合金材料)、MA957(フェライト合金材料)、およびインコネル(登録商標)(オーステナイト系ニッケル-クロムベースの合金材料)などの、より安価でより容易に封止された合金管を使用することができる。前述において、セラミック材料は、熱膨張差が封止金属-セラミック接合部に問題を生じさせる場合には、反応器管206がすべての領域を貫通した、一本の単一部品として使用してもよい。
【0059】
周囲温度で排出される燃料ペレットは、低コストのタンク、コンテナ、および車両貨物容器での取り扱い、貯蔵、および輸送、を簡略化する。周囲温度の燃料ペレットは、空気に開放されていてもよく、または場合により袋に密封されていてもよい。この低温の低酸素燃料は少なくとも2ヶ月間、より好ましくは少なくとも5ヶ月間貯蔵された場合に、燃料ペレット内のエネルギーポテンシャルの著しい劣化を伴うことなく(例えば、10%未満の損失)、長期間にわたって有利に貯蔵される。これにより、チャージされた燃料の、列車、船、またはトラックなどによる長距離かつ低速の輸送が可能になる。同様に、周囲温度の排出ガスは、システムのエネルギー損失を防止し、熱伝達効率を高め、ガスが環境に放出される場合に望ましくない熱汚染を低減する。
【0060】
燃料使用プラント201は、CSP反応器プラント200における燃料ペレットのチャージの後工程かつ下流にて、チャージされた低酸素燃料ペレット202から、貯蔵エネルギーまたは熱を抽出および放出するように作用する。燃料使用プラント201は、蒸気反応器262、凝縮器264、外部熱交換器ハードウェア266、および水源268が接続された酸化反応器260を含む。蒸気流路Eは、蒸気成分を接続するパイプに沿っている。水は、保持タンクまたは他の供給源268から外部熱交換器ハードウェア266に流れ、次いで蒸気反応器262に流れ、その後、蒸気は酸化反応器260の蒸気入口272に入り、酸化管274に上向きに流れる。
【0061】
本開示における酸化反応器260は本質的に、上述の熱化学的還元プロセスの逆の運転である。本開示における酸化反応器260では還元された粒子またはペレット202が概して垂直下方向に連続的に移動し、一方、蒸気は上方向に反対方向に移動する。蒸気は管274の底部から200℃以下で入り、熱交換する急冷領域280で酸化されたペレットから熱を回収する。蒸気は、その後、中間の酸化または反応領域282に達すると、前記領域を通過して流れる還元ペレットと反応して水素を生成する。酸化反応は発熱性であり、蒸気を800℃より高い所望の酸化温度まで加熱するために燃料ペレット202から必要とされるエネルギーを供給する。水素および未反応の蒸気混合物が酸化領域282から上方に排出されると、それは、熱交換回収領域284内で落下する還元ペレットを加熱する。
【0062】
酸化領域のみが高温であり、排出されるペレットおよび水素は概ね周囲温度であるので、太陽光還元反応器200と同様に、酸化反応器260内の高温のガスまたは固体を取り扱う必要はない。温度は酸化反応器260のいずれの領域においても1000℃を超えないと予想されるので、超合金を全ての領域に使用することができ、セラミックは必要とされない。さらに、断熱材286が管274を取り囲んでおり、回収タンク288は、後に輸送および還元反応器200で再利用するために、酸化反応器280の急冷領域280から排出された使用済みの酸化されたペレット202を受け取って一時的に貯蔵する。また、蒸気はペレットのサイズに起因して、ワークピースペレットを通って自由に流れることができること、ならびに反応器管内のペレットの空隙率が、細孔またはペレット間の約3~4mmの間隔によって全体の少なくとも36%であるために、上向きに移動する蒸気圧力降下は直径2インチの反応器管では2.5psi未満であり、ペレット流量は1グラム/秒であり、蒸気(またはガス)の対向流量は50リットル/分であることは、特筆すべきことである。
【0063】
管274の上部から出る分離水素および蒸気は、外部熱交換器ハードウェア266に、次いで凝縮器264に移送される。凝縮器には、流体冷却剤およびファンが使用される。これは、分離水素を機械的に(化学的にではなく)混合された蒸気から分離し、その後、水素を下流の処理プラントまたは貯蔵装置に送達し、水を水源268に戻すために機能する。蒸気-水変換から除去された残りの熱は、蒸気反応器にフィードバックされる。
【0064】
酸化反応器における逆反応は還元反応器におけるものと同様の方法であるが、蒸気および以前に還元された燃料材料を使用してより低い温度で実施される。蒸気は、復熱ガスおよび酸化剤として作用する。蒸気による還元物質の酸化は、水素の形成をもたらす。したがって、水素は上述のように、縮合を介して余分な蒸気から分離される。ペレット化された反応性材料を冷却することによって失われた熱は、対向流落下床反応器構成を使用して復熱される。
【0065】
しかしながら、従来の純粋な酸化鉄は、焼結の懸念のため、高温反応(>1000℃)に適していないことは注目に値する。対照的に、本開示における方法および装置は、酸化鉄をマグネシウム酸化物と混合することによって、焼結のリスクを軽減した。これは、熱化学サイクルのための材料を安定化させるだけでなく、酸化鉄の熱還元に必要な温度を低下させる。Mg/Feモル比が1:2の酸化物は、MgFe2O4スピネルを形成する傾向がある。したがって、本開示におけるアプローチは余分なMgO(Fe/Mg<2)が安定化効果を提示し、焼結を回避することが望ましいことを見出した。MgFe2O4中の過剰なMgOを用いた太陽熱化学的な水または二酸化炭素分解のための簡単な化学反応は、次式で与えられる。
・熱還元
【0066】
【0067】
・酸化
【0068】
【0069】
図14および
図15は、1~10
-5atmのO
2分圧で、xモル%Fe
3O
4を含むMgO(x=2.5、5、10および20)から調製した材料から放出されるO
2の量を計算するための、CALPHADベースの熱力学モデルから予想される結果を示す。このグラフは、異なる式について、10
-4atmおよび、10
-5atmのO
2分圧下(P
O2)において還元されたときのO
2放出量を示している。
図16および
図17は、これらの材料を1350℃および1450℃で10
-4atmのO
2分圧下で還元し、材料の質量の4倍の蒸気で酸化した後に、熱力学的平衡で生成され得るH
2の予想される量を計算するために用いた同じCALPHADモデルを示す。
【0070】
異なるFe/Mgモル比を有するマグネシウム鉄酸化物の反応安定性研究は1500℃~1000℃の間のサイクルで高い熱化学的安定性を示す。
図18に示されるように、これはTGAにおいて1350~1200℃の間でサイクルされたときに、Fe/Mg=3/4を用いて調製されたサンプルの安定な酸素吸収速度および放出速度から推測することができる。Mg-Fe-酸化物(Fe/Mg=3/4)の生産性は、セリア(ceria)のような他の最新技術の水分離材料(water splitting materials)と比較して、比較的高く、かつ安定している。過去10サイクルにおけるCOの生産(CO
2を用いて行われる酸化)の平均は、1.56×10
-5~4×10
-4まで変化するO
2分圧を用いて、8.9cm
3g
-1である。さらに、20モル%のマグネタイトを含むマグネシウム酸化物を使用して調製された反応性材料は、1350-1450℃と同程度の低さでの還元温度での水分解に適していることが見出された。この材料が~10
-4atmから10
-5atmのO
2分圧下の1450℃において容易に還元され、1200℃の蒸気で酸化されたとき、サイクル当たり6.12±0.02cm
3g
-1のH
2を生成する。1500℃/1450℃で還元され、1200℃で酸化されたとき、二酸化セリウムはサイクル当たり2.91/4.34cm
3g
-1のH
2を生成する。
【0071】
反応器プラントと熱容量を一致させることが望まれる。固体燃料生産ユニットの効率は、ガスと固体供給物の熱容量が等しいときに最大となる。数学的に、このことは以下のように示される。
【0072】
【0073】
ここで、
【0074】
【0075】
および
【0076】
【0077】
は、固体および気体の質量流量であり、
【0078】
【0079】
および
【0080】
【0081】
はそれぞれ固体および気体の比熱容量である、
水素処理プラントは発電プラントにおける燃料電池、発電プラントのための水素動力タービン、またはアンモニア、塩酸、脂肪水素化、金属鉱石の化学還元、水素化脱アルキル化、水素化脱硫、石油化学水素化分解、および半導体を製造するためのシリコンまたは炭素結合の破壊などの化学処理プラントを含むことができる。代替的に、燃料使用プラントは、流体加熱器、セメント又はアスファルトキルン、ガラス又は鋼炉等における水素分離とは無関係の他の製造プロセスのために燃料ペレットを排出し得ることが想定される。別の構成では、低酸素燃料が代替プロセスに使用される場合、蒸気の代わりに、異なる対向流ガスまたは他の流体が酸化反応器に使用されてもよいが、好ましい水素分離の利点のいくつかは達成され得ない。
【0082】
図10~
図12は固体燃料ペレットまたは粒子202が連続的に反応器管206を通って排出されるときに、それらの下向きの流れを制御するための非機械的な流量制御バルブシステム290を示す。バルブシステム290は、定流ガス吸気口291と、脈流ガス吸気口292と、圧縮ガス供給タンク293と、プログラマブルコンピュータコントローラ294とを含む。脈流配管回路295は、流量制御弁311と、電磁ソレノイド297によって繰り返し脈流するように自動的に開閉する循環バルブ296と、供給タンク293から脈流ガス吸気口292に低酸素窒素ガスを動作可能に伝達する下流流量計298とを含む。流量制御弁311、ソレノイド297、および流量計298は、プログラマブルコントローラ294に電気的に接続される。さらに、バイパス配管回路299は、流量制御弁301を定流ガス吸気口291に接続する。
【0083】
定流ガス吸気口291は回収タンク226に接続され、ガスの定流を提供する。回収タンク226内において、ガスは、メッシュで覆われた開口部302に入る。当該開口部302は、反応器管206の周囲を概ね取り囲むか、または、反応器管の下端が回収タンク226の内側の漏斗形状の出口303に接続される場所に隣接するかその場所の間に位置している。これは、燃料ペレット202を通って上向きに対向流する窒素である。
【0084】
脈流吸気口292は反応器管206の出口303に接続され、ペレット202と交差するように(好ましくはペレットの下向きの流れ方向に対しておおよそ垂直に)オフセット角度で窒素の脈流を周期的に流す。この脈流ガスは自動的に調整可能な背圧を引き起こし、反応器管内のペレットの下向きの流速を変化させる一方で、ペレットが、導管305から落下するかまたは導管305に沿って移動して、ロードセル307の表面上に着くように、ペレットの排出流れの方向および量を選択的に変化させるようにも作用する。ロードセル307はその上の完成燃料ペレット202の重量または量を測定または感知し、感知された信号をプログラマブルコントローラ294に送信する。圧力計309は封止された回収タンク226内の内部ガス圧力を測定または感知し、それもまた、感知された信号をプログラマブルコントローラ294に送信する。脈流吸気口292に入るガスは、吸気口291および292の両方を通るガスの総流量の約5%未満である。導管305から押し出される燃料ペレットの量は、流量制御弁296によって制御されるガス流量に比例する。循環バルブ296のガス流量の変化、そうでなければ加圧されたペレットの不均一なサイジングに起因してもたらされる圧力変動に起因して、ソレノイド297は一定の周波数で脈流し、流量制御弁311は、送られる空気の量の一貫性を維持することが望まれる。
【0085】
脈流ガスバルブシステムは、有益には機械弁の摩耗および複雑さを回避する。したがって、脈流ガスバルブシステムは、全ての領域を通して下方に移動する燃料ペレットの速度および量のために、非接触型の流れ制御を提供する。本開示における脈流ガスバルブシステム290は本明細書に開示される反応器の実施形態のいずれかを使用してもよく、任意のプロセスで重力供給される、砂、石炭粉、セメント粉末、ポリマーペレットなどの他のワークピース粒子の流れを制御するために使用してもよいが、燃料ペレットとのその使用の本開示における利点は、これらの代替使用では完全には実現され得ない。
【0086】
バルブシステム290を出る燃料粒子の量は、各脈流におけるガス通過ソレノイドバルブ296の流量に比例する。これは、プログラマブルコントローラ294の非一時的RAMまたはROMに記憶された制御アルゴリズムおよび関連するプログラムされたソフトウェア命令321に従って、流量制御弁311を使用して制御される。
図11および12の値A、B、CおよびDは、脈流Lバルブ296を使用して固体燃料ペレットの所望の質量流量を維持するためのシステム依存パラメータ(手動で設定することができ、および/またはリアルタイム感知信号に基づいて自動的に変更することができる)であり、これらは、例えば、以下の表1に従って、直径2~5mmの燃料ペレットと共に使用するためのパラメータである。
【0087】
【0088】
CSP反応器400の別の実施形態は、
図13に示されうる、実用的にスケーリングされた高体積構成である。この例示的なプラントは、復熱、還元、急冷および酸化領域にまたがって、半円形に整列した複数の反応器管406を備える。ここに示される反応器は、還元領域内に中間太陽光炉404を含む。上部ホッパー422と下側回収領域426との間に延在する、好ましくは少なくとも5本、より好ましくは少なくとも10本の平行で垂直に細長い管406がある。さらに、各反応器管の最小直径は好ましくは50mmであるが、高体積構成では反応器管直径がより大きくなる可能性が高い。酸化反応器については同様の複数管配列が想定されるが、装置が水素および蒸気を分離するために、体積に対して低い表面積を有するよう、管の直径は可能な限り大きくあるべきであり、これは周囲への熱損失を最小限にし、必要とされる断熱材の量を最小限にする。
【0089】
図19を参照すると、第4の実施形態のプラント装置は、固体熱化学燃料をチャージおよび/またはディスチャージするために、風力タービン、水タービン、太陽光発電パネル、地熱などの再生可能パワーブロック503によって生成された余分な電気エネルギーを使用するように構成された還元反応器および/または酸化反応器を含む。この例示した実施形態の反応器は、復熱領域116および急冷領域120において、第1の実施形態と同様であり、細長い中空のセラミック管106が、中間還元領域518において上部ホッパー124から炉中空受取機まで実質的に垂直に延びる。排出パイプ132は、高酸素空気がそこから流れることを可能にする。使用済み太陽光燃料102は、ホッパー124から下向きに管106を流れ、炉を通って下部回収タンク126に至る。太陽光燃料の流れは、パイプ130を通って内部に流れる低酸素空気を用いたコントローラ134によって制御される。チャージされた太陽光燃料102は、タンク126内に積み重ねられ、その後、貯蔵ユニットまたは酸化反応器に外部から供給される。
【0090】
この実施形態との差は、加熱エレメント508が還元領域518の炉内に配置されていることである。1つまたは複数の加熱エレメント508は細長く、炉内でコイル状またはループ状であってもよく、それ以外の場合は太陽光アパーチャから完全に隔離され、封止される(管106および加熱エレメント508の入口を除く)。加熱エレメント508は1,500℃を超える高温に耐えるべきであり、好ましくは、MoSi2、SiCまたは同様の材料から作られる。例えば、加熱エレメントは、誘導線、抵抗コイル導体などでよい。あるいは、加熱エレメントは炉内の赤外線エミッタであってもよい。
【0091】
余分な電気は、太陽エネルギーを使用する代わりに、再生可能発電機から加熱エレメントに供給される。これは、熱場を炉全体にわたってより均一にするのに有益であり、これは効率を改善し、その中の太陽燃料の滞留時間を減少させる。この実施形態はまた、周囲熱損失を低減する。さらに、再生可能な電気加熱は太陽エネルギーの変動性を管理する必要なく、炉が定常状態モードで潜在的に稼働することを可能にする。本開示における、固体燃料として風力エネルギーを貯蔵する能力は、非常に有用である。
【0092】
様々な実施形態が本明細書に開示されているが、他の変形形態が存在し得ることを理解されたい。以前に開示された特徴のいずれかおよびすべては、他の実施形態のいずれかまたはすべてと混合され、一致され得る。さらに、以下の特許請求の範囲はすべて、任意の組み合わせで互いの請求項に従属することができる。上記の説明は本質的に単なる例示であり、したがって、本考案の要旨から逸脱しない変動は、本開示の趣旨および範囲内に入ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】本開示の固体燃料をチャージするために用いられるプラントの断面図である。
【
図2】本開示における略球形のペレット形態の固体燃料の図である。
【
図3】太陽光から燃料への変換効率のグラフである。
【
図4】0.01atmのP
O2(還元)及び0.91atmのP
O2(酸化)の環境下で、の1000~1500℃の間で実行された本開示における固体燃料の熱重量分析(thermogravimetric analysis:TGA)グラフである。
【
図5】本開示の固体燃料の、推定エネルギー固有貯蔵コストおよび平準化貯蔵コストのグラフである。
【
図6】太陽光反射器と、その中に還元反応器および任意選択的に分割反応器があるソーラータワーとを含む、太陽光集光装置におけるプラントを示す概略図である。
【
図7】本開示の還元反応器のいずれかに使用する、本開示における固体燃料の製造工程を示す一連の顕微鏡写真である。
【
図8】還元反応器および酸化反応器を含む第2の実施形態のプラントを示す概略図である。
【
図9】第2の実施形態のプラントのためのプロセスフロー図である。
【
図10】本開示における還元反応器のいずれかのための、任意の固体燃料流量制御システムを示す概略図である。
【
図12】
図10および
図11における制御システムを使用するためのソフトウェアフローチャートである。
【
図13】第3の実施形態の還元反応器を示す概略図である。
【
図14】第2の実施形態のプラントについてのO
2放出量を示すグラフである。
【
図15】第2の実施形態のプラントについてのO
2放出量を示すグラフである。
【
図16】第2の実施形態のプラントについてのH
2放出量を示すグラフである。
【
図17】第2の実施形態のプラントについてのH
2放出量を示すグラフである。
【
図18】第2の実施形態のプラントについて、20サイクルにわたる、時間に対するTGA変換および温度を示すグラフである。
【
図19】再生可能発電機によって生成された余分な電気エネルギーを使用するように構成された還元反応器および/または酸化反応器を含む第4の実施形態のプラントを示す概略図である。