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特許7433005タッチコントローラ及びペン入力システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】タッチコントローラ及びペン入力システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240209BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G06F3/041 570
G06F3/041 560
G06F3/044 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019164531
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021043640
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-274080(JP,A)
【文献】特開2017-068873(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002203(WO,A1)
【文献】特開2019-169038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータからサスペンド命令を受けたことに応じて、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減したアップリンク省電力モードで動作し、
前記アップリンク省電力モードで動作中に指によるタッチ動作を検出したことに応じて、通常モードに復帰する、
タッチコントローラ。
【請求項2】
ペンタッチの検出に応じてペン信号の送信を開始するように構成されたペンと、
ホストコンピュータからサスペンド命令を受けたことに応じて、アップリンク信号の送信を行わないアップリンク省電力モードで動作し、該アップリンク省電力モードで動作中に指によるタッチ動作を検出したことに応じて、通常モードに復帰するタッチコントローラと、
を含むペン入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチコントローラ及びペン入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペンと、ペンによる入力を受け付けるペン入力装置とを含んで構成されるペン入力システムが知られている。ペン入力装置は、例えばタブレット型のコンピュータやデジタイザであり、一般に、ペンの検出を行うタッチコントローラと、ホストコンピュータとを有して構成される。ホストコンピュータは、オペレーティングシステム、各種アプリケーション、各種ハードウェアのドライバを含む各種ソフトウェアを実行する装置である。ホストコンピュータにより実行されるドライバには、タッチコントローラのドライバが含まれる。
【0003】
ペン入力システムで使用されるペンとしては、各種のものが知られている。例えば特許文献1には、ペンとペン入力装置の間の双方向通信に対応し、ペン入力装置が送信したアップリンク信号を検出するとペン信号を送信するように構成されたペン(第1のスタイラス110)、ペンからペン入力装置への一方向通信のみに対応し、電源がオンである間ペン信号を送信し続けるように構成されたペン(第2のスタイラス120)、双方向通信と一方向通信の両方に対応し、アップリンク信号の検出とペン信号の送信を交互に繰り返し、アップリンク信号を検出した場合には双方向通信に移行する一方、アップリンク信号を検出しないままペンタッチを検出した場合には、一方向通信に移行し、ペン信号の繰り返し送信を行うペン(デュアルモードスタイラス130)が記載されている。
【0004】
また、コンピュータと周辺機器を接続するための規格の1つであるユニバーサル・シリアル・バス(USB)規格に関して、セレクティブサスペンドという動作が知られている(非特許文献1を参照)。これは、USBによってホストコンピュータと接続されている周辺機器の消費電力を低減するためのもので、ホストコンピュータ上で動作しているドライバがSOF(Start of Frame)の送信を停止することによって起動する動作である。セレクティブサスペンドが起動すると、周辺機器は、スリープ解除イベントの検出と、イベント発生時の再開信号の生成とに必要な最低限の電力のみで動作するようになる。スリープ解除イベントは、例えばマウスであれば小刻みな振動であり、スリープ解除イベントを検出した周辺機器は、スリープ状態から通常状態に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/129194号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】「USBのセレクティブサスペンドについて」、[online]、2011年7月7日、日本マイクロソフト株式会社Windows & Devices開発統括部、[令和元年9月7日検索]、インターネット<URL:https://blogs.msdn.microsoft.com/jpwin/2011/07/07/usb-2/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のセレクティブサスペンドは、タッチコントローラには適用されていなかった。これは、特許文献1のデュアルモードスタイラスのような動作をするペンは稀であり、双方向通信に対応しアップリンク信号の検出を待って信号の送信を行う典型的なペンの検出においては、タッチコントローラによるアップリンク信号の送信を停止することができないからであるが、そうするとタッチコントローラは常に大きな電力を消費し続けることになるので、低消費電力化の観点から改善が必要とされていた。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、タッチコントローラの低消費電力化を実現することにある。
【0009】
また、スリープ状態にあるタッチコントローラにおいてアップリンク信号の送信を停止したとすると、双方向通信に対応したペンはペン信号送信の契機を得ることができなくなり、タッチコントローラとの通信を開始できなくなってしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的の一つは、スリープ状態にあるタッチコントローラにおいてアップリンク信号の送信を停止したとしても、双方向通信に対応したペンとタッチコントローラとの間の通信を開始できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるタッチコントローラは、ホストコンピュータからサスペンド命令を受けたことに応じて、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減したアップリンク省電力モードで動作し、前記アップリンク省電力モードで動作中に所定のトリガを検出したことに応じて、通常モードに復帰する、タッチコントローラである。
【0012】
本発明によるペン入力システムは、ペンタッチの検出に応じてペン信号の送信を開始するように構成されたペンと、ホストコンピュータからサスペンド命令を受けたことに応じて、アップリンク信号の送信を行わないアップリンク省電力モードで動作し、該アップリンク省電力モードで動作中に前記ペン信号を検出したことに応じて、通常モードに復帰するタッチコントローラと、を含むペン入力システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるタッチコントローラによれば、アップリンク信号に関わらず、所定のトリガによってタッチコントローラを通常モードに復帰させることができるので、タッチコントローラの低消費電力化が実現される。
【0014】
また、本発明によるペン入力システムによれば、ペンがペンタッチの検出に応じてペン信号の送信を開始するので、アップリンク省電力モードでアップリンク信号の送信を停止したとしても、ペン信号をトリガとしてタッチコントローラを通常モードに復帰させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態によるペン入力システム10の構成を示す図である。
図2】タッチコントローラ3とペン5の間で送受信される信号のシーケンスを示す図である。
図3】第1の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。
図4】第2の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。
図5】第3の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。
図6】第4の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。
図7】第5の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるペン入力システム10の構成を示す図である。同図に示すように、ペン入力システム10は、ペン入力装置1と、ペン5とを有して構成される。
【0018】
ペン入力装置1は、ペン5による入力を実現する装置であり、ペン入力のためのタッチ面を有して構成される。具体的な例では、ペン入力装置1はタブレット型のコンピュータ又はデジタイザであり、前者の場合、タッチ面はディスプレイのパネル面により構成される。
【0019】
ペン入力装置1は、図1に示すように、センサ電極群2と、タッチコントローラ3と、ホストコンピュータ4とを有して構成される。センサ電極群2は、タッチ面の直下に配置される複数のセンサ電極である。センサ電極群2を構成する複数のセンサ電極には、それぞれ図示したy方向に延在し、x方向(y方向と直交する方向)に等間隔で配置された複数のX電極2xと、それぞれ図示したx方向に延在し、y方向に等間隔で配置された複数のY電極2yとが含まれる。
【0020】
タッチコントローラ3は、センサ電極群2に接続された集積回路であり、タッチ面内におけるペン5の位置を導出可能に構成される他、タッチ面内における指Fの位置も導出可能に構成される。典型的な例では、タッチコントローラ3は、ペン5の検出をアクティブ静電方式により行い、指Fの検出を静電容量方式により行う。詳しくは後述するが、ペン5の位置導出と指Fの位置導出とは、交互に実行される。タッチコントローラ3は、ペン5又は指Fの位置を導出する都度、導出した位置を示すレポートをホストコンピュータ4に対して送信するよう構成される。レポートには、導出した位置の他、後述するデータ信号によりペン5が送信したデータ(筆圧値、ペンIDなど)も含まれる。
【0021】
ここで、タッチコントローラ3及びペン5は、例えばアクティブ静電方式により、双方向に通信可能に構成される。具体的に説明すると、まずタッチコントローラ3は、センサ電極群2を送信アンテナとして用いて、周期的にアップリンク信号USを送信するよう構成される。ペン5は、このアップリンク信号USを受信すると、それに応じて、ペン先に設けられる電極(ペン先電極)からペン信号PSを送信するよう構成される。タッチコントローラ3は、ペン5のペン先電極とセンサ電極群2との間の静電結合を介してこのペン信号PSを受信し、その結果によってペン5の位置を導出する。
【0022】
ペン信号PSは、無変調のキャリア信号であるバースト信号と、各種データによって変調されてなるデータ信号とを含む信号である。このうちバースト信号は、タッチコントローラ3がペン5の位置を導出するために使用される。すなわち、タッチコントローラ3は、センサ電極群2を構成する複数のセンサ電極のそれぞれについて、バースト信号の受信強度を検出する。そして、各センサ電極の位置と、それぞれにおける受信強度とに基づき、ペン5の位置を導出する。
【0023】
一方、データ信号は、ペン5からタッチコントローラ3に対して、各種データを送信するために使用される信号である。データ信号により送信される各種データには、複数のペン5にユニークに割り当てられるペンID、ペン5のペン先に加わる圧力を示す筆圧値などが含まれる。ペンIDは、ペン5のメモリ内に予め格納される。また、筆圧値は、ペン5に内蔵される圧力センサによって検出される。データ信号によりペン5が送信するデータの具体的な種類は、アップリンク信号US内のコマンドにより、タッチコントローラ3から指示される。
【0024】
図2は、タッチコントローラ3とペン5の間で送受信される信号のシーケンスを示す図である。同図及び後掲の各図において、信号Bはペン信号PSを構成するバースト信号を示し、信号Dはペン信号PSを構成するデータ信号を示し、受信期間Raはバースト信号Bの受信期間を示し、受信期間Rbはデータ信号Dの受信期間を示し、受信期間Rpはアップリンク信号USの受信期間を示し、期間Tは指Fによるタッチ動作の検出期間を示す。
【0025】
図2から理解されるように、通常モードで動作中のタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信を一定の周期T1(第1の周期)で繰り返し実行するよう構成される。また、この第1の周期T1の中で、アップリンク信号USの送信直後にペン5が送信したバースト信号Bの受信動作を実行するとともに、指Fによるタッチ動作の検出も行うよう構成される。なお、この場合のアップリンク信号USの送信電圧は、第1の電圧(例えば9V)となる。
【0026】
ペン5は、アップリンク信号USが受信されるまでの間、アップリンク信号USを受信できる状態で待機する。タッチ面に接近してアップリンク信号USが受信できるようになると、ペン5は、その後最初に送信されたアップリンク信号USを受信する。図2の例では、時刻t0で、ペン5がアップリンク信号USの受信可能範囲に侵入している。以下、ペン5によるアップリンク信号USの受信可能範囲への侵入を「ペンダウン」と称する。
【0027】
ペンダウン後にアップリンク信号USを受信したペン5がアップリンク信号USへの応答としてバースト信号Bを送信すると、タッチコントローラ3はこのバースト信号Bを受信し、上述したようにしてペン5の位置を導出する。また、ペン5はバースト信号Bに引き続いてデータ信号Dを送信する。タッチコントローラ3はこのデータ信号Dも受信し、復調することによって、ペン5が送信したデータを取得する。その後、図2には示していないが、タッチコントローラ3は、導出した位置及び取得したデータを含むレポートを生成し、ホストコンピュータ4に出力する。
【0028】
図2には、ペン5のペン先がタッチ面に触れた時刻t1も示している。以下、ペン5のペン先がタッチ面に触れることを「ペンタッチ」と称する。ペンタッチの後、ペン5が検出する筆圧値が0より大きい値に変化するが、送受信される信号の構成は、ペンタッチの前と同様である。
【0029】
図1に戻る。ホストコンピュータ4は、プロセッサ及びメモリと、ディスプレイや通信装置などの各種入出力装置とを含む装置である。タッチコントローラ3は、ホストコンピュータ4に設けられる各種入出力装置のうちの1つを構成する。ホストコンピュータ4は、オペレーティングシステム、各種アプリケーション、及び各種ハードウェアのドライバを含む各種ソフトウェアを実行可能に構成される。ドライバには、タッチコントローラ3のドライバ4aが含まれる。また、各種アプリケーションには、ペン入力に基づいてストロークデータを生成し、描画する描画アプリケーションが含まれる。
【0030】
描画アプリケーションの機能のうちペン入力に関わる部分について具体的に説明すると、描画アプリケーションは、タッチコントローラ3からレポートを受信すると、まずその中の位置データを取得する。そして、順次取得される複数の位置データに基づき、一連の制御点により構成されるストロークデータの生成を行う。また、描画アプリケーションは、レポートの中にペンIDが含まれていた場合には、そのペンIDに基づく処理を行う。この処理は、例えば、アプリケーション内においてそのペンIDに対応付けて描画色が設定されていた場合に、その描画色をストロークデータに設定する処理である。さらに、描画アプリケーションは、レポートの中に筆圧値が含まれていた場合には、その筆圧値に応じてストロークデータの線幅又は透明度などを設定する処理を行う。
【0031】
ドライバ4aは、タッチコントローラ3からレポートを受信して各種アプリケーションに渡す処理の他、レポートの受信が一定時間にわたり途絶えている場合に、タッチコントローラ3に対してサスペンド命令を送信する処理を行う。なお、このサスペンド命令の送信は、物理的には、ドライバ4aからタッチコントローラ3に所定の信号を送信することによって実行されてもよいし、ドライバ4aからタッチコントローラ3に通常送信している信号(例えば、上述したSOF)の送信を停止することによって実行されてもよい。サスペンド命令を受信したタッチコントローラ3は、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減したアップリンク省電力モードにエントリする。その後、タッチコントローラ3は、所定のトリガの検出動作を継続して行い、その結果として所定のトリガを検出したことに応じて、通常モードに復帰する。
【0032】
以下、サスペンド命令を受けたタッチコントローラ3が行う処理について、5つの例を挙げて詳しく説明する。
【0033】
図3は、第1の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。この例によるタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信電圧を下げることにより、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減する。また、所定のトリガとしては、送信電圧を下げて送信したアップリンク信号USに応じてペン5が送信したペン信号PSを使用する。以下、詳しく説明する。
【0034】
タッチコントローラ3は、時刻t2でサスペンド命令を受けてアップリンク省電力モードにエントリした後、アップリンク信号USに代えてアップリンク信号US'の送信を行う。アップリンク信号US'は、送信電圧が上述した第1の電圧(例えば9V)よりも低い第2の電圧(例えば3.3V)である点で、アップリンク信号USと異なる信号である。その他の点では、タッチコントローラ3の動作は通常モードのときと同様である。なお、以下で「ペンダウン状態」という場合、通常モードで送信されたアップリンク信号USの受信可能範囲にペン5が侵入している状態をいう。
【0035】
送信電圧が低いため、アップリンク信号US'の受信可能範囲は、アップリンク信号USの受信可能範囲に比べて狭くなる。その結果、ペン5は、アップリンク信号US'を受信できるようになるためには、アップリンク信号USの受信よりもさらにタッチ面に近づく必要がある。図2の例では、時刻t3でペンダウン状態になっているにも関わらず、ペン5は、その直後に送信されたアップリンク信号US'を受信できていない。これは、ペン5がアップリンク信号USの受信可能範囲に入ったものの、まだアップリンク信号US'の受信可能範囲に入っていないからである。しかし、通常、ユーザがペン5を使用して入力を行う際には、ペン5はどんどんタッチ面に近づいてくる。その結果、ペン5は、その次のアップリンク信号US'を受信できている。タッチコントローラ3は、こうしてアップリンク信号US'を受信したペン5が送信したペン信号PSを受信したことに応じて、時刻t4で通常モードに復帰する。
【0036】
図4は、第2の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。この例によるタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信周期を延ばすことにより、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減する。また、所定のトリガとしては、第1の例と同様、アップリンク信号USに応じてペン5が送信したペン信号PSを使用する。以下、詳しく説明する。
【0037】
タッチコントローラ3は、時刻t5でサスペンド命令を受けてアップリンク省電力モードにエントリした後、アップリンク信号USの送信周期を上述した第1の周期T1から、より長い第2の周期T2(>T1)に変更する。これに伴い、バースト信号Bの受信周期及びタッチ検出動作の実行周期も、第1の周期T1から第2の周期T2に変更される。その他の点では、タッチコントローラ3の動作は通常モードのときと同様である。
【0038】
アップリンク信号USの送信周期が長いため、通常モードに比べると、アップリンク省電力モードではペン5の検出タイミングが遅くなる。しかし、いつまでも検出できないわけではなく、いずれはペン5を検出することができる。図4の例でも、時刻t6でペン5がペンダウン状態になった後の時刻t7で、タッチコントローラ3はペン5が送信したペン信号PSを検出できている。ここで、時刻t7は、時刻t6よりも最大で第2の周期T2だけ後の時刻となる。タッチコントローラ3は、こうしてペン信号PSを検出したことに応じて、通常モードに復帰する。
【0039】
図5は、第3の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。この例によるタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信頻度を減らすことにより、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減する。また、所定のトリガとしては、第1及び第2の例と同様、アップリンク信号USに応じてペン5が送信したペン信号PSを使用する。以下、詳しく説明する。
【0040】
タッチコントローラ3は、時刻t8でサスペンド命令を受けてアップリンク省電力モードにエントリした後、アップリンク信号USの送信頻度を第1の頻度(第1の周期T1ごとに1回)から第2の頻度(例えば第1の周期T1のn倍ごとに1回。nは2以上の整数)に変更する。なお、図5にはn=2の例を示している。これに伴い、バースト信号Bの受信動作の実行頻度も、第1の頻度から第2の頻度に変更される。その他の点では、タッチコントローラ3の動作は通常モードのときと同様である。
【0041】
アップリンク信号USの送信頻度が少ないため、通常モードに比べると、アップリンク省電力モードではペン5の検出タイミングが遅くなる。しかし、いつまでも検出できないわけではなく、いずれはペン5を検出することができる。図4の例でも、時刻t9でペン5がペンダウン状態になった後の時刻t10で、タッチコントローラ3はペン5が送信したペン信号PSを検出できている。ここで、時刻t10は、時刻t9よりも最大でn×T1だけ後の時刻となる。タッチコントローラ3は、こうしてペン信号PSを検出したことに応じて、通常モードに復帰する。
【0042】
図6は、第4の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。この例によるタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信を停止することにより、アップリンク信号の送信にかかる電力を削減する。また、所定のトリガとしては、指タッチの検出を使用する。以下、詳しく説明する。
【0043】
タッチコントローラ3は、時刻t11でサスペンド命令を受けてアップリンク省電力モードにエントリした後、アップリンク信号USの送信を停止する。これに伴い、バースト信号Bの受信動作も停止される。その他の点では、タッチコントローラ3の動作は通常モードのときと同様である。
【0044】
この例では、タッチコントローラ3がアップリンク信号USを送信しなくなるため、ペン5はペン信号PSを送信できない。図6の例では、時刻t12でペンダウンが発生しているが、アップリンク信号USが送信されないので、ペン5がペン信号PSを送信することはない。したがって、タッチコントローラ3を通常モードに復帰させるために、ペン信号PSの受信をトリガとして使用することはできない。
【0045】
そこでこの例では、タッチコントローラ3が周期的に実行しているタッチ検出動作を利用する。具体的には、時刻t13で指Fによるタッチ動作が検出されたことに応じて、タッチコントローラ3を通常モードに復帰させる。こうすることで、その後はアップリンク信号USの送信が再開されるので、通常どおり、タッチコントローラ3によるペン5の検出が可能になる。
【0046】
図7は、第5の例によるタッチコントローラ3の処理を示す図である。この例では、ペン5を、ペンタッチの検出に応じてペン信号PSの送信を開始するように構成する。なお、ペン5は、上述した圧力センサによってペン先に圧力が加えられたこと(すなわち、筆圧値が0より大きい値になったこと)を検出した場合に、ペンタッチを検出すればよい。タッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信を停止することによりアップリンク信号の送信にかかる電力を削減する一方で、アップリンク省電力モードにエントリしている間、断続的にペン信号PS(バースト信号B)の受信動作を行うよう構成される。この例による所定のトリガは、この受信動作によって受信されるペン信号PSとなる。以下、詳しく説明する。
【0047】
タッチコントローラ3は、時刻t14でサスペンド命令を受けてアップリンク省電力モードにエントリした後、アップリンク信号USの送信を停止する。また、タッチ検出動作を行っていないときに、バースト信号Bの受信動作を行う。その他の点では、タッチコントローラ3の動作は通常モードのときと同様である。
【0048】
ペン5は、時刻t15でペンタッチを検出すると、一定期間にわたりバースト信号Bの送信を行い、その後、アップリンク信号USの受信待機に戻る。タッチコントローラ3は、こうして送信されたバースト信号Bを検出したことに応じて、時刻t16で通常モードに復帰する。その後はアップリンク信号USの送信が再開されるので、通常どおり、タッチコントローラ3によるペン5の検出が可能になる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アップリンク信号USに関わらず(すなわち、アップリンク省電力モードで動作中にアップリンク信号USを送信してもしなくても)、所定のトリガによって、アップリンク省電力モードで動作中のタッチコントローラ3を通常モードに復帰させることができる。したがって、タッチコントローラ3の低消費電力化が実現される。
【0050】
また、特に第5の例によれば、ペン5がペンタッチの検出に応じてペン信号PSの送信を開始するので、アップリンク省電力モードでアップリンク信号USの送信を停止したとしても、ペン信号PSをトリガとしてタッチコントローラ3を通常モードに復帰させることが可能になる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0052】
例えば、上述した第1~第5の例は、単独で用いてもよいし、任意の組み合わせで用いることも可能である。例えば、アップリンク省電力モードにエントリしたタッチコントローラ3は、アップリンク信号USの送信電圧を下げ、送信周期を延ばし、送信頻度を減らすこととしてもよい。また、アップリンク信号USの送信を停止することによりアップリンク信号の送信にかかる電力を削減する場合、通常モードに復帰するための所定のトリガとして、指タッチの検出と、ペン5がペンタッチの検出に応じてペン信号PSの検出との両方を用いることとしてもよい。また、アップリンク信号USの送信を停止しない場合であっても、通常モードに復帰するための所定のトリガとして、指タッチの検出を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ペン入力装置
2 センサ電極群
2x,2y 電極
4 ホストコンピュータ
4a タッチコントローラ3のドライバ
5 ペン
10 ペン入力システム
B バースト信号
D データ信号
F 指
PS ペン信号
Ra バースト信号Bの受信期間
Rb データ信号Dの受信期間
Rp アップリンク信号USの受信期間
T タッチ動作の検出期間
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7