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  • 特許-可動先端部を有する脊椎ねじ 図1A
  • 特許-可動先端部を有する脊椎ねじ 図1B
  • 特許-可動先端部を有する脊椎ねじ 図2
  • 特許-可動先端部を有する脊椎ねじ 図3
  • 特許-可動先端部を有する脊椎ねじ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】可動先端部を有する脊椎ねじ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
A61B17/86
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019536211
(86)(22)【出願日】2017-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 IB2017050133
(87)【国際公開番号】W WO2018130877
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2019-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513070381
【氏名又は名称】アピフィックス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】アルニン,ウリ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】村上 哲
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0312245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306718(US,A1)
【文献】米国特許第4940467(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0093020(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0374740(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331553(US,A1)
【文献】特開2014-402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎ねじ(10)であって、
ルーメン(14)を備えて形成されていて頭部(16)を備えており、外周面がねじ状に形成された軸部(12)と、
推進力を提供するように構成され、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)の前記ルーメン(14)内に配置されている付勢装置(22)と、
遠位先端部(20)を備えていて、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)の前記ルーメン(14)の遠位部分内で動くように配設されている遠位可動部材(18)であって、前記付勢装置(22)の推進力によって、前記遠位先端部(20)が前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)から離される前記遠位可動部材(18)と、
前記付勢装置(22)を解除可能に第1状態に保持することができるラッチ(28)と、を備え、
前記遠位可動部材(18)は、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)の前記ルーメン(14)内に形成されたストッパ(26)に当接するように配設されている面(24)を備えており、
前記付勢装置(22)は、前記遠位可動部材(18)を付勢するように配設されており、前記ラッチ(28)によって前記付勢装置(22)を前記第1状態から解除することにより、前記遠位先端部(20)を前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)から離す、脊椎ねじ(10)。
【請求項2】
前記ストッパ(26)は、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)の前記ルーメン(14)内に形成された遠位壁又は遠位肩部を備えている、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項3】
前記第1状態は、圧縮状態である、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項4】
前記遠位可動部材(18)の前記遠位先端部(20)は丸くなっている、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項5】
前記遠位可動部材(18)の断面はその長さに沿って変化している、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項6】
前記遠位可動部材(18)の前記遠位先端部(20)は鈍又は平坦である、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項7】
前記遠位先端部(20)は、追加のストッパ(43)を備えており、
前記追加のストッパ(43)は、前記遠位先端部(20)が椎骨の壁を穿通するのを防ぐために脊椎骨組織に当接するように構成されており、
前記追加のストッパ(43)は、当該遠位先端部(20)の最遠位点に近接して、遠位を向いている壁を備えている、請求項1に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項8】
前記遠位先端部(20)は1つ又はそれ以上の回転防止要素(45)を備えており、
前記ラッチ(28)が前記付勢装置(22)を前記第1状態に保持している時には、前記回転防止要素(45)は、前記遠位先端部(20)が、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)と共に一体回転するように、一体に噛み合うように構成されており、
前記ラッチ(28)が前記付勢装置(22)を前記第1状態に保持していない時には、前記回転防止要素(45)は、前記遠位先端部(20)が、前記外周面がねじ状に形成された軸部(12)と共に一体回転しないように、互いから分離されるように構成されている、請求項7に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項9】
前記付勢装置(22)は、コイルばね、空圧式作動器、液圧式作動器、および電気式作動器のうち少なくともいずれかを含む、請求項7に記載の脊椎ねじ(10)。
【請求項10】
前記付勢装置(22)は、コイルばねからなる、請求項9に記載の脊椎ねじ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には脊椎インプラント及び脊椎人工器官に関しており、厳密には、脊椎の椎骨への設置時に安全なバイコーティカル・ボーン・パーチェス(bi-cortical bone purchase)を実現できる可動の又は滑動する先端部を有する脊椎(例えば椎弓根)ねじに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの脊椎変性が人口の相当な割合に影響を及ぼしている。現在の外科的処置は、複数の椎弓根ねじが椎骨の中へ設置されることを伴う。
【0003】
椎弓根ねじの緩み、主に骨質が最適ではない場合の緩みは、大きな問題となる。一方、バイコーティカル・ボーン・パーチェスがはるかに優れた安定性をねじへ与える、ということが受け容れられている。往々にして、外科医は、ねじ先端部が椎骨前壁を穿通すれば危険であるとの理由で真のバイコーティカル固定を取り入れることをためらう。ゆえに、前壁を穿通する危険性なしにバイコーティカル・ボーン・パーチェスを実現することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脊椎ねじであって、以下に更に詳しく説明されている様にねじを椎骨の中へ設置した後に前方へ進ませることのできる可動の又は滑動する先端部を使用することによって、伸長させることのできる改善された脊椎ねじを提供しようと努めている。発明の脊椎ねじ(椎弓根ねじとすることができる)は、前壁を穿通する危険性無しにバイコーティカル・ボーン・パーチェスを実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の或る実施形態によれば、ルーメンを備えて形成されていて頭部を含んでいる軸部と、遠位先端部を含んでいてルーメンの遠位部分内で動くように配設されている遠位可動部材と、を含み、遠位可動部材が軸部に形成されたストッパに当接するように配設されている近位面を含んでいる、脊椎ねじが提供されている。
【0006】
発明の或る実施形態によれば、付勢装置が、遠位可動部材への遠位方向の推進力又は近位方向の推進力の様な遠位可動部材への推進力を提供するように構成されている。
【0007】
発明の或る実施形態によれば、遠位先端部は、それが椎骨の前壁を穿通し得ないように(又は穿通し辛いように)鈍又は平坦である。
【0008】
発明の或る実施形態によれば、遠位先端部は、遠位先端部の最遠位点に近接して追加のストッパ、例えば遠位を向いている壁、を含んでいる。
【0009】
発明の或る実施形態によれば、遠位先端部は1つ又はそれ以上の回転防止要素を含んでいる。
【0010】
以下の詳細な説明が図面と関連付けて考察されることで本発明はより深く理解され評価されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】発明の或る非限定的な実施形態により構築され作動する脊椎ねじの初期短縮構成での簡略化された絵による説明図である。
図1B図1Aの脊椎ねじの伸長構成での簡略化された絵による説明図である。
図2】初期短縮構成にある脊椎ねじの簡略化された模式図である。
図3】伸長構成にある脊椎ねじの簡略化された模式図である。
図4】発明の或る実施形態による、短縮と伸長の2通りの構成にあるねじを有する脊椎の椎骨の簡略化された絵による説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の或る非限定的な実施形態により構築され作動する脊椎ねじ10を描いている図1A図1B、及び図2をこれより参照する。
【0013】
脊椎ねじ10は、カニューレ型であってもよいとされる軸部12、つまりルーメン14(図2)を備えて形成されている軸部12を含んでいる。脊椎ねじ10は、多軸であってもよいとされる頭部16を含んでいる。脊椎ねじ10は、ルーメン14の遠位部分内で動くように配設されている遠位可動部材18を含んでいる。遠位可動部材18は遠位先端部20を含んでいる。コイルばねの様な付勢装置22(図2)が、遠位可動部材18に近接してルーメン14内に配置されていてもよく、付勢装置22は遠位可動部材18を遠位方向に(又は代替的には以下に説明されている様に近位方向に)動かすべく推進する。限定するわけではないが、空圧式、液圧式、又は電気式の作動器の様な他の型式の付勢装置が使用されてもよい。他の実施形態では、付勢装置の必要性は無く、つまり代わりに道具を使用して遠位可動部材18を遠位方向か近位方向のどちらかへ動かすようになっていてもよい。
【0014】
遠位可動部材18は、軸部12に形成されたストッパ26(図2)に当接するように配設されている近位面24(図1B及び図2)を含んでいる。例えば、ストッパ26はルーメン14内に形成された遠位壁又は遠位肩部であってもよい(例えばルーメン14はストッパを形成するように座ぐりされていてもよい)。図3に見られるように、付勢装置22が遠位可動部材18を伸長構成へ動かしたとき、近位面24はストッパ26に当接し、それにより遠位可動部材18の更なる遠位運動を制止する。ストッパ26は遠位可動部材18の近位運動には干渉しないので、例えばねじ10を別の取り付け部位へ移動させるなどのために取り出すことが所望されれば、遠位可動部材18は軸部12の中へ引き込まれることができる。
【0015】
遠位可動部材18の遠位先端部20は、遠位先端部20の最遠位点に近接して、遠位を向いている壁の様な追加のストッパ43(図1B)を含んでいてもよい。追加のストッパ43は、遠位先端部20が椎骨の前壁を穿通するのを防ぐために脊椎骨組織に当接する。
【0016】
1つの実施形態では、付勢装置22は、初期には、ラッチ28によって圧縮状態に保持されている(張力が掛かっている)。ラッチ28を(例えば、図2に破線で示されているルーメン14に挿入された道具29などで)解除すると、付勢装置22は遠位可動部材18を伸長構成へ推進する。
【0017】
別の実施形態では、付勢装置22は、初期には、張力の掛かった圧縮状態にはない。代わりに、遠位可動部材18は付勢装置22へ接続されていて、付勢装置22は遠位可動部材18を軸部12の中へ引き込むためにしか使用されない。遠位可動部材18は、ルーメン14に挿入された道具によって遠位方向に進められ所望の遠位位置へ押し出されることになる。遠位可動部材18は、キャッチ30(図3)によって所望の伸長位置に保持されることができる。外科医が遠位可動部材18について幾通りかの伸長位置の選択肢を持てるように2つ以上のキャッチ30が提供されていてもよい。付勢装置22が遠位可動部材18を軸部12の中へ引き戻す際に、ルーメン14に挿入された道具によってキャッチ30は解除されることになる。
【0018】
1つの実施形態では、遠位可動部材18の遠位先端部20は丸くなっていてもよく、そうするとねじ10が回されるとき遠位先端部20はその回転配向を変化させない。
【0019】
別の実施形態では、遠位可動部材18の遠位先端部20は丸ではなく、代わりに方形、矩形、多角形、などであり、その結果、ねじ10が回転されると、遠位先端部20はその回転配向をまさに変化させる。
【0020】
別の実施形態では、遠位可動部材18の断面はその長さに沿って変化していて、その結果、短縮位置にあるときにねじ10を回転させると、それと共に遠位先端部20は回転するが、遠位可動部材18が前方へ(即ち遠位方向に)進められる際は遠位先端部20はもはやねじ10と共に回転することはない、というようになっていてもよい。例えば、1つの実施形態では、遠位先端20は、限定するわけではないが噛み合い式の雄型と雌型の鍵部45の様な1つ又はそれ以上の回転防止要素45(図1A及び図1B)を含んでいる。短縮時配向(図1)では、回転防止要素45は一体に噛み合っているので、遠位先端部20はねじの残部と共に一体回転する。展開時配向(図1B)では、回転防止要素45は互いから分離されているので、遠位先端部20はねじの残部と共に一体回転しない。
【0021】
別の実施形態では、遠位先端部20は、椎骨の前壁を穿通し得ないように(又は穿通し辛いように)鈍又は平坦とすることができる。
【0022】
ねじ10の骨接点面は、オッセオインテグレーションを促進するように構成されていて、例えばローレット切り、酸腐食、グリットブラスチング、及び/又は機械加工で、或いは他の適した方法で、粗面加工されるなどしてもよい。追加的又は代替的に、骨接点面はオッセオインテグレーションを促進するために被覆加工されることもできる。リン酸三カルシウム(TCP)やヒドロキシアパタイト(HA)の様なリン酸カルシウムセラミクスは、骨接点面のオッセオインテグレーションを増進させることのできる材料の例である。追加的又は代替的に、骨接点面は、オッセオインテグレーションを促進するように構成されているマクロ的構造、例えば、ねじ山、微細ねじ山、凹凸、及び/又は溝を含んでいてもよく、またそれらのマクロ的構造は単独で使用されてもよいし、又は上述の粗面加工及び/又は被覆加工と組み合わされてもよい。
【0023】
次に、1つの脊椎ねじ10を短縮時配向(右側)と伸長時配向(左側)で描いている図4を参照する。伸長時配向では、ねじ10は、椎骨の前壁を穿通する危険性無しにバイコーティカル・ボーン・パーチェスを実現している。
【符号の説明】
【0024】
10 脊椎ねじ
12 軸部
14 ルーメン
16 頭部
18 遠位可動部材
20 遠位先端部
22 付勢装置
24 近位面
26 ストッパ
28 ラッチ
29 道具
30 キャッチ
43 ストッパ
45 回転防止要素
図1A
図1B
図2
図3
図4