(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】磁極片装置、磁気歯車、磁気ギアードモータ並びに磁気ギアード発電機
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20240209BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20240209BHJP
H02K 49/10 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K7/10 A
H02K49/10 A
(21)【出願番号】P 2020009603
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】左海 将之
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246982(JP,A)
【文献】特開2008-164095(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128985(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/014596(WO,A1)
【文献】特開2015-061423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 7/10
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気歯車における内径側磁石界磁と外径側磁石界磁との間に配置される磁極片装置であって、
前記外径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する外周カバー部材と、
前記内径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する内周カバー部材と、
前記外周カバー部材と前記内周カバー部材との間に、周方向に間隔を置いて配置された複数の磁極片と、を備え、
前記外周カバー部材は、前記複数の磁極片の外周面に面する複数の外周側対面部と、隣り合う2つの前記外周側対面部を接続する複数の外周側接続部と、を含み、
前記内周カバー部材は、前記複数の磁極片の内周面に面する複数の内周側対面部と、隣り合う2つの前記内周側対面部を接続する複数の内周側接続部と、を含み、
前記外周カバー部材および前記内周カバー部材の間において、前記複数の磁極片の間には該磁極片の側面により隣接間空間が区画され、
前記複数の外周側接続部の各々は、前記外周カバー部材の内周側と外周側とを連通する外周側連通部を
前記隣接間空間に面する部分に有し、
前記複数の内周側接続部の各々は、前記内周カバー部材の内周側と外周側とを連通する内周側連通部を
前記隣接間空間に面する部分に有する磁極片装置。
【請求項2】
前記複数の外周側接続部は、第1の外周側接続部を含み、
前記複数の内周側接続部は、前記第1の外周側接続部と対向する第1の内周側接続部を含み、
前記第1の外周側接続部が有する前記外周側連通部と、前記第1の内周側接続部が有する前記内周側連通部とは、軸方向において互いに異なる位置にある請求項1に記載の磁極片装置。
【請求項3】
磁気歯車における内径側磁石界磁と外径側磁石界磁との間に配置される磁極片装置であって、
前記外径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する外周カバー部材と、
前記内径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する内周カバー部材と、
前記外周カバー部材と前記内周カバー部材との間に、周方向に間隔を置いて配置された複数の磁極片と、を備え、
前記外周カバー部材は、前記複数の磁極片の外周面に面する複数の外周側対面部と、隣り合う2つの前記外周側対面部を接続する複数の外周側接続部と、を含み、
前記内周カバー部材は、前記複数の磁極片の内周面に面する複数の内周側対面部と、隣り合う2つの前記内周側対面部を接続する複数の内周側接続部と、を含み、
前記複数の外周側接続部の各々は、前記外周カバー部材の内周側と外周側とを連通する外周側連通部を有し、
前記複数の内周側接続部の各々は、前記内周カバー部材の内周側と外周側とを連通する内周側連通部を有し、
前記複数の外周側接続部は、第1の外周側接続部を含み、
前記複数の内周側接続部は、前記第1の外周側接続部と対向する第1の内周側接続部を含み、
前記第1の外周側接続部が有する前記外周側連通部と、前記第1の内周側接続部が有する前記内周側連通部とは、周方向において互いに異なる位置にある磁極片装置。
【請求項4】
前記外周側連通部または前記内周側連通部の少なくとも一方は、1つ以上の貫通孔を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の磁極片装置。
【請求項5】
磁気歯車における内径側磁石界磁と外径側磁石界磁との間に配置される磁極片装置であって、
前記外径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する外周カバー部材と、
前記内径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する内周カバー部材と、
前記外周カバー部材と前記内周カバー部材との間に、周方向に間隔を置いて配置された複数の磁極片と、を備え、
前記外周カバー部材は、前記複数の磁極片の外周面に面する複数の外周側対面部と、隣り合う2つの前記外周側対面部を接続する複数の外周側接続部と、を含み、
前記内周カバー部材は、前記複数の磁極片の内周面に面する複数の内周側対面部と、隣り合う2つの前記内周側対面部を接続する複数の内周側接続部と、を含み、
前記複数の外周側接続部の各々は、前記外周カバー部材の内周側と外周側とを連通する外周側連通部を有し、
前記複数の内周側接続部の各々は、前記内周カバー部材の内周側と外周側とを連通する内周側連通部を有し、
前記外周カバー部材または前記内周カバー部材の少なくとも一方は、軸方向において互いに間隔を置いて配置された複数の円筒状の筒状部材で形成されており、
前記外周側連通部または前記内周側連通部の少なくとも一方は、前記軸方向における前記間隔により形成される磁極片装置。
【請求項6】
内径側磁石界磁と、
前記内径側磁石界磁に対して外径側に配置される外径側磁石界磁と、
前記内径側磁石界磁と前記外径側磁石界磁との間に配置される請求項1~5のいずれか1項に記載の磁極片装置と、を備える磁気歯車。
【請求項7】
前記外径側磁石界磁は、前記外径側磁石界磁の内周側と外周側とを連通する連通部を有する請求項6に記載の磁気歯車。
【請求項8】
請求項6または7に記載の磁気歯車を備える磁気ギアードモータ。
【請求項9】
請求項6または7に記載の磁気歯車を備える磁気ギアード発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁極片装置及び該磁極片装置を備えた磁気歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車装置の一種として、磁石の吸引力及び反発力を利用し、非接触でトルクや運動を伝達することにより、歯の接触により生じる摩耗、振動、騒音等の問題を回避できるようにした磁気歯車がある。この磁気歯車のうち磁束変調型(高調波型)磁気歯車は、同心円状(同軸)に配置された内周側の磁石界磁および外周側の磁石界磁と、これら2つの磁石界磁の間にそれぞれ間隙(エアギャップ)を設けつつ配置され、周方向に交互に配列される複数の磁極片(ポールピース)および複数の非磁性体を有する磁極片装置とを備えている(特許文献1~2参照)。そして、上記の2つの磁石界磁の有する磁石の磁束が上記の各磁極片により変調されることで高調波磁束が生じ、この高調波磁束に上記の2つの磁石界磁がそれぞれ同期することで、磁束変調型磁気歯車は動作する。
【0003】
例えばこの磁束変調型磁気歯車とモータとを一体化した磁気ギアードモータでは、上記の外周側の磁石界磁を固定してステータとして機能させる共に、上記の内周側の磁石界磁を高速ロータ、上記の磁極片装置を低速ロータとして機能させる。そして、コイルの起磁力により高速ロータを回転させることで、高速ロータの極対数と低速ロータが有する極対数との比で定まる減速比に従って低速ロータが回転するようになっている。なお、磁気ギアードモータとしては、高速ロータとステータに永久磁石を設置したタイプのものや、高速ロータにのみ永久磁石を設置したタイプのものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9425655号明細書
【文献】特許第5286373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した磁極片装置は、内周側および外周側で隣接する上記の2つの磁石界磁の有する永久磁石などの磁石で発生する磁力を受けるため、剛性が一定以上ないと、径方向に変形して径方向で隣接する上記の磁石界磁の磁石に干渉してしまうおそれがある。そこで、上記の磁力に対して径方向の変形を防ぐため、複数の磁極片の外周側や内周側などに弾性率の高い筒状のカバー部材を設置することで、剛性を高めることが考えられる。
【0006】
ここで、上記の磁極片では鉄損による熱が発生するところ、この磁極片の内径側および外径側に対向する磁石界磁の各々の磁極対(磁気ギアードモータではステータ磁石、ロータ磁石)の温度スペックは磁極片よりも厳しい。このため、磁極片装置(複数の磁極片)と、これに隣接(対向)する内径側および外径側の2つの磁石界磁との間にそれぞれ形成されるエアギャップには、その軸方向に沿って流れるように冷却媒体(例えば空気)を供給するなどして、積極的に除熱を行う必要がある。しかしながら、上述したカバー部材で複数の磁極片の径方向の両面を覆うと、エアギャップに供給された冷却媒体はカバー部材に沿ってエアギャップの一端側からから他端側に向けて流れる他はなく、エアギャップが軸方向に長いほど冷却媒体の温度が流れるに従って上昇してしまい、その下流側で冷却性能が低下する。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、剛性および冷却性能が向上された磁気歯車の磁極片装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る磁極片装置は、
磁気歯車における内径側磁石界磁と外径側磁石界磁との間に配置される磁極片装置であって、
前記外径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する外周カバー部材と、
前記内径側磁石界磁に対向して配置され、円筒状の形状を有する内周カバー部材と、
前記外周カバー部材と前記内周カバー部材との間に、周方向に間隔を置いて配置された複数の磁極片と、を備え、
前記外周カバー部材は、前記複数の磁極片の外周面に面する複数の外周側対面部と、隣り合う2つの前記外周側対面部を接続する複数の外周側接続部と、を含み、
前記内周カバー部材は、前記複数の磁極片の内周面に面する複数の内周側対面部と、隣り合う2つの前記内周側対面部を接続する複数の内周側接続部と、を含み、
前記複数の外周側接続部の各々は、前記外周カバー部材の内周側と外周側とを連通する外周側連通部を有し、
前記複数の内周側接続部の各々は、前記内周カバー部材の内周側と外周側とを連通する内周側連通部を有する。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気歯車は、
内径側磁石界磁と、
前記内径側磁石界磁に対して外径側に配置される外径側磁石界磁と、
前記内径側磁石界磁と前記外径側磁石界磁との間に配置される上記の磁極片装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、剛性および冷却性能が向上された磁気歯車の磁極片装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気歯車の径方向に沿った断面の模式図である。
【
図2】
図1に示す磁気歯車の断面の一部拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る磁気歯車の軸方向に沿った断面の模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る磁極片装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る磁極片装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る磁極片装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る磁極片装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る磁極片装置の径方向に沿った断面の模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る磁気歯車の内部における冷却媒体の流れ方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(磁気歯車9の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気歯車9の径方向cに沿った断面の模式図である。
図2は、
図1に示す磁気歯車9の断面の一部拡大図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る磁気歯車9の軸方向bに沿った断面の模式図である。なお、以下では、磁気歯車9(磁極片装置1)の回転方向に沿った方向を周方向a、磁気歯車9(磁極片装置1)の回転軸に沿った方向を軸方向b、上記の周方向aおよび軸方向bに直交する方向(半径方向)を径方向cとして説明する。
【0014】
磁気歯車9は、磁石による吸引力および反発力を利用して、非接触でトルクを伝達する機構を有する装置である。
図1~
図3に示す磁気歯車9は、磁束変調型(高調波型)であり、図示されるように、全体として円筒状(環状。以下同様)の形状を有する外径側磁石界磁5(アウターロータ)と、全体として円筒状あるいは円柱状の形状を有する内径側磁石界磁7(インナーロータ)と、全体として円筒状の形状を有する磁極片装置1(センターロータ)とを有している。そして、外径側磁石界磁5と内径側磁石界磁7との間に磁極片装置1が配置されるように、これらが同一の軸線l(同軸)上に、互いに径方向cに一定距離の間隔(エアギャップG)を空けて配置された構造を有する。すなわち、外径側磁石界磁5は、内径側磁石界磁7に対して径方向外側(外径側)に配置される。また、磁極片装置1は、内径側磁石界磁7と外径側磁石界磁5との間に配置される。そして、これらの外径側磁石界磁5、内径側磁石界磁7及び磁極片装置1は同心状に配置される。
【0015】
また、上記の外径側磁石界磁5および内径側磁石界磁7は、
図2に示すように、磁気歯車9の径方向cに沿って切断した断面(以下、径方向断面)において円周上に間隔(等間隔)を置いて配置された複数のN極およびS極で構成される永久磁石などの磁極対(51、71)を有している。具体的には、外径側磁石界磁5は、複数の磁極対51と、この複数の磁極対51を支持する支持部材52とを有している。そして、外径側磁石界磁5の円筒状の内周面には、複数の磁極対51が、磁極が径方向cを向く状態で、かつ周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わるようにしてその全周に渡って設置される。同様に、上記の内径側磁石界磁7は、複数の磁極対71と、この複数の磁極対71を支持する円柱状の支持部材72とを有している。そして、内径側磁石界磁7の円筒状の外周面には、複数の磁極対71が、上記と同様に周方向aに沿ってその全周に渡って設置される。また、磁極片装置1は、周方向aの全周に渡って互いに間隔(等間隔)を置いて配置された複数の磁極片41(ポールピース)を有する。そして、例えば内径側磁石界磁7を回転させると、内径側磁石界磁7の磁束が磁極片装置1の磁極片41により変調され、変調された磁場と外径側磁石界磁5の作用により磁極片装置1に回転トルクが生じる。
【0016】
図1~
図3に示す実施形態では、磁気歯車9(磁束変調型磁気歯車)は、モータと一体化されることで、磁気ギアードモータを構成している。より詳細には、この磁気ギアードモータにおいては、外径側磁石界磁5に複数のコイル6(
図2参照)を設置してステータ(固定子)とし、コイル6の起磁力により内径側磁石界磁7(高速ロータ)を回転させる。これによって、内径側磁石界磁7の有する磁極対71の極対数に対する外径側磁石界磁5の有する磁極対51の極対数の比で定まる減速比に従って、磁極片装置1(低速ロータ)が回転するようになっている。
【0017】
なお、この磁気歯車9は、磁束変調型磁気歯車と発電機とを一体化した磁気ギアード発電機にも適用可能である。磁気ギアード発電機は、高速ロータの回転に伴って低速ロータが回転する点が磁気ギアードモータと異なるが、低速ロータ、高速ロータ、及びステータの構成については、磁気ギアードモータと同様である。
【0018】
また、磁気ギアードモータには、動作時に生じる熱から上記の構成要素を保護するために例えば空気や水などの冷却媒体Cが供給される。
図1~
図3に示す実施形態では、
図3に示すように、内径側磁石界磁7と磁極片装置1との間、および、外径側磁石界磁5と磁極片装置1との間にそれぞれエアギャップGが形成されている。そして、これらの円筒状のエアギャップGには、それぞれ、一端側から他端側に向かって流れるように冷却媒体Cとして供給されるようになっている。また、外径側磁石界磁5とその外周側に位置するハウジングHとの間に形成される間隙に対しても冷却媒体Cが同様に供給されるようになっている。なお、上記の外径側磁石界磁5とハウジングHとの間の間隙には、空気などの気体を供給しても良いし、水冷管を設置し、この水冷管に冷却水などを流通させても良い。
【0019】
上述した構成を有する磁気歯車9(磁束変調型磁気歯車)において、上述した磁極片装置1は、内周側および外周側で隣接する上記の2つの磁石界磁(5、7)の磁力を受けるため、剛性が足りないと、径方向cに変形し、径方向cで隣接する上記の磁石界磁の磁極対(51、71)に干渉してしまう虞がある。そこで、上記の磁極片装置1を次のように構成した。
【0020】
(磁極片装置1の構成)
以下、磁極片装置1について、
図2および
図4~
図9を用いて詳細に説明する。
図4~
図7は、本発明の一実施形態に係る磁極片装置1の一部を模式的に示す斜視図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る磁極片装置1の径方向cに沿った断面の模式図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る磁気歯車9の内部における冷却媒体Cの流れ方向を説明するための図である。
【0021】
上述したように、磁極片装置1は、例えば磁気ギアードモータを構成する磁束変調型磁気歯車などとなる磁気歯車9を構成する装置(部材)であり、磁気歯車9における内径側磁石界磁7(磁気ギアードモータでは高速ロータ)と外径側磁石界磁5(磁気ギアードモータではステータ)との間に配置される装置(部材)である。
図4~
図8に示すように(
図2も同様)、磁極片装置1は、外径側磁石界磁5の内周面に対向して配置される外周カバー部材2と、内径側磁石界磁7の外周面に対向して配置される内周カバー部材3と、これら2つのカバー部材の間に配置される複数の磁極片41(ポールピース)と、を備える。
【0022】
詳述すると、外周カバー部材2および内周カバー部材3は、それぞれ全体として円筒状の形状を有する部材である。また、内周カバー部材3は、外周カバー部材2よりも小さい径を有しており、外周カバー部材2の内側に同軸で配置されることで、外周カバー部材2の内周面と内周カバー部材3の外周面との間に全周にわたって円筒状の空間が形成される。そして、この円筒状の空間に、複数の長尺の磁極片41が、その各々の長手方向が軸方向bに沿う向きで、周方向aに間隔を置いて配置される。換言すれば、上記の2つのカバー部材(2、3)は、複数の磁極片41を挟むようにして設けられる。
【0023】
上述した構成を備える磁極片装置1において、
図4~
図8に示すように、上記の2つのカバー部材の各々は、隣り合う2つの磁極片41の間(隣接間空間42)に面する部分に形成された連通部(23、33)を有する。具体的には、
図4~
図8に示すように、外周カバー部材2は、上述した複数の磁極片41の外周面に面する複数の外周側対面部21と、これらのうちの隣り合う2つの外周側対面部21を接続する複数の外周側接続部22と、を含んでいる。そして、この複数の外周側接続部22の各々は、外周カバー部材2の内周側と外周側とを連通する外周側連通部23を有している。
同様に、内周カバー部材3は、上述した複数の磁極片41の内周面に面する複数の内周側対面部31と、これらのうちの隣り合う2つの内周側対面部31を接続する複数の内周側接続部32と、を含んでいる。そして、この複数の内周側接続部32の各々は、内周カバー部材3の内周側と外周側とを連通する内周側連通部33を有している。
【0024】
要するに、磁極片装置1の内部には、隣り合う2つの磁極片41と、外周カバー部材2(外周側接続部22)と、内周カバー部材3(内周側接続部32)とで囲まれる複数の空間(隣接間空間42)が形成されていると共に、これらの複数の空間の各々は、外周側連通部23および内周側連通部33によって径方向cに連通するように構成されている。これによって、上述した磁極片装置1の外周側(径方向外側)および内周側(径方向内側)の両方に存在するエアギャップGに冷却媒体Cが供給された場合に、上記の連通部(23、33)を介して冷却媒体Cが磁極片装置1の内部を通り抜けることが可能となる。
【0025】
この連通部(23、33)について、幾つかの実施形態では、
図4~
図5、
図7~
図8に示すように、外周側連通部23または内周側連通部33の少なくとも一方は、1つ以上の貫通孔を含んでも良い。
図4に示す実施形態では、外周側連通部23および内周側連通部33の両方が、軸方向bに沿って並ぶ、各々が円形状の断面形状を有する複数(
図4では3つ以上)の貫通孔を有している。他方、
図5に示す実施形態では、外周側連通部23および内周側連通部33は、軸方向bに長い四角形状の断面形状を有する1つの貫通孔を有している。なお、
図4~
図5において、貫通孔の断面形状は、例えば円系や四角形の他にも楕円形など他の形状であっても良い。また、貫通孔の断面径は一定になっているが、流れ方向に沿って例えば大きくあるいは小さくなるなど、一定でなくても良い。
【0026】
他の幾つかの実施形態では、
図6に示すように、外周カバー部材2または内周カバー部材3の少なくとも一方は、軸方向bにおいて互いに間隔を置いて配置された複数の円筒状の筒状部材(24a、34a)で形成されており、上述した外周側連通部23または内周側連通部33の少なくとも一方は、軸方向bにおける上記の間隔により形成されても良い。
【0027】
図6に示す実施形態では、外周カバー部材2および内周カバー部材3の両方が、2つの筒状部材で構成されている。すなわち、外周カバー部材2は、第1筒状部材24aおよび第2筒状部材24bを有しており、外周側連通部23は、第1筒状部材24aおよび第2筒状部材24bの各々の側壁によって形成されている。同様に、内周カバー部材3は、第1筒状部材34aおよび第2筒状部材34bを有しており、内周側連通部33は、第1筒状部材34aおよび第2筒状部材34bの各々の側壁によって形成されている。
【0028】
なお、
図6では、外周側対面部21および内周側対面部31は、軸方向bの中間において磁極片41の外周面や内周面を覆ってはいないが、他の幾つかの実施形態では、カバー部材が、筒状部材における外周側対面部21あるいは内周側対面部31を構成する部分を軸方向で接続する接続部(不図示)を有することにより、上記の覆っていない部分の少なくとも一部を覆うようにしても良い。
図6に示す実施形態では、複数の磁極片41は外周側対面部21および内周側対面部31で支持されているが、上記の接続部(不図示)により強固に支持することが可能となる。
【0029】
その他の幾つかの実施形態では、上述した2つの実施形態を組み合わせても良い。すなわち、
図4~
図6に示す実施形態では、外周側連通部23と内周側連通部33とが同様の構成を有していたが、例えば外周側連通部23が
図5の構成を有し、内周側連通部33が
図4の構成を有するなど、互いに異なる構成を有しても良い。
【0030】
その他、
図4~
図8に示す実施形態では、複数の磁極片41は、外周カバー部材2および内周カバー部材3によって支持されている。また、2つのカバー部材の間における複数の磁極片41の間の隣接間空間42は、磁極片41の側面41sにより区画されている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、磁極片装置1は、外周カバー部材2および内周カバー部材3を径方向cで相互に接続しつつ、各磁極片41を位置決めするような板状の区画部材8を備えることで、上記の隣接間空間42は、区画部材8によって区画されても良い。また、他の幾つかの実施形態では、磁極片装置1は、隣接間空間42に設置される複数の非磁性体などの保持部材(不図示)をさらに含んでも良く、各磁極片41は、保持部材、あるいは保持部材および上記のカバー部材により支持されても良い。この場合には、保持部材は、外周側連通部23と内周側連通部33に連通する貫通穴を有するか、あるいは多孔体(ラティス構造を含む)で形成されるなどにより、冷却媒体Cがその内部を通り抜けることが可能に構成される。なお、保持部材(不図示)と磁極片41との間には上記の区画部材8が存在しても良い。
【0031】
上記の構成によれば、磁束変調型磁気歯車などの磁気歯車9を構成する磁極片装置1は、同軸で配置される外周カバー部材2および内周カバー部材3の間に、その長手方向が軸方向bに沿うように延在する長尺の複数の磁極片41(ポールピース)が周方向aに間隔を置いて配置された構造を有している。そして、外周カバー部材2および内周カバー部材3は、それぞれ、複数の磁極片41の各々の間(隣接間空間42)に面する部分(外周側接続部22、内周側接続部32)に、その内周面と外周面とを連通させる連通部(外周側連通部23、内周側連通部33)が形成されている。つまり、磁極片装置1は、上記の連通部によって、その内部を冷却媒体Cが径方向cに通り抜けられるようになっている。
【0032】
これによって、外周カバー部材および内周カバー部材によって磁極片装置1の剛性を高めつつ、各磁極片41の側面(周方向aを向く面)を冷却面として利用することで磁極片装置1の冷却性能を向上させることができる。また、磁極片装置1の内部における冷却媒体Cの流通を可能にすることで、冷却パスの設計自由度を大幅に向上させることができる。このため、後述するように磁極片装置1の軸方向b全域で冷却媒体Cの温度を低く保つように設計するようなことも可能となる。また、例えば、磁極片装置1の内部における冷却媒体Cの流れ方向を例えば径方向cの内側から外側など一方向にすれば、磁極片装置1の内部を通過後の冷却媒体Cの噴流を例えば外径側磁石界磁5の磁石に直接衝突させるように設計することなども可能となる。よって、磁極片装置1の周囲の磁石界磁の冷却性能の向上も図ることができる。
【0033】
次に、上述した外周側連通部23および内周側連通部33の配置に関する幾つかの実施形態を、
図7~
図8を用いて説明する。
幾つかの実施形態では、
図7~
図8に示すように、同一の隣接間空間42に面する外周カバー部材2および内周カバー部材3の各々の連通部(23、33)は、軸方向bまたは周方向aの少なくとも一方の方向において互いにずらされた位置に設けられても良い。
【0034】
すなわち、幾つかの実施形態では、上述した複数の外周側接続部22は、任意の外周側接続部22である第1の外周側接続部22を含み、複数の内周側接続部32は、第1の外周側接続部22と対向する第1の内周側接続部32を含み、第1の外周側接続部22が有する外周側連通部23と、第1の内周側接続部32が有する内周側連通部33とは、軸方向bにおいて互いに異なる位置にあっても良い。冷却媒体Cは、上述したエアギャップGを、軸方向bにおける一方の端部側から他方の端部側に向けて流れるように供給されるが、磁極片装置1の冷却媒体Cの入口となる連通部の方が、出口となる連通部よりも冷却媒体Cの流れ方向の上流側になるように形成される。
図7に示す実施形態では、内周側連通部33(入口)の方が、外周側連通部23(出口)よりも冷却媒体Cの流れ方向の上流側に形成されている。
【0035】
他の幾つかの実施形態では、上記の第1の外周側接続部22が有する外周側連通部23と、第1の内周側接続部32が有する内周側連通部33とは、周方向aにおいて互いに異なる位置にあっても良い。磁気歯車9の回転時には、磁極片装置1は周方向aに回転する(
図8参照)。よって、磁極片装置1の冷却媒体Cの入口となる連通部の方が、出口となる連通部よりも回転方向の前側となるように形成される。
図8に示す実施形態では、内周側連通部33(入口)の方が、外周側連通部23(出口)よりも回転方向の前側に形成されている。
【0036】
その他の幾つかの実施形態では、上述した2つの実施形態を組み合わせても良い。
図7~
図8に示す実施形態では、上記の第1の外周側接続部22が有する外周側連通部23と、第1の内周側接続部32が有する内周側連通部33とは、軸方向bおよび周方向aにおいて互いに異なる位置にある。この際、冷却媒体Cは、内径側磁石界磁7側のエアギャップGの一端側から供給され、磁極片装置1の内部を通って、外径側磁石界磁5側のエアギャップGに抜けるようになっている。また、内径側磁石界磁7は、磁極片装置1よりも高速に、紙面に対して時計回り(右側周り)に回転するようになっている。このため、
図8に示すように、内周側連通部33が外周側連通部23よりも紙面の周方向aで右側に設けられている。また、同一の隣接間空間42にそれぞれ面する第1の外周側連通部23の周方向aにおける位置は、第1の内周側連通部33よりも回転方向でより進んだ位置(紙面の右側)に設けられている。
【0037】
なお、
図7~
図8に示す実施形態では、外周側連通部23および内周側連通部33はそれぞれ1つの貫通穴を含んでいる。外周側連通部23および内周側連通部33が複数の貫通孔を含んでいる場合には、全体としてずらされていても良い。また、外周カバー部材2または内周カバー部材3の少なくとも一方が2以上の筒状部材により形成されている場合には、2以上の筒状部材の相互の間隔を調整することで、開口の位置や大きさを軸方向bで異ならせても良い。
【0038】
上記の構成によれば、外周カバー部材2および内周カバー部材3の各々の連通部(23、33)は、磁極片装置1の軸方向bあるいは周方向aの少なくとも一方において互いに位置が異なるように設けられている。これによって、磁気歯車9の回転時(作動時)において上述したエアギャップGを流れる冷却媒体Cの流れ方向に沿うように上記の2つのカバー部材の連通部を形成することが可能となる。
【0039】
その他、幾つかの実施形態では、
図9に示すように、上記の構成に加えて、さらに、外径側磁石界磁5に、外径側磁石界磁5の内周側と外周側とを連通する連通部53を形成しても良い。
図9に示す実施形態では、連通部53は、軸方向bにおける外径側磁石界磁5の中央に形成されている。これによって、磁気歯車9は、外周側連通部23および内周側連通部33、および外径側磁石界磁5の連通部53によって、その内部を冷却媒体Cが径方向cに通り抜けられることが可能となる。
【0040】
上記の構成によれば、外径側磁石界磁5には、その内周面と外周面とを連通させる連通部53が形成されている。これによって、磁気歯車9への冷却媒体Cの供給をその両端側から行うことができる。よって、磁気歯車9の内部を流れる際の冷却媒体Cが熱交換により温度が高くなり過ぎる前に磁気歯車9の外部に排出することができ、外径側磁石界磁5に連通部53を形成しない場合に比べて、磁気歯車9の内部の全域で冷却媒体Cの温度の低温化を図ることができる。よって、磁気歯車9の冷却能力を向上させることができる。
【0041】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
(付記)
【0042】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁極片装置(1)は、
磁気歯車(9)における内径側磁石界磁(7)と外径側磁石界磁(5)との間に配置される磁極片装置(1)であって、
前記外径側磁石界磁(5)に対向して配置され、円筒状の形状を有する外周カバー部材(2)と、
前記内径側磁石界磁(7)に対向して配置され、円筒状の形状を有する内周カバー部材(3)と、
前記外周カバー部材(2)と前記内周カバー部材(3)との間に、周方向(a)に間隔を置いて配置された複数の磁極片(41)と、を備え、
前記外周カバー部材(2)は、前記複数の磁極片(41)の外周面に面する複数の外周側対面部(21)と、隣り合う2つの前記外周側対面部(21)を接続する複数の外周側接続部(22)と、を含み、
前記内周カバー部材(3)は、前記複数の磁極片(41)の内周面に面する複数の内周側対面部(31)と、隣り合う2つの前記内周側対面部(31)を接続する複数の内周側接続部(32)と、を含み、
前記複数の外周側接続部(22)の各々は、前記外周カバー部材(2)の内周側と外周側とを連通する外周側連通部(23)を有し、
前記複数の内周側接続部(32)の各々は、前記内周カバー部材(3)の内周側と外周側とを連通する内周側連通部(33)を有する。
【0043】
上記(1)の構成によれば、磁束変調型磁気歯車(9)などの磁気歯車(9)を構成する磁極片装置(1)は、同軸で配置される外周カバー部材(2)および内周カバー部材(3)の間に、その長手方向が軸方向(b)に沿うように延在する複数の磁極片(41)(ポールピース)が周方向(a)に間隔を置いて配置された構造を有している。そして、外周カバー部材(2)および内周カバー部材(3)は、それぞれ、複数の磁極片(41)の各々の間(隣接間空間(42))に面する部分(外周側接続部(22)、内周側接続部(32))に、その内周面と外周面とを連通させる連通部(53)(外周側連通部(23)、内周側連通部(33))が形成されている。つまり、磁極片装置(1)は、上記の連通部(53)によって、その内部を冷却媒体(C)が径方向(c)に通り抜けられるようになっている。
【0044】
これによって、外周カバー部材(2)および内周カバー部材(3)によって磁極片装置(1)の剛性を高めつつ、各磁極片(41)の側面(周方向(a)を向く面)を冷却面として利用することで磁極片装置(1)の冷却性能を向上させることができる。また、磁極片装置(1)の内部における冷却媒体(C)の流通を可能にすることで、冷却パスの設計自由度を大幅に向上させることができる。このため、後述するように磁極片装置(1)の軸方向(b)全域で冷却媒体(C)の温度を低く保つように設計するようなことも可能となる。また、例えば、磁極片装置(1)の内部における冷却媒体(C)の流れ方向を例えば径方向(c)の内側から外側など一方向にすれば、磁極片装置(1)の内部を通過後の冷却媒体(C)の噴流を例えば外径側磁石界磁(5)の磁石に直接衝突させるように設計することなども可能となる。よって、磁極片装置(1)の周囲の磁石界磁の冷却性能の向上も図ることができる。
【0045】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記複数の外周側接続部(22)は、第1の外周側接続部(22)を含み、
前記複数の内周側接続部(32)は、前記第1の外周側接続部(22)と対向する第1の内周側接続部(32)を含み、
前記第1の外周側接続部(22)が有する前記外周側連通部(23)と、前記第1の内周側接続部(32)が有する前記内周側連通部(33)とは、軸方向(b)において互いに異なる位置にある。
【0046】
上記(2)の構成によれば、外周カバー部材(2)および内周カバー部材(3)の各々の連通部(53)は、磁極片装置(1)の軸方向(b)において互いに異なる位置に設けられている。これによって、外周カバー部材(2)と外径側磁石界磁(5)との間や、内周カバー部材(3)と内径側磁石界磁(7)との間にそれぞれ形成されるエアギャップ(G)を、軸方向(b)における一方の端部側から他方の端部側に向けて流れる冷却媒体(C)(例えば冷却水、冷却空気)の流れ方向に沿うように上記の2つのカバー部材の連通部(53)を形成することで、冷却媒体(C)が連通部(53)を通って流れる際の損失を低減することができる。よって、上記のエアギャップ(G)に冷却媒体(C)を供給するのに要する動力を低減することができる。
【0047】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記複数の外周側接続部(22)は、第1の外周側接続部(22)を含み、
前記複数の内周側接続部(32)は、前記第1の外周側接続部(22)と対向する第1の内周側接続部(32)を含み、
前記第1の外周側接続部(22)が有する前記外周側連通部(23)と、前記第1の内周側接続部(32)が有する前記内周側連通部(33)とは、周方向(a)において互いに異なる位置にある。
【0048】
上記(3)の構成によれば、外周カバー部材(2)および内周カバー部材(3)の各々の連通部(53)は、磁極片装置(1)の周方向(a)において互いに異なる位置に設けられている。これによって、磁気歯車(9)の回転時(作動時)において上述したエアギャップ(G)を流れる冷却媒体(C)の流れ方向に沿うように上記の2つのカバー部材の連通部(53)を形成することで、冷却媒体(C)が連通部(53)を通って流れる際の損失を低減することができる。よって、上記のエアギャップ(G)に冷却媒体(C)を供給するのに要する動力を低減することができる。
【0049】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記外周側連通部(23)または前記内周側連通部(33)の少なくとも一方は、1つ以上の貫通孔を含む。
上記(4)の構成によれば、外周カバー部材(2)または内周カバー部材(3)の連通部(53)は、部材の壁面に形成された1つ以上の貫通孔により形成されている。これによって、上記の連通部(53)をカバー部材に適切に設けることができる。
【0050】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記外周カバー部材(2)または前記内周カバー部材(3)の少なくとも一方は、軸方向(b)において互いに間隔を置いて配置された複数の円筒状の筒状部材で形成されており、
前記外周側連通部(23)または前記内周側連通部(33)の少なくとも一方は、前記軸方向(b)における前記間隔により形成される。
【0051】
上記(5)の構成によれば、外周カバー部材(2)または内周カバー部材(3)の連通部(53)は、複数の同径の筒状部材が、同軸で、互いに間隔を置いて配置されることで形成される。これによって、上記の連通部(53)をカバー部材に適切に設けることができる。
【0052】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気歯車(9)は、
内径側磁石界磁(7)と、
前記内径側磁石界磁(7)に対して外径側に配置される外径側磁石界磁(5)と、
前記内径側磁石界磁(7)と前記外径側磁石界磁(5)との間に配置される上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の磁極片装置(1)と、を備える。
【0053】
上記(6)の構成によれば、磁気歯車(9)は上述した磁極片装置(1)を備える。これによって、上記(1)~(5)と同様の効果を奏する磁気歯車(9)を提供することができる。
【0054】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記外径側磁石界磁(5)は、前記外径側磁石界磁(5)の内周側と外周側とを連通する連通部(53)を有する。
【0055】
上記(7)の構成によれば、外径側磁石界磁(5)には、その内周面と外周面とを連通させる連通部(53)が形成されている。つまり、外径側磁石界磁(5)の連通部(53)によって、磁気歯車(9)の内部を冷却媒体(C)が径方向(c)に通り抜けられるようになっている。これによって、磁気歯車(9)への冷却媒体(C)の供給を、その両端側から行うことができる。よって、磁気歯車(9)の内部を流れる際の冷却媒体(C)が熱交換により温度が高くなり過ぎる前に磁気歯車(9)の外部に排出することができ、外径側磁石界磁(5)に連通部(53)を形成しない場合に比べて、磁気歯車(9)の内部の全域で冷却媒体(C)の温度の低温化を図ることができる。よって、磁気歯車(9)の冷却能力を向上させることができる。
【0056】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアードモータは、
上記(6)~(7)に記載の磁気歯車(9)を備える。
上記(8)の構成によれば、上記(6)~(7)と同様の効果を奏する磁気ギアードモータを提供することができる。
【0057】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード発電機は、
上記(6)~(7)に記載の磁気歯車(9)を備える。
上記(9)の構成によれば、上記(6)~(7)と同様の効果を奏する磁気ギアード発電機を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 磁極片装置
2 外周カバー部材
21 外周側対面部
22 外周側接続部
23 外周側連通部
24a 第1筒状部材
24b 第2筒状部材
3 内周カバー部材
31 内周側対面部
32 内周側接続部
33 内周側連通部
34a 第1筒状部材
34b 第2筒状部材
41 磁極片
41s 磁極片の側面
42 隣接間空間
5 外径側磁石界磁
51 磁極対
52 支持部材
53 連通部
6 コイル
7 内径側磁石界磁
71 磁極対
72 支持部材
8 区画部材
9 磁気歯車
C 冷却媒体
G エアギャップ
H ハウジング
a 周方向
b 軸方向
c 径方向
l 軸線