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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240209BHJP
   H01R 12/72 20110101ALI20240209BHJP
【FI】
H01R13/52 Z
H01R12/72
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018212935
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020080243
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】岩井 大二郎
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】吉田 昌弘
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0150674(US,A1)
【文献】特開2015-162567(JP,A)
【文献】特表2010-519690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00, 12/50-12/91
H01R 13/52, 13/73
H01R 24/00-24/86
H05K 5/02
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが前後方向と略平行に延びる複数の端子と、複数の前記端子が前記前後方向と直交する幅方向に間隔を空けて保持されるコネクタハウジングと、を有する電気コネクタと、
前記電気コネクタを収容するケースと、
複数の前記端子が電気的に接続される回路基板と、
前記コネクタハウジングと前記ケースの間の前記幅方向における間隙の少なくとも一部において前記前後方向に対応して設けられる誘い込み構造と、を備え、
前記誘い込み構造は、前記間隙に向けて開口する袋小路を有し、
前記間隙から前記袋小路にわたって空隙が前記前後方向に連なることで針金の前記袋小路への侵入が可能とされ、かつ、
前記袋小路の延びる方向に直交する前記幅方向の寸法をL1とし、
前記コネクタハウジングと前記ケースの間の前記間隙の寸法をC1とすると、
L1>C1が成立する、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記コネクタハウジングは、
前記回路基板とそれぞれが平行でかつ所定の間隔を隔てて配置される第一上壁および第一下壁と、
前記第一上壁および前記第一下壁とを繋ぐ一対の第一側壁と、を備え、
前記袋小路は
前記第一側壁と前記ケースの間の前記間隙に対して前記前後方向に対応して設けら
前記間隙を通って前記針金が前記袋小路に前記前後方向に侵入可能である、
請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記袋小路は、
前記第一側壁から前記コネクタハウジングの幅方向の外方に向けて突き出す第二下壁と、
前記第二下壁の前記幅方向の外端から立ち上がる第二側壁と、
前記第二下壁および前記第二側壁の後端を繋ぐ後壁と、を備えることにより形成される、
請求項2に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に搭載される電気コネクタに関するものであり、電気コネクタと電気コネクタを保持するケースとが組み立てられた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)規格には、機器への水、人体、固形物の侵入に対する保護(Ingress Protection)が規定されている。その一例として「φ1mmの針金が危険部位に接触できないこと」が規定されている。この規定は電気コネクタについても適用される。
電気コネクタのコネクタハウジングと電気コネクタを収容するケースとの間には、不可避的に間隙が生じる(例えば、特許文献1の第5図および第6図)。これは、電気コネクタのコネクタハウジングとケースの寸法公差による。したがって、コネクタハウジングとケースとの間に、針金が侵入するおそれのある間隙が生じる。高電圧が印可される回路基板に搭載される電気コネクタにおいては、危険部位となる高電圧が印可される範囲には、針金が達しないように、回路基板のレイアウトが定められる。つまり、仮に間隙から侵入した針金が達するにしても危険部位以外に達するようなレイアウトが採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-163768号公報(第5図,第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、コネクタハウジングとケースとの間に間隙が生じていても、この間隙から侵入した針金が回路基板に達するのを防ぐことができる電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気機器は、複数の端子と、複数の端子が保持されるコネクタハウジングと、を有する電気コネクタと、電気コネクタを収容するケースと、複数の端子が電気的に接続される回路基板と、を備える。さらに、本発明の電気機器は、コネクタハウジングとケースの間の間隙の少なくとも一部に対応して設けられる誘い込み構造を備える。
本発明における誘い込み構造は、間隙に向けて開口する袋小路を有することを特徴とする。
【0006】
本発明において、コネクタハウジングは、回路基板とそれぞれが平行でかつ所定の間隔を隔てて配置される第一上壁および第一下壁と、第一上壁および第一下壁とを繋ぐ一対の側壁と、を備える場合、誘い込み構造は、第一側壁とケースの間の間隙に対応して設けられることが好ましい。
【0007】
本発明において、袋小路の開口の寸法をL1とし、コネクタハウジングとケースの間の間隙の寸法をC1とすると、好ましくは、L1>C1が成立する。
【0008】
本発明の袋小路は、好ましくは、第一側壁からコネクタハウジングの幅方向の外方に向けて突き出す第二下壁と、第二下壁の幅方向の外端から立ち上がる第二側壁と、第二下壁および第二側壁の後端を繋ぐ後壁と、を備えることにより形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気機器によれば、電気コネクタが誘い込み構造を有することにより、針金が侵入したとしても回路基板に達するのを防ぐことができる。したがって、本発明の電気機器によれば、高電圧が印可される回路基板を備えていても、高電圧が印加される危険部位を考慮したレイアウトにする必要がなくなる。これにより、本発明の電気機器によれば、電気コネクタを搭載する位置、搭載する数を含めた回路基板のレイアウトの自由度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタを前方から示す斜視図である。
図2図1の電気コネクタを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
図3】(a)は本発明の実施形態に係る電気機器を前方から示す斜視図であり、(b)はその分解斜視図である。
図4図3の電気機器を示し、(a)は(b)のA-A線に沿った断面図、(b)は正面図、(c)(b)のC-C線に沿った断面図である。
図5】(a)は図4(a)の部分拡大図であり、(b)は電気コネクタとケースの間隙から針金が前後方向に平行に侵入する様子を示し、(c)および(d)は電気コネクタとケースの間隙に針金が傾斜して侵入する様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気機器1を説明する。
電気機器1は、図3に示すように、電気コネクタ10と、電気コネクタ10が収容されるケース50と、電気コネクタ10が搭載される回路基板60と、を備える。電気機器1は、侵入しようとする針金Wが誘導される第一袋小路26(図5)が電気コネクタ10に設けられることにより、針金Wが回路基板60に達するのを防ぐ。
なお、電気機器1において、電気コネクタ10の回路基板60が配置される側を下、その反対側を上とする。また、電気機器1において、電気コネクタ10と図示を省略する相手コネクタが嵌合される側を前(F)、端子30が引き出される側を後(R)とする。前(F)および後(R)は相対的な位置関係として用いられることもある。また、図1に示すX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を、それぞれ、前後方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zとする。これらの定義は、本願発明にも適用されるものとする。
以下、電気機器1の各要素の構成について順に説明した後に、電気機器1が奏する作用および効果を説明する。
【0012】
[電気コネクタ10]
電気コネクタ10は、図1に示すように、図示を省略する相手コネクタのコネクタハウジングと嵌合されるコネクタハウジング11と、コネクタハウジング11に保持される複数の端子30と、を備える。
コネクタハウジング11は、図1および図2(a)、(b)に示すように、図示しない相手コネクタが嵌合される嵌合筒13を前側に備えている。嵌合筒13の内部には受容空間15が形成されており、相手コネクタは、この受容空間15に挿入されることにより、コネクタハウジング11と嵌合される。コネクタハウジング11は、樹脂を射出成形することにより、一体に形成される。
【0013】
嵌合筒13は、図1図2(a)、(b)、(d)に示すように、上壁(第一上壁)13Aと、上壁13Aと所定の間隔を隔てて配置される下壁(第一下壁)13Bと、上壁13Aと下壁13Bの幅方向Yの一方端を繋ぐ前方側壁(第一側壁)13Cと、上壁13Aと下壁13Bの幅方向Yの他方端を繋ぐ前方側壁(第一側壁)13Dと、とを備える。嵌合筒13の後端(R)には端子保持壁14(図4(a))が設けられており、上壁13A、下壁13B、前方側壁13C、前方側壁13Dおよび端子保持壁14により取り囲まれる空間が受容空間15を構成する。
【0014】
端子保持壁14よりも後方(R)には、後方側壁16Cと後方側壁16Dが幅方向Yに所定の間隔を隔てて設けられている。後方側壁16Cと後方側壁16Dの間隔は、前方側壁13Cと前方側壁13Dの間隔よりも広く設定されており、後方側壁16Cと後方側壁16Dで挟まれる領域に端子30の基板接続部33が引き出される。
【0015】
嵌合筒13は、その前方(F)にフランジ17を備えている。フランジ17は、前方側壁13Cの高さ方向Zの中央付近から上壁13Aを通って前方側壁13Dの高さ方向Zの中央付近にかけて設けられている。上壁13Aにおけるフランジ17は高さ方向Zの上方に突き出す板状の形状をなしている。前方側壁13Cおよび前方側壁13Dにおけるフランジ17は、幅方向Yに所定量だけ突き出し、かつ、その先端から前方(F)に向けて突き出して、平面視した形状がC字状の形態をなしている。
フランジ17は、嵌合筒13の上壁13Aとケース50との間の間隙から侵入する針金Wが回路基板60に達するのを防ぐ目的で設けられている。この点について、詳しくは後述する作用・効果の説明のところで言及する。
【0016】
また、嵌合筒13は、前方側壁13Cおよび前方側壁13Dのそれぞれの外周面に第一誘い込み構造21が設けられている。第一誘い込み構造21は、嵌合筒13とケース50との間の間隙から侵入しうる針金Wが突き当たり、針金Wが回路基板60に達するのを防ぐ目的で設けられている。
【0017】
第一誘い込み構造21は、図1および図2(b)に示すように、前方側壁13Cおよび前方側壁13Dのそれぞれから幅方向の外方に向けて突き出す下壁(第二下壁)23と、下壁23の幅方向Yの外端から立ち上がる側壁(第二側壁)24と、下壁23および側壁24の後端を繋ぐ後壁25と、を備えている。側壁24と後壁25は、上述するフランジ17の一部として提供される。
【0018】
下壁23、側壁24、後壁25と前方側壁13Cまたは前方側壁13Dで取り囲まれる空間により第一袋小路26が形成される。下壁23、側壁24および後壁25の前端よりも前方側壁13Cまたは前方側壁13Dの前端の方が前方(F)に突き出している。
第一袋小路26は、後述する間隙C1に対応して開口が設けられている。第一袋小路26の幅方向Yの寸法L1は間隙C1より大きい(図5参照)。
【0019】
また、嵌合筒13は、第一誘い込み構造21よりも下方に第二誘い込み構造41を備えている。第二誘い込み構造41も、第一誘い込み構造21と同様の目的で設けられている。
第二誘い込み構造41は、基本的に誘い込み構造21と同様の構成を備えており、図1に示すように、前方側壁13Cおよび前方側壁13Dのそれぞれから幅方向の外方に向けて突き出す上壁42と、上壁42と高さ方向Zに所定の間隔を隔てて設けられる下壁43と、を備える。第二誘い込み構造41は、上壁42と下壁43の幅方向Yの外端を繋ぐ側壁44と、上壁42、下壁43および側壁44の後端を繋ぐ後壁45と、を備えている。上壁42、下壁43、側壁44、後壁45と前方側壁13Cまたは前方側壁13Dで取り囲まれる空間により第二袋小路46が形成される。
【0020】
[端子30]
端子30は、図4(c)に示すように、相手コネクタの端子との接続に供される相手接続部31と、回路基板60との電気的な接続に供される基板接続部33と、を備える。端子30は、相手接続部31と基板接続部33を繋ぎ、コネクタハウジング11の端子保持壁14に圧入される保持部35を備える。端子30において、相手接続部31および保持部35が相手コネクタとの嵌合方向(前後方向X)と略平行に延びており、また、基板接続部33は回路基板60に向けて垂下している。端子30は、例えば銅合金からなる高導電性の金属板を打ち抜くと共に、所定位置において折り曲げて形成される。
複数の端子30は、端子保持壁14に圧入されることにより、コネクタハウジング11に保持される。この状態で、基板接続部33は、回路基板60の必要な部位にはんだ付けにより接合される。
【0021】
[ケース50]
次に、金属製のケース50は、図3(a)、(b)に示すように、電気コネクタ10および電気コネクタ10が搭載される回路基板60を収容する、上部ケース51と下部ケース53とからなる。ここで、ケース50は、電気コネクタ10を覆う部位のみを示しており、ケース50の他の部位は図示を省略している。
上部ケース51は、電気コネクタ10を上方から覆う上壁51Aと、電気コネクタ10を前方(F)から覆う前壁51Bと、を備える。前壁51Bには、電気コネクタ10に嵌合される相手コネクタが通過するのに必要な開口51Cが設けられている。
下部ケース53は、電気コネクタ10を下方から覆う下壁53Aと、電気コネクタ10を前方(F)から覆う前壁53Bと、を備える。前壁53Bは、電気コネクタ10に嵌合される相手コネクタが通過するのに干渉しないようにコネクタハウジング11の下壁13Bの外側に位置する。
【0022】
ケース50は、図3(a)に示すように、電気コネクタ10に対して所定の位置関係をもって上部ケース51と下部ケース53が組み付けられる。
ここで、電気コネクタ10のコネクタハウジング11およびケース50には寸法公差が存在しているので、コネクタハウジング11とケース50の間に間隙が生じないようにすることは極めて困難である。
【0023】
コネクタハウジング11とケース50が組み付けられると生じる間隙について、図4(a),(b),(c)を参照して説明する。
図4(a)、(b)および図5(a)には、幅方向Yにおけるコネクタハウジング11とケース50の間隙が示されている。つまり、コネクタハウジング11の前方側壁13Cとケース50の前壁51Bとの間に間隙C1が生じる。前方側壁13Dと前壁51Bとの間も同様である。
次に、図4(b)、(c)には、高さ方向Zにおける間隙C2,C3が示されている。間隙C2は、コネクタハウジング11の上壁13Aとケース50の前壁51Bとの間に生じる。また、間隙C3は、コネクタハウジング11の下壁13Bとケース50の前壁53Bとの間に生じる。
【0024】
間隙C1~間隙C3は、いずれも針金Wが侵入する入口となりえる。この入口から侵入した針金Wが回路基板60の危険領域に達するのを防ぐ必要がある。この中で、間隙C2および間隙C3から侵入した針金Wは、以下の理由により、回路基板60に達するおそれがない。
【0025】
上壁13Aと前壁51Bの間の間隙C2から針金Wが侵入したとする。なお、図4(c)を参照願いたい。針金Wはコネクタハウジング11のフランジ17に突き当たるので、針金Wがそれよりも奥まで侵入することは難しい。仮に、針金Wがフランジ17を乗り越えて侵入したとしても、回路基板60との間にはコネクタハウジング11が存在するので、コネクタハウジングが障害となって針金Wが回路基板60に達することはできない。
【0026】
次に、下壁13Bと前壁53Bの間の間隙C3から針金Wが侵入したとする。なお、図4(c)を参照願いたい。コネクタハウジング11における下壁13Bの前端には下方に向けて突き出す突条13Eがあるので、針金Wは上向きに侵入することになる。したがって、針金Wが突条13Eを通過して侵入したとしても、下壁13Bに突き当たる。さらに針金Wが後方(R)に向けて侵入したとしても、回路基板60の前縁60Eに突き当たる。前縁60Eよりも後方(R)には、回路基板60に搭載された電気コネクタ10が存在しており、回路基板60と電気コネクタ10の間には針金Wが入り込む余地がない。
【0027】
[作用・効果]
間隙C2および間隙C3とは異なり、間隙C1は針金Wが侵入する入口となり、侵入した針金Wは回路基板60に達するおそれがある。そこで、本実施形態の電気コネクタ10は、回路基板60に針金Wが達するのを防止するための誘い込み構造21を備える。以下、図5を参照して第一誘い込み構造21による作用・効果を説明する。説明を省略するが、第二誘い込み構造41についても同様の効果を奏する。
【0028】
図5(b)に示すように、間隙C1に針金Wが前後方向Xに平行に侵入しそのまま侵入を続けると、針金Wは第一袋小路26を進んで後壁25に突き当たる。
次に、図5(c)に示すように、間隙C1に針金Wが前後方向Xに傾斜して侵入したとすると、この針金Wはその先端が側壁24の先端の内側に突き当たる。この傾斜角度θが前後方向Xに対して鋭角であることから、針金Wの先端部分に加えられる加重は幅方向Yの成分Fyよりも前後方向Xの成分Fxの方が大きい。したがって、針金Wを押し込み続けたとすれば、針金Wは第一袋小路26を進む。
図示を省略するが、針金Wが図5(c)とは逆に傾斜して間隙C1に侵入したとすると、針金Wは前方側壁13Cの外面に接触しかつ案内されながら第一袋小路26を奥に進んで後壁25に突き当たる。
【0029】
以上の通りであり、間隙C1については、電気コネクタ10が誘い込み構造21を有することにより、針金Wが侵入したとしても回路基板60に達するのを防ぐことができる。したがって、本実施形態の電気機器1によれば、高電圧が印加される回路基板60を備えているとしても、高電圧が印加される危険部位を配置する領域に制限を設ける必要がないか、設けるとしても狭くすることができる。これにより、本実施形態の電気機器1によれば、危険部位の配置領域に加えて、電気コネクタ10を搭載する位置、搭載する数を含めたレイアウトの自由度を高くすることができる。
【0030】
次に、本実施形態による第一袋小路26の幅方向Yの寸法L1は間隙C1より大きい(図5(a)参照)。したがって、図5(b)に示すように、前後方向Xに平行に針金Wが侵入したとすると、針金Wは漏れなく第一袋小路26に誘い込まれる。また、図5(c),(d)に示すように、針金Wが前後方向Xに傾斜して侵入したとしても、鋭角θで側壁24の先端の内側に突き当たるので、針金Wは無理なく第一袋小路26に誘い込まれる。
【0031】
また、本実施形態による第一袋小路26は、コネクタハウジング11の外壁である前方側壁13Cまたは前方側壁13Dと、下壁23と、側壁24と、後壁25と、を備えることにより形成される。つまり、第一袋小路26は、開口を除いて、前後方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zが外部に対して閉ざされている。これにより、第一袋小路26は、侵入した針金Wが回路基板60に達するのを防ぐだけでなく、それ以外の領域に達して不具合を起こすのを防ぐことができる。
【0032】
以上本発明における好ましい実施形態を説明したが、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0033】
本実施形態によるコネクタハウジング11は、回路基板60とそれぞれが平行でかつ所定の間隔を隔てて配置される上壁13Aと下壁13Bと、上壁13Aおよび下壁13Bとを繋ぐ一対の前方側壁13C,13Dとを備える。前述したように、間隙C2および間隙C3については、針金Wが回路基板60に達するおそれがない。そこで、本実施形態における誘い込み構造21は、針金Wが回路基板60に達するおそれがある前方側壁13C,13Dとケース50の間の間隙C1に限定して設けられている。
一方で、間隙C2および間隙C3に対応する部位には、上述した理由により誘い込み構造21を設けていないが、これが本発明を限定する要素にはならない。つまり、本発明の誘い込み構造は、針金Wが回路基板60に達するおそれのある、コネクタハウジング11とケース50の間の間隙のいずれにも設けることができる。
【0034】
また、本発明における誘い込み構造は実施形態で示した第一誘い込み構造21、第二誘い込み構造41の形態に限らない。つまり、間隙から侵入した針金が誘い込まれる第一袋小路26、第二袋小路46を有している限り、その形態は任意である。例えば、以上で示した側壁24,44は矩形の縦断面を有しているが、コネクタハウジング11に対向する面を前方に向けて先細りとなる傾斜面にしてもよい。
また、本実施形態に係る第二誘い込み構造41は上壁42を備えている。しかし、針金Wが回路基板60に達するのを防ぐことだけを考慮すれば、必ずしも上壁42を備えている必要はない。つまり、本発明における袋小路とは、第一誘い込み構造21のように、回路基板へ針金が達し得る経路について設けられていれば足りることを意味している。
【符号の説明】
【0035】
1 電気機器
10 電気コネクタ
11 コネクタハウジング
13 嵌合筒
13A 上壁(第一上壁)
13B 下壁(第一下壁)
13C 前方側壁(第一側壁)
13D 前方側壁(第一側壁)
14 端子保持壁
15 受容空間
16C 後方側壁
16D 後方側壁
17 フランジ
21 第一誘い込み構造
23 下壁(第二下壁)
24 側壁(第二側壁)
25 後壁
26 第一袋小路
30 端子
31 相手接続部
33 基板接続部
35 保持部
41 第二誘い込み構造
42 上壁
43 下壁
44 側壁
45 後壁
46 第二袋小路
50 ケース
51 上部ケース
51A 上壁
51B 前壁
51C 開口
53 下部ケース
53A 下壁
53B 前壁
60 回路基板
C1,C2,C3 間隙
W 針金
X 前後方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5