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特許7433056ガイドレール清掃部材、及びそれを用いたガイドレール清掃方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】ガイドレール清掃部材、及びそれを用いたガイドレール清掃方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240209BHJP
   B66B 23/24 20060101ALI20240209BHJP
   B08B 1/00 20240101ALI20240209BHJP
【FI】
B66B31/00 F
B66B23/24 C
B08B1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020007653
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113123
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 竜也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199328(JP,A)
【文献】特開平09-110358(JP,A)
【文献】米国特許第05117968(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102020190(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 23/24
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、
前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備え、
前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、
前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、
を更に備え、
前記連結部の厚さは、前記第1部分の最小厚さ以下の厚さを有すると共に、前記第2部分の最小厚さ以下の厚さを有する、ガイドレール清掃部材。
【請求項2】
乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、
前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備え、
前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、
前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、
を更に備え、
前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、
前記第1清掃部は、短手方向の第1の側の端部に位置する第1堅材料部と、前記第1堅材料部よりも柔らかい材料で構成されると共に、前記第1堅材料部よりも前記短手方向の第2の側に位置する第1柔材料部とを含み、
前記第2清掃部は、前記短手方向の前記第1の側の端部に位置する第2堅材料部と、前記第2堅材料部よりも柔らかい材料で構成されると共に、前記第2堅材料部よりも前記短手方向の前記第2の側に位置する第2柔材料部とを含む、ガイドレール清掃部材。
【請求項3】
前記第1柔材料部に取り囲まれるように位置して、前記第1清掃部に含まれない第1ポケットと、
前記第2柔材料部に取り囲まれるように位置して、前記第2清掃部に含まれない第2ポケットと、
を備える、請求項に記載のガイドレール清掃部材。
【請求項4】
乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、
前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備え、
前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、
前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、
を更に備え、
前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、
前記第1部分と前記第2部分の夫々は、短手方向の片側に前記短手方向の端に行くにしたがって非清掃面側に移動するように厚さが小さくなる傾斜部を有する、ガイドレール清掃部材。
【請求項5】
乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、
前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備え、
前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、
前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、
を更に備え、
前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、
前記第1部分と前記第2部分の夫々は、薄肉部と、厚さが前記薄肉部よりも大きい1以上の厚肉部を有し、
前記第1部分と前記第2部分の夫々において、少なくとも前記短手方向の片側の端部には、前記薄肉部が位置し、
前記第1部分の前記厚肉部における先端部が前記第1清掃部に含まれると共に、前記第2部分の前記厚肉部における先端部が前記第2清掃部に含まれる、ガイドレール清掃部材。
【請求項6】
前記第1部分と前記第2部分の夫々が、前記短手方向に間隔をおいて位置する2以上の前記厚肉部を含む、請求項に記載のガイドレール清掃部材。
【請求項7】
乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、
前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備え、
前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、
前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、
前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、
を更に備え、
前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、
前記手摺に貼り付けられた状態において、前記第1清掃部及び前記第2清掃部が存在しない非清掃面における少なくとも短手方向の一部領域が、長手方向の一端から他端まで粘着面で構成されている、ガイドレール清掃部材。
【請求項8】
前記粘着面は、前記非清掃面における前記短手方向の片側端部以外の全領域を構成している、請求項に記載のガイドレール清掃部材。
【請求項9】
請求項からのいずれか1つに記載のガイドレール清掃部材の前記第1部分を、前記第1清掃部が前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に対向するように、前記手摺の前記幅方向の第1の側における前記手摺の内側の少なくとも一部を含む第1箇所に貼り付けると共に、前記ガイドレール清掃部材の前記第2部分を、前記第2清掃部が前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に対向するように、前記手摺の前記幅方向の第2の側における前記手摺の内側の少なくとも一部を含む第2箇所に貼り付ける清掃部材貼付ステップと、
前記清掃部材貼付ステップの後で、手摺駆動装置を稼働して前記手摺を前記ガイドレールに対して相対移動させることで、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を前記第1清掃部で除去すると共に、前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を前記第2清掃部で除去する清掃ステップと、
を含む、ガイドレール清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベア、すなわち、エスカレーター又は動く歩道のガイドレールを清掃するのに用いるガイドレール清掃部材、及びそれを用いたガイドレール清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、エスカレーターの手摺は、欄干の上部に設置されたガイドレールに沿って走行した後、トラス内に侵入してトラス内を欄干上部における移動方向とは逆方向に走行して一周し、その後、再度、欄干の上部に設置されたガイドレールに沿って走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6453423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドレールに対して手摺を滑らかに摺動させるために、ガイドレールを清掃する必要がある。しかし、トラス内に設置されたガイドレールを清掃するために、パネルやインナーデッキ等を外さなければならない場合があり、そのような場合、ガイドレールの清掃に多大な労力と時間が必要になる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなくて、ガイドレールを短時間で容易に清掃できるガイドレール清掃部材及びそれを用いたガイドレール清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係るガイドレール清掃部材は、乗客コンベアの手摺の内側の少なくとも一部を含む部分に貼り付けられるシート状のガイドレール清掃部材であって、前記手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備える。
【0007】
本開示によれば、清掃部がガイドレールの幅方向の片側に対向するように片側部分を手摺の幅方向の片側に貼り付けた上で、ガイドレールに対して手摺を相対移動させるだけで、ガイドレールの幅方向の片側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。更には、ガイドレール清掃部材は、上記片側部分だけで構成されてもよいが、この場合、2つのガイドレール清掃部材を用いれば、ガイドレールの幅方向の両側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。したがって、トラス内に設置されたガイドレールを清掃するために、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなく、ガイドレールを短時間で容易に清掃できる。
【0008】
また、前記片側部分が、前記手摺の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分であって、前記清掃部が、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1清掃部であり、前記手摺の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分における前記ガイドレール側の少なくとも一部に位置して、前記手摺が前記ガイドレールに対して相対移動したときに前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2清掃部と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する連結部と、を更に備えてもよい。
【0009】
本構成によれば、第1部分を手摺の幅方向の第1の側に貼り付けると共に、第2部分を手摺の幅方向の第2の側に貼り付けて、ガイドレールに対して手摺を相対移動させるだけで、ガイドレールの幅方向の両側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。よって、1つのガイドレール清掃部材を手摺の内側部分を含むように手摺に貼り付けるだけで、ガイドレールを清掃できるので、ガイドレール清掃部材の取扱性を向上でき、ガイドレールをより簡便に清掃できる。
【0010】
また、前記連結部の厚さは、前記第1部分の最小厚さ以下の厚さを有すると共に、前記第2部分の最小厚さ以下の厚さを有してもよい。
【0011】
乗客コンベアでは、手摺駆動装置が手摺内側の幅方向の中央部に力を付与することで、手摺が循環移動する。
【0012】
本構成によれば、ガイドレール清掃部材において手摺駆動装置に接触する部分の厚さを薄くできる。したがって、手摺にガイドレール清掃部材を貼り付けても、手摺駆動装置の手摺移動動作に影響を与えることがないようにできる。
【0013】
また、前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、前記第1清掃部は、短手方向の第1の側の端部に位置する第1堅材料部と、前記第1堅材料部よりも柔らかい材料で構成されると共に、前記第1堅材料部よりも前記短手方向の第2の側に位置する第1柔材料部とを含み、前記第2清掃部は、前記短手方向の前記第1の側の端部に位置する第2堅材料部と、前記第2堅材料部よりも柔らかい材料で構成されると共に、前記第2堅材料部よりも前記短手方向の前記第2の側に位置する第2柔材料部とを含んでもよい。
【0014】
なお、本明細書では、ガイドレール清掃部材が、一方向に延在する細長い形状を有していれば、上記「平面視で略長方形の形状を有し」という要件を満足するものとし、例えば、ガイドレール清掃部材が、平面視で角部が面取りされた長方形の形状を有している場合等でも、上記「平面視で略長方形の形状を有し」という要件を満足するものとする。
【0015】
本構成において、第1及び第2堅材料部が、第1及び第2柔材料部よりも手摺の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固定すると好ましい。この場合、第1及び第2堅材料部でガイドレールに付着している異物を効率的に擦り取ることができ、更には、擦り取られた異物を第1及び第2柔材料部内に効率的に収容できる。よって、ガイドレールに付着している異物を効率的に除去でき、しかも、異物がトラス内に飛散することも抑制できる。
【0016】
また、前記第1柔材料部に取り囲まれるように位置して、前記第1清掃部に含まれない第1ポケットと、前記第2柔材料部に取り囲まれるように位置して、前記第2清掃部に含まれない第2ポケットと、を備えてもよい。
【0017】
本構成によれば、清掃部が存在しない第1及び第2ポケットに効率的に異物を収容できる。よって、異物がトラス内に飛散することを更に抑制できる。
【0018】
また、前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、前記第1部分と前記第2部分の夫々は、短手方向の片側に前記短手方向の端に行くにしたがって非清掃面(貼付面)側に移動するように厚さが小さくなる傾斜部を有してもよい。
【0019】
本構成において、短手方向の片側が手摺の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固定すると好ましい。この場合、清掃部が擦り取った異物を、ガイドレール清掃部材とガイドレールとで画定されると共に短手方向の片側に形成される断面略三角形状のスペースに効率的に収容できる。したがって、擦り取った異物が飛散して環境を汚染することを抑制できる。
【0020】
また、前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、前記第1部分と前記第2部分の夫々は、薄肉部と、厚さが前記薄肉部よりも大きい1以上の厚肉部を有し、前記第1部分と前記第2部分の夫々において、少なくとも前記短手方向の片側の端部には、前記薄肉部が位置し、前記第1部分の前記厚肉部における先端部が前記第1清掃部に含まれると共に、前記第2部分の前記厚肉部における先端部が前記第2清掃部に含まれてもよい。
【0021】
本構成において、短手方向の片側が手摺の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固定すると好ましい。この場合、清掃部が擦り取った異物を短手方向の片側に形成される薄肉部とガイドレールとで画定されるスペ―スに効率的に収容できる。したがって、擦り取った異物が飛散して環境を汚染することを抑制できる。
【0022】
また、前記第1部分と前記第2部分の夫々が、前記短手方向に間隔をおいて位置する2以上の前記厚肉部を含んでもよい。
【0023】
本構成によれば、清掃部が擦り取った異物を、短手方向の片側に形成されるスペースのみならず、短手方向に隣り合う厚肉部の間のスペースにも収容できる。したがって、異物が外部に飛散することをより確実に抑制できる。
【0024】
また、前記手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、前記手摺に貼り付けられた状態において、前記第1清掃部及び前記第2清掃部が存在しない非清掃面における少なくとも短手方向の一部領域が、長手方向の一端から他端まで粘着面で構成されてもよい。
【0025】
本構成によれば、粘着面を手摺に貼り付けるだけでガイドレール清掃部材を容易に手摺に固定できる。
【0026】
なお、この場合において、ガイドレール清掃部材を手摺に貼り付ける前において、粘着面が、紙やフィルムで構成される剥離ライナーで被覆されていてもよく、ガイドレール清掃部材を使用するとき、ユーザがガイドレール清掃部材から剥離ライナーを剥がすことで粘着面を外部に露出させるようになっていてもよい。また、上記粘着面は両面テープの片側面でもよく、この場合、両面テープの他方側面をガイドレール清掃部材のシート状の本体に固着するだけで、粘着面を簡単安価に構成することができる。
【0027】
また、前記粘着面は、前記非清掃面における前記短手方向の片側端部以外の全領域を構成してもよい。
【0028】
本構成において、片側端部が手摺の進行方向とは逆側の端部に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固着すると好ましい。この場合、ガイドレールの清掃が終了した後、粘着面が存在しない片側端部を用いてガイドレール清掃部材を手摺から容易に剥がすことができる。なお、片側端部が手摺の進行方向側の端部に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固着してもよいが、この場合、手摺の移動中にガイドレール清掃部材の進行側が剥がれ易くなって好ましくない。
【0029】
また、本開示に係るガイドレール清掃方法は、本開示の一実施形態に係るガイドレール清掃部材の前記第1部分を、前記第1清掃部が前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に対向するように、前記手摺の前記幅方向の第1の側における前記手摺の内側の少なくとも一部を含む第1箇所に貼り付けると共に、前記ガイドレール清掃部材の前記第2部分を、前記第2清掃部が前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に対向するように、前記手摺の前記幅方向の第2の側における前記手摺の内側の少なくとも一部を含む第2箇所に貼り付ける清掃部材貼付ステップと、前記清掃部材貼付ステップの後で、手摺駆動装置を稼働して前記手摺を前記ガイドレールに対して相対移動させることで、前記ガイドレールの前記幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を前記第1清掃部で除去すると共に、前記ガイドレールの前記幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を前記第2清掃部で除去する清掃ステップと、を含む。
【0030】
本開示によれば、トラス内に設置されたガイドレールを清掃するために、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなく、ガイドレールを短時間で容易に清掃できる。
【発明の効果】
【0031】
本開示に係るガイドレール清掃部材及びそれを用いたガイドレール清掃方法によれば、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなくて、ガイドレールを短時間で容易に清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示のガイドレール清掃部材で清掃可能なエスカレーターの概略構成図である。
図2】帰路側のガイドレールと手摺との関係、すなわち、トラス内におけるガイドレールと手摺との関係を示す断面図である。
図3】手摺に貼り付けられる前の一実施形態のガイドレール清掃部材を清掃部存在側から見たときの平面図である。
図4】上記ガイドレール清掃部材が貼り付けられた帰路側のガイドレールと手摺を示す図2に対応する断面図である。
図5】変形例のガイドレール清掃部材における図3に対応する平面図である。
図6】(a)は、他の変形例のガイドレール清掃部材における図3に対応する平面図であり、粘着部の図示を省略した平面図である。また、(b)は、図6(a)のA-A線断面図である。
図7】(a)は、別の変形例のガイドレール清掃部材における図6(b)に対応する断面図であり、(b)は、更なる変形例のガイドレール清掃部材における図6(b)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。また、本明細書では、ガイドレール清掃部材が、一方向に延在する細長い形状を有していれば、「平面視で略長方形の形状を有し」という要件を満足するものとし、例えば、ガイドレール清掃部材が、平面視で角部が面取りされた長方形の形状を有している場合等でも、「平面視で略長方形の形状を有し」という要件を満足するものとする。
【0034】
図1は、本開示のガイドレール清掃部材が用いられるエスカレーター1の概略構成図である。先ず、図1を用いてエスカレーター1の構成及び動作を簡単に説明する。なお、図1では、ガイドレール清掃部材が用いられる乗客コンベアの一例として、上り用のエスカレーター1を説明するが、ガイドレール清掃部材が用いられる乗客コンベアは、下り用のエスカレーターでもよく、動く歩道でもよい。
【0035】
図1に示すように、エスカレーター1は、本体枠13、一対の欄干2、複数の踏板3、踏段チェーン6、上部踏段スプロケット4、下部踏段スプロケット5、駆動スプロケット7、駆動チェーン9、手摺10、複数の手摺駆動装置11、手摺駆動スプロケット12、第1手摺チェーン18、及び駆動機(巻上機)8を備える。
【0036】
本体枠13は、高さが異なる階床間に亘って配設され、一対の欄干2は、本体枠13の幅方向の両側に設けられる。踏板3は、一対の欄干2の間に配設される。複数の踏板3は踏段チェーン6により無端状に連結され、踏段チェーン6は、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケット5の間に掛け渡される。
【0037】
駆動スプロケット7は、上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられ、駆動チェーン9は、駆動スプロケット7と駆動機8の間に掛け渡される。駆動機8の駆動力が、駆動チェーン9、駆動スプロケット7、及び上部踏段スプロケット4を介して踏段チェーン6に伝達されることによって、踏段チェーン6が、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケット5の間を循環移動し、それに伴って複数の踏板3が循環移動する。
【0038】
手摺10は、欄干2の周縁部等に循環移動可能に取り付けられ、複数の手摺駆動装置11によって循環移動する。より詳しくは、欄干2の周縁部と、トラス内における手摺駆動装置11以外の箇所には、図示しないガイドレールが取り付けられ、手摺10は、ガイドレールに案内されるように循環移動する。複数の手摺駆動装置11は、トラス30の傾斜部38にトラス30の延在方向に間隔をおいて配置される。なお、図1においては、1つの手摺駆動装置11のみが図示されている。手摺駆動装置11は、例えば、上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられた手摺駆動スプロケット12に巻き掛けられた第1手摺チェーン18により駆動される。
【0039】
手摺駆動装置11は、複数の駆動ローラユニット15、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、2連スプロケット21、及び第2手摺チェーン20を有する。駆動ローラユニット15には、駆動ローラ(図示せず)及び駆動ローラ用スプロケット(図示せず)が同軸上に一体に設けられる。駆動ローラ、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、及び2連スプロケット21は、欄干2と略平行に延在する取付枠(図示せず)に回動自在に取り付けられる。
【0040】
加圧ローラ17は、手摺10を挟んで駆動ローラと対向する位置に配設され、アイドラスプロケット19は、駆動ローラユニット15よりも2連スプロケット21側に配設される。2連スプロケット21には、第1及び第2スプロケット21a,21bが同軸上に設けられる。また、第2手摺チェーン20は、無端のループ状であり、駆動ローラ用スプロケット、アイドラスプロケット19、及び第1スプロケット21aに掛け渡される。
【0041】
詳述しないが、アイドラスプロケット19の軸部は、図1に矢印Aで示す方向に延在する長孔(図示せず)に取り付けられ、アイドラスプロケット19の取付位置は、矢印A方向に移動可能になっている。このことから、第2手摺チェーン20の張力は、アイドラスプロケットの取付位置の調整によって調整可能になっている。駆動機8の動力により、第1手摺チェーン18を介して2連スプロケット21が回動し、その結果、第2手摺チェーン20が循環移動して、第2手摺チェーン20が掛け渡された駆動ローラ用スプロケットと一体の駆動ローラが回動する。そして、駆動ローラの回動により、駆動ローラと加圧ローラに挟まれた手摺10が摩擦駆動される。加圧ローラ17は、手摺10を駆動ローラに押し付け、従動回転するようになっている。この摩擦駆動により、無断部材である手摺10が、欄干2の周縁部に設けられたガイドレールに沿って上側に移動した後、トラス30内に設置された帰路側のガイドレールに案内されてトラス30内を下側に移動し、その後、再度、欄干2の周縁部に設けられたガイドレールに沿って上側に移動するようになっている。
【0042】
図2は、帰路側のガイドレール40と手摺10との関係、すなわち、トラス30内におけるガイドレール40と手摺10との関係を示す断面図である。なお、図2において、紙面の上側が鉛直方向の上側に一致している。
【0043】
図2に示すように、手摺10は、間隔をおいて水平方向に対向すると共に水平方向に延在する第1及び第2水平方向延在部10a,10bと、略断面U字形状であって、略180°湾曲する第1及び第2湾曲部10c,10dとを有する。第1水平方向延在部10aの第2水平方向延在部10b側とは反対側の端部は、第1湾曲部10cの一方側端部と繋がり、第2水平方向延在部10bの第1水平方向延在部10a側とは反対側の端部は、第2湾曲部10dの一方側端部と繋がっている。手摺10は、更に、第3水平方向延在部10eを有する。第3水平方向延在部10eは、水平方向に延在し、第3水平方向延在部10eの一方側端部は、第1湾曲部10cの他方側端部に繋がり、第3水平方向延在部10eの他方側端部は、第2湾曲部10dの他方側端部に繋がっている。第3水平方向延在部10eは、第1及び第2水平方向延在部10a,10bの夫々と、間隔をおいて鉛直方向に対向している。
【0044】
第1水平方向延在部10a、第1湾曲部10c、及び第3水平方向延在部10eは、図2に示す断面において水平方向に延在する細長い第1凹部41を画定し、第2水平方向延在部10b、第2湾曲部10d、及び第3水平方向延在部10eは、当該断面において水平方向に延在する細長い第2凹部42を画定する。図2に示す断面において、手摺10が略線対称になる直線Pが存在している。
【0045】
一方、ガイドレール40は、間隔をおいて水平方向に対向すると共に水平方向に延在する第1及び第2直線状延在部40a,40bを有する。また、ガイドレール40は、第1直線状延在部40aにおける第2直線状延在部40b側の端部と、第2直線状延在部40bにおける第1直線状延在部40a側の端部とを連結する連結部40cを有する。本実施例では、連結部40cは、断面略U字形状を有し、鉛直方向下側に向けられた開口を有しているが、連結部40cは、如何なる形状を有してもよい。ガイドレール40は、図2に示す断面において、上記直線Pに対して略線対称になっている。
【0046】
第1直線状延在部40aの一部又は全部は、第1凹部41に収容され、第2直線状延在部40bの一部又は全部は、第2凹部42に収容され、例えば、図2に示すように、第1直線状延在部40aの先端側の大部分は、第1凹部41に収容され、第2直線状延在部40bの先端側の大部分は、第2凹部42に収容される。第1直線状延在部40aは、その先端が第1凹部41の底面の一部に接触することで、水平方向に位置決めされ、第2直線状延在部40bは、その先端が第2凹部42の底面の一部に接触することで、水平方向に位置決めされる。
【0047】
第1凹部41の鉛直方向の隙間は、第1直線状延在部40aの幅よりも大きくなっており、第2凹部42の鉛直方向の隙間は、第2直線状延在部40bの幅よりも大きくなっている。これにより、トラス30内では、第1水平方向延在部10aの鉛直方向下側面が、自重で第1直線状延在部40aの上面に接触すると共に、第1直線状延在部40aの下面は、第3水平方向延在部10eに鉛直方向に間隔をおいて位置するようになっている。また、同様に、トラス30内では、第2水平方向延在部10bの鉛直方向下側面が、自重で第2直線状延在部40bの上面に接触すると共に、第2直線状延在部40bの下面は、第3水平方向延在部10eに鉛直方向に間隔をおいて位置するようになっている。
【0048】
次に、図3を用いて本開示の一実施形態に係るガイドレール清掃部材50について説明する。図3は、手摺10に貼り付けられる前のガイドレール清掃部材50を清掃部存在側から見たときの平面図である。図3に示すように、ガイドレール清掃部材50は、手摺10に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、手摺10の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分51と、手摺10の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分52と、第1部分51と第2部分52とを連結する連結部53を有する。また、図3に示す断面において、ガイドレール清掃部材50が線対称になる直線Qが存在している。
【0049】
ガイドレール清掃部材50は、第1部分51のガイドレール40側に配置される第1清掃部の一例としての第1ブラシ部61と、第2部分52のガイドレール40側に配置される第2清掃部の一例としての第2ブラシ部62とを有する。第1ブラシ部61は、多数の繊維、多数の毛、又は多数の針金等を含み、それらの多数の繊維、多数の毛、又は多数の針金等は、面密度が略一定の状態かつ密集した状態で、第1部分51のガイドレール40側の面にその面の法線方向に突出した状態で固定される。また、第2ブラシ部62は、多数の繊維、多数の毛、又は多数の針金等を含み、それらの多数の繊維、多数の毛、又は多数の針金等も、面密度が略一定の状態かつ密集した状態で、第2部分52のガイドレール40側の面にその面の法線方向に突出した状態で固定される。
【0050】
図3に示す実施例では、第1ブラシ部61は、矢印Xで示す短手方向(手摺10の移動方向に一致)の第1の側の端部に位置する第1堅材料部64と、第1堅材料部64よりも柔らかい材料で構成されると共に、第1堅材料部64よりも短手方向の第2の側に位置する第1柔材料部65とを含む。また、第2ブラシ部62は、短手方向の第1の側の端部に位置する第2堅材料部67と、第2堅材料部67よりも柔らかい材料で構成されると共に、第2堅材料部67よりも短手方向の第2の側に位置する第2柔材料部68とを含む。一例を挙げれば、第1及び第2堅材料部64,67は、スコッチブラシで構成されてもよく、第1及び第2柔材料部65,68は、スコッチブラシよりも柔らかいスポンジブラシで構成されてもよい。
【0051】
図3に示すように、ガイドレール清掃部材50は、更に、第1柔材料部65に取り囲まれるように位置して、第1ブラシ部61に含まれない第1ポケット71と、第2柔材料部68に取り囲まれるように位置して、第2ブラシ部62に含まれない第2ポケット72とを備える。第1ポケット71の厚さは、第1ブラシ部61の最小の厚さよりも小さくなっており、第2ポケット72の厚さは、第2ブラシ部62の最小の厚さよりも小さくなっている。これにより、第1ポケット71は、第1柔材料部65に取り囲まれるように位置する凹部になっており、第2ポケット72は、第2柔材料部68に取り囲まれるように位置する凹部になっている。連結部53は、清掃を行う役割を演じる如何なる材料及び部位も含まない。また、連結部53の厚さは、第1部分51の最小厚さ以下の厚さになっていると共に、第2部分52の最小厚さ以下の厚さになっている。
【0052】
ガイドレール清掃部材50は、手摺貼付側に粘着面75を有している。詳しくは、図3を参照して、ガイドレール清掃部材50においてブラシ部61,62が存在しない側の非清掃面80において斜線で示す領域は、粘着面75になっている。より詳しくは、ガイドレール清掃部材50は、手摺10に貼り付けられた状態において第1及び第2ブラシ部61,62が存在しない非清掃面80における少なくとも短手方向の一部領域が長手方向の一端から他端まで粘着面75で構成されている。図3に示すように、本実施例では、粘着面75は、非清掃面80における短手方向の片側端部以外の全領域を構成している。
【0053】
なお、ガイドレール清掃部材50を手摺10に貼り付ける前において、粘着面75が、紙やフィルムで構成される剥離ライナー(図示せず)で被覆されていてもよく、ガイドレール清掃部材50を使用するとき、ユーザがガイドレール清掃部材50から剥離ライナーを剥がすことで粘着面75を外部に露出させるようになっていてもよい。また、粘着面75は両面テープの片側面でもよく、この場合、両面テープの他方側面をガイドレール清掃部材50のシート状の本体に固着するだけで、粘着面75を簡単安価に構成することができる。
【0054】
上記構成において、ガイドレール清掃部材50は、次のように手摺10に貼り付けられ、ガイドレール40は、ガイドレール清掃部材50を用いて次のように清掃される。詳しくは、図4に示すように、ガイドレール40の幅方向一方側において手摺10に摺接する部分、本実施例においては、第1直線状延在部40aの上面において第1凹部41に収容されている部分の全てに、第1ブラシ部61が接触すると共に、ガイドレール40の幅方向他方側において手摺10に摺接する部分、本実施例においては、第2直線状延在部40bの上面において第2凹部42に収容されている部分の全てに、第2ブラシ部62が接触するように、手摺10の凹部55を画定する手摺の内面(内側)58にガイドレール清掃部材50の粘着面75を固着させる。ガイドレール清掃部材50は、トラスにおいてガイドレール40が存在しない手摺駆動装置11の周辺領域で手摺10に貼り付ける。
【0055】
ガイドレール清掃部材50が手摺10に固着された状態で、図3に矢印Yで示すガイドレール清掃部材50の長手方向が手摺10の幅方向に略一致するようする。また、本実施例のガイドレール清掃部材50では、非清掃面80において粘着面75が存在しない短手方向の片側端部が、手摺10の移動方向とは反対側の端部に位置するように、ガイドレール清掃部材50を手摺10に固着する。また、本実施例では、ガイドレール清掃部材50が手摺10に固着された状態で、連結部53が第3水平方向延在部10eの上面において第1及び第2凹部41,42の内面を構成していない部分の全てを覆うようになっている。
【0056】
この状態において、手摺駆動装置11を稼働して手摺10をガイドレール40に対して相対移動させる。このようにして、第1及び第2ブラシ部61,62をガイドレール40に対して摺動させることで、ガイドレール40の幅方向の第1の側に付着している異物を第1ブラシ部61で効率的に擦り取ると共に、ガイドレール40の幅方向の第2の側に付着している異物を第2ブラシ部62で効率的に擦り取る。
【0057】
以上、ガイドレール清掃部材50は、手摺10の幅方向の第1の側に貼り付けられる第1部分51におけるガイドレール40側の少なくとも一部に位置して、手摺10がガイドレール40に対して相対移動したときにガイドレール40の幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第1ブラシ部61を備える。また、ガイドレール清掃部材50は、手摺10の幅方向の第2の側に貼り付けられる第2部分52におけるガイドレール40側の少なくとも一部に位置して、手摺10がガイドレール40に対して相対移動したときにガイドレール40の幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く第2ブラシ部62と、第1部分51と第2部分52とを連結する連結部53とを備える。
【0058】
本構成によれば、第1部分51を手摺10の幅方向の第1の側に貼り付けると共に、第2部分52を手摺10の幅方向の第2の側に貼り付けて、ガイドレール40に対して手摺10を相対移動させるだけで、ガイドレール40の幅方向の両側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。よって、トラス30内に位置する帰路側のガイドレール40を清掃する際にパネルやインナーデッキ等を外す必要がなく、ガイドレール40を短時間で容易に清掃することができる。また、1つのガイドレール清掃部材50を手摺10の内側部分を含むように手摺10に貼り付けるだけで、ガイドレール40の清掃を実行できるので、ガイドレール清掃部材50の取扱性を良好なものにでき、ガイドレール40をより簡便に清掃することができる。
【0059】
また、連結部53の厚さが、第1部分51の最小厚さ以下の厚さを有すると共に、第2部分52の最小厚さ以下の厚さを有してもよい。
【0060】
乗客コンベアでは、手摺駆動装置11が手摺内側の幅方向の中央部63(図2参照)に力を付与することで、手摺10が循環移動する。一方、本構成によれば、上述のように、連結部53が第3水平方向延在部10eの上面において第1及び第2凹部41,42の内面を構成していない部分の全てを覆うようにすることで、ガイドレール清掃部材50において手摺駆動装置11に接触する部分の厚さを薄くできる。したがって、手摺駆動装置11の手摺移動動作に影響を与えることがないようにできる。
【0061】
また、手摺10に貼り付けられる前において、ガイドレール清掃部材50が平面視で略長方形の形状を有し、第1ブラシ部61が、短手方向の第1の側の端部に位置する第1堅材料部64と、第1堅材料部64よりも柔らかい材料で構成されると共に、第1堅材料部64よりも短手方向の第2の側に位置する第1柔材料部65とを含んでもよい。また、第2ブラシ部62が、短手方向の第1の側の端部に位置する第2堅材料部67と、第2堅材料部67よりも柔らかい材料で構成されると共に、第2堅材料部67よりも短手方向の第2の側に位置する第2柔材料部68とを含んでもよい。
【0062】
本構成によれば、第1及び第2堅材料部64,67が、第1及び第2柔材料部65,68よりも手摺10の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材50を手摺10に固定することで、第1及び第2堅材料部64,67でガイドレール40に付着している異物を効率的に擦り取ることができ、更には、擦り取られた異物を第1及び第2柔材料部65,68内に効率的に収容できる。よって、ガイドレール40に付着している異物を効率的に除去でき、しかも、埃等の異物がトラス30内に飛散することも抑制できる。
【0063】
また、第1柔材料部65に取り囲まれるように位置して、第1ブラシ部61に含まれない第1ポケット71と、第2柔材料部68に取り囲まれるように位置して、第2ブラシ部62に含まれない第2ポケット72とを備えてもよい。
【0064】
本構成によれば、ブラシ部61,62が存在しないことで結果的に凹部になる第1及び第2ポケット71,72に効率的に異物を収容できる。よって、異物がトラス30内に飛散することを更に抑制できる。
【0065】
また、手摺10に貼り付けられる前において、ガイドレール清掃部材50が、平面視で略長方形の形状を有し、手摺10に貼り付けられた状態において、第1ブラシ部61及び第2ブラシ部62が存在しない非清掃面における少なくとも短手方向の一部領域が、長手方向の一端から他端まで粘着面75で構成されてもよい。
【0066】
本構成によれば、粘着面75を手摺に貼り付けるだけでガイドレール清掃部材50を容易に手摺10に固定できる。
【0067】
また、粘着面75は、非清掃面80における短手方向の片側端部以外の全領域を構成してもよい。
【0068】
本構成によれば、片側端部が手摺10の進行方向とは逆側の端部に位置するようにガイドレール清掃部材50を手摺10に固着することで、ガイドレール40の清掃が終了した後、粘着面75が存在しない片側端部を用いてガイドレール清掃部材50を手摺10から容易に剥がすことができる。また、側端部が手摺10の進行方向とは逆側の端部に位置するようにガイドレール清掃部材50を手摺10に固着することで、手摺10の移動中にガイドレール清掃部材50の進行側の端部が剥がれることも効果的に抑制でき、第1及び第2ブラシ部61,62で効率的に異物を除去できる。なお、片側端部が手摺10の進行方向側の端部に位置するようにガイドレール清掃部材を手摺に固着してもよいが、この場合、手摺10の移動中にガイドレール清掃部材の進行側が剥がれ易くなって好ましくない。
【0069】
また、本開示に係るガイドレール清掃方法は、ガイドレール清掃部材50の第1部分51を、第1ブラシ部61がガイドレール40の幅方向の第1の側に対向するように、手摺10の幅方向の第1の側における手摺10の内側の少なくとも一部を含む第1箇所に貼り付けると共に、ガイドレール清掃部材50の第2部分52を、第2ブラシ部62がガイドレール40の幅方向の第2の側に対向するように、手摺10の幅方向の第2の側における手摺10の内側の少なくとも一部を含む第2箇所に貼り付ける清掃部材貼付ステップを含む。また、本開示に係るガイドレール清掃方法は、上記清掃部材貼付ステップの後で、手摺駆動装置11を稼働して手摺10をガイドレール40に対して相対移動させることで、ガイドレール40の幅方向の第1の側に付着している異物の少なくとも一部を第1ブラシ部61で除去すると共に、ガイドレール40の幅方向の第2の側に付着している異物の少なくとも一部を第2ブラシ部62で除去する清掃ステップを含む。
【0070】
本開示によれば、トラス30内に設置された帰路側のガイドレール40を清掃するために、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなく、ガイドレール40を短時間で容易に清掃できる。
【0071】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、各ブラシ部61,62が、堅材料部64,67と、柔材料部65,68とを含む場合について説明した。しかし、図5、すなわち、変形例のガイドレール清掃部材150における図3に対応する平面図に示すように、第1清掃部の全ての領域が、同一の構造を有する第1ブラシ部161で構成され、第2清掃部の全ての領域が、同一の構造を有する第2ブラシ部162で構成されてもよい。
【0073】
また、図3に示すように、各ブラシ部61,62が、長手方向(Y方向)の端部領域において短手方向(X方向)の一端から他端まで形成される場合について説明した。しかし、次に説明するように、清掃部は、長手方向の端部領域における短手方向の全ての領域に形成されなくてもよい。
【0074】
図6(a)は、他の変形例のガイドレール清掃部材250における図3に対応する平面図であり、粘着面75の図示を省略した平面図である。また、図6(b)は、図6(a)のA-A線断面図である。
【0075】
図6(a)に示すように、ガイドレール清掃部材250は、手摺10に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有してもよい。また、図6(a),(b)に示すように、ガイドレール清掃部材250においてその長手方向の一端部に位置する第1部分251は、薄肉部281と、厚さが薄肉部281よりも大きい1以上の厚肉部282を有してもよい。また、図6(a)に示すように、ガイドレール清掃部材250においてその長手方向の一端部に位置する第2部分252は、薄肉部284と、厚さが薄肉部284よりも大きい1以上の厚肉部285を有してもよい。
【0076】
また、図6(b)に示すように、第1部分251は、両面テープ等で構成される粘着層261と、柔軟性を有する樹脂等で構成される基材262と、第1清掃部の一例としての第1ブラシ部263とを含んでもよい。また、図示はしないが、第2部分252も、第1部分と同一の構造を有して、両面テープ等で構成される粘着層と、柔軟性を有する樹脂等で構成される基材と、第2清掃部の一例としての第2ブラシ部268(図6(a)参照)とを含んでもよい。
【0077】
また、図6(a),(b)に示すように、第1部分251と第2部分252の夫々において、少なくとも短手方向の片側端部には、薄肉部281,284が位置し、第1部分251の厚肉部282における先端部が第1ブラシ部263に含まれると共に、第2部分252の厚肉部285における先端部が第2ブラシ部268に含まれてもよい。
【0078】
本構成によれば、薄肉部281,284が手摺10の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材250を手摺10に固定することで、ブラシ部263,268が擦り取った異物を、短手方向の片側に形成されると共に薄肉部281,284とガイドレールとで画定されるスペ―ス291(図6(b)参照)に効率的に収容できる。したがって、擦り取った異物が飛散して環境を汚染することを抑制できる。
【0079】
また、ガイドレール清掃部材は、次に説明するように、他の構造を有してもよい。図7(a)は、別の変形例のガイドレール清掃部材350における図6(b)に対応する断面図であり、図7(b)は、更なる変形例のガイドレール清掃部材450における図6(b)に対応する断面図である。
【0080】
図7(a)に示すように、ガイドレール清掃部材350は、粘着層を有さなくて清掃部(例えば、ブラシ部で構成される)360のみで構成されてもよく、別途用意された両面テープや糊等を用いて使用時に手摺に貼り付けられてもよい。また、ガイドレール清掃部材350は、手摺に貼り付けられる前において、平面視で略長方形の形状を有し、第1部分と第2部分の夫々が、短手方向の片側に短手方向の端に行くにしたがって非清掃面(手摺貼付面)380側に移動するように厚さが小さくなる傾斜部377を有してもよい。
【0081】
本構成によれば、短手方向の片側、すなわち、傾斜部377の薄肉側が手摺10の進行側に位置するようにガイドレール清掃部材350を手摺10に固定することで、清掃部360が擦り取った異物を、ガイドレール清掃部材350とガイドレール40とで画定されると共に短手方向の片側に形成される断面略三角形状のスペース391に効率的に収容できる。したがって、擦り取った異物が飛散して環境を汚染することを抑制できる。
【0082】
また、図7(b)に示すように、ガイドレール清掃部材450は、図6に示すガイドレール清掃部材250との比較において、第1部分と第2部分の夫々が、短手方向に間隔をおいて位置する2以上の厚肉部430,431を含んでもよい。
【0083】
本構成によれば、清掃部(例えば、ブラシ部で構成される)460が擦り取った異物を、短手方向の片側に形成されるスペース491のみならず、短手方向に隣り合う厚肉部430,431の間のスペース492にも収容できる。したがって、異物が外部に飛散することをより確実に抑制できる。
【0084】
また、第1及び第2清掃部が、ブラシ部61,62である場合について説明する。しかし、第1及び第2清掃部は、ガイドレールに付着している埃等の異物を擦り取って除去できる性質を有する如何なる材料又は部位で構成されてもよく、例えば、ガイドレールに傷が付かない程度の堅さの砥粒を含む紙ヤスリやサンドペーパー等で構成されてもよい。
【0085】
また、連結部53に清掃部が存在しない場合について説明した。しかし、ガイドレール清掃部材の延在方向の両端部に清掃部が存在する一方、ガイドレール清掃部材の中央部に清掃部が存在しない場合、ガイドレール清掃部材の長手方向の所定領域に部分的に清掃部を形成することになるため、ガイドレール清掃部材を量産しにくくなる。このため、第1部分及び第2部分に加えて、連結部にも清掃部を形成して、ガイドレール清掃部材を量産し易くしてもよい。
【0086】
また、ガイドレール清掃部材50が、第1清掃部を含む第1部分51と、第2清掃部を含む第2部分52と、それらを連結する連結部53を有して、1つのガイドレール清掃部材50で、ガイドレール40を清掃する場合について説明した。しかし、ガイドレール清掃部材は、連結部を有さなくて、1つのガイドレール清掃部材が、ガイドレールの幅方向の片側の清掃しかできない構成でもよく、2つのガイドレール清掃部材を用いて、ガイドレールの幅方向の両側の清掃を行う構成でもよい。
【0087】
詳しくは、本開示に係るガイドレール清掃部材は、手摺の幅方向の片側に貼り付けられる片側部分におけるガイドレール側の少なくとも一部に位置して、手摺がガイドレールに対して相対移動したときにガイドレールの幅方向の片側に付着している異物の少なくとも一部を取り除く清掃部を備えていればよい。
【0088】
そのような構成であっても、清掃部がガイドレールの幅方向の片側に対向するように片側部分を手摺の幅方向の片側に貼り付けた上で、ガイドレールに対して手摺を相対移動させるだけで、ガイドレールの幅方向の片側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。更には、ガイドレール清掃部材は、当該片側部分だけで構成されてもよいが、その場合、2つのガイドレール清掃部材を用いれば、ガイドレールの幅方向の両側に付着している異物を効率的に取り除くことができる。したがって、そのような構成でも、トラス内に設置されたガイドレールを清掃するために、パネルやインナーデッキ等を外す必要がなく、ガイドレールを短時間で容易に清掃できる。
【符号の説明】
【0089】
1 エスカレーター、 10 手摺、 11 手摺駆動装置、 30 トラス、 40 ガイドレール、 41 第1凹部、 42 第2凹部、 50,150,250,350,450 ガイドレール清掃部材、 51,251 第1部分、 52,252 第2部分、 53 連結部、 61,161,263 第1ブラシ部、 62,162,268 第2ブラシ部、 64 第1堅材料部、 65 第1柔材料部、 67 第2堅材料部、 68 第2柔材料部、 71 第1ポケット、 72 第2ポケット、 75 粘着面、 80,380 非清掃面、 281,284 薄肉部、 282,285,430,431 厚肉部、 291,391,491,492 スペース、 360,460 清掃部、 377 傾斜部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7