(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】判定システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240209BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240209BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240209BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G16H50/30
A61B10/00 310
G08B25/04 K
E03D9/08 B
(21)【出願番号】P 2020004499
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩和
(72)【発明者】
【氏名】坂本 愛
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002677(JP,A)
【文献】特開2003-082743(JP,A)
【文献】特開2001-006073(JP,A)
【文献】特開2019-202123(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169280(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3210435(JP,U)
【文献】特開2010-197081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
A61B 10/00
G08B 25/04
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者によってトイレ装置の利用が開始されたことを示す開始情報、及び排便が終了したことを示す終了情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報に基づいて、前記使用者が排便に要した排便時間を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記排便時間に基づいて、前記使用者の健康状態を判定する判定部と、
を備え
、
前記判定部は、所定時間と比較して前記排便時間が長い場合、前記使用者が便秘状態であると判定する、
判定システム。
【請求項2】
前記使用者は、見守りの対象者であり、
前記開始情報は、前記トイレ装置における便座への着座に関する情報であり、
前記終了情報は、前記トイレ装置における人体の局部洗浄機能が使用されたことを示す情報である、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記測定部は、前記対象者による便座への着座から、前記局部洗浄機能の使用が開始されるまでに要した時間を、前記排便時間として測定する、
請求項2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記測定部によって測定された前記排便時間を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、所定時間と比較して前記排便時間が長い排便が、所定の回数以上継続したかを前記記憶部に記憶された前記排便時間に基づいて判定し、当該判定が肯定される場合、前記対象者が便秘状態であると判定する、
請求項2
又は請求項3に記載の判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記排便時間における便鉢の様子が撮像された画像を用いて前記排便の形状を判定した判定結果に基づいて、前記対象者の前記健康状態を判定する、
請求項2から請求項
4のいずれか一項に記載の判定システム。
【請求項6】
前記判定部によって判定された前記対象者の健康状態を、予め登録されたユーザ端末に送信する通信部をさらに備える、
請求項2から請求項
5のいずれか一項に記載の判定システム。
【請求項7】
前記判定部は、複数のレベルに分けて前記健康状態を判定し、
前記通信部は、前記判定部によって判定された前記健康状態のレベルに応じた送信内容を送信する、
請求項
6に記載の判定システム。
【請求項8】
前記対象者によって外部のトイレが使用された際における排便に関する排便情報が入力される入力部をさらに備え、
前記判定部は、前記入力部に入力された前記排便情報に基づいて、前記健康状態を判定する、
請求項2から請求項
7のいずれか一項に記載の判定システム。
【請求項9】
見守りの対象者によってトイレ装置の利用が開始されたことを示す開始情報、及び排便が終了したことを示す終了情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報をサーバ装置に送信する通信部と、を有する制御部と、
前記制御部から受信した情報に基づいて、見守りの対象者が排便に要した排便時間を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記排便時間に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定部と、を有するサーバ装置と、
を備え、
前記判定部は、所定時間と比較して前記排便時間が長い場合、前記対象者が便秘状態であると判定する、
判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレが利用されたことを検知することによって遠方にいる見守り対象者を見守るシステムがある。排便は腸内環境を反映しているといわれていることから、排便に基づいて健康状態を把握する試みがある。見守りを行いつつ、見守り対象者の健康状態を把握できることが望ましい。
【0003】
高齢者に便秘の自覚症状を訴える人の割合が多いこと示す統計がある(例えば、平成25年 国民生活基礎調査 厚生労働省)。見守り対象者が高齢であるにつれ、便秘の自覚症状がある場合が多いと考えられる。見守り対象者と家族で、便秘状態にあるかどうかを共有することができれば、見守り対象者に安心感を与えることができる。例えば、特許文献1には、便器洗浄の動作が行われたことを排便があったとみなして排便回数を記憶し、ある期間内になされた排便の回数に基づいて、見守り対象者が便秘状態にあるか否かを判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、便器洗浄を排便とみなしている。このため、排便をしていないが便器洗浄が利用された場合、排便がなされたと誤認識してしまう。さらに、特許文献1の技術では、期間内の排便回数が閾値以下である場合に便秘状態にあると判断する。このため、排便回数が少ないが便秘でない場合に、便秘状態にあると誤った判断をする問題があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排便に基づく健康状態を精度よく判定することができる判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本開示の一実施形態は、見守りの対象者によってトイレ装置の利用が開始されたことを示す開始情報、及び排便が終了したことを示す終了情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報に基づいて、見守りの対象者における、排便に要した排便時間を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記排便時間に基づいて、前記対象者の健康状態を判定する判定部と、を備え、前記判定部は、所定時間と比較して前記排便時間が長い場合、前記対象者が便秘状態であると判定する判定システムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る判定システムの適用例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る集約サーバの構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るセンサ情報の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る健康レベル情報の例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る通知先情報の例を示す図である。
【
図8】実施形態に係るユーザ端末に表示される内容の例を示す図である。
【
図9】実施形態に係るユーザ端末に表示される内容の例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る判定システムが行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の判定システムを、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、判定システム100は、例えば、複数の制御部10(制御部10-1、10-2、…、10-N)と、複数の中継器20(中継器20-1、20-2、…、20-N)と、集約サーバ30と、複数のユーザ端末40(ユーザ端末40-1、40-2、…、40-M)とを備える。Nは3以上である任意の整数である。Mは3以上である任意の整数である。
【0011】
制御部10は、中継器20と接続される。中継器20と集約サーバ30とは通信ネットワークNWを介して接続する。集約サーバ30とユーザ端末40とは通信ネットワークNWを介して接続する。判定システム100は、
図1の構成に限定されることはない。判定システム100は、一組の制御部10及び中継器20を備える構成であってもよい。判定システム100は、複数の集約サーバ30を備える構成であってもよい。判定システム100は、一つのユーザ端末40を備える構成であってもよい。
【0012】
図2に示すように、判定システム100の制御部10は、トイレ装置1に設けられる。トイレ装置1は、局部洗浄機能を備えるトイレである。局部洗浄機能は、便座6の下側に設けられたノズルから洗浄水を吐出することで、人体の局部を洗浄する機能である。ノズルは、便座ボックス4内に収納されている。便座ボックス4は、局部洗浄を行う際にノズルを便器本体2の内側に進出させ、ノズルの先端に形成された吐出孔から洗浄水を吐出させる。便座ボックス4は、局部洗浄後にノズルを便座ボックス4内に退避させて収納する。これによって、ノズルに汚物、洗浄水の飛沫などがかかることを防止する。
【0013】
トイレ装置1は、例えば、便器本体2と、便座ボックス4と、便蓋5と、便座6と、人感センサ7とを備える。トイレ装置1の使用者Pが便座6に着座した場合において、使用者Pから見た方向を基準に説明する。使用者Pから見て前側を「前」、後側を「後」、右側を「右」、左側を「左」という。トイレ装置1が設置されている床面から離れている側を「上」、床面に近い側を「下」という。トイレ装置1の使用者Pは、「見守りの対象者」の一例である。
【0014】
便座ボックス4は、便器本体2の上側に設置される。便座ボックス4は、リモコン装置8と通信し、リモコン装置8からの信号に従って局部洗浄機能を制御する。便蓋5及び便座6は、便器本体2の上側に設置される。便蓋5及び便座6は、便座ボックス4に上下方向に回転可能に支持される。便座ボックス4は、例えば、リモコン装置8からの信号に従って便蓋5及び便座6の回動を制御してもよい。リモコン装置8は、便座ボックス4と通信する。通信方式は、有線でも無線でもよい。リモコン装置8には、便器洗浄や局部洗浄に対応する複数の操作スイッチが設けられている。例えば、使用者Pによってリモコン装置8に設けられた操作スイッチが押下操作されると、その操作を示す信号がリモコン装置8から便座ボックス4に送信される。便座ボックス4は、リモコン装置8から受信した信号に応じて便器洗浄や局部洗浄を実行する。
【0015】
便座ボックス4は、トイレ装置1に設けられた人感センサからの信号に基づいて、便蓋5の回動を制御するようにしてもよい。人感センサは、赤外線などを照射して、その反射光を受光することによって人の存在を検知するセンサである。人感センサは、例えば、便座ボックス4の上面前縁部に設置され、便器本体2前方にいる人の存在を検知する。便座ボックス4は、人感センサによって、便器本体2の前方に人が来たこと、つまりトイレルームに人が入室したことが検知された場合、便蓋5を上方向に回動させる。便座ボックス4は、人感センサによって、便器本体2の前方に人がいなくなったこと、つまりトイレルームから人が退室したことが検知された場合、便蓋5を下方向に回動させる。
【0016】
便座ボックス4は、トイレ装置1に設けられた着座センサからの信号に基づいて、便器洗浄を制御するようにしてもよい。着座センサは、静電容量の変化などに基づいて、荷重を検知するセンサである。着座センサは、例えば、便座6裏側の左右両側に設けられ、便座6が下方向に回動された時に便座6と便器本体2とに挟まれるように設置される。着座センサは、便座6と便器本体2とに挟まれ使用者Pの着座によって便座6に作用する荷重を検知する。便座ボックス4は、着座センサによって便座6への着座が検知された後、脱座が検知された場合、着座が検知されてから脱座が検知されるまでに便器洗浄が使用されていない場合に、便器洗浄を実行させる。このように、便器洗浄は、使用者Pのリモコン装置8操作にしたがって実行されてもよいし、便座ボックス4によって自動的に実行されてもよい。
【0017】
制御部10は、例えば、便座ボックス4に収容される。制御部10は、トイレが使用される際に検知される種々の信号(以下、検知信号という)を取得し、取得した検知信号を、中継器20に通知する。検知信号は、便座ボックス4によって局部洗浄などを制御するために取得される信号、つまりリモコン装置8、人感センサ、及び着座センサ(以下、リモコン装置8等という)からの信号である。制御部10は、便座ボックス4を介して、リモコン装置8等から出力される検知信号を取得する。或いは、制御部10は、便座ボックス4を介さず、リモコン装置8等から直接、検知信号を取得してもよい。制御部10は、取得した検知信号に対応する情報を、検知結果として中継器20を介して集約サーバ30に通知する。
【0018】
図2に示すように、判定システム100の中継器20は、例えば、使用者Pの所持する携帯情報端末である。中継器20は、少なくとも、制御部10と集約サーバ30とを中継できればよい。中継器20は、例えば、GW(ゲートウェイ)などと呼ばれる中継装置であってもよい。制御部10と中継器20との間における通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信などの近距離無線通信である。中継器20と集約サーバ30との間における通信は、例えば、インターネットなどの汎用的な通信網を利用した通信である。中継器20は、制御部10と通信を行う近距離無線通信機能と、集約サーバ30と通信を行うインターネットなどを利用した通信機能とを備える。中継器20は、制御部10から検知結果を受信すると、受信した検知結果を、集約サーバ30との通信方式に合致する通信プロトコルに変換し、変換した信号を集約サーバ30に送信する。
【0019】
上記では、制御部10が近距離無線通信の通信方式にて通信を行う場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されない。制御部10は任意の通信方式にて通信を行ってよい。例えば、制御部10は、LPWA(Low Power Wide Area)規格の通信方式にて通信を行うようにしてもよい。LPWAは、通信速度を抑えることによって、既存の通信網、例えば携帯電話網であるLTE(Long Term Evolution)などと比較して消費電力が小さい。Bluetoothなどの近距離無線通信と比較して、通信距離が大きい。この場合、通信距離が大きいため、制御部10と集約サーバ30とが、中継器20を介さずに通信を行うことが可能である。この場合、中継器20を省略することができる。
【0020】
集約サーバ30は、中継器20を介して制御部10から検知結果を受信する。集約サーバ30は、制御部10から受信した検知結果に基づいて使用者Pの健康状態を判定する。健康状態は、例えば、使用者Pが便秘状態にあるか、下痢状態にあるか、便秘でも下痢でもない状態にあるかの何れかである。排便時間に基づく使用者Pの健康状態を判定する方法については後で詳しく説明する。集約サーバ30は、判定した使用者Pの健康状態を、予め登録したユーザ端末40に通知する。
【0021】
ユーザ端末40は、スマートフォン、携帯電話、タブレットなどの通信機能を有する情報端末である。ユーザ端末40には、集約サーバ30などが配信する「見守りサービス」のアプリケーションプログラム(以下、アプリという)がインストールされる。ユーザ端末40のユーザがアプリのアカウントを作成し見守り対象者を登録することによって、サービスを受けることができる。このサービスは、見守り対象者のトイレが利用されたことに基づく安否確認、及び排便時間に基づく健康状態を通知するサービスである。
【0022】
上記では、「見守りサービス」のアプリを介して、見守り対象者の安否確認や健康状態を通知する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。集約サーバ30は、既存のSNS(Social Networking Service)などを利用して見守り対象者の安否確認や健康状態を通知するようにしてもよい。
【0023】
図3に示すように、制御部10は、例えば、通信部11と、取得部12と、制御部13と、記憶部14とを備える。通信部11は、中継器20と通信を行う。取得部12は、検知信号を取得する。制御部13は、制御部10を統括的に制御する。制御部13は、取得部12によって検知された検知信号に対応する情報を、検知結果として通信部11を介して中継器20に通知する。取得部12と、制御部13とは、制御部10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。記憶部14は、少なくとも1つの記憶媒体を任意に組み合わせることによって構成される。記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)である。記憶部14は、制御部10の各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。
【0024】
図4に示すように、集約サーバ30は、例えば、通信部31と、取得部32と、測定部33と、判定部34と、制御部35と、記憶部36とを備える。
【0025】
通信部31は、中継器20、及びユーザ端末40と通信を行う。取得部32は、通信部31を介して、制御部10から受信した検知結果を取得する。取得部32は、取得した検知結果を測定部33に出力する。取得部32は、取得した検知結果をセンサ情報360として記憶させる。センサ情報360は、制御部10から受信した検知結果を、受信時刻などと対応づけて記憶した情報である。センサ情報360は、例えば、記憶部36に記憶される。
【0026】
図5を用いて、センサ情報360の構成について説明する。センサ情報360は、例えば、日付、着座時刻、脱座時刻、局部洗浄、便器洗浄時刻、入室時刻、退室時刻などの項目を備える。日付は、制御部10から検知結果を受信した日付である。着座時刻は、着座センサによって着座が検知されたことを示す情報を受信した時刻である。着座時刻は、トイレ装置1の利用を開始するために着座した時刻であることから「開始情報」の一例である。
【0027】
脱座時刻は、着座センサによって脱座が検知されたことを示す情報を受信した時刻である。局部洗浄は、開始時刻と終了時刻などの項目を備える。開始時刻は、局部洗浄が開始されたことを示す情報が受信された時刻である。終了時刻は、局部洗浄が終了したことを示す情報が受信された時刻である。局部洗浄の開始時刻は、排便終了後に局部洗浄が開始されると考えられることから「終了情報」の一例である。局部洗浄の終了時刻は、局部洗浄機能が使用されたことを示す情報であることから「使用情報」の一例である。
【0028】
便器洗浄時刻は、便器洗浄が実行されたことを示す情報を受信した時刻である。入室時刻は、人感センサによってトイレルームへの入室が検知されたことを示す情報を受信した時刻である。退室時刻は、人感センサによって退室が検知されたことを示す情報を受信した時刻である。入室時刻は、トイレ装置1の利用を開始するために使用者Pが入室した時刻であることから「開始情報」の一例である。
【0029】
図4に戻り、測定部33は、センサ情報360に基づいて、排便時間を測定する。排便時間は、排便に要した時間である。測定部33は、例えば、着座時刻から局部洗浄の開始時刻までの時間を排便時間とみなす。局部洗浄が使用された開始時刻を排便時間の終了時とみなすことによって、排便がなされた場合のみを測定対象にすることができる。したがって、排便時間に、排尿のみで排便がなされなかったケースや、ただ着座していたケースを除外して、精度よく排便時間を測定することが可能である。
【0030】
本実施形態では、排便時間を見守り対象者における健康状態の指標として用いる。一般に、排泄する便が硬く、便秘状態にある場合には、便秘状態にない場合と比較して排便に要する時間がかかるためである。つまり、排便時間は、少なくとも健康状態の指標として用いることができればよい。排便時間は、センサ情報360に基づいて測定される任意の時間であってよい。例えば、測定部33は、局部洗浄が利用されたことを条件に、着座時刻から脱座時刻までに要した時間を排便時間としてもよい。測定部33は、局部洗浄が利用されたことを条件に、入室時刻から退室時刻までに要した時間を排便時間としてもよい。測定部33は、排便時間を健康レベル情報361に記憶させる。健康レベル情報361は、見守り対象者における排便時間の履歴と、その履歴から判定される健康状態とを示す情報である。健康レベル情報361は、例えば、記憶部36に記憶される。
【0031】
図6を用いて、健康レベル情報361の構成について説明する。健康レベル情報361は、例えば、日付、排便フラグ、排便時間、健康レベルなどの項目を備える。日付は、制御部10から検知結果を受信した日付である。排便フラグは、排便の有無を示す二値情報である。例えば、排便フラグは、局部洗浄が使用されたか否かに応じて判定される。この場合、排便フラグは、局部洗浄が使用された場合に排便あり、局部洗浄が使用されなかった場合に排便なしを示す。排便時間は、測定部33によって測定された排便時間である。健康レベルは、後述する判定部34によって判定された健康状態のレベルである。
【0032】
図4に戻り、判定部34は、排便時間に基づいて、見守り対象者の健康状態を判定する。判定部34は、例えば、排便時間が所定の閾値と比較して長い場合、便秘状態にあると判定する。判定部34は、排便時間が所定の閾値と比較して長いケースが所定の比率以上(例えば、4回中3回以上など)である場合、便秘状態にあると判定するようにしてもよい。判定部34は、排便時間が所定の閾値と比較して長いケースが、所定の回数以上継続した場合、便秘状態にあると判定するようにしてもよい。
【0033】
判定部34は、見守り対象者の健康状態を、複数のレベル(以下、健康レベルという)で判定するようにしてもよい。判定部34は、例えば、排便時間が所定の閾値と比較して長い場合、その長さに応じて健康レベルを判定する。判定部34は、排便時間が所定の閾値と比較して長いケースが所定の比率以上である場合、その比率に応じて健康レベルを判定するようにしてもよい。判定部34は、排便時間が所定の閾値と比較して長いケースが、所定の回数以上継続した場合、その回数に応じて健康レベルを判定するようにしてもよい。判定部34は、健康レベルを健康レベル情報361に記憶させる。
【0034】
制御部35は、集約サーバ30を統括的に制御する。取得部32と、測定部33と、判定部34と、制御部35とは、集約サーバ30がハードウェアとして備えるCPUにプログラムを実行させることによって実現される。
【0035】
制御部35は、判定部34によって判定された見守り対象者の健康レベルを、通信部11を介して、ユーザ端末40に送信する。制御部35は、ユーザ端末40に健康レベルを送信する際、健康レベルごとに通知する内容や通知先を変更してもよい。制御部35は、例えば、健康レベルが軽い便秘状態である場合、家族などの身内に限って、その旨を通知する。通知内容は、緊急性がないことを示すものであって、例えば、軽い便秘状態であること、あまり気にする必要はないが声を掛けてみることを勧めることなどを通知する内容である。制御部35は、健康レベルが重い便秘状態である場合、家族などの身内だけではなく医療関係者などにも、その旨を通知する。通知内容は、緊急性があることを示すものであって、例えば、重い便秘状態であること、すぐに医療機関を受診すべきであることなどを通知する内容である。
【0036】
制御部35は、例えば、判定部34によって判定された健康レベルに基づいて、通知先情報362を参照して通知内容、及び通知先を決定する。通知先情報362は、健康レベルに応じた、通知内容及び通知先を対応づけた情報である。通知先情報362は、例えば、記憶部36に記憶される。
【0037】
図7を用いて、通知先情報362の構成について説明する。通知先情報362は、例えば、健康レベル、通知内容、通知先目安、通知先アドレス1、通知先アドレス2、…などの項目を備える。健康レベルは、判定部34によって判定される健康状態のレベルである。通知内容は、健康レベルに応じた具体的な通知内容である。通知先目安は、健康レベルに応じた通知先の目安である。通知先目安には、例えば、医療機関にも通知する必要があるか否かなどが示される。通知先アドレスは、健康レベルに応じた通知内容を通知する具体的な通知先の情報である。通知先アドレスには、電子メールのアドレス、SNSのアカウントなどが含まれる。
【0038】
図8及び、
図9を用いて、ユーザ端末40に健康レベルが表示された例について説明する。この例では、見守り対象者である「Aさん」の健康レベルが通知され、通知先のユーザ端末40に表示された例を示している。
図8には緊急性を要しない健康レベル(例えば、健康レベル1)を通知する通知内容が示されている。この例では「レベル1:Aさんの様子を見てあげてください」との通知がなされている。
図9には緊急性を要する健康レベル(例えば、健康レベル3)を通知する通知内容が示されている。この例では「レベル3:Aさんに病院を受診するように勧めてください」との通知がなされている。
【0039】
図4に戻り、記憶部36は、少なくとも1つの記憶媒体を任意に組み合わせることによって構成される。記憶媒体は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROMである。記憶部36は、集約サーバ30の各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。記憶部36は、センサ情報360、健康レベル情報361、及び通知先情報362を記憶する。
【0040】
図10を用いて、判定システム100が行う処理の流れを説明する。制御部10は、開始情報を取得する(ステップS10)。開始情報は、例えば、着座センサによって検知された、見守り対象者によって便座6への着座がなされたことを示す着座情報である。制御部10は取得した開始情報を、中継器20に送信する。中継器20は、制御部10から受信した開始情報を集約サーバ30に送信することによって中継する(ステップS11)。制御部10は、終了情報を取得する(ステップS11)。終了情報は、例えば、見守り対象者によってリモコン装置8が操作され局部洗浄が開始されたことを示す使用情報である。制御部10は取得した終了情報を、中継器20に送信する。中継器20は、制御部10から受信した終了情報を集約サーバ30に送信することによって中継する(ステップS13)。集約サーバ30は、開始情報と終了情報とを用いて排便時間を測定する(ステップS14)。集約サーバ30は、測定した排便時間を記憶部36に記憶させる。集約サーバ30は、ステップS10~S15に示す処理を、見守り対象者によってトイレ装置1が利用される度に行う(符号T100)。
【0041】
集約サーバ30は、排便時間、或いは排便時間の履歴に基づいて、見守り対象者の健康レベルを判定する(ステップS16)。集約サーバ30は、判定したレベルに応じて、見守り対象者の家族などに通知する通知内容を、通知先情報362を用いて選択する(ステップS17)。集約サーバ30は、ユーザ端末40に通知内容(健康レベル通知)を通知する。ユーザ端末40は、集約サーバ30から健康レベル通知を受信する(ステップS18)。ユーザ端末40は、受信した健康レベル通知を表示する(ステップS19)。
【0042】
以上説明したように、実施形態における判定システム100は、取得部12と、測定部33と、判定部34とを備える。取得部12は、見守りの対象者によってトイレ装置の利用が開始されたことを示す開始情報、及び排便が終了したことを示す終了情報を取得する。測定部33は、取得部12によって取得された情報に基づいて、見守り対象者が排便に要した排便時間を測定する。判定部34は、測定部33によって測定された排便時間に基づいて、見守り対象者の健康状態を判定する。これによって、実施形態における判定システム100は、見守り対象者における排便の開始と終了を把握して、排便時間を測定することができる。したがって、排便時間に基づく健康状態を判定することが可能である。
【0043】
実施形態における判定システム100では、取得部32が開始情報、及び終了情報を取得する。このため、取得部12に代えて、取得部32を構成要素として判定システム100を実現することが可能である。この場合、判定システム100は、集約サーバ30によって実現される。
【0044】
実施形態における判定システム100では、取得部12は、局部洗浄機能を備えるトイレ装置1における便座6への着座に関する着座情報、及び局部洗浄機能の使用に関する使用情報を取得する。これにより、局部洗浄が使用されたことを測定のトリガとして、排便がなされた場合のみを測定対象にすることができる。したがって、排便時間に、排尿のみで排便しなかったケースや、ただ着座していたケースを除外できる。局部洗浄が使用されたことを測定のトリガとしない場合と比較して、精度よく排便時間を測定することが可能である。
【0045】
実施形態における判定システム100では、測定部33は、見守り対象者による便座6への着座時刻から、局部洗浄の開始時刻までに要した時間を、排便時間として測定する。これによって、健康状態(特に、便秘状態)が反映される指標を取得することができる。したがって、見守り対象者の健康状態を精度よく判定することが可能である。
【0046】
実施形態における判定システム100では、判定部34は、所定時間と比較して排便時間が長い場合、前記対象者が便秘状態であると判定する。測定部33によって測定された排便時間を記憶する記憶部36をさらに備え、判定部34は、記憶部36に記憶された排便時間に基づいて、所定時間と比較して排便時間が長い排便が、所定の回数以上継続する場合、見守り対象者が便秘状態であると判定するようにしてもよい。これによって、実施形態の判定システム100は、閾値との比較や、継続した回数をカウントする等の簡単な情報処理によって、見守り対象者の健康状態を判定することが可能である。
【0047】
実施形態における判定システム100では、判定部34によって判定された対象者の健康状態を、予め登録されたユーザ端末40に送信する通信部31をさらに備える。これによって、実施形態の判定システム100は、見守り対象者の健康状態を、家族など身近な人に認識させて情報を共有することができる。したがって、見守り対象者とその家族に安心感を与えることが可能である。
【0048】
実施形態における判定システム100では、判定部34は、複数のレベルに分けて前記健康状態を判定し、通信部31は、判定部34によって判定された健康状態のレベルに応じた送信内容を送信する。これによって、実施形態における判定システム100は、見守り対象者の健康状態を見守ると共に、重い便秘状態にある場合など緊急性を要する場合に医療機関を受診させるなどの対応が可能である。
【0049】
(実施形態の変形例1)
判定部34は、排便時間のみならず、排便画像を用いて見守り対象者の健康状態を判定するようにしてもよい。排便画像は、排便時間における便鉢の様子が撮像された画像である。この場合、トイレ装置1は、制御部10によって制御される撮像部を備える。撮像部は、例えば、便座6の裏側などに、便鉢の内部空間を撮像可能に設置される。制御部10は、着座センサによって着座が検知されると、定期的(例えば、1秒おき)に撮像部に撮像させる。制御部10は、便鉢の内部空間を撮像した画像の画像情報を、中継器20を介して集約サーバ30に送信する。集約サーバ30は、通信部31によって画像情報を受信する。
【0050】
判定部34は、通信部31を介して制御部10から便鉢の様子を撮像した画像を取得する。判定部34は、画像に撮像された排泄物の形状及び色などに基づいて、見守り対象者の健康状態を判定する。例えば、判定部34は、画像処理の手法を用いて画像を解析することによって、排泄物が便秘状態にある便(硬便)か否か、下痢状態にある便(下痢便)か否か、便秘でも下痢状態でもない普通便か等を判定する。例えば、判定部34は、機械学習の手法を用いて画像における物体認識を行うことによって、硬便か否か等を判定する。或いは、判定部34は、画像を構成する画素のRGB値から求めた明度の分布に基づいて硬便か否か等を判定するようにしてもよい。例えば、判定部34は、排便時間が所定の閾値と比較して長く、画像に便秘状態にある排泄物が撮像されている場合に、見守り対象者が便秘状態にあると判定する。
【0051】
以上説明したように、実施形態の変形例1における判定システム100では、判定部34は、排便時間と、排便時間における便鉢の様子が撮像された画像を用いて、見守り対象者の健康状態を判定する。これによって、実施形態の変形例1における判定システム100では、排便時間のみならず、画像による判定結果を用いた判定を行うことによって、精度よく健康状態を判定することが可能である。例えば、排便時間が長かったが実際には普通便を排泄している場合などに、便秘状態にあると誤った判定がなされてしまうことを抑止することができる。
【0052】
(実施形態の変形例2)
判定部34は、トイレ装置1のみならず、見守り対象者が外出先で排泄した情報を用いて、健康状態を判定するようにしてもよい。この場合、制御部10は、入力部を備える。入力部には、入力装置(例えば、タッチパネルや操作ボタンなど)から操作入力された、外出先でした排泄に関する情報(以下、排便情報という)が入力される。排便情報は、着座時刻、局部洗浄の開始時刻などであることが望ましい。しかしながら、これに限定されることはない。排便情報は、少なくとも、健康状態を判定し得る情報であればよく、排便したか否か、排便に要した時間、硬便であったか否かなどであってもよい。制御部10は、入力部に入力された排便情報を、中継器20を介して集約サーバ30に送信する。或いは、中継器20が、見守り対象者のスマートフォンなどの情報端末装置である場合には、中継器20に排便情報を操作入力するようにしてもよい。この場合、中継器20は、操作入力された排便情報を集約サーバ30に送信する。集約サーバ30は、通信部31によって排便情報を受信する。
【0053】
判定部34は、通信部31を介して、排便情報を取得する。判定部34は、排便時間と、外出先でした排泄に関する情報とに基づいて、見守り対象者の健康状態を判定する。判定部34は、例えば、排便時間が所定の閾値と比較して長く、外出先でした排泄において便秘気味であると認識されている場合に、見守り対象者が便秘状態にあると判定する。
【0054】
以上説明したように、実施形態の変形例2における判定システム100では、入力部を更に備える。入力部には、見守り対象者によって外部のトイレが使用された際における、当該見守り対象者の排便に関する排便情報が入力される。判定部34は、入力部に入力された排便情報に基づいて、見守り対象者の健康状態を判定する。これによって、実施形態の変形例2における判定システム100では、トイレ装置1のみならず、外出先でした排泄も考慮して健康状態を判定することが可能である。
【0055】
上述した実施形態における判定システム100が行う処理の少なくとも一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含む。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合における通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントであるコンピュータシステム内部にある揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0056】
以上、実施形態について図面を参照して詳述してきた。具体的な構成はこの実施形態に限られない。
【符号の説明】
【0057】
1…トイレ装置、2…便器本体、4…便座ボックス、5…便蓋、6…便座、8…リモコン装置、10…制御部、11…通信部、12…取得部(取得部)、13…制御部、14…記憶部、20…中継器、30…集約サーバ、31…通信部、32…取得部(取得部)、33…測定部(測定部)、34…判定部(判定部)、35…制御部、36…記憶部、360…センサ情報、361…健康レベル情報、362…通知先情報