(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】採乳補助具および採乳装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/06 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
A61M1/06
(21)【出願番号】P 2019223127
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】森 知佳子
(72)【発明者】
【氏名】落合 志文
(72)【発明者】
【氏名】豊永 倫子
(72)【発明者】
【氏名】市村 真英
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/007674(WO,A1)
【文献】特開2001-314503(JP,A)
【文献】特開2001-004500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0065996(US,A1)
【文献】特開2003-024433(JP,A)
【文献】特表2010-510007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/06
A61M 1/00
A61M 5/145
G01N 1/00
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾られた母乳を吸引する採乳器の吸引動作を補助する採乳補助具であって、
吸引された前記母乳を一時的に貯留する前記採乳器のシリンダを保持する本体と、
内側に設けられたラックを有し、前記本体に対して
前記本体の内部から後退する方向および前記本体の内部に進入する方向に移動可能に取り付けられ、前記シリンダの内部に対して進退可能に挿入された前記採乳器のピストンを支持するピストン支持体と、
使用者により操作される回転体であって、軸の周りに設けられ前記ラックに噛み合ったピニオンを有し、前記軸により前記本体に対して回転可能に取り付けられ、
前記ピストン支持体の移動方向の力を付与され回転することにより前記ピストン支持体を移動させ前記ピストン支持体に支持された前記ピストンを前記シリンダの内部から後退させる方向に移動させる回転体と、
を備えたことを特徴とする採乳補助具。
【請求項2】
前記本体は、前記本体の外面に設けられ前記外面において前記シリンダを保持する保持部
と、前記外面に設けられ前記保持部とともに前記シリンダの鍔部を挟むシリンダ支持部と、を有
し、
前記シリンダ支持部は、前記保持部の開口と同じ側に形成された開口であって前記ピストンの軸部が通過可能な開口を有する切欠部を有することを特徴とする請求項1に記載の採乳補助具。
【請求項3】
前記本体は、前記本体を平面に載置可能とする支持脚を有し、
前記支持脚は、前記本体が前記平面に載置されたときに前記シリンダの吸引吐出口が上向きになる状態で前記本体を支持することを特徴とする請求項1または2に記載の採乳補助具。
【請求項4】
前記ピストン支持体は、さらに前記ピストンを前記シリンダの内部に進入させる方向に移動可能に前記ピストンを支持することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の採乳補助具。
【請求項5】
搾られた母乳を吸引する採乳器と、
前記採乳器の吸引動作を補助する採乳補助具と、
を備え、
前記採乳器は、
吸引された前記母乳を一時的に貯留するシリンダと、
前記シリンダの内部に対して進退可能に挿入されたピストンと、
を有し、
前記採乳補助具は、
前記シリンダを保持する本体と、
内側に設けられたラックを有し、前記本体に対して
前記本体の内部から後退する方向および前記本体の内部に進入する方向に移動可能に取り付けられ、前記ピストンを支持するピストン支持体と、
使用者により操作される回転体であって、軸の周りに設けられ前記ラックに噛み合ったピニオンを有し、前記軸により前記本体に対して回転可能に取り付けられ、
前記ピストン支持体の移動方向の力を付与され回転することにより前記ピストン支持体を移動させ前記ピストン支持体に支持された前記ピストンを前記シリンダの内部から後退させる方向に移動させる回転体と、
を有することを特徴とする採乳装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採乳補助具および採乳装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、母乳に含まれる栄養および抗体などの観点から、母乳育児のメリットが指摘されることがある。特に、分娩後の5日間程度あるいは10日間程度に分泌される初乳は、成熟乳と比較して、たんぱく質や、分泌型免疫グロブリンA(sIgA)などの抗体を豊富に含んでいる。そのため、初乳を乳児に与える重要性が指摘されることが比較的多い。また、母親においても、「ぜひ母乳育児を行いたい。」あるいは「できれば母乳育児を行いたい。」などのように、母乳育児を希望する母親は比較的多い。
【0003】
しかし、例えば乳児が新生児集中治療室(NICU:Neonatal Intensive Care Unit)に入院している場合などのように、乳児と母親とが互いに離れた状態(母子分離状態)では、母親は、母親自身の乳房から直接的に乳児に母乳を与えることができない。そのため、母子分離状態では、母親は、例えば特許文献1に開示されたような吸引器などを用いて、搾った母乳を吸引し一時的に貯留する。そして、例えば病院のスタッフなどが、吸引器に一時的に貯留された母乳を乳児に与える。
【0004】
しかし、例えば分娩直後などのように、母乳の準備が十分に整っていないときには、母乳が出ないことがある。これは、NICUに入院中の乳児を出産した母親だけに生ずる現象ではなく、正期産児を出産した母親においても生じ得る現象である。この場合には、母親は、一方の手で乳房マッサージを行いつつ、他方の手で吸引器を操作し、搾った母乳を吸引器で吸引する。しかし、この動作が容易ではないという問題がある。例えば、乳房マッサージの刺激が不十分になったり、母乳の取りこぼしが生じたりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる採乳補助具および採乳装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、搾られた母乳を吸引する採乳器の吸引動作を補助する採乳補助具であって、吸引された前記母乳を一時的に貯留する前記採乳器のシリンダを保持する本体と、前記本体に対して移動可能に取り付けられ、前記シリンダの内部に対して進退可能に挿入された前記採乳器のピストンを支持するピストン支持体と、前記本体に対して回転可能に取り付けられ、回転することにより前記ピストン支持体を移動させ前記ピストン支持体に支持された前記ピストンを前記シリンダの内部から後退させる方向に移動させる回転体と、を備えたことを特徴とする本発明に係る採乳補助具により解決される。
【0008】
本発明に係る採乳補助具は、採乳器のシリンダを保持する本体と、採乳器のピストンを支持するピストン支持体と、回転体と、を備え、搾られた母乳を吸引する採乳器の吸引動作を補助する。採乳器のシリンダは、吸引された母乳を一時的に貯留する。採乳器のピストンは、シリンダの内部に対して進退可能に挿入されている。そして、ピストン支持体は、本体に対して移動可能に取り付けられ、採乳器のピストンを支持している。また、回転体は、本体に対して回転可能に取り付けられている。そして、回転体は、回転することにより、ピストン支持体を移動させピストン支持体に支持されたピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させる。つまり、回転体は、回転することにより、ピストン支持体を介してピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させる。
【0009】
これにより、本発明に係る採乳補助具の使用者は、例えば、採乳補助具の本体を把持し、親指などで回転体を操作し回転させることにより、ピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させることができる。そのため、使用者は、ピストンを直接的に直線移動させなくとも、親指などで回転体を回転させることにより回転体を介して間接的にピストンを直線移動させることができる。これにより、使用者は、本発明に係る採乳補助具を用いて、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる。例えば、母親は、一方の手で乳房マッサージを行いつつ、他方の手で採乳補助具の回転体を操作するだけで、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる。
【0010】
本発明に係る採乳補助具において、好ましくは、前記本体は、前記本体の外面に設けられ前記外面において前記シリンダを保持する保持部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る採乳補助具によれば、採乳器のシリンダは、本体の外面に設けられた保持部に保持される。そのため、採乳器は、採乳補助具の本体の外面に取り付けられる。そのため、採乳器は、採乳補助具の内部に収納されるわけではなく、採乳補助具の外部に露出した状態になる。これにより、使用者は、シリンダの外面を直接叩くことができる。この叩く操作を行いながら、ピストンをシリンダの内部に進入させることで、シリンダの内部から空気抜きを行うことができる。このような空気抜きの際、シリンダが露出していることで、シリンダの内部の状態を目視で確認することもできる。
【0012】
本発明に係る採乳補助具において、好ましくは、前記本体は、前記本体を平面に載置可能とする支持脚を有し、前記支持脚は、前記本体が前記平面に載置されたときに前記シリンダの吸引吐出口が上向きになる状態で前記本体を支持することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る採乳補助具によれば、本体が例えばテーブル上面などの平面に載置されたときに、シリンダの吸引吐出口が上向きになる。そのため、本体が例えばテーブル上面などの平面に載置された状態において、使用者は、シリンダの内部の空気を容易に抜くことができる。
【0014】
本発明に係る吸引補助具において、好ましくは、前記ピストン支持体は、さらに前記ピストンを前記シリンダの内部に進入させる方向に移動可能に前記ピストンを支持することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る吸引補助具によれば、使用者は、例えば、後退方向の端部近傍まで移動したピストンをシリンダの内部に進入させる方向に移動させ、複数回にわたって吸引動作を行う場合において、回転体を操作し回転させることにより、ピストンをシリンダの内部に進入させる方向に容易に移動させることができる。そして、使用者は、再び、回転体を操作し回転させることにより、ピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させ、複数回にわたって、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる。
【0016】
前記課題は、搾られた母乳を吸引する採乳器と、前記採乳器の吸引動作を補助する採乳補助具と、を備え、前記採乳器は、吸引された前記母乳を一時的に貯留するシリンダと、前記シリンダの内部に対して進退可能に挿入されたピストンと、を有し、前記採乳補助具は、前記シリンダを保持する本体と、前記本体に対して移動可能に取り付けられ、前記ピストンを支持するピストン支持体と、前記本体に対して回転可能に取り付けられ、回転することにより前記ピストン支持体を移動させ前記ピストン支持体に支持された前記ピストンを前記シリンダの内部から後退させる方向に移動させる回転体と、を有することを特徴とする本発明に係る採乳装置により解決される。
【0017】
本発明に係る採乳装置は、搾られた母乳を吸引する採乳器と、採乳器の吸引動作を補助する採乳補助具と、を備える。採乳補助具は、採乳器のシリンダを保持する本体と、採乳器のピストンを支持するピストン支持体と、回転体と、を備え、採乳器の吸引動作を補助する。採乳器のシリンダは、吸引された母乳を一時的に貯留する。採乳器のピストンは、シリンダの内部に対して進退可能に挿入されている。そして、ピストン支持体は、本体に対して移動可能に取り付けられ、採乳器のピストンを支持している。また、回転体は、本体に対して回転可能に取り付けられている。そして、回転体は、回転することにより、ピストン支持体を移動させピストン支持体に支持されたピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させる。つまり、回転体は、回転することにより、ピストン支持体を介してピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させる。
【0018】
これにより、本発明に係る採乳装置の使用者は、例えば、採乳補助具の本体を把持し、親指などで回転体を操作し回転させることにより、ピストンをシリンダの内部から後退させる方向に移動させることができる。そのため、使用者は、ピストンを直接的に直線移動させなくとも、親指などで回転体を回転させることにより回転体を介して間接的にピストンを直線移動させることができる。これにより、使用者は、本発明に係る採乳装置を用いて、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる。例えば、母親は、一方の手で乳房マッサージを行いつつ、他方の手で採乳補助具の回転体を操作するだけで、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搾られた母乳を採乳器で容易に吸引することができる採乳補助具および採乳装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る採乳装置を採乳器の側から見たときの斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る採乳装置を回転体の側からみたときの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る採乳補助具がピストンをシリンダの内部から後退させ状態を採乳器の側から見たときの斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る採乳補助具がピストンをシリンダの内部から後退させた状態を回転体の側から見たときの斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る採乳補助具を表す斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る採乳装置および採乳補助具の作用を説明する平面図である。
【
図9】本実施形態に係る採乳補助具の本体が平面に載置された状態を表す平面図である。
【
図10】本実施形態の変形例に係る採乳装置を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る採乳装置を採乳器の側から見たときの斜視図である。
図2は、本実施形態に係る採乳装置を回転体の側からみたときの斜視図である。
図3は、本発明の実施形態に係る採乳補助具がピストンをシリンダの内部から後退させ状態を採乳器の側から見たときの斜視図である。
図4は、本実施形態に係る採乳補助具がピストンをシリンダの内部から後退させた状態を回転体の側から見たときの斜視図である。
図5は、本実施形態に係る採乳補助具を表す斜視図である。
図6および
図7は、本実施形態の回転体を表す斜視図である。
【0023】
本実施形態に係る採乳装置2は、搾られた母乳を吸引する採乳器4と、採乳器4の吸引動作を補助する採乳補助具3と、を備える。採乳器4は、シリンダ41と、ピストン42と、を有する。シリンダ41は、吸引吐出口412を有し、吸引吐出口412を通して吸引された母乳を一時的に貯留する。ピストン42は、シリンダ41の内部に挿入されており、シリンダ41の内部に進入する方向と、シリンダ41の内部から後退する方向と、に移動することができる。本実施形態の採乳器4は、栄養摂取や栄養投与のために病院等で一般的に使用される吸引器である。シリンダ41の種類(容量)としては、例えば、1.0mL用、2.0mL用、5mL用、10mL用などが挙げられる。但し、シリンダ41の種類は、これだけに限定されるわけではない。採乳器4は、シリンダ41と、ピストン42と、を有する限りにおいて、特には限定されない。
【0024】
採乳補助具3は、本体31と、ピストン支持体32と、回転体33と、を有する。本体31は、第1本体部311と、第2本体部312と、を有し、ピストン支持体32の少なくとも一部および回転体33の少なくとも一部を収納するとともに、採乳器4のシリンダ41を保持する。
【0025】
第1本体部311は、外面314に設けられた第1保持部313aおよび第2保持部313bを有する。本実施形態の第1保持部313aおよび第2保持部313bは、本発明の「保持部」の一例である。
図1および
図3に表したように、第1保持部313aおよび第2保持部313bは、シリンダ41の外周部を挟んで把持することにより、第1本体部311の外面314においてシリンダ41を保持することができる。
【0026】
図1および
図3に表したように、本実施形態の第1本体部311は、2つの保持部313a、313bを有する。保持部313a、313bがシリンダ41を保持した状態において、第1保持部313aは、シリンダ41の鍔部411の近傍に設けられ、第2保持部313bは、シリンダ41の吸引吐出口412の近傍に設けられている。このように、2つの保持部313a、313bは、シリンダ41の鍔部411の近傍と、シリンダ41の吸引吐出口412の近傍と、の互いに離れた位置においてシリンダ41を保持するため、より安定的にシリンダ41を保持することができる。なお、保持部の数は、2つに限定されるわけではない。本実施形態の説明では、2つの保持部313a、313bが設けられた場合を例に挙げる。
【0027】
図5に表したように、第1本体部311は、外面314に設けられた溝部319を有する。溝部319は、シリンダ41が第1保持部313aおよび第2保持部313bに保持された状態においてシリンダ41の長手方向に延びており、シリンダ41の一部を長手方向にわたって収容する。これにより、第1本体部311は、さらに安定的にシリンダ41を保持することができる。
【0028】
また、第1本体部311は、シリンダ支持部315を有する。シリンダ支持部315は、第1保持部313aと離れて設けられ、第1保持部313aとともにシリンダ41の鍔部411を挟む。これにより、シリンダ支持部315および第1保持部313aは、シリンダ41がシリンダ41の長手方向に移動することを抑える。例えば、ピストン42がシリンダ41の内部から後退する方向に移動する場合には、シリンダ41は、ピストン42から摩擦力を受け、シリンダ41の長手方向のうち吸引吐出口412から鍔部411に向かって(
図1および
図3では上方向へ)移動しようとする。シリンダ支持部315は、このようなシリンダ41の動きを抑える。また、例えば、ピストン42がシリンダ41の内部に進入する方向に移動する場合には、シリンダ41は、ピストン42から摩擦力を受け、シリンダ41の長手方向のうち鍔部411から吸引吐出口412に向かって(
図1および
図3では下方向へ)移動しようとする。第1保持部313aは、このようなシリンダ41の動きを抑える。
【0029】
第2本体部312は、第1本体部311に取り付けられており、第1本体部311とともにピストン支持体32の少なくとも一部および回転体33の少なくとも一部を収納する。
図2および
図4に表したように、第2本体部312は、支持脚317を有する。支持脚317は、第1外面318aに設けられ、第1外面318aから外側に向かって突出している。本実施形態の第1外面318aは、本発明の「外面」の一例である。本実施形態に係る採乳補助具3において、第1外面318aは、回転体33を第1本体部311とともに挟み込む第2本体部312の部分の外面(第2外面318b)から第1本体部311に向かって後退した部分の外面である。第1外面318aと第2外面318bとの間の関係の詳細については、後述する。また、支持脚317は、本体31を平面に載置可能とする。この詳細については、後述する。本実施形態に係る採乳補助具3では、2つの支持脚317が設けられている。但し、支持脚317の数は、特に限定されるわけではない。
【0030】
ピストン支持体32は、本体31に対して移動可能に取り付けられ、採乳器4のピストン42を支持する。具体的には、ピストン支持体32は、
図4に表した矢印A2のように本体31の内部から後退する方向に移動したり、
図4に表した矢印A4のように本体31の内部に進入する方向に移動したりすることができる。ピストン支持体32の移動は、回転体33が回転することにより実行される。
【0031】
具体的に説明すると、
図4に表したように、ピストン支持体32は、ピストン支持体32の内側に設けられたラック323を有する。また、
図6に表したように、回転体33は、軸334の周りに設けられたピニオン333を有する。ピストン支持体32のラック323は、回転体33のピニオン333に噛み合っている。これにより、ピストン支持体32は、回転体33が回転することにより、本体31の内部から後退する方向と、本体31の内部に進入する方向と、に移動することができる。本実施形態に係る採乳補助具3では、回転体33が
図4に表した矢印A1の方向に回転すると、ピストン支持体32は、
図4に表した矢印A2のように本体31の内部から後退する方向に移動する。一方で、回転体33が
図4に表した矢印A3の方向に回転すると、ピストン支持体32は、
図4に表した矢印A4のように本体31の内部に進入する方向に移動する。なお、回転体33の回転方向と、ピストン支持体32の移動方向と、の関係は、これだけに限定されるわけではない。
【0032】
ピストン支持体32は、ピストン支持部321を有する。
図1および
図5に表したように、ピストン支持部321は、第1本体部311の外面314に向かって本体31の内部から突出し、切欠部322を有する。
図1に表したように、採乳器4が採乳補助具3に装着すなわち保持されるときには、ピストン42の軸部がピストン支持部321の切欠部322に挿入される。これにより、ピストン支持体32は、ピストン支持部321により採乳器4のピストン42を支持することができる。
【0033】
回転体33は、第1本体部311と第2本体部312とにより挟み込まれており、採乳補助具3の通常使用状態においては、本体31から分離されないようになっている。また、回転体33は、本体31に対して回転可能に取り付けられている。具体的には、
図6および
図7に表したように、回転体33は、軸334を有し、軸334により本体31に対して回転自在に支持されている。これにより、回転体33は、本体31の内部において軸334を中心として回転することができる。
【0034】
前述したように、回転体33は、軸334の周りに設けられたピニオン333を有する。回転体33のピニオン333は、ピストン支持体32のラック323に噛み合っている。これにより、回転体33は、回転することにより、本体31の内部から後退する方向と、本体31の内部に進入する方向と、にピストン支持体32を移動させることができる。
【0035】
図6および
図7に表したように、回転体33は、外周部に設けられたグリップ部331を有する。グリップ部331は、円周方向に所定の間隔で離れて設けられた複数の溝を有する。複数の溝のそれぞれは、回転体33の軸334に沿うように延びている。これにより、採乳補助具3の使用者は、回転体33を指で回転させる際にグリップ部331に指を当てることにより、回転体33に対して指を滑らせることなく容易に回転体33を回転させることができる。
【0036】
また、回転体33は、外周の角部に設けられたテーパ部332を有する。テーパ部332は、グリップ部331と、円板表面335と、の間の角部に設けられた面取り部である。円板表面335は、回転体33の外周面に対して略直角をなす主面である。軸334は、円板表面335の中心部を貫通するように設けられている。テーパ部332が外周の角部に設けられていることにより、採乳補助具3の使用者は、例えば痛みなどの違和感を覚えることなく、容易に回転体33を回転させることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る採乳装置2および採乳補助具3の作用を、図面を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る採乳装置および採乳補助具の作用を説明する平面図である。
【0038】
まず、本実施形態に係る採乳装置2の使用者は、採乳装置2を使用する際に、採乳器4を採乳補助具3に装着する。例えば、使用者は、
図1に表した矢印A5の方向に採乳器4を移動させ、採乳器4のシリンダ41を第1保持部313aおよび第2保持部313bに挟み保持させる。このとき、使用者は、シリンダ41の鍔部411をシリンダ支持部315と第1保持部313aとの間に設置する。また、使用者は、ピストン42の先端部421をピストン支持部321の表面(
図1では上面)に載置する。
【0039】
図1、
図3および
図5に表したように、シリンダ支持部315は、切欠部316を有する。切欠部316は、第1保持部313aおよび第2保持部313bの開口と同じ側に開口を有し、
図1に表した矢印A5の方向に向かって移動するピストン42の軸部を通すことができる。つまり、切欠部316は、周囲が部材により囲まれた孔として形成されているわけではなく、第1保持部313aおよび第2保持部313bの開口と同じ側が開かれた切り欠きとして形成されている。また、前述したように、ピストン支持部321は、切欠部322を有する。切欠部322は、第1保持部313aおよび第2保持部313bの開口と同じ側に開口を有し、
図1に表した矢印A5の方向に向かって移動するピストン42の軸部を通すことができる。つまり、切欠部322は、周囲が部材により囲まれた孔として形成されているわけではなく、第1保持部313aおよび第2保持部313bの開口と同じ側が開かれた切り欠きとして形成されている。そのため、使用者は、ピストン42をシリンダ41から取り外すことなく、
図1に表した矢印A5の方向に採乳器4を移動させることにより採乳器4を採乳補助具3に装着することができる。
【0040】
続いて、使用者は、例えば親指51で回転体33を
図8に表した矢印A1の方向に回転させる。この際、回転体33のピニオン333がピストン支持体32のラック323に噛み合っていることにより、ピストン支持体32は、
図4に表した矢印A2の方向の力を受け、本体31の内部から後退する方向(
図4に表した矢印A2の方向)に移動する。そうすると、ピストン42の先端部421は、ピストン支持部321の表面(
図1では上面)に載置されていることにより、ピストン支持部321から
図4に表した矢印A2の方向の力を受ける。これにより、ピストン42は、シリンダ41の内部から後退する方向(
図3および
図4に表した矢印A2の方向)に移動する。これにより、採乳器4は、搾られた母乳を吸引吐出口412を通してシリンダ41の内部に吸引し、シリンダ41の内部において一時的に貯留することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る採乳装置2および採乳補助具3によれば、回転体33は、回転することにより、ピストン支持体32を移動させピストン支持体32に支持されたピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させる。つまり、回転体33は、回転することにより、ピストン支持体32を介してピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させる。
【0042】
これにより、採乳補助具3の使用者は、例えば、採乳補助具3の本体31を把持し、親指51などで回転体33を操作し回転させることにより、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させることができる。そのため、使用者は、ピストン42を直接的に直線移動させなくとも、親指51などで回転体33を回転させることにより回転体33を介して間接的にピストン42を直線移動させることができる。これにより、使用者は、採乳補助具3を用いて、搾られた母乳を採乳器4で容易に吸引することができる。例えば、母親は、一方の手で乳房マッサージを行いつつ、他方の手で採乳補助具3の回転体33を操作するだけで、搾られた母乳を採乳器4で容易に吸引することができる。
【0043】
また、採乳器4のシリンダ41は、第1本体部311の外面314に設けられた第1保持部313aおよび第2保持部313bに保持される。そのため、採乳器4は、第1本体部311の外面314に取り付けられる。そのため、採乳器4は、採乳補助具3の内部に収納されるわけではなく、採乳補助具3の外部に露出した状態になる。これにより、使用者は、シリンダ41の外面を直接叩くことができる。この叩く操作を行いながら、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させることで、シリンダ41の内部から空気抜きを行うことができる。このような空気抜きの際、シリンダ41が露出していることで、シリンダの内部の状態を目視で確認することもできる。
【0044】
また、前述したように、使用者は、ピストン42をシリンダ41から取り外すことなく、
図1に表した矢印A5の方向に採乳器4を移動させることにより採乳器4を採乳補助具3に装着することができる。これにより、使用者は、例えばシリンダ41の内部やピストン42の軸部の外面などの衛生的な状態を確保することができる。
【0045】
また、使用者は、例えば親指51で回転体33を
図8に表した矢印A1の方向に回転させ、ピストン支持体32の移動方向(
図4に表した矢印A2および矢印A4参照)の力を回転体33に付与することができる。言い換えれば、本実施形態に係る採乳補助具3では、使用者は、ピストン支持体32の移動方向に交差する方向の力を回転体33に付与するわけではない。このように、使用者は、ピストン支持体32の移動方向の力を回転体33に付与し回転体33を回転させることにより、ピストン支持体32を介してピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させることができる。これにより、
図8に表したように、使用者は、本体31を把持した状態で、例えば親指51などが屈曲する方向の力を回転体33に付与することができる。そのため、使用者は、指の構造上、回転体33を楽に操作し回転させることができる。
【0046】
なお、
図8は、使用者が右手で回転体33を操作する状態を表している。使用者が左手で回転体33を操作する場合には、採乳補助具3を表裏反対に把持することで、左手の親指が屈曲する方向の力を回転体33に付与し回転体33を回転させることにより、ピストン支持体32を介してピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させることができる。すなわち、使用者は、第1本体部311が左手の掌の側に配置され、第2本体部312が左手の薬指や小指の側に配置されるように採乳補助具3を把持することで、採乳補助具3を右手で把持した場合と同様に親指などの屈曲を利用して回転体33を容易に回転させることができる。なお、使用者が採乳補助具3を表裏反対に把持する場合であっても、第1保持部313aおよび第2保持部313bがシリンダ41の外周部を挟んで把持しているため、採乳器4の落下を抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る採乳装置2および採乳補助具3は、回転方式により、搾られた母乳を採乳器4で吸引する。すなわち、回転体33が、回転することにより、ピストン支持体32を介してピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させる。これにより、採乳器4は、搾られた母乳を吸引吐出口412を通してシリンダ41の内部に吸引する。そのため、使用者が所定の部材を直線的に押したり引いたりするプッシュ・プル方式の採乳補助具と比較して、採乳補助具3を小型化することができる。
【0048】
図9は、本実施形態に係る採乳補助具の本体が平面に載置された状態を表す平面図である。
図1~
図5に関して前述したように、第2本体部312は、支持脚317を有する。支持脚317は、第2本体部312の第1外面318aに設けられ、第2本体部312の第1外面318aから外側に向かって突出している。
図9に表したように、支持脚317は、本体31を平面6に載置可能とする。
【0049】
支持脚317の先端部は、第1本体部311と第2本体部312との接続部分からみて第2本体部312のうちで最も遠い部分(高い部分)である。
図9に表したように、第1外面318aあるいは第2外面318bの法線方向に沿ってみたときに、支持脚317の先端部と第2外面318bとの間には、段差D1が生じている。
【0050】
そのため、
図9に表したように、支持脚317及び第2本体部312の外面(第1及び第2外面318a、318b)を平面6と向き合わせ、支持脚317及び第2外面318bの端部が平面6に接触するよう採乳補助具3を平面6に載置すると、支持脚317は、シリンダ41を平面6に対して傾斜角A11で傾斜した状態で支持する。
【0051】
これによれば、本体31が例えばテーブル上面などの平面6に載置された状態において、使用者は、例えばシリンダ41の外面を叩いたり、採乳器4を保持した採乳補助具3を平面6に叩いたりすることにより、シリンダ41の内部の空気を容易に抜くことができる。
【0052】
次に、本実施形態の変形例に係る採乳装置2Aについて説明する。
なお、本変形例に係る採乳装置2Aの構成要素が、
図1~
図9に関して前述した本実施形態に係る採乳装置2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0053】
図10は、本実施形態の変形例に係る採乳装置を表す平面図である。
本変形例に係る採乳装置2Aは、搾られた母乳を吸引する採乳器4と、採乳器4の吸引動作を補助する採乳補助具3Aと、を備える。採乳器4は、
図1~
図9に関して前述した採乳器4と同じである。
【0054】
本変形例に係る採乳補助具3Aは、本体31Aと、ピストン支持体32Aと、回転体33と、を有する。本体31Aは、第1本体部311Aと、第2本体部312と、を有し、ピストン支持体32Aの少なくとも一部および回転体33の少なくとも一部を収納するとともに、採乳器4のシリンダ41を保持する。回転体33は、
図1~
図9に関して前述した回転体33と同じである。また、第2本体部312は、
図1~
図9に関して前述した第2本体部312と同じである。
【0055】
図1~
図9に関して前述した第1本体部311は、
図8に表したように略矩形状である。これに対して、本変形例の第1本体部311Aは、使用者の把持する部分が外側に膨らんだ形状を有する。そのため、第1本体部311Aの外側に膨らんだ部分が、使用者の手の母指球52に当たり、使用者の掌の形状に合いやすい。これにより、使用者は、採乳補助具3Aを把持しやすい。
【0056】
また、ピストン支持体32Aは、第1ピストン支持部321Aと、第2ピストン支持部321Bと、を有する。第1ピストン支持部321Aは、
図1~
図9に関して前述したピストン支持部321に相当する。本変形例のピストン支持体32Aは、
図1~
図9に関して前述したピストン支持体32と比較して、第2ピストン支持部321Bをさらに有する。第2ピストン支持部321Bは、第1ピストン支持部321Aと離れて設けられ、第1ピストン支持部321Aとともにピストン42の先端部421を挟む。すなわち、
図10に表したように、採乳器4が採乳補助具3Aに保持された状態において、ピストン42の先端部421は、第1ピストン支持部321Aと、第2ピストン支持部321Bと、の間に設置される。
【0057】
本変形例のピストン支持体32Aは、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向と、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向と、に移動可能にピストン42を支持する。すなわち、使用者は、例えば親指51で回転体33を
図10に表した矢印A1の方向に回転させる。そうすると、ピストン支持体32Aは、
図10に表した矢印A2の方向の力を受け、本体31の内部から後退する方向(
図10に表した矢印A2の方向)に移動する。この際、ピストン42の先端部421は、第1ピストン支持部321Aの表面(
図10では上面)から
図10に表した矢印A2の方向の力を受ける。これにより、ピストン42は、シリンダ41の内部から後退する方向(
図10に表した矢印A2の方向)に移動する。
【0058】
一方で、使用者は、例えば人差し指53で回転体33を
図10に表した矢印A3の方向に回転させる。そうすると、ピストン支持体32Aは、
図10に表した矢印A4の方向の力を受け、本体31の内部に進入する方向(
図10に表した矢印A4の方向)に移動する。この際、ピストン42の先端部421は、第2ピストン支持部321Bの表面(
図10では下面)から
図10に表した矢印A4の方向の力を受ける。これにより、ピストン42は、シリンダ41の内部に進入する方向(
図10に表した矢印A4の方向)に移動する。このようにして、本変形例のピストン支持体32Aは、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向と、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向と、にピストン42を移動させることができる。
【0059】
本変形例に係る採乳補助具3Aによれば、使用者は、例えば、後退方向の端部近傍まで移動したピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向に移動させ、複数回にわたって吸引動作を行う場合において、回転体33を操作し回転させることにより、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向に容易に移動させることができる。そして、使用者は、再び、回転体33を操作し回転させることにより、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向に移動させ、複数回にわたって、搾られた母乳を採乳器4で容易に吸引することができる。
【0060】
なお、ピストン支持体32Aが、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向と、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向と、に移動可能にピストン42を支持する手段は、
図10に表した例に限定されるわけではない。例えば、ピストン42の一部をピストン支持体32Aにロックしたり、ピストン42の一部をピストン支持体32Aに圧着したり、ピストン42の一部をピストン支持体32Aに嵌め込んだりする手段により、ピストン支持体32Aが、ピストン42をシリンダ41の内部から後退させる方向と、ピストン42をシリンダ41の内部に進入させる方向と、に移動可能にピストン42を支持してもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0062】
2、2A:採乳装置、 3、3A:採乳補助具、 4:採乳器、 6:平面、 31、31A:本体、 32、32A:ピストン支持体、 33:回転体、 41:シリンダ、 42:ピストン、 51:親指、 52:母指球、 53:人差し指、 311、311A:第1本体部、 312:第2本体部、 313a:第1保持部、 313b:第2保持部、 314:外面、 315:シリンダ支持部、 316:切欠部、 317:支持脚、 318a:第1外面、 318b:第2外面、 319:溝部、 321:ピストン支持部、 321A:第1ピストン支持部、 321B:第2ピストン支持部、 322:切欠部、 323:ラック、 331:グリップ部、 332:テーパ部、 333:ピニオン、 334:軸、 335:円板表面、 411:鍔部、 412:吸引吐出口、 421:先端部