(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/18 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
H01B11/18 D
(21)【出願番号】P 2020003869
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 史弥
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-349345(JP,A)
【文献】特開2019-061957(JP,A)
【文献】特開2007-250421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内部導体、誘電体、外部導体を順次被覆してなる同軸ケーブルにおいて、
前記外部導体は少なくとも、複数本の線条体からなる第1導電部材を横巻きする第1層と、前記第1層の外周に複数本の線条体からなる第2導電部材を横巻きする第2層から構成され、前記第1導電部材と前記第2導電部材の巻方向は互いに逆方向であ
り、
前記第1導電部材を構成する第1素線の外径と、前記第2導電部材の外径との比率(第2導電部材の外径/第1素線の外径)は、1.5~20であることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記第1導電部材及び前記第2導電部材の交差角度は、20~90度であることを特徴とする、
請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記第1導電部材を構成する複数本の線条体は単線であって、前記線条体は、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記第1導電部材及び/又は前記第2導電部材は、集合撚線構造であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記第1導電部材及び/又は前記第2導電部材は、複合撚線構造であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
前記第1層及び/又は前記第2層の横巻密度が、70%以上であることを特徴とする、
請求項1~5の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
前記誘電体は、少なくとも未焼結PTFE樹脂からなる層を有することを特徴とする、
請求項1~6の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットや半導体製造装置等、主に可動部に用いられる同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットや半導体製造装置等、主に可動部に用いられる同軸ケーブルにおいては、高周波用途の拡大に伴い、柔軟性に加えて放射ノイズの更なる低減が求められている。
【0003】
特許文献1は、外部導体として、素線を螺旋状に巻き付けた横巻きシールドの外周を覆うように、編組シールドを設けた、同軸ケーブルが記されている。
この構造は、放射ノイズの低減等、シールド特性の改善に有効であるが、屈曲、捻回に対する耐久性が不十分であると共に、同軸ケーブルの細径化、柔軟性においても更なる改善が求められる。
【0004】
特許文献2は、横巻構造の外部導体の外周に、金属テープを巻回した同軸ケーブルが記されている。
この構造も、放射ノイズの低減や、シールド特性の改善に有効であるが、テープ巻き構造は捻回に対する耐久性が不十分であり、更なる改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6409993号公報
【文献】特開2008-171778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、放射ノイズの低減等シールド特性の改善が可能であると共に、屈曲及び捻回に対する耐久性に優れ、さらに細径化が可能である同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)少なくとも内部導体、誘電体、外部導体を順次被覆してなる同軸ケーブルにおいて、外部導体は少なくとも、複数本の線条体からなる第1導電部材を横巻きする第1層と、第1層の外周に複数本の線条体からなる第2導電部材を横巻きする第2層から構成され、第1導電部材と第2導電部材の巻方向は互いに逆方向であることを特徴とする。
(2)第1導電部材及び第2導電部材の交差角度は、20~90度であることが好ましい。
(3)第1導電部材を構成する複数本の線条体は単線であって、線条体は、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされること
(4)第1導電部材及び/又は第2導電部材は、集合撚線構造であることが好ましい。
(5)第1導電部材及び/又は第2導電部材は、複合撚線構造であることが好ましい。
(6)第1導電部材を構成する第1素線の外径と、第2導電部材の外径との比率(第2導電部材の外径/第1素線の外径)は、1.5~20であることが好ましい。
(7)第1層及び/又は第2層の横巻密度が、70%以上であることが好ましい。
(8)誘電体は、少なくとも未焼結PTFE樹脂からなる層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の同軸ケーブルは、放射ノイズの低減等シールド特性の改善が可能であると共に、高周波における伝送特性や、屈曲及び捻回に対する耐久性に優れ、細径化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)本発明の同軸ケーブルにおける径方向断面図の一例を示す。 (b)本発明の同軸ケーブルにおける径方向断面図の他の一例を示す。
【
図2】
図1(a)A部分(外部導体)の拡大図を示す。
【
図4】屈曲試験方法及び捻回試験方法の概略図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の同軸ケーブルの一例として、基本構成について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1(a)の同軸ケーブル1は、中心より順に、内部導体2、誘電体3、外部導体4、そして、ジャケット7である。
【0012】
外部導体4は、
図2に示すように、少なくとも複数本の線条体からなる第1導電部材41を横巻きする第1層4aと、第1層の外周に複数本の線条体からなる第2導電部材42を横巻きする第2層4bから構成される。第1導電部材41を構成する線条体を第1素線41X、第2導電部材42を構成する線条体を第2素線42Xとする。
ここで
図2の第1導電部材は、複数本の線条体(単線)を誘電体上に一列に並列して配置しているがこれに限定されない。
第1層4aは、1本の第1導電部材41を横巻する構成でも良いし、複数本の第1導電部材41を横巻する構成でも良い。
第2層4bについても、第2導電部材42の本数は、特に限定されない。
横巻構造は、編組構造と比較して、捻回に対する耐久性に優れ、同軸ケーブル1の細径化が可能である。
外部導体4は、第2層4bの外周に第3層(図示せず)など3層以上設けても良いが、同軸ケーブル1の細径化等の観点においては、最も好ましくは2層構造である。
【0013】
図3に示すように、第1導電部材41と、第2導電部材42の巻方向は、互いに逆方向であることを特徴とする。外部導体4全体では、同軸ケーブル1の長さ方向(内部導体2を流れる電流を180度回転させた方向)に電流が流れるとみなせるため、内部導体2由来の磁界と、外部導体4由来の磁界が相殺される。その結果、同軸ケーブル1の放射ノイズが大幅に低減される。なお第1導電部材41、第2導電部材42の巻き方向は、互いの巻き方向が異なっていれば、右巻きあるいは左巻きであるかは任意である。
【0014】
第1導電部材41及び第2導電部材42の交差角度θは、20~90度であることが好ましい。導電部材が交差することで、編組と類似の構造となり、同方向に巻く場合と比較し、シールド密度が高くなることから、同軸ケーブル1の放射ノイズが低減される。交差角度θは小さいほど柔軟性に優れ、より好ましくは20~70度、さらに好ましくは20~50度である。
【0015】
同軸ケーブル1の長手方向に対する、第1導電部材41及び第2導電部材42の横巻ピッチは、同じであることが好ましい。
同軸ケーブル1の捻回に対する耐久性や放射ノイズの向上に寄与する。
【0016】
第1導電部材41を構成する複数本の線条体は単線であって、線条体は、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされることが好ましい(
図2)。線条体が誘電体と均一に接触することで面が平滑化されるため伝送特性に優れると共に、同軸ケーブル1の細径化が可能である。
全ての線条体が、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされることが好ましいが、線条体のうち少なくとも一部が、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされていれば良い。
【0017】
また、第1導電部材41及び第2導電部材42の構成は、複数本の線条体を束ねて撚ることにより形成される集合撚線構造、あるいは集合撚線構造を更に複数本束ねて撚って形成される複合撚線構造であることが好ましい。
第1導電部材41及び第2導電部材42は、同一の撚線構造であっても良いが、集合及び複合撚線構造の混合、あるいは、第2導電部材42のみ集合又は複合撚線とする構造であっても良く、特に限定されない。
最も好ましくは、第1導電部材41を構成する複数本の線条体は単線であって、線条体は、誘電体上に一列に並列して配置して横巻きされ、第2導電部材42のみ撚線構造とする組み合わせである。高周波伝送特性に優れ、屈曲及び捻回に対する耐久性を向上でき、さらに細径化も可能である。
【0018】
複合撚線構造は、上述の複合撚線をさらに束ね、複数本撚って形成されてもよく、構成はこれに限定されない。
撚線構造であることで、屈曲及び捻回時に、同軸ケーブル1にかかる負荷が分散されるため、耐久性が改善される。
【0019】
集合撚線の構成については特に限定されず、例えば線条体が7本以上で構成されている。
複合撚線を構成する集合撚線の本数が多い方が、屈曲及び捻回に対する耐久性が向上する。また、線条体が7本の場合、中心の線条体1本の周りに6本配設される構造であり、中心の線条体1本に負荷が集中し断線しやすい。そのため、特定の線条体に負荷が集中しない、集合撚線の構成がより好ましい(例えば10本撚り等)。
【0020】
複合撚線の構成について特に限定されないが、伝送特性向上の観点で、集合撚線の束が15本以下で構成されていることが好ましい。また、集合撚線が7本の場合、中心の集合撚線1本の周りに6本配設される構造であり、中心の集合撚線1本に負荷が集中し断線しやすい。そのため、特定の集合撚線に負荷が集中しない、集合撚線の構成がより好ましい(例えば、3本撚りや4本撚り等)。
【0021】
複合撚線の場合における、集合撚線及び複合撚線の撚りピッチについては、特に限定されず、適宜決定される。
【0022】
複合撚線の撚り方向についても特に限定されないが、線条体の撚り方向と、集合撚線の撚り方向は同じ方向であると、屈曲及び捻回に対する耐久性を向上でき、より好ましい。
【0023】
第1導電部材41を構成する第1素線41Xの外径と、第2導電部材42の外径との比率(第2導電部材42の外径/第1素線41Xの外径)は、1.5~20であることが好ましく、より好ましくは3.0~15である。
第1素線41Xの方が細いため、捻回時の内部導体2への締め付けに起因する、捻回トルクの伝達を低減できるため、同軸ケーブル1の捻回耐久性が大きく向上する。
【0024】
第1素線41X及び第2素線42Xの外径は、特に限定されないが0.02mm以上0.3mm以下が好ましい。耐屈曲及び耐捻回の観点で、より好ましくは0.03mm以上0.2mm以下、さらに好ましくは0.05mm以上0.15mm以下である。
【0025】
第1層4a及び/又は第2層4bの横巻密度が、同軸ケーブル1の放射ノイズを低減する目的において、70%以上であることが好ましい。第1層4a、第2層4bのいずれか一方の横巻密度が70%以上であればよいが、好ましくは両層が70%以上であり、より好ましくは、両層が85%以上である。
【0026】
外部導体4の材質は、導電性を有する材質であれば特に限定されないが、例えば、銅等の金属線や、あるいは、それらに錫、鉄、亜鉛、ニッケル等を添加した合金線等を素線として用いられる。金属線の表面は、適宜、銀、錫等のメッキが施されてもよい。伝送特性及び機械特性の観点で、銀メッキ銅合金線、または錫メッキ銅合金線が好ましい。
【0027】
その他の態様について特に限定されないが、以下参考までに示す。
【0028】
誘電体3は、
図1(b)に示すように、少なくとも未焼結PTFE樹脂からなる層3aを有することが好ましい。
未焼結PTFE樹脂層3aは、多孔質体であることから柔軟性に優れ、低誘電率のため細径化及び伝送特性に優れる。
誘電率は特に限定されないが、1.4~1.8が好ましい。伝送特性及び機械特性の観点において、特に好ましくは、1.6~1.8がより好ましい。
未焼結PTFE樹脂層3aの成形方法は特に限定されず、未焼結PTFE樹脂テープを巻き付ける構成も知られているが、生産性の観点で一般的なペースト押出成形が好ましい。
【0029】
また、
図1(b)に示すように、未焼結PTFE樹脂層3aの上に、多孔質ふっ素樹脂テープ層3bを設けても良い、
テープの材質は特に限定されないが、特に好ましくは延伸PTFE樹脂テープである。
延伸PTFE樹脂テープは多孔質体のため低誘電率である上、焼結されたPTFEであるため、機械特性についても優れる。
多孔質ふっ素樹脂テープ層3b(例えば延伸PTFE樹脂テープ)を、未焼結PTFE樹脂層3aの上に巻き付けることで、外部導体との滑り性が向上するため、トルク伝達性を低く抑え、特定の箇所に応力が集中することを回避でき、未焼成PTFE樹脂層3aへの負荷を格段に軽減される。その結果、屈曲及び捻回に対する耐久性が大幅に向上される。
【0030】
多孔質ふっ素樹脂テープ層3bのラップ幅について特に限定しないが、誘電体3の平滑性に優れ伝送特性に寄与する点で1/2ラップが好ましい。
多孔質ふっ素樹脂テープ層3bは、未焼結PTFE樹脂層3aの潰れ防止等、保護層として機能する。
【0031】
誘電体3のその他の構成について、
図1(b)においては、未焼結PTFE樹脂層3aと多孔質ふっ素樹脂テープ層3bが一層ずつであるが、これに限定されず、例えば、多孔質ふっ素樹脂テープ層3bを二層以上施してもよい。
【0032】
第1素線41Xの外径、及び/又は、第2素線42Xの外径と、誘電体3の外径との比率(誘電体径/第1、第2素線径)は、特に限定されないが、屈曲及び捻回に対する耐久性の観点で20~100が好ましい。
【0033】
内部導体2の構成は、特に限定されないが、集合撚線構造あるいは複合撚線構造が好ましく、構造等の詳細は上述の外部導体で記載する通りである。
屈曲及び捻回に対する耐久性向上を考慮すると、複合撚線がより好ましい。複合撚線は、単線や集合撚線等と比べ、屈曲及び捻回時に、同軸ケーブル1にかかる負荷がさらに分散される。
【0034】
本発明の同軸ケーブル1は、適宜、外部導体4の上にテープ材5が施されてよい。構成は限定されないが、巻き付けが好ましい。
屈曲や捻回等の可動時に、外部導体4の線条体のばらけを抑制する役割の他、外部導体4間の滑り性向上により、結果として、特定の箇所に応力が集中することを回避できる。
また、トルク伝達性が低いため、未焼結PTFE樹脂層3aへの負荷を緩和でき、屈曲及び捻回に対する耐久性の向上に寄与する。
テープ材5の材質は、樹脂材料、金属箔等、特に限定されないが、延伸PTFE樹脂テープ、未焼成PTFE樹脂テープが好ましい。
【0035】
ジャケット7の材質は特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル系エラストマー、ふっ素樹脂等が挙げられる。
柔軟性及び汎用性の観点で、軟質のポリ塩化ビニルが好ましい。
【0036】
またテープ材5とジャケット7の間には、空隙6が設けられることが好ましい。
空隙6が設けられることにより、ケーブル内部への負荷が緩和され、同軸ケーブル1の屈曲及び捻回に対する耐久性が向上する。
【0037】
シールド特性に加え、屈曲及び捻回に対する耐久性が格段に向上する構造としては、
図1(b)の態様が最も好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の同軸ケーブル1(
図1(b))に関して実施例を挙げ具体的に説明するが、本発明の範囲についてこれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例の同軸ケーブル1は、内部導体2は外径0.08mmの錫メッキ軟銅線の素線を20本撚り合わせて集合撚線を形成し、更にこの集合撚線を3本束ねて撚り合わせた、外径が約0.75mmの複合撚線である。
誘電体3は、肉厚1.3mmの未焼結PTFE樹脂層3aの外周に、厚さ0.05mm、幅15mmの延伸PTFE樹脂テープ3bを1/2ラップにて横巻きを施す。
外部導体は後述する。
外部導体の外周に、テープ材として、厚さ0.08mm、幅20mmの未焼成PTFE樹脂テープ5を1/3ラップにて横巻きを施す。
さらに、外周にジャケット7として、PVCを肉厚約1.0mmにて施す。テープ材とジャケットとの間には空隙6を設ける。
【0040】
実施例1は、外部導体4の第1層は、外径0.102mm、錫メッキ軟銅線の第1素線41Xが120本からなる第1導電部材を横巻する構造である。第1素線41Xは、誘電体上に一列に並列配置して横巻きされる。第2層は、外径0.08mm、錫メッキ軟銅線の第2素線42Xを40本撚り合わせ、さらにこれを18本束ねた集合撚線構造の第2導電部材を横巻する構造である。第2導電部材の外径は、約0.6mmである。第1層及び第2層の横巻ピッチは40mmであり、各層の巻方向は、互いに逆方向である。
【0041】
実施例2は、実施例1のうち、外部導体の第1層は、外径0.05mm、錫メッキ軟銅線の第1素線41Xが180本からなる第1導電部材を横巻する構造である。
【0042】
比較例1は、実施例1のうち、外部導体の第2層は、外径0.1mm、錫めっき銅合金線の編組構造である。
【0043】
比較例2は、実施例1のうち、外部導体の第2層は、アルミニウム層-ポリエステル層を有するテープ(厚さ約20μm、幅8.0mm)を1/3ラップで横巻する構造である。内周側の面をアルミニウム層とする。第1層と第2層の巻方向は、互いに逆方向である。
【0044】
上記、実施例、比較例について、耐屈曲性、耐撚回性、EMI試験について評価し、結果を表1に示す。
【0045】
(屈曲試験方法)
屈曲試験方法の概略図を、
図4(a)に示す。
サンプルの長さは1m、曲げ半径Rは15mm、荷重は500gfである。
図4(a)中の矢印のように、試験サンプルを90度屈曲させた後、直線状に戻し、次に反対方向に90度屈曲させ、直線状に戻す。この1サイクルを1回と数え、一定回数屈曲させた後に、外部導体の抵抗値を測定する。試験前の抵抗値と比較して、測定値が10%以上変化した際の屈曲回数の平均値(n=3)を表1に記載する。
【0046】
(捻回試験方法)
捻回試験方法の概略図を、
図4(b)に示す。
サンプルの長さは約3m、固定間距離は500mm、荷重は500gfである。
図4(b)中の矢印のように、試験装置側のサンプル端を180度捻じった後、元に戻し、次に反対方向に180度捻じり、元に戻す。この1サイクルを1回と数え、一定回数捻回させた後に、外部導体の抵抗値を測定する。試験前の抵抗値と比較して、測定値が10%以上変化した際の捻回回数の平均値(n=3)を表1に記載する。
【0047】
(EMI試験方法)
EMI試験方法の概略図を、
図5に示す。
シールドルーム内において、シグナルジェネレータで振幅2Vの信号をケーブルへ印加し、外部に放射するノイズをEMIクランプで測定する。
ケーブルの長さは5mであり、一方のケーブル端部は測定基板に接続され、他方のケーブル端部は開放状態である。
EMIクランプを動かしながら、周波数100~1000MHzにおける、定在波の最大の振れを示す箇所の放射レベル[dBm]を、スペクトラムアナライザで測定する。
基準サンプルとして、実施例1のうち、外部導体は第1層のみの同軸ケーブルを用い、基準サンプルとの放射レベルの差(基準サンプルの放射レベル-測定サンプルの放射レベル)を測定値[dBm]とする。
【0048】
【0049】
実施例は、いずれも屈曲試験が45万回以上、捻回試験が25万回以上と、屈曲、捻回に対する耐久性に優れる上、細径であるにもかかわらず、放射ノイズが低減され、外部導体のシールド特性の向上が確認できる。
比較例は、いずれも放射ノイズの低減効果に優れるが、捻回試験が10万回以下であり、比較例と比べて、実施例はいずれも捻回に対する耐久性に優れる。
【0050】
本発明における実施例は、いずれも放射ノイズの低減等シールド特性の改善が可能であると共に、屈曲及び捻回に対する耐久性に優れ、さらに細径化が可能と言える。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の同軸ケーブルは、特に産業用ロボットや半導体製造装置等で有用であるが、用途は特に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1 同軸ケーブル
2 内部導体
3 誘電体
3a 未焼結PTFE樹脂層
3b 多孔質ふっ素樹脂テープ層
4 外部導体
4a 第1層
4b 第2層
41 第1導電部材
42 第2導電部材
41X 第1素線
42X 第2素線
5 テープ材
6 空隙
7 ジャケット