(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240209BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240209BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240209BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240209BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240209BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240209BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M10/0562
H01M4/131
H01M10/052
H01M4/134
(21)【出願番号】P 2019146814
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕行
(72)【発明者】
【氏名】荻原 航
(72)【発明者】
【氏名】高田 晴美
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-176549(JP,A)
【文献】特開2015-118870(JP,A)
【文献】特開2015-050153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を含む正極と、
負極活物質層を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し、少なくとも2層で構成される固体電解質層と、が積層された少なくとも一以上の単電池層を備え、
前記固体電解質層は、前記正極側の第1固体電解質層と、前記負極側の第2固体電解質層との2層で構成され、
前記第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とは、平面視における面積が異なり、
前記単電池層の外周端は、
前記第1固体電解質層及び前記正極の外周端に設けられた傾斜であって、前記第1固体電解質層から前記正極の積層方向における端部に向かって、前記第1固体電解質層の外周端が前記正極よりも外側に位置するように形成された傾斜であり、前記正極の積層方向における端部に向かうほど前記単電池層の平面視における面積が小さくなるように形成された傾斜、及び/又は、
前記第2固体電解質層及び前記負極の外周端に設けられた傾斜であって、前記第2固体電解質層から前記負極の積層方向における端部に向かって、前記第2固体電解質層の外周端が前記負極よりも外側に位置するように形成された傾斜であり、前記負極の積層方向における端部に向かうほど前記単電池層の平面視における面積が小さくなるように形成された傾斜、を有し、
前記固体電解質層の外周端は、前記正極及び前記負極の外周端よりも外側に位置している、
全固体電池。
【請求項2】
請求項
1に記載の全固体電池であって、
全固体電池製造直後の状態の時に、前記正極活物質層が含有する正極活物質がリチウムを含まない材料により構成される場合は、前記第1固体電解質層の平面視における面積は前記第2固体電解質層より大きくなるように設定される、
全固体電池。
【請求項3】
請求項
1に記載の全固体電池であって、
全固体電池製造直後の状態の時に、前記正極活物質層が含有する正極活物質がリチウムを含む材料により構成される場合は、前記第2固体電解質層の平面視における面積は前記第1固体電解質層より大きくなるように設定される、
全固体電池。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記固体電解質層の外周端において当該固体電解質層の面方向に垂直に引いた垂線と、前記単電池層の外周端に形成される傾斜面との間の角度をαとすると、当該αは、次式1を満たすように設定され、
t1の単位はmmである、
全固体電池。
【数1】
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の全固体電池において、
全固体電池製造直後の状態の時に、前記負極活物質層が含有する負極活物質は、リチウムを含む金属で構成される、
全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極と負極との間に固体電解質層を備える全固体電池が知られている。また、このような全固体電池の製造方法について、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1では、正極層に固体電解質層を加圧接合することにより第1積層体を形成する工程と、負極層に固体電解質層を加圧接合することにより第2積層体を形成する工程とを含み、更に、第1積層体と第2積層体とを、それぞれが備える固体電解質層を対向させて加圧結合することにより一体化する工程を経て全固体電池を製造する方法が開示されている。
【0004】
このような製造方法によれば、二つの固体電解質層に対して正極層と負極層とをそれぞれ柔らかい状態で加圧結合させることで、正極層と固体電解質層の間、および、負極層と固体電解質層の間に隙間のない緻密な界面を得ることができるので、界面抵抗がより低減された全固体電池を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、第1積層体と第2積層体とを加圧結合する工程においては、対向する固体電解質層が固体同士であるため、確実に接合させて隙間のない界面を得るためには相応の高い圧力を加える必要がある。しかしながら、第1積層体と第2積層体とが高圧で加圧されると、特に外周部分において、一方の極の活物質層が崩れ、崩れた活物質層が他方の極の活物質層に接触する等して短絡してしまう虞があり問題となる。
【0007】
本発明は、正極側の固体電解質層と負極側の固体電解質層とに係る少なくとも2層の固体電解質層を備える全固体電池において、高い圧力が加えられた場合に正極と負極とが短絡することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による全固体電池は、正極活物質層を含む正極と、負極活物質層を含む負極と、正極と負極との間に介在し、少なくとも2層で構成される固体電解質層と、が積層された少なくとも一以上の単電池層を備える。そして、この単電池層の外周端は、固体電解質層から正極の積層方向における端部および負極の積層方向における端部の少なくとも一方に向かって、固体電解質層の外周端が最も外側に位置するような傾斜を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、最外周部に位置する固体電解質層によって、崩れた活物質層を構成する材料が固体電解質層を超えて正極から負極、又は負極から正極へ移動することを妨げることができるので、活物質層が崩れることに起因して正極と負極とが短絡することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の全固体電池が備える単電池層を説明する断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の単電池層に形成される傾斜の傾斜角を説明する図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の全固体電池が備える単電池層を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、従来の全固体電池に係る課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態にかかる全固体電池10について説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態の全固体電池10が備える単電池層19を説明する図である。本実施形態の全固体電池10は、その内部に、以下に説明する単電池層19が複数積層された発電要素を電池外装材であるラミネートフィルムで封止した状態で収容するいわゆる積層型の全固体電池である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。ただし、本発明が適用される全固体電池10が収容する単電池層19は必ずしも複数層である必要はなく、単層であってもよい。また、本実施形態の全固体電池10の外観、および内部における電気的な接続状態(電極構造)は特に限定されない。全固体電池10の外観は、例えば長方形状の扁平な角形状であってもよいし円あるいは楕円形状であってもよい。或いは、単層、又は複数層の単電池層19を巻き回して収容する円筒形状型であってもよい。また、全固体電池10の電極構造は、いわゆる非双極型(内部並列接続タイプ)、および双極型(内部直列接続タイプ)のいずれが採用されてもよい。すなわち、以下に説明する単電池層19の構成以外に関しての全固体電池10の態様は、公知あるいは非公知に関わらず、特に制限されない。
【0013】
図1は、本実施形態の単電池層19の外周端を含む一部分の概略断面図である。単電池層19は、正極集電体11と、負極集電体12と、正極活物質層13と、負極活物質層14と、正極側の固体電解質層15と、負極側の固体電解質層16とを含んで構成される。
【0014】
より具体的には、単電池層19は、正極集電体11の表面に正極活物質を含有する正極活物質層13が配置された構造を有する正極と、負極集電体12の表面に負極活物質を含有する負極活物質層14が配置された構造を有する負極とを含み、更に、正極と負極との間に、2層で構成された固体電解質層、すなわち、正極側の固体電解質層15(正極側固体電解質層15)と負極側の固体電解質層16(負極側固体電解質層16)とを含んで構成される。全固体電池10の各構成部材の詳細については後述する。
【0015】
ここで、本実施形態の全固体電池10が解決する課題について、従来の全固体電池の構造を示す
図4を参照して説明する。なお、以下の説明において用いる上下方向を示す文言は、図の上下方向と一致させた表現であって、実際の重力方向における上下方向と必ずしも一致させる意図ではない。
【0016】
図4は、従来の全固体電池が備える単電池層の外周端を含む一部分の断面図である。単電池層は、電池外装材に収容される前の状態において例えば長方形のシート状に構成されるが、図示する断面図は、当該長方形の外周を構成する一辺を含む断面図である。そして、ここに示す全固体電池は、上述した従来の製造方法(特許文献1参照)によって製造された全固体電池の一例である。すなわち、図示する単電池層は、正極と負極の間に正極側の固体電解質層と負極側の固体電解質層とに係る2層の固体電解質層を有し、これら対向する固体電解質層が加圧接合されることにより一体化されて構成される。これら対向する固体電解質層を加圧接合する際には、図中にて単電池層を上下から挟むように示す矢印方向、すなわち、正極の上方から下方に、及び、負極の下方から上方に、単電池層を上下から挟む強い外力(圧力)が加えられる。
【0017】
より詳細には、図示する単電池層には、正極側の固体電解質層と負極側の固体電解質層とを確実に接合させるために、正極側と負極側のそれぞれの外側からこれら対向する固体電解質層の接合面(界面)に向かって強い外力が加えられる。この際、加えられた外力に対する応力により、特に単電池層の外周部(エッジ部)が崩れ、崩れた活物質層(例えば正極活物質層)が対向する極の活物質層(例えば負極活物質層)に接触し、正極と負極とが短絡してしまう虞がある(矢印A参照)。また、さらに強い外力が加わると、固体電解質層が崩れてしまい、活物質層が固体電解質層を貫通して他方の活物質層へ到達して短絡する虞もある(矢印B参照)。
【0018】
このように、対向する固体電解質層を加圧接合して成る少なくとも2層の固体電解質層を有する全固体電池は、その加圧接合時において、或いは、加圧接合後に拘束治具にて締結される際や、全固体電池の製造後であっても例えば温度上昇に起因する圧力上昇時に、単電池層に対して特に上下から中心に向かう方向に強い圧力が加わる場合がある。その時、従来の全固体電池が備える単電池層では、加えられた圧力に起因して特にエッジ部において活物質層が崩れる等することにより正極と負極とが短絡する虞がある。本実施形態の全固体電池10はこのような短絡が生じることを抑制する構成を備える。以下、全固体電池10の構成の詳細について
図1に戻って説明を続ける。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の全固体電池10が備える単電池層19は、その外周端部(エッジ部)において、正極側固体電解質層15の端部から、正極側の上下方向(積層方向)における端部すなわち正極集電体11の上端へ向かう傾斜、及び、負極側固体電解質層16の端部から、負極側の積層方向における端部すなわち負極集電体12の下端へ向かう傾斜を有する。そして、単電池層19のエッジ部に形成される傾斜は、正極側および負極側の固体電解質層15、16から、正極及び負極の積層方向における端部に向かうほど、各構成の平面視における面積が小さくなるように形成される。換言すれば、全固体電池10が備える単電池層19は、そのエッジ部において、正極側固体電解質層15および負極側固体電解質層16の外周端から、正極側の積層方向における端部および負極側の積層方向における端部に向かって、正極側固体電解質層15および負極側固体電解質層16の外周端が最も外側に位置するような傾斜を有している。
【0020】
これにより、
図4を参照して説明したのと同様に、正極および負極の外側から正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16との界面に向かう方向に強い圧力が加えられた際に、少なくとも一方の極の活物質層が崩れてしまった場合でも、上述の傾斜が設けられることによって、崩れた活物質層を構成する材料が他方の極の活物質層に到達することが難しくなる。すなわち、単電池層19は、そのエッジ部に上述した傾斜が設けられることにより、最外周部に位置する固体電解質層の端部が壁のような役割を果たし、崩れた活物質層を構成する材料が固体電解質層を超えて正極から負極、又は負極から正極へ移動することを妨げるので、活物質層が崩れることに起因して正極と負極とが短絡することを抑制することができる。
【0021】
次に、単電池層19のエッジ部に設けられる傾斜の角度(傾斜角)について説明する。
【0022】
図2は、本実施形態の単電池層19に設けられる傾斜の傾斜角αを説明する図である。
図2(a)は、
図1と同様の単電池層19の断面図を示し、
図2(b)は、
図2(a)において点線四角枠で囲む部分の部分拡大図を示す。なお、
図2(b)では、説明のために正極活物質層13と、正極側固体電解質層15のみを示し、負極側の構成については割愛する。ただし、負極側の構成についても、
図2(b)を参照して以下に説明する構成と同様である。
【0023】
なお、傾斜角αは、
図2(b)に示すように、正極側固体電解質層15の端部において、当該正極側固体電解質層15の面方向に対して垂直方向(積層方向)に引いた垂線と、単電池層19の端部に形成された傾斜面との間の角度とする。
【0024】
傾斜角αが大きくなればなるほど、単電池層19のエッジ部における正極活物質層13の隙間(クリアランス)が大きくなる。正極活物質層13のクリアランスが大きくなると、一方の極に対して他方の極が存在しない領域が増加するため、充放電効率が悪化してしまう。したがって、充放電効率の悪化を抑制する観点から傾斜角αの上限が設けられることが好ましい。
【0025】
本実施形態における傾斜角αは、正極側固体電解質層15の厚み方向(積層方向)の長さをt1とした場合に、以下式(1)を満たすように設定される。
【0026】
【0027】
なお、上記式(1)は、正極側固体電解質層15の厚みt1が例えば100μmの場合に、正極活物質層13の正極側固体電解質層15側におけるクリアランス(図中のt2)が5mmとなるように設定されている。これは、充放電効率の低下とクリアランスt2との関係を実験やシミュレーションによって評価した際の結果に応じて設定されたものである。すなわち、上記式(1)は、クリアランスt2が5mmを超えると充放電効率が著しく低下するという評価結果に応じて設定されている。このように、上記式(1)を満たす範囲で傾斜角αを設定することにより、充放電効率の低下を最小限に抑えながらも、加えられる圧力に起因して正極と負極とが短絡する虞を低減することができる適切な傾斜角αを設定することができる。
【0028】
以上、本実施形態の全固体電池10が備える単電池層19の構成の詳細について説明した。ただし、上述した構成、すなわち、単電池層19のエッジ部に設けられた傾斜は、単電池層19の外周全周に渡って設けられる必要は必ずしもない。上述の傾斜は、単電池層19のエッジ部における少なくとも一部以上の範囲に設けられる。また、当該傾斜は、単電池層19が備える正極側と負極側との双方に設けられる必要は必ずしもなく、少なくとも一方の極に設けられてよい。また、
図1で示したように、単電池層19に形成される傾斜は、必ずしも正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16との界面における端部から、正極集電体11の上端および/または負極集電体12の下端まで形成される必要は必ずしもない。当該傾斜は、例えば、正極側固体電解質層15の正極活物質層13側の端部から正極活物質層13の積層方向における上端部にかけて形成されてもよい。すなわち、当該傾斜は、少なくとも正極活物質層13および/または負極活物質層14のエッジ部に形成されていればよい。
【0029】
以下では、本実施形態にかかる全固体電池10を構成する単電池層19の主要な構成部材について説明する。
【0030】
[集電体]
正極集電体11および負極集電体12(以下まとめて集電体と称する)を構成する材料は、本願発明にかかる技術分野において全固体電池に適用可能な集電体として機能するものであれば特に制限されない。集電体の構成材料としては、公知の材料が採用されてよく、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0031】
[負極活物質層]
負極活物質層14は、負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb2O5、Li4Ti5O12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素およびスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵および放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu-Sn合金、Co-Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.4P0.6O3.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiO3が例示される。また、負極活物質として、リチウム(Li)を含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。なお、高容量であるという点で、負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含むことが好ましく、金属リチウムを含むことが特に好ましい。
【0032】
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0033】
負極活物質層14における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0034】
負極活物質層14は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極活物質層が固体電解質を含むことにより、負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましい。
【0035】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2OLiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
【0036】
硫化物固体電解質は、例えば、Li3PS4骨格を有していてもよく、Li4P2S7骨格を有していてもよく、Li4P2S6骨格を有していてもよい。Li3PS4骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4が挙げられる。また、Li4P2S7骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質(例えば、Li7P3S11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)PxS4(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、Li2S-P2S5を主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
【0037】
また、硫化物固体電解質がLi2S-P2S5系である場合、Li2SおよびP2S5の割合は、モル比で、Li2S:P2S5=50:50~100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLi2S:P2S5=70:30~80:20であることが好ましい。
【0038】
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10-5S/cm以上であることが好ましく、1×10-4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
【0039】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO3)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.3N0.46)、LiLaZrO(例えば、Li7La3Zr2O12)等が挙げられる。
【0040】
固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。固体電解質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒径(D50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0041】
負極活物質層14における固体電解質の含有量は、例えば、1~60質量%の範囲内であることが好ましく、10~50質量%の範囲内であることがより好ましい。ただし、負極活物質層14を構成する負極活物質としてリチウム金属を用いる場合には、負極活物質層14における固体電解質の含有量は、ゼロであることが好ましい。なお、ここで用いられるリチウム金属の形態としては、例えば、リチウム金属箔、リチウム合金金属箔(合金種はMg、Al、In等)、及び基材上に蒸着したリチウム(基材は、SUS泊、Al箔等)等が挙げられる。
【0042】
負極活物質層14は、上述した負極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0043】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
また、バインダとして採用される材料についても特に限定されず、当該技術分野において全固体電池10に適用可能なバインダとして機能するものであれば、公知の材料が採用されてよい。
【0045】
負極活物質層14の厚さは、目的とする全固体電池10の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
[正極活物質層]
正極活物質層13は、硫黄を含む正極活物質を含むことが好ましい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子または薄膜が挙げられ、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。有機硫黄化合物としては、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。なかでも、ジスルフィド化合物および硫黄変性ポリアクリロニトリル、およびルベアン酸が好ましく、特に好ましくは硫黄変性ポリアクリロニトリルである。ジスルフィド化合物としては、ジチオビウレア誘導体、チオウレア基、チオイソシアネート、またはチオアミド基を有するものがより好ましい。ここで、硫黄変性ポリアクリロニトリルとは、硫黄粉末とポリアクリロニトリルとを混合し、不活性ガス下もしくは減圧下で加熱することによって得られる、硫黄原子を含む変性されたポリアクリロニトリルである。その推定構造は、例えばChem.Mater.2011,23,5024-5028に示されているように、ポリアクリロニトリルが閉環して多環状になるとともに、Sの少なくとも一部はCと結合している構造である。この文献に記載されている化合物はラマンスペクトルにおいて、1330cm-1と1560cm-1付近に強いピークシグナルがあり、さらに、307cm-1、379cm-1、472cm-1、929cm-1付近にピークが存在する。一方、無機硫黄化合物は安定性に優れることから好ましく、具体的には、硫黄単体(S)、S-カーボンコンポジット、TiS2、TiS3、TiS4、NiS、NiS2、CuS、FeS2、Li2S、MoS2、MoS3等が挙げられる。なかでも、S、S-カーボンコンポジット、TiS2、TiS3、TiS4、FeS2およびMoS2が好ましく、硫黄単体(S)、S-カーボンコンポジット、TiS2およびFeS2がより好ましく、硫黄単体(S)が特に好ましい。ここで、S-カーボンコンポジットとは、硫黄粉末と炭素材料とを含み、これらを加熱処理または機械的混合に供することによって複合化した状態のものである。より詳細には、炭素材料の表面や細孔内に硫黄が分布している状態、硫黄と炭素材料がナノレベルで均一に分散し、それらが凝集して粒子となっている状態、細かな硫黄粉末の表面や内部に炭素材料が分布している状態、または、これらの状態が複数組み合わさった状態のものである。
【0047】
正極活物質層13は、硫黄を含む正極活物質に代えて、硫黄を含まない正極活物質を含んでもよい。硫黄を含まない正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、Li(Ni-Mn-Co)O2等の層状岩塩型活物質、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型活物質、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、Li4Ti5O12が挙げられる。
【0048】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0049】
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0050】
正極活物質層13における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
正極活物質層13もまた、負極活物質層14と同様に導電助剤および/またはバインダをさらに含んでもよい。
【0052】
[固体電解質層]
本実施形態に係る全固体電池10が備える正極側固体電解質層15および負極側固体電解質層(以下、これらをまとめて単に固体電解質層とも称する)は、固体電解質を主成分として含有し、上述した正極活物質層13と負極活物質層14との間に介在する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0053】
固体電解質層における固体電解質の含有量は、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0054】
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0055】
正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16のそれぞれの厚さは、目的とする全固体電池10の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1~300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0056】
なお、図示しないが、全固体電池10は、収容する1又は複数の単電池層19から全固体電池10の外部に電力を取り出すための正極集電板、負極集電板を備えていてもよい。この場合、集電板を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。
【0057】
また、図示は省略するが、正極集電体11および負極集電体12と正極集電板および負極集電板との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されてよい。
【0058】
以上、第1実施形態の全固体電池10は、正極活物質層13を含む正極と、負極活物質層14を含む負極と、正極と負極との間に介在し、少なくとも2層で構成される固体電解質層(15,16)と、が積層された少なくとも一以上の単電池層19を備え、単電池層19の外周端は、固体電解質層(15,16)から正極の積層方向における端部および負極の積層方向における端部の少なくとも一方に向かって、固体電解質層(15,16)の外周端が最も外側に位置するような傾斜を有する。これにより、単電池層19を挟む方向に活物質層が崩れるほどの強い圧力が加えられた場合でも最外周部に位置する固体電解質層(15,16)の端部が壁のような役割を果たし、崩れた活物質層を構成する材料が固体電解質層を超えて正極から負極、又は負極から正極へ移動することを妨げるので、活物質層が崩れることに起因して正極と負極とが短絡することを抑制することができる。
【0059】
また、第1実施形態の全固体電池10は、固体電解質層(15,16)の外周端において当該固体電解質層(15,16)の面方向に垂直に引いた垂線と、単電池層19の外周端に形成される傾斜面との間の角度をα(傾斜角α)とすると、傾斜角αは、上記式(1)を満たすように設定される。これにより、充放電効率の低下を最小限に抑えながらも、加えられる圧力に起因して正極と負極とが短絡する虞を低減することができる適切な傾斜角αを設定することができる。
【0060】
また、第1実施形態の全固体電池10は、負極活物質層14が含有する負極活物質は、リチウムを含む金属で構成される。これにより、全固体電池10を高容量化することができる。
【0061】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態の全固体電池10について説明する。本実施形態の全固体電池10は、正極側固体電解質層15および負極側固体電解質層16の平面視における面積が異なる点が第1実施形態と相違する。以下、第2実施形態の詳細について
図3を参照して説明する。
【0062】
図3は、第2実施形態の全固体電池10が備える単電池層19を説明する図である。図示するように、本実施形態の正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16とは、平面視における面積が異なっている。換言すれば、本実施形態の単電池層19は、正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16のいずれか一方が、最外周端に位置するように構成される。これにより、上述のように加えられた圧力に起因していずれか一方の活物質層が崩れた場合であっても、最外周端に位置する固体電解質層が、崩れた活物質層が他方の極へ移動するのを妨げる壁としてより強く機能するので、崩れた活物質層が固体電解質層を超えて正極から負極、又は負極から正極へ移動することをより効果的に妨げることができる。その結果、活物質層が崩れることに起因して正極と負極とが短絡することをより好適に抑制することができる。
【0063】
ここで、本実施形態の正極側固体電解質層15と負極側固体電解質層16との平面視における大小関係は、正極活物質層13を構成する材料、すなわち、正極活物質層13に含まれる正極活物質の種類に応じて以下のように設定される。
【0064】
すなわち、正極活物質層13がリチウムを含まない材料で構成される場合には、正極側固体電解質層15の平面視における面積が、負極側固体電解質層16の平面視における面積より大きくなるように設定される。リチウムを含まない材料としては、例えば硫黄を含む正極活物質である。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子等であって、正極活物質層の詳細について上述したとおりである。
【0065】
ここで、正極活物質層13が硫黄を含む正極活物質で構成される場合には、製造された時点における全固体電池10は充電状態であり、正極活物質層13はリチウムを有さない。この場合、電池製造後の初回使用時(初回放電時)における当該正極活物質層13は、負極側から放出されたリチウムを吸蔵する。この時、リチウムを受ける側の極の活物質層の面積がリチウムを放出する側の極の活物質層よりも小さいと、リチウムの好適な移動が阻害され、リチウムが析出しやすくなってしまう。
【0066】
したがって、正極活物質層13がリチウムを含まない材料で構成される場合には、正極側固体電解質層15の平面視における面積を負極側固体電解質層16の平面視における面積より大きくなるように設定することにより、初回使用時(初回放電時)にリチウムを受け取る側の正極活物質層13を大きくすることができるので、リチウムが析出することを抑制することができる。
【0067】
一方、正極活物質層13がリチウムを含む材料で構成される場合には、例えば
図3に示すように、負極側固体電解質層16の平面視における面積が、正極側固体電解質層15の平面視における面積より大きくなるように設定される。リチウムを含む材料としては、例えば上述の層状岩塩型活物質等である。
【0068】
この場合、電池製造後の初回使用時における当該正極活物質層13は、負極側にリチウムを放出する。したがって、正極活物質層13がリチウムを含む材料で構成される場合には、負極側固体電解質層16の平面視における面積を正極側固体電解質層15の平面視における面積より大きくなるように設定することにより、初回使用時にリチウムを受け取る側の負極活物質層14を大きくすることができるので、リチウムが析出することを抑制することができる。
【0069】
このように、全固体電池10が製造された後の初回使用時(初回充放電時)にリチウムを受け取る側の極の活物質層を大きくすることによって、正極と負極の活物質層の平面視における大小差に起因してリチウムの移動が阻害されることを回避することができるので、初回使用時にリチウムの析出が生じることを抑制することができる。
【0070】
以上、第2実施形態の全固体電池10によれば、固体電解質層(15,16)は、第1固体電解質層(正極側固体電解質層15)と第2固体電解質層(負極側固体電解質層16)との2層で構成され、第1固体電解質層と前記第2固体電解質層とは、平面視における面積が異なる。これにより、最外周端に位置する固体電解質層(15または16)が、強い圧力が加えられたことに起因して崩れた活物質層が他方の極へ移動するのを妨げる壁としてより強く機能するので、崩れた活物質層が固体電解質層を超えて正極から負極、又は負極から正極へ移動することをより効果的に妨げることができる。その結果、活物質層が崩れることに起因して正極と負極とが短絡することをより効果的に抑制することができる。
【0071】
また、第2実施形態の全固体電池10は、正極側の固体電解質層15を第1固体電解質層とし、負極側の固体電解質層16を前記第2固体電解質層とした場合であって、正極活物質層13が含有する正極活物質がリチウムを含まない材料により構成される場合は、第1固体電解質層の平面視における面積は第2固体電解質層より大きくなるように設定される。これにより、正極活物質層13が含有する正極活物質がリチウムを含まない材料で構成される場合には、初回使用時にリチウムを受け取る側の正極活物質層13を大きくすることができるので、特に初回使用時にリチウムが析出することを抑制することができる。
【0072】
また、第2実施形態の全固体電池10は、正極側の固体電解質層15を第1固体電解質層とし、負極側の固体電解質層16を前記第2固体電解質層とした場合であって、正極活物質層13が含有する正極活物質がリチウムを含む材料により構成される場合は、第2固体電解質層の平面視における面積は第1固体電解質層より大きくなるように設定される。これにより、正極活物質層13が含有する正極活物質がリチウムを含む材料で構成される場合には、初回使用時にリチウムを受け取る側の負極活物質層14を大きくすることができるので、特に初回使用時にリチウムが析出することを抑制することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0074】
10…全固体電池
13…正極活物質層
14…負極活物質層
15…第1固体電解質層(正極側固体電解質層)
16…第2固体電解質層(負極側固体電解質層)
19…単電池層